変化という評価項目については 血中濃度に関連した閾値現象であること に基づいてい る AEGL-1 値の導出は 健常被験者に1 時間曝露して影響が認められなかった濃度である8,000 ppm(emmen et al. 2000) に基づいた この濃度では 肺機能 呼吸パラメータ 眼 ( 刺激 ) 循

Transcription

1 急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL) HFC 134A ( ) ハイドロフルオロカーボン -134a Table AEGL 設定値 HFC 134A (Final) ppm 10 min 30 min 60 min 4 hr 8 hr AEGL 1 8,000 8,000 8,000 8,000 8,000 AEGL 2 13,000 13,000 13,000 13,000 13,000 AEGL 3 27,000 27,000 27,000 27,000 27,000 設定根拠 ( 要約 ): ハイドロフルオロカーボン-134a(HFC-134a) 別名 1,1,1,2-テトラフルオロエタンは 完全ハロゲン化クロロフルオロカーボンよりも大気中の滞留時間が短く オゾン層破壊係数が小さいことから その代替品として開発された HFC-134aは 冷却設備や空調設備で使用される他 ポリウレタンフォームの発泡剤や 医療用エアロゾルの噴霧剤としても使用されている 年間生産量は 175,000トンと推定される HFC-134aは ほとんどの人に気づかれない かすかなエーテル臭がある無色の気体である HFC-134aは 非常に低い急性吸入毒性がある 吸収 排泄ともに速やかであるが 吸収率は低く ほとんどは未変化のまま呼気中に排泄される HFC-134aの急性吸入の影響が ヒトおよび数種の動物 ( サル イヌ ラット マウス ) で報告されている 対照試験による吸入データが 健常被験者 呼吸器疾患患者のいずれについても かなり多く得られている また 反復曝露 慢性曝露 遺伝毒性 発がん性 神経毒性 および心臓の感受性の変化に関して 各試験データも得られている ハロゲン化炭化水素は 高濃度では不整脈を引き起こす可能性があり AEGL 値の設定に当たっては この点を考慮した 3つのレベルのAEGL 値を導出するのに必要なデータは十分に得られたが 曝露の濃度 - 時間関係を決定づけるのに必要なデータは 十分に得られなかった 同じレベルのAEGL 値は いずれの曝露時間についても同じ濃度とした これは (1) ヒトにおいて血中濃度は速やかに平衡状態に達し 代謝や組織への取り込みは無視できること および (2) 心臓の感受性の 1

2 変化という評価項目については 血中濃度に関連した閾値現象であること に基づいてい る AEGL-1 値の導出は 健常被験者に1 時間曝露して影響が認められなかった濃度である8,000 ppm(emmen et al. 2000) に基づいた この濃度では 肺機能 呼吸パラメータ 眼 ( 刺激 ) 循環系への影響は認められてなかった この濃度は 動物試験で何らかの有害な影響が引き起こされた濃度よりかなり低いため 種内不確実係数として1を適用した 種内不確実係数 1の妥当性は 重度の慢性閉塞性肺疾患患者 および成人と小児の喘息患者を対象に 噴霧剤としてHFC-134aが含まれている定量吸入器を用いて行われた治療試験で 有害な影響が認められなかったことによって裏付けられる この試験では曝露開始から55 分間で血中濃度が平衡状態になったことと 影響の出現が血中濃度に左右されることから すべての曝露時間についての値を等しく8,000 ppmとした AEGL-1の各曝露時間の値を8,000 ppmとしたことの妥当性は かなり高い濃度で吸入曝露させた実験動物に 有害な影響が認められなかったことによって裏付けられる 81,000 ppmで4 時間曝露したラット (Silber and Kennedy 1979) でも 50,000 ppmまたは100,000 ppmで1 日 6 時間反復曝露したラットでも 有害な影響は認められていない 種間および種内不確実係数としてそれぞれ3を適用して得た総不確実係数 10で81,000 ppmという値を補正すると ヒトのデータに基づいたAEGL-1 値と実質的に同じ濃度 (8,100 ppm) が得られる AEGL-2 値の導出は イヌにおける心臓の感受性の変化に関する無影響濃度である40,000 ppm(hardy et al. 1991) に基づいた イヌを用いた心臓感受性モデルは ヒトのモデルとして適切であると考えられる そのため 種間不確実係数として1を適用した 外因性エピネフリンに対する反応の最適化に伴って心臓感受性試験の感度が高くなるため 感受性の高い人のことを考慮して 種内不確実係数として3を適用した 心臓の感受性変化は濃度依存性であり 曝露時間はこの作用が発現する濃度に影響しない HFC-134aによる心臓の感受性の変化においては 循環血中最高濃度が決定的因子であり 曝露時間は重要性が低いため 得られた値 (13,000 ppm) を すべての曝露時間についての値とした AEGL-3 値は Hardyら (1991) の試験で イヌに顕著な心臓毒性が認められたが死亡はみられなかった濃度 (80,000 ppm) に基づいた イヌを用いた心臓感受性モデルは ヒトのモデルとして適切であると考えられるため 種間不確実係数として1を適用した エピネフリンに対する反応の最適化に伴って心臓感受性試験の感度が高くなるため 感受性の高い人のことを考慮して 種内不確実係数として3を適用した 心臓の感受性変化は濃度依存性であり 曝露時間はこの作用が発現する濃度に影響しない HFC-134aによる心臓の感受性変化においては 循環血中最高濃度が決定的因子であり 曝露時間は重要性が低いため 得られた値 (27,000 ppm) を すべての曝露時間についての値とした Tableに AEGL 値をま 2

