野村資本市場研究所|わが国における相続・贈与税一体化の影響 (PDF)

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1 個 人 マーケット わが 国 における 相 続 贈 与 税 一 体 化 の 影 響 平 成 15 年 度 税 制 改 正 において 贈 与 税 の 相 続 時 精 算 課 税 制 度 が 創 設 された これにより 相 続 税 と 贈 与 税 の 一 体 化 が 可 能 となり 高 齢 者 世 帯 に 偏 っている 個 人 金 融 資 産 の 次 世 代 へ の 移 転 が 図 られていくことが 期 待 できる 更 に 平 成 14 年 度 の 税 制 改 正 で 部 分 的 に 改 善 が なされた 事 業 承 継 の 相 続 税 問 題 においても 後 継 者 の 経 験 等 の 進 度 に 沿 った 事 業 資 産 等 の 移 転 が 可 能 となることから 円 滑 な 承 継 が 図 られていくものと 考 えられる 1 1. 平 成 15 年 度 税 制 改 正 における 相 続 贈 与 税 改 正 の 概 要 1) 贈 与 税 における 相 続 時 精 算 課 税 制 度 の 創 設 平 成 15 年 度 税 制 改 正 において 贈 与 税 の 相 続 時 精 算 課 税 制 度 が 創 設 され 相 続 贈 与 税 の 一 体 化 が 可 能 となった この 制 度 は 高 齢 化 の 進 展 に 伴 って 相 続 による 次 世 代 への 資 産 移 転 の 時 期 が 大 幅 に 遅 れ てきていることを 受 け 高 齢 者 の 保 有 する 資 産 の 有 効 活 用 を 通 じて 経 済 社 会 を 活 性 化 す べきという 社 会 的 要 請 に 応 えるねらいから 導 入 が 図 られた 資 産 の 移 転 を 促 すためには 生 前 贈 与 の 円 滑 化 が 不 可 欠 であり 生 前 贈 与 と 相 続 との 間 の 資 産 移 転 時 期 の 選 択 に 関 して の 中 立 性 を 確 保 することが 重 要 となるとの 考 えからである 相 続 時 精 算 課 税 制 度 を 選 択 すれば 受 贈 者 は 贈 与 時 に 贈 与 財 産 に 対 する 贈 与 税 を 支 払 い その 後 の 相 続 時 にその 贈 与 財 産 と 相 続 財 産 とを 合 計 した 価 額 を 基 に 計 算 した 相 続 税 額 から 既 に 支 払 った 贈 与 税 を 通 算 することで 相 続 贈 与 税 を 一 体 とした 納 税 が 可 能 となる この 制 度 の 適 用 対 象 者 は 贈 与 者 は 65 歳 以 上 の 親 受 贈 者 は 20 歳 以 上 の 子 である 推 定 相 続 人 2 となっている 本 制 度 を 選 択 する 受 贈 者 は その 選 択 に 係 わる 最 初 の 贈 与 を 受 けた 翌 年 の 2 月 1 日 から 3 月 15 日 までの 間 に 所 轄 税 務 署 に その 旨 の 届 け 出 が 必 要 となる この 選 択 は 受 贈 者 である 兄 弟 姉 妹 が 各 々 贈 与 者 である 父 母 ごとに 選 択 できるものとされ 最 初 の 贈 与 の 届 け 出 後 は 相 続 時 まで 継 続 して 適 用 されるものとなる また 贈 与 財 産 の 種 類 金 額 贈 与 回 数 には 制 限 を 設 けないものとなっている 1 2 本 稿 の 記 述 は 平 成 15 年 度 税 制 改 正 大 綱 の 内 容 に 基 づく 代 襲 相 続 人 を 含 む 1

