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1 ISFJ25 政 策 フォーラム 発 表 論 文 地 方 歳 出 の 見 直 しによる 財 政 再 建 ~ 公 務 員 給 与 の 地 域 準 拠 ~ 大 阪 大 学 本 間 正 明 研 究 会 河 合 利 明 佐 々 木 儀 広 濱 本 太 郎 吉 野 功 一 25 年 2 月 本 稿 は 25 年 2 月 3 日 4 日 に 開 催 される ISFJ( 日 本 政 策 学 生 会 議 ) 政 策 フォーラム25 のために 作 成 したものである 本 稿 の 作 成 にあたっては 本 間 正 明 教 授 ( 大 阪 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 ) 跡 田 直 澄 教 授 ( 慶 応 義 塾 大 学 商 学 部 )をはじめ 多 くの 方 々から 有 益 且 つ 熱 心 なコメントを 頂 戴 した ここに 記 して 感 謝 の 意 を 表 したい しかしながら 本 稿 にあり 得 べき 誤 り 主 張 の 一 切 の 責 任 はいうまでもなく 筆 者 たち 個 人 に 帰 するも のである

2 要 旨 第 一 章 では 地 方 歳 出 を 論 ずる 導 入 部 として 国 と 地 方 の 財 政 状 況 及 び 財 政 関 係 を 概 観 した 後 に 地 方 への 移 転 財 源 が 国 の 公 債 発 行 を 誘 発 している 現 状 を 指 摘 する さらに 地 方 の 財 政 を 悪 化 させる 主 な 要 因 として 地 方 交 付 税 の 存 在 について 言 及 し 地 方 交 付 税 額 が 決 定 される 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 額 が 地 方 税 収 を 超 えた 伸 びをしていることに 触 れた 上 で 地 方 歳 出 抑 制 に 向 けての 見 直 しが 喫 緊 の 課 題 であることを 提 示 する 第 二 章 では 先 行 研 究 として 基 準 財 政 需 要 額 の 算 定 を 用 いて 地 方 財 政 計 画 削 減 シミュレーシ ョン 分 析 を 行 った 赤 井 吉 田 (24) 地 方 財 政 需 要 見 直 しによる 地 方 財 政 健 全 化 シミュレーシ ョン - 基 準 財 政 需 要 額 の 算 定 方 法 を 用 いた 地 方 交 付 税 と 国 庫 支 出 金 の 削 減 - を 概 説 する 先 行 研 究 の 問 題 点 を 指 摘 した 上 で さらなる 実 現 可 能 な 地 方 歳 出 見 直 しに 向 けて 分 析 対 象 を 近 年 減 少 傾 向 が 見 られない 人 件 費 つまり 地 方 公 務 員 給 与 に 焦 点 をあてた 本 稿 との 関 係 性 を 述 べる 第 三 章 では 法 的 根 拠 に 基 づく 給 与 決 定 の 基 本 原 則 民 間 従 事 者 と 公 務 員 の 違 いを 確 認 した 後 現 行 の 官 民 給 与 比 較 では 民 間 との 乖 離 が 見 られるなど 不 十 分 な 点 が 存 在 することを 指 摘 する さ らに 私 たちの 分 析 の 独 自 性 として 比 較 対 象 を 限 定 しない 官 民 年 収 比 較 を 行 った 結 果 地 方 公 務 員 年 収 が 民 間 年 収 を 大 きく 上 回 っている 現 状 を 提 示 し 年 間 支 給 手 当 額 が 最 も 大 きいにも 関 わ らず 名 目 の 目 的 に 沿 った 支 給 がされていない 調 整 手 当 の 実 態 を 明 らかにする 第 四 章 では 前 章 の 分 析 を 受 け 民 間 の 伸 び 率 での 地 方 公 務 員 年 収 を 算 定 することで 地 方 歳 出 における 人 件 費 削 減 額 を 提 示 する さらに 地 方 財 政 計 画 の 人 件 費 削 減 効 果 を 算 出 することで 本 題 である 地 方 歳 出 見 直 しにどれだけのインパクトを 齎 すことができるか 検 証 する 第 五 章 では 第 三 四 章 の 分 析 結 果 より 地 域 の 行 政 内 容 経 済 状 況 を 考 慮 した 地 域 準 拠 の 徹 底 を 提 案 した 上 で 具 体 的 な 政 策 として 官 民 比 較 給 与 対 象 を 月 額 給 与 から 年 収 にすること と 調 整 手 当 ( 地 域 手 当 )の 廃 止 の 二 つを 提 言 する 2

3 目 次 はじめに 第 章 現 状 認 識 第 節 (.) 国 地 方 の 財 政 状 況 関 係 第 2 節 (.2) 移 転 財 源 と 財 政 悪 化 の 関 係 第 3 節 (.3) 地 方 交 付 税 と 地 方 財 政 計 画 第 2 章 先 行 研 究 と 問 題 意 識 第 節 (.) 先 行 研 究 第 2 節 (.2) 問 題 意 識 第 3 章 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 第 節 (.) 地 方 公 務 員 給 与 の 決 定 方 法 第 2 節 (.2) 過 去 の 給 与 支 給 実 態 ( 現 行 の 官 民 比 較 の 確 認 ) 第 3 節 (.3) 官 民 年 収 比 較 第 4 節 (.4) 地 方 公 務 員 給 与 手 当 の 伸 び 第 5 節 (.5) 調 整 手 当 の 分 析 第 4 章 地 方 歳 出 における 削 減 額 の 算 出 第 節 (.) 人 件 費 削 減 額 第 2 節 (.2) 地 方 財 政 計 画 における 給 与 関 係 費 削 減 額 第 5 章 政 策 提 言 おわりに 参 考 文 献 データ 出 典 3

4 はじめに 25 年 6 月 経 済 財 政 運 営 と 構 造 改 革 に 関 する 基 本 方 針 25 いわゆる 骨 太 の 方 針 が 策 定 され 小 さくて 効 率 的 な 政 府 の 実 現 が 社 会 保 障 制 度 の 抜 本 的 な 見 直 しと 並 ぶ 構 造 改 革 の 柱 とし て 明 確 に 位 置 づけられた 小 さくて 効 率 的 な 政 府 の 実 現 は 財 政 構 造 改 革 のなかで 主 要 命 題 とし て 扱 われており 基 礎 的 財 政 収 支 改 善 に 向 けて 歳 出 歳 入 両 面 での 一 体 的 な 改 革 を 行 い 財 政 再 建 への 道 筋 を 明 らかにすることが 必 要 とされている 一 方 で 国 から 地 方 へ という 方 針 に 従 い 国 と 地 方 における 歳 出 を 効 率 化 させる 手 法 とし て 基 本 的 に 国 の 地 方 行 財 政 への 介 入 を 必 要 最 低 限 にとどめて 地 方 の 自 立 を 促 す 地 方 分 権 が 推 進 されようとしている 現 在 の 国 と 地 方 の 財 政 の 状 況 は 歳 入 と 歳 出 の 間 にねじれが 生 じており 地 方 の 歳 出 規 模 を 決 定 する 地 方 財 政 計 画 の 膨 張 も 含 めて 解 決 すべき 課 題 が 山 積 している これら は 日 本 経 済 が 本 格 的 な 人 口 減 少 超 高 齢 社 会 の 到 来 など 大 きな 環 境 変 化 を 乗 り 切 るためには 不 可 避 の 課 題 であり 解 決 が 急 がれる 本 来 財 政 健 全 化 のためには 不 必 要 な 財 政 需 要 を 見 直 し 削 減 していくことが 不 可 欠 である 民 間 企 業 においても 厳 しい 経 営 状 況 に 陥 った 場 合 には コスト 削 減 の 一 環 として 人 件 費 カット も 含 めた 対 応 策 を 提 示 する 例 は 珍 しくない 最 近 でも 日 本 航 空 が 業 績 悪 化 を 理 由 に グループ 3 社 の 社 員 約 2 万 2 人 を 対 象 に 削 減 幅 を8 2%とする 賃 金 削 減 を 打 ち 出 したことは 記 憶 に 新 しい たとえ 地 方 公 務 員 であったとしても 民 間 の 先 例 に 鑑 みて 公 務 員 給 与 という 聖 域 にメス を 入 れて 行 く 必 要 があるのではないだろうか 現 在 経 済 財 政 諮 問 会 議 において 国 家 公 務 員 給 与 と 並 んで 地 方 公 務 員 給 与 についても 厳 しく 議 論 が 進 められているが そもそも 公 務 員 の 給 与 の 支 給 実 態 及 び 支 給 基 準 は 適 正 なものであったのだろうか 私 たちは 地 方 財 政 の 現 状 を 追 いつつ 地 方 公 務 員 の 過 去 の 支 給 実 態 に 対 してしっかりとした 評 価 をしていく 必 要 があると 考 える 言 うまでもないが 公 務 員 給 与 は 私 たちの 税 金 から 賄 われ ており 実 態 を 見 極 めたうえで 良 否 を 判 断 することは 今 の 時 代 に 非 常 に 意 義 のあること 考 え る 本 稿 では これらの 問 題 意 識 にこたえるために 第 章 で 国 と 地 方 の 財 政 状 況 を 概 観 した 後 第 2 章 で 地 方 公 務 員 人 件 費 に 焦 点 をあてる さらに 第 3 章 で 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 を 年 収 比 較 支 給 手 当 比 較 分 析 により 評 価 した 後 第 4 章 で 地 方 財 政 歳 出 に 与 えるインパクトを 算 出 してい る 以 上 の 分 析 を 踏 まえ 第 5 章 では 地 方 公 務 員 は 地 域 全 体 への 奉 仕 者 であるという 原 点 に 立 ち 返 り 地 域 住 民 の 理 解 を 得 られる 給 与 体 系 を 政 策 提 言 する 4

