緒言

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1 平 成 21 年 度 有 明 海 再 生 に 関 する 研 究 等 助 成 事 業 実 績 報 告 書 アントラキノンによる 硫 化 水 素 発 生 抑 制 作 用 と 火 山 灰 土 壌 によるリン 吸 着 作 用 を 組 み 合 わせた 沿 岸 環 境 保 全 技 術 の 効 果 と 安 全 性 の 評 価 長 崎 大 学 大 学 院 生 産 科 学 研 究 科 和 田 実

2 目 次 緒 言 2 実 験 1 アントラキノンを 嫌 気 的 な 海 底 泥 に 投 与 した 際 の 硫 化 物 濃 度 の 変 化 4 実 験 2 アントラキノンを 添 加 したときの 堆 積 物 中 の 細 菌 群 集 組 成 の 変 化 8 実 験 3 堆 積 物 の 保 存 方 法 ( 温 度 )の 違 いによる 堆 積 物 中 の 細 菌 群 集 組 成 の 変 化 10 実 験 4 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 を 海 水 に 添 加 した 際 のリン 吸 着 効 果 1 12 実 験 5 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 を 海 水 に 添 加 した 際 のリン 吸 着 効 果 2 14 総 括 15 引 用 文 献 16 図 表 17 2

3 緒 言 有 明 海 沿 岸 環 境 の 劣 化 には, 嫌 気 的 な 海 底 堆 積 物 からの 硫 化 水 素 発 生 や 栄 養 元 素 の 溶 出 が 関 わっている 硫 化 水 素 は, 下 水 や 汚 泥 の 嫌 気 化 が 進 むにつれ 硫 酸 還 元 細 菌 (Sulfate Reducing Bacteria, 以 下 SRB と 略 す)の 活 動 が 活 発 化 し, 下 水 や 汚 泥 中 の 硫 酸 イオンが 還 元 されて 生 成 する この 対 策 として,アントラキノン 製 剤 を 用 いる 方 法 が ある SRB は 硫 酸 イオンを 硫 化 水 素 に 還 元 する 硫 酸 呼 吸 と, 有 機 物 を 分 解 し, 有 機 酸 を 生 成 する 酸 生 成 分 解 の 二 つの 代 謝 経 路 を 持 つことが 知 られている( 堀 越,2006) アン トラキノン 製 剤 は 硫 酸 呼 吸 のみに 作 用 し,SRB を 殺 すことなく 硫 化 物 の 発 生 を 抑 制 す ることができる 寺 澤 ら(1999)は, 汚 泥 処 理 工 程 や 下 水 圧 送 管 にアントラキノン 製 剤 を 投 与 することによって 硫 化 水 素 発 生 が 抑 制 されることを 明 らかにした 底 泥 から 溶 出 する 代 表 的 な 栄 養 元 素 として 窒 素 とリンが 考 えられるが,リンは 植 物 プ ランクトン 増 殖 の 制 限 因 子 になっており, 植 物 プランクトンの 異 常 発 生 を 抑 制 するため には 海 底 堆 積 中 のリン 削 減 がより 重 要 であると 言 われている( 柳 田 ら,1998) 水 中 のリ ンを 効 果 的 に 除 去 する 方 法 として 吸 着 法 が 知 られおり, 操 作 が 簡 便 で, 除 去 されたリン を 吸 着 剤 より 回 収 することができ, 同 時 に 吸 着 剤 自 体 も 再 生 して 再 利 用 できる 等 の 利 点 がある( 江 ら,2005) 近 年, 火 山 灰 土 と 硫 酸 第 一 鉄 を 原 料 とする 吸 着 剤 を 下 水 処 理 水 や 河 川 水 に 用 いたところリン 吸 着 の 効 果 が 見 られた( 柳 田 ら,1998) これらの 化 学 的 な 環 境 保 全 技 法 は 淡 水 域 において 優 れた 効 果 を 発 揮 しているので, 海 洋 環 境 下 においても 同 様 の 効 果 が 得 られるならば, 有 明 海 の 海 底 環 境 保 全 に 貢 献 できる と 期 待 される しかし,アントラキノンやリン 吸 着 剤 を 海 洋 環 境 下 で 用 いた 例 はなく, その 効 果 も 未 知 である そこで 本 研 究 では,アントラキノンを 嫌 気 的 な 海 底 泥 に 投 与 し た 際 の 効 果,またリン 吸 着 剤 として 市 販 されている 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 (ピーキャッ チ )をリン 酸 イオンを 含 む 海 水 に 添 加 した 際 のリンの 除 去 効 果 の 検 証 を 行 い, 将 来 的 な 海 底 保 全 技 術 の 確 立 に 向 けた 基 礎 知 見 を 得 ることを 目 的 とした 3

