一括譲渡された土地・建物の各譲渡価額の区分について

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1 論 説 一 括 譲 渡 された 土 地 建 物 の 各 譲 渡 価 額 の 区 分 について 広 島 国 税 不 服 審 判 所 所 長 小 島 俊 朗 SUMMARY 一 括 譲 渡 された 土 地 建 物 の 譲 渡 価 格 の 区 分 は 法 人 税 法 所 得 税 法 消 費 税 法 に 共 通 す る 問 題 であるにもかかわらず 時 価 の 算 定 という 技 術 的 に 困 難 な 問 題 に 加 え 法 人 税 所 得 税 の 関 連 する 諸 規 定 の 相 違 などにより その 取 扱 いが 統 一 的 に 理 解 されているとはいい 難 い 特 に 消 費 税 においては その 特 殊 性 に 鑑 み 法 人 税 や 所 得 税 の 扱 いとどのように 関 係 づける べきか 帳 簿 方 式 等 との 関 連 からどの 程 度 の 整 合 性 をとるべきかなど 未 解 明 なところが 多 い 本 稿 は 一 括 譲 渡 された 土 地 建 物 の 各 譲 渡 価 格 の 代 表 的 な 算 定 方 法 である 直 説 法 差 引 法 ( 土 地 先 取 法 建 物 先 取 法 ) 按 分 法 の 優 劣 や 合 理 性 につき 裁 判 事 例 裁 決 事 例 の 紹 介 を 交 えつつ 比 較 検 討 を 行 うとともに 合 理 的 な 区 分 方 法 の 統 一 的 な 解 釈 にも 焦 点 を 当 てながら 考 察 を 加 えたものである ( 税 大 ジャーナル 編 集 部 ) 51

2 目 次 はじめに 52 1 課 税 上 の 扱 い 52 ⑴ 譲 渡 価 額 の 区 分 と 税 負 担 52 ⑵ 法 人 税 法 所 得 税 法 における 扱 い 53 ⑶ 消 費 税 法 における 扱 い 54 2 判 決 裁 決 の 事 例 における 算 定 方 法 54 3 検 討 58 ⑴ 各 区 分 方 法 の 合 理 性 58 ⑵ 契 約 上 の 区 分 が 合 理 的 か 否 かの 判 断 62 ⑶ 按 分 法 の 優 位 性 63 ⑷ 消 費 税 の 特 殊 性 と 合 理 的 な 区 分 63 4 要 旨 67 おわりに 69 はじめに 土 地 と 建 物 の 対 価 が 区 分 されずに 一 括 して 譲 渡 された 場 合 税 務 上 土 地 と 建 物 の 各 譲 渡 価 額 を 算 定 する 必 要 が 生 じるが 法 人 税 法 や 所 得 税 法 はその 算 定 方 法 につき 何 ら 定 めて はいない (1) 算 定 の 方 法 は 大 別 して 直 接 法 差 引 法 按 分 法 がある 直 接 法 は 売 買 実 例 や 建 築 費 を 基 に 土 地 又 は 建 物 の 譲 渡 価 額 を 直 接 に 算 出 する 方 法 であり 差 引 法 は 土 地 又 は 建 物 の 一 方 の 価 額 を 算 出 して 代 金 総 額 から 差 し 引 くことにより 他 方 の 譲 渡 価 額 を 把 握 する 方 法 であり また 按 分 法 は 何 らかの 方 法 に より 算 出 した 土 地 と 建 物 の 価 額 比 により 代 金 総 額 を 按 分 して 各 譲 渡 価 額 を 算 出 する 方 法 で ある なお 差 引 法 には 土 地 の 価 額 を 先 に 算 出 して 差 引 により 建 物 の 価 額 を 算 出 する 方 法 ( 以 下 土 地 先 取 法 という )と 建 物 の 価 額 を 先 に 算 出 して 差 引 により 土 地 の 価 額 を 算 出 する 方 法 ( 以 下 建 物 先 取 法 という ) がある (2) しかし 判 決 裁 決 においても 実 務 上 も これらの 方 法 が 状 況 に 応 じて 取 捨 選 択 されており 必 ずしも 特 定 の 方 法 に 統 一 さ れているというわけではない 土 地 と 建 物 を 一 括 譲 渡 する 事 例 は 少 なくないが 取 得 価 額 の 算 定 方 法 を 巡 って 今 後 も 争 いが 生 じること が 予 想 されることから その 方 法 の 優 劣 や 合 理 性 を 検 討 しておくことは 有 益 であると 思 わ れる また 消 費 税 においても 土 地 の 譲 渡 は 非 課 税 取 引 建 物 の 譲 渡 は 課 税 取 引 である ことから 同 様 に 区 分 の 問 題 が 生 じるが 消 費 税 法 は 課 税 標 準 の 計 算 において それらの 譲 渡 価 額 が 合 理 的 に 区 分 されていないときは 時 価 比 による 按 分 法 で 区 分 する 旨 を 規 定 して いる 区 分 の 方 法 考 え 方 について 法 人 税 法 又 は 所 得 税 法 と 消 費 税 法 との 間 に 解 釈 の 差 があるのかも 興 味 深 い なお 意 見 にわたる 部 分 は 筆 者 の 個 人 的 見 解 である 1 課 税 上 の 扱 い ⑴ 譲 渡 価 額 の 区 分 と 税 負 担 買 手 が 法 人 又 は 個 人 事 業 者 の 場 合 土 地 は 非 減 価 償 却 資 産 であるが 建 物 やその 付 属 設 備 は 減 価 償 却 資 産 であることから 減 価 償 却 費 の 算 定 において これらの 取 得 価 額 を 区 分 す る 必 要 がある また 土 地 や 建 物 の 取 得 価 額 には 仲 介 手 数 料 登 記 費 用 等 の 諸 経 費 や 購 入 のための 借 入 れに 係 る 負 債 利 子 が 含 まれ ることから 土 地 と 建 物 の 取 得 価 額 の 区 分 は それら 経 費 等 の 各 取 得 価 額 への 算 入 ( 所 令 第 126 条 第 1 項 1 号 法 令 第 54 条 第 1 項 1 号 ) 52

3 や 土 地 を 取 得 するために 要 した 負 債 ( 不 動 産 所 得 に 係 る 損 益 通 算 の 特 例 : 措 置 法 第 41 条 の 4 第 1 項 )の 計 算 にも 影 響 を 及 ぼすことに なる 一 方 売 手 においても 土 地 の 譲 渡 が ある 場 合 の 特 別 税 率 ( 以 下 土 地 重 課 とい う )の 適 用 があること( 現 在 適 用 は 停 止 さ れている )や 個 人 の 譲 渡 所 得 の 計 算 に 当 た り 長 期 と 短 期 で 税 率 が 異 なることなど 土 地 と 建 物 とで 課 税 上 の 扱 いが 異 なることがあ る このため 売 手 も 買 手 も 共 に 合 理 的 にそ れぞれの 譲 渡 価 額 を 算 定 する 必 要 が 生 じる また 土 地 建 物 が 一 括 譲 渡 された 場 合 建 物 は 消 費 税 法 上 の 課 税 資 産 であるから そ の 譲 渡 の 対 価 に 消 費 税 が 課 される このため 一 括 譲 渡 においては 土 地 と 建 物 の 各 価 額 を 区 分 して 消 費 税 額 を 明 記 するのが 通 例 である が (3) 明 記 されていないときあるいは 合 理 的 に 区 分 されていないときには それらを 合 理 的 に 区 分 する 必 要 が 生 じる 法 人 又 は 個 人 事 業 者 である 買 手 は 建 物 の 取 得 価 額 が 高 いほど 減 価 償 却 費 を 多 く 計 上 で き 法 人 税 又 は 所 得 税 の 課 税 上 有 利 となる また 売 手 も 土 地 重 課 制 度 が 適 用 される 場 合 は 土 地 の 譲 渡 価 額 が 低 いほど( 建 物 の 譲 渡 価 額 が 高 いほど) 課 税 上 有 利 となる 一 方 消 費 税 については 最 終 消 費 者 が 買 手 の 場 合 価 格 転 嫁 ができないので 建 物 価 額 の 圧 縮 が 税 負 担 の 軽 減 に 直 結 することとなる したが って 最 終 消 費 者 である 買 手 は 課 税 資 産 で ある 建 物 の 取 得 価 額 が 低 いほど 課 税 上 有 利 と なるが 事 業 者 である 売 手 も 消 費 税 の 減 少 分 だけ 譲 渡 価 格 を 低 下 させたと 同 様 の 結 果 とな り 売 却 上 有 利 となる このように 取 得 価 額 の 区 分 は 土 地 又 は 建 物 が 単 独 で 譲 渡 され る 場 合 と 異 なり 必 ずしも 取 引 当 事 者 の 利 害 が 対 立 することにならないことから 一 括 譲 渡 の 当 事 者 が 対 価 の 額 を 土 地 と 建 物 に 区 分 す るに 際 し これらの 税 負 担 の 相 違 を 考 慮 して 一 方 又 は 双 方 の 有 利 に 区 分 を 行 うことが 想 定 される このため 取 引 の 当 事 者 が 通 謀 して あるいは 独 自 に 恣 意 的 な 区 分 により 売 買 契 約 書 の 作 成 や 税 務 申 告 を 行 う 場 合 には これ を 合 理 的 な 区 分 に 是 正 して 租 税 法 を 適 用 する 必 要 が 生 じる ⑵ 法 人 税 法 所 得 税 法 における 扱 い 法 人 税 法 施 行 令 第 54 条 第 1 項 1 号 ( 減 価 償 却 資 産 の 取 得 価 額 )は 購 入 した 減 価 償 却 資 産 の 取 得 価 額 は 当 該 資 産 の 購 入 の 代 価 ( 引 取 運 賃 荷 役 費 運 送 保 険 料 購 入 手 数 料 その 他 当 該 資 産 の 購 入 のために 要 した 費 用 が ある 場 合 には その 費 用 の 額 を 加 算 した 金 額 ) と 当 該 資 産 を 事 業 の 用 に 供 するために 直 接 要 した 費 用 の 額 の 合 計 額 としているだけで 取 得 価 額 の 算 定 方 法 を 特 に 規 定 していない 一 方 土 地 重 課 制 度 に 係 る 措 置 法 通 達 62 の 3 (2)-3 は 譲 渡 側 の 取 扱 いとして 法 人 が 建 物 及 び 土 地 を 同 時 に 譲 渡 した 場 合 において 当 該 土 地 の 譲 渡 対 価 の 額 が 次 によるなど 合 理 的 に 算 定 されており かつ 当 該 譲 渡 に 係 る 契 約 書 において 明 らかにされているときは これを 認 める 旨 を 定 めている( 以 下 この 扱 いを 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 い という ) (イ) 建 物 の 譲 渡 対 価 の 額 として 相 当 と 認 め られる 価 額 を 建 物 及 び 土 地 等 の 譲 渡 対 価 の 額 の 合 計 額 から 控 除 した 金 額 を 土 地 等 の 譲 渡 対 価 の 額 としていること なお そ の 注 書 きで 建 物 の 建 設 費 の 額 又 は 購 入 価 額 ( 当 該 建 物 の 建 築 又 は 購 入 後 に 要 した 施 設 費 その 他 の 付 随 費 用 の 額 を 含 む )に 通 常 の 利 益 の 額 を 加 算 した 金 額 を 建 物 の 譲 渡 対 価 の 額 としているときは 相 当 と 認 め られる 価 額 としている (ロ) 土 地 等 の 譲 渡 対 価 の 額 として 相 当 と 認 められる 価 額 を 土 地 等 の 譲 渡 対 価 の 額 と していること ただし 建 物 及 び 土 地 等 の 譲 渡 対 価 の 額 の 合 計 額 から 当 該 土 地 等 の 譲 渡 対 価 の 額 を 控 除 した 金 額 が 建 物 の 譲 渡 対 価 の 額 として 相 当 と 認 められる 場 合 に 限 る なお この 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いは 53