5 第 章 現 状 認 識 第 節 国 地 方 の 財 政 状 況 関 係 地 方 歳 出 の 見 直 しが 不 可 欠 となっている 背 景 として 国 地 方 の 財 政 状 況 の 悪 化 と 国 地 方 の 財 政 関 係 がある そこでまず 国 地 方 の 財 政 状 況 について 概 観 する 国 の 財 政 状 況 については 公 債 債 務 残 高 が 高 い 水 準 にあるだけでなく ここ 数 年 増 加 一 途 を たどっている( 図 ) さらに 債 務 残 高 が GDP に 占 める 割 合 で 見 ても 日 本 は 平 成 6 年 度 に 63.4%となっており 主 要 先 進 国 の 中 でも 突 出 して 高 い( 図 2) 図 国 の 公 債 残 高 7, 債 務 残 高 ( 億 ) 6, 5, 4, 3, 2,, 昭 和 平 成 元 年 度 2 3 債 務 残 高 公 債 残 高 出 所 ) 地 方 財 政 白 書 5

6 図 2 対 GDP 債 務 残 高 の 国 際 比 較 8 6 GDP 比 (%) 日 本 米 国 英 国 ドイツ フランス イタリア カナダ 2 平 成 年 度 出 所 ) エコノミック アウトルック 75 号 (24 年 6 月 ) OECD 一 方 地 方 の 財 政 状 況 は 経 常 収 支 比 率 が 全 地 方 自 治 体 合 計 で 平 成 5 年 に 79.4%であったの が 平 成 5 年 度 には 9.3%に 悪 化 し( 図 3) 公 債 費 負 担 比 率 も 平 成 5 年 に.9%であったのが 平 成 5 年 には 9.8%に 悪 化 している さらに 地 方 債 残 高 は 約 38 兆 円 ( 平 成 5 年 度 )であり 地 方 歳 入 総 額 の 約.4 倍 一 般 財 源 の 約 2.5 倍 の 規 模 となっている 次 に 国 地 方 の 財 政 関 係 について 概 観 する 平 成 5 年 度 決 算 ベースで 国 の 歳 出 と 地 方 の 歳 出 の 割 合 は38:62であり 国 税 と 地 方 税 の 割 合 は58;42であり 国 地 方 の 歳 出 歳 入 の 間 には 乖 離 が 存 在 する( 図 4) その 乖 離 を 国 から 地 方 へ 国 庫 支 出 金 地 方 交 付 税 という 移 転 財 源 で 補 填 している 図 3 経 常 収 支 比 率 95 9 (%) 都 道 府 県 市 町 村 合 計 7 平 成 3 年 平 成 4 年 平 成 5 年 平 成 6 年 平 成 7 年 平 成 8 年 平 成 9 年 平 成 年 平 成 年 平 成 2 年 平 成 3 年 平 成 4 年 平 成 5 年 出 所 ) 地 方 財 政 白 書 6

7 図 4 地 方 税 収 と 歳 出 の 乖 離,2, 億 円,, 8, 6, 4, 地 方 普 通 会 計 歳 出 地 方 税 収 2, 年 度 出 所 ) 財 政 金 融 統 計 月 報 第 2 節 移 転 財 源 と 財 政 悪 化 の 関 係 既 述 のように 地 方 への 移 転 財 源 は 国 庫 支 出 金 と 地 方 交 付 税 であり 平 成 7 年 度 には 移 転 財 源 は 国 の 一 般 会 計 歳 出 の 約 33%を 占 めていることと 国 の 歳 入 の 約 42%が 公 債 金 収 入 であることを 考 慮 すると 移 転 財 源 が 国 の 公 債 発 行 を 誘 発 していると 言 える また 移 転 財 源 の 中 でも 特 に 近 年 急 激 な 伸 びを 見 せている 地 方 交 付 税 ( 図 5)は その 原 資 は 法 定 5 税 ( 所 得 税 酒 税 の 32% 法 人 税 の 35.8% 消 費 税 の 29.5% たばこ 税 の 25%)と 定 められているが そもそも 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 が 決 定 された 後 主 に 地 方 税 地 方 債 国 庫 支 出 金 で 賄 えない 分 を 補 填 しているので 法 定 5 税 では 足 りていない その 不 足 分 は 交 付 税 特 別 会 計 の 借 入 で 賄 っており 借 入 金 残 高 は 平 成 7 年 度 で 約 52 兆 円 ( 図 6)にまで 達 している 以 上 のように 移 転 財 源 の 中 でも 近 年 の 財 政 悪 化 を 主 に 引 き 起 こしてきたのは 地 方 交 付 税 で あると 言 うことができる 図 5 国 庫 支 出 金 と 地 方 交 付 税 の 推 移 25 2 億 円 5 地 方 交 付 税 国 庫 支 出 金 年 972 年 975 年 978 年 98 年 984 年 987 年 99 年 993 年 996 年 999 年 年 度 出 所 ) 財 政 金 融 統 計 月 報 また 地 方 交 付 税 は 地 方 自 治 体 に 歳 出 削 減 のインセンティブを 希 薄 にさせることで 地 方 歳 出 を 膨 張 させているという 問 題 が 山 下 耕 治 赤 井 伸 郎 佐 藤 主 光 (22)において 指 摘 されている 7

8 ( 億 円 ) 6 図 6 交 付 税 特 別 会 計 借 入 金 残 高 平 成 3 年 平 成 4 年 平 成 5 年 平 成 6 年 平 成 7 年 平 成 8 年 平 成 9 年 平 成 年 平 成 年 平 成 2 年 平 成 3 年 平 成 4 年 平 成 5 年 平 成 6 年 平 成 7 年 出 所 ) 地 方 財 政 白 書 第 3 節 地 方 交 付 税 と 地 方 財 政 計 画 地 方 交 付 税 の 額 は 地 方 財 政 計 画 によって 決 定 される 地 方 財 政 計 画 では 翌 年 度 の 全 地 方 自 治 体 歳 出 を 項 目 ごと 2 に 見 積 って 総 額 を 出 し その 後 地 方 財 政 対 策 によって 歳 出 に 見 合 うよ う 税 収 との 差 分 を 埋 める 形 で 地 方 交 付 税 国 庫 支 出 金 地 方 債 の 額 が 決 定 される ここ5 年 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 額 は 急 激 に 伸 びている( 図 7)が 地 方 税 は 伸 びていない この ことが 地 方 交 付 税 額 を 急 激 に 膨 張 させる 原 因 になっていると 考 えることができる 以 上 の 制 度 及 び 状 況 を 考 慮 すると 日 本 財 政 を 悪 化 させている 移 転 財 源 特 に 地 方 交 付 税 を 抑 制 するためには 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 を 抑 制 する 必 要 があると 考 えられる 図 7 地 方 財 政 計 画 億 円,, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2,, 964 年 967 年 97 年 973 年 976 年 979 年 982 年 985 年 988 年 99 年 994 年 997 年 2 年 23 年 年 度 出 所 ) 財 政 金 融 統 計 月 報 地 方 財 政 計 画 は 地 方 自 治 体 にとっては 予 算 編 成 の 指 針 となるものであるが 国 の 予 算 編 成 を 受 けて 作 るため 地 方 自 治 体 の 現 状 を 考 慮 しているとは 言 えず またその 計 画 額 と 決 算 の 間 には 大 きな 乖 離 がある 2 具 体 的 には 給 与 関 係 経 費 一 般 行 政 経 費 投 資 的 経 費 公 債 費 公 営 企 業 繰 出 金 地 方 交 付 税 の 不 交 付 団 体 における 平 均 水 準 を 超 える 必 要 経 費 である 8

