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1 内陸地震の発生過程について 京都大学防災研究所飯尾能久 内陸地震の発生過程はよくわかって いない. 何が問題なのか? なぜプレート境界から遠くで起こる? なぜ発生間隔が長い? 何が発生間隔を決めるか?

2 内陸地震とは? 本来は Intraplate earthquake( プレート内部で発生する地震 ) のこと プレート内部とは? プレート境界でないところ プレート境界とは??? Diffused plate boundary という概念もある日本列島はプレート境界付近の変動帯 ここでは, 沈み込む海洋プレートから離れたところで発生する浅い大地震 というあいまいな意味で用いる.

3 陸域のプレート境界??? GPS 観測により, 陸域の歪速度場が明らかになった. 新潟 - 神戸歪集中帯 (Sagiya et al.,2000) これまでプレート境界と考えられていた場所と違うところで歪速度場が大きい. 陸域のプレート境界の 位置? 変形様式? そもそも存在するのか? アムールプレート 北アメリカプレート? 日本列島はプレート境界付近の変動帯. 日本列島の変形様式を陸域の大地震の発生の仕組みと関連づけて理解する. フィリピン海プレート 太平洋プレート

4 予定 イントロ 9 月 1 日内陸地震とは? 問題点は? background 9 月 8 日応力 まさつ 断層の強度 9 月 15 日休み 9 月 22 日レオロジーの基礎, 水と変形過程 9 月 29 日プレート境界における相互作用, 地殻構造 本論 10 月 6 日地震学会 10 月 20 日マクロな見方 10 月 13 日休み 10 月 27 日ミクロな見方 残り 内陸の非弾性変形

5 応力 まさつ 断層の強度 まさつ 摩擦法則摩擦法則の温度依存性 応力 Mohr Circle どの断層がすべるか? 応力の連続性 断層近傍の応力場 内部応力源 断層の強度 SAF は弱いか? 高い間隙水圧クラックの選択配向 SAF は強い? 地震前後の主応力軸の方向変化

6 レオロジーの基礎 地殻 上部マントルのレオロジー 線形粘弾性マクスウェルとフォークト模型 岩石の変形実験結果 クリープの起こり方拡散クリープ転位クリープ 地殻 上部マントルのレオロジーに関係する観測事実 氷床地域の隆起による粘性率の推定 大地震の予効変動から推定された粘性率の深さ分 リゾスフェアの強度プロファイル 断層ゾーンモデル

7 プレート境界における相互作用 くいちがい理論による静的変位場 2 次元モデルによる変位場 粘弾性と変位速度場最上部マントルの緩和無限に長い板は歪まない領域は有限のサイズを持っているか? 単純でないプレート境界における応力蓄積 応力場と歪速度場の違い 観測されている歪速度場と応力場

8 今日のメニュー なぜプレート境界から遠くで起こる? なぜ発生間隔が長い? 何が発生間隔を決めるか? 兵庫県南部地震, 近畿地方の内陸大地震の起こり方南海トラフの巨大地震との関係日本列島の歪場 応力場 Intraplate earthquake の model (NMSZ の例 )

9 野島断層航空写真

10 野島断層

11 河野さん宅航空写真

12 兵庫県南部地 震のすべり分 布と応力 日本の地震活動 地震調査推進本部より Yoshida et al. (199 ) すべり up down

13 内陸地震を起こす力? 沈み込むプレート の 押し によって 内陸に応力が加 えられる? 地震調査委員会編 日本の地震活動 より

14 近畿地方の活断層 日本の地震活動 より

15 近畿地方で 16 世紀以降に発生した大地震

16 活断層トレンチ調査産業技術総合研究所活断層研究センター HP より

17 地震調査委員会 - 有馬ー高槻断層帯の評価 - イベント 年前 イベント 年前 イベント 1

18 歴史史料学 考古学的調査から明らかにされた東海 南海地震の歴史 石橋 佐竹 (1998) に加筆修正

19 南海地震と近畿の内陸地震の履歴 ( 都司,1999) 2001 芸予 拡大 1185 文治

20 西日本の大地震の歴史 南海トラフの巨大地震およそ百年おきに発生 内陸大地震それぞれの断層において, 数百年から数千年に一回程度発生

21 西日本の内陸地震の起こり方のくせ 南海トラフの巨大地震の前 50 年, 後 10 年間に多発 昭和の活動の最後は,1948 年福井地震. 以後, 静穏化 年兵庫県南部地震,2000 年鳥取県西部地震,2001 年芸予地震 活動期に入った?

22 内陸地震の地震発生間隔は なぜ長いか? 下部地殻を無視すると, 弾性的な上部地殻だけが残る. プレート境界の地震発生間隔より長い時間スケールで, 内陸に応力蓄積を起こすことは困難. 地震調査委員会編 日本の地震活動 より

23 兵庫県南部地 震のすべり分布 と応力 日本の地震活動 地震調査推進本部より Yoshida et al. (199 ) すべり up down どちらが正しい? これらの力の原因は? 力 ( 応力 )

24

25 日本列島の歪場 Sagiya et al. (2000) に加筆 兵庫県南部地震の震源付近では, 北西ー南東, あるいは, 西北西ー東南東に縮んでいる. プレート運動の方向 ( 中国東北部に対して )

26 推定されている日本列島の応力場 Sagiya et al. (2000) に加筆 プレート相対運動の方向と必ずしも一致しない. 特に, 西南日本で食い違いが顕著. 内陸地震はどんな力により発生するのか? 最大圧縮応力の方向 プレート運動の方向 ( 中国東北部に対して ) 応力場は地震のメカニズム解から推定されたもの. 本物かどうか検討要.