4 譲 渡 側 の 土 地 の 譲 渡 価 額 の 算 定 に 係 るもので あるが 同 時 に 一 括 譲 渡 による 建 物 の 譲 渡 価 額 も 決 定 することになることから 譲 受 側 に おける 減 価 償 却 費 の 計 算 の 基 礎 となる 建 物 の 取 得 価 額 の 算 定 においても 同 様 に 妥 当 する と 考 えられる ⑶ 消 費 税 法 における 扱 い 消 費 税 法 施 行 令 第 45 条 第 3 項 ( 課 税 資 産 の 譲 渡 等 に 係 る 消 費 税 の 課 税 標 準 の 額 )は 事 業 者 が 課 税 資 産 と 非 課 税 資 産 とを 同 一 の 者 に 対 して 同 時 に 譲 渡 した 場 合 において これ らの 資 産 の 譲 渡 の 対 価 の 額 が 課 税 資 産 の 譲 渡 の 対 価 の 額 と 非 課 税 資 産 の 譲 渡 の 対 価 の 額 と に 合 理 的 に 区 分 されていないときは 当 該 課 税 資 産 の 譲 渡 等 に 係 る 消 費 税 の 課 税 標 準 は これらの 資 産 の 譲 渡 の 対 価 の 額 に これらの 資 産 の 譲 渡 の 時 における 当 該 課 税 資 産 の 価 額 と 当 該 非 課 税 資 産 の 価 額 との 合 計 額 のうちに 当 該 課 税 資 産 の 価 額 の 占 める 割 合 を 乗 じて 計 算 した 金 額 とするとしている ここで 当 該 課 税 資 産 の 価 額 及 び 当 該 非 課 税 資 産 の 価 額 と は それぞれの 譲 渡 に 係 る 通 常 の 取 引 価 額 ( 時 価 )をいう また 消 費 税 法 基 本 通 達 及 び は 譲 渡 側 と 譲 受 側 のそれ ぞれの 扱 いとして 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いにより 土 地 及 び 建 物 の 対 価 の 額 を 区 分 して いるときは その 区 分 したところによる 旨 定 めている 2 判 決 裁 決 の 事 例 における 算 定 方 法 一 括 して 譲 渡 された 土 地 建 物 につき 法 人 税 又 は 所 得 税 に 関 し 土 地 建 物 の 譲 渡 価 額 の 区 分 が 争 われた 事 例 として 福 岡 地 裁 平 成 13 年 12 月 14 日 判 決 那 覇 地 裁 平 成 16 年 9 月 21 日 判 決 など (4) がある 福 岡 地 裁 平 成 13 年 12 月 14 日 判 決 の 事 件 は 売 買 契 約 書 において 譲 渡 価 額 の 区 分 がされていなかった ため 被 告 税 務 署 長 が 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 による 按 分 法 ( 建 物 本 体 とその 付 属 設 備 の 区 分 については 工 事 原 価 比 による 按 分 法 )によ り 更 正 処 分 を 行 ったものである また 那 覇 地 裁 平 成 16 年 9 月 21 日 判 決 の 事 件 は 売 買 契 約 書 において 譲 渡 価 額 の 区 分 がされていた ものの その 区 分 によると 建 物 の 価 額 が 著 し く 高 額 であり 適 正 な 時 価 を 反 映 していない として 被 告 税 務 署 長 が 建 設 省 ( 当 時 ) 編 集 の 建 築 統 計 年 報 (5) に 基 づいて 算 出 した 建 物 価 額 を 控 除 する 差 引 法 により 更 正 処 分 を 行 ったものである 判 決 は いずれも 被 告 の 行 った 区 分 を 合 理 的 な 算 定 方 法 と 認 めて 原 告 の 訴 えを 棄 却 している 裁 決 事 例 ( 過 去 30 年 分 )においては 土 地 重 課 に 関 しての 争 いが 多 いが 国 税 不 服 審 判 所 が 採 用 した 算 定 方 法 により 分 類 すると 次 のようになる 直 接 法 : 平 成 10 年 2 月 19 日 ( 契 約 書 記 載 金 額 ) 昭 和 57 年 7 月 28 日 ( 近 傍 類 似 土 地 の 売 買 実 例 ) 昭 和 56 年 3 月 31 日 ( 契 約 書 記 載 金 額 等 ) 昭 和 56 年 2 月 16 日 ( 契 約 書 等 ) 建 物 先 取 法 : 平 成 14 年 1 月 28 日 (*) 平 成 8 年 4 月 10 日 ( 契 約 書 の 消 費 税 額 から 逆 算 ) 平 成 2 年 6 月 22 日 ( 標 準 建 築 費 指 数 ) 平 成 2 年 6 月 19 日 ( 標 準 建 築 費 指 数 ) 昭 和 59 年 2 月 22 日 ( 単 位 当 り 工 事 予 定 額 ) 昭 和 59 年 2 月 16 日 昭 和 53 年 9 月 5 日 (*) 土 地 先 取 法 :なし 按 分 法 : 平 成 13 年 3 月 21 日 (* 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 ) 平 成 12 年 7 月 3 日 (* 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 ) 平 成 10 年 10 月 30 日 ( 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 ) 平 成 4 年 7 月 10 日 ( 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 ) 平 成 4 年 6 月 22 日 ( 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 ) 平 成 2 年 6 月 26 54

5 日 ( 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 ) 平 成 2 年 2 月 14 日 ( 原 価 比 ) 昭 和 61 年 12 月 4 日 (* 譲 渡 時 の 時 価 比 ) 昭 和 61 年 10 月 23 日 ( 原 価 比 ) 昭 和 61 年 6 月 24 日 ( 譲 渡 時 の 時 価 比 ) 昭 和 61 年 4 月 30 日 (* 譲 渡 時 の 時 価 比 ) 昭 和 60 年 12 月 4 日 (* 譲 渡 時 の 時 価 比 ) 昭 和 60 年 6 月 24 日 ( 譲 渡 時 の 時 価 比 ) 昭 和 59 年 6 月 22 日 (* 譲 渡 時 の 時 価 比 ) 昭 和 59 年 2 月 22 日 ( 原 価 比 ) 昭 和 57 年 8 月 2 日 (* 原 価 比 ) 昭 和 59 年 7 月 15 日 ( 相 続 税 評 価 額 の 比 ) 昭 和 57 年 4 月 28 日 (* 不 動 産 鑑 定 評 価 額 の 比 ) 昭 和 54 年 9 月 28 日 (* 原 価 比 ) 昭 和 54 年 4 月 16 日 ( 原 価 比 ) 昭 和 53 年 12 月 12 日 ( 譲 渡 対 価 の 比 ) 昭 和 53 年 9 月 5 日 ( 相 続 税 評 価 額 の 比 ) 昭 和 53 年 6 月 30 日 (* 相 続 税 評 価 額 の 比 ) 昭 和 53 年 5 月 26 日 (* 原 価 比 ) そ の 他 : 平 成 9 年 7 月 2 日 ( 建 物 価 額 零 ) 平 成 7 年 7 月 6 日 ( 建 物 価 額 零 ) 平 成 7 年 4 月 27 日 ( 建 物 価 額 零 ) ( 注 ) 裁 決 の 日 付 のみを 記 載 している また 括 弧 内 は 算 定 の 基 礎 となる 係 数 等 を 簡 記 し ている * 印 は 土 地 重 課 以 外 の 事 件 であ ることを 示 す 裁 決 事 例 は 土 地 のいわゆるバブル 期 及 びそ れ 以 前 に 多 発 し 逆 に 平 成 4 年 以 降 はほと んどなくなっている これは バブル 期 に 土 地 の 公 的 評 価 額 が 実 態 に 合 わなくなっていた (すなわち 土 地 の 評 価 を 行 う 場 合 直 接 法 によると 土 地 の 評 価 額 が 著 しく 低 くなり ま た 建 物 の 評 価 を 行 う 場 合 土 地 先 取 法 によ ると 建 物 の 価 額 が 著 しく 高 くなる )がその 後 是 正 されてきたこと 一 方 平 成 元 年 の 消 費 税 の 導 入 以 降 は 契 約 書 に 消 費 税 額 を 明 示 する ことが 通 例 となった(すなわち 建 物 の 譲 渡 価 額 が 逆 算 できるため 契 約 書 により 区 分 がで きないケースが 減 少 した )こと 土 地 重 課 税 制 度 の 適 用 が 平 成 10 年 1 月 1 日 から 停 止 さ れていることなどによるものと 考 えられる 次 に 消 費 税 に 関 し 土 地 建 物 の 譲 渡 価 額 の 区 分 が 争 われた 事 例 として 1 平 成 13 年 10 月 24 日 裁 決 2 平 成 18 年 6 月 15 日 裁 決 及 び3 平 成 20 年 5 月 8 日 裁 決 などが ある 1の 事 例 は 課 税 標 準 の 計 算 方 法 を また 23の 事 例 は 仕 入 税 額 控 除 の 適 用 を 争 うものであるが いずれも 審 査 請 求 人 ( 以 下 請 求 人 という )が 契 約 書 記 載 の 消 費 税 額 によらず 独 自 の 区 分 により 計 算 して 申 告 し 更 正 処 分 を 受 けたものである いずれの 裁 決 も 契 約 書 記 載 の 建 物 の 価 額 又 は 消 費 税 額 から 逆 算 ( 直 接 法 の 一 つである 以 下 逆 算 法 という )してもとめた 建 物 の 価 額 によ るべきであるとして 審 査 請 求 を 棄 却 している これらの 判 決 又 は 裁 決 事 例 のうち 福 岡 地 裁 平 成 13 年 12 月 14 日 判 決 ( 以 下 本 件 福 岡 地 裁 判 決 という )は 課 税 庁 の 主 張 に 沿 っ たものではあるが 土 地 と 建 物 の 取 得 価 額 の 区 分 につき 比 較 的 詳 細 に 判 断 している こ の 事 例 は 給 与 所 得 者 である 原 告 が 平 成 6 年 に 区 分 所 有 建 物 ( 以 下 土 地 部 分 を 含 めて 物 件 1 及 び 物 件 2 という )を 購 入 し 賃 貸 により 賃 料 収 入 を 得 て 不 動 産 所 得 に 多 額 の 損 失 があるとして 給 与 所 得 との 損 益 通 算 を 行 い 所 得 税 の 還 付 申 告 をしたところ 被 告 税 務 署 長 が 更 正 処 分 等 を 行 ったことから これ を 不 服 として 提 訴 したものである 本 件 区 分 所 有 建 物 の 売 買 契 約 書 には 土 地 建 物 及 び その 付 属 設 備 についてそれぞれの 販 売 価 額 及 び 消 費 税 額 の 記 載 がなく 原 告 は 本 件 区 分 所 有 建 物 の 減 価 償 却 費 の 計 算 に 当 たり 土 地 先 55

6 取 法 により 建 物 の 取 得 価 額 を 算 定 して 申 告 を 行 ったが 被 告 は 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 によ る 按 分 法 によりその 価 額 を 算 定 して 更 正 処 分 を 行 ったものである なお 売 主 においては 物 件 1 については 販 売 価 額 を 区 分 経 理 してい なかったが 物 件 2については 販 売 価 額 を 区 分 経 理 しており その 区 分 経 理 につき 特 段 不 合 理 というべき 事 情 が 認 められないという 点 では 原 告 と 被 告 との 間 に 争 いがない 本 件 福 岡 地 裁 判 決 は 算 定 方 式 を 直 接 法 差 引 法 按 分 法 に 分 け 概 略 以 下 のように 指 摘 している ⑴ 直 接 法 直 接 法 は 土 地 又 は 建 物 の 取 得 価 額 を 直 接 に 算 出 する 方 法 である 建 物 の 価 額 を 算 出 する 方 法 としては 売 主 の 帳 簿 等 に 記 載 され た 販 売 価 額 売 主 が 発 行 する 家 屋 の 譲 渡 対 価 証 明 書 の 価 額 消 費 税 額 から 逆 算 した 価 額 新 築 時 の 工 事 原 価 固 定 資 産 税 評 価 額 及 び 相 続 税 評 価 額 などを 用 いることが 考 えられるが それぞれ 次 のように 判 断 される 1 新 築 時 の 工 事 原 価 を 基 礎 とすると 建 物 が 中 古 資 産 の 場 合 損 耗 による 補 正 や 物 価 変 動 による 時 点 修 正 の 必 要 があり その 算 定 は 困 難 である 2 固 定 資 産 税 評 価 額 は 売 主 の 利 益 が 考 慮 されていないため 取 得 価 額 が 過 少 になる おそれがある 3 売 主 の 帳 簿 等 に 記 載 された 販 売 価 額 売 主 が 発 行 する 家 屋 の 譲 渡 対 価 証 明 書 の 価 額 消 費 税 額 から 逆 算 した 価 額 は 本 件 におい ては 記 載 等 の 事 実 がないので 利 用 できない 以 上 から 直 接 法 を 用 いることは 実 質 主 義 に 合 致 せず 合 理 性 を 欠 く ⑵ 差 引 法 差 引 法 は 土 地 又 は 建 物 の 価 額 を 算 出 して 代 金 総 額 から 差 し 引 き 残 額 を 建 物 又 は 土 地 の 価 額 とするものである 建 物 の 価 額 を 算 定 するための 土 地 の 価 額 については その 算 定 の 方 法 として 固 定 資 産 税 評 価 額 相 続 税 評 価 額 公 示 価 格 近 隣 地 の 売 買 実 例 価 額 専 門 家 の 鑑 定 評 価 額 などを 用 いることが 考 えら れるが それぞれ 次 のように 判 断 される 1 固 定 資 産 税 評 価 額 相 続 税 評 価 額 には 土 地 の 価 額 に 売 主 の 適 正 な 利 益 及 び 販 売 手 数 料 等 の 諸 経 費 が 考 慮 されていないため 差 引 法 における 土 地 の 価 額 として 採 用 する と 建 物 の 取 得 価 額 にこれらが 転 嫁 されるこ とになり 建 物 の 取 得 価 額 が 高 額 になりす ぎる 2 近 隣 地 の 売 買 実 例 価 額 専 門 家 の 鑑 定 評 価 額 を 用 いることは 一 応 の 合 理 性 は 認 め られるが その 算 出 に 多 大 な 時 間 と 費 用 が かかることが 予 想 され 納 税 者 の 公 平 納 税 者 の 便 宜 及 び 徴 税 費 用 の 点 から 見 て 合 理 的 といえない 3 公 示 価 格 は 一 般 に 土 地 取 引 の 指 標 とさ れるものであり 一 応 の 合 理 性 を 有 するが いわゆる 売 り 急 ぎや 買 い 進 みといった 個 別 の 取 引 事 情 まで 反 映 することはできない 点 で 限 界 がある 以 上 から 差 引 法 は 土 地 および 建 物 原 価 を 超 える 売 主 の 利 益 測 量 費 及 び 手 数 料 等 を すべて 建 物 の 取 得 価 額 として 計 上 する 点 にお いて 不 合 理 である ⑶ 按 分 法 按 分 法 は 何 らかの 方 法 により 算 出 した 土 地 と 建 物 の 価 額 比 により 代 金 総 額 を 按 分 して 算 出 する 方 法 である 按 分 法 は 売 主 が 土 地 の 仕 入 価 額 及 び 建 物 新 築 工 事 原 価 の 合 計 額 に 利 益 を 上 乗 せした 価 額 で 販 売 する 場 合 土 地 と 建 物 の 双 方 に 利 益 が 反 映 されることになり 土 地 と 建 物 を 一 体 として 販 売 する 取 引 の 実 態 に 合 致 し 最 も 合 理 的 である 価 額 比 の 基 礎 となる 土 地 及 び 建 物 の 価 額 に ついては 当 該 物 件 の 過 去 の 売 買 において 区 分 されていた 土 地 及 び 建 物 の 各 価 額 土 地 の 仕 入 価 額 と 建 物 の 新 築 価 額 土 地 及 び 建 物 の 販 売 価 額 が 区 分 されている 類 似 物 件 の 売 買 実 例 価 額 土 地 及 び 建 物 の 各 鑑 定 評 価 額 売 主 56

