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1 第 3 章子どもの読書活動推進の動向 ( 堀川照代 )

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3 第 3 章子どもの読書活動推進の動向 堀川照代 ( 青山学院女子短期大学 ) 1. はじめに子どもの読書離れが指摘されて久しい それに対して具体的な動きが顕著に見られ始めたのは 1993 年 3 月の 子どもと本の出会いの会 の結成であり 同年 12 月の 子どもと本の議員連盟 の発足であった 以来 子どもの読書活動の推進 が強調されてきたが そもそも 読書 とは何を指すのかを まず 確認しておきたい M.J. アドラーは 本を読む本 のなかで 本を教養書と文学に分けて 次のように述べている 教養書の読書には 情報を得るための読書と理解を深めるための読書とがある (p.19) 教養書が伝えようとするものは 読者がすでに経験したことや これから経験できるかもしれないようなことについての知識 (p.200) であり 何かを知るには判断力と推理力 すなわち知性をはたらかさなければならない (p.200) 一方 文学が伝えるのは経験それ自体で それは読む作業によってのみ読者が得ることのできる経験であり うまく伝えられれば読者は何らかの喜びを得る 何かを経験するには感覚と想像力を用いなければならない (p.200)( 本を読む本 M.J. アドラー C.V. ドーレン著 外山滋比古 槇未知子訳 講談社 1997) 文化審議会の 2004 年の答申 これからの時代の求められる国語力について にも ここでいう読書とは 文学作品を読むことに限らず 自然科学 社会科学関係の本や新聞 雑誌を読んだり 何かを調べるために関係する本を読んだりすることも含めたものである (p.20) と 読書 > 文学作品を読む ことが指摘されている 2000 年から 3 年毎に実施されている OECD の PISA 調査 ( 生徒の学習到達度調査 ) では 単なる 読書力 ではなく 読解力 が 15 歳児を対象に国際的に調査されている この 読解力 は 自らの目標を達成し 自らの知識と可能性を発達させ 効果的に社会に参加するために 書かれたテキストを理解し 利用し 熟考し これに取り組む能力 と定義されている 以上のように 読書は人間として成長する上での糧となるばかりでなく 情報や知識を得るためのものであり しかも 2000 年以降 読書 = 書を読む では包含できない PISA 型読解力の必要性が強調されてきている PISA でいう 書かれたテキスト には 文章 ( 連続型テキスト ) ばかりでなく図表やグラフ ( 非連続型テキスト ) が含まれ さらに プリントされたテキストだけでなく インターネットやコンピュータ上でアクセスできるようなデジタルなテキストも含まれる として デジタル読解力 という語も 2009 年の調査以降に使用されてきた つまり 読書というとき 教養書 ( 自然科学 社会科学関係や参考図書を含む ) 文学 新聞 雑誌 電子資料など幅広い種類のものを読むことが含まれているのである このような広義の 読む 行為を この章では 読書活動 と定義したい こうした読書活動が展開される場は 子どもたちの生活環境を考えるならば 家庭 地域 公共図書館 学校 学校図書館 が主要なものとして挙げられる 本章では これら 3 つの場を前提として 子どもの読書活動推進の動向を 国レベル 民間レベル 地域レベ 11

4 ル 学校レベルで概観していく 2. 国の子ども読書活動に関する政策動向国レベルの動きとしては 1 国会の動き 2 読書活動推進の動き 3 学校図書館活性化の動きという大きく 3 つの面を考えることができる 以下では これらの動きを織り混ぜながら年代的にみていきたい (1) 学校図書館関連の動きが強い 1990 年代戦後の子ども読書活動に関する重要な動きは 1953 年の 学校図書館法 施行である 1959 年には 学校図書館基準 が定められ 学校図書館の蔵書や担当者などの数的基準が定められた しかしこの基準には規制力はなく 現在から見れば 当時の理想の姿が描かれていたというほかはない 子どもの読書離れが社会的に危惧されるようになって久しいが 子どもの生活時間の大きな部分を占めているのが学校であることを考えれば 学校図書館に関心が向けられるのは当然であろう 1992 年に全国学校図書館悉皆調査が実施され 同年 10 月に 学校図書館の現状に関する調査報告書 ( 文部省 ) が発表された 翌 1993 年 3 月に文部省は 学校図書館図書標準 を設定して 学校図書館の蔵書量の目安を示し 当時の学校図書館の蔵書を 1.5 倍にすることを意図した その図書標準数を達成するために同 1993 年 6 月に文部省は 学校図書館図書整備新 5 か年計画 を策定して 年間 100 億円 計 500 億円を地方交付税として措置した 1998 年度から 2001 年度は単年で 100~110 億円が措置されたが 2002 年度から再び 5 か年計画で学校図書館図書整備のために年 130 億円が地方交付税で措置された その後 2007 年度からの 5 か年計画は 廃棄図書分を考慮して年 200 億円の措置となり 2012 年度からの 5 か年計画では年 200 億円のほか 新聞を配備するために単年度 5 億円 計 75 億円が新たに加えられた 1994 年 1 月に発足した 児童生徒の読書に関する調査研究者会議 は 全国学校図書館協議会に委嘱して 読書に関する調査 (1994 年 3 月 ) と 学校図書館及び読書指導に関する調査 (1995 年 3 月 全国公立小 中 高等学校及び特殊教育諸学校を対象 ) を実施し 研究協議の結果を 1995 年 8 月に 児童生徒の読書に関する調査研究者会議報告 として発表した 同報告書には 子どもの読書とその豊かな成長のために三つの視点 10 の提言 がまとめられている その 10 の提言のなかに 学校図書館を学校の読書センターにしよう と 学校図書館を学校の学習情報センターにしよう という項目があり これ以降 学校図書館の 2 つの機能として 読書センター と 学習情報センター の語が使用されるようになった 1996 年 7 月の中央教育審議会第一次答申 21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について の第 3 章 情報化と教育 には 学校図書館の役割が次のように述べられている 学校の施設の中で 特に学校図書館については 学校教育に欠くことのできない役 12

