無罪判決後の勾留に関する意見書

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1 無 罪 判 決 後 の 勾 留 に 関 する 意 見 書 2015 年 ( 平 成 27 年 )10 月 21 日 日 本 弁 護 士 連 合 会 第 1 意 見 の 趣 旨 刑 事 訴 訟 法 第 345 条 に, 第 2 項 として, 判 決 で 無 罪 の 言 渡 しがあったときは, 上 訴 審 において 原 判 決 が 破 棄 されるまで, 新 たに 勾 留 状 を 発 することはできな い との 条 文 を 新 設 すべきである 第 2 意 見 の 理 由 1 本 意 見 書 の 概 要 推 定 無 罪 は, 近 代 刑 事 司 法 の 大 原 則 である 何 人 も 有 罪 が 確 定 するまでは, 無 罪 が 推 定 されているのであるから,まして, 被 告 人 が 裁 判 で 無 罪 を 言 い 渡 さ れた 場 合 には,その 理 は 一 層 強 く 妥 当 する したがって, 判 決 で 無 罪 の 言 渡 し があったときには, 少 なくとも, 上 訴 審 において 当 該 判 決 が 破 棄 され, 有 罪 が 宣 告 されるまでは, 当 該 被 告 人 を 無 罪 として 扱 い, 身 体 を 拘 束 すべきではない しかしながら, 現 実 においては, 無 罪 判 決 がなされても, 罪 を 犯 したと 疑 う に 足 りる 相 当 の 理 由 があるとして, 勾 留 を 認 められることがある 本 意 見 書 は, その 不 当 性 を 解 消 するために, 刑 事 訴 訟 法 の 改 正 を 求 めるものである 2 無 罪 判 決 後 の 勾 留 決 定 により 生 じる 不 利 益 無 罪 判 決 後 に 勾 留 決 定 される 例 は, 特 に 外 国 人 が 被 告 人 である 場 合 などに 多 数 生 じている 一 般 的 に 在 留 資 格 がない 外 国 人 が 一 審 で 無 罪 判 決 を 受 けると, 退 去 強 制 させられるために, 検 察 官 が 控 訴 した 場 合,これに 伴 い, 当 該 外 国 人 に 対 してしばしば 勾 留 状 が 発 せられている いわゆる 東 京 電 力 女 性 社 員 殺 害 事 件 では, 一 審 ( 東 京 地 裁 平 成 12 年 4 月 14 日 判 決 )で 無 罪 判 決 を 受 けた 外 国 人 被 告 人 に 対 し, 記 録 の 送 付 を 受 けた 東 京 高 等 裁 判 所 が, 罪 を 犯 したと 疑 うに 足 りる 相 当 の 理 由 があるとして 勾 留 を 認 め,その 判 断 を 最 高 裁 判 所 も 是 認 し( 最 高 裁 第 一 小 法 廷 平 成 12 年 6 月 27 日 決 定 判 例 時 報 1718 号 19 頁 以 下 平 成 12 年 決 定 という ) 1, 未 決 勾 留 が 継 続 することとなった 同 事 件 の 被 告 人 は 平 成 9 年 3 月 に 最 初 に 逮 捕 1 第 一 審 で 無 罪 とされた 被 告 人 を 再 勾 留 するためには, 実 質 的 な 審 理 が 始 まり, 一 審 判 決 が 破 棄 さ れ 有 罪 となる 可 能 性 があると 判 断 されることが 必 要 であるとする 遠 藤 光 男 裁 判 官, 藤 井 正 雄 裁 判 官 の 反 対 意 見 がある 1

