漢方薬

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1 抗 うつ 薬 Pharmaceutical education for the general public. Advanced level text to learn medicine. 深 井 良 祐 [ 著 ] 1

2 目 次 第 一 章. うつ 病 の 病 態 P うつ 病 の 症 状 P うつ 病 の 種 類 と 躁 病 (そう 病 ) P うつ 病 の 種 類 P.9 第 二 章. うつ 病 の 発 症 と 治 療 薬 ( 三 環 系 抗 うつ 薬 四 環 系 抗 うつ 薬 ) P 神 経 伝 達 物 質 とシナプス P 三 環 系 抗 うつ 薬 P.12 第 三 章. 抗 うつ 薬 (うつ 病 治 療 薬 ) P 選 択 的 セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SSRI) P 選 択 的 セロトニン ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SNRI) P ノルアドレナリン セロトニン 作 動 薬 (NaSSA) P.17 2

3 第 一 章.うつ 病 の 病 態 うつ 病 による 自 殺 者 は 毎 年 何 万 人 にも 及 び その 患 者 数 も 多 いです うつ 病 で 最 も 想 像 しやすい 症 状 としては 気 分 が 落 ち 込 む 抑 うつ 状 態 があります 健 康 な 人 であっても 気 分 が 落 ち 込 んだり 暗 い 気 持 ちになったりすることはあります ただし 健 康 な 人 であれば たとえ 一 時 的 に 気 分 が 落 ち 込 んでいたとしても 気 分 転 換 を 行 ったり 時 間 が 経 っ たりすることによって 暗 い 気 持 ちから 自 然 と 回 復 していきます これがうつ 病 患 者 であると 強 い 抑 うつ 状 態 がずっと 続 いてしまいます 特 に 何 の 理 由 がなくて も 暗 い 憂 鬱 な 状 態 がずっと 続 いてしまうのがうつ 病 です うつ 病 は 心 の 病 気 と 言 われています ただし もっと 正 確 に 言 えば 脳 の 神 経 伝 達 物 質 の 働 きに 異 常 が 起 こっています そのため 気 持 ちの 持 ちよう や 気 合 い などによって 病 気 が 治 らないのと 同 じように 適 切 な 治 療 を 行 わなければうつ 病 から 回 復 することもありません これら 脳 に 異 常 が 起 こっていることが 原 因 でうつ 病 を 発 症 しているため この 脳 の 異 常 を 正 すこ とができればうつ 病 から 回 復 できる ということも 理 解 できます 3

4 1-1. うつ 病 の 症 状 健 康 な 状 態 であれば 気 分 の 落 ち 込 みだけで 済 みます しかし うつ 病 では 憂 鬱 な 気 分 や や る 気 が 出 ない などの 感 情 面 だけでなく 身 体 症 状 として 体 にもさまざまな 症 状 が 出 てしまいます これがただの 気 分 の 落 ち 込 みとうつ 病 との 違 いでもあります さらに これらの 症 状 が 一 日 の 中 で 変 動 することもうつ 病 の 特 徴 となっています 例 えば 昼 は 気 分 の 落 ち 込 みが 激 しかったとしても 夕 方 には 回 復 していることもあります このように 一 日 の 中 で 症 状 の 変 動 があることを 日 内 変 動 と 言 います 多 くの 場 合 うつ 病 の 症 状 は 朝 に 悪 く 夕 方 に 近 づくにつれて 回 復 していきます 4

