ロシア語ロシア文学研究第44号

Size: px
Start display at page:

Download "ロシア語ロシア文学研究第44号"

Transcription

1

2 日 本 ロシア 文 学 会 会 誌 規 定 1. 本 誌 は ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 と 称 する 2. 日 本 ロシア 文 学 会 会 員 ( 以 下 会 員 とする) はすべて 本 誌 に 投 稿 することができ る 3. 本 誌 の 発 行 は 毎 年 度 一 回 以 上 とする 4. 本 誌 の 編 集 は 編 集 委 員 会 がおこなう (イ) 編 集 委 員 会 は 委 員 長 および 各 支 部 の 推 薦 による 委 員 をもって 構 成 する 各 支 部 の 推 薦 による 委 員 の 内 訳 は 関 東 支 部 5 名, 関 西 支 部 2 名, 北 海 道 支 部 1 名, 東 北 支 部 1 名, 中 部 支 部 1 名, 西 日 本 支 部 1 名 とする (ロ) 委 員 長 は 理 事 会 が 会 員 のうちから 委 嘱 する (ハ) 支 部 推 薦 による 委 員 が 委 員 長 をつとめる 場 合, 当 該 支 部 は, 必 要 に 応 じて, 編 集 委 員 1 名 を 追 加 推 薦 することができる (ニ) 委 員 長 および 委 員 の 任 期 は 2 年 とする ただし 留 任 を 妨 げない (ホ) 別 に 編 集 実 務 を 助 けるものとして, 編 集 員 を 若 干 名 おくことができる (ヘ) 委 員 会 は 原 稿 の 採 否 を 決 定 する また 必 要 ある 場 合 は 原 稿 の 修 正 を 求 めること ができる 5. 本 誌 の 掲 載 対 象 は 次 のものとする (イ) 研 究 論 文 (ロ) 学 会 研 究 報 告 要 旨 (ハ) 書 評 (ニ) 学 会 動 静 ほか 6. 掲 載 対 象 の 選 択 は 次 の 基 準 による (イ) 会 員 が 投 稿 し, 編 集 委 員 会 が 掲 載 を 適 当 と 認 めたもの (ロ) 編 集 委 員 会 がとくに 執 筆 依 頼 したもの 7. 原 稿 の 執 筆 要 項 は 別 に 定 める 8. 本 誌 の 内 容 は, 自 動 的 に 日 本 ロシア 文 学 会 ホームページの 掲 載 対 象 となる ただし 図 版 など 著 作 権 上 の 問 題 がある 部 分 はその 限 りでない 1968 年 10 月 制 定 1994 年 10 月 1995 年 9 月 1998 年 10 月 1999 年 10 月 2003 年 7 月 2005 年 5 月 2006 年 7 月 修 正 2009 年 10 月 最 終 改 正

3 ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 第 44 号 2012 年 目 次 論 文 坂 中 紀 夫 未 成 年 における 行 為 と 理 念 Ф М ドストエフスキーにおける 自 伝 的 叙 述 の 問 題 アハ ート 1 山 路 明 日 太 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん 影 と 光 の 物 語 アハ ート22 宮 川 絹 代 視 覚 の 彼 方 へ ブーニンの 恋 愛 における 胎 内 的 なもの アハ ート40 高 田 映 介 チェーホフの 谷 間 におけるリーパとアクシーニヤの 表 裏 関 係 について アハ ート57 三 好 俊 介 革 命 と 孤 独 のロシア ホダセヴィチ 詩 集 重 い 竪 琴 とチェーホフ アハ ート75 梶 山 祐 治 パステルナークの 作 品 における 水 の 機 能 初 期 詩 から 物 語, ドクトル ジヴァゴ へ アハ ート95 村 越 律 子 名 詞 における 個 体 認 識 と 連 続 体 認 識 I am a student と Я студент アハ ート117 Nina PETRISHCHEVA Russian Phatic Interjections : Development and Functions アハ ート135 本 田 晃 子 ミチューリンの 庭 社 会 主 義 リアリズムにおける 建 築 と 自 然 アハ ート154 小 俣 智 史 セトニツキイによるフョードロフ 解 釈 オイコノミアとエコノミーの 視 点 から アハ ート175 熊 野 谷 葉 子 チャストゥーシカにおける 歌 詞 音 楽 身 体 動 作 の 相 関 関 係 コストロマ 州 ネレフタ 地 区 の 調 査 資 料 より アハ ート193 柚 木 かおり 新 兵 見 送 りの 歌 とその 社 会 的 文 化 的 背 景 1940 年 代 コストロマ 州 ネレフタ 地 区 の 事 例 から アハ ート219 江 村 公 世 紀 転 換 期 の 生 命 の 概 念 ベフテレフ 心 理 と 生 命 (1904 年 ) を 読 む アハ ート238 書 評 アハ ート258 ワシーリー モロジャコフ 著 ( 村 野 克 明 訳 ) ジャポニズムのロシア 知 られざる 日 露 文 化 関 係 史 ( 上 野 理 恵 ) 秋 草 俊 一 郎 著 ナボコフ 訳 すのは 私 自 己 翻 訳 が 開 くテクスト, 若 島 正 沼 野 充 義 編 書 きなおすナボコフ, 読 みなおすナボコフ ( 小 西 昌 隆 ) 白 倉 克 文 著 ラジーシチェフからチェーホフへ ( 今 仁 直 人 ) 中 沢 敦 夫 著 ロシア 古 文 鑑 賞 ハンドブック ( 岡 本 崇 男 ) 御 子 柴 道 夫 著 ヴラジーミル ソロ ヴィヨフ ( 大 須 賀 史 和 ) 2012 年 度 日 本 ロシア 文 学 会 賞 アハ ート295 学 会 動 静 アハ ート298 弔 辞 : 追 悼 藤 沼 貴 先 生 ( ) ( 伊 東 一 郎 ) 役 員 一 覧 その 他

4 Бюллетень Японской ассоциации русистов No г. СОДЕРЖАНИЕ Статьи Саканака Н. Действие и идея в романе «Подросток» : о вопросе автобиографического повествования в творчестве Ф. М. Достоевского アハ ート 1 Ямадзи А. «Старуха Изергиль» М. Горького : рассказ о «тени» и «свете» アハ ート22 Миягава К. «Утробность» в произведениях И.А. Бунина о любви アハ ート40 Такада Э. Внешние и внутренние связи образов Липы и Аксиньи в повести А.Чехова «В овраге» アハ ート57 Миёси С. Одиночество в колеблемой России : «Тяжелая лира» В. Ф. Ходасевича и А. П. Чехов アハ ート75 Кадзияма Ю. Роль воды в творчестве Б. Л. Пастернака : анализ раннего стихотворения, «Повести» и «Доктора Живаго» アハ ート95 Муракоши Р. Дискретность и континуальность в трактовке существительных : I am a student и Я студент アハ ート117 Петрищева Н. Ю. Русские фатические междометья : развитие и функции アハ ート135 Хонда А. Мичуринский сад : архитектура и природа в социалистическом реализме アハ ート154 Омата Т. Об истолковании учения Н. Ф. Федорова Н. А. Сетницким с точки зрения сопоставления домостроительства Федорова и экономики Маркса アハ ート175 Куманоя Ё. Связь слов, музыки и движения в русской частушке ( По материалам, собранным в Нерехтском районе Костромской области) アハ ート193 Юноки К. Рекрутские припевки и социокультурный контекст на примере Нерехтского района Костромской области 1940-х гг. アハ ート219 Эмура К. О концепции жизни на рубеже XIX и XX веков : «Психика и жизнь» ( 1904) В. М. Бехтерева. アハ ート238 Рецензии アハ ート258 В. Молодяков. Россия японизма. Неизвестные страницы истории русскояпонских культурных связей. ( Р. Уэно) С. Акикуса. Набоков, перевод мой : как самоперевод создает текст. М. Нумано, Т. Вакасима ( ред.). Пересмотор пересматривающего Набокова. ( М. Кониси) К. Сиракура. От Радищева до Чехова. Гуманность русской культуры. ( Н. Имани) А. Наказава. Как читать древнерусские письменные памятники. ( Т. Окамото) М. Микошиба. Владимир Соловьев : провидец, поэт, философ. ( Ф. Осука) Премия ЯАР за лучшие работы 2012 года アハ ート295 Хроника アハ ート298

5 Bulletin of the Japan Association for the Study of Russian Language and Literature No CONTENTS Articles N. Sakanaka The Action and the Idea in A Raw Youth : On the Autobiographical Narrative in F. M. Dostoevskyʼs Works アハ ート 1 A. Yamaji The Old Woman Izergil by M. Gorky : The Story of Shadow and Light アハ ート22 K. Miyagawa Utrobnostʼ in I. A. Buninʼs love stories アハ ート40 E. Takada The Interrelation between Lipa and Aksinya in Chekhovʼs In the Ravine アハ ート57 S. Miyoshi Solitude in revolutionary Russia : V. F. Khodasevichʼs The Heavy Lyre and A. P. Chekhov アハ ート75 Y. Kajiyama The Function of Water in Works of Boris Pasternak : Analysis of early poem, Tale and Doctor Zhivago アハ ート95 R. Murakoshi Discreteness and continuity in the interpretation of nouns : I am a student and Я студент アハ ート117 N. Petrishcheva Russian Phatic Interjections : Development and Functions アハ ート135 A. Honda Michurinʼs Garden : Socialist Realist Architecture and Nature アハ ート154 T. Omata The Interpretation of the Thought of N. F. Fedorov by N. A. Setnitskii from the Viewpoint of a Comparison between Fedorovʼs Oikonomia and Marxʼs Economy アハ ート175 Y. Kumanoya The relationship among words, music, and body motions in Russian Chastushka. : From fieldwork materials in Nerekhtsky District, Kostroma Oblast アハ ート193 K. Yunoki Songs of new army recruits and the socio-cultural context of Nerekhta region in Kostroma province in 1940s アハ ート219 K. Emura On the Concept of Life at the turn of the century : Reconsidering Vladimir Bekhterevʼs Psyche and Life (1904). アハ ート238 Reviews アハ ート258 V. Molodiakov. Russia of Japonisme : the Unknown Pages of the History of Russo-Japanese Cultural Relations. (R. Ueno) S. Akikusa. Nabokov, Translation Is Mine : How Self- Translation Creates the Text. M. Numano, T. Wakashima (eds.). Revising Nabokov Revising. (M. Konishi) K. Shirakura. From Radishchev to Chekhov : The Humanity of Russian Culture. (N. Imani) A. Nakazawa. How to Read Old Russian Texts. (T. Okamoto) M. Mikoshiba. Vladimir Solovʼev : Visionary, Poet, Philosopher. (F. Osuka) JASRLL 2012 Outstanding Research Award アハ ート295 Chronicle アハ ート298