5 割を果たしているとの認識に立って 図書資料の充実のほか さまざまなソフトウェアや情報機器の整備を進め 高度情報通信社会における学習情報センターとしての機能の充実を図っていく必要があることを指摘しておきたい また 学校図書館の運営の中心となることが期待される司書教諭の役割はますます重要となると考えられ その養成について 情報化等の社会の変化に対応した改善 充実を図るとともに 司書教諭の設置を進めていくことが望まれる また 1998 年 6 月の中央教育審議会答申 新しい時代を拓く心を育てるために : 次世代を育てる心を失う危機 には 子どもたちに読書を促す工夫をしよう と題して 学校においては まず第一に 子どもが感動する本を用意することが大切である など 5 項目の学校における工夫が示されている このように 学校図書館の 2 つの機能への期待が 中教審答申にも示されている 学校図書館の蔵書数の改善から始まった文部科学省の学校図書館改革ともいうべき流れは 1990 年代後半から目覚ましいものがある 1995 年度から 学校図書館情報化 活性化推進モデル地域事業 が開始された 学校図書館の情報手段を整備し他の図書館とのネットワーク化を図り 学校図書館の学習情報センターとしての機能の充実 活性化に資することを目的としたもので 2000 年度まで継続された 1997~1998 年度には 地域に開かれた学校図書館推進モデル地域事業 が実施された 学校図書館の地域への開放や地域と連携協力を推進することにより 学校図書館の充実 活性化に資する目的のものであった また 1997 年から 読書指導研究指定校事業 が実施され 2 か年の指定を受けた学校が 学校図書館の活用の在り方や読書指導の在り方について実践的研究を推進した 1998 年度から学校図書館の活性化に資するために 学校図書館フォーラム が開始された 全国を東部 中部 西部地区の 3 ブロックに分け 文部省と開催地教育委員会の主催で 2 日間をかけて実施した 国 公 私立の小学校 中学校 高等学校 特殊教育諸学校の教諭で学校図書館の運営 活用において指導的立場にある教諭 校長 教頭 教育委員会指導主事を対象にしたもので 事例発表や研究協議 講演 見学等が行われた 1999 年度には 学校図書館ボランティア活用実践研究指定校事業 が開始された 学校図書館の指導体制の充実を図るため 地域の人材や保護者を学校図書館のボランティアとして受け入れ 司書教諭への支援などに活用することによる学校図書館の充実方策について実践的な研究を行うためのもので 12 校が 2 か年指定された 1997 年 6 月 11 日に 学校図書館法の一部を改正する法律 が公布 施行され 2003 年度から 12 学級以上の学校に司書教諭が必置となった この 1997 年 6 月に 学校図書館の充実等に関する調査研究協力者会議 が発足している この会議は 新しい時代に対応する学校図書館の充実方策等について審議を行い 1998 年 2 月に 司書教諭講習等の改善方策について報告 を発表し 講習科目を 7 科目 8 単位から 5 科目 10 単位とすること 実務経験による単位軽減を廃止することなどの提言を行った これ 13

6 を受けて 1998 年に司書教諭講習規程改正が公布され 1999 年に施行された また 学校図書館法改正後の 1998 年に 学校図書館議員懇談会 が発足した (2) 国際子ども図書館開館の 2000 年以降 1993 年 12 月に 子どもと本の議員連盟 が発足したが この連盟は 子ども読書推進のための当面の活動として1 学校図書館法の改正 2 子どもの本の館の設置 という目的を掲げた 1994 年には国立国会図書館支部上野図書館に国際子ども図書館を設置するという決定がなされ 同議員連盟はこの事業を 戦後 50 年の記念事業 と位置づけて 1995 年 6 月に 国際子ども図書館設立推進議員連盟 と改称した 2000 年 5 月 5 日に国立国会図書館の支部図書館として 国際子ども図書館 が部分開館した 東京都上野にある 1906 年に帝国図書館として建設されたルネサンス様式の明治期洋風建築を改修したもので 2002 年に全面開館した この 2000 年の開館を記念して 2000 年は 子ども読書年 とされた 国際子ども図書館設立推進議員連盟 は目的を達成し 2000 年 5 月 6 日に 子どもの未来を考える議員連盟 へと改称した 国際子ども図書館は 我が国唯一の国立の児童書専門図書館として 国内外の豊富な資料と情報資源を活用し 子どもの本に関わる活動や調査研究を支援することにより 子どもの本は世界をつなぎ 未来を拓く! という理念の実現を目指します として 児童書専門図書館としての役割 子どもと本のふれあいの場としての役割 子どもの本のミュージアムとしての役割 を担っている ( 同館 HP より ) 2000 年度から国立教育政策研究所が 生きる力をはぐくむ読書活動推進事業 を開始した これは 学校 家庭 地域社会が相互に連携し 児童生徒の読書を進めるための効果的な取組方法について実践的研究を行い 生きる力をはぐくむ読書活動の一層の推進に資するもので 全国の 10 地域程度を 2 か年指定した 文科省は 読書を推進するための活動において特色ある優れた実践を行っている学校や図書館 団体 ( 個人 ) を顕彰する目的として 2000 年度から毎年 読書活動優秀実践校 を表彰している また 文科省は 2000 年度までの 学校図書館情報化 活性化モデル地域事業 をうけて 2001 年度から 学校図書館資源共有型モデル地域事業 を開始した 学校図書館を活用した教育の推進及び学校を越えた資料の共用の促進等を図るため全国 47 地域を 3 か年指定した 2001 年に 子どもゆめ基金 が創設された これは 民間の寄付を受けて 国立青少年教育振興機構が 民間の実施する子どもの体験活動や読書活動を支援するために助成金を交付するものである この子どもゆめ基金の一環として 2002 年度から 日中韓子ども童話交流 が毎年 8 月に開催されている 日本 中国 韓国の子どもたちが集まって絵本や童話をテーマに 1 週間の交流を行うもので 2010 年までは日本で開催されたが 2011 年は中国で 2012 年は韓国で開催された 2001 年 12 月には 子どもの読書活動の推進に関する法律 が制定された これには 国の責務 地方公共団体の責務 事業者の努力 保護者の役割 の条項が立てられたほか 政府は 子ども読書活動推進基本計画 を策定しなければならないと明記されていた 都道府県と市町村に対しても 子ども読書活動推進計画 を策定す 14

