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1 博士論文 車載電装部品における鉛フリーはんだ接合部の 高信頼性設計手法に関する研究 Study on High Reliable Design Method for Lead free Solder Joints on Automotive Electronic Components 国立大学法人横浜国立大学大学院 工学府 高木寛二 (Kanji Takagi) 2010 年 3 月

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3 Abstract Realization of low carbon society for prevention from global warming became one of the most important issues in the world. Greenhouse gas emission of automotive is almost 20% of total emission and there is a crying need for the reduction. Recently, compact cars and green energy cars have been increased and the cabin was enlarged for comfort. The space securing for automotive electronic components have been difficult increasingly. Therefore, automotive electronic component has been required 50% miniaturization every design change of car. Also, automotive electronic components are attached in engine compartment and the usage period of automotive has been increasing over ten years. The reliability design of automotive electronic component has been confounding. Well, one of the most important reliability issues for automotive electronic components is solder joint reliability so that solder joint works electrical bonding and stress relaxation between electrical parts and substrate. The variation of solder joint reliability on electronic components was widely and the mechanism was not clarified. So, it is difficult to meet small size and reliability at the same time on automotive electronic component. In this paper, a new evaluation method in stead of thermal cyclic test was proposed first. Thermal cyclic test takes from two month to six month so that automotive electronic component is required long life more than other products. Meanwhile, period shortening of research and development for automotive have been promoting and the long period of thermal cyclic test was an issue of concern. The second purpose of this research is proposal of improvement method for solder joint reliability. The improvement of solder joint reliability is required to consider not only material property and structure but soldering process in a comprehensive way. However, the variation of solder joint reliability have been handled unavoidable issue because of the difficulty of cause unfolding using an experimental method only. Therefore, a soldering process simulation was proposed and the quantitatively evaluation of soldering process for the improvement of solder joint reliability become possible. Also, it was confirmed that a complicated phenomenon like interaction of process factors was verified. As a result, the high reliable design of solder joint was feasible using the soldering process simulation. Finally, many electronic components and another soldering process were evaluated in the same way using the analysis method, and the availability and universality were indicated. - i -

4 概要 地球温暖化問題に対処するため低炭素社会の実現が, 世界的な最重要課題として挙げられている. 自動車の排出する温室効果ガスは, 全体の約 2 割を占めておりその対策が急務となっている. 近年, グリーンエネルギー車の導入や普及推進が図られ, 電動化に伴う電装部品が増加する一方で, 燃費改善のため車両は小型軽量化が進み, 居住性向上を目的としたキャビンスペースの拡充などで, 電装部品の搭載スペースの確保が一層困難になってきている. このため, 新規開発される電装部品はモデルチェンジ毎に 50% の小型化と高温環境となる車室外への搭載が進められている. 小型化が進められる中において自動車の平均使用期間は 10 年を超過しており, 電装部品の信頼性に対するリクエストは従来に増して厳しさを増している. 電装部品の重要な信頼性問題のひとつとして, はんだ接合部の信頼性が挙げられる. この理由は, はんだ接合部が電子部品と基板の電気的接続だけでなく, 電子部品と基板の熱膨張の差による応力緩和の役割も担っているためである. はんだは電子部品と基板を接合するため低融点であり, 融点と使用温度の比を表す融点比が高く, 低サイクル寿命領域での使用となる. そして, 電子部品のはんだ部における破壊メカニズムは十分に解明されておらず, 今後, 小型高信頼性を高度なレベルで実現していくには, 従来の現物評価手法のみに頼る手法では対応できないと考える. そこで本研究では, 第一の研究目的として温度サイクル試験の問題点を採り上げ, それに代わる評価手法を提案した. はんだ接合部の信頼性評価は, 一般的に, 高温と低温を交互に試料に繰返し与え, 規定サイクル後にはんだ接合断面のき裂を観察する温度サイクル試験法で行われている. 長期信頼性を求められる電装部品は,2 ヶ月から 6 ヶ月の長い評価期間を要するため, 近年の短い開発期間では現物によるトライ & エラーを行うことができない. 従って, 温度サイクル試験と同等のことが短期間で実施できる方法が必要と考え, 実験結果との一致性の高い実用的なき裂進展解析を提案した. そして本手法を用いると, 現象が複雑で解明が困難であったき裂進展挙動を明確にでき, はんだ接合部の定量的な評価と設計が可能になることを示唆した. 次に, 第二の研究目的としてはんだ接合部の信頼性向上の問題を採り上げ, 材料や構造だけでなく実装プロセスによって生じるばらつきも総合的に考慮する必要があることを述べた. これまでの現物評価による方法では, 複数の要因が同時に変動した最終結果しか確認できず原因究明が困難で, ばらつきは仕方がないものとして扱われてきた. 現物評価手法のこのような問題を解決するため, ソルダリングのプロセスが再現できる実装プロセスシミュレーションを提案した. これらの手法を用いると, 実装プロセスの各要因がはんだ接合部の信頼性にどのような影響を与えるのか明確にできることを示唆した. そして, 本手法を用いた検討結果を基にはんだ接合部の設計を行うと, 高い信頼性の設計が可能になることを示唆した. 最後に, 電装部品に使用される多数の電子部品にも使用できることを示し, 本手法の有効性と普遍性を示した. 本論文は8 章で構成されており, 各章の概要を以下に述べる. - ii -

5 第 1 章では序論として, 研究背景となる低炭素社会の実現と自動車産業における取り組みについて述べる. そして, 電装部品に要求される 小型軽量化 と 高信頼性, 開発期間の短縮, 無鉛化 に対する開発動向と取組みについて述べた. 第 2 章では, 電装部品の重要な信頼性問題のひとつであるはんだ接合部の信頼性問題を採り上げ, 従来の現物評価手法における課題を述べ, シミュレーション技術の必要性を述べた. 具体的には, 温度サイクル試験と同等のことが短期間で実施できる き裂進展解析 とソルダリングのプロセスが再現できる 実装プロセスシミュレーション の必要性を述べた. そして, 先行研究事例の調査結果を説明し, 本研究の位置付けを明確にした. 第 3 章では, き裂進展解析における基礎的な技術説明として, き裂発生の定義や機械的せん断試験によるマンソン コフィン則の導出方法, 累積損傷被害則を用いたき裂進展評価方法について述べる. 次に, 今回の改良点であるき裂進展モードを考慮したき裂進展解析の方法について説明する. そして, 得られた解析結果と実験結果を比較検証し, 実験結果との一致性が高く, 定量的な評価が可能であることを示唆した. 第 4 章では, き裂進展モードが検証可能なき裂進展解析を用いて, 複雑なき裂進展挙動の検証を行った. その結果, き裂進展の挙動はフィレット形状の影響を受け, き裂が部品電極を沿って進展する経路とフィレットを斜めに進展する経路に分かれ, 後者の場合にははんだ接合寿命の顕著な低下があることが確認された. さらに, 従来の現物評価手法では検証が困難なはんだ内部に発生するボイドの寿命への影響についても, 本手法を用いると明らかにすることができると示し, 本手法の信頼性設計への有効性を示した. 第 5 章では, はんだの電子部品への濡れ上がりと電子部品の挙動を同時に再現できる 実装プロセスシミュレーション を提案する. はんだ付け中の電子部品の挙動を再現するために, 汎用流体解析コード FLOW-3D のユーザープログラムを作成し, 流体と構造の連成解析を構築した. 次に, 実験結果との一致性を確保するために, はんだボールの溶融現象をビデオ撮影し, その結果から 表面張力 と 濡れ角 の重要パラメーターのチューニングを行うなどの工夫点を説明した. そして, チップ部品に対して解析を行い, 実験結果と一致性が高く, 定量評価が可能であることを示した. 第 6 章では, 相関分析とクラスタ分析を用いて, はんだ接合部の形状ばらつきがどのような状態か現状を分析し, 実装プロセスシミュレーションとき裂進展解析を用いて, 実装プロセスの要因の変動がどのような信頼性問題を引き起こすかを調べた. その結果, 現物評価では検証が困難な実装プロセスと信頼性問題との関係や各要因の交互作用の存在を確認することができることを示した. そして, 本手法を用いてはんだ接合部の設計を行うと高信頼性設計が実現できることを示唆した. 第 7 章では, チップ部品以外の電子部品の信頼性解析やリフロープロセス以外のプロセスにも適用できることを確認し, 本手法の有効性と普遍性を示唆した. 第 8 章では, 結論として本研究の成果を総括し, 工業的な寄与について述べた. - iii -

6 目次 第 1 章序論 低炭素化社会の実現と自動車産業における取組み 電装部品の開発動向と取り組み 6 参考文献 10 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 電装部品の信頼性設計における問題 現物評価手法の問題点 先行研究事例と課題 本研究の目的 17 参考文献 18 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 緒言 疲労き裂の定義 疲労破壊のプロセス 疲労き裂の観察 疲労き裂の評価方法 初期き裂発生評価 き裂進展と破断寿命評価 き裂進展解析 解析方法 解析結果 妥当性検証 結言 42 参考文献 42 - iv -

7 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 緒言 フィレット設計方法 解析条件 解析結果 考察 はんだ接合部のボイドによる影響 フィレット中にボイドがある場合 部品電極下のはんだ層にボイドがある場合 結言 54 参考文献 54 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 緒言 ソルダリングプロセス リフローソルダリングの現象把握実験 自由表面流れの数値計算手法の選定 解析モデル及び解析条件 流体 - 構造の連成解析の検討 重要パラメーターのチューニング 表面張力の測定 濡れ角の測定 解析値としての妥当性 チップ部品への適用の妥当性 計算時間の短縮 結言 83 参考文献 83 - v -

8 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 緒言 チップ部品のはんだ接合形状に関するばらつき発生評価 相関分析によるばらつき発生評価 クラスタ分析によるばらつき発生評価 ばらつき発生原因の調査 解析方法 試験条件 解析結果 信頼性問題への影響 解析方法 解析結果 ばらつき改善方法の検討 結言 107 参考文献 108 第 7 章他部品への適用と今後の課題 諸言 チップ部品以外の信頼性評価 検証部品 解析方法 解析結果 フローソルダリングプロセスへの適用 フローソルダリングの概要と問題点 解析方法 解析結果 結言 132 参考文献 132 第 8 章まとめ 133 研究業績 136 謝辞 vi -

9 第 1 章序論 第 1 章 序論 -1 -

10 第 1 章序論 1.1 低炭素社会の実現と自動車産業における取り組み地球温暖化問題に対処するため, 気候変動枠組条約が 1992 年 5 月に採択され,1994 年に発効した. 日本は 1992 年 6 月の国際連合環境開発会議において署名,1993 年 5 月に受諾した.1997 年 12 月に京都市で開催された第 3 回気候変動枠組条約締結会議 ( 地球温暖化防止京都会議,COP3) では, 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書が議決され, 重要な転換点となった. 議決内容は地球温暖化の原因である二酸化炭素などの温室効果ガスについて, 先進国における削減率 1990 年を基準として各国別に定め, 共同で約束期間内に目標値を達成することである. 第 1 約束期間 2008 年から 2012 年までの期間中には先進国が温室効果ガスの排出量を 1990 年に比べて少なくとも 5% 以上削減することになっている. 日本においては温室効果ガス 6% が法的拘束力のある約束として定められ,2005 年 2 月の京都議定書発効に伴い京都議案書目標達成計画が策定された. その後,2007 年 5 月に安部首相が 美しい星 50 を発表し, 世界全体の排出量を現状から 2050 年までに半減 という長期目標を世界共通目標として提案した.2009 年 6 月には麻生首相が 2020 年までに 90 年比 8%(2005 年比 15%) 削減 の中期目標を発表し, 2009 年 9 月には国連気候変動サミットで鳩山首相が 2020 年に 90 年比 25% 削減する と言うさらに高い目標を国際的に公約した.[1][2] Fig.1.1 はその内容を示したものである. 0% -15% 中期目標 -15% -60% 長期目標 -60~ ー 80% -80% Fig.1.1 The mid and long term forecast of carbon dioxide emissions reduction [1] -2 -

11 第 1 章序論 Fig.1.2 は我が国における温室効果ガスの排出量を示したもので, 基準年排出量 (90 年 ) は 12 億 6100 万トンであるが,2005 年度の総排出量は 13 億 5900 万トンと 7.7% 増加していることがわかる.[3] 京都議定書の第 1 約束期間 (2008~2012 年 ) の温室効果ガス排出量 6% 削減の目標を満足するには, その期間の年平均総排出量 11 億 8600 万トンにしなければならない. ( 単位百万トン CO2 換算 ) 1,400 1,200 1, % +5% ±0% SF6 PFCs HFCs N2O CH4 CO2 0 京都議定書 ( 年度 ) Fig.1.2 The carbon dioxide emissions in Japan [3] Fig.1.3 は温室効果ガス排出量の産業別の割合で, 運輸部門は産業部門に次いで温室効果ガスの排出量が多く全体の約 2 割を占める. 運輸部門の内, 約 9 割は自動車の温室効果ガス排出によるもので, 残り約 1 割が船舶や航空機, 鉄道によるものである. 廃棄物, 3 工業プロセス, 4 家庭, 14 エネルギー転換, 6 産業, 36 業務その他, 18 運輸, 19 Fig.1.3 The carbon dioxide emissions of automotives [3] -3 -

12 第 1 章序論 2005 年 4 月に策定された京都議定書目標達成計画で運輸部門が定めた目標は,Fig.1.4 に示すように 1997 年から未対応ケースに対して 5887~6016 万トンを削減して,2010 年の温室効果ガス排出量 2 億 4000 万トン~2 億 4300 万トンを達成しようと言うものである. 燃費改善や交通対策などで 2002 年以降順調に削減されており,2010 年度の目標が達成できる見込みである. この二酸化炭素削減目標は, クリーンエネルギー車 ( ハイブリッド車, 天延ガス自動車, ディーゼル代替 LPG 自動車, 電気自動車など ) を 2006 年度 42 万台から 2010 年には 230 万台に普及させることによる約 300 万トンの二酸化炭素削減が含まれている. Fig.1.4 The target of carbon dioxide emissions reduction in automotive [4][5] 欧州市場では, 欧州委員会が京都議定書に基づき第 1 約束期間 ( ) に 90 年比 8% の二酸化炭素削減を目標にしている.2007 年には EU のリーダーは,2020 年までに 20-30% の二酸化炭素排出量削減をコミットしている. 運輸部門では, 二酸化炭素排出量を式 (1.1) により定義し, その削減目標を示している.Table 1.1 は欧州, 日本, 韓国の自動車メーカーが自主的に策定した二酸化炭素排出量の削減目標である. その内容は平均的自動車の二酸化炭素排出量を 2007 年 159g/km に対して 2015 年には 130g/km に削減すると言うものである.[6],[7] CO2 排出量 = 実走行燃費 CO2 排出係数 総走行量 (1.1) -4 -

13 第 1 章序論 Table 1.1 The target of percentage reduction in CO2 each carmaker [7] Manufacturer CO2 target2015 (g/km) CO2 (g/km) YEAR2008 Weight Distance to target CO2 (g/km) YEAR2007 Weight Distance to target RANK 1 PSA Peugeot-Citroen % % 1 2 Renault % % 2 3 BMW % % 10 4 Fiat % % 3 5 Hyundai % % 6 6 Toyota % % 4 7 Ford % % 8 8 Honda % % 5 9 GM % % 7 10 Volkswagen % % 9 11 Nissan % % Mazda % % Suzuki % % Daimler % % 13 Average % % 京都議定書の第 1 約束期間 ( 年 ) 以降の中長期目標を達成するには, グリーンエネルギー車の普及が欠かせない.Table 1.2 は燃料生成効率と自動車の機械エネルギー変換率を掛け合わせた総合効率を示したもので, ガソリン車の精製効率が 88% と高いが内燃機関のエネルギー効率が 16% と低く総合効率が 14% と低いのに対して, ハイブリッド車や燃料電池車は 32%,29% と高い変換効率を示している.[8],[9] Table 1.2 Total efficiency of hybrid vehicles [8][9] Well to Tank Tank to Wheel Overall Efficiency (%) = Well to Wheel Gasoline Engine Hybrid (Prius THSⅡ ) FCHV

14 第 1 章序論 1.2 電装部品の開発動向と取り組み 1) 小型軽量化前項で述べたように環境適応車の開発が最優先課題となっているため, 燃費向上を主眼に置いた開発が進められている. 燃費向上にはエンジンの効率向上だけでなく, 車両の軽量化や空気抵抗の低減, 駆動系の改良が進められている. 上級者志向が減少しダウンサイジングの流れが加速する中で, 安全性と小型化を両立させたダイムラー社のスマートやトヨタ社の IQ のようなマイクロプレミアムカーが開発されている.[10] このような車両には, 高級車並みの電装部品を高級車の半分のスペースに搭載しなければならない. さらにモーターとエンジンを併用して走行するハイブリッド車の普及や究極のエコカーである電気自動車の導入が進められている. ハイブリッド車や電気自動車には従来の電装部品に加えて, 駆動モーターを効率良く運転させるために2 次電池から送られてくる直流を交流に変換するインバーターや,2 次電池の高電圧 ( V) をバッテリー電圧 (12V) に変換するコンバーターなどが必要となる.[11][12] また増加する電装部品へ電力を確実な確保や 2 次電池への適切な充電を行うため, 電池モニタリングセンサや監視機器が開発されている. さらにプラグインハイブリッドと呼ばれる家庭用電源で短時間充電が可能な急速充電器が開発されている. このように増加する電装部品と車両の小型軽量化を両立させるため, 電装部品の大幅な小型軽量化が求められている. また大電力を処理することから内部発熱が大きくかつ搭載位置も車室外になる場合があるため, 高温環境に対応した信頼性設計が求められる.Fig.1.5 は社団法人電子情報技術産業協会 (JEITA) が発行している 実装技術ロードマップ 2009 のデーターであるが, 電装部品のサイズは, モデルチェンジとなる 4 年で 50% シュリンクと 20% 軽量化が進むと予測されている.[13] 比率 サイズ重量 年度 Fig.1.5 The miniaturization and lightweight for automotive electronic components [13] -6 -

15 第 1 章序論 2) 高信頼性化 Table.1.3 は車載機器とその他の機器の使用温度範囲を示したデーターであるが, 民生機器や産業機器の使用温度範囲は狭く保証期間も概ね 1 年程度であるのに対して, 車載機器は使用温度範囲も広く保証期間も 10 年 10 万 kmと非常に厳しい信頼性が要求されている. 小型軽量化と高温対応に加え長期信頼性を確保する高度な信頼性設計を求められることが車載機器の特徴である. これに加え,Fig.1.6 に示すように平成 12 年度以降 10 年を超えて自動車が使用されてるようになっており, 車載機器の保証期間も 10 年 10 万 km では対応できなくなっている.Table 1.4 は社団法人電子情報技術産業協会 (JEITA) が発行している 実装技術ロードマップ 2009 が示す車載機器の保証期間であるが,2012 年以降は 15 年 15 万 km 以上の信頼性を確保する必要があり, さらに高度な信頼性設計が求められる.[13] Table 1.3 Demand level of reliability assurance [13] 民生機器産業機器車載機器車室内車室外 使用温度範囲 -10~50 ( t=60 ) 0-40 ( t=40 ) -40~85 ( t=125 ) -40~125 ( t=165 ) 保証期間 1 年未満 1 年未満 10 年 10 万 km 10 年 10 万 km 用期間10 年平成 12 年使年度 Fig.1.6 The period of use on automotive [13] Table 1.4 Trend of Durability assurance for automotive electronic components [13] 年 10 万 km 15 年 15 万 km 20 年 30 万 km -7 -

16 車両開発電装品開第 1 章序論 3) 開発期間の短縮 Fig.1.7 は車両と電装部品の開発期間の一例を示したもので, 消費者ニーズの激しい変化に対応するため従来 40ヶ月以上であった開発期間が 36ヶ月に短縮された. この内, 設計変更可能な期間は, 取引先決定からモデル凍結までの 9 ヶ月で, 電装部品に関しては取引先決定から試作出荷までの間の 7 ヶ月である. 電装部品の開発期間のうち 3 ヶ月を設計に,2 ヶ月を試作, 残り 2 ヶ月以上を評価に使うことになるが, さらに評価スペックがアップされるため開発期間内に完了しないことが起きてくる. そして, 製品が複雑化して設計難易度が高くトライ & エラーを繰り返す可能性が高いにもかかわらず, 試作回数が 2 回から 1 回に削減されている. このような状況から, 試作 評価に長い時間を要する現物評価手法のみに頼る開発手法から脱却し, 短期間で評価が可能な開発手法を構築しなくてはならない 発試作回数が 2 1に 量産品納入 開発期間 9 ヶ月に車装備決定 取引先説明会 取引先決定 試作車 モデル凍結 本型品納入 量産移管 発売 開発期間 7 ヶ月 取引先決定 試作出荷 量産試作 時間軸 電装部品の開発期間 7 ヶ月 設計 3 ヶ月 試作 2 ヶ月 現物評価 2-6 ヶ月 開発期間をオーバーする場合があり 今後さらに長くなる Fig.1.7 A development period for automotive -8-

