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1 豊 浦 獣 医 科 クリニック 村 田 知 下 痢 症 対 策 まずは 環 境 対 策 から はじめに なぜ 動 物 は 下 痢 をするのでしょ 表 1: 下 痢 の 発 生 機 序 うか 実 はこの 下 痢 という 現 象 は ウイルス 感 染 による 発 熱 と 同 じよ うな もともとは 体 を 守 るための 生 体 防 御 反 応 の1つです 通 常 ヒトでは 1 日 に 約 9l の 水 が 大 腸 まで 来 て そのうち 8.9l が 吸 収 されています 下 痢 というのは いろいろな 機 序 ( 表 1)によって 吸 収 された 水 が 腸 管 内 に 大 洪 水 を 起 こして 細 菌 や 毒 素 を 体 外 に 排 出 しようという 働 き にほかならないのです 従 って 下 痢 が 起 こった 場 合 にふん 便 の 検 査 を 行 うと 大 腸 菌 が 検 出 されるのは 当 然 のことで 消 化 不 良 性 の 下 痢 や 寒 冷 感 作 による 冷 えやストレスによ る 神 経 性 の 下 痢 でも 大 腸 菌 は 検 出 されます また 腸 管 内 では 細 菌 同 士 が 過 酷 な 生 存 競 争 を 繰 り 広 げていますが この 生 存 競 争 を 勝 ち 抜 くための 手 段 として 病 原 性 大 腸 菌 が 持 っている 知 恵 があります この 知 恵 の1つに 大 腸 菌 自 身 が 腸 管 にしっかりと 吸 着 した 状 態 で 毒 素 を 産 出 して 下 痢 という 大 洪 水 によってほかの 菌 を 腸 管 内 から 追 い 出 すことで 生 存 競 争 に 勝 とうとするも のがあります このため 下 痢 が 発 生 した 時 に 原 因 が 分 からないまま 抗 菌 薬 を 投 与 することは 無 駄 であるばかりでなく 腸 内 細 菌 叢 のバランスを 崩 してしまうため 病 原 性 大 腸 菌 を 助 け ることにもなります たとえ 一 時 的 に 下 痢 が 治 っていても 離 乳 後 の 大 腸 菌 症 やその 後 の 衰 弱 死 の 増 加 につながる 事 例 は 多 く 見 られています ここでは 実 際 に 下 痢 が 発 生 する 環 境 要 素 や 発 生 予 防 のための 管 理 方 法 のポイント について 解 説 したいと 思 います

2 哺 乳 子 豚 の 下 痢 表 2は エス エム シー で 過 去 に 依 頼 された 下 痢 の 原 因 調 査 の 結 果 です 先 にも 述 べた 通 り 大 腸 菌 が 検 出 される のは 当 然 として そのほかに 病 原 性 大 腸 菌 が 検 出 されるものが1 割 クロストリ ジウムが 検 出 されるものが3 割 コクシ ジウムが 検 出 されるものが2 割 となって います 表 2: 稟 告 下 痢 の 検 査 結 果 ( 哺 乳 豚 肉 豚 ) このうち 子 豚 への 抗 菌 薬 投 与 による 治 療 が 必 要 なものは 全 体 の2 割 程 を 占 めるコ クシジウムとクロストリジウムによる 下 痢 だけです 実 際 に 筆 者 が 経 験 している 症 例 に おいても 9 割 以 上 が 母 豚 に 対 する 治 療 と 環 境 対 策 の 実 施 で 治 癒 し 子 豚 には 抗 菌 薬 を 投 与 する 必 要 のないものでした 従 って 哺 乳 豚 の 下 痢 が 発 生 した 場 合 の 対 処 方 法 としては 1 豚 舎 構 造 や 温 度 湿 度 風 の 動 きなどの 環 境 の 確 認 と 対 策 の 実 施 2 母 豚 の 状 態 の 把 握 3 病 原 性 大 腸 菌 クロスト リジウム コクシジウム ウイルス(TGE や PED など)の 関 与 を 確 認 するための 検 査 の 実 施 の3 点 が 重 要 になります 哺 乳 中 の 下 痢 の 発 症 要 因 対 策 の 前 に まず 最 も 下 痢 の 発 症 しやすい 哺 乳 中 における 発 症 要 因 について 解 説 した いと 思 います 哺 乳 中 の 下 痢 の 発 症 は 前 述 の 病 原 体 が 関 与 していない 場 合 母 豚 の 泌 乳 量 と 子 豚 の 吸 引 量 とのバランスが 崩 れることによって 起 こります これが 下 痢 発 生 の9 割 以 上 の 原 因 となっており 残 り1 割 が 冷 えによる 一 過 性 の 下 痢 です この 比 率 は 豚 舎 構 造 によっ て 多 少 変 化 します 母 豚 の 泌 乳 力 が 崩 れる 要 因 母 豚 の 泌 乳 力 が 崩 れる 要 因 は ⅰ) 候 補 豚 の 体 づくりの 失 敗 ⅱ) 環 境 制 御 の 失 敗 ⅲ) 循 環 血 液 量 の 低 下 の3 点 です