2 資 本 市 場 クォータリー2003 年 春 2) 贈 与 税 額 の 計 算 贈 与 税 額 の 計 算 は 本 制 度 に 係 わる 贈 与 者 からの 贈 与 財 産 を 他 の 贈 与 財 産 と 区 分 して 当 該 贈 与 者 からの 贈 与 財 産 の 合 計 額 を 基 に 行 われる その 贈 与 税 額 は 贈 与 財 産 の 価 額 の 合 計 から 非 課 税 枠 の 2,500 万 円 を 控 除 した 金 額 に 一 律 20%の 税 率 を 乗 じて 算 出 する 非 課 税 額 2,500 万 円 は 相 続 時 の 基 礎 控 除 額 を 生 前 贈 与 の 非 課 税 枠 としようとするもので 相 続 人 が 3 人 いる 場 合 を 想 定 し 相 続 税 基 礎 控 除 の 定 額 部 分 5,000 万 円 に 相 続 人 1 人 当 たり 1,000 万 円 の 控 除 を 加 えて 3 で 割 った 金 額 に 基 づいて 設 定 されたといわれる 3) 相 続 税 額 の 計 算 本 制 度 に 係 わる 贈 与 者 の 相 続 時 に それまでの 本 制 度 による 贈 与 財 産 と 相 続 財 産 とを 合 算 して 現 行 と 同 様 の 課 税 方 式 3 により 計 算 した 相 続 税 額 から 既 に 支 払 った 贈 与 税 額 を 控 除 する その 際 相 続 税 額 から 控 除 しきれない 金 額 は 還 付 を 受 けることとなる なお 相 続 財 産 と 合 算 する 場 合 の 贈 与 財 産 価 額 は 贈 与 時 の 時 価 となる 2. 相 続 税 贈 与 税 の 現 状 1) 相 続 税 の 現 状 平 成 12 年 の 相 続 税 対 象 価 額 は 12.3 兆 円 で 相 続 人 数 は 約 15 万 人 となっている 死 亡 人 数 の 約 5%が 相 続 税 の 対 象 者 となっており 資 産 格 差 が 大 きいことと 基 礎 控 除 を 高 めに 設 定 していることが 限 られた 納 税 人 数 の 要 因 と 考 えられる 2) 贈 与 税 の 現 状 一 方 現 行 の 贈 与 制 度 を 利 用 し 41 万 人 程 度 が 資 産 移 転 を 行 っており 一 贈 与 者 当 たり の 平 均 額 は 288 万 円 となっている 贈 与 税 の 構 造 は 生 前 贈 与 による 相 続 税 回 避 の 防 止 と いう 性 格 上 相 続 税 に 比 べて 累 進 度 合 が 強 くなるように 設 定 されている このため 贈 与 者 の 94.6%が 1,000 万 円 未 満 の 贈 与 額 となっているように 高 額 資 産 の 移 転 は 進 んでいない 3 法 定 相 続 分 による 遺 産 取 得 課 税 方 式 2

3 わが 国 における 相 続 贈 与 税 一 体 化 の 影 響 図 表 1 贈 与 財 産 価 額 階 級 別 表 取 得 財 産 価 額 階 級 人 員 ( 人 ) 取 得 財 産 価 額 ( 百 万 円 ) 100 万 円 以 下 158, , 万 円 超 94, , 万 円 超 103, , 万 円 超 24, , 万 円 超 12, ,418 1,000 万 円 超 16, ,408 2,000 万 円 超 5, ,777 3,000 万 円 超 ,097 5,000 万 円 超 ,086 ( 出 所 ) 平 成 12 年 国 税 庁 統 計 より 野 村 総 合 研 究 所 作 成 3. 一 体 化 による 個 人 金 融 資 産 への 影 響 1) 遺 産 目 標 額 からの 推 定 相 続 贈 与 税 一 体 化 による 個 人 金 融 資 産 への 影 響 を 推 測 するためには 新 制 度 を 選 択 する 贈 与 者 の 割 合 を 想 定 していく 必 要 がある 新 制 度 を 選 択 すれば 贈 与 資 産 は 相 続 時 に 相 続 資 産 に 加 算 される 仕 組 みであることから 長 期 間 に 既 存 の 贈 与 制 度 を 利 用 して 相 続 資 産 を 減 じていこうとする 贈 与 者 は 今 後 も 存 続 し ていくであろう しかし 前 節 で 確 認 したように 贈 与 額 1,000 万 円 以 下 の 贈 与 者 の 多 くが 税 率 の 累 進 性 を 意 識 して 資 産 移 転 を 行 っていると 仮 定 すると 2,500 万 円 までの 贈 与 においては 非 課 税 枠 を 利 用 するために 新 制 度 を 選 択 する 可 能 性 が 高 くなるものと 考 えられる 一 方 で 2,500 万 円 超 の 資 産 移 転 であれば 贈 与 時 に 20%の 課 税 となり 相 続 時 に 相 続 税 と 納 付 贈 与 税 との 