早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科

Transcription

1 早 稲 田 大 学 大 学 院 環 境 エネルギー 研 究 科 博 士 学 位 論 文 変 電 設 備 アセットマネジメントのための 数 理 計 画 法 を 用 いた 意 思 決 定 支 援 ツールに 関 する 研 究 Decisio Mkig Support Tools usig Mthemticl Plig Methods for Substtio Fcilities Asset Mgemet 年 月 田 中 秀 昭

2 早 稲 田 大 学 大 学 院 環 境 エネルギー 研 究 科 博 士 学 位 論 文 変 電 設 備 アセットマネジメントのための 数 理 計 画 法 を 用 いた 意 思 決 定 支 援 ツールに 関 する 研 究 Decisio Mkig Support Tools usig Mthemticl Plig Methods for Substtio Fcilities Asset Mgemet 年 月 早 稲 田 大 学 大 学 院 環 境 エネルギー 研 究 科 環 境 エネルギー 研 究 田 中 秀 昭

3 目 次 第 章 序 論.... はじめに.... 電 力 設 備 のアセットマネジメント....3 本 研 究 の 位 置 づけと 目 的....4 本 論 文 の 構 成... 4 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 設 備 の 老 朽 化 状 況.... 設 備 の 保 全 計 画 の 現 状....3 アセットマネジメントによる 今 後 の 保 全 計 画... 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 変 電 所 の 健 全 度 を 表 す 指 標 多 属 性 評 価 手 法 とその 応 用 評 価 項 目 の 選 定 評 価 項 目 の 定 量 的 評 点 評 価 項 目 の 重 みづけによる 総 合 化 AHPによる 一 次 変 電 所 健 全 度 評 価 手 法 一 次 変 電 所 健 全 度 評 価 手 法 の 定 式 化 実 系 統 の 一 次 変 電 所 への 適 用 結 果 まとめ 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 変 電 所 機 器 類 の 更 新 計 画 と 対 象 機 器 の 選 定 組 合 せ 最 適 化 手 法 とその 応 用 電 力 設 備 計 画 における 組 合 せ 最 適 化 問 題 とその 解 法 分 枝 限 定 法 分 枝 限 定 法 による 旧 形 遮 断 器 更 新 順 位 の 最 適 化 分 枝 限 定 法 による 旧 形 遮 断 器 更 新 順 位 最 適 化 の 定 式 化 小 規 模 モデルへの 適 用 結 果 実 規 模 モデルへの 適 用 結 果 まとめ... 7 i

4 第 5 章 設 備 更 新 時 の 仕 様 最 適 化 変 電 所 の 騒 音 対 策 騒 音 に 関 する 法 規 制 騒 音 源 騒 音 対 策 擬 似 逆 行 列 による 変 圧 器 騒 音 レベルの 最 適 化 疑 似 逆 行 列 を 用 いた 定 式 化 モデル 変 電 所 への 適 用 結 果 実 変 電 所 への 適 用 結 果 まとめ 線 形 計 画 法 による 変 圧 器 騒 音 レベルの 最 適 化 線 形 計 画 法 を 用 いた 定 式 化 モデル 変 電 所 への 適 用 結 果 実 変 電 所 への 適 用 結 果 まとめ まとめ... 7 第 6 章 結 論... 9 謝 辞... 5 付 録 - 配 電 用 変 電 所 別 重 要 度 信 頼 度 評 価 とこれによる 増 強 計 画 順 位 づけ... 6 付 録 - 需 要 断 面 を 考 慮 した 事 故 復 旧 シナリオ 分 析 による 配 電 用 変 電 所 機 器 類 の 総 合 信 頼 度 評 価... 6 付 録 -3 研 究 業 績 一 覧 ii

5 第 章 序 論 第 章 序 論. はじめに 電 力 自 由 化 が 進 展 する 中 で 競 争 の 無 い 自 然 独 占 分 野 となっている 流 通 設 備 ( 送 変 配 電 設 備 )は バブル 崩 壊 と 省 エネの 進 展 等 による 電 力 需 要 の 伸 びの 鈍 化 によって 設 備 新 設 工 事 が 激 減 する 一 方 高 度 成 長 時 代 に 建 設 した 設 備 の 老 朽 化 が 進 み 今 後 はその 大 量 更 新 が 必 要 になってくる このため 近 年 では 流 通 設 備 を 経 済 学 でいうアセット( 資 産 )とみなし その 維 持 更 新 あるいは 新 設 を 戦 略 的 に 進 めていく アセットマネジメント の 研 究 が 国 内 外 で 始 まっ ている また 設 備 更 新 に 際 しては コストと 信 頼 度 という 従 来 の 指 標 に 加 えて 騒 音 な どの 環 境 規 制 や 地 球 温 暖 化 問 題 への 対 応 など 新 たな 要 素 を 考 慮 する 必 要 が 生 じてきてい る 他 その 意 思 決 定 に 関 する 一 層 の 透 明 性 と 説 明 責 任 が 要 求 されつつある このような 背 景 から 本 研 究 は 題 目 を 変 電 設 備 アセットマネジメントのための 数 理 計 画 法 を 用 いた 意 思 決 定 支 援 ツールに 関 する 研 究 とし 現 在 現 場 においてその 必 要 性 が 高 まっているツールの 開 発 と 実 系 統 への 適 用 検 証 を 行 うこととした. 電 力 設 備 のアセットマネジメント アセットマネジメントは 個 別 機 器 の 寿 命 診 断 や 維 持 基 準 を 扱 うハード 面 のものと 電 力 ネットワークの 信 頼 度 維 持 というソフト 面 のものがあり 以 下 の4 種 に 分 類 されている 個 別 機 器 のアセットマネジメント 変 圧 器 ケーブルなどの 寿 命 診 断 技 術 開 発 と 設 備 維 持 基 準 の 構 築 設 備 のアセットマネジメント 群 としての 設 備 ごとの 改 修 取 替 えなど 保 守 管 理 費 用 の 最 適 化 3 ネットワークのアセットマネジメント 特 定 の 閉 じたネットワーク 内 の 最 適 な 取 替 え 順 位 決 定 4 投 資 戦 略 のアセットマネジメント 既 設 設 備 の 改 良 修 繕 を 扱 う3に 加 え 設 備 の 新 設 を 含 む 投 資 計 画 全 体 の 最 適 化 しかし アセットマネジメントに 関 する 研 究 は 世 界 でもまだ 端 緒 についたばかりのもの が 多 いことに 加 え 統 一 的 な 手 法 を 開 発 するというよりも 個 別 ニーズに 沿 ったアルゴリ ズムの 開 発 が 進 められているのが 実 態 であるが その 場 合 でも 汎 用 性 のあるものとするこ とが 望 ましいことはいうまでもない

6 第 章 序 論.3 本 研 究 の 位 置 づけと 目 的 本 研 究 は 前 述 した 4 種 のアセットマネジメントのうち 特 に 喫 緊 の 課 題 となってい る3のネットワークアセットマネジメントに 取 り 組 んだ 具 体 的 には 送 変 配 電 設 備 の 中 で 特 に 老 朽 化 が 進 んでいる 一 次 変 電 所 およびその 機 器 を 対 象 とし 個 別 テーマとして 以 下 の 3 テーマに 取 り 組 んだ 4 投 資 戦 略 の AM 3ネットワークの AM 個 別 機 器 の AM 設 備 の AM 図 - 電 力 流 通 設 備 のアセットマネジメント テーマ : 経 年 変 電 所 の 健 全 度 可 視 化 都 区 内 周 辺 外 辺 の 一 次 変 電 所 を 対 象 とし 環 境 要 素 を 含 む 複 数 の 健 全 度 評 価 項 目 を 統 合 するとともに 個 別 変 電 所 別 エリア 別 あるいは 全 系 の 変 電 所 群 としての 健 全 度 の 時 間 推 移 をマクロ 的 に 推 定 するアルゴリズ ムを 開 発 した 目 的 可 視 化 ( 見 える 化 ) Visuliztio 難 しさ 健 全 度 を 多 面 的 に 評 価 するためには 次 元 の 異 なる 属 性 を 定 量 的 に 統 合 しなければならないがその 統 一 的 な 手 法 がない 適 用 手 法 AHP(Alytic Hierrchy Process) テーマ : 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 変 電 所 内 機 器 のうち 陳 腐 化 が 進 みトラブル 時 の 信 頼 度 への 影 響 が 大 きい ことから 全 量 取 替 えの 方 針 が 決 定 している 旧 形 遮 断 器 を 対 象 として コス トと 信 頼 度 面 からの 最 適 取 替 え 順 位 づけアルゴリズムを 開 発 した 目 的 優 先 順 位 づけ Prioritiztio 難 しさ 取 替 え 遮 断 器 群 の 数 を M 群,タイムフレームを N 年 とす ると 組 合 せの 総 数 は N の M 乗 通 りと 膨 大 な 数 となる 適 用 手 法 分 枝 限 定 法

7 第 章 序 論 テーマ3 : 設 備 更 新 時 の 仕 様 最 適 化 変 圧 器 の 騒 音 問 題 という 環 境 規 制 へのコンプライアンス 遵 守 という 視 点 から 取 替 え 計 画 が 決 定 した 変 電 所 の 変 圧 器 騒 音 仕 様 を 最 適 化 (コスト 最 小 )するアルゴリズムを 開 発 した 目 的 最 適 化 (コスト 最 小 化 ) Cost Miimiztio 難 しさ 敷 地 境 界 上 の 規 制 値 を 満 足 する 複 数 の 変 圧 器 の 騒 音 レベル 組 合 せは 所 与 の 騒 音 レベル 組 合 せを 前 提 とした 境 界 騒 音 レベルの 予 測 計 算 を 試 行 錯 誤 的 に 行 なうことによって 見 出 すことから 膨 大 な 組 合 せの 検 討 作 業 が 必 要 となる 適 用 手 法 擬 似 逆 行 列 法 および 線 形 計 画 法 これらの 3 テーマの 関 係 は 設 備 保 全 業 務 の 流 れに 沿 ったものとした すなわち まず 老 朽 設 備 群 全 体 の 劣 化 度 合 い( 健 全 度 )をマクロ 的 かつ 定 量 的 に 把 握 するツールを 開 発 し 次 に 個 別 機 器 の 取 替 え 順 位 の 優 先 順 位 づけを 行 うツールを 開 発 する そして 最 後 に 取 替 えが 決 定 した 現 場 における 最 適 設 計 のツールを 開 発 するというものである テーマ とテ ーマ 3 の 対 象 は 現 時 点 でニーズの 高 い 旧 形 遮 断 器 取 替 え 問 題 および 一 次 変 電 所 変 圧 器 騒 音 対 策 とした なお アルゴリズムの 開 発 に 当 たっては それぞれのテーマが 保 有 する 問 題 解 決 の 難 しさを 解 決 するのに 適 した 数 理 計 画 法 を 選 定 し 適 用 した 図 - 今 回 設 定 した 3 つのテーマの 関 係 3

8 第 章 序 論.4 本 論 文 の 構 成 以 上 に 述 べた 概 要 にもとづき 以 降 の 章 では 次 の 構 成 で 記 述 を 行 う 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 本 章 では 電 力 流 通 設 備 の 経 年 状 況 あるいは 電 力 需 要 の 動 向 とこれに 対 応 した 設 備 投 資 修 繕 計 画 の 実 態 について 整 理 するとともに 現 場 におけるアセットマネジメ ントの 現 状 について 概 観 し 本 研 究 の 位 置 づけを 明 らかにした 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 研 究 の 第 ステップとした 本 章 では まず 複 数 の 次 元 の 異 なる 属 性 ( 評 価 項 目 ) を 定 量 的 に 統 合 化 する 手 法 について 調 査 整 理 を 行 った その 後 これらの 手 法 のひ とつである AHP(Alytic Hierrchy Process)を 用 いて 評 価 項 目 の 定 量 的 な 統 合 化 を 行 い 変 電 所 健 全 度 を 評 価 するアルゴリズムを 開 発 した 具 体 的 には 東 京 電 力 管 内 支 店 内 にある 74 箇 所 の 一 次 変 電 所 を 対 象 に 現 場 技 術 者 との 議 論 を 踏 まえて 選 定 した 機 器 類 のハードウエアとしてのリスク 7 項 目 ( 経 年 稼 働 率 3 旧 形 機 器 数 4 不 具 合 兆 候 機 器 数 5 同 形 対 策 機 器 数 6 騒 音 規 制 満 足 度,7PCB 混 入 絶 縁 油 量 )について 定 量 評 価 するとともに これらを AHP の 一 対 比 較 による 重 みで 統 合 した 変 電 所 ごと 支 店 ごと エリアごと( 都 区 内 周 辺 外 辺 )ならびに 全 系 につい て 健 全 度 比 較 や 経 年 推 移 の 推 定 ができること また 改 良 修 繕 計 画 (5 ヵ 年 )の 感 度 解 析 ( 改 修 促 進 ケース/ 改 修 抑 制 ケースなど)により 設 備 計 画 ( 改 良 修 繕 )の 妥 当 性 評 価 にも 適 用 可 能 であることを 確 認 した 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 第 3 章 で 開 発 したアルゴリズムは 変 電 所 の 健 全 度 評 価 をマクロ 的 に 監 視 するととも に 改 良 修 繕 計 画 の 妥 当 性 を 評 価 するためのツールとして 機 能 するが 個 別 変 電 所 における 特 定 の 機 器 の 取 替 え 順 位 を 決 定 するという 目 的 には 使 えない そこで 本 章 では 第 ステップとして 直 列 機 器 であり 万 一 故 障 した 際 には 広 域 停 電 につながり やすい 旧 形 遮 断 器 を 対 象 として 膨 大 な 組 合 せから 最 適 解 を 効 率 的 に 見 いだす 手 法 で ある 分 枝 限 定 法 により 最 適 取 替 え 順 位 を 決 定 するアルゴリズムを 開 発 した 具 体 的 には 都 区 内 一 次 変 電 所 8 箇 所 のうち 旧 形 遮 断 器 を 保 有 する 6 変 電 所 (ユ ニット 数 合 計 は 7)を 対 象 に 現 在 から 取 替 え 完 了 目 標 年 度 までの 8 年 間 の 取 替 え コスト 保 守 コスト 信 頼 度 コスト の 総 合 計 が 最 小 となる 取 替 え 順 位 を 単 年 度 予 算 制 約 や 個 別 地 点 ごとの 取 替 え 工 事 可 能 時 期 という 実 務 に 即 した 制 約 条 件 のもとで 探 索 するアルゴリズムを 開 発 適 用 し その 有 効 性 妥 当 性 を 確 認 した 4

