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えりかつつの
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1 特集 : 海外における日本研究 UDC 02: : 海外における日本研究と図書館 : 概観および近年の動向課題と展望江上敏哲 * 本稿では, 海外における日本研究と図書館について概説する前半では, 海外における日本研究, 図書館とその周辺について, それらがどのような意味を持つかを概観する後半では, 特に近年の動向と事例文献を追いながら, 現状と課題, 今後の展望を考えるそのキーワードは, 在外資料, デジタルアーカイブ, ポータル, ウェブスケールディスカバリー, デジタルヒューマニティーズ, 和本, コラボレーション, 研修, アジア, 英語 / ローマ字であり, それらは日本研究とは何かという問いにつながるキーワード : 日本研究, 日本研究図書館, アウトリーチ本稿は, 特集海外における日本研究の総論である前半では, 海外における日本研究, 図書館とその周辺について, それらがどのような意味を持つかを概観する後半では, 特に近年の動向と事例文献を追いつつ, 現状と課題, 今後の展望を考える筆者は 2012 年に著書本棚の中のニッポン : 海外の日本図書館と日本研究 1) で同テーマを取り上げ概説した本稿前半はその確認, 後半はそれ以降の動向をさらに追ったものとご理解いただければ幸いである 1. 海外の日本研究図書館をとりまく世界の概観筆者が所属する国際日本文化研究センター 2) は 1987 年創設の大学共同利用機関である日本文化に関する国際的学術的学際的な総合研究という研究活動と, 世界の日本研究者に対する研究協力支援という研究協力を大きな活動の柱としている専任教員研究者, 大学院生 ( 総合研究大学院大学 ) が在籍する他, 年間 50 名ほどの客員来訪研究者が海外から来日し, センターで研究をおこなう約 54 万冊を所蔵するセンターの図書館は, 国内外の研究者学生, 特に海外で日本について研究する日本研究者に対し, 資料情報を提供し支援する海外の日本研究者といってもそのユーザ像は一様ではない 2016 年 9 月に神戸で開催された European Association for Japanese Studies(EAJS) 日本会議 3) では, 人文学に限らず, 高齢化や住宅事情, 政治労働問題, ファッション雑誌やチアリーディング等, 多岐にわたるテーマが扱われていた求める文献もさまざまである戦前の外地への修学旅行を調査するため地方の高校の校史資料を求める留学生もいれば, 交通に関する工学系の英語論文に日本の地方都市の行政資料を多数引用する理工系研究者もいる研究の学際化国際化が進む現在では, 日本が専門の研究に限らず, 東アジアや太平洋全域で横断的に研究する際, * えがみとしのり国際日本文化研究センター京都市西京区御陵大枝山町 egami@nichibun.ac.jp ( 原稿受領 ) また各専門の研究において日本が一対象となる際にも, 日本資料日本情報が必要とされる日本語の習熟度もさまざまで, 他分野の研究者はもとより, 日本が専門の研究者学生であっても英語やその他の言語をメインとする人は多い文献入手等のリテラシーもまた一様ではない海外にも日本資料日本情報を提供する図書館がある国立図書館で外国語資料として, 大学図書館で地域研究 ( 自国以外の各国地域の研究 ) や外国語学習のため, 公共図書館等で市民や専門家に日本の文化社会事情を伝えるため, である北米には日本語書籍を数万冊以上所蔵し日本を専門とする司書が勤めるような大学図書館もいくつかある一方, 数千冊規模の蔵書しかないところも多いまたどの国大学においても日本は決してメジャーではなく, 司書情報専門家などの人的サポートも限られる多くは東アジア東洋等でくくられ, 中国韓国専門の司書が日本資料担当も兼任する例, あるいは教員が蔵書の世話役を兼ねる例がよく見られる海外で日本を研究しあるいは関心を寄せる人々は多くはないだろうが, その人々の研究成果やアウトプットが, 世界の日本理解を深め国際関係を築く下地となってくれるそう考えれば日本資料日本情報の提供, その支援や情報発信は, 最終的に日本自身の問題であると言える主たる生産地である日本から日本資料日本情報を海外へスムーズに届ける必要がある海外のユーザには, 距離が遠い, 