4 実 験 1 アントラキノンを 嫌 気 的 な 海 底 泥 に 投 与 した 際 の 硫 化 物 濃 度 の 変 化 方 法 1. 堆 積 物 の 採 取 および 保 存 方 法 実 験 に 用 いた 試 料 は 二 種 類 あり,イトゴカイの 飼 育 に 使 用 している 泥 を 目 合 い 500μ m のふるいにかけたもの(イトゴカイ 飼 育 泥 )および,2009 年 8 月 31 日 に 諫 早 湾 小 長 井 ( 図 1)で 採 取 した 干 潟 表 層 堆 積 物 を 研 究 室 に 持 ち 帰 った 後 マイナス 20 度 で 保 存 し, 実 験 開 始 時 に 解 凍 したもの( 干 潟 表 層 堆 積 物 )である イトゴカイ 飼 育 泥, 干 潟 表 層 堆 積 物 の 有 機 物 含 量 はそれぞれ 15mgC/g sediment,13mgc/g sediment である 2. 堆 積 物 の 嫌 気 培 養 イトゴカイ 飼 育 泥 または 干 潟 表 層 堆 積 物 5g と 滅 菌 海 水 5ml を 30ml のガラスバイア ルに 入 れ,バイアル 内 を 嫌 気 的 な 状 態 に 保 つために 亜 硫 酸 ナトリウム(2mM),レザズリ ン(2mg/L)を 加 えた 使 用 したアントラキノン 製 剤 は 三 種 類 あり,1.9 アントラキノン( 和 光 純 工 業 株 式 会 社 ),1.8-ジヒドロキシ-アントラキノン(SIGMA-ALDRICH)およびサルフコントロール ( 川 崎 化 成 工 業 株 式 会 社 )である( 図 2) 1.9 アントラキノン,1.8-ヒドロキシ-アントラキ ノンは 粉 末 状 であり, 水 に 溶 けないが 有 機 溶 媒 には 溶 けるためアセトンに 溶 かしてから 実 験 に 使 用 した 海 水 と 堆 積 物 試 料, 亜 硫 酸 ナトリウムとレザズリンが 入 ったバイアル に, 試 験 区 には 最 終 濃 度 が 10μM になるようにアントラキノン 製 剤 を 加 え, 対 照 区 に はアセトンを 25μl( 試 験 区 と 同 じアセトン 量 ) 加 えた その 後 直 ちに,バイアル 内 の 酸 素 を 出 来 るだけなくすために 窒 素 ガスを 注 入 し,ブチルゴムで 密 栓 後, 常 温 ( 約 25 度 ), 暗 所 で 2 日 間 ~5 日 間 保 存 した しかし,サルフコントロールを 用 いて 実 験 を 行 ったと きには, 亜 硫 酸 ナトリウム,レザズリンさらに 窒 素 ガスを 添 加 せず,バイアル 内 を 嫌 気 的 な 状 態 にしなかった なお, 実 験 で 用 いた 堆 積 物 試 料 と 薬 品 の 種 類 を 表 1 に 示 し,それぞれの 実 験 を1~6 とした 実 験 1~5では, 試 験 区 と 対 照 区 においてそれぞれ 3 本 のバイアル 内 の 硫 化 物 イオン 量 を 測 定 した また, 実 験 4では 上 記 の 実 験 の 他 に, 干 潟 表 層 堆 積 物 を 嫌 気 的 に 保 つことによって 硫 化 物 が 生 成 されるかどうか 確 認 するために, 干 潟 表 層 堆 積 物 のみを 入 れたサンプルについて 3 連 で 硫 化 物 イオン 量 の 測 定 を 行 った 実 験 6では,1.8-ジヒ ドロキシ-アントラキノンを 加 えた 試 験 区 およびアセトンのみを 加 えた 対 照 区,アント ラキノンとアセトンを 加 えない 無 添 加 区 を 設 け, 各 5 本 で 培 養 を 行 った 0 日 目 に 無 添 加 区 を,2 日 目 に 試 験 区 と 対 照 区 のバイアル 内 の 硫 化 物 イオン 量 を 測 定 した 3. 堆 積 物 から 発 生 する 硫 化 物 イオン(S 2- )の 測 定 堆 積 物 試 料 に 1ml のシリンジで 1N-HCl を 1ml 注 入 し 攪 拌 後 20 分 静 置 した その 4

5 後,バイアルの 気 相 を 2ml ガスタイトシリンジで 採 集 し 10ml の 1MTris-HCl(pH=8.0) に 注 入 した 1MTris-HCl に 溶 存 した 硫 化 物 イオンを, 硫 化 物 イオン 測 定 キット(HACH 社 )を 使 用 し,メチレンブルー 法 により 665nm の 吸 光 度 を 吸 光 光 度 計 (DR-2800 HACH 社 )で 測 定 した 結 果 実 験 1:サルフコントロールを 添 加 したときのイトゴカイ 飼 育 泥 の 硫 化 物 イオン 量 の 変 化 ( 図 3) イトゴカイ 飼 育 泥 にサルフコントロールを 添 加 したところ, 試 験 区 は 薬 品 を 添 加 した にもかかわらず 日 が 経 つにつれて 硫 化 物 イオン 量 は 減 少 した さらに 対 照 区 は 2 日 目 の 時 点 で 硫 化 物 イオン 量 はほとんど 0 になっていた 実 験 2:1.9 アントラキノンを 添 加 したときのイトゴカイ 飼 育 泥 の 硫 化 物 の 変 化 ( 図 4) イトゴカイ 飼 育 泥 に 1.9 アントラキノンを 添 加 したしたところ,0 日 目 の 時 点 では 試 験 区 と 対 照 区 の 泥 中 の 硫 化 物 イオン 量 にほとんど 差 は 見 られなかった しかし,1 日 目 以 降 は 対 照 区 より 試 験 区 のほうが 硫 化 物 イオン 量 は 少 なくなっていた また,3 日 目 に ついては 二 つの 実 験 区 間 において 有 意 な 差 が 見 られた(t 検 定,p<0.01) 同 様 の 実 験 は 他 に 3 回 行 っているが,そのうち 2 回 は 対 照 区 より 試 験 区 のほうが 硫 化 物 イオン 量 は 少 なくなっていた しかし, 残 りの 1 回 は,0 日 目,1 日 目 は 両 区 間 にお ける 硫 化 物 イオン 量 に 差 は 見 られなかったが,2 日 目 以 降 は 対 照 区 よりも 試 験 区 のほう が 硫 化 物 イオン 量 が 多 くなっていた 実 験 3:1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 したときのイトゴカイ 飼 育 泥 の 硫 化 物 イオン 量 の 変 化 ( 図 5) イトゴカイ 飼 育 泥 に 1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 したところ,0 日 目 の 時 点 では 試 験 区 と 対 照 区 の 泥 中 の 硫 化 物 イオン 量 にほとんど 差 は 見 られず,1 日 目 は 対 照 区 より 試 験 区 の 方 が 硫 化 物 イオン 量 は 少 なくなっていた しかし,2 日 目 は 対 照 区 より も 試 験 区 のほうが 硫 化 物 イオン 量 が 多 くなっていた 実 験 4:1.9 アントラキノンを 添 加 したときの 干 潟 表 層 堆 積 物 の 硫 化 物 の 変 化 ( 図 6-1, 6-2) まず, 干 潟 表 層 堆 積 物 を 嫌 気 的 に 保 つことによって 硫 化 物 が 生 成 されるかどうか 確 認 したところ, 図 6-1 のように 硫 化 物 が 生 成 され,さらに 日 を 追 うごとに 硫 化 物 イオン 量 が 増 加 した しかし, 干 潟 表 層 堆 積 物 に 1.9 アントラキノンを 添 加 したところ, 図 6-2 のように 0 日 目,1 日 目 において 試 験 区 よりも 対 照 区 のほうが 硫 化 物 イオンの 量 が 多 く 5