6 ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 44 ( 日 本 ロシア 文 学 会,2012) 未 成 年 における 行 為 と 理 念 Ф М ドストエフスキーにおける 自 伝 的 叙 述 の 問 題 坂 中 紀 夫 1.はじめに Ф М ドストエフスキーの 未 成 年 の 末 尾 には, 主 人 公 アルカージーが 抱 くある 理 念 についての, 理 解 が 困 難 であるような 記 述 がある 主 人 公 の 一 人 称 叙 述 によるこの 作 品 では, 冒 頭 で 以 下 の 文 章 が 自 伝 であることが 告 げら れ, 1 序 盤 に ロスチャイルドの 理 念 なる 概 念 の 説 明 をはさみ, 結 末 でその 理 念 が 自 伝 的 回 想 を 通 して 変 容 したことが 記 される 問 題 は,その 記 述 で 主 人 公 が, 過 去 の 理 念 が, 結 末 における 現 在 の 執 筆 時 から 見 ると, 以 前 と 同 じであるが, 姿 が 全 く 異 なる (13 : 451) 2 と 述 べていることである この 言 明 は, 同 一 性 と 差 異 性 の 共 存 という 矛 盾 を 含 んでおり, 従 って 常 識 的 には 理 解 しがたい このことの 問 題 性 は, 極 めて 複 雑 な 作 品 であり,カノンの 中 で 最 も 異 常 な,それゆえ 最 も 無 視 された 書 物 3 とも 評 されるこの 小 説 の 構 成 上 の 複 雑 さに,ロスチャイルドの 理 念 の 問 題 が 関 与 的 であるとされることから も 確 認 される 例 えば,A С ドリーニンは, 作 品 の 基 礎 的 な 構 成 要 素 の 一 つ としてのこの 理 念 が 一 貫 しないため, あらゆる テーマやプラン の 扉 が 大 きく 開 かれた 4 と 指 摘 し,また,Т カサトキナも, 未 成 年 が 読 者 に 与 える 複 雑 さについての 印 象 を,この 理 念 の 不 明 確 さに 帰 責 させ, 結 末 での アルカージーの 言 明 に 関 しても 説 明 が 必 要 である 5 と 評 している このよ うに, 未 成 年 における 理 念 やそれに 関 する 矛 盾 を 含 む 記 述 は, 小 説 の 全 体 1

7 坂 中 紀 夫 的 な 印 象 をも 左 右 する 要 素 となっているのだ であれば,なぜ 構 成 的 なまとま りを 損 なってまでも,ドストエフスキーはロスチャイルドの 理 念 を 主 題 化 し, 結 末 には 不 可 解 な 記 述 まで 残 したのか このことの 論 理 性 が 問 われなければな らない 以 下 ではまず, 主 人 公 によるロスチャイルドの 理 念 についての 説 明 を 検 討 し, その 内 容 の 明 確 化 を 図 る この 理 念 は, 妥 当 的 な 意 見 や 行 為 の 在 り 方 を 規 定 す るもので, 従 ってここでの 整 理 の 対 象 は,ある 価 値 観 に 基 づく 認 識 と 実 践 の 関 係 である 続 いて,ロスチャイルドの 理 念 との 明 示 的 な 関 連 付 けは 欠 くものの, 物 語 の 展 開 に 現 れる,それに 類 比 的 な 認 識 や 実 践 の 関 係 についても 整 理 し, 結 末 における 矛 盾 を 含 む 記 述 までの 流 れを 跡 付 ける 次 に 本 論 は, 未 成 年 の 形 式 をドストエフスキーが 意 識 的 に 自 伝 とし ていること,つまり 自 伝 的 回 想 と 矛 盾 した 記 述 との 何 らかの 連 関 に, 作 者 が 自 覚 的 であった 可 能 性 に 注 目 し,この 文 芸 形 式 の 一 般 的 な 特 性 を 参 照 するという 方 法 で,その 連 関 の 明 確 化 を 図 る 自 伝 的 構 成 の 問 題 に 着 目 することの 妥 当 性 は,この 小 説 の 極 度 の 難 解 さ が 語 り 手 の 能 力 のなさ 6 に 帰 責 されるこ と 以 外 からも 調 達 される というのも,この 作 品 に 時 期 的 に 隣 接 する 作 家 の 日 記 もまた 日 記 として 設 定 されており,この 意 味 で 1870 年 代 のドスト エフスキーは 連 続 して 自 己 言 及 的 な 形 式 を 採 用 しているからだ ではなぜ,こ うした 連 続 が 生 じたのか 自 伝 や 日 記 の 特 性 に 関 するいかなる 理 解 がそこに あったのか これらの 問 題 は, 未 成 年 の 自 伝 的 叙 述 を 検 討 する 試 みを 支 持 するものである 2.ロスチャイルドの 理 念 ロスチャイルドの 理 念 とは, 地 主 貴 族 の 父 ヴェルシーロフの 私 生 児 として 生 まれ,かつてその 父 の 農 奴 であったマカールを 法 律 上 の 父 とする 主 人 公 アル カージーに 作 用 する, 妥 当 的 な 意 見 や 行 為 の 在 り 方 を 編 成 する 一 種 の 規 範 であ る この 規 範 にそって, 彼 は 人 生 の 目 標 を 定 め, 生 活 を 秩 序 立 てる その 目 標 2

8 未 成 年 における 行 為 と 理 念 とは, ロスチャイルドのような 金 持 ちになる ことで,そのための 方 法 とし て, 生 活 は 根 気 と 持 続 (13 : 66) で 律 される アルカージーはそれを 修 道 院, 苦 行 僧 の 偉 業 (13 : 67) と 呼 ぶが,こうした 禁 欲 にも 関 わらず, 彼 が 金 銭 に 執 着 するのは,それが 専 制 的 な 力 であると 同 時 に, 最 高 の 平 等 (13 : 74) であるからだ ここで 言 われる 平 等 と 専 制 とは, 誰 でも 努 力 すれば 金 銭 の 獲 得 が 可 能 であり,またその 所 有 が どんな 小 者 でも 最 高 の 地 位 に 導 く 唯 一 の 道 (13 : 74) となることから 導 かれる 判 定 である 例 えば 彼 は, 富 裕 者 が 異 性 を 引 き 寄 せることから, 富 の 所 有 が 美 的 基 準 の 設 定 をも 専 制 的 に 可 能 にすることを 示 唆 している (13 : 75) しかし,ロスチャイルドの 理 念 は, 蓄 財 を 促 すと 同 時 に,その 構 想 の 最 終 段 階 で 富 の 放 棄 を 要 請 する アルカージーによれば,この 理 念 の 本 当 の 目 的 は 自 由 であり,この 自 由 の 実 現 のために 富 の 放 棄 が 必 要 なのだ 彼 は, 私 には 金 は 必 要 ではない,より 正 確 には, 私 に 必 要 なのは 金 ではない とし, 金 が 可 能 とするのは 一 人 だけの 静 かな 力 の 意 識 であり,それを 放 棄 することが 自 由 (13 : 74) を 実 現 すると 語 る ここで 富 に 自 由 が 優 越 するのは, 金 銭 の 使 用 が 特 定 の 欲 望 への 従 属,その 不 使 用 が 欲 望 の 充 足 の 可 能 性 の 保 持 を 意 味 する のに 対 し,その 放 棄 は 欲 望 への 従 属 はおろか,それへの 従 属 の 可 能 性 をも 無 効 にするからである だから,このとき 彼 はいかなる 欲 望 からも 自 由 であり,そ の 意 味 で, ロスチャイルドよりも 二 倍, 豊 かになる (13 : 76) のである この 理 念 は, 財 を 一 旦 なした 上 で,それを 放 棄 するという 複 雑 な 構 成 をとっ ており,アルカージー 自 身 はまだそれを 達 成 できていない しかしそれは, 彼 とは 別 の 人 物 によって 類 比 的 な 形 で 実 現 される それは 父 ヴェルシーロフであ る 彼 は,ある 遺 産 を 巡 る 裁 判 で 勝 利 し,それを 受 け 取 る 権 利 を 得 るのだが, その 相 続 の 道 義 的 な 正 当 性 を 揺 るがすような 手 紙 を 読 み, 権 利 を 放 棄 する こ の 放 棄 は, 富 の 獲 得 という 条 件 を 可 能 性 の 上 で 満 たしつつ,それを 譲 り 渡 すと いう 点 で,ロスチャイルドの 理 念 において 目 指 される 自 由 を, 同 型 的 に 実 現 さ せる 行 為 となっている アルカージーは 父 のこの 行 為 を 知 り, 次 のような 反 応 を 示 す 3

9 坂 中 紀 夫 しかし 今, 私 はヴェルシーロフの 偉 大 な 行 いを 耳 にし, 完 全 な, 心 からの 感 動 に 包 まれた [ ], 私 は 瞬 時 に,ヴェルシーロフを 私 の 上 の 無 限 の 高 みに 引 き 上 げた (13 : 151) この 引 き 上 げられた 高 み を 経 済 的 に 表 現 すれば,それは ロスチャイルド よりも 二 倍, 豊 か な 状 態 となる ロスチャイルドの 理 念 が 目 的 とする 自 由 は, 他 者 に 対 する 極 度 の 優 越 を 要 請 するので,それは 同 時 に, 孤 独 を 招 来 する ここで 孤 独 が 目 指 される 理 由 は, アルカージーの 他 者 への 関 係 意 識 から 説 明 され 得 る 地 主 貴 族 の 私 生 児 であり, 法 律 上 は 農 奴 の 子 弟 である 彼 は, 家 族 とは 生 活 を 別 にし,また 早 くから 周 囲 の 人 間 との 間 に 断 絶 を 感 じていた このとき, 本 来 は 願 望 される 他 者 との 交 流 が 実 現 しない 不 充 足 は,それへの 防 衛 反 応 を 引 き 起 こす これに 関 連 して, 松 本 賢 一 は, 周 囲 の 人 間 を 自 分 よりも 劣 っていると 見 なし, 自 分 が 溶 け 込 むこと のできない 社 会 を 価 値 無 きものと 見 なす 一 種 の 観 念 操 作 7 を 指 摘 している つまり, 社 会 の 無 価 値 化 によって, 願 望 の 不 充 足 による 認 知 的 不 協 和 が 低 減 さ れるのである この 観 念 操 作 の 逆 転 的 な 効 果 は, 自 己 の 優 越 であり,ロスチャ イルドの 理 念 とはその 論 理 的 な 脈 絡 づけとして 考 えられよう また, 望 月 哲 男 も,この 理 念 は, 他 者 との 素 直 な 関 係 を 切 実 に 求 めつつ 果 たせず, 社 会 から の 超 越 と 自 由 を 志 向 しながらまた 他 者 に 向 うという 主 人 公 の 意 識 の 深 奥 部 に 於 ける 反 復 運 動 と 結 びつき,その 矛 盾 を 覆 い 隠 す 形 で 彼 の 意 識 に 固 着 している 8 と 論 じている さらに 望 月 は, 対 他 者 関 係 を 巡 る 願 望 の 不 充 足 への 反 応 である と 同 時 に, 願 望 を 維 持 させる 構 成 要 素 として 恥 を 主 題 化 し,これを 巡 る [ ] 心 的 経 験 のあいまいさを 相 殺 し, 確 固 たる 自 画 像 を 提 供 してくれるかに イデヤ 見 える 万 能 の 装 置 が 理 想 である 9 と 指 摘 している 10 以 上 の 指 摘 は,アルカージーがロスチャイルドの 理 念 を 考 え 至 った 時 期 とす る 彼 の 中 学 生 時 代 の 次 のような 傾 向 からも 裏 付 けられる 中 学 校 の 一 番 下 の 学 年 のころから, 同 級 生 の 誰 かから 勉 強 や, 鋭 い 返 答, 体 力 などで 追 い 抜 かれ ると, 私 はすぐにその 人 と 遊 んだり 話 をしたりするのをやめた (13 : 73) 社 4

