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かんじいりぐら
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1 1 新潟県産スギ羽柄材の天然乾燥経過小柳正彦要旨 : 乾燥開始時期を春期, 秋期および冬期に設定して, 新潟県産スギ羽柄材の天然乾燥試験を行った % までの乾燥に必要な期間は, 春期開始で4ヶ月程度, 秋期開始で7ヶ月程度, 冬期開始で6ヶ月程度であった冬期開始でも高材のが低下し, のばらつきが小さくなることから, 天然乾燥は人工乾燥の前処理として有効と考えられた Ⅰ はじめに天然乾燥は人工乾燥設備が開発されるまでは木材乾燥処理の主役であった ( 西尾 1983) が, 乾燥に長期間を要することや, 心持ち材では表面割れが生じやすいことから, 現在は人工乾燥が主流となっているしかし, 天然乾燥は乾燥装置や燃料を必要とせず, 材色変化が少なく木材本来の色つやが損なわれない ( 石川県林業試験場 12) などの利点があるため, 依然として重要な技術であるスギは, 高いや水分が抜けにくい性質があるほか, 材質のばらつきが大きく, 用途面でも心持ち材としての使用が多いことから, 乾燥処理が難しく, 乾燥コストは他の樹種よりも格段に割高であると言われている ( 森林総合研究所 6) しかし, 板類に加工すれば乾燥期間が短くなり表面割れが生じにくくなることから, 天然乾燥も行いやすくなると考えられるまた, 平成 22 年に公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行されたことにより, スギの板類は, 集成材やCLT( 直交集成板 ) のひき板や内装材としての需要が高まるものと考えられるさらに, 東日本大震災などを教訓に, 板倉工法による応急仮設住宅 ( 安藤 11) などでの需要も期待される新潟県内の製材工場数は 228 で全国第 3 位であり, 1 工場あたりの製材用動力の出力数が全国平均の6 割程度と零細な製材工場が多い ( 農林水産省 15) ことから, 乾燥材生産の拡大のためには天然乾燥の活用も積極的に検討する必要がある天然乾燥に必要な期間の目安は寺澤 (4) や日本木材乾燥施設協会 (1) に示されているが, 降雪地帯の冬期にはほとんど乾燥が進行しない ( 寺澤 4) と言われているこのため, 新潟県において安定的に天然乾燥材を生産するためには, 冬期の乾燥経過の把握が重要であるそこで, 本研究では今後の需要増が期待される板類を代表するものとして羽柄材を対象とし, 天然乾燥経過を調査し, 乾燥期間の目安を検討した本研究の実施にあたり ( 株 ) 緑の森には多大なる協力をいただいた深くお礼申し上げる Ⅱ 試験方法厚さmm程度の未乾燥の新潟県産スギ羽柄材を試験体とし, 天然乾燥に要する期間を開始時期ごとに把握するため, 春期 (4 月上旬 ), 秋期 (9 月上旬 ) および冬期 (11 月下旬 ) に天然乾燥試験を開始した試験体の概要を表 1に示す ( 以下, 試験体を天然乾燥開始時期ごとに春期開始材, 秋期開始材, 冬期開始材とする ) 製材後直ちにすべての試験体の寸法と重量を計測して生材密度を求め, 生材密度の大きい重グループと小さい軽グループに分けて考察を行った天然乾燥は新潟県森林研究所構内の雨水が直接かからない屋根の下に, コンクリートブロックにより地上高約 cmの土台をつくり, その上にさん積みをしておこなった ( 写真 1) 使用したさん木の厚さは25mmであり, 重

2 2 新潟県森林研究所研究報告 No. 56(15) 表 1 試験体の概要天然乾燥開始時期生材密度推定初期年輪幅心材率乾燥期間寸法本数グループ開始終了 ( mm ) ( 本 ) ( kg/m 3 ) ( % ) ( mm ) ( % ) 春期 12/4/1 12/8/ 秋期 12/9/13 13/6/ 冬期 11/11/3 12/5/31 38 軽重軽重軽重表 2 試験期間中の温湿度と平衡 11 年 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月平均気温 ( ) 平均相対湿度 (%) 平衡年 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月平均気温 ( ) 平均相対湿度 (%) 平衡年 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月平均気温 ( ) 平均相対湿度 (%) 平衡写真 1 天然乾燥状況グループと軽グループを区別せず一体としてさん積みした乾燥試験開始後, 概ね1ヶ月ごと ( 初回のみ半月後 ) にすべての試験体の重量を計測し, すべての試験体の重量が1ヶ月間でほとんど変化しなくなるまで乾燥試験を継続した試験期間中の外気の温湿度の計測値およびそれらから求めた平衡を表 2に示す平衡は式 (1)( 佐道山添 1993) により求めた Ueq=1.1(86.8h 3-122h h T)(1) ここで,Ueqは平衡(%),h は平均相対湿度で h 1,Tは平均気温 ( ) である乾燥試験終了後に各試験体の端部から5cm程度離れた位置から幅 2cm程度の試験片を切り出し, 全乾法によりを求め, 式 (2) により各試験体の推定全乾重量を算出した Wo= Wu/(u+) (2) ここで,Woは試験体の推定全乾重量(kg),Wuは試験終了時の試験体の重量 (kg),u は試験終了時の全乾法によるであるこの推定全乾重量と試験体重量から式 (3) により重量測定時の推定を算出した Ua=(Wa-Wo)/Wo (3) ここで,Uaは重量測定時の推定(%),Wa は試験体重量 (kg),wo は試験体の推定全乾重量 (kg) である Ⅲ 結果と考察春期開始材の推定の変化を図 1および図 2に示す軽グループ ( 図 1) は,15 日程度経過した時点で木