送料手数料等のコストや時間がかかる, 言葉や制度が違う等の妨げがあり, その解消には日本からのサポートが不可欠であるユーザの事情もニーズも多様であるため, 図書館に限らず幅広い分野業種の人々 ( 出版者大学企業官公庁等 ) に援軍となっていただきたいだが実際には, 対外的な情報発信やサポートに消極的な例も多い深刻な問題として, 日本離れとデジタル不足がある図 1 4) は Google Books Ngram Viewer を使って描いたものであるこのサービスは,Google Books の書籍本文中にキーワードがどれだけ登場するかを, 出版年別のグラフで表示する 1900 年から 2008 年までを追うと, 上から China Japan Korea の順で,90 年代前後だ 284 情報の科学と技術 67 巻 6 号,284~289(2017)

2 図 1 け China を追い越していた Japan が, その後大きく後退している様子がわかるそれだけ英語文献の中で Japan が登場しなくなったと言える近年では日本離れ, すなわち海外の日本研究の退潮傾向が指摘されることが多いその背景には, 日本の経済低迷による研究支援力の低下, 存在感の低下, 加えて欧米諸国での人文学地域研究全体の低迷もある一方で中国韓国や中東等のように注目すべきかつ活動の活発な地域が他にあれば, 日本離れはさらに進むだろうまた日本のデジタル資料が不足している, あるいはアクセスできないという現状がある現在の大学教育研究では, 人文 / 理工欧米 / アジア等, 分野地域の別を問わず, 文献提供その他のデジタル化が整備されつつある一方, 日本語の人文社会系の e-resource( 電子書籍電子ジャーナルデータベース等 ) はいまだ充分に整備されておらず, 利用できるものが限られてしまう図 2 5) は, 北米の東アジア図書館が 2015 年現在で所蔵契約している図書電子書籍電子ジャーナルの冊数タイトル数 ( 左から中日韓 ) である日本が少ないのは, 契約可能な日本製 e-resource の選択肢が少ないためであるまた, 日本のデジタルアーカイブやデータベースが海外からのアクセス契約を認めない, 条件が厳しい, という例もある図 2 多くの国地域で学生研究者たちが整備されたデジタル環境下で学び活動するその中にあって, 日本について研究し資料情報を入手しようとした途端, 紙に頼るしかなくなるこのような状態では, ベテランの日本研究者ならともかく, 若い世代の学生研究者に日本に関心を持ってもらうことは困難だろうスピーディーな研究成果が求められがちな昨今では, 同じアジアでも他の国地域を研究対象としたい, と思われても仕方ないのではないか先に紹介したように海外のユーザの姿は一様ではなく, 専門ニーズ研究手法も異なる初学者や若い世代の学生, 他分野の研究者や一般のユーザは, 日本資料日本情報をたやすく入手できるとは限らないそして実際には, そのようなユーザのほうが規模も大きいなにより, さまざまな人たちによる日本資料日本情報の活用が, 国を越えた日本研究日本理解をより豊かで多様なものにしてくれると期待できるそう考えれば, 分野種類を限らずデジタル化オンライン化を進め, 英語多言語やローマ字を増やし, 利用やアクセスのしやすい環境を整えることは, ほかならぬ日本自身にとって今後ますます重要となる図書館司書や情報専門家だけでなく, 幅広い業種分野の方々のご理解ご協力をお願いしたい 2. 海外の日本研究図書館にまつわる近年の動向課題と今後の展望 2016 年夏, 大坂の陣に関する記述がオランダハーグ国立文書館所蔵の資料にあったというニュースが新聞等で報じられた 6) ( 記述の真偽はさらなる研究を要する ) この在外資料, すなわち海外に所在する日本関係資料に関する調査は, 人間文化研究機構の日本関連在外資料調査研究活用事業の一環であるライデン大学と国際日本文化研究センターによる平戸オランダ商館文書の共同研究 7) で, 両者のコラボレーションは実際には 20 年近く続いている同事業には他にも, 国文学研究資料館によるバチカン図書館所蔵マレガ文庫調査や,2016 年に web サイト公開出版等がされたイェール大学所蔵日本関連資料調査プロジェクト 8) 等がある後者も東京大学史料編纂所とイェール大学とのコラボが継続しているもので, 屏風文書の修復や朝河貫一書簡のデジタルアーカイブ化が実施されている北米の日本古典籍デジタル化については鈴木紗江子氏の報告 9) があるが, 