9 第 章 序 論 第 5 章 設 備 更 新 時 の 仕 様 最 適 化 アセットマネジメントによる 機 器 取 替 え 計 画 が 確 定 した 後 の 実 施 段 階 では 当 該 現 場 における 最 適 設 計 が 課 題 となり 近 年 ではその 際 の 設 計 目 標 はコストダウンとコン プライアンスが 中 心 となっている この 観 点 に 立 ち 本 章 では 第 3 の 取 り 組 みとし て 距 離 減 衰 の 実 験 式 と 境 界 での 規 制 値 から 導 出 した 拘 束 条 件 の 下 で 境 界 での 規 制 値 を 無 駄 なく 最 小 コストで 実 現 する 最 適 な 変 圧 器 騒 音 レベル 組 合 せを 単 一 の 計 算 によ って 求 める 種 ( 疑 似 逆 行 列 法 ( 簡 略 法 )ならびに 線 形 計 画 法 ( 厳 密 法 ))の 逆 問 題 アルゴリズムを 開 発 した アルゴリズムの 検 証 には モデル 変 電 所 ( 変 圧 器 台 )ならびに 東 京 電 力 の 実 変 電 所 ( 変 圧 器 5 台 )のデータを 用 い 境 界 騒 音 規 制 値 を 無 駄 なく 満 足 する 変 圧 器 騒 音 の 組 合 せを 単 一 の 計 算 によって 求 めることができることを 確 認 した また 実 変 電 所 に おける 実 際 の 対 策 が 線 形 計 画 法 を 用 いたアルゴリズムによって 再 現 できた 第 6 章 結 論 最 後 のまとめとして 本 研 究 で 得 られた 知 見 ならびに 今 後 の 課 題 を 明 らかにした 5

10 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 電 力 システムの 拡 充 の 歴 史 を 振 り 返 ると 需 要 の 増 加 に 対 応 して 電 源 設 備 を 増 強 すると ともに 送 電 電 圧 を 昇 圧 しながら 必 要 な 送 変 電 設 備 を 増 強 してきていることがわかる 図 - 図 - は 電 力 会 社 社 の 最 大 電 力 の 推 移 と 発 電 設 備 容 量 の 推 移 を そして 図 -3 は 東 京 電 力 における 送 電 電 圧 の 昇 圧 の 歴 史 を 表 している 最 大 電 力 合 計 ( 万 kw),5, 7,5 5,,5, 7,5 5,, 年 度 図 - 最 大 電 力 の 推 移 ( 全 国 社 計 ) 発 電 設 備 容 量 合 計 ( 万 kw),5, 7,5 5,,5, 7,5 5,, 年 度 図 - 発 電 設 備 容 量 の 推 移 ( 全 国 社 計 ) 図 -3 基 幹 系 統 の 最 高 送 電 電 圧 の 推 移 ( 東 京 電 力 ) 6

11 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 東 京 電 力 における 電 源 開 発 は 遠 方 の 水 力 から 東 京 湾 岸 の 大 容 量 火 力 へと 変 わり 更 に は 福 島 柏 崎 刈 羽 といった 大 容 量 原 子 力 の 開 発 が 進 み これに 合 わせて 電 源 送 電 系 統 お よび 基 幹 系 統 の 電 圧 も 54kV から 75kV そして 5kV と 系 統 規 模 ( 最 大 電 力 )の 増 大 に 合 わせて 昇 圧 されていった 図 -4 から 図 -8 は 955 年 から 現 在 に 至 る 基 幹 系 統 の 発 展 の 推 移 を 示 すものである 図 -4 東 京 電 力 の 電 力 系 統 (955 年 ) 図 -5 東 京 電 力 の 電 力 系 統 (965 年 ) 7

12 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 図 -6 東 京 電 力 の 電 力 系 統 (975 年 ) 図 -7 東 京 電 力 の 電 力 系 統 (985 年 ) 8

13 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 図 -8 東 京 電 力 の 電 力 系 統 ( 現 在 ) この 間 東 京 電 力 の 設 備 投 資 額 は 993 年 の.7 兆 円 をピークに 景 気 低 迷 や 省 エネの 進 展 を 反 映 した 最 大 電 力 の 伸 びの 鈍 化 によって 設 備 の 新 設 ( 拡 充 工 事 )が 激 減 したことか ら 現 在 ではピーク 時 の /3 以 下 の 5 億 円 程 度 となっている その 一 方 で 経 年 設 備 ( 特 に 改 良 工 事 費 )の 比 率 が 上 昇 してきている 設 備 投 資 額 [ 億 円 ] 年 度 ( 西 暦 ) その 他 流 通 電 源 図 -9 設 備 投 資 額 の 推 移 ( 東 京 電 力 ) また 電 気 事 業 をめぐる 大 きな 環 境 変 化 として 99 年 代 に 始 まった 電 力 市 場 の 自 由 化 がある それまで 地 域 独 占 である 一 方 で 供 給 責 任 が 課 せられていた 電 気 事 業 に 新 規 参 入 が 認 められ 発 電 分 野 と 小 売 分 野 が 部 分 自 由 化 された 9

14 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 流 通 ネットワーク 分 野 は 共 通 インフラであることから 自 然 独 占 分 野 として 残 ったが そ の 計 画 と 運 用 に 関 しては 公 平 性 透 明 性 が 強 く 求 められることとなった 欧 米 諸 国 では 発 送 電 を 分 離 することによって 公 平 性 を 維 持 しようとする 方 法 が 主 流 となったが 我 が 国 では 電 源 と 系 統 を 一 体 で 計 画 運 用 することで 供 給 信 頼 度 が 維 持 できるとして 日 本 型 の 自 由 化 すなわち 従 来 の 地 域 ごとの 電 力 会 社 は 発 送 電 分 離 いわゆるアンバンドリン グをしない 垂 直 統 合 型 のままとし 広 域 的 な 系 統 の 計 画 と 運 用 を 中 立 機 関 にゆだねるとい う 方 法 をとった しかし 流 通 設 備 の 計 画 と 運 用 に 関 する 公 平 性 透 明 性 に 対 する 要 望 はますます 高 まっ てきており 需 要 の 低 成 長 時 代 における 経 年 設 備 更 新 という 新 たな 課 題 に 対 応 する 際 の 意 思 決 定 プロセスに 対 して 従 来 以 上 の 説 明 責 任 が 求 められるようになっている. 設 備 の 老 朽 化 状 況 我 が 国 の 電 力 設 備 は 96 年 代 の 高 度 成 長 期 および 平 成 バブル 期 に 大 量 に 建 設 された ものが 多 く これらがいずれ 更 新 の 時 期 を 迎 えることになる 図 - は 東 京 電 力 におけ る 変 圧 器 の 経 年 分 布 を 示 しており 明 らかに つのピークが 表 れている 変 圧 器 の 設 計 寿 命 は 3 年 といわれているが 他 の 電 力 設 備 と 同 様 通 常 はきめこまか な 保 守 点 検 ならびに 改 良 修 繕 を 施 すことにより 実 質 的 な 耐 用 年 数 は 4 年 ~5 年 と なっている 現 在 では まだ 5 年 超 過 設 備 の 比 率 は 少 ないが 今 後 年 以 内 にその 比 率 が 増 大 することは 明 らかである 図 - 変 圧 器 の 経 年 分 布 ( 東 京 電 力 )

15 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント. 設 備 の 保 全 計 画 の 現 状 これまでの 設 備 保 全 計 画 は 需 要 の 伸 びに 対 応 した 新 設 工 事 とともに 行 われる 取 替 え 工 事 によって 老 朽 設 備 の 更 新 がなされてきたという 側 面 を 持 っていた しかし 近 年 の 需 要 低 迷 による 拡 充 工 事 の 激 減 と 電 力 市 場 自 由 化 による 競 争 の 激 化 ならびに 共 通 インフラで ある 流 通 設 備 コスト 低 減 への 圧 力 の 中 で 経 年 が 進 む 設 備 の 更 新 をどのように 進 めるかが 重 要 な 課 題 となっている このため これまでは 設 備 に 不 具 合 が 起 きる 前 に 定 期 的 に 点 検 保 守 を 行 う TBM(Time Bsed Mitece)に 基 づく 予 防 保 全 の 考 えが 主 体 であったのに 対 し 最 近 では 設 備 の 状 態 を 監 視 しつつその 状 態 に 応 じた 保 守 点 検 を 行 う CBM(Coditio Bsed Mitece) による 事 後 保 全 ( 設 備 の 重 要 度 にもよるが 故 障 が 起 きてから 取 替 える) の 考 え 方 を 取 り 入 れるようになってきた.3 アセットマネジメントによる 今 後 の 保 全 計 画 前 述 のような 背 景 を 踏 まえると アセットマネジメントによる 今 後 の 設 備 保 全 計 画 の 実 施 に 際 しては 以 下 の 5 つの 課 題 があるといえる )ネットワークアセットマネジメントの 必 要 性 単 なる 設 備 更 新 ではなく 特 定 の 閉 じたネットワーク 全 体 としての 供 給 信 頼 度 維 持 に 配 慮 した 長 期 的 な 視 点 からの 円 滑 な 更 新 計 画 とする ) 新 たな 時 代 に 即 した 配 慮 事 項 への 対 応 従 来 からのコストと 信 頼 度 に 加 え 環 境 への 影 響 や 地 震 などの 災 害 への 備 えといった これまで 考 慮 されてこなかったリスクへの 備 えを 行 う 3) 技 術 技 能 の 維 持 大 量 にある 設 備 の 更 新 は 長 期 にわたる 大 事 業 であることから その 業 務 に 携 わる 技 術 者 技 能 者 の 人 材 育 成 を 図 っていく 4) 新 技 術 の 導 入 更 新 に 際 しては 従 来 と 同 じ 設 備 に 取 替 えるのではなく 最 新 の 技 術 を 用 いたコンパ クトで 保 守 が 容 易 な 高 信 頼 度 機 器 を 採 用 する また 設 備 の 容 量 も より 大 きな 設 備 に よる 拡 大 リプレースを 行 うことを 原 則 とする 5) 新 概 念 の 導 入 設 備 点 検 インターバルの 考 え 方 として 従 来 の TBM(Time Bsed Mitece: 定 期 的 な 保 全 )から CBM(Coditio Bsed Mitece: 状 態 監 視 保 全 ) 更 には RCM(Relibility Cetered Mitece: 信 頼 度 評 価 による 保 全 )に 変 えていく

