ロシア語ロシア文学研究第45号

Size: px
Start display at page:

Download "ロシア語ロシア文学研究第45号"

Transcription

1

2 日 本 ロシア 文 学 会 会 誌 規 定 1. 本 誌 は ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 と 称 する 2. 日 本 ロシア 文 学 会 会 員 ( 以 下 会 員 とする) はすべて 本 誌 に 投 稿 することができ る 3. 本 誌 の 発 行 は 毎 年 度 一 回 以 上 とする 4. 本 誌 の 編 集 は 編 集 委 員 会 がおこなう (イ) 編 集 委 員 会 は 委 員 長 および 各 支 部 の 推 薦 による 委 員 をもって 構 成 する 各 支 部 の 推 薦 による 委 員 の 内 訳 は 関 東 支 部 5 名, 関 西 支 部 2 名, 北 海 道 支 部 1 名, 東 北 支 部 1 名, 中 部 支 部 1 名, 西 日 本 支 部 1 名 とする (ロ) 委 員 長 は 理 事 会 が 会 員 のうちから 委 嘱 する (ハ) 支 部 推 薦 による 委 員 が 委 員 長 をつとめる 場 合, 当 該 支 部 は, 必 要 に 応 じて, 編 集 委 員 1 名 を 追 加 推 薦 することができる (ニ) 委 員 長 および 委 員 の 任 期 は 2 年 とする ただし 留 任 を 妨 げない (ホ) 別 に 編 集 実 務 を 助 けるものとして, 編 集 員 を 若 干 名 おくことができる (ヘ) 委 員 会 は 原 稿 の 採 否 を 決 定 する また 必 要 ある 場 合 は 原 稿 の 修 正 を 求 めること ができる 5. 本 誌 の 掲 載 対 象 は 次 のものとする (イ) 研 究 論 文 (ロ) 学 会 研 究 報 告 要 旨 (ハ) 書 評 (ニ) 学 会 動 静 ほか 6. 掲 載 対 象 の 選 択 は 次 の 基 準 による (イ) 会 員 が 投 稿 し, 編 集 委 員 会 が 掲 載 を 適 当 と 認 めたもの (ロ) 編 集 委 員 会 がとくに 執 筆 依 頼 したもの 7. 原 稿 の 執 筆 要 項 は 別 に 定 める 8. 本 誌 の 内 容 は, 自 動 的 に 日 本 ロシア 文 学 会 ホームページの 掲 載 対 象 となる ただし 図 版 など 著 作 権 上 の 問 題 がある 部 分 はその 限 りでない 1968 年 10 月 制 定 1994 年 10 月 1995 年 9 月 1998 年 10 月 1999 年 10 月 2003 年 7 月 2005 年 5 月 2006 年 7 月 修 正 2009 年 10 月 最 終 改 正

3 ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 第 45 号 2013 年 目 論 文 高 橋 知 之 プレシチェーエフの 青 春 ペトラシェフスキー サークルの 預 言 者 アハ ート 1 松 本 隆 志 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 アハ ート19 澤 直 哉 書 物 の 解 体 ウラジーミル ナボコフ マーシェンカ をめぐって アハ ート40 松 下 隆 志 再 定 義 される 社 会 主 義 リアリズム ミハイル エリザーロフ 図 書 館 員 をめぐって アハ ート57 朝 妻 恵 里 子 ロマン ヤコブソンの 造 格 論 を 展 開 する 周 縁 性 が 意 味 すること アハ ート77 中 堀 正 洋 中 世 ロシアの 異 教 神 ヴォロスの 機 能 に 関 する 一 考 察 天 体 との 関 係 を 中 心 に アハ ート98 宮 崎 衣 澄 イコンにおけるマクシム グレク ロシア 正 教 古 儀 式 派 のシンボルとしての 図 像 形 成 アハ ート116 塚 崎 今 日 子 北 極 の 英 雄 たちのノヴィナ 1930 年 代 ソ 連 による 北 極 征 服 とソヴィエト フォークロア アハ ート139 北 井 聡 子 コロンタイ 思 想 にみられる 女 性 嫌 悪 働 き 蜂 の 恋 におけるスチヒーヤの 克 服 アハ ート163 本 田 晃 子 映 画 は 建 築 する 輝 ける 道 に 見 る 社 会 主 義 リアリズムの 象 徴 空 間 アハ ート182 太 田 丈 太 郎 鳴 海 完 造 日 記 小 山 内 薫 のモスクワ アハ ート205 斎 藤 慶 子 日 ソ 文 化 交 流 におけるチャイコフスキー 記 念 東 京 バレエ 学 校 ソ 連 文 化 省 資 料 を 追 って アハ ート227 書 評 アハ ート247 貝 澤 哉, 野 中 進, 中 村 唯 史 編 著 再 考 ロシア フォルマリズム 言 語 メディ ア 知 覚 ( 西 中 村 浩 ) 番 場 俊 著 ドストエフスキーと 小 説 の 問 い ( 乗 松 亨 平 ) 亀 山 郁 夫 著 謎 とき 悪 霊 ( 越 野 剛 ) 長 縄 光 男 著 評 伝 ゲルツェン ( 坂 庭 淳 史 ) ワシーリー グロスマン 著 ( 斉 藤 紘 一 訳 ) 人 生 と 運 命 ( 前 田 しほ) Stefan M. Pugh. The Rusyn Language : A Grammar of the Literary Standard of Slovakia with Reference to Lemko and Subcarpathian Rusyn ( 岡 本 崇 男 ) 2013 年 度 日 本 ロシア 文 学 会 賞 アハ ート283 学 会 動 静 アハ ート285 4 学 会 共 同 シンポジウム ( 望 月 哲 男 ) ICCEES 第 9 回 世 界 大 会 (2015 年, 幕 張 )の 開 催 について ( 沼 野 充 義, 乗 松 亨 平 ) 役 員 一 覧 その 他 次

4 Бюллетень Японской ассоциации русистов No г. СОДЕРЖАНИЕ Статьи Такахаси Т. Юность Плещеева : пророк в кружке Петрашевского アハ ート 1 Мацумото Т. Образ «окна» в ранних рассказах А. Белого. アハ ート19 Сава Н. Разложение книги : о «Машеньке» В. Набокова アハ ート40 Мацушита Т. Переопределение социалистического реализма : Михаил Елизаров «Библиотекарь» アハ ート57 Асадзума Э. Развивая взгляды Романа Якобсона на творительный падеж : что стоит за признаком «периферийности» アハ ート77 Накахори М. К вопросу о функции древнерусского языческого бога Волоса : анализ с точки зрения соотнесения с небесным телом アハ ート98 Миядзаки И. Иконографические особенности Максима Грека. Формирование иконографии как символ старообрядческого святого アハ ート116 Цукадзаки К. Новины о героях Арктики. Завоевание Арктики и советский фольклор в 1930-х годах アハ ート139 Китаи С. «Мизогиния» как эмансипация женщин : преодоление «стихии» героинями в книге А. М. Коллонтай «Любовь пчёл трудовых» アハ ート163 Хонда А. Кино ( ре) конструирует пространство : символика пространства социалистического реализма в кинофильме «Светлый путь» アハ ート182 Ота Д. Дневники Кандзо Наруми : Каору Осанай в Москве アハ ート205 Сайто К. Токийская балетная школа имени П. И. Чайковского в контексте советско-японского культурного обмена : на основе документов министерства культуры СССР アハ ート227 Рецензии アハ ート247 Возвращаясь к русскому формализму язык, медиа, познание. Сборник статей под редакцией Х. Каидзава, С. Нонака и Т. Накамура. ( Х. Нисинакамура) С. Бамба. Достоевский и вопрос о романе. ( К. Норимацу) И. Камеяма. Разгадка Бесов Достоевского. (Г. Косино) М. Наганава. Герцен : его жизнь и мысль. (А. Саканива) В. Гроссман. Жизнь и судьба. (С. Маэда) S. M. Pugh. The Rusyn Language : A Grammar of the Literary Standard of Slovakia with Reference to Lemko and Subcarpathian Rusyn. ( Т. Окамото) Премия ЯАР за лучшие работы 2013 года アハ ート283 Хроника アハ ート285

5 Bulletin of the Japan Association for the Study of Russian Language and Literature No CONTENTS Articles T. Takahashi Pleshcheev in His Youth : the Prophet of the Petrashevsky Circle アハ ート 1 T. Matsumoto The Image of window in early prose works by Andrey Bely アハ ート19 N. Sawa Deconstruction of Book in V. Nabokovʼs Mashenʼka アハ ート40 T. Matsushita Redefinition of Socialist realism : Mikhail Elizarov Librarian アハ ート57 E. Asazuma On the Instrumental Case in Roman Jakobsonʼs Case Theory : What does the Feature Periphery mean? アハ ート77 M. Nakahori About the Function of Old Russian Pagan God Volos : An Analysis from the Viewpoint of the Relationship with the Celestial Body アハ ート98 I. Miyazaki Iconographical peculiarities of St. Maximus the Greek : Forming of iconography as a symbol of the Old Believersʼ saint アハ ート116 K. Tsukazaki Noviny of Arctic heroes : The Conquest of the Arctic and Soviet folklore in the 1930s アハ ート139 S. Kitai Misogyny as Womenʼs Emancipation : Overcoming Stihiia by female charactersof A. Kollontaiʼs Love of the Worker Bees アハ ート163 A. Honda Cinema (re)constructs Space : Socialist Realismʼs Symbolic Space in The Shining Path アハ ート182 J. Ohta Kanzo Narumiʼs diaries : Kaoru Osanai in Moscow アハ ート205 K. Saito The Tchaikovsky Memorial Tokyo Ballet School for Japanese-Soviet Cultural Exchange : Based on Documents from The Ministry of Culture of the Union of Soviet Socialist Republics アハ ート227 Reviews アハ ート247 H. Kaizawa, S. Nonaka, T. Nakamura (eds.). Russian Formalism reconsidered language, media,perception. (H. Nishinakamura) S. Bamba. Dostoevsky and the Question of Novels. (K. Norimatsu) I. Kameyama. Solving Riddles of Dostoevskyʼs The Possessed. (G. Koshino) M. Naganawa. Herzen : His Life and Thought. (A. Sakaniwa) V. Grossman. Life and Fate. (S. Maeda) S. M. Pugh. The Rusyn Language : A Grammar of the Literary Standard of Slovakia with Reference to Lemko and Subcarpathian Rusyn. (T. Okamoto) JASRLL 2013 Outstanding Research Award アハ ート283 Chronicle アハ ート285

6 ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 45 ( 日 本 ロシア 文 学 会,2013) プレシチェーエフの 青 春 ペトラシェフスキー サークルの 預 言 者 高 橋 知 之 はじめに 1840 年 代 はロシア 史 において 特 別 な 意 味 合 いを 持 っている それは, 理 想 社 会 の 建 設 を 夢 見 る 若 い 知 識 人 たちが,ユートピア 社 会 主 義 をはじめとする 西 欧 の 新 しい 思 想 を 貪 欲 に 吸 収 した 時 代 だった 1 この 注 目 すべき 10 年 間 の 掉 尾 を 飾 ったのが,ペトラシェフツィ (ペトラシェフスキー サークルのメン バーたち) と 呼 ばれる 一 群 である ペトラシェフスキー サークルは, 熱 烈 なフーリエ 主 義 者 ペトラシェフス キーを 中 心 に 形 成 されたサークルで, 周 辺 の 小 サークルも 含 め, 多 くの 青 年 知 識 人 たちが 関 わっていた ペトラシェフツィの 心 を 共 通 して 捉 えていたのは, サン=シモンやフーリエらのユートピア 社 会 主 義 だが, 彼 らはフォイエルバッ ハの 哲 学,プルードンの 無 政 府 主 義 など,よりラディカルな 思 想 にも 接 近 して いた その 活 動 は 思 索 の 領 域 に 留 まらず, 実 際 的 なプロパガンダの 方 法 が 討 議 され, 秘 密 結 社 の 設 立 さえ 謀 られていた しかし, 彼 らの 活 動 はあえなく 頓 挫 した 1849 年,ペトラシェフツィは 政 府 の 弾 圧 によって 軒 並 み 検 挙 され,う ち 二 十 一 名 に 有 罪 判 決 が 下 されたのである 彼 らはセミョーノフスキー 練 兵 場 に 連 行 され, 皇 帝 自 ら 演 出 した 銃 殺 の 茶 番 劇 にさらされた 後,それぞれの 刑 地 へ 旅 立 った 2 この 二 十 一 名 のなかに, 親 密 な 友 情 で 結 ばれた 二 人 の 作 家 がいた ドストエ 1

7 高 橋 知 之 フスキーとプレシチェーエフである ソ 連 の 研 究 者 コマローヴィチが 1924 年 に 発 表 した 論 文 に ドストエフス キーの 青 春 がある 3 これは,ドストエフスキーの 芸 術 と 実 生 活 を 40 年 代 と いう 時 代 に 位 置 づけ,40 年 代 ユートピアンとしてのドストエフスキーの 肖 像 を 浮 き 彫 りにした 古 典 的 な 研 究 である コマローヴィチは, 親 友 プレシチェー エフとの 関 係 を 軸 に 据 え, 友 情 の 高 まりと 終 わりを 通 して,ドストエフスキー の 夢 と 思 想, 及 びその 変 容 を 明 らかにしている とはいえ,コマローヴィチの 主 眼 はあくまでもドストエフスキーの 肖 像 を 描 くことにあり, 当 然 ながら,プ レシチェーエフは 引 き 立 て 役 に 甘 んじている しかし, 当 時,プレシチェーエフはペトラシェフスキー サークルを 代 表 す る 詩 人 として 名 高 く,ペトラシェフツィの 理 想 を 代 弁 する 存 在 だった それな らば,あえて 彼 を 主 人 公 に 据 えて プレシチェーエフの 青 春 を 描 くことにも, 十 分 な 意 義 が 認 められるはずである ペトラシェフツィの 言 葉 ( 文 学 テクスト) と 行 動 (サークルにおける 政 治 的 活 動 ) は, 緊 密 な 関 係 で 結 ばれていた プレシチェーエフもまた 例 外 で はない 彼 はユートピアンとして 書 き,ユートピアンとして 行 動 した 本 稿 で は,プレシチェーエフの 詩 作 と 政 治 的 活 動 を 分 析 し, 同 時 代 の 思 潮 やメディア を 背 景 に, 両 者 の 可 変 的 な 相 互 作 用 の 関 係 を 問 うていく それによって, ペ トラシェフスキー サークルの 詩 人 生 成 の 過 程 を 明 らかにし,40 年 代 ユー トピアンの 注 目 すべき 一 タイプを 抽 出 することを 目 的 とする 4 1. 詩 人 の 目 覚 め 詩 人, 小 説 家, 後 には 編 集 者 としても 活 躍 したプレシチェーエフは,1844 年, 詩 人 として 文 壇 にデビューした 当 初 は 清 新 な 抒 情 詩 を 書 いていたが,ペ トラシェフスキーやヴァレリアン マイコフとの 交 流 を 通 じて,やがて 社 会 問 題 に 目 覚 めていく «На зов друзей» (1845) で, 彼 は 次 のように 歌 う( 第 四 連 ) 2

8 プレシチェーエフの 青 春 В ужасной наготе еще не представали / Мне бедствия тогда страны моей родной, / И муки братьев духеще не волновали ; / Но ныне он прозрел, и чужд ему покой! (62) 5 その 頃 は, 祖 国 の 災 厄 が / 私 の 前 にさらけ 出 されることもなく,/ 兄 弟 の 苦 しみが 心 を 波 立 たせることもなかった / だが 今 はもう, 私 の 心 は 見 開 かれ, 安 らぎを 知 ることはない! この 時 期 のプレシチェーエフの 詩 は, 主 として 社 会 に 対 する 絶 望 を 表 明 してい る 1845 年 の 詩 «Странник» で, 語 り 手 の さすらい 人 は, 胸 に 去 来 す る 恋 人 の 言 葉 この 地 上 から 悲 しみも 苦 しみもなくなる 日 がきっと 来 る,もう すぐ! に 対 し, 独 り 答 える いや,その 日 は 遠 いのだよ / あれ 以 来,ど れほど 多 くの 美 しく 気 高 い 希 望 を / 私 が 失 ってしまったか,きみが 知 ったな ら! (65) このような 厭 世 感 は, 専 制 政 治 に 抑 圧 されていた 青 年 知 識 人 の 多 くに 共 通 す るものだった 6 先 の 見 えない 袋 小 路 にいた 彼 らに,ユートピア 社 会 主 義 はま さに 福 音 のように 響 いた 西 欧 の 進 歩 的 思 想 に 触 発 された 彼 らは, 黄 金 時 代 や 地 上 の 楽 園 といった 古 来 の 神 話 的 イメージのもとに, 理 想 社 会 の 建 設 を 夢 見 た その 探 求 の 場 の 一 つとなったのが,ペトラシェフスキー サークル だったのである ペトラシェフスキーの 自 宅 には 秘 かに 図 書 館 が 設 けられ, 発 禁 の 書 を 含 む 多 数 の 洋 書 が 蒐 集 されていた プレシチェーエフの 詩 には,ペトラシェフスキー サークルで 学 んだ 思 想 が さまざまに 反 映 されている «Страдал он в жизни много, много...» (1846) の 一 節 を 見 てみよう Ему твердили с укоризной, / Что не любил он край родной ; / Он мир считал своей отчизной / И человечество семьей! (80) 彼 は 幾 度 も 咎 められた,/ 生 まれた 国 を 愛 していないと / だが, 彼 に とっては 世 界 が 祖 国 であり / 全 人 類 が 家 族 だったのだ! 3