10 未 成 年 における 行 為 と 理 念 会 を 無 価 値 化 する 際,そこに 含 まれる 特 定 の 他 者 が 自 己 の 上 位 にいる 場 合, 前 者 の 否 定 は 自 己 否 定 にもなってしまう そのため,できるだけ 自 己 の 劣 位 が 認 知 されないように, 学 生 生 活 が 律 されることになる しかし,こうした 実 践 は 必 然 的 に 困 難 である そこで, 金 銭 の 平 等 かつ 専 制 的 な 力 が 意 識 され ることになる 金 はあらゆる 不 平 等 を 平 らにする (13 : 74) のだ ただし, ロスチャイルドの 理 念 に 基 づく 生 活 は, 彼 が 実 の 父 の 人 柄 を 知 る 目 的 で,それ までは 別 に 暮 らしていた 家 族 と 同 居 するのを 契 機 に, 一 旦, 中 断 を 宣 言 される しかしながら,ドストエフスキーは 創 作 ノート で 非 常 に 重 要 なこと (16 : 105) として 次 のようにも 語 っている 未 成 年 は 小 説 全 体 を 通 して 自 らのロスチャイルドの 理 念 を 完 全 に 見 捨 てることはない この idea fixa [ 固 定 観 念 ] は 全 てからの, 全 ての 問 題 や 困 難 からの 彼 の 活 路 なのだ それは, 孤 独 の 理 念 の 中 で 形 式 化 された 自 尊 の 感 情 に 基 づいている 彼 はこれを 未 成 年 に 語 る [ 余 白 に 記 載 ] 小 説 全 体 を 通 してこの 理 念 に 意 義 を 与 えるようすることが, 小 説 の 最 も 重 要 なことである [ ] それが 最 も 重 要 であるのは,まさに 理 念 が 未 成 年 を 見 捨 てず, 彼 にまとわりついたからである (16 : ) この 記 述 は, 理 念 の 中 断 が 表 面 的 であること, 結 末 において 再 び 言 及 されるま でも, 理 念 は 物 語 に 潜 在 して 主 人 公 に 作 用 していたことを 知 らせるものである 3. 盗 み 聞 き ドストエフスキーの 理 解 では,ロスチャイルドの 理 念 は,それとは 明 示 され ず, 物 語 に 伏 在 している この 理 念 の 本 質 特 徴 は 他 者 に 対 する 優 越 への 執 着 で あった 従 って,その 中 断 以 降 も, 自 己 の 優 越 に 寄 与 的 な 行 為 がアルカージー によって 選 択 されていることになる 実 に,ジャック カトーは,この 理 念 が 5

11 坂 中 紀 夫 重 視 する 金 銭 は, 物 語 の 中 で より 強 力 な 武 器 へと 置 換 され,その 置 換 によ る 展 開 が プロットにまとまりをもたらしている 11 と 指 摘 している 武 器 とは, 具 体 的 にはある 手 紙 の 秘 匿 なのであるが, 後 述 するように,これは,ロ スチャイルドの 理 念 が 金 銭 面 でそれを 目 指 していたことと 類 比 的 に, 知 識 にお いて 他 者 に 優 越 することを 可 能 にする 道 具 となっている ただし, 手 紙 と 金 銭 との 機 能 的 な 等 価 性 は, 主 人 公 によるある 一 連 の 行 為 を 伏 線 に,より 効 果 的 に 示 される その 行 為 とは, 他 人 の 会 話 の 度 重 なる 盗 み 聞 きである アルカージーはしばしば 他 人 の 会 話 を 盗 み 聞 く もちろん,それらには, 盗 み 聞 きになるのを 回 避 しないという 消 極 的 な 性 格 のものも 含 まれている ( 彼 女 らはささやきあい, 遠 回 しな 表 現 で 話 していたが, 私 はそれに 気 づいた も ちろん, 盗 み 聞 きではないが, 聞 かないわけにはいかなかった [ ] (13 : 23), [ ] 私 は 退 屈 しのぎに [ドアの 向 こうの 声 に] 集 中 し 始 めた (13 : 117)) しかし, 一 連 の 盗 み 聞 きの 幾 つかは, 自 覚 的 かつ 積 極 的 に 選 択 された ものだ ( 私 はソファへ 戻 って, 盗 み 聞 きを 始 めたが, 全 部 は 聞 き 取 れず, 聞 こえたのはただ,しばしばヴェルシーロフのことが 言 及 されているということ だった (13 : 123), [ 寝 室 からの 出 口 のドアはかぎが 掛 かっていた] 私 はこ れから 盗 み 聞 きすることになるのだ,ということがはっきりした (13 : 127), 私 は, 自 分 が 盗 み 聞 きすることを, 他 人 の 秘 密 を 盗 み 聞 きすることを 理 解 し ていたが,それでも 私 は 残 った (13 : 413)) 彼 は, 私 は 盗 み 聞 きをしてい るのが 恥 ずかしく 思 われた (13 : 123) と 言 いつつ,それを 繰 り 返 す こうし た 自 覚 にも 関 わらず,なぜ 彼 はそれを 止 められないのか その 理 由 は, 盗 み 聞 きが 何 を 可 能 にするのかについてのアルカージーの 理 解 に 示 されている 彼 は ヴェルシーロフとのある 会 話 で 次 のような 錯 覚 にとらわれる ときどき 私 は, 幻 想 に 包 まれ,このふた 月 の 間,いつも, 彼 がどこかドア の 向 こうに 立 つか 座 るかしていたのではないかと 思 われた 彼 は 私 の 個 々 の 動 作 や 個 々の 感 情 を, 前 もって 知 っていたのである (13 : 223) 6

12 未 成 年 における 行 為 と 理 念 ここで 彼 は, 自 身 の 行 為 や 認 識 があたかも 全 て 把 握 されたのは,ヴェルシーロ フが ドアの 向 こう にいたからとの 反 実 仮 想 で 説 明 している しかし, ド アの 向 こう に 繰 り 返 し 隠 れていたのは,むしろ 自 分 の 方 で,しかもその 目 的 は 盗 み 聞 きにあったのだ つまり 彼 は, 盗 み 聞 きを, 遍 在 的 に 知 識 を 獲 得 する 手 段 として 想 念 していたのである 度 重 なる 盗 み 聞 きは, 他 者 に 対 する 優 越 へ の 志 向 という 主 題 の 持 続 を, 状 況 を 変 えて 印 象 付 ける 行 為 となっている 4. 隠 しごと 盗 み 聞 きによる 印 象 付 けを 背 景 に,ロスチャイルドの 理 念 の 持 続 が 最 も 特 徴 的 に 示 されるのが,アルカージーによるある 手 紙 の 秘 匿 である それは, 彼 の 理 想 の 女 性 であるカテリーナが 記 した 手 紙 で,その 内 容 は 彼 女 の 父 ソコリス キー 公 爵 の 財 産 上 の 権 利 の 停 止 を 願 望 するものだった その 内 容 上, 手 紙 の 暴 露 は, 彼 女 の 立 場 を 危 うくするものである しかし, 手 紙 は 送 付 後, 行 方 が 分 からなくなってしまう 実 は,それはアルカージーの 手 に 渡 っているのだ 彼 は 手 紙 をポケットに 縫 いつけ, 物 語 の 終 盤 でさらに 第 三 者 によって 盗 まれてし まうまで, 秘 匿 し 続 ける その 理 由 は, 手 紙 の 次 のような 利 用 価 値 にあった [ ] 彼 女 の 運 命 を 破 滅 させ, 彼 女 を 無 一 文 にしてしまうかもしれない, 彼 女 があれほど 恐 れていた 手 紙 は,[ ] 私 の 手 元, 私 の 脇 のポケットの 中 に 縫 いこまれていたのだ! 私 が 自 分 で 縫 ったので,このことは 世 界 中 のだれもまだ 知 らない [ ] しかし,これほど 思 いがけず 武 装 できたの で, 私 はペテルブルグに 現 われる 誘 惑 に 抗 えなかったのだ (13 : 63) ここで 文 書 は ロスチャイルドの 理 念 の 完 全 な 等 価 物 12 として 現 れている 特 定 の 女 性 へ 向 けられた 欲 望 という 点 で 状 況 が 限 定 的 ではあるもの の, 手 紙 はここで, 金 銭 の 所 有 が 保 証 する 欲 望 の 充 足 の 可 能 性 を 再 現 している からだ アルカージーはこの 欲 望 を 蜘 蛛 の 魂 (13 : 306) と 呼 んでいるが, 7

13 坂 中 紀 夫 それについて 山 城 むつみは 次 のように 指 摘 している [ ] アルカージィが 蜘 蛛 の 魂 というとき, 彼 が 考 えているのは, 網 に 捕 獲 した 蠅 を 食 することよりも,それが 網 にかかっていていつでもそれ を 食 することができるという 意 識 の 方 からより 強 い 快 感 を 得 る 蜘 蛛 のこと なのだ 自 分 の 威 力 を 秘 密 で 意 識 するほうが,あらわに 支 配 するよりも, こたえられない 快 感 を 覚 えるものなのだ ( 第 一 篇 第 三 章 I) ロスチャイ ルドになりたいという 彼 の 貨 幣 蓄 蔵 の イデー と 同 型 であることに 注 意 しよう 13 この 指 摘 からも, 手 紙 と 貨 幣 との 機 能 的 な 等 価 性 は 明 白 であるが,それをさ らに 強 調 するのが, 手 紙 が 衣 服 に 縫 い 込 まれているという 点 である 衣 服 に 何 かを 縫 い 込 むという 行 為 には, 実 は 伏 線 が 用 意 されている それは,ロスチャ イルドの 理 念 についての 説 明 で 紹 介 される,ある 蓄 財 の 例 である 数 年 前 に 新 聞 で 読 んだのだが,ヴォルガのある 汽 船 で,ぼろを 着 て 喜 捨 をこう, 当 地 では 知 られた 一 人 の 乞 食 が 亡 くなった 死 後, 彼 のぼろ 着 か らは, 三 千 ルーブル 近 い 紙 幣 が 縫 い 合 わされているのが 見 つかった (13 : 66) この 人 物 とアルカージーとで 異 なっているのは, 衣 服 に 縫 い 込 むのが, 紙 幣 か 手 紙 かということだけである しかし,それら 二 つは 機 能 的 に 同 一 なのであっ た 手 紙 を 縫 いつける 行 為 は 従 って, 彼 にあっては 紙 幣 を 縫 いつけることと 同 等 なのである アルカージーはあたかもポケットに 縫 い 込 まれているのは 文 書 ではなく, 巨 万 の 富 であるかのようにふるまい, 重 要 なことは,そう 感 じているのである 14 盗 み 聞 きや 隠 しごとといった 行 為 をはさみつつ, 作 品 の 終 盤 ではさらに 新 し い 理 念 が 登 場 する それは, 端 正 上 品 など 様 相 の 肯 定 性 を 含 意 する ブ 8