6 なっていた 実 験 5:1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 したときの 干 潟 表 層 堆 積 物 の 硫 化 物 の 変 化 ( 図 7-1,7-2) 干 潟 表 層 堆 積 物 に 1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 したところ, 図 7-1 のよ うに 対 照 区 よりも 試 験 区 のほうが 硫 化 物 イオンの 量 が 少 なくなった,つまりアントラキ ノンの 添 加 によって 硫 化 物 発 生 が 抑 制 された 場 合 と, 図 7-2 のように 抑 制 されなかった 場 合 が 見 られた このとき, 堆 積 物 試 料 の 保 存 方 法 が 両 者 で 異 なっており, 前 者 は-20 で 保 存 していたものを 解 凍 してすぐに 使 用 したのに 対 し, 後 者 はマイナス 20 度 で 保 存 していたものを 取 り 出 し 4 度 で 1~7 日 間 保 存 していたものを 使 用 していた 実 験 6:1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 したときの 干 潟 表 層 堆 積 物 の 硫 化 物 の 変 化 ( 図 8) 実 験 5の 結 果 を 踏 まえ,マイナス 20 度 で 保 存 していた 堆 積 物 試 料 を 実 験 開 始 時 に 解 凍 したものに 1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 した 試 験 区 と 対 照 区 を 比 較 し たところ, 対 照 区 よりも 試 験 区 のほうが 硫 化 物 イオンの 量 が 少 なくなっていた 考 察 実 験 1より,イトゴカイ 飼 育 泥 にサルフコントロールを 添 加 したところ, 薬 品 を 加 え たにもかかわらず 試 験 区 の 硫 化 物 イオン 量 が 増 加 していることから, 硫 化 物 イオン 発 生 を 抑 制 する 効 果 が 見 られなかったことがわかった さらに,さらに 対 照 区 は 2 日 目 の 時 点 で 硫 化 物 イオン 量 はほとんど 0 になっていたが,これらの 現 象 として,バイアル 内 を 嫌 気 的 な 状 態 にせず, 好 気 的 な 条 件 で 実 験 を 行 ったことが 一 因 であると 考 えられる 実 験 2より,イトゴカイ 飼 育 泥 に 1.9 アントラキノンを 添 加 したところ 対 照 区 より 試 験 区 のほうが 硫 化 物 イオンの 量 が 少 なかったことから,アントラキノンの 効 果 が 見 られ たことがわかった しかし 実 験 3より,イトゴカイ 飼 育 泥 に 1.8-ジヒドロキシ-アント ラキノンを 添 加 したところアントラキノンの 効 果 が 見 られなかったことがわかった 実 験 4より, 干 潟 表 層 堆 積 物 に 1.9 アントラキノンを 添 加 したところアントラキノンの 効 果 がなかったが, 干 潟 表 層 堆 積 物 を 嫌 気 的 に 保 つことによって 硫 化 物 が 発 生 するかどう か 調 べたところ 日 が 経 つにつれて 硫 化 物 イオンが 発 生 したことから, 実 際 に 試 料 堆 積 物 中 から 硫 化 物 は 発 生 しているがアントラキノンによって 抑 制 されていないことが 示 唆 された 実 験 5より, 干 潟 表 層 堆 積 物 に 1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 したところ, アントラキノンの 効 果 が 見 られる 場 合 ( 図 7-1)と 見 られない 場 合 ( 図 7-2)があった 前 者 はマイナス 20 度 で 保 存 していたものを 解 凍 してすぐに 使 用 したのに 対 し, 後 者 はマイ ナス 20 度 で 保 存 していたものを 取 り 出 し 4 度 で 数 日 間 保 存 していたものを 使 用 してい 6

7 たことから, 堆 積 物 試 料 の 保 存 方 法 がアントラキノンの 効 果 に 影 響 を 及 ぼしていること が 示 唆 された また 実 験 6においても,マイナス 20 度 で 保 存 していた 干 潟 表 層 堆 積 物 を 解 凍 してすぐに 実 験 に 用 いたところアントラキノンの 効 果 が 見 られたことから, 解 凍 後 4 度 に 保 存 することでアントラキノンの 効 果 が 薄 れることがわかった この 現 象 の 説 明 として, 干 潟 表 層 堆 積 物 を 4 度 で 保 存 することによって 細 菌 群 集 が 変 化 し,アントラ キノンが 効 かない SRB 群 集 が 増 加 した 可 能 性 が 考 えられる 実 験 1~6の 結 果 より,アントラキノンの 効 果 は 実 験 に 使 用 した 試 料 堆 積 物 に 大 きく 影 響 を 受 けていると 考 えられる また,グラフの 標 準 偏 差 を 見 ると, 試 料 によって 硫 化 物 イオン 量 の 値 が 大 きくばらついている 場 合 が 見 られた これは, 元 は 同 じ 堆 積 物 試 料 であってもガラスバイアルに 入 れた 泥 の 細 菌 群 集 はそれぞれ 異 なっており,その 群 集 の 違 いがアントラキノンの 効 果 に 影 響 を 及 ぼした 可 能 性 があると 考 えられる 7