5 精 神 症 状 心 の 病 気 であるうつ 病 を 正 確 に 言 えば 脳 の 神 経 伝 達 物 質 に 異 常 が 起 こっている 病 気 となります この 神 経 伝 達 物 質 としては 意 欲 や やる 気 に 関 わるシグナルが 不 足 しています そのため 必 然 的 に 意 欲 などが 失 われてしまうことになります その 結 果 として 憂 鬱 感 などの 精 神 症 状 が 出 てしまいます うつ 病 による 精 神 症 状 としては 以 下 のようなものがあります 役 割 特 徴 感 情 の 減 退 憂 うつな 気 分 が 続 く 不 安 や 焦 り イライラなど 意 欲 の 消 失 何 事 にも 関 心 がなくなってしまう 以 前 熱 中 していた 趣 味 にもやる 気 が 起 きない 思 考 の 停 止 集 中 力 の 低 下 や 判 断 が 遅 い 妄 想 思 い 込 み(もうこれ 以 上 やっていけないなど) 5

6 身 体 症 状 健 康 な 人 の 気 分 の 落 ち 込 みであれば 時 間 経 過 と 共 に 回 復 していきます しかし うつ 病 では 理 由 もないのに 上 記 のような 精 神 症 状 が 引 き 起 こされます そして 重 要 なのは これら 精 神 症 状 だけでなく 身 体 症 状 として 体 の 不 調 まで 表 れてしまう と いう 事 があります うつ 病 による 身 体 症 状 の 代 表 的 なものとしては 睡 眠 障 害 や 疲 労 倦 怠 感 があります また その 他 の 症 状 も 身 体 症 状 として 表 れます 以 下 にうつ 病 によって 引 き 起 こされる 主 な 身 体 症 状 について 載 せてあります 役 割 睡 眠 障 害 特 徴 不 眠 症 がほとんどであるが 中 には 眠 りすぎる 過 眠 もある 早 朝 覚 醒 が 問 題 となる( 午 前 3 時 や 4 時 に 目 覚 める) 疲 労 倦 怠 感 頭 痛 ( 石 の 帽 子 を 被 っているような 違 和 感 ) 肩 こり( 鉛 の 鉄 板 を 背 負 っている 感 じ) 食 欲 減 退 体 重 減 少 食 欲 がなくなることによって 体 重 が 減 少 する 食 べすぎが 問 題 となる 過 食 の 場 合 もある 6

7 仮 面 うつ 病 うつ 病 の 代 表 的 な 症 状 としては 憂 鬱 な 状 態 が 続 くなどの 精 神 症 状 が 一 般 的 です しかし うつ 病 の 中 には 精 神 症 状 があまり 目 立 たず 身 体 症 状 が 顕 著 に 表 れている 場 合 もあります このような 場 合 であると 頭 痛 がひどい 胃 の 調 子 が 悪 い 食 欲 がない などで 医 療 機 関 を 受 診 して 検 査 を 行 ったとしても 異 常 が 見 つかりません この 場 合 であると 精 神 症 状 は 出 ていないが 身 体 症 状 が 出 ているという 仮 面 を 被 ったようなうつ 病 となります そのため 仮 面 うつ 病 と 呼 ばれます 体 に 症 状 が 明 らかに 表 れているにもかかわらず 検 査 で 異 常 が 見 られないとき その 後 ろに 実 はう つ 病 が 隠 れていることもあります この 場 合 であれば うつ 病 の 治 療 を 行 うことによってこれら 身 体 症 状 が 改 善 することもあります 7