16 第 章 電 力 設 備 のアセットマネジメント 参 考 文 献 [ 第 章 ] [] Grhm W. Ault, Joe P. Toeguzzo, I Welch, Asset Mgemet Ivestmet Decisio Processes, CI-6, CIGRE Sessio 4 [] 北 米 電 力 事 業 者 のアセットマネジメント 及 び 関 連 システムの 実 態 について 海 外 電 力 6 年 5 月 号 [3] 北 米 における 送 配 電 アセットマネジメントの 現 状 海 外 電 力 4 年 8 月 号 [4] Asset Mgemet of Trsmissio Systems d Associted CIGRE Activities CIGRE WG C-, July 6 [5] 電 力 流 通 設 備 におけるライフサイクルマネージメントの 動 向 と 将 来 展 望 電 気 協 同 研 究 第 59 巻 第 号 4 年 月 [6] M. Ygiur, T. Ibrki d F. Glover: A Ejectio Chi Approch for the Geerlized Assigmet Problem, INFORMS Jourl o Computig, Vol.6, No.,pp. 3-5 (4) [7] M. Ygi, M. Hmo, T. Kizuk, A. Mtsud Methodology of Poer System Redesig Aimed t Reducig Cpitl Ivestmet d Mitece Cos for Aged Assets, CIGRE pper C-7, 6 [8] 高 経 年 期 を 迎 える 電 力 流 通 設 備 の 円 滑 な 取 替 えに 備 えて~ 高 度 成 長 期 に 建 設 された 設 備 のアセットマネジメント~ 電 気 協 同 研 究 第 63 巻 第 5 号 8 年 [9] 先 進 保 守 技 術 ~ 徹 底 したコスト 低 減 を 目 指 して~ 電 力 中 央 研 究 所 平 成 9 年 度 研 究 成 果 発 表 会 7 年 [] 電 力 システムのネットワークアセットマネジメント~ 電 力 流 通 分 野 における 研 究 動 向 調 査 ならびに 開 発 する 支 援 ツールの 枠 組 み~ 電 力 中 央 研 究 所 調 査 報 告 R64, 7 年 [] 変 電 設 備 の 点 検 合 理 化 電 気 協 同 研 究 第 56 巻 第 号 年 [] 電 力 用 変 圧 器 改 修 ガイドライン 電 気 協 同 研 究 第 65 巻 第 号 9 年

17 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 電 力 自 由 化 の 進 展 に 伴 い 自 然 独 占 分 野 である 流 通 ネットワークの 設 備 計 画 に 関 する 意 思 決 定 に 対 しても 一 層 の 透 明 性 と 説 明 責 任 が 求 められるようになってきている また 意 思 決 定 の 評 価 軸 として これまでのコストと 信 頼 度 に 加 え 騒 音 など 環 境 面 への 配 慮 も 必 要 となってきている このような 状 況 の 中 高 度 成 長 期 に 大 量 に 建 設 された 一 次 変 電 所 な どの 古 い 変 電 所 はいずれ 設 備 の 更 新 時 期 を 迎 えることとなるが これら 大 量 の 経 年 設 備 の 更 新 は 時 間 的 経 済 的 あるいは 工 事 中 の 信 頼 度 などの 制 約 から 一 度 に 複 数 の 地 点 で 実 施 することができないため 何 らかの 方 法 で 順 位 づけを 行 うことが 必 要 となる 上 記 順 位 づけのための 判 断 材 料 の 一 つとして 各 変 電 所 の 健 全 度 を 比 較 するための 定 量 的 な 指 標 を 作 ることが 考 えられる しかし その 場 合 変 電 所 内 機 器 の 痛 み 具 合 や 環 境 面 での 配 慮 事 項 機 器 の 陳 腐 化 度 合 い( 部 品 や 技 術 員 などメーカーの 対 応 可 能 度 合 い) 設 備 の 稼 働 率 など 複 数 の 項 目 を 定 量 的 に 統 合 化 することが 必 要 となる 本 研 究 では 複 数 の 次 元 の 異 なる 属 性 ( 評 価 項 目 )を 定 量 的 に 統 合 化 する 手 法 ( 例 えば AHP(Alytic Hierrchy Process)などを 調 査 するとともに これらを 用 いて 評 価 項 目 の 定 量 的 な 統 合 化 を 行 い 上 記 変 電 所 健 全 度 を 評 価 するアルゴリズムを 開 発 した あわせて これら 各 変 電 所 の 健 全 度 を 合 成 した 変 電 所 全 体 の 健 全 度 をマクロに 定 義 し 設 備 投 資 ある いは 修 繕 費 用 を 削 減 した 際 の 健 全 度 の 将 来 変 化 を 予 測 し 改 良 修 繕 計 画 の 判 断 材 料 とす ることも 目 的 とした 具 体 的 には 東 京 電 力 管 内 支 店 にある 74 箇 所 の 一 次 変 電 所 を 対 象 に 機 器 類 のハー ドウエアとしてのリスク 7 項 目 についてそれぞれ 定 量 評 価 するとともに これらを AHP(Alytic Hierrchy Process)により 統 合 するアルゴリズムを 開 発 した 統 合 した 健 全 度 は 時 間 の 関 数 とし 経 年 変 化 ( 中 期 計 画 5 ヵ 年 : 改 良 修 繕 の 長 期 計 画 を 反 映 )も 表 現 できるようにした また これらの 変 電 所 個 別 評 価 に 加 えて 支 店 ごと 都 区 内 周 辺 外 辺 の 3 エリア ならびに 全 系 の 健 全 度 について その 比 較 や 経 年 推 移 の 推 定 を 行 うとともに 改 良 修 繕 計 画 の 感 度 解 析 を 行 い 設 備 計 画 ( 改 良 修 繕 )の 妥 当 性 を 評 価 する 手 法 としても 有 効 であることを 確 認 した なお 本 ツール 自 体 は 改 良 修 繕 計 画 のためのものであるが AHP を 応 用 したアルゴ リズムは 汎 用 性 の 高 いものであり 付 録 に 示 すように 筆 者 らはすでに 配 電 用 変 電 所 増 強 計 画 の 決 定 ツールを 開 発 実 適 用 している 3

18 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 3. 変 電 所 の 健 全 度 を 表 す 指 標 老 朽 化 が 進 んだ 一 次 変 電 所 の 健 全 度 を 評 価 する 項 目 として 電 力 会 社 の 実 務 者 と 協 議 の うえ ハードウエアとしての 健 全 度 を 表 すもの ならびに 環 境 面 の 規 制 に 対 応 するものと して 以 下 の 7 項 目 を 選 定 した なお 供 給 信 頼 度 も 健 全 度 を 表 すものであるが 地 点 ごとに 次 系 統 の 構 成 などに 大 き く 依 存 することから 今 回 の 評 価 の 対 象 からは 除 外 した * 付 録 に 配 電 用 変 電 所 別 重 要 度 信 頼 度 評 価 とこれによる 増 強 計 画 順 位 づけ の 概 要 を 記 した 図 3- 変 電 設 備 の 健 全 度 とその 評 価 パラメータ < 見 えない 劣 化 度 合 いを 表 すもの> 主 変 圧 器 (54/66 kv)の 経 年 老 朽 度 を 直 接 表 す 指 標 明 治 大 正 時 代 に 運 転 開 始 した 変 電 所 の 変 圧 器 はその 後 全 てがリプレースされて いることを 考 慮 し 変 電 所 経 年 ではなく 主 変 圧 器 の 経 年 とした 主 変 圧 器 の 稼 働 率 設 備 へのストレスの 度 合 いを 表 す 指 標 夏 季 ピーク 時 の 負 荷 / 認 可 出 力 4

19 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 < 見 えている 劣 化 度 合 いを 表 すもの> 3 旧 形 機 器 ( 空 気 遮 断 器 など) 数 既 に 製 造 中 止 になっており 予 備 部 品 も 無 く 技 術 者 の 多 くがリタイアしている などの 事 情 から 計 画 的 な 取 替 え 方 針 が 出 ている 機 器 の 台 数 4 不 具 合 兆 候 機 器 ( 漏 油 や 要 注 意 レベルでの 可 燃 性 ガス 発 生 変 圧 器 など) 数 不 具 合 兆 候 があるが 経 過 観 察 しながら 運 転 継 続 しているものの 台 数 5 同 形 対 策 機 器 数 製 造 当 時 の 知 見 では 分 からなかった 設 計 や 製 造 上 の 不 備 などによりトラブルが 発 生 した 機 器 で 緊 急 性 は 無 いが 適 切 な 保 全 方 策 外 部 診 断 を 実 施 しながら 計 画 的 な 取 替 えや 改 修 を 予 定 している 台 数 < 環 境 関 連 の 規 制 に 対 応 するもの> 6 騒 音 規 制 満 足 度 (dbmx/db 規 制 値 ) 敷 地 境 界 上 の 最 大 騒 音 値 / 騒 音 規 制 値 7 PCB 混 入 絶 縁 油 保 有 量 微 量 であるが PCB が 混 入 している 変 圧 器 絶 縁 油 総 量 なお これらの 指 標 については 以 下 に 留 意 する 必 要 がある 7 項 目 はいずれも 数 字 が 大 きいほど 健 全 度 が 悪 い 経 年 とともに 増 加 するものと 減 少 するものが 混 在 している 増 加 するもの 経 年 稼 働 率 減 少 するもの 3 旧 形 機 器 数 4 不 具 合 兆 候 機 器 数 5 同 形 対 策 機 器 数 6 騒 音 規 制 満 足 度 7PCB 混 入 絶 縁 油 量 不 具 合 兆 候 機 器 数 や 同 形 対 策 機 器 数 などは 現 時 点 での 中 期 計 画 ベースのもの すなわち 現 在 把 握 している 数 であり 今 後 新 たに 発 生 するものの 予 測 は 含 まない 5

20 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 3. 多 属 性 評 価 手 法 とその 応 用 3.. 評 価 項 目 の 選 定 対 象 とする 選 択 枝 (オプション)や 物 ( 本 研 究 の 対 象 となる 変 電 所 群 など)を 比 較 評 価 する 際 の 評 価 項 目 を 如 何 に 選 定 するかは その 後 のプロセスおよび 最 終 の 評 価 結 果 に 大 い に 影 響 する 特 に その 数 や 評 価 項 目 間 の 相 互 依 存 性 などをどのように 扱 うかなどの 課 題 がある これらに 関 する 代 表 的 な 手 法 としては 階 層 構 造 化 モデルによる 相 互 依 存 性 評 価 な どがあるが 本 章 で 設 定 した 健 全 度 評 価 のための 7 つの 評 価 項 目 については 現 場 技 術 者 との 詳 細 な 議 論 を 踏 まえ それぞれ 独 立 したものとなっていることから 上 述 の 相 互 依 存 性 評 価 は 行 わないこととした 3.. 評 価 項 目 の 定 量 的 評 点 評 価 項 目 を 選 定 した 後 には それぞれの 評 価 項 目 について 複 数 の 比 較 対 象 を 点 数 づけす る 必 要 がある その 際 各 項 目 の 次 元 が 異 なることから それぞれの 生 のデータを 用 いる ことはできず 何 らかの 共 通 の 尺 度 によって 正 規 化 する 必 要 がある 加 えて 複 数 の 比 較 対 象 に 対 する 点 数 分 布 をどのように 考 えるか 例 えば 生 データの 最 大 と 最 小 の 間 を 等 し い 間 隔 の 点 数 分 布 とするのか あるいは 分 布 を 考 慮 した 間 隔 とするのかなどの 問 題 がある 通 常 とられる 評 点 法 としては 生 データの 最 大 値 を. に 置 くことで 正 規 化 する 正 規 化 した 生 データを 均 等 に 区 分 ( 例 えば 点 点 3 点 4 点 5 点 )し その 領 域 に 入 ってくるデータを 点 数 づけする あるいは 生 データの 分 布 を 見 て 区 分 した 各 領 域 の 中 のデータ 数 が 均 等 になるような 区 分 とする などがある しかし 本 章 で 設 定 した 健 全 度 評 価 には 将 来 予 測 を 含 む 時 間 推 移 を 表 現 するというニ ーズがあるため の 適 用 は 可 能 であるが のような 離 散 的 な 評 点 方 法 は 採 用 できず 何 らかのオリジナルな 工 夫 が 必 要 であることがわかった 3..3 評 価 項 目 の 重 みづけによる 総 合 化 評 価 項 目 間 の 重 みづけをシステマティックに 作 成 することができ かつ その 結 果 の 妥 当 性 を 確 認 する 機 能 を 持 つことなどから このような 目 的 に 内 外 で 広 く 用 いられている AHP 法 について 以 下 に 詳 述 する 6