7 の 帳 簿 等 に 記 載 された 土 地 及 び 建 物 の 各 販 売 価 額 土 地 及 び 建 物 の 各 固 定 資 産 税 評 価 額 土 地 及 び 建 物 の 各 相 続 税 評 価 額 などが 考 えら れるが それぞれ 次 のように 判 断 される 1 当 該 物 件 の 過 去 の 売 買 において 区 分 され ていた 土 地 及 び 建 物 の 価 額 による 方 法 は 中 古 物 件 の 場 合 に 限 られる 上 過 去 の 売 買 時 から 取 得 時 までの 間 に 生 じる 建 物 の 損 耗 や 年 度 ごとに 変 動 する 公 示 価 格 固 定 資 産 税 評 価 額 及 び 実 勢 価 額 との 差 異 を 補 正 し なければならない 困 難 がある 2 土 地 の 仕 入 価 額 と 建 物 の 新 築 価 額 による 方 法 は 販 売 業 者 が 土 地 を 購 入 してから 建 物 を 建 築 するまでに 期 間 が 経 過 し その 間 に 土 地 価 格 が 変 動 するため これを 補 正 す る 必 要 がある 点 において 困 難 がある 3 土 地 及 び 建 物 の 販 売 価 額 が 区 分 されてい る 類 似 物 件 の 売 買 実 例 価 額 による 方 法 及 び 鑑 定 評 価 による 価 額 による 方 法 は 一 応 の 合 理 性 の 認 められる 方 法 といえるが その 算 出 に 多 大 な 費 用 を 要 するものであり 納 税 者 間 の 公 平 納 税 者 の 便 宜 及 び 徴 税 費 用 の 節 減 の 観 点 から 合 理 的 であるといえず 租 税 平 等 主 義 に 反 するというべきである 4 売 主 の 帳 簿 等 に 記 載 された 販 売 価 額 によ る 方 法 は 上 記 12のような 補 正 を 行 う 必 要 がなく 土 地 及 び 建 物 の 販 売 価 額 が 不 合 理 な 価 格 でない 場 合 はそのまま 同 価 額 に 基 づき 価 額 比 を 算 出 できる 利 点 がある 5 土 地 及 び 建 物 の 固 定 資 産 税 評 価 額 による 方 法 は 特 に 中 古 物 件 の 土 地 及 び 建 物 の 価 額 を 把 握 して 按 分 することができること 固 定 資 産 税 評 価 額 は 土 地 の 場 合 は 路 線 価 と 同 様 に 地 価 公 示 価 格 や 売 買 実 例 等 を 基 に 評 価 し 建 物 の 場 合 は 再 建 築 価 額 (6) に 基 づ いて 評 価 されているから 土 地 及 び 建 物 と もに 時 価 を 反 映 していると 考 えられること 土 地 と 建 物 の 算 出 機 関 及 び 算 出 時 期 が 同 一 であるから 土 地 と 建 物 の 固 定 資 産 税 評 価 額 は いずれも 同 一 時 期 の 時 価 を 反 映 して いるものと 考 えられることに 照 らして 合 理 的 な 算 出 方 法 である 6 土 地 及 び 建 物 の 相 続 税 評 価 額 による 方 法 は 相 続 税 評 価 額 は 土 地 は 国 税 局 が 算 出 した 路 線 価 を 建 物 は 地 方 公 共 団 体 が 算 出 した 相 続 税 評 価 額 をそれぞれ 基 礎 としてお り 土 地 と 建 物 とで 算 出 機 関 及 び 算 出 時 期 が 異 なるため 土 地 と 建 物 の 適 切 な 価 額 比 を 導 き 出 すのに 必 ずしも 適 当 とはいえない 以 上 の 三 方 法 を 比 較 した 上 で 本 件 福 岡 地 裁 判 決 は 売 主 の 帳 簿 などから 土 地 及 び 建 物 の 販 売 価 額 が 判 明 する 場 合 は その 価 額 が 不 合 理 でない 限 り 代 金 総 額 を 土 地 及 び 建 物 の 販 売 価 額 比 で 按 分 して 建 物 取 得 価 額 を 算 出 すべきであるが 土 地 及 び 建 物 の 販 売 価 額 が 明 らかでない 場 合 は 同 一 の 公 的 機 関 が 同 一 時 期 に 合 理 的 な 評 価 基 準 で 評 価 した 固 定 資 産 税 評 価 額 による 土 地 及 び 建 物 の 価 額 比 で 按 分 する 方 法 が 最 も 合 理 的 というべき であると した 一 方 原 告 は [1] 区 分 所 有 建 物 の 売 買 で は 土 地 は 敷 地 利 用 権 としての 意 味 合 いしかも たず また 区 分 所 有 建 物 の 価 額 の 高 低 はそ の 専 有 部 分 の 価 額 に 起 因 しているところ 建 物 の 専 有 部 分 の 床 面 積 が 同 じであって 土 地 の 共 有 部 分 の 割 合 も 同 一 であるにもかかわらず 土 地 の 共 有 部 分 の 価 格 に 差 が 生 じることは 不 合 理 であると 主 張 したが 判 決 は 区 分 所 有 建 物 は 建 物 と 土 地 が 不 可 分 一 体 となって 売 買 されるものであり 一 方 のみを 切 り 離 して 取 引 の 対 象 とすることはできないのであるか ら 敷 地 利 用 権 は 通 常 の 土 地 の 共 有 部 分 と は 異 なり 特 定 の 専 用 部 分 と 結 合 してのみ 存 在 することを 特 徴 とする 権 利 であるといえる ので 敷 地 利 用 権 の 割 合 が 同 じであるとして も その 価 額 が 同 じであるとは 限 らないとし て その 主 張 を 斥 けている また [2] 被 告 が 認 定 した 土 地 の 取 得 価 額 は 路 線 価 よりも 高 額 ( 物 件 1 の 土 地 の 取 得 価 額 は 路 線 価 の 1.64 倍 また 物 件 2 の 土 地 の 取 得 価 額 は 路 線 価 57

8 の 2.05 倍 である )であることから 算 定 の 方 法 及 び 資 料 が 適 当 でなかったと 主 張 したが 判 決 は 実 際 の 土 地 の 売 買 価 格 は 路 線 価 を 上 回 ることが 一 般 的 である また マンショ ンを 建 築 する 際 には 測 量 整 地 障 壁 設 置 等 の 基 礎 工 事 及 び 周 辺 住 民 の 承 諾 の 取 得 が 必 要 となるところ 建 物 の 価 額 に 転 嫁 できるの は 周 辺 住 民 の 承 諾 を 取 得 するための 費 用 であ り その 他 は 土 地 の 価 額 に 転 嫁 されることが 一 般 的 であるうえ いわゆる 買 い 進 み 売 り 急 ぎの 現 象 もあり 取 得 価 額 が 路 線 価 を 上 回 る ことも 珍 しくないとして その 主 張 を 斥 けて いる 更 に [3] 固 定 資 産 税 評 価 額 は 大 量 の 物 件 について 評 価 するため その 精 度 は 低 い うえ 時 価 よりも 控 えめの 評 価 がなされてい るとして 固 定 資 産 税 評 価 額 を 土 地 および 建 物 の 価 格 比 を 決 定 する 基 礎 資 料 とすべきでは ないと 主 張 したが 固 定 資 産 税 評 価 額 は 土 地 については 地 価 公 示 価 格 や 売 買 実 例 等 を 基 に 建 物 については 再 建 築 価 額 を 基 礎 として 決 定 されるので その 精 度 が 低 く 合 理 性 を 欠 くということはできないし また 固 定 資 産 評 価 額 が 時 価 よりも 控 え 目 の 評 価 であると しても 土 地 及 び 建 物 の 評 価 の 比 率 としては 均 衡 がとれているから 固 定 資 産 税 評 価 額 で 按 分 する 方 法 が 不 合 理 であるということはで きないとして その 主 張 を 斥 けている そし て [4] 原 告 が 申 告 に 際 して 用 いた 差 引 法 に 一 応 の 合 理 的 理 由 があるから 課 税 庁 はその 方 法 を 是 認 すべきであると 主 張 したことに 対 しては 上 記 (2)の 不 都 合 が 存 し これを 直 ち に 合 理 的 な 方 法 ということはできないうえ 納 税 者 ごとに 異 なる 取 得 価 額 の 算 出 方 法 を 認 めるなら 納 税 者 間 の 公 平 を 損 ないかねず ひいては 租 税 平 等 主 義 に 反 するおそれがある として その 主 張 を 斥 けている 3 検 討 ⑴ 各 区 分 方 法 の 合 理 性 イ 直 接 法 本 件 福 岡 地 裁 判 決 では 建 物 の 取 得 価 額 の 算 定 が 問 題 となっており 直 接 法 については 新 築 時 の 工 事 原 価 を 基 礎 とする 価 額 や 再 建 築 価 額 による 固 定 資 産 税 評 価 額 相 続 税 評 価 額 ( 建 物 については 固 定 資 産 税 評 価 額 を 採 用 し ているので 同 一 である )などが 検 討 の 対 象 と なっている ここで 再 建 築 価 額 とは 不 動 産 鑑 定 評 価 基 準 でいう 再 調 達 原 価 に 相 当 する が 同 基 準 では その 算 出 方 法 ( 以 下 原 価 法 という )につき 建 設 請 負 により 請 負 者 が 発 注 者 に 対 して 直 ちに 使 用 可 能 な 状 態 で 引 き 渡 す 通 常 の 場 合 を 想 定 し 発 注 者 が 請 負 者 に 対 して 支 払 う 標 準 的 な 建 築 費 に 発 注 者 が 直 接 負 担 すべき 通 常 の 付 帯 費 用 を 加 算 して 求 めるものとする と 規 定 している 建 物 は 原 価 法 による 評 価 に 馴 染 む 資 産 である その 理 由 は 原 価 法 を 基 に 販 売 価 額 が 決 定 される 物 件 が 少 なくないこと 建 築 費 を 構 成 する 建 築 資 材 や 労 務 費 等 の 標 準 額 を 把 握 できること 時 に 投 機 的 な 価 格 上 昇 や 下 落 がある 土 地 の 価 額 と 比 較 して 建 築 費 が 安 定 的 に 推 移 するもの であることなどが 挙 げられるが (7) 建 物 が 中 古 資 産 の 場 合 は 同 判 決 の 指 摘 ⑴1のとおり 損 耗 による 補 正 ( 減 価 修 正 )の 必 要 があり その 算 定 は 困 難 であることから 一 般 の 納 税 者 に 原 価 法 による 正 確 な 計 算 を 求 めることに は 問 題 がある なお 上 記 の 裁 決 事 例 では 建 築 統 計 等 に 基 づく 推 計 値 が 使 用 されている 一 方 売 買 実 例 に 比 準 して 時 価 を 算 定 する 方 法 ( 以 下 売 買 実 例 比 準 法 という )の 適 用 は 建 物 が 個 別 性 の 高 い 資 産 であり 比 較 対 象 を 把 握 しにくいこと 中 古 物 件 の 比 較 には 減 価 修 正 を 要 する 等 の 差 異 の 調 整 が 必 要 である こと 建 物 は 土 地 と 一 体 となって 効 用 を 発 揮 するものであるが 土 地 と 切 り 離 して 比 較 する 必 要 があることなど 技 術 的 に 困 難 な 問 題 が ある この 点 に 関 し マンションのようにそ 58

