研究論文 動的粘弾性による新しい架橋型熱可塑性エラストマーの評価方法の検討 眞中将一 1,2* 岩淵龍之介 2 柏原祐里子 1 小薬次郎 1 上原宏樹 2 2 山延健 New Testing Method for the Thermoplastic Vulcanization Processing

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1 研究論文 眞中将一 1,2* 岩淵龍之介 2 柏原祐里子 1 小薬次郎 1 上原宏樹 2 2 山延健 New Testing Method for the Thermoplastic Vulcanization Processing Analysis by Dynamic Viscoelastic Properties Masakazu MANAKA 1,2*, Ryunosuke IWABUCHI 2, Yuriko KASHIHARA 1, Jiro KOGUSURI 1, Hiroki UEHARA 2 and Takeshi YAMANOBE 2 ( 1 Material Development, kinugawa Rubber Industrial Co.,Ltd., 33 Naganuma-cho, Inage-ku, Chiba-shi, Chiba 263-5, Japan, 2 Gunma University, Tenjin-cho, Kiryu, Gunma , Japan) Masakazu. Thermoplastic elastomer (TPE) produced by dynamic vulcanization which is one of the reactive processing is generally called thermoplastic vulcanization (TPV). It is considered that, in the mixing process of TPV, the crosslinke reaction and the EPDM dispersion in PP proceeds simultaneously. Therefore, the phase structure of TPV is complex and it is very difficult to analyze the kneading states. Since the slight difference of kneading states is known to lead to the large differences in the physical properties such as the extrusion processability and the surface appearance of the products, the conventional and exact testing methods to estimate TPV kneading state is required at TPV mixing plant. It was found that an apparent activation energy (E a ) calculated from the temperature dependence of dynamic viscosity modulus is an effective index for measuring the degree of crosslink. Also the degree of EPDM dispersion was quantified by dynamic elasticity modulus change ratio (G r ) between G* at the strain of 2% and 1%. These indices can be calculated simply and easily from dynamic viscoelastic results and can be applied to estimate the kneading state of the TPV compound. (Received on October 18, 216) (Accepted on February 1, 217) Key Words:Thermoplastic Elastomer, Dynamic Vulcanization, Reactive Processing, Thermoplastic Vulcanization, Mixing Process, Extrusion Processability, Activation Energy, Dynamic Viscoelastic properties 1. 