知的財産法の産業教育上の意義
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- すずり いりぐら
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1 知的財産論 茨城工業高等専門学校 2018 年度前期 6 月 15 日授業 担当櫻井博行 1
2 シラバス ( 第 9 週 ) 9 週商標制度 ( 商標法 ) 商標法上の商標 保護対象 商標登録制度の内容 商標の識別力 使用による識別力の獲得 立体商標 商標の類否 商品 役務の類否 登録要件 周知 著名商標の保護等について理解し これらについて説明ができる 前回 (8 週 ) の確認 8 週意匠制度 ( 意匠法 ) 画面デザインの保護 要旨変更 出願の分割 出願変更 意匠権 権利の利用 抵触 実施権 権利侵害 (37 条 ~41 条 ) 判定 審判 再審 訴訟等について理解し これらについて説明ができる 前回 (6 週 ) で説明不足となった意匠法固有の概念について組物の意匠 (8 条 ) 秘密意匠 (14 条 ) 関連意匠 (10 条 ) 部分意匠 (2 条 8 条 ) ( 既配の資料を参照しつつ ) 2
3 審判制度既習範囲 ( 特許 ) 説明の補充 (1) 3
4 審査前置 既習範囲 ( 特許 ) 説明の補充 (2) 審査前置 とは 拒絶査定不服審判の請求の際 ( 請求の日から 30 日以内 ) に補正がなされた場合には 審判に先立って 審査官に再審査させることをいう ( 特許法第 162 条 ) この再審査を 前置審査 という 審査官の拒絶査定に不服の場合には 出願人は拒絶査定不服審判を請求できる拒絶査定不服審判の請求がなされた場合には 審判官がその審理を行うのが原則しかし 拒絶査定不服審判を請求するとともに補正を行った場合 もとの審査官がその補正内容に基づいて審査を行えば 迅速に特許査定を行うことができる場合もあるそこで 補正があった場合には 一旦 審査官による前置審査を行うこととしている 前置審査の結果 特許できるものであれば 審査官は拒絶査定を取り消して特許査定を行う やはり特許できないものであれば 審判官の審理に移行する なお 審査前置制度は特許法にのみある制度で意匠法 商標法にはない 4
5 商標法上の商標商標法の目的 P65~ 商標とは商品やサービスにつける目印 ( 識別マーク ) のこと 商標法上の定義 ( 定義等 ) 第 2 条この法律で 商標 とは 人の知覚によつて認識することができるもののうち 文字 図形 記号 立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合 音その他政令で定めるもの ( 以下 標章 という ) であつて 次に掲げるものをいう 一業として商品を生産し 証明し 又は譲渡する者がその商品について使用をするもの二業として役務を提供し 又は証明する者がその役務について使用をするもの ( 前号に掲げるものを除く ) 2 前項第 2 号の役務には 小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする 3~6 項略 ( 目的 ) 第 1 条この法律は 商標を保護することにより 商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り もつて産業の発達に寄与し あわせて需要者の利益を保護することを目的とする 5
6 商標法上の商標 (2 条 1 項本文 ) p66 6
7 商標法上の商標 (2 条 1 項本文 ) p67 7
8 出願から商標権取得までの流れ (P79) P79 8
9 立体商標 法 2 条 1 項において 立体的形状 を導入した趣旨 ( 平成 8 年改正 ) 1 平成 8 年改正前の商標法においては 標章は平面的なものに限定され 立体的形状は商標の構成要素としては認められていなかった 2 しかし 現実の取引社会においては 例えば 店頭の広告用の人形や商品に付される立体物のような立体的形状であっても 平面的なものと同様に自他商品又は役務の識別標識として機能するにもかかわらず商標登録はできなかった ( 周知であることを条件として不正競争防止法によって保護されるにとどまっていた ) 諸外国では立体も商標としての登録が認められていた ( 商標制度の国際的調和の必要性 ) 3 上記の事情を背景に 平成 8 年改正で商標法 2 条 1 項において 商標を構成する標章に 立体的形状 を追加し 立体的形状や立体的形状と文字 図形 記号等の結合も商標を構成し得ることとした 9
10 立体商標の例 (1) 特許情報プラットフォームより 10
11 立体商標の例 (2) 大隈重信像 登録番号 第 号 権利者 学校法人早稲田大学 指定商品 指定役務 印刷物, 技芸 スポーツ又は知識の教授 etc ヤクルト ( 乳酸菌飲料 ) の包装用容器 登録番号 第 号 権利者 株式会社ヤクルト本社 指定商品 指定役務 乳酸菌飲料 11
12 商標法上の商標 ( イメージ : テキストの補足商標の使用対象 ) 12
13 商標法上の保護対象 ( 形式的には ) (1) 形式的な保護対象商標法上の商標そのもの 2 条 1 項この法律で 商標 とは 人の知覚によつて認識することができるもののうち 文字 図形 記号 立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合 音その他政令で定めるもの ( 以下 標章 という ) であつて 次に掲げるものをいう 一業として商品を生産し 証明し 又は譲渡する者がその商品について使用をするもの二業として役務を提供し 又は証明する者がその役務について使用をするもの ( 前号に掲げるものを除く ) 既出 13