21 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 <AHP(Alytic Hierrchy Process): 階 層 分 析 法 > AHP(Alytic Hierrchy Process)は 97 年 代 にピッツバーグ 大 学 のサーティ(Sty) 教 授 により 開 発 された 意 思 決 定 の 方 法 であり 984 年 に 東 京 で 開 催 された 国 際 会 議 でのサ ーティ 教 授 の 講 演 で 日 本 に 紹 介 されて 以 来 いろいろな 状 況 のもとでの 意 思 決 定 に 広 く 活 用 されている また AHP は 政 策 研 究 大 学 院 の 刀 根 教 授 の 著 書 では ゲーム 感 覚 意 思 決 定 法 といわれ これは 意 思 決 定 をゲーム 感 覚 で という 意 味 をこめた 含 蓄 のある 命 名 となっている AHP の 別 の 日 本 語 訳 として 階 層 化 意 思 決 定 法 がよく 使 用 されている 以 下 例 題 を 用 いてこ の AHP の 手 順 について 記 述 する 階 層 化 今 下 記 の 3 種 の 車 からどれを 買 うか 悩 んでいる 人 がいたとする 3 種 の 車 の 特 徴 は 次 のとおりである 表 3- 評 価 基 準 に 従 う 車 調 査 安 全 性 デザイン 値 段 大 きさ 種 類 エアバッグ ABS 色 のバリエーション スタイル L 車 ついている なし 万 円 ちょうどよい 好 みの 色 なし よ い I 車 ついている なし 万 円 やや 大 きい 好 みの 色 あり よ い D 車 ついている ついている 万 円 大 きすぎる 好 みの 色 なし 普 通 評 価 基 準 を 多 くすると 混 乱 してしまうので 安 全 性 値 段 車 の 大 きさ デザインの 4 つ の 評 価 基 準 にしたがってどの 車 が 優 れているかを 調 べてみる 表 3- からわかるように L 車 は 値 段 と 大 きさ( 安 全 性 が 保 証 されればなるべく 小 さい 方 がよい)で 優 れている I 車 はデザインが 気 に 入 っている 車 で D 車 は 安 全 性 が 優 れて いる 車 である 一 般 に 意 思 決 定 にはまず 問 題 があり 選 択 の 対 象 となるいくつかの 代 替 案 が ある 代 替 案 の 中 からどれを 選 択 するかを 判 断 するためのいくつかの 評 価 基 準 があり ある 評 価 基 準 のもとでは ある 代 替 案 がよく 別 の 評 価 基 準 のもとでは 別 の 代 替 案 がよい ので 意 思 決 定 の 問 題 が 起 こる すなわち 図 で 表 現 すると 以 下 のようになる 7

22 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 図 3- 階 層 図 これを 階 層 的 構 造 ( 階 層 図 )といい AHP ではこの 構 造 が 基 本 である 評 価 基 準 の 重 要 度 がデザインに 圧 倒 的 にあるならば I 車 を 選 択 するし 安 全 性 の 重 要 度 が 圧 倒 的 ならば D 車 を 選 択 する それでは 意 思 決 定 者 におけるそれぞれの 評 価 基 準 の 重 要 度 はどのくらいであろうか? それを 推 定 するために AHP では 一 対 比 較 を 行 う 一 対 比 較 階 層 構 造 ができたら 図 3- におけるレベル の 評 価 項 目 について 次 のような 一 対 比 較 を 行 う この 比 較 にその 人 の 価 値 観 が 反 映 される 表 3- 一 対 比 較 ( 人 の 価 値 観 ) 一 対 比 較 値 意 味 両 方 の 項 目 が 同 じぐらい 重 要 3 前 の 項 目 が 後 の 項 目 より 若 干 重 要 5 前 の 項 目 が 後 の 項 目 より 重 要 7 前 の 項 目 が 後 の 項 目 よりかなり 重 要 9 前 の 項 目 が 後 の 項 目 より 絶 対 的 に 重 要, 4, 6, 8 補 間 的 に 用 いる 上 記 の 数 値 の 逆 数 後 の 項 目 から 前 の 項 目 を 見 た 場 合 に 用 いる 8

23 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 表 3-3 一 対 比 較 表 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン 安 全 性 5 値 段 大 きさ デザイン 例 えば 安 全 性 と 値 段 の 比 較 で 安 全 性 の 高 さの 方 が 値 段 の 安 さよりも 重 要 で あると 考 える 場 合 は 表 3-3 の 安 全 性 と 値 段 の 交 点 のマス 目 に 5 を 記 入 する 次 に 安 全 性 と 大 きさ では 車 の 大 きさが 小 さい 方 が 安 全 性 の 装 備 より 若 干 重 要 であ るとして 安 全 性 と 大 きさ の 交 点 のマス 目 に /3 を 記 入 する さらに 安 全 性 と デザイン では 安 全 性 の 方 がデザインより 若 干 重 要 であるので 安 全 性 と デザ イン の 交 点 のマス 目 に 3 を 入 れる 当 然 安 全 性 と 安 全 性 の 交 点 には がはいり 値 段 と 安 全 性 の 交 点 には /5 を 入 れる これは 安 全 性 と 値 段 の 交 点 に 5 を 記 入 したので その 逆 数 を 記 入 するのである 同 様 にして すべての 項 目 ごとに 一 対 比 較 を 行 った 結 果 は 表 3-4 のようになる 表 3-4 一 対 比 較 を 行 った 結 果 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン 安 全 性 5 /3 3 値 段 /5 /5 /3 大 きさ デザイン /3 3 /7 3 重 要 度 (ウエイト)の 決 定 表 3-4 に 示 した 一 対 比 較 値 から 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン の 重 要 度 (ウエイト)を 推 定 する 一 般 に 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン のウエイトをそれぞれ,,3, 4 とすれば 一 対 比 較 行 列 は 9

24 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 = A となるはずである ここからウエイト,, 3, 4 を 求 める その 手 順 は 次 のとおりである ただし 3 4 = であり = α とする 各 行 の 4 つの 要 素 の 積 を 計 算 しその 4 乗 根 をとる ( 幾 何 平 均 ) ステップ 4 つの 幾 何 平 均 の 和 を 計 算 すると 34= より この 和 は /α になるので 各 幾 何 平 均 をタテの 合 計 で 割 るとそれぞれのウエイトを 得 る ステップ 表 3-5 幾 何 平 均 による 重 みの 決 定 行 の4つの 要 素 の 積 幾 何 平 均 ウエイト α α α α 4 4 この 欄 のタテの 合 計 は このタテの 合 計 で 各 幾 何 平 均 を 割 る α α α α α 4 3 =

25 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 上 述 の 手 順 にしたがって 表 3-4 の 一 対 比 較 行 列 から 安 全 性 値 段 大 きさ デ ザイン のウエイトを 計 算 する 表 3-6 重 みの 決 定 例 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン 幾 何 平 均 ウエイト 安 全 性 5 / =.5 = 値 段 /5 /5 / = 4 大 きさ = 3. デザイン /3 3 / =.34 = = = タテの 合 計 =5.65 この 結 果 大 きさ に 57% 安 全 性 に 6% デザイン に % さらに 値 段 に 6%のウエイトをおいて 車 の 選 択 をしていることになる すなわち 小 さい 車 を 選 択 し たいのだが その 一 方 で 安 全 性 も 気 になる そのことが 選 択 を 難 しくしているので AHP を 用 いて 決 断 しようというのである 4ウエイトの 総 合 化 この 例 における 意 思 決 定 者 は 大 きさ に 57% 安 全 性 に 6% デザイン に % さらに 値 段 に 6%のウエイトをおいて 車 の 選 択 をしようとしている 次 に 評 価 基 準 ごとにどの 車 が 好 ましいかの 比 較 を 行 い それらの 結 果 を 総 合 化 して 最 終 的 に 意 思 決 定 者 にとってどの 車 が 好 ましいかを 判 断 する まず 安 全 性 について L 車 I 車 D 車 の 一 対 比 較 を 行 い 同 様 にして L 車 I 車 D 車 のウエイト( 安 全 性 から 見 た 各 車 の 好 ましさ)を 求 める 次 に 一 対 比 較 を 行 う L 車 は I 車 と 同 じぐらい 重 要 であるので L 車 と I 車 の 交 点 のマ ス 目 には を 記 入 し D は L 車 に 比 べてかなり 重 要 であるので L 車 と D 車 の 交 点 の マス 目 には /7 を 記 入 する その 結 果 表 3-7 を 得 る

26 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 表 3-7 安 全 性 に 関 する 各 車 の 評 価 安 全 性 L 車 I 車 D 車 幾 何 平 均 ウエイト L 車 / = I 車 / = 3 D 車 = = = = タテの 合 計 =4.75 同 様 にして 値 段 大 きさ デザイン について 一 対 比 較 を 行 い 各 車 のウエイト を 求 めると 表 3-8 表 3-9 表 3- のようになる 表 3-8 値 段 に 関 する 各 車 の 評 価 値 段 L 車 I 車 D 車 幾 何 平 均 ウエイト L 車 =. 759 I 車 / = D 車 /7 /5 3 = = = = タテの 合 計 =4.5 表 3-9 大 きさに 関 する 各 車 の 評 価 大 きさ L 車 I 車 D 車 幾 何 平 均 ウエイト L 車 = I 車 / =. 5 D 車 /9 /5 3 = = = = タテの 合 計 =4.838

27 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 表 3- デザインに 関 する 各 車 の 評 価 デザイン L 車 I 車 D 車 幾 何 平 均 ウエイト L 車 / = I 車 = 3. 7 D 車 /3 /7 3 = = = = タテの 合 計 =4.476 表 3-8 の 値 段 に 関 する 一 対 比 較 を 見 ると L 車 は 万 円 で D 車 は 万 円 であ るからその 比 は 約 対 であるが L 車 と D 車 の 交 点 のマス 目 に を 入 れるのではな く 万 円 が 万 円 に 対 してどの 程 度 好 ましいかという 判 断 をマス 目 に 記 入 する 今 意 思 決 定 者 が 7 を 記 入 しているので 万 円 より 万 円 の 方 が かなり 重 要 であると 判 断 したからで もし 値 段 にはあまり 関 心 のない 人 であれば L 車 と D 車 の 交 点 には を 代 入 するだろうし 逆 にどうしても 安 い 車 の 方 がよいと 思 う 人 は 9 を 記 入 する 各 車 の 評 価 項 目 ごとの 得 点 を 表 にまとめると 表 3- のとおりである 表 3- 各 車 の 評 価 項 目 ごとの 得 点 安 全 性.65 値 段.6 大 きさ.566 デザイン.8 L 車 I 車 D 車 各 車 の 評 価 項 目 ごとの 得 点 に 評 価 項 目 のウエイトを 掛 けると 表 3- を 得 る そして この 表 の 数 値 をヨコの 方 向 に 加 えると 各 車 の 総 合 得 点 となる その 結 果 L 車 の 総 合 ウエイトは.5 で I 車 と D 車 の 総 合 ウエイトはそれぞれ.4.5 であり この 人 物 にとって 最 も 好 ましい 車 は L 車 であることがわかった 3

28 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 表 3- 各 車 の 総 合 得 点 L 車 I 車 D 車 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン 総 合 得 点 AHP の 整 合 性 L 車 I 車 D 車 の 総 合 ウエイトは それぞれ であり その 結 果 L 車 が 最 も 好 ましい 車 であると 判 断 した この 判 断 は 項 目 ごとの 一 対 比 較 の 重 ね 合 わせから 生 じた 判 断 であるので 整 合 性 をもっているかどうかの 確 認 が 必 要 となる 評 価 基 準 である 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン のウエイトを 求 めるために 行 った 一 対 比 較 ( 表 3-6)を 調 べてみる もし 整 合 性 をもった 一 対 比 較 を 行 っていれば 表 3-6 の 安 全 性 の 行 (,5,/3,3)と 大 きさ の 行 (3,5,,7)は 定 数 倍 であるはずであ るが 安 全 性 の 行 を 3 倍 すると(3,5,,9)となり 番 目 の 要 素 が 大 きさ の 行 の 番 目 の 要 素 と 大 きく 違 っているので 整 合 性 をもった 一 対 比 較 を 行 っていない しかし 人 間 の 判 断 はいつも 整 合 性 をもっているとは 限 らないので どの 程 度 の 整 合 性 のずれ(これ を 整 合 度 という)を 許 容 するかが 問 題 となる もし 安 全 性 値 段 大 きさ デザイン のウエイトがそれぞれ,,3, 4 であれば 一 対 比 較 行 列 は 下 記 のとおりとなるはずである A =

29 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 5 整 合 性 をもった 一 対 比 較 を 行 えば 一 対 比 較 行 列 は 上 記 の A になるが この 行 列 A の 特 徴 を 調 べてみる 一 般 に 項 目 間 の 一 対 比 較 を 行 えば 一 対 比 較 行 列 は = A である ステップ 各 列 にウエイトを 掛 ける するとAは ステップ ステップ で 求 めた 行 列 の 行 和 (ヨコの 合 計 )を 求 める すると ステップ 3 ステップ で 求 めたベクトルの 各 要 素 をウエイトで 割 る すると ステップ 4 = ステップ 3 で 求 めたベクトルの 要 素 の 相 加 平 均 を 求 める すると 上 述 の 手 順 にしたがって A の 特 性 量 を 求 めると ( 項 目 数 )になる 性 質 をもっている すなわち 整 合 性 をもった 一 対 比 較 を 行 い そこで 得 られた 行 列 に 対 して 上 述 の 手 順 に したがって 特 性 量 を 求 めるとそれは 項 目 数 になる 性 質 をもっている