緒言架橋型熱可塑性エラストマー :TPV(EPDM/PP 系 ) は, 弾性を有すると共に, リサイクルも可能であることから, 自動車用ガラスランをはじめ, 使用が拡大されてきている.TPVの構造は, 分散相からなる架橋ゴム (EPDM) と連続相からなる樹脂 (PP) から形成されていることが知られている. その連続相は, 脆性を示す堅い樹脂であるにもかかわらず, 高いゴム状弾性や高い延伸性を示すことから, その物性発現機構の解明は, 今日まで研究課題となっている 1). TPVは, 主に, 動的架橋というリアクティブプロセッシングによって, 製造される. 動的架橋とは, 熱可塑性樹 脂とゴムを溶融混練りすると同時に, せん断下で, ゴムを架橋するプロセスである 2-4). その混練り過程において架橋前には連続相であるEPDMにPPが分散相として存在しているが, 動的架橋反応により,EPDMとPPの相反転がおこり,PP 中へのEPDMの分散とEPDM 架橋反応が同時進行していると報告されている 5).TPV の物性は EPDM の分散状態と架橋状態に影響されるため, 練りの進行に伴う分散状態, 架橋状態を確認することは品質制御において重要である. しかし, これら双方の構造変化の挙動が同時に起こるため, 練り品質の制御は複雑である. そのため, 練り進行過程における分散状態, 架橋状態の挙動はこれまでは, あまり研究されていない. 分散状態や架橋度を確認するためには顕微鏡観察, 分光 (9) 183

2 日本ゴム協会誌 学的分析が必要であるが, 試料調製や測定に時間がかかりすぎるために現実的ではない. 現状では練り工場では熟練技術者による色艶観察, 練りチャートによる要因管理, MFR 等の品質検査が行われているのが限界である. そのため, 現場でも品質管理のために適用可能な指標が必要である. 著者らは, 前報でカーボンブラック (CB) 配合系ゴム (EPDM) の練り状態評価方法として粘弾性評価指標 E a ( 見かけの活性化エネルギー ),G r ( 動的弾性率のひずみ依存保持率 ) が適切であることを報告した 6).E a は, 粘度の温度依存性を示す尺度であり,G r は, 動的弾性率の歪み依存性を示す尺度である. それぞれの指標は, ゴム練り過程におけるバウンドラバーの構造変化, そして,CBの分散性と相関が高く, 著者らは, 複雑なゴム練り状態を正確に把握できることを明らかにしてきた. 一方,TPV は, 分散相 ( 架橋 EPDM), 連続相 (PP) から形成される2 相系の混合体であることから, 同様に, 動的粘弾性の温度 歪みに対して, 個々に感度が高い構造因子が存在するのではないかと考えた. 以上のことから, 本研究では,TPV の練り状態の検査方法として, これら構造因子を動的粘弾性特性と関連付け, 新しい練り状態評価指標を考案することを目的とした 実験 2. 1 試料の調製調製した配合をTable 1 に示す. これは, 自動車用ウェザーストリップ用途の配合である. 用いたEPDMの含有量比はエチレン : プロピレン : ジエン= 67.:28.1:4.9 であり, ムーニー粘度 (ML1 + 4,125 )=6ムーニーである. パラフィンオイルの流動点, 動粘度はそれぞれ,- 12.5,6 mm 2 /s(4 ) である. カーボンブラックのよう素吸着量 (mg/g):23, 窒素吸着量 (m 2 /g):27,dbp 吸収量 (cm 3 /1g):16 である.EPDM/PPを同率配合し, 架橋剤として, ジメチルフェノール樹脂を使用した. 量産練り工程では, 二軸混練押出機を使用することが多い. しかしながら, 二軸混練押出機では, 資材分散から動的架橋まで短時間 (9 s 程度 ) で行われることから, 複数のサンプル採取を精度良く採取することは困難である. そこで, 試料の混練りは, これら Table 1 Recipe Ingredient phr EPDM 1 PP 1 Tin(I)chloride dehydrate 1 Stearic acid 3 Ground Calcium carbonate 1 Carbon black 1 Paraffin oil 13 Di-methyl phenol 5 の問題を回避するため, バッチ式の東洋精機製作所社製 B6(.6 L 接線式ミキサー ) を用いて行った.B6 の混練り条件としては, チャンバー温度 16 に設定し, 架橋剤以外の全資材を投入後 ( 充塡率 85%), ローター回転数 8 rpm で混練りを行い,4.8 分 ( 試料 P1),5.3 分 ( 試料 P2) の2つの条件で各混練りを行い, 試料を採取した. 