9 高 橋 知 之 ここには, 理 想 共 同 体 ファランジュ が 地 球 規 模 で 実 現 し, 調 和 の 時 代 が 到 来 することを 幻 視 したフーリエのコスモポリタン 的 思 想 の 影 響 が 見 られる ま た,プレシチェーエフが 親 しく 交 わっていた 批 評 家 マイコフの 影 響 も 読 み 取 る べきだろう マイコフは 国 民 性 に 一 定 の 価 値 を 置 くベリンスキーに 反 駁 し, 真 の 文 明 は 世 界 に 一 つしかなく, 国 民 性 は 個 人 の 内 発 的 な 発 展 を 阻 害 するものだ と 主 張 していた 7 また, 夫 ある 女 性 との 密 会 を 歌 う 1845 年 の 詩 «Гидальго» の お 前 の 美 貌 にかけて 誓 ったのだ / 私 はお 前 の 夫 に 復 讐 する / お 前 は 奴 のものでは ない! / 私 にはわかっている お 前 は 悪 辣 な 家 族 によって / 奴 へと 売 り 渡 さ れたのだ! (73) という 一 節 は, 家 父 長 制 的 な 欲 得 ずくの 結 婚 に 対 する 憎 悪 を 表 明 している ここには,ジョルジュ サンドの 影 響 に 発 する 女 性 の 解 放 という 問 題 への 反 応 が 窺 われる 8 このように,プレシチェーエフの 詩 作 はサークルでの 活 動 と 密 接 に 関 わり 合 っている そして,サークル 活 動 に 没 入 していくにつれ, 当 初 の 厭 世 的 な 暗 さは 影 を 潜 め, 楽 観 的 な 積 極 性 が 打 ち 出 されていく その 頂 点 に 位 置 するのが, プレシチェーエフの 名 高 い 詩 «Вперед! без страха и сомненья...» (1846) である ( 引 用 は 冒 頭 ) Вперед! без страха и сомненья / На подвиг доблестный, друзья! / Зарю святого искупленья / Уж в небесахзавидел я! (82) 進 め! 恐 れも 迷 いもなく / 英 雄 の 勲 をあげに, 友 よ!/ 神 聖 なる 贖 いの 曙 光 が/ 東 天 にきざすのを 見 た! ペトラシェフツィの 一 人 であるミリュコフやカシュキンは, 後 に 回 顧 して,こ の 詩 への 共 感 の 念 を 述 懐 している 9 マイコフによるプレシチェーエフ 論 は, この 詩 人 に 対 する 青 年 たちの 評 価 が 那 辺 にあったのかを 示 すものだろう マイ コフはプレシチェーエフを, 乙 女 と 月 の 詩 の 時 代 に 代 わる 社 会 的 潮 流 の 代 表 者 として 位 置 づけ, 現 代 における 最 初 の 我 々の 詩 人 と 呼 んでいる 10 清 4

10 プレシチェーエフの 青 春 新 な 抒 情 詩 から 出 発 したプレシチェーエフは,サークルでの 活 動 を 通 して, 青 年 たちの 夢 と 心 情 を 代 弁 する 詩 人 へと 変 貌 を 遂 げていったのだった 2. 預 言 者 のイメージ ここで,プレシチェーエフの 詩 に 繰 り 返 し 現 れる 預 言 者 (пророк) の 形 象 に 着 目 したい 1844 年 に 書 かれた 詩 «Дума» に, 次 のような 箇 所 がある Когда ж среди толпы является порою / Пророк с могучею, великою душою, / С глаголом истины священной на устах, / Увы, отвержен он! Толпа в его словах/ Учения любви и правды не находит... (61) 時 折, 群 集 のただ 中 に,/ 力 強 く, 偉 大 な 魂 を 持 った 預 言 者 が / 唇 に 神 聖 な 真 理 の 言 葉 を 湛 えて 現 れても,/ ああ, 彼 は 拒 まれてしまう!/ 群 集 が その 言 葉 に 愛 と 真 実 の 教 えを 見 出 すことはない この 詩 もまたプレシチェーエフの 社 会 的 な 目 覚 めを 示 すものであり, 神 聖 な 真 理 の 言 葉 を 告 げる 預 言 者 と 彼 を 拒 む 群 集 のイメージを 提 示 することで, 社 会 悪 に 無 関 心 な 人 びとを 非 難 する 内 容 となっている この 預 言 者 のイメージは, 別 の 詩 «Любовь певца» (1845) や«Поэту» (1846) では 詩 人 のイメージそのものと 重 なり 合 っている «Любовь певца» の 一 節 を 見 てみよう Провозглашать любви ученье / Повсюду нищим, богачам / Удел поэта... (70) 愛 の 教 えをこの 世 にあまねく / 貧 者 にも 富 者 にも 告 げること,/ それこそ が 詩 人 の 宿 命 5

11 高 橋 知 之 ここで 歌 われる 詩 人 は,«Дума» の 愛 と 真 実 の 教 え を 告 げる 預 言 者 と 同 じイメージのもとに 提 示 されている ロシア 詩 における 預 言 者 の 形 象 については, 言 うまでもなく 数 多 くの 先 例 がある 神 の 言 葉 を 預 かり, 未 来 を 予 言 することで 歪 んだ 社 会 を 告 発 した 旧 約 の 預 言 者 は,パメラ デイヴィッドソンが 指 摘 するように,デカブリスト たちの 詩 において 一 躍 重 要 な 意 味 を 持 つに 至 った 11 プレシチェーエフの 描 く 預 言 者 も, 同 じ 社 会 的 政 治 的 意 味 を 受 け 継 いでいるといえるだろう 一 方 で, 彼 の 預 言 者 像 には,いかにも 40 年 代 らしい 特 性 が 付 与 されている その 点 を 確 認 するために,プーシキンの 描 く 預 言 者 と 対 比 させてみよう プーシキンの 詩 に 登 場 する 預 言 者 は, 多 彩 なイメージ 群 を 形 成 している «Подражания Корану» (1824) では,ムハンマドの 姿 を 借 りて 雄 々しい 預 言 者 像 が 提 示 される «Андрей Шенье» (1825) では,アンドレ シェニエがロベスピ エールの 失 墜 を 予 言 しながら 断 頭 台 に 赴 く あるいはイザヤ 書 を 踏 まえた «Пророк» (1826) では, 預 言 者 への 文 字 通 りの 変 身 が 凄 絶 に 描 かれる 12 そ れに 対 し,プレシチェーエフの 詩 では, 預 言 者 や 詩 人 の 形 象 がすべて 同 じイメージのもとに 統 一 された 像 を 形 作 っている そのことを 裏 付 けるのが, «Дума» に 当 初 付 されていたエピグラフである 俺 たち 老 いた 鉛 の 兵 隊 は / みなを 列 に 並 ばせる / 列 から 外 れる 奴 がいれば / 俺 たちは 叫 ぶ 狂 人 ども を 打 ち 倒 せ! これはフランスの 詩 人 ベランジェの 詩 狂 人 たち から 引 か れている ベランジェ ( ) は 王 政 に 反 旗 を 翻 した 詩 人 で,フーリエやサン シモンの 教 義 を 反 映 したその 詩 は,ペトラシェフツィの 間 で 非 常 な 人 気 を 博 し ていた ベランジェの 言 う 狂 人 はサン シモンやフーリエを 指 しており, この 反 語 的 な 詩 の 要 諦 は 狂 人 は 嘲 笑 されるが,その 狂 人 こそが 人 々の 生 活 を 変 える 発 見 をするのだ という 点 にあった このことを 踏 まえれば,ベラン ジェの 詩 をエピグラフに 付 したことの 意 味 は 自 ずと 明 らかになる 神 聖 な 真 理 の 言 葉 を 語 りながら 群 集 から 拒 まれる 預 言 者 は,ベランジェの 狂 人 と 重 なり 合 う すなわちプレシチェーエフの 預 言 者 は,ユートピア 社 会 主 義 者 と 6

12 プレシチェーエフの 青 春 いう 同 時 代 的 なイメージのもとに 描 かれているのである 13 プレシチェーエフの 預 言 者 が 提 示 する 未 来 のヴィジョンには,40 年 代 を 支 配 した 黄 金 時 代 の 夢 が 投 影 されている そのことは,«Поэту» の だが 時 は 至 る / 苦 難 と 悲 嘆 と 不 安 の 日 々は 去 り 行 く (77) や さあ, 信 じよ 愛 と 和 解 の / 待 ち 望 んだ 時 が 来 る (78) などの 詩 行 によく 表 れている 一 方, プーシキンの 預 言 者 たちにはこのような 楽 天 性 は 見 られない アンドレ シェニエ において, 作 中 の 詩 人 が 予 言 するのは 暴 君 =ロベスピエールの 血 腥 い 破 滅 であって, 未 来 の 幸 福 ではない ( 時 は 来 る,その 日 は 遠 くない / 暴 君 は 倒 れる! 怒 りは /ついに 吹 き 荒 れる [ ] 14 ) ボリス ガスパーロフ の 言 う 繰 り 返 される 黙 示 録 的 なカタストロフというプーシキンの 予 言 的 な 観 念 15 に 比 べれば,プレシチェーエフのヴィジョンはあまりにも 楽 観 的 に 見 える しかし 少 なくとも,その 純 情 には 40 年 代 ユートピアンの 気 分 が 刻 印 されているのである 3. 演 じられた 預 言 者 プレシチェーエフの 詩 における 預 言 者 のイメージにはゆるぎない 同 質 性 があ るが, 一 方 で, 詩 の 語 り 手 と 描 かれる 預 言 者 との 間 の 心 的 距 離 は 確 実 に 変 化 し ているように 見 える 例 えば 初 期 の 詩 «Дума» では, 預 言 者 は 彼 として 描 かれており, 語 り 手 と 語 られる 預 言 者 の 間 に 一 定 の 距 離 がある しかし, 両 者 の 距 離 は 次 第 に 限 りなく 近 づいていく 1846 年 の 詩 «Сон» を 見 てみよう И вдруг явилась мне, прекрасна и светла, / Богиня, что меня пророком избрала. (75) そして 不 意 に, 私 を 預 言 者 に 選 んだ / 美 しく 輝 かしい 女 神 が 目 の 前 に 現 れた 7

13 高 橋 知 之 女 神 は, 選 ばれた 預 言 者 である 私 に 次 のように 語 る Зерно любви в сердца глубоко западет ; / Придет пора, и даст оно роскошный плод. / / И человеку той поры недолго ждать, / Недолго будет он томиться и страдать./ / Воскреснет к жизни мир... Смотри, уж правды луч / Прозревшим пламенем сверкает из-за туч! (76) 愛 の 種 子 は 人 の 心 の 深 くに 蒔 かれ,/ 時 が 至 れば, 豊 かな 実 りをもたらす // その 時 が 到 来 するのは 間 もない,/ 人 の 悩 みも 苦 しみも 長 く 続 くこと はない // 世 界 は 蘇 る 見 よ! はやくも 真 実 の 光 が, 雲 間 を 洩 れ て,/ 眼 開 かれた 人 びとを 煌 々と 照 らし 出 しているのを 女 神 の 言 葉 はユートピア 社 会 主 義 の 教 えそのものといっていい それは,エピ グラフにラムネーの 一 信 徒 の 言 葉 の 一 節 が 付 されていることからも 明 らか である ラムネーもまた,ペトラシェフツィの 間 で 愛 読 されていた 思 想 家 で, プレシチェーエフ 自 身, 友 人 のモルドヴィノフと 共 にその 全 訳 を 試 みてい る 16 女 神 の 言 葉 に 気 力 を 回 復 した 私 は, 迫 害 される 人 びとに 自 由 と 愛 の 言 葉 を 告 げるべく 再 び 歩 みだしていく この 詩 において, 語 り 手 の 私 は 預 言 者 その 人 であり, 詩 は 預 言 者 のモノ ローグ 的 な 性 質 を 強 めている この 傾 向 は,«Вперед! без страха и сомненья...» において 頂 点 に 達 する ( 引 用 は 第 二 連, 第 七 連 ) Смелей! Дадим друг другу руки / И вместе двинемся вперед. / И пусть под знаменем науки / Союз наш крепнет и растет. (82) 奮 い 立 て! 互 いに 腕 を 組 み / 共 に 前 へ 進 もう / 科 学 の 御 旗 に 集 い / 我 らの 同 盟 を 堅 固 にしよう Пусть нам звездою путеводной / Святая истина горит ; / И верьте, голос благородный / Недаром в мире прозвучит! (83) 8

14 プレシチェーエフの 青 春 神 聖 な 真 実 が / 導 きの 星 となって 我 らを 照 らさんことを / そして 信 じよ, 崇 高 な 声 が / あまねく 世 界 に 響 きわたることを! この 詩 はもはや 預 言 者 の 言 葉 そのものである «Сон» において, 愛 の 教 えを 告 げるために 再 び 立 ち 上 がった 預 言 者 が, 女 神 に 預 けられた 言 葉 を 自 らの 声 で 高 らかに 歌 っているのだ この 預 言 者 の 声 をあえて 作 者 の 声 と 区 別 する 必 要 はないだろう ここから 浮 かび 上 がってくるのは,プレシチェーエフが 自 ら 提 示 したユートピアン 像 に 自 らを 同 化 させていった 過 程 である サークルでの 活 動 に 邁 進 していく 中 で, 彼 は 自 らを 預 言 者 になぞらえ,その 役 割 を 演 じていく «Вперед! без страха и сомненья...» の 詩 は, 預 言 者 になりきったプレシチェーエフが 仲 間 たちに 呼 びかけている 言 葉 なのである この 時 プレシチェーエフは, 詩 人 をめぐる 一 つの 通 念 を 自 らの 規 範 としてい たと 考 えられる 詩 人 を 預 言 者 と 同 一 視 する 見 方 は,デイヴィッドソンが 粗 描 しているように,デルジャーヴィンやロモノーソフの 詩 に 始 まって,プーシキ ンの 詩 とその 解 釈 によって 決 定 的 なものとなり, 作 家 を 預 言 者 とみなすロシア 文 学 の 伝 統 を 形 成 するに 至 った 17 デイヴィッドソンによれば,プーシキンは 必 ずしも 詩 人 = 預 言 者 という 図 式 を 積 極 的 に 打 ち 出 したわけではなく,むしろ 宗 教 的 な 預 言 者 と 現 世 的 な 詩 人 の 間 の 齟 齬 に 自 覚 的 であったのだが, ゴーゴリやベリンスキーなどの 解 釈 によって 詩 人 = 預 言 者 =プーシキンという 見 方 が 定 式 化 された 18 プレシチェーエフは,すでに 確 立 されていたプーシキ ン 像 を 自 らの 規 範 として 実 践 したのだといえるだろう 4. 親 密 な 連 帯 プレシチェーエフの 演 技 のリアリティを 保 証 したのが,ペトラシェフス キー サークルという 共 同 体 であったと 考 えられる サークルは 思 想 を 論 じる 場 であると 同 時 に, 作 家 にとっては 検 閲 を 通 さずに 作 品 を 発 表 できる 場 でも 9

15 高 橋 知 之 あった ウィリアム トッドは 十 九 世 紀 前 半 のメディア 環 境 の 変 遷 を,パトロ ン 制,サロンやサークルなどの 親 密 な 連 帯 ( familiar associations ), 職 業 制 の 漸 次 移 行 として 捉 えている 19 この 流 れは, 乗 松 亨 平 の 言 葉 を 借 りれば 親 密 な 公 共 圏 の 破 綻 と 言 い 換 えられる 20 乗 松 が 論 じるように, 親 密 な 公 共 圏 において 融 合 していた 作 者 と 読 者 は, 雑 誌 の 勃 興 に 伴 う 職 業 性 の 進 展 に よって 分 断 されることになる 年 代 はその 解 体 期 にあたるが, 個 別 の 事 象 に 目 を 向 けた 場 合,サークルが 親 密 な 連 帯 としての 機 能 を 保 持 していた ことも 見 過 ごすべきではない 仲 間 からの 打 ち 解 けた 批 評 をもとに, 詩 人 は 作 品 を 書 き 直 していく その 詩 は 通 例, 仲 間 内 の 集 まりで 初 披 露 の 朗 読 をする ために 書 かれたものだ 発 信 者 と 受 信 者 の 関 係 は, 打 ち 解 けた 交 際, 共 有 さ れた 経 験, 共 有 された 価 値 観 によって,より 互 恵 的 なものとなった 22 親 密 な 連 帯 に 関 するトッドの 説 明 は,ペトラシェフスキー サークルにもそのま ま 当 てはまる 特 に 1848 年 以 降, 検 閲 の 強 化 に 伴 いメディア 環 境 が 狭 まると, 親 密 な 連 帯 の 重 要 度 は 増 したはずである プレシチェーエフの 詩 も 親 密 な 連 帯 の 応 答 関 係 の 中 に 機 能 していた プ レシチェーエフが 友 人 のミリューチンに 捧 げた 詩 がある これは 雑 誌 や 詩 集 に 発 表 されることのないまま 人 づてに 広 まっていった 詩 である その 最 後 の 一 連 を 見 てみよう Любовью к истине святой / В тебе, я знаю, сердце бьется, / И, верно, отзыв в нем найдется / На неподкупный голос мой. (90) 神 聖 なる 真 理 への 愛 で / 君 の 胸 は 脈 打 っている / そこにはきっと 見 つか る,/ 何 人 にも 買 収 されない 僕 の 声 への 共 鳴 が ここには, 神 聖 なる 真 理 への 愛 を 共 有 する 仲 間 との 親 密 な 応 答 関 係 が 示 さ れている このように,ペトラシェフスキー サークルは 親 密 な 連 帯 の 特 徴 を 保 持 していたが, 一 方 で 十 九 世 紀 初 頭 の 文 化 を 支 配 した 多 彩 な 演 劇 性 とは 無 縁 10

16 プレシチェーエフの 青 春 だった 十 九 世 紀 初 頭,サロンやサークルの 構 成 員 は 状 況 に 応 じて 衣 装 や 言 葉 遣 いを 変 え, 多 様 な 役 柄 を 演 じ 分 けることが 求 められた 23 ユーリー ロトマ ンが 精 査 しているように,こうした 行 動 の 多 様 性 に 対 し, 行 動 の 一 貫 性 を 打 ち 出 したのがデカブリストだった 24 革 命 家 は, 取 替 え 可 能 な 複 数 の 仮 面 ではな く, 一 貫 した 仮 面 を 志 向 する この 点 はペトラシェフツィも 同 様 であり,プレ シチェーエフにとって,それは 預 言 者 の 仮 面 だったのだ だが, 役 柄 が 複 数 であるにせよ 単 数 であるにせよ,その 演 技 が 成 り 立 つ ためには 観 者 による 承 認 が 前 提 となる この 点 で 注 目 すべきは,サークル 内 で プレシチェーエフに 付 せられていた アンドレ シェニエ の 異 名 である 25 アンドレ シェニエの 詩 はペトラシェフツィの 間 で 人 気 があり,メンバーによ る 訳 詩 も 発 表 されていた ロシアにおけるアンドレ シェニエのイメージ 形 成 において 大 きな 影 響 力 を 持 ったと 考 えられるのが,プーシキンの 詩 アンド レ シェニエ である 大 半 が 処 刑 を 待 つ 詩 人 の 独 白 からなるこの 詩 において, シェニエはロベスピエールの 破 滅 を 告 げながら 死 んでいく この 詩 が 書 かれた 直 後,ロシアではアレクサンドル 一 世 が 死 去 し,デカブリストの 乱 が 起 こった 詩 中 のシェニエの 予 言 は, 結 果 としてロシアの 現 実 を 予 言 するものとなったの である 26 アンドレ シェニエ は, 預 言 者 = 詩 人 =プーシキンという 観 念 形 成 に 大 きく 参 与 した アンドレ シェニエの 名 はロシアにおいて 預 言 者 のイ メージと 深 く 結 びついていたと 考 えられる ペトラシェフツィがプレシチェー エフに アンドレ シェニエ の 呼 び 名 を 付 与 したことは, 彼 を 預 言 者 と して 認 知 したことを 意 味 する 発 信 者 と 受 信 者 が 親 密 な 連 帯 を 形 成 してい たからこそ, 両 者 の 黙 契 のうちに, 預 言 者 プレシチェーエフが 生 まれたの だといえるだろう 5. 詩 と 現 実 1848 年,フランスで 二 月 革 命 が 勃 発 し,ロシアでも 情 勢 が 緊 迫 したものと なった これを 受 けて,ペトラシェフツィの 間 でも, 農 奴 解 放, 裁 判 制 度 の 改 11

