る t 検 定 を 行 った 危 険 率 5% 未 満 を 統 計 学 的 に 有 意 とした 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 は, 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 科 心 身 機 能 生 活 制 御 科 学 講 座 倫 理 委 員 会 の 承 認

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1 2.スポーツ 活 動 や 就 労 による 傷 害 予 防 0434 膝 前 十 字 靭 帯 損 傷 予 防 のためのハイリスク 選 手 検 出 の 試 み 膝 関 節 運 動 の 左 右 差 に 着 目 して 浦 辺 幸 夫 1), 事 柴 壮 武 2), 岩 田 昌 2), 笹 代 純 平 2), 前 田 慶 明 1) 1) 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 院,2) 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 科 key words 膝 前 十 字 靭 帯 損 傷 ハイリスク 選 手 左 右 差 はじめに, 目 的 膝 前 十 字 靭 帯 (Anterior Cruciate Ligament : ACL) 損 傷 は, 最 も 予 防 効 果 が 期 待 されてい るスポーツ 疾 患 である 近 年,ACL 損 傷 予 防 プログラムが 取 り 入 れられることで, 少 しず つ 発 生 率 が 減 少 している このプログラムは ハイリスク 選 手 を 抽 出 し, 選 択 的 に 実 施 すると 効 率 がよくなると 考 えられている ハイリスク 選 手 の 条 件 はいくつかあるが,スポ ーツ 動 作 時 に 過 度 な 膝 関 節 外 反 を 起 こす 選 手 に 共 通 して 注 意 がはらわれている ACL 損 傷 は 左 膝 関 節 の 発 生 率 が 高 いことが 示 されているが( 井 原 ら 2005,Urabe et al 2010),スポーツ 動 作 時 に 左 右 の 膝 関 節 運 動 に 違 いがあるのかは,まだ 十 分 に 解 明 されてい ない 今 回 はサイドステップカッティング(side step cutting : SSC) 動 作 時 に, 左 膝 関 節 の 方 が 最 大 屈 曲 角 度 が 小 さく, 最 大 外 反 角 度 が 大 きいのではないかという 仮 説 をたてた 左 膝 関 節 で 右 関 節 との 違 いがみだせるか,また 左 右 差 が 大 きい 人 がどの 程 度 含 まれるのか 検 討 した 方 法 対 象 は, 下 肢 に 大 きな 傷 害 の 既 往 のない 健 康 な 女 性 バスケットボール 選 手 15 名 である 平 均 年 齢 (±SD)は 21.1±1.7 歳, 身 長 は 161.5±3.2cm, 体 重 は 55.4±7.5kg, 競 技 歴 は 6.7±2.5 年 だった 上 肢 は 全 員 が 右 利 きで,サッカーボールのキック 足 は 左 下 肢 だった 足 部 接 地 地 点 の 約 5m 手 前 から 助 走 し,90 側 方 への SSC を 実 施 した 右 方 向 と 左 方 向 の 選 択 は,2m 手 前 にあるセンサーマットとライト 点 灯 をランダムに 同 期 させることで 行 った SSC は 5 台 のハイスピードカメラ(FNK HC200C,4 assist 社 )を 使 用 し,200Hz で 撮 影 した 3 次 元 解 析 ソフト(Detect 社 )により, 三 次 元 座 標 を 求 めた Grood et al(1983) の 方 法 を 参 照 し, 膝 関 節 屈 曲 角 度 と 外 反 角 度 を 算 出 した SSC は 2 期 に 分 割 し, 足 部 接 地 から 膝 関 節 最 大 屈 曲 位 までをストップ 期, 膝 関 節 最 大 屈 曲 位 から 足 部 離 地 までを 側 方 移 動 期 として 分 析 に 用 いた 各 3 回 行 い,1 回 の 動 作 時 間 を 100% に 正 規 化 し, 膝 関 節 屈 曲 角 度 と 膝 関 節 外 反 角 度 について 3 回 の 平 均 値 を 各 対 象 の 代 表 値 とし,15 名 分 を 平 均 し た 統 計 学 的 分 析 には, 左 右 の 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度 と 最 大 膝 関 節 外 反 角 度 について, 対 応 のあ

2 る t 検 定 を 行 った 危 険 率 5% 未 満 を 統 計 学 的 に 有 意 とした 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 は, 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 科 心 身 機 能 生 活 制 御 科 学 講 座 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 実 施 した( 承 認 番 号 1327,1335) 研 究 に 先 立 ち, 十 分 な 説 明 を 行 い 対 象 の 同 意 を 得 た 結 果 一 周 期 でストップ 期 は 右 が 平 均 52%, 側 方 移 動 期 は 48%, 左 が 49% と 51% で, 左 右 に 有 意 差 はなかった 接 地 時 の 膝 関 節 屈 曲 角 度 に 左 右 差 はほとんどなく, 平 均 22 だっ た ストップ 期 の 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度 は 右 平 均 57, 左 54 だったが, 有 意 差 はなかった 左 膝 関 節 の 方 が 最 大 屈 曲 を 示 した 時 間 が 早 かったが, 有 意 差 はなかった 右 膝 関 節 も 左 膝 関 節 も, 時 間 の 経 過 とともに 側 方 移 動 期 で 膝 関 節 屈 曲 角 度 は 漸 減 した 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 は 右 平 均 7, 左 5 だったが, 有 意 差 はなかった 最 大 外 反 を 示 す 時 間 は 左 右 ともストップ 期 で, 一 周 期 の 約 20% だった 膝 関 節 屈 曲 角 度 の 増 加 に 伴 い, 外 反 角 度 は 減 少 したが, 側 方 移 動 期 に 移 行 する 一 周 期 の 約 50% で 右 膝 関 節 も 左 膝 関 節 も 再 度 平 均 2 の 外 反 を 示 す 2 峰 性 の 軌 跡 を 示 した 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 が 大 きい 選 手 では, 膝 関 節 屈 曲 角 度 が 小 さくなる 傾 向 が 示 された 選 手 の 感 応 評 価 では, 左 右 の SSC でどちらかといえば 左 下 肢 でストップする 右 方 向 への SSC が 行 いやすいという 者 が 多 かった 左 右 の SSC で 一 方 向 の 行 いやすさを 訴 える 選 手 でも, 左 右 の 膝 関 節 運 動 が 平 均 値 と 大 きく 逸 脱 していなかった 考 察 左 下 肢 でストップし 右 方 向 に SSC する 動 作 では, 有 意 差 がないものの, 左 膝 関 節 が 右 より も 最 大 屈 曲 角 度 が 小 さく, 最 大 外 反 角 度 が 大 きくなる 傾 向 が 示 された 仮 説 を 肯 定 するに は 至 らなかった 今 回 は 15 名 の 対 象 であったが, 母 数 を 増 加 させることで 対 応 できると 考 える 本 研 究 では, 左 右 90 方 向 の SSC で 膝 関 節 運 動 に 明 確 な 左 右 差 は 示 されなかった し たがって 膝 関 節 運 動 の 左 右 差 によって, 左 膝 ACL 損 傷 のハイリスク 選 手 を 検 出 すること は 現 時 点 で 困 難 と 考 えるのが 妥 当 である しかし, 共 通 して 認 められた 膝 関 節 運 動 の 傾 向 を,ACL 損 傷 予 防 プログラムの 指 導 に 反 映 することは 可 能 と 思 われる SSC で, 左 膝 関 節 運 動 が ACL 損 傷 発 生 のリスクに 合 致 するにもかかわらず, 女 子 バスケットボール 選 手 では 左 下 肢 での SSC が 行 いやすいという 結 果 は 興 味 深 い 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 ACL 損 傷 が 左 膝 関 節 に 多 い 理 由 について, 研 究 データから 結 果 を 示 すことは, 理 学 療 法 士 の 大 きな 使 命 である 本 研 究 は ACL 損 傷 予 防 プログラムの 実 施 のために, 基 礎 的 な 実 験 室 での 研 究 成 果 をエビデンスとして 蓄 積 するという 意 義 がある

3 0435 非 予 測 条 件 での 90 サイドステップカッティング 動 作 が 膝 関 節 運 動 に 与 える 影 響 岩 田 昌 1), 浦 辺 幸 夫 2), 前 田 慶 明 2), 篠 原 博 3), 笹 代 純 平 3), 藤 井 絵 里 3), 森 山 信 彰 3), 事 柴 壮 武 3), 山 本 圭 彦 3), 河 原 大 陸 1) 1) 広 島 大 学 医 学 部 保 健 学 科,2) 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 院, 3) 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 科 key words 膝 前 十 字 靭 帯 損 傷 予 防 サイドステップカッティング 動 作 膝 関 節 運 動 はじめに, 目 的 女 子 バスケットボール 競 技 では 膝 関 節 に 多 くの 外 傷 が 発 生 しており, 特 に 膝 前 十 字 靭 帯 (anterior cruciate ligament ; ACL) 損 傷 の 重 大 性 は 高 い サイドステ ップカッティング(sidestep cutting ; SSC) 動 作 は, 非 接 触 型 ACL 損 傷 を 起 こす 動 作 のひとつである(Olsen et al. 2004) この 動 作 の 際 に, 膝 関 節 が 過 剰 に 外 反 すること で 損 傷 を 惹 起 させると 考 えられている(Hewett et al. 2005) SSC を 実 験 室 で 測 定 解 析 する 際 には,ストップ 時 の 脚 とストップ 後 の 側 方 移 動 方 向 を 前 もって 決 めておく 予 測 条 件 が 圧 倒 的 に 多 い これに 対 して, 光 刺 激 等 を 使 用 して 側 方 移 動 方 向 を 非 予 測 条 件 で 設 定 する 方 法 がある ストップ 脚 を 決 めていないため, 測 定 の 失 敗 も 多 く, 安 定 したデ ータを 得 るためには 困 難 も 多 い 先 行 研 究 で, 非 予 測 条 件 で 側 方 60 方 向 の SSC を 測 定 したものがある( 木 村 ら,2010) この 場 合, 予 測 条 件 よりも 非 予 測 条 件 で 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 が 増 大 していた これまで 女 子 バスケットボール 選 手 を 対 象 に, 側 方 90 方 向 の SSC を 予 測 条 件 と 非 予 測 条 件 で 比 較 した 研 究 はない 本 研 究 ではこの 条 件 の 違 いで, 膝 関 節 運 動 にどのような 影 響 があるのかを 提 示 したいと 考 える 仮 説 として, 非 予 測 条 件 での 90 SSC は 予 測 条 件 より 難 易 度 の 高 い 動 作 となるため, 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度 は 減 少 し, 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 は 増 加 するとした 方 法 対 象 は 大 学 女 子 バスケットボール 選 手 で, 膝 関 節 外 傷 の 既 往 がない 者 6 名 とした 年 齢 ( 平 均 ±SD)は 21.2±1.2 歳, 身 長 は 161.3±3.5cm, 体 重 は 54.2±3.9kg, 競 技 歴 は 8.3±2.3 年 であった 予 測 条 件 の 90 SSC は,5m の 助 走 路 を 最 大 努 力 で 走 り, 指 定 した 脚 をセンサーマット( 竹 井 機 器 工 業 社 ) 上 に 軸 脚 としてストップしたのちに 踏 み 切 り, 軸 脚 と 反 対 の 側 方 に 90 移 動 する 非 予 測 条 件 の 90 SSC は, 同 じく 5m の 助 走 路 で, スタート 後 3m 地 点 に 設 置 したセンサーマットを 踏 むと, 光 刺 激 でランダムに 左 右 の 方 向 が 指 定 される さらにその 前 方 のセンサーマット 上 でストップしたのち, 側 方 に 90 移 動 する 本 研 究 では, 各 試 行 で 成 功 したものを 3 回 抽 出 し,SSC にかかった 時 間 を 正 規 化 して 比 較 した SSC の 解 析 区 間 は, 足 部 接 地 から 足 部 離 地 までとした 三 次 元 動 作 解 析 のために, 対 象 の 両 下 肢 に 反 射 マーカーを 計 16 箇 所 貼 付 し,5 台 のハイスピードカメラ (フォーアシスト)を 用 いて,サンプリング 周 波 数 200Hz で 撮 影 した 撮 影 した 画 像 から