8 実 験 2 アントラキノンを 添 加 したときの 堆 積 物 中 の 細 菌 群 集 組 成 の 変 化 方 法 1. 堆 積 物 試 料 の DNA 抽 出 実 験 1 でアントラキノンによる 硫 化 物 イオン 抑 制 効 果 が 見 られた 実 験 2の 0 日 目,1 日 目 のそれぞれ 試 験 区, 対 照 区 の 計 4 つの 堆 積 物 試 料 を 用 いた 硫 化 物 イオン 測 定 後, マイナス 20 度 で 保 存 していたものを 解 凍 し,バイアル 内 の 堆 積 物 0.5g から DNA 抽 出 を 行 った なお, 硫 化 物 イオン 量 を 測 定 した 際 に 1N-HCl を 加 えたことを 考 慮 して, 堆 積 物 の ph を 中 和 するため 1MTris-HCl(pH=8.0)を 添 加 したものについても DNA 抽 出 を 行 った DNA の 抽 出 には 土 壌 DNA 抽 出 キット ISOIL( 株 式 会 社 ニッポンジーン)を 用 いた 抽 出 した 堆 積 物 の DNA は-20 で 保 存 した また,シャットネラアンティカ 培 養 液 中 の 細 菌 群 集 由 来 の DNA サンプルをアウトグループとして 群 集 構 造 の 比 較 を 行 った 2. 細 菌 群 集 DNA のフラグメント 解 析,フラグメントパターンの 解 析 抽 出 したDNAから, 斉 藤 ら(2007)の 方 法 を 若 干 変 更 してRISA 法 のフラグメント 産 物 を 調 節 した PCR 反 応 にはITSF/ITSReubプライマーを 用 いた PCR 増 幅 プログラムは 94 2 分 を 1 サイクル,94 1 分,60 1 分,72 2 分 を 30 サイクル,72 1 分 を 1 サイクルとし,DNA Engine TM PTC-200(MJ-Research)を 用 いてPCR 反 応 を 行 った PCR 反 応 後 の 処 理 として, 増 幅 した 産 物 0.75 μl,gene Scan TM -600LIZ Size Standard0.75μl,HDF13.5μlをPCRチューブに 入 れ,DNA Engine TM PTC-200 を 用 いて 95 で 2 分 間 加 熱 した その 後, 氷 上 で 急 冷 しABI-3130 シーケンサーによって 電 気 泳 動 を 行 った 泳 動 後 のフラグメントの 同 定 はPeak Scaner V1.0(ABI)で 行 った サンプルごとに 得 られたデータのうち, 全 フラグメントピークの 高 さ(height)に 対 する 割 合 が 1% 以 上 のものを 選 んだ 各 サンプルで 得 られたフラグメントパターンの 非 類 似 度 の 解 析 はXLSTAT-Pro2009(マインドウエア 総 研 )を 用 いた 8 つのサンプルを 1MTris-HCl(pH=8.0)で 洗 浄 したもの,していないものの 4 つずつに 分 け,それぞれサ ンプル 間 に 共 通 するフラグメントの 有 無 を, 二 進 法 (0 or 1)の 行 列 式 に 変 換 し,その 行 列 式 から 距 離 ( 非 類 似 度 )を 算 出 した 後, 近 隣 結 合 法 によってデンドログラムを 作 成 した ( 図 9 10) 結 果 図 9 は,DNA 抽 出 前 に 洗 浄 のため 1MTris-HCl(pH=8.0)を 添 加 した 堆 積 物 のデンド ログラム, 図 10 は 添 加 しなかった 堆 積 物 のデンドログラムである これを 見 ると, 図 9, 図 10 のどちらにおいても 堆 積 物 の 細 菌 群 集 構 造 はアウトグル ープであるシャットネラアンティカ 培 養 液 中 のものと 大 きく 異 なっていた しかし, 堆 8

9 積 物 の 各 サンプル 間 の 非 類 似 度 は 比 較 的 小 さく 互 いに 同 程 度 だったことから,アントラ キノンの 有 無 や 一 日 程 度 の 培 養 時 間 の 経 過 によって, 堆 積 物 中 の 細 菌 群 集 構 造 はほとん ど 影 響 を 受 けないことがわかった 考 察 図 9 10 から,アントラキノンの 有 無, 短 期 間 の 培 養 時 間 の 経 過 は 堆 積 物 中 の 細 菌 群 集 構 造 にほとんど 影 響 を 及 ぼしていないことが 示 唆 された この 理 由 として,アン トラキノンは SRB の 硫 酸 呼 吸 のみに 作 用 することで SRB を 殺 すことなく 硫 化 物 イオン 発 生 を 抑 制 し,SRB の 現 存 量 が 減 少 することはないためであると 考 えられる 9