7 るよう努めなければならないとされた また 4 月 23 日が 子ども読書の日 と定められた この法律を受けて 2002 年 8 月に 子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画 が閣議決定された これは 5 年間を前提とした家庭 地域 学校における読書活動の推進のための方策を掲げており 方策の効果的な推進に必要な事項として 推進体制等 と 財政上の措置 が挙げられていた 国立教育政策研究所に 2001 年 1 月に教育課程研究センターが設置された そして 2003 年度から 教育課程研究指定校事業 が始められた この事業の研究主題のなかには 学校図書館との連携を深めた教科等の指導の在り方に関する研究 が含められている 2005 年 7 月に文字 活字文化振興法が制定された 学校教育における言語力の涵養 に関する第 8 条 2 号として 司書教諭及び学校図書館に関する業務を担当するその他の職員の充実等の人的体制の整備 学校図書館の図書館資料の充実及び情報化の推進等の物的条件の整備等に関し必要な施策を講ずるものとする と記されている 同 2005 年 12 月には文科省が 読解力向上プログラム を発表している PISA 調査は 読解の知識や技能を実生活の様々な面で直面する課題においてどの程度活用できるかを評価することを目的としており これは現行学習指導要領がねらいとしている 生きる力 確かな学力 と同じ方向性にある また 学習指導要領国語では 言語の教育としての立場を重視し 特に文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め 自分の考えを持ち論理的に意見を述べる能力 目的や場面などに応じて適切に表現する能力 目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることが重視されており これらは PISA 型 読解力 と相通ずるものがある 特に PISA 型 読解力 については ワーキンググループにおいてさらに詳細な分析を進めるとともに 大学の研究者 現場の教員等の協力も得ながら 1PISA 型 読解力 を高めていくための具体的な施策や指導の在り方についての課題分析 2 文章の解釈や論述の力を高める指導や読書活動の推進方策等の検討を行ってきた 今回 これらの検討結果を踏まえ ここに 読解力向上プログラム として取りまとめたところである 以上のような趣旨が述べられ 3 つの重点目標 (1テキストを理解 評価しながら読む力を高める取組の充実 2テキストに基づいて自分の考えを書く力を高める取組の充実 3 様々な文章や資料を読む機会や 自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実 ) と 5 つの重点戦略 が示された 2006 年 12 月に教育基本法が改正され これを受けて 2007 年 6 月に学校教育法が改正された この総則の第 2 章 義務教育 第 21 条に 義務教育として行われる普通教育 の目標を 10 項目提示しているが その第 5 項目に 読書に親しませ 生活に必要な国語を正しく理解し 使用する基礎的な能力を養うこと と明示されている さらに 2008 年 3 月に小学校と中学校の学習指導要領が改訂され 2009 年 3 月に高等学 15

8 校と特別支援学校の学習指導要領が改訂された 改訂前の学習指導要領の 生きる力 の育成という基本理念が踏襲されており 特に 言語活動の充実 が重視されていた (3) 第二次子ども読書推進計画策定の 2008 年以降 2008 年 3 月に 子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画 ( 第二次 ) が閣議決定された 第二次計画には 第一次基本計画企画における課題 として次の 4 点が述べられている 1 子どもたちの読書の取組状況について 依然 学校段階における差が生じている 2 読書活動推進に向けた取組について 地域間の差が依然として顕著である 3 学校図書館資料の整備が不十分である 4 子どもたちの読解力が低下している また 読解力に関して次のように説明されている 平成 16 年に公表された <OECD 生徒の学習到達度調査 > により 我が国の子どもたちの読解力が低下傾向にあることが示された 平成 19 年に公表された同調査からも 引き続き読解力の向上が課題であることが明らかになった 読書習慣のある子どもほど読解力に優れている傾向があることから 読解力の向上のため 新聞や科学雑誌なども含めた 幅広い読み物に親しむことの必要性が指摘されている また 読む力 は 書く力 や 考える力 にも関連しており 読書後に自分の思いや考えを話したり書いたりする取組ともあわせた活動の重要性も指摘されているところである 2007 年度から 子ども読書応援プロジェクト を文科省は創設した 子どもの読書活動に関する社会的気運の醸成を図るとともに 地域における子どもの読書活動推進体制の整備を図ることを目的としたものである 具体的事業として 子ども読書応援団推進事業 子ども読書地域フロンティア事業 子ども読書情報ステーション事業 を実施し 2009 年度からは 子ども読書地域スクラム事業 子ども読書推進に関する評価 分析事業 も加わった 2008 年 4 月 文科省は 子どもの読書サポーターズ会議 を発足させた このサポーターズ会議と連携しつつ地域ぐるみで子どもの読書活動を応援するモデル地域事業 子ども読書の街 が全国 10 市町村に指定された このサポーターズ会議の報告書 これからの学校図書館の活用の在り方について が 2009 年 3 月に発表された この報告書のなかで初めて 国の公文書のなかに 学校司書 という語が見られた 2010 年は 国民読書年 と設定され 同 2010 年 7 月に 国民の読書推進に関する協力者会議 が発足し 2011 年 9 月に報告書 人の 地域の 日本の未来を育てる読書環境の実現のために が発表された 2010 年 8 月には 地域活性化交付金 ( 住民生活に光をそそぐ交付金 ) ( 内閣府 ) が創設された この交付金の使途として1 地方消費者行政 2DV 対策 自殺予防等の弱者対策 自立支援 3 知の地域づくり の 3 分野が示されており 3の分野として公共図書館や学校図書館の蔵書増加に交付金を役立てた自治体もあった 16

