ける臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にして協力体制を整えることで 病棟 全体で学生指導に携わるという実習環境を整えることができると考え 実践計画を立案す ることとした II. 計画内容 1. 目的臨床実習指導における臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にし 臨床実習指導体制を整える

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1 臨床実習指導体制を整える取り組み ~ 臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担の明確化を目指して ~ 札幌市病院局市立札幌病院永森亜紗美 I. 動機 背景今回 看護学教育指導者研修に参加し 看護師の人材育成が必要不可欠であることや 実習指導においては 社会の動向や背景を踏まえて現代の若者の特徴を理解していくことが大切であることを学んだ また 当院では 看護職員職務基準 で 後輩 学生の指導 育成に積極的に携わり自己成長につなげる と定めていることを再確認した 新井ら 1) は 病棟スタッフや教員などと協力し 一つのチームとして実習指導をすることが必要 と述べている また 井上ら 2) は 実習指導は看護の質向上をもたらす重要な業務の一つであることを病棟管理者 スタッフ全員が認識し 実習指導者が動きやすい体制づくりを検討することが重要である と述べている 以上のことから 当病棟の臨床実習指導体制を整えることによって 臨床実習指導者と病棟看護師が互いに協力し合い 病棟全体で学生を育てるという雰囲気作りを目指す必要があると考えた 当病棟は現在専任制の指導体制をとっており 看護系大学 1 校の初期 基礎 Ⅰ Ⅱ 成人 Ⅰ Ⅱ ヘルスマネジメント実習を受け入れている 臨床実習指導者( 以下 指導者とする )3 名 ( 例年 2 名 本年度は本研修参加のため 1 名増員 ) が それぞれ 1~2 週間単位で学生指導を担当している 私は指導者の立場にあり学生指導にあたってきたが 本研修を受ける以前から 病棟看護師 ( 以下 スタッフとする ) にも役割モデルとして学生と積極的に関わってほしいと考えていた 今回の研修参加に向けて スタッフの実習指導に対する認識を把握するため質問紙調査を実施したところ 約 7 割のスタッフが 実習指導で困った経験を持っており その中でも 学生に何をどこまで教えて良いかわからない という意見が多数あった また 約 6 割のスタッフが 実習開始時に実習要項を読んでおらず どこに置いてあるかわからない 指導者に任せているから重要視していない 意識が低く関心が薄かった 等があった その他の意見では その日の受け持ち看護師の業務と指導者の介入部分がわかりにくいことがあった 等があった この結果から 指導者とスタッフの役割分担が明確になっていなかったことで スタッフが学生にどう関わってよいかわからず困惑していたことや スタッフは自分が学生と関わるという意識が低く 実習指導に対する興味 関心が低かったことが明らかとなり 指導者としての自分の調整不足を痛感した そのため 指導者とスタッフの役割分担を明確にして協力体制を確立すること スタッフに学生の特徴や実習指導の成果を伝え実習指導に対する興味 関心を持ってもらうことで これらの課題が解決され 互いに協力し合い病棟全体で学生を育てるという環境を整えることができると考えた そこで まずは スタッフにも実習指導における役割を認識してもらい 意欲的に実習指導に関わってもらう必要があると考えた 臨床実習指導にお 1

2 ける臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にして協力体制を整えることで 病棟 全体で学生指導に携わるという実習環境を整えることができると考え 実践計画を立案す ることとした II. 計画内容 1. 目的臨床実習指導における臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担を明確にし 臨床実習指導体制を整える 2. 目標 (1) 臨床実習指導における臨床実習指導者と病棟看護師の役割分担が明確になる (2) 臨床実習指導者と病棟看護師が それぞれの役割を理解して実習指導に臨むことができる 3. 方法看護部教育担当 病棟師長に実践計画内容について報告し 承諾を得る ( 目標 1 に対して ) 1. 病棟の臨床実習指導者会議を開催 (8~9 月 ) 病棟の臨床実習指導者を対象とし 以下の内容を検討する ( 意見がまとまらなかった場合は 複数回開催する ) (1) 役割分担の明確化を図る 1 スタッフへの質問紙調査結果や指導者間の意見交換から 指導者の役割を明らかにする 2 実習記録に関して 指導者がどこまで指導していたか どこまで介入するべきだと思っているのかを確認し 指導者の介入部分を共通認識する 不明な点は教員に確認する それを基に 学生の記録を読む時間の確保について スタッフに協力を依頼する 3 スタッフの役割を明らかにする その際の注意点や留意点 実習指導がスタッフの自己成長につながることも明示する ( 目標 2 に対して ) 2. 指導者間で 実習要項 ( 実習目的 目標 ) の提示方法を検討し スタッフに周知する 3. 伝達講習の開催 (2 回 ) 病棟看護師全員を対象とし 8 9 月に 30 分程度ずつ行う 参加できなかったスタッフへは 資料を配布して個別に説明する それぞれの伝達講習終了後 役割が理解できたか 実践できそうか の項目を含めた質問紙調査を実施し 伝達講習内容の理解度を評価する 評価方法 1) 目標 1 に対しては 臨床実習指導者が 方法 1 を実施できたかどうかで評価する 2