10 実 験 3 堆 積 物 の 保 存 方 法 ( 温 度 )の 違 いによる 堆 積 物 中 の 細 菌 群 集 組 成 の 変 化 方 法 1. 堆 積 物 の DNA 抽 出 実 験 には,2009 年 11 月 に 佐 賀 県 鹿 島 で 採 集 した 干 潟 表 層 堆 積 物 を 用 いた その 堆 積 物 は 採 集 後,1 ヶ 月 間 室 温 で 保 存 していた 堆 積 物 を 乳 鉢 で 攪 拌 混 合 した 後,5g ずつ 15ml の 滅 菌 済 み 遠 心 管 12 本 にそれぞれ 移 し 入 れた その 直 後 に 無 作 為 に 選 んだ 3 本 の 遠 心 管 について, 試 料 から DNA 抽 出 し,0 日 目 の DNA 試 料 とした その 際 には 土 壌 用 の DNA 抽 出 キット ISOIL( 株 式 会 社 ニッポンジーン)を 用 いた 残 りの 試 料 を 3 つ ずつまとめて,それぞれ,4 度,マイナス 20 度, 室 温 (20~23 度 )で 一 週 間 暗 所 に 静 置 保 存 した 後, 同 様 に DNA 抽 出 した また,2009 年 8 月 に 採 集 した 大 村 湾 の 表 層 堆 積 物 についても, 同 様 に DNA を 抽 出 し, 細 菌 群 集 構 造 解 析 に 用 いた 2. 変 性 剤 濃 度 勾 配 ゲル 電 気 泳 動 法 (DGGE)による 細 菌 群 集 解 析 まず, 各 堆 積 物 から 抽 出 した 各 DNA を 鋳 型 とし,27F と 1492R のプライマーセッ トで 最 初 の PCR 反 応 を 行 った 次 に,その PCR 増 幅 産 物 を 鋳 型 とし,341F と 907R のプライマーセットを 用 いて 2 回 目 の PCR 反 応 を 行 った 最 後 に 2 回 目 の PCR 増 幅 産 物 を 鋳 型 とし,786FGC1(CgC CCg CCg CgC gcg ggc ggg gcg ggg gca Cgg ggg gga TTA AAT ACC CTA g)と 907R(CCg TCA ATT CCT TTR AgT TT)のプライマーセ ットを 用 いて 3 回 目 の PCR 反 応 を 行 った この 3 回 目 の PCR 増 幅 産 物 について 石 井 ら(2000)の 方 法 に 準 拠 して, 変 性 剤 濃 度 勾 配 ゲル 電 気 泳 動 法 (DGGE)を 行 った 使 用 し たゲルの 変 性 剤 濃 度 は 0%~80%であり, 電 気 泳 動 は 100V,400mAn の 状 態 で 16 時 間 行 った その 後,SYBR-Green によって 染 色 を 行 い,FLA-5000(Fuji)を 用 いて, 励 起 波 長 473nm でバンドパターンを 読 み 取 った サンプル 間 に 共 通 するバンドパターンの 有 無 を, 二 進 法 (0 or 1)の 行 列 式 をもとに XLSTAT-Pro2009(マインドウエア 総 研 )を 用 いて 距 離 ( 非 類 似 度 )を 算 出 した 後, 近 隣 結 合 法 によってデンドログラムを 作 成 した( 図 11) 結 果 図 11 は,0 日 目 の 細 菌 群 集 と 4 度,マイナス 20 度, 室 温 の 細 菌 群 集 および 大 村 湾 の 表 層 堆 積 物 の 細 菌 群 集 の DGGE パターンである 0 日 目 の 細 菌 群 集 は,3 つの 試 料 の うち 2 つの 試 料 しかバンドパターンが 得 られなかった このバンドパターンをもとにサ ンプル 間 の 非 類 似 度 をデンドログラムに 表 したものが 図 12 である これを 見 ると, 佐 賀 県 鹿 島 干 潟 で 採 集 した 堆 積 物 と 大 村 湾 で 採 集 した 堆 積 物 の 細 菌 群 集 の 組 成 は, 大 きく 異 なっていることがわかった また, 鹿 島 干 潟 で 採 集 した 堆 積 物 に 注 目 すると,マイナ 10

11 ス 20 度 で 保 存 したものと 室 温 で 保 存 したものは 群 集 構 造 が 似 ているが,4 度 で 保 存 し たものはこの 二 つと 異 なる 群 集 組 成 を 持 つことが 示 唆 された さらに, 同 じ 状 態 で 保 存 したものでもサンプル 間 で, 群 集 組 成 が 大 きく 異 なっているものも 見 られた 考 察 図 12 から 明 らかなように, 鹿 島 干 潟 で 採 集 した 堆 積 物 の 保 存 方 法 ( 温 度 )による 細 菌 群 集 に 違 いに 注 目 すると,マイナス 20 度 で 保 存 したものと 室 温 で 保 存 したものは 群 集 構 造 が 似 ているが,4 度 で 保 存 したものはそれ 以 外 と 比 較 して 異 なる 群 集 構 造 を 持 つこ とがわかった このことから, 干 潟 表 層 堆 積 物 を 4 度 で 数 日 間 保 存 することにより, 細 菌 群 集 構 造 が 変 化 することが 明 らかとなった 実 験 1 の 実 験 5より,4 度 で 数 日 間 保 存 した 堆 積 物 にアントラキノンを 添 加 してもアントラキノンの 効 果 が 得 られなかったこ とと 合 わせて 考 えると, 堆 積 物 を 4 度 で 保 存 することによって 堆 積 物 中 の SRB 群 集 構 造 が 変 化 し,アントラキノンが 効 かない SRB 群 集 が 増 加 した 可 能 性 があると 考 えられ る しかし,どのような 細 菌 が 変 化 しているかどうかについては 解 析 しておらず, 今 後 さらなる 分 析 を 行 う 必 要 があると 考 える また, 堆 積 物 を 同 じ 4 度 で 保 存 した 場 合 でも,4 度 1と 4 度 2,3では 堆 積 物 の 群 集 構 造 が 大 きく 異 なっていたことが 読 み 取 れた これは, 実 験 1~6において, 同 じ 堆 積 物 試 料 を 同 じ 条 件 下 で 試 験 しても,アントラキノンによる 硫 化 物 の 発 生 抑 制 効 果 が 安 定 して 得 られなかったことの 有 力 な 説 明 になると 考 えられる すなわち, 実 験 開 始 前 には, 堆 積 物 試 料 を 攪 拌 混 合 しているが, 堆 積 物 試 料 間 で 依 然 として 細 菌 群 集 が 不 均 一 に 分 布 しており,アントラキノンの 感 受 性 の 異 なる 細 菌 群 集 も, 試 料 間 で 均 等 に 存 在 してい なかった 可 能 性 が 高 い 以 上 のことから, 細 菌 群 集 構 造 の 違 いがアントラキノンの 硫 化 物 イオン 発 生 抑 制 効 果 に 大 きく 影 響 を 及 ぼしている 可 能 性 が 示 唆 された このことから,アントラキノンを 実 際 に 現 場 の 堆 積 物 で 用 いるためには, 現 場 の 堆 積 物 の SRB 群 集 がどの 程 度 アントラキ ノンに 耐 性 を 持 つかどうかをあらかじめ 調 べる 必 要 があると 考 える また, 堆 積 物 中 の SRB 群 集 に 効 果 があるアントラキノンの 適 切 な 濃 度 を 検 討 することや, 堆 積 物 中 に 生 息 する 水 生 生 物 に 対 する 安 全 性 なども 考 慮 していく 必 要 がある 11