17 高 橋 知 之 革, 言 論 の 自 由 といったテーマをめぐって 激 論 が 交 わされるようになった そ の 過 程 で, 急 進 派 のスペシネフと 慎 重 派 のペトラシェフスキーの 対 立 が 深 まっ ていく この 時 ペトラシェフツィの 前 には,サークルの 外 の 現 実 にいかに 関 わっていくかという 問 題 が 屹 立 していた この 難 題 に 最 も 直 接 的 に 反 応 したのが,パーリム=ドゥーロフ サークルの メンバーたちだった このサークルはペトラシェフスキー サークルの 分 派 と して 成 立 し, 当 初 は 親 密 な 仲 間 による 文 学 的 集 いを 志 向 していたが,やがてス ペシネフの 影 響 を 受 けて 過 激 化 し, 民 衆 に 対 するプロパガンダの 方 法 を 討 議 す るようになった 27 実 際 にフィリッポフの 十 戒 やニコライ グリゴーリエ フの 兵 士 の 話 などの 反 政 府 的 文 書 が 書 かれ,ミリュコフがラムネーの 一 信 徒 の 言 葉 を 抄 訳 した 28 さらにスペシネフを 中 心 とする 一 部 のメンバーは, プロパガンダ 文 書 の 頒 布 を 企 図 して 秘 かに 印 刷 機 の 製 造 を 進 めていた 29 彼 ら の 行 為 は 稚 拙 の 謗 りを 免 れないかもしれないが,それでも 現 実 に 一 歩 を 踏 み 出 したという 点 は 評 価 すべきだろう プレシチェーエフもまたスペシネフ 率 いる 急 進 派 に 与 していた パーリム= ドゥーロフ サークルの 中 心 メンバーとして, 自 宅 でも 数 回 の 会 合 を 開 いたり, 一 信 徒 の 言 葉 の 全 訳 に 取 り 組 んだりした さらに 翌 1849 年 3 月,プレシ チェーエフは 単 独 でモスクワに 赴 いた 尋 問 の 際 にモスクワへ 行 った 理 由 を 問 われた 彼 は, 眼 病 療 養 を 兼 ねてモスクワ 近 郊 の 親 戚 の 領 地 に 滞 在 するためだっ たと 弁 明 している 30 しかし, 実 際 の 活 動 を 見 れば,それが 表 向 きの 理 由 でし かないことは 一 目 瞭 然 だろう 五 月 初 めに 逮 捕 されるまでの 一 月 半, 彼 はモス クワに 留 まり 続 け,その 間 にグラノフスキー,クドリャフツェフらの 西 欧 派 知 識 人 やモスクワ 大 学 の 学 生 たちと 接 触 し, 学 生 の 一 人 からベリンスキーの ゴーゴリへの 書 簡 を 入 手 してペテルブルクに 送 っているのである (この 文 書 をサークルの 会 合 で 朗 読 したことが,ドストエフスキーの 主 な 罪 状 とな る) 31 モスクワのプレシチェーエフがドゥーロフに 送 った 書 簡 に 次 のような 箇 所 が ある 12

18 プレシチェーエフの 青 春 モスクワでは 筆 写 した 文 学 が 大 いに 読 まれています みなが 今,ベリンス キーのゴーゴリ 宛 の 書 簡,イスカンデルの 戯 曲 雷 雨 の 前 に,ツルゲー ネフの 喜 劇 居 候 に 夢 中 になっています これら 全 部,あなた 方 もきっ と 読 めますよ ミリュコフに 伝 えてください, 約 束 のものをじりじりしな がら 待 っていると 早 く 送 ってくれるほどいいのです [ ] ここには, 活 動 方 法 についての 僕 らの 考 えに 賛 同 してくれる 人 がいます 32 筆 写 した 文 学 に 関 する 箇 所 からは,プレシチェーエフが 禁 書 の 入 手 に 努 めてい たことが 窺 われる ミリュコフの 約 束 のもの が 指 しているのは,ミリュコ フが 抄 訳 した 一 信 徒 の 言 葉 と 推 測 される 活 動 方 法 についての 僕 らの 考 え とは,パーリム=ドゥーロフ サークルで 話 し 合 われていたプロパガンダ の 方 法 を 言 っているに 違 いない 当 時 モスクワ 大 学 の 学 生 だったフェオクティストフの 回 想 によれば,プレシ チェーエフは 学 生 たちを 前 に 次 のような 主 張 をしたという 民 衆 に 自 覚 を 促 すことが 不 可 欠 だ そのために 一 番 いい 方 法 は 外 国 の 著 作 をロシア 語 に 翻 訳 し, 民 衆 の 語 り 口 に 合 わせながら,それを 手 稿 で 広 めることで,うまくやれば 印 刷 だってできるだろう ペテルブルクではすでにこうした 目 的 で 結 社 が 作 られた もしそれに 手 を 貸 すことを 望 むなら, 取 り 掛 かりとしてラムネーの 一 信 徒 の 言 葉 を 選 んではどうか 33 プレシチェーエフのモスクワ 来 訪 が, 政 治 的 な プロパガンダ 活 動 を 目 的 としていたことはもはや 明 らかだろう 34 プレシチェーエフはペトラシェフツィの 思 想 を 伝 えるべく,モスクワに 赴 い た その 姿 には 愛 と 真 実 の 教 え を 告 げる 預 言 者 の 像 が 二 重 写 しになっ ている プレシチェーエフは, 自 らの 詩 を 忠 実 に 実 践 することで, 現 実 に 対 し いかに 関 わるかという 問 題 に 応 えようとした 言 葉 と 行 動 の 密 着 から 生 じる 当 然 の 帰 結 として, 彼 は 文 字 通 り 恐 れも 迷 いもなく 進 んでみせたの だ モスクワ 行 きは, 預 言 者 の 装 いが 要 求 する 必 然 的 な 選 択 だったのであ る 言 葉 と 行 動 の 一 致 を 愚 直 に 追 求 したプレシチェーエフのありようは, 13

19 高 橋 知 之 例 えば, 言 葉 と 行 動 の 齟 齬 を 垣 間 見 せるドストエフスキーのそれとは 対 照 的 である ドストエフスキーもまた 急 進 的 活 動 に 邁 進 していくが, 一 方 で その 作 品 には, 後 に 顕 在 化 するユートピア 社 会 主 義 への 懐 疑 が 隠 微 な 形 ですで に 表 れている 35 ドストエフスキーと 比 較 したとき,プレシチェーエフの 方 法 はあまりにもナイーヴに 映 るかもしれない ただ, 束 の 間 ではあれ,プレシ チェーエフが 預 言 者 の 自 己 像 を 全 うしたことは 確 かだ それは, 一 歩 踏 み 出 すこと 自 体 が 価 値 をもち 得 た 40 年 代 という 萌 芽 の 時 期 にこそ 実 現 できたも のであり,その 意 味 でプレシチェーエフは,まぎれもなく 40 年 代 ユートピア ンの 一 つの 典 型 を 示 しているのである おわりに 本 稿 では, 言 葉 と 行 動 の 分 析 によって 預 言 者 を 演 じた 詩 人 と いうプレシチェーエフ 像 を 提 示 した プレシチェーエフは, 言 葉 と 行 動 を 統 合 する 仮 面 として 預 言 者 を 装 った ペトラシェフスキー サークルの メンバーたちは, 彼 に アンドレ シェニエ の 名 を 付 与 することでその 自 作 自 演 に 加 担 した こうして,サークルという 場 を 舞 台 に, ペトラシェフス キー サークルの 預 言 者 が 生 成 していったのである 1849 年 4 月,ペトラシェフツィの 一 斉 検 挙 によって,ペトラシェフスキー サークルは 瓦 解 した その 年 の 暮 れ,プレシチェーエフはセミョーノフスキー 練 兵 場 に 連 行 され, 死 刑 宣 告 を 受 けた この 一 瞬, 詩 と 現 実 は 一 致 し,プレシ チェーエフは 文 字 通 りロシアのアンドレ シェニエとなった だが,その 刑 場 は 実 は 巧 妙 に 演 出 された 舞 台 空 間 であり, 幸 いにして 劇 が 果 てたとき,プレシ チェーエフは 預 言 者 の 仮 面 を 剥 奪 されたのである 親 密 な 連 帯 は 破 綻 し, 続 く 兵 役 によって 行 動 は 封 じられた 敗 北 した 詩 人 が,40 年 代 の 自 己 像,ひいては 40 年 代 という 時 代 といかに 向 き 合 っていったのか その 軌 跡 を 描 き 出 すことが 次 の 主 題 となるだろう 稿 を 改 めて 取 り 組 むことにしたい (たかはし ともゆき, 東 京 大 学 大 学 院 生 ) 14

20 プレシチェーエフの 青 春 注 1 40 年 代 のインテリゲンツィヤについては, 以 下 の 文 献 を 参 照 した Isaiah Berlin, A Remarkable Decade, in Henry Hardy and Aileen Kelly, eds., Russian Thinkers (London : Penguin Books, 2008).( 邦 訳 :バーリン ( 河 合 秀 和, 竹 中 浩 訳 ) 注 目 すべき 10 年 間, 福 田 歓 一, 河 合 秀 和 編 ロマン 主 義 と 政 治 バーリン 選 集 3 ( 岩 波 書 店,1984 年 ) 所 収 ) 2 ペトラシェフスキー サークルに 関 する 研 究 書 は 数 多 くあるが,ここでは 主 に, 以 下 の 代 表 的 な 著 作 を 参 照 した J. Seddon, The Petrashevtsy : A Study of the Russian Revolutionaries of 1848 (Manchester : Manchester University Press, 1985) ; Егоров Б. Ф. Петрашевцы. Л., コマローヴィチ ( 中 村 健 之 介 訳 ) ドストエフスキーの 青 春,コマローヴィチ ドストエフスキーの 青 春 (みすず 書 房,1978 年 ) 所 収 4 プレシチェーエフに 関 する 先 行 研 究 は 少 ない 以 下 に 主 なものをあげる 評 伝 として,Кузин Н. Г. Плещеев. М., 1988 ; Пустильник Л. С. Жизнь и творчество А. Н. Плещеева. М., ドストエフスキーとの 関 係 を 素 描 した ものとして,Долинин А. С. Плещеев и Достоевский//Долинин А. С. (ред.) Ф. М. Достоевский : материалы и исследования. Л., 年 代 のプレ シチェーエフの 文 学 を 概 観 したものとして,Ахмедова М. А. Плещеев и писатели-петрашевцы (40-е годы) // Ученые записки Азербайджанского педагогического института языков им. М. Ф. Ахундова. 12 : 4. Баку, プレシチェーエフのテクストの 出 典 は 以 下 の 詩 集 による Плещеев А. Н. Полное собрание стихотворений. М. ; Л., また, 引 用 は( 頁 数 )で 示 す なお, 以 下 の 詩 集 も 適 宜 参 照 した В. Л. Комарович (ред.) Поэтыпетрашевцы. Л., 1940 ; Плещеев А. Н. Стихотворения. М., 当 時 の 知 識 人 たちが 置 かれた 苦 境 については, 以 下 の 文 献 を 参 照 した J. Seddon, The Petrashevtsy, pp V.マイコフとベ リンスキーの 論 争 に つ いては, 以 下 の 文 献 を 参 照 した Andrzej Walicki, A History of Russian Thought. From the Enlightenment to Marxism, tr. H. Andrews-Rusiecka (Stanford, California : Stanford University Press, 1979), pp ; J. Seddon, The Petrashevtsy, pp 女 性 の 解 放 問 題 は,ペトラシェフツィの 重 要 な 議 題 の 一 つだった J. Seddon, The Petrashevtsy, p Милюков А. П. Федор Михайлович Достоевский // Егоров Б. Ф. (сост.) Первые русские социалисты. Воспоминания участников кружков петрашевцев в Петербурге. Лениздат, С.132 ; Кашкин П. А. [Казнь Петрашевцев] // Первые русские социалисты. С Майков В. Н. Стихотворения А. Плещеева // Майков В. Н. 15

21 高 橋 知 之 Литературная критика. Л., С Pamela Davidson, The Moral Dimension of the Prophetic Ideal : Pushkin and His Readers, Slavic Review 61 : 3, 2002, p プーシキンの 詩 における 預 言 者 のイメージについては, 以 下 の 文 献 を 参 照 した Фридман Н. В. Образ поэта-пророка в лирике Пушкина / / Ученые записки МГУ, вып. 118, Труды кафедры русской литературы, кн. 2. М., 1947 ; Гаспаров Б. М. Поэтический язык Пушкина как факт истории русского литературного языка. СПб., С 以 上 ベランジェとの 関 係 については, 以 下 の 文 献 を 参 照 した Поэты-петраше вцы. С ; Пустильник Л. С. Жизнь и творчество А. Н. Плещеева. С Пушкин А. С. Полное собрание сочинений в 16 томах. Т. 2:1. М., С Гаспаров Б. М. Поэтический язык Пушкина. С Пустильник Л. С. Жизнь и творчество А. Н. Плещеева. С Pamela Davidson, The Moral Dimension of the Prophetic Ideal, p Ibid., pp W. M. Todd Ⅲ, Fiction and Society in the Age of Pushkin : Ideology, Institutions, and Narrative (Cambridge, Massachusetts and London : Harvard University Press, 1986), pp 乗 松 亨 平 リアリズムの 条 件 ロシア 近 代 文 学 の 成 立 と 植 民 地 表 象 ( 水 声 社,2009 年 ),146 頁 同 上, 頁 22 Todd, Fiction and Society, p この 点 については 以 下 の 文 献 を 参 照 した Todd, Fiction and Society, pp ; ユーリー ロトマン ( 桑 野 隆 望 月 哲 男 渡 辺 雅 司 訳 ) ロシア 貴 族 ( 筑 摩 書 房,1997 年 ), 頁 24 ユーリー ロトマン ロシア 貴 族, 頁 25 Семенов-Тян-Шанский П. П. Мемуары / / Первые русские социалисты. С この 点 については, 以 下 の 文 献 を 参 照 した Гаспаров Б. М. Поэтический язык Пушкина. С ; Pamela Davidson, The Moral Dimension of the Prophetic Ideal, pp パーリム=ドゥーロフ サークルについては 以 下 の 文 献 を 参 照 した Joseph Frank, Dostoevsky : The Seeds of Revolt (Princeton : Princeton University Press), 1976, pp ; J. Seddon, The Petrashevtsy, pp ; Егоров Б. Ф. Петрашевцы. С

22 プレシチェーエフの 青 春 28 ペトラシェフツィによる 一 信 徒 の 言 葉 翻 訳 については, 以 下 の 文 献 を 参 照 し た Никитина Ф. Г. Петрашевцы и Ламенне / / Достоевский : материалы и исследования. Т. 3. Л., アポロン マイコフの 回 想 によれば,このグループにはドストエフスキー,ミ リューチン,モルドヴィノフらが 加 わっていた 彼 らの 親 友 であったプレシ チェーエフが,このグループと 何 らかの 関 わりを 持 っていたことは 間 違 いない だろう アポロン マイコフ アポロン マイコフの 手 紙 と 談 話 ( 中 村 健 之 介 訳 ),ベリチコフ 編 ( 中 村 健 之 介 編 訳 ) ドストエフスキー 裁 判 ( 北 海 道 大 学 図 書 刊 行 会,1993 年 ), 頁 30 Дело петрашевцев. Т. 3. М. ; Л. : Издательство Академии наук СССР, С Бестужев-Рюмин К. Н. Воспоминания К. Н. Бестужева-Рюмина. Спб., С Дело петрашевцев. Т. 3. С Феоктистов Е. М. Воспоминания Е. М. Феоктистова. За кулисами политики и литературы Л.,1929 (republished by Oriental Research Partners, 1975). С この 点 は 先 行 研 究 の 見 解 も 一 致 している クージンは,プレシチェーエフがペ テルブルクの 仲 間 たちから 政 治 的 任 務 を 託 されていたのではないかと 推 測 して いる セドンも,パーリム=ドゥーロフ サークルの 動 きと 関 連 付 けて, 禁 書 の 入 手 がそもそもの 目 的 だったと 捉 えている Кузин Н. Г. Плещеев. С. 93 ; J. Seddon, The Petrashevtsy, p この 点 については, 拙 稿 描 かれない 夢 小 さな 英 雄 を 中 心 とするドス トエフスキー 初 期 作 品 の 考 察 ( SLAVISTIKA 第 27 号,2011 年 ) で 論 じた ドストエフスキーとプレシチェーエフの 詳 細 な 比 較 は, 今 後 の 課 題 としたい * 本 稿 は, 第 62 回 日 本 ロシア 文 学 会 全 国 大 会 における 報 告 に 基 づいている 貴 重 なご 意 見 をくださった 皆 様 に 謹 んで 御 礼 申 し 上 げる 17

23 高 橋 知 之 Томоюки ТАКАХАСИ Юность Плещеева : пророк в кружке Петрашевского В своей классической работе «Юность Достоевского» В. Л. Комарович показал портрет молодого Достоевского как утописта 1840-хгодов. В этой статье в качестве подсобной фигуры на сцену выступает друг Достоевского Плещеев. До сихпор он привлекал к себе мало внимания филологов. Но в 1840-хгодах он был знаменитым поэтом. Он был активным членом кружка Петрашевского и писал стихи как представитель петрашевцев. В данной статье описывается юность Плещеева и производится анализ взаимоотношений между его поэзией и деятельностью. В стихах Плещеева много раз появляется образ пророка. Поэт изображал его как идеальный образ утопического социалиста. В самом начале Плещеев повествовал о пророке от третьего лица, но постепенно его стихи становились монологом пророка. Его известное стихотворение «Вперед! без страха и сомненья...» этонастоящийпризывпророка. В1849 году Плещеев поехал в Москву, чтобы распространять идеи петрашевцев. Он стал в действительности играть роль пророка, которого он воспел в своих стихах. Петрашевцы, дав ему прозвище Андрей Шенье, которого в России считали пророком благодаря одноименному стихотворению Пушкина, признали эту игру Плещеева. Таким образом, он стал пророком в кружке Петрашевского. 18