4 動 作 解 析 ソフト(Ditect)を 用 いて DLT 法 により, 三 次 元 座 標 を 求 めた 本 研 究 では 軸 脚 の 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度 と 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 を 分 析 に 使 用 した 統 計 学 的 分 析 には, 対 応 のある t 検 定 を 用 いて, 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度, 最 大 外 反 角 度 を 予 測 条 件 と 非 予 測 条 件 で 比 較 した 危 険 率 5% 未 満 を 有 意 とした 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 は, 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 科 心 身 機 能 生 活 制 御 科 学 講 座 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 実 施 した( 承 認 番 号 1335) 研 究 に 先 立 ち 十 分 な 説 明 を 行 い, 対 象 の 同 意 を 得 た 結 果 90?SSC の 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度 は, 左 右 の 平 均 (±SD)が 予 測 条 件 で 51.2±5.5, 非 予 測 条 件 で 53.0±6.2 となり, 非 予 測 条 件 で 1.8 大 きかったが, 有 意 差 はなかった 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 は 予 測 条 件 で 8.2±3.8, 非 予 測 条 件 で 10.1±5.1 となり, 非 予 測 条 件 で 1.9 大 きくなった(p<0.05) 考 察 非 予 測 条 件 の 90 SSC では, 予 測 条 件 より 膝 関 節 最 大 屈 曲 角 度 は 減 少 し, 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 が 増 加 すると 仮 説 したが, 本 研 究 では 膝 関 節 最 大 外 反 角 度 のみが 大 きく なった ストップ 動 作 で 膝 関 節 が 屈 曲 していく 際 に, 予 め 軸 脚 が 分 かっていてもいなくて も, 選 手 が 行 いやすい 屈 曲 角 度 で 最 終 的 にはストップするのではないかと 考 えた これは 随 意 的 な 努 力 に 加 え, 大 腿 四 頭 筋 やハムストリングなど 膝 関 節 周 囲 筋 の 緊 張 や 固 有 感 覚 で 決 定 されるのかもしれない 一 方, 膝 関 節 外 反 について 予 測 条 件 では 屈 曲 と 同 様 に 選 手 が ある 程 度 制 御 が 可 能 であるが, 非 予 測 条 件 では 屈 曲 の 制 御 とは 異 なり 膝 関 節 回 旋 の 要 素 が 多 くなるため, 十 分 な 制 御 が 困 難 になることが 考 えられた 平 均 1.9 の 外 反 角 度 の 増 加 は 比 較 的 大 きなものであり, 実 際 のスポーツ 活 動 で 不 意 にこのような 非 予 測 条 件 に 類 似 し た 状 況 が 起 こると,ACL 損 傷 のリスクになることが 推 測 される 本 研 究 では, 非 予 測 条 件 のみならず, 予 測 条 件 での SSC の 測 定 も, 安 定 したデータを 得 るためにかなりの 試 行 回 数 を 要 した 実 験 室 での 測 定 結 果 が, 実 際 のバスケットボール 競 技 の 局 面 に 少 しずつ 反 映 で きるように,さらに 対 象 を 増 やして 吟 味 する 必 要 がある 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 非 予 測 条 件 の 90 SSC で 膝 関 節 外 反 角 度 の 制 御 が 困 難 になることが 示 されたことは,ACL 損 傷 予 防 の 方 策 の 立 案 に, 新 たなエビデンスを 加 える という 点 で 理 学 療 法 上 の 意 義 がある この 知 見 を 女 子 バスケットボール 選 手 の ACL 損 傷 予 防 の 一 助 としたい 着 地 後 早 期 の 膝 関 節 外 反, 内 旋 運 動 と 下 肢 関 節 運 動 の 関 係 石 田 知 也 1,2), 山 中 正 紀 3), 谷 口 翔 平 1), 宝 満 健 太 郎 1), 越 野 裕 太 1,4), 寒 川 美 奈 3), 齊 藤 展 士 3), 小 林 巧 3), 青 木 喜 満 5), 遠 山 晴 一 3) 1) 北 海 道 大 学 大 学 院 保 健 科 学 院,2) 整 形 外 科 北 新 病 院 リハビリテーション 科, 3) 北

5 海 道 大 学 大 学 院 保 健 科 学 研 究 院,4)NTT 東 日 本 札 幌 病 院 リハビリテーションセンター, 5) 整 形 外 科 北 新 病 院 key words 前 十 字 靭 帯 損 傷 予 防 動 作 解 析 はじめに, 目 的 膝 前 十 字 靱 帯 (ACL) 損 傷 はスポーツ 外 傷 のうち 最 も 多 く, 重 篤 な 外 傷 の 一 つである ACL 損 傷 のうち 約 70% は 非 接 触 型 損 傷 であり, 女 性 は 男 性 に 比 べ 非 接 触 型 損 傷 率 が 2 から 8 倍 高 いことから, 特 に 女 性 の ACL 損 傷 予 防 が 重 要 である 近 年,ACL 損 傷 メカニズムの 一 つに 接 地 直 後 の 急 激 な 膝 外 反, 内 旋 運 動 が 提 唱 されており(Koga ら,2010),その 様 な 急 激 な 関 節 運 動 を 防 ぐことは ACL 損 傷 予 防 に 繋 がると 考 えられる しかし, 接 地 直 後 の 急 激 な 膝 関 節 外 反, 内 旋 運 動 を 導 く 要 因 は 明 らかとなっていない 本 研 究 の 目 的 は 着 地 後 早 期 の 膝 関 節 外 反, 内 旋 運 動 と 他 の 下 肢 関 節 運 動 との 関 係 を 検 討 することである 方 法 対 象 は 過 去 6 か 月 に 整 形 外 科 学 的 既 往 がない 健 常 女 性 39 名 (21.3±1.2 歳,160.3± 6.1cm,52.3±7.0kg)とした 動 作 課 題 は 30cm 台 から 着 地 後 直 ちに 最 大 垂 直 跳 びを 行 う Drop vertical jump とし, 台 からの 着 地 を 解 析 対 象 とした 反 射 マーカーを 骨 盤 および 下 肢 の 骨 指 標, 右 の 大 腿, 下 腿 な ど に 合 計 39 個 貼 付 し, 赤 外 線 カ メ ラ 6 台 (MotionAnalysis,200Hz)と 三 次 元 動 作 解 析 装 置 EvaRT4.3.57(Motion Analysis), 床 反 力 計 2 枚 (Kistler,1000Hz)を 同 期 させ 記 録 した 下 肢 関 節 角 度 ( 股 関 節 屈 伸 内 外 転 内 外 旋, 膝 関 節 屈 伸 内 外 反 内 外 旋, 足 関 節 底 背 屈 内 外 反 )の 算 出 にはデータ 解 析 ソ フト SIMM6.0.2(MusculoGraphics)を 用 いた また, 下 肢 関 節 角 度 は 静 止 立 位 時 の 角 度 を 0 とした 初 期 接 地 (IC)を 床 反 力 の 垂 直 成 分 が 10N 以 上 となった 時 点 として 同 定 し,IC 後 50ms までの 下 肢 関 節 角 度 変 化 量 を 算 出 した 膝 関 節 内 外 反 および 回 旋 角 度 変 化 量 とその 他 の 下 肢 関 節 角 度 変 化 量 との 間 の 関 係 を Pearson の 相 関 係 数 を 用 いて 検 討 し た(P<0.05) なお, 各 被 験 者 データは 成 功 3 試 行 の 平 均 値 を 用 いた 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 は 本 学 保 健 科 学 研 究 院 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 行 った 対 象 には 事 前 に 口 頭 と 書 面 にて 本 研 究 の 目 的, 実 験 手 順, 考 えられる 危 険 性 などについて 説 明 し, 十 分 に 理 解 を 得 て, 参 加 に 同 意 した 者 は 同 意 書 に 署 名 をし, 研 究 に 参 加 した 結 果 膝 関 節 内 外 反 角 度 ( 外 反 が 正 )は IC 時 に-1.3±2.9,IC 後 50ms では 2.9±4.8 で あり, 接 地 後 50ms までの 角 度 変 化 量 は 4.2±2.6 ( 範 囲 :-0.3 から 11.5 )であっ た また, 膝 関 節 回 旋 角 度 ( 内 旋 が 正 )は IC 時 に 2.5±4.8,IC 後 50ms では 5.9±5.8 であり, 接 地 後 50ms までの 角 度 変 化 量 は 3.4±4.3 (-5.0 から 11.1 )であった IC 後 50ms までの 股 関 節 回 旋 角 度 変 化 量 ( 内 旋 が 正 )は 1.2±3.1 (-8.5 から 6.5 )で あり, 同 時 期 での 膝 関 節 内 外 反 角 度 変 化 量 (R=0.365,P=0.022), 膝 関 節 回 旋 角 度 変 化 量

6 (R=0.471,P=0.002)との 間 に 有 意 な 正 の 相 関 関 係 を 認 めた その 他 に 有 意 な 相 関 関 係 は 認 めなかった 考 察 本 研 究 結 果 から 着 地 直 後 の 股 関 節 回 旋 運 動 と 膝 関 節 内 外 反, 回 旋 運 動 との 間 に 相 関 関 係 が 示 され, 着 地 直 後 の 股 関 節 回 旋 運 動 が ACL 損 傷 と 関 連 することが 示 唆 された Ellera ら (2008)は ACL 損 傷 者 で 股 関 節 内 旋 可 動 域 が 減 少 していたと 報 告 しており, 本 研 究 結 果 も 股 関 節 外 旋 運 動 と 膝 関 節 外 反, 内 旋 運 動 の 関 連 を 示 唆 する 結 果 であった 従 来, 股 関 節 内 旋 は ACL 損 傷 と 関 連 があるとされる dynamic knee valgus や knee-in といった 下 肢 の 動 的 アライメントの 要 素 の 一 つであり, 運 動 連 鎖 の 観 点 から 膝 関 節 外 反 や 内 旋 の 増 大 を 導 くと 考 えられてきた しかし, 本 研 究 結 果 からその 様 な 正 常 な 運 動 連 鎖 が 生 じないこと により 膝 関 節 の 外 反, 内 旋 ストレスが 増 加 する 可 能 性 が 示 唆 された 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 本 研 究 結 果 は 着 地 動 作 中 の 股 関 節 外 旋 運 動 を 減 じる,もしくは 内 旋 運 動 を 引 き 出 すことで 膝 関 節 外 反, 内 旋 ストレスを 減 じることが 出 来 る 可 能 性 を 示 唆 している また, 先 行 研 究 で ACL 損 傷 者 の 股 関 節 内 旋 可 動 域 の 減 少 が 報 告 されており(Ellera ら,2008), 股 関 節 内 旋 可 動 域 制 限 の 改 善 は 着 地 動 作 中 の 正 常 な 運 動 連 鎖 を 導 き, 膝 関 節 外 反, 内 旋 ストレス の 減 少 に 繋 がるかもしれない 本 研 究 はスポーツ 理 学 療 法 分 野 における ACL 損 傷 予 防, また ACL 再 建 術 後 リハビリテーションの 一 助 となるものと 考 える 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 時 の 筋 活 動 開 始 時 間 唄 大 輔 1,2), 岡 田 洋 平 2), 福 本 貴 彦 2) 1) 社 会 医 療 法 人 平 成 記 念 病 院,2) 畿 央 大 学 大 学 院 健 康 科 学 研 究 科 key words 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 前 十 字 靭 帯 損 傷 予 防 筋 活 動 開 始 時 間 はじめに, 目 的 膝 前 十 字 靭 帯 ( 以 下 ACL) 損 傷 予 防 において,ジャンプ 着 地 動 作 時 に 脛 骨 前 方 移 動 を 制 御 するための 前 活 動 という 機 能 が 着 目 されており, 着 地 前 からの 筋 活 動 を 誘 導 することが 損 傷 予 防 に 有 効 であると 多 く 報 告 されている 前 活 動 に 関 して, 垂 直 ジャンプ 着 地 やドロッ プジャンプ 着 地 時 の 報 告 は 多 くあり, 着 地 時 に 大 腿 四 頭 筋 に 対 してハムストリングスの 前 活 動 が 早 いことが 報 告 されており, 着 地 前 に 適 切 なタイミングでハムストリングスの 前 活 動 を 高 めることが,ACL 損 傷 予 防 に 有 効 な 戦 略 の 一 つとして 考 えられる ACL 損 傷 予 防 プログラムには 様 々なジャンプ 動 作 が 用 いられており,その 中 には 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 も 含 まれている しかし, 回 転 ジャンプ 着 地 時 における 前 活 動 のタイミングについて 明 ら