3 対象 : 病棟の臨床実習指導者方法 : 臨床実習指導者会議で 役割分担を明確にし スタッフに提示できたかを評価する 2) 目標 2 に対しては 病棟スタッフへの質問紙調査結果で評価する 対象 : 新人 師長を除く病棟看護師方法 : 伝達講習終了後 全実習終了後の 11 月 11 日 ~2 週間で質問紙配布 留め置き法で回収 集計結果を 12 月の病棟会で報告する 内容と目標達成指標 1 実習開始時 実習要項を読んだか 2 実習指導における臨床実習指導者と病棟看護師の役割を理解して 実習指導ができたか 3 学生の実習目標や学生の特徴を理解して 実習指導ができたか 4 以前と比較して 実習指導に興味 関心が持てたと思うか 5 実習指導のポイントを理解して実践できたか 6 実習指導が スタッフの自己成長につながることが理解できたか 1は 読んだ人が増加したら 2~5は できた が 6 割以上で目標達成とする ( 当病棟の指導者経験者が全体の 3 割であるため その倍の 6 割を目標値と設定した ) 実習指導で困ったことがあったか : 困ったことがあった の割合が減少したら また記述内容の分析を行い 研修前質問紙調査結果で多かった 役割分担が不明確なことにより 何をどのように教えて良いかわからなくて困った という内容の記述が減少したら 目標達成とする 倫理的配慮対象者に 実践計画の趣旨 内容を口頭または文書で説明し 同意が得られた者に実施する 質問紙調査では個人が特定されないこと 研修の成果報告会で発表することを文で説明し 質問調査紙の提出を持って同意を得たものとする III. 実践した内容とその成果 1. 病棟の臨床指導者会議の開催 (8 月 ) 実習の進め方についての意見交換や 不明部分の確認を行った ここで 学生の実習記録への介入方法に相違があることが明らかとなったため 大学の指導者会議の際に 実習指導担当教員と打ち合わせを行い 実習中の記録の介入部分について確認し 共通認識した また 当院の 臨床指導者推薦基準 を基に指導者の役割を明らかにし 病棟看護師については 当院のクリニカルラダーを参考に レベル別到達目標に合わせて 実習指導における役割を明確にし 明文化した 2. 実習要項の提示方法とスタッフへの周知大学から配布されている実習要項の簡易版を提示した また 学生に自己紹介カード ( 氏 3