9 2012 年度に 継続して新たな 学校図書館図書整備 5 か年計画 が策定されたのは既述したとおりである 学校図書館図書標準の達成率は 2011 年度末で小学校 50.6% 中学校 42.7% である 2012 年度からは新たに 学校図書館に新聞を配備するための交付金措置に加えて 学校図書館担当職員 ( いわゆる 学校司書 の配置のために約 150 億円 ) が措置された これは 1 週当たり 30 時間の担当職員を約 2 校に 1 名程度配置することが可能な規模であるとされている 地方交付税とはいっても 学校図書館の人件費に予算が措置されたのは初めてであった これと関連して 2012 年度に学校司書法制化の動きが浮上した 3. 民間の子ども読書活動推進に関する動向 (1) 戦後から 1950 年代戦後早くも 1947 年に読書週間実行委員会が結成され 第 1 回 読書週間 (11 月 17 ~23 日 ) が実施された 昭和 20(1945) 年の終戦直後 食べるものもやっとという日々にもかかわらず 日本の出版活動は活発に動き出していました 一般の人々の読書欲も高く その気運を感じとった出版社 図書館 取次 書店 報道 文化関連各団体約 30 が 新生日本を文化国家に との合言葉のもと 昭和 22(1947) 年に読書週間実行委員会を結成し実施した ( のであった そして 読書週間のたびに実行委員会を結成するのではなく年間をとおして読書運動を推進していく組織として 実行委員会を解消し 1959 年 11 月に読書推進運動協議会 ( 読進協 ) が設立された これは 日本書籍出版協会 日本雑誌協会 教科書協会 日本出版取次協会 日本書店商業組合連合会 日本図書館協会 全国学校図書館協議会の 7 団体から成っている この読進協により 1959 年から こどもの読書週間 ( 第 1 回は 5 月 1~14 日 ) が実施された 読書週間を飾るイベントとして 毎日新聞社が 1947 年に全国の 16 歳以上の男女を対象に読書世論調査を開始した これは 2012 年で第 66 回となる また 学校図書館法が施行されたのを機に 1954 年から毎年 学校読書調査 が実施されている これは 1950 年 2 月設立の全国学校図書館協議会と毎日新聞社が共同で 全国の小学 4 年生以上と中学生 高校生を対象として調査しているもので 2012 年度で第 58 回を数える また 毎日新聞社と全国学校図書館協議会は 青少年読書感想文全国コンクール を 1955 年から開始し 1989 年には 各地区で実施されていた読書感想画コンクールをまとめた形で 読書感想画中央コンクール を始めた (2) 子どもの読書に関して高まりがみられた 1960~1980 年代子どもの読書に関しては 1960 年代に大きな高まりが見られた 鹿児島県立図書館長であった久保田彦穂 ( 筆名 : 椋鳩十 ) が 1959 年に 母と子の 20 分間読書 を試行し 1960 年から鹿児島県が 母と子の 20 分間読書運動 として本格的に推進した これは 子どもが教科書以外の本を 20 分間位読むのを母親が聞く というものであり 1961 年に 母と子の 20 分間読書 ( あすなろ書房 ) が出版されている 17

10 この時代に大きな影響を与えたもう 1 冊の本が 石井桃子の 子どもの図書館 ( 岩波書店 1965) である 石井桃子が自宅で開いた かつら文庫 の実践を記録したもので これに触発されて全国に地域 家庭文庫が広まった 文庫は 大阪府子ども文庫連絡会 ( 大子連 ) のように地区として組織化されたところもある また 全国の文庫をつなげる 親子読書地域文庫全国連絡会 が 1970 年 4 月に発足し 機関誌 子どもと読書 ( 月刊 ) を刊行し 2 年ごとに全国交流会を開催している 文庫の活動は 1986 年の IFLA( 国際図書館連盟 :International Federation of Library Associations and Institutions) 東京大会のときに紹介され 公共図書館とは異なる独自の存在として BUNKO の名称で国際的に認知された 石井桃子のかつら文庫と 土屋滋子の主宰する 2 つの土屋児童文庫 松岡享子の主宰する松の実文庫の 4 つの文庫が母体となって 1974 年に東京子ども図書館が設立された この私立図書館は 子どもたちへの直接サービスのほかに 子どもと本の世界で働くおとな のために 資料室の運営 出版 講演 講座の開催 人材育成など さまざまな活動を行って いる ( 東京子ども図書館 HP より ) 1960~70 年代の親子読書の高まりは公共図書館設置運動へとつながっていった 1970 年発行の 市民の図書館 ( 日本図書館協会 ) には 公共図書館の重点目標として 貸出重視 児童サービス重視 全域サービス重視 が明記されている 公共図書館の児童サービスの向上とともに 地域における文庫はその役割を果たし終えたり 文庫の主宰者が高齢化したりして 現在では文庫の数は減少している 1974 年に JBBY( 日本国際児童図書評議会 :Japanese Board on Books for Young people) が設立された これは それまでの 児童図書センター を発展的に解消して設立したもので IBBY( 国際児童図書評議会 :International Board on Books for Young People) の窓口として国際的諸組織の連絡 提携を行っている IBBY は 1953 年に設立された 子供の本の国際連合 ( 日本大百科全書 渡辺茂男執筆 ) ともいうべき組織で 1998 年の第 26 回 IBBY ニューデリー大会で 美智子皇后が基調講演としてビデオを通して 子供の本をとおしての平和 : 子供時代の読書の思い出 を語られたことは記憶に新しい 1979 年にヤングアダルト出版会 (YA 出版会 ) が設立された YA 世代の中学生や高校生が読書をする環境を整え YA 向けの本の出版を活発にしていくことを目的 とした出版社の集まりで 現在 20 社が参加している (YA 出版会 HP より ) 1988 年に 朝の読書 が開始された 千葉県船橋学園女子高校 ( 現 東葉高校 ) の林公と大塚笑子の両教諭が提唱 実践を始めたもので 毎朝 ホームルームや授業開始前の 10 分などに 児童生徒がそれぞれに自分の好きな本を黙って読む というものである 毎日やる みんなでやる 好きな本でよい ただ読むだけ が条件である これは さまざまな形にアレンジされて実施されており 2012 年 12 月 14 日現在 朝の読書 の実践は 小学校 16,919 校 (80%) 中学校 8,430 校 (79%) 高等学校 2,126 校 (44%) 計 27,475 校 (75%) に広がっている ( 朝の読書 の HP より ) 18