8 1-2. うつ 病 の 種 類 と 躁 病 (そう 病 ) 気 分 障 害 で 問 題 となる 病 気 としてはうつ 病 だけではありません うつ 病 の 代 表 的 な 症 状 として 気 分 が 落 ち 込 んでしまう 状 態 がありますが うつ 病 を 考 える 上 でこれら 気 分 の 落 ち 込 みと 全 く 逆 の 病 気 を 理 解 することも 必 要 になります 気 分 の 落 ち 込 み の 逆 の 症 状 としては 気 分 の 高 揚 があります ただし 健 康 な 状 態 でやる 気 に 溢 れている 状 態 なら 良 いのですが これが 病 気 によって 自 分 は 天 才 で 何 でもできる と 思 い 込 んだり 他 人 を 見 下 して 敵 対 的 になったりします つまり ただやる 気 があるのではなくてその 状 態 が 行 き 過 ぎてしまいます このような 病 気 を 躁 病 (そう 病 )と 言 います この 状 態 であると 自 分 には 才 能 があると 思 い 込 んでリスクの 高 いビジネスやギャンブルを 始 め るなどの 危 険 性 があります このような 症 状 によって 人 間 関 係 を 損 ねる 危 険 性 も 高 いです そして 重 要 なのは うつ 病 患 者 では 躁 病 とうつ 病 が 交 互 に 表 れることがある という 事 にあり ます つまり ある 時 点 では 気 分 の 落 ち 込 みが 激 しかったのに その 数 日 後 では 夜 も 眠 らずに 活 発 に 活 動 している 事 もあります このように うつ 症 状 と 躁 状 態 が 相 互 に 繰 り 返 される 病 気 を 双 極 性 障 害 と 言 います つまり うつ 病 は 抑 うつ 状 態 だけが 問 題 となるのではありません その 種 類 によっては 躁 状 態 が 表 れることによって ある 時 は 夜 も 寝 ずに 活 発 に 活 動 することもあります 8

9 1-3. うつ 病 の 種 類 前 述 の 通 り うつ 病 には 種 類 があります 一 言 でうつ 病 と 言 ってもその 種 類 が 分 かれているため それぞれのタイプによって 治 療 法 を 変 えなければいけません そのため どの 種 類 のうつ 病 を 発 症 しているかを 見 極 めて 治 療 する 必 要 があります うつ 病 の 種 類 としては 主 に 大 うつ 病 ( 単 極 性 うつ 病 )と 双 極 性 障 害 の 二 種 類 があります 大 うつ 病 ( 単 極 性 うつ 病 ) 気 分 の 落 ち 込 みなどの 抑 うつ 状 態 のみが 出 現 する 症 状 が 大 うつ 病 ( 単 極 性 うつ 病 )です や る 気 が 起 こらないなどの 気 分 障 害 で 最 もよく 見 られる 症 状 が 大 うつ 病 です 双 極 性 障 害 気 分 の 落 ち 込 みが 表 れる 大 うつ 病 ( 単 極 性 うつ 病 )に 対 して うつ 症 状 と 躁 状 態 が 交 互 で 表 れる 病 気 として 双 極 性 障 害 があります この 時 躁 状 態 が 比 較 的 強 く 表 れる 双 極 性 障 害 を 双 極 Ⅰ 型 障 害 と 呼 びます また 躁 状 態 が 軽 い 場 合 を 双 極 Ⅱ 型 障 害 と 言 います 大 うつ 病 と 双 極 性 うつ 病 では その 原 因 や 経 過 だけでなく 治 療 薬 も 異 なります 9

10 非 定 型 うつ 病 うつ 病 の 種 類 としては 主 に 大 うつ 病 と 双 極 性 うつ 病 の 二 種 類 があります しかし 中 に はこれら いつも 落 ち 込 んでいる 不 眠 症 状 が 表 れている などの 症 状 に 当 てはまらないうつ 病 があります このようなうつ 病 は 一 般 的 なうつ 病 の 枠 に 収 まらないことから 非 定 型 うつ 病 と 呼 ばれています 若 い 人 に 多 いうつ 病 であり 特 に 女 性 で 発 症 しやすいです そして この 非 定 型 うつ 病 の 特 徴 としては 次 のようなものがあります 一 般 的 なうつ 病 因 子 非 定 型 うつ 病 好 きなことにもやる 気 が 出 ない 気 分 憂 うつな 気 分 であっても 好 きなことには 元 気 が 出 る 早 朝 覚 醒 などの 睡 眠 障 害 が 表 れる 睡 眠 いくら 寝 ても 眠 い: 過 眠 傾 向 朝 に 抑 うつ 状 態 が 強 く 夕 方 にかけて 症 状 が 軽 くなる 時 間 帯 朝 は 症 状 が 軽 く 夕 方 に なるにつれて 抑 うつ 状 態 となる 食 欲 が 減 退 し 体 重 が 落 ちる 食 欲 過 食 となり 体 重 が 増 加 する 頭 の 回 転 が 鈍 るため 対 人 関 係 にも 鈍 感 となる 対 人 関 係 批 判 や 拒 絶 に 敏 感 となり 落 ち 込 みや 怒 りの 傾 向 が 強 くなる 10