他にも在外資料のデジタルアーカイブ構築の例は近年多い UC バークレーやスタンフォード大学による日本の古地図外邦図 10), プランゲ文庫の国立国会図書館デジタルコレクションへの収録 11) などであるスタンフォード大学フーバー研究所による邦字新聞デジタルコレクション 12) は OCR によるテキスト化や検索機能が充実している分野や種類によっては在外資料のほうがデジタル化が進んでいるようでもある日本でもデジタルアーカイブ構築は多いが, よく指摘されるのがポータルの未整備である研修等で来日した日本研究者司書等から現地の説明ではじめてデジタルアーカイブの存在を知った散らばっていて探しづらいという声をよく聞くわかりやすさ, 見つけやすさ, 可視化, オープン化等, 課題は多いポータル整備もそのひとつで, できれば日本版 Europeana と呼び得る全体規模のものが望まれる内閣府知的財産戦略本部デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会実務者協議会及びメタデータのオープン化等検討ワーキンググループにより検討が進められ, 国立国会図書館サーチがポー 285

3 タル機能を持つというジャパンサーチ ( 仮 ) が構想された 13) だが, 例えばここが日本のポータルですと言ってわざわざ訪れる海外ユーザは, ごく一部の日本専門家に限られてしまうだろうより多くの海外ユーザに届けるためには, データを外部に積極的に送り出し,Google 等のサーチエンジンや web サービス,Ukiyo-e.org や Artstor などの国際的ポータル等, 国内外のユーザが普段目する場所に可視化させる必要がある OCLC WorldCat もそのひとつで, 最近ではネットアドバンス社, 東京文化財研究所, 奈良文化財研究所等が実際にデータを提供している 14) また在外資料や外国語による日本研究成果の発見可能性を上げるためにも, ポータルは孤立させることなく外部連携を進めなければならない e-resource を含めたポータルとして, 近年はウェブスケールディスカバリー (WSD) が研究者学生の情報探索に大きく貢献しているしかしこの WSD においても, 海外から日本のコンテンツが可視化されにくいと指摘される飯野勝則氏によれば 15), アリゾナ州立大学の WSD で枕草子を検索すると上位を中国語コンテンツが占めた, とのことである同様の報告はヨーロッパでもあった 16) 原因は単純でなく状況は追って変わるだろうが, WSD にも SEO 対策にあたるものが必要ということだろう本文やメタデータ, アブストラクトが充分でない等が一因のようで, 実際海外の出版社は ( 中略 ) これらの項目を含んだ書誌レコードを熱心に作成する 17) と言うまたこの問題は日本のユーザにも同様に深刻なはずだが, そもそも日本語 e-resource, 特に人文系社会系のそれが少ないためか, ユーザの意識と環境整備の差は大きい日本のユーザから具体的かつ強い要望が多く出され, またそれに見合うだけの規模の契約がないと, 供給される e-resource の数も質も向上しないだろう北米日本研究司書らが取り組みを開始した Japanese Multi-Volume Sets Discoverability Improvement Project 18) は, 日本の多巻物セット物の目次内容著作索引をデータベース化しようという試みだが, これも本来は日本側で整備しておくべきことではないか問題は日本研究に限らないかつて海外の中国研究者は日本の中国研究を参照するため日本語も学習すると言われた 19) が, 昨今ではネットで可視化されない日本の中国研究が海外で参照されなくなったとも指摘される 20) 日本からのデジタルによる情報発信とアクセス改善は分野種類を問わず急務である 2015 年, 日本研究と DH( デジタルヒューマニティーズ ) の情報共有 21) を目的に Facebook グループ Digital Humanities in Japan 22) が公開され,2016 年には日本のオープンサイエンスの取組みや情報を海外に向けて発信する 23) 目的で web サイト openscience.jp 24) が立ち上がった昨今話題にあがるオープンサイエンスやデジタルヒューマニティーズでは, 単なる媒体変換を越え, 学術研究がデジタルに向き合うことでどう変わるかが問われるそれは主にツールとしての資料の開放と研究のあり方そのものの解放の 