9 の 形 状 が 規 格 化 されている 物 件 であっても 本 件 福 岡 地 裁 判 決 の 前 記 [1]のとおり それら は 土 地 の 利 用 権 と 不 可 分 一 体 となって 販 売 さ れるものであるので 建 物 部 分 と 専 用 利 用 権 が 別 々の 財 産 として 取 引 されることがなけれ ば 売 買 実 例 比 準 法 の 適 用 はできない なお 同 判 決 では 新 築 時 の 工 事 原 価 を 挙 げているが 新 築 時 の 工 事 原 価 は 過 去 の 工 事 原 価 であり 再 調 達 原 価 とは 異 なる 新 築 時 の 工 事 原 価 を 使 用 する 方 法 は 上 記 の 裁 決 事 例 にもみられる が 按 分 法 における 原 価 比 として 使 用 されて おり 減 価 修 正 や 時 点 修 正 が 必 要 な 直 接 法 と して 使 用 されている 事 例 は 見 当 たらない 再 建 築 価 額 の 算 定 においては 売 主 の 利 益 相 当 額 をどのような 額 とするのか 別 途 検 討 す る 必 要 がある 利 益 の 額 として 標 準 的 な 額 を 使 用 することが 妥 当 するのはマンション 分 譲 住 宅 等 の 販 売 用 物 件 などに 限 られていると 考 えられ 一 般 の 物 件 では 売 手 と 買 手 の 思 惑 に 少 なからず 影 響 を 受 けることから 個 別 に 売 買 の 利 益 の 額 を 推 定 する 必 要 があるが 実 務 上 その 推 定 は 困 難 である この 点 は 現 実 の 譲 渡 ではなく 客 観 的 交 換 価 値 (8) ( 財 産 評 価 基 本 通 達 における 不 特 定 多 数 の 当 事 者 間 で 自 由 な 取 引 が 行 われる 場 合 に 通 常 成 立 する と 認 められる 価 額 をいう )により 統 一 的 に 財 産 評 価 をする 相 続 税 法 での 時 価 とは 異 なる ことに 留 意 する 必 要 がある 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 は 計 算 上 減 価 修 正 や 時 点 修 正 も 行 われているが それらは 客 観 的 交 換 価 値 であり 建 物 のみを 客 観 的 交 換 価 値 で 評 価 しても 土 地 建 物 の 総 額 が 客 観 的 交 換 価 値 である 保 証 はなく 一 般 に 特 定 の 売 買 に おいては 売 手 と 買 手 の 主 観 的 要 素 が 排 除 され ないので 差 し 引 きにより 算 出 された 土 地 の 価 額 に 主 観 的 要 素 の 影 響 がしわ 寄 せされるこ とになる すなわち 売 手 の 有 利 に 譲 渡 価 額 が 決 定 されればその 利 益 は 全 て 土 地 の 譲 渡 によ るものとなり 買 い 叩 かれればその 損 失 は 全 て 土 地 の 譲 渡 によるものとなる したがって 直 接 法 による 結 果 を 無 条 件 に 採 用 することに は 問 題 があり 必 要 に 応 じて 差 引 法 や 按 分 法 など 他 の 方 法 による 検 証 を 行 うべきであろう 売 主 の 帳 簿 等 に 記 載 された 販 売 価 額 売 主 が 発 行 する 家 屋 の 譲 渡 対 価 証 明 書 の 価 額 消 費 税 額 から 逆 算 した 価 額 については 特 に 不 合 理 でない 限 り 合 理 的 なものと 推 認 して 使 用 することが 考 えられ 本 件 福 岡 地 裁 判 決 の 物 件 2 については 売 主 の 帳 簿 等 に 記 載 された 販 売 価 額 を 採 用 しており また 上 記 の 裁 決 事 例 においても 建 築 業 者 の 各 販 売 価 額 契 約 書 記 載 金 額 等 を 採 用 するものがある 特 に 類 似 物 件 があると 思 われる 販 売 用 物 件 では 売 主 の 販 売 価 額 や 同 業 者 の 標 準 的 な 販 売 価 額 を 基 に 区 分 することにも 一 応 の 合 理 性 があると 思 われる しかし それらは 妥 当 性 が 裏 付 け られているわけではないので 基 本 的 には 合 理 的 な 区 分 か 否 かを 判 断 する 上 での 一 要 素 に 留 まるものということができよう ロ 差 引 法 建 物 先 取 法 は 建 物 の 価 額 を 直 接 法 により 算 出 するので 建 物 の 評 価 における 直 接 法 と 同 じ 問 題 が 生 じるが 本 件 福 岡 地 裁 判 決 では 建 物 の 取 得 価 額 の 算 定 が 問 題 となっているの で 土 地 先 取 法 の 適 否 が 検 討 されている 土 地 先 取 法 の 適 否 は 主 に 土 地 の 直 接 法 に よる 評 価 の 問 題 に 依 存 する 土 地 は 売 買 実 例 比 準 法 による 評 価 に 馴 染 む 資 産 であり 固 定 資 産 税 評 価 額 相 続 税 評 価 額 公 示 価 格 近 隣 地 の 売 買 実 例 価 額 専 門 家 の 鑑 定 評 価 額 などの 利 用 が 考 えられる このうち 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 は 公 的 機 関 が 定 期 的 に 公 示 価 格 や 標 準 地 価 とのバランスをとっ て 評 価 したものであり (9) 納 税 者 間 の 公 平 納 税 者 の 便 宜 及 び 徴 税 費 用 の 節 減 の 観 点 から 利 点 があるといえる しかし これらはいず れも 客 観 的 交 換 価 値 を 求 めるものであり 売 買 当 事 者 の 主 観 的 要 素 に 影 響 された 土 地 建 物 の 総 額 から 控 除 すると 建 物 の 価 額 に 主 観 的 要 素 の 影 響 がしわ 寄 せされることになること 59

10 から 土 地 先 取 法 による 結 果 を 無 条 件 に 採 用 することには 問 題 がある この 点 に 関 し 昭 和 56 年 3 月 11 日 裁 決 は 土 地 建 物 が 時 価 より 著 しく 低 い 価 額 で 一 括 譲 渡 された 場 合 は 差 引 法 の 使 用 は 適 当 でないとしており 昭 和 61 年 4 月 30 日 裁 決 では 事 業 資 金 の 早 期 調 達 の 売 り 急 ぎ 的 な 要 素 があるとして また 昭 和 60 年 6 月 24 日 裁 決 では 競 売 物 件 であ るとして いずれも 差 引 法 を 使 用 していない 本 件 福 岡 地 裁 判 決 の 指 摘 (2)1では 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 には 建 物 又 は 土 地 の 価 額 に 売 主 の 適 正 な 利 益 が 含 まれていな いので 差 引 法 によると 利 益 が 他 方 に 転 嫁 さ れることになり 他 方 の 価 額 が 過 大 になると 述 べている しかし 建 物 の 固 定 資 産 税 評 価 額 の 算 定 は 評 点 方 式 によっているが 評 点 一 点 あたりの 価 額 (=1 円 物 価 水 準 による 補 正 率 設 計 管 理 費 利 益 等 による 補 正 率 ( 木 造 家 屋 :1.05 非 木 造 家 屋 :1.10))には 売 主 の 利 益 が 加 味 されており 正 確 性 の 問 題 はあるとしても これらの 計 算 に 売 主 の 利 益 が 含 められていないというのは 正 しくない また 不 動 産 鑑 定 評 価 についても 不 動 産 鑑 定 評 価 基 準 によれば 再 調 達 原 価 に 請 負 者 の 適 正 な 利 益 を 含 めることとされており 再 建 築 価 額 には 標 準 的 な 売 主 の 利 益 が 含 まれてい ると 考 えるべきであろう 一 方 土 地 につい ても 固 定 資 産 税 評 価 額 相 続 税 評 価 額 のい ずれも 売 買 実 例 比 準 法 により 算 出 されている ので 改 めて 売 主 の 利 益 を 加 算 する 必 要 はな い したがって 原 価 法 による 価 格 設 定 を 前 提 とした 同 判 決 の 事 例 ではそのような 指 摘 が 妥 当 するとしても 一 般 論 としては 失 当 であ る 土 地 は 供 給 量 が 限 定 されることから 投 機 的 な 売 買 により 時 に 価 格 の 急 激 な 上 昇 下 落 が みられること 我 が 国 では 土 地 建 物 の 総 額 に 占 める 土 地 の 価 額 が 大 きいことから 土 地 の 価 額 の 正 確 な 算 定 が 行 われないと 建 物 の 価 額 へのしわ 寄 せが 大 きくなる この 点 で 前 述 の 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いが 直 接 法 に よる 土 地 の 価 額 の 算 定 において 差 引 後 の 建 物 の 価 額 につきその 妥 当 性 を 求 めていること も 肯 首 できる 上 記 の 裁 決 事 例 では 建 物 先 取 法 を 使 用 するものはあるが 土 地 先 取 法 を 使 用 するものはない 土 地 重 課 に 関 する 事 件 が 多 いことにもよるが 前 述 のとおり 事 例 は 平 成 元 年 前 後 のいわゆるバブル 期 あるいは それ 以 前 の 時 期 に 多 発 しており このことは 土 地 の 価 格 が 不 安 定 で 公 的 評 価 を 含 めて 土 地 の 時 価 算 定 の 信 頼 性 に 問 題 があったことを 伺 わせるものである 特 に 平 成 に 入 って 評 価 水 準 が 是 正 (10) される 前 は 土 地 の 公 的 評 価 が 時 価 より 相 当 低 いと 考 えられており 土 地 先 取 法 の 信 頼 性 が 著 しく 劣 るケースがあった ことは 否 定 できない 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 は 課 税 目 的 の 評 価 であるので 固 めの 評 価 が 行 われ ており 土 地 の 固 定 資 産 税 評 価 額 及 び 相 続 税 評 価 額 は 公 示 価 格 の 水 準 のそれぞれ 7 割 及 び 8 割 の 価 額 ( 以 下 安 全 率 という )と されている したがって 土 地 先 取 法 による 評 価 においては それらの 評 価 額 をそのまま 採 用 すると 建 物 価 額 を 不 当 に 高 く 評 価 するこ とがあることに 留 意 する 必 要 がある 安 全 率 は 時 価 に 幅 があることや それらの 評 価 額 が 固 定 資 産 税 や 相 続 税 等 の 課 税 の 対 象 となる 1 年 を 通 して 使 用 されるものであることから 時 価 を 超 えて 評 価 することにより 財 産 権 の 侵 害 となることがないように 設 けられているも ので 土 地 と 建 物 の 区 分 を 目 的 とする 場 合 は 安 全 率 を 考 慮 しない 価 額 すなわちそれぞれ で 割 り 戻 した 金 額 を 採 用 するのが 適 切 であろう また それらの 評 価 額 を 使 う 場 合 には それらの 評 価 時 点 ( 固 定 資 産 税 評 価 額 は 評 価 替 え(3 年 毎 )の 年 の 前 年 1 月 1 日 また 相 続 税 評 価 額 はその 年 の 1 月 1 日 )か ら 譲 渡 時 点 が 離 れていて その 間 に 顕 著 な 価 格 変 動 があるときには 時 点 修 正 が 必 要 にな ることに 留 意 する 必 要 がある 60

11 ハ 按 分 法 本 件 福 岡 地 裁 判 決 は 按 分 法 によれば 土 地 と 建 物 の 双 方 に 販 売 業 者 の 利 益 が 反 映 される ことになり 土 地 と 建 物 を 一 体 として 販 売 す る 取 引 の 実 態 に 合 致 し 最 も 合 理 的 であると している この 事 例 では 購 入 者 が 一 般 の 給 与 所 得 者 であり 予 め 設 定 された 販 売 価 額 を 基 に 購 入 するか 否 かを 判 断 すること( 基 本 的 にプライス テイカーとしての 立 場 にある ) 同 じあるいは 類 似 規 格 の 物 件 が 少 なからず 存 在 し 得 ること( 通 常 成 立 する 価 格 が 把 握 でき る )から 土 地 建 物 の 総 額 は 客 観 的 交 換 価 値 と 同 視 し 得 るものであったと 推 測 される また 販 売 業 者 は 土 地 の 仕 入 価 額 及 び 建 物 の 新 築 工 事 原 価 の 合 計 額 に 利 益 を 上 乗 せした 価 額 と 市 場 の 状 況 を 勘 案 して 販 売 価 額 を 設 定 し たと 述 べており(すなわち 原 価 法 による 価 格 設 定 を 基 本 としている ) 土 地 建 物 の 当 該 客 観 的 交 換 価 値 と 仕 入 価 額 及 び 新 築 工 事 原 価 の 合 計 額 との 差 額 である 販 売 業 者 の 利 益 を 原 価 比 により 按 分 することは 合 理 的 であると 考 えられる しかし 販 売 用 物 件 でない 土 地 建 物 の 譲 渡 では その 対 価 の 額 は 一 般 に 価 格 の 三 要 素 ( 原 価 性 市 場 性 収 益 性 )を 考 慮 する 売 買 当 事 者 の 交 渉 により 成 立 しており 必 ずしも 原 価 法 を 基 本 とする 価 格 設 定 による ものではない むしろ 売 買 実 例 があるもの はその 価 額 を 参 酌 して また 収 益 物 件 につ いては 収 益 法 を 併 用 して 土 地 建 物 を 一 体 として 譲 渡 価 額 を 決 定 することも 多 いと 思 わ れる したがって 本 件 のような 販 売 用 物 件 や 転 売 を 目 的 として 購 入 された 物 件 には 原 価 比 による 按 分 が 妥 当 するとしても (11) その 方 法 が 一 般 に 妥 当 するということはできない また 譲 渡 時 の 時 価 を 求 めることは 容 易 では ないので 土 地 及 び 建 物 の 取 得 時 における 原 価 が 把 握 できれば 原 価 比 の 利 用 が 簡 便 である が 取 得 から 売 却 までの 期 間 が 長 い 場 合 そ の 期 間 における 価 格 変 動 が 激 しい 場 合 又 は 土 地 と 建 物 でその 期 間 が 異 なる 場 合 には 時 点 修 正 や 減 価 修 正 が 必 要 であると 考 えられ それらを 行 わない 原 価 比 は 信 頼 性 を 欠 くこと があることに 留 意 する 必 要 がある 上 記 の 裁 決 事 例 では 按 分 法 を 使 用 するも のが 圧 倒 的 に 多 いが その 価 額 比 は 譲 渡 時 の 時 価 比 あるいは 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 の 比 を 用 いるものが 多 い 特 に 近 時 の 裁 決 事 例 では 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 が 使 われている 譲 渡 時 の 時 価 を 求 めることは 容 易 ではないので 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 の 比 を 代 用 することはやむを 得 ない 本 件 福 岡 地 裁 判 決 でも 固 定 資 産 税 評 価 額 の 比 を 用 いており 指 摘 (3)5では 同 一 機 関 により 同 一 時 期 に 評 価 したものであるのでバ ランスがとれている としている しかし 土 地 の 間 及 び 建 物 の 間 のそれぞれのバランス はとっているものの 特 定 の 土 地 と 建 物 のバ ランスをとって 評 価 しているわけではないの で 一 般 論 としてはともかく 個 別 の 物 件 に 無 条 件 に 当 てはまるわけではない 次 に 同 判 決 の 指 摘 (3)6では 相 続 税 評 価 額 の 比 につき 土 地 と 建 物 とで 算 出 機 関 及 び 算 出 時 期 が 異 なるため 土 地 と 建 物 の 適 切 な 価 額 比 を 導 き 出 すのに 必 ずしも 適 当 とはいえない として いる しかし 公 的 評 価 が 是 正 されて 以 降 の 市 街 地 については いずれの 評 価 額 も 公 示 価 格 等 との 整 合 性 をとって 評 価 されており ま た 両 算 出 機 関 の 間 で 評 価 額 の 調 整 を 図 る 努 力 がなされているので 安 全 率 の 差 を 調 整 す れば 両 評 価 額 は 相 互 にバランスがとれてい ると 考 えられる また 相 続 税 評 価 額 が 毎 年 評 価 替 えされるのに 対 して 固 定 資 産 税 評 価 額 は3 年 毎 に 評 価 替 えされる(ただし 著 しく 地 価 が 変 動 する 場 合 には 調 整 する 仕 組 みがあ る )ので 相 続 税 評 価 額 の 方 が 実 勢 の 価 額 に 近 く 時 点 修 正 も 少 なくてすむともいえ 建 物 の 価 額 が 比 較 的 安 定 しているという 事 実 を 前 提 とすれば むしろ 相 続 税 評 価 額 の 比 を 使 用 する 方 が 適 切 であるとの 意 見 も 生 じよう 評 価 の 安 全 率 については 直 接 法 や 差 引 法 61