14 未 成 年 における 行 為 と 理 念 ラゴオブラージエ 15 なる 理 念 である この 理 念 もまた, 他 者 に 対 する 優 越 と いうロスチャイルドの 理 念 との 性 質 的 な 共 通 性 を 含 んでおり,アルカージーは この 肯 定 性 を 他 者 に 見 出 せないがゆえに, 私 は 彼 らから 去 るのだ (13 : 291) とまで 断 言 している そして 実 に,この 新 しい 理 念 の 登 場 にも, 伏 線 が 張 られ ている アルカージーは, 美 しい 理 念 があるなら, 論 駁 するだけでは 足 りな い,それと 同 じ 力 があり, 美 しいものを 代 わりに 与 えなければならない (13 : 47) と 語 り, 理 念 に 欠 点 があれば 別 のもので 代 入 される 必 要 を 予 告 して いる そして,それが 実 際 に 生 じた 例 として,それまで 貯 めていた 金 銭 を,あ る 捨 て 子 の 養 育 のために 用 いた 経 験 をあげている つまりここでは,ロスチャ イルドの 理 念 に 基 づく 実 践 が, 捨 て 子 を 救 う ための 実 践 に 置 換 され, 理 念 の 代 入 が 生 じているのである その 理 由 として, 彼 は, いかなる 理 念 も, 何 か 圧 倒 的 な 事 実 を 前 にすると 立 ち 止 まらざるを 得 ず, 理 念 のための 何 年 もの 苦 労 も 投 げ 出 してしまうのであり,( 少 なくとも 私 に) それを 引 き 留 める ほどの 力 はないのである (13 : 81) と 述 べている とはいえ,この 新 たに 登 場 した 理 念 は,その 内 容 を 具 体 的 に 説 明 されることなく, 理 念 の 主 題 は 結 末 で の 次 の 記 述 まで 引 き 延 ばされることになる これで 終 わりである もしかしたら, 読 者 の 中 には 知 りたい 者 もいるかも しれない 私 の 理 念 はどこへ 行 ったのか, 謎 めいた 形 で 予 告 した 私 に とってこれから 始 まる 新 しい 生 活 とはどのようなものなのかと しかし, この 新 しい 生 活 も, 私 の 眼 前 に 開 けたこの 新 しい 道 程 も, 私 の 理 念 な のだ それは 以 前 と 同 じであるが, 姿 が 全 く 異 なるので,もうそれと 見 分 けることはできない (13 : 451) 9

15 坂 中 紀 夫 5. 理 念 の 不 履 行 以 上 の 整 理 は,ロスチャイルドの 理 念 の 物 語 における 潜 在 的 な 持 続 を 示 すも のである ただし,この 理 念 の 構 想 は, 富 の 放 棄 を 最 終 的 に 組 み 込 むもので あった 従 って, 理 念 の 持 続 が 確 認 される 以 上,それと 同 型 的 な 行 為 を, 本 来 的 にはアルカージーは 選 択 しなければならなかったことになる それは 具 体 的 には, 金 銭 の 機 能 的 な 等 価 物 である 手 紙 を 捨 てることである その 先 例 は, ヴェルシーロフによる 遺 産 放 棄 であった これらの 関 係 について,ドストエフ スキーは 創 作 ノート で 次 のように 述 べている ヴェルシーロフは 金 を 譲 り,これが 未 成 年 におそろしく 影 響 した, 彼 は, 決 して 何 としても 公 爵 夫 人 [カテリーナ] に 対 して 文 書 を 利 用 しないと 決 断 する こ れ は 卑 劣 である (16 : 231) 理 念 の 持 続 性 を 念 頭 にすれば,この 言 葉 は, 未 成 年 という 作 品 が, 主 人 公 が 手 紙 を 破 棄 できるかを 一 つの 軸 とした 物 語 として 読 み 替 えられることを 示 している しかし,アルカージーは 手 紙 を 捨 てることに 失 敗 する それは 結 局, 第 三 者 に 盗 まれてしまうのだ つまり,この 物 語 で 彼 は 最 終 的 に 失 敗 するので あり,またいつでもそれを 破 棄 できたのに,しなかったという 点 で, 失 敗 し 続 けたのである 小 説 を 通 して, 実 にその 生 活 全 体 を 通 して, 彼 は, 他 者 ( 特 にその 父 親 )や 自 身 の 理 念 などのイメージを 構 築 しながら, 概 念 の 王 国 で 熱 病 的 に 活 動 に 打 ち 込 み 続 ける しかし, 彼 は 失 敗 する 彼 は 裏 切 られ, 誤 解 し, 間 違 いを 教 わり, 迷 ってしまう 16 ここで 失 敗 の 経 験 を 強 調 することは, 未 成 年 が 次 のように 始 まることの 理 解 に 資 する 我 慢 できず, 私 は 人 生 における 自 身 の 第 一 歩 についてのこの 物 語 を 綴 る 10

16 未 成 年 における 行 為 と 理 念 ことにした とはいえ,こんなことはなしで 済 ますこともできたのだが (13 : 5) この 我 慢 できず との 記 述 の 内 実 は, 全 ての 出 来 事 にひどく 打 ちのめされ た ことによる 内 的 要 請 (13 : 5) と 説 明 されている ではなぜ, 自 伝 を 書 くことがその 緩 和 になるのか ゲイリー モーソンは, 未 成 年 もそこに 含 まれるドストエフスキーの 手 記 形 式 の 諸 作 品 を 考 察 し,それら 諸 作 品 の 語 り 手 はしばしば 語 り 得 ないこと を 語 るという 困 難 を 抱 えると 指 摘 してい る 17 彼 らは 書 くという 営 みを 通 して, 生 活 の 一 貫 した 説 明 に 到 達 すること で,その 生 活 に 意 味 を 与 える ことを 目 指 すが, 自 己 や 世 界 をうまく 把 握 で きないために, 創 作 されるのは, 完 結 した 作 品 ではなく, 手 記 となる 18 未 成 年 の 場 合,アルカージーの 失 敗 の 経 験 こそ, 語 り 得 ないこと として 分 節 化 される 経 験 に 関 連 的 である 彼 はその 経 験 を 自 伝 の 形 で 秩 序 立 てること で, 心 的 負 荷 を 軽 減 させているのだ 実 に, 自 伝 は 一 般 に 慰 撫 的 効 果 も 指 摘 さ れており,グスタフ ルネ ホッケは, 自 伝 は 個 人 の 生 活 の 綜 合 である とし,その 特 徴 を 歴 史 的 遠 方 的 慰 藉 的 とする 先 行 研 究 をあげている 19 自 己 の 綜 合 としての 自 伝 が 慰 撫 的 たり 得 るのは,アンソニー ギデンズ による 近 代 と 前 近 代 との 比 較 からも 理 解 できる ギデンズによれば, 前 近 代 の 社 会 とは, 昨 日 したことを 今 日 もおこなうのが 普 通 であった 20 ような, 伝 統 が 存 在 論 的 枠 組 みを 分 節 化 する 社 会 であるのに 対 し, 近 代 社 会 ではそうした 分 節 化 は 後 退 する 伝 統 社 会 の 後 にくる 社 会 秩 序 において 人 びとは, 自 己 に ついての 叙 述 を, 現 実 に 絶 えず 書 き 直 さなければならないし,また,かりに 人 が 人 格 的 自 立 を 生 きる 上 での 安 心 感 と 結 びつけていく 必 要 があるのであれば, ライフスタイルの 実 践 は,そうした 自 己 の 記 述 に 沿 うものでなければならな い 21 つまり 近 代 社 会 では, 社 会 の 増 大 する 偶 有 性 複 雑 性 がもたらす 過 剰 負 担 に 由 来 して, 個 人 が 存 在 論 的 不 安 にさらされる 蓋 然 性 が 高 まり,この 不 安 が,それに 対 する 防 衛 反 応 として, 個 人 に 自 己 の 同 一 性 の 再 帰 的 な 選 択 を 迫 る のだ 自 伝 とは,この 再 帰 的 自 己 の 構 成 の 明 示 的 な 営 みに 他 ならない 11

17 坂 中 紀 夫 未 成 年 の 創 作 ノート にも, 伝 統 の 後 退 を 示 す, 全 てに 崩 壊 の 思 想 が 見 られる,というのも 全 てが 分 離 し,ロシアの 家 族 のみならず 単 に 人 々の 間 で さえいかなる 紐 帯 も 残 っていないからである (16 : 16) との 言 葉 と 共 に, 小 説 の 形 式 として 自 分 から 書 く 私 という 言 葉 で 始 めること, 主 人 公 が た だ 自 分 のために (16 : 47) 書 くことの 重 要 性 が 記 されている 作 品 の 冒 頭 で 語 られる 我 慢 できず という 言 葉 は, 社 会 の 複 雑 化 という 背 景 と, 理 念 の 不 履 行 による 存 在 論 的 不 安 の 高 まりをその 内 実 としており, 書 くことによる 自 己 の 同 一 性 の 再 帰 的 な 確 認 がそれを 緩 和 させているのである 6. 自 伝 の 構 成 アルカージーにとっての 自 伝 執 筆 の 内 発 的 契 機 は, 以 上 のように 説 明 される として,しかしそれは 理 念 が 以 前 と 同 じであるが, 姿 が 全 く 異 なる (13 : 451) ことの 問 題 を 解 決 しない 執 筆 者 への 慰 撫 的 効 果 とは 別 の, 自 伝 が 与 え る 認 識 の 在 り 方 への 作 用 が 問 題 にされなければならない 自 伝 の 定 義 として,フィリップ ルジュンヌは, 作 者 語 り 手 登 場 人 物 の 同 一 性 をあげている このことの 時 間 的 な 表 現 は, たとえ 彼 の 遠 い 昔 の 冒 険 が 物 語 られる 場 合 でも, 登 場 人 物 は, 同 時 に, 語 りを 生 みだす 現 在 の 人 でも あるということ 22 である つまり, 作 者 ないし 語 り 手 は 執 筆 時 の 現 在 におり, 登 場 人 物 は 過 去 の 時 点 から, 執 筆 時 の 現 在 に 辿 り 着 く 過 去 が 現 在 に 近 づく につれ, 主 人 公 の 行 為 は,その 語 り 手 の 考 えに 一 致 し 始 めるのである 23 こ のことは, 自 伝 の 記 述 が, 作 者 ないし 語 り 手 がすでに 到 達 している 物 語 の 終 わりの 地 点 へと いかにして 辿 り 着 いたかの 説 明 であり,その 意 味 で 自 伝 は 潜 在 的 に,それが 始 まるや 否 や 終 わるものである 24 ことを 表 している そして,この 時 間 的 構 成 は, 疑 似 的 な 自 伝 としての 未 成 年 においても 守 ら れている それはすでに 冒 頭 の 我 慢 できず という 言 明 と とはいえ,こん なことはなしで 済 ますこともできたのだが (13 : 5) という 言 明 との 矛 盾 に 示 されている つまり, これは 作 者 か ら の 言 葉 であり, 作 者 につ い て の 言 葉 で 12

18 未 成 年 における 行 為 と 理 念 ある ここではあたかも 一 度 に 二 人 の 私, 一 方 は 我 慢 ができず, 他 方 はあ るいは 手 記 なしでもすませられた 私 が 現 れている 25 のである 作 者 語 り 手 登 場 人 物 の 同 一 性 は, 時 間 的 な 構 成 を 規 定 するだけでは ない それは 登 場 人 物 に 関 する 記 述 の 内 容 をも 規 定 する ロイ パスカルは, 自 伝 は 人 生 に 型 をはめ,そこから 一 貫 した 物 語 を 作 り 出 す とし, この 一 貫 性 が 示 すのは, 作 家 は 特 定 の 立 ち 位 置, 彼 が 彼 の 人 生 を 回 顧 する 瞬 間 の 立 ち 位 置 をもち,そこから 彼 の 人 生 を 解 釈 しているということである この 立 ち 位 置 は 作 家 の 実 際 の 社 会 的 立 場, 何 かの 分 野 での 認 められた 達 成 点, 彼 の 現 在 の 哲 学 でもありえる 26 と 述 べている つまり, 現 在 の 自 己 の 考 え 方 が, 記 述 の 内 容 を 規 定 するのだ これについてはジョルジュ ギュスドルフも 同 様 に, 自 伝 が 提 示 するのは, 行 為 の 目 に 見 える 外 側 から 観 察 された 個 人 ではなく, 彼 の 内 的 な 私 秘 性 において 観 察 された 人 格 であり,それは, 彼 がそうであり,そ うであったものとしてではなく, 彼 が 信 じ 望 むところの, 自 分 がそうでありそ うであったものとしての 彼 なのである 27 と 指 摘 している これらの 指 摘 は, 自 伝 の 記 述 の 事 実 性 に 関 する 次 のような 認 定 を 可 能 にする すなわち, 真 実 の 最 終 項 は,もはや 過 去 の 即 自 存 在 (もしもそんなものがあるとしたら) では あり 得 ず, 言 表 行 為 の 現 在 において 明 示 される 対 自 存 在 である 28 自 伝 にお いては, 過 去 のありのままの 自 己 ( 過 去 の 即 自 存 在 ) はありえず,それはつ ねに 現 在 に 捉 えなおされた 自 己 ( 対 自 存 在 ) として 初 めて 成 立 する それゆ え,そこに 厳 密 な 意 味 での 事 実 性 を 期 待 することはできない 自 伝 の 効 果 に, 以 上 のような 働 きを 整 理 できるとして,それはまだ 自 伝 作 者 の 存 在 に 関 するも のである では, 自 伝 的 叙 述 の 対 象 である 自 己 の 行 為 や 理 念 は,その 記 述 から いかなる 作 用 を 受 けるのか 7. 行 為 の 構 成 ドナルド デイヴィッドソンは, 行 為 を 以 下 のように 因 果 的 に 説 明 してい る 29 まず, 行 為 の 前 提 には, 欲 求 や 衝 動, 道 徳 的 美 的 経 済 的 見 解, 慣 習, 13