次に, 同様の資材を混練りし,5.8 分で架橋剤を投入し, チャンバー温度 21, ローター回転数 1 rpmに制御し, 7.4 分 ( 試料 P3),8.8 分 ( 試料 P4),11. 分 ( 試料 P5) の 3 つの時間条件で各混練りを行い, 試料を採取した. それぞれの試料は, ミキサー練り完了直後に,8インチオープンロール (15 ±2に制御 ) を用いて1 mmシート状に成形して試料とした. 本実験では, ミキサー内の充塡率の変化による練り状態への影響を排除するために, 各時間の到達時点で練り機を止めて, 試料を採取するのではなく, 任意の時間毎に, それぞれ混練り後, 試料採取を行った. これにより, ミキサー充塡率への影響を無視できるようになった 測定方法 動的粘弾性測定アルファーテクノロジーズアクジション社製 RPA2を使用して測定した. 歪み振幅依存性の測定は, 温度 18, 周波数 1 rad/s, 歪み 1 ~ 3% とし, 動的弾性率 ( G * ) の振幅依存性を測定した. また, 温度依存性の測定条件は, 温度 18,2, 22, 周波数 5 rad/s, ひずみ 14% とし, 動的粘性率 ( η * ) の温度依存性を測定した 走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察試料は,p-キシレンでPPとパラフィンオイルを除去した各 TPV(de-PP P3,de-PP P4,de-PP P5) を用意した. パラフィンオイルとPPの除去は, 先ず, 各試料を11 ~ 12 の熱キシレンで1 時間加熱し, 次いで, 真空乾燥機に11 で1 時間減圧乾燥した. 表面観察は, 日立製 S-48 型走査型電子顕微鏡を用いて, 試料高さ3. mm ~ 8. mm,se(sencondary Electron) モードにて, 上下の検出器からの信号を混合して行った. 加速電圧は,.8 kv ~ 1 kv, エミッション電圧 1 μa であった. 尚, 試料は, カーボンテープで固定した EPDM 架橋度の測定各 TPV シートを約 7 mg に切り出し,11 ~ 12 の熱 p-キシレンで1 時間加熱した. 次に, 真空乾燥機に 11 で1 時間減圧乾燥した. 乾燥残渣の重量とPP 及び, 添加剤の重量を除いたEPDM 理論重量を用いて, 式 (1) よりEPDM 相の架橋度を求めた 7). EPDM 相の架橋度 (%) = ( 乾燥残渣重量 ) 1 (1) ( 処理前理論 EPDM 値 ) (1)

3 第 9 巻第 4 号 (217) 眞中将一 岩淵龍之介 柏原祐里子 小薬次郎 上原宏樹 山延健 パルス NMR の測定 JEOL 製 1 HパルスNMRスペクトロメーター (JNM- Mu25) を用いて, 室温にてパルスNMR 測定を行った. パルス系列は Carr Purcel Meiboom Gill(CPMG) 法, 測定核種は, 1 Hである. 得られたパルスNMRのFID 曲線は Exponential 関数仮定してフィッティングを行った 小角 X 線散乱測定 (SAXS) 室温でのEPDM 中に含まれる架橋構造を解析するため, SPring-8 BL4B2 シンクロトロン放射光源を用いて SAXS 測定を行った.X 線の波長は1.A,X 線エネルギーは 12.4 KeV, 散乱 q レンジは.244 ~.185 nm -1, ビーム径は.3 mm, 露光時間は.1 sで, コラーゲンを用いて算出したカメラ長は439 mmであった. また,CCDカメラにより得られた各試料の散乱パターンを切り出して解析した. 3. 結果と考察 3. 1 粘弾性の練り時間依存性 Figure 1に, 試料 P1からP5の歪み率 ( 対数 ) と複素弾性率 G * の関係を示す. 架橋剤投入前のP1,P2はG * が小さく, 歪みが増加しても複素弾性率は, ほとんど増加しない. これに対して, 架橋剤投入後の P3,P4,P5 では G * が P1,P2 に比べて大きく, 高歪み領域で複素弾性率が減少している. P1,P2では, 複素弾性率の歪み依存性がないことを考えると,P3,P4,P5 では架橋剤投入により,EPDM が架橋し, 高粘度化 高弾性化するに伴い,P1,P2に比べて構造が大きく変化したことを示している. 岡本, 井上らは EPDMの架橋により, 分散相がPPから架橋 EPDMへと相反転したと報告しており 5), このことがG * の変化に現れたと考えられる. 前報でCB 配合 EPDM 未加硫ゴムにおいて, 歪みの増加に伴ってG * は急激に減少していた. これに対してTPV (P3,P4,P5) では5% 程度までの低歪みまではG * はほとんど変化せず, それ以上の歪みでG * が徐々に減少して いる.CB 配合 EPDM 未加硫ゴムにおいては連続相が EPDMであり,TPVにおいては溶融したPPである. これに対して分散相はCB 配合 EPDM 未加硫ゴムではCB 凝集体 +バウンドラバーであり,TPVでは架橋 EPDMであり, この違いがG * の挙動に現れていると考えられる. 