7 かにされておらず, 損 傷 予 防 のための 前 活 動 を 促 す 練 習 としての 有 用 性 は 明 らかでない そこで 本 研 究 の 目 的 は,180,360 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 両 条 件 における 着 地 時 の 筋 の 前 活 動 開 始 時 間 の 相 違 を 検 証 することとした 方 法 対 象 は 下 肢 に 運 動 器 疾 患 のない 健 常 女 性 10 名 ( 平 均 年 齢 23.5±2.5 歳, 平 均 身 長 ±4.8 cm, 平 均 体 重 50.3±3.8 kg)とした 課 題 は 直 立 位 から 右 側 へ 180 および 360 回 転 ジャンプを 行 わせ, 着 地 後 に 着 地 姿 勢 を 2 秒 間 保 持 することとし, 両 条 件 において 3 試 行 ずつ 実 施 した 着 地 動 作 における 左 膝 関 節 周 囲 筋 の 筋 活 動 の 評 価 は 表 面 筋 電 図 測 定 装 置 を 用 い, 筋 活 動 開 始 が 床 反 力 計 により 評 価 した 着 地 時 点 より 何 秒 前 に 認 められたかを 算 出 した 被 検 筋 は, 内 側 広 筋, 大 腿 直 筋, 外 側 広 筋, 大 腿 二 頭 筋, 半 膜 様 筋 の 5 筋 とした 各 条 件 において, 各 筋 の 活 動 開 始 時 間 の 3 試 行 の 平 均 値 を 算 出 した 統 計 解 析 は, 課 題 間 における 各 筋 の 活 動 開 始 時 間 の 差 の 検 討 には 対 応 のある t 検 定 を 用 いた また, 各 課 題 に おいて 筋 間 の 活 動 開 始 時 間 の 差 を 検 討 する 際 には, 一 元 配 置 分 散 分 析 を 用 い 多 重 比 較 には Tukey-Kramer 検 定 を 用 いた 危 険 率 は 5% 未 満 を 有 意 とした 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 は 所 属 機 関 の 研 究 倫 理 委 員 会 の 承 認 (H23 25)を 得 て 行 った 被 験 者 には 本 研 究 の 趣 旨 について 口 頭 および 文 書 にて 十 分 な 説 明 を 行 い, 書 面 にて 同 意 を 得 た 結 果 180 回 転 ジャンプの 筋 活 動 開 始 時 間 は, 内 側 広 筋 が 0.03±0.01ms, 大 腿 直 筋 が 0.03± 0.01ms, 外 側 広 筋 が 0.04±0.01ms, 大 腿 二 頭 筋 が 0.11±0.03ms, 半 膜 様 筋 が 0.13± 0.04ms であった また,360 回 転 ジャンプにおいて, 内 側 広 筋 が 0.04±0.01ms, 大 腿 直 筋 が 0.04±0.01ms, 外 側 広 筋 が 0.04±0.01ms, 大 腿 二 頭 筋 が 0.13±0.04ms, 半 膜 様 筋 が 0.14±0.04ms であった 全 ての 筋 の 活 動 開 始 時 間 は 課 題 間 で 有 意 差 が 認 められなか った また,180,360 回 転 ジャンプいずれにおいても, 大 腿 二 頭 筋 と 半 膜 様 筋 の 活 動 開 始 時 間 は 内 側 広 筋 大 腿 直 筋 外 側 広 筋 に 対 して 有 意 に 早 かった(p<0.01) しかし, どちらの 課 題 も 大 腿 二 頭 筋 と 半 膜 様 筋 間 の 活 動 開 始 時 間,また 内 側 広 筋 大 腿 直 筋 外 側 広 筋 間 の 活 動 開 始 時 間 において 有 意 差 が 認 められなかった 考 察 本 研 究 では,180,360 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 における 膝 関 節 周 囲 筋 の 筋 活 動 開 始 時 間 の 差 を 検 討 した 結 果, 各 筋 において 前 活 動 を 認 めたが, 活 動 開 始 時 間 は 課 題 間 で 有 意 な 差 を 認 めなかった また,いずれの 課 題 においても 大 腿 二 頭 筋 と 半 膜 様 筋 が 内 側 広 筋 大 腿 直 筋 外 側 広 筋 に 対 して 有 意 に 早 かった 本 研 究 において 検 討 した 膝 関 節 周 囲 の 5 筋 すべ てにおいて 着 地 前 の 前 活 動 が 認 められたことから, 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 は ACL 損 傷 予 防 のための 前 活 動 を 促 す 動 作 課 題 として 利 用 可 能 であると 考 えられる また, 回 転 ジャン プ 着 地 動 作 における 大 腿 二 頭 筋 と 半 膜 様 筋 の 筋 活 動 開 始 時 間 は, 先 行 研 究 におけるドロッ プジャンプ 着 地 動 作 の 結 果 より 早 い 傾 向 が 見 られ, 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 はドロップジャ

8 ンプ 着 地 動 作 よりも 着 地 前 のより 早 いタイミングでの 前 活 動 を 促 す 課 題 として 有 用 である 可 能 性 がある また, 大 腿 二 頭 筋 と 半 膜 様 筋 間 の 活 動 開 始 時 間 に 差 がなく, 内 側 広 筋 大 腿 直 筋 外 側 広 筋 間 にも 差 を 認 めなかった 着 地 前 に 外 側 の 大 腿 二 頭 筋 と 外 側 広 筋 の 活 動 が 高 まることで 着 地 時 に 膝 関 節 が 外 反 方 向 へ 誘 導 されることや, 膝 関 節 内 側 の 筋 群 の 活 動 が 着 地 時 の 外 反 制 動 に 関 連 することなどの 報 告 がある 本 研 究 における 両 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 において は 大 腿 二 頭 筋 と 半 膜 様 筋 間 の 前 活 動 が 同 様 のタイミングで 起 こり,また 内 側 広 筋 大 腿 直 筋 外 側 広 筋 間 でも 活 動 が 同 様 のタイミングで 起 こったことにより, 内 外 反 方 向 への 回 旋 ストレスを 軽 減 している 可 能 性 がある 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 回 転 ジャンプ 着 地 動 作 は 着 地 前 の 前 活 動 を 要 する 課 題 であり,ACL 損 傷 予 防 プログラムの 一 つとして 有 用 であることが 示 された 腰 痛 予 防 を 考 えて ~ 臥 位 移 乗 の 取 り 組 み~ 河 野 伸 吾, 荒 木 佑 介, 小 山 徳 人, 山 本 祐 司, 池 元 好 江 医 療 法 人 渓 仁 会 定 山 渓 病 院 key words ボード 抱 え 上 げ 移 乗 腰 部 負 担 はじめに, 目 的 高 齢 者 介 護 は, 従 来 から 介 護 者 の 腰 部 への 負 担 が 大 きく 腰 痛 者 数 も 増 加 している 厚 生 労 働 省 においても, 職 場 における 腰 痛 予 防 対 策 指 針 を 通 達 するなど 積 極 的 な 対 応 を 実 施 し ている 中 でも, 重 度 介 護 者 のベッド 車 いす 間 の 移 乗 ( 以 下, 移 乗 )は, 特 に 腰 部 への 負 担 が 大 きく, 福 祉 用 具 の 中 でもリフトを 使 用 することが 勧 められている しかし, 臨 床 上 使 用 時 間 がかかってしまうことなどもあり,リフトを 導 入 していない 施 設 がまだ 多 い 状 況 にある リフトや 人 力 による 抱 え 上 げ 移 乗 ではない 移 乗 方 法 として,フレックスボード( 以 下,ボ ード)を 使 用 した 臥 位 移 乗 は 我 々が 調 べた 範 囲 内 で 言 及 している 論 文 は 見 当 たらない そこで 我 々は 前 年 度 第 64 回 北 海 道 理 学 療 法 士 学 術 大 会 にて,2 名 での 抱 え 上 げ 移 乗 より フレックスボードを 使 用 した 臥 位 移 乗 の 方 が 移 乗 介 助 量 を 軽 減 することを 示 唆 した 今 回 は 病 棟 スタッフが 実 業 務 で 使 用 し, 移 乗 の 腰 部 負 担 が 軽 減 するのかを 検 証 した 方 法 対 象 は 移 乗 介 助 を 実 施 している 特 定 の 病 棟 スタッフ 18 名 とした

9 研 究 開 始 2 週 間 で, 対 象 が 1 回 以 上 ボードを 使 用 した 臥 位 移 乗 を 経 験 し,その 後 6 週 間, 実 業 務 においてアームサポートが 取 れ, 後 方 への 姿 勢 変 換 機 能 付 き 車 いす 使 用 の 患 者 に 対 し,ボードを 使 用 した 臥 位 移 乗 を 実 践 した そして, 研 究 期 間 前 後 にアンケートを 実 施 し た アンケートは,1 移 乗 業 務 全 体 における 腰 部 負 担,2ボード 対 象 患 者 の 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担,3ボード 非 対 象 患 者 の 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担 とし,0(なし)~5( 大 きく も 小 さくもない)~10(とても 大 きい)の 11 段 階 からの 選 択 とした 研 究 期 間 後 にはボ ードの 感 想 も 加 えた 統 計 は 中 央 値 を 算 出 し,ボード 導 入 前 後 とボード 対 象 非 対 象 患 者 間 の 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担 を Wilcoxon 検 定 にて 比 較 し, 有 意 水 準 は 5% 未 満 とした また, 研 究 期 間 前 後 の 病 棟 全 患 者 数,ボード 対 象 患 者 数 と 移 乗 状 況, 移 乗 介 助 人 数 毎 の 患 者 数 と 人 力 での 抱 え 上 げ 移 乗 患 者 数 を 調 査 した 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 はヘルシンキ 宣 言 に 従 い 実 施 した 研 究 期 間 前 のアンケートを 研 究 の 同 意 書 とし, 対 象 者 には 本 研 究 について 説 明 した 後,アンケートを 回 収 した 結 果 導 入 前 の1は 8.5 で,そのうち2が 10.0,3が 7.5 で23 間 に 有 意 差 があった(p<.01) 導 入 後 の1は 7.0 で,そのうち2が 2.5,3が 7.5 で23 間 に 有 意 差 があった(p<.001) 導 入 前 後 の 比 較 では,2のみ 有 意 差 があった(p<.001) 感 想 は, 慣 れれば, 患 者 介 助 者 共 に 身 体 的 に 楽 というものが 多 く, 準 備 に 手 間 はかかったがリフトよりは 良 い 使 用 ができる 車 いすが 限 定 される というものもあった 研 究 期 間 前 後 の 全 患 者 数 は 44 名 から 47 名 になった ボード 対 象 患 者 は 前 後 とも 同 一 患 者 9 名 で,ボード 導 入 前, 全 員 臥 位 から 抱 え 上 げて 移 乗 していた また, 人 力 での 抱 え 上 げ 移 乗 人 数 は 19 名 から 8 名 になり,そのうち 2 人 介 助 は 17 名 から 6 名 になった 考 察 ボード 導 入 前,ボード 対 象 患 者 の 方 が 非 対 象 患 者 に 比 べ 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担 が 有 意 に 高 かったことから, 臥 位 からの 抱 え 上 げ 移 乗 は 最 も 腰 部 負 担 のかかる 業 務 の 一 つであっ たと 考 えられた また, 全 患 者 数 やボード 対 象 者 にほぼ 変 化 がないにも 関 わらず,ボード 使 用 前 後 でボード 対 象 患 者 の 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担 が 有 意 に 減 少 し, 非 対 象 患 者 よりも 有 意 に 減 少 した さらに 感 想 には, 患 者 介 助 者 共 に 身 体 的 に 楽 とあり,ボードの 使 用 は 重 度 介 護 者 を 移 乗 する 際 の 腰 部 負 担 が 軽 減 することが 示 唆 された しかし, 移 乗 業 務 全 体 において, 腰 部 負 担 の 軽 減 はみられたものの 有 意 差 はみられなかっ た これはボード 対 象 患 者 の 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担 は 軽 減 したが,ボード 非 対 象 患 者 の 移 乗 業 務 における 腰 部 負 担 が 残 存 したためと 考 える 厚 生 労 働 省 によると, 腰 痛 予 防 対 策 として, 移 乗 時 の 人 力 による 人 の 抱 え 上 げは 原 則 禁 止 としている そのため, 病 棟 へのボードの 導 入 を 推 奨 すると 共 に,ボード 非 対 象 患 者 の 中

10 で 残 存 している 抱 え 上 げ 移 乗 患 者 を 減 少 させることで,はじめて 移 乗 業 務 全 体 の 腰 部 負 担 が 軽 減 すると 考 えられた 感 想 には, 準 備 に 手 間 はかかったがリフトよりは 良 い とあり,リフトより 使 用 のしやす さが 伺 われたが, 使 用 ができる 車 いすが 限 定 される との 意 見 もあり,アームサポートが 取 れないなどの 車 いすがあった 場 合 などのためにも,リフトとボードの 併 用 が 臨 床 上 必 要 であると 思 われた 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 最 も 腰 部 負 担 のかかる 業 務 の 一 つである 臥 位 からの 抱 え 上 げ 移 乗 に 代 わる 方 法 として, 今 まで 言 及 されていなかったボードを 使 用 した 方 法 が, 臨 床 上 有 効 であることを 示 唆 した 中 学 生 野 球 選 手 におけるセルフチェックテスト Check 9 の 有 用 性 遠 藤 康 裕 1,2), 宇 賀 大 祐 1,2), 坂 本 雅 昭 1) 1) 群 馬 大 学 大 学 院 保 健 学 研 究 科,2) 医 療 法 人 一 羊 会 上 武 呼 吸 器 科 内 科 病 院 key words 障 害 予 防 投 球 障 害 成 長 期 目 的 成 長 期 の 野 球 選 手 の 障 害 予 防 の 取 り 組 みとしては, 各 年 代 の 選 手 に 対 するメディカルチェ ックから 各 種 大 会 のメディカルサポート, 各 種 講 演 など 多 くの 活 動 が 行 なわれている し かし, 実 際 の 障 害 発 生 件 数 の 明 らかな 減 少 に 至 っているとは 言 い 難 い また, 成 人 野 球 選 手 の 多 くが 成 長 期 段 階 から 何 らかの 障 害 を 有 しているともいわれている ゆえに, 成 長 期 野 球 選 手 の 障 害 を 予 防 することは 我 々 理 学 療 法 士 にとって 非 常 に 重 要 な 課 題 であると 考 え る そこで 我 々は 学 童 期 から 実 施 可 能 なセルフチェックテスト Check 9 と 野 球 選 手 に 重 要 なストレッチ 項 目 を 抽 出 した Stretching 9 を 含 めた Top 9 を 独 自 に 作 成 し, 全 日 本 軟 式 野 球 連 盟 主 催 成 長 期 のスポーツ 障 害 予 防 指 導 者 講 習 会 においてもその 啓 発 活 動 を 行 なっている そこで 今 回 はその 中 の Check 9 の 有 用 性 を 検 討 することを 目 的 に 各 テス トと 障 害 の 有 無 との 関 連 を 検 討 した 方 法 対 象 は, 中 学 校 軟 式 野 球 部 に 在 籍 する 男 子 中 学 生 27 名 ( 年 齢 :13.2±0.8 歳, 身 長 :157.5 ±8.5cm, 体 重 :49.4±10.0kg)とした 基 本 情 報 について, 年 齢, 学 年,ポジションを 聴 取 した 肩 肘 関 節 痛 の 有 無 は 理 学 療 法 士 が 投 球 時 痛 をインタビューにて 聴 取 した 肩 関 節 または 肘 関 節 に 疼 痛 を 有 する 者 を 障 害 群, 有 さない 者 を 対 照 群 とした Check 9 の 構 成 要 素 は,ショルダーモビリティテスト,Finger Floor Distance(FFD), Heel Buttock Distance(HBD), 股 関 節 内 旋 テスト,しゃがみ 込 み, 片 脚 立 位 (またはフォワードベンド),

