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1 老人保健施設における Berg Balance Scale の試み 今枝功子 (PT) 高林明子 (OT) 三井貴子 (OT) 仲秋千亜紀 (OT) 白梅ケアホームリハビリ科 キーワード Berg Balance Scale 移動補助具検証 Ⅰ. はじめに高齢者のバランス能力の低下を日常生活活動に反映した形で 的確に把握できる評価スケールとして 海外で広く認知されているものにBerg Balance Scale ( 以下 BBS ) がある 今回 その BBS を用いて当施設の入所者 14 名を対象に 現在使用している移動補助具が妥当であるか検証したのでここに報告する Ⅱ. 方法 1. 対象 : 白梅ケアホーム入所者のうち日常生活において歩行補助具使用及び独歩にて歩行可能であろうと思われ かつ 検査において混乱の見られない14 名を抜粋した 平均年齢 歳 平均 HDS-R 20.6 ( 最高 28 最低 6 ) 2. 方法 : BBS =1 座位からの立位 2 立位保持 3 床に足を着いた座位 4 立位から座位 5 移乗 6 開眼立位保持 7 閉脚立保持 8 前方へのリーチ 9 床から物を拾う 10 左右の肩越しに後方をみる 11 一回転 12 台に足を乗せる 13 継足立位 14 片脚立位以上 14 項目を 0 ~ 4 点の 5 段階で得点化し その合計点 ( 最高 56 点 ) で

2 評価した ( 表 1 ) 3. 期間 : 平成 22 年 8 月から 9 月に 1 回実施した 4. 評価値 :Berg らは地域在住高齢者で 安全に歩行できる人と 歩行補助具や監視の必要性がある人との識別の目安となる BBS の得点は 臨 床経験的には 45 点くらいであろうと述べている 1 ) そこで 合計点数 のカットオフ値を 45 点とし 56 ~ 46 点を Ⅰ 群 (A~G) 45 点以下を Ⅱ 群 (H~N) とした Ⅲ. 結果各個人の結果を表 2 に示す 各得点は 塗りつぶしなし= 4 点 黄色 = 3 点 青 = 2 点 赤 = 1 点 緑 = 0 点で示す (1) Ⅰ 群 7 名は独歩及び杖歩行可能なグループとなり Ⅱ 群は歩行器等及び車椅子使用のグループになった (2) 歩行補助具を利用して安全に歩行するために BBS において40 点程度必要であった (3) Ⅰ 群の中でも円背の無い独歩グループはほぼ満点の55 点 円背があるものと杖使用グループは 2 点以下の項目があった (4) Ⅱ 群は項目 8) 前方へのリーチにおいて点数が低くなった (5) Ⅱ 群ではタンデム立位はできなかった 片足の踏み出しもわずかしかできなかった (6) 日常的に車椅子を使用している 1 名の合計点数が カットオフ値 45 点以上の53 点であった Ⅳ. 考察 合計点数のみで判断すると 現在使用している移動補助具はおおむね

3 妥当であった 前方および側方の動的バランス能力が低下すると 支持基底面を広げる歩行器等を使用することでバランスを補っていると考えられる 円背もみられ 腹筋 背筋の筋力低下 柔軟性の低下で 立ち直り反応が鈍くなっている また 入所者一人ひとりが抱えている問題は様々である Ⅰ 群で車椅子を使用している C さんは杖歩行練習時では遠位監視で安全に歩行ができると判断しているが フロアでは不定愁訴が多く せっかちで他の人を押しのけようとする危険行為もある そのため 杖歩行への移行はフロアスタッフと検討をしていかなければならないと考えている Ⅱ 群で車椅子使用の N さんは杖歩行練習を近位監視から軽介助で行っているが 円背があり せっかちな性格で つまずきも見られている 骨癒合も悪く 安全のために車椅子の使用が妥当と考えている 老人性うつのある L さんはフロア職員の適切な声かけで歩行器歩行を継続されている 新規入所から徐々に生活が安定してきた K さんは口腔ケアや適切な食形態により体力がつき こちらが思うより高い点数であった 以上のように 移動補助具の妥当性の判断には 身体面のみの問題だけでなく精神面 住環境が深く関係していると思われた Ⅴ. まとめ今回 BBS を使用し 移動補助具の検討を行った 独歩ではほぼ満点の能力が必要であった 杖歩行は46 点以上が必要であった 歩行器等では 40 点以上が必要であった この結果から移動補助具の使用は妥当であっ

