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1 修士論文 ( 要旨 ) 2014 年 1 月 夫の育児参加が母親の生活満足に及ぼす影響についての質的研究 指導山口創先生 心理学研究科健康心理学専攻 212J4055 藤原映

2 目次 はじめに 1 第 1 節本研究の目的と意義 1 第 2 節研究方法 1 第 3 節分析結果 2 第 4 節考察 2 引用文献 参考文献

3 はじめに 1980 年代頃までのわが国の夫婦関係は 高度経済成長期に性別役割分業家族が成立して以来 男性は仕事 女性は家事 育児 という役割分担は家族の一般の家庭のあり方としてそのイメージは現代においても根付いている Mitscherlich.A.(1963) の言う 父親の不在 と 母子密着型 の子育ては 女性研究 母親研究の進歩や女性の高学歴化 社会進出に伴い見直された 育児ノイローゼ 育児不安 育児ストレス が世の中に浸透し 父親の役割は威厳のある父親像からやさしく子どもの子育てに積極的であることが評価されるようになり 以前の性別役割分業型の子育てから夫婦協力型子育てへと推移していった 以降 女性の生き方は多様化し 平成 9 年に子育て期の母親は専業主婦よりも仕事を有しながら家事 育児をこなす兼業主婦が上回って以来 増加傾向にある ( 内閣府男女共同参画局,2010) 母親の就労は二重役割による過労の危険性はあるものの 家事 育児を夫婦で分担することを促進し 子どもと一時的に離れ閉鎖的な育児を防ぐこと 仕事関係のコミュニティ 自身の収入の獲得 自身の成長 ( 平田 1999; 加藤 中島 2011; 澤田 2006) などの母親の心身の健康に良い影響が報告され 母親の自己実現につながっていた ( 平山 柏木,2005) 一方で専業主婦は閉鎖的な育児環境により育児不安やストレスと直面しやすいことが言われている ( 平山 1999; 荒牧 無藤 2008; 加藤 中島 ;2011) ところが 母親が社会に自己実現を求めることが家庭へ悪影響を及ぼす可能性が示唆された ( 小倉,2010) 夫婦は互いの感情が相互に作用し 家庭に対する影響も生じさせる ( 黒澤,2012; 島田 島津 川上,2012) 専業主婦の母親が自身の生活に満足し のびのびと子育てができ 子どもが健やかに成長し 家庭円満になる術の検討が求められている 第 1 節本研究の目的と意義 父親自覚的行動 は母親の精神的安定が図られ 育児に前向きな動機付けとなると示唆された ( 中島 高橋 國清 今関,2005) また 夫の育児参加が夫婦満足度への直接的な関係が有意ではなく その媒介として家族 家庭に対する貢献感によるものである ( 朴 金 近藤 桐野 中嶋,2011) ことから夫の育児参加に対する積極的な気持ちが母親の満足感へ影響が生じていると考えられる また主観的な自己成長や自己達成感は自己効力感を高め ポジティブな影響を与えることから 自己実現もまた類似の影響を生じさせることが推測できるうえ 生涯においてその効果が期待できる 夫からのサポートによって母親の趣味や余暇活動の中で自己実現は可能であろうか そこで本研究の目的を1 夫の育児サポートは母親の生活満足度にどのように作用しているのか 2 母親は自身の 満足 をどのように規定しているのか 3 母親の自己実現は可能であるのかを検証することと定めた 第 2 節 1. 対象 研究方法

4 対象は K 県内の子育て支援施設を利用している母親 または機縁法により選出し 2 才 3 才の子どもを持つ既婚の専業主婦の母親とした 面接調査を行った母親は 13 名であり そ のうち有効回答は 10 名であった 2. 期間 調査期間は 2013 年 8 月から 2013 年 10 月であった 3. 調査内容 1アンケート家族全員の年齢 夫婦の職業 結婚年数 子どもの数 それぞれの子どもの性別 年齢 所属 ( 中学以上 小学校 幼稚園 保育園 無所属 ) について回答を求めた また現在の生活満足感を VAS(Visual Analog Scale) を用いて 10 段階評価で記入してもらった 2 半構造化面接回数は1 名につき1 回 平均 40 分の面接を行った 面接では 夫についての満足感 子どもとの関係についての満足感 家庭以外の生活状況についての満足感 に関する質問し 母親の生活全般の満足や要望について具体的なエピソードを話してもらった 4. 分析方法 本研究の分析には改訂版グラウンデット セオリー アプローチ ( 木下,2003)(Modified Grounded Approach ; M-GTA) を用いた 第 3 節分析結果母親の語りを分析した結果 13 つの概念 ( 以下 < >) 11 つのサブ カテゴリー ( 以下 ) 3 つのカテゴリー ( 以下 { }) が生成された 概念は < 夫からの育児サポート> < 夫からの家事サポート> < 夫からの情緒サポート> < 親 義親からのサポート> < 公共の育児サポート> < 夫の育児の不適切さ> < 夫との価値観のちがい> < 余暇時間のなさ> < 母親の体力 体調の問題 > < 育児に関するストレス> <サポートシステムへの不満 > < 友人関係 >であった 概念には さらに下位概念が含まれていた 概念 よりサ上位の概念であるサブ カテゴリーは 夫からのサポート 夫婦間のストレス 家事 育児参加への促し 夫の成長 変化 夫への感謝 生活上のストレス 余暇活動 ソーシャルサポート 夫へ望むこと 育児のよろこび 家族のよろこび であった そして最終的に最上位カテゴリーとして { サポート } { 家庭内の人間関係 } { ストレス } が生成され それらは母親の生活満足へのプロセスを説明していた 第 4 節考察 母親の生活満足 を規定する概念は { サポート } { 家庭内の人間関係 } 家族の喜び 夫への感謝 余暇活動 であり 最も遠い概念が { ストレス } であった