12 実 験 4 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 を 海 水 に 添 加 した 際 のリン 吸 着 効 果 1 方 法 ミリQ 水 もしくは 濾 過 滅 菌 海 水 に 10μMPO4 3- となるようにリン 酸 標 準 液 を 加 えた この 標 準 液 100mlに 対 して, 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 として 市 販 されているピーチャッチ ( 株 式 会 社 クレアテラより 提 供 )をそれぞれ 0mg,40mg,400mg,4000mg 添 加 した 室 温 に 静 置 し, 翌 日 と 翌 々 日 に,GF/Fフィルター(25mmφ)でろ 過 した 試 水 中 のリン 酸 イオン 量 を,リン 酸 イオン 測 定 キット(HACH 社 )を 用 いて,モリブデン 酸 法 により 吸 光 度 665nmを 吸 光 光 度 計 (DR-2800 HACH 社 )で 測 定 した また,リン 酸 を 添 加 しないミ リQ 水,および 3%の 食 塩 水 の 測 定 値 を 用 いてゼロ 校 正 を 行 った 翌 日 (1 日 目 ), 翌 々 日 (2 日 目 )に 測 定 した,リン 酸 を 添 加 したミリ Q 水 内 のリン 酸 イ オン 量 の 変 化 を 図 13,リン 酸 を 加 えた 海 水 内 のリン 酸 イオン 量 の 変 化 を 図 14 に 表 した また,リン 吸 着 材 を 添 加 しなかった(0mg)ときのリン 酸 イオン 量 を 100(%)としたときの 残 存 割 合 の 変 化 を 図 に 表 した これらのグラフの 横 軸 は 試 水 1l 中 に 添 加 したリ ン 吸 着 材 の 量 を 示 している 結 果 図 を 見 ると,リン 吸 着 材 を 0.4~4g/L 加 えたとき,リン 吸 着 材 の 量, 時 間 の 経 過 に 伴 ってミリ Q 水 中 のリン 酸 イオン 量 が 減 少 していた しかし,リン 吸 着 材 を 40g/L 加 えたとき,4g/L 加 えたときと 比 較 して,また 1 日 目 から 2 日 目 にかけてミリ Q 水 中 のリン 酸 イオン 量 は 増 加 していた 図 を 見 ると,1 日 目 はリン 吸 着 材 を 0.4g/L から 40g/L 加 えたとき,リン 吸 着 材 の 量 に 比 例 して 海 水 中 のリン 酸 イオン 量 が 減 少 した しかし,2 日 目 はリン 吸 着 材 を 40g/L 加 えたとき,4g/L 加 えたときと 比 較 して 海 水 中 のリン 酸 イオン 量 が 増 加 した 考 察 図 より,リン 吸 着 材 を 0.4~4g/L 加 えたとき,リン 吸 着 材 の 量, 時 間 の 経 過 に 伴 ってミリ Q 水 中 のリン 酸 イオン 量 が 減 少 していたことから,リン 吸 着 効 果 が 見 ら れたことがわかった しかし,リン 吸 着 材 を 40g/L 加 えたとき,4g/L 加 えたときと 比 較 して,また 1 日 目 から 2 日 目 にかけてミリ Q 水 中 のリン 酸 イオン 量 は 増 加 していた ことから,リン 吸 着 効 果 が 見 られなかった 図 より,1 日 目 はリン 吸 着 材 を 0.4g/L から 40g/L 加 えたとき,リン 吸 着 材 の 量 に 比 例 して 海 水 中 のリン 酸 イオン 量 が 減 少 したことから,リン 吸 着 効 果 が 見 られた しかし,2 日 目 はリン 吸 着 材 を 40g/L 加 えたとき,4g/L 加 えたときと 比 較 して 海 水 中 12

13 のリン 酸 イオン 量 が 増 加 したことから,リン 吸 着 効 果 が 見 られなかった 以 上 のことから,ミリ Q 水 もしくは 海 水 に 添 加 するリン 吸 着 材 の 適 切 な 濃 度 は 0.4~ 4g/L であることがわかった 今 回 は 2 日 間 という 短 期 間 のリン 吸 着 効 果 に 着 目 してお り, 長 期 的 な 変 化 がどのように 起 こっているかについては 検 証 していないため, 添 加 す るリン 吸 着 材 の 適 切 な 量 をさらに 検 証 していく 必 要 があると 考 えられる また,リン 吸 着 材 ミリ Q 水 もしくは 海 水 に 4g/L 以 上 添 加 し 2 日 間 静 置 したところ,リン 吸 着 効 果 が 見 られなかった この 現 象 の 詳 しい 原 因 はわからないが,リン 酸 イオン 量 を 測 定 する 前 にサンプルをフィルターでろ 過 しているものの, 時 間 の 経 過 に 伴 って 微 細 化 したリン 吸 着 材 の 粒 子 がろ 液 に 混 入 した 可 能 性 があると 考 えられる 13