11 (3) 子ども読書活動推進の動きが活発化する 1993 年以降 1993 年には 子どもと本の出会いの会 ( 井上ひさし会長 ) が発足し 子どもの本の作り手や渡し手の立場の人など 当時 子どもの本に関わる団体が 32 団体 個人 706 名が加入していた 国際子ども図書館を上野に設置するという 1994 年の決定を受け 1995 年 5 月に 国立の国際子ども図書館設立を推進する全国連絡会 ( 永井道雄会長 ) が設立された 以来 1996 年に 学校図書館推進会議 1999 年に 子ども読書年推進会議 2000 年に 国際子どもの図書館を考える全国連絡会 2001 年に 子どもの読書推進会議 と 国の動きに呼応して次々に組織が発足し 官民の協力 連携を強めた 学校図書館への人の配置は全国的になかなか進まず 1991 年に岡山市学校図書館ビデオ製作委員会編 本があって人がいて というビデオが発表されると それを視聴することによって学ぼうとする 学校図書館を考える会 が各地に設立されていった これらの各地の組織を結ぶ 学校図書館を考える会全国連絡会 が 1997 年に設立されている 子ども読書年の 2000 年には イギリスの ブックスタート が我が国に紹介された これは 英国で 1992 年に始まったもので すべての赤ちゃんのまわりで楽しくあたたかいひとときが持たれることを願い 一人ひとりの赤ちゃんに 絵本を開く楽しい体験といっしょに 絵本を手渡す活動 で 市町村単位で 0 歳児健診の際などに 絵本を開く楽しい体験といっしょにあたたかなメッセージを伝え 絵本を手渡す という方法をとる 2000 年 11 月の試験実施を経て 2001 年 4 月に全国 12 市町村が実施し始め 2012 年 11 月 30 日現在 全国 1742 市区町村のうち 832 市区町村がブックスタートを実施している (NPO ブックスタート HP より ) また 読書指導の方法も各種 紹介されてきた 1997 年に 読書で遊ぼうアニマシオン ( モンセット サルト著 佐藤美智代ほか訳柏書房 ) が出版された これは スペインで始まったもので 読書へのアニマシオン は こどもの読みの能力の発達段階に沿って 遊びの要素を取り入れたスタイルで 楽しく読書体験を積みながら 読める人 へと育っていくようにプログラムされた読書教育法 である ( 日本アニマシオン協会 HP より ) このほか 2000 年以降には ブッククラブ や リテラチャーサークル リーディングワークショップ などアメリカで開発された方法が紹介され 主に学校教育で実践されている さらに 各団体 企業が独自の活動を立ち上げている 出版文化産業振興財団 (JPIC) は 読書アドバイザー養成講座 (1993 年 ~) や 読み聞かせサポーター講習会 (1999 年 ~) などを開催し 絵本や読み聞かせ等に関する情報誌 この本読んで ( 季刊 ) を 2001 年 11 月に創刊した NPO 図書館の学校 (2012 年以降は図書館振興財団 ) は 1997 年から 図書館を使って調べる学習コンクール を始め 講談社は 創業 90 周年を記念して 1999 年 7 月より 本とあそぼう全国おはなし訪問隊 を開始した 朝日新聞社は 2003 年から オーサービジット 事業を立ち上げた 朝の読書 ( 朝読 : あさどく ) が学校で行われるのに対して 家庭での読書を推進 19

12 しようと 2006 年 12 月に 家読 ( うちどく ) が提唱され その推進のために 2009 年 4 月に家読推進プロジェクトが組織されている 2009 年から朝日新聞社と全国学校図書館協議会は 高校生対象に 読書会の成果を一枚の どくしょボード に表現する どくしょ甲子園 コンクールをはじめた 2007 年に京都大学大学院のある研究室で始められた ビブリオバトル は 本の紹介を 5 分間で行い 聞き手がどの本を読みたいと思ったかを競うもので 2010 年から首都決戦が行われ 2012 年の首都決戦には予戦参加者が 524 名 92 大学が参加したという そのほか 読書検定や語彙 読解力検定など各種検定も実施されている 4. 地方自治体の子ども読書活動推進に関する政策動向 (1) 子ども読書活動推進計画の策定状況 2012 年 3 月 31 日現在の文部科学省の調査によれば 都道府県における子ども読書活動推進計画は 2006 年度末までに全都道府県が策定済であり 2010 年度末には 43 都道府県において第 2 次計画 ( または第 3 次計画 ) が策定されている 市町村の子ども読書活動推進計画の策定率は約 53.8%(938 市町村 ) である 2012 年 3 月 31 日現在 計画を策定中の市町村は 11.2%(195 市町村 ) 策定するか否か検討中が 17.9%(311 市町村 ) 策定していない市町村は 17.1%(298 町村 ) であった 国の第二次推進計画において 市町村の 50% 以上が子ども読書活動推進計画を策定することが目標とされているが 計画策定済の市町村は 2010 年度末の 46.3% から 2011 年度末に 53.8% になり 目標が達成されたこととなった (2) 自治体の子ども読書活動推進の取組都道府県や市区町村では 読書県しずおか や 子ども読書県しまね どくしょのまち大子町 など自治体名に 読書 を冠してアピールしているところが見られる Web 上に 子ども読書活動推進ページ 等の名称で当該自治体の子ども読書活動に関する情報を提供しているところも多い それらのページによると さまざまな子ども読書推進活動が実施されており それらを 1 啓発活動 2 資料や情報の提供 3 具体的取組 4 調査 5 養成 研修の 5 つに分けて例示したものが表 1.1 である 啓発活動 資料や情報の提供 表 1.1 自治体の子ども読書推進活動読書や図書館に関する標語等のコンクール朝読 家読運動やキャンペーン等のリーフレットやチラシの作成イメージキャラクターの作成子ども読書活動推進 絵画ポスター展市独自の子ども読書の日 ノーテレビ ノーゲームデイなどの設定物流ネットワークや公共図書館の利用等に関する学校向けリーフレットの作成 県内市町村のボランティア団体のリストの作成 学校の特色ある取組事例集の作成子ども読書活動推進だより ボランティア向け情報誌 親子読書通信などの作成 配布 子どもに読んであげたいこの 1 冊 や所蔵資料 ( 大型絵本など ) のリストなどの作成 20