19 坂 中 紀 夫 私 的 公 的 価 値 観 などに 基 づく,ある 種 の 行 為 の 実 現 に 対 する 賛 成 的 態 度 と, ある 振 舞 いはその 行 為 の 実 現 に 当 たるという 信 念 がある つまり 行 為 は, 前 者 の 欲 求 と,ある 振 舞 いはその 行 為 であるとの 後 者 の 信 念 の 組 み 合 わせとして 実 現 されるのだ これは, 行 為 の 主 たる 理 由 は 行 為 の 原 因 である 30 との 行 為 の 因 果 説 となっている この 図 式 は, 未 成 年 に 対 しては 次 のように 当 ては まる すなわち,ロスチャイルドの 理 念 やそれに 継 続 する 潜 在 的 な 理 念 が,あ る 種 の 行 為 への 賛 成 的 態 度 を 形 成 しており,その 行 為 の 実 現 に 当 たると 信 念 さ れる 振 舞 いとして 禁 欲 や 盗 み 聞 き, 手 紙 の 秘 匿 などがなされているという 対 応 である ただしこの 説 明 は, 行 為 とは 何 かという 問 題 を 対 象 化 して 浮 かび 上 がった 図 式 であり, 日 常 的 には 欲 求 と 信 念 との 組 み 合 わせが 逐 一, 形 成 されて いるわけではない 我 々は 普 段, 特 段 の 意 図 なしに 生 活 を 送 っており,この 意 図 されざる 何 かが 問 われることによって 意 図 的 行 為 が 遡 行 的 に 構 成 されるのだ 上 記 の 行 為 論 が 詳 細 に 分 析 して 見 せるのは,この 遡 行 的 な 構 成 以 後 の 時 点 の 問 題 であると 考 えられる 意 図 的 行 為 が 遡 行 的 に 構 成 されることは, 野 矢 茂 樹 による 以 下 のような 議 論 を 参 考 にすると, 容 易 に 理 解 される 31 野 矢 は, 2 から 始 めて 2 を 足 してい く という 行 為 において, 行 為 者 が 1000 の 次 に 1004 と 数 えてしまった という 場 合 を 例 に 出 す このとき 行 為 者 は, 1002 とするつもりだったと 意 識 する だが,この 意 図 は 数 列 を 始 めた 時 点 では 具 体 的 に 考 えてなど いな かったのであり, 従 ってこの 場 合, 数 列 を 始 めた 時 点 で 自 分 が 形 成 した 意 図 の 細 部 をさらに 仕 上 げた 32 のである 意 図 的 行 為 一 般 について 言 えることであるが, 私 が 日 常 なめらかに 何 ごと かを 為 しているほとんどの 場 面 において, 私 は 意 図 形 成 のようなことを いっさいしてはいない [ ] 私 が 自 分 の 行 為 の 意 味 を 自 覚 するのは, 私 自 身 が 何 ごとかを 選 択 するとき,あるいは 人 から 何 をしているんだ と か なぜそんなことをするのか と 尋 ねられたときである それゆえ,い かなる 選 択 肢 も 念 頭 になく,いかなる 問 いにも 晒 されていない 場 面 では, 14

20 未 成 年 における 行 為 と 理 念 いかなる 意 図 も 形 成 されていない 33 行 為 の 画 定 についてのこの 指 摘 は, 過 去 の 行 為 そのものはありえず, 主 題 化 されることで 初 めて, 一 種 の 仮 像 として 遡 行 的 に 構 成 されるということを 述 べ ている 行 為 が 仮 像 として 画 定 されることの 問 題 は,それを 構 成 する 諸 契 機 に も 波 及 する 行 為 には, 何 らかに 対 する 賛 成 的 態 度 が 付 随 するのだった しか し, 行 為 がいわば 仮 像 としてしか 取 り 出 せない 以 上,その 構 成 契 機 である 賛 成 的 態 度 もまた, 仮 像 としての 性 格 を 帯 びざるを 得 ない 行 為 の 構 成 についての 以 上 の 整 理 は, 未 成 年 の 結 末 においてアルカージーが 語 る, 理 念 は 以 前 と 同 じであるが, 姿 が 全 く 異 なる (13 : 451) との 記 述 における 同 一 性 と 差 異 性 の 共 存 という 矛 盾 を, 以 下 のような 理 路 で 説 明 するものとなっている 行 為 に 付 随 する 賛 成 的 態 度 に, 未 成 年 において 対 応 していたのは,ロス チャイルドの 理 念 やそれに 継 続 する 理 念 であった しかし, 行 為 の 仮 像 性 ゆえ に,この 賛 成 的 態 度 もまた 同 様 の 性 格 を 帯 びざるを 得 ない このことは,ロス チャイルドの 理 念 やそれに 継 続 する 理 念 もまた,そのものとしては 現 れ 得 ず, いわば 仮 像 としてしか 把 持 され 得 ないことを 意 味 している それゆえ, 理 念 を それ として,ある 同 一 性 のもとに 捉 える 試 みには, 必 然 的 に 差 異 性 につい ての 感 受 が 伴 われることになる アルカージーの 結 末 での 記 述 が 矛 盾 して 見 え るのもこのためだ しかしそこには, 厳 密 な 論 理 性 が 宿 っていたのである 行 為 と 自 伝 について 以 上 で 確 認 されたことには,ある 類 比 が 指 摘 できる 行 為 が 仮 像 として 画 定 されるという 点 と, 自 伝 においては 自 己 の 過 去 の 即 自 存 在 (ありのままの 自 己 ) はありえず, 現 在 の 視 点 から 仮 構 として 構 成 されるとい う 点 である ただし, 両 者 が 現 象 するには,それぞれが 主 題 化 される 契 機 を 前 提 にしている 行 為 については 実 践 を 問 うという 契 機 を, 自 伝 については 自 己 を 問 うという 契 機 をである これらを 考 え 合 わせると, 一 見 まとまりを 欠 いた かに 評 される 未 成 年 という 作 品 が 極 めて 論 理 的 な 構 成 を 取 っていることが 理 解 される 行 為 画 定 の 契 機 としては, 自 伝 という 形 式 の 設 定 が 意 義 深 い というのも, 15

21 坂 中 紀 夫 自 伝 を 記 す 経 験 とは, 主 に 自 己 の 行 為 やそれに 連 接 して 生 じた 出 来 事 の 想 起 で あるからだ 従 って, 自 伝 は 必 然 的 に 行 為 の 遡 行 的 な 主 題 化 を 伴 うことになる 自 伝 執 筆 の 契 機 としては, 失 敗 の 経 験 から 内 発 的 契 機 が 準 備 される 展 開 が 物 語 に 組 み 込 まれている そして, 何 が 失 敗 に 当 たるのかが 示 されるため, 妥 当 的 な 意 見 や 行 為 の 在 り 方 を 規 定 する 理 念 の 主 題 が 作 品 の 一 つの 軸 を 形 成 する だ が,この 図 式 の 前 提 には 循 環 がある 失 敗 の 行 為 が 過 去 の 想 起 を 促 したのであ るが,その 行 為 は 想 起 があって 初 めて 遡 行 的 に 構 成 される しかしそれが 想 起 されるには 失 敗 の 行 為 が 先 立 つ,と 循 環 するからだ この 循 環 は, 意 識 の 意 識 の 意 識 という 無 限 後 退 的 過 程 であるが, 中 井 久 夫 によればこうした 過 程 は 実 際 には 生 じず, 発 語 や 執 筆, 特 に 文 字 言 語 の 一 次 元 性 によって 制 御 されるという 34 未 成 年 の 場 合 も,この 循 環 は,その 回 転 軸 としての 理 念 の 仮 像 性 が 自 伝 執 筆 を 通 して 発 見 されることで 破 られる それを 象 徴 するの が,この 発 見 を 窺 わせる 言 葉 と 共 に,アルカージーが 告 げる 新 しい 生 活 (13 : 451) の 始 まりである 8.おわりに 本 論 は, 未 成 年 の 自 伝 的 叙 述 に 注 目 するという 方 法 の 妥 当 性 の 一 部 を, この 作 品 に 時 期 的 に 隣 接 する 作 家 の 日 記 もまた, 自 己 言 及 的 な 形 式 をとっ ていることに 依 拠 していた 実 は, 未 成 年 の 末 尾 には,この 連 続 性 につい ての 予 告 ともとれる 記 述 がある 自 身 についての 一 定 期 間 の 手 記 を 終 えたアル カージーは,それを 第 三 者 に 渡 し, 感 想 を 受 け 取 る 注 目 されるのは,その 感 想 で 述 べられる 偶 然 の 家 族 という 現 象 についての 記 述 である 偶 然 の 家 族 とは,アルカージーもそこに 含 まれる, 共 同 の 生 活 を 伴 わない 家 族 を 意 味 する もので, 彼 の 自 伝 もそれを 巡 っての 記 録 であることから, 次 の 記 述 はこの 記 録 に 対 するコメントとして 読 むことができる [ 偶 然 の 家 族 の] 類 型 は,いずれにせよ,まだ 流 動 的 な 現 象 で,それゆえ 16