12 に 限 らず 按 分 法 においても 留 意 が 必 要 であ る 理 論 的 には 按 分 法 においても 土 地 に 係 る 安 全 率 を 除 いて 評 価 すべきであると 考 えるが 建 物 の 固 定 資 産 税 評 価 額 は 実 勢 価 格 より 相 当 に 低 いといわれることがあることから 建 物 が 時 価 に 比 べてどの 程 度 に 評 価 されているの か 不 明 の 状 況 では 土 地 の 価 額 のみ 安 全 率 を 除 外 しても 必 ずしもバランスがとれたことに ならない 本 件 福 岡 地 裁 判 決 では 前 記 [3] のとおり 固 定 資 産 税 評 価 額 が 時 価 より 控 え めの 評 価 であるとしても 土 地 及 び 建 物 の 評 価 の 比 率 としては 均 衡 がとれている として おり 安 全 率 についての 調 整 は 行 っていない また 東 京 高 裁 平 成 10 年 11 月 26 日 判 決 や 大 阪 地 裁 平 成 元 年 11 月 14 日 判 決 でも 固 定 資 産 税 評 価 額 及 び 相 続 税 評 価 額 につき 実 勢 価 格 との 間 には 差 異 があるとはいうものの 各 資 産 の 価 額 の 均 衡 が 図 られているとして それらの 価 額 比 を 使 うことの 合 理 性 を 認 めて いるが いずれも 安 全 率 を 除 外 することはし ていない ⑵ 契 約 上 の 区 分 が 合 理 的 か 否 かの 判 断 消 費 税 の 導 入 以 後 は 契 約 書 に 消 費 税 額 を 明 記 することが 通 例 となっており 契 約 書 上 の 建 物 の 価 額 が 把 握 できない 事 例 は 少 ないと 思 われる したがって 取 引 当 事 者 が それぞ れの 譲 渡 対 価 の 額 を 契 約 書 で 明 らかにしてい るのであるから その 区 分 が 不 合 理 と 認 めら れる 場 合 を 除 いて 税 務 上 もその 区 分 による こととなる そこで 契 約 書 上 の 区 分 が 合 理 的 な 区 分 であるか 否 かをどのように 判 断 する べきか 問 題 となる 先 述 のように 個 別 物 件 の 譲 渡 においては 必 ずしも 客 観 的 交 換 価 値 で 取 引 が 行 われているわけではないので 契 約 書 上 の 土 地 又 は 建 物 の 価 額 がそれらの 客 観 的 交 換 価 値 と 異 なるという 理 由 のみでその 区 分 が 不 合 理 であると 断 定 することはできない 判 決 や 裁 決 の 事 例 では 建 物 については 売 主 の 帳 簿 等 に 記 載 された 販 売 価 額 消 費 税 額 か ら 逆 算 した 価 額 新 築 時 の 工 事 原 価 を 基 礎 と する 価 額 建 築 統 計 等 による 再 建 築 価 額 の 推 計 値 固 定 資 産 税 評 価 額 及 び 相 続 税 評 価 額 な ど また 土 地 については 売 主 の 取 得 価 額 固 定 資 産 税 評 価 額 相 続 税 評 価 額 公 示 価 格 近 隣 地 の 売 買 実 例 価 額 などと 比 較 するほか 必 要 に 応 じて 競 売 等 のような 売 買 の 特 殊 性 取 得 の 目 的 ( 例 えば 建 物 は 取 得 後 に 除 却 予 定 で 土 地 の 利 用 のみが 目 的 であるもの (12) 建 物 はあるが 産 業 廃 棄 物 の 処 理 場 という 特 殊 な 利 用 価 値 がある 土 地 の 利 用 が 目 的 であるもの 等 ) 売 り 急 ぎや 買 い 進 みなどの 事 情 取 引 の 相 手 方 の 認 識 や 経 理 処 理 税 務 申 告 との 整 合 性 原 価 割 れの 事 実 (13) 売 買 に 至 った 経 緯 な ど 個 別 の 取 引 事 情 も 考 慮 して 合 理 的 な 区 分 か 否 かを 判 断 している 税 務 上 の 扱 いについて 1 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いは (イ) 但 し 書 きにより 建 物 の 建 設 費 又 は 購 入 価 額 に 適 正 な 利 益 が 加 算 され たものを 合 理 的 な 価 額 として 扱 うこととして おり また 2 新 築 した 建 物 を 土 地 等 と 同 時 に 譲 渡 した 場 合 の 対 価 の 計 算 に 係 る 措 置 法 通 達 62 の 3(2)-4 及 び 同 時 に 取 得 した 新 築 の 建 物 と 土 地 等 を 同 時 に 譲 渡 した 場 合 の 対 価 の 計 算 に 係 る 措 置 法 通 達 62 の 3(2)-5 (14) は いわ ゆる 142% 基 準 ( 譲 渡 利 益 が 建 物 の 譲 渡 によ る 利 益 部 分 からなるものとして 計 算 し 建 物 の 譲 渡 対 価 の 額 を その 取 得 価 額 に 142%を 乗 じた 金 額 を 上 限 とすること )を 適 用 して 区 分 計 算 し その 額 を 契 約 上 で 明 らかにしてい るときは その 区 分 を 認 めるとしており い ずれも 建 物 の 価 額 に 売 主 の 適 正 な 利 益 が 加 算 されていれば 合 理 的 な 区 分 として 扱 うことと している 適 正 ( 標 準 的 )な 利 益 の 算 定 は 一 般 の 納 税 者 には 困 難 と 思 われるので 合 理 的 な 区 分 か 否 かの 一 般 的 な 判 断 基 準 ということ はできないが マンションや 分 譲 住 宅 など 販 売 用 物 件 ではこのような 扱 いが 妥 当 する 場 合 があるので 判 断 要 素 の 一 つと 考 えることが できる 62

13 ⑶ 按 分 法 の 優 位 性 本 件 福 岡 地 裁 判 決 は 按 分 法 が 最 も 合 理 的 であるとしているが 土 地 の 価 値 価 額 は 種 々あって 流 動 的 であるが それと 比 較 す ると 建 物 の 価 格 は 比 較 的 安 定 していること から まず 建 物 の 価 格 を 明 確 にし その 残 額 をもって 土 地 の 価 額 とするのが 一 般 的 であ る ( 第 38 回 TKC 租 税 判 例 研 究 会 )との 指 摘 があり また 上 記 の 裁 決 事 例 でも 建 物 先 取 法 を 採 用 するものがある 一 方 我 が 国 の ように 土 地 価 額 が 建 物 価 額 に 比 して 相 対 的 に 取 得 価 額 に 占 める 負 担 額 が 大 きい 状 況 にあ り かつ 本 来 建 物 については 賃 借 人 の 意 向 によって また 市 場 のニーズの 変 化 に 応 じ て 陳 腐 化 が 発 生 する 等 によって 再 調 達 価 額 から 償 却 費 を 差 し 引 いた 未 償 却 残 高 をもって 建 物 価 額 とするようでは 全 く 実 態 の 建 物 価 額 とは 乖 離 してしまうことも 少 なくない と して 建 物 先 取 法 よりも 土 地 先 取 法 が 妥 当 で あることが 多 いとする 意 見 もある (15) このよ うに 区 分 方 法 について 優 劣 が 決 しているわ けではなく 一 般 論 としては 利 用 可 能 な 他 の 方 法 があればそれらも 考 慮 して 最 も 合 理 的 な 区 分 を 採 用 すべきであろう 法 人 税 法 や 所 得 税 法 は 取 得 原 価 主 義 を 採 っており 減 価 償 却 費 の 計 算 の 基 礎 となる 取 得 価 額 は 時 価 ( 客 観 的 交 換 価 値 )に 限 定 され ず 同 族 会 社 の 行 為 計 算 の 否 認 等 の 法 令 の 適 用 を 受 けない 限 り 購 入 価 額 ( 交 換 価 値 ) 等 がそのまま 認 められることになる (16) したが って 土 地 と 建 物 の 譲 渡 価 額 の 合 計 額 は 必 ずしも 土 地 と 建 物 の 時 価 の 合 計 額 とならず いずれか 一 方 の 時 価 の 適 正 な 算 定 により 土 地 と 建 物 の 譲 渡 価 額 が 自 ずと 決 定 されるとす る 考 え 方 は 妥 当 しない 区 分 が 明 らかでない 場 合 あるいは 不 合 理 な 区 分 と 考 えられる 場 合 に 土 地 や 建 物 の 時 価 を 算 定 する 目 的 は そ れらの 時 価 を 譲 渡 価 額 として 直 接 に 採 用 する のではなく 公 平 で 客 観 的 な 区 分 を 行 うため の 手 段 とみることができ それぞれの 時 価 を 基 に いわば 便 宜 的 な 区 分 を 行 うことにある ということもできよう その 意 味 では 土 地 建 物 の 総 額 をそれぞれの 客 観 的 交 換 価 値 によ り 按 分 する 方 法 が 租 税 法 の 目 的 に 最 も 合 致 す るものと 思 われる すなわち 按 分 法 は 土 地 と 建 物 にバランスよく 譲 渡 価 額 を 配 分 でき また 土 地 と 建 物 のいずれも 客 観 的 交 換 価 値 を 基 本 とするものであることから 比 較 的 に 恣 意 が 入 りにくく 公 平 性 の 点 で 優 れるとい うことができる これに 対 して 直 接 法 差 引 法 は 一 般 に 片 方 のみが 客 観 的 交 換 価 値 で あるから 区 分 の 結 果 他 方 が 客 観 的 交 換 価 値 と 大 きく 乖 離 する 場 合 は その 区 分 の 妥 当 性 が 疑 われるべきであるが 一 方 のみにより 判 断 する 方 法 なので そのリスクを 判 定 でき ず 結 果 として 土 地 と 建 物 の 価 額 間 のバラ ンスを 欠 く 懸 念 がある 上 記 の 裁 決 事 例 にお いて 按 分 法 が 圧 倒 的 に 多 く 採 用 されている 事 実 (ただし 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いに 従 い 建 物 先 取 法 等 により 区 分 しているもの は 課 税 庁 に 否 認 されないので 単 純 に 比 較 す ることはできない )は 按 分 法 の 優 位 性 を 示 しているように 思 われる なお 消 費 税 法 に おいては 時 価 比 による 按 分 が 法 定 されてい るので 按 分 法 の 中 でも 時 価 比 による 按 分 法 は 各 税 目 に 共 通 する 合 理 的 な 区 分 方 法 であ るということができる (17) ⑷ 消 費 税 の 特 殊 性 と 合 理 的 な 区 分 消 費 税 額 から 逆 算 によって 求 めた 建 物 の 価 額 と 時 価 比 による 按 分 法 で 区 分 した 場 合 の 建 物 の 価 額 が 異 なる 場 合 は いずれの 価 額 を とるべきであろうか また 大 きな 差 がある ことは 表 示 された 消 費 税 額 が 合 理 的 な 区 分 に より 算 出 されたものではないことを 意 味 する であろうか 消 費 税 法 第 28 条 第 1 項 ( 課 税 標 準 )に 規 定 する 課 税 資 産 の 譲 渡 等 の 対 価 の 額 及 び 同 法 第 30 条 第 6 項 ( 仕 入 に 係 る 消 費 税 額 の 控 除 )に 規 定 する 課 税 仕 入 に 係 る 支 払 対 価 の 額 とは それらの 時 価 をいうのではなく 63