17 第 1 章序論 4) 無鉛化近年, 環境汚染物質の削減やその代替物質への転換が叫ばれている中, 電子機器の基板配線に大きな寄与をしてきたはんだの主成分である鉛の毒性がクローズアップされてきた. 廃棄された電子機器に酸性雨が降ると, はんだ表面を覆っている酸化鉛が地下水に溶出して, 結果として飲料水や食物を汚染することがわかり, 鉛フリー化が言われてきた. 全世界での鉛消費量は年間 500 万トンであるが, 日本では 27 万トンが消費されている. このうち 9,000 トン ( 約 3%) がはんだに使用されている. はんだに使用される鉛は全体から見れば微量であるが, プリント基板に使用されるはんだは回収が不可能に近く, 一度溶出してしまえば環境に与える影響が大きいため, 鉛フリーはんだの採用にむけて各国が精力的に検討している.[15] EU においては,2006 年 7 月 1 日に欧州で RoHS(*1) 規制がスタートし, 従来の Sn-Pb 共晶はんだや 0.1% 未満を満たさない電子部品や基板などの製造販売が許されなくなった. 自動車業界では ELV(*2) 規制に基づいて ROHS 同様に有害物質の削減 使用禁止対応が始まったが, 電装部品に含まれる鉛については 2016 年以降の新型車が対象となっている. (*1) RoHS : Restriction of the use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment (*2) ELV : End of Life Vehicles 鉛フリーはんだの組成は Sn を主成分金属として,Ag,BI,In,Zn を 1 種類以上添加されたものがある. 融点から大別すると,Fig.1.8 に示すように,Sn-Ag-(Cu) 系 ( 高温系 ), Sn-Zn 系 ( 中温系 )Sn-Bi 系 ( 低温系 ) に大別される. それぞれに一長一短があるが, 高信頼性を要求される電装部品には, 機械的特性の良好な Sn-3Ag-0.5Cu が使用されている. [16][17] 2000 年代初期に報告された Sn-3Ag-0.5Cu の信頼性は Sn-Pb はんだと同等以上という報告が多かった. 当時の温度条件は-40~85 ( 温度差 125 ) という比較的緩やかな温度範囲での評価であった.2005 年頃から電装部品などの高信頼性製品への適用検討が進み, 高応力負荷環境では Sn-3Ag-0.5Cu の寿命が Sn-Pb よりも短いとの報告が出てきた. [18][19] よって, 温度条件が厳しい-40~125 ( 温度差 165 ) のような使用領域は, 十分な検証が必要である. 車室内のような比較的環境の良い場所に取り付けられる電装部品については, 鉛フリーはんだが採用されているが, 今後, 高温環境下への搭載や内部温度上昇が大きい電装部品への鉛フリーはんだ採用には, 十分な検証が必要である Sn-Ag-(Cu) 系 Sn-Zn 系 Sn-0.7Cu-0.3Ag Sn-3Ag-0.5Cu Sn-2Ag-3Bi-0.7Cu Sn-3.5Ag-2.7Bi-2.7In Sn-8Zn-3Bi Sn-Pb 140 Sn-Bi 系 Sn-57Bi Fig.1.8 Alternative solders for Sn-Pb solder -9 -

18 第 1 章序論 参考文献 [1] 改定京都議定書目標達成計画, , 環境省ホームページ, ( [2] 日本国温室効果ガスインベントリ報告書 (ISSN ), 独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センターホームページ (www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html), 2009 [3] 日本の温室効果ガス排出データー, 独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センターホームページ (www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html), 2009 [4] CO2 削減に取り組む自動車産業 2010 年度京都議定書目標達成にむけて,pp.1, 社団法人日本自動車工業会, 2008 [5] 豊かなクルマ社会の実現にむけて,pp.6, 社団法人日本自動車工業会, 2009 ( [6] 世界の道路交通セクターにおける CO2 削減取組の提言, 社団法人日本自動車工業会, 2008 [7] Reducing CO2 Emissions from New Cars : "A Study of Major Car Manufacturers' Progress in 2008",2009 European Federation for Transport and Environment (T&E), pp.12 [8] 自動車を取り巻く環境変化と将来展望, 平成 19 年電気学会産業応用部門大会,[Ⅱ-21]-[Ⅱ-26] [9] ハイブリッド 電気自動車のすべて 2007, 日経 Automotive Technology,pp ,2007 [10] カー エレクトロニクスのすべて 2008, 日経 Automotive Technology,pp.57,2008 [11] 次世代車両電源システムのロードマップ, 平成 19 年電気学会産業応用部門大会論文集, [Ⅱ-21]-[Ⅱ-26] [12] 山際正憲, 高耐熱パワー半導体モジュールの実装技術における熱疲労信頼性評価に関する研究,pp.2-3, 横浜国立大学博士論文 [13] 日本実装技術ロードマップ 2009,pp.87, ( 社 ) 電子情報技術産業協会,2009 [14] 平成 19 年度リコール検討会のまとめ, P.9, 国土交通省ホームページ ( [15] マイクロ接合 配線技術の最新動向, 株式会社東レリサーチセンタ,pp.368-pp.370,2003 [16] マイクロソルダリング技術, 社団法人日本溶接協会マイクロソルダリング教育委員会, 日刊工業社,pp.24,2004 [17] マイクロ接合 配線技術の最新動向, 株式会社東レリサーチセンター,pp ,2003 [18] 武井利泰, RoHS 規制スタート後の鉛フリーはんだ化の現状 車載電装品への適用課題, MATERIAL STAGE Vol.6, No.9,pp.21-25, 2006 [19] Tsung Yu Pan, Howard D Blair, John M.Nicholson, Solder joint reliability in alternator Power Diode Assembles Electronic Materials Vol.28, No.11,

19 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 第 2 章 電装部品における信頼性設計の現状 -11 -

20 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 2.1 電装部品の信頼性設計における問題電装部品の信頼性は電子部品やそれを搭載する基板などの部品故障と電子部品と基板を繋ぐ接合部の故障に分けられ, 信頼性評価は高温と低温を交互に繰り返し試料に与える温度サイクル試験により行われる. 一般的に電子部品と基板は はんだ により接合され 電子部品と基板の線膨張係数のミスマッチによる熱変形を機械的強度の弱いはんだが吸収し 電子部品や基板が破損しないように設計されている.Fig.2.1 は 電装部品の事例とはんだ接合部のき裂発生の様子を示したものである. この接合部に適切な信頼性設計が行われていないと 機能停止や誤動作, 発煙 発火と言う深刻な事態になる. チップ部品ガルウイング端子ストレート端子 基板 熱膨張 基板 き裂発生 ( はんだ接合部 ) Fig.2.1 The reliability issue for automotive electronic component Fig.2.2 は電装部品の中ではんだ接合信頼性の確保が最も困難なチップ部品の評価結果を示したものである. 評価方法は高温と低温を交互に繰り返し試料に与え 規定サイクル数で試料を取り出し はんだ接合部を断面観察し 部品電極沿いに発生するき裂の割合を測定している サイクルと 2000 サイクルに各 15 個の試料を調べているが 非常に大きなばらつきを有していることが確認される. 従来は高信頼性を要求される電装部品でも設計に余裕度が十分あり き裂進展挙動とばらつき発生メカニズムが複雑なことから無視されてきたが 小型軽量化と高信頼性のトレードオフの関係を高度なレベルで成立させるには ばらつきの改善を避けて通れなくなっている. Chip Crack A A 平均値 ばらつき Crack X(U) X(L) Solder joint Chip H Solder Electrode Sec A-A Fig.2.2 The fatigue life of solder joint on chip component

21 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 Fig.2.3 はその考え方をまとめたものである. 電装部品のサイズダウンが進むと信頼性は低下し 搭載環境が高温になるとさらに信頼性は低下することを示している. そして保障スペックが 10 年から 15 年になると 従来はまだ余裕度があり問題とはならなかった信頼性が満足できなくなることを示している. 信頼性 ばらつき低減が必要! 信頼性が成立しない! 15 年保証 車室内搭載高温環境下へ 10 年保証 十分な余裕度があるため 問題として扱わなかった 現行サイズ 新サイズ 小型化 Fig.2.3 The reliability issue for automotive electronic component 2.2 現物評価手法の問題点 2.1 項では電装部品の信頼性ははんだ接合部によって決定されていること はんだ接合部の信頼性は大きなばらつきを有していること 電装部品の小型軽量化と高信頼性化を高度なレベルで成立させるには 従来は無視していた信頼性のばらつきを低減する必要が発生したことを述べた. さらに開発期間の短縮に対応するためには 実験手法だけに頼るのではなくて 温度サイクル試験と同じことが短期間でできる手法やトライ & エラーを短期間で何度も繰り返すことのできる手法が必要であることを述べた. そしてはんだ接合部の信頼性ばらつきを低減するためには 構造や材料特性だけでなく実装プロセスによって生じる問題も総合的に考慮する必要がある. しかしながら 試作条件を変動させた試料を温度サイクル試験に投入し 試験後にはんだ接合部を断面観察すると言う一般的な実験では はんだ接合部の複雑な損傷メカニズムを検証することは難しい. 通常 現物評価に代わる手法としては シミュレーションを用いた評価手法が検討されている. そこで本研究では 温度サイクル試験と同等の評価が可能な疲労寿命評価シミュレーションとプロセスによって生じるはんだ接合形状のばらつきが評価できる実装プロセスシミュレーションを構築する

22 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 2.3 先行研究事例と課題 1) 疲労寿命評価電子機器に繰り返し温度変化が発生するとき 電子部品と基板の熱膨張の差によってはんだ接合部には繰り返しの熱応力が負荷される. 一般的に 金属材料の使用温度と融点 (T m ) の比 ( 絶対温度 ) が 0.5 以上になるとクリープが発生しやすくなり サイクルの低サイクルで損傷が発生する. はんだ (Sn-3Ag-0.5Cu) は 常温で融点比が で では 0.81 となり苛酷な環境での使用となる. 低サイクル疲労寿命は 電子部品と基板の熱膨張差によって生じるクリープひずみ ( ε p ) と塑性ひずみ ( ε c ) の和である非線形ひずみ振幅 ( ε in ) を用いて 式 (2.1) に示すマンソン コフィン則に従いき裂発生寿命 (N f ) を求めることができる. はんだ接合部は微小でひずみは測定できず 温度サイクル条件や電子部品や基板の形状などの影響を受けることから 有限要素法などのコンピューター数値シミュレーションなどで求める.[19]-[26] Nf = A (Δεin / ε0) -h (2.1) 製品の断線不良となるはんだ接合部の破断寿命を求めるには, き裂発生だけでなくき裂進展のプロセスも考慮する必要がある. 近年では, 損傷力学に基づき, き裂進展を調べる方法がいくつか提案されている.[8]-[19] しかしながら き裂進展率と破壊サイクル数の一致性を示した事例は少ない. また 部品の位置ずれなどによりはんだ接合形状が大きく変動するようなケースを検証する場合には Fig.2.4 に示すようにき裂進展モードが変化するため このような検証ができる評価方法を構築する必要がある. 本研究では 実験結果との一致性を検証し定量的な評価を可能にすると共に き裂進展モードの変動を検証できるように解析モデルを改良する.Table 2.1 は 先行研究で行われている領域を示したものである. Crack Crack a) Large fillet b) Small fillet Fig.2.4 Crack propagation mode of solder joint on chip component Table 2.1 The current state for evaluation method of fatigue life of solder joint 種類 内容 先行研究 備考 非線形ひずみ解析 き裂発生寿命を計算する - き裂進展解析 破断寿命を計算する 実験との一致性を検証した事例が少ない き裂進展モードを考慮したより破断寿命を計算する

23 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 2) 実装プロセスシミュレーションはんだ接合部の信頼性は 構造や材料特性だけでなく実装プロセスによってもたらされる接合部の形状ばらつきやボイドなどの内部欠陥の有無や大きさによって決定される. はんだ付け工法は リフローソルダリング フローソルダリング マニュアルソルダリングに大別される.[20] 今回対象としたチップ部品はリフローソルダリングにより実装されるため ここではリフローソルダリングについて述べる. リフローソルダリングは 基板の電極上にペーストはんだを印刷する工程と電子部品を基板上に搭載する工程 加熱してペーストはんだを溶融させる工程で構成されている. はんだ接合部の形状は ペーストはんだの印刷量や印刷制度 電子部品の搭載位置精度 加熱工程での製造条件によって決定される. その他にも 電子部品の外形や電極などの寸法精度によっても接合部の形成は左右される. はんだ接合部の形状は これらのプロセス要因が複雑に絡み合って形成されるが 試作後にはんだ接合部を観察する現物評価手法では 複数のプロセスの要因が同時に変動したもたらした最終結果しか検討できないため 形状ばらつきの影響メカニズムを調べることは難しい. 信頼性設計において最も重要なことは メカニズムに基づく評価式を明らかにしてそれを用いて設計を行うことであり メカニズムの解明は重要な意味を持つと考える.Fig.2.5 は リフローソルダリングにおけるはんだ接合部の形状ばらつきのメカニズムを示したものである. 本研究では ペーストはんだ印刷量や部品の搭載位置などのばらつきの影響が検証できるプロセスシミュレーションを構築する. 次に 先行研究事例の調査結果を説明する. はんだ印刷印刷量のばらつき 部品搭載 部品位置ずれ ブラックボックス 加熱炉何が起きているのかわからない? セルフアライメント Fig.2.5 The mechanism of shape variation of solder joint on reflow soldering

24 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 はんだ形状の計算にはさまざまな方法が提案されている. BGA はんだ接合部やフリップチップはんだ接合部などの上下が円形で 軸対称形状であるような幾何学的境界条件を持つはんだ接合部に関しては その形状を対称軸上に球の中心に持つような球体として近似する手法として Goldman の球面近似法や Heinrich の拡張球面近似法 北野の差分法などが提案されている.[20]-[27] 永田らははんだを粘性流体として取り扱い 塑性流れとクリープ ( 粘性流れ ) の相似性を利用して有限要素法による形状予測の方法を提案している.[28][29] そして より一般的なはんだ接合形状の計算も可能な有限要素法に基づく形状シミュレーションソフト Surface Evolver が Brakke によって開発され このソフトを使用した多くの研究事例が報告されている.[30]-[32] その他にも 有限要素法に基づく解析方法やエネルギ最小化原理法に基づく解析方法の研究事例が多数報告されている.[33]-[36] しかしながら 今回対象とするチップ部品は はんだ接合部の形状が複雑で大きな変形を伴う上 ミスアライメント時に部品挙動を再現しなくてはならず 非常に複雑な現象であるために従来の手法では対応できなかった.Table 2.2 に, 各々の手法の比較を示す. そこで本研究では はんだの流動と電子部品の挙動が同時に再現でき 実験結果との一致性の高い流体と構造の連成解析手法を構築する. Table 2.2 The current state for evaluation method of solder joint shape 計算方法 加圧力 ( 自重 ) 表面張力 非対称モデル 球面近似法 拡張球面近似法 球面近似 + 差分法 有限要素法

25 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 2.4 本研究の目的はんだ接合部の信頼性は電装部品における重要な信頼性問題のひとつであるが 大きなばらつきを有している. これまでは十分な余裕度を有して設計できており ばらつき発生メカニズムも複雑で解明が困難であったことから ばらつきは仕方ないものとして取り扱われていた. 今後 小型軽量化と高信頼性化を高度なレベルで成立させるためには ばらつき改善が避けて通れない問題になっている. はんだ接合部の信頼性ばらつきを改善するには 材料や構造だけでなく実装プロセスによって生じるばらつき問題も総合的に考慮する必要がある. しかしながら 従来の現物評価だけではこのような問題が解決できず 評価期間も 2~6 ヶ月間を要して短期間開発に対応できないことから シミュレーションを駆使した設計評価技術の開発が急務となっている. このような背景から本研究では 複雑なき裂進展挙動が短期間で評価できる疲労寿命評価シミュレーションとソルダリングプロセスの複数の要因が複雑に絡み合って生じるばらつきの影響を評価できる実装プロセスシミュレーションを構築する. また 実機との整合性が高い解析モデルの作成や材料特性の取得を行うことにより 実験結果と一致性が高く 定量的な評価が行えるようにする. そして その手法を電装部品の中で最も信頼性確保が困難なチップ部品を対象にして はんだ接合部のばらつき改善の方法を検討する. また チップ部品以外の電子部品にも適用することによって 本手法の有効性と普遍性を検証する

26 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 参考文献 [1] 製品開発のための材料力学と疲労設計入門第 5 章, pp138-pp.146, 日刊工業社,2009 [2] マイクロソルダリング技術第 8 章, 社団法人日本溶接協会マイクロソルダリング教育委員会, 日刊工業社,pp ,2004 [3] 館野正 伊藤伸教, 于強, CAE 解析技術とその応用, エレクトロニクス実装学会誌 pp ,vol.8 No.3,2005 [4] Coffin, L. F. and Schenectady, N. Y., A Study of the Effects of Cyclic Thermal Stresses on a Ductile Metal, Transactions of the ASME, pp , 1954 [5] Manson, S. S., Behavior of Materials under Condition of Thermal Stress, NACA Technical Note 2933, 1953 [6] Lau. J. H, Rice. D. W and Avery P. A, Elastoplastic Analysis of Surface-Mount Solder Joints, IEEE Transactions on Components, Hybrids, and Manufacturing Technology, Vol. CHMT-10, No. 3, pp , 1987 [7] Dasgupta. A, Oyan. C, Barker. D and Pecht. M, Solder Creep-Fatigue Analysis by an Energy-Partitioning Approach, Journal of Electronic Packaging, Vol. 114, pp , [8] M. Mukai, T. Kawakami, Y. Hiruta, K. Takahashi, K.Kishimoto and T. Shibuya, Fatigue Life Estimation of Solder Joints in SMT-PGA Packages, Journal of Electronics Packaging, Vol. 120, pp , 1998 [9] Q. Yu and M. Shiratori, Fatigue-Strength Prediction of Microelectronics Solder Joints under Thermal Cyclic Loading, IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology Part A, Vol.20, No.2, pp , [10] 于強, 自動き裂進展解析によるはんだ接合部の破断寿命評価, 第 18 回計算力学講演会講演論文集,pp , 2005 [11] Miner, M. A., Cumulative Damage in Fatigue, Journal of Applied Mechanics, Vol. 12, No. 3, pp. A159-A164, 1945 [12] 五十嵐和弘 村山公正 中西隆 于強 白鳥正樹 車載用電子デバイスにおけるはんだ接合部の破断寿命解析,pp.142-pp.147, TOYOTATechnical Review Vol.54 No.1 Aug 2005 [13] 于強, 車載用電子部品のはんだ接合の信頼性と解析技術,, エレクトロニクス実装学会誌 pp ,vol.9 No.3,2005 [14] Lau, J., Chang, C., and Lee, S. W. R., Solder Joint Crack Propagation Analysis of Wefer-Level Chip Scale Package on Printed Circuit Board Assemblies, Proceeding of Electric Components and technology Conference (ECTC), pp ,

27 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 [15] H. Tanie, T. Terasaki and Y. Naka, A New method for evaluating fatigue life of micro-solder joints in semiconductor structures, Proceedings of ASME InterPACK 05, pp.1-pp.7 (CD-ROM:IPACK ), [16] M. Mukai, K. Hirohata, H. Takahashi, T. Kawakami and K. Takahashi, Damage Path Simulation of Solder Joints in QFP, Proceedings of ASME InterPACK 05, pp. 1-6 (CD-ROM:IPACK ), [17] Ladani, L. J. and Dasgupta, A., The Successive-Initiation Modeling Strategy for Modeling Damage Progression: Application to Voided Solder Interconnects, Proceedings of 7th International Conference on Thermal, Mechanical and Multiphysics Simulation and Experiments in Micro-Electronics and Micro-Systems (EuroSimE2006), pp. 1-6, [18] J.C. JIN, et al., The assessment of influence of design factor on reliability of BGA solder joint, Key Engineering Material, Vol , pp , 2005 [19] Q. Yu, et al., Study on Evaluation Technique for The Fatigue Life Scatter of Lead-Free Solder Joint, Proceedings of IMECE2007, pp.32-37, 2007 [20] マイクロソルダリング技術第 8 章, 社団法人日本溶接協会マイクロソルダリング教育委員会, 日刊工業社,pp ,2004 [21] 酒井秀久, 于強, 白鳥正樹, 金子正秀, 福田孝, 茂木正徳, BGA はんだ接合部の形状予測と残留応力評価, エレクトロニクス実装学会誌,pp , Vol.4 No.7, 2001 [22] Kuo-Ning Chiang and Chang-An Yuan, An Overview of Solder Bump Shape Prediction Algorithms with Validation, IEEE TRANSACTIONS ON ADVACED PAKAGING, Vol.24, No.2, 2001 [23] L.S.Goldmann: Geometric Optimization of Controlled Collapse Interconnections, IBM Journal of Research and Development, Vol.13, May, pp , 1969 [24] S.M.Heinrich,M.Schaefer,S.A.Schroeder,P.S.Lee: Prediction of Solder Joint Geometries in Array-Type Interconnects, ASME Journal of Electronic Packaging, Vol.118, September,pp ,1996 [25] D.N.Staicopolus, The Computation of surface Tension and of Contact Angle by The Sessile-Drop Method, Journal of Colloid Science, Vol.17, pp , 1962 [26] J.F.Paddy,A.pitt: Axisymmetric Meniscus Profiles, Journal of Colloid Science, Vol.38, No.2, February, pp , 1969 [27] M.Kitano, M.Honda: Shape predictions of solder bump joint by surface tension Analysis and Fatigue strength evaluation, Advances in Electronic Packaging InterPACK 97, ASME EEP-Vol.19-2, pp , 1997 [28] 永田孝弘, 小林卓哉, 佐久田博司, 剛塑性流れ解析によるはんだの形状解析, 8 th Symposium on Microjoining and Assembly Technoligy in Electronics,

28 第 2 章電装部品における信頼性設計の現状 [29] 永田孝弘, 小林卓哉, 佐久田博司, FEM による溶融はんだの形状及び安定性の解析, 日本機械学会第 15 回計算力学講演会講演論文集,pp ,2002 [30] K.A.Brackke, Surface Evolver Manual Version 1.99, ( [31] Li Ming Yu, et.al., Simulative Analysis on Factors Influencing Solder Joint Bridging of Fine Pitch Devices, Transactions of the ASME, Vol.126, pp.22-25, 2004 [32] Peter M. Martino, Gary Freedman, Livia M. Racz, Julian Szekely, Predicting Solder Joint Shape by Computer Modeling,Electronic Components and Technology Conference 1994 Proceedings, pp [33] N.J.Nigro,et.al., Parametric Finite Element Method for Predictuing Shape of Three-Dimensional Solder Joint, Transaction of the ASME, Vol.118,pp , 1996 [34] Subbarayan, G., 1996, A Procedure for Automated Profile and Life Prediction in Flip-Chip and BGA Solder Joint, ASME J.Electron, Packaging, 118,pp , 1996 [35] Mudasir Ahmad et.al., Solder Joint Shape Prediction Using a Modified Perzyna Viscoplastic Model, Transaction of the ASME, Vol.127, pp , 2005 [36] S.K.Patra, Y.C.Lee, Quasi-Static Modeling of the Self-Alignment Mechanism in Flip-Chip Soldering Part 1 : Solder joint,journal of Electrronic Packaging, pp ,