22 未 成 年 における 行 為 と 理 念 芸 術 的 にも 完 成 されえません 重 大 な 誤 謬 もありえますし, 誇 張 や 見 落 と しもありえます いずれにせよ,あまりに 多 くを 推 察 しなければなりませ ん とはいえ, 歴 史 ものだけを 書 くのを 望 まず, 現 実 の 憂 いにとりつかれ た 作 家 は,どうすればよいのでしょう? 推 察 して,そして 誤 るのです (13 : 455) アルカージーの 自 伝 に 対 するコメントでもあるこの 記 述 は, 書 くことは 誤 る ことであるとしている これは, 彼 が 切 実 な 内 発 的 契 機 に 促 されて 残 した 記 録 を, 誤 りとするもので, 冷 淡 な 応 答 とも 読 める だが,ここで 歴 史 と 現 実 とが 対 比 されていることが 重 要 である 現 実 は 流 動 的 で 完 成 さ れていない ということは, 歴 史 はその 逆 として 捉 えられていることにな る つまり, 歴 史 とは 規 定 的 であり,それを 書 く 場 合 には, 事 実 確 認 的 な 態 度 が 可 能 であるのに 対 し, 現 実 を 書 くには 行 為 遂 行 的 な 効 果 が 伴 うこと が,ここでは 洞 察 されているのである 従 って,このコメントは, 語 られた 字 義 の 真 偽 を 問 題 にしているのではなく,それがもたらす 効 力 の 差 異 について 言 及 しているものと 考 えられるのだ そして,この 効 力 は,その 受 け 取 られ 方 に ついての 予 期 が 外 れるという 可 能 性 を 必 然 的 に 伴 っており, 誤 る との 言 葉 は,この 語 ることの 否 定 面 を 指 しながら,それを 自 覚 の 上 で, 語 ることを 支 持 しているのである そして, 未 成 年 と 作 家 の 日 記 とは,この 点 におい て 連 結 する ドストエフスキーは 未 成 年 において, 私 が 語 ることの 効 力 についての 洞 察 を 示 した そしてこの 作 品 の 完 成 の 翌 年, 彼 は 作 家 の 日 記 を 刊 行 する このとき,もし 作 家 の 意 識 に 語 ることの 否 定 性 だけがあった とすれば, 刊 行 は 意 図 的 に 失 敗 を 目 指 すものだったことになる しかし, 数 度 の 中 断 を 挟 みながらも,この 作 品 は 彼 の 最 晩 年 まで 刊 行 が 続 くのである そう である 以 上, 作 家 の 日 記 の 構 想 には, 否 定 性 を 自 覚 しつつ, 語 ることの 効 力 への 期 待 があったのではないか 実 に,П Е フォキンはこの 作 品 が,ド ストエフスキーが 個 人 と 社 会 の 問 題 という 二 重 の 課 題 を 解 決 するための 手 段 だったと 論 じている 17

23 坂 中 紀 夫 作 家 の 日 記 は,あらゆる 意 味 において 理 想 的 な 形 式 である それはこ の 二 つで 一 つの 課 題 を 解 決 することを 可 能 にする 出 版 物 としてのそれは, 人 生 の 改 善 に 向 けられた 社 会 評 論 であり, 日 記 としてのそれは 自 己 の 改 善 に 向 けられている 言 葉 = 行 為 としての 作 家 の 日 記 は,B A トゥ ニマノフの 妥 当 な 指 摘 のように, 現 実 の 形 成 への 直 接 参 加 のみならず, 自 分 自 身 の 形 成 にも 向 けられているのである 35 自 己 と 社 会 の 改 善 に 関 与 する 行 為 が, 語 ることであったとのこの 指 摘 は, 未 成 年 において 確 認 された 語 ることの 効 力 が, 作 家 の 日 記 で 発 展 的 に 引 き 継 がれたことを 示 唆 するものである (さかなか のりお, 神 戸 市 外 国 語 大 学 大 学 院 生 ) 注 1 フィリップ ルジュンヌは, 自 伝 とは 作 者 語 り 手 登 場 人 物 の 同 一 性 に ついての 想 定 が 読 者 と 共 有 される 文 芸 形 式 であるとし,この 前 提 を 自 伝 契 約 と 呼 んでいる (フィリップ ルジュンヌ ( 花 輪 光 監 訳, 井 上 範 夫 住 谷 在 昶 訳 ) 自 伝 契 約 水 声 社,1993 年 ) 未 成 年 のこの 冒 頭 は,この 自 伝 契 約 を 疑 似 的 に 構 成 するもので, 作 品 が 疑 似 自 伝 であることを 指 示 している 疑 似 自 伝 とは, 作 者 と 主 人 公 とが 同 一 の 人 物 ではない, 自 伝 的 な 材 料 に 基 づいた, 一 人 称 の 回 顧 的 なナラティ ヴ を 指 すアンドリュ ー ワ フテルの 用 語 である (Andrew B. Wachtel, The Battle for Childhood : Creation of a Russian Myth (Stanford ; Stanford University Press, 1990), p. 3.) 2 ドストエフスキーからの 引 用 は,Достоевский Ф. М. Полное собрание сочинений в 30 томах. Л., による 引 用 箇 所 は( 巻 数 : 頁 数 ) として 示 す 以 下, 引 用 文 の 強 調 等 は 全 て 原 文 である 3 Jacques Catteau, Dostoevsky and the Process of Literary Creation (Cambridge : Cambridge University Press, 1989), trans. Audrey Littlewood, p Долинин А. С. Последние романы Достоевского :как создавались Подросток и Братья Карамазовы. М. ; Л., С Касаткина Т. Роман Ф. М. Достоевского «Подросток» :«Идея» героя и идея автора / / Вопросы литературы С Susanne Fusso, Dostoevskyʼs Comely Boy : Homoerotic Desire and Aesthetic 18

24 未 成 年 における 行 為 と 理 念 7 8 Strategies in A Raw Youth, The Russian Review 59 (October, 2000), p 松 本 賢 一 理 念 からの 逸 脱 :アルカーヂイ ドルゴルーキイ 論 言 語 文 化 第 3 巻 第 2 号,2000 年, 頁 望 月 哲 男 未 成 年 におけるидеяとの 対 話 ロシヤ 語 ロシヤ 文 学 研 究 第 12 号,1980 年,46 頁 イデヤ 9 望 月 哲 男 恥 と 理 想 : 未 成 年 の 世 界 現 代 思 想 第 38 号,2010 年,312 頁 10 これら 一 連 の 心 的 機 制 は,ヤン エルスターの 言 う 順 応 的 選 好 形 成 の 働 き を 例 示 している ある 願 望 の 実 現 が 極 めて 困 難 であるとき,その 実 現 を 期 待 し 続 けることは, 持 続 的 に 不 充 足 を 抱 えることを 意 味 する そこで,その 回 避 策 として, 願 望 水 準 の 低 下 や, 願 望 そのものの 断 念 により, 状 況 への 順 応 が 図 ら れる 順 応 的 選 好 形 成 とは,こうした 状 況 順 応 的 で, 自 己 制 限 的 な 願 望 ( 選 好 ) の 形 成 である その 効 用 は, 認 知 的 不 協 和 の 低 減 であり, 以 後,かつての 願 望 は したいのにできない ではなく, したいとも 思 わなかった という 形 をと る(Jon Elster, Sour Grapes - Utilitarianism and the Genesis of Wants, in A. Sen and B. Williams, eds., Utilitarianism and Beyond (Cambridge : Cambridge University Press), 1982.) アルカージーの 場 合, 他 者 との 関 係 における 願 望 の 不 充 足 が, 社 会 の 無 価 値 化 ( 順 応 的 選 好 形 成 ) で 解 消 されると 同 時 に,それでも 持 続 する 違 和 ( 恥 )が, ロスチャイルドの 理 念 により 緩 和 されているものと 捉 えられ る 11 Catteau, Dostoevsky and the Process, p Касаткина. Роман Ф. М. Достоевского «Подросток». C 山 城 むつみ ドストエフスキー 講 談 社,2010 年,385 頁 14 Савченко Н. К. Сюжетосложение романов Ф. М. Достоевского. М., C この 概 念 についての 詳 細 は, 次 の 論 考 を 参 照 松 本 賢 一 ドストエフスキイ 未 成 年 における благообразие について 言 語 文 化 第 11 巻 第 2 号, 2008 年 16 Ingunn Lunde, ʻIa gorazdo umnee napisannogoʼ : On Apophatic Strategies and Verbal Experiments in Dostoevskiiʼs A Raw Youth, The Slavonic and East European Review 79 : 2 (April, 2001), p Gary Saul Morson, The Boundaries of Genre : Dostoevskyʼs Diary of a Writer and the Traditions of Literary Utopia (Austin : University of Texas Press, 1981), pp Ibid., p グスタフ ルネ ホッケ ( 石 丸 昭 二, 柴 田 斎, 信 岡 資 生 訳 ) ヨーロッパの 日 記 の 基 本 モチーフ (ヨーロッパの 日 記 : 第 一 部 ) 法 政 大 学 出 版 局,1991 年, 頁 20 アンソニー ギデンズ ( 松 尾 精 文, 松 川 昭 子 訳 ) 親 密 性 の 変 容 : 近 代 社 会 にお 19

25 坂 中 紀 夫 21 けるセクシュアリティ, 愛 情,エロティシズム 而 立 書 房,1995 年,115 頁 同 上, 頁 22 ルジュンヌ 自 伝 契 約 48 頁 23 William L. Howarth, Some Principles of Autobiography, in James Olney, ed., Autobiography : Essays Theoretical and Critical (Princeton : Princeton University Press, 1980), p Philippe Lejeune, How Do Diaries End? in Jeremy D. Popkin and Julie Rak, eds., On Diary (Honolulu : University of Hawaiʼi Press, 2009), trans. Katherine Durnin, p Йенсен П. А. Парадоксальность авторства ( у) Достоевского // Маркович В., Шмид В. ( ред.) Парадоксы русской литературы. СПб., С Roy Pascal, Design and Truth in Autobiography (Cambridge : Harvard University Press, 1960), p Georges Gusdorf, Conditions and Limits of Autobiography, trans. James Olney, in Olney, ed., Autobiography, p ルジュンヌ 自 伝 契 約 48 頁 29 ドナルド デイヴィッドソン ( 服 部 裕 幸 柴 田 正 良 訳 ) 行 為 と 出 来 事 勁 草 書 房,1990 年 同 上,15 頁 野 矢 茂 樹 哲 学 航 海 日 誌 春 秋 社,1999 年, 頁 同 上,297 頁 同 上, 頁 中 井 久 夫 記 憶 について, 中 井 アリアドネからの 糸 (みすず 書 房,1997 年 ) 所 収, 頁 35 Фокин, П. Е. К вопросу генезисе Дневника писателя гг. Ф. М. Достоевского ( биографический аспект) // Степанян К. А. ( ред.) Достоевский в конце XX века. М., С

26 未 成 年 における 行 為 と 理 念 Норио САКАНАКА Действие и идея в романе «Подросток» : о вопросе автобиографического повествования в творчестве Ф. М. Достоевского В настоящей работе мы ставим себе целью рассмотреть процесс изменения главной идеи героя мечты «стать Ротшильдом» в романе Ф. М. Достоевского «Подросток». По мнению многих исследователей, этот роман одно из самых сложных произведений писателя, прежде всего ввиду неясности очертаний самой этой идеи. Эта неясность делается особенно очевидной в одном разъяснении, которое дает главный персонаж романа к концу книги. Суть его заявления в том, что по прошествии времени для самого героя прежняя идея выглядит «той самой, что и прежде, но уже совершенно в ином виде». В этом объяснении заключено противоречие :одновременно говорится как о тождестве, так и о различии между теперешним и прежним вариантами идеи героя, и, на наш взгляд, этот пункт требует разъяснений. Для разрешения этого противоречия мы собираемся говорить о формальной стороне текста романа. В частности, сам Достоевский в процессе работы над книгой намеренно и многократно подчеркивает особую важность того обстоятельства, что его повествование ведется от первого лица от лица героя. Эта приверженность автобиографическому повествованию ведет нас к предположению о наличии связи между противоречивостью идеи героя и жанровой природой автобиографического письма. Поэтому мы затронем также главные особенности автобиографии как жанра и попытаемся обрисовать причины и обстоятельства того факта, что это труднопонятное изменение идеи подростка произошло именно в рамках «повествования о себе». Кстати говоря, роман «Подросток» по времени написания непосредственно предшествует «Дневнику писателя» гг., который тоже написан в форме дневника. Другими словами, в течение десятилетия 1870-x гг. Достоевский сознательно и последовательно применяет повествование именно от первого лица. Этот факт поддерживает наш выбор способа рассмотрения романа через призму автобиографии. 21