2 つではないか資料の開放としては国立国語研究所のコーパス 25) や国立情報学研究所のデータセット 26) など多くの例があり, また変体仮名の Unicode 化 27),TEI における日本語テキストの検討 28),IIIF 準拠による日本資料公開 29) 等, 技術の標準化も進んでいる開放されたデータの活用として青空文庫を用いた例 30) がある同じく青空文庫を扱うエモリー大学のプロジェクト 31) などのデジタルヒューマニティーズの例を見ると, デジタルによってコラボが可能 / 容易となっている様子, そして, 日本研究が日本における日本研究特有の文脈から解放されフラットになっていく様子がわかる資料がデジタルに媒体変換されると, その届き先にもそれが日本研究なのかどうかにも線引きの意味は無くなる単に遠隔地( 海外 ) における日本研究ではなく, 分野文脈地域を問わず, 日本語 / 日本製の資料情報を必要なところへ届けなければならない資料の大規模開放として, 国文学研究資料館による日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画 ( 略称 : 歴史的典籍 NW 事業 ) 32) への期待は, 国内海外を問わず大きいポータル化オープンデータ化 33) だけでなく, 多分野融合国際共同研究などのコラボを目指す事業で, 在外資料としての和本 ( 当初計画では欧米中韓の 13 機関 ) も対象の予定である他にも近年の動向として和本にまつわるものが多い在外日本古典籍所蔵機関ディレクトリ 34) によって欧米等の在外資料の所在情報が整備され, 画像が多く公開されるようになった結果, くずし字学習に焦点が当たる国内外のコラボによって開発された学習アプリ 35) が海外でも人気となり, くずし字教室やワークショップの例も多数あるケンブリッジ大学では 2014 年から総合的和本リテラシーを学ぶサマースクール教育 36) が日欧米のコラボで行われた英国 MOOCs FutureLearn で開講された日本書誌学 Japanese Culture Through Rare Books 37) は, 慶應義塾大学の佐々木孝浩氏らによるもので, 日本語映像に英語字幕が用意され, 好評である多くの例でコラボレーションがキーワードとなるコラボは成果そのものよりもその過程で生まれた連帯感や人的交流の継続に大きな意義がある在外資料の例として, 琉球大学とハワイ大学マノア校の阪巻宝玲文庫デジタル化プロジェクト事業 38), 大英図書館と国立公文書館アジア歴史資料センターによるウェブ展示描かれた日清戦争 39) 等がある立命館大学アートリサーチセンター (ARC) では, 在外資料をデジタルアーカイブ構築するにあたり, 現地の学生若手研究者を対象としたワークショップ共同プロジェクトを設け, 人材育成に取り組み, ARC モデル 40) として成果をあげているまたコラボには人的交流が欠かせないワシントン大学図書館は 2017 年から日本司書の招へい事業を開始する 41) 慶應義塾大学は長年にわたり海外への図書館職員派遣を実施しており 42), 交流強化のメリットがあったと評価されている 43) 国際会議等での発表やワークショップ開催等, 積極的な交流と情報交換は常に求められるパスファインダーやリン 286

4 ク集の構築 44) 等, オンラインでの国際的なコラボも可能だろうまた, 国内の国際日本学国際日本研究関連機関による連携体制を目指す国際日本研究コンソーシアム 45) も構想されている研修事業にもコラボが欠かせない海外の専門家を日本に招くタイプの研修の例のひとつで, 現在国立国会図書館が実施する海外日本研究司書研修 46) は, 国際交流基金の招へい事業日本研究上級司書研修 (1997 年開始 ) 等何度か名前主催内容を変えて今に至る 2 期行われた天理大学の古典籍ワークショップ 47) は, 和本取扱いの実践的研修であること, 海外の日本司書等が実行委員となりコラボで運営されたこと, 研修後に受講者による在外日本古典籍研究会 48) が組織され継続的に活動したこと等が特徴的である 2014 年から 3 年間の東京国立近代美術館による海外日本美術資料専門家 ( 司書 ) の招へい研修交流事業 (JAL プロジェクト ) 49) では, そのワークショップで受講者から日本側への提言が多く出された 50) これについては本号の水谷氏報告も参照されたい国際交流基金関西国際センターの文化学術専門家日本語研修 