14 商標法上の保護対象 ( 実質的には )& 商標の機能 (2) 実質的な保護対象 実質的な保護対象は 商標に化体した 業務上の信用 1 業務上の信用 とは グッドウィル (goodwill:1 好意 善意 親切心 2 店の信用 暖簾 ) 即ち 営業上の顧客吸引力により形成される商品等に関する名声をいうものと解され それ自体営業と離れて独自の経済的価値を有するもの 2 業務上の信用 の商標への化体 (ⅰ) 商標の識別力 ( 識別力を有すること ) 自他商品 ( 役務 ) の識別がその本質的機能 (ⅱ) 商標が使用されること ( 使用とは : 次の駒 ) 商標の機能 (P69) 1 商品又は役務の出所を表示する機能 ( 出所表示機能 ) 2 商品の品質又は役務の質を保証する機能 ( 品質保証機能 ) 3 商品又は役務の広告的機能 ( 広告機能 ) 14
15 商標の使用 P69 商標の使用とは商標の使用とは標章 ( マーク ) を用いて 以下の行為を行うことをいう ( 商標法第 2 条第 3 項 ) 15
16 商標の類否 13 要素の比較 ⅰ) 外観 ( 見た目 ) ⅱ) 称呼 ( 読んだ場合の音 ) ⅲ) 観念 ( 商標から想起される考え ) 2 取引の実情 の考慮商標の類否の判断に当たっては 1 で述べた外観 称呼 観念の対比において またこれに加えて 取引の実情を考慮される ( つまり 外観 称呼 観念の類否判断にあたっては取引の実情が考慮される ) 3 誤認混同のおそれ当該商品やサービスの需要者が 取引時に通常払う注意の程度が基準 大森林 という登録商標( 指定商品 : 石けん類 歯磨き等 ) と 木林森 という商標との類否最高裁判所第三小法廷平成 4 年 9 月 22 日判決 大森林 の楷書体の漢字から成る登録商標と 木林森 の行書体の漢字から成る商標は 全体的に観察し対比してみて 少なくとも外観 観念において紛らわしい関係にあり 取引の状況によっては 類似する関係にあるものと認める余地がある 16
17 最高裁判所第三小法廷 平成 4 年 9 月 22 日判決 17
18 商標登録出願第 5 条 商標登録出願 : 商標法 5 条 特許法 36 条 実用新案法 5 条 意匠法 6 条に相当 ( 商標登録出願 ) 第 5 条商標登録を受けようとする者は 次に掲げる事項を記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければならない 一商標登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所二商標登録を受けようとする商標三指定商品又は指定役務並びに第 6 条第 2 項の政令で定める商品及び役務の区分 2 次に掲げる商標について商標登録を受けようとするときは その旨を願書に記載しなければならない 一商標に係る文字 図形 記号 立体的形状又は色彩が変化するものであつて その変化の前後にわたるその文字 図形 記号 立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合からなる商標二立体的形状 ( 文字 図形 記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む ) からなる商標 ( 前号に掲げるものを除く ) 三色彩のみからなる商標 ( 第 1 号に掲げるものを除く ) 四音からなる商標五前各号に掲げるもののほか 経済産業省令で定める商標 3~6 項略 18
19 商標登録出願第 6 条 ( 一商標一出願 ) 第 6 条商標登録出願は 商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して 商標ごとにしなければならない 2 前項の指定は 政令で定める商品及び役務の区分に従つてしなければならない 特許法 37 条 実用新案法 6 条 意匠法 7 条に相当 商標法施行令 ( 昭和三十五年三月八日政令第十九号 ) ( 商品及び役務の区分 ) 第二条商標法第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分は 別表のとおりとし 各区分に属する商品又は役務は 千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十七年五月十三日にジュネーヴで改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正された標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関する千九百五十七年六月十五日のニース協定第一条に規定する国際分類に即して 経済産業省令で定める 19
20 商標登録出願 ( 商品 役務の類否 ) 政令で定める商品の区分 別表 ( 第二条関係 ) 第一類 第二類 第三類 第四類 第五類 第六類 第七類 第八類 第九類 工業用 科学用又は農業用の化学品 塗料 着色料及び腐食の防止用の調製品 洗浄剤及び化粧品 工業用油 工業用油脂 燃料及び光剤 薬剤 卑金属及びその製品 加工機械 原動機 ( 陸上の乗物用のものを除く ) その他の機械 手動工具 科学用 航海用 測量用 写真用 音響用 映像用 計量用 信号用 検査用 救命用 教育用 計算用又は情報処理用の機械器具 光学式の機械器具及び電気の伝導用 電気回路の開閉用 変圧用 蓄電用 電圧調整用又は電気制御用の機械器具 以下略 20
21 商品 役務の類否 ( 肯定事例 ) 商品 役務の類似性の基本的な考え方 1 取引の実情を考慮し 2 当該商品 当該役務に当該標章を付した場合 3 出所の混同が生じるか否か 類似性が肯定された事案 ヴィラージュ白山 事件 ( 東京地裁平成 11 年 10 月 21 日判決 ) 分譲マンションの販売 ( 株式会社プロパスト ) にあたり ヴィラージュ白山 とする標章を 表示板 立看板 チラシ等に付して 販売した行為と 登録商標 ( 住友不動産株式会社 ) ヴィラージュ の指定役務である 土地の売買 建物の売買 との類否が争点 裁判所は 建物の売買 という役務と 建物 という被告の商品の間では 役務提供の主体が商品販売の主体でありと認識され 通常需要者も一致するから 出所の混同を招くおそれがあるという理由で 類似性を肯定 21