11 第 二 章.うつ 病 の 発 症 と 治 療 薬 ( 三 環 系 抗 うつ 薬 四 環 系 抗 うつ 薬 ) うつ 病 の 発 症 原 因 ははっきりと 解 明 されていませんが その 人 の 性 格 や 周 りの 環 境 の 変 化 に よるストレス が 関 係 していると 考 えられています これらの 因 子 が 脳 の 神 経 伝 達 物 質 に 影 響 を 与 えることで 脳 が 正 常 に 働 かなくなります その 結 果 として うつ 病 が 引 き 起 こされます この 時 うつ 病 患 者 の 脳 内 ではセロトニンとノルアドレナリンと 呼 ばれる 物 質 が 減 少 しています セロトニンやノルアドレナリンは 食 欲 や 意 欲 活 力 などに 関 係 しているため これらの 神 経 伝 達 物 質 が 減 少 すると 憂 うつな 気 分 や やる 気 が 起 こらない などの 症 状 が 表 れてしまいます 2-1. 神 経 伝 達 物 質 とシナプス 脳 内 で 発 生 した 指 令 は 神 経 系 を 通 ることで 伝 わっていき ます このとき 神 経 系 でのシグナルを 伝 える 物 質 が 神 経 伝 達 物 質 です そして このシグナル 伝 達 に 関 わる 細 胞 としてシナプス があります このシナプスに 神 経 伝 達 物 質 などの 化 学 物 質 が 関 与 することによって シグナルが 伝 わっていきます このときのシナプスの 様 子 を 右 に 示 します 情 報 としてシグナルがシナプスに 伝 わると セロトニンやノルアドレナリンが 放 出 されます 神 経 細 胞 と 神 経 細 胞 との 間 に 放 出 された 神 経 伝 達 物 質 は その 下 にある 神 経 細 胞 に 作 用 します これ が 続 いていくことによって 情 報 が 伝 わっていきます この 時 神 経 細 胞 との 間 に 放 出 された 神 経 伝 達 物 質 がその 下 にある 受 容 体 に 作 用 しなかった 場 合 余 った 神 経 伝 達 物 質 は 再 び 細 胞 内 へと 取 り 込 まれます つまり 神 経 伝 達 物 質 の 再 取 り 込 みが 行 わ れます 11

12 2-2. 三 環 系 抗 うつ 薬 うつ 病 患 者 ではセロトニンやノルアドレナリンなどの 神 経 伝 達 物 質 が 減 少 しています そのため うつ 病 を 改 善 させるためには これらセロトニンやノルアドレナリンの 作 用 を 強 めることができれ ば 良 いです この 時 これら 神 経 伝 達 物 質 の 働 きを 強 める 方 法 としては 神 経 伝 達 物 質 の 再 取 り 込 みを 阻 害 す る という 方 法 があります 前 述 の 通 り シナプスから 放 出 された 神 経 伝 達 物 質 はその 下 にある 神 経 細 胞 に 作 用 することで 情 報 を 伝 えていきます この 神 経 伝 達 物 質 が 余 った 場 合 再 び 細 胞 内 へと 回 収 されます この 作 用 が 再 取 り 込 みです そして このセロトニンやノルアドレナリンなどの 神 経 伝 達 物 質 の 再 取 り 込 みに 関 わる 輸 送 体 と してアミントランスポーターがあります そのため このアミントランスポーターを 阻 害 すれば 神 経 伝 達 物 質 が 取 り 込 まれなくなります この 結 果 セロトニンやノルアドレナリンなどの 神 経 伝 達 物 質 がより 長 くシナプス 間 に 留 まること ができます これによって 神 経 伝 達 物 質 の 作 用 時 間 が 長 くなり その 量 も 増 えます 神 経 伝 達 物 質 の 作 用 が 増 強 されるため うつ 病 を 改 善 させることができます 12