13 具体的取組 調査 養成 研修 学校図書館& 公共図書館連携マニュアル 学校図書館ボランティアハンドブック 読書ガイドブック ( 小学生 中学生版 ) の作成学校支援図書セット貸出 学校図書館図書支援 1,000 冊プラン学習支援キットやブックトークキットの貸出 子ども読書絵てがみ や 家族ふれあい読書新聞 のコンクール調べ学習コンクール 学校図書館活用コンクール 言葉の力大会 ( 音読大会 ) 言葉の輝きコンクール 読書体験談 ( 本が与えてくれたもの 本が見せてくれた夢 ) 募集子どもの読書推進大会 子どもの本の日フェスティバルブックスタート 講演会 ( 児童文学作家による ) 子供の読書ボランティア指導者派遣事業子ども読書活動推進モデル校の指定訪問サービス ( おはなし会 絵本の選び方など ) 読書ノートの配布 読書マラソン学校司書等配置事業 学校図書館パワーアップ事業 23 が 60 運動 家族 10 分間読書運動 読書推進アドバイザーの新設子どもと保護者の読書状況調査子ども読書活動に関わる団体や個人の調査子どもの読書推進に係る取組状況調査学校の学校図書館の利用や読書活動推進に関する取組状況調査読み聞かせ講座 子どもの読書ボランティア養成講座ボランティア養成手作り布絵本講座先生のための子ども読書活動学習講座 そのほか 子ども読書 ( 活動 ) 支援センター や 子ども読書推進センター 学校図書館支援センター など 子ども読書活動推進や学校図書館活用の中枢を担う組織を 教育委員会や図書館 教育センターなどに新たに設置している自治体が増えてきている また プロジェクトを立ち上げて読書推進に組織的 総合的に取り組んでいる自治体もある 例えば 東京都の 言葉の再生プロジェクト は 国際化 情報化の先端を歩む東京から 言葉の力 を再生し 世界で活躍できる若者を育てる として 局横断的な活字離れ対策チームを 2010 年 4 月に立ち上げた 言語力の習得 向上 のためにプロジェクト推進校で教員の言語力研修や言語力を取り入れた授業を展開したり 誰もが本を読める環境の整備 のためにブックリボン運動 ( 児童養護施設や児童館 矯正施設などへの本の寄贈 ) や ビブリオバトル ( 知的書評合戦 ) や すてきな言葉と出会う祭典 を行ったりして 子どもから社会人までを対象に総合的なプロジェクトを実施している 江戸川区は 2009 年に 読書改革プロジェクト を立ち上げた < 本好きな子ども> < 本で学ぶ子ども>を育てるために 学校 家庭 地域が一体となり 区を挙げて読書活動の機運を高めて ( 江戸川区 HP より ) いくことを目指している 読書科 の実施 学校図書室 蔵書の充実 読み聞かせボランティア の研修 僕の私のおすすめの本 の紹介などが実施されている 21

14 (3) 公共図書館の学校及び学校図書館に対する支援学校図書館の整備が不十分であるために 公共図書館が 学校及び学校図書館への支援に力を入れる必要性が高まってきている 公共図書館の学校への支援のタイプには 次のような 5 つのタイプが見られる 1 学校図書館の整備と 整備 運営に関する相談 2 資料の提供 3サービスやプログラムの提供 ( 講座や研修等 ) 4 交流 共同作業 ( 連絡会や学習会等 ) 5 情報の提供と発信 ( 印刷物 Web) これらを示したものが表 1.2 である 支援のタイプ 学校図書館の整備 運営 資料の提供 サービスやプログラムの提供 交流 共同作業 情報の提供と発信 印刷物 Web 表 1.2 公共図書館の学校への支援支援事例巡回 訪問による相談 ( 選書 廃棄 補修 展示 分類 配架等 ) 選書 分類 除籍 レイアウト等の整備図書委員会等に図書館システム利用指導リクエスト 物流ネットワーク団体貸出 配送 ( 調べ学習用資料 郷土資料 ペープサート等 ) 貸出セット 学級貸出用 1 セット 40 冊 テーマ ( 世界遺産 福祉 食育 環境等 ) 教科書内容に準拠( 米 大豆 富士山 戦争等 ) 1 年生読み聞かせ用図書 テーマ絵本 理科 科学図書 ブックトークキット新刊児童書閲覧会 学校図書館支援 1,000 冊貸出図書館見学 体験 職場体験 学級招待図書委員 ボランティア向け説明会児童生徒向け 教員向け出前講座 授業 講師派遣授業に参加 ( ブックトーク 百科事典の使い方など ) 朝読書支援 ( 意識調査アンケート案の作成 朝読書手帳の作成 ) 夏休み推薦図書リストの作成 配布テーマ別資料リスト 教員向けブックリストの作成パスファインダーの作成学校図書館懇談会 協議会 連絡会 勉強会学校図書館担当者会議 子ども読書連絡会の運営児童図書選定協議会ボランティアの登録 派遣推薦図書の冊子作成 配布 学校向け新着図書案内 学校図書館整備の手引き 公共図書館利用の手引き 調べ学習の手引き 教材開発のための図書館活用ガイド 図書館だより 読書通信をイントラネットで配信子ども向け郷土資料の作成 提供 学校の先生へ YA 向けページ 子どものページ 検索のページ 地域データベース レファレンス質問一覧リンク集 調べ学習に役立つ情報源 市内学校図書館パスファインダー ワークシート調べ学習の公共図書館担当者メーリングリストメールマガジンの配信 5. 特色ある読書教育及び学校図書館活用教育読書や読解力等の重要性が認識され これに特化した特色ある教育を実践している 22