22 商品 役務の類否 ( 否定事例 ) (500) 商品及び役務の区分の数 1 (511) 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務 第 9 類 CCD カメラ ドーム型 CCD カメラその他のビデオカメラ, ビデオカメラ用交換レンズ,AC アダプター,DC プラグ, マイクロフォン, コネクター, ケーブル,CCD カメラの附属品, その他の電気通信機械器具 国際分類第 7 版 (210) 出願番号 商願 (T ) (220) 出願日 平成 12 年 8 月 10 日 ( ) (732) 商標権者 識別番号 氏名又は名称 ワテック株式会社 登録番号 号 (450) 発行日 平成 13 年 10 月 2 日 ( ) 公報種別 商標公報 (111) 登録番号 商標登録第 号 (T ) (151) 登録日 平成 13 年 8 月 31 日 ( ) (540) 登録商標 22
23 商品 役務の類否 ( 否定事例 ) 裁判所の判断 指定商品中の商品に該当するか否かの判断例 CCD カメラ事件 ( 東京地裁平成 15 年 12 月 10 日判決 ) 原告 : ワテック株式会社 1 被告商品の用途は主として業務用であって 一眼レフカメラ デジタルカメラ等の写真機械器具が一般の消費者を需要者とするのと異なる 2 写真機械器具と被告商品とは製造業者も異なる 3 写真機械器具を扱っている店舗でも 特に大型の店舗でない限り 一般的には監視用 CCD カメラを扱っておらず 販売経路が異なる 4 大型店舗においても 監視用 CCD カメラと写真機械器具の売り場は異なる 23
24 商標登録の要件 (3 条 ) 一般的登録要件 ( 商標登録の要件 ) 第 3 条自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については 次に掲げる商標を除き 商標登録を受けることができる 一その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標二その商品又は役務について慣用されている商標三その商品の産地 販売地 品質 原材料 効能 用途 形状 ( 包装の形状を含む 第 26 条第 1 項第 2 号及び第 3 号において同じ ) 生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴 数量若しくは価格又はその役務の提供の場所 質 提供の用に供する物 効能 用途 態様 提供の方法若しくは時期その他の特徴 数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標四ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標五極めて簡単で かつ ありふれた標章のみからなる商標六前各号に掲げるもののほか 需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標 2 前項第 3 号から第 5 号までに該当する商標であつても 使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては 同項の規定にかかわらず 商標登録を受けることができる 24
25 商標登録の要件 (3 条 ) 商標登録を受けることができない商標 P71 25
26 3 条 2 項による登録例 P71~73 26
27 商標登録の要件 (4 条 ) 不登録事由 ( 商標登録を受けることができない商標 ) 第 4 条次に掲げる商標については 前条の規定にかかわらず 商標登録を受けることができない 一国旗 菊花紋章 勲章 褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標二パリ条約 (1900 年 12 月 14 日にブラッセルで 1911 年 6 月 2 日にワシントンで 1925 年 11 月 6 日にヘーグで 1934 年 6 月 2 日にロンドンで 1958 年 10 月 31 日にリスボンで及び 1967 年 7 月 14 日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する 1883 年 3 月 20 日のパリ条約をいう 以下同じ ) の同盟国 世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章 ( パリ条約の同盟国 世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く ) であつて 経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標三国際連合その他の国際機関 ( ロにおいて 国際機関 という ) を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標 ( 次に掲げるものを除く ) イ自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものロ国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの以下略 27
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