ROCKY NOTE ペットロス (150313) 家の前でエゾシカに襲われて飼い犬が死んでしまった 小さな亡骸を抱いたとき 子どもが亡くなったような気がした 家族を守ろうとしたのだと思う 今考えれば手のかから

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1 ペットロス (150313) 家の前でエゾシカに襲われて飼い犬が死んでしまった 小さな亡骸を抱いたとき 子どもが亡くなったような気がした 家族を守ろうとしたのだと思う 今考えれば手のかからない犬だった 火葬をして愛犬を偲んでいる 事故から一か月経った診察室の中で涙する患者のナラティブ 人間なら当然あるはずの一連の儀式がない こういう儀式は残される者と旅立つ者との隙間を埋める緩衝材としての役割もあるのではないか プライマリ ケア医と患者がナラティブを作りあげる過程 話す 聴くといった作業は 時として人の死以上に重要な意味を持っているのかもしれない 今後も増えると予想されるペットロスについて勉強しておこうと思う 以下の項目も参照を 死別反応について 現在日本では多くの動物がペットとして飼育され 2006 年 10 月の時点で各家庭に飼育され る犬と猫の頭数は計 2,454 万 6 千頭にも及び 19.2% の家庭では犬を 14.7% の家庭では猫 を飼育していると推定されている 3) 各種報道によると 今は逆転しているようですね

2 ( 参考文献 5 より引用 : 最近は猫が相対的に増えており 今後は逆転するかもしれない ) これらの飼主のうち 4 割が自らの飼育動物を家族 子どものようなものだと考えており 最近では 愛でる対象物という意味をもつ 愛玩動物 と同義である ペット ではなく 日々の生活の伴侶という意味をもつ コンパニオンアニマル ( 伴侶動物 ) と表現される機会も増えている 3) 近年 わが国においても ペット動物 を コンパニオン アニマル (companion animal)= 一緒に暮らす伴侶もしくは仲間としての動物 とよぶようになり 個人や家庭で飼う動物に対する見方が変化してきている 1) ペットロスという言葉は 10 年ほど前から知られるようになったが いまだにその定義について十分な検討はなされていない 3) ペット動物の喪失に関して ペットロス と ペットロス症候群 という 2 つの用語が使われている ペットロス はペット動物の喪失とそれに対して生ずる通常の悲嘆反応を示すものであり ペットロス症候群 はペット動物の喪失により心身に病的な変調をきたしてしまうことをいう 1) ペットロス症候群 (pet loss syndrome) という表現は日本独自のものであり 諸外国においてはペットロスに伴う悲嘆 (grief) や悲哀 (mourning) あるいは死別反応(bereavement) と表現されている 3) ペットの喪失に悲嘆を感じること自体が異常なものであるという印象が与えられる恐れがあるということから ペットロス症候群という名称に反対する者もいる 3) ペットロスの原因には死別のほかに譲渡や逃亡などがあり 死別の内容にも老衰などの自然死 事故死 病死に加えて安楽死が存在する 3) 老年期におけるペットロスについての研究について : 老年期においても約 4 人に 1 人がペットロスを経験しており 比較的飼育期間が長いペットをなくしていた ペットロスによる精神的健

3 康への影響は認められなかったが ペットロスの後 ペットを飼っていない者が半数以上もい た 2) ( 参考文献 2 より引用 ) ペットロスに伴う悲嘆と関連した症例は 1977 年に初めて報告され それ以後 喪失を受容するに至る過程の中で 落ち着かない 集中できない 悲観的 不安 すぐパニックに陥る 孤独感が強い 自分はダメな人間だと思い込む 罪悪感が強い 悪夢をみる 死んだはずの動物の姿がみえることがある などの症状がみられるといわれ 身体化症状として睡眠障害 すぐに涙が出る 消化器症状 食欲異常 頭痛 肩こり めまい 難聴 腰痛 全身倦怠感 蕁麻疹なども生じうることが知られるようになっている 3) Stallones が 1 年以内にペットを亡くした飼主を対象に行った断面調査では 対象者のうちの 31.7% が抑うつ傾向にあり その中では生活に大きな変化があった飼主 自覚的な健康状態の悪い飼主 ペットの生活に対する責任が重かった飼主などが特に多かった 3) ( 参考文献 4 より引用 : 自責感のある飼い主が約 3 分の 1 死んでしまいたいと思った飼い主が