11 フォワードベンチ,サイドベンチ,クロスモーションの 9 項 目 であり, 今 回 はよりセルフ チェックが 簡 便 に 行 なえるようクロスモーションを 除 き 片 脚 立 位 とフォワードベンドを 独 立 させた 9 項 目 で 評 価 を 行 なった 各 テストの 結 果 は 動 作 運 動 が 正 確 に 行 なえる 場 合 を 陰 性, 行 なえない 場 合 を 陽 性 とし, 理 学 療 法 士 1 名 で 判 定 を 行 なった 統 計 学 的 解 析 では, 各 評 価 項 目 においてカイ 二 乗 検 定 を 行 い, 対 照 群 に 対 する 障 害 群 のオッズ 比 を 算 出 した 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 対 象 者 全 員 および 保 護 者,チーム 責 任 者 に 本 研 究 内 容, 対 象 者 の 有 する 権 利 について 十 分 に 説 明 を 行 い 参 加 の 同 意 を 得 た 結 果 障 害 群 は 15 名, 対 照 群 は 12 名 であった 対 照 群 に 対 して 障 害 群 では 軸 脚 HBD(p= 0.004), 非 軸 脚 HBD(p=0.038), 非 軸 脚 股 関 節 内 旋 (p=0.013), 非 軸 脚 フォワードベン ド(p=0.047)で 有 意 に 陽 性 者 の 人 数 が 多 かった オッズ 比 (95% 信 頼 区 間 )は 対 照 群 に 対 して 障 害 群 でそれぞれ, 軸 脚 HBD が 12.0 倍 ( ), 非 軸 脚 HBD が 5.5 倍 ( ), 非 軸 脚 股 関 節 内 旋 が 8.3 倍 ( ),フォワードベンドが 7.5 倍 ( ) であった 考 察 今 回 の 研 究 より,HBD, 股 関 節 内 旋,フォワードベンドのテストで 陽 性 であった 者 は 肩 肘 関 節 に 疼 痛 を 有 しやすいことが 明 らかになった つまりは, 大 腿 四 頭 筋 の 柔 軟 性, 股 関 節 内 旋 可 動 域, 動 的 な 立 位 バランスの 低 下 が 障 害 発 生 の 要 因 となりうると 考 えられる ま たオッズ 比 より, 軸 脚 大 腿 四 頭 筋 の 柔 軟 性 低 下, 軸 脚 股 関 節 内 旋 の 可 動 域 低 下 が 障 害 発 生 に 大 きく 影 響 を 及 ぼすことが 示 唆 された 群 間 で 有 意 な 差 が 認 められなかった 項 目 につい ても 障 害 予 防 には 重 要 であるとされており,それに 加 え 今 回 の 客 観 的 な 検 討 により, 我 々 が 作 成 した Check 9 は 野 球 選 手 の 障 害 予 防 におけるセルフチェックとして 有 用 であると いえる さらには Stretching 9 には 今 回 障 害 要 因 として 示 唆 された 項 目 に 対 するストレ ッチングが 含 まれており, 障 害 予 防 プログラムとして Top 9 の 有 用 性 を 検 討 していくこ とが 重 要 であると 考 える 本 研 究 は 横 断 的 研 究 であり 実 際 に 障 害 発 生 との 因 果 関 係 は 明 確 ではない 今 後 縦 断 的 な 調 査 を 行 うことが 課 題 である 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 本 研 究 は, 成 長 期 野 球 選 手 における 身 体 機 能 のセルフチェックの 有 用 性 を 明 らかにしたも のであり, 障 害 予 防 の 一 指 標 として 非 常 に 意 義 があると 考 える 高 校 野 球 選 手 のための 投 球 障 害 発 症 予 測 システム ~ 効 率 的 なフィジカルチェックをめざして~

12 福 岡 進 1), 岡 田 匡 史 1), 亀 山 顕 太 郎 1), 石 井 壮 郎 2) 1) 松 戸 整 形 外 科 病 院 リハビリテーションセンター,2) 松 戸 整 形 外 科 病 院 MD key words 投 球 肩 発 症 予 防 目 的 近 年, 野 球 選 手 にフィジカルチェックを 行 い, 早 期 に 予 防 策 を 講 ずる 取 り 組 みが 広 く 行 わ れるようになってきた しかし, 実 際 に 障 害 予 防 に 対 する 選 手 の 意 識 を 高 めて 有 病 率 を 低 下 させるには 数 多 くの 課 題 がある その 中 で 特 に 重 要 だと 考 える 4 つの 課 題 を 列 挙 する 1. 障 害 に 対 する 選 手 の 予 防 意 識 を 十 分 に 高 められないため, 予 防 効 果 があがらない 2. フィジカルチェックにおいて,どの 項 目 を 優 先 的 に 調 べていくべきかという 基 準 が 曖 昧 で ある 3.フィジカルチェック 後, 選 手 へフィードバックするまでに 時 間 がかかる 4.デ ータを 取 得 してもそれを 蓄 積 していないため, 良 質 なエビデンスを 構 築 できない こうし た 課 題 を 解 決 するためには 新 しいシステムの 開 発 が 必 要 である そこで 本 研 究 の 目 的 は, 必 要 最 低 限 のフィジカルチェックを 行 うことにより, 投 球 障 害 肩 肘 に 関 する 近 未 来 の 発 症 確 率 を 予 測 し,リアルタイムに 選 手 にフィードバックを 行 うことで 選 手 の 予 防 意 識 を 向 上 させるシステムを 開 発 することとした 方 法 高 校 野 球 部 員 30 名 に 対 し 無 症 候 期 にフィジカルチェックを 行 い,その 後 の 半 年 間 にどの 選 手 が 投 球 障 害 肩 肘 を 発 症 したかを 1 週 間 毎 に 前 向 きに 調 査 した フィジカルチェック データと 発 症 データをロジスティック 回 帰 分 析 することで 発 症 に 有 意 に 関 連 する 危 険 因 子 を 同 定 し,それらから 発 症 確 率 を 予 測 する 回 帰 式 を 算 出 した 算 出 した 回 帰 式 にフィジカ ルチェックデータを 代 入 することにより, 選 手 一 人 一 人 の 近 未 来 の 発 症 確 率 を 予 測 するシ ステムを 構 築 した その 後 次 シーズンに 本 システムを 活 用 して, 選 手 一 人 一 人 に 発 症 確 率 と 危 険 因 子 を 伝 え, 予 防 策 を 指 導 した 後,アンケートにて 予 防 意 識 に 関 する 調 査 を 行 った 説 明 と 同 意 選 手 にはヘルシンキ 宣 言 に 基 づき 研 究 の 主 旨 を 説 明 し 同 意 を 得 た 上 で 研 究 を 行 った また, 参 加 の 自 由 意 志 を 説 明 し, 協 力 同 意 を 得 られなかったとしても, 不 利 益 は 生 じない ことを 記 載 し 文 書 にて 配 布 した 結 果 調 査 期 間 中 に 33%(10/30 例 )の 選 手 が 投 球 障 害 肩 肘 を 発 症 した 発 症 に 有 意 に 関 連 性 のあった 項 目 は 挙 上 位 外 旋 角 度, 肩 甲 帯 内 転 角 度, 踵 殿 部 距 離 であり,これらの 因 子 を 用 いて 発 症 確 率 を 高 精 度 に 予 測 する 回 帰 式 を 算 出 した( 判 別 的 中 率 87%) 算 出 した 回 帰 式 を Excel に 組 み 込 み,Excel のマクロ 機 能 を 活 用 することにより, 上 記 3 つのフィジカ ルチェックデータをパソコンに 入 力 するだけで,リアルタイムに 発 症 確 率 を 表 示 するシス テムを 構 築 した また, 入 力 データは 自 動 的 にデータベースに 組 み 込 まれ, 労 せずデータ を 蓄 積 できるようにした システム 構 築 後 の 次 シーズンに, 本 システムを 導 入 したところ,

13 96% の 選 手 の 予 防 意 識 は 向 上 し,79% の 選 手 に 実 際 に 予 防 に 取 り 組 む 姿 勢 がみられた 考 察 本 研 究 で 発 症 に 関 連 のある 項 目 は, 挙 上 位 外 旋 角 度, 肩 甲 帯 内 転 角 度, 踵 殿 部 距 離 であっ た これらの 機 能 低 下 は 発 症 に 対 する 危 険 因 子 であり, 優 先 的 にチェックしていくことが 重 要 であると 考 える これら 3 項 目 は 簡 便 であるため, 現 場 の 指 導 者 や 選 手 も 行 うことが できると 思 われる 本 システムでは Excel のマクロ 機 能 を 活 用 したため,フィジカルチェ ックの 結 果 をその 場 でフィードバックできた 今 回,ほとんどの 選 手 の 予 防 意 識 は 向 上 し 積 極 的 に 予 防 に 取 り 組 むようになった その 理 由 として 以 下 の 2 つのことが 考 えられた 1 発 症 確 率 という 具 体 的 な 数 値 を 用 いて 選 手 一 人 一 人 の 近 未 来 を 予 測 したこと 2 フィジ カルチェック 後 すぐにフィードバックしたことで,その 結 果 が 選 手 の 印 象 に 残 りやすかっ たこと 我 々のデータベースの 規 模 はまだ 小 さいため, 今 後 もデータの 集 積 が 必 要 である しかし, 本 システムのマクロ 機 能 により, 入 力 されたデータは 自 動 的 にデータベースに 蓄 積 されるため, 今 後 システムの 効 果 や 妥 当 性 の 検 証 にかかる 労 力 はかなり 軽 減 される し たがって, 本 システムは, 現 場 の 選 手 のために 効 率 的 なフィジカルチェックを 行 うことが でき,リアルタイムにフィードバックを 行 うことで 選 手 の 予 防 意 識 の 向 上 を 図 ることがで きる また,データも 蓄 積 できることから, 多 方 面 からのデータ 集 積 も 簡 便 であると 考 え る 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 高 校 野 球 選 手 を 対 象 に, 必 要 最 低 限 のフィジカルチェックを 行 うことで, 投 球 障 害 肩 肘 に 関 する 近 未 来 の 発 症 確 率 を 予 測 し,リアルタイムに 選 手 にフィードバックできるシステ ムを 開 発 した 理 学 療 法 士 が 臨 床 での 経 験 を 生 かし,このようなシステムを 構 築 すること で, 選 手 を 障 害 から 予 防 できると 考 える 今 後, 本 システムを 活 用 しデータベースを 拡 張 していくことで, 現 場 に 良 質 なエビデンスを 供 給 できるとともに 普 遍 的 な 障 害 予 防 法 の 確 立 に 寄 与 できるものと 思 われる 小 中 学 野 球 選 手 のための OCD 推 定 システムの 開 発 ~ 離 断 性 骨 軟 骨 炎 の 早 期 発 見 を 目 指 して~ 亀 山 顕 太 郎 1,2), 高 見 澤 一 樹 1), 鈴 木 智 1), 古 沢 俊 祐 1), 田 浦 正 之 1), 宮 島 恵 樹 1), 橋 川 拓 人 1), 岡 田 亨 1), 木 島 丈 博 3), 石 井 壮 郞 4), 落 合 信 靖 3) 1) 千 葉 県 理 学 療 法 士 会 スポーツ 健 康 増 進 支 援 部,2) 松 戸 整 形 外 科 病 院 リハビリテーショ ンセンター, 3) 千 葉 大 学 医 学 部 附 属 病 院 整 形 外 科,4) 筑 波 大 学 Sports Research & Development Core key words スクリーニングテスト 野 球 肘 障 害 予 防