30 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 この 性 質 に 着 目 して 一 対 比 較 行 列 から 得 られるステップ 4 の 平 均 を 用 いて 整 合 度 ( 整 合 性 のずれ)を 以 下 の 式 で 定 義 しこれを 整 合 性 のずれの 尺 度 とする 上 記 の 計 算 からわかる ように 整 合 性 をもった 一 対 比 較 を 行 えば 整 合 度 は になる 平 均 項 目 数 整 合 度 = 項 目 数 上 述 の 手 順 にしたがって 表 3-6 の 整 合 度 を 計 算 してみる よって 表 3-6 の 一 対 比 較 行 列 の 整 合 度 は 下 記 のとおりとなる 整 合 度 = =.78 4 この 整 合 度 は 前 にも 述 べたように 整 合 性 をもった 一 対 比 較 を 行 えば になるが 整 合 性 がくずれてくると 一 般 に 正 の 値 をもつことが 知 られている そして 一 般 にはこの 整 合 度 が. 以 下 であれば 許 容 される 整 合 性 のずれであり 目 的 によっては.5 まで 許 容 してもよいといわれている なお 整 合 度 は 一 般 に 記 号 C.I.(Cosistecy Idex の 略 )で 表 される 6

31 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 6 AHP の 特 徴 と 留 意 点 種 々の 意 思 決 定 手 法 に 比 べて AHP 手 法 にはどのような 特 徴 があるか 整 理 すると 次 のよ うになる () 評 価 基 準 がたくさんあり 互 いに 共 通 の 尺 度 がないような 問 題 の 解 決 に 使 える () 比 率 を 一 対 比 較 で 答 える 際 同 じくらい やや かなり 非 常 に 極 めて といっ たファジィな 表 現 を 用 いることによって 意 思 決 定 者 の 負 担 を 軽 くしている 実 際 明 確 な 尺 度 をもたない 要 素 間 の 比 率 を 厳 密 に 答 えるのは 不 可 能 である したがって こ れまでの 定 量 的 分 析 では 扱 い 切 れない 要 因 がからむような 問 題 の 解 決 に 使 える (3) 首 尾 一 貫 性 のないデータを 扱 え しかも 首 尾 一 貫 性 の 度 合 いが 同 時 にわかるので 修 正 が 容 易 である 首 尾 一 貫 性 は 良 い 推 定 のための 単 なる 必 要 条 件 にすぎないが これ があまり 悪 いと 一 対 比 較 を 再 度 しなおさねばならない (4) 複 雑 でかつ 構 造 の 不 明 確 な 問 題 を 階 層 化 することにより 整 理 し ある 限 られた 条 件 で 部 分 的 な 比 較 考 案 を 重 ねた 後 に 全 体 的 な 評 価 を 行 うことができる (5)システム アプローチと 主 観 的 判 断 を 組 み 合 わせることにより これまでは 組 織 的 には 取 り 上 げにくかった 勘 や 経 験 を 生 かした 意 思 決 定 ができる (6)データがない または 取 りにくい 環 境 下 で 意 思 決 定 しなければならないような 問 題 の 解 決 に 使 える (7) 決 定 に 先 立 って さまざまな 場 合 を 想 定 して 意 思 決 定 の 影 響 を 予 測 したいような 問 題 の 解 決 にあたれる (8)グループで 意 思 決 定 する 時 関 係 者 の 間 の 意 見 を 表 示 し 取 りまとめるためにも 都 合 がよい むしろ 関 係 者 が 巣 まってグループで 行 うことが 望 ましい AHP を 実 施 するうえで 注 意 すべきポイントは 以 下 のとおりである () 同 一 レベルに 取 り 入 れる 要 素 は 互 いに 独 立 性 の 高 いものを 選 ぶ () 一 対 比 較 の 対 象 となる 要 素 数 は 7 個 まで 多 くても 9 個 以 下 にしておく (3) 一 対 比 較 値 が 確 信 できない 時 その 値 に 関 する 感 度 分 析 を 行 う (4) 総 合 的 重 要 度 は 選 好 度 を 示 しており この 値 の 大 きい 順 に 好 ましい 代 替 となるが この 値 の 差 (あるいは 比 )については 注 意 して 取 り 扱 う 必 要 がある 総 合 的 重 要 度 の 判 定 は 意 思 決 定 者 が 行 うが 場 合 によっては 重 要 度 の 低 い 要 素 を 除 いて 再 び AHP を 実 施 することも 必 要 (5) グループの 意 思 決 定 に AHP を 使 う 時 一 対 比 較 値 としてはグループを 構 成 するメン バーの 値 の 幾 何 平 均 を 用 いる 7

32 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 3.3 AHP による 一 次 変 電 所 健 全 度 評 価 手 法 3.3. 一 次 変 電 所 健 全 度 評 価 手 法 の 定 式 化 一 次 変 電 所 の 健 全 度 評 価 手 法 の 定 式 化 にあたっては 多 属 性 評 価 手 法 とその 応 用 に 関 す る 調 査 結 果 を 踏 まえるとともに 適 用 例 の 豊 富 な AHP(Alytic Hierrchy Process) 手 法 を 適 用 することとした () 変 電 所 の 健 全 度 評 価 項 目 老 朽 化 が 進 んだ 一 次 変 電 所 の 健 全 度 を 評 価 する 項 目 として ハードウエアとしての 健 全 度 を 表 すもの ならびに 環 境 面 の 規 制 に 対 応 するものとして 下 記 の7 項 目 を 選 定 した < 見 えない 劣 化 度 合 いを 表 すもの> 主 変 圧 器 (54/66 kv)の 経 年 老 朽 度 を 直 接 表 す 指 標 明 治 大 正 時 代 に 運 転 開 始 した 変 電 所 の 変 圧 器 はその 後 全 てがリプレースされて いることを 考 慮 し 変 電 所 経 年 ではなく 主 変 圧 器 の 経 年 とする 主 変 圧 器 の 稼 働 率 設 備 へのストレスの 度 合 いを 表 す 指 標 夏 季 ピーク 時 の 負 荷 / 認 可 出 力 < 見 えている 劣 化 度 合 いを 表 すもの> 3 旧 形 機 器 ( 空 気 遮 断 器 など) 数 既 に 製 造 中 止 になっており 予 備 部 品 も 無 く 技 術 者 の 多 くがリタイアしている などの 事 情 から 計 画 的 な 取 替 え 方 針 が 出 ている 機 器 の 台 数 4 不 具 合 兆 候 機 器 ( 漏 油 や 要 注 意 レベルでの 可 燃 性 ガス 発 生 変 圧 器 ) 数 不 具 合 兆 候 があるが 経 過 観 察 しながら 運 転 継 続 しているものの 台 数 5 同 形 対 策 機 器 数 製 造 当 時 の 知 見 では 分 からなかった 設 計 や 製 造 上 の 不 備 などにより トラブル が 発 生 した 機 器 で 緊 急 性 は 無 いが 適 切 な 保 全 方 策 外 部 診 断 を 実 施 しながら 計 画 的 な 取 替 えや 改 修 を 予 定 している 台 数 < 環 境 関 連 の 規 制 に 対 応 するもの> 6 騒 音 規 制 満 足 度 (dbmx/db 規 制 値 ) 敷 地 境 界 上 の 最 大 騒 音 値 / 騒 音 規 制 値 7 PCB 混 入 絶 縁 油 保 有 量 微 量 であるが PCB が 混 入 している 変 圧 器 絶 縁 油 総 量 8

33 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 () 評 価 項 目 の 点 数 化 それぞれの 評 価 項 目 の 単 位 [ 経 年 ( 年 ) 稼 働 率 (%) 機 器 数 ( 台 ) 騒 音 規 制 満 足 度 (%) PCB 混 入 絶 縁 油 量 (kl)]は そのままでは 統 合 化 することはできないた め 以 下 の 点 数 化 による 正 規 化 を 行 うこととした 各 項 目 を.~ の 間 で 点 数 づけする 各 評 価 項 目 の 初 年 度 実 データについて 74 箇 所 の 変 電 所 のうちで 最 大 となる 値 を 見 つけ これをその 後 5 年 間 のデータ 正 規 化 に 当 たっての 分 母 にする これにより 連 続 的 な 時 系 列 データとすることができる ただし 騒 音 規 制 値 満 足 度 については 今 回 の 試 算 においては データが 入 手 でき なかったため 以 下 によるものとした 屋 外 変 電 所 第 種 規 制. 点 非 屋 外 変 電 所. なお 経 年 については 年 々 増 えることから 後 年 度 には. を 上 回 る 値 が 出 てくるが 経 年 以 外 の 項 目 については 将 来 の 不 具 合 発 見 などによる 増 分 を 考 慮 しない 計 画 段 階 では 対 象 機 器 の 取 替 えなどにより 数 値 が 年 々 減 少 していくことになる また 今 回 のアルゴリズムの 特 徴 として これらの 健 全 度 の 将 来 予 測 ( 時 間 推 移 を 把 握 )をするという 機 能 も 追 加 した (3) AHP による 重 みづけを 用 いた 統 合 化 複 数 の 評 価 者 に AHP の 一 対 比 較 ( 注 )をしてもらい その 幾 何 平 均 をとった そして この 重 みづけにより 7 項 目 の 評 点 結 果 を 足 し 合 わせた 変 電 所 毎 の 総 合 健 全 度 指 標 の 呼 び 名 は 健 全 度 :S(Soudess) と し S(t)は 式 (3.) により 7 つの 正 規 化 した 評 点 Ei(t)を AHP によって 求 めた 重 み (i)で 合 計 する 7 S ( t) = E ( t) ( i) (3.) i= i この S は 最 大 で. 最 小 で となり 小 さいほど 良 い ことになる Sが. というのは 全 ての 評 価 項 目 が. つまり その 変 電 所 が 最 も 健 全 度 が 悪 い ということを 意 味 する もちろん その 絶 対 値 に 意 味 はなく 変 電 所 間 あるいはエリ ア 間 の 相 対 的 な 比 較 をするための PU 化 された 数 字 であることに 留 意 する 必 要 がある 9

34 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 ( 注 ) AHP による 一 対 比 較 表 3-3 に 示 す 一 対 比 較 を 行 うことで 次 元 の 異 なる 要 素 間 の 重 みづけを 行 うことがで きる 一 対 比 較 値 表 3-3 一 対 比 較 値 の 意 味 意 味 両 方 の 項 目 が 同 じくらい 重 要 3 前 の 項 目 が 後 の 項 目 より 若 干 重 要 5 前 の 項 目 が 後 の 項 目 より 重 要 7 前 の 項 目 が 後 の 項 目 よりかなり 重 要 9 前 の 項 目 が 後 の 項 目 より 絶 対 的 に 重 要, 4, 6, 8 補 間 的 に 用 いる 上 記 の 数 値 の 逆 数 後 の 項 目 から 前 の 項 目 を 見 た 場 合 に 用 いる (4) 変 電 所 群 の 健 全 度 統 合 化 個 別 変 電 所 の 健 全 度 に 加 えて 支 店 別 エリア 別 ( 都 区 内 周 辺 外 辺 )あるいは 全 系 の 健 全 度 に 統 合 することにより 様 々な 階 層 の 意 思 決 定 者 へ 現 状 および 将 来 予 測 の 定 量 データを 提 供 し マクロ 的 なモニタリング( 可 視 化 )を 可 能 とする その 方 法 としては 個 別 変 電 所 の 健 全 度 を 単 純 に 平 均 する 方 法 (A 案 : 式 (3.)) ある いは 変 電 所 の 認 可 出 力 MVAi で 重 みづけ 平 均 する 方 法 (B 案 : 式 (3.3))が 考 えられる ここで N は 変 電 所 の 数 とする <A 案 > S A N Si ( t) i= ( t) = N (3.) <B 案 > N Si ( t) MVAi i= S B ( t) = N (3.3) MVA i= i 3

35 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 3.3. 実 系 統 の 一 次 変 電 所 への 適 用 結 果 開 発 したアルゴリズムを 東 京 電 力 の 一 次 変 電 所 74 箇 所 に 適 用 した () 対 象 とした 一 次 変 電 所 開 発 したアルゴリズムを 用 いたシミュレーションは 以 下 の 支 店 74 箇 所 の 一 次 変 電 所 の 実 データを 用 いた 都 区 内 : 支 店 :8 箇 所 周 辺 :4 支 店 :3 箇 所 外 辺 :5 支 店 :5 箇 所 図 3-3 東 京 電 力 支 店 の 供 給 エリア () AHP による 重 み 付 け 今 回 5 名 の 評 価 者 が 一 対 比 較 を 行 った 結 果 下 図 のように 異 なった 重 みが 得 られた ので これらを 幾 何 平 均 した 重 みを 求 めた 3