次に,Figure 2に, 任意の混練り時間で作製したP1からP5のTPVについて, 温度と複素粘性率 η * の関係を示す. 架橋剤投入後のP3は, 投入前のP1,P2よりも, 全温度領域で, 複素粘性率が上昇しており, 前報のCB 配合 EPDM 未加硫ゴムと同じ傾向である. これは,EPDM 架橋による増粘化挙動と考えられる. 次に, 前報で提案した粘弾性評価指標 E a,g r を算出して, 本粘弾性挙動を考察する 粘弾性特性の数値化動的弾性率 ( G * ) の歪み依存性を数値的に表現するために, 歪み2% の動的弾性率 ( G * ) を歪み率 1% の動的弾性率 ( G * ) で除した式 (2) を用いて, 動的弾性率 ( G * ) の歪み依存保持率 ( 以下 G r と略す ) を定義した. G(%)= G(2%) r 1 (2) G(1%) G(2%): 歪み2% の時の動的弾性率 (( G * )) G(1%): 歪み1% の時の動的弾性率 (( G * )) また,TPVの粘度の温度依存性を定量化するために, 片対数グラフ上の縦軸に対数目盛で温度の対数をプロットし, その傾きをもとに, アンドレードの式 (3) から見かけの流動の活性化エネルギー (E a ) を求めた. η=a e E a RT (3) η: 動的粘弾性 ( η * ), E a :( 流動の ) 見かけの活性化エネルギー,T: 温度,R: 気体定数今回使用した EPDM,PP では EPDM(E a :14.7 kj/ mol,g r :93.4%),PP(E a :12.4 kj/mol,g r :84.6%) である. Dynamic elasticity modulus( G* )/kpa Log(Strain/%) Figure 1 Strain dependence of dynamic elasticity modulus( G * ) for TPV compounds. P1. * P2. P3. P4. P5. Dynamic viscosity modulus ( η* )/kpa-s Figure 2 Temperature dependence of dynamic viscosity modulus ( η * )for TPV compounds. P1. * P2. P3. P4. P5. T/k (11) 185

4 日本ゴム協会誌 3. 3 動的粘弾性指標による TPV 練り状態評価 Figure 3 に, 各種 TPV(P1 ~ P5) の練り時間と G r 値の関係を示す. 図中の点線は, 架橋剤 ( ジメチルフェノール ) を投入した時間である. 架橋剤投入後のP3のG r 値は, 架橋剤投入前のG r 値 (P2) と比較し, 低下している. 更に, 動的架橋練りがP3,P4,P5と進行するに従い,G r 値は, 更に, 低下している. 前報のCB 配合系 EPDM 未加硫ゴムでは, 練り時間と共に,G r 値が増加していく傾向であった. しかしながら,TPV の G r 値は, 低下傾向であり, 反対の挙動を示す 6). 前報のCB 配合系 EPDM 未加硫ゴムでは,CBの分散による凝集構造の細分化で,G r 値が増加傾向にあると結論付けたが, 架橋前の TPV(P1,P2) では,CB のようなフィラーが少量しか配合されていないため, 歪み依存性が発現せず,G r 値が高値 (1% 近い ) であると考える. このことはTPVの系ではCBを加えているがCBとバウンドラバーによるネットワークは考慮する必要がないことを意味している. 架橋剤投入後のTPVでは, 分散相は, 架橋 EPDM 粒子であり, 練り時間と共に, 高歪み領域の複素弾性率が低下 (G r 値が低下 ) する. このことはTPVにおける架橋 EPDMによるネットワークの特徴を示していると考えられる. 連続相であるPPが溶融状態であるため高歪み領域でG * が低下するのは架橋 EPDMネットワークが破壊されることで連続相のPP の G * ( 歪み率 2% で 84.7 kpa) に近づくと考えれば解釈することができる. 実際に練りが進みゴム成分の分散が進むと歪み率 2% で kpa(p3), 18.4 kpa(p4),1. kpa(p5) と弾性率の低下することでG r 値が低下している. これに対してCB 配合系未加硫ゴムではCBとバウンドラバーによるネットワークであり, 加硫されていないので低歪み領域においても弾性率が低下すると考えられる. つまり,Figure 3の挙動はTPVにおける分散相間ネットワークの特徴であり, 練り時間が短い場合は分散相間の結びつきが強く, 長くなると弱くなると考えられる. Figure 4 に,TPV の練り時間と E a 値の関係を示す. 