14 実 験 5 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 を 海 水 に 添 加 した 際 のリン 吸 着 効 果 2 方 法 濾 過 滅 菌 海 水 に 10μM PO4 3- となるようにリン 酸 標 準 液 を 加 えた この 標 準 液 100ml に 対 して, 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 として 市 販 されているピーチャッチ ( 株 式 会 社 クレア テラより 提 供 )を 400mg 添 加 した 同 様 の 海 水 を 2 セット 用 意 して, 室 温 に 一 週 間 静 置 し,GF/Fフィルター(25mmφ)でろ 過 した 試 水 中 のリン 酸 イオン 量 を,リン 酸 イオン 測 定 キット(HACH 社 )を 用 いて,モリブデン 酸 法 により 吸 光 度 665nmを 吸 光 光 度 計 (DR-2800 HACH 社 )で 毎 日 測 定 した このときリン 酸 を 添 加 しない 3%の 食 塩 水 の 測 定 値 を 用 いてゼロ 校 正 を 行 った 結 果 図 17 に 示 すように,リン 吸 着 材 4g/Lの 存 在 下 で, 海 水 中 のリン 酸 イオン 量 は 一 週 間 で, 1.9 mg PO4 3- /Lから 0.2mg PO4 3- /Lまで 減 少 し,リンの 除 去 率 は 初 期 濃 度 の 90%に 達 し た リン 酸 イオンの 減 少 率 は,0 日 目 から 1 日 目 までがもっとも 大 きく, 初 期 値 のおよ そ 1/2 となった 考 察 本 実 験 により, 静 置 した 海 水 中 でも 火 山 灰 土 型 吸 着 材 の 施 用 によって 1 週 間 で 溶 存 リン の 9 割 を 除 去 できることが 示 された これは, 淡 水 環 境 において 同 吸 着 剤 が 示 すリン 除 去 能 力 ( 柳 田 ら, 1998)と 同 等 であった 実 験 4では,2 日 間 という 短 期 間 のリン 除 去 効 果 を 確 認 したが, 本 実 験 の 結 果 により, 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 を 長 期 間 施 用 すること によって,より 効 率 的 にリンを 除 去 できることが 示 された 14

15 総 括 本 研 究 により, 室 内 実 験 の 条 件 下 ではあるが,1.9-アントラキノンもしくは 1.8-ジヒド ロキシアントラキノンを 10μM という 極 低 濃 度 添 加 することによって 沿 岸 堆 積 物 から 硫 化 物 発 生 が 抑 制 されることを 確 認 した.また, 近 年 開 発 された 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 (ピーキャッチ,クレアテラ( 株 ))による 海 水 の 溶 存 リン 除 去 効 果 も 確 認 できた. したがって,これらの 化 学 的 手 法 は 原 理 的 に 有 明 海 の 底 質 環 境 の 保 全 に 実 施 できると 考 えられる.しかし, 実 際 に 現 場 で 使 用 するためには,まだ 多 くの 課 題 を 検 討 する 必 要 が ある. 特 にアントラキノンについては, 堆 積 物 の 硫 酸 還 元 細 菌 群 集 がアントラキノンに 対 して 感 受 性 を 示 すかどうかを 調 べる 必 要 がある.アントラキノン 自 体 は 食 品 にも 含 ま れる 化 合 物 であり, 元 来 毒 性 は 低 いと 考 えられるが,μM オーダーという 低 濃 度 であ っても, 添 加 した 際 の 水 生 生 物 に 対 する 安 全 性 は, 今 後 詳 細 に 検 討 する 必 要 がある. 火 山 灰 土 型 リン 吸 着 材 については, 施 用 する 海 域 や 立 地 などを 考 慮 して,リン 除 去 の 効 果 が 現 れるリン 吸 着 材 の 最 適 な 量 や, 添 加 する 期 間, 通 水 方 法 などを 検 討 していく 必 要 が ある. 15

16 引 用 文 献 寺 澤 克 夫, 沼 田 繁 明 1999.アントラキノン 製 剤 による 硫 化 水 素 発 生 の 抑 制 機 構 と 抑 制 効 果. 月 刊 下 水 道 Vol.22 No.6,70-75 柳 田 友 隆, 江 耀 宗, 佐 藤 正 路, 安 達 栄 一, 原 田 昭 勇,1998. リン 酸 除 去 材 による 河 川 水 の 水 質 浄 化. 環 境 技 術,Vol.27. No.3, pp , 堀 越 弘 毅,2006.ベーシックマスター 微 生 物 学 (オーム 社 ) pp 江 耀 宗, 柳 田 友 隆, 三 谷 知 世,2005.カラム 実 験 を 用 いた 硫 酸 第 一 鉄 混 合 加 熱 処 理 火 山 灰 土 壌 による 水 中 のリン 除 去. 水 環 境 学 会 誌 Vol.28, No.5,pp 齋 藤 朝 美, 池 田 成 志, 則 武 ちあき, 赤 坂 真 理 子, 藤 城 圭 輔, 安 藤 勝 彦, 南 澤 究, 2007.RISA 法 による 微 生 物 多 様 性 評 価. 日 本 微 生 物 生 態 学 会 誌 Vol.22,59-71 石 井 浩 介 中 川 達 功 福 井 学 微 生 物 生 態 学 への 変 性 剤 濃 度 勾 配 ゲル 電 気 泳 動 法 の 応 用. 日 本 微 生 物 生 態 学 会 誌 Vol.15, No.1, pp

17 図 表 表 1. 実 験 で 用 いた 泥 と 薬 品 の 種 類 薬 品 泥 イトゴカイ 飼 育 泥 干 潟 表 層 堆 積 物 サルフコントロール 実 験 1 1.9アントラキノン 実 験 2 実 験 ジヒドロキシ- アントラキノン 実 験 3 実 験 5, 実 験 6 17