9 第 2 章 先 行 研 究 と 問 題 意 識 第 節 先 行 研 究 先 行 研 究 として 赤 井 吉 田 (22) 地 方 財 政 需 要 の 見 直 しによる 地 方 財 政 健 全 化 シミュレーシ ョン 基 準 財 政 需 要 の 算 定 方 法 を 用 いた 地 方 交 付 税 と 国 庫 支 出 金 の 削 減 があげられる この 先 行 研 究 は 地 方 財 政 計 画 で 議 論 される 地 方 財 政 需 要 の 中 身 の 吟 味 を 行 い 具 体 的 な 地 方 歳 出 削 減 策 を 実 施 した 場 合 に 地 方 交 付 税 額 国 庫 支 出 金 額 の 削 減 を 通 じて 各 地 方 自 治 体 の 地 方 財 政 がどう 変 化 するかをシミュレーション 分 析 したものである 地 方 財 政 計 画 に 関 して その 根 拠 や 詳 細 な 内 容 が 公 表 されておらず 地 方 財 政 計 画 自 体 から 財 政 需 要 の 削 減 案 を 議 論 することは データの 制 約 上 困 難 であるため 地 方 財 政 計 画 で 議 論 される 必 要 歳 出 にメスを 入 れ 必 要 額 の 算 定 内 容 を 知 るために 地 方 交 付 税 の 基 準 財 政 需 要 額 算 定 方 法 を 利 用 している すなわち 地 方 財 政 計 画 で 想 定 され 地 方 交 付 税 において 保 障 されるべき 費 用 は 各 地 方 自 治 体 が 標 準 的 な 行 政 を 実 施 するために 要 する 費 用 である という 原 則 に 立 ち 戻 り 全 国 一 律 に 国 がその 財 源 を 保 障 する 必 要 はないと 考 えられる 項 目 を 基 準 財 政 需 要 額 から 除 外 し その 結 果 削 減 される 政 府 からの 補 助 金 額 すなわち 普 通 交 付 税 削 減 額 および 国 庫 支 出 金 削 減 額 を 算 出 している 4つのケース 2 におけるシミュレーションを 通 じて 得 られた 結 果 としては 基 準 財 政 需 要 にお ける 投 資 関 係 経 費 を 中 心 に 地 方 歳 出 の 見 直 しを 行 った 場 合 都 道 府 県 においては 歳 出 の 約 5 割 強 を 市 町 村 においては 約 6.5 割 強 を 独 自 財 源 で 賄 えるようになることが 明 らかとなった また 現 状 と 比 べて 国 から 地 方 への 住 民 一 人 当 たり 移 転 財 源 額 ( 地 方 交 付 税 + 国 庫 支 出 金 )に 関 する 地 域 間 格 差 は 拡 大 するものの 住 民 一 人 当 たり 歳 入 総 額 に 関 する 地 域 間 格 差 は 縮 小 することが 明 らかとなった 更 に 基 準 財 政 需 要 算 定 において 投 資 的 経 費 部 分 をほぼ 全 廃 するほどの 大 規 模 な 財 政 需 要 の 削 減 を 実 施 しない 限 り 交 付 税 特 会 における 借 入 金 ( 単 年 度 増 加 分 )を 無 くすことすらできない ことと 近 年 の 民 間 における 給 与 削 減 トレンドに 合 わせて 地 方 公 務 員 給 与 も 削 減 すると 日 本 全 体 で 約 兆 2, 億 円 程 度 地 方 交 付 税 国 庫 支 出 金 総 額 が 減 額 できることも 明 らかとなった 対 象 団 体 は94 団 体 シミュレーション 実 施 年 度 は 平 成 2(2) 年 度 とする 具 体 的 には 地 方 財 政 計 画 で 想 定 されている 地 方 歳 出 の 適 正 化 を 行 った 場 合 に 当 該 財 政 改 革 が 各 地 方 財 政 をどの 程 度 健 全 化 させ 得 るか 2 当 該 財 政 改 革 が 地 方 間 における 歳 入 の 公 平 性 をどう 変 化 させるか 3 当 該 財 政 改 革 が 都 道 府 県 財 政 と 市 町 村 財 政 に 与 え る 影 響 の 違 い 4 当 該 財 政 改 革 が 地 方 財 政 における 長 期 累 積 債 務 をどの 程 度 削 減 させ 得 るのかについて 分 析 されてい る 2 ケース(ⅰ) 基 準 財 政 需 要 各 項 目 における 事 業 費 補 正 の 廃 止 (ⅱ) 基 準 財 政 需 要 各 項 目 における 投 資 的 経 費 の 廃 止 + 農 山 漁 村 地 域 活 性 化 対 策 費 の 廃 止 (ⅲ)ケースⅱ+ 基 準 財 政 需 要 における 公 債 費 中 公 共 投 資 財 源 たる 補 正 予 算 債 償 還 費 地 域 財 政 特 例 対 策 債 償 還 費 臨 時 財 政 特 例 債 償 還 費 公 共 事 業 等 臨 時 特 例 債 償 還 費 財 源 対 策 債 償 還 費 の 廃 止 (ⅳ)ケースⅲ+ 基 準 財 政 需 要 各 項 目 における 経 常 経 費 中 人 件 費 の 削 減 9

10 今 後 の 課 題 として 各 地 域 における 住 民 厚 生 の 変 化 を 検 証 すること 真 に 必 要 な 財 政 需 要 を 明 ら かにしていくこと そして 将 来 世 代 を 含 めた 厚 生 を 高 める 必 要 性 を 訴 えて 結 びとしている 第 2 節 問 題 意 識 現 状 認 識 を 踏 まえ 私 たちは 財 政 再 建 のためには 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 の 見 直 しが 必 要 不 可 欠 で あると 考 えた さらに 日 本 財 政 の 悪 化 が 深 刻 である 状 況 を 考 え 長 期 的 な 視 点 からの 地 方 財 政 計 画 歳 出 の 見 直 しではなく まずは 短 期 的 な 視 点 からの 実 現 可 能 な 見 直 しを 行 う 必 要 があると 考 えた しかし 地 方 財 政 計 画 の 見 直 しを 行 う 際 その 歳 出 項 目 の 詳 細 な 算 定 内 容 が 公 表 されて おらず 地 方 財 政 計 画 を 直 接 見 直 すことはデータ 制 約 上 不 可 能 である 先 行 研 究 に 挙 げた 赤 井 吉 田 (22)は 地 方 財 政 計 画 自 体 を 議 論 するのが 困 難 であるため 地 方 財 政 計 画 と 深 い 関 係 があり かつ 算 定 内 容 が 公 表 されている 基 準 財 政 需 要 額 2 の 見 直 し 案 を 提 示 し その 後 基 準 財 政 需 要 額 地 方 交 付 税 国 庫 支 出 金 それぞれの 削 減 額 をシュミレーシ ョンしている しかし 基 準 財 政 需 要 額 の 削 減 案 が 現 行 の 制 度 を 大 きく 変 えるものであり 短 期 的 な 視 点 に 立 ておらず 実 現 可 能 性 に 疑 問 を 感 じる 上 そもそも 基 準 財 政 需 要 額 は 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 と 歳 入 の 差 分 ( 地 方 交 付 税 額 )にほぼ 整 合 するよう 調 整 されているので 基 準 財 政 需 要 額 の 見 直 しは 意 味 がないと 我 々は 考 えている 以 上 の 地 方 財 政 計 画 のデータ 上 の 制 約 と 先 行 研 究 の 問 題 点 を 踏 まえ 地 方 財 政 計 画 が 見 積 もっ ている 地 方 自 治 体 の 歳 出 の 見 直 しを 行 うことにした 性 質 別 歳 出 の 中 で 大 きな 割 合 を 占 めるのは 普 通 建 設 事 業 費 と 人 件 費 であり 近 年 大 き く 伸 びているのは 公 債 費 である( 図 8) 普 通 建 設 事 業 費 ついては 近 年 見 直 しが 進 み 減 少 傾 向 であるが 人 件 費 については 高 止 まっており 減 少 の 傾 向 が 見 られない 公 債 費 は 地 方 税 収 減 少 による 税 収 不 足 に 依 ると 考 えられる したがって 私 たちは 地 方 歳 出 の 中 で 大 きな 割 合 を 占 め かつ 減 少 傾 向 が 見 られない 人 件 費 3 に 焦 点 をあて 地 方 公 務 員 給 与 ( 人 件 費 )の 問 題 点 を 指 摘 し 実 現 可 能 な 削 減 額 を 具 体 的 に 算 出 すると 同 時 に 国 地 方 の 財 政 に 与 える 影 響 を 分 析 す ることにした 私 たちの 考 える 短 期 的 な 見 直 し とは 現 行 制 度 の 下 で 翌 年 から 実 行 できる 見 直 し である 2 基 準 財 政 需 要 額 とは 地 方 交 付 税 の 算 定 基 礎 となるもので 各 地 方 公 共 団 体 が 合 理 的 かつ 妥 当 な 水 準 における 行 政 を 行 い 又 は 施 設 を 維 持 するための 財 政 需 要 を 一 定 の 方 法 によって 合 理 的 に 算 定 した 額 である 3 地 方 財 政 計 画 の 給 与 関 係 経 費 にあたる

11 図 8 性 質 別 歳 出 対 GDP 比 時 系 列 推 移 7% 6% 5% 4% 3% 2% % % S28 S3 S34 S37 S4 S43 S46 S49 S52 S55 S58 S6 H H4 H8 H 人 件 費 /GDP 物 件 費 /GDP 扶 助 費 /GDP 建 設 費 /GDP 公 債 費 /GDP 出 所 ) 地 方 財 政 白 書