点線は, 架橋剤を投入した時間である. 架橋剤投入後の試料のE a 値は, 架橋剤投入前のE a 値と比較し, 大きく低下している. また, 架橋剤投入後, 動的架橋練りを更に進行させても, ほとんどE a 値は変化しない.PP,EPDM,P1,P2 は, 比較的, 高い E a 値であることから, 温度上昇に伴って粘度が容易に変化することを示している. したがって, 架橋剤投入後にE a 値が低くなり, 粘度の温度変化に対する感度が低くなるということは, 架橋 EPDM 成分が生成したためであると考えられる. つまり, 架橋反応によるEPDM 分子運動の低下が影響していると考えられる. 以上のことから, 練り状態の異なる試料の動的粘弾性測定において, 温度変化に感度がある構造因子と歪み変化に対して感度がある構造因子が異なることが示唆された. これらの粘弾性特性を個々に捕らえることで, 複雑な練り状態を正確に評価できると推定する. そこで, 著者らは, これら動的粘弾性特性 (G r,e a ) の変化の相違を解明する目的から, これらTPVの構造解析を行った 動的粘弾性特性と構造練り時間の異なるTPVの表面構造を観察するために SEM 観察を行った.p-キシレンを用いてパラフィンオイルと PP を除去した TPV(de-PP P3,de-PP P4,de-PP P5) の SEM 画像を Figure 5 に示す.SEM 画像の凸凹は, 架橋 EPDM 粒子の重なりと考えられ, 動的架橋練りの時間と共に, 架橋 EPDM 粒子は, 細かく, 均一化することが観察される.( 上段 ) また,TPV(de-PP P3,de-PP P4,de-PP P5) の観察倍率を高くしたSEM 画像をFigure 5の下段に示す. 高倍率で, 架橋 EPDM 粒子間の界面付近を観察すると, 複数のフィブリル状の構造が形成されていることがわかった. また, 練り時間が進むほど,EPDM 粒子サイズが小さくなると共に, その粒子間のフィブリルが短くなる傾向がある. 溶融した状態において, 試料の動的架橋練り過程のローターせん断力により, 架橋 EPDM 粒子が微細化する際, G r /% P2 P1 P3 P4 P5 Mixed materials Dynamic vulcanization Mixing time /s E a /kjmol P1 P2 P3 P4 P5 Mixed materials Dynamic vulcanization Mixing time /s Figure 3 The mixing time dependence of G r values at 18. Figure 4 The mixing time dependence of E a values. 186 (12)

5 第 9 巻第 4 号 (217) 眞中将一 岩淵龍之介 柏原祐里子 小薬次郎 上原宏樹 山延健 高弾性体であることから, 引っ張り合いながら, フィブリル構造を経て, 微細化が進行するものと推定する. 熱キシレンにより,PP 成分が除去されていることを考えると, これが架橋 EPDM 粒子間ネットワーク構造であると考えられる. これより, 動的架橋の練り時間に伴うG r 値の低下挙動 (Figure 3) は, 次のように解釈できる. 動的架橋初期は, 歪みの大小にかかわらず, 架橋 EPDM 粒子間ネットワークが強いためG r 値が全体的に高くなる. 動的架橋が進行すると, 架橋 EPDM 粒子が細分化し, 小サイズ化すると共に, 粒子間のネットワークが弱体化していく. このことで, 大振幅時の複素弾性率が減少し,G r 値は, 結果として練り時間と共に, 低下しているものと考えられる. また, 同一の練り状態の試料において, 小振幅領域では, フィブリル構造を伴ったEPDMの連続的な網状構造を保持しているため, 高い弾性を発現するが, 大振幅領域では, 接触しあっている粒子同士の結びつきが解れ, 網状構造を保てないことから, 弾性率が低下していると考えられる.Krulis の研究報告 9) では,EPDM/PP 系動的架橋生成物において, 架橋後弾性率のせん断速度の依存性の発現について,PP 連続相中に分散している架橋ゴムは, 個々の粒子が僅かに触れ合う状態になっており, 連続的な網状構造を有していると提唱している. また, 低せん断速度領域で高弾性を発現し, せん断速度の高速化に伴い, 網状構造が消失 ( 接触しあっている粒子同士の絡み合いが解れる ) し, 低弾性化していると仮説を打ち立てており, SEMで観察されたフィブリルの存在はこのことを裏付けている. また,CB 配合系未加硫ゴムではCBにバウンドラバーとして固定されてはいるが架橋されていないため弾性率自身は低く, これに比べてTPVの分散相は比較的, 高弾性体なネットワークを形成していると仮定すれば, 大変形を伴う高歪み領域に達しなければ, 練り時間による複素弾性率の差異が発現しにくいことも解釈できる 8). これら動的架橋練り過程における架橋 EPDMの構造変化について, 更に, 分子運動性の観点から, 検討するため, パルスNMRによる解析を行った. 