5 { ストレス } に含まれる主概念である 夫婦間のストレス を満足へ向かわせるプロセスは 夫が母親からの 育児 家事参加への促し に応え 夫が 成長 変化 を起こすことである 母親はその 夫の成長 変化 による 夫からのサポート 増加に 夫への感謝 を覚え 育児のよろこび を感じる サポートにより心理的余裕が生まれるため 子どもへの愛情を深め 夫と共に子どもを養育し 家族の時間をかけがえのないものと捉えることを 家族のよろこび とし それは母親の生活満足を支える主要因となっていた 生活上のストレス を満足へ向かわせるプロセスを検証することはできなかったが < 余暇時間の少なさ>は< 夫の理解のなさ> < 夫との価値観の違い>との関連を示していることから 夫とのコミュニケーションをもち夫婦間の理解を深めることで緩和させることが可能であると推測される 余暇活動 は 夫からのサポート ソーシャルサポート < 友人関係 >によって支えられ 夫への感謝 につながっていた また 余暇活動 は 母親の語りから 成長欲求 や 達成欲求 を満たすことが可能であることが示された 本研究において 自己実現 を達成することが可能であるかは明らかにすることはできなかった しかし人間としての高次な欲求が 余暇活動 によって実現することが可能であったことが示された また 専業主婦の母親の 余暇活動 が有職の母親にとっての 仕事 のはたらきは 完全に一致することはないが 家庭以外のコミュニティを築き 短時間ではあるが一時的な家事 育児からの解放があり 自分の成長につながるという点で類似性がみられた ただし 仕事 における 自身の収入を得る 責任や生産性という点は専業主婦の母親の 余暇活動 とは異質のものであった 専業主婦の母親にとって自己実現が困難と言われる由縁は 母親が子どもを含めた 家庭 に尽くす 母親性 にあると考えられるが 現状を受け入れることや課題をクリアしていく向上心が自己実現のための大切な行動である 専業主婦の母親において自己実現は困難であるが 余暇活動 をはじめ 自らの課題を楽しみながらこなすことで日々の生活の中でモチベーションを保っていくことが自己実現の第一歩となり このような認知は長期にわたり作用すると考えられる

6 引用文献 参考文献 荒牧美佐子 無藤隆. 育児への負担感 不安感 肯定感とその関連要因の違い : 未就学児を持つ母親を対象に. 発達心理学研究, 19, 87 97, 平山順子. 家族を ケア するということ : 育児期女性の感情 意識を中心に. 家族心理学研究, 13, 29 47, 平山順子, 柏木恵子. 女性の生き方満足度を規定する心理的要因 今, 女性の しあわせ とは?. 発達研究, 19, , 柏木恵子, 高橋惠子, 阿部彩, 金田利子, 小倉千加子, 根ヶ山光一. 乳幼児が育つための条件とは何か?( 自主シンポジウム ). 日本教育心理学会総会発表論文集, (52), 98-99, 2010 加藤悠 中島美那子. 母親の自尊感情と養育態度. 茨城キリスト教大学紀要,45, , 木下康仁. ライブ講義 M GTA 質的研究法修正版グラウンデットセオリーアプローチのすべて. 第 1 版 5 刷, 弘文堂, 桐野匡史 朴志先 近藤理恵 佐々井司 高橋重郷 中嶋和夫. 共働き世帯の父親の育児参加と母親の心理的 well-being の関係. 厚生の指標, 58(3)1 8, 黒澤泰. 共働き夫婦におけるスピルオーバーとコーピング 夫婦を分析単位とした視点から. 応用心理学研究, 37(1), 29 39, Mitscherlich,A Aul der Weg zur Vaterlosen Gesellshaft, Ideen zur Sozialpsychologie. R.Piper & Co. Verlag 小見山実 ( 訳 ). 父親なき社会 : 社会心理学的思考. 新泉社,1972. 中島久美子 高橋恵 國清恭子 新井忍 今関節子. 生後 6ヶ月児をもつ母親が認めた夫の父親行動. 群馬保険学紀要, 26, 19 26, 内閣府男女共同参画曲 ( 編 ). 男女共同参画白書 ( 平成 22 年版 ), 東京 : 中和印刷, 澤田足忠幸. 既婚女性の well-being と親となる意識の発達 夫婦関係との関連から. 家族心理学研究, 20(2), , 島田恭子 島津明人 川上憲人. 未就学児を持つ共働き夫婦におけるワーク ライフ バランスと精神的健康 1 年間の縦断データから. 厚生の指標, 59(15), 10 18, 2012.

man2

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