27 沈み込むプレートによって押される日本列島 ( 岡田 安藤,1986; 藤田 尾池,1986)

28 活断層帯の活動度ごとの分布図 200 万分の 1 活断層ワーキンググループ (2000) 地震時の変位量 ( 断層の単位変位量 ) が断層によらず一定なら 発生間隔が短いほど平均変位速度が大きくなる

29 内陸大地震の発生の仕組みに関して解明すべき主な課題 (1) プレートの相対運動に起因して, プレート境界から遠く離れた内陸部にどのように応力が伝えられるのか? (2) プレート境界では大地震の発生により応力が数十年から数百年単位で変動するのにも関わらず, 内陸の断層に数千年という時間スケールで応力が蓄積されるのは何故か? (3) 内陸地震の発生間隔, あるいは活断層の再来周期が, 数百年から数千 数万年と広い範囲にわたるのは何故か?

30 地震の長期的な発生予測断層に加わっているせん断応力を知って, どれだけ地震が差し迫っているかを判断する.

31 1. プレートの相対運動に起因する応力蓄積 応力 プレート境界地震発生 時間 2. 断層に固有な応力蓄積 (Shimazaki, 1978) 応力 内陸地震発生 3. 両方 時間 内陸地震発生 応力 時間 長期にわたる応力蓄積なし

32 増加 減少 1944 年東南海,1946 年南海道地震の前後の内陸大地震の発生時期と応力変化 西南日本内陸の断層に固有な応力増加と南海トラフの地震による応力変化の模式図 ( 堀 尾池, 1999). が南海トラフの地震.

33 西南日本内陸の断層における南海トラフの地震による応力変化と再来周期から推定された応力増加率 ( 堀 尾池, 2002). 応力変化の回復時間は数十年のものが多い.

34 地殻は上部地殻 下部地殻に分けられる 阿武山観測所による震源分布に加筆

35 km Seismicity Seismigenic fault Seismicity? Aseismic fault? Geotherm 300 C -600 C Our definition Vp Ordinary definition Upper crust 6.7 Lower crust { Middle crust Lower crust -8km/s Upper mantle

36

37 トルコ北アナトリア断層における震源移動 USGS のホームページ より引用

38 中部地方の活断層と被害地震 日本の地震活動 より

39 活断層の端はどうなっているか? 端で非弾性変形する必要がある. 非地震性すべり非弾性変形

40 下部地殻 上部マントル 上部地殻の不均質により上部地殻に応力集中が発生

41 不均質により応力集中が発生 トンネルを掘ると側壁に応力集中が発生する

42 内陸地震の 様々なモデル Regional Stress 広域的な応力 Local Stress 局所的な応力 Distributed Shear 全体が変形 Localized Shear 変形が局所化 a) Regional stress model 圧縮応力 or 伸張応力 断層全体が変形 Local stress model b) c) Low strength model Distributed shear Fault Low strength zone d) Basal drag model Distributed Pure shear Fault Mantle flow Distributed shear model e) 上部地殻 下部地殻 上部マントル Low strength model Localized shear Fault Downward extension Basal drag model Localized simple shear Fault

43 Regional Stress Model New Madrid Seismic Zone Hinze et al.(1988)

44 Low Strength Model Distributed Shear NMSZ Kenner & Segall(2000)

45 Low Strength Model Localized Shear NMSZ Stuart et al.(1997)

46 Basal Drag model Basin & Range の 2 つの異なったモデル [Prof. John Tarney の HP より ]

47 Basal Drag Model Distributed Shear Ventura Basin Hager et al.(1999) ノースリッジ地震断層

48 (1) プレートの相対運動に起因して, プレート境界から遠く離れた内陸部にどのように応力が伝えられるのか? 日本列島においてプレートの厚さが薄いために, 日本列島を有限のモデル領域と見なすことができる. 非常に長い時間スケールにおいては上部マントルが緩和するので, プレート境界における摩擦力によって, プレート境界から遠く離れた内陸にも応力場を作ることが可能となる. プレート境界の形状が複雑な場合は, 物質が蓄積するため, 応力蓄積が発生する (Sato & Matsu ura, 1991).

49 (2) プレート境界では大地震の発生により応力が数十年から数百年単位で変動するのにも関わらず, 内陸の断層に数千年という時間スケールで応力が蓄積されるのは何故か? プレート境界の相対運動による応力場に起因して, 断層の下部地殻への延長部が非地震性のすべりを起こし, それにより地震発生域に応力蓄積が行われる. プレート境界における摩擦力の大きさは, プレート境界の大地震発生によってもゼロにならないので, その地震サイクルを越える時間スケールで内陸に応力蓄積を起こすことができる

50 日本列島の変形特性に関する従来の考え方 温度を重視 地殻が厚いと下部地殻は高温のため弱くなる ( 嶋本,1980) 下部地殻は流動変形が卓越し, 応力は上部地殻によって支えられている ( 佐藤 平田,1980)

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