「幕末・明治期日本古写真超高精細画像データベース」の開発について

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1 NAOSITE: Nagasaki University's Ac Title Author(s) 幕末 明治期日本古写真超高精細画像データベース の開発について 宮脇, 英俊 Citation Issue Date URL Right This document is downloaded

2 おはようございます 長崎大学の宮脇と申します 本日は 本学が構築しましたデータベースの紹介をさせていただきます 1

3 簡単に言いますと コンピュータ画面上で古写真画像を拡大できるデータベースということです 長崎大学では 幕末から明治期に撮影された古写真を 5416 点所蔵しております これは 過去 4 回の大型コレクション経費と学内経費で収集してきたものです その中から選りすぐりの写真 201 点をモニター上で拡大させることで細部まで見ることが可能になったものが 今回構築したデータベースです 2

4 データベースの説明に入る前に 日本における写真の歴史について簡単に述べたいと思います カメラは 1839 年にフランスにおいて発明され 日本に入ってきたのが 1848 年 ( 嘉永元年 ) 明治と元号が改まる 20 年前のことで オランダから初めて日本に輸入されて 薩摩藩に納められました その後 独自の研究が始まり 現存する日本人が日本人を写した最も古い写真が 薩摩藩主の島津斉彬だといわれています その後に登場する職業写真家たちは 日本の風景 風俗を撮影し 写真に着色を施し 漆のアルバムに収めて外国人観光客にお土産品として売り出したりしていました しかし お土産品といっても当時の日本の貴重な記録であります 撮影時間は 幕末までの銀板写真といわれるもので 1 分 ~3 分です その後の湿板写真といわれるもので 5 秒 ~10 秒かかったらしいです 撮影時間はそれなりにかかりましたけれども 細部まで鮮明な画質を有しています このおかげで 今回のデータベースに際しても耐えられる画像になった次第です 3

5 本学では これらの古写真コレクションを電子化して すでにインターネット上で公開中であります 開始から 5 年目を迎えて 現在まで国内約 4 万件 国外約 8 万件のアクセスを数えています 古写真研究者や学校での教材 史跡の復元資料 マスコミ等で使用されています 今回 構築したデータベース開発の発端は 今までのデータベースを公開してきて 見た人の感想の中に 画像が小さい とか もっと細部まで見てみたい などというご指摘をいただくことがあり もともと我々もそういうことを実現したいということもありました そこで新しい画像形式の下 独立したデータベースとして科学研究費補助金を受けて構築することにし この 3 月末に第 1 期分として完成することができました それでは 本題の この 1 年間データベース構築に要した経緯をお話しすることにします 4

6 まず データベースを構築するうえでの指針として 6 点の柱がありました 画像方式はフラッシュピックス形式による超高精細画像であるということ クライアント側の表示方式は Java アプレットであること 1 期分として長崎に関する画像であること 次年度は全国各都市へ拡大する予定にした 画像 1 点 1 点に解説文を付すこと 画像には不正使用防止策を講じること 日本語版 英語版を用意すること というものです 5

7 これらの指針の下 画像の選定を行って 二通りの手法で電子化しました 1 つは フラットヘッドスキャナーを用いて直接写真をスキャニングする方法で TIFF 形式で保存した後に フラッシュピックスに変換をかけます スキャニングの際に注意すべき点として 超高精細画像という特徴を出すために できるだけ高解像度の保存が要求されます しかし スキャンにかかる時間と その結果得られる画質をいろいろと検証した結果 B5 サイズぐらいの写真の大きさであるならば 600dpi の設定でファイルサイズを約 100MB で行うことが 最小の労力で最大の効果が得られるということが判明しました 2 つ目の方法として 古写真をカメラで撮影し ポジフィルム化したあと フィルムスキャナーで同様の手順で変換をかけました その TIFF 形式をフラッシュピックス形式に変換する方法として フリーソフトの Buch Converter というものがインター一ネット上にありますので それを使って一気に変換をかけました. 6

8 フラッシュピックスとはどのようなものかといえば JPEG や TIFF などのようなファイルフオーマットの 1 つで 変換元の画像ファイルから最小画像までの画素数の異なる複数の解像度画像を 1 つのファイルの中に持ち それぞれの画像が ピクセルのタイルに分割されているというものです ディスプレイ上に表示される部分のみをサーバから配信するため マシン性能に左右されず高解像度の画像を表示することが可能となります 以上が画像に関するものです 次に 画像に関する各種データについてお話しします 7

9 画像に関する解説データとして 画像を見ながら別画面で見られるように タイトルや撮影者 解説文など ここに挙げている 9 項目の個別データがあります 解説文は 1 画像につき 400 字程度の解説文を本学教官 2 名と外部の方 2 名にお願いして執筆していただきました その後 英語版用に科学技術振興事業団 (JST) に英訳依頼を出して その校閲を他校の外国人教授にお願いいたしました この方は 日本に住むようになって 30 年近くになる方で 日本語も堪能なネイティブイングリッシュとして信頼のおける方でした 実際 JST の文章にかなりの修正が加えられました 翻訳業者に頼めば安心とはいかないと実感した次第です 8