29 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 第 3 章 き裂進展モ - ドを考慮したき裂進展解析方法の構築

30 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 3.1 緒言 電装部品の重要な信頼性問題としてはんだ接合部の信頼性が挙げられ, 電子部品と基板の電気的な接続だけでなく電子部品と基板の熱膨張の差による応力を緩和させる役割があることを前章で述べた. 一般的に, 金属材料の使用温度と融点 (T m ) の比 ( 絶対温度 ) が 0.5 以上になるとクリープが発生しやすくなり, サイクルで損傷する低サイクル疲労が発生する. はんだ (Sn-3Ag-0.5Cu) の融点比は, 常温で 0.6,85 で 0.73,125 では 0.81 と高いため非常に厳しい条件となる. これまでのはんだ接合部の信頼性設計は一定の余裕度を有して行うことができたが, 小型高信頼性の強いニーズに応えていくには, 信頼性を確保しつつ余裕度を限界まで狭くすること高度な設計が求められる. 通常, はんだ接合部の信頼性評価は, 高温と低温を交互に繰り返し試料に与え, 規定サイクル数で試料を取り出し, はんだ接合部のき裂発生 進展を断面観察することにより行われる. しかしながら, このような方法では断片的な情報しか得られない上, き裂発生 進展は複雑な挙動を示すため, 定量的な評価が行えず, 効率の良い信頼性設計が行われているとは言いがたかった. また, 製品開発期間の短縮に対応するには, 従来の試作と改良の繰返すトライ & エラーの開発手法では対応できなくなったため, 温度サイクル試験に代わる評価方法が必要になってきた. 温度サイクル試験に代わる評価方法としては, 計算力学を用いた方法がいくつか報告されており, その中で非線形ひずみ振幅の値を用いて, マンソン コフィン則によりき裂発生サイクル数を予測する方法が広く用いられている. さらに, 製品の断線不良となるはんだ接合部の破断寿命を求めるには, き裂発生だけでなくき裂進展のプロセスも考慮する必要がある. 近年では, 損傷力学に基づき, き裂進展を調べる方法がいくつか提案されているが, 実験結果と一致性のある実用的な事例は少なく, 研究の領域に留まっている. また, はんだ量や材料を変更することによりはんだ接合形状が大きく変動するようなケースでは, き裂進展モードが変化するさらに複雑な現象が存在するため, 従来のき裂進展解析方法を改良する必要があった. そこで本章では, 電装部品において疲労信頼性が最も重要視されるチップ部品を対象として, 複雑なき裂進展挙動が検証でき, 実験との一致性が高い実用的なき裂進展解析手法の検討結果を述べる

31 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 3.2 疲労き裂の定義 疲労破壊のプロセス電子部品と基板には線膨張係数差が存在するため, はんだ接続部に環境温度が変化すると, 両者の熱変形量差に起因した熱応力や熱変形がはんだ接続部に作用する. 一般的に, 金属材料の使用温度と融点 (T m ) の比 ( 絶対温度 ) が 0.5 以上になるとクリープが発生しやすくなり, サイクルで損傷する低サイクル疲労が発生する. はんだ (Sn-3Ag-0.5Cu) の融点比は, 常温でも 0.6 であるためクリープ損傷を起こす. 環境温度の変化が繰返し試料に作用するとはんだ内で損傷が発生し, 時間の進行と共にき裂が発生 進展し, 最終的には破断に至る. このクリープ損傷は, 材料の融点に近い程, 材料中の転位が激しく成長移動することから, 多くの転位が相互に交差することで材料中には多くの点欠陥 ( 原子空孔 ) が放出され, これらの集まり大量のボイドが発生する. このクリープ損傷の進行過程で発生するボイドのことをクリープボイドと呼ぶ. 通常, このクリープボイドは結晶粒界に集中的に発生する. このクリープボイドの周囲には応力 ( ひずみ ) 集中場が形成されることから, クリープボイドが近接して発生するとクリープボイド間を連なるようにき裂が発生, 成長する. このため, クリープ損傷においては結晶粒界に沿ってき裂が進展する. [1]-[5] 疲労き裂の観察 はんだ接合部の熱疲労寿命評価は, 高温と低温を交互に実際の試料に繰り返し与え, 試験後にはんだ接合部のき裂発生 進展の状態を断面観察する温度サイクル試験が一般的 に行われている. しかしながら, このような方法では, き裂発生 進展の様子を観察するこ とは困難なため,Fig.3.1 に示す機械的せん断試験機を用いて観察した. この試験機はピ エゾ素子により変位を与えることができ, 制御精度が約 0.05μm で, 最大発生荷重が約 ± 2500N である. 試験片は試験機の上下面治具に接着固定し, 下の治具は完全固定して上の 治具にせん断方向の強制変位を与えることにより試験を行う.[6],[7] Piezo(Actuator) Piezo(Load cell) Displacement Jig Jig Spring Adhesive Base Computer Displacement 0.2Hz Time Theoretical position resolution :0.05μm Maximum shear loading :±2250N Fig.3.1 Isothermal mechanical fatigue test machine

32 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 試験片に与える変位量は, 温度サイクル負荷を受けた場合のパッケージと基板の間に 発生する熱膨張のミスマッチを概算することで求めた. また試料に与える変位は, 周波数 が 0 約 0.2Hz の三角波とした. 変位の計測はロードセルで行っているが, 試験片周囲の 構造における弾性変形が試験結果に与える影響は無視できないため, 直接はんだバンプに 与えられる変位を測定することにした.Fig.3.2 はその測定方法で, はんだバンプをビデ オカメラで撮影し, その映像からはんだバンプ上下端の A 点と B 点の相対変位 (Δδ) を 計測した. 試験方法は,Fig.3.3 はき裂が発生した直後の映像で, き裂は 50μm で発生 することが確認された. この結果より, き裂は 50μm で発生 進展すると定義し, 解析モデ ル作成に反映した. 尚, 本試験方法は, 温度サイクル試験との一致性が確認されている ものである. Upper PCB Cu pad 強制変位 Magnification of microscope 100~2500 Scale resolution 0.5μm Lower PCB ΔA Solder ΔB Cu Cu Fig.3.2 The measuring method for relative displacement of solder bump き裂 50μm Fig.3.3 The crack length of solder bump after Isothermal mechanical fatigue test

33 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 Fig.3.4 は温度サイクル試験後の試料の中央部を断面観察した結果で, き裂近傍にお ける結晶粒の大きさを測定するため, 電子後方散乱回折像法 (EBSP) による結晶方位解析を 行った.[8] バンプ中央のき裂近傍の結晶粒サイズを測定した結果, 結晶粒の大きさは平 均で約 12.5μm でありことが確認された. よって, このサイズをき裂発生 進展の評価層 における解析のメッシュサイズにした. き裂 結晶粒 a) SEM b) EBSP Fig.3.4 The microcrystal size around crack of solder joint 3.3 疲労き裂の評価方法 初期き裂発生評価温度サイクル試験に代わるはんだ接合寿命の評価方法として計算力学を用いた方法が提案されており, Manson-Coffin 則, ひずみレンジ分割法による評価, ひずみエネルギ分割法による評価 などがあるが, その中でも代表的に使用されるのは Manson-Coffin 則 である.Manson-Coffin 則は低サイクル疲労における材料の塑性すべり挙動に注目し, これによって疲労破壊を評価する手法で, 式 (3.1) のように表わされる. ここで,Δε p は塑性ひずみ振幅,N f は疲労寿命,a と C は材料定数である. Nf = A (Δεin / ε0) -h (3.1) はんだ接合部はマイクロ構造であるためひずみゲージを用いて直接測定することがで きないため, 接合部に生じる応力 ひずみ挙動は有限要素解析で把握しなければならない. そこで, はんだ接合部の弾塑性 クリープ解析を行い, はんだ接合部に生じる非線形ひず

34 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 み振幅を求める. 以下に, 有限要素解析による非線形ひずみ振幅 ( ε in ) 算出の 1 例 を示す. 解析モデルの例を Fig.3.5 に示す. 解析に使用する要素は 3 次元 1 次ソリッド要 素で, ひずみが集中する接合端部は 2.2 項の結果を反映して最小メッシュ寸法を 12.5μm とする. 温度サイクル試験の解析では温度変化時間あるいは保持時間中に生じるクリープひずみ量を考慮しなければならない. 特に, クリープひずみと塑性ひずみによって生じるはんだ接合部のダメージを分割して強度評価解析を行う場合は, 温度変化時間に生じるクリープひずみ成分を正確に評価する必要がある. 温度サイクル試験の解析では Fig.3.6 のように温度変化時間と温度保持時間において弾塑性 クリープ解析を行った. y 0.5 z x Fig.3.5 Analytical model 2 * 単位 :mm Temperature( ) 125 a b e f -40 o c d g h Time (min) Elasto-Plastic Creep Fig.3.6 Thermal profile of analysis

35 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 はんだ材のクリープ特性については様々な構成式が提案されているが, 本研究では式 (3.2) に示す Norton 則に従うと仮定した. n & c Aσ (3.2) ε = ここで, ε& c はクリープひずみ速度で,A と n はクリープ定数とクリープ指数である. また, 機械特性の中で強い温度依存性を示す材料定数として, 降伏応力が挙げられる. 降伏応力は高温時と低温時では大きく異なるため, 数値解析を行う場合は温度依存性を考慮する必要がある. さらに, はんだ材の降伏応力の温度依存性ははんだ材の段塑性挙動のみならず, クリープ挙動に対しても顕著な影響を及ぼすため, 塑性とクリープ両方の温度依存性を考慮しなければならない. はんだ以外の部材は弾性材料であるとみなした. Fig.3.7 に, 解析によって得られたはんだバンプに生じる非線形ひずみの分布を示す. Fig.3.8 はある温度サイクル試験を行った際の非線形ひずみ履歴で,2 サイクル分の履歴を示すもので, そのうちの 1 サイクルの間に発生する非線形ひずみをとって 2 ε in とした. ε n が非線形ひずみ振幅である. Total equivalent inelastic strain [-] 3.00E E E E E-02 a 5.00E E+00 Fig.3.7 Inelastic strain distribution elastic-plastic and creep analysis g h e f 2Δε in c d b 0.00E E E E E+04 Time [sec] Fig.3.8 Profile of the inelastic strain

36 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 はんだボールはリフロー工程を経て基板に実装されるが, そのリフロー工程や冷却工程においてはんだバンプの形状を一定に保つ事は難しい. ある程度の形状は設定できるがその形状のばらつきを押さえる事は非常に難しいと考えられる. 形状がばらついた場合, 特に基板とはんだバンプの成す接合界面の角度がばらつきを持つ場合, ひずみの集中の仕方に大きく関わってくる可能性がある. そこで, 基板とはんだバンプの成す接合界面の角度のばらつきが非線形ひずみに及ぼす影響を緩和させるために,Fig.3.9 に示す様にひずみが集中する接合端部の最小メッシュサイズを 12.5μm にした. そして, 端部から 50μm 周辺のひずみ値を抽出し, その平均をもって非線形ひずみ振幅 ε in とした. つまり, コーナー点と 100μm の節点を除いた界面近傍節点 (0~100μm) の非線形ひずみ振幅 ( 非線形相当ひずみ振幅 ) の平均値である. そして, このひずみ振幅の値を Manson-Coffin 則に基づく疲労特性式に代入することで, はんだ接合部の疲労寿命が算出される. 100 μ m Δε in Δε 50av Fig.3.9 Definition of the value of inelastic strain range 10 1 非線形ひずみ振幅 y = x サイクル数 Fig.3.10 Definition of the value of inelastic strain range

37 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 次に,3.2.2 項で説明した機械式せん断試験機を用いて, はんだ接合部に強制変位を繰り返し与え, そのサイクル数とはんだ接合部におけるき裂発生サイクルの関係を求めた. Fig.3.10 は, 有限要素解析により求めた非線形ひずみ振幅とその実験結果を用いて算出した実験結果である. ここで式 (3.3) を以下のように変形し,Fig.3.10 で求めた n 値を用いて, マンソン コフィン則を決定した. 求めたマンソン コフィン則を式 (3.4) に示す. n Δ ε = C N f (3.3) log Δε = logc n log Nf ここで Δε = 0.01のときNf = 1000より logc = log(0.01) + n log(1000) よって nlog Nf 1 1 log Nf = log Δε + log(0.01) + log(1000) n n 1 n log Nf log Δε = Nf = log Δε + log(0.01) + nlog(1000) Δε = n n = より,1/n = N f Δε = 1000* (3.4) き裂進展と破断寿命評価 項で説明した評価方法は, はんだ接合部のひずみ集中部における初期き裂発生寿命を求めるためのものである. しかし, 実際に用いられている電子デバイス機器の場合, 若干のき裂が発生したとしても電子回路として成立していれば製品として充分な機能を発揮することができる. つまり, 実際の製品はき裂発生寿命よりも長寿命である. そのため, 解析による温度サイクル疲労寿命の現実的な予測には従来のき裂発生時の予測ではなく, き裂の進展さらには破断までのサイクル数を求める必要がある. 近年では, 損傷力学

38 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 に基づき, き裂進展を調べる方法がいくつか提案されている. き裂進展を検証する場合, 繰り返しのひずみによる局部的な疲労き裂の発生, 疲労き裂の連続化, 疲労き裂の進展と最終破断などの段階を経て生じるため, それぞれの段階の損傷が蓄積する. その損傷率は線形被害則によって定量的に評価することができる. 今, き裂先端が n 番目のポイントであるとすると, 累積損傷度 ηは式 (3.5) で表わすことができる. n Ni η = (3.5) N i= 1 fi ここで,Ni はき裂先端が i 番目から i+1 番目まで進展するまでのサイクル数で,N fi は次式に示すように n 番目のポイントにおける非線形ひずみ振幅から求まるサイクル数である. そして η=1 となったとき,n 番目のポイントが破壊されたと定義される. 次に, 北野氏の文献 [28] よる線形被害則の確認実験を Fig.3.11 に示す.No.0 のプロットは一定振幅のひずみによる疲労試験結果で, 疲労寿命は荷重範囲が 80% まで低下した繰り返し数で定義されている. No.2,5,11 を除くプロットは, せん断ひずみ範囲 Δγ ι をこのひずみ範囲における疲労寿命の 1/2 だけ与え, その後のΔγ ι を疲労寿命まで与えた結果である.Δγ ι による被害を (3.5) 式によりΔγ ι の繰り返し数に変換し, この繰返し数にΔγ 2 における寿命を加えた回数とΔγ ι の関係をプロットした. また,No.2,5,11 は,Δγ ι を疲労寿命の 1/3,Δγ ι を疲労寿命の 1/3 だけ与えたあとに,Δγ ι を疲労寿命まで与えた結果を同様に整理してプロットしたものである. Fig.3.10 の結果よりもせん断ひずみ範囲を変化させたプロットは若干長寿命側になっているが, 一定ひずみの試験結果にほぼ一致している. 以上の実験結果から, はんだに対して線形被害則がほぼ成り立っていることが示されている. Fig.3.11 Check test on Minor s rule

39 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 3.4 き裂進展解析 解析方法 Fig.3.12-(a) に解析モデルの全体図を示す. 部品構造の対称性を考慮して部品全体の 1/4 をモデル化し, 対称面には対称拘束を与え, プリント配線板の下部のポイントに Y 方向の拘束を与えた. メッシュは 4 面体要素を使用している.Fig.3.12-(b) は構成材料を示したもので, はんだ接合部には部品電極の側面に沿って進展する経路とフィレット中を斜めに貫通する経路を設定した. き裂進展経路の評価層は,Fig.3.13 に示すように, き裂進展が定量的に評価できるように同じ約 10μm で統一されたメッシュ分割でモデリングした. これは,3.2.2 項で述べたマンソン コフィン則を整理する時に用いたモデリングと同様なものである.Table 3.1 は解析に用いた材料特性である. はんだ接合部の非線形ひずみ振幅を求める解析においては, はんだ材料の降伏応力の温度依存性, クリ-プ特性の温度依存性を考慮した. 繰り返しの温度変化において材料の硬化則は移動硬化とした. クリ- プ特性の構成式は (3.2) 式で示したノ-トン則を用いて, ノートン則の材料定数であるクリープ定数 (A) とクリープ指数 (n) は, それぞれ Table 3.2 と Table 3.3 に示されている. Y Chip (Ceramic) Electrode (Sn) X Crack path 1 Z Crack path 2 Solder Fixed in X direction Fixed in Z direction Fixed in Y direction Printed wiring board Electrode (Cn) (a) General view (b) Constituent material Fig.3.12 The analysis model of chip component Plane direction : 50.0μm Thickness direction : 12.5μm Evaluating layer Thickness direction : 12.5μm Plane direction : 50.0μm Thickness direction : 12.5μm Fig.3.13 Analysis model of solder joint

40 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 Table3.1 Material properties in analysis Parts Young s modulus Poisson s ratio Coefficient of thermal expansion [ppm/ ] [MPa] [-] Chip Electrode Pad Solder PCB Plain Thickness Table 3.2 Creep property of solder Table 3.3 Stress-strain relationship of solder Temperature [ºC ] Creep constant A [MPa -n /s] Creep exponent n Temperature [ºC ] Plastic strain Temperature [ºC ] Plastic strain Temperature [ºC ] Plastic strain Stress [MPa

41 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 フィレット形状は,Fig.3.14 に示すように, 実際のチップ部品の中央部を断面カットし, フィレット高さ (a), フィレット長さ (b), 部品下はんだ長さ (c), 部品下はんだ厚さ (d) の 4 箇所の寸法を測定して決定した. 3.2mm 150μm 150mm 1.6mm A A a d b c a) Chip component b) Section A-A Fig.3.14 Dimensions of solder joint フィレット高さ (a) の測定位置は, 部品端から 150μm 離れた場所がフィレット形状の特徴を最も良く表していることから決定した. Fig.3.15 はフィレット形状を表すためにどこが良いか調べた時の内容で, 電極先端から 250μm 離れた A 点と部品端からチップ端から 150μm 離れた B 点, フィレットが濡れ上がった C 点を測定することにした. そして, はんだボリュームを 3 条件変動させてフィレット高さを比較した結果が Fig.3.16 である. C 点ははんだボリュームの違いに対してフィレット高さの変化がなく, 測定ポイントしては不適である.B 点と C 点ははんだボリュームの違いに対してフィレット高さが変動したが,C 点はどの変動量が微小であったため,B 点がはんだ接合形状として適していると判断した. Fig.3.15 Dimensions of solder joint Fillet height (um) Solder volume ratio A B C Fig.3.16 Dimensions of solder joint

42 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 次に, はんだ接合部のき裂進展経路を決定した方法を説明する. まず, 大きなフィレットと小さなフィレットの 2 種類のモデルを作成し, はんだ接合部を全体が均一で詳細なメッシュ (25μm) に分割した. そのモデルで用いてき裂進展解析を行った結果,Fig.3.17 と Fig.3.18 に示すように大きなフィレットは電子部品の電極に沿ってき裂は進展し, 小さなフィレットははんだ接合部を斜め 45 にき裂が進展することが確認された. この結果を反映し, 解析モデルに 2 つの経路の評価層を設定した. Initial model Interim model Interim model Final model (a) Large fillet Initial model Interim model Interim model Final model (b) Small fillet Fig.3.17 The crack propagation of solder joint Crack Crack 約 45 (a) Large Fillet (b) Small Fillet Fig.3.18 The comparison between Large fillet and Small fillet on crack mode

43 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 Fig.3.19にははんだ接合部の疲労き裂の発生及び進展解析のフローチャートを示す. [9]-[13] まず,Fig.3.12に示すはんだ接合部の初期モデルに,Fig.3.20に示す温度サイクルの負荷を与える. はんだ接合部の疲労き裂発生寿命は, はんだ接合部に生じる非線形ひずみの幅を用いて求めることができる. 求める方法としては, 式 (3.3) で示したマンソン コフィン則が挙げられる. はんだ接合部は他の構造部と比べて微小であるため, 本研究ではサイズ効果を考慮した機械的せん断試験を行い, マイクロ接合部の応力集中部に 50μmの疲労き裂が発生した時の寿命を用いて整理したマンソン コフィンを用いる. そのマンソン コフィン則の経験則は既に式 (3.4) で示したものである. 非線形ひずみ振幅の算出方法としては, 温度サイクル試験における低温から高温と高温から低温へ変化する際の, それぞれの相当非線形ひずみの積算変化量を平均して行う. Fig.3.21は温度サイクル負荷を受ける際のはんだ接合部に発生する非線形ひずみの 2サイクル分の履歴を示しており, そのうち 2 サイクル目の非線形ひずみの積算変化量を算出し, その平均値 (2Δε in ) を非線形ひずみ振幅とする. また, 非線形ひずみは塑性ひずみとクリ -プひずみの和で算出される. Analysis Start Thermal load 1cycle Calculation of total equivalent inelastic strain range Damage level is multiplied Element with high accumulation damage level is deleted Thermal load 2cycle Decided cycle number repetition Analysis End Fig.3.19 Flowchart of crack propagation analysis