相 殺 となるが 贈 与 時 の 納 税 負 担 が 発 生 することを 回 避 したい 意 向 も 想 定 される このように 非 課 税 枠 2,500 万 円 を 挟 んでの 行 動 に 差 異 が 生 じてくることに 加 え 1,000 万 円 以 下 の 割 合 が 大 半 を 占 めている 現 状 を 鑑 みると 比 較 的 少 額 の 贈 与 に 大 きな 変 化 が 起 きるというよりも むしろ 1,000 万 円 以 上 の 価 額 帯 で 新 制 度 導 入 による 影 響 が 出 てくるもの と 考 えられる よって 新 制 度 導 入 で 新 たに 誘 導 されてくると 想 定 できる 1,000 万 円 超 2,500 万 円 以 下 の 贈 与 総 額 の 変 化 を 推 計 することにより 資 産 移 転 の 効 果 が 考 察 できる 3

4 資 本 市 場 クォータリー2003 年 春 郵 政 研 究 所 の 遺 産 に 関 する 調 査 4 に 基 づき 遺 産 目 的 の 貯 蓄 目 標 額 を 1,000 万 円 以 上 2,500 万 円 以 下 としている 65 歳 以 上 の 者 の 割 合 を 統 計 上 の 数 値 から 導 き 出 すことで 新 制 度 に よる 資 産 移 転 額 の 推 計 が 可 能 となる 郵 政 研 究 所 の 調 査 では 遺 産 目 標 額 階 級 が 1,000 万 円 以 上 2,000 万 円 未 満 世 帯 主 年 齢 階 級 が 60 歳 から 79 歳 の 者 の 割 合 が 求 められており 前 提 としている 条 件 と 異 なるが その 数 値 である 30.8%を 用 いた 推 定 遺 産 総 額 は 52 兆 円 規 模 5 のものとなる この 推 定 金 額 は 遺 産 の 目 的 として 生 涯 にわたって 親 世 代 が 保 有 する 可 能 性 もあることや 推 定 する 自 己 資 産 額 が 基 礎 控 除 額 の 範 疇 であれば 生 前 に 特 別 な 行 動 を 起 こさない 可 能 性 も 否 定 はできず 全 額 が 生 前 贈 与 に 向 かうと 考 えるには 無 理 もある 即 ち この 推 定 額 には 相 続 発 生 時 まで 資 産 移 転 は 考 えにくいという 資 産 も 含 まれていることに 注 意 を 要 する 2) 住 宅 取 得 資 金 特 例 導 入 時 の 動 向 からの 想 定 続 いて 新 制 度 導 入 の 短 期 的 な 影 響 について 推 計 してみる 贈 与 税 を 控 除 する 措 置 とし て 設 けられた 住 宅 取 得 資 金 特 例 の 導 入 時 の 動 向 を 検 証 し 税 制 変 更 による 政 策 の 効 果 を 確 認 する 住 宅 取 得 資 金 特 例 は 昭 和 59 年 に 特 例 額 500 万 円 で 導 入 され その 後 平 成 6 年 に 1,000 万 円 平 成 11 年 に 1,500 万 円 に 増 額 されてきた 図 表 からは 住 宅 取 得 資 金 の 原 資 となる 現 金 預 金 の 贈 与 額 の 推 移 から 政 策 の 変 更 によって 誘 導 された 効 果 が 確 認 できる 図 表 2 贈 与 財 産 ( 現 金 預 金 ) 額 の 推 移 (* 住 宅 取 得 資 金 贈 与 特 例 の 適 用 限 度 額 ) ( 億 円 ) 6,000 *500 万 円 *1,000 万 円 *1,500 万 円 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 昭 和 57 年 昭 和 58 年 昭 和 59 年 昭 和 60 年 昭 和 61 年 昭 和 62 年 昭 和 63 年 平 成 元 年 平 成 2 年 平 成 3 年 平 成 4 年 平 成 5 年 平 成 6 年 平 成 7 年 平 成 8 年 平 成 9 年 平 成 10 年 平 成 11 年 平 成 12 年 ( 出 所 ) 社 団 法 人 日 本 租 税 研 究 会 税 制 参 考 資 料 集 より 野 村 総 合 研 究 所 作 成 4 郵 政 研 究 所 第 7 回 家 計 における 金 融 資 産 選 択 等 に 関 する 調 査 結 果 報 告 書 表 74 目 的 別 貯 蓄 の 貯 蓄 目 標 額 ( 遺 産 のため)より 5 世 帯 主 65 歳 以 上 の 対 象 世 帯 数 万 に 1,000 万 円 ~2,000 万 円 の 中 間 の 値 1,500 万 円 を 乗 じて 概 算 値 を 求 めた 4