2 されてから, 一 審 の 無 罪 判 決 後 も 身 体 拘 束 されたまま, 控 訴 審 で 有 罪 判 決 を 受 け, 平 成 15 年 に 上 告 が 棄 却 され 刑 が 確 定 して 服 役 した その 後, 平 成 24 年 11 月 7 日, 再 審 により 無 罪 が 確 定 したが,これに 伴 う 身 体 拘 束 の 不 利 益 と 被 告 人 の 防 御 権 行 使 に 及 ぼした 影 響 は 無 視 し 得 ない その 後 も, 一 審 で 無 罪 判 決 を 受 けた 外 国 人 被 告 人 が 控 訴 審 段 階 で 勾 留 決 定 さ れる 事 例 は 続 いている( 最 高 裁 第 三 小 法 廷 平 成 19 年 12 月 13 日 決 定 判 例 時 報 1992 号 152 頁, 最 高 裁 第 二 小 法 廷 平 成 23 年 10 月 5 日 決 定 等 ) 前 記 平 成 19 年 12 月 13 日 決 定 は, 控 訴 審 でも 無 罪 判 決 が 言 い 渡 され, 検 察 官 が 上 告 せずに 確 定 したが, 被 告 人 が 帰 国 できたのは 一 審 判 決 後 約 8か 月 間 の 勾 留 の 後 であった 一 審 無 罪 判 決 後 の 勾 留 決 定 が, 無 実 の 被 告 人 に 対 する 身 体 拘 束 を 長 期 化 させる 結 果 となっている 無 罪 判 決 後 の 勾 留 の 問 題 は 被 告 人 が 外 国 人 の 場 合 のみに 生 じるものとはいえ ない 原 審 で 有 罪 とされた 日 本 国 籍 の 被 告 人 が 控 訴 審 で 無 罪 となった 殺 人 被 告 事 件 ( 一 審 京 都 地 裁 平 成 23 年 5 月 18 日 判 決, 控 訴 審 大 阪 高 裁 平 成 24 年 1 2 月 12 日 判 決 )では, 結 果 として 勾 留 決 定 はなされなかったものの, 控 訴 審 における 無 罪 判 決 後 に, 検 察 官 が 控 訴 審 裁 判 所 に 対 して 職 権 による 勾 留 を 申 し 立 て, 無 罪 判 決 を 得 た 被 告 人 が 勾 留 の 危 険 にさらされた このように, 無 罪 判 決 後 に 勾 留 決 定 がなされる 危 険 性 は, 被 告 人 が 外 国 人 で ある 場 合 のみならず, 無 罪 判 決 を 得 た 全 ての 被 告 人 において 生 じうる 3 無 罪 判 決 後 の 勾 留 に 関 する 最 高 裁 判 例 上 述 の3つの 最 高 裁 決 定 は,いずれも 一 審 無 罪 判 決 後 の 勾 留 決 定 を 肯 定 して いる その 理 由 として, 平 成 12 年 決 定 は, 第 一 審 裁 判 所 が 犯 罪 の 証 明 がない ことを 理 由 として 無 罪 の 判 決 を 言 い 渡 した 場 合 であっても, 控 訴 審 裁 判 所 は, 記 録 等 の 調 査 により, 右 無 罪 判 決 の 理 由 の 検 討 を 経 た 上 でもなお 罪 を 犯 したこ とを 疑 うに 足 りる 相 当 な 理 由 があると 認 めるときは, 勾 留 の 理 由 があり,かつ, 控 訴 審 における 適 正, 迅 速 な 審 理 のためにも 勾 留 の 必 要 性 があると 認 める 限 り, その 審 理 の 段 階 を 問 わず, 被 告 人 を 勾 留 することができ, 所 論 のいうように 新 たな 証 拠 の 取 調 べを 待 たなければならないものではない とした( 最 高 裁 第 二 小 法 廷 平 成 23 年 10 月 5 日 決 定 同 旨 ) 平 成 12 年 決 定 には, 被 告 人 が 不 法 在 留 中 の 外 国 人 である 場 合 に 特 有 の 不 都 合 について, 二 人 の 裁 判 官 の 反 対 意 見 が ある 反 対 意 見 は, 出 入 国 管 理 及 び 難 民 認 定 法 に 基 づく 退 去 強 制 手 続 の 行 政 処 分 と 刑 事 訴 訟 法 に 基 づく 身 体 拘 束 処 分 との 調 整 規 定 がないために, 不 法 在 留 中 の 外 国 人 である 被 告 人 に 対 しては, 退 去 強 制 の 手 続 により 国 外 に 退 去 させられ 2