14 はじめに, 目 的 成 長 期 の 野 球 選 手 において 野 球 肘 の 有 病 率 は 高 く 予 防 すべき 重 要 課 題 である その 中 でも 離 断 性 骨 軟 骨 炎 ( 以 下,OCD)は 特 に 予 後 が 悪 く, 症 状 が 出 現 した 時 にはすでに 病 態 が 進 行 していることが 多 いため, 早 期 発 見 することが 重 要 である OCD を 早 期 発 見 するために はエコーを 用 いた 検 診 が 有 効 であり, 近 年 検 診 が 行 われる 地 域 が 増 えている しかし, 現 状 では 現 場 に 出 られる 医 師 数 には 限 界 があり,エコー 機 器 のコストも 考 慮 すると, 数 十 万 人 といわれる 少 年 野 球 選 手 全 体 にエコー 検 診 を 普 及 させるのは 難 しい もし,エコー 検 査 の 前 段 階 に 簡 便 に 行 えるスクリーニング 検 査 があれば, 無 症 候 性 の OCD を 初 期 段 階 で 効 率 的 に 見 つけ 出 せる 可 能 性 が 高 まる 本 研 究 の 目 的 は, 問 診 理 学 検 査 投 球 フォームチェックを 行 うことによって,その 選 手 の OCD の 存 在 確 率 を 推 定 し, 二 次 検 診 が 必 要 かどうかを 判 定 できるスクリーニングシス テム( 以 下 OCD 推 定 システム)を 開 発 することである 方 法 調 査 集 団 は 千 葉 県 理 学 療 法 士 会 スポーツ 健 康 増 進 支 援 部 主 催 の 投 球 障 害 予 防 教 室 に 参 加 した 小 中 学 生 221 名 とした この 教 室 では 問 診 理 学 検 査 20 項 目 投 球 フォームチ ェック 5 項 目 の 他 に 医 師 による 両 肘 のエコー 検 査 が 行 われた OCD が 疑 われた 選 手 は 病 院 での 二 次 検 査 に 進 み,そこで OCD か 否 かの 確 定 診 断 がなされた 上 記 の 記 録 をデータ ベース 化 し,OCD の 確 定 診 断 がついた 選 手 と 有 意 に 関 連 性 のある 因 子 を 抽 出 した この 抽 出 された 因 子 をベイズ 理 論 で 解 析 することによって,これらの 因 子 から 選 手 一 人 一 人 の OCD の 存 在 確 率 を 推 定 するシステムを 構 築 した 推 定 された OCD の 存 在 確 率 と 実 際 のデータを 照 合 し, 分 割 表 を 用 いてシステムの 妥 当 性 を 評 価 した 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 ヘルシンキ 条 約 に 基 づき, 事 前 に 各 チームの 監 督, 保 護 者 に 対 して 検 診 の 目 的, 内 容 につ いて 説 明 し 同 意 を 得 た また, プライバシーの 保 護 同 意 の 自 由 参 加 の 自 由 意 志 を 説 明 し, 協 力 同 意 を 得 られなかったとしても, 不 利 益 は 生 じないことを 記 載 し 当 日 文 書 にて 配 布 した 結 果 221 名 中 17 名 (7.7%)の 選 手 が,エコー 上 で 骨 頭 異 常 を 認 め 二 次 検 診 を 受 けた 結 果, 4 名 (1.8%)の 選 手 が OCD と 確 定 診 断 された OCD に 関 連 性 の 高 かった 問 診 項 目 は 野 球 肘 の 既 往 があること 野 球 肩 の 既 往 がないこ と であり, 理 学 検 査 項 目 は 肘 の 伸 展 制 限 があること 肘 と 肘 をつけた 状 態 で 上 肢 を 鼻 の 高 さまで 上 げられないこと( 以 下 広 背 筋 テスト) 非 投 球 側 での 片 足 立 ちが 3 秒 間 安 定 できないこと, 投 球 フォームチェックでは 投 球 フォームでの 肩 肩 肘 ラインが 乱 れて いること( 以 下 肘 下 がり) であった これらの 因 子 から 選 手 一 人 一 人 の OCD の 存 在 確 率 をベイズ 理 論 を 用 いて 推 定 した 推 定

15 した OCD 存 在 確 率 の cut off 値 を 15%に 設 定 し, 二 次 検 査 が 必 要 か 否 かを 判 別 し, 実 デ ータと 照 らし 合 わせたところ, 感 度 100%, 特 異 度 96.8%, 陽 性 的 中 率 36.4%, 陰 性 的 中 率 100%, 正 診 率 96.8% と 高 精 度 に 判 別 できた 考 察 本 システムは,OCD の 危 険 因 子 を 持 った 選 手 を 抽 出 し,その 存 在 確 率 を 推 定 することによ って, 危 険 性 の 高 い 選 手 にエコー 検 査 を 積 極 的 に 受 けるように 促 すシステムである この システムでは 問 診 や 理 学 検 査 を 利 用 するため, 現 場 の 指 導 者 でも 簡 便 に 使 うことができ, 普 及 させやすいのが 特 徴 である こうしたシステムを 用 いることで, 選 手 や 指 導 者 の OCD に 対 する 予 防 意 識 を 高 められるという 効 果 が 期 待 される 本 研 究 で OCD と 関 連 性 の 高 かったフィジカルチェック 項 目 は, 投 球 フォームでの 肘 下 が りや 非 投 球 側 の 下 肢 の 不 安 定 性, 肩 甲 帯 胸 椎 の 柔 軟 性 を 評 価 するものが 含 まれている こうした 機 能 の 低 下 は OCD に 対 する 危 険 因 子 の 可 能 性 があると 考 えられた 今 後 普 遍 性 を 高 めるために, 他 団 体 とも 連 携 し 縦 断 的 かつ 横 断 的 観 察 を 進 めていく 予 定 で ある 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 OCD 推 定 システムを 開 発 し 発 展 させることで, 理 学 療 法 士 が OCD の 予 防 に 貢 献 できる 道 筋 を 開 ける 今 後,より 簡 便 なシステムを 確 立 し, 無 症 候 性 の OCD を 高 精 度 にスクリ ーニングできれば,より 多 くの 少 年 野 球 選 手 を 障 害 から 守 ることが 可 能 になる 全 国 高 等 学 校 野 球 選 手 権 静 岡 大 会 における 暑 熱 環 境 と 熱 中 症 罹 患 の 傾 向 の 実 態 調 査 静 岡 県 メディカルサポートによる 熱 中 症 予 防 対 策 の 啓 蒙 活 動 小 原 智 永 1,4), 山 﨑 一 史 2,4), 鈴 木 啓 介 3,4), 廣 野 文 隆 4), 小 林 敦 郎 4), 甲 賀 英 敏 4), 岡 部 敏 幸 4) 1) 聖 稜 リハビリテーション 病 院 リハビリテーション 部,2) 菊 川 市 立 総 合 病 院 リハビリ テーション 室, 3) 磐 田 市 立 総 合 病 院 リハビリテーション 技 術 科,4) 静 岡 県 理 学 療 法 士 会 公 益 事 業 局 メディカルサポート 部 高 校 野 球 メディカルサポート 部 門 key words 熱 中 症 予 防 WBGT 運 動 指 針 はじめに, 目 的 静 岡 県 高 校 野 球 メディカルサポート( 以 下 :MS)は, 静 岡 県 高 校 野 球 連 盟 の 要 請 を 受 け 昨 年 の 第 95 回 全 国 高 等 学 校 野 球 選 手 権 静 岡 大 会 ( 以 下 : 夏 季 大 会 )にて 11 年 が 経 過 した 静 岡 県 の MS は, 県 士 会 の 公 益 事 業 として 組 織 的 に 活 動 が 可 能 となっているため, 1 回 戦 から 決 勝 までの 県 内 全 10 球 場 にて 試 合 前 中 に 関 わる 処 置 や 試 合 後 の cooling down

16 を 行 っている 近 年 では, 熱 中 症 に 対 する 処 置 ( 観 客 も 含 む)や 啓 蒙 活 動 において 力 を 入 れており,その 一 つに 球 場 内 で 暑 熱 環 境 の 指 標 として 運 動 時 の 熱 中 症 の 予 防 措 置 に 用 いら れる Wetbulb Globe Temperature 湿 球 黒 球 温 度 ( 以 下 :WBGT)を 測 定 し, 場 内 の 注 意 喚 起 を 促 している 夏 季 大 会 の WBGT と 熱 中 症 罹 患 との 危 険 性 の 関 連 を 明 らかにするこ とは, 大 会 での 熱 中 症 予 防 パフォーマンス 低 下 回 避 の 一 助 となると 考 えられる そこで, 本 研 究 の 目 的 は 球 場 内 の WBGT などの 暑 熱 環 境 と 熱 中 症 罹 患 の 特 徴 を 明 らかにすること とし, 分 析 検 討 を 行 った 方 法 平 成 25 年 7 月 13 日 から 同 年 7 月 29 日 の 暑 熱 環 境 を 計 測 するために 乾 球 温 湿 球 温 黒 球 温 WBGT を 熱 中 症 指 標 計 ( 京 都 電 子 工 業 製 WBGT203A)を 用 いて 測 定 した 県 内 全 10 球 場 のうち 4 球 場 ( 西 部 東 部 地 区 の 各 1 球 場 と 中 部 地 区 2 球 場 )にて, 各 試 合 前 試 合 中 (5 回 終 了 時 )と 全 ての 試 合 終 了 後 にグランド 中 央 で 計 測 を 行 った 分 析 は, 観 客 を 含 めた 熱 中 症 有 りの 計 測 群 ( 以 下 : 有 群 )と 熱 中 症 無 しの 計 測 群 ( 以 下 : 無 群 ) に 分 け 乾 球 温 湿 球 温 黒 球 温 WBGT の 差 を 独 立 した t 検 定 を 用 いて 求 めた また, 熱 中 症 罹 患 については ROC 曲 線 を 用 い WBGT のカットオフ 値 を 算 出 した 有 意 水 準 は 危 険 率 5% 未 満 とした 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 大 会 役 員, 責 任 教 師, 審 判, 選 手 に 対 して WBGT の 測 定 について 説 明 し, 同 意 を 得 た 今 回 の 報 告 にあたっては, 個 人 情 報 の 保 護, 倫 理 的 配 慮 に 十 分 注 意 し 集 計 を 行 った 結 果 全 計 測 回 数 は 150 回 であり,その 内 有 群 は 24 回 ( 観 客 を 含 む)であった 1 回 戦 で 17 回, 2 回 戦 で 1 回,3 回 戦 で 2 回,4 回 戦 で 1 回, 準 々 決 勝 で 2 回, 準 決 勝 で 1 回 であっ た 選 手 の 罹 患 件 数 は,1 回 戦 で 9 人,2 回 戦 で 0 人,3 回 戦 で 2 人,4 回 戦 で 1 人 の 計 12 人 であった また,ポジション 別 では 投 手 3 人, 捕 手 1 人,1 塁 手 2 人,3 塁 手 1 人, 遊 撃 手 3 人, 中 堅 手 1 人, 補 欠 1 人 であった 重 症 度 別 では, 筋 痙 攣 などの I 度 が 8 人, 頭 痛 や 倦 怠 感 などの II 度 が 4 人, 意 識 消 失 などの III 度 が 0 人 であった 各 測 定 項 目 の 平 均 値 は, 乾 球 温 30.9±2.0, 湿 球 温 62.9±8.5, 黒 球 温 35.8±3.9, WBGT28.3±1.4 であった 無 群 の 平 均 値 は, 乾 球 温 27.9±2.75, 湿 球 温 70.4±10.4, 黒 球 温 32.9±4.2,WBGT26.4±2.0 であり, 有 群 と 無 群 との 比 較 では 乾 球 温, 黒 球 温, WBGT が 有 意 に 高 く, 湿 度 は 有 意 に 低 かった(p<0.05) また WBGT は, 曲 線 下 面 積 0.77 ( 漸 次 有 意 確 率 p<0.05),カットオフ 値 であった( 感 度 83.6%,1- 特 異 度 39.7%) 考 察 日 本 体 育 協 会 運 動 指 針 ( 以 下 : 運 動 指 針 )では,WBGT の は 警 戒 レベル で ある 中 井 らによると WBGT28 以 上 になると 熱 中 症 罹 患 が 増 加 するとしている 今 回 の 静 岡 県 の 夏 季 大 会 における WBGT のカットオフ 値 が 指 針 や 先 行 研 究 よりも 低 値 であっ