24 ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 45 ( 日 本 ロシア 文 学 会,2013) ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 松 本 隆 志 はじめに アンドレイ ベールイの 散 文 創 作 史 の 観 点 から 考 えたとき,その 活 動 初 期 に あたる 1900 年 代 に 書 かれた 短 篇 小 説 はどのような 意 味 を 持 ち 得 るだろうか 一 般 に 文 学 史 上 でのベールイの 名 は 専 ら ペテルブルグ をはじめとする 長 篇 小 説 に 依 っており, 初 期 の 短 篇 が 顧 みられることは 稀 であるように 思 われる 1 しかしながら 1900 年 代 といえば,ベールイがさまざまな 雑 誌 上 で 論 陣 を 張 り, シンボリズムの 理 論 を 確 立 しようとしていた 時 期 でもある それならば,その ような 論 考 と 同 時 期 に 書 かれた 短 篇 小 説 を 読 み 解 き,シンボリズムの 理 論 を 展 開 する 際 にベールイが 繰 り 返 すある 種 の 観 念 論 的 な 主 題 が 小 説 という 特 定 の 文 学 形 式 の 問 題 へと 転 換 される 過 程 を 跡 付 けることで, 後 に 書 かれる 長 篇 小 説 を 理 解 するための 何 らかの 指 標 が 得 られるのではないだろうか そこで 本 稿 では 1904 年 の 論 考 未 来 への 窓 で 展 開 されるプラトン 的 イデ ア 論 に 依 拠 したベールイのシンボル 理 論 を 足 掛 かりとし,そこで 提 出 される 境 界 の 裂 け 目 としての 窓 というモチーフを 敷 衍 して 光 の 話 と ア ダム という 二 つの 短 篇 小 説 を 読 み 解 くことを 試 みる この 二 作 品 の 読 解 から ベールイの 後 の 長 篇 小 説 につながる 問 題 を 見 いだすことが 本 稿 の 目 的 となる 19

25 松 本 隆 志 1. 境 界 の 裂 け 目 まずはベールイの 文 学 芸 術 理 論 の 中 から 中 心 的 な 課 題 を 見 つけることから 始 めなければならないが,エルスウォースも 指 摘 しているように,ベールイの シンボリズム 理 論 の 最 大 の 特 徴 は 調 和 的 な 二 元 論 にあるといえるだろう 2 ベールイはさまざまなレヴェルで 複 数 の 原 理 を 設 定 し,その 原 理 を 統 合 するこ とを 文 学 や 芸 術 の 目 的 として 論 じている 1910 年 から 1911 年 にかけて 相 次 い で 刊 行 された シンボリズム, アラベスク, 緑 の 草 原 という 三 冊 の 論 集 に 収 録 されている 1900 年 代 の 数 々の 論 考 の 中 で,ベールイはソロヴィヨフや ニーチェ,カント,ショーペンハウアーなどの 多 様 な 思 想 哲 学 を 自 身 の 理 論 の 論 拠 として 引 いてくるのだが, 3 結 局 のところその 根 本 はプラトン 的 な 観 念 論 にある つまりはプラトン 的 な 意 味 でのイデアの 認 識 を 目 指 して 現 実 世 界 と その 背 後 にある 初 源 的 な 世 界 を 接 続 することがここでは 問 題 となるのだ 例 え ば 緑 の 草 原 に 収 められた 1904 年 の 論 考 未 来 への 窓 4 でベールイは シ ンボル を 次 のように 規 定 する 芸 術 においてイメージをシンボルへと 高 めることで 私 たちはイデアを 認 識 する シンボリズムとはこのように 諸 々のイメージの 中 でイデアを 描 き 出 すメソッドだ 芸 術 はシンボリズムから 免 れることはできないが,それ はときには 仮 面 に 隠 されていることもあるだろうし ( 古 典 芸 術 ),またと きにははっきりと 見 て 取 れる 場 合 もあるだろう (ロマン 主 義, 新 ロマン 主 義 ) 芸 術 には 常 に 何 かしら 結 合 作 用 を 持 つものがある ここに 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 の 襞 が 押 し 広 げられる 瞬 間 が 現 れるのだ つ ヽ ま ヽ り ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ 外 部 であっ た は ヽ ず ヽ の ヽ も ヽ の ヽ が ヽ,そ ヽ う ヽ と ヽ は ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ 思 えなくなる ヽ 瞬 間 ヽ で ヽ あ ヽ る ヽ 対 象 またはその 一 部 を ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ 他 の 対 象 と 対 比 することで,その 対 象 は 何 か 第 3 のものへと 高 められる ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ この 第 3 のものこそ 多 数 を 一 つに 結 合 する 関 係,つまりはシンボルなの だ 5 20

26 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 ベールイにとって 芸 術 の 目 的 とはイデアを 認 識 することにあり,そのための 手 段 がシンボリズムなのだという 複 数 の 事 物 を 対 比 してそれを 一 つのイメー ジへと 結 合 することでシンボルが 形 成 されるという 考 えは, 記 号 体 系 としての シンボルの 一 般 的 な 理 解 から 逸 脱 するものではないだろう ここで 注 目 すべき なのは,そうした 第 3 のもの としてのシンボルの 生 成 が 行 われるのが, 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 の 襞 が 押 し 広 げられる 瞬 間 とされていることだ ここ で 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 と 呼 ばれているのは, 外 部 の 世 界 ( 初 源 ) と 内 部 の 世 界 ( 現 実 ) の 間 にある 境 界 ( 概 念 ) のことである 論 考 未 来 への 窓 は 世 界 や 生 命 の 神 話 的 な 起 源 の 叙 述 から 始 まる ここで ベールイは 万 物 の 初 源 としての 無 定 形 で 不 明 瞭 なものを 中 国 の 思 想 に 倣 って タオ と 呼 び,それが 姿 を 現 すときに 私 たちは イデア を 見 ることができ るのだという 火 の 譫 妄 の 冷 たい 外 皮 の 上 で 生 まれた 生 物 である 私 たちは, 概 念 という 蜘 蛛 の 糸 の 織 物 に 光 り 輝 く 本 質 を 編 み 込 んだ そして 蜘 蛛 の 糸 をかき 分 け て タオ が 私 たちを 覗 き 見 たとき, 私 たちは 狂 気 がやって 来 たと 言 うの だ 6 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 の 襞 が 押 し 広 げられる 瞬 間 とは, 初 源 という 外 的 な 世 界 (イデア) が 概 念 という 境 界 の 裂 け 目 を 通 して 内 的 な 現 実 の 世 界 に 姿 を 見 せる 瞬 間 を 指 している このようにシンボルの 規 定 に 際 してベール イが 依 拠 しているのは, 概 念 という 影 の 背 後 にあるイデアそのものを 見 ようと する 単 純 な 観 念 論 の 図 式 であるのだが, 未 来 への 窓 ではこうした 図 式 が 抒 情 的 ともいえる 比 喩 によって 描 かれている 概 念 というイデアの 影 は 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 と 比 喩 化 されることで, 平 面 的 な 境 界 というイメージを 与 えられる そして 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 の 襞 が 押 し 広 げられる 瞬 間 はさらに 別 の 比 喩 によって 次 のように 描 かれている 21

27 松 本 隆 志 ヽ そのとき 無 限 へと 開 かれた 裂 け 目 を 窓 と 呼 び, 閃 く 灯 をラ ヽ ン ヽ プ ヽ と 呼 ぶこ とは, 奇 妙 に 思 えはしないだろうか? 7 こうして 窓, ランプ という 新 たな 比 喩 を 導 入 したベールイは,ここか らプラトン 的 な 観 念 論 の 図 式 を 光, ガラス, 鏡 というモチーフを 用 い て 描 き 直 していく 光 線 はぼんやりとしたガラスの 列 を 透 過 することができる 光 はガラス の 上 に 現 実 を 広 げることはできない ガラスをアマルガムで 覆 って 鏡 に 変 えなければならない その 時 にだけ 世 界 の 無 限 は 鏡 の 表 面 で 反 転 する 知 るということはまさにこのようなものでなければならない なぜなら 概 念 とはガラスであり, 鏡 とはイデアへと 向 けて 高 められた 概 念 であるか らだ 8 ここでの ガラス とは 先 に 導 入 された 窓 を 言 い 換 えたものであるよう にも 思 えるが, 実 際 にはこの 二 つの 比 喩 は 異 なる 意 味 を 持 っている 光 を そのまま 透 過 させてしまう ガラス では 境 界 上 の 裂 け 目 としての 窓 の 役 割 を 果 たせないのだ それは 裂 け 目 を 通 して 向 こう 側 を 見 るという 行 為 が, 境 界 を 挟 んだ 二 つの 異 なる 世 界 を 接 続 するものでなければならないからである ガラス が 鏡 化 されたときにのみ,この 複 数 世 界 の 接 続 が 可 能 になる つまりその 表 面 に 両 方 の 世 界 を 見 ることのできる 状 態, 向 こう 側 を 透 けて 見 せ る ガラス であると 同 時 にこちら 側 を 映 す 鏡 でもあるという,いわば 半 透 明 な 状 態 が, 境 界 の 裂 け 目 としての 窓 の 持 つ 重 要 な 性 質 と 言 えるだろう ガラス が 概 念 の 比 喩 であり, 鏡 が イデアへと 向 けて 高 められた 概 念 の 比 喩 であるとはこういう 意 味 においてであり, 二 つの 世 界 の 狭 間 で 両 者 を 結 合 する 場 となる 半 透 明 な 窓 はそのままシンボルの 比 喩 として 読 むこともで きる 以 上 のように, 論 考 未 来 への 窓 では 芸 術 におけるシンボルの 役 割 はプラ 22

28 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 トン 的 な 観 念 論 に 依 拠 して 論 じられているが,その 際, 概 念 という 術 語 は 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 へと 比 喩 化 され,さらにそこから 窓, ガラス, 鏡 という 別 の 系 統 の 比 喩 へと 転 換 されていく こうした 比 喩 の 展 開 はそれ 自 体 すでに 極 めて 文 学 的 な 手 法 でもある しかしここで 特 に 注 目 すべきなのは, そうした 比 喩 化 の 過 程 でイデアの 認 識 という 哲 学 的 な 問 題 が 徐 々に 解 体 され, 平 面 的 な 境 界 を 越 えて 複 数 の 異 次 元 的 世 界 を 接 続 するという 別 のレヴェルの 問 題 へと 焦 点 が 移 っていくことである そしてそれは 1900 年 代 のベールイの 散 文 創 作 にそのまま 当 てはまる 現 象 でもあるのだ では 次 節 以 後,ベールイのシンボリズムの 理 論 の 根 底 にあるこうした 観 念 論 的 な 主 題 が 彼 の 初 期 の 短 篇 小 説 の 中 でどのように 展 開 されているかを 見 ていく ことにしよう 2. 太 陽 への 回 帰 光 の 話 1900 年 代 に 書 かれたベールイの 短 篇 小 説 の 中 でも,ベールイが 同 時 代 の 理 論 的 な 著 作 で 展 開 するプラトン 的 な 意 味 での 観 念 論 的 主 題 が 特 によくあらわれ ているのは 1903 年 に 執 筆 された 光 の 話 9 であろう この 作 品 は 12 の 短 い 断 片 的 なエピソードから 構 成 されており, 主 人 公 ( 語 り 手 ) の 出 生 から 青 年 期 までの 様 々な 出 来 事 がその 題 名 通 り 光 にまつわる 多 彩 なモチーフを 用 いて 描 かれている たとえば 光 を 放 つлучезарный や 金 色 のзолотой など といった 形 容 詞 と 結 びついて 光 をあらわすモチーフが, 過 剰 なまでにこの 作 品 のテクストのいたるところに 散 りばめられている それらのモチーフは 太 陽 らしさсолнечность という 一 つの 性 質 によって 結 ばれる この 光 の 話 という 作 品 の 主 題 は, 結 局 のところ, 太 陽 という 故 郷 へ 帰 還 すること を 求 めて, 様 々な 事 物 に 宿 った 太 陽 らしさ を 集 めることなのである この ような 光 の 収 集 による 太 陽 への 帰 郷 という 主 題 は 作 品 の 中 でも 繰 り 返 し 述 べられている 23

29 松 本 隆 志 太 陽 について 歌 うのは 太 陽 の 子 供 たちで,お 互 いの 瞳 の 中 に 時 間 を 越 え た 太 陽 のしるしを 探 し 求 め,そしてこの 光 を 探 すことを 人 生 と 呼 んでいる (239) 時 の 中 で 姿 は 見 え 隠 れし,そして 全 ては 人 生 の 飛 翔 の 中 を 疾 走 する 太 陽 の 子 供 たちは 底 なしの 闇 を 裂 いて 太 陽 へと 突 進 することを 望 む 蜜 の 金 色 を 集 めるアリバチのように, 彼 らはその 心 の 内 に 太 陽 の 輝 きを 蓄 える (239) 太 陽 の 子 供 たちは 太 陽 を 夢 見 ていた まるでハチのように 蜜 のような 黄 色 い 光 を 集 めた (240) この 作 品 で 主 人 公 は 自 分 を 太 陽 の 子 供 に 見 立 て, 生 命 の 故 郷 である 太 陽 へ 帰 還 することを 夢 想 する 周 知 のように 太 陽 とはプラトンが 国 家 の 第 6 巻 で 善 のイデアの 比 喩 に 用 いたものであり, 光 の 話 の 主 題 が 観 念 論 的 な 初 源 への 回 帰 であることは 明 らかだ 10 また 太 陽 というモチーフが 導 入 されることで, 観 念 論 的 図 式 における 初 源 的 世 界 と 現 実 世 界 の 対 比 は, 太 陽 の 浮 かぶ 空 と 主 人 公 の 暮 らす 地 上 という 空 間 関 係 に 置 き 換 えられ, 太 陽 へ 向 かっ て 飛 ぶ という 運 動 性 が 生 まれている 地 上 を 離 れ 太 陽 へと 飛 び 出 そうとす る 主 人 公 の 夢 想 は 最 初 に 幼 年 時 代 の 遊 びを 通 して 描 かれる あるとき 太 陽 の 子 供 たちは 古 いニワトコの 茂 みに 集 まった それは 私 たち の 飛 行 船 だった 私 たちは 枝 の 上 に 座 って, 太 陽 へと 漕 ぎ 出 そうとしたの だ (240) この 幼 年 時 代 の 遊 戯 から 始 まって, 光 の 話 では 太 陽 への 帰 還 という 主 人 公 の 夢 想 が 様 々なエピソードを 通 して 語 られるのだが,ではその 際, 太 陽 という 初 源 的 世 界 と 主 人 公 の 現 実 はどのように 接 続 されるのだろうか ま 24

30 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 ずは 複 数 世 界 の 接 続 に 不 可 欠 となる 境 界 の 裂 け 目 としての 窓 にあたるモ チーフを 光 の 話 のテクストから 探 してみることにしよう 太 陽 のしるし である 光 を 集 めることが 太 陽 への 帰 還 と 結 びつい ているように,この 作 品 で 多 種 多 様 に 反 復 される 光 にまつわるモチーフは, 現 実 と 初 源 の 間 の 境 界 を 越 える 媒 介 的 な 役 割 を 担 っている それは 光 の 運 動 を 描 写 する 際 にсквозьという 前 置 詞 が 繰 り 返 し 用 いられていることからも 明 らかだ 光 は 二 つの 世 界 の 境 界 を 穿 孔 する 存 在 として 描 かれている そしてほら 消 え 入 りながらも 深 淵 を 切 り 裂 いて 金 色 の 大 気 の 光 が 放 たれる (239) ( 原 文 И вот, погасая, бросают сквозь бездну золотисто- воздушные светы.) したがってこの 光 という 媒 介 をその 表 面 に 映 す 平 面 が, 二 つの 世 界 の 境 界 上 に 開 いた 裂 け 目 ということになるだろう そうした 窓 的 な 平 面 はまず 主 人 公 の 幼 年 時 代 の 遊 びに 関 する 描 写 の 中 で 雨 後 の 水 溜 りとしてあらわれる 春 になると 私 たちはダーチャに 出 掛 けて 行 ったものだが, 私 はというと 庭 の 小 道 を 駆 けまわっては 子 供 たちを 探 したのだった それはどの 子 も 青 い 瞳 をした 男 の 子 や 女 の 子 たちだった 私 たちは 太 陽 の 子 供 遊 びをした 雨 が 降 ったあとには 水 溜 りは 金 貨 のような 輝 きを 湛 えていた 金 色 の 水 を 手 で 掬 ってお 家 に 持 って 帰 ろうと 私 は 提 案 した でも 金 色 は 逃 げてしまって, 太 陽 らしきものを 家 に 持 ち 帰 ったときには,それは 泥 水 だったとわかって, そのせいで 私 たちは 叱 られてしまうのだった (240) 雨 の 上 がったあとの 水 溜 りは 太 陽 の 光 を 映 して 輝 いている ここに 境 界 の 裂 け 目 があるのだ だからこそ 太 陽 へと 帰 還 することを 夢 見 る 幼 年 時 代 の 主 人 公 は, 太 陽 らしさ を 集 めようと, 金 色 に 輝 く 水 を 手 で 掬 いあげるのであ 25