44 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 150 Temperature [ ] Time [hour] Fig.3.20 Temperature profile of thermal cycle test Total equivalent inelastic strain 2.00E E E E E E E-01 2Δεin 1.00E E E+00 Time Fig.3.21 Profile of total equivalent inelastic strain 疲労き裂進展の解析は, 疲労き裂進展モデルの自動作成と疲労き裂進展寿命の算出の2 段階で行う. 疲労き裂進展モデルの作成は, 解析モデルにFig.3.20に示す温度サイクル履歴を繰り返し与え, はんだ接合部に発生する非線形ひずみの振幅を算出し, 式 (3.4) に示すマンソン コフィン則と式 (3.5) に示す線形累積被害則によって疲労ダメージの高いはんだ領域を算出し, その部分に該当するモデルの要素を削除することによって自動的に行われる. 具体的に,1サイクル終了時におけるはんだ接合部の各要素の非線形ひずみを抽出し, 疲労ダメージを算出し, 上位の要素を削除する. この過程を, き裂がはんだ接合部を完全に貫通するまで繰り返し行い, 破断寿命を求めるための一連のモデルが得られる. き裂進展モデルの作成の過程において, 最初のはんだ接合部の各領域の非線形ひずみが, 最初に削除する前のモデルから累積される.Fig.3.22はき裂進展解析を繰り返し行い得られた解析モデルで, 上段が部品電極に沿ってき裂が進展する経路で, 下段がフィレットを斜めき裂が進展する経路を示したものである. この場合のフィレット形状では, 部品電極に沿ってき裂が進展する経路のほうがフィレットを斜めに進展する経路よりも早く破断していることが確認される

45 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 Complete failure Crack Step 1 Step 5 Step 9 Step 13 (a) Behavior of crack propagation in crack path 1 and 2 Crack Step 1 Step 5 Step 9 Step 13 Fig.3.22 Crack propagation mode (MODE 1) Fig.3.23はフィレットが小さい場合で, 同様に上段が部品電極に沿ってき裂が進展する経路で, 下段がフィレットを斜めき裂が進展する経路を示したものである. この場合のフィレット形状では, 部品電極に沿ってき裂が進展する経路よりもフィレットを斜めに進展する経路のほうが早く破断している. Crack Step 1 Step 5 Step 9 Step 13 (a) Behavior of crack propagation in crack path 1 and 2 Crack Complete failure Step 1 Step 5 Step 9 Step 13 Fig.3.23 Crack propagation mode (MODE 2)

46 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 次に, はんだ接合部のき裂進展寿命の評価方法について述べる.Fig.3.24 にはんだ接合部の生じる非線形ひずみの測定箇所を示す.Fig.3.24-(a) はき裂が部品側面を進展する場合で,Fig.3.24-(b) がフィレットを斜めに進展する場合である.Fig.3.25 に, き裂進展モデルの非線形ひずみ分布から求めた 50μm 間隔の疲労き裂先端の非線形ひずみ振幅を示す. これは本研究で使用したマンソン コフィン則が 50μm の疲労き裂発生を用いて整理した経験式であるためである. a) Crack path 1 b) Crack path 2 Fig.3.24 Extraction lines of inelastic strain Nonlinear strain amplitude. 4.00E E E E-02 Step1 Step2 Step3 Step4 Step5 Step6 Step7 Step8 0.00E Position of extraction line (μm) Fig.3.25 Strain distribution of each propagation level 解析結果この非線形ひずみ振幅データーを基に, 式 (3.4) で示したマンソン コフィン則と式 (3.5) で示した累積線形被害則に基づき, 各場所の疲労寿命を算出することができる. また, き裂進展の各段階においてひずみによるダメージが蓄積されるため, 累積線形被害則を適用して累積損傷率 ηを算出する. き裂先端が n 番目のポイントであるとすると, 累積損傷率 ηは式 (3.5) で表され,Ni はき裂先端が i 番目から i+1 番目まで進展するまでのサイクル数で,Nfi は n 番目のポイントにおける非線形ひずみ振幅から求まるサイクル数である. そしてη=1 となったとき,n 番目のポイントが疲労き裂となって破壊されたと定義される. この計算によって, はんだ接合部のき裂発生から破断に至るまでの温度サイクル数とき裂長さの関係が得られる

47 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 Fig.3.26 はき裂が部品電極に沿って進展するケースで, 部品電極側面の破断寿命に加えて部品電極下の破断寿命のデータを示している.Fig.3.27 はき裂がフィレットを斜めに進展するケースで, フィレットの破断寿命に加えて部品電極下の破断寿命のデータも同様に示した. これらから言えることは, どのケースの場合でも部品電極下までの破断は同じ速度でき裂が進展するが, 部品電極下の破断以降は, フィレットを斜めにき裂進展するケースの場合が, 部品電極側面に沿ってき裂が進展するケースよりも接合寿命が明らかに短くなることである. 100 Crack percentage (%) Under 20 Side Cycle Number (cycles) Fig.3.26 Average Fillet (a=270,crack Path1) Crack percentage (%) Under Side Cycle Number (cycles) Fig.3.27 Small fillet (a=85,crack path2)

48 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 妥当性検証 本手法の有効性を検証するために, 温度サイクル試験を行い実験結果を用いて, 解析結果の妥当性を検証した. 使用したプリント配線板の材質はガラスエポキシで, 板厚 1.6mm, 銅電極の表面は水溶性プリフラックス処理されているものである. はんだペーストは Sn-3.0Ag-0.5Cu を使用し, 厚さ 150μm のメタルマスクを用いて, プリント配線板上に印刷される. チップ部品はプリント配線板上に搭載され, ピーク温度 240 の窒素雰囲気中でリフロー実装される. 温度サイクル試験の温度条件は, 下限温度が-40 で, 上限温度が 125 に設定し, それぞれ約 30 分保持する条件で行った. はんだ接合部に発生する疲労き裂の割合の測定は, 温度サイクル試験で予め規定したサイクル数で試料を取り出し,Fig に示すように, チップ部品の中央部を断面カットし, はんだ接合部の疲労き裂長さを測定し,(3.7) 式によって疲労き裂の割合を算出した. A Chip A Crack X(U) X(L) Chip H Solder joint Solder Electrode (a) Overview (b) Section A-A Fig.3.28 Measurement method of Crack percentage ( ) + = X L X ( U ) Crack percentage (%) 100 H (3.7) Fig.3.29 は解析結果と実験結果を比較したもので, 温度サイクル試験では 1000,2000, 2500 サイクルで各 15 個の試料を取り出し,Fig.3.28 に示すようにチップ部品の中央部を断面カットしはんだ接合部を断面観察することによって, はんだ接合部の疲労き裂の割合を測定した. 黒丸が平均値で, 縦棒の上下限がばらつき範囲を示している. この図からわかるように, 温度サイクル 2500でき裂進展率 80% における解析結果と実験結果の誤差は, 平均値で 3.6% であった. また,Fig.3.30 はフィレットが大きい場合と小さい場合における解析結果と実験結果を比較したものである.Fig.3.31 はフィレットが大きい場合と小さい場合の試料のはんだ接合部の断面写真である. 前者のはんだ接合部のき裂進展経路は部品電極沿いで, 後者はフィレット中を斜めに進展しており, 実験と同一のき裂進展モードが解析で再現できている. また, 解析モデルとほぼ同じ試料のき裂進展率を調べた結果, フィレットが大きい場合で 7.2%, フィレットが小さい場合でも 15.6% であった. フィレットが小さい場合の検証には完全破断の実験データーしかなく課題が残るが, 解析結果は妥当性があるものと判断する

49 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 Crack Percentage (%) Analysis Experiment Error : 3.6% Cycle Number (cycles) Fig.3.29 Crack propagation of average Fillet (a=270) 100 Error : 15.6% Crack percentage (%) Experiment(a=85) Experiment(a=290) Analysis(a=85) Analysis(a=270) Error : 7.2% Cycle Number (cycles) Fig.3.30 Experiment result vs. Analysis result Crack Crack (a) Average fillet (a=290) (b) Small fillet (a=85) Fig.3.31 Crack propagation path

50 第 3 章き裂進展モードを考慮したき裂進展解析の構築 3.5 結言 本章では, 機械的せん断試験によるマイクロ接合部の疲労寿命評価方法を説明し, き裂発生の定義と解析に用いるマンソン コフィン則の導出を行った. そして, 于らが開発したき裂進展解析手法をベースにして, はんだ接合部の解析モデルに複数のき裂進展経路を設け, 複雑なき裂進展挙動の検証を可能にする改良を行った. そして, これまでチップ部品の実験値との一致性が十分に検証できていなかったが, 今回の構築した手法では実験値との一致性を確認し, 温度サイクル試験に代わる方法をして有効なものであることを示した. 参考文献 [1] 製品開発のための材料力学と疲労設計入門第 5 章電子部品の構造強度信頼性設計の基礎, 日刊工業新聞社, pp [2] マイクロソルダリング技術第 8 章ソルダリングによる接合部の品質, 信頼性 社団法人日本溶接協会マイクロソルダリング教育委員会, pp [3] 材料の疲労破壊第 Ⅰ 部繰返し変形と疲労き裂の発生, 培風館, pp [4] CSP BGA パッケージの実装状態での環境及び耐久性試験方法, 社団法人日本電子機械工業会規格 (EIAJ-ET-7407), pp [5] 種田元治, 奥康浩, 上西研 : ひずみ範囲分割法によるはんだの疲労寿命評価法, 日本機械学会論文集 (A 編 ),58-549,pp ,1992 [6] 于強, 白鳥正樹, BGAはんだ接合部の形状を考慮した疲労寿命評価, エレクトロニクス実装学会誌 Vol.1,No.4,pp-278-pp.283, 1998 [7] Masaki SHIRATORI, Qiang YU, Do-Seop KIM, The effect of Intermetallic Compound on Thermal Fatigue Reliability of Lead-Free Solder Joint,The Japan Society of Machanical Engineer APCFS & ATEM 01 JSME-MIMD,pp.935-pp.940,2001 [8] 電子後方散乱回折像法 (EBSP) による結晶方位解析, コベルニクス, Vol.9,pp [9] Q. Yu and M. Shiratori, Fatigue-Strength Prediction of Microelectronics Solder Joints under Thermal Cyclic Loading, IEEE Transactions on Components, Packaging and Manufacturing Technology Part A, Vol.20, No.2, pp , [10] Q. Yu, Evaluation of Rupture Life in Solder Joint using Automatic Crack Propagation Analysis, Proceeding of The 18 th Computational Mechanics Conference, pp , 2005 [11] Q. Yu, Analytical Technology for Reliability of Electronics Device Mounted in Cars, Journal of Japan Institute of Electronics Packaging, pp , Vol.9 No.3, 2006 [12] Q. Yu, et al., Study on Evaluation Technique for The Fatigue Life Scatter of Lead-Free Solder Joint, Proceedings of IMECE2007, pp.32-37, 2007 [13] Kim, D., Yu, Q., Shibutani, T., Shiratori, M., "Nonlinear Behavior Study on Effect of Hardening Rule of Lead Free Solder Joint", Jornal of Japan Institute of Electronics Packaging, Vol. 7, No. 2, pp ,

51 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 第 4 章 き裂進展解析を用いたはんだ接合部の 信頼性設計方法

52 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 4.1 緒言 はんだ接合部の信頼性評価は, 通常, 高温と低温を交互に繰り返し試料に与え規定サイクルで試料を取り出しはんだ接合部のき裂を確認する方法で行われている. しかしながら, このような方法では断片的な情報しか得ることができない上, き裂進展挙動は構造や材料が複雑に絡み合って決定されるため, 定量的な評価ができているとは言い難かった. [1]-[4] 本章では, 電装部品に使用される電子部品の中ではんだ接合部の信頼性確保が最も困難なチップ部品に関して, き裂進展解析手法を用いて定量的な評価を行う. 次に, はんだ接合部の微細化が進むと内部欠陥であるボイドが無視できなくなってくるが, 目的とするボイドを意図的に作成することが難しいため, 現物での評価は困難であった.[5] このような問題に対して本手法を用いることにより, はんだ接合部の信頼性の高い設計方法を提案する. 4.2 フィレットサイズの影響 解析条件はんだ接合部のき裂発生 進展は,Fig.4.1 に示すように, 電子部品と基板の線膨張係数のミスマッチによるストレスが機械的強度の弱いはんだ接合部に負荷されることより発生するものである. このことからストレスを受けるフィレットの大きさと電子部品と基板の線膨張係数のミスマッチ量により, はんだ接合部の寿命は基本的に決定されると考える. よって, 今回の検証では, この 2 つの変数を変動させて, はんだ接合寿命への影響を検証する. 電子部品と基板の線膨張の差は, チップ部品がセラミックで作成されて特性が安定しているのに対して, 基板はエポキシ樹脂で作成されており, その変動幅が大きいため, 基板の線膨張係数を変数とした. その変動範囲は一般的に使用されている FR-4 と呼ばれるガラスエポキシ基板の仕様を参考にした. はんだ接合形状は,Fig.4.2 に示すフィレット高さ (a) を変動させて行った. 設定した変動範囲を Table 4.1 に示す. Crack Chip Solder Printed circuit board (PCB) Fig.4.1 Mechanism of crack generation Fig.4.2 Dimension of solder joint shape Table 4.1 Test condition of fatigue life of solder No Fillet height (a) (μm) CTE of PWB (ppm/degc)

53 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 解析結果 Fig.4.3 はフィレット高さとはんだ接合寿命の関係を検証した結果で, フィレット高さ (a) がある一定の値になるとき裂進展モードが Fig.4.4 と Fig.4.5 に示すように変化し,Fig.4.5 のモードになるとはんだ接合寿命が低下するターニングポイントがあることが確認された. はんだ接合寿命は, 基板の線膨張係数が標準的な 14ppm/degC における標準寿命を 1 として正規化した値で表わしている. そのターニングポイントは,Table 4.2 に示すように, 基板の線膨張係数が大きい程, 大きなフィレット高さで発生することが検証された. 1.4 Normalized fatigue life ppm/degC 14ppm/degC 16ppm/degC Height of Fillet (μm) Fig.4.3 Data sheet of solder joint reliability Crack propagation Crack propagation Fig.4.4 Crack propagation modeⅠ Fig.4.5 Crack propagation modeⅡ CTE of PWB Table.4.2 The fatigue life of solder joint Fillet height of solder joint (μm) Unit [μm] Turning point 12 ppm/degc μm 14 ppm/degc μm 16 ppm/degc μm

54 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 設計方法の検討 Fig.4.6 は Fig.4.3 の一部を抜き出した結果で, はんだ接合部のき裂は基板の線膨張係数が大きい程発生しやすいため 16ppm/degC の場合を示している. 例えば, 要求スペックが 0.6 だと仮定すると, フィレット高さは 150μm まで許容できることになる. このように, はんだ接合寿命が定量的に示されていると, スペックに対して許容できるフィレット高さを合理的に示すことができる. しかしながら, この設計ではフィレット高さの変動に対してはんだ接合寿命の変化が大きく不安定で, この領域における検証精度の問題も存在するため, ターニングポイントの右側のはんだ接合寿命が安定した領域で設計すべきであると考える. この場合は,Fig.4.7 に示すように, フィレット高さを 220μm 以上に設計する必要がある. 1.2 Normalized fatigue life Specification Height of fillet (μm) Fig.4.6 Design method of solder joint reliability Fatigue life ratio Criteria Height of Fillet (μm) Fig.4.7 Design method of solder joint reliability (CTE of PWB:16ppm/degC)

55 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 次に, フィレット高さを 223μm 以上に設計する方法を述べる. フィレット高さは, 基本的に, はんだ印刷量によって決定される. はんだ印刷量はメタルマスクの厚さと開口率で調整するが, 鉛フリーはんだでは一般的に濡れ性が悪いことから開口率は基板電極サイズと同じに設定されているので, マスク厚が制御因子となる. マスク厚は 150μm が使用されることが多いが, はんだ量を少なくしたいと言うニーズがあることから,Table 4.3 に示すように 150, 120, 80μm の 3 種類のマスクを用いて試作し, それぞれの場合のフィレット高さを測定した.Min と Max はシックスシグマと呼ばれる ±4.5σのばらつきを想定して計算している. この結果から, マスク厚が 150μm の場合でも, ワーストケースではフィレット高さ 223μm 以上を確保できないことが確認された. このことからはんだ印刷精度を向上させる必要があることがわかる. もしくは,14ppm/degC 以下の低膨張基板を使用すれば,Fig.4.8 に示すように, フィレット高さは 158μm までは許容できるようになるが, コストアップとなるため, 極力, はんだ印刷精度の改善で対応するべきと考える. Table 4.3 Variation of fillet height of solder joint Mask Thickness Min(-4.5σ) Typ Max(+4.5σ) σ 150 μm μm μm Unit [μm] 1.2 Fatigue life ratio μ m Criteria Height of Fillet (μm) Fig.4.8 Design method of solder joint reliability (CTE of PWB : 14ppm/degC)

56 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 前項までは 3216 サイズのチップ部品を対象に実施してきたが, 他のチップ部品にも適用して汎用性のあるデータにできないか検討した. 今回は,Table4.4 に示す 1632,3216, 3225, 3232, 4532 の 5 種類のチップ部品を取り上げ, き裂進展モードが変化する各々の分岐点となるフィレット高さを評価した. その分岐点となるフィレット高さを示したものが Table.4.5 である. このデータを基にして規格化されたチップ部品に関して, き裂進展モードが変化してはんだ接合寿命が低下するフィレット高さのポイントを求めた. その結果を Table4.6 に示す. Table 4.4 Dimensions of chip component and Pad Chip type A B C D E A B D C E Fig.4.9 Dimensions of chip component and Pad Table 4.5 Turning point of fillet height of each chip model [1] Type of chip component 1632 型 3216 型 3225 型 3232 型 4532 型 Turning 233μ m 265μ m 255μ m 239μ m 361μ m point Table 4.6 Acceptable range of fillet height of each chip model Length of chip Width of chip

57 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 4.3 はんだ接合部のボイドによる影響 はんだ接合部の形状以外に信頼性を決定する要素として, はんだ内部の欠陥であるボイドが存在する. はんだ接合部の微細化を進める上で, 従来はあまり意識して評価することはなく, 評価を行おうとしても現物評価では意図した試料が作成できないなどの理由でそのままにされるケースが多かった. ここではき裂進展解析手法を使用して, ボイドが信頼性問題にどのくらい影響するのか検証する フィレット中にボイドがある場合 1) 解析モデル Fig.4.10 に示すように, フィレット部に約 100μmのボイドが 4 つ存在する場合を想定し, ボイドが及ぼすはんだ接合寿命への影響を調べた. また, ボイドの有無だけではなく, フィレットの大きさによっても影響があると思われるため,3 つの大きさの違うフィレットも検証内容に加えた.Table 4.7 は解析条件を求めたものである. Fig.4.10 Models of solder joint with voids Table 4.7 Analysis condition of fatigue life of solder joint with voids Analysis No. Fillet Voids Diameter Number 1 Large No voids With voids Middle No Voids With voids Middle No Voids With voids

58 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 2) 解析結果 Table.4.7 に基づいて解析モデルを作成し, はんだ接合部の破断寿命を評価した結果を,Table 4.8 に示す. 破断寿命は, フィレットが大きいモデルの解析番号 1 と 2 の平均値を 1 とし, 正規化して表示している. フィレットが大きいモデルでは, ボイドの影響はなかったが, フィレットの大きさが中程度かそれより小さいモデルの場合は, ボイドの有無によりき裂進展モードが変化し, 破断寿命の低下が見られた. Table 4.9 は, フィレットの大きさが中程度のモデルを用いて, フィレットにボイドがある場合とない場合について, はんだ接合部のき裂進展解析を行った結果である. 左側の欄が部品電極の側面を沿ってき裂が進展している解析結果で, 右欄はフィレット中を斜めにき裂が進展している解析結果である. ボイドがない場合は部品電極の側面が破断し, ボイドがある場合はフィレット斜め方向の面が破断することが確認できる. Table 4.8 Contour Map of creep strain at solder joint models Analysis No. Fillet Size Voids In solder joint Diameter of void Number of voids Normalized Fatigue life Crack propagation mode 1 Large No voids With voids Middle No Voids With voids Small No Voids With voids * Crack propagation mode Mode 1 : Along the electrode of component, Mode 2 : Diagonal lines of fillet

59 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 Table 4.9 Contour Map of creep strain at solder joint models Cycle Without voids Cycle With voids Chip side area Filet area Chip side area Filet area ( Rupture) ( Rupture)

60 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 部品電極下のはんだ層にボイドがある場合 1) 解析モデル Fig.4.11 に示すように, 部品電極下のはんだ層にボイドがある場合について, はんだ接合寿命への影響を調べた. ボイドの条件は,Table 4.10 に示すように, ボイドがないものとΦ150μm,Φ200μm,Φ300μm のボイドが 2 つ存在するモデルを作成した.Table 4.9 は, ボイドがないものとΦ200μm のボイドが 2 つあるモデルに関して, き裂進展解析で得られたモデルである. Fig.4.11 Models of solder joint with voids Table 4.10 Analysis condition with voids under electrode of component No voids Small voids Middle voids Large voids - Void size : Φ150 Void size :Φ200 Void size :Φ300 2) 解析結果 Table 4.11 は解析結果で, ボイドなしの場合のはんだ接合寿命を 1 として,3 種類のボイドを有す る解析モデルのはんだ接合寿命を正規化して記載した. この場合のはんだ接合寿命は, 部品電極下のは んだ層の破断寿命で計算を行った. このように, ボイドの大きさによって, はんだ接合寿命が低下する ことが確認できる.Table 4.12 はき裂進展解析で得られた解析モデルである. Table 4.11 Analysis result with voids under electrode of component Model type No voids Small voids Middle voids Large voids Fatigue life of solder joint

61 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 Table 4.10 Contour Map of creep strain at solder joint models Cycle number Solder joint without voids Solder joint with two Φ200µm voids 1cycle 目 2cycle 目 3cycle 目 4cycle 目 5cycle 目 6cycle 目 7cycle 目