4 た しかし 施設では移動範囲が広く 時間帯によって 利用者が一か所に集中することがある そのため 安全性を考えると歩行能力よりも低いレベルの移動補助具使用となってしまう現状が浮き彫りとなった 今後 入所者の歩行能力の低下を防止するために 安全性を考えながら日常生活活動に使用する移動補助具とリハビリ施行のバランスをどのように行うかが課題となる 参考文献 1) Berg K et al: Measuring balance in the elderly: validation of an instrument. Can J Pub Health 83 (Suppl):S7-S11,1992

5 表 1 バランス機能評価 (Berg Balance Scale/BBS) 1 坐位バランス ( 両足を床につけ もたれずに坐る ) 指示 : 腕を組んで 2 分間坐って下さい 2 椅子からの立ち上がり 指示 : 手を用いずに立って下さい 3 立位から椅子への腰掛け 指示 : どうぞお坐り下さい 4 椅子から別の椅子への移乗 指示 : こちらの椅子へ乗り移って下さい 5 立位バランス 指示 : つかまらずに 2 分間立ったままでいて下さい 6 閉眼での立位バランス 指示 : 目を閉じて 10 秒間立っていて下さい 7 閉脚での立位バランス 指示 : 足を揃えて 何もつかまらずに立っていて下さい 4: 安全確実に 2 分間坐位をとることが可能 3: 監視下で 2 分間坐位をとることが可能 2:30 秒間坐位をとることが可能 1:10 秒間坐位をとることが可能 0: 介助なしでは 10 秒間坐位をとることが不可能 4: 立ち上がり可能 3: 手を用いれば一人で立ち上がり可能 2: 数回試した後 手を用いて立ち上がり可能できない 1: 立ったり 平衡をとるために最小限の介助が必要 0: 立ち上がりに中等度ないし高度な介助が必要 4: ほとんど手を使用せずに安全に坐ることが可能 3: 両手でしゃがみ動作を制御する 2: 両下腿背側を椅子に押しつけてしゃがみ動作を制御する 1: 坐れるがしゃがみ動作の制御ができない 0: 介助しないとしゃがみ動作ができない 4: ほとんど手を使用せずに安全にトランスファーが可能 3: 手を十分に用いれば安全にトランスファーが可能 2: 言葉での誘導もしくは監視があればトランスファーが可能 1: トランスファーに介助者 1 名が必要 0:2 名の介助者もしくは安全面での監視が必要 4: 安全に 2 分間立位保持可能 3: 監視下で 2 分間立位保持可能 2:30 秒間立位保持可能 1:30 秒間立位保持に数回の試行が必要 0: 介助なしには 30 秒間立っていられない 4: 安全に 10 秒間閉眼立位可能 3: 監視のもとで 10 秒間閉眼立位可能 2:3 秒間は立位保持可能 1: 閉眼で 3 秒間立位保持できないが ぐらつかないで立っていられる 0: 転倒しないよう介助が必要 4: 一人で足を揃えることができ 1 分間安全に立位可能 3: 一人で足を揃えることができ 1 分間監視 2: 一人で足を揃えることはできるが 30 秒立位は不可能 1: 開脚立位をとるために介助が必要であるが 足を揃えて 15 秒立位可能 0: 開脚立位をとるために介助が必要で 15 秒立位保持不可 8 立位でのリーチ ( 前方 ) 指示 : 片腕 ( 利き手 ) を水平に上げて前の方に指を伸ばして下さい 9 床からの拾い上げ 指示 : 足の前にある靴 ( あるいはスリッパ ) を拾い上げて下さい 10 後ろへの肩越しの振り向き 指示 : 