31 松 本 隆 志 る 別 の 例 も 見 てみよう ある 日 のこと, 月 が 部 屋 を 照 らしていた 私 は 寝 台 から 跳 ね 起 きて 鏡 に 駆 け 寄 った 鏡 の 奥 から 私 の 方 へと 腕 白 そうな 男 の 子 が 飛 んできて 目 を 輝 かせた 近 所 のダーチャからは 太 陽 の 音 が 響 き 渡 っていた 光 り 輝 く 糸 玉 が 巻 かれていたのだ きっと 学 生 がバイオリンを 弾 いていたのだろう 私 は 鏡 に 月 の 光 を 捉 えた 鏡 を 床 に 倒 して, 池 の 上 に 立 っているのだと 夢 想 した 金 色 に 光 り 輝 く 表 面 がはためき 輝 いていて,その 深 いところで 泳 ぎたいと 思 った 私 は 鏡 に 飛 び 込 んだ ぱりんという 音 が 響 き 渡 り, 何 かが 私 の 足 に 噛 みついた (241) これも 主 人 公 の 幼 年 時 代 のエピソードであるが,ここでは 窓 から 部 屋 へ 差 し 込 む 月 の 光 が 鏡 の 表 面 に 捉 えられている ここで 窓 は 光 をそのまま 透 過 させる ガラス に 過 ぎない 主 人 公 が 鏡 を 床 に 倒 したとき, 窓 という 枠 の 中 にあっ た 情 景 が 鏡 という 平 面 の 上 へと 転 写 される ここに ガラス から 鏡 への 転 換 を 読 みとるのはそれほど 難 しいことではないだろう 月 光 を 映 した 鏡 の 金 色 に 光 り 輝 く 表 面 は, 現 実 から 太 陽 へと 開 かれた 経 路 となり, 主 人 公 はそこに 飛 び 込 んで 境 界 の 向 こう 側 へ 行 こうと 試 みるのだ このように 光 の 話 では, 光 ( 太 陽 らしさ) を 集 めるという 行 為 は 二 つ の 世 界 の 間 の 境 界 に 裂 け 目 を 開 くことに 他 ならず,そのようにして 確 保 された 経 路 を 通 って 太 陽 という 初 源 的 世 界 に 回 帰 することが 作 品 全 体 の 一 貫 した 主 題 なのである 光 の 話 の 後 半 部 で 数 節 を 費 やして 描 かれる 花 火 のエピ ソードもこうした 主 題 の 一 つとして 理 解 することができる 光 の 話 の 第 10 節 から 最 終 第 12 節 までは, 大 人 になった 主 人 公 が 花 火 を 打 ち 上 げるというこの 作 品 の 中 心 的 なエピソードにあてられている 太 陽 というモチーフの 導 入 によって, 初 源 への 回 帰 という 観 念 的 主 題 が 天 地 の 空 間 関 係 に 置 換 されることはすでに 述 べたとおりであるが, 闇 に 覆 われた 夜 の 空 を 地 上 から 人 工 の 光 で 満 たす 花 火 というモチーフはそうした 空 間 的 図 式 と 呼 26

32 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 応 するものとも 言 える しかし 観 念 的 主 題 の 文 学 への 転 換 という 観 点 からすれ ば,ここで 重 要 なのは 花 火 のエピソードにおいては 複 数 世 界 を 接 続 する 窓 の 役 割 がある 二 人 の 登 場 事 物 によって 担 われているということだ 一 人 は 実 際 に 花 火 を 打 ち 上 げる びっこの 男 11 である 花 火 の 打 ち 上 げを 企 画 した 主 人 公 は, 実 際 の 打 ち 上 げの 作 業 を びっこの 霊 媒 師 と 呼 ばれる 男 に 指 示 してい る 現 世 と 死 後 の 世 界 の 媒 介 である 霊 媒 師 はそもそも 境 界 的 な 人 物 であり,こ の びっこの 男 が 打 ち 上 げることで 花 火 にも 異 世 界 へ 向 けて 飛 んで 行 く 光 という 意 味 合 いが 付 与 される 花 火 のエピソードで 窓 の 役 割 を 担 うもう 一 人 の 人 物 は 彼 女 12 である 花 火 の 打 ち 上 げの 意 図 は 作 中 で 次 のように 書 かれている 私 は 彼 女 を 驚 かせ, 彼 女 に 永 遠 なるものを 見 せてあげたいと 思 った そ のためにダーチャの 前 の 草 が 刈 りこまれた 草 原 にこっそりとロケットを 打 ちこむように 指 示 した 予 期 せぬ 花 火 をあげよう 湿 っぽい 夜 の 光 の 下 で 幾 千 もの 恒 星 を 切 り 裂 こうと 思 ったのだ (243) 花 火 は 最 初 から 彼 女 に 永 遠 を 見 せることを 目 的 として 打 ち 上 げられ たものだったのだ しかしなぜ 彼 女 に 花 火 を 見 せることが 意 味 を 持 つのか それは 彼 女 の 眼 が 二 つの 世 界 を 接 続 する 境 界 の 裂 け 目 だったからである 彼 女 の 眼 空 へとつながる 二 つの 瑠 璃 色 の 孔 は, 太 陽 のような 巻 き 毛 と 彼 女 の 頬 を 赤 く 染 める 空 焼 けの 艶 のない 輝 きに 取 り 巻 かれていた 火 事 のような 紫 紅 色 が 彼 女 の 薄 い 唇 に 燃 え,その 下 では 真 珠 の 首 飾 りが 輝 いていた (242) 太 陽 を 纏 う 彼 女 の 姿 はソロヴィヨフの 永 遠 の 女 性 を 容 易 に 想 起 させ るが, 見 逃 せないのはその 眼 が 空 へとつながる 二 つの 瑠 璃 色 の 孔 とされて いることである 光 の 話 では 太 陽 のある 空 は 地 上 の 現 実 の 世 界 と 27

33 松 本 隆 志 対 比 される 初 源 的 な 世 界 であり,したがって 彼 女 に 花 火 を 見 せることは, その 眼 という 窓 を 通 して, 二 つの 世 界 を 接 続 することに 他 ならない この ように 花 火 を 打 ち 上 げるという 光 の 話 のストーリーの 中 心 的 なエピソード もやはり 太 陽 という 初 源 への 回 帰 の 試 みのひとつとして 読 むことができる 光 の 話 は 初 源 への 回 帰 という 観 念 的 主 題 に 基 づいた 極 めてコンセプ チュアルな 作 品 であるが,そこでは 太 陽 というモチーフによって 空 と 地 上 という 空 間 関 係 が 持 ち 込 まれ,さらに 二 つの 世 界 を 接 続 する 境 界 の 裂 け 目 は 水 溜 り から 鏡 へ,そして 登 場 人 物 の 眼 へと 転 換 されていく この ような 主 題 に 基 づいた 空 間 構 成 やモチーフの 変 奏 はその 後 のベールイの 散 文 作 品 の 主 要 な 特 徴 をなすものでもある 次 節 ではこのような 問 題 を 1906 年 に 執 筆 された 短 編 小 説 アダム 13 を 通 して 検 討 してみたい 3. アダム における 窓 の 機 能 アダム はベールイにとって 初 めての 長 編 小 説 となる 銀 の 鳩 の 直 前 に 執 筆, 発 表 された 作 品 であり, 人 類 の 救 済 という 神 秘 的 な 主 題 を 扱 ってい る 一 方 で, 構 成 や 文 体 などの 面 では 後 の 長 篇 小 説 に 通 じるような 特 徴 がすでに 表 れている この 作 品 の 主 題 は 一 言 でいえば 越 境 による 人 類 の 救 済 であろう アダム は 人 類 の 救 済 を 目 指 す 主 人 公 アダム アントーノヴィチが 父 の 領 地 へ 向 けて 汽 車 へと 乗 り 込 む 場 面 から 始 まる 故 郷 に 帰 還 したアダムは 領 地 に 大 火 災 を 起 こして 父 を 殺 害 する その 火 災 の 場 で 彼 はメシア 的 な 転 生 を 遂 げて 人 類 の 救 済 という 当 初 の 目 的 を 果 たすのである 境 界 を 越 えてきた (286) ことがアダム アントーノヴィチによる 救 済 の 条 件 とされているように,ここでも 境 界 をまたいだ 二 つの 世 界 の 接 続 という 図 式 が 繰 り 返 されている 光 の 話 では 太 陽 への 帰 還 として 描 かれた 初 源 への 回 帰 は, アダム においては 父 の 領 地 への 帰 還 となり, 観 念 論 的 な 色 彩 はさらに 弱 められ, 空 間 的 運 動 としての 側 面 が 強 められているとも 言 え 28

34 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 るだろう 14 一 方 で アダム では 客 観 的 現 実 としての 世 界 と 主 人 公 アダムの 夢 想 による 神 話 的 世 界 という 二 つの 世 界 が 複 雑 に 入 り 組 んだ 形 で 描 かれている この 二 つ の 世 界 の 間 を 往 来 することによってアダムは 救 世 主 として 転 生 する そし てこのように 現 実 と 夢 想 の 境 界 を 越 えて 転 生 することと, 主 人 公 が 外 部 の 都 市 と 父 の 領 地 の 間 にある 地 理 的 な 境 界 を 越 えて 帰 還 することとがパラレルな 関 係 におかれることで, アダム という 作 品 の 主 題 と 外 面 的 なプロット 構 成 の 間 にも 有 機 的 な 連 関 が 生 まれるのだ しかしなぜ 地 理 的 な 境 界 を 越 えることが 主 人 公 の 転 生 を 促 し, 火 事 で 父 親 を 殺 すことが 人 類 の 救 済 とされるのか この 次 元 の 異 なる 二 つの 越 境 を 繋 ぐ 重 要 なモチーフがある それは 他 ならぬ 窓 である たとえば 帰 郷 するアダムを 乗 せた 汽 車 が 鉄 橋 という 地 理 上 の 境 界 を 越 えると 同 時 に 何 か 異 世 界 へと 飛 び 込 んでいくように 描 かれる 場 面 は, 二 つの 越 境 が 交 差 する 重 要 な 部 分 だが,その 瞬 間 は 窓 の 中 に 見 出 されるのである 轟 音 をあげて 汽 車 は 鉄 橋 へと 飛 び 込 んだ 白 い 靄 が 川 を 覆 っていた 橋 は 始 まり, 橋 は 終 わらなかった そして 鉄 の 轟 きもまたやむことはなかっ た ( 中 略 ) アダム アントーノヴィチは 窓 を 眺 めた 汽 車 は 固 い 土 壌 に は 戻 らず, 雲 の 中 を 飛 んでいた アダム アントーノヴィチは 言 った 陳 情 します 鉄 の 轟 きがやんだ (284) このように 汽 車 が 地 上 を 離 れて 空 へと 飛 び 出 していく 様 子 をアダムは 窓 越 し に 見 るのである 外 部 の 都 市 から 父 の 領 地 への 地 理 的 な 越 境 は, 窓 という 平 面 の 上 で, 地 上 という 現 実 世 界 から 空 という 初 源 的 世 界 への 越 境 に 変 換 されるの だ 実 はこの 部 分 以 外 にも アダム ではその 物 語 の 展 開 上 の 重 要 な 局 面 で 必 ず と 言 っていいほど 窓 に 対 する 言 及 が 行 われている たとえば 主 人 公 が 汽 車 に 乗 って 故 郷 へと 向 かう 客 車 内 の 場 面 で,それまでただ 彼 と 呼 ばれていた 29

35 松 本 隆 志 主 人 公 の 名 前 がはじめて 明 かされるとき,アダムは 窓 辺 に 座 っている アダム アントーノヴィチ コレイシはすっかり 落 ち 着 いて 窓 辺 に 座 っ ていた (284) また 作 品 のクライマックスとも 言 える 領 地 の 大 火 災 が 発 生 する 場 面 でも, 父 の 邸 が 燃 え 上 がる 瞬 間 は, 窓 辺 に 座 る 人 物 を 起 点 に 叙 述 される このとき 料 理 女 は 父 に 煮 こごりを 出 していた 父 は 脂 ぎった 塊 にむせ 返 り,ブロンド 髪 の 房 を 下 げた 料 理 女 の 傍 に 皿 が 落 ちて, 細 く 柔 らかな 音 色 で 部 屋 を 満 たした 女 はまるで 若 返 ったようで, 透 明 になったかのようで もあり,そして, ああ! 優 しい 雲 のように 身 を 揺 らしたのだ そらもう 彼 女 は 窓 辺 にいて, 闇 の 夜 へと 芳 香 の 流 れとなって 逃 れ 出 ようと し,そしてもうそれは 煙 ではなく, 毒 々しい 炎 の 絹 糸, 家 じゅうの 壁 を 駆 け 巡 る 絹 糸 なのであった 家 は 燃 え 始 めており, 魂 は 飛 び 立 ち,そして 火 事 を 鎮 めることなどもう 何 をどうしたところで 不 可 能 だった ( ) そして アダム の 終 章 でも 主 人 公 の 帰 還 を 待 ちわびる 友 人 たちは 何 度 も 窓 に 目 を 向 けており, 作 品 の 最 後 の 段 落 で 不 在 のアダムを 呼 び 求 めるときにも, 窓 の 中 の 風 景 によって 夜 から 朝 への 移 り 変 わりが 描 写 されている 窓 の 中 ではさえない 夜 の 涙 が 打 ちつけていた 朝 になると 黄 色, 黄 色 かった, 黄 色 い 日 の 出 だった 蝋 燭 の 火 は 消 され, 荷 物 はまとめられてい た 否 彼 は 帰 ってこない 向 こうに 行 ったものは, 帰 ってはこないのだ どこだ,お 前 は 一 体 どこにいる? (291) このように 反 復 される 窓 は 常 に 何 かしらの 境 界 であるか,または 何 らか のレヴェルでの 越 境 に 隣 接 している 窓 が 二 つの 世 界 の 境 界 であるこ 30

36 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 とは 以 下 の 引 用 部 分 からも 容 易 に 読 みとることができる アダム アントーノヴィチは 傍 屋 から 出 た それは 子 供 のころ 世 界 と 呼 んでいたところだ ガラス 越 しに 彼 はふざけて 使 用 人 の 女 に 叫 んだ お 前 はまだ 世 界 にいるけど, 僕 はもう 世 界 にはいないよ ロシアに いるんだ (287) ここで 傍 屋 が 世 界 と 名 付 けられていることによって, 世 界 の 複 数 性 が 生 み 出 され, 窓 という 住 居 の 一 部 位 は 複 数 の 世 界 の 間 の 境 界 となる こ のように 論 考 未 来 への 窓 でイデアを 認 識 し,またシンボルが 生 成 する 場 の 比 喩 として 導 入 された 窓 は アダム においても 境 界 的 な 形 象 として 繰 り 返 されているのである ところで 境 界 を 越 えて 二 つの 世 界 を 往 来 するためには,その 境 界 が 開 かれて いなければならない 光 の 話 においては 境 界 を 開 くのは 光 だった 光 がその 表 面 に 満 ちることで 境 界 は 開 かれる 逆 に 闇 が 表 面 を 覆 って しまっていては,その 境 界 を 通 過 することはできない こうした 境 界 にお ける 光 と 闇 の 対 比 は アダム にも 引 き 継 がれている そしてこの 点 から, アダム における 父 殺 し の 意 味 も 明 らかになるのである まずは 汽 車 の 窓 に 闇 が 貼 り 付 く という 次 の 場 面 を 見 てみよう タフタフタ,ハ,ハ と 車 輪 が 轟 いた 窓 の 中 の 街 灯 が 彼 に 頷 いた 二 つ 目, 三 つ 目 と 街 灯 は 瞬 くことをやめた 瞬 きのない 夜 が 窓 に 貼 り 付 いた (282) 夜 の 闇 を 裂 いて 疾 走 する 汽 車 の 車 窓 に 瞬 きのない 夜 が 貼 り 付 く 線 路 沿 いに 並 んだ 街 灯 の 光 が 消 え, 窓 が 闇 に 覆 われたのである 窓, 光, 闇 の 関 係 からすれば,これは 境 界 が 閉 ざされたことを 意 味 する そして 窓 に 貼 り 付 く という 表 現 は,アダムが 故 郷 の 駅 に 到 着 したとき, 父 親 の 出 現 と 同 時 31

37 松 本 隆 志 に 繰 り 返 されるのである 駅 が 見 えた 太 った 父 の 半 外 套 が 窓 に 貼 り 付 いた ああ, 奴 だ 帰 って 来 たな お 前 さん, 待 っていたよ アダム アントーノヴィチは 力 を 振 り 絞 った 彼 は 境 界 を 越 えたのだ (284) これはアダムの 父 親 がこの 作 品 で 初 めて 登 場 する 場 面 でもある 窓 という 境 界 を 覆 って 光 を 遮 っていた 闇 はここで 父 親 へと 姿 を 変 える つまりア ダムの 父 親 は 境 界 を 遮 るものとして 登 場 するのだ 父 殺 しが 人 類 の 救 済 となることも,これによって 説 明 がつく つまり 火 災 に よる 父 殺 しとは, 境 界 を 覆 う 闇 である 父 親 を 炎 という 光 で 払 うという ことであり, 境 界 に 裂 け 目 を 穿 つ 行 為 なのである 境 界 を 閉 ざす 者 としての 父 親 の 性 格 付 けは 以 下 の 箇 所 からも 確 認 できる 太 った 父 親 の 灰 色 にくすんだ 長 衣 がアダム アントーノヴィチの 上 に 不 確 かな 影 を 落 とした 彼 らは 閉 ざされた 傍 屋 の 中 にいたが,それはまさに 閉 ざされた 世 界 の 中 だった (285) ここでも 父 親 は 灰 色 という 光 と 対 置 される 色 彩 で 描 写 されており, 父 親 の 存 在 によって 世 界 は 閉 ざされている 一 方 で, 火 災 と 同 時 に 救 世 主 へと 転 生 したアダムには 光 のイメージが 付 与 されている 父 と 子 の 対 立 や 父 殺 しという 一 見 フロイト 的 にも 思 える 図 式 には,こうした 別 の 意 味 が 隠 されてい たのである 4. 明 滅 する 光 さてここまで 光 の 話 と アダム から 境 界 的 な 表 象 を 抽 出 し,その 境 界 がどのように 乗 り 越 えられるのかを 見 てきたが,ここで 一 度 その 境 界 の 表 面 に 32