3 とめて示す 注 : 本物質の特性理解のため 参考として国際化学物質安全性カード (ICSC) を添付する 3

4 国際化学物質安全性カード 1,1,1,2- テトラフルオロエタン 1,1,1,2- テトラフルオロエタン 1,1,1,2-TETRAFLUOROETHANE HFC 134a ( 圧力容器 ) C 2 H 2 F 4 分子量 : CAS 登録番号 : RTECS 番号 :KI 国連番号 :3159 災害 / 暴露のタイプ 火災 爆発 身体への暴露 吸入 皮膚 眼 経口摂取 一次災害 / 急性症状 不燃性 火災時に刺激性もしくは有毒なフュームやガスを放出する 予防 裸火禁止 高温面との接触禁止 めまい 嗜眠 感覚鈍麻 局所排気または呼吸用保護具 応急処置 / 消火薬剤 周辺の火災時 : 適切な消火手段を用いる 火災時 : 水を噴霧して圧力容器を冷却する 新鮮な空気 安静 医療機関に連絡する 液体に触れた場合 : 凍傷 保温用手袋 凍傷の場合 : 多量の水で 洗い流し 衣服は脱がせな い 安全ゴーグル 漏洩物処理貯蔵包装 表示 液体に向けて水を噴射してはならない この物質を環境中に放出してはならない 自給式呼吸器付化学保護衣 耐火設備 ( 条件 ) 換気のよい場所に保管 国連危険物分類 (UN Haz Class):2.2 重要データは次ページ参照 Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the Commission of the European Communities IPCS CEC 1993

5 国際化学物質安全性カード 1,1,1,2- テトラフルオロエタン 物理的状態 ; 外観 : 特徴的な臭気のある 圧縮液化ガス 暴露の経路 : 体内への吸収経路 : 吸入 重要デ タ 物理的危険性 : 化学的危険性 : 高温面や炎に触れると分解して 有毒で腐食性のフュームを生成する 許容濃度 : TLV は設定されていない MAK:1000 ppm, 4200 mg/m 3 ; Peak limitation categoryピーク暴露限度カテゴリー :II(8); Pregnancy risk group 妊娠中のリスクグループ :C (DFG 2004) ( 訳注 : 詳細は DFG の List of MAK and BAT values を参照 ) 吸入の危険性 : 容器を開放すると 空気中でこの気体はきわめて急速に有害濃度に達する 短期暴露の影響 : この液体が急速に気化すると 凍傷を起こすことがある 中枢神経系 心血管系に影響を与え 心臓障害を生じることがある 長期または反復暴露の影響 : 物理的性質 沸点 :-26 融点 :-101 水への溶解性 : 溶けない 蒸気圧 :630 kpa(25 ) 相対蒸気密度 ( 空気 =1):3.5 log Pow ( オクタノール / 水分配係数 ): 1.06 環境に関するデータ 通常の使用法でも環境中へ放出される 不適切な廃棄などによるさらなる放出を避けるよう十分注意すること 注 火や高温面の近くで または溶接作業中に使用してはならない 圧力容器が漏出しているときは 気体が液状で漏れるのを防ぐため 洩れ口を上にする Transport Emergency Card( 輸送時応急処理カード ):TEC(R)-20G2A 付加情報 作成日 : IPCS, CEC, ,1,1,2- テトラフルオロエタン 国立医薬品食品衛生研究所