27 ロシア 語 ロシア 文 学 研 究 44 ( 日 本 ロシア 文 学 会,2012) ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん 1 影 と 光 の 物 語 山 路 明 日 太 はじめに ロマン 主 義 の 精 神 についてブロークは 何 十 倍 もの 人 生 をいきようとする 貪 欲 な 志 向,そんな 人 生 を 創 りあげようとする 志 向 と 表 現 するが, 2 そうした 欲 求 が 19 世 紀 末, 復 古 的 な 試 みとしてあらわれた 一 部 の 作 家 たちが 閉 塞 状 況 を 打 破 すべく 積 極 的 に 現 実 にかかわり, 変 化 を 志 したのだ 3 ゴーリキーの 初 期 作 品 群 にはそうした 意 味 でのロマン 主 義 的 要 素 が 鮮 明 にあらわれている 4 とりわけ イゼルギリ 婆 さん (1894 年 ) にその 傾 向 はつよく,たとえばコロ レンコが 生 原 稿 を 一 読 してそれを 指 摘 し 批 判 したことは 有 名 だ 5 若 きゴーリ キーのロマン 主 義 的 要 素 としてしばしば 誇 張 が 挙 げられるが, 6 この 作 品 のクライマックスにはその 最 たるものがあらわされている 個 の 力 が 爆 発 的 に 解 放 され 閉 塞 状 況 をうちやぶる 7 本 論 では 小 説 全 体 のなかでこの 場 面 がどん な 意 味 をもつのかかんがえていきたい ゴーリキーの 初 期 作 品 群 において 風 景 描 写 は 読 者 に 鮮 烈 な 印 象 をあたえる ゴーリキーはおおくの 作 品 に 自 然 描 写 をとりいれたが,その 際 かれの 関 心 はダ イナミズムにむけられた 雷 や 嵐 の 激 しさ, 曠 野 ないし 海 の 雄 大 さがとりあげ られ, 鮮 やかな 色 調 が 好 まれた 8 そんな 描 写 からは 作 家 の 自 然 にたいするふ かい 憧 憬 がかんじられる イゼルギリ 婆 さん では 風 景 描 写 が 単 に 物 語 をい ろどるだけでなく, 各 挿 話 のプロットと 相 互 にかかわる 重 要 な 要 素 となってい 22

28 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん る そして 小 説 全 体 は 影 と 光,ふたつの 表 象 をおおきな 軸 として 展 開 する この 小 説 については 従 来, 三 つの 挿 話 がイゼルギリの 語 りという 枠 内 で 並 置 されているだけだとみなされ,ダンコを 中 心 に 各 挿 話 が 個 別 に 論 じられてきた 本 論 文 では, 自 然 描 写 と, 光 と 影 のモチーフとにより,これらの 挿 話 が 緊 密 な 相 互 関 係 をなしているとかんがえ,その 観 点 から 新 たな 読 みを 提 示 しようとす る そうした 中 心 テーマを 浮 き 彫 りにする 目 的 から, 語 り 手 とイゼルギリの 現 在 から 三 つの 挿 話 へ, 現 実 的 なイゼルギリの 前 半 生 の 挿 話 からラルラと ダンコの 挿 話 へ,という 全 体 的 な 構 成 をとる 1. 自 然 のなかの 風 景 イゼルギリ 婆 さん は 三 章 構 成 をなし, 各 章 の 中 心 にイゼルギリのかたる 挿 話 がすえられている その 大 枠 には 作 者 の 自 伝 的 要 素 のとりこまれた 語 り 手 9 と 浮 浪 人 の 老 婆 イゼルギリ 10 とがあたりを 眺 めながら 交 わす 会 話 がある かれらのやりとりに 断 絶 はなく 周 囲 の 風 景 の 移 り 変 わりもそのつどかたられる そして 周 囲 の 情 景 は 小 説 全 体 のプロットに 直 接 かかわっている ゴーリキー 作 品 では 風 景 描 写 による 語 りだしが 物 語 全 体 の 基 本 的 な 調 子 を 規 定 し, 登 場 人 物 と 物 語 の 諸 事 件 にたいする 倫 理 的 評 価 を 前 もってしらせる 働 きがある といわれるが, 11 この 冒 頭 部 分 もそうした 機 能 をもつ 本 章 ではまず, 冒 頭 の 情 景 描 写 についてみていきたい それは 筆 者 のみるところ,この 小 説 の 構 造 を よみとくカギになっている 周 囲 の 情 景 にみとめられた 事 象 がきっかけとなる 三 つの 挿 話 の 構 図 は,この 段 階 でできあがっている 語 り 手 とイゼルギリは 夕 暮 れどきの 海 岸 で, 目 の 前 に 変 化 していく 光 景 を 暗 がりから 眺 めている ふたりはここで 芝 居 をみる 観 客 であるかのようだ 語 り 手 の 視 線 は 近 景 から 遠 景 へとうごき, 人 びとの 営 みと 自 然 風 景 を 概 観 する そ の 間 に 雰 囲 気 は 幻 想 的 なものへと 変 化 していく 冒 頭 では 色, 音, 匂 いなどの 混 在 する 情 景 が 語 り 手 の 感 覚 をもとに 映 しださ れる まず, 遠 ざかる 若 者 たちの 特 徴 が 微 細 に 描 写 される 男 たちはブロ 23

29 山 路 明 日 太 ンズのような 皮 膚,ふさふさ 真 っ 黒 な 口 髭, 肩 まで 伸 びた 濃 い 巻 き 毛 をしてい た( 中 略 ) 奥 さん 連 中 や 娘 たちは 快 活 でしなやかな 体 つき, 暗 緑 色 の 眼, 男 たちとおなじくブロンズのような 皮 膚 をしていた 髪 は 絹 のようで 漆 黒,とき ほぐされているので, 暖 かく 軽 やかな 風 がその 髪 と 戯 れては, 編 みこまれた 貨 幣 をじゃらじゃら 鳴 らしていた (76) 12 この 近 景 描 写 では,ロマの 人 びとの 皮 膚 や 髭 髪 の 色 が 強 調 されるとともに, 歌 声 と 貨 幣 の 音, 風 の 戯 れるさまが 述 べられる 雑 多 な 感 覚 の 混 在 したこの 描 写 はその 場 の 臨 場 感 を 現 実 的 なもの として 活 写 している ところがそこに, 幻 想 的 な 物 語 世 界 の 下 地 となる 雰 囲 気 が 添 えられる 一 陣 の 風 が 女 たちの 髪 を 吹 きあげ 怪 奇 なたてがみ のように し, 女 たちは おとぎ 話 にでてくる 人 物 のようにみえるのだ (76) さらに 人 びとは 離 れていくにつれ ますます 美 しく 夜 と 幻 想 にとりこまれて いく (76) 色, 音, 匂 いをともなう 現 実 的 な 対 象 が 遠 ざかり 薄 闇 のヴェールに 包 ま れることで, 語 り 手 たちには 影 絵 芝 居 のようにみえている 現 実 感 をもった 存 在 が 影 にとりこまれていくにつれて, 幻 想 的 なものに 変 化 している 以 降,こ の 雰 囲 気 のなかで 風 景 描 写 はつづけられる そのあと 眼 差 しは 遠 方 へと 移 るが,そのさいにも 音, 匂 い, 色 の 混 在 する 描 写 がおこなわれる 語 り 手 の 聴 覚 (バイオリンの 音, 娘 の 歌 声, 笑 い 声 )と 嗅 覚 ( 海 の 匂 い, 大 地 の 湿 気 )が 刺 激 され, 視 線 はさらにとおく 空 へとむかい, 雲 のさまざまな 色 合 い( 鳩 色 と 灰 青 色,くすんだ 黒 と 茶 褐 色 ) を 識 別 していく そして 語 り 手 は 近 景 と 遠 景 全 体 の 雰 囲 気 を 総 括 し,おとぎ 話 のはじまりを 告 げ る 音 と 匂 い, 雲 と 人 びと これらすべてが 妙 に 美 しくうら 悲 しくて, 珍 しいおとぎ 話 のはじまりのようにおもわれてくる と (76-77) このように 近 景 と 遠 景, 二 度 にわたって, 音, 匂 い, 色 を 伴 う 描 写 がくりかえされ, お とぎ 話 が 言 及 される この 導 入 部 は, 現 実 世 界 から 幻 想 的 な 物 語 に 移 る 雰 囲 気 づくりとして 機 能 している そしてそれに 最 も 寄 与 しているのは,ヴェール によって 転 換 の 役 割 をはたした 影 であろう ここまででわかるのは, 第 一 に, 現 在 の 周 囲 の 事 象 をとりこむことでこ の 小 説 が 構 築 され 展 開 されていく 傾 向 があるということである これからみる 24

30 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん ように,イゼルギリの 三 つの 挿 話 は 周 囲 の 事 象 をきっかけにかたられる 第 二 に,この 小 説 において 語 り 手 の 感 覚 は 鋭 敏 であり, 聞 きとられた 音, 嗅 ぎとら れた 匂 い, 認 識 された 色 彩 がそのつど 指 摘 されていく そしてそれらは 小 説 世 界 の 構 築 に 多 大 な 貢 献 をはたしている 第 三 に, 比 較 的 現 実 感 をもった 事 象 が 音, 匂 い, 色 をともなって 描 写 されるのにたいし, 影 は 幻 想 的 な 雰 囲 気 をつく りだしている 音, 匂 い, 色 はそれ 以 降, 語 り 手 たちを 取 り 囲 む 風 景 の 描 写 において,しば しば 詳 細 に 叙 述 される そんな 風 景 は 周 囲 の 世 界 の 現 実 として,イゼルギリの 挿 話 の 合 間 にさしはさまれる 語 り 手 は 自 然 と 一 体 となった 豊 かな 時 間 が 現 実 感 をもってながれるさまを 描 きとろうとしているようだ 現 実 の 自 然 には 音, 匂 い, 色 を 伴 う 生 命 力 がみなぎっている 自 然 描 写 の 観 点 からみて 興 味 深 いのが,イゼルギリが 自 然 と 同 化 した 存 在 と して 描 かれている 点 である イゼルギリの 語 源 はスカンジナビア 神 話 において 世 界 の 根 底, 生 命 の 樹 と 意 味 づけられるという 13 物 語 をつむぎだす 存 在 としてかの 女 は 語 り 手 に 知 恵 をさずけている その 点 で 自 然 が 与 える 感 化 力 と おなじ 力 をかの 女 はもっている ラルラの 挿 話 をかたる 老 婆 の 声 は 忘 れ 去 ら れた 古 い 時 代 がかの 女 の 胸 に 想 い 出 の 影 となって 具 現 する ようにきこえ, 即 座 に 海 と 並 列 される 海 は,みずからの 岸 辺 で 生 みだされたであろう 大 昔 の 伝 説 のひとつをくり 返 し 語 るのだった (78) ここで 老 婆 の 声 は 波 の 音 に 喩 えられ,そのことによって 老 婆 と 海 が 物 語 る 存 在 として 一 体 であるかのよう な 効 果 が 生 みだされる この 小 説 においてイゼルギリの 形 象 は 自 然 との 一 体 感 をもとにつくり 出 されている 小 説 の 結 末 において 語 り 手 は, 眠 り 込 んだイゼ ルギリとならんで 身 を 横 たえ, 自 然 の 有 り 様 を 感 じとる 曠 野 はしずか で 暗 かった 空 をいまも 雨 雲 がゆっくり 物 憂 げに 這 っていた 海 は 鈍 いもの 悲 しげな 響 きをたてていた (96) 老 婆 の 肉 体 はこの 場 面 で 曠 野, 空, 海 と 同 化 し,それに 寄 り 添 う 語 り 手 はその 一 体 感 をかんじとっている そうした 観 点 か らみれば,イゼルギリは ただ 哀 れみを 誘 う 14 存 在 などではなく,むしろ 安 らぎを 感 じさせる 25