62 第 4 章き裂進展解析を用いたはんだ接合部の信頼性設計方法 4.4 結言 本章では, き裂進展モードが検証可能なき裂進展解析を用いて, 構造や形状などが複雑に絡み合って決定されるき裂進展挙動の検証を行い, その結果からチップ部品におけるはんだ接合部の定量的な信頼性設計を行えることを述べた そして, 規格化されたチップ部品に対して, 同様の評価を行い, データーシートを作成することによって, 設計の効率化が図れることを示した. さらに, 現物評価手法では検証が極めて困難なはんだ内部に発生するボイドに関して, 本手法を用いてはんだ接合信頼性への影響を明らかにすることができると述べた. 以上のことから, 本手法を用いると, 現物評価手法では困難であったはんだ接合部の高度な信頼性設計が可能になり, 電装部品の小型高信頼性に有効であると考える. 以下に, 本検討で得られた知見を示す. 1) 疲労き裂の進展は複雑な挙動を示し, はんだ接合部の形状が疲労き裂進展経路に対して大きく影響を与え, 結果的にチップ部品の側面に沿って進展する経路とフィレットを斜めに進展する経路に分かれる. この傾向は, プリント配線板とチップ部品の線膨張係数の差が大きくなる程, 影響を受けやすい. 2) フィレット形状の大きさに対する許容範囲は, チップ部品の長手方向が長いほど狭くなり チップ部品の幅が大きくなるほどその許容範囲は緩和される 方向がフィレットが大きな値が程複数のチップ部品を同様に検証することにより, 規格化されたサイズの異なるチップ部品のフィレットの大きさの許容範囲を決定することができる. 3) フィレット中にボイドの寿命への影響は, ボイドだけでなくフィレットの大きさにも影響を受ける. また, 部品電極下のはんだ層にボイドが存在する場合は, その大きさによってはんだ接合寿命が低下する. 参考文献 [1] Q. Yu, et al., Study on Evaluation Technique for The Fatigue Life Scatter of Lead-Free Solder Joint, Proceedings of IMECE2007, pp.32-37,2007 [2] 宮内裕樹, 于強, 澁谷忠弘, チップ部品の鉛フリーはんだ接合部における疲労寿命のばらつき, 日本機械学会誌論文集 (A 編 ),75 号 755 巻,PP.39-PP.46,2009 [3] Yu.Q,Shibutani,T.,Kim,D.,Kobayashi,Y.,Yang,J.,Shiratori,M., Effect of Process-induced voids on isothermal fatigue resistance of CSP lead-free solder joint, Microelectronics,reliability,48, , 2008 [4] 川端孝弘, 乙脇康夫, 橋本健, 永良智弘, チップコンデンサ実装におけるはんだ接合部の熱疲労亀裂進展挙動の解析,Proceedings of 14 th Symposium on Microjoining and assembly Technology in Electronics,Mate2008, pp , 2008 [5] 鉛フリーはんだ接合部の信頼性に対するボイド許容基準の標準化に関する調査報告 (JEITA ETR-7024), 電子情報技術産業協会技術レポート,PP.118,

63 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 第 5 章 セルフアライメント現象を考慮した 実装プロセスシミュレーションの構築

64 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.1 緒言 構造や材料特性に関するはんだ接合信頼性に関する研究は多く報告されているが, 実装プロセスによって生じるはんだ接合部の信頼性への影響に関しては, どのメカニズムの複雑さから仕方ないものとして取り扱われていた. しかしながら, 電装部品の小型軽量化と高信頼性のトレードオフの関係を高度なレベルで成立させるには, 実装プロセスによって生じる信頼性問題も改善しなくてはならない. 通常, はんだ接合信頼性のばらつきを改善するためには, 実装プロセスの各要因を変動させた試料を作成し, それを温度サイクル試験に投入して, 規定サイクルで試料を取り出し, はんだ接合部のき裂発生 進展を断面観察する方法で行われている. しかしながら, 実装プロセスによって生じる信頼性問題は, 複数の実装プロセスの要因が絡み合う複雑な現象であるため, 複数のばらつき要因が同時に変動してもたらした最終結論しか検討することができない従来の方法では, その影響のメカニズムを解明することは難しい. 現物評価手法に代わる方法としては, 第 1 章でも述べたように,Goldman の球面近似法や Heinrich の拡張球面近似法, 北野の差分法などが提案されている.[1]-[7] 永田らははんだを粘性流体として取り扱い, 塑性流れとクリープ ( 粘性流れ ) の相似性を利用して有限要素法による形状予測の方法を提案している. [8][9] そして, より一般的なはんだ接合形状の計算も可能な有限要素法に基づく形状シミュレーションソフト Surface Evolver が Brakke によって開発され, このソフトを使用した多くの研究事例が報告されている.[10]-[12] その他にも, 有限要素法に基づく解析方法やエネルギ最小化原理法に基づく解析方法の研究事例が多数報告されている. [13]-[16] しかしながら, 今回対象とするチップ部品は, はんだ接合部の形状が複雑で大きな変形を伴う上, ミスアライメント時に部品挙動を再現しなくてはならず, 非常に複雑な現象であるために従来の手法では対応できなかった. 本研究ではこのような課題を解決するために, 大変形を伴う自由表面解析に対応できる汎用流動解析ソフト Flow-3D を適用し, ユーザープログラムを作成することによって, はんだ濡れ上がり現象と部品のセルフアライメント現象が再現できるように, 流体と構造の連成解析を構築する. そして, 実験結果と一致性を高めるために, 解析をする上で重要なパラメーターである 表面張力 濡れ角 に関して, 形状が簡単なはんだボールの溶融現象を対象とした観察実験と解析を行った. 実験結果と解析結果と比較し, 実現象との一致性が高いパラメーターの設定を行う. 最後に, そのパラメーターを使用して, チップ部品の解析を行い, はんだ付け後のチップ部品の接合形状と比較することによって, 本解析方法によって定量的な評価が可能か検討する

65 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.2 ソルダリングプロセスについて 電子部品とプリント基板をはんだ接合する量産工法は, リフローソルダリング, フローソルダリングに大別される. その他にも, はんだ鏝などのマニュアルプロセスやレーザーなどの局所的なはんだ付けを行う工法がある. 尚, 今回検討を行うチップ部品は, リフローソルダリングによるものである. 以下に, リフローソルダリングとフローソルダリングの概要を示す. 1) リフローソルダリングリフローソルダリングは,Fig.5.1 に示すように, プリント基板の電極上にペースト状のはんだをクリームはんだ印刷機により塗布し, 表面実装型の電子部品をプリント基板上にチップマウンターにより搭載する. その後, 赤外線または熱風を熱源としたリフロー炉を通過させ, はんだを溶融させて接合する方法である. はんだの印刷量や電子部品の搭載位置, 加熱時の部品移動などが誤差発生要因として挙げられる.Fig.5.2 は温度プロファイルで, 予熱工程と本加熱工程, 冷却工程で構成されている.Table 5.1 に標準的な温度条件を示す. Component Heating PCB Solder Solder Fig.5.1 Process of reflow soldering Temp. (degc) Preheat Heat Cooling Time(Sec) Fig.5.2 Profile of reflow soldering

66 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Pre-heating ( degc) degc [s] Table 5.1 Parameter of profile of reflow soldering Heating 220 degc 35 sec more at solder joint Maximum Temp. 245 degc at components Table 5.2 はリフロープロセスで実装される代表的な部品を示しており, 抵抗やコンデンサなどのチップ部品, 水晶発信子やネットワーク抵抗などのリードレス, ダイオードやアルミ電解コンデンサなどのフラットリード,CPUなどのガルウイング型に大別される. Table 5.2 Mounted components using Reflow Soldering Process Package Typical parts Figure Chip Chip resistance, Chip capacitor Lead less Quartz oscillator, Network resistor Flat lead Diode, Aluminum electrolytic Capacitor Gull wing CPU, E 2 PROM

67 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 2) フローソルダリングフローはんだ付け法は, 溶融させたはんだ槽内に基板下面から突き出たディスクリート部品の端子を浸し, はんだの表面張力を利用することによって, 基板の貫通穴内にはんだを充填する方法である. はんだ槽のタイプには,Fig.5.3 に示す静止浴槽法と Fig.5.4 に示す噴流浴槽法がある. 部品の端子には, はんだ槽へ浸漬前にフラックスと呼ばれる表面活性剤が塗布され, はんだが濡れやすいようにしている. 電子部品や基板に放熱される熱容量と, はんだ浸漬時間などの供給熱量との関係により, 基板貫通穴に十分にはんだが充填されないケースがある. PCB Component Solder bath Solder bath Fig.5.3 Static Pressure Flow soldering Process PCB Component First Wave Second Wave Pump Solder bath Fig.5.4 Wave Soldering Process Fig.5.5 The mounted components using wave Soldering Process

68 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 3) プリント基板電装部品で一般的に使用されている貫通多層基板の例を Fig.5.6 に示す.2 層から 8 層程度で構成されており, 層間の電気的接続は貫通スルーホールで行われている. 各層の厚さは 18 又は 35μm で, 内層に関しては 70,105,200μm などの選択が可能である. スルーホール部や部品を実装する電極面の保護は,Table 5.3 に示すようなホットエアーソルダーレべリングや水溶性プリフラックス, 析出型はんだコート法などで処理されている. 従来は, ホットエアーソルダーレベリングが多かったが, 無鉛化対応により水溶性プリフラックスが主流になりつつある. 使用される基材は,Table 5.4 に示すように, ガラスエポキシ基板, ガラスコンポジット膨張積層板が使用されており, 無鉛化対応は, 基材の耐熱性や線膨張係数の点からガラスエポキシ基板が多く使用されている. Layer Though hole Fig.5.6 Substrate Table 5.3 Process of reflow soldering 方法ホットエアーソルダーレべリング Hot Air Solder Leveling(HASL) 水溶性プリフラックス Organic Solder Preservative(OSP) 析出型はんだコート法 内容溶融はんだに浸漬し, 引き上げる時に高温高圧の空気をノズルから基板に吹きかけ, 付着したはんだを一定にするはんだ付けのときに使用するフラックスと容易に溶け合う有機皮膜を露出した電極表面に付着させる微粉末の錫と有機酸鉛とロジンなどを用いたペーストを基板全面に塗布し, 加熱することにより化学反応が起き, 銅パッと上に錫合金が析出される Table 5.4 Process of reflow soldering 基材 UL/ANSI JIS 耐熱性 ( 保障値 ) 線膨張係数 ガラスエポキシ基板 FR-4 GE4F min ~ 16ppm/ ガラスコンポジット膨張積層板 CEM-3 CGE3F min ~ 28ppm/

69 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.3 リフローソルダリングの現象把握実験 ソルダリングプロセスのような流体を扱う解析は, 構造解析に比べて計算の負荷が大きい. また, ペースト状態のはんだ粒子が徐々に濡れ上がっていく様子を再現したり, はんだ溶融後に凝固過程を再現させることは無理と言わないまでも容易ではない. このような理由から解析の簡略化を図るため,Fig.5.7 に示すような高温槽とビデオで構成されるシステムを用いて, チップ部品におけるはんだ付けの現象を観察した. Fig.5.8 は加熱直後にペースト状態のはんだ粒子が徐々に溶融し, チップ部品の電極に濡れ上がり, 冷却工程ではんだが凝固する様子が撮影された画像である. 今回の実験では部品を指定通りに搭載したため部品の挙動はほとんどなかったが, 部品位置のずれは量産工程では発生するため, セルフアライメントの機能は解析に持たせる必要がある. Fig.5.7 Video system for Reflow soldering 予備加熱工程本加熱工程 ( 溶融状態 ) 冷却工程 ( 凝固 ) チップ部品 はんだペースト 溶融はんだ溶融はんだ固体のはんだ 温度 ( ) 予備加熱本加熱冷却 セルフアライメント 時間 ( 秒 ) Fig.5.8 Reflow process of chip component

70 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Fig.5.9 は撮影された画像を用いて Fig.5.10 に示すフィレット高さ (a) を測定した結果で, はんだが濡れ上がった後はほとんど形状に変化がないことが確認できる.Fig.5.11 ははんだ付けが終了してはんだが凝固する前後の映像であるが, はんだ接合形状にはほとんど差がないことが確認された.Table 5.5 ははんだが凝固する前後の映像からフィレット高さを測定した結果である. このように, はんだの凝固前後ではんだ接合部の形状にほとんど差がないことから, 凝固のプロセスのシミュレーションは省略可能であると考える. また, はんだ印刷後のペースト状態のはんだ粒子をシミュレーションで厳密に再現することは容易ではないことを述べたが, ペースト状のはんだ粒子の集まりを溶融したはんだと仮定し, はんだの濡れ上がりを再現すれば現実的な解析が可能になると考えられる. この場合, はんだの濡れ上がりの瞬間, すなわちペースト状態のはんだ粒子が徐々に溶融しながらはんだが部品電極に濡れ上がる現象は再現できないが, はんだが濡れ上がり, 形状安定後の形状予測には影響が少なく問題はないと考えられる. 本観察結果から必要なプロセスの再現だけを洗い出すことができ, 実用的なシミュレーションの方法を決定することができた. このようにすべての現象を解析で再現することは無理とは言わないまでも実用的ではないため, 観察実験により本質を把握して必要不可欠な部分の再現を可能にすることは非常に有効なアプローチと考える Fillet height (um) Time (s) Fig.5.9 The solder joint shapes during reflow soldering process 3.2mm 150μm 150mm 1.6mm A A a d b c Fig.5.10 The measuring point of solder joint shape

71 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 a) Before b) After Fig.5.11 The comparison of solder shapes before and after solidification Table 5.5 The comparison of dimension of solder joint before and after solidification Before solidification 519μm After solidification 519μm

72 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.4 自由表面流れの数値計算手法の選定 流体の界面を表現する方法は, 移動メッシュを用いて流体表面の力学的条件を直接取扱う界面追跡法と固定メッシュを用いて自由表面を間接的に捉える界面捕捉法の二つに大きく分類することができる. 界面追跡法は自由表面を直接的に表現しているため, 自由表面を間接的に表現している界面補足法に比べ少ない自由度で高精度な計算結果が得られる長所がある. 短所としては, 自由表面形状が複雑になる場合, 変形移動する自由表面近傍のメッシュに大きな歪が生じ計算が破綻しやすくロバスト性に問題がある. 一方, 界面補足法は, 固定メッシュを用いて自由表面を捕捉しているため, 界面追跡法にみられるメッシュの歪みに伴う数値的不安定性などは生じす, ロバスト性が高い長所を持っている. 短所としては, 自由表面を間接的に表現しているため, 高精度な結果を得るためには界面追跡法に比べて細かいメッシュが必要となる. はんだの濡れ上がりのような複雑で大変形を伴う解析には界面追跡法が安定した計算が可能で, その中でも最も成功しているのが VOF 法 [17] である. 本研究では VOF に基づく汎用流動解析コード FLOW-3D を使用した.VOF 法とは,Fig.5.12 各セルにおける流体と気体の割合を密度関数で表現し流体率により界面位置を決定する方法で, 式 (5.1) に示すように流体率 (F) を求め,1 であれば液体,0 であれば液体なし,0<F<1 であれば界面と定義されている. F + ( Fu) = 0 t (5.1) F : A ratio of fluid, u : Flow velocity (m/s) 気体セル 界面セル 液体セル 液体 a) Interface tracking method b) Interface capturing method Fig.5.12 The analysis method for free surface flow

73 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.5 解析モデル及び解析条件 解析モデルは Fig.5.13 に示すようにプリント基板とはんだ及びチップ部品で構成されている. Fig.5.14 はチップ部品の搭載位置がずれた場合のセルフアライメント現象を再現するために, 流体と剛体運動の連成解析機能を構成した. 但し, チップ部品の前後方向 (Y 方向 ) の移動は考慮していない. はんだ接合部のメッシュサイズは計算時間と収束性を考慮して約 10μm に設定し, その他の部分は約 50μm とした. Solder paste Chip component Z Y X Printed wiring board Fig.5.13 Analytical model Chip Electrode Solder Z X 0.96 Chip Cu pad Electrode Solder Y X Unit [mm] Fig.5.14 Model size

74 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.6 流体 - 構造の連成解析の実現 剛体運動は式 (5.2),(5.3) 式で示されるニュ-トンの運動方程式とオイラ-の運動方程式で表現されている. 流体運動は式 (5.4),(5.5) で示される非圧縮性粘性流体の連続の式とナビエ ストークスの運動方程式で表される.(5.4) 式の連続式に関して,Fig.5.15 に示すように剛体の移動により, 対象となるセルでの開口率 ( 障害物で埋まっていない空間の割合 ) が変更されるため, 右辺に修正項を加えた. dvg F = m (5.2) dt m : Mass V G : Velocity of rigid body T dw dt = [ J ] + w ([ J ] w) (5.3) T : Torque J: Moment of inertia w: Angular velocity 移動 気体セル セル セル 剛体セル ( チップ部品 ) 界面セル 液体セル 剛体気体剛体気体 剛体セル ( 基板 ) Fig.5.15 The compensated of porosity of cell V f u = (5.4) t u : Velocity of moving fluid (m/s) V f : Volume fraction

75 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 u 1 P μ + ( u ) u = + 2 u + g t ρ x ρ (5.5) u : Flow velocity (m/s) p : Pressure (Pa), μ : Viscosity (kg/m/s) ρ : Density(kg/m 3 ), g : Gravity (m/s 2 ) 本解析は Fig.5.16 に示すように, 溶融後のはんだが部品電極に沿って濡れ上がり形状が安定するまでのプロセスを再現することができる. そして Fig.5.17 に示すように最終解析結果からフィレット高さ a, フィレット長さ b, 部品下はんだ長さ c, 部品下はんだ厚さ d を測定し, 特性評価を行った. 左右のアンバランスを考慮するために, それぞれのファクタ-について左右のはんだ接合部を計測した. フィレット高さ a は部品端から 150μm の箇所を測定したもので, フィレット形状の特徴を良く表すポイントである. Fig.5.16 Analysis result 150μm 150μm La Ra Lb Lc Ld Rd Rc Rb Fig.5.17 Measurement point of solder joint

76 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.7 重要パラメーターのチューニング 表面張力と接触角ははんだ接合形状の解析結果に大きな影響を及ぼすため, 今回使用する実際の試料でそれらの値を計測した. 以下にその測定方法と測定結果を説明する 表面張力の測定表面張力の測定は, ウェッティングバランス試験 (JISZ3198-4) に基づいて行った. Fig.5.18 は試験装置の概要で, ヒーター付きはんだ槽と試料をはんだ槽の浸漬させた時の浮力を測定する荷重センサで構成されている. 試料は実際の使用されるコネクタの端子を用いた.Fig.5.19 はコネクタの外観で, 使用する端子は Sn めっき処理された 0.64mm 0.64mm の正方形断面を有する銅端子である. Force sensor Sample Solder Signal terminal Heater Fig.5.18 Wetting balance test Fig.5.19 Specimen 試験方法は,Fig.5.20 に示すように Sn-3.0Ag-0.5Cuのはんだ槽内に試料を浸漬させ, 時間毎の試料にはんだ溶液から与えられる力をはんだが完全に濡れ上がり安定する形状になるまで行った.Fig.5.21 と Fig.5.22 は端子に作用する力を測定した結果で, はんだが完全に濡れ上がり安定した時の作用力 F max とし, その値を式 (5.6) に代入することによって表面張力を算出することができる. 今回は Sn めっき処理されている端子を使用しているので完全に濡れ上がっている状態と仮定し, 接触角 0 を代入した.λは端子の横断面の周長で,ν は溶融はんだ中に浸漬された端子の体積である.Table 5.5 は材料定数で,Table 5.6 は試験条件である. 測定の結果,0.47N/m であった. F 2 max = ( Γ cos λ ν ρ g) 10 θ (5.6) Γ : Surface tension θ : Contact angle λ : Cross section circumference of terminal ν : Immersed volume of terminal in molten solder ρ : solder density g: gravity acceleration

77 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 lowering a sample Holding a sample raising a sample Fig.5.20 Schematic of wetting balance test Fmax 1.0 Force [mn] Time [sec] -1.0 Fig.5.21 Measured force by the wetting balance test Sample Surface tension : Γ θ Force to sample : F Buoyant force : υρg Solder bath F: Force to sample [mn] θ : Contact angle [ ] λ : Contact length [cm] Γ : Surface tension [dyne/cm] υ : Immersed volume ρ : Liquid density [g/cm3] Fig.5.22 Force to sample Table 5.5 Material properties Density of solder 7360 kg/m 3 Viscosity coefficient of solder 1.90E03 kg/m/s Gravity acceleration 9.80 m/s

78 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Table 5.6 Conditions of wetting balance test Solder temp. [ ] Dip depth [mm] Dip time [s] Dip velocity [mm/s] 260± 濡れ角の測定はんだの濡れ性を評価する方法の1つとして, 濡れ広がり試験 (JISZ3198-3) が広く用いられている. ここでは,Fig.5.23 に示すように, はんだボールによる広がり試験を行い, 溶融後のはんだと部材間の接触角を測定する. はんだボールは Sn-3.0Ag-0.5Cu 製の φ500μm の試料をランドの上にのせて加熱し,Fig.5.7 で示したフィレット画像解析装置 (Malcom 製 Reflow Simulator SRS_1) を用いて, はんだが濡れ広がった後の接触角 θ, 幅 W, 高さ H を測定した. 接触角とは, 固体表面と液体の接線がなす角のことである. 接触角の測定方法としては, 下記に示すような方法がある. 本試験においては, 用いたはんだボールのサイズが比較的大きいこと, 測定方法が簡易であることを考慮して, 接線法により接触角を測定した. Solder ball φ500μm Heating θ H Land W Fig.5.23 Schematic of solder ball spreading test. 1 θ/2 法 Fig.5-24-(a) に示すように, 液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の固体表面に対する角度から接触角を求める方法である.θ 1 は式 (5.7) から算出される. θ = tan 1 ( h / r) (5.7) 微小液体形状は円の一部と仮定できるため, 幾何の定理より 2θ 1 = θ が成り立つ. この方法は, 液滴が球の一部であることを前提としているため, 重力の影響を無視できる液滴量で測定する