4 名 所属 似顔絵 実習の自己目標 ) を記入してもらい 病棟の連絡ノートとは別に 実習要項と自己紹介カードを一緒に提示した 朝礼の際にスタッフに読むように声かけし 読んだスタッフにはサインしてもらうように名簿を貼って個別にも促した 3. 伝達講習の開催伝達講習は 病棟会議での時間確保が困難だったため 時間と内容を再検討し日勤のカンファレンス時間内の 30 分で各チーム 1 回ずつ行った 10 月下旬から 3 週間行われた成人看護学実習 Ⅰに合わせ 10 月に開催した 伝達講習の目標 (1) 看護師として教育的役割を担っていることを理解できる (2) 実習指導における自己の役割 指導方法の実際を理解できる 伝達講習の内容 (1) 研修前のアンケート結果について (2) 看護師の人材育成の必要性について (3) 看護師としての教育的役割について ( 病院の教育機関としての役割 ラダー別の役割 看護を見せる役割モデル ) (4) 指導者と病棟看護師の役割分担について (5) 実習指導における学生理解の必要性について 伝達講習後の評価 伝達講習の参加者は 11 名で 講習後のアンケートで 指導者の役割が理解できた は とてもそう思う が 7 名 どちらかといえばそう思う が 4 名だった 病棟看護師の役割が理解できた は とてもそう思う が 6 名 どちらかといえばそう思う が 5 名で 役割分担が理解できたという結果であった 伝達講習の不参加者へは 資料を配布し声をかけたが 詳しい説明まではできず スタッフ個人に任せる形となった 4. 評価クリニカルラダー別の役割分担にしたため 新人も含めて質問紙調査を実施した 今回は 10 月下旬から 3 週間行われた成人看護学実習 Ⅰを対象とした 1 実習要項を読んだ 81% 2 実習における指導者と病棟看護師の役割を理解して実習指導ができたか 65% 3 学生の実習目標や学生の特徴を理解して実習指導ができたか 50% 4 以前と比較して 実習指導に興味 関心が持てたと思うか 58% 5 実習指導のポイントを理解して実践できたか 75% 6 実習指導がスタッフの自己成長につながると感じたか 91% 7 実習で困ったと感じたことがあった 17% 調査参加者は 26 名で 看護師経験年数は 1~5 年が 10 名 6~10 年が 6 名 11~15 年 4

5 が 7 名 16 年以上が 3 名 臨床指導者経験者は 9 名であった 1は 研修前の質問紙調査で 36% が 81% と上昇し 読むように促され興味を持った との意見もあり 指導者の声かけが有効であったと評価できる また 実習要項と学生の自己紹介カードを一緒に提示したことで カードに興味を持ち自ら進んで読んでいるスタッフもおり 学生に関心を持ってもらうことに効果的であったと考える また 学生からは 色んな看護師さんがカードを確認していたことで 私達のことを分かってくれていたと感じ 安心して実習できた や 看護師さんに顔を覚えてもらえたことや さんの受け持ちの学生さんですよね と声をかけてもらえたのでよかった という意見があり スタッフ 学生相互の関係形成に有効であったと考える 2は 伝達講習で意識付けされたと思う という意見の反面 日勤で受け持った時に役割の違いを意識することはなかった との意見もあり 実践には結び付きにくかったと評価できる 実習中は スタッフが役割を覚えていないことも多く ラダーレベルに合わせて 援助を一緒に行って振り返りまでしてほしい 見学だけさせてもらって振り返りは指導者で行う というように 役割分担を伝えるように心掛けていたが 不十分な部分もあった 今後も役割分担を浸透させ 実践できるように継続が必要である 6は 教えたり説明したり学生から引き出したりすることで 自己の知識や看護観を明らかにできる 等の意見があり 実習指導が看護師としての成長につながっていると再確認できた 7は 研修前の調査では約 7 割であったのに対し 今回は 17% と減少した 約 7 割が 指導者から学生指導のポイントや一緒にケアをする上での注意点を伝えられた と答えており その関わりが有効であったと評価できる 一方で どこまで伝えて良いかわからなかった という意見もあり 今後も継続した関わりが必要である 3と4は目標値以下で ほとんど関わる機会がなかった 実際に部屋持ちをしながら学生と関わると 学生の目標などを考えながら関わっていることが少ない という意見があった これは 学生との関わりが少ないこと 日々の日勤業務が多忙で 役割を理解はしていても実践に移せなかったことが要因と考えられる 以上のことから 今回の実践計画内容では スタッフの実習指導に対する興味 関心の変化までには至らなかったと評価できる 3 週間の実習でしか評価できなかった IV. 今後の課題多忙や学生と関わる機会が少ないため 実習における役割意識が低下しているスタッフがいることを再確認できた 病棟全体でスタッフと学生が関われるように 業務調整や協力体制を整えていく必要がある 今後も取り組みを継続し 今回明らかにした役割分担を実践できるように具体化していきたい 5

6 引用文献 1) 新井恵津子ら : 臨地実習指導者のあり方 臨地実習指導の困難感から考える 第 37 回日本看護学会論文集看護教育 P 年 2) 井上留実ら : 実習指導者の実習指導に前向きに取り組むための課題 実習指導の原動力となる思いを通して 第 41 回日本看護学会論文集看護教育 P 年 6

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