3 ⅰ) 候 補 豚 の 体 づくりの 失 敗 初 回 種 付 け 時 の 目 標 体 重 目 標 背 脂 肪 厚 の 設 定 を 失 敗 すると 初 産 分 娩 後 の 立 ち 上 が りの 悪 化 や 乳 房 炎 の 発 症 による 泌 乳 量 低 下 不 使 用 分 房 の 増 加 につながります この 影 響 は 初 産 時 の 下 痢 だけでなく 2 産 以 降 にも 残 ることになります ⅱ) 環 境 制 御 の 失 敗 環 境 制 御 の 失 敗 の 大 きな 要 因 は ア) 吹 き 上 がる 風 の 影 響 イ) 母 豚 環 境 と 子 豚 環 境 の 温 度 差 の2 点 です ア)の 吹 き 上 がる 風 の 影 響 について は 後 述 の 循 環 血 液 量 の 低 下 にも 関 連 しますが 豚 が 腹 を 冷 やすことによる 影 響 です この 風 の 動 きは 豚 舎 のすき 間 風 の 多 さや 換 気 方 法 による 多 少 はあります が 絶 対 に 起 こしてはいけない 事 柄 で あり( 写 真 1) この 風 の 影 響 により 哺 乳 子 豚 に 下 痢 が 発 生 しない 場 合 でも 授 乳 中 の 母 豚 の 不 調 を 招 くこととなり これが 次 の 妊 娠 へ 影 響 したり 離 乳 後 の 子 豚 の 下 痢 ( 病 原 性 大 腸 菌 によるも のが 主 ) 発 生 の 源 になったりします 離 乳 後 の 大 腸 菌 症 の 問 題 がなかなか 解 決 しない 農 場 では 授 乳 中 のこの 風 の 存 在 が 大 きな 要 因 の1つとなっている ケースも 認 められています これは このような 環 境 で 飼 養 されている 母 豚 からの 排 菌 量 増 加 が 原 因 と 考 えられます イ)の 母 豚 環 境 と 子 豚 環 境 の 温 度 差 ( 表 3)については 母 豚 の 適 温 である と 子 豚 の 適 温 である をどう 分 けられるか ということがポイントとなります ここで 重 要 なのは 保 温 箱 の 存 在 と 保 温 器 具 の 選 択 です 写 真 1: 吹 き 上 がりの 風 の 防 止 外 気 温 33 の 分 娩 豚 舎 真 夏 でも 吹 き 上 がる 風 を 抑 えることで 下 痢 発 生 を 予 防 する 表 3: 異 なった 環 境 給 餌 による 低 臨 界 温 度 保 温 箱 というのは 子 豚 にとっては 風 よけ 箱 であり 体 感 温 度 を 維 持 し 体 力 の 消 耗 を 防 ぐためのものです 一 方 母 豚 にとっては 保 温 器 具 からの 熱 を 遮 って 乳 房 炎 発 生

4 を 防 いだり 体 感 温 度 を 下 げて 食 下 量 を 維 持 させるための 熱 の 遮 断 箱 としての 役 割 があ ります また ガスを 利 用 した 保 温 器 具 は 熱 量 が 高 いことが 利 点 です しかし 逆 に その 熱 による 母 豚 ( 特 に 顔 や 乳 房 )への 直 接 的 な 影 響 酸 素 消 費 増 加 による 酸 欠 状 態 を 起 こしやすいこと 上 昇 気 流 の 増 加 による 吹 き 上 がりの 風 が 起 こりやすく なることなど 欠 点 もあるため これらの 事 柄 を 考 慮 して 使 用 することが 重 要 にな ります( 写 真 2 4) 前 述 の 吹 き 上 がる 風 と 酸 欠 状 態 の 影 響 は 哺 乳 子 豚 や 離 乳 後 の 下 痢 だけでなく 肥 育 段 階 での 衰 弱 死 増 加 や 呼 吸 器 病 増 加 の 要 因 として 絶 対 に 起 こしてはいけな い 現 象 であり 種 豚 子 豚 肉 豚 すべ ての 豚 にとっての 環 境 制 御 の 中 で 最 も 重 要 な 項 目 になります 写 真 2: 保 温 箱 のない 分 娩 豚 房 子 豚 が 逃 げてしまっている 保 温 器 具 からの 熱 が 母 豚 に 直 接 当 たってしまう ⅲ) 循 環 血 液 量 の 低 下 循 環 血 液 量 の 低 下 は ア) 飲 水 量 低 下 イ) 運 動 不 足 と 圧 迫 ウ) 床 面 を 走 って 吹 き 上 がる 風 による 腹 冷 え エ) 床 面 の 汚 染 膀 胱 炎 増 加 などの 要 因 により 起 こります これらの 要 因 によって うつ 伏 せに 寝 る 母 豚 が 増 加 し その 結 果 乳 房 への 血 流 量 低 下 による 泌 乳 量 不 足 が 起 こ って ひいては 下 痢 発 生 の 原 因 となりま す また このような 母 豚 では 初 乳 がド ロドロになりやすく 子 豚 が 乳 を 吸 引 で きなくなります たとえ 分 割 授 乳 を 行 っ たとしても この 状 態 では 初 乳 が 十 分 に 写 真 3: 保 温 箱 造 設 写 真 4: 保 温 箱 造 設 熱 源 の 影 響 が 母 豚 に 直 接 当 たる 場 合 コルツヒー ターのほうが 良 いことが 多 い 飲 めない 子 豚 が 増 加 し 早 発 性 下 痢 が 発 生 する 原 因 となってしまいます