15 自治体がある 沼津市の 言語科 江戸川区の 読書科 世田谷区の 日本語科 兵庫県伊丹市の ことば科 大阪府門真市の ことばの時間 広島市の 言語 数理運用科 などである 沼津市では 構造改革特別区域の特例措置を活用して 2006 年度から 言語科 を設置した 沼津市教育委員会作成の資料によると 小学 5 年生と中学 3 年生を対象とした市独自の 学習到達度調査 や 学習意識調査 の結果 コミュニケーション能力の低さが認められ 沼津の子どもたちにおいては 言語の教育は喫緊の継続課題である との認識にたち 言葉を用いて積極的に人と関わろうとする態度の育成 を目標に 言語科 を 設置したのである 構造改革特区は 2006 年 3 月認定だが その後の規制緩和の全国化により 2009 年度からは 特別な教育課程の編成 の特例が認定されている 図 1.1 沼津市の言語科教科書言語科は 読解力を育む 読解の時間 とコミュニケーションの意欲を育む 英語の時間 の 2 領域 から成る 2006 年度末には 言語科指導要領 を策定し 2009~2011 年度にかけて副読本 ( 小学校低学年用 中学年用 高学年用 中学生用の 4 種類 ) を作成した 2012 年 4 月には 指導の手引き を作成している 読解の時間の目標は次の 3 つである 1テキストを理解し 評価しながら読む力 聞く力を子ども同士のかかわり合いを通して 高める 2テキストに基づいて自分なりの考えを書く力 話す力を子ども同士のかかわり合いを通して 高める 3 言語についての知識や理解を深めるための基礎力を育成する また 沼津市のように自治体ぐるみでの取組ではなく 個別の学校で取り組んでいる特色ある教育もある 例えば 山形県鶴岡市立朝暘第一小学校は 2003 年度の全国学校図書館協議会の学校図書館大賞を受賞した学校であるが 学校図書館活用教育を学校経営の核に据えて 図書館活用教育を通して子どもの感性が磨かれ 思考が深まり 知性が育ち 生涯にわたって知的好奇心が旺盛で思いが深い学習者の育成を意図して おり 同校 HP には 実践への四つの柱 として 次の項目が挙げられている 柱 1. 生きる力となる読書力の育成 [ 心を支える言葉を育てる ] 重点 1 授業を通した読書指導の継続重点 2 読書の習慣化をさらにめざした取組の充実重点 3 児童個々の実態に応じた読書相談の充実柱 2. 図書館を活用した授業の実践 [ 学びを支える考える力を育てる ] 重点 1 図書館を活用した授業の研究的な実践のつみあげ ( 詳細は学校研究計画による ) 重点 2 図書館を活用した授業を支える図書館メディア資料検索力の育成重点 3 図書館を活用した授業を効果的に行うための図書館づくり柱 3. 図書館活用教育を組織的に進める [ 第六次図書館活用教育推進計画の具現化 23

16 を図る ] 重点 1 全校で図書館活用教育を進めるための組織の確立柱 4. 家庭 地域との連携 [ 家庭への啓蒙 ボランティアの活性化 ] 重点 1 読書の必要性についての家庭への啓蒙重点 2 読書支援ボランティア 本のたからばこ の育成重点 3 他校 公共図書館との連携を進め 図書館活用教育を広げる 京都市立御所南小学校では全教科の基盤となる力を育成する 読書科 という教科を 2007 年度から創設した 読解メソッド ( 年 35 時間 ) と 読書くらぶ ( 年 10 時間 ) の時間を設けて PISA 型読解力を育成する そのほか 私立学校ではこうした教育が伝統的に見られる学校がある 関西学院中等部 高等部では 読書科 が実施されているが 中等部の読書科のカリキュラムは図 1.2 のとおりである ( 同学院 HP より ) 図 1.2 関西学院中等部読書科カリキュラム ( 同学院 HP より ) 茗溪学園では 高校 2 年生に課題研究が課せられるという study skills の集大成として高校 2 年生が行うのが< 個人課題研究 >です <17 歳の卒論 >とも呼ばれ 各個人で興味を持った課題 ( テーマ ) を独自に準備し 課題指導者 ( 各教科教員 ) の指導のもとで 1 年間にわたり生徒自身が考え 調査 研究を行います その過程で 大学や研究機関 企業などを訪問し 調査研究の援助をお願いすることもあります この研究を通じて 問題把握 分析 情報収集 まとめ 発表等の能力など 総合的な力を育成します また研究成果であるレポート 要旨集 は学内に保存され 誰でも閲覧できるようになっています ( 同学園 HP より ) 6. まとめと課題子どもの読書活動の推進は 1993 年の 2 つの組織の発足から 大きく動いてきたように思われる 議員連盟の動きは大きな推進力となり 子どもたちの生活に大きな部分を 24

17 占める学校において 読む力 を培うセンターである学校図書館を活性化させるべく 1990 年代後半から各種の事業が次々と立ち上げられた 子どもの基本的生活の場である家庭 地域や公共図書館などの子ども読書活動の推進は戦後から継続して行われてきたが 2000 年の国際子ども図書館開館や 2001 年の子ども読書活動の推進に関する法律制定を機に大きく動いてきた 子ども読書活動の推進 の施策を考える時 (1) 読書の啓発 動機づけに関わる施策 (2) 読書施設や読書資料の充実に関わる施策 (3) 読書教育 国語力や情報リテラシー向上に関わる施策という段階を考えることができる 1990 年代の国の動きは (1) の啓発 動機づけに関わる施策と 学校図書館活性化を目指した (2) の読書施設 資料の整備に関わる施策であった 2003 年以降は (1) も (2) も含み さらに (3) の読書教育の展開に関わる施策の段階である とくに子ども読書活動推進計画の第一次 (2002) と第 2 次 (2008) の間には OECD の PISA 調査の結果から いわゆる ピザショック が引き起こされ 読解力 の概念がクローズアップされた これは 読書 に求められるものを拡大し 今回の学習指導要領の改訂にも大きな影響を与えた これと関連して 読書活動 や 読書教育 というときに その目的とするところに様々な角度がみられる 感性を高める読書 言葉の力を育む読書 読解力を培う読書 情報リテラシーを育成する読書 などの目的が記述されており 本 読書 言葉 学校図書館活用 など その焦点化するところによって 取組内容や名称が多様になってきている 2010 年は国民読書年とされ 2011 年に 国民の読書推進に関する協力者会議報告書 が出されている 自治体の子ども読書推進計画も 秋田県のように県民全体を対象として読書推進に取り組んでいるところもあり 読書 がもはや 子ども のみを対象に推進するだけでは目的を達成しえないことが認識されてきたように思われる また 民間における 1993 年以降の各種の企画は 乳児から成人まで 保護者や読書アドバイザーなど 家庭から公共 学校図書館など 多くの年代やさまざまな立場の人々 そしてさまざまな場を想定した多彩な啓発 推進活動となっている 自治体では 国の事業を上手に活かして 子ども読書活動の推進や学校図書館の活性化に成果を挙げているところがある なかには 事業を受けた時期は自治体内で活発に展開していたが 国の事業が終了して助成金がなくなると同時に動きが停滞してしまう自治体があるのは大変残念なことである 国の事業が自治体の施策の呼び水にならなければ 根本的な解決にはならない 事業を受けた自治体では 事業に関する報告書を提出したり発表会を開催したりしている しかしそれらの成果に関する情報がどれほど共有されているかが課題であろう 子ども読書推進や学校図書館活性化のノウハウがどれほど伝えられているか 成果が実施後の自治体内だけに留まってはいないか 全国の同種の事業成果を比較分析して改善方策のノウハウを導き出し一般化する役割が必要であろう この役割はどこに求められるのであろうか また 各地の学校図書館を担当する司書教諭のための指導資料が 1987 年を最後に刊行されていないことも課題である 学校図書館を活用した教育が求められているのに 25