4 15% というのは無視できない数字のように思う ) ( 参考文献 4 より引用 : 克服と言えるまで回復するには半年 ~1 年くらいはかかることもまれではな いということか ) 飼主がペットに対して投影しているイメージはさまざまであるが 配偶者や子どもとの死別による悲嘆への支援と共通の枠組みで考えると 傾聴 受容し 悲嘆に関する情報提供を行うことが重要で 安易な励ましや 押しつけがましいアドバイス わかったふり 早く立ち直るようにというプレッシャーなどは悲嘆者をさらに傷つけかねないので 注意が必要である 3) 亡くしたペットの 代役 (replacement) として新しいペットを飼うことで悲嘆が和らぐ可能性はあるが 心の整理がついていない時期に新しいペットを迎え入れることは むしろ失ったペットに対する裏切りのように感じられる恐れもあるので 悲嘆者に対して無理に新しいペットを勧めるべきではない 3)

5 ( 参考文献 4 より引用 : 新しいペットは良いこともあるし 裏目に出ることもありそう 葬式などの儀 式は重要な意味をもつ可能性がある 現時点で 医師の役割はあまり注目されていないようだ ) 人の場合と同様に 予期せぬ死の場合は悲嘆が重度になる傾向にあるが いずれの原因にしろ 飼主はペットを管理する立場であることから その死に過度な責任を感じることがあり 多くの研究者がペットロスに伴う罪悪感について言及している 3) Stewart は 安楽死の場合には 速やかで苦痛のない死を与えたことは最善の選択であったと納得でき 罪悪感は一時的なことが多いと述べている しかし 安楽死を選択した飼主の中には自分がまるで殺人者であるかのように感じる者もおり そのような飼主に対する言動には細心の注意が払われるべきである また 逆に安楽死の選択肢が存在したがそれを選択しなかった場合の後悔についても考慮する必要があるだろう 3) 配偶者などの親しい人物との死別と比較すると ペットの死はそれほど強い悲嘆を引き起こすものではないかもしれない しかし そうした たかが動物の死 という意思が他人だけでなく 自分自身をもとまどわせてしまう そのように対象喪失による悲嘆を事実として承認することに抵抗があると 悲嘆の作業が正常に進まないと推測される そのため 人の死の場合に比べて死後にたどるべき手順が整っておらず 喪の作業を行うための社会的な枠組みが十分でないということも 悲嘆の過程に影響している可能性がある 3) 欧米で推奨されている対処と 日本人が適切と感じる対処とでは必ずしも一致していないことがわかっている 例えば 欧米の成書では励ますことが不適切な対応とされてきたが 日本で行われた大路の調査ではむしろ励ましは悲嘆者にとって好ましい印象をもって受け取られている 3) 朝比奈の調査では ペットロスを経て悲哀の感情やペットを拒否する感情が芽生えることも

6 ある一方 感謝の気持ちを抱いたり 良い思い出 経験として胸に取っておくなど 人間的な 成長が自覚されることもあった これは後に訪れるであろう次なる対象喪失と対峙するうえで の 死の準備教育 につながるものとも考えられる 3) ペットを飼っているかどうか ペットの体調はどうか そんな切り口から患者の状態を把握すると いうのも悪くない選択枝だ これから同様の問題が増えるのか 減っていくのか プライマリ ケア 医が扱う問題として無視できないものになっていく可能性を感じている 参考文献 1. 安藤孝敏. 高齢者とペット動物. 老年社会科学 23(1): 25-30, 安藤孝敏, 古谷野亘, 西村昌記, 石橋智昭. 老年期におけるペットロス. 老年社会科学 22(2): , 木村祐哉. ペットロスに伴う悲嘆反応とその支援のあり方. 心身医学 49(5): , 特定非営利活動法人動物愛護社会化推進協会ホームページ. ペットロスについての意識 調査アンケート 5. 一般社団法人ペットフード協会ホームページ. 平成 26 年全国犬猫飼育実態調査. 主要指標 のまとめ.