12 第 3 章 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 第 節 地 方 公 務 員 給 与 の 決 定 方 法 地 方 公 務 員 は 平 成 6 年 4 月 日 時 点 で 総 数 38 万 3,597 人 人 件 費 は 地 方 歳 出 総 額 の 28%(23 年 度 決 算 )を 占 めている 部 門 別 には 一 般 行 政 部 門 ( 一 般 行 政 64. 万 人 福 祉 関 係 万 人 ) 特 別 行 政 部 門 ( 教 育 5.4 万 人 警 察 27. 万 人 消 防 5.5 万 人 ) 公 営 企 業 等 会 計 部 門 3 (43.4 万 人 )に 分 かれている 地 方 公 務 員 の 給 与 決 定 に 関 する 基 本 原 則 は 昭 和 25 年 に 制 定 された 地 方 公 務 員 法 によって 制 定 されており 主 に 第 4 条 4 ( 情 勢 適 応 の 原 則 ) 第 26 条 5 ( 給 料 表 に 関 する 報 告 及 び 勧 告 ) そして 第 24 条 3 項 ( 勤 務 条 件 の 根 本 基 準 )が 現 行 給 与 体 制 の 根 本 的 な 基 準 となっている とり わけ 最 後 に 挙 げた 勤 務 条 件 の 根 本 基 準 となる 職 員 の 給 与 は 生 計 費 並 びに 国 及 び 他 の 地 方 公 共 団 体 の 職 員 並 びに 民 間 事 業 の 従 事 者 の 給 与 その 他 の 事 情 を 考 慮 して 定 められなければならな い という 規 定 に 従 って 地 方 公 務 員 給 与 の 大 枠 が 決 定 される 基 本 的 には 全 国 の 民 間 給 与 水 準 に 基 づいて( 民 間 準 拠 し) 決 定 されている 国 家 公 務 員 の 給 与 に 準 じて( 国 公 準 拠 して) 改 定 され 人 事 委 員 会 を 設 置 している 地 方 公 共 団 体 においては 人 事 委 員 会 が 当 該 地 域 の 民 間 給 与 と 当 該 団 体 の 職 員 給 与 とを 比 較 し 必 要 な 給 与 表 の 改 定 等 の 給 与 勧 告 を 行 っている 民 間 に 準 拠 する 公 務 員 賃 金 の 基 礎 は 人 事 院 と 各 人 事 委 員 会 が 共 同 で 行 う 職 種 別 民 間 給 与 実 態 調 査 6 によって 決 定 される 調 査 の 対 象 となるのは 企 業 規 模 人 以 上 7 かつ 事 業 所 規 模 5 人 以 上 で 公 務 と 類 似 性 が 認 められる 職 種 である 民 間 企 業 である 具 体 的 な 方 法 としては 昭 和 35 年 以 来 公 務 員 ウェイトによるラスパイレス 比 較 によって 官 民 較 差 を 算 出 し 較 差 ( 逆 較 差 ) を 埋 めることを 基 本 に 給 与 改 定 が 行 われている しかしながら 公 務 員 と 民 間 事 業 の 従 事 者 の 立 場 は おしなべて 比 較 することができない 幾 つ かの 面 も 備 えている 例 えば 提 供 するサービスの 質 が 異 なることや 民 間 企 業 と 異 なり 全 て において 市 場 原 理 が 働 くわけではないので 給 与 水 準 の 決 定 が 困 難 であることが 挙 げられる 国 は 民 間 企 業 と 異 なり 市 場 原 理 による 給 与 水 準 の 決 定 が 困 難 であること さらに 憲 法 第 28 条 議 会 総 務 企 画 税 務 労 働 農 林 水 産 商 工 土 木 に 該 当 する 部 門 2 民 生 衛 生 に 該 当 する 部 門 3 病 院 水 道 交 通 下 水 道 その 他 に 該 当 する 部 門 4 地 方 公 共 団 体 は この 法 律 に 基 いて 定 められた 給 与 勤 務 時 間 その 他 の 勤 務 条 件 が 社 会 一 般 の 情 勢 に 適 応 するように 随 時 適 当 な 措 置 を 講 じなければならない 5 人 事 委 員 会 は 毎 年 少 なくとも 一 回 給 料 表 が 適 当 であるかどうかについて 地 方 公 共 団 体 の 議 会 及 び 長 に 同 時 に 報 告 するものとする 給 与 を 決 定 する 諸 条 件 の 変 化 により 給 料 表 に 定 める 給 料 額 を 増 減 することが 適 当 であると 認 めるときは あわせて 適 当 な 勧 告 をすることができる 6 この 調 査 では パートタイム 労 働 者 などは 対 象 とはならず 正 規 社 員 が 対 象 となっている 7 企 業 規 模 人 以 上 の 民 間 事 業 所 の 従 業 員 は 会 社 形 態 の 常 雇 従 業 員 の 約 6 割 に 相 当 する 2

13 によって 労 働 者 に 制 定 されている 労 働 基 本 権 ( 団 結 権 団 体 交 渉 権 団 体 行 動 権 )に 関 する 制 約 が 公 務 員 には 存 在 する すなわち 警 察 官 消 防 官 などについては 一 切 の 労 働 基 本 権 が 認 めら れておらず その 他 の 地 方 公 務 員 についても 程 度 の 差 はあるものの 団 体 交 渉 権 が 厳 しく 制 限 さ れ 争 議 権 に 関 しては 一 切 認 められていない( 地 方 公 務 員 法 第 37 条 ) そのため 代 償 措 置 と して 国 家 公 務 員 については 人 事 院 地 方 公 務 員 については 各 地 方 公 共 団 体 の 人 事 委 員 会 が 設 けら れ 人 事 院 は 国 会 内 閣 関 係 大 臣 に 人 事 委 員 会 は 地 方 議 会 当 該 地 方 公 共 団 体 の 長 に 給 与 諸 手 当 等 を 改 定 するよう 勧 告 することができる 以 上 を 踏 まえつつ 次 節 において 過 去 の 地 方 公 務 員 給 与 の 支 給 実 態 を 時 系 列 で 分 析 していく 第 2 節 過 去 の 給 与 支 給 実 態 ( 現 行 の 官 民 給 与 比 較 の 確 認 ) 前 節 で 述 べたように 毎 年 各 地 方 自 治 体 の 人 事 委 員 会 は 地 方 公 務 員 給 与 決 定 のため 官 民 比 較 を 行 っているが その 対 象 2 は 公 務 員 給 与 月 額 3 と 民 間 給 与 月 額 期 末 勤 勉 手 当 と 年 間 支 給 手 当 (ボーナス) である( 表 ) しかし 単 身 赴 任 手 当 特 殊 勤 務 手 当 管 理 職 手 当 時 間 外 勤 務 手 当 その 他 手 当 は 民 間 との 比 較 が 十 分 になされていない 表 官 民 給 与 比 較 対 象 公 務 員 民 間 給 与 月 額 給 与 月 額 期 末 勤 勉 手 当 年 間 賞 与 その 他 特 別 給 与 額 まず 人 事 委 員 会 が 行 ってきた 官 民 給 与 比 較 について 考 察 する 給 与 については 官 民 比 較 が 昭 和 45 年 4 から 平 成 4 年 まで 適 正 に 行 われていたことが また 平 成 4 年 以 降 は 公 務 員 給 与 と 民 間 給 与 5 に 乖 離 が 生 じていることが 分 かる( 図 9 表 2) ボーナスの 比 較 については 各 都 道 府 県 の 人 事 委 員 会 が 公 務 員 の 期 末 勤 勉 手 当 (ボーナス)を 民 間 の 年 間 支 給 手 当 と 比 較 し 月 ベースで 合 わせている しかし 実 額 で 比 較 すると 例 えば 平 成 4 年 度 では 994 万 円 平 成 5 年 度 では 843 万 円 の 乖 離 が 生 じている 以 上 より 人 事 委 員 会 の 官 民 比 較 は 給 与 についてはバブル 前 までは 適 正 であり バブル 後 は 若 干 の 乖 離 が 見 られ ボーナスについては 実 額 比 較 において 大 きな 乖 離 が 見 られることからも 官 民 比 較 が 形 式 的 な 比 較 に 終 わっている 可 能 性 が 指 摘 できる そこで 次 節 において 給 与 とボーナス また 民 間 比 較 が 不 十 分 である 公 務 員 のさまざまな 手 当 てを 加 えた 年 収 をベースに 官 民 比 較 を 行 う 職 員 は 地 方 公 共 団 体 の 機 関 が 代 表 する 使 用 者 としての 住 民 に 対 して 同 盟 罷 業 怠 業 その 他 の 争 議 行 為 をし 又 は 地 方 公 共 団 体 の 機 関 の 活 動 能 率 を 低 下 させる 怠 業 的 行 為 をしてはならない 又 何 人 も このような 違 法 な 行 為 を 企 て 又 はその 遂 行 を 共 謀 し そそのかし 若 しくはあおってはならない 2 公 務 員 年 収 = 給 料 の 月 額 +( 扶 養 手 当 調 整 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 単 身 赴 任 手 当 特 殊 勤 務 手 当 管 理 職 手 当 時 間 外 勤 務 手 当 その 他 手 当 )+ 期 末 手 当 + 勤 勉 手 当 3 官 民 給 与 比 較 の 対 象 になる 給 与 月 額 = 給 料 月 額 + 扶 養 調 整 住 居 通 勤 手 当 4 昭 和 45 年 までのデータは 入 手 不 可 能 であった 5 厚 生 労 働 省 の 賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査 のデータに 基 づく 企 業 規 模 人 以 上 の 民 間 従 業 員 の 平 均 給 与 月 額 3

