錯体化学命名法

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1 錯体化学命名法 ( 島津省吾 ) 1. 原則 IUPAC(International Unit of Pure and Applied Chemistry) の規則に従う 原語は原則として英語 ( 日本語は 対応した英語の発音を仮名書きするが音訳ではなく 字訳で表現する ) 2. 化学式 1) イオン性陽イオン 陰イオン ( 中性 ) 配位子の順番に記述 ( 複数の同種イオンはアルファベット順に ) 2) 錯形成している成分 [ ]( 角括弧 ( 亀甲 ( キッコウ ) ではない ) に入れる 順序 [( 中心元素 ) ( 陰イオン性配位子 ) ( 陽イオン性配位子 ) ( 中性配位子 )] 3. 名称 英語標記が原則 ( 複数の同種配位子は 元素記号のアルファベット順に ) 中性化合物 : 配位子 中心金属 ( 酸化数 ) i) 配位子は化合物名のアルファベット順 ( イオン 中性の区別無く 但し数詞の接頭語は無視する ) 日本語命名法 1) 中性化合物 : 化学式の中心金属原子に近い順番から命名し最後に金属名 ( 酸化数 ) を付ける )[Co(NO 2 ) 3 (NH 3 ) 3 ] triamminetrinitrocobalt(iii) トリニトロトリアンミンコバルト (III) [Cu(acac) 2 ] bis(acetylacetonato)copper(ii) ビス ( アセチルアセトナト ) 銅 (II) 2) イオン性化合物 陽イオン 陰イオン [Cr(NH 3 ) 6 ](NO 3 ) 3 hexaamminechromium(iii) nitrate ヘキサアンミンクロム (III) 硝酸塩 K 2 [PtCl 6 ] potassium hexachloroplatinate(iv) ヘキサクロロ白金 (IV) 酸カリウム 3) 中心金属元素の名称 i) カチオン性 中性錯体 中心金属元素名は変化せず [Co(NH 3 ) 6 ] 3+ hexaamminecobalt(iii) ion ヘキサアンミンコバルト (III) イオン [Cr(H 2 O) 6 ] 3+ hexaaquachromium(iii) ion ヘキサアクアクロム (III) イオン [Ni(CO) 4 ] tetracarbonylnickel(0) テトラカルボニルニッケル (0) ii) アニオン性錯体 中心金属元素は 語尾を ~ate(~ 酸 ) に変える 但し 幾つかの元素名は以下に示すようにラテン名に変えて語尾変化する 元素英語名ラテン名 ate 錯体 (CAS の用法 ) ate 錯体日本名 Ag silver argentum argentate 銀酸 Au gold aurum aurate 金酸 Cu copper cuprum cuprate 銅酸 Fe iron ferrum ferrate 鉄酸 Pb lead plumbum plumbate 鉛酸 Sn tin stannum stannate スズ酸 Ni nickel niccolate (nickelate) ニッケル酸 W tungsten wolfram wolframate (tungstate) タングステン酸 [Fe(CN) 6 ] 3- hexacyanoferrate(iii) ion ヘキサシアノ鉄 (III) 酸イオン 英語と日本語の順序に違いがある

2 [Ag(S 2 O 3 ) 2 ] 3- bis(thiosulfato)argentate(i) ビス ( チオスルファト ) 銀 (I) 酸イオン 4) 配位子の名前 i) 中性配位子語形変化はなく 化合物名をそのまま使用する化学式名前略号 H 2 N NH 2 ethylendiamine en N N 2,2'-bipyridine bipy (or bpy) N N 1,10-phenanthroline phen ii) 陰イオン性配位子 語尾 (suffix) に ~o をつける 化学式 一般名 陰イオン性配位子名 和名 ( 記号 ) Cl - chloride chloro クロロ (Cl) OH - hydroxide hydroxo ヒドロキソ (OH) H - hydride hydrido ヒドリド (H) CH 3 COO - acetate acetato アセタト (AcO) iii) 陽イオン性配位子 語尾 (suffix) に~ium をつける 希である + NH 2 -NH 3 hydrazine hydrazinium ヒドラジニウム iv) 外 H 2 O aqua アクア NH 3 ammine アンミン CO carbonyl カルボニル NO nitrosyl ニトロシル 5) 配位子の順序 ( 既に上述している ) 化学式 [ 金属 陰イオン 陽イオン 中性 ] 名称アルファベット順 ( 陰イオン 陽イオン 中性の区別なしに 数詞は無視する ) ( 注化学式の場合 同種の配位子が複数存在する場合は 元素記号のアルファベット順となり 名称の場合とは異なる ) 日本語は化学式の左から順番に記載する