13 このように 神 経 伝 達 物 質 の 再 取 り 込 みを 抑 制 す ることで 抗 うつ 作 用 を 示 す 三 環 系 抗 うつ 薬 としてイ ミプラミン( 商 品 名 :トフラニール) アミトリプチ リン( 商 品 名 :トリプタノール)などがあります なお 三 環 系 抗 うつ 薬 はその 構 造 の 中 に 三 つの 環 があることから 三 環 系 と 呼 ばれています 三 環 系 抗 うつ 薬 の 副 作 用 三 環 系 抗 うつ 薬 の 副 作 用 として 抗 コリン 作 用 があります 神 経 伝 達 物 質 としてはセロトニン やノルアドレナリン 以 外 にも アセチルコリンと 呼 ばれる 物 質 も 存 在 します このアセチルコリン に 拮 抗 する( 阻 害 する) 作 用 であるため 抗 コリン 作 用 と 呼 ばれています アセチルコリンは 体 を 休 めようとする 時 に 働 く 神 経 伝 達 物 質 です 体 を 休 めている 時 とは 例 え ば 食 事 中 があります これら 食 事 中 は 胃 酸 がたくさん 分 泌 されて 腸 の 運 動 は 活 発 になります また 運 動 時 などとは 違 ってトイレにゆっくり 行 く 余 裕 も 生 まれているため 排 尿 が 促 進 されます このようにアセチルコリンの 働 きは 体 を 休 めている 時 にどのような 生 体 反 応 が 起 こるか を 想 像 すれば 容 易 に 理 解 することができます そして 三 環 系 抗 うつ 薬 はこのアセチルコリンの 働 きを 阻 害 する 抗 コリン 作 用 があります アセ チルコリンの 働 きが 阻 害 されるため 前 述 した 作 用 の 逆 が 起 こります つまり 唾 液 が 分 泌 されなくなることによる 口 渇 ( 口 の 乾 き)や 腸 運 動 の 抑 制 排 尿 困 難 などが 引 き 起 こされます セロトニンやノルアドレナリンなどの 再 取 り 込 みだけを 阻 害 すれば 良 いのですが その 作 用 とは 別 にアセチルコリンが 作 用 する 受 容 体 まで 阻 害 することに 問 題 があります これによって 抗 コリ ン 作 用 として 副 作 用 が 起 きてしまいます 13

14 四 環 系 抗 うつ 薬 三 環 系 抗 うつ 薬 が 三 つの 環 で 構 成 されているのに 対 し 四 環 系 抗 うつ 薬 は 四 つの 環 で 形 成 されて います 三 環 系 抗 うつ 薬 と 比 べて 作 用 発 現 が 速 く 持 続 時 間 が 長 いことが 特 徴 です 現 在 ではこれら 三 環 系 抗 うつ 薬 や 四 環 系 抗 うつ 薬 をうつ 病 治 療 薬 として 使 用 する 事 はほとんどな いので 簡 単 な 紹 介 で 終 わります なお 四 環 系 抗 うつ 薬 としてはミアンセリン( 商 品 名 :テトラミド) セチプチリン( 商 品 名 :テ シプール) マプロチリン( 商 品 名 :ルジオミール)などがあります 14