38 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 焦 点 を 合 わせてみよう そこでは 何 が 起 きているだろうか まずはすでに 引 用 した アダム の 車 窓 に 闇 が 貼 り 付 く 箇 所 をもう 一 度 検 討 してみよう 先 程 はここで 描 かれる 闇 に 着 目 したが, 今 度 は 逆 に 光 の 方 に 目 を 向 けて みたい タフタフタ,ハ,ハ と 車 輪 が 轟 いた 窓 の 中 の 街 灯 が 彼 に 頷 いた 二 つ 目, 三 つ 目 と 街 灯 は 瞬 くことをやめた 瞬 きのない 夜 が 窓 に 貼 り 付 いた (282) 窓 の 中 では 街 灯 の 光 が 瞬 いている この 街 灯 の 明 滅 は アダム の 汽 車 の 場 面 で 繰 り 返 し 言 及 されている 汽 車 が 前 へ 前 へと 進 んでいくことで, 一 つの 街 灯 が 現 れては 消 え,そして 次 の 街 灯 がまた 現 れては 消 えていく この 明 滅 を 生 み 出 しているのは 汽 車 の 疾 走 であり,また 街 灯 は 窓 という 境 界 の 向 こう 側 にあ る 光 である その 意 味 で 光 の 明 滅 は 越 境 のテーマとも 隣 接 しているのだが,こ のような 境 界 の 裂 け 目 を 通 して 見 える 光 の 明 滅 という 現 象 は 論 考 未 来 への 窓 でイデアの 比 喩 として 使 われた 蜘 蛛 の 糸 を 掻 き 分 ける タオ におけ るものとも 共 通 している タオ はいつも 明 滅 している あるときにはるり 色 のサテンの 上 を 蒼 白 い 真 珠 となって 飛 び,またあるときには 懸 崖 から 剥 がれおち, 雨 となって 花 崗 岩 にはねかかる そのとき 私 たちはイデアを 見 たというのだ 15 この 明 滅 する タオ は 真 珠 や 雨 と 比 喩 的 に 描 かれてはいるが,つ まりはそれが 絶 えず 姿 形 を 変 えることを 意 味 している こうした 不 断 の 変 化 に よって タオ は イデア として 認 識 されるという これは 現 実 世 界 の 様 々 な 事 物 が, 超 越 的 な 存 在 としてのイデアの 影 であるという 考 えと 矛 盾 しないだ ろう しかしこのイデア 的 存 在 の 性 質 としての 明 滅 は, アダム の 中 では 別 のものへ 変 換 される 33

39 松 本 隆 志 汽 車 は 前 へと 疾 走 した 前 へ 前 へと,しかしどこへ 行 くのか? 街 灯 が 一 つ 明 滅 した もう 一 つ,また 一 つ 一 斉 に 止 んだ 見 知 らぬ 黒 い 人 影 が 窓 に 貼 り 付 いた それは 車 掌 だった 客 車 の 下 では 誰 かがハンマーを 打 ち ながら 走 っていた チェニ,チェレニ 16 と,これは 張 り 裂 けた 心 臓 の 打 つ 音 で, 打 ったり 止 んだりしていた そして 眠 っている 乗 客 は 寝 台 から 飛 び 上 がり, 無 意 識 に 手 で 心 臓 を 掴 み, 口 を 覆 い,そして 黒 い 獣 の 口 が 大 きく 開 くと (ああ,わかったよ, 君!) 甘 い 欠 伸 をして 眠 りに 落 ち た そして 車 両 が 揺 れた 街 灯 が 瞬 いた もう 一 つ,もう 一 つ そしても う 街 灯 は 瞬 かなくなった ( ) ここで 街 灯 の 明 滅 はまずハンマーを 打 つ 音 へ,そしてさらに 心 臓 の 鼓 動 へと 変 換 されていく 光 の 明 滅 から 音 の 律 動 そして 身 体 の 脈 拍 へと 転 換 していくの である この 転 換 の 過 程 で 観 念 論 的 な 意 味 は 失 われ,それに 変 わって 律 動 的 な 反 復 性 が 立 ち 現 れてくる このように 光 の 明 滅 が 音 の 反 復 へ 変 換 されたことで, リズム 17 というベールイにとって 重 要 な 手 法 上 の 問 題 が 導 入 されるのだが,こ の 点 は 光 の 話 における 光 の 音 への 変 換 の 例 から 検 討 することとし よう まずは 光 の 話 でもその 冒 頭 に 光 の 明 滅 が 描 かれていることを 確 認 しておこう 時 が 駆 けていく 姿 が 瞬 く 何 もかも 疾 走 していく 生 の 飛 翔 は 偉 大 だ 星 座 は 廻 り, 終 わることなく 回 転 する そして 飛 んで 行 き, 飛 んで 行 くの は (239) ここで 明 滅 しているのは 星 の 輝 きであり,その 明 滅 する 光 は 回 転 するも のとして 描 かれている この 回 転 運 動 は 作 品 内 で 後 に 円 や 螺 旋 の 形 象 を 描 き 出 すことになるのだが,ここではそのような 幾 何 学 的 図 形 とリズムがベールイに とっては 密 接 に 結 びついたものであることを 指 摘 するにとどめておきたい 光 の 話 での 光 の 音 への 転 換 は 太 陽 の 音 楽 を 聞 いたとする 幼 年 34

40 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 時 代 のエピソードに 見 ることができる ある 晩,キーンという 音 が 鳴 り 響 いた きっと 金 色 のぎっしりした 蜜 を 糊 のように 延 ばして, 金 色 の 蜜 から 光 り 輝 く 糸 を 紡 いでいるに 違 いない ときには 液 状 の 太 陽 が 音 を 立 てて 流 れているように 思 えることもあった でもこれは 太 陽 ではなかった 隣 のダーチャのバルコニーに 赤 いシャツを 着 たびっこの 学 生 が 腰 かけて, 巻 き 毛 をちょっと 揺 らしながら,バイオリ ンに 弓 を 走 らせていたのだ (241) 媒 介 的 人 物 である びっこの 学 生 が 奏 でるバイオリンの 音 色 を 聞 いた 主 人 公 は,それを 太 陽 から 糸 が 紡 がれる 音 と 夢 想 している このとき 太 陽 の 音 楽 を 奏 でていた びっこの 男 は 後 に 主 人 公 の 家 庭 教 師 となり, 主 人 公 に 概 念 を 教 えるのだが,それは 言 葉 の 音 楽 を 通 して 形 成 されるのだとい う 彼 は 指 を 打 ち 鳴 らして 話 の 拍 子 をとり, 私 に 言 葉 の 音 楽 を 教 えた 私 の もとに 通 う 習 慣 が 彼 には 残 っていて, 私 の 思 考 を 育 み, 個 別 性 をぬぐい 取 って, 概 念 を 形 成 していったのだ 概 念 が 積 み 上 げられていった その 関 係 は 様 々だった 織 物 が 編 まれて いった 推 論 の 環 は 蜘 蛛 の 巣 の 糸 屑 のように, 遠 くから 私 たちにしるしを 差 し 出 す (242) 家 庭 教 師 として 主 人 公 に 概 念 を 教 えるとき びっこの 男 は 指 を 鳴 らし て 拍 子 を 取 りながら 話 している 初 源 的 な 光 の 明 滅 という 観 念 論 的 問 題 は ここに 至 って 言 葉 のリズムにまで 変 換 され,これを 主 人 公 は 言 葉 の 音 楽 と 呼 んでいるのである 言 葉 のリズムを 通 して 教 えられた 概 念 は 積 み 重 なって 主 人 公 の 思 考 を 育 てていく ここではそれが 織 物 に 譬 えられている こうして 太 陽 から 紡 ぎ 出 された 糸 から 編 まれる 概 念 の 織 物 は 未 来 への 窓 で 言 うと 35

41 松 本 隆 志 ころの 世 界 を 覆 う 蜘 蛛 の 糸 という 境 界 なのだが, 言 葉 の 音 楽 で 形 成 される 平 面 とはまさに 小 説 のテクストに 他 ならない 18 光 のモチーフに 満 たされた 光 の 話 のテクストは,それ 自 体 が 開 かれた 境 界 であり,つ まり 窓 なのだ むすび 以 上 見 てきたように, 論 考 未 来 への 窓 で 提 示 された 現 実 とイデアを 接 続 するシンボルとしての 窓 というモチーフは 光 の 話, アダム という 初 期 のベールイの 短 篇 小 説 の 中 でさまざまな 小 説 的 問 題 へと 発 展 している アダム においては 窓 は 現 実 と 夢 想 という 二 つの 世 界 観 の 越 境 と 汽 車 の 移 動 による 地 理 的 越 境 を 結 ぶ 役 割 を 果 たしていた これによって 実 現 される 主 題 に 基 づいた 小 説 の 空 間 構 成 は 後 の 銀 の 鳩 や ペテルブルグ でより 複 雑 に 展 開 されることとなる また 光 の 話 では 光 の 明 滅 から 音 の 律 動 への 転 換 によって,リズ ムというベールイ 文 学 の 重 要 な 問 題 が 導 入 されると 同 時 に, 小 説 テクストその ものが 窓 となりシンボル 化 されていた このシンボルとしての 小 説 テクス トの 形 成 は 二 元 的 な 語 りの 交 差 によって コーチク レターエフ でも 実 現 さ れている 年 代 のベールイの 散 文 作 品 は 一 般 にはあまり 顧 みられることはないが, そこでは 同 時 代 の 彼 自 身 のシンボリズム 理 論 に 則 りながら, 後 の 長 篇 小 説 に 見 られる 小 説 的 問 題 がすでに 試 みられていたのである (まつもと たかし, 早 稲 田 大 学 大 学 院 生 ) 注 1 先 行 研 究 でベールイ 初 期 の 散 文 による 創 作 活 動 に 焦 点 をあてたものには,Лавров А. В. Андрей Белый в 1900-е годы. Жизнь и литературная деятельность. М., や Лавров А. В. Юношеская художественная проза Андрея 36

42 ベールイ 初 期 の 短 篇 小 説 における 窓 Белого / / Памятники культуры. Новые открытия. Ежегодник Л., С などがあるが,これまでのところ, 個 別 の 作 品 テクストの 詳 細 な 分 析 は 十 分 には 行 われていないように 思 われる 2 J. D. Elsworth, Andrey Bely : A Critical Study of the Novels (Cambridge :Cambridge University Press, 1983), p それぞれの 思 想 家 哲 学 者 からの 具 体 的 な 影 響 関 係 の 考 察 やベールイの 個 々の 論 考 の 詳 細 な 検 討 は 本 稿 の 目 的 とするところではない 本 稿 が 対 象 とする 時 期 のベールイの 思 想 哲 学 的 面 に 関 しての 先 行 研 究 には 国 内 にも 以 下 のものがあ る 御 子 柴 道 夫 ロシア 象 徴 主 義 の 問 題 思 想 面 よりのアプローチ, ヨーロッ パ 文 学 研 究 第 21 号 (1973 年 ),44-67 頁 北 見 諭 認 識 と 創 造 アンドレイ ベールイにおける 認 識 論 の 問 題, ロシア 思 想 史 研 究 第 1 号 (2004 年 ) 頁 4 初 出 は 雑 誌 «Весы» の 1904 年 12 号 5 Белый А.Окно в будущее/ / Собрание сочинений.арабески.кника статей. Луг зеленый. Книга статей. М., С.109. 強 調 原 著 者 複 数 の 世 界 の 結 合 によって 生 まれる 第 3 のもの がシンボルであるという 考 えは 1928 年 に 書 かれた 文 章 でも 繰 り 返 されており,ベールイの 全 創 作 史 の 上 で 変 わることのな い 重 要 な 概 念 であったと 思 われる Белый А. Почему я стал символистом и почему я не перестал им быть во всех фазах моего идейного и художественного развития. Ann Arbor, С Белый А. Окно в будущее. С Белый А. Окно в будущее. С 強 調 原 著 者 8 Белый А. Окно в будущее. С 光 の 話 ( 原 題 «Световая сказка») は 執 筆 された 翌 年 の 1904 年 に 文 集 «Гриф» に 掲 載 された なお 本 稿 では 複 数 の 作 品 を 扱 う 便 宜 上, 光 の 話 と アダム からの 引 用 には 1995 年 に 刊 行 された 著 作 集 を 用 い, 引 用 文 の 後 の 括 弧 内 に 頁 を 記 す Белый А. Собрание сочинений. Серебряный голубь : Рассказы. М., ここに 挙 げた 引 用 箇 所 の 中 で 繰 り 返 されている ハチのように 太 陽 の 光 を 集 め 蓄 える という 表 現 は,ニーチェの ツァラトゥストラかく 語 りき の 冒 頭 を 容 易 に 連 想 させるものでもある 11 この 人 物 は 光 の 話 の 第 4 節 ではじめは びっこの 学 生 として 登 場 する 光 の 話 の 中 で 主 人 公 についで 重 要 な 人 物 であるが, 他 の 登 場 人 物 と 同 様 に 名 前 は 与 えられていない その 後 は 主 人 公 の 成 長 に 伴 って びっこの 教 師, びっこの 霊 媒 師 というように 呼 び 方 が 変 わるが, 本 稿 では 便 宜 的 に びっこ の 男 と 呼 ぶことにする 12 この 人 物 にも 名 前 はないが 初 めて 登 場 する 際 には 大 文 字 でЕеと 書 かれている 37

(1990) (1990) (1991) 88

(1990) (1990) (1991) 88 87 Alina Vitukhnovskaya 1973 3 27 7 11 10 12 1980 Literatunye novosti Smena 1993 1994 1 LSD 10 20 LSD 21 1995 10 1997 10 1998 4 1999 1996 80 1993 1994 1996 1996 1997 1999 10 (1990) (1990) (1991) 88 89

More information

Ольшанская юдофил Синельников Синельников

Ольшанская юдофил Синельников Синельников Agora: Journal of International Center for Regional Studies, No.13, 2016 Митина Митина Славина Ольшанская юдофил Синельников Синельников Педиконе П.и Лаврин А. Педиконе П.и Лаврин А. Педиконе П.иЛавринА.

More information

229期短期講座(APR2019) 

229期短期講座(APR2019)  229 期 ТОКИЙСКИЙ ИНСТИТУТ РУССКОГО ЯЗЫКА ロシア語短期講座 2019420199 20,000 学校法人日ソ学園東京ロシア語学院 156-0052 1-11-2 03-3425-4011FAX03-3425-4048 1 57 2 89 3 1013 級3級2級1級 1.500 文法会話力聴取力読解力和文露訳 42. хотеть, жить 1.1000 2.4

More information

228

228 ТОКИЙСКИЙ ИНСТИТУТ РУССКОГО ЯЗЫКА ロシア語短期講座 2018 年 10 月 ~2019 年 3 月 228 期 20,000 学校法人日ソ学園東京ロシア語学院 156-0052 1-11-2 03-3425-4011FAX03-3425-4048 1 57 2 89 3 1014 1.500 2. хотеть, жить 1.1000 2.4 который 1.2000

More information

.

. . + ALM = = ТВЭЛ 1 http://president.kremlin.ru/about/bio.html 2 Собрание законодательства Российской Федерации 3 N. От первого лица: Разговоры с Владимиром Путиным,ВАГРИУС, М., 2000. с.86 4 Собрание

More information

Общество любомудрия Поэт и друг

Общество любомудрия Поэт и друг Философская поэзия Поэзия мысли Общество любомудрия Поэт и друг Анаксагор. Беседа Платона Письмо к графине NN рассуждать философствовать Я скучен для людей, мне скучно между ними! Но -- видит бог -- я

More information

本組/野部(2段)

本組/野部(2段) Economic Bulletin of Senshu University Vol.46, No.3, 95-107, 2012 1 сельскохозяйственные организации хозяйства населения крестьянские фермерские хозяйства сельскохозяйственные предприятия АККОР 95 Российский

More information

…“…V…A’l”m−¯‡Æ†c™ƒž−¥‰{“è

…“…V…A’l”m−¯‡Æ†c™ƒž−¥‰{“è Временный брак между русскими офицерами и японскими «женами» в Инаса 1 1. 1. 1. 2. 1. 3. 60 60 2 2. 1. Madame de Chrysantème à la Boulangèà la Capoule 2. 2. анати атакосисуки дазо амакчь аната копому

More information

Философия общего дела Н Ф

Философия общего дела Н Ф Н П С А Г В В А С Н Н А В С Е Н Философия общего дела Н Ф 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 Ф М Л Н Вопрос о братстве или родстве о причинах небратского неродственного т е немирного

More information

2007 12 4 2007 12 4 46 1920 10 21 1921 3 10 отдел Высшего судебного контроля судебное решение, вступивщее в законную силу 2002 2002 47 2002 2002 надзорная жалоба 376 2002 2002 381 1 централизованная децентрализованная

More information

ДОБРО ПОЖАЛОВАТЬ Кабели, которые находятся в каталоге исключительно от нашего стандартного ассортимента, мы в состоянии удовлетворить все ваши конкрет

ДОБРО ПОЖАЛОВАТЬ Кабели, которые находятся в каталоге исключительно от нашего стандартного ассортимента, мы в состоянии удовлетворить все ваши конкрет ДОБРО ПОЖАЛОВАТЬ Кабели, которые находятся в каталоге исключительно от нашего стандартного ассортимента, мы в состоянии удовлетворить все ваши конкретные требования для кабели не включены в этом каталоге.

More information

[ ] Гаспаров М.Л., Очерк истории русского стиха.изд.-во«фортуна Лимитед».М., Квятковский А., Поэтический словарь.изд.-во «советская энциклопедия

[ ] Гаспаров М.Л., Очерк истории русского стиха.изд.-во«фортуна Лимитед».М., Квятковский А., Поэтический словарь.изд.-во «советская энциклопедия Е.В. Хворостьянова. Трехдольник Тредиаковского//Индоевропейское языкознание и классическая филология.материалы чтений, памяти профессора Иосифа Моисеевича Тронского.16-18 июня 2003г.СПб.: Наука. 2003.