3 新潟県産スギ羽柄材の天然乾燥経過 ( 小柳 ) 3 材中の自由水が無くなった 3% 程度 (( 繊維飽和点 )) 付近まで推定のが低下したその後, 5 日程度経過した 6 月上旬に推定のが % % 程度になり,, ばらつきもほとんど無くなったが, 梅雨, 梅雨期には乾燥が進まず, すべての試験体の推定が, が % % 以下となったのは,, 開始から日程度経過した8 8 月であった一方, 重グループ (( 図 2) 2) は, 初期が高いため, 軽グループよりも乾燥に時間がかかり, 推定のが 3% 程度になるまで 3 日程度かかり, すべての試験体の推定が % 以下になるまで 135 日程度を要した次に, 秋期開始材の推定の変化を図 3 および図 4 に示す軽グループ (( 図 3) 3) は, 初期の推定のが 41.4% と低かったため, 急激なの低下は見られなかったが,15 日程度経過した 1 月上旬には推定のが % 程度となり, ばらつきも小さくなったしかし, その後の 12 月中旬までの約日間にが上昇したこともあり, すべての試験体の推定含水率が % 以下になったのは天然乾燥開始から 25 日程度経過した 5 月であった一方, 重グループ (( 図 4) 4) は,15 日程度で推定が大きく低下し, 開始から 3 日程度経過した 1 月中旬には推定が % 以下になる試験体もあった開始から日程度経過した 11 月中旬には推定のが 25% 程度となり, ばらつきも初期の推定が高かった 1 本を除いて非常に小さくなったしかし, その後は乾燥が進まず, すべての試験体が推定 % 以下になったのは軽グループと同様に開始から 25 日程度経過した 5 月であった最後に, 冬期開始材の推定の変化を図 5 および図 6 に示す軽グループ (( 図 5) 5) は, 推定のが 3% 程度になるまでに春期開始材の約 2 倍の日程度かかったその後の 3 日間 (2 (2 月 )) には乾燥がほとんど進まず,3 月頃から推定のが再び低下し, すべての試験体が推定 % 以下になったのは開始から日程度経過した 5 月であった一方, 重グループ (( 図 6) 6) は, 初期が非常に高開始日 : 終了日 : 開始日 : 終了日 : 図 1 春期開始材の推定の変化 (( 軽グループ )) 図 2 春期開始材の推定の変化 (( 重グループ )) 開始日 : 終了日 : 開始日 : 終了日 : 図 3 秋期開始材の推定の変化 (( 軽グループ )) 図 4 秋期開始材の推定の変化 (( 重グループ ))

程度になるまでに 13 日程度かかったその後は春期に乾燥が進み, すべての試験体が推定 % 以下になったのは軽グループと同様に乾燥開始から日程度経過した5 月であった冬期開始の場合でも, 3% 程度までの天然乾燥は進み, のばらつきを小さくする効果が認められることから, 天然乾燥は人工乾燥前の予備乾燥として有効であると考えられる次に, 推定が % 以下となった試験体の割合を図 7に示す