15 第 三 章. 抗 うつ 薬 (うつ 病 治 療 薬 ) うつ 病 患 者 ではセロトニンやノルアドレナリンなどの 神 経 伝 達 物 質 の 働 きが 弱 っています その ため これらの 働 きを 強 めることができればうつ 病 を 治 療 することができます 現 在 では 三 環 系 抗 うつ 薬 などに 見 られる 抗 コリン 作 用 などの 副 作 用 を 大 幅 に 軽 減 した 薬 が 使 用 さ れます 3-1. 選 択 的 セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SSRI) 前 述 の 通 り うつ 病 患 者 ではセロトニン 量 が 減 少 しています そのため このセロトニン 量 を 増 やすことができれば うつ 病 を 改 善 することができます 三 環 系 抗 うつ 薬 ではアミントランスポーターを 阻 害 することによって セロトニンやノルアドレ ナリンの 再 取 り 込 みを 抑 制 することを 学 習 しました これと 同 じように セロトニンの 再 取 り 込 みだけに 関 係 している 輸 送 体 (トランスポーター)が 存 在 します このような 輸 送 体 をセロトニントランスポーターと 言 います そのため このセロトニントランスポーターを 阻 害 することができれば 脳 内 のセロトニン 量 が 上 昇 してうつ 病 を 治 療 することができます このように 脳 内 で 選 択 的 にセロトニンの 再 取 り 込 み を 阻 害 する 薬 を 選 択 的 セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SSRI)と 呼 びます SSRI はセロトニンの 再 取 り 込 みだけに 関 与 している 輸 送 体 を 阻 害 します そのため SSRI の 特 徴 としては 三 環 系 抗 うつ 薬 や 四 環 系 抗 うつ 薬 に 見 られていた 抗 コリン 作 用 を 大 幅 に 軽 減 した と いう 事 があります 15

16 このように セロトニンの 再 取 り 込 みを 選 択 的 に 阻 害 することで 抗 うつ 作 用 を 示 す 薬 としてフル ボキサミン( 商 品 名 :ルボックス デプロメール) パロキセチン( 商 品 名 :パキシル) セルトラ リン( 商 品 名 :ジェイゾロフト) エスシタロプラム( 商 品 名 :レクサプロ)があります なお SSRI はうつ 病 以 外 に 強 迫 性 障 害 やパニック 障 害 などにも 用 いられます 3-2. 選 択 的 セロトニン ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SNRI) SSRI はセロトニンの 再 取 り 込 みを 選 択 的 に 阻 害 することで 脳 内 のセロトニン 量 を 増 大 させます それに 対 して セロトニンとノルアドレナリンの 二 つの 神 経 伝 達 物 質 の 再 取 り 込 みを 阻 害 する 薬 が あります うつ 病 患 者 ではセロトニンとノルアドレナリンの 量 が 減 っているため この 二 つの 神 経 伝 達 物 質 を 両 方 とも 増 大 させる という 考 えに 基 づいています このようにセロトニンの 再 取 り 込 みだけでなく セロトニンとノルアドレナリンの 両 方 の 再 取 り 込 みを 阻 害 する 薬 を 選 択 的 セロトニン ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SNRI)と 言 います セロトニンとノルアドレナリンの 再 取 り 込 みを 阻 害 することによってうつ 病 を 治 療 する 薬 として ミルナシプラン( 商 品 名 :トレドミン) デュロキセチン( 商 品 名 :サインバルタ)などがあります 16