79 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 2 接線法 Fig.5-4-(b) に示すように, 液滴の画像の輪郭形状を円の一部と仮定し, 円の中心を求め, 円の接線と直線でなす角度を接触角として求める. 接触角 θは式 (5.8) によって算出される.θ/2 法は取り込んだ液滴の幅と高さから接触角を計算するので, 求める接触角は左右の平均値となる. 一方, 接線法は左右別に接触角を求めることができるので, 固体表面の状態により, 液滴左右の値にばらつきがある場合に有効な測定方法となる. θ = tan 1 ( y / x) (5.8) 3 カーブフィッティング法液滴の画像の輪郭形状が真円または楕円の一部をなすと仮定し, 指定された区間内 ( フィッティング区間 ) のすべての観測座標を使って最小二乗法フィッティングを行う. この計算により, 真円または楕円のパラメータを決定し, 端点における微分係数を求めて接触角を算出する. 接線法では, 輪郭形状として真円が仮定されているが, この結果と真円フィッティングの結果を比較すると, 真円フィッティングのほうがより多くの座標を利用するので, ばらつきが小さくなる. θ 1 θ h θ y 2r x (a) θ/2 method (b) Tangent line method Fig.5.24 Measuring methods of contact angle

80 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Table5.7 は測定画像で,Table5.8 と Table5.9 は測定画像から計測したはんだボールの形状と濡れ角である. 測定の結果, 濡れ角は 32.5 であった. Table 5.7 The melting test result of solder ball Test No. 1st 2nd Table 5.8 Measured result of solder height: H and width: W by spreading test. Test No. H [μm] W [μm] H/W Average Table 5.9 Measured result of contact angle by spreading test. Test No. Left Right Average Average Unit [º ]

81 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 解析値としての妥当性 1) リフロープロセスにおける取得データーの妥当性表面張力と接触角の測定値及び解析手法の妥当性を確認するために, 比較的簡略な形状をしているはんだボ-ルを対象として, 表面張力と濡れ角を変動させ, 解析として妥当な値を検討した. 以下に, 解析方法と実験方法及び比較結果を述べる. 1 解析方法 Fig.5.25 はそのシミュレ-ションモデルで, モデルは軸対称を採用し, メッシュサイズは解析の実効性を考慮して極力小さな値を選択し 10μm とした. はんだボールのサイズは, 接触角を測定した試料と同条件で行った. はんだボールの材料は Sn-3.0Ag-0.5Cu で, 解析に使用した特性を Table.5.10 に示す. そして,Fig.5.26 に示されるような解析画像が得られる. Solder ball φ500mm Electrode Z X Fig.5.25 Analysis model of solder ball Table 5.10 Parameters of analysis. Contact angle 32.5 º Surface tension 0.47 N/m Solder density 7360 kg/m 3 Viscosity coefficient of solder 1.90E03 kg/m/s Gravity acceleration 9.80 m/s

82 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 t=0.0 t=1.0e-4 t=2.0e-4 t=4.0e-4 t=1.0e-3 t=1.4e-3 t=2.0e-3 t=5.0e-3 Fig.5.26 The analysis result of melting phenomenon on solder ball 2 実験方法はんだボールの溶融観察実験は,Fig.5.7 で示したフィレット画像解析装置 (Malcom 製 Reflow Simulator SRS_1) を用いて行った. 温度条件は,Table 5.11 に示すように, ピク温度を変化させた 3 条件とピーク温度の温度上昇速度を変化させた 1 条件の合計 4 条件で行った.Fig.5.26 ははんだ付けの現象を観察画像で, はんだの溶融形状が安定した画像から Fig.5.27 に示す はんだの幅 (W) と はんだの高さ(H) を計測した. Table 5.11 Test condition Test No. Maximum temperature [ ] 1Heat up rate (RT 100 ) [ /s] 2Preheating time ( ) [s] 3Heat up rate (200 T max) [ /s] 4Heating time (220 <T ) [s] No No No No Fig.5.26 The experimental result of melting phenomenon on solder ball

83 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Solder ball φ500mm Heating qθ H Electrode W Fig.5.27 The measuring dimension after solder ball was melted Fig.5.28-(a) は溶融はんだの高さ (H) の時間的な変化を示したものである.No.1-No.3 はピーク温度を変化させた場合であるが, はんだの溶融形状にはほとんど差異が見られなかった.No.4 は加熱速度を速くした場合で, はんだの溶融速度がやや速くなったが, 最終形状は他の条件と同じであった. そして,Fig.5.28-(b) は溶融はんだの幅 (W) を示したものであるが, これも同様の傾向が見られる. 以上のことから, リフローの温度条件は, 最終形状の予測計算には関係がなく, この範囲であれば温度の構成則は省略量略できる. Η [μm] No.01 No.02 No.03 No Time [s] (a) Solder height (H) 2W [μm] No.01 No.02 No.03 No Time [s] (b) Solder width (W) Fig Behavior of each factor of solder shape

84 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Table 5.12 は上記の結果をまとめたもので, 実験によるはんだボ-ルの測定は誤差が考えられるので高さ H と幅 W の絶対値で比較するよりは, 比率で解析結果と比較したほうが良いと考え, 高さを幅で割り算した値 (H/W) を算出した. Table 5.12 Measurement result of each factor Test NO. H W H/W Average 比較結果 Fig.5.29 は, はんだの幅 (W) と高さ (H) の比 (H/W) に関して, 解析結果と実験結果をっ比較し, 一致性を確認した結果である. 表面張力が 3 条件と濡れ角が 5 条件を変動させた場合について検証を行っている. その結果, 表面張力は 0.47N/m で濡れ角は 32.5 の条件で解析した結果が, 実際の溶融形状と一致性が高いことが確認された. 表面張力が低い場合 (0.2N/m) は, 実験の溶融形状との誤差が大きくなることがわかった. 逆に, 表面張力が 0.47N/m 以上の場合は, 実際の溶融形状との誤差は少なく, 解析上は影響がないことがわかった. そして濡れ角については, 溶融形状の計算に影響が大きく, 濡れ角が小さい場合は, はんだ溶融形状が潰れたような形状になり, 濡れ角が大きい場合ははんだ用ユ形状が盛り上がった形状になっている と で測定した表面張力と濡れ角の測定値と今回の検証で最も実際の溶融形状に近かった値とは同じであり, このソフトウエアで今回のような溶融現象も正確に再現できると考えることができる H / W Analysis (22.5 ) Analysis (27.5 ) Analysis (32.5 ) Analysis (37.5 ) Analysis (42.5 ) Experment Surface tension [N/m] Fig.5.29 Comparison between Analysis result and Experimental result

85 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 界面捕捉法を用いた FLOW-3D に対して, 界面追跡法を用いた FLUENT を使用して同様の解析を行った.Table 5.13 はその結果で, ほぼ同様の結果が得られた. このことから, 今回測定した表面張力と濡れ角は, 一般的に使用しても問題がないと考えることができる. Table 5.13 The comparison between FLOW-3d-D and Fluent FLUENT FLOW-3D H W H/W H W H/W (mm) (mm) (-) (mm) (mm) (-) ) フロープロセスにおける取得データーの妥当性次に, 今回取得したはんだの表面張力と濡れ角は, リフロープロセス以外のプロセスにも適用できるか確認した. 実際には, ディスクリート部品をソルダリングするフロープロセスへの適用を検討した. 確認方法は, 端子をはんだ層に浸漬し, はんだが端子に濡れ上がる現象を解析と実験で比較検証した. 1 解析モデル解析モデルは,Fig.5.30 に示すように,3 次元 1 / 4 対称モデルを作成した. モデルサイズを Fig.5.31 に示す. メッシュ分割は, モデルサイズを考慮してメッシュサイズを 50μm とし結果, メッシュ数は =512,000 になった. そして, 端子とはんだ槽の中に浸漬させ, はんだが端子に濡れ上がり, 力が釣り合い, フィレットが形成された状態における濡れ力を測定する方法で行った. 計算簡略化のため, 熱計算を省き, 初期で端子がはんだ槽に漬かっている状態から始めた. 解析に用いたはんだの表面張力は N/m, 接触角は 32.5 で, その他の材料物性, 重力加速度などの値も,Table 5.10 で示した値と同じものを使用した. Signal terminal Solder bath Z Y X Fig Analytical model of dip soldering simulation

86 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 0.64 mm 4.0 mm 5.0 mm Z 2.0 mm 0.64 mm X 5.0 mm 0.64 mm Fig Dimension of analytical model for dip soldering simulation 2 濡れ力の評価方法この解析では, 液体の表面張力により液体が端子に濡れ上がっていき, 端子と液体との間に接触角が形成される. はんだの表面張力をΓ, 接触角をθ, 接触長さをλとすると, 端子には表面張力による力 ( Γ cos θ λ ) が加わる. 解析では端子は固定されているため, Fig.5.32 の点線で示したフレームの中のはんだのように, 基準位置より持ち上がっているはんだを支えている力が, 表面張力による力 ( Γ cos θ λ ) に等しくなる. 以上から, 端子に加わる力 F は式 (7.2) のように表すことができる. F ' = Γ cosθ λ = ΔV ρ g (7.2) よって, 本解析では Fig.5.32 に示すように基準位置より上の部分に対してフレームを指定し, このフレーム内のはんだ量を求め, 式 (7.2) に基づいて力 F を評価した. F Signal terminal Γ cosθ λ Solder bath θ Standard position Fig.5.32 Evaluate method for the force

87 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 3 解析結果解析によって得られた, はんだの濡れ上がりの過程を Fig.5.33 に示す. 図の下には, その時の解析における時間を示している. また,3.2.3 で示した方法により算出した F の結果を,Fig.5.34 に示す. 解析開始直後からはんだは徐々に濡れ上がっていき,t = 4.2e-2 のときに F が最大値を示し, その後値が下がっていった. 試験結果と比較すると, 現象をシミュレーションすることができたと考えられる.F max, F end それぞれの, 解析と試験による結果を Table 5.14 に示す.F max については, 試験結果の方が若干高い値を示しているが, かなり近い値を得ることが出来た. この結果から, 本研究で取得した表面張力と濡れ角は, フロープロセスにも適用できると判断する.F end については, 解析結果と試験結果とで大きな差がみられた. これは試験における時間と解析における時間を一致させることができていないためと考えられるが, 濡れ上がりを評価する上では F max で対応できるので無視できると考える. t=0.0 t=1.0e-3 t=2.0e-3 t=4.0e-3 t=1.3e-2 t=1.7e-2 t=4.2e-2 t=5.0e-2 Fig.5.33 Analytical result of dip solder simulation Force [mn] E E E E E E-02 Time [s] Fig.5.34 Force profile with time

88 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 Table 5.14 Analytical result of force to sample F'max [mn] F'end [mn] Analysis Experiment チップ部品への適用の妥当性前項で解析上重要なパラメーターである表面張力と濡れ角の決定を行った. 次に, チップ部品にも適用が可能かどうか確認するため, チップ部品のはんだ濡れ上がり現象の解析とリフロー後の試料のはんだ接合断面形状と比較を行う. 解析モデルは Fig.5.14 で示した条件で行い, 材料特性は Table 5.5 で示した値を使用した. 実際の試料のはんだ接合部の断面形状の測定は,Fig.5.35 で示した通り, チップ部品の中央を切断し, はんだ接合部を断面観察することにより行う.Table 5.15 は標準的で安定した試料のはんだ接合断面における各寸法の測定結果である. Table 5.15 Measured results of each dimension of solder joints in 3216 chip components Chip No. Fillet height(a) Fillet length(b) Solder length Solder thickness under chip(c) under chip (d) Average Standard deviation Unit: [μm]

89 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 3.2mm 150μm 150mm 1.6mm A A a d b c a) Chip component b) Section A-A Fig.5.35 Dimensions of solder joint Table 5.16 は 15 個の試料の平均値と平均的なモデルでの解析結果の比較である. すべての形状において解析結果と実験結果の誤差は約 ±10% で, 良好な結果が得られた. 以上のことから, チップ部品のはんだ形状のシミュレ-ションも可能であることが確認された. Table 5.16 Analysis vs. Experimental on solder joint shape Fillet height(a) Fillet length(b) Solder length under chip(c) Solder thickness under chip (d) Analysis Experiment Error -10.0% 2.0% 5.3% 8.7% Unit: [μm] 5.9 計算時間の短縮前項までの結果から, 最小メッシュサイズ 12μm の場合において, 実験結果との整合性を確認することができた. しかし, 最小メッシュサイズ 12μm の場合, 解析モデルのメッシュ数が非常に多くなるため, 膨大な計算時間を要するという問題がある. はんだ接合形状のばらつき評価を進める上で, 多数の解析を行う必要があることから, 計算時間の短縮が求められる. そこで, 最小メッシュサイズを 12μm から 20μm に変更し, 解析結果の妥当性を検証した.Fig.5.36 に最小メッシュサイズ 12μm と 20μm の解析モデルを, Fig.5.37 に解析後の断面形状を示す. (a) Min. mesh size: 12μm (b) Min. mesh size: 20μm Fig.5.36 Mesh division of each analytical model

90 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 (a) Min. mesh size: 12μm (b) Min. mesh size: 20μm Fig.5.37 Solder joint shape in section A-A of each analysis Table 5.17 にそれぞれのメッシュ数, 計算時間及びはんだ接合部の各寸法の解析結果を示す. 最小メッシュサイズを 20μm に変更した結果, 寸法 (a),(b),(c) についてはほぼ同等の結果が得られたが,(d) については実験値と比較して大きな違いが生じることがわかった. この理由は, 実際の電極下の厚さは極めて薄いため, 十分なメッシュ数が確保できないためである. しかしながら, フィレット部の形状予測には問題が無いため, 以降のばらつき評価では, 計算時間を考慮して, 最小メッシュサイズ 20μm で行うこととした. Table 5.17 Dimensions of solder joints by analysis Number Analysis Dimensions of solder joint [μm] Mesh of mesh time a b c D size [hour]

91 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 5.10 結言 本研究では, 大変形を伴う自由表面解析に対応できる汎用流動解析ソフト Flow-3D を適用し, ユーザープログラムを作成することによって, はんだ濡れ上がり現象と部品のセルフアライメント現象が同時に再現できる 流体と構造の連成解析 を提案した. 本研究で得られた知見を以下に示す. 1) 本連成解析の手法を用いた解析結果は, はんだ付け後の接合形状を良く模擬しており, 実装プロセスの変動に対するはんだ接合形状への影響を定量的に評価することが可能である. 2) すべてのソルダリングプロセスにおける現象を再現することは現実的に困難であるため, 解析方法を検討する前に実際の現象を観察して注力ポイントを明確にする検討を行った. その結果, はんだ溶融時の現象や凝固過程は省略可能であることがわかった. 3) 流動解析を行うにあたって, 流体の 表面張力 と 濡れ角 は結果に大きく影響を与えるため, 実際に使用する部材での測定に加えて, 解析ソフトに適した値にチューニングすることが必要である. 4) 解析時間の短縮を行うため, メッシュサイズを見直した結果, 部品下のはんだ厚さが極めて薄いために誤差が大きかったが, フィレット形状を評価する上では問題がなく, 解析時間を短縮できることがわかった. 参考文献 [1] 酒井秀久, 于強, 白鳥正樹, 金子正秀, 福田孝, 茂木正徳, BGA はんだ接合部の形状予測と残留応力評価, エレクトロニクス実装学会誌,pp , Vol.4 No.7, 2001 [2] Kuo-Ning Chiang and Chang-An Yuan, An Overview of Solder Bump Shape Prediction Algorithms with Validation, IEEE TRANSACTIONS ON ADVACED PAKAGING, Vol.24, No.2, 2001 [3] L.S.Goldmann: Geometric Optimization of Controlled Collapse Interconnections, IBM Journal of Research and Development, Vol.13, May, pp , 1969 [4] S.M.Heinrich,M.Schaefer,S.A.Schroeder,P.S.Lee: Prediction of Solder Joint Geometries in Array-Type Interconnects, ASME Journal of Electronic Packaging, Vol.118, September,pp ,

92 第 5 章セルフアライメント現象を考慮した実装プロセスシミュレーションの構築 [5] D.N.Staicopolus, The Computation of surface Tension and of Contact Angle by The Sessile-Drop Method, Journal of Colloid Science, Vol.17, pp , 1962 [6] J.F.Paddy,A.pitt: Axisymmetric Meniscus Profiles, Journal of Colloid Science, Vol.38, No.2, February, pp , 1969 [7] M.Kitano, M.Honda: Shape predictions of solder bump joint by surface tension Analysis and Fatigue strength evaluation, Advances in Electronic Packaging InterPACK 97, ASME EEP-Vol.19-2, pp , 1997 [8] 永田孝弘, 小林卓哉, 佐久田博司, 剛塑性流れ解析によるはんだの形状解析, 8 th Symposium on Microjoining and Assembly Technoligy in Electronics, 2002 [9] 永田孝弘, 小林卓哉, 佐久田博司, FEM による溶融はんだの形状及び安定性の解析, 日本機械学会第 15 回計算力学講演会講演論文集,pp ,2002 [10] K.A.Brackke, Surface Evolver Manual Version 1.99, ( [11] Li Ming Yu, et.al., Simulative Analysis on Factors Influencing Solder Joint Bridging of Fine Pitch Devices, Transactions of the ASME, Vol.126, pp.22-25, 2004 [12] Peter M. Martino, Gary Freedman, Livia M. Racz, Julian Szekely, Predicting Solder Joint Shape by Computer Modeling,Electronic Components and Technology Conference 1994 Proceedings, pp [13] N.J.Nigro,et.al., Parametric Finite Element Method for Predictuing Shape of Three-Dimensional Solder Joint, Transaction of the ASME, Vol.118,pp , 1996 [14] Subbarayan, G., 1996, A Procedure for Automated Profile and Life Prediction in Flip-Chip and BGA Solder Joint, ASME J.Electron, Packaging, 118,pp , 1996 [15] Mudasir Ahmad et.al., Solder Joint Shape Prediction Using a Modified Perzyna Viscoplastic Model, Transaction of the ASME, Vol.127, pp , 2005 [16] S.K.Patra, Y.C.Lee, Quasi-Static Modeling of the Self-Alignment Mechanism in Flip-Chip Soldering Part 1 : Solder joint,journal of Electrronic Packaging, pp , 1991 [17] Hirt, C. W., Nichols, B.D., Volume of fluid method for the dynamics of free boundaries. J. Comp. Phys., 39(1981), pp

93 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 第 6 章 はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用

94 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 6.1 緒言 はんだ接合寿命は, 構造や材料だけでなく実装プロセスによって生じるばらつきも総合的に考慮する必要がある. 実装プロセスのばらつきは, はんだ接合部の形状ばらつきに影響すると考えられるため, 実際の試料のはんだ接合部を断面観察し, はんだ接合形状のばらつきの傾向を調査し, 相関分析とクラスタ分析を実施した. 相関分析とは 2 つの要因間の関係を調べる方法で, クラスタ分析とは異なる性質のもの同士が混ざり合っている集団の中から, 変数のパターンの類似性が高いものから順に分類してグル-プ分けする方法である.[1]-[7] 次に, 実装プロセスのばらつきが及ぼすはんだ接合形状の影響のメカニズムは, 現物評価では実装の複数の要因が同時に変動した最終結果しか得られず, その影響のメカニズムを明らかにすることは難しい. よって, 前章で構築した実装プロセスシミュレーションを用いて, 実装プロセスの各要因が変動した場合のはんだ接合形状への影響を調査した. 対象とする部品は, 電装部品の中で疲労信頼性の確保が最も困難なチップ部品で, リフロープロセスについて検討することにした. リフロープロセスは, 基板の電極上にはんだを印刷する工程と電子部品を基板電極上に搭載する工程, 及び電子部品が搭載された基板を加熱する工程で構成される. このため, 各工程の要因が変動した場合のはんだ接合形状への影響について, 実装プロセスシミュレーションを用いて検証する. 次に, 得られたモデルを用いて疲労寿命解析を行い, 実装プロセスの変動と信頼性の関係を調べる. これらの結果から, はんだ接合部の信頼性向上のためには, どのようなプロセス管理が必要かを検討する. 6.2 チップ部品のはんだ接合形状に関するばらつき発生評価 相関分析によるばらつき発生評価 1) 分析方法はんだ接合部に発生するばらつきを把握するために,Fig.6.1 に示すように, 左右のフィレット高さ (a) とフィレット長さ (b), 部品下はんだ長さ (c) と部品下はんだ厚さ (d) を測定して相関分析を行い, 各要因間の相関性と各要因の左右間の相関性について分析した. 相関分析とは 2 変数間の線形的な関係を数値で表す分析方法で,2 組の数値からなるデータ列 (x i,y i ) (i=1,2, n) が与えられる場合, 通常, 式 (1) のビアソンの積率相関係数 (r) が求められる. この相関係数は, 原則, 単位はなく,-1 から 1 に間の実数値をとり,1 に近いときは 2 つの変数には正の相関があるといい,-1 に近ければ負の相関があるという. 正の相関とは, 変数 xが大きいほど変数 yも大きい場合で, 負の相関関係とは変数 xが大きいほど変数 y が小さくなる場合である. 相関係数が 0 に近い場合は無相関と言う. また, 式 (1) は偏差の正規分布を仮定した方法であるが, 他にこのような仮定を置かない方法として, スピアマンの順位相関係数, ケンドールの順位相関係数などが知られる

95 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 150μm 150μm Z La Ld Rd Ra X Lb Lc Rc Rb Fig.6.1 Measuring dimensions of solder joint shape * a : Fillet height, b : Fillet length, c : Solder length under component d : Solder Thickness under component r = n i = 1 n i = 1 ( x i ( x i x ) x )( y 2 n i i = 1 y ) ( y i y ) 2 (6.1) r : Correlation coefficient, x, y : Mean 2) 分析結果 Table 6.1 は各要因間の相関性について 45 個の試料を分析した結果で, 強い相関性を示す 0.7 以上のものはフィレット長さ (b) と部品下はんだ厚さ (c) の組合せで, その他の変数の組合せは無相関であった. フィレット長さ (b) と部品下はんだ厚さ (c) の関係は, フィレット長さ (b) が大きくなると部品下はんだ厚さ (c) が小さくなる負の相関関係で, フィレット長さ (b) と部品下はんだ長さ (c) の和は, 基板の電極長さ (l) である. チップ部品の位置がずれてフィレット長さ (b) が大きくなると, 部品下はんだ長さ (c) は基板電極長さ (l) からフィレット長さ (b) を引いた値であるので, 容易に理解することができる.Fig.6.2 の a)-f) に相関図を示す.Fig.6.2-d) は線形関係があり, その他は無相関であることが確認できる. Table 6.1 Correlation of each factor A b c d a b c d * Strong correlative:0.7 over, correlative: , No correlation:0.4 below