3 るおそれがあることから, 上 訴 審 において 被 告 人 が 不 在 のまま 審 理 がなされる ことにより 支 障 が 生 じるおそれや 将 来 の 刑 の 執 行 確 保 のために 勾 留 が 認 められ やすいが, 退 去 強 制 手 続 と 刑 事 手 続 の 調 整 に 関 する 規 定 の 不 備 の 責 任 を 被 告 人 に 転 嫁 すべきではなく, 被 告 人 が 不 法 在 留 者 であっても,そのことだけで 勾 留 を 正 当 化 することはできず, 特 段 の 事 情 がなく 被 告 人 を 勾 留 すべきでないとし た 最 高 裁 第 三 小 法 廷 平 成 19 年 12 月 13 日 決 定 ( 以 下 平 成 19 年 決 定 と いう )は, しかし, 刑 訴 法 345 条 は, 無 罪 等 の 一 定 の 裁 判 の 告 知 があった ときには 勾 留 状 が 失 効 する 旨 規 定 しており, 特 に, 無 罪 判 決 があったときには, 本 来, 無 罪 推 定 を 受 けるべき 被 告 人 に 対 し, 未 確 定 とはいえ, 無 罪 の 判 断 が 示 されたという 事 実 を 尊 重 し,それ 以 上 の 被 告 人 の 拘 束 を 許 さないこととしたも のと 解 されるから, 被 告 人 が 無 罪 判 決 を 受 けた 場 合 においては, 同 法 60 条 1 項 にいう 被 告 人 が 罪 を 犯 したことを 疑 うに 足 りる 相 当 な 理 由 の 有 無 の 判 断 は, 無 罪 判 決 の 存 在 を 十 分 に 踏 まえて 慎 重 になされなければならず, 嫌 疑 の 程 度 としては, 第 1 審 段 階 におけるものよりも 強 いものが 要 求 されると 解 するの が 相 当 である としながらも, 無 罪 判 決 後 の 勾 留 を 肯 定 した このように, 最 高 裁 判 所 は, 退 去 強 制 を 被 告 人 を 勾 留 することで 回 避 することに 批 判 的 な 平 成 12 年 決 定 反 対 意 見 等 をも 受 けて, 犯 罪 の 嫌 疑 の 程 度 で 絞 りをかけてはいるが, 結 局, 控 訴 審 が 刑 事 訴 訟 法 第 60 条 1 項 の 要 件 である 被 告 人 が 罪 を 犯 したこ とを 疑 うに 足 りる 相 当 な 理 由 があると 判 断 したときには,いつでも 職 権 で 勾 留 決 定 ができるとしている 4 無 罪 判 決 による 勾 留 状 の 失 効 の 趣 旨 現 行 刑 事 訴 訟 法 第 345 条 が, 無 罪 のほか, 免 訴, 刑 の 免 除, 刑 の 執 行 猶 予, 公 訴 棄 却 ( 第 338 条 第 4 号 による 場 合 を 除 く), 罰 金, 科 料 について,その 裁 判 の 告 知 があればその 確 定 前 であっても 勾 留 状 が 失 効 すると 定 めているのは, 被 告 人 の 逃 亡 のおそれが 減 少 し, 刑 の 執 行 確 保 のための 身 体 拘 束 の 必 要 性 が 少 なくなるためであるとされている しかし, 免 訴 その 他 の 裁 判 とは 異 なり, 無 罪 判 決 の 場 合 の 失 権 効 は, 単 に 身 体 拘 束 の 必 要 性 の 点 からだけではなく, 第 一 審 判 決 の 内 容 を 直 ちに 被 告 人 の 身 柄 の 処 理 に 反 映 させようとしたものであり, 無 罪 という 実 体 判 断 から 導 かれて いると 考 えるべきである 無 罪 判 決 があったときは, 無 罪 の 理 由 のいかんにか かわらず, 身 体 の 拘 束 を 解 くというのが, 刑 訴 法 第 345 条 の 定 めるところで あり, 法 は 身 体 拘 束 からの 解 放 を 当 然 に 要 請 しているのである したがっ 3