5 わが 国 における 相 続 贈 与 税 一 体 化 の 影 響 住 宅 取 得 特 例 導 入 時 の 昭 和 59 年 と 前 年 の 昭 和 58 年 を 比 較 すると 現 金 預 金 の 贈 与 額 が 74% 増 加 している( 図 表 2) 贈 与 額 全 体 は 21%の 増 加 に 留 まっていたことから 住 宅 取 得 のための 現 金 預 金 の 贈 与 をする 者 が 制 度 導 入 を 期 に 誘 導 されていった 動 きが 見 て 取 れる 現 金 預 金 を 贈 与 した 人 員 数 で 19.6% 1 人 当 たり 現 金 預 金 贈 与 額 で 45.5%の 増 加 となっている このように 当 時 60 万 円 であった 贈 与 非 課 税 額 を 住 宅 取 得 資 金 に 限 り 500 万 円 に 拡 大 した 政 策 は 効 果 的 であったと 言 えよう 6 今 回 の 贈 与 税 の 相 続 時 精 算 課 税 制 度 の 導 入 による 非 課 税 枠 は 2,500 万 円 で 既 存 の 贈 与 税 非 課 税 額 110 万 円 との 対 比 では 昭 和 59 年 の 非 課 税 額 60 万 円 と 住 宅 取 得 資 金 特 例 額 500 万 円 より 格 差 の 比 率 が 大 きく 今 回 の 制 度 導 入 時 の 方 が 住 宅 取 得 資 金 特 例 導 入 時 より 大 き な 効 果 が 期 待 できるかもしれない 昭 和 59 年 の 現 金 預 金 贈 与 額 の 増 加 率 を 平 成 12 年 との 比 較 で 当 てはめると 一 体 化 による 短 期 的 な 政 策 効 果 は 8,800 億 円 と 推 計 される 個 人 金 融 資 産 への 影 響 という 観 点 から 2 点 確 認 したが 一 体 化 による 高 齢 者 世 帯 からの 資 産 移 転 は 長 期 的 には 52 兆 円 規 模 に 達 することも 想 定 され 得 るが 短 期 的 な 政 策 の 効 果 と しては 変 化 率 こそ 大 きいものの 実 際 に 移 転 される 資 産 額 は 1 兆 円 弱 に 留 まるものと 考 えられ 早 急 に 個 人 金 融 資 産 に 大 きな 影 響 がでるとは 想 定 しづらいものともいえる しかし 相 続 という 偶 発 的 な 手 続 きに 比 べ 贈 与 では 周 到 な 準 備 が 可 能 でもあり 受 贈 側 の 体 制 が 整 っていることを 鑑 みると 贈 与 による 資 産 移 転 の 方 が 経 済 厚 生 をより 高 める ものといえるであろう 4. 事 業 承 継 の 観 点 からの 変 化 1) 相 続 における 事 業 承 継 問 題 わが 国 の 相 続 税 に 対 する 考 え 方 は 生 前 の 蓄 えの 結 果 である 相 続 財 産 は 被 相 続 人 の 努 力 のみではなく 社 会 的 な 恩 恵 も 受 けての 成 果 であり 相 続 財 産 に 対 しては 社 会 還 元 も 必 要 で 相 応 の 相 続 税 を 課 するべきというものである 更 に 財 産 承 継 のみを 強 く 意 識 した 税 制 でもあり 事 業 承 継 については 配 慮 が 行 き 届 いてこなかった 一 般 的 に 経 営 と 資 本 の 所 有 が 一 体 となっている 中 小 企 業 にとって 経 営 権 は 資 本 も 伴 っ て 承 継 されており 財 産 承 継 の 基 準 による 制 度 では 相 続 発 生 時 の 相 続 税 負 担 による 資 本 の 毀 損 を 伴 う 可 能 性 が 高 い これでは 企 業 の 永 続 性 確 保 において 問 題 がある この 問 題 への 対 応 として 平 成 14 年 度 の 税 制 改 正 では 相 続 税 の 事 業 承 継 控 除 が 一 部 認 め 6 住 宅 取 得 資 金 特 例 とは 親 又 は 祖 父 母 から 自 己 の 居 住 の 用 に 供 する 住 宅 の 取 得 資 金 を 受 けた 場 合 の 贈 与 税 について 一 定 の 要 件 のもとでその 住 宅 取 得 資 金 のうち 500 万 円 までの 部 分 について 5 分 5 乗 方 式 によ り 税 額 を 計 算 する 制 度 である 5