測定結果を解析した結果, 分子運動性の高い (mobile) 成分, 運動性の低い (a) de-pp P3 (b) de-pp P4 (c) de-pp P5 1μm 1μm 1μm (d) de-pp P3 (e) de-pp P4 (f) de-pp P5 5μm 1.6μm 1.2μm Figure 5 SEM micrograph (rigid) 成分, 中間の (intermediate) 成分の 3 成分に分離することができた.P3,P4,P5のそれぞれの各成分の緩和時間は, ほとんど差異がなく,rigid 成分の緩和時間が約.2 ms,intermediate 成分が約 3 ms,mobile 成分が約 15 msであった. パルスモードがCPMG 法であることを考慮し, 分子運動性を考えると,rigid 成分はPP 非晶成分,intermediate 成分は PP/EPDM 界面および EPDM 架橋点付近,mobile 成分はEPDM 架橋点間分子および未架橋成分 1) であると考えられる.Figure 6 には,P3,P4, P5のTPVコンパウンドにおける各成分比率を示した. P3,P4,P5 の各成分を比べると intermediate と mobile 成分の割合は P3 < P4 < P5 であり,rigid 成分は P3 > P4 >P5となっている. つまり, 練り時間が長くなると試料全体の分子運動性が活発になり, 可塑化されていることを意味している.3 成分の中でもintermediate 成分が増加している.intermediate 成分の増加は EPDM/PP 界面の表面積増加を示しているものと考えられる. つまり, 練り時間が長くなるにつれ, 架橋 EPDM 粒子の分散性が向上するに伴い,PP/EPDM 界面およびEPDM 架橋点付近の成分である intermediate 成分が増加すると考えると,Figure 5 のSEM 写真で練り時間の増加に伴い粒子サイズが低下 ( 界面の増加 ) することを解釈することができる. これらのことから, 架橋剤投入後の試料のG r 値が練り時間が長くなるほど, 低下している現象 (Figure 4) は, 架橋 EPDM 粒子の分散性向上に関連しているため, パルス NMR で得られた EPDM/PP 界面に関係する intermediate 成分と相関があると考えられる. パルスNMRから得られる各成分の割合の合計は1% であるので, 一つの成分が増せば他の成分は減少する. ここでは界面の情報に関するintermediate 成分に注目する. Figure7 に P3,P4,P5 の TPV における G r 値と intermediate 成分の割合の関係を示す. G r の増加に伴いintermediate 成分の割合は低下している.G r 値とintermediate 成分比率に相関があることから, G r 値は, 架橋 EPDM 粒子の分散性 (intermediate 成分の 1% 9% % 7% % % 4% 3% 2% % % P3 P4 P5 Figure 6 Component ratio of TPV compound by Pulsed NMR Mobile component Intermediate component Rigid component Component ratio/% (13) 187

6 日本ゴム協会誌 連続性 ) を評価する指標になると考えられる. 前述のE a 値の議論では架橋剤の投入により急激にE a 値が低下することからE a 値は, 架橋 EPDMの分子運動性に影響をうけやすく, これはEPDM 架橋度, 架橋鎖 ( サイズ ) 分布の変化と関連があると考えられる.Figure 8に, E a 値と架橋度の関係を示す. E a が増加すると架橋度は減少しており, 相関があることがわかる 小角散乱測定 (SAXS) と架橋への影響小角散乱測定 (SAXS) から得られた各試料の散乱パターンを切り出して解析を行った. 波長 λ, 散乱角 θ, 散乱ベクトルqの関係は式 (4) で表される. q= 4π sin θ (4) λ Figure 9に散乱ベクトルに対する強度 ( 厚さで規格化 ) の変化を示した. 