18 図 1. 干 潟 表 層 堆 積 物 の 採 取 地 点 18

19 図 2. 実 験 に 使 用 したアントラキノン 製 剤 ( 左 上 )1.9 アントラキノン( 右 ),1.8-ジヒドロキシ-アントラキノン( 左 ) ( 右 上 )サルフコントロール ( 左 下 )1.9 アントラキノンと 化 学 式 ( 右 下 )1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンと 化 学 式 19

20 S 2- 量 (mg/g) 測 定 日 数 図 3. 実 験 1におけるイトゴカイ 飼 育 泥 中 のS 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) 試 験 区 にはサルフコントロールを 添 加 した 試 験 区 対 照 区 20

21 S 2- 量 (mg/g) 測 定 日 数 試 験 区 対 照 区 図 4. 実 験 2におけるイトゴカイ 飼 育 泥 中 のS 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) 試 験 区 には1.9-アントラキノンを 添 加 した 21

22 S 2- 量 (mg/g) 試 験 区 対 照 区 測 定 日 数 図 5. 実 験 3におけるイトゴカイ 飼 育 泥 中 のS 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) 試 験 区 には1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 した 22

23 S 2- 量 (mg/g) 測 定 日 数 図.6-1 実 験 4における 干 潟 表 層 堆 積 物 中 のS 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) S 2- 量 (mg/g) 測 定 日 数 試 験 区 対 照 区 図 6-2. 実 験 4における 干 潟 表 層 堆 積 物 中 のS 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) 試 験 区 には1.9-アントラキノンを 添 加 した 23

24 S 2- 量 (mg/g) 測 定 日 数 試 験 区 対 照 区 図 7-1. 実 験 5における 干 潟 表 層 堆 積 物 のS 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) 試 験 区 には1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 した 堆 積 物 試 料 はマイナス20 度 から 解 凍 して 直 ちに 使 用 した S 2- (mg/g) 測 定 日 数 試 験 区 対 照 区 図 7-2. 実 験 5における 干 潟 表 層 堆 積 物 S 2- 量 の 変 化 エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=3) 試 験 区 には1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 した 堆 積 物 試 料 はマイナス20 度 から 解 凍 後 4 度 で 保 存 したものを 用 いた 24

25 S 2- 量 (mg/g) 日 目 2 日 目 2 日 目 無 添 加 区 試 験 区 対 照 区 sample 図 8. 実 験 6における 干 潟 表 層 堆 積 物 中 のS 2- 量 の 変 化 ( 無 試 験 区 は0 日 目 試 験 区 対 照 区 は2 日 目 に 測 定 した) エラーバーは 標 準 偏 差 を 表 している (n=5) 試 験 区 には1.8-ジヒドロキシ-アントラキノンを 添 加 した 25

26 12 10 非 類 似 度 シャットネラ アンティカ 対 照 区 対 照 区 試 験 区 試 験 区 1 日 目 0 日 目 0 日 目 1 日 目 図 9.アントラキノンの 添 加 の 有 無 による 細 菌 群 集 構 造 の 変 化 試 験 区 には1.9-アントラキノンを 添 加 した シャットネラアンティカ 培 養 液 中 の 細 菌 群 集 をアウトグループとして 各 試 料 間 のRISAフラグメントパターンから 非 類 似 度 を 求 めた 非 類 似 度 シャットネラ アンティカ 対 照 区 試 験 区 試 験 区 対 照 区 1 日 目 1 日 目 0 日 目 0 日 目 図 10.アントラキノンの 添 加 の 有 無 による 細 菌 群 集 構 造 の 解 析 (DNA 抽 出 の 際 に 堆 積 物 試 料 にTris-HClを 添 加 して 中 和 した) 試 験 区 には1.9-アントラキノンを 添 加 した シャットネラアンティカ 培 養 液 中 の 細 菌 群 集 をアウトグループとして 各 試 料 間 のRISAフラグメントパターンから 非 類 似 度 を 求 めた 26

27 大 村 湾 バンドパターン 4 度 で 一 週 間 保 存 マイナス 20 度 で 一 週 間 保 存 室 温 (20~23 度 )で 一 週 間 保 存 0 日 目 図 11.DGGE より 得 られたバンドパターン 番 号 1~ 26 の 矢 印 ( )を 付 けたバンドのパターンに 基 づいて 微 生 物 群 集 構 造 の 解 析 を 行 った( 図 12 参 照 ) 27

28 非 類 似 度 大 村 湾 図 12. 堆 積 物 の 保 存 方 法 ( 温 度 )による 細 菌 群 集 構 造 の 変 化 大 村 湾 の 表 層 堆 積 物 をアウトグループとして 各 堆 積 物 試 料 間 のDGGEバンドパターン( 図 11 参 照 )の 非 類 似 度 を 表 示 した 4 度 で 一 週 間 保 存 マイナス 20 度 で 一 週 間 保 存 室 温 (20~23 度 )で 一 週 間 保 存 0 日 目 28

29 PO 3-4 (mg/l) 日 目 2 日 目 リン 吸 着 材 (mg/l) 図 13.ミリQ 水 にリン 吸 着 材 を 添 加 したときのPO 4 3- 量 の 変 化 PO 3-4 (mg/l) 日 目 2 日 目 リン 吸 着 材 (g/l) 図 14. 海 水 にリン 吸 着 材 を 添 加 したときのPO 4 3- 量 の 変 化 29

30 PO 3-4 の 残 存 割 合 (%) 日 目 2 日 目 リン 吸 着 材 (g/l) PO 4 3- の 残 存 割 合 (%) 図 15.リン 吸 着 剤 を 添 加 したミリQ 水 中 のPO 4 3- の 残 存 割 合 の 変 化 日 目 2 日 目 リン 吸 着 材 (g/l) 図 16.リン 吸 着 材 を 添 加 した 海 水 中 のPO 4 3- の 残 存 割 合 の 変 化 30

31 図 17.リン 吸 着 剤 を 4g/L 添 加 した 海 水 中 のPO4 3- 量 の 変 化 31

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