6 資 本 市 場 クォータリー2003 年 春 られることとなった だが 適 用 要 件 が 限 定 的 であり 包 括 的 な 事 業 承 継 支 援 策 とはいえ ない 7 根 本 的 な 問 題 は 相 続 発 生 が 偶 発 的 であり 予 測 が 困 難 な 点 にある 事 業 承 継 を 後 継 者 へ の 経 営 委 譲 と 考 えるのならば 相 続 時 点 のみを 委 譲 時 期 と 定 めるには 社 会 通 念 上 も 難 点 が あるといえる 平 成 12 年 分 の 同 族 会 社 株 式 等 の 相 続 課 税 財 産 は 4,139 億 円 に 上 り 被 相 続 人 である 約 1 万 人 の 経 営 者 の 相 続 人 が 相 続 税 の 対 象 者 となっており また 経 営 者 の 52%が 事 業 承 継 の 障 害 として 相 続 税 の 負 担 があると 考 え 8 ていることから 鑑 みると この 懸 念 の 解 消 による 事 業 承 継 の 円 滑 化 は 重 要 な 課 題 である 今 回 の 贈 与 税 の 相 続 時 精 算 方 式 の 導 入 は この 事 業 承 継 問 題 の 解 消 にも 一 定 の 効 果 があ るものと 考 えられる 即 ち 贈 与 と 相 続 を 一 体 のものと 見 なす 税 制 によって 相 続 時 に 偏 っていた 後 継 者 への 事 業 資 産 の 移 転 を 後 継 者 の 経 営 技 量 や 経 験 等 の 進 度 に 沿 ったものへ とシフトさせることが 可 能 となる このことが 従 来 よりもスムーズな 事 業 資 産 の 移 転 をも たらし 円 滑 な 事 業 承 継 を 可 能 にするものであると 考 えられる 9 2) 相 続 時 精 算 課 税 方 式 選 択 による 後 継 者 のインセンティブ 今 回 の 制 度 導 入 がもたらす 自 社 株 式 等 の 生 前 贈 与 が その 後 の 後 継 者 による 事 業 活 動 等 への 大 きなインセンティブとなるものと 考 えられる 新 制 度 を 選 択 した 贈 与 資 産 は 相 続 時 に 相 続 財 産 と 合 算 されて 贈 与 税 と 相 続 税 は 通 算 さ れる 仕 組 みとなっているが その 相 続 時 の 課 税 対 象 価 額 の 贈 与 財 産 分 は 贈 与 時 の 時 価 とし て 評 価 される このため 贈 与 時 以 降 の 自 社 株 式 等 の 評 価 額 上 昇 分 は 相 続 課 税 の 対 象 には 含 まれず 後 継 者 が 最 終 承 継 以 前 に 企 業 価 値 の 拡 大 に 貢 献 するインセンティブが 従 来 より も 高 まってくるものと 考 えられる 自 社 株 式 の 生 前 贈 与 を 選 択 することは 前 項 でも 指 摘 したように 後 継 者 の 進 度 に 沿 っ た 円 滑 な 事 業 承 継 と 更 には 資 産 承 継 とのバランスを 確 保 していく 上 で 有 効 な 手 段 となる 新 制 度 の 非 課 税 枠 や 低 率 の 贈 与 税 を 選 択 して 後 継 者 へもより 高 いインセンティブを 与 え ることができる 方 法 ともなることから 実 子 への 事 業 承 継 を 考 えている 経 営 者 は 預 金 等 の 金 融 資 産 よりも 自 社 株 式 等 の 贈 与 を 前 向 きに 検 討 することとなろう 同 族 会 社 株 式 等 の 被 相 続 人 当 たりの 財 産 額 は 約 4,000 万 円 10 で 約 60%が 非 課 税 枠 2,500 万 円 を 利 用 すれば 資 産 移 転 を 行 うことができる 事 業 承 継 対 