17 たことは, 野 球 が 全 身 を 覆 う 着 衣 での 競 技 であり 熱 放 散 しにくい 着 衣 環 境 であるため, 通 常 より 熱 中 症 罹 患 率 が 高 いと 考 えられる そのため, 野 球 では 運 動 指 針 を 一 段 階 下 げて 注 意 喚 起 を 促 す 必 要 があると 考 えられる 一 方 で, 夏 季 大 会 において WBGT が 31 の 運 動 は 原 則 中 止 の 段 階 に 至 ったとしても, 中 止 になることはない 熱 中 症 罹 患 時 は,1 回 戦 に 最 も 多 く 認 めており MS による 1 回 戦 からの 介 入 や 熱 中 症 予 防 の 啓 蒙 活 動 は, 有 意 義 な 活 動 と 考 えられる 重 症 度 別 では,III 度 の 救 急 搬 送 を 必 要 とする 重 度 の 選 手 を 出 さな かったことも, MS による 活 動 が 浸 透 し 予 防 または 早 急 に 対 応 が 出 来 たこともうかがえる 選 手 の 熱 中 症 罹 患 の 傾 向 を 見 ると, 最 も 運 動 頻 度 が 高 い 投 手 だけでなく, 様 々なポジショ ンで 熱 中 症 罹 患 が 生 じることが 考 えられる 今 回 の 結 果 は, 観 客 を 含 めた 球 場 全 体 の 熱 中 症 罹 患 件 数 での 検 討 であったため,この 結 果 を, 来 年 度 から 球 場 全 体 への 注 意 喚 起 を 具 体 的 な 数 値 とリスクや 対 応 を 示 し, 観 客 を 含 めた 熱 中 症 予 防 に 活 かしていく 必 要 がある さ らに 今 後, 一 昨 年 から 開 始 した 高 校 へ MS が 指 導 に 出 向 く MS 訪 問 事 業 においても, 統 一 した 適 切 な 熱 中 症 予 防 の 指 導 を 行 い, 熱 中 症 予 防 における 啓 蒙 活 動 の 実 施 が 重 要 な 課 題 である 今 回 選 手 のみのデーター 数 が 少 なかったため, 今 後 もデーターを 蓄 積 し, 選 手 の みの WBGT カットオフ 値 を 求 めて 熱 中 症 予 防 に 活 かしていきたいと 考 える 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 熱 中 症 予 防 における 啓 蒙 活 動 の 発 信 により, 障 害 予 防 パフォーマンス 低 下 を 未 然 に 防 ぐ ことが 期 待 される 健 常 及 び 投 球 障 害 肩 を 呈 する 野 球 選 手 の 原 テスト 及 び 下 肢 体 幹 機 能 の 特 性 投 球 障 害 肩 の 予 防 へ 向 けての 考 察 岡 棟 亮 二 1), 横 矢 晋 2), 出 家 正 隆 2) 1) 広 島 大 学 医 学 部 保 健 学 科 理 学 療 法 学 専 攻,2) 広 島 大 学 大 学 院 医 歯 薬 保 健 学 研 究 院 key words 投 球 障 害 野 球 競 技 特 性 はじめに, 目 的 スポーツ 障 害 予 防 の 観 点 から, 競 技 による 身 体 特 性 を 知 ることは 重 要 である 本 研 究 の 目 的 は 健 常 野 球 選 手 と 肩 関 節 の 使 用 機 会 の 少 ない 競 技 者 であるサッカー 選 手 において, 原 テ スト 及 び 下 肢 体 幹 機 能 の 理 学 所 見 を 比 較 し, 野 球 選 手 の 身 体 特 性 を 明 らかにすることで ある またその 身 体 特 性 を 踏 まえ 投 球 障 害 肩 の 症 状 を 呈 する 野 球 選 手 と 健 常 野 球 選 手 を 比 較 し, 投 球 障 害 肩 の 症 状 を 呈 する 野 球 選 手 に 特 徴 的 な 所 見 を 明 らかにすることで,その 治 療 や 予 防 に 繋 げることである 方 法

18 対 象 を 投 球 障 害 肩 を 示 す 野 球 選 手 12 名 ( P 群 ), 本 研 究 に 影 響 する 既 往 のない 野 球 選 手 11 名 (B 群 )とサッカー 選 手 10 名 (S 群 )とし, 原 テスト 11 項 目, 下 肢 体 幹 機 能 4 項 目 を 検 査 した 原 テストとは,scapula spine distance(ssd), 下 垂 位 外 旋 筋 力 (ISP), 下 垂 位 内 旋 筋 力 (SSC), 初 期 外 転 筋 力 (SSP), impingement test(impinge), combined abduction test(cat),horizontal flexion test(hft),elbow extension test(et),elbow push test(ept), 関 節 loosening test(loose), hyper external rotation test(hert) のことであり, 下 肢 体 幹 機 能 4 項 目 とは straight leg raising angle(slr), 指 床 間 距 離 (FFD), 踵 臀 間 距 離 (HBD), 股 関 節 内 旋 角 度 (HIR)である なお 本 研 究 では HERT を, 同 様 に 肩 関 節 過 外 旋 をさせる 手 技 である crank test(crank)で 代 用 した また ISP, SSC,SSP,ET,EPT は,ハンドヘルドダイナモメーター(MICRO FET2,Hoggan Health 社 製 )を,CAT,HFT,SLR,HIR は 角 度 計 を 用 いて 計 測 した 筋 力 の 項 目 は 非 投 球 側 に 比 べ 投 球 側 で 10N 以 上 の 弱 化,CAT と HFT は 非 投 球 側 に 比 べ 投 球 側 で 10 以 上 の 可 動 域 制 限 があれば 陽 性 とし,その 他 は 原 らの 基 準 に 従 い 陽 性 の 判 断 をした 各 項 目 陽 性 率, 合 計 陽 性 項 目 数, 各 測 定 での 投 球 側 値, 非 投 球 側 値 の 群 間 の 差 の 検 討 と, 同 群 内 での 各 測 定 の 投 球 側 値 と 非 投 球 側 値 の 差 を 検 討 した 統 計 処 理 は, 対 応 のある t 検 定,Wilcoxon の 検 定, 一 元 配 置 分 散 分 析,Tukey-Kramer,Steel-Dwass の 方 法 を 行 い, 危 険 率 5% 未 満 を 有 意,10% 未 満 を 傾 向 ありと 判 断 した 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 の 目 的 と 趣 旨 を 説 明 した 上 で 同 意 の 得 られた 者 を 本 研 究 対 象 とした 本 研 究 は 所 属 施 設 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 実 施 した 結 果 S 群,B 群 間 で HBD の 投 球 側 値 に 有 意 差 を 認 めた(S 群 >B 群 ) B 群,P 群 間 では 原 テスト 合 計 陽 性 項 目 数 (P 群 >B 群 ),crank の 陽 性 率 (P 群 >B 群 ),Impinge の 陽 性 率 (P 群 >B 群 )で 有 意 差 を 認 めた また, 同 群 内 の 投 球 側, 非 投 球 側 値 の 差 では S 群 の HFT ( 非 投 > 投 ),B 群 の CAT( 非 投 > 投 ),P 群 の IR( 非 投 > 投 ),CAT( 非 投 > 投 ),HFT ( 非 投 > 投 )にて 有 意 差 を 認 め,B 群 の SLR( 非 投 > 投 ),P 群 の ISP( 非 投 > 投 ),SLR ( 非 投 > 投 )にて 傾 向 を 認 めた 考 察 サッカー 選 手 に 比 べ 野 球 選 手 の 投 球 側 における HBD の 距 離 は 有 意 に 小 さく,SLR 角 度 は 小 さい 傾 向 にあった つまり, 野 球 選 手 は 非 投 球 側 に 比 べ 投 球 側 下 肢 の 大 腿 四 頭 筋 が 柔 軟 でハムストリングは 短 縮 しているという 特 性 が 示 唆 された また, 野 球 選 手 の 投 球 側 にお いて CAT の 角 度 が 有 意 に 小 さいことから, 投 球 側 の CAT の 可 動 域 制 限 は 野 球 選 手 の 特 性 であり, 投 球 側 肩 関 節 の 関 節 包 の 拘 縮, 腱 板 の 筋 緊 張 や 筋 拘 縮,inner と outer muscle の 筋 バランス 異 常 等 が 疑 われた 一 方,HFT ではサッカー 選 手 にも 投 球 側 の 可 動 域 制 限 を 認 めた つまりこの 現 象 は 野 球 選 手 の 特 性 ではなく 誰 にでも 起 こり 得 る 利 き 腕 側 の 特 性 であ ることが 考 えられた 投 球 障 害 群 において, 投 球 側 の ISP は 弱 化 傾 向 にあり,IR は 有 意

19 に 弱 化 していた すなわち rotator cuff の 不 均 衡 により 前 後 の instability が 生 じ, internal impingement 等 を 惹 起 している 可 能 性 が 示 唆 された 野 球 選 手 と 投 球 障 害 群 との 比 較 から, 野 球 選 手 の 中 でも 投 球 障 害 群 は 原 テスト 合 計 陽 性 項 目 数 が 多 くなること,また その 中 でも crank,impinge が 投 球 障 害 肩 に 特 徴 的 な 検 査 であるといえる 原 らは Impinge と HERT を 含 む 9 項 目 以 上 が 陰 性 であることを 投 球 開 始 基 準 としており, 大 沢 らは 原 テストの 項 目 のうち,SSP,Impinge,CAT,ET,EPT,HERT が 投 球 障 害 群 で 有 意 に 陽 性 率 が 高 かったと 報 告 している 今 回 の 結 果 は 原 らが HERT(crank),Impinge を 重 要 視 していることと 大 沢 らの 報 告 の 一 部 を 裏 付 けるものとなった しかし SSP,CAT, ET,EPT の 陽 性 率 に 差 を 認 めなかったことが 大 沢 らの 報 告 と 異 なった これは, 今 回 我 々 が 筋 力 値 を 定 量 化 して 陽 性 の 判 断 をしたために 生 じた 相 違 と 考 えられる このことから 原 テストの 定 性 的 評 価 と 定 量 的 評 価 の 場 合 の 陽 性 検 出 率 の 差 異 が 考 えられた 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 野 球 選 手 及 び 投 球 障 害 群 の 原 テスト, 下 肢 体 幹 機 能 における 特 性 を 明 らかにしたことで, 今 後, 検 査 等 で 野 球 選 手 の 身 体 異 常 を 判 断 する 際 の 一 助 となると 考 える 高 校 生 におけるスポーツ 外 傷 障 害 予 防 クリニックの 効 果 岡 田 誠 1), 田 村 将 良 2), 服 部 紗 都 子 3), 竹 田 智 幸 2), 竹 田 かをり 2), 奥 谷 唯 子 2), 原 田 拓 2), 今 井 えりか 2) 1) 藤 田 保 健 衛 生 大 学 医 療 科 学 部 リハビリテーション 学 科,2) 可 知 整 形 外 科, 3) 名 古 屋 大 学 医 学 部 附 属 病 院 リハビリテーション 部 key words すぽーツ 障 害 障 害 予 防 成 長 期 はじめに, 目 的 近 年, 成 長 期 にスポーツ 外 傷 障 害 を 発 症 する 子 どもが 増 加 している 特 に, 中 学 校, 高 等 学 校 での 部 活 動 によるものが 多 発 しており 問 題 視 されている これらの 問 題 に 対 して 日 本 体 育 協 会 は 報 告 書 やガイドラインを 作 成 しているものの, 充 分 な 効 果 を 得 ているとはい いがたい 一 部 の 中 学 高 校 ジュニアクラブを 除 いた 大 多 数 の 中 学 校 高 等 学 校 では, 充 分 な 管 理 が 行 われないままスポーツ 外 傷 障 害 を 多 発 している 現 状 があるものと 思 われ る そこで 今 回, 高 校 生 に 対 して,スポーツ 外 傷 障 害 予 防 クリニック(スポーツ 外 傷 障 害 状 況 の 調 査, 身 体 機 能 の 評 価, 予 防 に 向 けた 指 導 )を 実 施 した 部 活 動 を 行 っている 高 校 生 のスポーツ 外 傷 障 害 の 現 状 とその 身 体 機 能 を 確 認 し,スポーツ 外 傷 障 害 予 防 指 導 を 行 うことでスポーツ 外 傷 障 害 の 減 少 に 寄 与 することを 目 的 として 実 施 した