51) にも各国の司書や専門家が参加しているこの種の研修にニーズはあるものの, 受講者集めや運営に困難を伴う面もあるようであるニーズの多様化や変化が原因のひとつだろうまた一方的な知識技術の授受としての研修そのものよりも, 相互的な情報交換ネットワークづくり, 研修事業を国内外各者のコラボとして議論検討を重ねること等, 研修全体の設計運営が鍵ではないかまた継続という意味で, 北米のように人材が豊富な地域では, 受講者が帰国後各地で知識技術を広める 52) ことをもっと期待していいさらには欧米主要国以外の各地で日本資料を扱う司書, 実質的な日本資料管理を担う研究者学生, 中国韓国専門やアジア全体等, 日本を専門としない司書等も想定すべきだろうアジアにおける日本研究, およびアジア所在の日本資料については, 近年国立国会図書館関西館アジア情報課が, アジア情報室通報による概説 53), リサーチナビの調べ方案内 54) 等の参考文献を多く提供している 2016 年韓国で第 1 回会議が開かれた東アジア日本研究者協議会 55) は, 日本研究の質的向上 ( 学際融合 ), 自国中心の日本研究からの脱却 ( 多様な観点 ), 東アジアの安定と平和への寄与, を活動の趣旨としているまた 2014 年に雑誌跨境( こきょう ) 日本語文学研究を創刊した東アジアと同時代日本語文学フォーラムは, 日比嘉高氏のリポート笠間への寄稿によれば国別, 地域別, 言語別に閉じたまま研究される傾向にある日本文学研究を, つなぐような試み 56) とのことである英語/ ローマ字表記の不備についても, 海外ユーザからの指摘が多い日本の図書館 OPAC やデータベースの類の多くが英語 / ローマ字対応が不十分だが, その整備は特に日本を専門としないユーザにとって有用だろう国立国会図書館は人文リンク集やリサーチナビの英語版を整備しつつある 57) 東京文化財研究所の文化財関係文献 ( 統合試行版 ) はセインズベリー日本藝術研究所とのコラボにより英語文献情報の収録を実現した 58) SAT 大正新脩大藏經テキストデータベースのようにシステムが翻訳を補助する例 59) もあるまた映画動画は学生向け教材として海外でもニーズが高いが, その英語字幕の整備も求められており,2012 年の日米文化教育交流会議 60) やアーカイブ立国宣言 61) 等で言及されている日本語力やリテラシーを持つ人だけを想定しても, 海外ユーザへの支援は全うできないユーザ本人はもとより, 司書やデバイスのような周辺環境もしかりである英語 / ローマ字について考えることは同時に, 日本資料日本情報のユーザをどうとらえるか, ひいては日本研究とは何かという問いにつながる国際交流基金刊行の 2013 年調査報告 62) によれば, 北米の大学で日本について教える授業のうち, 文学語学等のクラスはほとんどが日本のみを扱うのに対し, それ以外の分野の授業では他の国地域とともに教えることも多く, 哲学仏教学等においては日本のみを扱う方が少ない日本研究の文脈に限ることなく日本資料日本情報が用いられる時, テーマによっては学生も教員も日本研究とは縁遠いユーザかもしれない理工系分野や, デジタルヒューマニティーズのようなコラボレーションによる研究活動においてはなおさらである東アジアやユーラシア環太平洋等の広い視野で日本を見渡す研究でも同様だろうやはり日本資料日本情報の届け先が日本研究であるかどうかという線引きに意味は無いしたがって図書館や web でのサービスにおいて日本のお作法を押し付けてはならないし, コストや手間忍耐等の搾取があってはならない海外の日本研究という枠組みを越えて, 分野を問わず文脈を問わず国地域言語を問わず, 日本語 / 日本製の資料情報を, あらゆる海外のユーザに届けることそのために, 日本特有の仕組みから解放して, 他分野他地域同様の国際的な場でフラットに流通しアクセスできるようにすることそのような支援が海外における日本研究を盛り立て, そしてひいては日本における日本研究自体をも日本から解放し, 新しい発想を与え, 錬成することにつながるだろう注 01) 江上敏哲. 本棚の中のニッポン : 海外の日本図書館と日本研究. 笠間書院, ) 以下,URL はすべて 2017 年 4 月 15 日確認 03) EAJS Conferences in Japan. European Association for Japanese Studies. 