10 次にこのデータベースのユーザインタフェース部分を説明いたします データベースの構成としまして このサイトについて おすすめ画像 地図からの検索 条件検索 を用意しています では 実際の画面を見ながらご説明いたします 9

11 これがトップページです ここから日本語と英語に分岐していきます 10

12 メインメニューです 先程申し上げた項目のアイコンが順に並んでいて お好きな表示アプローチを選択できます 順に左からアイコンの説明をします 11

13 このサイトについて と題して データベースの概要と使い方です 12

14 ベストショットとじて 201 点の中からおすすめ画像を 8 点選んでいます 13

15 地図からの検索をする画面です 写真が撮影された時期と同じぐらいの地図を 3 種類用意して 撮影ポイントを示した赤い矢印から画像を表示するというかたちを取っています 14

16 左の方の画面が条件検索です 撮影者 撮影年代 撮影地区 解説文の全文検索があり それぞれ AND 検索ができる検索プログラムを備えています 右の方が検索結果の画面で サムネイル画像をクリックすると高精細画像が表示されます 画面をクリックしたら 次のような画面が現れます 15

17 これが このデータベースの一番の売りの部分で 拡大して見たい場所をダブルクリックすると画像が拡大します ちなみに縮小したり 画面をドラヅグすることもできます この画像に関しては 印刷ができないようにしてあり かつ長崎大学の学章 ( マーク ) をランダムに画像の中に配置するようにしています これは 相当の解像度を持った画像ですので 無断で 2 次利用される恐れがあるための防御措置です では 拡大する様子を見てみます 16

18 大体 4 回ほどで最大解像度の画像になります これで最大です 17

19 これが 元の原画像と最大拡大画像の比較です 屋根の上の看板の文字が見えるまでになります おおよそ 10 倍ぐらいの拡大となりますので 細部まで見ることが可能です 以上がインタフエース部分でした ここで 本来ならばブラウザを用いて実際に操作してみたかったのですが インターネットが使えないということですので 先月の 5 月 9 日に図書館で完成報告会を行った際のニュース映像がありますので これまでの簡単なまとめの意味を込めてご覧ください なお ナレーションの中で工学部という表現がありますが 図書館のまちがいです また この映像使用についての許諾も得ております 18

20 ナレーション : こんばんは 江戸や明治の長崎の風景が自宅のパソコンで鮮やかによみがえります 幕末から明治にかけて撮影された古写真を最大 10 倍に拡大にしても より鮮明な画像で見ることができるシステムを 長崎大学の研究グループが開発しました これにより 当時の長崎の街並みや建物の状況などが細部まで詳しくわかることになり 今後 長崎の歴史の研究などに貢献するものとして期待されています 長崎大学では 1998 年から所蔵するおよそ 6000 点の古写真をデータベース化して インターネット上で公開してきました しかし より鮮明な画像で見たいとの要望が多かったため 工学部ではアップで見たいところをクリックして高精度な画像で表示するシステムを作りだすことに成功しました このシステムでは写真を拡大してもぼけることがなく 鮮明な画像を見ることができます 梅香崎の洋館群から出島を見た写真です 拡大は 4 段階 最大 10 倍まで近寄ることができ 石垣の一つ一つの石がくっきりと映し出されます 本篭町の商店街です 一見 普通の街並みですが 拡大してみると BARBAR の英文字 居留地に近いこともあって 異文化の行き交うモダンな商店街と住人だったに違いありません 大浦の居留地から見た大浦天主堂です 丘の上に立つ白亜の教会も 近づいてみると木製の足場が組んであることがわかりました 長崎大学では 今回の長崎に続き 年内に横浜や東京など 県外の古写真についてもデータベース化を図って 世界に発信することにしています 宮脇 ( 長崎大学 ): ということでした 19

21 それでは このデータベースを公開する効果を考えてみたいと思います 現物の古写真を見るには 利用申請許可が必要で 図書館まで足を運ばなければなりません ネット上での公開により 無申請で時間を気にせず 手軽に世界中の人が見ることができるようになったと思います また 最大の特徴である 画像を拡大できるということは 実物の写真を見るよりも細部が詳細に見えてくるわけで 肉眼では見えにくいものが見えてきます このことにより 古写真内に写っている情報の解読ができるということです 都市景観の細部やその変遷 建造物の細部まで さらには人物の表情まで見ることができます いろいろ見ていくうち に 新たな歴史的発見が見いだされることも考えられます 教材や研究テーマとして 日本史や土木工学での研究 学習に利用できるサイトとして各方面で活用されるだろうと思っています 20

22 今後の取り組みといたしまして 今年も科学研究費補助金の交付が決定しましたので さらに画像点数を増やすことにします 収録範囲を全国の都市に広げて 300 点の画像を追加する予定で 合計 500 点のデータベースにしていきます また 従来の古写真データベースとの連携を図って より使いやすいサイトを目指し 鋭意活動を続けていく所存です 最後に このデータベースのアドレスはこちらになります 図書館からもリンクを張っていますので 一度ご覧になられて感想などいただければ非常にありがたいです 以上で 私の報告は終わりといたします ご清聴ありがとうございました 21