架橋していない試料 (P1,P2) に比べてP3-P5では散乱強度が増加している. これは, 架橋サイズの影響の他, 試料中のCB, 炭酸カルシウム等の添加物の分散性の影響, そして,CB 由来のバウンドラバー量の変化の影響が考えられる. 試料中のCB, 炭酸カルシウム等の添加物は, 溶融混練り環境下で増粘化したEPDM 中に分散して存在すると考えられ, 架橋による分子鎖の束縛のため, これら混合物の 55 Intermediate component /% G r /% 分散性は, 変化しにくい. また, バウンドラバー成長による架橋サイズの影響も考えられるが, 練り時間に伴って表面にゴム成分が吸着し, 粒子サイズが大きくなるが, パルスNMRの結果などから5 分以下で急激にバウンドラバーが形成され, その後徐々に増加する. その厚さの増加は1 nm 以下であることが報告されている 11) ことから,SAXS より得られた架橋サイズへのバウンドラバーの成長の影響は小さいと考えられる. このため, 散乱強度の増加は, 架橋サイズによる影響が大きいものと考えられ, 散乱体粒子が無秩序に配列していると仮定するならば, 散乱体粒子の慣性半径 (Rg) と散乱強度間に式 (5) が成り立つ. I(q)=I()exp ( - R 2 g q 2 3 ) (5) この式に基づいて球状分子の分布が均一とすると, 得られた散乱ベクトルqの二乗を横軸, 散乱強度 I(q) の対数を縦軸とするGuinierプロットを行うと直線関係が得られるはずである. しかし, 得られたデータをプロットすると直線ではなかったので, 散乱体粒子サイズに分布があると考えられる. そこで複数成分を仮定してフィッティングを行った 12). 得られた直線の傾きから架橋サイズRを計算できる ( 式 (6)). R=R g ( 3 5 ) 1 2 (6) 式 (6) に基づいてTPVの架橋 EPDMドメイン内の架橋サイズ ( 半径 )R1,R2,R3 を算出した結果を Table 2 にまとめた. この結果より, 架橋サイズには, およそ59.7 ~ 6.4 nm, 26.1 ~ 26.6 nm,9.4 ~ 16.7 nm の 3 つの平均半径が存在する事がわかった. また, 練り時間が増加しても,R1,R2 の架橋サイズは大きな変化がなかった. しかしながら, 架橋サイズ ( 半径 )R3が低下していることが見受けられる. これは,TPVサンプルの練り状態がP4からP5に変化する過程で, 架橋サイズが小さい凝集体が局所的に細分化し Figure 7 The relationship between G r values and the intermediate component ratio Gell ratio/% E a /kjmol-1 Figure 8 The relationship between E a values and gell ratio. Figure 9 Scattering profile of P1, P2, P3, P4 and P (14)

7 第 9 巻第 4 号 (217) 眞中将一 岩淵龍之介 柏原祐里子 小薬次郎 上原宏樹 山延健 Table 2 Size of cross-linked domain for TPVs with different kneading time. P3 P4 P5 (Kneading time 7.4min) (Kneading time 8.8 min) (Kneading time11. min) Sample R1(nm) R2(nm) R3(nm) P P P た結果と考えられる. 以上のことから, 練り時間 7.4 分のP3 時点で架橋構造は十分に形成されており, この段階で架橋度に粗密が存在し, この密な部分の大きさが小角 X 線で得られた架橋サイズに相当すると考えられる. そして, 練り時間とともに架橋密度の低い部分, つまり, 低弾性率の部分から裂けて細分化する. このように考えるとFigure 1,5で考察した練り時間進行に伴う, 高歪み領域の複素弾性率の低下は, 架橋ゴムのネットワーク構造により生じていると仮説付けられる. しかしながら,P3 - P5 における散乱強度の増加は, 試料中のCB, 炭酸カルシウム等の添加物の分散性の影響について, その存在場所が不明確であることから, 無視できない. したがって, その関連性については, 今後の研究課題としたい. 