04) 図 1 は Google Books Ngram Viewer ( を使い phrase Japan China Korea,year ,corpus English, smoothing 1 で作成 05) 図 2 は CEAL Statistics Database ( 年統計から作成図書は 53 機関, 電子書籍は 43 機関 (Electronic Books in Library-Titles-Purchased), 電子ジャーナルは 51 機関 (Current Serials-Purchased-Electronic) の合計 06) 秀頼に落とされ死んだ大坂の陣, オランダで新文書. 朝 287

5 日新聞デジタル.2016 年 9 月 21 日. tml. 他 07) ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究活用プロジェクト. 人間文化研究機構. 08) イェール大学所蔵日本関連資料調査プロジェクト. html., 松谷有美子. イェール大学図書館の日本資料コレクションに関する最近の研究動向. カレントアウェアネス ,CA 他を参照 09) 鈴木紗江子. 事例報告 : 北米の大学における日本古典籍の電子化事業. カレントアウェアネス ,CA ) 米図書館情報資源振興財団, 隠れた特別コレクションのデジタル化助成プログラムの助成プロジェクトを発表 : カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館による日本の古地図デジタル化プロジェクトも採択. カレントアウェアネス離島を含む全国すみずみまで網羅, 約 100 年前の日本の古地図をスタンフォード大が公開中.INTERNET Watch html. 他 11) 国立国会図書館デジタルコレクションに,GHQ/SCAP 文書, プランゲ文庫等約 14,200 点を追加. カレントアウェアネス他 12) 邦字新聞デジタルコレクション. 13) デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会, 実務者協議会及びメタデータのオープン化等検討ワーキンググループ. gikai/index.html., 小澤弘太. NDL サーチの歴史と今後. 1.pdf. 他 14) JapanKnowledge と JK Books のメタデータを WorldCat で提供へ. カレントアウェアネス第 7 回美術図書館の国際会議 (7th International Conference of Art Libraries) への参加. 東京文化財研究所奈良文化財研究所, 全国遺跡報告総覧と WorldCat のデータ連携開始. 奈良文化財研究所 at.html. 他 15) 飯野勝則. ウェブスケールディスカバリと日本語コンテンツをめぐる諸課題 : 海外における日本研究の支援を踏まえて. カレントアウェアネス ,CA 飯野勝則. 図書館を変える!: ウェブスケールディスカバリー入門. 出版ニュース社, 2016., 飯野勝則. 海外日本研究に忍び寄る危機 : 学術情報サービスの視点から. リポート笠間.2016, 61,p 他 16) Kamiya Nobutake, Naomi Yabe Magnussen. Case study: CiNii s Japanese language bibliographies in Primo Discovery system: at Zurich and Oslo University Libraries (EAJRS2015 年次集会 ) nussen_naomi_yabe_15.pdf. 17) 飯野勝則. 海外日本研究に忍び寄る危機 : 学術情報サービスの視点から. リポート笠間.2016,61,p ) Ellen Hammond. Innovation Grant for East Asian Librarians Program Funds Final Projects. Journal of East Asian Libraries.2017,164,Article ) 石松久幸. 今, アメリカの大学でライブラリアンと呼ばれる職業が絶滅しつつある. 出版ニュース ,2187, p ) 川島真. 新たなデジタル化時代の中国研究と日本. 東方 ,422,p ) 菊池信彦. 西洋史 DH の動向とレビュー : 外国 ( 史 ) 研究者として DH の情報にどのように触れるのか. 