左肩越しに後ろを振り向いて下さい それができたら今度は右肩越しに後ろを振り向いて下さい 11 一回転 指示 : 左側から一回転して下さい 次に 右側からお願いします 12 踏み台への足載せ 指示 : 台の上に左足を乗せて降ろして下さい 次に右足をお願いします 交互に続けて 8 回行って下さい 13 足を前後縦列しての立位バランス ( タンデム立位 ) 指示 :( 課題を実地で説明 ) 一方の足をもう片方の足のすぐ前にまっすぐ置いて下さい 14 片足立位 指示 : どこにもつかまらず できるだけ長く片足で立っていて下さい 4: 確実に 25 cm以上前方へリーチ可能 3:12.5 cm以上安全に前方へリーチ可能 2:5 cm以上安全に前方へリーチ可能 1: 監視があれば前方へリーチ可能 0: 転倒しないように介助が必要 4: 安全かつ簡単に靴 ( あるいはスリッパ ) を拾い上げることが可能 3: 監視があれば靴 ( あるいはスリッパ ) を拾い上げることが可能 2: 独力で平衡を保ったまま 2.5~5 cmのところに置いたスリッパまでリーチできるが 拾い上げることはできない 1: 検査中監視が必要であり 拾い上げることもできない 0: 転倒しないように介助が必要で 検査ができない 4: 上手に体重移動しながら 両方向から振り向ける 3: 一方向からのみ振り向きができる もう一方向では体重移動が少ない 2: 横を向けるだけだが バランスは保てる 1: 振り向く動作中に監視が必要 0: 転倒しないように介助が必要 4:4 秒以内に両方向安全に 1 周回ることが可能 3:4 秒以内に一方向のみ安全に 1 周回ることが可能 2: ゆっくりとなら 1 周回ることが可能 1: 間近での監視が必要か 言葉での手がかりが必要 0:1 周するのに介助が必要 4: 支持なしで安全にかつ 20 秒以内に 8 回足のせが可能 3: 支持なしで 20 秒以上必要であるが 完全に 8 回足のせが可能 2: 監視下であるが 介助不要で 完全に 4 回足のせが可能 1: 最小限の介助で 完全に 2 回以上の足のせが可能 0: 転倒しないよう介助が必要 または試行不可能 4: 単独で継ぎ足を取ることができ 30 秒保持可能 3: 単独で足を別の足の前に置くことができ 30 秒保持可能 2: 単独で足をわずかにずらし 30 秒保持可能 1: 検査姿勢をとるために介助を要するが 15 秒保持可能 0: 足を出すとき または立っているときにバランスを崩してしまう 4: 単独で片足を上げ 10 秒以上保持可能 3: 単独で片足を上げ 5~10 秒保持可能 2: 単独で片足を上げ 3 秒もしくはそれ以上保持可能 1: 片足を上げることはできるが 片足立ちを 3 秒保持することができない 0: 試行不可能 もしくは転倒予防に介助が必要

6 表 2 BBS 結果 1 座位バランス 椅子からの立ち上 がり 立位から椅子への 腰掛け 椅子から別の椅子への移乗 立位バランス 閉眼での立位バラ ンス 閉脚での立位バラ ンス 立位でのリーチ ( 前方 ) 床からの拾い上げ 後ろへの肩越しの 10 振り向き 一回転 踏み台への足載せ Berg Balance Test 足を前後縦列して の立位バランス 片足での立位バランス 合計 HDS-R 補助具 A B C D E F G H I J K L M N 平均値 シルバーシルバーシルバー車椅子 + 独歩独歩車椅子杖杖独歩杖歩行器カーカーカー歩行器歩行器車椅子

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