14 取 引 の 当 事 者 間 で 授 受 することとした 対 価 の 額 ( 対 価 として 収 受 し 又 は 収 受 すべき ある いは 対 価 として 支 払 い 又 は 支 払 うべき 一 切 の 金 銭 又 は 金 銭 以 外 の 物 若 しくは 権 利 その 他 経 済 的 な 利 益 )をいうものとされる したが って 消 費 税 法 においては いかに 時 価 と 乖 離 した 支 払 額 であっても 時 価 に 直 して 計 算 す ることはしない (18) また 契 約 書 に 表 示 され た 消 費 税 額 によらず 時 価 比 による 按 分 法 等 で 区 分 しなおすと 譲 渡 側 の 課 税 売 上 額 と 譲 受 側 の 課 税 仕 入 額 の 対 応 関 係 が 崩 れ 累 積 課 税 排 除 の 趣 旨 が 徹 底 されないこととなる し たがって 取 引 当 事 者 が 契 約 書 上 でその 対 価 の 額 を 明 らかにしている 場 合 は 原 則 として 税 務 上 もこれによることとするのが 妥 当 であ り 時 価 比 による 按 分 法 の 結 果 と 契 約 書 の 区 分 が 異 なるからといって 直 ちにその 区 分 を 否 定 すべきではない 前 述 の 平 成 13 年 10 月 24 日 裁 決 は 譲 渡 側 である 請 求 人 が 契 約 書 記 載 の 消 費 税 額 は 備 忘 額 であるとしてこれと 異 なる 区 分 に 基 づき 消 費 税 を 計 算 し 申 告 したと ころ 原 処 分 庁 が 逆 算 法 により 課 税 標 準 を 算 定 し 更 正 処 分 を 行 ったものであるが 裁 決 は 契 約 書 記 載 の 消 費 税 額 は 合 理 的 に 区 分 さ れて 計 算 されたことが 推 認 され これを 覆 す に 足 りる 証 拠 がみられないとして 審 査 請 求 を 棄 却 している 一 方 契 約 書 に 表 示 されていれば 無 条 件 に 認 められるとすると 恣 意 的 な 区 分 を 許 すこと になり 課 税 の 公 平 上 問 題 がある このため 消 費 税 法 施 行 令 第 45 条 第 3 項 は 譲 渡 側 の 課 税 標 準 の 計 算 の 扱 いとして 合 理 的 な 区 分 によると 認 められない 場 合 は 時 価 比 による 按 分 法 で 区 分 することとしている 消 費 税 法 では 法 人 税 法 や 所 得 税 法 と 異 なり 区 分 の 方 法 を 法 定 しているが これは 時 価 を 基 に 区 分 するという 考 え 方 が 消 費 税 に 馴 染 まないこ とに 一 因 があるものと 思 われる この 意 味 で 消 費 税 においては 時 価 に 基 づく 算 定 という よりも 恣 意 の 入 らない 客 観 的 な 区 分 がより 重 視 されているように 思 われる ところで 時 価 を 基 に 区 分 するという 考 え 方 が 消 費 税 法 に 馴 染 まないとすれば 合 理 的 な 区 分 による と 認 められない 場 合 とはどのような 場 合 をい うのであろうか この 点 は 税 目 間 の 整 合 性 の 観 点 特 に 消 費 税 が 帳 簿 方 式 をとり で きる 限 り 法 人 税 法 や 所 得 税 法 の 取 扱 いと 平 仄 を 合 わせようとしていることとの 関 連 から 法 人 税 法 や 所 得 税 法 における 合 理 的 な 区 分 か 否 かの 判 断 にその 根 拠 を 求 めざるを 得 ないよ うに 思 われる もっとも 取 引 当 事 者 の 間 では 時 価 を 考 慮 して 譲 渡 価 額 を 設 定 することが 一 般 的 であろうから 消 費 税 においても 法 人 税 法 や 所 得 税 法 における 合 理 的 な 区 分 にあわせ ることが 不 自 然 ということにはならない た だし 法 人 税 法 や 所 得 税 法 における 合 理 的 な 区 分 の 方 法 が 時 価 比 による 按 分 法 で 算 出 され たものでない 場 合 は 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いに 合 致 しない 限 り 整 合 性 が 確 保 できな いことになる 一 方 税 法 が 異 なるので 合 理 的 な 区 分 は 異 なってもよいとする 考 え 方 もあ る 合 理 的 な 区 分 につき 法 人 税 法 や 所 得 税 法 の 取 扱 いと 平 仄 を 合 わせる 必 要 がないとす ると 契 約 書 に 消 費 税 額 等 が 明 記 されている 以 上 その 額 がいかに 時 価 とかけ 離 れていて も 逆 算 法 により 算 出 した 対 価 の 額 で 建 物 の 譲 渡 があったと 考 えざるを 得 ないので 合 理 的 な 区 分 によると 認 められない 場 合 とは 建 物 がありながら 土 地 のみの 譲 渡 契 約 となって いる 場 合 (19) や 通 謀 虚 偽 表 示 などにより 契 約 書 の 内 容 と 事 実 とが 異 なっている 場 合 など 相 当 に 限 定 されるものと 思 われる 次 に 消 費 税 法 施 行 令 第 45 条 第 3 項 は 譲 渡 側 の 課 税 標 準 の 算 定 に 係 る 規 定 であるが 譲 渡 側 で 不 合 理 な 区 分 と 認 められるときには 譲 受 側 の 仕 入 税 額 控 除 においても 同 じ 区 分 を 適 用 することとなるのかが 問 題 となる 消 費 税 法 においては 税 制 改 革 法 第 11 条 に 規 定 するとおり 適 正 な 消 費 税 の 転 嫁 を 予 定 して おり 仕 入 税 額 控 除 が 累 積 課 税 の 排 除 を 目 的 64

15 とするものであるから 法 人 税 や 所 得 税 の 取 扱 いに 比 べて 譲 渡 側 と 譲 受 側 の 区 分 の 整 合 性 がより 強 く 要 請 されていると 考 えられるが 整 合 性 をとる 方 法 として 表 示 された 消 費 税 額 によるべきとする 考 え 方 と 共 通 の 合 理 的 な 区 分 によるべきとする 考 え 方 があると 思 わ れる 前 者 は 契 約 に 表 示 されている 消 費 税 額 を 仕 入 税 額 控 除 すれば 前 段 階 で 課 税 され た 税 額 を 超 えて 仕 入 税 額 を 認 めることも 累 積 課 税 となることもなく 仕 入 税 額 控 除 の 趣 旨 に 合 致 するとするものであり また 後 者 は 課 税 標 準 における 合 理 的 な 区 分 は 仕 入 税 額 控 除 の 適 用 においても 同 様 に 合 理 的 なもの であるから 契 約 書 の 消 費 税 額 の 表 示 に 関 わ らず その 区 分 によるべきであるとするもの である 前 者 では 課 税 庁 が 消 費 税 法 施 行 令 第 45 条 第 3 項 に 基 づき 譲 渡 側 の 区 分 を 是 正 しても 契 約 書 に 表 示 されている 消 費 税 額 し か 譲 受 側 の 仕 入 税 額 控 除 を 認 めないこととな る これについては 税 額 控 除 であるので 契 約 上 合 意 した 額 に 限 定 してもよいとの 意 見 は あり 得 るものの 事 実 として 累 積 課 税 の 問 題 が 生 じる 一 方 後 者 では 譲 受 側 の 仕 入 税 額 控 除 額 を 修 正 することにより 累 積 課 税 を 避 けることができるが 課 税 庁 が 職 権 で 減 額 更 正 するか 譲 受 側 の 更 正 の 請 求 を 認 める 必 要 がある しかし このように 是 正 したとして も 譲 受 側 と 譲 渡 側 の 国 庫 に 納 付 する 消 費 税 額 の 合 計 額 は 変 わらないので そもそもこの ような 是 正 が 必 要 なのか 疑 問 が 生 じる また 譲 渡 側 が 追 徴 となる 消 費 税 額 を 譲 受 側 に 追 加 して 請 求 できないと 譲 渡 側 に 税 負 担 が 残 る 更 に 後 者 では 譲 渡 側 だけでなく 譲 受 側 か らも 契 約 上 合 意 した 額 によらない 区 分 の 主 張 を 許 すこととなる したがって 取 引 の 相 手 方 が 表 示 された 額 で 申 告 していることを 前 提 にすると 納 税 者 が 契 約 書 の 表 示 と 矛 盾 す る 合 理 的 な 区 分 を 主 張 することは 消 費 税 額 の 表 示 が 間 違 っていたことにつき 特 段 の 事 情 がない 限 り 容 認 すべきではないと 思 われる 前 述 の 平 成 18 年 6 月 15 日 裁 決 の 事 例 は 譲 受 側 である 請 求 人 が 落 札 した 土 地 建 物 につき 売 主 と 合 意 したのは 売 買 総 額 だけで あり 各 価 額 の 区 分 については 合 意 しておら ず また それらの 価 額 は 固 定 資 産 税 課 税 標 準 等 からみても 合 理 的 に 区 分 されていないと して 請 求 人 が 算 定 した 建 物 価 額 により 仕 入 税 額 控 除 を 行 って 申 告 したところ 原 処 分 庁 が 契 約 書 記 載 の 消 費 税 額 に 基 づく 建 物 価 額 によるべきであるとして 更 正 処 分 を 行 った ものである 裁 決 では 請 求 人 が 根 拠 とする 消 費 税 法 施 行 令 第 45 条 第 3 項 の 規 定 は 課 税 標 準 に 関 する 規 定 であり 仕 入 税 額 控 除 に ついては 当 事 者 間 において 合 意 され かつ 保 存 された 請 求 書 等 に 記 載 された 取 引 金 額 を 基 に 仕 入 税 額 控 除 の 計 算 を 行 うことになる として 審 査 請 求 を 棄 却 している 最 終 消 費 段 階 において 消 費 税 の 課 税 標 準 が 恣 意 的 に 額 が 圧 縮 されると 消 費 税 が 適 正 に 課 税 できないという 問 題 が 生 じるが 仕 入 税 額 控 除 においては 取 引 の 当 事 者 は 契 約 書 の 消 費 税 額 を 基 に 税 務 処 理 をするであろうし また 最 終 消 費 者 に 消 費 税 額 が 転 嫁 される 性 格 上 中 間 の 流 通 段 階 での 仕 入 税 額 控 除 にお いて 時 価 に 引 き 直 して 再 区 分 する 必 要 はな いということもできる また 累 積 課 税 の 排 除 を 目 的 とする 仕 入 税 額 控 除 制 度 において 取 引 の 前 段 階 で 支 払 われていない 税 額 を 仕 入 税 額 控 除 することは できる 限 り 排 除 するべ きであろう したがって 仕 入 税 額 控 除 につ いては 買 手 が 契 約 書 上 の 区 分 を 無 視 して 独 自 の 区 分 を 主 張 することは たとえ 建 物 の 時 価 から 見 てより 合 理 的 な 区 分 であったとして も 安 易 に 認 めるべきではないとする 考 え 方 も 理 解 できる ただし この 裁 決 のように 契 約 書 記 載 の 区 分 や 請 求 人 の 行 った 区 分 につ き 合 理 的 か 否 かの 判 断 をせず 契 約 書 記 載 の 当 事 者 の 合 意 があったことの 認 定 及 び 請 求 書 等 の 保 存 要 件 の 充 足 のみを 根 拠 に 契 約 書 記 載 の 区 分 以 外 認 められないとするのは 賛 65