14 図 9 官 民 給 与 比 較 の 現 状 公 務 員 比 較 対 象 給 与 きまって 支 給 される 現 金 給 与 額 ( 人 以 上 ) S45 S47 S49 S5 S53 S55 S57 S59 S6 S63 H2 H4 H7 H H2 H4 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス PW = α+βnpw + BD + u 表 2 官 民 給 与 比 較 の 現 状 PW : 公 務 員 給 与 NPW BD : バブル 以 降 ダミー : 民 間 給 与 u : 誤 差 項 係 数 t- 値 P- 値 切 片 きまって 支 給 される 現 金 給 与 額 ( 人 以 上 ) E-28 バブル 以 降 ダミー E 図 官 民 ボーナス 比 較 の 現 状 2 期 末 勤 勉 手 当 5 民 間 企 業 年 間 賞 与 ( 人 以 上 ) 5 S45 S48 S5 S54 S57 S6 S63 H3 H7 H H4 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 4

15 第 3 節 官 民 年 収 比 較 第 2 節 で 述 べたように 地 方 公 務 員 給 与 決 定 に 重 要 な 役 割 を 果 たす 官 民 比 較 は 乖 離 が 見 られる など 不 十 分 である 上 その 対 象 が 給 料 月 額 扶 養 手 当 調 整 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 と 限 定 的 であり 完 全 な 官 民 比 較 となっていない このことは 地 方 公 務 員 法 第 24 条 3 項 ( 勤 務 条 件 の 根 本 基 準 )の 職 員 の 給 与 は 生 計 費 並 びに 国 及 び 他 の 地 方 公 共 団 体 の 職 員 並 びに 民 間 事 業 の 従 事 者 の 給 与 その 他 の 事 情 を 考 慮 して 定 められなければならない という 規 定 に 反 していると 言 える そこで 第 3 節 では 比 較 対 象 を 限 定 しない 年 収 をベースに 官 民 比 較 を 行 う 図 の 年 収 比 較 のグラフを 見 ても 明 らかなように 地 方 公 務 員 年 収 は 昭 和 49 年 から 民 間 年 収 2 を 上 回 っている また 平 成 2 3 年 から 乖 離 がより 大 きくなっていることも 考 察 できる その 背 景 には 昭 和 49 年 に 教 員 の 給 与 を 一 般 の 公 務 員 より 優 遇 することにより 教 員 に 優 れ た 人 材 を 確 保 し もって 義 務 教 育 水 準 の 維 持 向 上 を 図 ること を 目 的 とした 教 育 職 員 人 材 確 保 法 が 存 在 すると 考 えられる 上 記 の 法 律 によって 教 職 員 の 年 収 が 上 昇 しただけでなく その 他 の 職 種 の 年 収 も 上 昇 させる 結 果 になったことが 分 かる( 図 ) 平 成 2 3 年 の 地 方 公 務 員 年 収 と 民 間 年 収 の 乖 離 の 拡 大 は バブル 経 済 による 税 収 の 増 加 による ものであると 言 える( 図 6) 以 上 より 公 務 員 年 収 と 民 間 年 収 には 昭 和 49 年 以 降 乖 離 が 見 られることが 確 認 された 次 に 地 方 公 務 員 給 与 にはさまざまな 手 当 が 存 在 するが どの 手 当 が 年 収 の 上 昇 に 寄 与 しているのかを 見 ていくことにする 図 官 民 年 収 比 較 s45 s47 s49 s5 s53 s55 s57 s59 s6 s63 h2 h4 h7 h9 h h3 h5 地 方 公 務 員 年 収 民 間 年 収 ( 人 以 上 ) 地 方 公 務 員 給 与 実 態 調 査 に 基 づく 全 職 員 の 平 均 年 収 2 厚 生 労 働 省 の 賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査 のデータに 基 づく 企 業 規 模 人 以 上 の 民 間 従 業 員 の 平 均 年 収 5

16 図 2 小 中 学 校 教 職 員 年 収 比 較 図 3 高 等 学 校 教 育 職 年 収 比 較 s45 s48 s5 s54 s57 s6 s63 h3 h7 h h3 小 中 学 校 ( 幼 稚 園 ) 教 育 職 民 間 年 収 s45 s48s5 s54 s57s6 s63 h 3 h 7 h h 3 高 等 学 校 ( 特 殊 各 種 ) 学 校 教 育 職 民 間 年 収 図 4 一 般 行 政 職 年 収 比 較 図 5 警 察 職 年 収 比 較 s45 s48 s5 s54 s57 s6 s63 h3 h7 h h3 一 般 行 政 職 民 間 年 収 s45 s48 s5 s54 s57 s6 s63 h3 h7 h h3 警 察 職 民 間 年 収 図 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 図 6 地 方 税 収 の 推 移 百 万 円 地 方 税 S45 S48 S5 S54 S57 S6 S63 H3 H6 H9 H2 資 料 ) 地 方 財 政 白 書 6

17 第 4 節 地 方 公 務 員 給 与 手 当 の 伸 び 前 節 までに 人 事 委 員 会 において 官 民 比 較 対 象 になっている 給 与 ボーナスの 比 較 状 況 また 地 方 公 務 員 年 収 が 民 間 年 収 を 上 回 っている 現 状 を 時 系 列 で 確 認 した 第 4 節 では 年 収 の 内 訳 に ついて 詳 しく 見 ていくことで 地 方 公 務 員 年 収 を 膨 張 させている 手 当 てを 確 認 する 地 方 公 務 員 年 収 は 給 料 月 額 + 生 活 給 的 手 当 + 職 務 給 的 手 当 2 + 超 過 労 働 的 手 当 3 +その 他 の 手 当 4 + 寒 冷 地 手 当 + 期 末 手 当 5 + 勤 勉 手 当 6 + 役 職 加 算 として 決 まるが 月 額 支 給 の 手 当 ての うち 最 も 額 が 大 きいのが 生 活 給 的 手 当 である( 図 7) その 生 活 手 当 てに 含 まれる 扶 養 手 当 調 整 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 の 中 で 特 に 大 きな 割 合 を 占 めているのが 調 整 手 当 である( 図 8) 調 整 手 当 は 毎 月 支 給 される 手 当 てであると 同 時 に ボーナスとして 支 給 される 期 末 勤 勉 手 当 の 算 定 にも 用 いられている( 注 脚 26 27) また 期 末 勤 勉 手 当 には 調 整 手 当 の 他 扶 養 手 当 も 含 まれているため 毎 月 支 給 の 手 当 て 額 でなく 年 間 支 給 の 手 当 て 額 で 見 る 必 要 がある 図 9 の 年 間 ベースで 見 ても 調 整 手 当 が 一 番 大 きい 額 を 占 めており 年 間 約 3 万 円 が 支 給 されていることになる 以 上 より 公 務 員 給 与 決 定 の 際 民 間 比 較 が 徹 底 されていない 手 当 てのうち 調 整 手 当 が 大 きいことが 分 かった 扶 養 手 当 調 整 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 単 身 赴 任 手 当 2 特 殊 勤 務 手 当 管 理 職 手 当 定 時 制 通 信 教 育 手 当 産 業 教 育 手 当 義 務 教 育 等 教 員 特 別 手 当 農 林 漁 業 改 良 普 及 手 当 3 時 間 外 勤 務 手 当 宿 日 直 手 当 夜 間 勤 務 手 当 休 日 勤 務 手 当 管 理 職 員 特 別 勤 務 手 当 4 初 任 給 調 整 手 当 特 地 勤 務 手 当 へき 地 手 当 5 ( 基 本 給 + 扶 養 手 当 + 調 整 手 当 + 職 務 段 階 別 加 算 額 + 管 理 職 加 算 額 ) 支 給 率 ( 月 ) 支 給 割 合 6 ( 基 本 給 + 扶 養 手 当 + 調 整 手 当 + 職 務 段 階 別 加 算 額 + 管 理 職 加 算 額 ) 期 間 率 ( 月 ) 成 績 率 7

18 図 7 手 当 ての 比 較 () 生 活 給 的 手 当 職 務 給 的 手 当 超 過 労 働 的 手 当 その 他 の 手 当 S45 S47 S49 S5 S53 S55 S57 S59 S6 S63 H2 H4 H7 H9 H H3 H5 図 8 手 当 ての 比 較 (2) S45 S48 S5 S54 S57 S6 S63 H3 H6 H9 H2 H5 扶 養 手 当 調 整 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 図 9 手 当 ての 比 較 (3) S45 S48 S5 S54 S57 S6 S63 H3 H7 H H3 年 間 支 給 扶 養 手 当 年 間 支 給 調 整 手 当 年 間 支 給 住 居 手 当 年 間 支 給 通 勤 手 当 図 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 8