5 これを 防 ぐためには 最 低 でも 分 娩 前 2 週 間 からの 母 豚 の 飲 水 量 排 尿 量 (ふんの 硬 さ 床 面 の 汚 れで 判 断 ) 起 立 回 数 と 起 立 している 時 間 をチェックし 飲 水 量 と 排 尿 量 を 十 分 に 確 保 することが 重 要 です 排 尿 量 が 少 ない 母 豚 は 導 尿 や 降 圧 利 尿 剤 の 使 用 も 必 要 となります 子 豚 の 吸 引 量 が 低 下 する 要 因 子 豚 の 吸 引 量 が 低 下 する 要 因 は ⅰ) 生 時 体 重 活 力 低 下 ⅱ) 環 境 感 作 ⅲ) 里 子 の 失 敗 ⅳ) 母 豚 への 治 療 不 足 が 要 因 として 挙 げられます ⅰ)の 生 時 体 重 活 力 低 下 は ア) 母 豚 の 循 環 障 害 ( 前 述 ) イ) 妊 娠 中 の 給 餌 ミス: 特 に 妊 娠 初 期 3 週 間 と 妊 娠 末 期 2 週 間 ウ) 分 娩 豚 舎 と 妊 娠 豚 舎 との 温 度 差 による 飲 水 排 尿 不 足 と 食 下 量 不 足 によって 起 こります ⅱ)の 環 境 感 作 は 主 に 分 娩 直 後 3 日 までの 子 豚 の 体 感 温 度 低 下 によって 起 こり この 体 感 温 度 低 下 の 引 き 金 として 大 きいのが 先 にも 述 べた 吹 き 上 がる 風 の 影 響 です ⅲ)の 里 子 の 失 敗 については 主 に 子 豚 の 吸 う 力 と 乳 頭 の 大 きさ 乳 房 の 張 りのバラ ンスが 悪 い 場 合 など 里 子 を 行 う 目 的 のズレ( 母 豚 のために 行 うのか 子 豚 のために 行 うのか)が 起 こった 場 合 に 発 生 します ⅳ)の 母 豚 治 療 の 不 足 は 主 に 乳 房 炎 膀 胱 炎 治 療 の 不 足 を 指 し 母 豚 の 状 態 を 餌 食 いの 良 し 悪 しだけで 判 断 している 場 合 に 起 こる 現 象 です( 表 4) 離 乳 後 の 下 痢 次 に 離 乳 後 の 下 痢 が 発 症 する 環 境 要 因 と 管 理 のポイントですが これは 死 なない 管 理 から 発 育 する 管 理 への 変 更 をいつ どのように 行 うかということです これに は 換 気 と 保 温 の 意 味 合 いと 温 度 を 下 げるということの 目 的 を 理 解 した 上 で 離 乳 後 の 食 下 量 と 飲 水 量 を 把 握 することが 重 要 になります つまり 1 換 気 : 入 気 と 排 気 があり この 両 者 のバランスとそのときの 空 気 の 動 き 方 を 考 える 2 保 温 : 豚 の 発 散 熱 量 = 食 下 量 と 必 要 熱 量 とのバランスを 考 える 3 温 度 を 下 げる 目 的 : 食 下 量 を 増 加 させるために 行 う= 食 下 量 が 少 ないときは 下 げては いけない の3 点 を 理 解 し 吹 き 上 がる 風 による 腹 冷 えと 酸 欠 を 起 こさない 状 態 で( 写 真 6 7) どのくらいの 飼 料 を 子 豚 に 食 べさせたいかという 目 標 を 明 確 にすることが 重 要 です こ

6 の 酸 欠 については 豚 の 寝 方 でも 判 断 できます この 場 合 母 乳 から 固 形 飼 料 への 急 変 への 対 応 として 制 限 給 餌 や 撒 き 餌 での 対 応 腸 絨 毛 の 萎 縮 脱 落 に 対 する 対 応 として 溶 きミルクの 給 与 も 必 要 になります( 写 真 8) このように 衣 服 靴 の 履 き 替 えや 水 洗 消 毒 の 実 施 により 人 や 豚 の 移 動 器 具 器 材 による 接 触 感 染 を 抑 えること またそれらの 作 業 を 行 うときの 意 識 が すべての 病 気 を 防 ぐ 基 本 的 な 事 柄 として 重 要 となっています ( 月 刊 養 豚 界 2007 年 4 月 号 掲 載 )

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