16 成 し 難 い なぜなら 請 求 書 等 の 保 存 要 件 は 大 量 反 復 性 を 有 する 消 費 税 の 申 告 において 迅 速 正 確 に 課 税 仕 入 れの 有 無 を 確 認 し 課 税 仕 入 れに 係 る 適 正 な 消 費 税 額 を 把 握 すること ができるように 規 定 されているものであるの で 契 約 書 の 記 載 と 異 なる 価 額 であるからと いって 一 律 に 仕 入 税 額 控 除 を 否 認 するある いは 記 載 の 金 額 以 外 に 認 められないとすべき ではないと 考 えるからである (20) 平 成 18 年 6 月 15 日 裁 決 と 同 様 の 事 件 につき 平 成 20 年 5 月 8 日 裁 決 は 1 契 約 書 記 載 の 建 物 の 価 額 が 当 事 者 の 契 約 意 思 を 表 示 するものであるこ と 2 契 約 書 に 実 態 と 異 なる 内 容 を 表 示 した などの 特 段 の 事 情 がないこと 3その 価 額 に 特 段 不 合 理 な 点 が 見 られないこと の 三 点 を 認 定 して 審 査 請 求 を 棄 却 している いずれ の 裁 決 も 請 求 人 は 固 定 資 産 税 評 価 額 の 価 額 比 で 按 分 して 算 出 した 価 額 を 主 張 しており 審 査 請 求 人 の 行 った 区 分 にも 一 定 の 合 理 性 が あると 推 察 されるが 契 約 書 記 載 の 建 物 価 額 がある 以 上 それと 異 なる 価 額 での 仕 入 税 額 控 除 が 容 認 されるためには 単 に 審 査 請 求 人 の 区 分 がより 合 理 的 であるというだけでは 足 らず 虚 偽 表 示 などの 特 段 の 事 情 が 必 要 とさ れている 土 地 と 建 物 の 一 括 譲 渡 において 売 買 契 約 書 の 金 額 と 異 なる( 上 回 る) 仕 入 税 額 控 除 が 認 められるか 否 かについては 課 税 当 局 の 見 解 が 示 されていないが 肯 定 論 と 否 定 論 の 根 拠 を 挙 げると 次 のようになる ( 肯 定 論 ) 1 合 理 的 な 区 分 によらなければ 恣 意 的 にな る ただし 否 定 論 からは 恣 意 的 にな っても 相 手 側 が 契 約 書 上 の 金 額 で 課 税 されている 限 り 問 題 ではないとする 主 張 があり 得 る 2 帳 簿 方 式 をとる 以 上 法 人 税 や 所 得 税 の 考 え 方 と 整 合 性 をとるべきであるが 消 費 税 における 仕 入 税 額 控 除 は 売 買 契 約 書 の 金 額 によらなければならないとすると 法 人 税 や 所 得 税 では 合 理 的 な 区 分 とな っていない 場 合 売 買 契 約 書 の 金 額 によ らず 時 価 を 基 に 合 理 的 な 区 分 を 行 うこと になるので 建 物 の 課 税 仕 入 額 と 取 得 価 額 が 乖 離 することとなり 整 合 性 が 保 てな い ただし 否 定 論 からは 帳 簿 方 式 を 採 ってはいるが 課 税 物 件 を 資 産 の 譲 渡 等 の 対 価 とする 消 費 税 は 課 税 物 件 を 所 得 とする 法 人 税 や 所 得 税 とは 性 格 が 本 質 的 に 異 なっており 同 一 の 区 分 とする 必 要 はないし 経 理 処 理 は 技 術 的 な 問 題 にす ぎないとの 主 張 があり 得 る 3 譲 受 側 の 仕 入 税 額 控 除 に 係 る 消 費 税 法 基 本 通 達 が 譲 渡 側 の 課 税 標 準 に 係 る 同 とほぼ 同 じ 扱 いを 定 め その 前 段 で 譲 受 側 も 合 理 的 に 区 分 しな ければならないとしている ( 否 定 論 ) 1 合 理 的 な 区 分 でない 場 合 課 税 標 準 につ いては 時 価 比 により 区 分 することが 規 定 されているが 仕 入 税 額 控 除 にはそのよ うな 規 定 が 無 い ただし 肯 定 論 からは 課 税 売 上 げと 課 税 仕 入 れは 表 裏 の 関 係 に あり 明 記 されなくても 同 様 に 扱 われる ことを 前 提 にしているとの 反 論 があり 得 る 2 契 約 書 上 の 金 額 と 異 なる 額 を 基 に 仕 入 税 額 控 除 を 認 めることは 前 段 階 控 除 の 趣 旨 に 反 する すなわち 税 の 累 積 排 除 の 趣 旨 からすれば 前 段 階 で 納 付 されてい ない 税 を 控 除 することを 認 めることはで きない なお 免 税 事 業 者 からの 仕 入 や 簡 易 課 税 制 度 については 前 段 階 で 納 付 されていない 税 を 控 除 することになるが 小 規 模 事 業 者 の 事 務 負 担 に 配 慮 する 趣 旨 によるものであり 例 外 として 許 容 でき るものである 3 仕 入 税 額 控 除 は 帳 簿 及 び 請 求 書 等 の 保 存 を 要 件 としており( 消 法 第 30 条 第 7 項 ) 契 約 書 や 請 求 書 等 に 記 載 された 金 額 66

17 を 基 に 算 出 されることが 前 提 となってい る 帳 簿 及 び 請 求 書 等 は 課 税 仕 入 に 係 る 支 払 対 価 の 額 及 び 課 税 資 産 の 譲 渡 等 の 対 価 の 額 を 記 載 したものとあるので 記 載 額 についてのみ 控 除 が 認 められると 考 え られる また 事 業 者 ( 買 手 )が 作 成 す る 仕 入 明 細 書 仕 入 れ 計 算 書 その 他 これ らに 類 する 書 類 については 課 税 仕 入 に 係 る 支 払 対 価 の 額 等 の 事 項 が 記 載 されて いなければならないが これらの 事 項 に ついては 仕 入 先 の 確 認 を 受 けたものに 限 る( 消 法 第 30 条 第 9 項 2 号 括 弧 書 き) とされており 事 業 者 が 独 自 に 支 払 対 価 の 額 を 記 したものは 除 外 されていること からも 契 約 書 と 異 なる 支 払 対 価 の 額 を 独 自 に 帳 簿 等 に 記 載 しても 保 存 要 件 を 満 たさないと 考 えられる したがって 仮 に 帳 簿 上 の 支 払 対 価 の 額 で 購 入 したと 認 識 していたとしても 要 件 を 満 たさず 当 該 課 税 仕 入 については 税 額 控 除 を 受 け ることができない 4 消 費 税 は 課 税 資 産 の 譲 渡 等 の 対 価 を 課 税 標 準 としており 取 引 価 額 がいかに 時 価 と 乖 離 していても 取 引 当 事 者 の 意 図 する 価 額 であれば その 対 価 の 額 を 基 に 算 出 される したがって 合 理 的 な 区 分 といっても 消 費 税 においては 時 価 に 引 き 直 す 考 え 方 はとっておらず 契 約 書 の 額 をそのまま 受 け 入 れるべきである 私 見 であるが 消 費 税 法 は 法 人 税 法 や 所 得 税 法 とは 性 格 が 異 なることから 否 定 論 の 考 え 方 を 一 概 に 否 定 することはできないと 思 わ れるものの 譲 渡 価 額 の 区 分 の 変 更 を 一 切 認 めないとするのは 消 費 税 の 特 殊 性 を 考 慮 し ても 法 的 根 拠 が 十 分 ということはできず 支 持 し 難 い また 売 買 当 事 者 が 契 約 書 で 区 分 している 以 上 それと 異 なる 区 分 を 主 張 す ることは 高 い 説 明 責 任 が 課 されることにな るから 売 買 当 事 者 が 区 分 を 事 後 に 自 由 に 変 更 できるものではなく 異 なる 区 分 を 主 張 す る 余 地 を 残 したとしても 支 障 にならないと 考 える したがって 区 分 が 合 理 的 でない 場 合 合 理 的 な 区 分 による 仕 入 税 額 控 除 を 認 める 余 地 があるとする 考 え 方 ( 肯 定 論 )を 支 持 する が 前 段 階 控 除 の 趣 旨 に 反 する 結 果 となるこ とも 問 題 があるので 一 般 には 区 分 の 変 更 を 認 めず 虚 偽 表 示 などの 事 実 ( 立 証 責 任 は 仕 入 税 額 控 除 を 主 張 する 納 税 者 にあると 考 えら れる )に 基 づき 譲 渡 側 に 課 税 が 生 じる 場 合 や 合 理 的 な 区 分 をしていないとして 譲 渡 側 が 課 税 を 受 けた 場 合 に 限 り 契 約 書 記 載 の 金 額 に よらず 仕 入 税 額 控 除 を 認 め 得 るとするのも 一 案 である 4 要 旨 土 地 建 物 の 一 括 譲 渡 があった 場 合 法 人 税 法 所 得 税 法 消 費 税 法 の 適 用 上 土 地 と 建 物 で 課 税 上 の 扱 いが 異 なることがあること から それぞれの 譲 渡 価 額 を 区 分 する 必 要 が 生 じる 売 買 契 約 は 当 事 者 の 合 意 により 成 立 することから 区 分 に 当 たっては 当 事 者 の 意 図 するところを 客 観 的 に 認 定 するのが 原 則 で あるが 契 約 書 等 で 土 地 及 び 建 物 の 譲 渡 の 対 価 が 明 示 されていない 場 合 あるいは 合 理 的 な 区 分 が 行 われていない 場 合 は 何 らかの 合 理 的 な 区 分 を 行 う 必 要 がある 区 分 の 方 法 としては 大 別 して 直 接 法 差 引 法 按 分 法 があるが 直 接 法 及 び 差 引 法 は 土 地 と 建 物 の 一 方 のみを 評 価 するのに 対 して 按 分 法 は 両 者 を 評 価 したうえでバランスをと って 対 価 の 額 を 分 割 するものである これら の 方 法 は 土 地 と 建 物 が 時 価 で 評 価 され それ ぞれの 合 計 額 で 一 括 譲 渡 されるときには い ずれも 同 様 の 結 果 となるが 現 実 の 取 引 にお いてそのような 前 提 が 常 に 妥 当 するわけでは ない 直 接 法 及 び 差 引 法 では 仮 に 一 方 の 時 価 が 正 確 に 把 握 されたとしても 総 額 が 何 ら かの 事 情 で 時 価 と 異 なる 場 合 は そのしわ 寄 せが 他 方 のみに 現 れることになる また 総 額 が 時 価 であったとしても 一 方 の 評 価 の 精 67

18 度 に 問 題 があれば そのしわ 寄 せが 他 方 に 現 れることになる したがって 一 方 のみの 評 価 による 直 接 法 や 差 引 法 では 他 方 の 評 価 に よるチェックが 働 かず バランスのとれた 区 分 となる 保 証 がない 直 接 法 や 差 引 法 による 場 合 は 区 分 が 偏 ら ないように 使 用 可 能 な 他 の 方 法 により 検 証 す ることが 望 ましい 税 務 通 達 は 区 分 方 法 に つき 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いを 定 め 一 定 の 条 件 を 付 した 上 で 建 物 先 取 法 等 の 方 法 を 容 認 している この 扱 いは 土 地 の 評 価 よ り 建 物 の 評 価 に 信 頼 を 置 くものということが できるが 現 在 では 土 地 の 評 価 水 準 も 是 正 されており 建 物 先 取 法 においても 土 地 の 公 的 評 価 による 検 証 を 行 うことは 特 に 困 難 では ないと 思 われるので 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いをことさら 強 調 する 必 要 はないと 思 われ る 個 別 物 件 の 譲 渡 対 価 の 額 ( 交 換 価 値 )は 必 ずしも 時 価 の 算 定 のように 客 観 的 に 定 まる ものではないので 土 地 建 物 の 各 譲 渡 価 額 の 区 分 は 課 税 上 の 便 宜 的 なものとならざるを 得 ない したがって その 区 分 は 恣 意 の 入 る 余 地 が 少 ない 公 平 で 簡 便 な 方 法 が 望 ましい 按 分 法 は 直 接 法 や 差 引 法 に 比 べて 偏 りが 少 なく 分 割 ファクターを 土 地 と 建 物 の 時 価 ( 客 観 的 交 換 価 値 )とすれば 恣 意 性 も 排 除 できると 考 えられる また 土 地 と 建 物 の 時 価 比 による 按 分 法 は 消 費 税 法 が 課 税 資 産 と 非 課 税 資 産 とが 一 括 譲 渡 された 場 合 の 区 分 方 法 として 法 定 しているものであり 税 目 間 の 整 合 性 においても 優 位 性 を 持 つといえる しかし 土 地 と 建 物 のそれぞれにつき 客 観 的 交 換 価 値 をもとめることは 困 難 な 場 合 も 多 い であろうから 結 局 固 定 資 産 税 評 価 額 や 相 続 税 評 価 額 等 の 公 的 評 価 を 時 価 として 扱 うこ とが 公 平 性 便 宜 性 徴 税 コストの 点 でも 優 れ 課 税 実 務 に 適 合 していると 思 われる 消 費 税 の 導 入 以 後 は 契 約 書 に 消 費 税 額 を 明 記 することが 通 例 となっており 契 約 書 上 の 建 物 の 価 額 が 把 握 できない 事 例 は 少 ないと 思 われる したがって 契 約 書 上 の 区 分 が 合 理 的 であるか 否 かが 問 題 となる 消 費 税 法 においては 資 産 等 の 譲 渡 価 額 が 時 価 といかに 異 なっていても 時 価 に 引 き 直 し て 課 税 することはしていないので 法 人 税 や 所 得 税 の 課 税 において 土 地 建 物 の 時 価 から みて 合 理 的 な 区 分 でないと 認 められる 場 合 で あっても 消 費 税 においては 必 ずしも 合 理 的 な 区 分 でないということはできない しかし 土 地 建 物 を 個 別 に 譲 渡 する 場 合 には 一 般 に 譲 渡 側 と 譲 受 側 は 利 害 が 対 立 する 関 係 に あることから 一 括 譲 渡 においてそれぞれの 資 産 の 時 価 との 乖 離 が 明 らかな 場 合 には 税 負 担 の 軽 減 以 外 の 何 らかの 合 理 的 な 理 由 を 要 するものと 思 われる 土 地 建 物 の 各 譲 渡 価 額 の 区 分 が 合 理 的 で ないと 認 められる 場 合 において 消 費 税 法 は 合 理 的 な 区 分 でない 場 合 の 区 分 方 法 を 法 定 し ているので 課 税 が 行 われる 場 合 には 時 価 比 による 按 分 法 以 外 に 税 目 共 通 の 合 理 的 な 区 分 方 法 はないことになる 消 費 税 においては 仕 入 税 額 控 除 の 適 用 に 関 し 課 税 資 産 である 建 物 の 譲 渡 価 額 を 特 定 する 必 要 があるが 仕 入 先 の 課 税 標 準 におけ る 区 分 との 関 係 が 問 題 となる この 点 につき 二 つの 考 え 方 が 生 じる 一 つは 売 手 と 買 手 は 表 裏 の 関 係 に 立 つので 合 理 的 な 区 分 の 判 断 に 相 違 があるわけではなく 買 手 の 仕 入 税 額 控 除 の 適 用 においても 売 手 の 課 税 標 準 の 区 分 と 同 様 に 扱 うべきであるとする 考 え 方 であ る もう 一 つは 仕 入 税 額 控 除 制 度 は 累 積 課 税 排 除 を 目 的 とするものであることから 売 手 が 課 税 される 以 上 の 額 を 税 額 控 除 すること は 予 定 されておらず 契 約 書 で 合 意 された 消 費 税 額 によらず 契 約 書 と 異 なる 区 分 により 仕 入 税 額 控 除 を 行 うことは 認 められないとする 考 え 方 である 後 者 の 場 合 契 約 書 記 載 の 区 分 が 不 合 理 で 消 費 税 額 が 過 少 となっている ときに 売 手 は 時 価 比 按 分 法 による 区 分 に 基 68