19 第 5 節 調 整 手 当 の 分 析 前 節 において 手 当 の 中 で 最 も 大 きい 額 を 占 めているのが 調 整 手 当 であることが 分 かった 第 5 節 では まず 全 国 平 均 の 調 整 手 当 と 民 間 賃 金 の 昭 和 49 年 からの 伸 び 率 比 較 をした 後 都 道 府 県 別 に 調 整 手 当 の 名 目 の 目 的 に 沿 った 支 給 がなされているのかを 時 系 列 で 分 析 していく 調 整 手 当 は 支 給 地 域 や 支 給 割 合 が 例 えば 東 京 は 基 本 給 扶 養 手 当 及 び 管 理 職 手 当 の 2% 大 阪 は % と 定 められている 基 本 給 と 扶 養 手 当 は 民 間 比 較 されており このことから 調 整 手 当 は 民 間 賃 金 の 伸 び 率 以 上 にはならないと 考 えられる しかし 図 2 から 明 らかなように 調 整 手 当 の 伸 び 率 は 高 い このことは 調 整 手 当 の 過 剰 支 給 であると 指 摘 できる 次 に 調 整 手 当 は 地 方 公 務 員 法 により 民 間 における 賃 金, 物 価 及 び 生 計 費 が 特 に 高 い 地 域 に 在 勤 する 職 員 に 支 給 する と 規 定 されている 物 価 や 生 計 費 の 動 向 は 民 間 賃 金 に 反 映 されている と 考 えられるので 調 整 手 当 と 民 間 賃 金 の 関 係 を 確 認 することとする 都 道 府 県 別 の 調 整 手 当 と 民 間 年 収 の 平 均 値 からの 伸 びをみると 調 整 手 当 てを 民 間 賃 金 の 特 に 高 い 地 域 の 職 員 に 支 給 すると いう 名 目 の 目 的 は 果 たされていないことが 分 かった ( 図 2) なぜなら 第 一 に 調 整 手 当 は 民 間 年 収 の 特 に 高 い 地 域 だけに 支 給 される 建 前 となっているが 実 際 はすべての 都 道 府 県 に 支 給 されている 第 二 に 例 えば 東 京 は 民 間 年 収 は 平 均 値 の.36 倍 であるにも 関 わらず 調 整 手 当 は 5.6 倍 であるし 民 間 年 収 が 特 に 高 いとされる 千 葉 県 大 阪 府 愛 知 県 神 奈 川 県 に 関 しても 同 じように 調 整 手 当 の 過 剰 支 給 が 行 われているからである また 図 22 の 昭 和 63 年 のグラフをみても 同 様 であることが 分 かるし その 他 の 年 度 でも 変 化 はなか った 9

20 図 2 調 整 手 当 伸 び 率 比 較 S45 S48 S5 S54 S57 S6 S63 H3 H7 H H4 調 整 手 当 図 2 都 道 府 県 別 調 整 手 当 民 間 年 収 比 較 ( 平 成 5 年 度 ) 民 間 年 収 ( 企 業 規 模 人 以 上 ) 民 間 年 収 ( 全 規 模 ) 民 間 年 収 調 整 手 当 図 22 都 道 府 県 別 調 整 手 当 民 間 年 収 比 較 ( 昭 和 63 年 ) 民 間 年 収 調 整 手 当 秋 田 県 山 形 県 沖 縄 県 宮 崎 県 島 根 県 熊 本 県 北 海 道 大 分 県 福 島 県 愛 媛 県 石 川 県 長 野 県 宮 城 県 山 口 県 和 歌 山 県 群 馬 県 三 重 県 奈 良 県 静 岡 県 滋 賀 県 埼 玉 県 千 葉 県 大 阪 府 東 京 都 青 森 県 山 形 県 宮 崎 県 鹿 児 島 県 長 崎 県 鳥 取 県 高 知 県 熊 本 県 北 海 道 香 川 県 愛 媛 県 福 井 県 宮 城 県 長 野 県 福 岡 県 群 馬 県 栃 木 県 奈 良 県 三 重 県 滋 賀 県 京 都 府 千 葉 県 愛 知 県 東 京 都 図 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 2

21 第 4 章 地 方 歳 出 における 削 減 額 の 算 出 第 節 人 件 費 削 減 額 前 章 において 現 行 の 官 民 比 較 では 職 員 の 給 与 は 生 計 費 並 びに 国 及 び 他 の 地 方 公 共 団 体 の 職 員 並 びに 民 間 事 業 の 従 事 者 の 給 与 その 他 の 事 情 を 考 慮 して 定 められなければならない という 地 方 公 務 員 法 の 規 定 に 沿 っているとは 言 えず さまざまな 手 当 てによって 民 間 給 与 からの 乖 離 を 生 じさせていること また 手 当 ての 中 でも 特 に 伸 び 額 の 大 きい 調 整 手 当 がその 名 目 の 目 的 と 実 態 とが 整 合 的 ではないことを 指 摘 した 私 たちは 以 上 のような 問 題 点 を 踏 まえ さまざまな 手 当 を 含 んだ 地 方 公 務 員 年 収 と 民 間 年 収 を 比 較 することが 真 の 意 味 で 地 方 公 務 員 法 に 定 められる 民 間 準 拠 が 達 成 されると 考 えた そこで 私 たちはまず 地 方 公 務 員 年 収 が 民 間 年 収 を 上 回 る 昭 和 49 年 から 地 方 公 務 員 年 収 と 民 間 年 収 の 乖 離 額 ( 図 23)と 職 員 数 の 推 移 ( 図 24)を 見 た 後 人 件 費 削 減 額 ( 表 3 図 25)を 算 出 した その 結 果 年 収 ベースの 官 民 比 較 による 人 件 費 削 減 総 額 は 昭 和 49 年 から 平 成 5 年 までに 4.6 兆 円 にも 上 ることが 明 らかとなった 25 2 図 23 地 方 公 務 員 年 収 と 民 間 年 収 の 乖 離 額 千 円 5 5 S49 S5 S53 S55 S57 S59 S6 S63 H2 H4 H7 H9 H H3 H5 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 2

22 図 24 職 員 数 の 推 移 S49 S5 S53 S55 S57 S59 S6 S63 H2 表 3 人 件 費 削 減 額 H4 H7 H9 H H3 H5 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 人 件 費 削 減 額 ={ 地 方 公 務 員 年 収 民 間 年 収 ( 企 業 規 模 人 以 上 )} 地 方 公 務 員 数 年 度 人 件 費 削 減 額 年 度 人 件 費 削 減 額 年 度 人 件 費 削 減 額 S S H S S H S S H S S H S S H S H H S H H S H H S H H S H 合 計 削 減 額 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 22

23 図 25 人 件 費 削 減 額 S49 S5 S53 S55 S57 S59 S6 S63 H2 H4 H7 H9 H H3 H5 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 前 段 の 実 額 ベースでの 民 間 年 収 比 較 では 地 方 公 務 員 に 教 育 職 員 や 警 察 職 員 消 防 職 員 といった 民 間 とは 職 務 内 容 が 比 較 困 難 な 職 種 が 含 まれていることから 比 較 が 不 十 分 である と 思 われる したがって 次 に 地 方 公 務 員 年 収 が 民 間 年 収 とほぼ 同 額 になる 昭 和 49 年 を 基 準 年 とし 地 方 公 務 員 年 収 を 民 間 年 収 の 伸 び 率 にあわせ 民 間 の 伸 び 率 での 地 方 公 務 員 年 収 とまず 算 定 し それと 実 際 の 地 方 公 務 員 年 収 との 乖 離 額 ( 図 26)を 見 た 後 人 件 費 削 減 額 ( 表 4 図 27)を 算 出 し た その 結 果 民 間 年 収 の 伸 び 率 の 合 わせた 地 方 公 務 員 年 収 による 人 件 費 削 減 総 額 は 昭 和 49 年 から 平 成 5 年 までに 76.9 兆 円 にも 上 ることが 明 らかとなった 図 26 地 方 公 務 員 年 収 ( 民 間 と 同 じ 伸 び 率 )と 民 間 年 収 の 乖 離 額 千 円 S5 S52 S54 S56 S58 S6 S62 H H3 H5 H8 H H2 H4 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 23

24 表 4 人 件 費 削 減 額 人 件 費 削 減 額 ={ 民 間 伸 び 率 地 方 公 務 員 年 収 地 方 公 務 員 年 収 } 地 方 公 務 員 数 年 度 人 件 費 削 減 額 年 度 人 件 費 削 減 額 年 度 人 件 費 削 減 額 S S H S S H S S H S S H S S H S H H S H H S H H S H H H 削 減 額 合 計 図 27 人 件 費 削 減 額 S5 S52 S54 S56 S58 千 円 S6 S62 H H3 H5 H8 H H2 H4 表 4 図 27 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 第 2 節 地 方 財 政 計 画 における 給 与 関 係 費 削 減 額 前 節 で 地 方 歳 出 における 人 件 費 削 減 額 を 算 出 した 本 節 では 現 状 認 識 に 立 ち 返 り 地 方 交 付 税 膨 張 の 原 因 である 地 方 財 政 計 画 の 人 件 費 削 減 効 果 を 検 証 する 地 方 財 政 計 画 の 歳 出 には 給 与 関 係 経 費 一 般 行 政 経 費 投 資 的 経 費 公 債 費 公 営 企 業 繰 出 金 地 方 交 付 税 の 不 交 付 団 体 における 平 均 水 準 を 超 える 必 要 経 費 ( 図 28)が 計 上 されており 人 件 費 削 減 効 果 を 見 るためには 給 与 関 係 経 費 がどのように 決 まっているのかを 確 認 する 必 要 がある しかし 総 務 省 が 公 表 している 地 方 団 体 の 歳 入 歳 出 の 見 込 額 を 見 ても 給 与 関 係 費 がどのようになっているのか 明 らかでない 入 手 可 能 なデータとしては 給 与 関 係 経 費 の 内 訳 と 給 与 関 係 経 費 とは 給 与 費 と 恩 給 費 の 合 計 額 である 24