36 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 経 年.5 PCB 混 入 絶 縁 油 量 騒 音 規 制 満 足 度 稼 働 率 旧 形 機 器 数 合 成 A 氏 B 氏 C 氏 D 氏 E 氏 同 形 対 策 機 器 数 不 具 合 兆 候 機 器 数 図 3-4 評 価 者 による 重 み その 結 果 は 下 記 のとおり 重 みの 大 きい 順 に 同 形 対 策 機 器 数 :.37 不 具 合 兆 候 機 器 数 :.48 3 経 年 :.56 4 旧 形 機 器 数 :.47 5 騒 音 規 制 満 足 度 : 稼 働 率 :.56 7 PCB 混 入 絶 縁 油 量 :.55 となった すなわち 同 形 対 策 機 器 数 不 具 合 兆 候 機 器 数 4 旧 形 機 器 数 といった 機 器 の 不 具 合 に 関 する 評 価 項 目 への 重 みが 65%ほどを 占 めていた また 5 騒 音 規 制 値 満 足 度 や 7PCB 混 入 絶 縁 油 量 はいわゆるコンプライアンスに 関 する 評 価 項 目 であるが あまり 大 き な 重 みとなっていない これは 現 時 点 では 規 制 に 抵 触 しているといった 実 態 が 無 い( 将 来 対 応 が 必 要 )ことによるものと 考 えられる * 幾 何 平 均 による 重 みの 求 め 方 (3 人 による 一 対 比 較 の 場 合 ) X 氏 Y 氏 Z 氏 がそれぞれ 行 った 一 対 比 較 が 下 記 のようになっていたとすると 下 線 の 部 分 の 平 均 をとる 必 要 が 生 ずる 3

37 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 X Y Z 図 人 による 一 対 比 較 この 場 合 下 線 の 部 分 の 幾 何 平 均 は = となり これらの 逆 数 の 幾 何 平 均 は = 4.48 であるから 上 記 の 逆 数 となる もしも 幾 何 平 均 でなく 算 術 平 均 とすると こ のような 逆 数 関 係 は 一 般 に 成 立 しない (3) 個 別 変 電 所 の 健 全 度 今 後 5 ヵ 年 の 時 系 列 推 移 を 含 む 74 箇 所 の 一 次 変 電 所 の 健 全 度 を 本 手 法 により 評 価 した 下 表 は 都 区 内 の X 変 電 所 の 健 全 度 を 評 価 した 結 果 で 以 下 が 読 み 取 れる 経 年 は 年 々 増 加 しており 稼 働 率 はおおむね 横 ばいである 旧 形 機 器 は 平 成 4 年 までに 取 替 えが 完 了 する それ 以 外 の 評 価 項 目 については 何 も 対 策 が 講 じられていない 同 形 対 策 機 器 数 の - は この 変 電 所 には 対 象 機 器 が 無 いことを 示 している 表 3-4 X 変 電 所 ( 都 区 内 )の 健 全 度 H H H H3 H4 経 年 稼 働 率 旧 形 機 器 数 不 具 合 兆 候 機 器 数 同 形 対 策 機 器 数 騒 音 規 制 満 足 度 PCB 混 入 絶 縁 油 量 Σ

38 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 (4) 支 店 内 の 変 電 所 健 全 度 順 位 とその 推 移 都 区 内 支 店 8 箇 所 の 変 電 所 別 健 全 度 を 初 年 度 の 値 が 大 きい( 健 全 度 が 低 い) 順 にその 経 年 を 含 めて 3 次 元 表 記 すると 図 3-6 のようになり 順 位 ならびに 経 年 推 移 が 見 える 化 できた 健 全 度 S S3 S5 S7 S9 変 電 所 S S3 S5 S7 H4 H H 年 度 H H H H3 H4 図 3-6 都 区 内 支 店 の 変 電 所 健 全 度 順 位 とその 推 移 (5) 支 店 別 健 全 度 個 別 変 電 所 の 健 全 度 評 価 結 果 を 用 い 支 店 ごとの 統 合 化 された 健 全 度 を 評 価 した 評 価 に 際 しては 個 別 変 電 所 の 健 全 度 を 単 純 平 均 する A 案 ならびに 変 電 所 の 認 可 出 力 で 重 みづけ 平 均 する B 案 の 種 を 適 用 した その 結 果 両 方 式 による 支 店 別 順 位 は 概 ね 変 わらず 都 区 内 の 健 全 度 が 最 も 悪 くなって いた また 健 全 度 の 値 は 都 区 内 の 支 店 のみが A 案 >B 案 となっていた これは 都 区 内 においては 旧 形 機 器 数 が 他 店 に 比 べて 多 いこと ならびにこれらを 保 有 する 変 電 所 が 古 いため その 変 圧 器 容 量 が 比 較 的 小 さいことによるものと 考 えられる 図 3-7 は 都 区 内 支 店 の 健 全 度 推 移 を 示 したもので A 案 >B 案 となっている 健 全 度 A 案 B 案 H H H H3 H4 年 度 図 3-7 都 区 内 支 店 の 健 全 度 推 移 34

39 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 (6)エリア 別 健 全 度 都 区 内 周 辺 外 辺 ならびに 全 系 の4つのエリアの 健 全 度 指 標 は 図 3-8 のように 都 区 内 > 周 辺 > 外 辺 の 順 になっていた これは 都 区 内 の 変 電 所 は 総 じて 古 い ものが 多 く 旧 形 機 器 数 が 多 いこと また 周 辺 エリアでは 変 電 所 の 稼 働 率 が 他 の エリアに 比 べて 高 いことなどによるものである この 結 果 について 実 務 担 当 者 の 感 覚 との 整 合 性 を 確 認 したところ 都 区 内 の 変 電 所 で は 以 下 の 現 場 実 態 から 古 くて 健 全 度 の 悪 い 設 備 の 取 替 えが 困 難 となっていることと 整 合 しているという 評 価 を 得 た 都 区 内 は 地 下 変 電 所 が 多 く 上 部 建 物 に 営 業 中 の 各 種 テナントが 入 っていることに よりマシンハッチを 開 けて 行 う 古 い 設 備 の 取 替 え 工 事 に 制 約 がかかりがち 都 心 部 は 二 次 側 のお 客 さまが 多 く 取 替 え 工 事 等 の 長 期 停 止 調 整 が 困 難 健 全 度 都 区 内 周 辺 外 辺 全 体.3... H H H H3 H4 年 度 図 3-8 各 エリアの 健 全 度 比 較 (7) 全 系 健 全 度 の 改 良 修 繕 規 模 に 対 する 感 度 解 析 旧 形 機 器 および 不 具 合 兆 候 機 器 の 取 替 え 計 画 のある 6 支 店 について ケース : 中 期 計 画 による 取 替 え 完 了 年 度 を 年 前 倒 し ケース : 中 期 計 画 による 取 替 え 完 了 年 度 を 年 繰 り 延 べ のケーススタディを 行 った その 結 果 は 図 3-9 に 示 すように ベースケース( 中 期 計 画 )に 比 べて 加 速 (ケース) あるいは 減 速 (ケース)の 場 合 は それぞれ 健 全 度 の 改 善 度 合 いが 加 速 あるいは 減 速 するという 変 化 が 見 えることから 改 良 投 資 修 繕 費 の 妥 当 性 評 価 に 使 用 することがで きると 考 えられる 35

40 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化.95.9 健 全 度 減 速 時 加 速 時 通 常 時.7.65 H H H H3 H4 年 度 図 3-9 全 系 健 全 度 の 投 資 修 繕 規 模 に 対 する 感 度 36

41 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 3.4 まとめ 本 章 では 変 電 設 備 を 対 象 としたアセットマネジメントの 第 ステップとして 老 朽 一 次 変 電 所 の 健 全 度 評 価 ( 見 える 化 )に 取 り 組 んだ 定 式 化 に 当 たっては 複 数 の 次 元 の 異 なる 評 価 項 目 を 定 量 的 に 統 合 することが 必 要 とな るため まず 多 属 性 評 価 手 法 について 評 価 項 目 の 選 定 に 関 する 手 法 評 価 項 目 の 定 量 的 評 点 に 関 する 手 法 評 価 項 目 の 重 みづけによる 統 合 化 に 関 する 手 法 について 内 外 の 文 献 を 調 査 し 評 価 項 目 については 経 年 稼 働 率 旧 形 機 器 数 不 具 合 兆 候 機 器 数 同 形 対 策 機 器 数 騒 音 規 制 満 足 度 PCB 混 入 絶 縁 油 量 の 7 項 目 を 選 定 した 各 評 価 項 目 の 評 点 方 法 については 健 全 度 の 時 系 列 変 化 をトレースするという 従 来 に 無 いニーズを 踏 まえ それぞれのデータの 初 年 度 最 大 値 によって 正 規 化 するという 手 法 を 用 いることとした 重 みづけによる 統 合 化 方 法 については シンプルで 適 用 実 績 の 多 い AHP の 一 対 比 較 によることとした 上 記 により 定 式 化 したアルゴリズムを 都 区 内 (8 箇 所 ) 周 辺 (3 箇 所 ) 外 辺 ( 5 箇 所 )の 合 計 74 箇 所 の 一 次 変 電 所 を 対 象 に 適 用 し 平 成 年 から 4 年 の 中 期 計 画 5 ヵ 年 の 健 全 度 推 移 を 評 価 した 結 果 は 以 下 のようになった () 変 電 所 別 健 全 度 順 位 ( 初 年 度 の 健 全 度 が 悪 い 順 ) 東 京 YA,IK,TN,TG,HB,TO,MS,KA,TB,KM,TI,KS,WA,ED,MO,TW,KY,TD 神 奈 川 KS,DS,TT,YO,SN,SH,NB,TS,HM,TD,NS,FS,NM,KN,NY,AS,NA,YN 埼 玉 HY,IT,SM,ST,OT,HG 千 葉 SS,HT,UB,TK 多 摩 SS,MN,AS 栃 木 OY,KU,NS,SN,NG,NU,HG 群 馬 SW,GM,HO 茨 城 KU,NM,IO,MH,IB 山 梨 YN,YM,KK,KS 沼 津 SG,ST,YF,TG,HS,GN * 変 電 所 名 は 記 号 で 表 している 37

42 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 () 支 店 別 健 全 度 順 位 個 別 変 電 所 の 健 全 度 を 単 純 平 均 する 方 法 (A 案 )ならびに 主 変 圧 器 の 認 可 出 力 で 重 みづ け 平 均 する 方 法 (B 案 )による 支 店 別 健 全 度 ( 平 成 年 度 の 値 ) 順 位 * は 以 下 のとおりと なった (A 案 ) (B 案 ) * 健 全 度 の 値 が 大 きい( 悪 い) 順 位 東 京 東 京 位 多 摩 多 摩 3 位 神 奈 川 神 奈 川 4 位 埼 玉 茨 城 5 位 茨 城 埼 玉 6 位 栃 木 栃 木 7 位 千 葉 山 梨 8 位 山 梨 千 葉 9 位 沼 津 沼 津 位 群 馬 群 馬 なお A 案 と B 案 による 健 全 度 の 数 値 を 比 べてみると 都 区 内 についてのみ A 案 >B 案 となっていた これは 都 区 内 では 主 要 変 圧 器 容 量 (MVA)が 比 較 的 小 さいことによる ものと 考 えられる (3)エリア 別 健 全 度 順 位 ()の 支 店 別 健 全 度 順 位 からもわかるように 都 区 内 周 辺 外 辺 の 3 区 分 ごとに 統 合 化 した 健 全 度 順 位 は 都 区 内 > 周 辺 > 外 辺 の 順 になっていた これは 都 区 内 変 電 所 にはリプレースを 控 えているために 更 新 の 時 期 を 繰 り 延 べている 箇 所 が 多 いこと などから 旧 形 機 器 数 や 不 具 合 兆 候 機 器 数 が 多 いこと ならびに 周 辺 支 店 では 変 電 所 の 稼 働 率 が 高 いことなどによるものであり 現 場 の 実 務 者 の 感 覚 と 一 致 しているこ とが 分 かった (4) 全 系 健 全 度 の 投 資 修 繕 規 模 に 対 する 感 度 解 析 7 つの 評 価 項 目 のうち 旧 形 機 器 不 具 合 兆 候 機 器 の 取 替 え 計 画 がある 6 支 店 について ケース( 加 速 ケース): 中 期 計 画 による 取 替 え 完 了 年 度 を 年 間 前 倒 し ケース( 減 速 ケース): 中 期 計 画 による 取 替 え 完 了 年 度 を 年 間 繰 延 べ した 場 合 の 健 全 度 推 移 をベースケースと 比 較 した 結 果 加 速 ケースでは 健 全 度 の 改 善 度 合 いがさらに 加 速 し 減 速 ケースでは 改 善 度 合 いが 遅 くなることが 定 量 的 に 見 える 化 で きることがわかった 38

43 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 (5) 今 後 の 課 題 以 上 のとおり 一 次 変 電 所 の 健 全 度 を 将 来 の 予 測 を 含 めて 定 量 的 に 評 価 する 手 法 を 開 発 した 後 74 箇 所 の 一 次 変 電 所 に 適 用 して 結 果 を 得 ることができた 今 後 は 実 計 画 への 試 行 を 踏 まえた 実 務 者 からのフィードバックをもとに 下 記 につい て 吟 味 の 上 改 良 を 加 えていくことが 必 要 と 考 える 今 回 選 定 した 7 つの 評 価 項 目 以 外 の 項 目 の 追 加 の 必 要 性 継 続 的 なデータ 入 手 可 能 性 の 再 吟 味 健 全 度 を 評 価 するのに 有 効 な 新 たな 項 目 の 抽 出 一 対 比 較 によって 設 定 した 評 価 項 目 の 重 みの 見 直 しの 必 要 性 と 具 体 的 方 法 評 価 者 の 選 定 方 法 ( 経 営 層 を 含 めるなど) 見 直 しのタイミング(どのような 状 況 を 見 直 しの 条 件 とするか) 39