20 方 法 高 等 学 校 で 部 活 動 を 行 っている 生 徒 325 名 を 対 象 にスポーツ 外 傷 障 害 予 防 クリニックを 実 施 した 生 徒 のスポーツ 外 傷 障 害 の 状 態 を 把 握 する 目 的 で 運 動 機 能 調 査 ( 質 問 紙 によ るアンケート 調 査 )を 実 施 した そして,これらの 調 査 結 果 を 参 考 にスポーツ 外 傷 障 害 予 防 クリニック( 運 動 機 能 評 価, 評 価 フィードバック, 全 体 および 個 別 の 運 動 指 導 )を 実 施 した 運 動 機 能 調 査 では, 過 去 のスポーツ 外 傷 障 害 の 部 位 と 診 断 名, 受 傷 した 時 期, 現 在 の 身 体 状 況 を 調 査 した 運 動 機 能 評 価 は, 関 節 弛 緩 性 テスト( 上 肢 版 は 上 肢 テスト), Tightness テスト,アライメント, 体 幹 機 能 評 価, 部 位 別 テストなどの 31 項 目 ( 上 肢 版 は 28 項 目 )からなる 運 動 機 能 評 価 表 を 用 いて 評 価 を 実 施 した 評 価 フィードバック, 全 体 および 個 別 の 運 動 指 導 は 評 価 後 に 実 施 した 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 の 実 施 に 際 して, 本 学 疫 学 臨 床 研 究 等 倫 理 審 査 委 員 会 の 承 認 を 得 て, 被 験 者 への 説 明 および 同 意,データの 管 理 には 充 分 な 注 意 を 払 って 実 施 した 結 果 スポーツ 外 傷 障 害 の 程 度 は, 運 動 機 能 調 査 表 と 運 動 機 能 評 価 表 の 項 目 数 から 総 合 的 に 4 段 階 に 判 定 した 4 段 階 の 詳 細 は,S レベルは, 既 にスポーツ 外 傷 障 害 を 有 しており, 評 価 結 果 に 大 きな 問 題 がある 者,A レベルは 評 価 結 果 に 問 題 があり 対 応 が 必 要 と 思 われる 者, B レベルは 評 価 結 果 の 問 題 は 少 ないが 予 防 指 導 が 必 要 と 思 われる 者,C レベルは 大 きな 問 題 のない 者 とした その 結 果,S レベルが 36 名 ( 11.1%),A レベルが 119 名 ( 36.6%), B レベルが 64 名 (19.7%),C レベルが 106 名 (32.6%)であった スポーツ 外 傷 障 害 の 該 当 者 可 能 性 のある 者 (S,A,B レベル)は 219 名 で 全 体 の 67.4% であった 機 能 評 価 表 による 評 価 では, 全 項 目 31 項 目 ( 上 肢 版 28 項 目 )に 対 して 31.3±10.4% の 項 目 でチェックが 認 められた 項 目 別 では, 関 節 弛 緩 性 テストが 32.0%,Tightness テス トが 44.1%,アライメントが 34.5%, 体 幹 機 能 評 価 が 27.9%, 部 位 別 テストが 28.7%, 上 肢 テストが 22.0% であった 全 項 目 との 比 較 では Tightness テスト(p<0.01),アラ イメント(p<0.05)が 大 きい 結 果 となった 考 察 今 回 のスポーツ 外 傷 障 害 クリニックでは, 部 活 動 を 行 っている 高 校 生 のスポーツ 外 傷 障 害 の 現 状 を 把 握 することができた 機 能 調 査 表 と 機 能 評 価 表 によるスクリーニング 評 価 を 行 うことで,スポーツ 外 傷 障 害 に 該 当 している 者,このまま 放 置 しておくとスポーツ 外 傷 障 害 になる 可 能 性 のある 者 など,スポーツ 外 傷 障 害 の 予 備 軍 も 含 めた 現 状 の 把 握 が 可 能 となった スポーツ 外 傷 障 害 のレベル 判 定 については,スポーツ 外 傷 障 害 の 該 当 者 可 能 性 のある 者 (S,A,B レベル)は 全 体 の 67.4% であった 日 本 体 育 協 会 スポ ーツ 医 科 学 研 究 報 告 書 では, 過 去 に 外 傷 や 障 害 を 経 験 したことのある 高 校 生 は 62.5% と 報 告 されており,スポーツ 外 傷 障 害 の 可 能 性 のある 生 徒 を 含 めた 抽 出 が 目 的 の 今 回 のス クーリング 評 価 では 妥 当 な 結 果 であったと 思 われる 機 能 評 価 表 による 評 価 では,

21 Tightness テスト,アライメントが 大 きい 結 果 となった 柔 軟 性 低 下 やアライメント 異 常 とスポーツ 外 傷 障 害 の 関 係 性 については 多 くの 報 告 もあり, 今 後 の 指 導 を 含 めた 活 動 で は 着 目 していく 必 要 があると 思 われる 今 回 のスポーツ 外 傷 障 害 クリニックを 通 して 多 くの 生 徒 にスポーツ 外 傷 障 害 予 防 の 必 要 性 を 確 認 できたことは 意 義 のある 活 動 であった と 思 われる 今 後 もスポーツ 外 傷 障 害 予 防 を 進 めていきたいと 思 う 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 成 長 期 のスポーツ 外 傷 障 害 に 対 して,スポーツ 外 傷 障 害 予 防 指 導 を 行 うことでスポー ツ 外 傷 障 害 の 減 少 に 寄 与 することできると 思 われる マスターズスイマーに 対 する 障 害 調 査 とサポート 活 動 を 通 じて 得 られた 今 後 の 課 題 地 神 裕 史 1,2), 濱 中 康 治 2,3), 三 富 陽 輔 2,4), 中 村 拓 成 2,3), 加 藤 知 生 2,5) 1) 東 京 工 科 大 学,2) 日 本 水 泳 トレーナー 会 議,3) 東 京 厚 生 年 金 病 院,4) 国 立 スポーツ 科 学 センター, 5) 桐 蔭 横 浜 大 学 key words マスターズ 水 泳 選 手 障 害 予 防 日 本 水 泳 トレーナー 会 議 はじめに, 目 的 近 年, 中 高 齢 者 の 健 康 増 進 に 対 する 意 識 の 高 まりにより 水 泳 愛 好 者 の 数 は 増 加 している 一 般 社 団 法 人 日 本 マスターズ 水 泳 協 会 の 2012 年 度 の 統 計 では 協 会 に 登 録 している 選 手 数 は 年 々 増 加 しており, 登 録 者 数 が 最 も 多 い 区 分 は 歳 であったと 報 告 している また, 水 泳 は 日 本 整 形 外 科 学 会 が 提 唱 するロコモティブシンドローム 予 防 のための 運 動 としても 推 奨 されており, 今 後 も 愛 好 者 の 増 加 が 予 想 される 一 方 で 水 泳, 特 に 競 泳 は 肩 関 節 や 腰 部 の 障 害 が 多 いスポーツであることも 過 去 の 先 行 研 究 により 明 らかになっている 健 康 増 進 のために 始 めた 水 泳 により 運 動 器 の 障 害 を 引 き 起 こし,ADL や QOL を 低 下 させぬよう, 理 学 療 法 士 として 適 切 な 知 識 をもってこれらの 愛 好 者 をサポートすることは 非 常 に 意 義 深 いと 考 える 我 々が 所 属 している 日 本 水 泳 トレーナー 会 議 は 創 設 22 年 を 経 過 しており, 約 100 名 の 理 学 療 法 士 が 所 属 している 22 年 の 間 に 水 泳 選 手 に 対 する 様 々なサポート 活 動 を 展 開 してきた 今 回, 当 会 に 所 属 する 理 学 療 法 士 を 中 心 にマスターズの 水 泳 大 会 をサ ポートし,マスターズスイマーの 障 害 に 関 する 調 査 を 実 施 すると 同 時 に,コンディショニ ングを 行 う 機 会 を 得 た よって 本 研 究 の 目 的 は,マスターズスイマーの 障 害 の 実 態 を 調 査 すると 同 時 に, 理 学 療 法 士 に 求 められるコンディショニングの 手 技 や 対 応 部 位 を 明 らかに することで, 水 泳 愛 好 者 に 対 して 適 切 な 医 学 サポートを 実 施 するための 情 報 を 蓄 積 するこ とである 方 法

22 対 象 は 日 本 マスターズ 長 距 離 大 会 に 参 加 した 水 泳 愛 好 者 839 名 ( 女 性 265 名, 男 性 374 名 )のうち, 我 々が 開 設 したオープンブースを 利 用 した 83 名 ( 女 性 58 名, 男 性 25 名 ) とした 対 象 者 に 対 して 水 泳 歴 や 主 訴 など 一 般 的 な 情 報 を 聴 取 し, 症 状 に 対 する 運 動 療 法 やマッサージ,ストレッチなどを 行 い,その 実 施 内 容 や 実 施 部 位 を 解 析 した 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 本 研 究 は 日 本 水 泳 トレーナー 会 議 の 倫 理 委 員 会 の 承 認 ( 承 認 番 号 13002)を 受 けて 実 施 し た 対 象 者 に 対 しては 書 面 にてインフォームドコンセントを 実 施 し, 本 研 究 の 趣 旨 を 理 解 し, 賛 同 した 対 象 者 には 署 名 にて 同 意 をもらった 結 果 本 研 究 の 対 象 者 の 年 齢 は 52.9±13.0 歳 (21-77 歳 ), 水 泳 歴 は 19.3±12.6 年 (1-55 年 ) であった 主 訴 部 位 は 重 複 ありで 計 161 部 位,そのうち 肩 関 節 が 最 も 多 く 全 体 の 28.6% であった 次 いで 腰 部 骨 盤 帯 が 18.0%, 股 関 節 が 14.3% であった また, 実 施 した 手 技 の 数 は, 重 複 ありで 計 208, 内 訳 は マッサージ が 全 体 の 59.1%, ストレッ チ が 30.8%, エクササイズ が 9.6% であった 考 察 上 述 したように, 健 康 増 進 のために 水 泳 を 始 める 中 高 年 者 は 今 後 も 増 加 することが 予 想 さ れる 一 方 で 水 泳 は 肩 関 節 や 腰 部 の 障 害 を 引 き 起 こす 可 能 性 もあるが, 荷 重 関 節 に 負 荷 が 少 なく, 適 切 なサポートを 行 うことで 長 く 継 続 できるアクティビティになると 考 える 今 回 の 結 果 から,マスターズスイマーの 抱 えている 痛 みの 部 位 は 肩 関 節 が 最 も 多 く, 次 いで 腰 部 骨 盤 帯 という 結 果 であった これは 半 谷 らが 行 った 競 技 力 の 高 いトップ 選 手 に 対 し て 行 った 先 行 研 究 と 同 様 の 結 果 であり, 障 害 部 位 は 競 技 力 に 依 存 するものではなく, 競 技 特 性 により 生 じている 問 題 点 であることが 明 らかとなった また,コンディショニングに 対 するニーズや 実 際 に 対 応 した 手 技 を 集 計 した 結 果,マッサージやストレッチが 多 くなっ た その 要 因 として, 水 泳 はノンコンタクトスポーツであり, 障 害 の 発 生 機 序 の 多 くはオ ーバーユースによるものであることが 挙 げられる 筋 や 腱 の 炎 症 に 由 来 する 痛 みであれば, 適 切 な 疲 労 回 復 を 促 すような 手 技 を 講 じることが 結 果 的 には 障 害 予 防 に 直 結 することが 示 唆 された しかし,セルフコンディショニングの 意 識 が 高 いトップ 選 手 に 対 して 行 った 同 様 の 調 査 では,マッサージを 希 望 する 割 合 は 全 体 で 50% 以 下 であったことを 考 えると, マスターズスイマーはまだまだ 自 身 で 行 えることを 適 切 に 行 えておらず,トレーナーなど の 第 3 者 に 依 存 的 である 姿 勢 が 明 らかとなった 今 後, 会 としても 教 育 啓 発 活 動 を 継 続 的 に 実 施 し,セルフコンディショニングの 意 識 を 高 めることで 末 永 く 水 泳 を 続 けられる 中 高 年 者 が 増 えるようなサポート 活 動 を 展 開 していくことの 必 要 性 を 感 じた 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 理 学 療 法 士 はスポーツ 領 域 において 障 害 予 防 のサポートをリードするスペシャリストとな る 必 要 がある 今 回 のような 研 究 を 通 じて 障 害 の 実 態 や 現 場 でのニーズを 調 査 し,その 結 果 から 具 体 的 な 取 り 組 みを 実 施 することは 大 変 意 義 があると 考 える

23 高 校 野 球 選 手 における 肩 障 害 の 存 在 率 と 予 防 策 の 実 施 状 況 :アンケート 調 査 濱 田 孝 喜 1), 貞 清 正 史 1), 坂 雅 之 3), 竹 ノ 内 洋 2), 伊 藤 一 也 1), 蒲 田 和 芳 3) 1) 貞 松 病 院 リハビリテーション 科,2)はしもとクリニックリハビリテーション 科,3) 広 島 国 際 大 学 key words 高 校 野 球 ストレッチ 投 球 障 害 肩 はじめに, 目 的 野 球 では 外 傷 よりも 野 球 肩 などスポーツ 障 害 の 発 生 率 が 高 いことが 知 られている 近 年, 肩 後 方 タイトネス(PST)に 起 因 する 肩 関 節 内 旋 可 動 域 制 限 の 存 在 が 示 され,PST と 投 球 障 害 肩 発 生 との 関 連 性 が 示 唆 されたが, 高 校 野 球 において PST および 肩 関 節 可 動 域 制 限 の 予 防 策 の 実 施 状 況 は 報 告 されていない また, 予 防 策 実 施 と 肩 障 害 発 生 率 との 関 係 性 は 示 されていない そこで 本 研 究 の 目 的 を 高 校 野 球 において, 肩 関 節 可 動 域 制 限 の 予 防 策 の 実 施 状 況 および 予 防 策 実 施 と 肩 関 節 痛 の 存 在 率 との 関 連 性 を 解 明 することとした 方 法 長 崎 県 高 等 学 校 野 球 連 盟 加 盟 校 全 58 校 へアンケート 用 紙 を 配 布 し,アンケート 調 査 を 高 校 野 球 指 導 者 と 選 手 に 実 施 した 指 導 者 には 練 習 頻 度 時 間, 投 球 数 に 関 する 指 導 者 の 意 識 調 査, 選 手 には 肩 障 害 の 有 無 既 往 歴,ストレッチ 実 施 状 況 種 類 などを 調 査 した 調 査 期 間 は 平 成 25 年 1 月 から 3 月 であった 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 アンケート 調 査 は 長 崎 県 高 校 野 球 連 盟 の 承 諾 を 得 た 上 で 実 施 された アンケートに 係 る 全 ての 個 人 情 報 は 調 査 者 によって 管 理 された 結 果 1. 選 手 : 対 象 58 校 中 27 校,673 名 から 回 答 を 得 た 対 象 者 は 平 均 年 齢 16.5 歳, 平 均 身 長 170.1cm, 平 均 体 重 66.1kg であった アンケート 実 施 時 に 肩 痛 を 有 していた 者 は 全 体 の 168/673 名 (24.9%)であり, 肩 痛 の 既 往 がある 者 は 全 体 の 367/673 名 (54.5%) と 約 半 数 にのぼった 疼 痛 を 有 する 者 のうちストレッチを 毎 日 または 時 々 実 施 している 者 は 147/167 名 (88%)であった 疼 痛 の 無 い 者 のうちストレッチを 実 施 している 者 は 422/490 名 (86%)であった 投 手 のみでは, 肩 痛 を 有 する 者 が 22/133 名 (16.2%), 肩 痛 の 既 往 は 82/136 名 (60.3%)であった 疼 痛 を 有 する 者 のうちストレッチを 毎 日 また は 時 々 実 施 している 者 は 20/22 名 (90.9%)であった 疼 痛 の 無 い 者 のうちストレッチを 実 施 している 者 は 107/111 名 (96.4%)であった 2. 指 導 者 :58 校 中 24 校,33 名 か ら 回 答 を 得 た 練 習 頻 度 では, 週 7 日 が 9/24 校 (38%), 週 6 日 が 13/24 校 (54%),