More information

& ~16 2

& ~16 2 10 10 100 17 20 10 17 10 16:00~17:30 18:00~ 10 9:30~9:45 9:45~12:15 12:15~13:25 13:30~16:20 13:30~16:20 16:30~17:30 17:30~18:00 19:00~ 10 9:30~11:45 1 & 100 15~16 2 3 2004 10 9:30 9:309:45 1401 10 1401

More information

2 (коммуникативно нерасчлененное предложение) Книг было три. 3 книг (коммуникативно расчлененное предложение) Этих книг мы купили две. 2?Учебных предм

2 (коммуникативно нерасчлененное предложение) Книг было три. 3 книг (коммуникативно расчлененное предложение) Этих книг мы купили две. 2?Учебных предм Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.38 20031 Коммуникативно расчлененные предложения с числительными в русском языке Yukiyoshi Inoue В настоящей статье рассматривается вопрос

More information

М. Ю. Мцыри романтическая поэма В. Г. У. Р. А. С. Кавказский пленник Е. А. Эда Герой нашего времени

М. Ю. Мцыри романтическая поэма В. Г. У. Р. А. С. Кавказский пленник Е. А. Эда Герой нашего времени М. Ю. Мцыри романтическая поэма В. Г. У. Р. А. С. Кавказский пленник Е. А. Эда Герой нашего времени хранительные стены тюрьма сумрачные стены глухие стены А. Е. 0 0 0 0 Где люди вольны, как орлы тот чудный

More information

Веселовский

Веселовский Веселовский «Георгиево мучение» Тихонравов «Чудо Георгия о змии» Рыстенко Дмитриев, Лихачев Mиладинови Богданова и др. Веселовский Волочебная песня Земцовский духовные стихи Кирпичников Бессонов Марков

More information

Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) Title 移動展派の創作における個の問題 : クラムスコイとレーピンの作品を中心に Sub Title О личности в творчестве передвижников O lichnosti v tvorchestve peredvizhnikov Author 上野, 理恵 (Ueno, Rie) Publisher

More information

МАС Малый академический словарь БАС Большой академический словарь Г нормативные словари Императорская Российская Академия

МАС Малый академический словарь БАС Большой академический словарь Г нормативные словари Императорская Российская Академия история лексикографии Л. П. Крысин М. А. Бобунова МАС Малый академический словарь БАС Большой академический словарь Г нормативные словари Императорская Российская Академия ТОЛКОВЫЙ СЛОВАРЬ РУССКОГО ЯЗЫКА

More information

立経 溝端p ( ).indd

立経 溝端p ( ).indd Мау Кудрин Гурвич Акиндинова Кузьминов Ясин Маргарита Лютова Ведомости Форум февраля Экономика и жизнь сентября Владислав Иноземцев РБКсентября РБК ОрловаЕршов Загашвили Загашвили Мантуров Никитин Осьмаков

More information

1-2 カーの時間 АСЦУ «Тогда еще верили в пространство и мало думал о времени.» В. В. Хлебников, Соб

1-2 カーの時間 АСЦУ «Тогда еще верили в пространство и мало думал о времени.» В. В. Хлебников, Соб フレーブニコフの カー とハルムスの ラーパ における時間概念の共通性 本田登 はじめに 1930 1991 11 1 第 1 章フレーブニコフの時間概念と作品 カー の構造 1-1 カー概説 9 2 1 Анна Герасимова / Александр Никитаев, Лапа, Театр, 1991, 11. 2 29 1-2 カーの時間 2222 2222 АСЦУ 3 7 1905

More information

プロットとキャラクターの 類 型 3 5 Борисов С.Б. (сост.) Рукописный девичий рассказ. М.: ОГИ, Вацуро В

プロットとキャラクターの 類 型 3 5 Борисов С.Б. (сост.) Рукописный девичий рассказ. М.: ОГИ, Вацуро В ソ 連 の 学 校 における 少 女 の 物 語 文 化 越 野 剛 10 1998 1 2 90 1995 1 3 2003 4 рукописный девичий рассказ 80 1 Белоусов А.Ф. (сост.) Русский школьный фольклор: От «вызываний» Пиковой Дамы до семейных рассказов. М.,

More information

確定_中澤先生

確定_中澤先生 B EU (2012.3) 1. 2. 3. 4. 5. 1. 2. 3. 4. 2. 3. 4. 1 2012 59 1957 1 332 1995 3 1 4 1997 2009 10 3 4 5 2 2010 1000 2 3 4 149 4 3 1 2 9 2 4 1 3 2011 2011 58 4 10:00 11:30 11:30 10 3 13:30 15:30 15:30 15:45

More information

) ) ) ) Сильный ветер сильный и дождь. Если один день шел дождь и появился ветер то будет ещё 2-3 дня дождь. Куда ветер туда и дождь. Если стояло долг

) ) ) ) Сильный ветер сильный и дождь. Если один день шел дождь и появился ветер то будет ещё 2-3 дня дождь. Куда ветер туда и дождь. Если стояло долг ( 1 ) The Russian proverbs of weather forecast Mitsuko Otani А.Ермолов Народное погодоведение Москва 1905 ) ) ) ) Сильный ветер сильный и дождь. Если один день шел дождь и появился ветер то будет ещё 2-3

More information

087-104_−~flö

087-104_−~flö 51 2008 87 103 Он пришел Он сейчас здесь 51 2008 этот 2 я-сейчас-здесь целостность предел 3 51 2008 целостность Сталин понял, что боязнь коммунистической заразы будет сильнее голоса рассудка. И он не ошибся.

More information

2013 2 1 1 27 13.01.28 2 8 13.01.28 3 2 5 7 9 13.01.28 4 2 8 10 13.01.28 5 4 1 11 13.01.28 6 3 4 13.01.28 7 1 13.01.29 13.01.30 8 2 13.01.29 13.01.30 1 9 28 13.01.29 10 29 13.01.29 11 72 73 13.01.29 12

More information

杉浦論文.indd

杉浦論文.indd M. B.G. Rosenthal, ed., The Occult in Russian and Soviet Culture (London, 1997); M. Bohachevsky-Chomiak, B.G. Rosenthal, eds., A Revolution of the Spirit: Crisis of Value in Russian, 1890-1918 (Newton

More information

2019夏期集中講座 講座案内(PDF版)

2019夏期集中講座 講座案内(PDF版) 2019 年 8 83 816 15 3 / 835 / 9301245 15 3 / 81012 / 9301245 15 16,800 CD1,620 4 15 3 日間でロシア語のアルファベットの読みと発音を習得する講座です これからロシア語を始めようとしている方 ロシア語を始めてはみたもののアルファベットの読みに苦戦している方 何となく読めるけど発音に自信がない方 大歓迎です! 発音とイントネーション

More information

Slaviana2017p

Slaviana2017p [ резюме ] О восприятии А. П. Чехова в детском журнале «Красная птица» КОНДО Масао В этой статье предпринимается попытка проанализировать особенности переводов произведений А. П. Чехова, публиковавшихся

More information

( ) ( ) ( ) ( ( ~ ) ( ) ( )) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ⑴ 2

( ) ( ) ( ) ( ( ~ ) ( ) ( )) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ⑴ 2 ( ) ( ) (Максим Горький : Алексей Масимович Пешков ) 1 ( ) ( ) ( ) ( ( ~ ) ( ) ( )) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ⑴ 2 . ( ) ( ) ( ) ( ) [ マ マ ] ( ) ママ ( ) Союз писателей СССР 3 ( ) ( ) Всероссийский союз писателей

More information

Slaviana2017p

Slaviana2017p 19 20 [ резюме ] «Женский вопрос» и литература в России второй половины 19-го начала 20-го века. НАЗАРЕНКО Екатерина В первой части статьи говорится о зарождении и развитии женского вопроса в России. Начиная

More information

Андреевна Федосова ) 5) 6) 1895 Ельпидифор Васильевич Барсов Андрей Ефимович Елена Петровна )

Андреевна Федосова ) 5) 6) 1895 Ельпидифор Васильевич Барсов Андрей Ефимович Елена Петровна ) И.А. Metaphorical Images of Birds in the Funeral Lamentations of I.A.Fedosova Masahiro Nakahori Слово о полку Игореве 1) 2) 3) Ирина Андреевна Федосова 1831-1899 4) 5) 6) 1895 Ельпидифор Васильевич Барсов

More information

…“…V…A’l‡Ì‡Ý‡½†c™ƒž−¥‰{“è2/21

…“…V…A’l‡Ì‡Ý‡½†c™ƒž−¥‰{“è2/21 Взгляд русских на «браки» между русскими офицерами и японскими «женами» 1 1. 1. 1. 2. 20 1887 M-me Chrysanthème Madame Chrysantème M-me Chrysantème 1. 3. par devant monsieur le marie état civil 2. 2.

More information

Microsoft Word - 20120316horiuchi.docx

Microsoft Word - 20120316horiuchi.docx 1 2007 11 2013 2 2012 9 APEC 2009 12 2025 3 2013 2007 2009-2018 4 2009 9 1990 1 1. 1.1 2013 5 2013 2007 11 1996 2002 2007 2 7 8 75 1996 6 APEC 2012 APEC 26 2008 2012 APEC APEC 2 APEC ESPO LNG Sollers APEC

More information

No ロースキーの直観主義とベルクソン哲学 北見 諭 はじめに Лосский Н.О. Обоснование интуитивизма // Лосский Н.О. Избранное. М., С. 13. Лосский. Обоснов

No ロースキーの直観主義とベルクソン哲学 北見 諭 はじめに Лосский Н.О. Обоснование интуитивизма // Лосский Н.О. Избранное. М., С. 13. Лосский. Обоснов No. 56 2009 ロースキーの直観主義とベルクソン哲学 北見 諭 はじめに 20 1 2 3 1 Лосский Н.О. Обоснование интуитивизма // Лосский Н.О. Избранное. М., 1991. С. 13. Лосский. Обоснование интуитивизма. С. 117. 2 Нэтеркотт Ф. Философская

More information

06[ ]宮川(責).indd

06[ ]宮川(責).indd 1. 1920 1894 1958 1 «Распад атома» 1938 2 105 3 2. Голубь голубой 4 сиять синий 5 васильковый лазурный лазорь лазурь лазорёвый бирюзовый аметистовый сапфировый blue голубой синий 6 11 7 1900 1898 8 9 10

More information

.e..Note

.e..Note Рижский М.И. История переводов библии в России. Новосибирск: Наука, Сибирское отд-ние, 1978. С. 57-59. А.Н. А.С. Jeffrey Brooks Jeffrey Brooks, When Russia Learned to Read (Princeton: Princeton U.P., 1985),

More information

神戸外大論叢第 68 巻第 1 号 (2018) 65 オプチナ修道院における聖師父文献の出版事業 (1) パイーシイからキレエフスキーにいたる聖師父文献の翻訳史を中心にー 序章 Богослужение 19 Божественная литургия 19 1 Прот. Иоанн Мейендорф. Византийское наследие в Православной Церкви.

More information

untitled

untitled 30 3 II30 I 5 A1930 1931 33 B1929 1930 1934 1935 C1928 1934 D1924 1927 E1915 16 1925 30 C A A CBA C 7 Нам остается, наконец, сделать последний, заключительный шаг в анализе внутренних планов речевого мышления.

More information

Slaviana2017p

Slaviana2017p [ резюме ] Московский концептуализм в сфере влияния В. А. Фаворского: Взгляды Кабакова, Булатова, Васильева. ИКУМА Генъити В этой статье я попробовал анализировать, каким образом на концептуалистов повлияла

More information

.R N...ren

.R N...ren 1 Новейшая русская поэзия, 1921,, 1971, 76 2,, 1988 235 315,, 20, 2003 69 98 3 Борис Эйхенбаум: Теория формального метода, О литературе: работы разных лет Советский писатель, 1987, с. 375 408., 1984, 215

More information

......

...... сервитут Герасименко Г. А. Борьба крестьян против столыпинской аграрной политики. 1985Зырянов П. Н. Крестьянская община Европейской России 1907-1914 гг. М., 1992 Judith Pallot, Land Reform in Russia, 1906-1917:

More information

Японский язык 9 класс I блок. Аудирование кол-во баллов номер задания правильный ответ 1 1 X 1 2 V 1 3 X 1 4 C 1 5 C 1 6 B 1 7 C 1 8 D 1 9 X 1 10 V 10

Японский язык 9 класс I блок. Аудирование кол-во баллов номер задания правильный ответ 1 1 X 1 2 V 1 3 X 1 4 C 1 5 C 1 6 B 1 7 C 1 8 D 1 9 X 1 10 V 10 Японский язык 9 класс I блок. Аудирование 1 1 X 1 2 V 1 3 X 1 4 C 1 5 C 1 6 B 1 7 C 1 8 D 1 9 X 1 10 V 10 11 Нет единого правильного ответа. Текст составляет участник Возможно приблизительно следующее

More information

typeface (полуустав) (скоропись) (гражданский шрифт)

typeface (полуустав) (скоропись) (гражданский шрифт) 0 1 1 3 3 1984 [ 1984:32] [ 1984:61-62] [ 1984][ 1984] [ 1997] «Style of writing» [ :19] [ :32] [ :82] Cercle linguistique de Waseda (ed.) Travaux du Cercle linguistique de Waseda. Vol. 9., 2005. 39-58.

More information

сложили свои полномочия. ハバロフスク地方の 2000 人程の農村集落の議員のうち 102 名が期限前に辞任 した Причина обязанность ежегодно предоставлять справку о своих доходах, доходах супр

сложили свои полномочия. ハバロフスク地方の 2000 人程の農村集落の議員のうち 102 名が期限前に辞任 した Причина обязанность ежегодно предоставлять справку о своих доходах, доходах супр Декларация о доходах 収益申告書 В Хабаровском крае депутаты сельских поселений отказываются от своих мандатов. ハバロフスク地方で農村集落の議員らが自身の委託業務を拒否している Один из последних случаев 5 депутатов из посёлка Сита района имени

More information

Sawada

Sawada A. I. A. S. Y. M. C. A. P. P. S. M. I. L. A. D. E. A. Мамонов А. И. Пушкин в Японии. М.: Наука, Главная редакция восточной литературы, 1984. 326 с. P. P. V. D. G. I. A. S. K. M. Русское национальное общество

More information

体制移行期のカザフスタン農業

体制移行期のカザフスタン農業 СНГ статистический ежегодник М.стр.СНГ статистический ежегодник М.стр СНГ статистический ежегодникстр. СНГ статистический ежегодник стр. Народное хозяйство СССРМ. стр. Народное хозяйство СССРМ. стр условная

More information

untitled

untitled 30 2006 9 2006 56 7 1. 2006 56 56 10 21 22 10 20 3 41 3 9 21 9 30 10 20 18:3020:30 SF SF 16 10 21 18:30 2 5 5000-1- 10 20 10 21 10 22 9:20-9:35 1 A B C D A B C D 9:40-10:10 [1] [15] [28] 9:40-10:10 [8]

More information

А и стала змея да поналетывать, А и стала змея да понасхватывать По головушке да по скотиной, Стало мало скота в граде ставиться. А и стала змея да по

А и стала змея да поналетывать, А и стала змея да понасхватывать По головушке да по скотиной, Стало мало скота в граде ставиться. А и стала змея да по Ляцкий «О спасении Елисавии Арахлинской Царевны» Селиванов О СПАСЕНИИ ЕЛИСАВИИ АРАХЛИНСКОЙ ЦАРЕВНЫ На три города Господь прогневался, На три города да на три неверных: А и на первый город Арахлин-город,

More information

,000 5, a) b) c) d) e) 9

,000 5, a) b) c) d) e) 9 1. 2. 3. 3 M. 2000 8 21 No.613 2 (2000 8 21 ) 1. 2. 8 2 50 1500 100 50 6 14 2 3. 100 500 1,000 5,000 2 5000 2 4. a) b) c) d) e) 9 f) g) h) i) j) k) l) 5. 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8 9) 10) 11) 12) 4 6 6. 10

More information

55

55 55 The culture concept to which I adhere denotes a historically transmitted pattern of meanings embodied in symbols, a system of inherited conceptions expressed in symbolic forms by means of which people

More information

09井上幸義.indd

09井上幸義.indd Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.50 (2015) 1 Взаимосвязь между Тамарой из поэмы «Демон» и одноименной героиней из баллады «Тамара» INOUE Yukiyoshi Поэтические произведения

More information

The South Kuril Islands Dispute and Political Ideology in Modern Russia: Focusing the second term of the Putin administration ( - ). OSAKI, Iwao Japanese scholarship has insufficiently discussed the Russian

More information

А. Левкин. Двойники.. Москва, 2000: Содержание Ольга Хрусталева. Предисловие к Левкину/ Наступление осени в Коломне/ Достоевский как русская народная

А. Левкин. Двойники.. Москва, 2000: Содержание Ольга Хрусталева. Предисловие к Левкину/ Наступление осени в Коломне/ Достоевский как русская народная 1 (2000) (2002) Андрей Левкин 1954 1972 88 90 98 (Средства массовой информации в интернете)русский Журнал 2001 Старинная арифметика. Рига,

More information

上野俊彦.indd

上野俊彦.indd ロシアにおける連邦制改革 プーチンからメドヴェージェフへ 上野俊彦 はじめに 1 1 2 3 1. 前史 1-1. 1993 年 12 月 12 日の憲法採択に関する国民投票 Путин, Владимир Владимирович Ельцин, Борис Николаевич 1993 12 12 2 89 21 13.88% 45.73% 47.53% 47.65% 20.52% 27.53%

More information

日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後100年祭(1937年、東京)

日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後100年祭(1937年、東京) Title 日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後 100 年祭 (1937 年 東京 ) Author(s) 沢田, 和彦 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 47: 327-353 Issue Date 2000 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38945 Type bulletin (article) Note

More information

7 I.R Ⅱ

7 I.R Ⅱ 50 4 241 16 29 2008. 9 明治期における 極東ロシアへの日本人移民にみる渡航過程 長崎県 旅券下附伺 の分析を中心に 1 2 3 1 2 Ⅰ 19 1866 2 1868 1 1868 1941 16 74 77 6 2 16 17 3 4 1866 か ふうかがい 5 6 3 2 16 7 I.R. 8 9 10 1906 39 11 1906 39 1906 39 1 2 Ⅱ

More information

V. K Мелодия Чешков М. Талант. НЛО, с Емильянова И. «Вадиму было 19 лет». НЛО, с Чешк

V. K Мелодия Чешков М. Талант. НЛО, с Емильянова И. «Вадиму было 19 лет». НЛО, с Чешк 1994 Поэт в катастрофе 1 2 1999 3 3 4 5 Вадим Маркович Козовой 1937 1 Вадим Козовой. Поэт в катастрофе. М.-Париж, Гнозис, Institut d Etudes Slaves, 1994. 2 1985 4 119 3 Словарь поэтов русского зарубежья.