44 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 参 考 文 献 [ 第 3 章 ] [] R. E. Bro d B. G. Humphrey, "Asset mgemet for trsmissio d distributio," IEEE Poer d Eergy Mgzie, IEEE, Vol. 3, Issue 3, My-Jue 5, pp [] U. Zickler, et l., "Asset Mgemet i distributio systems cosiderig e koledge o compoet relibility d dmge cost," preseted t the 5th Poer Systems Computtio Coferece, Sessio 6, Pper 6, Liege, Belgium, August 5. [3] O. Tor d M. Shhidehpour, "Poer distributio sset mgemet," preseted t IEEE 6 Poer Egieerig Society Geerl Meetig, Motrel, Jue 6. [4] T. Hjrtrso, B. Jesus, D.T. Hughes d R. M. Godfrey, Developmet of helth idices for sset coditio ssessmet, Proc. IEEE PES 3 Trsmissio d Distributio Coferece d Expositio, Vol., pp , Sept. 3. [5] J. C. M. Lucio d R. C. G. Teive, Fuzzy Cusl Mps for Asset Mgemet: A Approch for Problem-Structurig d Multi-Criteri Evlutio i Electricl Utilities, Proc. 7 IEEE Luse Poer Tech, pp. - 6, Luse, July 7. [6] R. E. Bro d T. M. Tylor, Modelig the impct of substtios o distributio relibility IEEE Trsctios o Poer Systems, Vol. 4, Issue:, pp , Feb [7] Z. Xig, E. Gockebch, V. Wsserberg, H. Borsi, Estimtio of the Lifetime of the Electricl Compoets i Distributio Netorks, IEEE Trsctios o Poer Delivery, Vol., Issue:, pp. 55-5, J. 7. [8] T. L., Sty, Fudmetls of Decisio Mkig d Priority Theory With the Alytic Hierrchy Process (Alytic Hierrchy Process Series, Vol. 6), RWS Publictios, Jue, Pittsburgh, Pesylvi. [9] D. E. Nordgrd, J. Heggset, d E. Ostgule, Hdlig mitece priorities usig multi criteri decisio mkig, Proc. 3 IEEE Bolog Poer Tech Coferece, Vol. 3, pp. 6, Bolog, Itly, Jue 3. [] N. Amyot, C. Hudo, M. Belec, L. Lmrre, d N.D. Nguye, Probbilistic Assessmet of Geertor Filure Usig the Alytic Hierrchy Process (AHP), Proc. th Itertiol Coferece o Probbilistic Methods Applied to Poer Systems (PMAPS '8), pp. - 5, Rico, Puerto Rico, My 8. 4

45 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 [] A. Srividy, H. N. Suresh, d A. K. Verm, Fuzzy AHP i prioritizig feeders for mitece i ucler poer plts, Proc. 7 IEEE Itertiol Coferece o Idustril Egieerig d Egieerig Mgemet, pp , Sigpore, Dec. 7. [] R. R. Clrke, Choosig itegrted resource pl for electric utilities: lytic hierrchy pproch, Proc. 3st Itersociety Eergy Coversio Egieerig Coferece (IECEC 96), Vol. 3, pp , Wshigto, DC, Aug [3] P. Espie, G. W. Ault, G.M. Burt, d J. R. McDold, Multiple criteri decisio mkig techiques pplied to electricity distributio system plig, IEE Proc. Ge., Trs. Dist., Vol. 5, pp , Sept. 3. [4] M. Wg, A. J. Vdermr, d K. D. Srivstv, Revie of coditio ssessmet of poer trsformers i service, IEEE Elect. Isul. Mg., vol. 8, o. 6, pp. -5, Nov./Dec.. [5] J. J. Smit, d E. Gulski, Coditio Assessmet of Trsmissio Netork Ifrstructures, Proc. 7 IEEE Luse Poer Tech, pp , Luse, July 7. [6] M.J. Mousvi d K. L. Butler-Purry, A Novel Coditio Assessmet System for Udergroud Distributio Applictios, IEEE Trs. Poer Systems, Vol. 4, Issue 3, pp. 5-5, Aug. 9. [7] J. Edreyi,, et l., The preset sttus of mitece strtegies d the impct of mitece o relibility, IEEE Trs. Poer Systems, Vol. 6, Issue 4, pp , Nov.. [8] H. Ge d S. Asgrpoor, A lyticl method for optimum mitece of substtios, Proc. 8 T&D. IEEE/PES Trsmissio d Distributio Coferece d Expositio, pp. -6, Chicgo, IL, April 8. [9] J. Ostergrd d A. N. Jese, C e dely the replcemet of this compoet?-- sset mgemet pproch to the questio, CIRED 6th Itertiol Coferece d Exhibitio o Electricity Distributio,, Vol. 5, Jue. [] T. Werer d C. Vetter, Optimizig sset usge through itegrted mitece softre systems, preseted t IEEE 3 Poer Egieerig Society Geerl Meetig, Toroto, July 3. [] F. Yg, Multiobjective Evolutiory Optimiztio of Substtio Mitece Usig Decisio-Vryig Mrkov Model, IEEE Trs. Poer Systems, Vol. 3, Issue: 3, pp: ,Aug. 8. 4

46 第 3 章 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 [] L. Willis d R. E. Bro, "Substtio Asset Mgemet", i J.D. McDold (ed.), Electric Poer Substtios Egieerig, Chpter 9, 7, CRC Press. [3] CESI, Workig Group Report o Electricity Itercoectios - Phse II: methodology for the ssessmet of e ifrstructures d pplictio to the ssessmet of the itercoectio projects lredy idetified i the Bltic re, submitted to Europe Commissio, My 9, vilble: [4] R. Hs d O. Meixer, "A Illustrted Guide to the Alytic Hierrchy Process", Uiversity of Nturl Resources d Applied Life Scieces, Vie; vilble: [5] T. L. Sty, "Reltive Mesuremet d its Geerliztio i Decisio Mkig: Why Pirise Comprisos re Cetrl i Mthemtics for the Mesuremet of Itgible Fctors - The Alytic Hierrchy/Netork Process," Revie of the Royl Spish Acdemy of Scieces, Series A, Mthemtics, (): pp. 5-38, Jue 8. vilble: [6] 中 山 弘 隆 谷 野 哲 三 多 目 的 計 画 法 の 理 論 と 応 用 994 年 計 測 自 動 制 御 学 会 [7] 木 下 栄 蔵 わかりやすい 意 思 決 定 論 入 門 基 礎 からファジイ 理 論 までー 996 年 近 代 科 学 社 [8] 今 野 浩 数 理 決 定 法 入 門 995 年 朝 倉 書 店 [9] 加 藤 豊 小 沢 正 典 OR の 基 礎 AHPから 最 適 化 までー 998 年 実 数 出 版 [3] 戸 根 薫 ゲーム 感 覚 意 思 決 定 法 AHP 入 門 6 年 日 科 技 連 出 版 社 4

47 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ かつて 遠 方 の 水 力 電 源 からの 電 源 送 電 線 に 接 続 され 需 要 地 での 供 給 拠 点 としての 機 能 を 果 たしてきた 一 次 変 電 所 は 各 機 器 の 老 朽 化 が 進 むとともに 周 辺 地 域 の 都 市 化 が 進 展 す るなど 設 備 更 新 のニーズが 高 まっている しかし これらの 変 電 所 は 依 然 として 電 力 の 供 給 に 供 されていることや 大 量 にある 経 年 設 備 の 更 新 は 時 間 的 経 済 的 あるいは 工 事 中 の 信 頼 度 などの 制 約 から 一 度 に 複 数 の 地 点 で 実 施 することはできないなどの 制 約 がある このような 実 態 から 更 新 計 画 を 策 定 する 際 には 当 該 変 電 所 周 辺 ネットワークの 信 頼 度 維 持 と 長 期 的 な 経 済 性 の 追 求 を 基 本 とする 最 適 な 取 替 え 順 位 を 決 定 する 必 要 がある 上 記 順 位 づけのための 判 断 材 料 の 一 つとして 第 3 章 において 経 年 設 備 の 健 全 度 可 視 化 に 関 する 研 究 を 行 い 各 変 電 所 の 健 全 度 を 比 較 するための 定 量 的 な 指 標 を 作 成 した しか し この 指 標 は 変 電 所 内 機 器 の 劣 化 度 合 いや 環 境 面 での 配 慮 事 項 機 器 の 陳 腐 化 度 合 い( 部 品 や 技 術 員 などメーカーの 対 応 可 能 度 合 い) 設 備 の 稼 働 率 など 複 数 の 項 目 を 定 量 的 に 統 合 化 して 変 電 所 としての 統 合 健 全 度 さらには 系 統 全 体 で 見 た 健 全 度 をマクロ 的 に 評 価 するためのもので 各 変 電 所 における 健 全 度 の 低 い 個 別 機 器 の 最 適 な 取 替 え 順 位 を 決 定 するという 目 的 には 使 えない また 変 電 所 全 体 が 一 気 に 更 新 されるケースは 少 なく 変 圧 器 遮 断 器 などの 個 別 機 器 がある 群 (ユニット) 単 位 に 順 次 取 替 改 修 されるのが 現 実 となっている そこで 本 章 では 直 列 機 器 であり 故 障 すると 広 域 停 電 につながりやすい 旧 形 遮 断 器 を 対 象 とし 数 理 計 画 法 による 最 適 取 替 え 順 位 を 決 定 するアルゴリズムを 開 発 した この 旧 形 遮 断 器 は 実 際 に 目 標 年 度 を 設 定 した 取 替 え 方 針 が 設 定 されており 公 平 透 明 な 方 法 による 全 系 あるいはその 支 店 内 での 最 適 順 位 づけ 手 法 の 開 発 が 望 まれているが 同 種 の 取 り 組 みはまだされていない 具 体 的 には 都 区 内 一 次 変 電 所 8 箇 所 のうち 旧 形 遮 断 器 を 保 有 する 6 変 電 所 を 対 象 に 現 在 から 取 替 え 完 了 目 標 年 度 までの 期 間 における 取 替 え 対 象 変 電 所 の 取 替 えコスト 保 守 コスト 信 頼 度 コスト( 遮 断 器 故 障 時 の 供 給 支 障 電 力 量 を 停 電 コストよって 費 用 換 算 した 値 ) の 総 合 計 が 最 小 となるような 取 替 え 順 位 すなわち 各 変 電 所 の 取 替 えをいつの 時 点 で 行 えばよいかを 探 索 するアルゴリズムを 開 発 した この 場 合 組 合 せの 数 が 膨 大 となる( 変 電 所 の 数 を M 箇 所 取 替 え 完 了 までの 年 数 を N 年 とすると 組 合 せ 数 は N の M 乗 通 り)ことから 列 挙 法 ( 力 づく 法 )の 適 用 は 不 可 能 で あるため 組 合 せ 最 適 化 手 法 のひとつである 分 枝 限 定 法 を 用 いたアルゴリズムを 開 発 し 小 規 模 モデル( 変 電 所 4 年 間 )ならびに 実 規 模 モデル(6 変 電 所 ( 遮 断 器 の 取 替 え 単 位 ユニットの 合 計 は 7) 8 年 間 )に 適 用 してその 有 効 性 を 確 認 した 43