19 づき 更 正 等 を 受 けることになるが 買 手 はこ れを 理 由 として 仕 入 税 額 控 除 額 を 引 き 上 げる ことができない また 買 手 が 合 理 的 な 区 分 を 主 張 して 契 約 書 の 合 意 と 異 なる 金 額 で 仕 入 税 額 控 除 することも 認 められない 消 費 税 法 は 累 積 課 税 排 除 の 要 請 があること 時 価 に 引 き 直 して 是 正 する 仕 組 みではないことな ど 法 人 税 法 や 所 得 税 法 とは 性 格 を 異 にして おり 後 者 の 考 え 方 を 一 概 に 否 定 することは できないが 消 費 税 のそれらの 特 殊 性 を 考 慮 しても 区 分 の 変 更 を 一 切 認 めないとするに は 法 的 根 拠 が 不 足 しているように 思 われる ただし 前 段 階 控 除 の 趣 旨 に 反 する 結 果 とな ることも 問 題 があるので 一 般 には 区 分 の 変 更 を 認 めず 虚 偽 表 示 などの 事 実 がある 場 合 や 譲 渡 側 が 課 税 を 受 けた 場 合 に 譲 受 側 が 新 たに 請 求 を 受 けた 消 費 税 額 の 限 度 で 仕 入 税 額 控 除 を 認 めることとしてはどうかと 考 える おわりに 一 括 譲 渡 された 土 地 建 物 の 譲 渡 価 額 の 区 分 は 法 人 税 法 所 得 税 法 消 費 税 法 に 共 通 する 問 題 であるにもかかわらず 時 価 の 算 定 という 技 術 的 に 困 難 な 問 題 に 加 え 法 人 税 所 得 税 の 関 連 する 諸 規 定 の 相 違 などにより その 取 扱 いが 統 一 的 に 理 解 されているとはい い 難 い また 消 費 税 においては 適 正 な 価 格 転 嫁 を 予 定 する 税 制 であること いわゆる 物 税 としての 性 格 を 有 すること( 人 への 帰 属 を 問 題 としないという 意 味 で 個 人 や 法 人 に 帰 属 する 所 得 を 課 税 物 件 とする 所 得 税 や 法 人 税 のような いわゆる 人 税 とは 性 格 が 異 な る ) 時 価 を 基 本 とする 考 え 方 に 馴 染 まない ことなどの 特 殊 性 があることにかんがみ 法 人 税 法 や 所 得 税 法 の 扱 いとどのように 関 係 づ けるべきか 帳 簿 方 式 等 との 関 連 からどの 程 度 の 整 合 性 をとるべきかなど 未 解 明 なとこ ろが 多 い 本 稿 では 合 理 的 な 区 分 の 統 一 的 な 解 釈 にも 焦 点 を 当 てながら 検 討 を 加 え 私 見 を 述 べたところであるが 種 々の 見 解 が 生 じ うるところ 見 解 の 統 一 には 判 決 事 例 等 の 積 み 重 ねが 必 要 であると 思 われる (1) この 外 同 じ 種 類 の 資 産 でも 一 の 契 約 により 譲 渡 した 資 産 のうちに 短 期 保 有 資 産 と 長 期 保 有 資 産 がある 場 合 建 物 とその 付 属 設 備 のように 耐 用 年 数 が 異 なるものがある 場 合 居 住 用 建 物 とそ れ 以 外 の 建 物 のように 居 住 用 財 産 の 特 別 控 除 の 適 用 対 象 となる 部 分 とならない 部 分 がある 場 合 などには それぞれの 譲 渡 価 額 を 区 分 する 必 要 が 生 じる なお 短 期 保 有 資 産 と 長 期 保 有 資 産 の 価 額 は 譲 渡 時 の 時 価 比 により 按 分 することとされ ている( 所 基 通 33-11) (2) 按 分 法 は 区 分 の 方 法 ということができるが 直 接 法 差 引 法 は 区 分 の 方 法 というより 土 地 又 は 建 物 の 譲 渡 価 額 の 算 出 方 法 であり 結 果 として それぞれの 譲 渡 価 額 に 区 分 されるにすぎない た とえば 土 地 の 価 額 を 求 めるには 土 地 を 直 接 的 に 評 価 する 直 接 法 と 間 接 的 に 土 地 を 評 価 する 建 物 先 取 法 とがあるが いずれの 方 法 を 選 択 するか は 土 地 と 建 物 の 直 接 法 による 評 価 方 法 の 正 確 性 利 用 可 能 性 難 易 度 などを 勘 案 して 決 定 される この 意 味 では 土 地 評 価 のための 直 接 法 と 建 物 差 引 法 又 は 建 物 評 価 のための 直 接 法 と 土 地 差 引 法 は 表 裏 の 関 係 にあるともいえる (3) 措 置 法 通 達 逐 条 解 説 財 経 詳 報 社 p664 (4) 裁 決 事 例 に 比 べて 土 地 建 物 の 一 括 譲 渡 の 裁 判 事 例 は 多 くない 他 に 固 定 資 産 税 評 価 額 を 基 に 按 分 する 方 法 が 十 分 な 合 理 性 を 有 するとした 東 京 高 裁 平 成 10 年 11 月 26 日 判 決 や 相 続 税 評 価 額 を 基 に 按 分 する 方 法 が 合 理 的 で 適 正 な 方 法 で あるとした 大 阪 地 裁 平 成 元 年 11 月 14 日 判 決 があ る (5) 建 設 省 が 建 築 の 動 態 を 把 握 するため 建 築 基 準 法 15 条 の 規 定 による 建 築 工 事 届 出 等 を 基 に 統 計 法 による 指 定 統 計 等 として 毎 月 実 施 している 建 築 動 態 統 計 調 査 の 結 果 を 取 りまとめたもので ある 那 覇 地 裁 平 成 16 年 9 月 21 日 判 決 は 同 年 報 を 客 観 的 な 合 理 性 を 有 する 資 料 であるとし ている (6) 再 建 築 価 額 を 時 価 とすることの 妥 当 性 につい ては 京 都 地 裁 昭 和 50 年 12 月 12 日 判 決 参 照 (7) 平 成 13 年 10 月 24 日 裁 決 では 住 宅 地 価 指 数 と 建 築 費 指 数 (いずれも 現 国 土 交 通 省 )による 地 価 と 木 造 建 築 費 の 推 移 につき 記 しているが 平 成 2 年 3 月 を 100 とする 指 数 は 平 成 10 年 にお 69

20 いて 地 価 40.7 と 木 造 建 築 費 となってお り 地 価 は 著 しく 下 落 している 状 況 にあったもの の 木 造 建 築 費 は 緩 やかな 上 昇 となっていること を 指 摘 している (8) 客 観 的 交 換 価 値 は 時 価 と 同 義 であるが 交 換 価 値 と 区 分 するため 又 はそれと 比 較 して 強 調 する ため 文 中 においてそれらを 併 用 している (9) 平 成 15 年 から 自 己 の 所 有 する 土 地 又 は 建 物 の ある 市 区 町 村 のすべての 土 地 又 は 建 物 の 価 格 を 縦 覧 できる 制 度 ( 固 定 資 産 課 税 台 帳 の 縦 覧 制 度 ) が 開 始 し 近 隣 の 土 地 建 物 の 価 格 との 比 較 が 可 能 となったことから 評 価 のバランスが 担 保 され ている (10) 平 成 元 年 12 月 22 日 の 土 地 基 本 法 の 制 定 にお いて その 第 16 条 で 国 は 適 正 な 地 価 の 形 成 及 び 課 税 の 適 正 化 のため 土 地 の 正 常 な 価 格 を 公 示 するとともに 公 的 土 地 評 価 について 相 互 の 均 衡 と 適 正 化 が 図 られるように 努 めるものとする と 規 定 されたことから 土 地 政 策 審 議 会 及 び 政 府 税 制 調 査 会 の 答 申 が 出 され 平 成 3 年 1 月 25 日 には 総 合 土 地 政 策 推 進 要 綱 が 閣 議 決 定 された そ の 結 果 相 続 税 評 価 では 平 成 4 年 度 において 土 地 の 評 価 割 合 を 地 価 公 示 価 格 水 準 の 8 割 程 度 と するなど また 固 定 資 産 税 評 価 では 平 成 6 年 度 以 降 の 評 価 替 えにおいて 同 様 に 7 割 程 度 とする など 相 互 の 均 衡 化 と 適 正 化 が 図 られてきている (11) 昭 和 57 年 8 月 2 日 裁 決 や 昭 和 53 年 5 月 26 日 裁 決 においては 本 件 と 同 様 原 価 比 による 按 分 法 が 採 用 されているが これらはいずれも 不 動 産 販 売 事 業 者 との 売 買 に 係 る 事 件 である なお 他 にも 原 価 比 を 採 用 した 裁 決 はあるが 公 表 裁 決 はなく 裁 決 要 旨 により 不 動 産 販 売 業 者 との 売 買 であることを 確 認 できるものはない (12) 法 人 税 法 基 本 通 達 は 取 得 後 おおむ を 用 いることをもって 不 合 理 ということはでき ない と 判 示 している (15) 第 55 回 TKC 租 税 判 例 研 究 会 発 表 者 意 見 p131 (16) 判 例 評 釈 土 地 建 物 を 一 括 譲 渡 した 場 合 の 建 物 取 得 価 額 の 算 出 方 法 TKC 税 研 情 報 拓 殖 大 学 商 学 部 教 授 岸 田 貞 夫 p17 (17) 事 業 者 が 土 地 重 課 に 係 る 区 分 の 扱 いによって いるときは いずれの 税 目 でもその 区 分 が 認 めら れることから この 扱 いに 従 っている 限 り 建 物 先 取 法 等 も 税 目 に 共 通 する 合 理 的 な 区 分 方 法 と いうことができる (18) 例 外 として 役 員 に 対 する 著 しく 低 い 価 額 での 譲 渡 贈 与 及 び 自 家 消 費 については 時 価 で 評 価 することとなっている( 消 法 第 28 条 第 1 項 第 2 項 ) (19) 建 物 があっても 土 地 のみの 譲 渡 契 約 書 が 作 成 されている 場 合 は 建 物 が 無 価 値 の 資 産 ( 有 姿 除 却 資 産 )であるか 建 物 が 贈 与 されたものか 不 合 理 な 区 分 によるものか 単 に 区 分 が 行 われてい ないだけか を 事 実 に 基 づき 判 断 する 必 要 がある (20) 税 務 調 査 の 際 に 事 業 者 が 帳 簿 等 の 提 示 を 拒 否 した 事 例 において 仕 入 税 額 控 除 の 可 否 を 巡 り 帳 簿 等 の 保 存 要 件 につき 判 示 したものとして 大 阪 地 裁 平 成 10 年 8 月 10 日 判 決 ( 判 例 時 報 1661 号 p31) 津 地 裁 平 成 10 年 9 月 10 日 判 決 ( 訟 月 46 巻 2 号 p825) 東 京 地 裁 平 成 11 年 3 月 30 日 判 決 ( 訟 月 46 巻 2 号 p899)がある ね 1 年 以 内 に 建 物 等 の 取 壊 しに 着 手 する 等 当 初 からその 建 物 等 を 取 り 壊 して 土 地 を 利 用 する 目 的 であることが 明 らかであると 認 められるとき には 当 該 建 物 等 の 取 壊 しのときにおける 帳 簿 価 額 及 び 取 壊 し 費 用 の 合 計 額 を 当 該 土 地 の 取 得 価 額 に 算 入 するとしている (13) 津 地 裁 平 成 13 年 7 月 19 日 判 決 参 照 (14) 所 得 税 に 係 る 同 旨 の 措 置 法 通 達 及 び について 平 成 5 年 3 月 12 日 最 高 裁 第 二 小 法 廷 判 決 は 不 動 産 業 界 において 合 理 的 なものと 認 められ 慣 行 化 している