96 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 b a c a a) Fillet height(a) vs. Fillet length(b) b) Fillet height(a) vs. solder length under component(c) d a c b c) Fillet height(a) vs. solder Thickness d) Fillet length(b) vs. Solder length under component(d) under component(c) d 20 d b c e) Fillet length(b) vs. Solder length f) Solder length(c) vs. Solder Thickness under component(d) under component(d) Fig.6.2 Correlations of each dimension on solder joint shape

97 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 Table.6.2 は各要因の左右相関を分析した結果で, フィレット長さ (b) と部品下はんだ長さ (d) は強い負の相関関係があったが, フィレット高さ (a) とフィレット厚さ (d) は無相関であった.Fig.6.3 は相関図で,Fig.6.3-b),c) は線形関係があることがわかる. フィレット長さ (b) と部品下はんだ長さ (b) の左右相関性が強い理由は, これも部品の位置ずれによるものである. 例えば部品が右側にずれると, 左側のはんだ接合部はフィレット長さ (Lb) が大きくなり, 右側のフィレット長さ (Rb) が小さくなることが容易に理解できる. 同様に右側の部品下はんだ長さ (Lc) は小さくなり, 左側の部品下はんだ長さ (Rc) は大きくなる. Table.6.2 The left-right correlation of solder joint La Lb Lc Ld Ra Rb Rc Rd Ra La Rb Lb a) Fillet height (a) b) Fillet length (b) Rc Rd Lc Ld c) Solder length under component(c) d) solder thickness under component (d) Fig.6.3 Left-right correlation of solder joint shape

98 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 以上, チップ部品のはんだ接合形状に関する相関分析の結果を述べたが, 結局のところ, この集団のデータがどのような傾向があるのか調べることが出来なかった. したがて, 次に述べるクラスタ分析による方法を試みることにした クラスタ分析によるばらつき発生評価 1) 分析方法クラスタ分析とは, 異なる性質のもの同士が混ざり合っている集団の中から, 変数のパターンの類似性が高いものから順に分類してグル-プ分けする方法である. クラスタ分析には階層的方法と非階層的方法に大別され, 前者の方が一般的に良く使用される. 階層的方法とは, 存在する K 個のクラスタ間で, 類似度が最大のものを選び出し, その 2 個のクラスタを統合して新たな 1 個のクラスタとする. 新たなクラスタと残りのクラスタとの間の類似度を定義しなおすと言う作業を繰り返して, 順次クラスタを統合し, 全体のクラスタを減少させていく方法である. したがって, いま N 個の個体があるとすれば, 作業の最初の段階ではそれぞれ 1 個の個体からなる N 個のクラスタが存在するものとみなされる. また,N-1 ステップ目には, すべての個体は N 個の個体からなる唯一個のクラスタに統合されてしまうことになる. この統合の過程は,Fig.6.4 に示すように, トーナメント試合の組合せのような樹枝図 (dendrogram) に表現することができる. Fig.6.4 Dendrogram of cluster analysis

99 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 変数のパタ-ンの類似性を判断するための計算式は,Table 6.3 に示すうように最短距離法, 最長距離法, 群平均法, 重心法, メディアン法, ウォ-ト 法が挙げられる. このうちウォ-ト 法が最も良く用いられる方法である. Table 6.3 Methods of cluster analysis 方法名内容 最短距離法 最長距離法 群平均法 重心法 メディアン法 ウォード法 2 つのクラスタ間の距離をそれぞれのクラスタから 1 つずつ選んだデータ間の距離の中で最も小さな値として定義する 2 つのクラスタ間の距離をそれぞれのクラスタから 1 つずつ選んだデータ間の距離の中で最も大きな値として定義する 2 つのクラスタから 1 つずつデータを選んで距離を求める. すべてのデータの組合せで距離を求め, その平均を 2 つのクラスタの距離と定義する. クラスタの重心の概念を用いて,2 つのクラスタ間の距離を重心の間の距離で定義する. 重心法に似た方法で, クラスタの大きさを計算式の中に組み込んで距離を定義する. クラスタ内のデータの平方和を最小にするように考慮された方法である. 距離の計算方法は, ユークリッド平方距離, 標準化ユークリッド平方距離, マハラノビスの汎距離, ミンコフスキー距離が挙げられる. 以下に計算方法の概要を示す. ウォード法で利用できるのは, ユークリッド平方距離である. ( 1) ユークリッド平方距離 (Squared Euclidean distance) 例えば,Table 6.4 に示すように,n 個の個体があり, 各個体に m 個の設計変数が得られているとすると, 個体 i と j との距離 dij は式 (6.2) によって求めることができる. この距離の値が小さいと個体間の類似性が高いことを示す. d ij = m k = 1 2 ( x x ) (6.2) ki kj Table 6.4 Matrix for cluster analysis Model Parameter X 1 X 2.. Xm 1 X 11 X 21.. X m1 2 X 21 X 11.. X m n X 1n X 2n.. X mn

100 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 ( 2) 標準化ユークリッド平方距離 (Standardized squared Euclidean distance) 個体 i と j との距離 dij を d ij = m k = 1 2 k ( x x ) 2 / s (6.3) ki kj により定義する. ここで s 2 k は変量 xk の分散を表わす. オブジェクトの分散の大小 による距離の影響を避けるために, 各変数の分散を 1 に基準化した値を考える. ( 3) マハラノビスの ( 汎 ) 距離 (Mahalanobis' (generalized) distance) 個体 i と j との距離 d ij を d ij = ( x i x ) S j 1 ( x i x j ) (6.4) により定義する. ここで x i は個体 i の観測値ベクトル,S は分散共分散行列をあらわす. 一般に, マハラノビス距離は 2 つまたはそれ以上の相関がある変数で定義される空間内での距離の測度である.2 つの変数に相関がない場合, 点 ( ケース ) は標準的な 2 次元散布図にプロットすることができる. この場合,2 点間のマハラノビス距離はユークリッド距離と一致する. 3 つの無相関の変数があった場合,( 3 次元プロット内で ) 物差しで単純に距離が測れる. 4 つ以上の変数があった場合, プロット内の距離を表わすことができない. また, 変数に相関がある場合, 単純なユークリッド距離は適切な測度ではなくなる. 一方, マハラノビス距離は相関も十分に考慮された形で情報を提供できる. ( 4) ミンコフスキー距離 (Minkowsky distance) ユークリッド距離を一般化したものとして, 次の式で定義されるミンコフスキー距離がある. d ij 1 m k k xli xlj l 1 = = (6.5) とくに k=2 とおけば, 普通のユークリッド距離,k=1 とおけば, いわゆる市街地距離 (cityblock distance) となる

101 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 2) 分析結果 Fig.6.1で示したチップ部品におけるはんだ接合形状の 8つのパラメーターに関して, 約 60 個の集団のクラスタ分析を行った. その結果,Fig.6.5 に示す樹枝図 (Dendrogram) の通り,3 つのクラスタに分類した. Sample No Cluster_1 Cluster_2 Cluster_ Combined distance Fig.6.5 Dendrogram of cluster analysis on chip component 各クラスタ内においてそのクラスタに属しているチップ部品の各要因の変動の最大値を 1, 最小値を-1 として正規化し, クラスタ内のすべての部品のそれぞれの要因の平均値を求めた. そしてその平均値をもって, それぞれのクラスタに属するチップ部品の各要因の特徴を示すことができる.Fig.6.6 はその分析結果で, パラメーターの L は左側を R は右側を表しており,a はフィレット高さ,b はフィレット長さ,c は部品下はんだ長さ,d は部品下はんだ厚さを示している. フィレット長さ Lb と Rb の比を計算すると部品ずれの程度を表す指標となり, 部品電極下はんだ厚さ Ld と Rd の比は部品の傾きの程度を示す指標となる. これを示したのが Fig.6.7 である. クラスタ 1 はずれと傾きが大きくが, クラスタ 2 はずれと傾きとも少ないものであることがわかる. クラスタ 3 はクラスタ1と同様で, ずれと傾きが共に大きい傾向があることがわかる

102 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 以上の結果から, チップ部品のはんだ接合寿命のばらつきは, クラスタ 1,3 に分類されている試料が原因であると仮定することができる. そして, クラスタ 1,3 に発生している 部品ずれ と 部品の傾き の発生原因を調べ, 対策して改善することによりはんだ接合部の高信頼性設計が実現できると考える. Normalized dimensions cluster_1 cluster_2 cluster_3 La Lb Lc Ld Ra Rb Rc Rd Dimentional factor of solder joint Fig.6.6 Trend in measuring factor Dimensional ratio of laterality Offset Inclination Cluster No. Fig.6.7 Trend of the solder joint shape

103 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 6.3 ばらつき発生原因の調査 前項ではチップ部品におけるはんだ接合部の信頼性向上のためには, 部品のずれと傾きが大きい試料の発生原因を調べ, 対策, 改善することが必要であることと述べた. 部品のずれと傾きは実装プロセスによって生じると考えられ, 一般的な現物評価だけでは検証が困難であることから,5 章で説明した実装プロセスシミュレーションを用いて評価を行う. 実装プロセスは, 基板の電極上にはんだを印刷する工程と部品を搭載する工程, 加熱してはんだ付けする工程で構成されている. よって, はんだ印刷量と部品搭載位置が変動した場合におけるはんだ接合形状への影響を評価する. これ以外にチップ部品の電極長さが接合形状に影響を与えることが予想されるため検証に加えることにした 解析方法第 5 章で行ったシミュレーションの検討では, 部品の対称性を考慮して 1/4 モデルを用いたが, ここでは部品の搭載位置ずれを考慮するため,Fig.6.8 に示すような 1/2 モデルを使用する. ここの章では各種の多くの条件を検証しなくてはならず, 計算時間の短縮が必要である. 部品の傾きに関係する部品下はんだ厚さの値は小さく解析精度は高くないが, 定性的な検証には問題がないと考え, 最小メッシュサイズは 20μm で検証を行う.Table 6.5 に, 本解析で用いた材料物性値などを示す. Chip component PCB Solder paste (a) Schematic of analytical model (b)mesh division (Min 12um) Fig.6.8 Analytical model of 3216 chip component (semi-model)

104 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 Table 6.5 Parameter of analysis. Contact angle 32.5 º Surface tension 0.47 N/m Density of solder 7360 kg/m 3 Viscosity coefficient of solder 1.90E03 kg/m/s Gravity acceleration 9.80 m/s 試験条件実装プロセスは, 基板の電極上にはんだを印刷する工程と部品を搭載する工程, 加熱してはんだ付けする工程で構成されている. よって, はんだ印刷量と部品搭載位置が変動した場合におけるはんだ接合形状への影響を評価する. これ以外にチップ部品の電極長さが接合形状に影響を与えることが予想されるため検証に加えることにした. これらの要因を Fig.6.9 に図示し, それぞれの要因の水準を Table 6.6 に示した. そしてはんだ接合部のばらつきに対してそれぞれの要因の変動が独立して影響を与えることだけでなく, 要因の組合せの違いすなわち交互作用の影響を考慮する場合の結果についても検討を行った. Fig.6.10 は初期の解析モデルを図示したものである. Electrode length Mount offset Solder volume Fig.6.9 Evaluation factors Table 6.6 Level of each factor Ref. Level A Level B Level C Mount offset Solder volume (Left/Right) Electrode length (Left/Right) 120/ / / /96 450/ / / /300 Unit: [μ m]

105 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 Reference Level-A Level-B Level-C a) Mount offset Level-A Level-A Level-B Level-B Level-C Level-C b) Solder volume c) Electrode length of chip component Fig.6.10 Initial model for Analysis 解析結果 1) マウントずれによる影響 Fig.6.11 は部品搭載時の位置ずれが発生した場合の解析結果で, 部品のずれと部品の傾きを示している. 部品のずれはフィレット長さの左右比 (Lb/Rb) で表し, 部品の傾きは部品下はんだ厚さの左右比 (Ld/Rd) で表した. 部品のずれ及び部品の傾きは, 部品搭載位置のずれに影響を受けるが, ある程度まではセルフアライメントが働き大きな部品のずれや傾きは発生していない. しかし部品搭載位置のずれがレベル C になった場合は, 部品のずれと部品の傾きは大きくなることが確認された

106 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 (a) Reference (b) Level-A (c) Level-B (d) Level-C Fig.6.11 Estimated model for variation of mount offset Table 6.7 は測定結果で,Fig.6.12 はこのデータを基に部品ずれと部品の傾きを求めた結果である. 部品の搭載ずれが Level B までは部品ずれや傾きの影響が少ないが,Level C になるとそれらへの影響が大きくなることが確認された. Table 6.7 Dimensions of solder joint in reference and mount-offset models. La Lb Lc Ld Ra Rb Rc Rd Reference Level-A Level-B Level-C Unit: [μm]

107 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 Dimensional ratio of laterality Offset Inclination Reference Level_A Level_B Level_C Mount offset Fig.6.12 Effect of mounting offset for offset and inclination on chip component 2) はんだ印刷量の影響 Fig.6.13 ははんだ印刷量が変動した場合の解析結果である.Table6.8 ははんだ接合形状を測定した結果で, このデータを基に部品ずれと部品傾きを求めたものが,Fig.6.14 である. この図から言えることは, はんだ印刷量の変動は部品のずれへの影響はほとんどないが, 部品の傾きに対しては影響が出る. 特に, はんだ印刷量のばらつきがレベル C に達した時には大きな変化が見られる. (a) Level-A (b) Level-B (c) Level-C Fig.6.13 Estimated model for variation of printed solder volume

108 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 Table 6.8 Dimension of solder joint for variation of solder volume La Lb Lc Ld Ra Rb Rc Rd Level-A Level-B Level-C Unit: [μm] Dimensional ratio of laterality Offset Inclination Reference Level_A Level_B Level_C Laterality of solder volume Fig.6.14 Effect of solder volume 3) 部品電極の寸法精度による影響次に, 部品の電極寸法のばらつきが発生した場合の解析結果を Fig.6.15 に示す. Table6.9 は解析後のはんだ接合形状を測定した結果で, これを基に部品ずれと傾きを調べた結果が,Fig.6.16 である. これらから, 部品電極の寸法誤差は部品の傾きには影響が少ないが, 部品ずれに対しては影響が発生することが確認された. 特に, 部品電極寸法のばらつきがレベル C になった場合, 部品のずれは大きくなっている. Table 6.9 Dimensions of solder joint in electrode unbalance models. La Lb Lc Ld Ra Rb Rc Rd Level-A Level-B Level-C Unit: [μm]

109 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 (a) Level-A (b) Level-B (c) Level-C Fig.6.15 Estimated model for variation of electrode length of chip component Dimensional ratio of laterality Offset Inclination Reference Level_A Level_B Level_C Laterality of electrode length Fig.6.16 Effect of electrode length of chip component 4) 交互作用を考慮する場合実装プロセスの 2 要因が同時に変動する場合と 3 要因が同時に変動する場合のはんだ接合形状への影響を解析し, 交互作用の有無を調べた. 交互作用の有無は, 複数の要因が同時に変動したモデルを作成して解析した値と, ぞれぞれの要因が単独で変動した場合の解析値の合計と比較することで確認できる. 交互作用がない場合は, ぞれぞれの要因が単独で変動した場合の解析値の合計と等しくなるが, 交互作用がある場合にはその通りにならない. 交互作用を考慮した解析の組み合わせを Table 6.10 に示す. 解析番号 1~3 はひとつの要因が単独で変動した場合で, 解析番号 4~9は 2 要因が同時に変動する場合である. また解析番号 10~13 は 3 要因が同時に変動する場合である.Table 6.12 は解析で得られ

110 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 たモデルを Fig.6.1 に示す寸法を測定した結果である.Fig.6.17 は解析結果で, それぞれの要因が単独で変動した場合の解析値の合計と, それぞれの要因が同時に変動したモデルを作成して解析した値の差を表した結果を示す. 例えば, 解析番号 6 に着目すると, この解析条件はマウントずれと部品電極寸法のずれが同時に変動した場合で, それぞれの要因が単独で変動した場合の解析値の合計よりもそれぞれの要因が同時に変動させたモデルでの解析値のほうが, 部品のずれと部品の傾きともに大きくなっている. その他にも, 解析番号 8 について述べると, この解析条件ははんだ量と部品電極寸法が同時に変動した場合で, 部品の傾きはそれぞれの要因が単独で変動した場合の解析値の合計よりもそれぞれの要因が同時に変動させたモデルでの解析値のほうが顕著に小さくなっている. このような場合には交互作用があり, それぞれの要因が単独で変動した場合の解析だけでは判断することができない. 以上のことから, 本解析は実験的な方法では検証が難しい複数の要因が同時に変動する複雑な現象に対しても検証が可能になるものである. Table 6.10 Matrix of research for interactions Analysis No. Mount offset Solder volume Electrode length 1 Level C(+R) Ref. Ref. 2 Ref. Level C(+L) Ref. 3 Ref. Ref. Level C(+L) 4 Level C(+R) Level C(+L) Ref. 5 Level C(+L) Level C(+L) Ref. 6 Level C(+R) Ref. Level C(+L) 7 Level C(+L) Ref. Level C(+L) 8 Ref. Level C(+L) Level C(+L) 9 Ref. Level C(+R) Level C(+L) 10 Level C(+R) Level C(+L) Level C(+L) 11 Level C(+L) Level C(+L) Level C(+L) 12 Level C(+R) Level C(+R) Level C(+L) 13 Level C(+L) Level C(+R) Level C(+L) Table 6.11 Initial models and estimated models

111 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 No. 4 Before reflow After reflow Table 6.12 Analysis result of solder joint shape for interaction of soldering process No. La Lb Lc Ld Ra Rb Rc Rd

112 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 Simultaneous vatiation vs. Sum of singularityvariations Offset Inclination Analysis No. Fig.6.17 Effect of interaction of soldering process 6.4 信頼性問題への影響 解析方法各プロセスの要因が変動した場合のはんだ接合形状のばらつきを実装プロセスシミュレーションにより評価できることを前項で述べたが, 次にその形状のばらつきがどのような信頼性問題を引き起こすのか調べる必要がある. このため, 実装プロセスシミュレーションを行うことにより得られたモデルを用いてき裂進展解析を行った. き裂進展解析は 3 章で述べた通りであるので詳細な説明は省略するが, 今回は左右のはんだ接合部について評価する必要があるため, 解析モデルは Fig.6.18-a) に示すように 1/2 モデルを採用した. はんだ接合部の解析モデルは 2 つのき裂進展経路が設けられている. そして解析を行うと, フィレットの大きさによってき裂進展経路が変化する. Solder Electrode Chip Path 1 Path 2 Pad PCB a) Analysis model of overall b) Analysis model of solder joint Fig.6.18 FEA model

113 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 解析結果 1) マウントずれの影響 Fig.6.21 は, マウントずれを起こした場合のリフロー後の部品ずれや傾きを求めたモデルを使用して, 疲労寿命解析を行った結果である. マウントずれがレベル B までははんだ接合寿命に影響はないが, レベル C になるとき裂進展モードが変化し, 寿命低下が発生することが確認された. 1.2 Normalized fatigue life Reference Leve_A Level_B Level_C M ounting offset Fig.6.21 Analysis result of fatigue life 2) はんだ印刷量の影響 Fig.6.22 ははんだ印刷量が変動した場合のはんだ接合寿命への影響を解析した結果である. 疲労寿命解析には, はんだ印刷量を変動させてリフロー後の部品ずれや傾きを求めたモデルを使用している. この結果から, はんだ印刷量の変動は, この範囲であれば, はんだ接合寿命には直接影響がないことが確認された. 1.2 Norrmalied fatigue life Reference Leve_A Level_B Level_C Unblance of printed paste solder volume Fig.6.22 Analysis result of fatigue life

114 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 3) 部品電極の寸法の影響 Fig.6.23 は部品電極の寸法がばらついた場合のはんだ接合寿命への影響を解析した結果である. 疲労寿命解析には, 部品電極の寸法を変動させてリフロー後の部品ずれと傾きを求めたモデルを使用している. この結果から, 部品電極の寸法の変動は, この範囲であれば, はんだ接合寿命には直接影響がないことが確認された. 1.2 Normalized fatigue life Reference Leve_A Level_B Level_C Unbakance of Electrode length Fig.6.23 Analysis result of fatigue life 4) 交互作用を考慮した場合の影響 Fig.6.24 は解析結果で, 解析番号は Table 6.10 で示したものと一致している. はんだ接合部の寿命は, はんだ接合部の形状が左右対称な基準モデルの接合寿命を 1 として, 各モデルの接合部の寿命を正規化して表わしている. 斜線の棒グラフはき裂が経路 2 を進展し, はんだ接合部の寿命が短くなったケ-スである. 白色の棒グラフは基準モデルと同じようにき裂が経路 1 に沿って進展したケースである. 解析番号 1 はマウントずれが発生したケ-スで, き裂は経路 2 に沿って進展してはんだ接合部の寿命が短じかくなっている. これに対して解析番号 4 と 5 はマウントずれとはんだ印刷量が同時に変動したケ-スで, き裂は経路 1 に沿って進展し, 接合寿命の低下は見られなかった. これらはマウントずれによる影響をはんだ印刷量の変動がキャンセル方向に働いたケ-スと言える. 解析番号 6 と 7 はマウントずれと部品電極寸法が同時に変動したケ -スで, 解析番号 6 ではき裂は経路 2 を進展し接合寿命は低下したが, 解析番号 7 ではき裂は経路 1 に沿って進展し, マウントずれによる影響を部品電極寸法の変動がキャンセル方向に働いた. また, 解析番号 10~13 のようにすべての要因が変動した場合には, それぞれの要因の変動方向によって, はんだ接合部の形状が変化し, き裂進展経路が決定されている. 解析番号 2 ははんだ印刷量が変動した場合で, 解析番号の 3 は部品電極寸法が変動した場合である. これに対して解析番号 8 と 9 はそれぞれが同時に変動したケ-スであるが, 解析番号 8 ではき裂は経路 2 を進展して接合寿命が低下している. 解析番号 9 の場合にはき裂は経路 1 を進展しておりはんだ接合部の寿命低下は見られない. 以上のことから, このような方法を用いることにより, 実装工程における各要因のばらつきがどのような信頼性問題を引き起こすかと言うことが評価できることがわかった