48 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 4. 変 電 所 機 器 類 の 更 新 計 画 と 対 象 機 器 の 選 定 変 電 所 の 主 回 路 を 構 成 する 機 器 としては 変 圧 器 開 閉 器 ( 遮 断 器 断 路 器 ) 変 流 器 などの 直 列 機 器 ならびに 変 成 器 や 調 相 設 備 ( 電 力 用 コンデンサ リアクトル)などの 並 列 機 器 がある この 他 これらの 機 器 の 運 転 状 態 を 監 視 制 御 するための 制 御 保 護 装 置 とその 電 源 (バッテリーや CVCF あるいは 非 常 用 電 源 装 置 ) 絶 縁 油 の 冷 却 装 置 建 物 の 空 調 設 備 などがある 経 年 変 電 所 の 更 新 は これら 設 備 を 一 度 に 取 替 えるケースは 少 なく 一 般 には 個 別 機 器 の 劣 化 状 況 を 点 検 保 守 によりトレースしながら 必 要 に 応 じて 実 施 するのが 現 状 であ る 点 検 のインターバルや 改 修 工 事 のやり 方 も 定 められた 期 間 ごとに 実 施 する TBM (Time Bsed Mitece)から 機 器 の 状 態 を 見 ながら 実 施 する CBM(Coditio Bsed Mitece)へと 合 理 化 してきている また 近 年 では 機 器 の 事 故 確 率 の 時 間 依 存 性 を 考 慮 するとともに 万 一 の 故 障 発 生 時 の 供 給 支 障 電 力 量 期 待 値 をもとに 最 適 な 改 修 時 期 あるいは 取 替 え 時 期 を 決 定 する RCM(Relibility Cetered Mitece)の 研 究 も 始 まっている 本 章 では 下 記 理 由 から 実 際 に 計 画 的 な 取 替 え 方 針 が 決 定 しており その 最 適 更 新 順 位 づけのための 手 法 開 発 のニーズがある 旧 形 遮 断 器 ( 一 次 変 電 所 における 66 kv 側 の 空 気 遮 断 器 )を 対 象 機 器 として 選 定 した 直 列 機 器 であり 万 一 の 故 障 時 の 供 給 支 障 への 影 響 が 大 きい ( 特 に 母 線 連 絡 用 遮 断 器 が 故 障 した 場 合 複 数 の 二 次 側 母 線 が 停 止 するため 停 電 範 囲 が 大 きい) すでに 製 造 開 始 以 降 4 年 程 度 を 経 過 しているため 部 品 が 枯 渇 していることや 経 験 のあるメーカー 技 術 員 の 多 くがリタイアしている 3 近 年 同 種 の 遮 断 器 は SF 6 ガスを 利 用 するとともに 操 作 機 構 を 油 圧 方 式 とした コンパクトで 保 守 性 も 良 いガス 遮 断 器 を 標 準 としている 4. 組 合 せ 最 適 化 手 法 とその 応 用 4.. 電 力 設 備 計 画 における 組 合 せ 最 適 化 問 題 とその 解 法 一 般 に 電 力 系 統 の 設 備 計 画 は 長 期 電 源 設 備 計 画 電 源 の 補 修 時 期 を 決 定 するスケジ ューリング 問 題 など 膨 大 な 数 の 組 合 せの 中 から 設 定 した 目 的 関 数 を 最 適 化 する 問 題 となるものが 多 い また 変 数 自 体 が 連 続 変 数 ではなく 年 度 といった 離 散 的 なものであっ たり その 年 度 に 実 施 するかしないかという 整 数 問 題 ( か )となることが 多 いことか ら 動 的 計 画 法 整 数 計 画 法 あるいは 分 枝 限 定 法 など 様 々な 数 学 的 手 法 が 応 用 されている 44

49 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 本 章 で 設 定 した 旧 形 遮 断 器 の 最 適 取 替 え 問 題 は 変 数 が 各 変 電 所 における 取 替 えをするか/しないか すなわち か かという 問 題 対 象 となる 変 電 所 における 遮 断 器 取 替 え 回 数 は 対 象 期 間 のうちで 回 である 単 年 度 あたりの 取 替 え 工 事 費 に 上 限 がある という 特 徴 があり 組 合 せ 最 適 化 問 題 として 有 名 な 後 述 する ナップサック 問 題 と 同 じ 性 質 を 持 つことから その 解 法 として 広 く 用 いられている 分 枝 限 定 法 (Brch d Boud method)を 適 用 することとした 4.. 分 枝 限 定 法 分 枝 限 定 法 の 基 本 的 な 考 え 方 は 与 えられた 問 題 を 直 接 解 くことが 難 しい 場 合 に その 問 題 をいくつかの 部 分 問 題 (Prtil problem)に 分 解 し それらを 解 くことによって 元 の 問 題 を 解 こうとするものである ある 問 題 から その 部 分 問 題 を 生 成 する 手 続 きは 分 枝 操 作 (brchig opertio)と 呼 ばれる この 分 枝 操 作 により 生 成 された 部 分 問 題 がまだ 難 しくて 解 けない 場 合 には 問 題 をさらに 分 解 する 操 作 を 繰 り 返 し 適 用 する この 操 作 に より 問 題 の 規 模 は 次 第 に 小 さくなり いつかは 解 くことができるようになる しかし 分 枝 操 作 をしただけでは 結 局 全 ての 解 を 数 え 上 げる 列 挙 法 (eumertio method)と 同 じことになるので 大 規 模 問 題 を 解 くことはできない そこで 最 適 解 を 与 える 見 込 みのない 問 題 を 終 端 (termite)して 考 察 の 対 象 から 除 外 するという 限 定 操 作 (boudig opertio)を 導 入 する 必 要 がある 限 定 操 作 を 行 うために 現 時 点 までに 求 まった 部 分 問 題 の 最 適 解 のうちで 最 良 のものを 暫 定 解 として 記 憶 しておく このとき 部 分 問 題 の 目 的 関 数 が 暫 定 解 よりも 良 い 値 を 与 えないことが 判 定 できれば その 部 分 問 題 は それ 以 上 分 解 することは 無 意 味 なので 部 分 問 題 は 終 端 される この 判 定 を 行 うためには 通 常 部 分 問 題 の 制 約 条 件 を 緩 めた 緩 和 問 題 (relxtio problem)が 解 かれる このような 分 枝 操 作 および 限 定 操 作 を 繰 り 返 しながら 探 索 を 行 う のが 分 枝 限 定 法 であり その 探 索 過 程 は 図 4- のような 探 索 木 (serch tree)を 用 いて 表 現 できる 図 4- 分 枝 限 定 法 の 探 索 木 45

50 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ 探 索 木 の 根 ノードが 原 問 題 に 対 応 し 各 ノードがその 部 分 問 題 となる また 分 解 され たノードはその 子 ノードの 部 分 問 題 を 解 くことにより 間 接 的 に 解 かれることになる 葉 ノードに 対 応 する 部 分 問 題 の 状 態 は 3 種 類 に 分 けられ )その 部 分 問 題 は 終 端 されている か ) 部 分 問 題 の 最 適 解 が 求 まっているか 3)あるいはそのどちらかでもない 場 合 である 部 分 問 題 が 終 端 されるか 部 分 問 題 の 最 適 解 が 求 まった 場 合 には その 部 分 問 題 はそれ 以 上 分 解 する 必 要 はない そうでない 場 合 は 部 分 問 題 をさらに 分 解 する 必 要 があり その ような 部 分 問 題 は 活 性 (ctive)であるという 探 査 木 において 活 性 な 部 分 問 題 が 無 くな った 時 点 で 全 ての 部 分 問 題 が 解 かれたことになり そのときの 暫 定 解 は 最 適 解 になる < 分 枝 限 定 法 の 原 理 >:- ナップサック 問 題 (- kpsck problem) ) 一 般 化 した 問 題 個 のアイテムからなる 有 限 集 合 N 各 々のアイテムの 重 量 Si と 価 値 Vi およびナッ フ サックの 重 量 制 限 b が 与 えられたとき アイテムの 重 量 の 合 計 が b を 超 えないという 条 件 の 下 で 価 値 の 合 計 を 最 大 にするように N からアイテムを 選 択 せよ ) 例 題 自 分 が ぬいぐるみ 専 門 の 泥 棒 だと 仮 定 する ある 晩 高 級 ぬいぐるみ 店 に 忍 び 込 み マニアの 間 で 高 額 で 取 引 されているクマの 人 形 を 盗 もうとした 人 形 は 4 種 類 あり そ れらの 値 段 と 重 さは 図 4- のようになっている 転 売 価 格 の 合 計 が 最 大 になるように クマの 人 形 を 選 んで 逃 げなければならないが いつも 盗 品 を 入 れて 逃 げるのに 愛 用 して いるナッフ サックはとても 古 く 7kg よりも 重 い 荷 物 を 入 れると 底 が 抜 けてしまう さ て どの 人 形 を 持 って 逃 げればよいだろうか? 図 4-4 種 のクマ 人 形 とナップサック 46

51 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ この 問 題 はアイテムをナップサックに 入 れるとき 入 れないときを とすると 下 記 のような 整 数 計 画 問 題 (iteger progrmmig problem) すなわち ある 制 約 を 満 たす 整 数 の 組 合 せで ある 関 数 を 最 大 化 (もしくは 最 小 化 )するものを 見 つける 問 題 として 定 式 化 される 最 大 化 ΣVi Si 条 件 ΣSi Xi b Xi {,} 分 枝 限 定 法 は 整 数 計 画 法 に 対 する 標 準 的 な 厳 密 解 法 であり 多 くの 汎 用 的 なソフトウ エアは 線 形 計 画 法 を 解 くアルゴリズムと 分 枝 限 定 法 から 構 成 されている また その 概 念 は 列 挙 法 ( 力 づく 法 )により 理 解 することができる 上 記 ナップサック 問 題 に 対 する 列 挙 木 は まず 極 小 人 形 をナップサックに 入 れる 場 合 と 入 れない 場 合 の 通 りを 考 える 次 に 極 小 人 形 をナップサックに 入 れた 場 合 に 対 して 小 人 形 をナップサックに 入 れた 場 合 と 入 れない 場 合 に 分 ける さらに 中 人 形 を 入 れた 場 合 と 入 れない 場 合 と 順 次 つに 分 けていくことによって 個 のアイテムからどのア イテムをナップサックに 入 れるかを 表 す 木 ができる この 木 の 先 端 まで 行 けば 持 って 逃 げられる 価 値 の 合 計 と 重 量 の 合 計 が 求 まる したがって ナップサックの 重 量 上 限 を 超 え ないものの 中 で 価 値 の 合 計 が 最 大 のものを 選 択 することによって 最 適 解 が 求 まる すなわち 最 適 解 は 極 小 人 形 大 人 形 の 体 をナップサックに 入 れて 出 すことで ある この 場 合 の 転 売 価 格 は 44(66) 万 円 で 合 計 重 量 はナップサックの 限 界 重 量 である 7kg となる 図 4-3 ナップサック 問 題 に 対 する 列 挙 木 * 黒 丸 は ナップサックが 破 れてしまうこと( 実 行 不 可 能 解 )を 表 す 47

52 第 4 章 経 年 機 器 の 最 適 更 新 順 位 づけ しかし 木 の 先 端 の 数 は 個 あり これらをすべて 探 索 するのは 計 算 の 無 駄 であるばか りか 一 般 には 膨 大 な 数 となり 実 行 不 可 能 である 分 枝 限 定 法 は 木 の 中 の 探 しても 無 駄 な 部 分 の 探 索 を 下 界 と 上 界 の 概 念 を 用 いて 最 適 性 を 失 うことなしに 省 略 することができる ここで 下 界 (loer boud)とは 最 適 値 よ りも 小 さいか( 運 がよければ) 等 しいことが 保 証 されている 値 のことである 通 常 は 何 ら かの 方 法 で 見 つけた 実 行 可 能 解 ( 制 約 を 満 たす 解 )の 目 的 関 数 を 用 いる ナップサック 問 題 の 下 界 は 単 位 重 量 当 たりの 価 値 Vi/Si の 大 きいものから 順 に 限 界 を 超 えない 限 り 詰 めて いく いわゆる 貪 欲 アルゴリズム(greedy lgorithm)を 用 いることによって 得 られる 一 方 上 界 (upper boud)は 常 に 最 適 値 よりも 大 きいか 運 が 良 ければ 等 しい 値 を 指 し ナップサック 問 題 では 人 形 を 切 ってしまうことを 許 すことによって 得 られる 言 い 換 えると 変 数 Xi の 整 数 条 件 を 実 数 条 件 に 緩 めた 以 下 の 問 題 を 解 くことによって 上 界 を 得 ることができる 最 大 化 ΣVi Si 条 件 ΣSi Xi b Xi この 問 題 は 線 形 計 画 問 題 そのものであり このように 制 約 条 件 を 緩 めた 問 題 を 一 般 に 緩 和 問 題 (relxtio problem)とよぶ 整 数 条 件 を 実 数 条 件 に 緩 めることによって 得 られ る 緩 和 問 題 を 特 に 線 形 計 画 緩 和 問 題 (lier progrmmig relxtio problem)とよぶ ナップサック 問 題 の 線 形 計 画 緩 和 問 題 は 前 述 の 貪 欲 アルゴリズムによって 簡 単 に 解 く ことができる すなわち 単 位 重 量 当 たりの 価 値 Vi/Si の 大 きいものから 順 に b を 超 えな い 限 り 詰 めていくだけである 緩 和 問 題 の 場 合 には 実 数 を 許 すので ナップサックに 入 れられる 人 形 は 切 られてしまう 可 能 性 がある 列 挙 法 では 各 人 形 を 持 っていくか 行 かないかで つに 分 けることにより 枝 分 れをさせ ていった ここで 上 界 はさらに 枝 分 れをさせていったときに 得 られる 解 の 値 に 等 しいかそ れよりも 大 きい よって 上 界 が 今 までに 得 られている 下 界 に 等 しいかそれよりも 小 さく なったら もう 枝 分 れして 調 べる 必 要 はなくなる これが 分 枝 限 定 法 における 限 定 操 作 であり 適 切 な 木 の 探 索 順 と 上 界 を 用 いることによって 大 規 模 なナップサック 問 題 で も 比 較 的 短 時 間 で 解 くことが 可 能 となる 48