4 て, 勾 留 禁 止 の 効 力 が 失 われ, 被 告 人 を 再 勾 留 し 得 るのは, 上 訴 審 において, 無 罪 の 原 判 決 を 破 棄 するとの 新 たな 実 体 判 断 が 示 されたときに 限 定 すべきであ る( 同 旨 岩 田 誠 刑 訴 三 四 五 条 による 勾 留 状 の 失 効 と 再 勾 留 法 曹 時 報 7 巻 3 号 ) 前 掲 平 成 19 年 決 定 は, 刑 事 訴 訟 法 第 345 条 の 趣 旨 につき, 未 確 定 とはい え, 無 罪 の 判 断 が 示 されたことを 尊 重 し,それ 以 上 の 被 告 人 の 拘 束 を 許 さない としたものと 解 される と 判 示 しているが, 無 罪 の 判 断 を 単 に 尊 重 するという ことではなく, 無 罪 の 判 断 に,それ 以 上 の 被 告 人 の 拘 束 を 許 さないとする 拘 束 禁 止 の 効 力 が 含 まれていると 解 すべきである 5 無 罪 判 決 後 の 勾 留 の 不 当 性 そもそも, 裁 判 手 続 において, 身 体 拘 束 は,それ 自 体 が 自 由 を 奪 うという 意 味 で 刑 罰 に 等 しいものであり,さらには, 裁 判 の 当 事 者 としての 防 御 権 の 行 使 に 著 しい 不 利 益 をもたらし, 防 御 権 行 使 の 重 大 な 障 害 にもなりかねないもので ある 国 際 人 権 自 由 権 規 約 第 9 条 第 3 項 においては, 身 体 不 拘 束 の 原 則 を 謳 っている 国 家 の 有 する 裁 判 権 の 適 正 な 行 使 のために 被 疑 者 被 告 人 の 勾 留 を 容 認 するにしても,その 行 使 は 謙 抑 的 でなければならない また, 国 家 による 刑 罰 権 行 使 の 中 で 肝 に 銘 じるべきは, 無 実 の 人 を 処 罰 して はならない ということである ここに 刑 事 裁 判 のルールとしての 無 罪 推 定 の 原 則 が 認 められている このような 近 代 刑 事 裁 判 のルールの 下 では, 無 罪 が 推 定 されながら 裁 判 権 の 適 切 な 行 使 のために 勾 留 されていた 被 告 人 が, 裁 判 権 行 使 の 結 果, 無 罪 判 決 を 受 けたにもかかわらず 検 察 官 の 控 訴 によって 再 び 勾 留 されるという 事 態 は, 当 該 被 告 人 に 著 しい 不 利 益 を 課 すものであって, 人 権 保 障 の 観 点 から 容 認 するこ とはできない 国 家 にとって 必 要 な 刑 事 裁 判 手 続 のためという 理 由 があるにせよ, 身 体 拘 束 それ 自 体 が 与 える 不 利 益 や 防 御 権 行 使 に 対 する 著 しい 制 約 はあまりにも 大 きく, 被 告 人 が 無 罪 である 場 合 にあっては 特 に,それは 許 されざる 不 正 義 である 6 結 論 したがって, 現 行 刑 事 訴 訟 法 第 345 条 の 無 罪 と その 他 の 裁 判 とは 別 異 に 解 釈 すべきである 無 罪 判 決 の 場 合 には, 上 訴 審 に 係 属 しても 新 たに 勾 留 されることなく, 無 罪 の 原 判 決 が 破 棄 されて 差 戻 しになるか, 破 棄 自 判 で 有 罪 判 決 を 受 けた 場 合 には,その 時 点 で 改 めて, 被 告 人 の 身 体 拘 束 の 当 否 が 判 断 されるようにすべきである 4

5 無 罪 判 決 については, 無 罪 という 実 体 判 断 そのものに 身 体 不 拘 束 という 勾 留 を 禁 止 する 効 力 があることを 明 確 にするため, 同 条 2 項 を 新 設 し, 判 決 で 無 罪 の 言 渡 しがあったときは, 上 訴 審 において 原 判 決 が 破 棄 されるまで, 新 たに 勾 留 状 を 発 することはできない との 規 定 を 置 くべきである 5

新 てつや 法 律 事 務 所 報 酬 基 準 第 1 章 総 則 ( 目 的 ) 第 1 条 この 弁 護 士 報 酬 基 準 は 当 職 が 事 件 受 任 に 当 たって 受 任 の 範 囲 を 明 確 にし その 費 用 を 明 らかにすることによって 依 頼 者 と 弁 護 士 との 間 の 認 識 を 共 通 にして その 後 のトラブ ルが 発 生 することを 防 止 するとともに 相 互

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