24 週 5 日 が 8%(2 校 )であった 練 習 時 間 ( 平 日 )では,4-3 時 間 が 14/24 校 (58%), 2 時 間 以 下 が 9/24 校 (38%), 回 答 なしが 1 校 であった 練 習 時 間 ( 休 日 )では,9 時 間 以 上 が 2/24 校 (8%),7-8 時 間 が 8/24 校 (33%),5-6 時 間 が 9/24 校 (38%),4-3 時 間 が 5/24 校 ( 21%)であった 投 球 数 ( 練 習 )では 50 球 以 下 が 3%, 球 が 24%, 球 が 24%,201 球 以 上 が 0%, 制 限 なしが 48% であった 投 球 数 ( 試 合 )では 50 球 以 下 が 0%, 球 が 9%, 球 が 42%,201 球 以 上 が 0%, 制 限 なし が 48% であった 3. 指 導 者 意 識 と 肩 痛 : 投 手 の 練 習 時 全 力 投 球 数 を 制 限 している 学 校 は 12 校, 制 限 ない 学 校 は 12 校 であった 全 力 投 球 数 制 限 ありの 投 手 は 45 名 で, 肩 痛 を 有 する 者 は 8/45 名 (18%), 肩 痛 が 無 い 者 は 37/45 名 (82%)であった 全 力 投 球 数 制 限 なしの 投 手 は 60 名 で, 肩 痛 を 有 する 者 は 11/60 名 (24%), 肩 痛 が 無 い 者 は 49/60 名 (75%)であった 考 察 肩 関 節 痛 を 有 する 者 は 全 体 の 24.9%, 投 手 のみでは 16.2% であり, 肩 痛 の 既 往 歴 が 全 体 の 51.5% であった ストレッチ 実 施 状 況 は 肩 痛 の 有 無 に 関 わらず 約 80% の 選 手 が 実 施 していた 肩 関 節 可 動 域 制 限 に 対 してスリーパーストレッチ,クロスボディーストレッチ による 肩 関 節 可 動 域 改 善 効 果 が 報 告 されている 本 研 究 ではストレッチ 実 施 の 有 無 を 調 査 しているためストレッチ 実 施 方 法 の 正 確 性 は 明 らかではないが,ストレッチのみでは 投 球 障 害 肩 予 防 への 貢 献 度 は 低 いことが 考 えられる 障 害 予 防 意 識 に 関 して 練 習 時 試 合 時 共 に 制 限 をしていない 指 導 者 が 48% であった 高 校 生 の 全 力 投 球 数 は 1 日 100 球 以 内 と 提 言 されているが, 部 員 が 少 数 である 高 校 などの 存 在 は 考 慮 せざるを 得 ない 練 習 時 全 力 投 球 数 を 制 限 している 者 のうち 肩 痛 を 有 する 者 は 18%, 制 限 の 無 い 者 のうち 肩 痛 を 有 する 者 は 24% であった 1 試 合 または 1 シーズンの 投 球 数 増 加 は 肩 障 害 リスクを 増 大 させる と 報 告 されている アンケート 調 査 を 実 施 した 期 間 はオフシーズンであり, 指 導 者 の 投 球 数 に 関 する 意 識 が 選 手 の 肩 障 害 に 関 与 する 可 能 性 があると 考 えられる 以 上 より, 高 校 野 球 選 手 において 一 定 の 効 果 があるとされるストレッチを 約 8 割 の 選 手 が 実 施 していたにも 関 わらず 肩 痛 の 存 在 率 は 高 かった この 原 因 としてストレッチ 方 法 の 正 確 性 及 びオーバー ユースや 投 球 動 作 など 他 因 子 との 関 連 が 考 えられる 今 後 はこれらの 関 係 性 を 明 確 にし, 障 害 予 防 方 法 の 確 立 が 重 要 課 題 である 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 スポーツ 現 場 において 障 害 予 防 は 重 要 課 題 である これまで 障 害 予 防 方 法 の 検 証 はされて きたが, 現 場 ではその 方 法 が 浸 透 していないことが 示 唆 された 医 学 的 知 識 や 動 作 指 導 が 可 能 な 理 学 療 法 士 の 活 躍 がスポーツ 現 場 での 障 害 予 防 に 必 要 である

25 1578 一 般 大 学 陸 上 競 技 選 手 に 対 するコンディショニングチェック ~ 傷 害 実 態 とパフォーマンス, 柔 軟 性 の 検 討 ~ 三 上 兼 太 朗 1), 益 田 洋 史 2), 大 角 侑 平 3), 中 田 周 兵 1), 中 村 実 弓 1), 松 本 尚 1), 寒 川 美 奈 4), 青 木 喜 満 5) 1) 整 形 外 科 北 新 病 院 リハビリテーション 科,2) 松 田 整 形 外 科 記 念 病 院,3) 函 館 整 形 外 科 クリニック, 4) 北 海 道 大 学 大 学 院 保 健 科 学 研 究 院,5) 整 形 外 科 北 新 病 院 key words 陸 上 競 技 コンディショニングチェック 傷 害 予 防 はじめに, 目 的 陸 上 競 技 選 手 を 対 象 としたコンディショニングチェックの 報 告 はトップアスリートにおい てみられるものの, 一 般 大 学 陸 上 競 技 選 手 を 対 象 とした 報 告 は 少 ない また, 傷 害 実 態 と パフォーマンス, 柔 軟 性 の 関 連 を 同 時 に 報 告 したものも 少 ない 本 研 究 は 一 般 大 学 陸 上 競 技 選 手 におけるコンディショニングチェックの 結 果 から, 傷 害 実 態 とパフォーマンス, 柔 軟 性 との 関 係 を 比 較 検 討 することを 目 的 とした 方 法 北 海 道 の 大 学 陸 上 競 技 部 における 短 距 離 およびフィールド( 跳 躍, 投 擲 )ブロックに 所 属 する 選 手 35 名 ( 男 29 名, 女 6 名 )を 対 象 とした 問 診 票 にて 今 シーズンにおける 傷 害 歴 ( 有 無, 部 位, 種 類 ),その 際 の 受 診 の 有 無,シーズンベスト 記 録 を 調 査 した ベスト 記 録 は 国 際 陸 上 競 技 連 盟 のスコア 表 (IAAF SCORING TABLES OF ATHLETICS)に 準 じて 点 数 化 し, 中 央 値 より 高 い 群, 低 い 群 に 分 類 した また, 理 学 療 法 士 が 各 選 手 の 柔 軟 性 (SLR, Thomas test,ober test,ely test, 股 内 旋, 足 背 屈, 長 座 体 前 屈 )を 測 定 した 柔 軟 性 各 項 目 における 性 別,パート( 短 距 離 vs フィールド),パフォーマンス( 高 vs 低 ), 傷 害 の 有 無 による 違 いを t 検 定 により 比 較 した(P<0.05) 倫 理 的 配 慮, 説 明 と 同 意 ヘルシンキ 宣 言 に 基 づき, 事 前 に 本 研 究 の 目 的 内 容 を 十 分 に 説 明 し, 書 面 にて 同 意 を 得 てから 実 施 した 結 果 問 診 票 において, 今 シーズン 傷 害 ありとの 回 答 は 32 件 (29 名 )であった その 際, 病 院 受 診 したのが 9 件, 受 診 していないが 23 件 であった 傷 害 部 位 別 では 腰 部 8 件, 大 腿 8 件, 膝 7 件, 下 腿 3 件, 足 部 3 件, 股 関 節 1 件, 上 肢 2 件 であった 傷 害 種 別 では 外 傷 と 考 えられたもの 11 件 (そのうち 肉 離 れ 8 件 ), 障 害 が 22 件 であった 柔 軟 性 に 関 して, 各 項 目 の 平 均 値 を 以 下 に 示 す( 男 性 右 / 左 // 女 性 右 / 左 ) SLR( ): 72.6/74.3//84.2/80.8,Thomas test(cm): 1.4/1.0//0.8/0.8,Ober test(cm): 2.9/3.8//2.1/2.5, Ely test(cm): 11.7/11.9//11.3/11.4, 股 内 旋 ( ): 31.4/31.6//38.3/38.3, 足 背 屈 ( ): 30.0/31.7//35.8/35.8, 長 座 体 前 屈 (cm): 37.8//43.7

26 性 差 では, 左 右 SLR と 左 股 関 節 内 旋 において 女 子 に 比 して 男 子 が 有 意 に 低 値 を 認 め(P< 0.05), 右 股 関 節 内 旋 では 低 い 傾 向 を 示 した(P=0.092) パート 別,パフォーマンス 高 低, 傷 害 の 有 無 との 比 較 においてはいずれも 差 はみられなかった また, 傷 害 が 多 かった 腰 部, 大 腿, 膝 において, 各 部 位 ごとに 傷 害 あり 群 と 傷 害 なし 群 に 分 類 して 比 較 したが, 差 はみ られなかった 考 察 本 研 究 より,80% 以 上 の 選 手 がシーズン 中 になんらかの 傷 害 を 有 していることが 明 らかと なった 一 方 で,そのうち 13 程 度 の 選 手 しか 医 療 機 関 へ 受 診 していないことが 判 明 した 傷 害 種 別 でみると, 肉 離 れと 慢 性 障 害 が 多 数 を 占 めており, 過 去 の 報 告 と 同 様 の 結 果 であ った 傷 害 を 有 しながらも 医 療 機 関 を 受 診 せずに 練 習 や 競 技 に 取 り 組 む 選 手 が 多 いことが うかがえ, 理 学 療 法 士 が 傷 害 予 防 やコンディショニングのため 介 入 していく 必 要 性 がある と 考 えられた 柔 軟 性 に 関 しては, 女 子 に 比 して 男 子 で 左 右 ハムストリングスのタイトネ スが 有 意 に 高 く, 左 右 股 関 節 内 旋 のタイトネスが 高 い 傾 向 であることが 明 らかになった 一 方 で 男 女 共 に 傷 害 の 有 無 およびパフォーマンス 高 低 で 柔 軟 性 に 差 はみられなかった よ って,これらタイトネスの 性 差 は 傷 害 やパフォーマンスとの 関 連 は 低 いと 考 えられた 今 後 健 常 人 や 他 種 目 との 比 較 から, 陸 上 競 技 特 性 としての 性 差 かどうか 検 討 していきたい 過 去 の 報 告 におけるトップアスリートの 柔 軟 性 の 平 均 値 と 本 結 果 を 比 較 すると, 一 般 大 学 選 手 は 大 腿 四 頭 筋 と 腓 腹 筋 のタイトネスが 高 く,ハムストリングスのタイトネスが 低 かっ た トップ 選 手 と 一 般 選 手 ではタイトネスに 違 いがある 可 能 性 が 考 えられた また, 傷 害 と 柔 軟 性 において, 過 去 の 報 告 では 腰 痛 と 股 関 節 内 旋 の 可 動 域 の 関 連 や 慢 性 障 害 のひとつ であるシンスプリントと 股 関 節 可 動 域 の 関 連 を 示 したものもみられる 以 上 のことから, 今 後 更 に 対 象 選 手 を 増 やした 検 討 が 必 要 と 考 えられた 本 研 究 は 大 学 陸 上 競 技 部 1 団 体 のみの 短 距 離 およびフィールドパート 選 手 が 対 象 のため, 対 象 団 体 を 増 や し, 中 長 距 離 選 手 も 含 めて 検 討 していきたい 理 学 療 法 学 研 究 としての 意 義 一 般 大 学 陸 上 競 技 選 手 は, 傷 害 を 有 しているが 医 療 機 関 を 受 診 しない 選 手 が 多 いこと, 慢 性 障 害 が 多 い 傾 向 にあることから,コンディショニングへの 介 入 の 有 用 性 が 考 えられた また 本 研 究 で 得 られたデータから 前 向 きに 傷 害 やパフォーマンスを 調 査 することで, 陸 上 競 技 における 傷 害 予 防, 肉 離 れや 慢 性 傷 害 のリスク 因 子,パフォーマンスへ 影 響 する 因 子 の 検 討 への 取 り 組 みとしていきたい

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