4. TPV の練りメカニズム以上の結果から,EPDM/PP 系 TPV において,G r 値は, 架橋 EPDM 粒子の分散性 (intermediate 成分の連続性 ),E a 値は,EPDM 架橋度を強く反映する指標であると考えられる. これら,E a 値,G r 値の測定結果から推定したTPV の動的架橋練りの進行時の練りモデルをFigure 1に示す. P3では, 架橋剤投入後, 急激にEPDM 架橋度が上昇する. この時点では, 架橋 EPDM 粒子の凝集体となっていると考えられる. ミキサーチャンバー内で, 高温度 高せん断応力の下, 架橋 EPDM 粒子が引き裂け, フィブリル構造を経て,P4,P5にかけ微細化が進行する. この時, 架橋度の低い部分 ( 低弾性の部位 ) が切欠となって裂け, フィブリル化しながら, 分散が進行していく. そして, 架橋 EPDM の微細化による表面積増加で,intermediate 成分の連続性が増していく. 一方,P3からP5にかけて, EPDM の架橋度は, ほとんど変化しないが,intermediate 成分の増加に伴い,mobile 成分 (PP 非晶成分 ) の成分移行が進む. これらの結果は, 粘弾性評価指標 E a,g r から定量的に把握できる.TPVの練り構造は, 架橋 EPDM 粒子の分散 (intermediate 成分の連続性 ), と EPDM の架橋の両方から発現する構造であると考えられる. 5. まとめ TPVの混練り過程は, ポリマー成分を分散させながら動的に架橋させることから,PP 中へのEPDMの分散と EPDMの架橋が同時に進行していると考えられている. Figure 1 これが構造制御を複雑にしている所以であると考えられるが, これら 2 つの特性 (EPDM 分散性,EPDM 架橋度 ) を動的粘弾性 E a,g r によって, 別々の構造因子として把握できるようになった. これにより,TPVの複雑な構造の練り状態を正確に評価でき, 練り現場において, 短時間, 高精度で検査できると期待できる. 本研究では, 密閉式混練り機 ( 低せん断速度下 ) を用いた混練り試料について検討することで, 練り時間と共に変化する架橋 EPDMのフィブリル化状態と, そして, 架橋 EPDMの分散状態を的確に把握することができた. 謝辞本研究にご協力いただきました増永啓康氏 ( 高輝度科学研究センター ) に深く感謝します. References :EPDM particle Schematic representation for TPVs with different kneading time. 1)Asami, T.; Niida, K.: Plastic Seikei Kakou., 18, 131(26) 2)Caran, A.Y.; Patel, R.: Rubber Chem. Technol., 53, 141(198) 3)Caran, A.Y.: Rubber Chem. Technol., 68, 351(1995) 4)Akiba, M.: Polymer Digest., 54(7), 17(22) 5)Okamoto, M.; Inoue, T.: kobunshi Ronbunsyu., 48, 657(1991) 6)Manaka, M.; Kogusuri, G.: Nippon Gomu Kyokaishi., 85, 3(212) 7)Kanae, K.; Morikawa, A.: JSR Technical Review., 112, 2(25) 8)Payne, A.R.: J.Appl.polymer.sci., 9, 2273(1965) 9)Kulis, Z.; Fortelny, I.: Eur.Polym. J., 33, 513(1997) 1)Iwabuki, H.; Nagata, K.; Noguchi, T.; Yamada, E.: Nippon Gomu Kyokaishi, 75, 49(22) 11)Shiga, S.: Nihon Reoroji Gakkaishi, 11, 55(1983) 12)Nakauchi, H.; Naito, K.; Inoue, S.: Nippon Gomu Kyokaishi, 66, 117(1993) 日本語標記参考論文 1) 浅見琢夫, 新田晃平 : プラスチック成形加工,18,131(26) 4) 秋葉光雄 : ポリマーダイジェスト,54(7),17(22) 5) 岡本弘, 井上隆 : 高分子論文集,48,657(1991) 6) 眞中将一, 小薬次郎 : 日本ゴム協会誌,85,3(212) 7) 鼎健太郎, 森川明彦ら :JSR テクニカルレビュー,112,2 (25) 1) 岩蕗仁, 永田員也, 野口徹, 山田英介 : 日本ゴム協会誌,75, 49(22) 11) 志賀周二郎 : 日本レオロジー学会誌,11,55(1983) 12) 中内秀雄, 内藤壽夫, 井上栄 : 日本ゴム協会誌,66,117(1993) (15) 189