115 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 1.2 Normalized fatigue life Analysis No. Fig.6.24 Analysis result of fatigue life 6.5 ばらつき改善方法の検討 Fig.6.24 の結果からマウントずれが発生した場合は寿命低下が見られるが, マウントずれとはんだ量のばらつきが組み合わされた場合は, はんだ接合寿命の低下は見られなくなった. その他にも, はんだ量と部品電極寸法のばらつきが単独で発生した場合は, はんだ接合寿命に影響がないが, それらの要因が組み合わさると, はんだ接合寿命の低下が見られる. このように, 本手法を用いると従来の現物評価手法では確認が困難であった交互作用などの複雑な影響のメカニズムを確認することができる. そして, 各要因の変動量を制御することによってはんだ接合部の寿命ばらつきを改善することができるため, はんだ接合部の高信頼性設計を実現できると考える. 6.6 結言本章では, 実装プロセスシミュレーションを用いてチップ部品におけるリフロープロセス後のはんだ接合形状のばらつきを評価し, 得られたモデルを用いてき裂進展解析を行うことによって信頼性問題への影響を検証した その結果, 現物評価手法では困難であった実装プロセスの各要因の変動と信頼性問題との関係を定量的に示すことができ, かつ各要因の交互作用の存在まで確認できることがわかった. そして このような解析結果を用いると, 寿命ばらつきの改善に繋げることができ, 本手法の有効性を示した. 以下に 本手法による検証結果から得られた知見を示す. (1) 複雑なはんだ接合形状の傾向を調べるために, 一般的な相関分析では対応できなかったため, 複数の変数のパターンの類似性からその傾向を調べるクラスタ分析を行った. その結果,3 つの傾向を持つグループに分けられることが確認された

116 第 6 章はんだ接合寿命のばらつき改善検討への適用 (2) 実装プロセスの各要因の変動とはんだ接合部の形状のばらつきには複雑な関係があって, ある範囲内ではセルフアライメントが機能するが, ある範囲を超えるとその効き方が悪くなってはんだ接合部の形状のばらつきが大きくなる傾向がある. さらに, そのばらつきは実装プロセスの各要因の交互作用の影響を受け, 非常に複雑なメカニズムで発生している. (3) 実装プロセスにおける各要因のばらつきを考慮した形状予測のシミュレーションの後に疲労寿命解析をすると, 各要因のばらつきがどのような信頼性問題を引き起こすか評価することができる. これによって, 実装プロセスのどの要因をどのくらい改善するべきか定量的に示すことができる. 参考文献 [1] 神鳶敏弘, データーマイニング分野のクラスタリング手法 (1) クラスタリングを使ってみよう, 人工知能学会誌 18 巻 1 号,pp59.-pp.65,2003 [2] 原純輔, 志田倫代, 非階層的クラスタ分析,NII-Electronic Library Service, pp17-37 [3] エクセル統計 - 実用多変量解析編第 7 章クラスタ分析 -, pp.115-pp.132 オーエムエス出版, [4] M. R. Anderberg, Cluster Analysis for Applications, Academic Press, New York, (1973). [5] Torn, A. A., Cluster analysis as a tool in a global optimization model, In Proceedings of Third International Congress of Cybernetics and Systems, Bucharest 1975, Springer Verlag, (1977). [6] Torn, A. A., Cluster analysis using seed points and density-determined hyperspheres with an application to global optimization, IEEE trans. on Systems, Man and Cybernetics 7, (1977). [7] Torn, A. A., Clustering methods in global optimization, Preprints of the Second IFAC Symposium on Stochastic Control, Vilnius, May, Part 2, (1986)

117 第 7 章他部品への適用と今後の課題 第 7 章 他部品への適用と今後の課題

118 第 7 章他部品への適用と今後の課題 緒言これまでの章では, 電装部品の中で最も疲労信頼性の確保が困難なチップ抵抗を対象とし, 温度サイクル試験に代わる定量的なはんだ接合部の疲労寿命評価手法と実装プロセスが及ぼすはんだ接合寿命への影響が検証可能な評価手法を述べてきた. さらに電装部品の小型高信頼性が要求されると, チップ部品だけでなくこれまでは問題とならなかったその他の電子部品の信頼性も調べる必要が出てくる. しかしながら, 電装部品には多数の種類の電子部品が搭載されており, 定量的な評価ができない上, 多大な評価工数がかかる従来の現物評価手法では, これらの電子部品に対してひとつひとつを検証することはできないため, スペックを満足できたかどうかを確認するレベルに留まっている. このような状況から本章では, 電装部品に使用される多数の電子部品における信頼性の順位を付けることを目的として, 疲労寿命評価シミュレーションによるはんだ接合部の信頼性評価を行う. また, 流体と構造の連成解析を用いた実装プロセスシミュレーションにおいても, リフロープロセス以外にも適用できることを示すため, ディスクリート部品をはんだ付けするフロープロセスを検討する. これによって, 本手法の普遍性を示唆することを目的とする. 7.2 チップ部品以外の信頼性評価 ECU(Electronic component unit) は,Fig.7.1 に示すように, 多数の電子部品とそれを繋ぐ基板, 内部保護と放熱機能を持たせる筐体, 外部機器と電気的な接続を行うコネクタで構成される. 電子部品のパッケージは,Table 7.1 に示すように, 抵抗やコンデンサなどのチップ部品と水晶発信子などのリードレス, ダイオードなどのフラットリード,CP Uなどのガルウイング, コネクタなどのディスクリートのタイプに分かられる. 搭載率は, Table 7.2 に示すように, 数量ベースでチップとフラットリードがほとんどを占めている. これ以外にも, パッケージ毎にサイズが規格化されている. PWB CASE PWB CONNECTOR CASE CONNECTOR Fig.7.1 ECU (Electronic component unit)

119 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Table 7.1 Electronic components of electronic control unit Package Typical parts Figure Chip Chip resistance, Chip capacitor Lead less Quartz oscillator, Network resistor Flat lead Diode, Aluminum electrolytic Capacitor Gull wing CPU, E 2 PROM Discrete Connector, Relay, Switch, Choke coil Table 7.2 An example of distribution ratio of electrical component Package Mounting ratio (%) Chip 50 Lead less 0.5 Flat lead 46 Gull wing 2.5 Discrete 検証部品検証する部品は,Table 7.3 に示すように, チップ部品を基準として水晶発信子, 2 端子ダイオード,80 ピン CPU, 24 ピンのコネクタとし, 各はんだ接合部のき裂発生寿命を有限要素法を用いて評価する

120 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Table 7.3 Test object Package Part name Chip Chip resistance (3216) Lead less Flat lead Gull wing Discrete Quartz oscillator 2 terminal diode 80 pin CPU 24 pin Connector 解析方法 1) チップ部品チップ部品の寸法を Fig7.2 と Table7.4 に示し, 材料特性は Table7.5 に示す. Table7.6 はプリント基板の材料特性である.Fig.7.4 は解析モデルで部品の対称性を考慮し,1/4 モデルで作成した. チップ部品におけるこれらの条件は, 第 3 章と 4 章のデータと同じである. A B 150 D C a d E b c a) Chip component and Pad b) Solder joint shape Fig.7.2 Parameter of chip component and Pad, Solder joint shape Table 7.4 Dimensions of chip component and Pad, Solder joint shape Chip component and Pad Solder joint Shape A B C D E a b c d Unit [μ m] Table 7.5 Material properties for analysis of chip component Constituent material CTE [ppm/degc] Elastic modulus [GPa] Aluminum substrate Electrode Solder(Sn-3Ag-0.5Cu)

121 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Table 7.6 Elastic modulus of printed wiring board Temperature [degc] Modulus of longitudinal elasticity E E [GPa] E Modulus of transverse elasticity G G [GPa] G linear expansion coefficient Horizontal [ppm/degc] Vertical Fig.7.3 Direction of printed wiring board Fig.7.4 Analysis model of chip component

122 第 7 章他部品への適用と今後の課題 ) リードレスパッケージ リードレスパッケージは Fig.7.5 に示す水晶発信子を対象とし,Fig.7.6 と Table7.7 に示すパッドサイズでモデルを作成した. また,Fig.7.7 のように水晶発信子の断面観察を行い, 詳細な内部構造をモデルに反映した. 水晶発信子の材料特性は,fig.7.8 に示す条件で行った.Fig.7.8 は, その解析モデルである. プリント基板の材料特性は,Table7.6 で示したものと同じである. Fig.7.5 Dimensions of quartz oscillator Fig.7.6 Pad parameter for quartz oscillator Table 7.7 Pad dimension for quartz oscillator X R1 Y1 Y2 G C RX Unit [μ m] Metal package Crystal Aluminum substrate Printed wiring board Fig.7.7 Cross section of quartz oscillator

123 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Table 7.8 Material properties of quartz oscillator Constituent material CTE [ppm/degc] Young s ratio [GPa] Aluminum substrate Metal package Electrode Solder(Sn-3Ag-0.5Cu) Fig.7.8 Analysis model of chip component

124 第 7 章他部品への適用と今後の課題 ) フラットリードパッケージフラットリードパッケージは, 最も端子数が少なくはんだ接合部が受けるストレスが大きい 2 端子のダイオードを対象とした.Fig.7.9 は外形寸法で,Fig7.10 はパッド寸法である. そして, ダイオードの断面観察を行い, 詳細な内部構造をモデルに反映した.Fig.7.12 は解析モデルで,Table 7.9 は材料特性である Fig.7.9 Diode Fig.7.10 Pad dimension for diode Solder Pad Lead flame Silicon chip Lead flame Printed wiring board Solder Pad Fig.7.11 Cross section of diode Table 7.9 Material properties of quartz oscillator Constituent material CTE [ppm/degc] Young s ratio [GPa] Epoxy resin Terminal Silicon chip Solder(Sn-3Ag-0.5Cu)

125 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Fig.7.12 Analysis model of chip component 4) ガルウイングパッケージガルウイングパッケージは Fig.7.13 に示す通り, 電装部品で標準的に使用されている 80 ピンの CPU を対象とした.Fig.14 はパッド寸法である.CPU は Fig.7.15 に示すように断面観察を行い, 詳細な内部構造を反映した.Fig.7.16 は, はんだ接合部の拡大図である.Fig.7.17 は解析モデルで,Table 7.10 に材料特性を示す

126 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Fig.7.13 CPU Fig.7.14 Pad dimension for CPU Lead flame Silicon chip Lead flame Printed wiring board Fig.7.15 Cross section of gull wing package Lead flame Solder Pad Fig.7.16 elements on larger scale Table 7.10 Material properties of quartz oscillator Constituent material CTE [ppm/degc] Young s ratio [GPa] Heat spreader Epoxi resin Terminal Silicon chip Solder(Sn-3Ag-0.5Cu)

127 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Fig.7.17 Analysis model of chip component 5) ディスクリート部品ディスクリート部品として, 微小電流端子が 20 ピンで大電流端子が 4 ピンの合計 24 ピンを有するコネクタ部品を対象にした. コネクタ部品は寸法が大きいため, どうしても要素数, 接点数が多くなり, 解析時間が長くなる. そこで, 全体の解析を行うことで複数あるはんだ接合部のうち, どのはんだが最もひずみを受けるか調査し, 次にそのはんだに対して詳細モデルを作成し発生するひずみを調査する.Fig.7.18 は対象とした ECU で, 基板とコネクタ, 金属ケースで構成されている. はんだ接合部のメッシュはマンソン コフィン則を求めた条件と同じ 12.5μmの微細な条件に設定を行った. そしてひずみ解析を行い, このコネクタで一番ひずみが大きい端子を切り出し,Fig.7.19 に示すように, 詳細モデルを作成する. 詳細モデルは, 全体モデルで計算された変形量が境界条件として与えられる. また, はんだ接合部の形状は, 実際の試料のはんだ付け部を断面観察し,Fig.20 に示す寸法を測定してモデルに反映している.Table 7.11 は測定結果である.Table 7.12 は, 全体モデルに使用した材料特性である

128 第7章 他部品への適用と今後の課題 Large current terminal PWB Screw Fine current terminal Aluminum case Connecter Fig.7.18 Global model (ECU) Terminal PWB Solder Fig.7.19 Local model (Fine current terminal) Upper La Ra Rb Lb Lc Rc Lc Rc Rb Lb Lower Ra La Fig.7.20 Parameters of solder joint shape

129 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Table 7.11 Dimensions of solder joint shape Upper(Dip side) Under (Part side) La Lb Lc Ra Rb Rc La Lb Lc Ra Rb Rc Table 7.12 Material property for analysis model Parts Name Elastic Modulus Poisson's ratio CTE [GPa] [-] [10-6/ C] Aluminum Case Connector [resin] Connector [Large current terminal,brass] [Fine current terminal, Port] PWB [X,Y] [Z] [Pad,Cu] Screw bolt Solder [SnAgCu] 解析結果 1) チップ部品 Fig.7.21-a) は, はんだ節合部に発生する相当非線形ひずみを可視化したものである. グレー, 黄, 赤, 青の順でひずみ値が高い.Fig.7.21-b) ははんだ接合部のコンタ図で, チップ部品とはんだ接合部の界面を見た図である. チップ部品のコーナー端である緑色の矢印先端のひずみが最も高い. この理由は,Fig.7.22 に示すように, チップ部品と基板の熱膨張の差で発生し, チップ部品のコーナ端がエッジであることからこの部分にひずみが集中したためである

130 第 7 章他部品への適用と今後の課題 COMPONENT PWB SOLDER Maximum a) General view b) Cut model of solder joint Fig.7.21 Equivalent non-liner strain of solder joint Fig.7.22 Mechanism of strain generation of solder joint 2) リードレスパッケ-ジ Fig.7.23-a) は, はんだ節合部に発生する相当非線形ひずみを可視化したものである. グレー, 黄, 赤, 青の順でひずみ値が高く, はんだ接合部が赤くなっているのがわかる.Fig.7.23-b) ははんだ接合部のコンタ図で, 緑色の矢印先端の部分のひずみが最も高い. これは,Fig.7.24 に示すように, 電子部品と基板の熱膨張差による変形量が一番大きい外側の端子で, かつ電子部品のエッジ部でひずみが集中したためと考えることができる. この場合のはんだ接合部に発生するひずみ値は, チップ部品に対して 74% であり, 寿命に換算すると 1.44 倍になる

131 第 7 章他部品への適用と今後の課題 COMPONENT Maximum SOLDER PWB a) General view b) Cut model of solder joint Fig.7.23 Equivalent non-liner strain of solder joint Fig.7.24 Mechanism of strain generation of solder joint 3) フラットリードパッケージ Fig.7.25-a) は, はんだ節合部に発生する相当非線形ひずみを可視化したものである. グレー, 黄, 赤, 青の順でひずみ値が高く, はんだ接合部が赤くなっているのがわかる. Fig.7.25-b) ははんだ接合部のコンタ図で, 緑色の矢印先端の部分のひずみが最も高い. これは,Fig.7.26 に示すように, 電子部品と基板の熱膨張差による変形量が一番大きい外側の端子で, かつ端子のエッジ部でひずみが集中したためと考えることができる. この場合のはんだ接合部に発生するひずみ値は, チップ部品に対して 61% であり, 寿命に換算すると 1.85 倍になる

132 第 7 章他部品への適用と今後の課題 COMPONENT SOLDER Maximum a) General view b) Cut model of solder joint Fig.7.25 Equivalent non-liner strain of solder joint Fig.7.26 Mechanism of strain generation of solder joint 4) ガルウイングパッケージ Fig.7.27-a) は, はんだ節合部に発生する相当非線形ひずみを可視化したものである. グレー, 黄, 赤, 青の順でひずみ値が高く, はんだ接合部が赤くなっているのがわかる. Fig.7.27-b) ははんだ接合部のコンタ図で, 緑色の矢印先端の部分のひずみが最も高い. これは,Fig.7.28 に示すように, 電子部品と基板の熱膨張差による変形量が一番大きい外側の端子で, かつ端子のエッジ部でひずみが集中したためと考えることができる. この場合のはんだ接合部に発生するひずみ値は, チップ部品に対して 44% であり, 寿命に換算すると 2.8 倍になる. フラットリード部品よりもひずみが小さかったには, リードに応力緩和機構があるためと考えられる

133 第 7 章他部品への適用と今後の課題 COMPONENT PWB Maximum TERMINAL SOLDER a) General view b) Cut model of solder joint Fig.7.27 Equivalent non-liner strain of solder joint Fig.7.28 Mechanism of strain generation of solder joint

134 第 7 章他部品への適用と今後の課題 ) ディスクリート部品 Fig.7.29 は高温の基板のそりを示したコンタ図で, グレー, 黄色, 赤, 青の順で変形量が大きく表示されている. コネクタ中央部が最も変形量が大きく, 盛り上がっているのが確認された. これは基板のコーナがネジで固定されているため, 基板と筐体の熱膨張率の差により, 筐体よりも柔らかい基板が変形したものと考えられる. また, はんだ接合部のひずみが最も大きかったのは, 図示しているように, 一番左上の微小電流端子である. Fig.7.30 は低温時の基板のそりを示したコンタ図で, 図示の通り, 基板中央部のそりが最大で高温時とは逆に反っていることが確認された. この場合も一番左上の端子のひずみが大きかった. これを基に,Fig.7.31 に示すように, 詳細モデルを作成し, ひずみ解析を行った. 詳細モデルには全体モデルの変形量が境界条件として与えられる. この場合のひずみは, チップ部品の 66% で, 接合寿命は 1.66 倍であった. Max warp (+) PWB Maximum strain Connector Screw Fig.7.29 Analysis result of PWB warp (High temperature 125degC)

135 第 7 章他部品への適用と今後の課題 Max warp (-) Maximum strain Fig.7.30 Analysis result of PWB warp (Low temperature -40degC) Terminal PWB Solder High strain (Red) a) Local model (Fine current terminal) b) Solder joint Fig.7.31 Analysis result of terminal model

136 第 7 章他部品への適用と今後の課題 以上をまとめると, 電装部品の中で最も疲労信頼性の確保が困難なチップ部品以外の電子部品について, 疲労寿命解析を行い, 次にどのような信頼性の改善を行えばよいかを検討した. その結果,Fig.7.32 に示すように, 各電子部品のはんだ接合部の信頼性に関して定量的な優劣をつけることができた. これによって, どの電子部品に着目して信頼性の改善を行うべきかを明らかにすることができることを示した.Fig.7.32 に縦軸ははんだ接合部の信頼性で, チップ部品の信頼性を 1 として他の電子部品の信頼性を示した. 横軸に示した電子部品は, 代表的な種類を選んだ Chip Lead less Flat lead Gull wing Discrete 0.0 Normalized fatigue life of initial crack Normalized Strain Fig.7.32 Analysis result of fatigue life of initial crack of solder joint

137 第 7 章他部品への適用と今後の課題 フローソルダリングプロセスへの適用 フローソルダリングの概要と問題点 本項では, 実装プロセスシミュレーションがリフローソルダリング以外のプロセスにも適用可能か検討するため, ディスクリート部品のはんだ付けに用いられる浸漬はんだ付け法を対象に検討する. はんだ槽の形式には静止浴と噴流浴とに大別される. 静止浴は単純な構造部材にはんだ付けや手作業によるはんだ付けに適し, 噴流浴は複雑で微細な配線接続や実装密度の高いプリント基板のはんだ付けに適する.[1]-[5] ここでは後者を対象とし, 代表的な例として,Fig.7.34 に千住金属工業社の静圧フローソルダリングシステムを示す.Fig.7.34 ははんだ槽のノズル部分で, ノズルのはんだ中にリード端子を浸漬させてはんだ付けする.Fig.7.35 は, リード端子部をはんだ槽に浸漬して, 基板のスルーホール内がはんだで充填される様子である. Fig.7.33 Flow soldering system Fig.7.34 Nozzles in solder bath PCB Component Solder bath Solder bath Fig.7.35 Static Pressure Flow soldering Process

138 第 7 章他部品への適用と今後の課題 フローソルダリングでは, 基板などの部品熱容量やはんだの噴流高さなどの条件によっては,Fig に示すようなはんだ上がり不足が問題になる. 基板は 4 層以上で内層は厚銅が使用されることが多いため, はんだの熱が奪われるためである. Solder Terminal Solder Terminal Substrate Substrate a) Good b) Not good Fig.7.36 Solder joint shape of discrete electronic component 解析方法 Fig.7.37 はリード端子が基板のスルーホールに挿入され, はんだ槽に浸漬された状態をモデル化したものである. 基板モデルは,Fig.7.38 に示すうように,4 層の基板を模擬している. この状態から規定時間内にどこまではんだが上がるのか, 再現できるようになっている. Terminal Substrate Substrate Solder Solder Fig.7.37 Analysis model Fig.7.38 Model method for substrate

139 第 7 章他部品への適用と今後の課題 解析結果 Fig.7.39 は, はんだがリード端子に濡れ上がっていく様子をシミュレーションしたもので, 規定時間後, リード端子が上昇し, はんだ付けが完了する様子が確認できる.Fig.7.40 は, 基板の熱容量とはんだ上がり率の関係を示したもので, はんだがスルーホールが完全に充填された状態を 1 として, 基板の熱容量に応じて浸漬時間をどのくらいに設定すれば良いかを示した結果である. 基板内層の熱容量が大きくなると, どのくらいの浸漬時間を確保しなくてはならないかが確認できる. リード端子の熱容量に対しても, 同様の検証が可能である. Fig.7.39 Analysis result of flow soldering process 1 Solder wetting ratio Dipping time 1sec 2sec 3sec 4sec 5sec Thermal ratio of substrate (%) Fig.7.40 Thermal capacity of internal layer vs. Solder filling rate

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