策 としては 十 分 に 活 用 可 能 な 7 杉 岡 登 志 夫 わが 国 の 事 業 承 継 における 相 続 税 の 問 題 点 資 本 市 場 クォータリー 2002 年 冬 号 参 照 8 中 小 企 業 庁 事 業 承 継 に 関 するアンケート (2001 年 7 月 ) 9 中 小 企 業 庁 の 事 業 承 継 第 二 創 業 研 究 会 の 中 間 報 告 においても 後 継 者 育 成 のあり 方 としては ( 中 略 ) 現 経 営 者 と 後 継 者 との 伴 走 期 間 を 設 け 徐 々に 後 継 者 へ 権 限 委 譲 を 計 ること ( 中 略 )などが 有 効 である との 見 解 がなされている 10 相 続 財 産 種 類 別 の 特 定 同 族 会 社 の 株 式 及 び 出 資 の 額 と 被 相 続 人 数 より 算 出 6

7 わが 国 における 相 続 贈 与 税 一 体 化 の 影 響 水 準 の 範 疇 ともいえる 5.おわりに 今 回 の 相 続 贈 与 税 一 体 化 制 度 の 創 設 の 目 的 は 高 齢 化 の 進 展 に 伴 い 相 続 による 次 世 代 への 資 産 移 転 の 時 期 が 従 来 より 遅 れてきていることへの 対 応 や 高 齢 者 世 帯 の 保 有 する 資 産 の 有 効 活 用 を 通 じて 経 済 の 活 性 化 を 資 することへの 対 応 と 考 えられる わが 国 のおかれたこのような 現 状 に 対 応 するために 相 続 税 制 構 造 を 変 革 した 点 で 評 価 に 値 するといえよう しかし 今 回 の 改 正 の 中 で 相 続 贈 与 税 の 最 高 税 率 の 引 き 下 げ 措 置 も 採 られたが 欧 米 各 国 と 比 較 11 して 高 いとされている 相 続 税 額 全 体 の 方 向 性 や 課 税 対 象 者 を 広 げるのか 否 かといった 基 礎 控 除 額 の 変 更 に 関 する 方 向 性 は 打 ち 出 されておらず 今 後 の 税 制 のあり 方 が 不 確 定 な 中 では 納 税 者 の 生 前 贈 与 に 対 する 意 識 も 定 まりにくい 面 が 今 後 の 課 題 として 指 摘 できよう 更 に 贈 与 税 をあらかじめ 納 税 しなくてはならない 負 担 について 特 に 高 額 の 資 産 移 転 が 予 測 される 事 業 承 継 に 関 して 自 社 株 式 等 を 贈 与 する 場 合 の 特 例 を 設 けることも 必 要 とな ろう 例 えば 平 成 14 年 度 税 制 改 正 で 事 業 承 継 特 例 とされた 相 続 税 評 価 額 10 億 円 未 満 の 企 業 であれば 自 社 株 式 等 の 贈 与 の 税 率 を 減 額 し 10% 程 度 とすることで 金 額 の 大 きい 資 産 も 早 めに 移 転 できるものとなろう 本 稿 では 個 人 金 融 資 産 への 影 響 と 企 業 経 営 者 の 事 業 承 継 という 観 点 から 確 認 してきたが 今 回 の 措 置 の 導 入 により 個 人 金 融 資 産 の 37%が 留 まっている 65 歳 以 上 世 帯 からの 資 産 移 転 が 進 むことが 可 能 であろう しかし 他 方 で 高 齢 者 世 帯 の 貯 蓄 率 が 25%と 35 歳 ~44 歳 世 帯 からほとんど 変 化 なく 高 止 まっている 現 状 をみると 高 貯 蓄 率 を 維 持 せざるをえない 要 因 の 拡 大 が 資 産 移 転 を 消 極 的 なものにしているといえる 税 制 等 の 技 術 的 な 政 策 と 同 時 に 次 世 代 への 資 産 移 転 によって 経 済 が 活 性 化 し そのことが 高 齢 者 世 帯 へもフィードバ ックされ 恩 恵 をもたらすといったビジョンの 提 示 が 不 可 欠 となろう ( 杉 岡 登 志 夫 ) 11 相 続 税 額 の 国 税 収 入 に 対 する 割 合 は 日 本 3.9% 米 国 2.2% 英 国 0.7%となっている 7

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