25 計 画 額 を 算 出 する 際 用 いられる 計 画 人 員 数 である よって 次 善 の 策 として 給 与 関 係 経 費 の 内 恩 給 費 を 除 いた 給 与 費 を 計 画 人 員 数 で 除 し 一 人 当 たり 年 収 を 算 定 した その 後 前 節 で 用 いた 民 間 との 年 収 比 較 の 徹 底 という 概 念 を 適 用 し 給 与 関 係 経 費 削 減 額 を ( 地 方 財 政 計 画 における 年 収 民 間 年 収 の 伸 びにあわせた 地 方 公 務 員 年 収 ) 計 画 人 数 と 算 出 した( 表 5 6) また 削 減 額 算 定 はデータの 制 約 上 平 成 7 年 から 平 成 5 年 度 に 限 られている その 結 果 給 与 関 係 経 費 の 削 減 による 地 方 財 政 計 画 歳 出 削 減 額 が 表 6 の A のようになり 地 方 交 付 税 が 歳 出 と 歳 入 の 差 として 決 定 されるため 地 方 交 付 税 も 同 額 削 減 される また 現 在 5.7 兆 円 ( 残 高 )にも 膨 らんでいる 地 方 交 付 税 特 別 会 計 からの 借 入 も 平 成 年 度 を 除 き 平 成 7 年 度 以 降 必 要 がなく( 表 6 の B) さらには 公 債 発 行 を 表 6 の C の 額 だけ 抑 制 できたということが 分 かった 図 28 国 と 地 方 の 財 政 関 係 ( 平 成 7 年 度 ) 国 の 一 般 会 計 交 付 税 特 別 会 計 地 方 財 政 計 画 歳 入 82.2 兆 円 歳 出 82.2 兆 円 歳 入 83.8 兆 円 歳 出 83.8 兆 円 交 付 税 対 象 税 目 税 収 37.3 兆 円 その 他 の 税 収 6.7 兆 円 公 債 金 34.4 兆 円 地 方 交 付 税 交 付 金 等 6. 兆 円 地 方 団 体 への 補 助 金.2 兆 円 国 債 費 8.4 兆 円 [ 入 口 ベース] 6. 兆 円 交 付 税 特 会 借 入 金 等 [ 出 口 ベース] 8.4 兆 円 地 方 交 付 税 6.9 兆 円 地 方 特 例 交 付 金.5 兆 円 国 庫 支 出 金.2 兆 円 給 与 関 係 費 22.7 兆 円 一 般 行 政 経 費 23. 兆 円 投 資 的 経 費 9.7 兆 円 地 方 税 33.3 兆 円 その 他 その 他 の 歳 出 36.5 兆 円 地 方 債 2.3 兆 円 公 債 費 3.4 兆 円 その 他 その 他 地 方 財 政 計 画 については 第 章 第 3 節 参 照 25

26 年 度 表 5 地 方 財 政 計 画 ( 給 与 関 係 経 費 ) 削 減 額 算 出 用 データ 給 与 関 係 費 a 全 職 種 ( 計 画 人 員 数 ) b 地 方 財 政 計 画 公 務 員 年 収 c 地 方 公 務 員 年 収 ( 民 間 伸 び 率 準 拠 ) d 平 成 7 年 度 平 成 8 年 度 平 成 9 年 度 平 成 年 度 平 成 年 度 平 成 2 年 度 平 成 3 年 度 平 成 4 年 度 平 成 5 年 度 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 地 方 財 政 計 画 表 6 給 与 関 係 経 費 削 減 額 地 方 交 付 税 特 別 会 計 借 入 金 と 国 債 抑 制 額 給 与 関 係 経 費 削 減 額 ={ 給 与 費 a / 計 画 人 員 数 b- 地 方 公 務 員 年 収 ( 民 間 伸 び 率 準 拠 )d} 計 画 人 数 b ( 表 5) 年 度 給 与 関 係 費 削 地 方 交 付 税 特 別 会 計 借 入 削 減 額 - 交 付 税 特 会 借 減 額 ( 億 円 ) A 金 ( 億 円 ) B 入 ( 億 円 ) C(A-B) 平 成 7 年 度 平 成 8 年 度 平 成 9 年 度 平 成 年 度 平 成 年 度 平 成 2 年 度 平 成 3 年 度 平 成 4 年 度 平 成 5 年 度 資 料 ) 地 方 公 務 員 給 与 の 実 態 賃 金 センサス 地 方 財 政 計 画 地 方 財 政 要 覧 26

27 第 5 章 政 策 提 言 本 章 では これまでに 得 られた 分 析 の 結 果 をもとに 地 方 財 政 の 見 直 しを 考 えた 実 現 可 能 な 地 方 公 務 員 人 件 費 の 削 減 案 について 政 策 提 言 を 行 う 地 域 準 拠 の 徹 底 本 来 地 方 公 務 員 の 給 与 は 全 国 平 均 ベースで 民 間 準 拠 させた 国 家 公 務 員 の 給 与 に 準 拠 し 人 事 委 員 会 の 勧 告 によって 民 間 準 拠 を 満 たすと 考 えられてきたが 本 稿 で 我 々が 行 った 分 析 より 過 去 に 人 事 委 員 会 の 勧 告 を 経 て 支 給 されてきた 地 方 公 務 員 給 与 と 当 該 地 域 の 民 間 給 与 との 間 に は 年 収 ベースで 大 きな 乖 離 が 存 在 し 民 間 準 拠 が 徹 底 されていない 実 態 が 明 らかとなった 第 章 で 述 べた 地 方 財 政 の 現 状 を 鑑 みると 早 急 に 給 与 体 系 の 改 革 を 行 う 必 要 性 は 明 らかであ る 地 方 公 務 員 はあくまでも 当 該 地 域 全 体 への 奉 仕 者 であるという 原 点 に 立 ち 返 り 全 国 平 均 の 民 間 給 与 に 準 拠 させることも 認 める 民 間 準 拠 から 当 該 地 域 の 行 政 内 容 経 済 状 況 の 違 いを 考 慮 した より 適 切 な 地 域 準 拠 へと 基 準 を 移 行 し 徹 底 した 制 度 運 用 を 行 うことを 提 案 する 具 体 的 には 適 用 される 基 準 を 当 該 地 域 の 社 会 一 般 の 情 勢 に 適 応 するものでなければならな い とともに 職 員 の 勤 務 条 件 の 根 本 基 準 を 現 行 の 地 方 公 務 員 法 第 24 条 3 項 から 国 及 び 他 の 地 方 公 共 団 体 の 職 員 の 給 与 その 他 の 事 情 を 考 慮 して 定 めなければならない との 規 定 を 削 除 し 明 示 的 に 当 該 地 域 の 生 計 費 並 びに 民 間 事 業 の 従 事 者 の 給 与 その 他 の 事 情 を 考 慮 して 定 められな ければならない とすべきであると 考 える 地 域 準 拠 徹 底 に 向 けて 我 々は 以 下 に2つの 具 体 的 な 政 策 を 提 言 する 提 言. 官 民 比 較 給 与 対 象 を 月 額 給 与 から 年 収 ( 年 間 給 与 )にする 私 たちが 日 常 生 活 で 給 与 に 関 して 話 題 にするのは 主 に 年 収 ベースの 話 ではないだろうか 例 えば 年 4 回 発 行 される 会 社 四 季 報 の 従 業 員 2 の 欄 には 平 均 給 与 は 残 業 代 手 当 賞 与 を 含 む 年 収 ベースで 記 載 されている また 転 職 支 援 サイトでは 希 望 職 種 や 希 望 勤 務 地 と 並 んで 希 望 年 収 を 選 択 させるのが 通 例 となっている 地 方 公 務 員 の 給 与 を 当 該 地 域 の 民 間 給 与 に 準 拠 させる 際 に 現 行 の 公 務 員 給 与 月 額 と 民 間 給 与 月 額 のラスパイレス 比 較 期 末 勤 勉 手 当 と 年 間 支 給 手 当 (ボーナス) の 年 間 支 給 月 額 比 較 というパーツ 毎 の 比 較 を 行 い 民 間 準 拠 を 達 成 させたと 人 事 委 員 会 は 判 断 してきた しかし その 結 果 年 収 において 大 きな 乖 離 を 生 み 出 してきた 現 状 を 鑑 みると もはや 現 行 の 官 民 比 較 給 与 対 象 を 維 持 することは 意 味 を 成 さない 私 たちの 分 析 により さまざまな 手 当 てに よって 民 間 給 与 からの 乖 離 を 生 じさせていること また 手 当 ての 中 に その 名 目 の 目 的 と 実 態 と が 整 合 的 でないものが 影 響 していることを 指 摘 した 私 たちは 官 民 双 方 を 同 条 件 の 給 与 にて 比 較 するため 年 収 での 比 較 を 行 うことを 提 言 する 年 収 での 比 較 を 行 うことにより 初 めて 現 行 の 官 民 比 較 給 与 にふくまれていない 諸 手 当 をすべて 込 東 洋 経 済 新 報 社 発 行 全 上 場 会 社 店 頭 会 社 約 36 社 を 網 羅 企 業 情 報 収 集 の 定 番 として 株 式 投 資 の 情 報 源 のみ ならず 取 引 先 の 調 査 やマーケティング 就 職 情 報 として 広 く 活 用 されている 2 役 員 臨 時 社 員 を 除 く 27