人文情報学月報.2015, ) 23) 日本のオープンサイエンス情報ポータル openscience.jp 公開.IKEUCHI UI. 24) 25) コーパスデータベース. 国立国語研究所. 26) データセット一覧. 国立情報学研究所情報学研究データリポジトリ. 27) 高田智和, 矢田勉, 斎藤達哉. 変体仮名のこれまでとこれから : 情報交換のための標準化. 情報管理.2015,58(6), p ) 永崎研宣. デジタル文化資料の国際化に向けて :IIIF と TEI. 情報の科学と技術.2017,67(2),p ) 永崎研宣. 大学図書館とデジタル人文学. 大学図書館研究. 2016,104,p ) Aozora Search. 他 31) Japanese Language Text Mining: Digital Methods for Japanese Studies. ext_workshop_cfp.htm. 32) 増井ゆう子, 山本和明. 国文学研究資料館日本語の歴史的典籍のデータベース構築について. 情報の科学と技術. 2015,65(4),p ) オープンデータセット. 国文学研究資料館. 34) 在外日本古典籍所蔵機関ディレクトリ. 国文学研究資料館. 35) 源氏物語から蕎麦屋の看板までマスター変体仮名あぷり The Hentaigana App 早大 UCLA で共同開発くずし字学習支援アプリ KuLA が公開開始. カレントアウェアネス他 36) ラウラモレッティ. 総合的和本リテラシー教育 : ケンブリッジ大学イマヌエルカレッジの試み. 書物学 , 9,p ) Japanese Culture Through Rare Books. Future Learn. ulture/. 38) Tomita Chinatsu, Bazzell, Tokiko Y. 越境する沖縄研究と資料 II: 阪巻宝玲文庫のデジタル化プロジェクトを通して / 障壁をのり越えて : 太平洋間の協力が貴重資料庫の扉を開く. 日本資料専門家欧州協会. 39) 平野宗明, 大塚靖代. ウェブ展示描かれた日清戦争 : アジ歴と BL の共同企画. カレントアウェアネス , E ) 赤間亮. 立命館大学アートリサーチセンタ一の古典籍デジタル化 :ARC 国際モデルについて. 情報の科学と技術 ,65(4),p ) 2017 Tateuchi Visiting Librarian Program. University Libraries, University of Washington. ting-librarian-program/view. 42) 関秀行. 慶應義塾大学メディアセンターにおける国際交流活動. 日本資料専門家欧州協会. 288

6 43) イズミタイトラー. 英国欧州の日本研究図書館との関わりにおいて. 専門図書館 ,268,p ) 2015 年, 人間文化研究機構の資源共有化事業の一環として日本研究と日本における人間文化研究情報の国際リンク集 ( a.html) が公開された日本研究と日本の人文系研究情報について英語のリソースを中心に紹介する 45) 国際日本文化研究センターにおける機関拠点型基幹研究プロジェクト大衆文化の通時的国際的研究による新しい日本像の創出 ( の一環として 46) 海外日本研究司書研修. 国立国会図書館. 5.html. 47) 以下の記事をはじめ同誌に多数報告あり山中秀夫. 天理古典籍ワークショップ Phase2 を終えて. ビブリア. 天理図書館報.2013,140,p ) 49) JAL プロジェクト 2016 のご案内. 東京国立近代美術館. 50) 海外日本美術資料専門家 ( 司書 ) の招へい研修交流事業実行委員会. 日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための課題解決についての提案. 公開ワークショップ日本美術の資料に関わる情報発信力の向上のための提言 III 報告書. 7/04/J2016_520.pdf. 51) 文化学術専門家日本語研修公募プログラム. 国際交流基金関西国際センター. 52) 例として Tool kit for European NACSIS-CAT members ( ), Junior Japanese Studies Librarian Training Workshop (2013 年トロント大学にて開催 ) 等 53) 水流添真紀. 