4 4 新潟県森林研究所研究報告 No. 56(15) 開始日 : 終了日 : 開始日 : 終了日 : 図 5 冬期開始材の推定の変化 ( 軽グループ ) 図 6 冬期開始材の推定の変化 ( 重グループ ) く, 推定が % に近い試験体もあったため, 冬期においてもは大きく低下しているが, 推定のが 3% 程度になるまでに 13 日程度かかったその後は春期に乾燥が進み, すべての試験体が推定 % 以下になったのは軽グループと同様に乾燥開始から日程度経過した5 月であった冬期開始の場合でも, 3% 程度までの天然乾燥は進み, のばらつきを小さくする効果が認められることから, 天然乾燥は人工乾燥前の予備乾燥として有効であると考えられる次に, 推定が % 以下となった試験体の割合を図 7に示す春期に乾燥を開始した場合には,2ヶ月程度経過した時点 (6 月 ) で, 軽グループで8 割, 重グループでも4 割の試験体が推定 % 以下となっているが, すべての試験体の推定が % 以下となったのは5ヶ月経過した9 月であったこれは7 月頃の梅雨期に乾燥が進まなかったためであるこのことから, 効率的に生産するためには梅雨期前に十分乾燥したものと不十分なものを選別し, 不十分なものは乾燥期間を延長したり, 人工乾燥を併用することが有効と考えられる秋期に乾燥を開始した場合には,1ヶ月後に軽グループで8 割の試験体の推定が % 以下となっていたが, 重グループでは1 割にとどまっており, すべての試験体の推定が % 以下となったのは8ヶ月経過した5 月であったこれは秋期に開始する場合には乾燥初期のの低下が速かったものの, 冬期 (12 月 ~ 2 月 ) に乾燥速度が低下したためと考えられるしたがって, 効率的に生産するためには,1ヶ月程度の乾燥期間でも推定が % 以下となるものもあることから, 気温が低下し降水量が多くなる前に選別し, が高いものについては人工乾燥を併用することが有効と考えられる冬期に天然乾燥を開始した場合は,5ヶ月経過した5 月頃に軽グループの8 割の試験体が推定 % 以下となったが, すべての試験体が推定 % 以下となったのは6ヶ月経過した6 月頃であった冬期でもは 3% 程度まで低下し, ばらつきも小さくなることから,3ヶ月程度の天然乾燥と人工乾燥の併用が有図 7 推定が % 以下になった試験体の割合

5 新潟県産スギ羽柄材の天然乾燥経過 ( 小柳 ) 5 効と考えられるなお, 春期には気温の上昇と相対湿度の低下により乾燥が進むことから, 乾燥期間を十分にとれる場合には天然乾燥のみでも十分と考えられる本研究では, 乾燥試験終了時の推定は 17~ 18% となり, 構造材での利用には天然乾燥のみでも十分と考えられるが, 造作材や集成材のひき板での利用には 15% 以下までの乾燥が求められることから, 人工乾燥を組み合わせるべきと考えられるまた, 乾燥前の重量選別については,2グループに分けても天然乾燥に要する期間に大差がなく, いずれの場合も出荷前の選別が有効と思われることから, 羽柄材については必要性が低いと考えられるなお, 本研究では板類を試験体としたことから, いずれの時期に天然乾燥を開始したものについても表面割れはほとんど見られず, プレーナーによる表面切削後の材色についても目視では差異が認められなかった Ⅳ おわりに本研究により, 冬期開始の天然乾燥では,3ヶ月程度の期間では羽柄材を % 以下に乾燥するのは困難であることがわかったしかし, 冬期であっても高材の乾燥は進み, のばらつきが小さくなることから, 天然乾燥は人工乾燥の前処理として有効と考えられるまた, 春期開始の場合は梅雨前に, 秋期開始の場合は1 月末までに, 十分に乾燥したものを選別して出荷することが有効であると考えられるなお, 天然乾燥に必要な期間は, 温湿度や風通しなどの条件により変わると考えられるため, 生産者自らがデータをとり計画をたてることが重要である引用文献安藤邦廣 (11) 木で震災復興をはかれ板倉構法による応急仮設住宅. 森林技術 835:2-7 独立行政法人森林総合研究所 (6) 森林総合研究所交付金プロジェクト研究成果集 8 スギ材の革新的高速乾燥システムの開発. 独立行政法人森林総合研究所石川県林業試験場 (12) 安全安心な乾燥材の生産利用マニュアル. 石川県林業試験場石川ウッドセンター日本木材乾燥施設協会 (1) 木材乾燥ミニハンドブック~ 基礎知識と実務 ~. 日本木材乾燥施設協会西尾茂 (1983) 木材乾燥の実際. 日刊木材新聞社農林水産省 (15) 木材統計. 佐道健山添眞宏 (1993)1 日の温湿度変動に伴う木材の変動の予測. 木材学会誌 39:555-5 寺澤眞 (4) 木材乾燥のすべて [ 改訂増補版 ]. 海青社

2.2 天然乾燥及び人工乾燥方法の検討コナラについて, 天然乾燥における含水率等の推移を調査したまた, 併せて人工乾燥スケジュールを検討し, それによる仕上がり状態を確認した天然乾燥試験試験体寸法は, 調査を行った事業体からの聞き取りを基に, 角材は 65 mm角と 75 mm角,

2.2 天然乾燥及び人工乾燥方法の検討コナラについて, 天然乾燥における含水率等の推移を調査したまた, 併せて人工乾燥スケジュールを検討し, それによる仕上がり状態を確認した天然乾燥試験試験体寸法は, 調査を行った事業体からの聞き取りを基に, 角材は 65 mm角と 75 mm角, 県産広葉樹の木材加工技術の開発 - 木材の乾燥 - 皆川豊玉川和子 *¹ 要旨本県で資源の充実しつつある広葉樹の利用拡大に向けて課題とされている乾燥試験に取り組んだもので, コナラの天然乾燥試験では, 木材水分計による含水率測定の結果, 当初の含水率が, 平均で 51%( 最大 67%) であったものが,2か月後には 21% まで,10 か月後には 12% まで,15 か月後には 11% まで減少した