28 みにした 公 平 な 比 較 を 行 うことが 可 能 になる 上 国 地 方 の 財 政 再 建 に 大 きく 貢 献 できると 考 え る 提 言 2. 調 整 手 当 ( 地 域 手 当 )の 廃 止 第 3 章 の 分 析 から 地 方 公 務 員 給 与 と 民 間 賃 金 との 乖 離 には 調 整 手 当 が 大 きなウェイトを 占 めており また 調 整 手 当 が 名 目 以 上 の 伸 びを 見 せていることが 確 認 された 本 年 度 の 人 事 院 勧 告 により 来 年 度 から 調 整 手 当 は 廃 止 され 地 域 手 当 が 新 たに 導 入 されること が 決 定 している 地 域 手 当 とは 各 地 域 の 物 価 及 び 生 計 費 を 踏 まえつつ 民 間 賃 金 の 地 域 間 格 差 を 公 務 員 給 与 へと 適 切 に 反 映 させるという 目 的 のもと 調 整 手 当 に 代 わって 支 給 される 手 当 であ る 具 体 的 には 公 務 員 給 与 の 俸 給 を 最 も 民 間 賃 金 の 低 い 北 海 道 東 北 地 域 の 給 与 水 準 まで 約 5% 下 げた 後 特 に 民 間 賃 金 が 高 い 地 域 について 6 つの 等 級 2 を 設 け それぞれ3%~8%の 地 域 手 当 を 支 給 する しかし 最 高 支 給 地 域 の 東 京 を 例 にとって 見 てみると 現 行 の 調 整 手 当 2% から 地 域 手 当 8%に 移 行 する 形 であり 俸 給 の 引 き 下 げ 率 を 合 わせてほぼ 変 わらない 支 給 率 と なる また 現 行 の 調 整 手 当 と 同 じく 諸 手 当 ( 超 過 勤 務 手 当 期 末 勤 勉 手 当 )の 算 定 基 礎 とな るため 結 果 として 調 整 手 当 同 様 名 目 以 上 の 伸 びを 見 せる 可 能 性 が 高 い 私 たちは 地 域 準 拠 に 基 づき 提 言 で 述 べた 年 収 比 較 を 当 該 地 域 ごとに 行 い 調 整 手 当 ま たは 地 域 手 当 の 廃 止 を 提 言 する 年 収 は 地 域 の 物 価 生 計 費 等 経 済 事 情 を 含 有 しており 調 整 手 当 または 地 域 手 当 を 新 たに 支 給 する 必 要 はないと 考 える 民 間 企 業 においても 地 域 手 当 は 支 給 されているという 意 見 も 考 えられるが 民 間 企 業 の 調 整 手 当 の 採 用 状 況 は 厚 生 労 働 省 調 査 による 採 用 割 合 は 規 模 計 で 5.6%であり 規 模 間 格 差 が 大 き い 人 以 上 の 大 企 業 は 38.%に 達 しているが 3~99 人 の 中 小 企 業 では 9.7%にとどまっ ている 大 企 業 は 広 域 に 事 業 所 を 設 けて 企 業 活 動 を 展 開 しているため 採 用 割 合 が 高 いと 考 えら れ 勤 務 地 域 の 限 定 される 地 方 公 務 員 の 給 与 に 一 律 適 用 させる 根 拠 に 乏 しいといえる さらに 民 間 企 業 が 生 活 関 連 手 当 の 見 直 しを 進 める 傾 向 にある 3 ことを 考 慮 しても 各 地 方 自 治 体 の 人 事 委 員 会 が 人 事 院 の 決 定 に 安 易 に 準 拠 することは 相 応 しくない 人 口 5 万 人 以 上 の 市 を 中 心 に 対 象 とし 厚 労 省 賃 金 センサス の 特 別 集 計 による 賃 金 指 数 が 全 国 平 均 を とした 場 合 に 96.5 以 上 である 地 域 2 8% 5% 2% % 6% 及 び3%の6 区 分 3 ( 財 ) 労 務 行 政 研 究 所 発 行 労 政 時 報 第 3579 号 地 域 手 当 の 支 給 実 態 と 今 後 の 改 定 動 向 当 研 究 所 編 集 部 より 28

29 おわりに 歳 出 削 減 なくして 増 税 なし という 言 葉 を 耳 にする 機 会 が 増 えた 消 費 税 増 税 も 止 むを 得 な いという 世 論 が 形 成 されつつある 中 地 方 の 財 政 悪 化 が 国 の 財 政 へ 大 きな 影 響 を 与 えている 現 状 及 び 地 方 公 務 員 人 件 費 が 過 剰 に 支 給 されてきた 実 態 は 納 税 者 である 国 民 にとって 関 心 の 高 い 問 題 である 人 々に 最 も 密 接 に 関 連 している 行 政 を 行 うのが 地 方 自 治 体 であり その 業 務 を 担 う 地 方 公 務 員 の 給 与 適 正 化 が 望 まれるのは 当 然 の 流 れであろう 本 稿 では 地 方 公 務 員 給 与 を 民 間 賃 金 と 年 収 ベースで 比 較 し 乖 離 額 を 算 出 した その 上 で 乖 離 の 原 因 が 調 整 手 当 によるところが 大 きいことを 分 析 により 明 らかとし さらに 地 方 歳 出 へと 反 映 させた 影 響 額 を 示 した 年 収 というわかりやすい 形 で 真 の 民 間 準 拠 比 較 を 行 い 削 減 額 を 示 したところに 我 々の 分 析 の 独 自 性 があると 自 負 している しかしながら 本 稿 では 地 方 公 務 員 給 与 削 減 による 歳 出 削 減 効 果 を 分 析 したのみであり 地 方 公 務 員 数 の 削 減 効 果 にまでは 至 ってい ない 真 に 公 務 で 行 うべき 事 業 を 選 択 し それに 応 じた 適 正 な 地 方 公 務 員 数 給 与 が 達 成 されて はじめて 地 方 公 務 員 総 人 件 費 の 適 正 化 がなされる よって 今 後 の 課 題 として 地 方 公 務 員 数 削 減 効 果 地 方 公 務 員 が 行 う 事 業 の 見 直 しを 含 めた 地 方 公 務 員 総 人 件 費 の 削 減 効 果 を 分 析 すること が 必 要 である 加 えて 将 来 世 代 を 含 めた 地 域 の 住 民 厚 生 の 変 化 を 検 証 することも 必 要 であろう その 際 削 減 によってもたらされる 財 源 を 今 後 どのように 用 いていくべきかを 含 めて 地 方 財 政 全 体 の 健 全 化 へとつなげていくことが 最 も 重 要 であると 私 たちは 考 える 将 来 を 見 据 えた 国 と 地 方 の 理 想 的 な 関 係 を 構 築 していく 上 で 地 方 の 占 める 割 合 は 今 後 とも 大 きい 地 方 分 権 へ 向 けての 道 筋 を 確 かなものにしていくためには 地 域 の 行 政 活 動 に 対 する 住 民 の 理 解 と 協 力 が 必 要 であり 地 方 公 務 員 給 与 についても 地 域 住 民 の 理 解 が 得 られるものにしてい かねばならない そのためには 給 与 関 連 の 詳 細 な 情 報 開 示 説 明 が 不 可 欠 であり 官 民 給 与 比 較 における 民 間 給 与 の 調 査 対 象 規 模 や 年 功 序 列 で 実 績 評 価 に 基 づいていない 昇 給 制 度 について も 今 後 精 査 されていく 必 要 がある 最 後 に 本 稿 が 地 方 財 政 健 全 化 に 向 けた 改 革 の 一 助 となることを 切 に 願 って 本 稿 の 締 めくく りとさせていただく 29

30 参 考 文 献 赤 井 伸 郎 吉 田 素 教 (23) 地 方 財 政 需 要 の 見 直 しによる 地 方 財 政 健 全 化 シミュレーション 基 準 財 政 需 要 の 算 定 方 法 を 用 いた 地 方 交 付 税 と 国 庫 支 出 金 の 削 減 赤 井 伸 郎 佐 藤 主 光 山 下 耕 治 (23) 地 方 交 付 税 の 経 済 学 有 斐 閣 岡 本 全 勝 (22) 地 方 財 政 改 革 論 議 ぎょうせい 人 事 院 人 事 院 年 次 報 告 書 人 事 院 公 務 員 白 書 データ 出 典 財 団 法 人 地 方 財 務 協 会 公 務 員 給 与 の 実 態 財 団 法 人 地 方 財 務 協 会 地 方 財 政 要 覧 厚 生 労 働 省 賃 金 センサス 財 務 省 財 政 金 融 統 計 月 報 自 治 省 地 方 財 政 白 書 自 治 省 地 方 財 政 計 画 ~ 地 方 団 体 歳 入 歳 出 の 見 込 額 ~ 3