中国で刊行された日本関係資料とアジア情報室における収集所蔵. アジア情報室通報 ,14(2). 他, 同誌内に複数記事あり 54) 日本研究 ( リサーチナビ調べ方案内 ). 国立国会図書館. php., 台湾所在の植民地期日本関係資料の調べ方. 国立国会図書館. php., アジア地域で刊行された日本関係図書リスト. 国立国会図書館. 55) 56) 日比嘉高. 国際査読誌跨境 ( こきょう ) 日本語文学研究の創刊, および少々の展望. リポート笠間.2014, ) 総務部支部図書館協力課. 国立国会図書館の日本研究支援. 国立国会図書館月報.2016,664/665,p ) セインズベリー日本藝術研究所との共同事業のスタート (2013.7). 東京文化財研究所. 59) 大蔵経テキストデータベースでは何ができるのか. 変更履歴はてな版 ) 字幕付き日本語教材のさらなる開発を推奨する ( 第 25 回日米文化教育交流会議 ( カルコン ) 合同会議. 日米文化教育交流会議. statement_j.pdf.) 61) 国内海外関係者との交流機能 ( 字幕付与多言語発信の支援機能を含む ) ( アーカイブ立国宣言. 文化資源戦略会議. 62) Japanese studies in the United States: The view from The Japan Foundation, mes/2013%20monograph%20final.pdf. より,Table 5.8. を参照 Special Feature: Japanese Studies in Other Countries. Japanese studies and libraries in other countries: overview, recent trends, challenges and prospects. Toshinori EGAMI (International Research Center for Japanese Studies, 3-2, Goryo Oeyamacho, Nishikyo-ku, Kyoto) Abstract: This article outlines the issues on the Japanese studies and libraries in other countries. First, the article overviews Japanese studies, libraries and the relevant issues in other countries as well as what they mean. Next, it discusses the current situations, challenges and prospects with recent trends, cases and articles. The keywords of these issues are Japanese materials in other countries, digital archives, portal, web scale discovery, digital humanities, Japanese old materials, collaboration, training program, Asia, English and Romanization. These keywords leads to the question What is Japanese studies? Keywords: Japanese studies / Japanese studies libraries / outreach 289

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Microsoft Word - CiNiiの使い方.doc CiNii の使い方 CiNii とは国立情報学研究所 (NII) では各種サービスごとに提供しているコンテンツを統合するとともに国内外の有用な学術情報資源との連携を可能とすることを目標としたプラットフォーム GeNii ( ジーニイ ) の構築を進めています GeNii の機能の一つとして NII 論文情報ナビゲータ CiNii ( サイニイ ) を提供します CiNii では学協会で発行された学術雑誌と大学等で発行された研究紀要の両方を検索し