18 図書館は教科ではないために教科教育法がない それに代わるものとして指導資料が必要である 指導資料は 戦後の 1948 年発行の 学校図書館の手引き から 1987 年までに文科省から 11 冊刊行されている 学習指導要領が改訂され 教育の情報化が進み 読解力の育成が求められるようになってきている現在 これからの学校図書館に対応した指導資料の作成が望まれる 特別支援の子どもたちへの読書活動の推進もさらに検討されなければならない課題である これに対する関心が寄せられるようになったが 全体的に見ると まだ関心が低いことは否めない すべての子どもたちが読書に向かえる環境を整えることが まず 最低限必要である 26

19 表 1.3 子ども読書活動推進の動向 国の動き民間の動き 国会読書活動関連学校図書館関連 1947 読書週間 読書世論調査開始 1953 学校図書館法施行 1954 学校読書調査開始 1955 青少年読書感想文全国コンクール 1959 学校図書館基準発表 1959 読書推進運動協議会設立 1959 こども読書週間 1961 母と子の 20 分間読書 ( 椋鳩十 ) 1965 こどもの図書館 ( 石井桃子 ) 1970 親子読書地域文庫全国連絡会 1974 JBBY 設立 1974 東京子ども図書館設立 1979 ヤングアダルト出版会設立 1988 朝の読書 開始 1989 読書感想画中央コンクール 1991 本があって人がいて ( 岡山市 学校図書館ビデオ制作委員会 ) 1992 全国学校図書館悉皆調査 1992 学校図書館の現状に関する調査報告書 1993 子どもと本の議員連盟発足 1993 学校図書館図書標準 設定 1993 子どもと本の出会いの会 設立 1993 学校図書館図書整備新 5 か年計画 1993 学校図書館連絡会発足 策定 ( 年 100 音円 計 500 億円 ) 1995 児童生徒の読書に関する調査研究者会議報告 1995 国立の国際子ども図書館設立を 1995 国際子ども図書館設立推進議員連盟 1995 学校図書館情報化 活性化推進 推進する全国連絡会 発足 発足 モデル地域事業 (~2000) 1996 学校図書館整備推進会議発足 1997 読書指導研究指定校事業開始 1997 読書で遊ぼうアニマシオン モンセット サルト著, 1997 地域に開かれた学校図書館推進 佐藤美智代ほか訳柏書房 モデル地域事業 (~1998) 1997 学校図書館を考える会全国連絡会 1997 学校図書館法改正 1997 学校図書館の充実等に関する調査研究者会議 1998 学校図書館議員懇談会設立 1998 学校図書館フォーラム開始 1998 司書教諭講習規程改正公布 1999 子ども読書年に関する決議 1999 司書教諭講習規程改正施行 1999 学校図書館ボランティア活用実践 1999 子ども読書年推進会議発足 研究指定校事業 (~2000) 2000 子ども読書年 2000 子どもの未来を考える議員連盟発足 2000 国際子ども図書館部分開館 2000 生きる力をはぐくむ読書活動推進事業開始 2000 国際子ども図書館を考える全国連 連絡会発足 2000 OECD PISA 調査 ( 以降 3 年毎に ) 2000 ブックスタート運動開始 2000 全国学力 学習状況調査 2000 第 1 回読書活動優秀実践校大臣表彰 (~ 毎年 ) 27

20 2001 子どもの読書活動の推進に関する 2001 子どもゆめ基金創設 2001 学校図書館資源共有型モデル地域事業 (~2003) 2001 子どもの読書推進会議発足 法律制定 2002 国際子ども図書館全面開館 2002 子どもの読書活動の推進に関する 2002 学校図書館図書整備 5 か年計画策定 基本的な計画閣議決定 ( 年 130 億円, 計 650 億円 ) 2002 日中韓子どもの童話交流 (~ 毎年 ) 2003 学校図書館法改正施行 ( 司書教諭の必置化 ) 2003 活字文化議員連盟発足 2003 教育課程研究指定校事業 ( 国立教育政策研究所 ) 2004 これから時代に求められる国語 2004 学校図書館資源共有ネットワーク推進事業 力について ( 文化審議会答申 ) (~ 地域 ) 2005 文字 活字文化振興法制定 2006 読解力向上プログラム 2007 子ども読書応援プロジェクト 2007 新学校図書館図書整備 5 か年計画 2007 文字 活字文化推進機構設立 策定 ( 年 200 億円, 計 1000 億円 ) 2007 新教育システム開発プログラム 2008 国民読書年に関する決議 2008 子どもの読書活動の推進に関する 2008,2009 学習指導要領の改訂 2008 国民読書年推進会議 基本的な計画 ( 第二次 ) 閣議決定 2009 これからの学校図書館の活用の 在り方等について 子どもの読書サポーターズ 会議報告 2009 学校図書館の活性化推進総合事業 (~2012) 2010 国民読書年 2010 地域活性化交付金創設 2010 言語活動の充実に関する指導事 2011 学校図書館活性化協議会設立 2011 人の, 地域の, 日本の未来を育て 例集小学生版 る読書環境の実現のために 国民 の読書推進に関する協力者会議 2012 学校図書館整備 5 か年計画 報告書 学校図書館への新聞配備 学校司 書の配置予算化 28

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