17 3-3. ノルアドレナリン セロトニン 作 動 薬 (NaSSA) SSRI や SNRI は 神 経 伝 達 物 質 の 再 取 り 込 みを 阻 害 することによって セロトニンやノルアドレナ リンの 量 を 増 やします ただし これらノルアドレナリンやセロトニンの 放 出 量 を 増 やしたり 受 容 体 の 作 用 を 増 強 させ たりすることによっても 神 経 伝 達 物 質 の 働 きを 強 めることができます ノルアドレナリンはα 受 容 体 に 作 用 することによって その 効 果 を 発 揮 します ただし この 時 のノルアドレナリンが 作 用 するα 受 容 体 とは 厳 密 に 言 えばα 1 受 容 体 を 指 します α 受 容 体 にはα 1 受 容 体 とα 2 受 容 体 が 存 在 します この 時 α 1 受 容 体 にノルアドレナリンが 作 用 することによって 意 欲 や 活 力 などの 作 用 が 引 き 起 こされます これに 対 して 脳 内 に 存 在 するα 2 受 容 体 はノルアドレナリンの 放 出 を 抑 制 する 作 用 があります つまり α 1 受 容 体 の 作 用 と 拮 抗 します そのため α 2 受 容 体 がノルアドレナリンの 放 出 を 抑 制 するのであれば このα 2 受 容 体 を 阻 害 す ればその 逆 にノルアドレナリンの 放 出 が 促 進 されるはずです このように α 2 受 容 体 を 阻 害 することによってノルアドレナリンの 放 出 を 促 進 させる 薬 としてノ ルアドレナリン セロトニン 作 動 薬 (NaSSA)があります また NaSSA はノルアドレナリンの 放 出 を 促 進 するだけでなく セロトニンの 作 用 を 増 強 させる 働 きがあります 17

18 セロトニンが 作 用 するセロトニン 受 容 体 (5-HT 受 容 体 )の 中 でも この 受 容 体 はさらに 5-HT1 受 容 体 5-HT2 受 容 体 5-HT3 受 容 体 と 分 けることができます この 時 セロトニンによる 抗 うつ 作 用 には 5-HT1 受 容 体 が 関 係 しています セロトニンは 5-HT とも 呼 ばれます NaSSA にはセロトニン 受 容 体 を 阻 害 する 作 用 を 有 していますが このときの 阻 害 としては 5-HT2 受 容 体 と 5-HT3 受 容 体 に 対 してのみ 選 択 的 に 阻 害 します つまり 抗 うつ 作 用 に 関 係 している 5-HT1 受 容 体 までは 阻 害 作 用 を 示 しません NaSSA によって 5-HT2 受 容 体 と 5-HT3 受 容 体 が 既 に 阻 害 されているため 脳 内 に 放 出 されたセ ロトニンは 残 りの 5-HT1 受 容 体 に 作 用 するしか 選 択 肢 がありません そして 前 述 の 通 り 5-HT1 受 容 体 は 抗 うつ 作 用 に 関 係 しているため 結 果 としてうつ 病 を 治 療 す る 作 用 が 強 まります このように NaSSA はα 2 受 容 体 や 5-HT2 受 容 体 5-HT3 受 容 体 などを 阻 害 することによって うつ 病 を 治 療 することができます このような 薬 としてはミルタザピン( 商 品 名 :リフレックス レメロン)があります 普 通 に 考 えれば ノルアドレナリンが 作 用 するα 受 容 体 や セロトニンが 作 用 するセロトニン 受 容 体 (5-HT 受 容 体 ) を 阻 害 すると ノルアドレナリンやセロトニンの 量 が 減 ってしまってうつ 病 を 悪 化 させるように 考 えてしまいます しかし 作 用 する 受 容 体 やその 選 択 性 によってはノルアドレナリンやセロトニンを 増 強 すること が 可 能 となります 18

19 主 な 睡 眠 導 入 剤 三 環 系 抗 うつ 薬 アミトリプチリン イミプラミン トリプタノール トフラニール ミアンセリン テトラミド 四 環 系 抗 うつ 薬 セチプチリン テシプール マプロチリン ルジオミール フルボキサミン ルボックス デプロメール 選 択 的 セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SSRI) パロキセチン パキシル セルトラリン ジェイゾロフト エスシタロプラム レクサプロ 選 択 的 セロトニン ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 (SNRI) ミルナシプラン デュロキセチン トレドミン サインバルタ ノルアドレナリン セロトニン 作 動 薬 (NaSSA) ミルタザピン リフレックス レメロン 19

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