3 [PtCl(NO 2 ) 2 (NH 3 ) 3 ] 2 SO 4 triamminechlorodinitroplatinum(iv) sulfate クロロジニトロトリアンミン白金 (IV) 硫酸塩 6) 数を示す接頭語同種の配位子が複数存在するとき 以下の数詞を接頭辞として付けるしかし配位子に既に数詞が付いている場合や 置換基がついているような複雑な配位子の場合には 倍数接頭辞を付け配位子名を ( ) で括る 数 数詞 倍数接頭辞 2 di bis 3 tri tris 4 tetra tetrakis 5 penta pentakis [ReH(C 5 H 5 ) 2 ] bis( 5 -cylcopentadienyl)hydridorehnium(iii) ヒドリドビス ( 5 -シクロペンタジエニル ) レニウム (III) Na 3 [Ag(S 2 O 3 ) 2 ] sodium bis(thiosulfate)argentate(i) ビス ( チオ硫酸 ) 銀 (I) 酸ナトリウム NH 4 [Cr(NCS) 4 (NH 3 ) 2 ] ammonium diamminetetrakis(isothiocyanato)chromate(iii) ジアンミンテトラキス ( イソチオシアナト ) クロム (III) 酸アンモニウム 7) 金属の酸化状態 Stock 方式 中心原子の酸化数は ( ) にローマ数字で示すゼロの場合はアラビア数字の 0 負の場合は -( マイナ ス ) を前に付ける Ewens-Bassett 方式 錯イオンの電荷をアラビア数字で示し + -を数字の後につけて ( ) で括る K 3 [Fe(CN) 6 ] potassium hexacyanoferrate(3-) ヘキサシアノ鉄酸 (3-) カリウム [Ni(en) 3 ]SO 4 tris(ethylenediamine)nickel(2+) sulfate トリス ( エチレンジアミン ) ニッケル (2+) 硫酸塩 8) 架橋原子団以下の配位子は 複数の金属原子に架橋しやすい性質があるこれらの配位子は 名前の前に ( ) をつけて名前を (-) ではさむまた 数詞は ( ) の前に置き後ろに (-) を付ける OH, Cl, SR 2, CO, NO 2, NH 2, NCS OH [(H 2 O) 4 Fe Fe(H 2 O) 4 ](SO 4 ) 2 OH di- -hydroxo-bis(tetraaquairon(iii)) sulfate ジ - - ヒドロキソ - ビス ( テト ラアクア鉄 (III)) 硫酸塩

4 9) 結合異性を形成する配位子直接配位している原子の元素記号をイタリックで示し 名前の後に (-) を付して指定するよく見られる配位子の -SCN (-S-C N) thiocyanato チオシアナト -NCS (-N=C=S) isothiocyanato イソチオシアナト O -NO 2 (- N ) nitro ニトロ O -ONO (-O-N=O) nitrito ニトリト -CN (-C N) cyano シアノ -CNR (-C=N-R) isocyano (isonitrile) イソシアノ ( イソニトリル ) (NH 4 ) 3 [Cr(NCS) 6 ] ammonium hexakis(isothiocyanato-n)chromate(iii) ヘキサキス ( イソチオシアナト -N) クロム (III) 酸ア ンモニウム 10) 幾何異性体 幾何異性体 (cis, trans, mer, fac など ) 光学異性体(, ) は 名称の前に これらの略号や記号 ( イタリ ックで表示 ) で示し (-) で名称に続ける 注 )Δ(delta)=dextro = 右旋性 Λ(lambda)=laevo= 左旋性 Cl NH 3 Pt trans-diamminechloronitroplatinum(ii) トランス-ジアンミンクロロニトロ白金 (II) H 3 N NO 2 11)η(hapto, ハプト=ギリシャ語で掴むという意味 ) 配位子 ( コットン他 基礎無機化学第 3 版 p. 661) アルケン アリールなどの非局在化 π 電子系配位子が金属原子と結合する場合 その金属原子に直接結合している炭素原子の数を示す表記方法に (η n -) で示し ( 上付き n は 結合している炭素数 ) monohapto( 1 -), dihapto( 2 -), trihapto( 3 -) などと読む Ru(CO) 3 tricarbonyl( ,3,5-cyclooctatriene)ruthenium(0) トリカルボニル ( ,3,5- シクロオクタトリエン ) ルテニウム (0) Ti bis(( 1 -cyclopentadienyl)bis(( 5 -cyclopentadienyl)titanium(iv) ビス ( 1 - シクロペンタジエニル ) ビス ( 5 - シクロペンタジエニル ) チタニウム (IV)

5 参考文献 1)G. J. Leyh 編 山崎一雄訳 著 無機化学命名法 IUPAC 1990 年勧告 - 東京化学同人 東京 ) 岡田功編 簡明化学命名法第 2 版訂正版 オーム社 ) コットン ウィルキンソン ガウス 基礎無機化学第 3 版 培風館 東京 1999 年