More information

シュリクンとその現代的機能 : アルハンゲリスク州ヴェルフニャヤトイマ地区調査から

シュリクンとその現代的機能 : アルハンゲリスク州ヴェルフニャヤトイマ地区調査から Title シュリクンとその現代的機能 : アルハンゲリスク州ヴェルフニャヤトイマ地区調査から Author(s) 塚崎, 今日子 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 49: 213-244 Issue Date 2002 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38983 Type bulletin (article) File Information

More information

untitled

untitled Малые и средние корпуса общего назначения ENSTO CUBO S. IP 66/67 ENSTO CUBO S представляет собой серию малых и средних корпусов общего назначения, изготовленных из термопластика. Поликарбонатные корпуса

More information

Microsoft Word - ファイナルレポート_Jp_ doc

Microsoft Word - ファイナルレポート_Jp_ doc 1-1 () 26 () 1-2 2 Ф.И.О Должность 1 2 3 4 5 6 ЮСУБОВ Батур ШЕХИЕВ Сердар РУСЛАН Лазываев МЕЗИЛОВ Курбанмурад Амангулыевич ВАСОВ Оразмамед Начальник Азиатско-тихоокеанского управления Министерства иностранных

More information

Microsoft Word - ロシア語

Microsoft Word - ロシア語 1. 書き始め基本文例 はじめまして Очень приятно. 私は田中一郎です Я Танака Ичило. 私と友達になってくれる日本人以外の人を探しています Сейчас я ищу иностранного друга. 私はロシア語は全く分かりませんので 少し日本語が話せる人は大歓迎です Добро пожаловать который чуть-чуть говорить по-ипонски,

More information

(1887 ) ) ([22, p.343]) ( ) (1926) (1929,1994)

(1887 ) ) ([22, p.343]) ( ) (1926) (1929,1994) 1860 1913 1-3 14 3-4 15-1 3-5 17-2 4-6 18-3 4-7 20 5 20-1 6-1 20-2 6-2 24-3 7 29 10 32-1 10 37-2 11 50 *) 1860-1913 4 1 4 ( 16 ) 1920 1920 70 1994 1) 1885 *) [24-2] [24-2] 1 2 [24-2] 3 1) ([4, стр.490])

More information

Vol. Данная работа посвящена Михаилу Александровичу Чехову, русскому актеру, режиссеру и педагогу, внесшему огромный вклад в мировое театральное искус

Vol. Данная работа посвящена Михаилу Александровичу Чехову, русскому актеру, режиссеру и педагогу, внесшему огромный вклад в мировое театральное искус Title Author(s) ミハイル チェーホフが目指した演劇 : 第二モスクワ芸術座とダーティントン ホール芸術センターでの活動の比較から 西田, 容子 Citation 大阪大学言語文化学. 26 P.31-P.42 Issue Date 2017-03-31 Text Version publisher URL https://doi.org/10.18910/62199 DOI 10.18910/62199

More information

Слово.ру: балтийский акцент Молодежь Эстонии Postimees на русском языке День за днем МК Эстония Вести Здоровье для всех Деловые ведомости Столица» «Юж

Слово.ру: балтийский акцент Молодежь Эстонии Postimees на русском языке День за днем МК Эстония Вести Здоровье для всех Деловые ведомости Столица» «Юж Слово.ру: балтийский акцент Молодежь Эстонии Postimees на русском языке День за днем МК Эстония Вести Здоровье для всех Деловые ведомости Столица» «Южная столица» «Северное побережье» «Чудское побережье»

More information

™ƒ‚º’æ’¶Ÿ_Ł¶

™ƒ‚º’æ’¶Ÿ_Ł¶ Julia Kristeva, trans. by Martha Noel Evans, On Yury Lotman, Publications of the Modern Language Association of America 109:3(1994), pp. 375-376. Лотман Ю. М. Культура и взрыв. М., 1992. С.255. Лотман

More information

Kitami

Kitami Баран Х. Первая мировая война в стихах Вячеслава Иванова // Вячеслав Иванов. Материалы и исследования. М., 1996. С.171-185. Ben Hellman, Poets of Hope and Despair: The Russian Symbolists in War and Revolution

More information

‹É›ê‘ã’æ’¶Ÿ_Ł¶

‹É›ê‘ã’æ’¶Ÿ_Ł¶ (родство) (большая семья) (семья) (семья) См.: Зеленин Д.К. (перевод Цивиной К.Д.). Восточнославянская этнография. М., 1991 (1927); Александров В.А., Власова И.В., Полищук Н.С. (отв. ред.) Русские. М.,

More information

untitled

untitled ДОМ-МУЗЕЙ СИБЕЛИУСА ИСТОРИЧЕСКИЙ МУЗЕЙ ГОРОДА ХЯМЕЕНЛИННА Хямеенлинна, примерно 1897 год, вид с церковной башни на восток. 2 ХЯМЕЕНЛИННА 60-80-х ГОДОВ XIX в. В детские годы Сибелиуса Хямеенлинна был довольно

More information

大森雅子60

大森雅子60 No. 60 2013 ミハイル ブルガーコフの教権主義批判における二元論の超克 作家の創作活動とソヴィエト権力との関係を中心に 大森雅子 はじめに 20 1891 1940 1 2 V 349 349 3 1 Ellendea Proffer, Bulgakov: Life and Work (Ann Arbor: Ardis, 1984), p. 541. 2 E. E. Ericson, The

More information

Как говорят программисты, система «не дружелюбна» к пользователю. プログラミストが言うには システムは利用者に対し 親切でない Карта загружается долго, переход от одного меню к дру

Как говорят программисты, система «не дружелюбна» к пользователю. プログラミストが言うには システムは利用者に対し 親切でない Карта загружается долго, переход от одного меню к дру Заявка на гектар 1 ヘクタールの申請 С 1 июня начала действовать программа по оформлению участков земли в рамках законопроекта о дальневосточном гектаре. 6 月 1 日から極東の1ヘクタールについての法案の枠内での土地区画手続きプログラムの施行が開始した Получить

More information

Our Position in the Market Interfax-100 Russian Banks by Assets

Our Position in the Market Interfax-100 Russian Banks by Assets 1 ? 2 ???? 3 !!!!! 4 ? / 5 Почему Россия? Экономическая стабильность Россия одна из наиболее быстрорастущих экономик в мире Богатейшие природные ресурсы Качественные и относительно дешевые трудовые ресурсы

More information

(3) (4) (5) XX века. Slavica Helsingiensia С См. Иванов Вяч. Поэт и чернь //Собрание сочинений. Т. 1. Bruxelles, 1974

(3) (4) (5) XX века. Slavica Helsingiensia С См. Иванов Вяч. Поэт и чернь //Собрание сочинений. Т. 1. Bruxelles, 1974 (1) (2) 1 Баран Х. Первая мировая война в стихах Вячеслава Иванова // Вячеслав Иванов. Материалы и исследования. М., 1996. С.171-185. Ben Hellman, Poets of Hope and Despair: The Russian Symbolists in War

More information

<4D6963726F736F667420576F7264202D2093E0955C8E86814594E08145899C957491E682528D5A824F8254824F8252825182512E646F63>

<4D6963726F736F667420576F7264202D2093E0955C8E86814594E08145899C957491E682528D5A824F8254824F8252825182512E646F63> 1904 1905 * M I 1930 35 1300 V I 800 10 15 80 10 15 1905 1917 12 1917 1906 * Historiography 9 V I 3 11 20 35 4 1 2000 16 1910 500 P N 1990 1 1908 1917 1904 1905 2 3 4 5 6 7 1 Россия и Япония на заре ХХ

More information

.r.c._..

.r.c._.. управление T.H. T. E.H. Mary McAuley, Bread and Justice: State and Society in Petrograd 1917-1922 (Oxford: Clarendon Press, 1991). Richard Sakwa, Soviet Communists in Power: A Study of Moscow during the

More information

この道を作り ここは道路を塞ぎます И вот это благоустройство это конечно можно сделать.» そしてこの設備ももちろんできます Деревянные тротуары, освещение, зоны для кемпинга и 3 совреме

この道を作り ここは道路を塞ぎます И вот это благоустройство это конечно можно сделать.» そしてこの設備ももちろんできます Деревянные тротуары, освещение, зоны для кемпинга и 3 совреме Дикий туризм уходит в прошлое アウトドアは過去のもの Дагинские термальные источники в Ногликах благоустроят. ノグリキのダギンスキー温泉地が開発されている Преображение этой туристической зоны начнется уже этой осенью. この旅行スポットが変わり始めるのはもうこの秋だ

More information

佐藤論文.indd

佐藤論文.indd бессюжетная проза бесфабульные произведения См. Тынянов Ю. Достоевский и Гоголь (К теории пародии). Пг.: Опояз, 1921; Эйхенбаум Б. Как сделана «Шинель» Гоголя (1919). O прозе М. Кузмина (1920) // Эйхенбаум

More information

カズクロム社について

カズクロム社について Каталог книжно журнальной и картографической продукции, предлагаемой для реализации Издательством ВСЕГЕИ (по состоянию на 12.11.03 г.) Наименование издания Цена, Руб. ( 1 Геологическая картография и геологосъемочные

More information

Август Закончились морские маневры Турецкий посол (Гусни-паша) уехал. Г. Извольский уехал за границу. Вечером на «Алмазе» прибудет г. Столыпин. (Утром прибыл) Извольский прибыл в Карлсбад В адмиралтейств-совете

More information

スライド 1

スライド 1 МЕДИЦИНСКИ ПРИРУЧНИК Српски ( セルビア語 ) Када се обраћамо лекару: Не разумем јапанске медицинске термине. Стога, желим овај приручник да користим као помоћ, како бих лакше објаснио/-ла своје симптоме. Лични

More information

Microsoft Word - pre-print2005最終.doc

Microsoft Word - pre-print2005最終.doc Казакевич В. ПОСЛЕДНИЕ ЧТЕНИЯ НА ВИЛЛЕ JEANNETTE «Частьречи» еще Evseeva E.V. Клочков Ю. Предупреждение и устранение грамматических ошибок японских учащихся Накадзава А. О происхождении и эволюции эпистолярных

More information

結婚儀礼に現れる帝政末期ロシア農民の親族関係 : 記述資料分析の試み

結婚儀礼に現れる帝政末期ロシア農民の親族関係 : 記述資料分析の試み Title 結婚儀礼に現れる帝政末期ロシア農民の親族関係 : 記述資料分析の試み Author(s) 伊賀上, 菜穂 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 49: 179-212 Issue Date 2002 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38982 Type bulletin (article) File Information

More information

世界戦争とネオ・スラヴ主義 : 第一次大戦期におけるヴャチェスラフ・イワノフの思想

世界戦争とネオ・スラヴ主義 : 第一次大戦期におけるヴャチェスラフ・イワノフの思想 Title 世界戦争とネオ スラヴ主義 : 第一次大戦期におけるヴャチェスラフ イワノフの思想 Author(s) 北見, 諭 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 47: 117-155 Issue Date 2000 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38933 Type bulletin (article) File Information

More information

シクロフスキイ再考の試み : 散文における《複製技術的要素》について

シクロフスキイ再考の試み : 散文における《複製技術的要素》について Title シクロフスキイ再考の試み : 散文における 複製技術的要素 について Author(s) 佐藤, 千登勢 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 52: 119-144 Issue Date 2005 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/39073 Type bulletin (article) File Information

More information

宮沢批判

宮沢批判 ロシアの工業生産指数 :1860-1913 年 はじめに (Suhara, 1999; 2000; 2001; Сухара, 2000,, 2000) 1860 1913 1860 1990 1885 1913 1860 1913 1860 1865 1870 5 1. コンドラチェフの生産指数 1920 (Конъюнктурный институт, 1926, стр.12-21) (Н.

More information

ロトマン『物と空虚とのあいだで』読解 : 構造という閉域をめぐる言説の諸類型

ロトマン『物と空虚とのあいだで』読解 : 構造という閉域をめぐる言説の諸類型 Title ロトマン 物と空虚とのあいだで 読解 : 構造という閉域をめぐる言説の諸類型 Author(s) 中村, 唯史 Citation スラヴ研究, 49, 147-177 Issue Date 2002 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38981 Type bulletin (article) File Information 49-006.pdf Instructions

More information

ミハイル・ブルガーコフの教権主義批判における二元論の超克 : 作家の創作活動とソヴィエト権力との関係を中心に

ミハイル・ブルガーコフの教権主義批判における二元論の超克 : 作家の創作活動とソヴィエト権力との関係を中心に Title ミハイル ブルガーコフの教権主義批判における二元論の超克 : 作家の創作活動とソヴィエト権力との関係を中心に Author(s) 大森, 雅子 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 60: 29-55 Issue Date 2013-06-15 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/56917 Type bulletin (article)

More information

Репортаж Павла Зарубина. パーベル ザルビンによるレポートです В астраханской школе имени Гейдара Алиева готовятся ко дню народного единства. アストラハンのヘイダル アリエフ記念学校では民族統一記

Репортаж Павла Зарубина. パーベル ザルビンによるレポートです В астраханской школе имени Гейдара Алиева готовятся ко дню народного единства. アストラハンのヘイダル アリエフ記念学校では民族統一記 Нужен ли закон о российской нации: Путин дал старт дискуссии ロシアの民族に関する法律は必要か : プーチンは議論をスタートさせた Представители каких народов должны получать гражданство в России в упрощённом порядке, как адаптировать мигрантов,

More information

- Суффиксы вежливости (учебник урок 7, правило 5, стр. 49; файл «Суффиксы вежливости СЭНСЭЙ, САМА, САН, КУН, ТЯН») Заполните пропуск соответствующим п

- Суффиксы вежливости (учебник урок 7, правило 5, стр. 49; файл «Суффиксы вежливости СЭНСЭЙ, САМА, САН, КУН, ТЯН») Заполните пропуск соответствующим п Банк заданий_ Японский язык 1 семестр 6 класс - Тест 1_Т-1, С-1, Тест 2_И-1,С-1 Вопросы для самоконтроля 6 класс. Лексика: 1) Новые слова из тетради. 2) Новые слова из учебника Е.В. Стругова, Н.С. Шефтелевич,

More information

....Acta

....Acta Benjamin Pinkus, The Jews of the Soviet Union. The History of a National Minority (Cambridge: Cambridge UP, 1988); Gennadi Kostyrchenko, Out of the Red Shadows. Anti-Semitism in Stalin s Russia (N.Y.:

More information

untitled

untitled 1874 1940 1920 1 1 1 18 19 5 200 1903 1907 2 1 5 2 231 1920 1 20 1910 2 2 1910 3 3 1925 4 5 6 4 1917 1929 10 10 1931 1935 1954 7 2 1 55 1905 8 В Э 1960 9 5 1968 4 2 177 180 5 2 233 234 10 1970 1973 11

More information

09_後藤_p126-143(720-737).indd

09_後藤_p126-143(720-737).indd В. И. Ленин, Заметки публициста -О восхождении на высокие горы, о вреде уныния, о пользе торговли, об отношении к меньшевикам и т.п.-, Полн. собр. соч. т. стр. фундамент социалистической экономики, начинание

More information

- February significance

- February significance ЯПОНИЯ ежегодник ЯПОНИЯ ежегодник ЯПОНИЯ ежегодник - February significance - February A.S. - February D.V. S.I. D.V. G.K. Правда - February N.N. D.V. O.V. - February D.V. A.N. D.V. D.V. D.V. D.V. A.N.

More information

И нам нужно сделать все, чтобы в рамках этого решения сейчас отработать». そして我々はこの判断の中で今行うべき全てのことをする必要があります Решение МОК, без сомнения, расстроит к при

И нам нужно сделать все, чтобы в рамках этого решения сейчас отработать». そして我々はこの判断の中で今行うべき全てのことをする必要があります Решение МОК, без сомнения, расстроит к при Готовились к соревнованиям, но были готовы и к худшему. Спортсмены и тренеры делятся эмоциями от вердикта (06:02~) 競技に向け準備していながら 最悪の状態にも心の用意ができていた 選手たちとトレーナーは判決の感想を話している «В целом, решение МОК, на наш взгляд,

More information

体制転換後ロシア連邦20 年の教育改革の展開と課題に関する総合的研究中間報告書(2011 年度)子どもの写真抜き.indd

体制転換後ロシア連邦20 年の教育改革の展開と課題に関する総合的研究中間報告書(2011 年度)子どもの写真抜き.indd В В Д.А. Ben Eklof, Larry Holmes and Vera Kaplan (eds.), 2007, Educational Reform in Post-soviet Russia: Legacies and Prospects, The Cummings Center Series. David Jonson (ed.), 2010, Politics, Modernization

More information

戦後ソ連物理学界の抗争とユダヤ人問題 : 知識人層における反ユダヤ現象の一側面

戦後ソ連物理学界の抗争とユダヤ人問題 : 知識人層における反ユダヤ現象の一側面 Title 戦後ソ連物理学界の抗争とユダヤ人問題 : 知識人層における反ユダヤ現象の一側面 Author(s) 長尾, 広視 Citation スラヴ研究, 50: 107-142 Issue Date 2003 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/39012 Type bulletin (article) File Information 50-004.pdf Instructions

More information

Hanya

Hanya KGB Aleksandr Nekrich, The Punished Peoples (New York: W. W. Norton & Company, 1978). Ingeborg Fleischhauer and Benjamin Pinkus, The Soviet Germans: Past and Present (London: C.Hurst & Company, 1986),

More information

Japan.indd

Japan.indd УДК 070(520)(075) ББК 65.497(5Япо) Ф44 ОГЛАВЛЕНИЕ Фесюн, А. Ф44 Язык японских СМИ [Текст] / Нац. исслед. ун-т «Высшая школа экономики». М.: Изд. дом Высшей школы экономики, 2013. 216 с. 1000 экз. ISBN

More information

102 (Руль) (За свободу!) (Меч) (Поэты пражского «Скита») («Скит». Прага : Антология. Биографии. Документы) 9 10

102 (Руль) (За свободу!) (Меч) (Поэты пражского «Скита») («Скит». Прага : Антология. Биографии. Документы) 9 10 1. 亡命文学をめぐる論争 (Русская литература в игзнании: 1956) 1926 1 (Последние новости) (Возрождение) (Воля России) 2 3 А Л 4 1928 5 6 10-1 101 119 2007. 102 (Руль) (За свободу!) (Меч) 7 1930 2005 (Поэты пражского

More information

естественный газ [36, p.530] каменный уголь (10.65 ) (7.32 ) 1927/28 [20, p.195] [29, pp ] бурый уголь К(8.00 ) О(7.70 ) РМ(5.55 ) [25, p.720]

естественный газ [36, p.530] каменный уголь (10.65 ) (7.32 ) 1927/28 [20, p.195] [29, pp ] бурый уголь К(8.00 ) О(7.70 ) РМ(5.55 ) [25, p.720] 1927/28 1955 1997 ([37], [38], [39], [45], [46]) 1927/28 1955 1997 1927/28 1955 [36] 1927/28 1927/28 1927 10 1928 9 10 9 1930 ( ) [11] 1.1 электроэнергия [36, p.530] 1.2 нефть f.o.b. [34, p.151] 48.1 1

More information

リーダー達は両者の協力において最も切実で切迫した問題について話し合うた め顔を合わせた Сейчас идет встреча в расширенном составе - с участием министров и руководителей крупнейших российских ком

リーダー達は両者の協力において最も切実で切迫した問題について話し合うた め顔を合わせた Сейчас идет встреча в расширенном составе - с участием министров и руководителей крупнейших российских ком На Восточный экономический форум во Владивостоке приехало три тысячи участников из 35 стран ウラジオストクでの東方経済フォーラムに 35 か国から 3000 人の参加者が訪れた Главные политические новости сегодня приходят из Владивостока. 重要な政治的ニュースが今日ウラジオストクから届いた

More information