31 山 路 明 日 太 2. 想 い 出 のなかの 生 イゼルギリ 婆 さん を 論 じた 考 察 のなかでイゼルギリ 自 身 の 過 去 の 挿 話 が とりあげられることはほとんどない またそれがラルラとダンコのふたつの 挿 話 を 結 びつけているという 指 摘 はあっても, 15 それらがどういうかたちで 関 連 しているのか 明 らかにされていない その 理 由 はこの 挿 話 自 体, 展 開 が 散 漫 で 印 象 が 弱 いことにもよるだろう とはいえゴーリキーはこの 挿 話 において 現 在 の 老 婆 との 外 見 上 の 対 比 に,そしてまた,ほかのふたつの 挿 話 との 表 現 手 法 上 の 対 照 性 に 心 をくだいている その 考 察 にあたってまず, 老 婆 イゼルギリ の 外 見 描 写 を 確 認 しておきたい 語 り 手 のまえにいる 老 婆 の 外 見 は 老 いの 醜 さが 強 調 されている 16 ひからび た 声 は 骨 によって 話 すかのような 不 気 味 な 音 をたてると 述 べられる (77) また, 若 き 日 の 想 い 出 を 語 り 始 めたときのかの 女 の 姿 はまったく 朽 ち 果 ててい る 生 気 のない 黒 眼,ひびわれた 唇, 灰 色 の 毛 におおわれた 顎,ひんまがった 鼻 など, 老 いた 姿 の 醜 い 細 部 が 執 拗 に 描 写 される そしてついには, 老 婆 が 動 けばその 皮 膚 は 剥 がれおち 裸 の 骸 骨 が 現 れるだろう などと,グロテスクな 想 像 にまでいきつく (83) そんな 描 写 はかの 女 自 身 の 過 去 についての 挿 話 に おける 若 々しい 生 命 力 と 対 極 にある イゼルギリの 前 半 生 の 挿 話 はラルラないしダンコのそれと 異 なり, 現 実 に 主 人 公 の 身 の 上 におこった 出 来 事 が 語 られるという 前 提 に 立 つ そんな 現 実 的 な 昔 がたりは, 表 現 手 法 の 点 でもほかとはおおきく 異 なる 第 一 にイゼルギリがこの 話 をかたりだすきっかけは, 若 者 たちの 多 声 合 唱 の 歌 声 となっている 17 最 初 ひとりの 女 声 コントラアルトがきこえ,そこにひと りふたりと 女 声 がかさなっていき, 最 後 には 男 声 合 唱 も 加 わる 女 たちの 声 は それぞれまったくべつの 響 きをもち, 色 とりどりの 小 川 のようであり, あ たかもどこか 高 いところから 山 の 窪 みに 流 れおち, 飛 びはねさざめきながら 男 声 合 唱 のぶ 厚 い 波 に 流 れこむ かのようである (82) この 独 唱 から 合 唱 へ 移 26

32 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん り 変 わるさまとその 比 喩 とは, 女 性 たちが 恋 愛 をくりかえし, 相 手 を 換 えてい く 生 態 を 映 しだしている 現 実 の 生 きいきとした 人 生 そのものが 歌 声 の 響 き 合 いのなかにとらえられている そんな 感 想 を 抱 かせるのも,このあと 語 られる イゼルギリの 半 生 が, 自 由 奔 放 に 愛 情 をそそぎ 恋 人 を 換 えていく 女 の 恋 愛 遍 歴 にほかならないからである 18 しかもこの 合 唱 の 力 はおおきく, 歌 声 のせい で 波 のさざめきがきこえ ないほどだ (82) すなわち 若 者 たちの 活 力 が 自 然 を 圧 倒 しているのだ 自 然 風 景 は,すでにみたように 小 説 全 体 を 支 える 役 割 を はたしており,また,のちにみるようにほかの 挿 話 では 物 語 を 推 進 する 力 をな す それに 対 しここでは 人 びとの 歌 声 がイゼルギリに 挿 話 をかたらしめるきっ かけを 与 え, 人 間 の 営 みの 活 力 というこの 章 のテーマを 支 える この 挿 話 が 終 わるそのとき すっかり 静 かになっていた と 述 べられるのも,この 歌 声 がや んでしまったことを 示 す (90) 青 春 の 謳 歌 がおわると, 物 語 の 推 進 力 は 自 然 風 景 にふたたび 移 されることになる 第 二 にこの 挿 話 はほかとちがい, 現 実 的 描 写 に 基 づいており 色 彩 が 基 礎 をに なう とりわけ 前 半 の 男 性 たちの 描 写 において 色 彩 は 効 果 的 につかわれる 最 初 の 恋 人 は 黒 い 口 髭 の 漁 師 である わかきイゼルギリの 目 には 月 光 に 青 々と 輝 く 川 を 背 景 に 白 シャツ の 男 が 映 る(83) 鮮 やかな 色 の 対 照 は 長 年 月 をへてもなおイゼルギリの 記 憶 にとどめられたのだ つぎのグツール 人 の 恋 人 については 赤 毛 でね, 全 身 赤 毛! 口 髭 も 巻 き 毛 もみんな! 頭 はすっぽり 火 のようだった! とその 鮮 やかな 色 が 強 調 される (84) イゼルギリの 回 想 における 色 彩 の 鮮 やかな 印 象 は, 語 り 手 が 回 想 前 半 を 総 括 するさい,あらため て 強 調 される わたしはかの 女 によって 蘇 らされた 人 びとを 思 いえがい てみた まず, 火 のようにまっ 赤 な( 中 略 ) グツール 人 が 思 い 浮 かぶ (86) そ のうえ, 語 り 手 はこの 男 が つめたく 青 い 眼 をしていただろう,とみずから の 想 像 までくわえる ほかの 数 人 についても 同 様 に, 語 り 手 は 色 の 印 象 を 際 だ たせながら 思 い 描 く 色 鮮 やかな 想 い 出 の 印 象 は 最 後 に 加 えられる 一 節 によっ てなおいっそうひきたつ だがかれらはみな, 色 あせた 影 (бледные тени) にすぎない (86) ここでの 形 容 詞 бледный とは 色 がくすんだ, 27

33 山 路 明 日 太 色 のぬけおちた といった 意 味 をもつ 19 すなわち,イゼルギリと 語 り 手 の 想 像 のなかで 鮮 やかに 色 づけられていた 人 びとは, 現 実 の 存 在 としてはもはや 色 の 抜 けた 単 なる 影 なのだ,と 断 言 されている この 影 の 比 喩 はラルラの 挿 話 を 踏 まえたもので, 年 月 の 経 過 にすり 減 らされていく 印 象 を 述 べたものに 相 違 あ るまい だからこそ,つづけて 語 り 手 は 現 在 のイゼルギリもまた 長 年 月 に 蝕 まれた ( 中 略 ) 影 みたいな 存 在 だ というのだ (86) 活 力 ある 生 は 色 鮮 やかだが, 年 古 びた 生 や 死 は 色 あせてみえる 翻 ってイゼルギリの 半 生 の 挿 話 をみれば,そうした 色 あせた 存 在 たちが 想 像 のなかでのみ, 色 鮮 やかに 蘇 らさ れていたということができる 以 上 みてきたようにイゼルギリの 過 去 をえがく 挿 話 において, 歌 声 は 昔 がた りのきっかけをあたえ, 色 彩 は 自 由 奔 放 な 女 のわかき 日 々のイメージをかたち づくっている 3. 風 景 のなかの 影 と 光 イゼルギリの 半 生 の 挿 話 が 奔 放 な 女 性 の 現 実 的 な 性 愛 をテーマとするのにた いし,ラルラとダンコの 挿 話 は 非 現 実 的 な 伝 説 である そこでは 挿 話 への 導 入 手 法 も 異 なる 音 や 色 は 後 景 に 退 き, 影 ないし 闇 と 光 とが 象 徴 的 な 意 味 をにな う まず, 影 (тень) と 闇 (тьма) はどう 描 きわけられているのかについて 述 べておきたい たとえばプーシキンにおいて 影 は 光 と 闇 の 中 間 に 位 置 する 両 者 の 組 み 合 わせであり, 幻 影 を 意 味 することがおおい,といわれる 20 そんな 性 質 の 影 は イゼルギリ 婆 さん 冒 頭 で 幻 想 的 な 雰 囲 気 がもちこまれる 場 面 にみ られた だがゴーリキーにおいては 基 本 的 に 影 も 闇 も 光 に 対 立 する いずれも 明 暗, 陰 陽 といったかたちで 光 に 対 する 否 定 的 なイメージを 代 表 しており, 明 確 にはわけられない とはいえ 先 走 って 述 べるとすれば, 風 景 の ラルラ は どれほど 暗 くともあくまで 影 であり, 完 全 な 闇 とはちがう ラルラはいか に 独 善 的 でも 人 間 のように 悩 み 惑 ってもいて, 完 全 悪 ではない 他 方 ダンコの 28

34 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん 挿 話 の 森 は, 人 びとの 前 に 立 ちはだかる 絶 対 悪 の 象 徴 であり, 暗 黒 の 闇 にほかならない その 点 で 両 者 は 描 きわけられている そしてそんな 影 ないし 闇 にせよ 光 にせよ, 自 然 風 景 のなかから 生 みだされる ラルラもダンコもかれらの 挿 話 のきっかけは 遠 方 に 昇 る 自 然 現 象 である ま た 両 者 の 現 在 のありかたはいずれも, 挿 話 内 部 での 人 物 像 と 正 確 に 呼 応 し ている ラルラの 挿 話 は 昇 る 月 がきっかけとなる それはまっ 赤 でおおきく, かつ て 存 分 に 人 間 の 肉 を 喰 らい 血 を 吸 ったため,あんなに 脂 ぎり 肥 え 太 っているこ の 曠 野 の, 地 核 のなかからせりあがってきた かのようである (77) 月 光 の せいで 曠 野 に 雲 の 影 が 漂 いはじめると, 老 婆 は,そのひとつがラルラだという そのうちのひとつはほかよりも 暗 くて 濃 く,ほかよりも 速 く, 低 いとこ ろを 走 っていた それはほかよりも 大 地 に 近 いところをほかよりも 速 く 走 る 雲 片 の 影 であった (77) ここで 現 在 のラルラの 特 徴 がふたつ 挙 げられる ひとつは, 貪 欲 な 大 地 から 生 みだされた 月 の 光 の 影 だという 点 である 挿 話 内 の 主 人 公 の 傲 慢 さも, 風 景 のなかでは 大 地 の 貪 欲 さを 背 負 ったかたちで 性 格 づけられている ふたつめは, 比 較 級 の 連 続 によって 強 調 された,その 孤 立 した 独 自 性 にある みずから 村 人 から 孤 立 するかれの 特 徴 は,この 風 景 のなか にも 明 瞭 にあらわれている そういった 現 在 の 姿 と 挿 話 内 の 人 物 像 との 相 関 性 は, 影 となってもなお 孤 独 なラルラを 傲 慢 な 人 間 の 末 路 と 断 じる, 老 婆 の 言 葉 にもあらわれている (77,81) ダンコの 挿 話 は 昇 る 雨 雲 がきっかけとなる 海 から 雨 雲 がせりあがって くる と (91) ラルラでは 月 光 により 影 が 形 成 されたのにたいし,ダンコで は 雨 雲 の 発 達 により 星 明 かりも 月 光 も 消 し 去 られ,まっ 暗 な 闇 が 形 成 される ところがほかに 光 源 がないにもかかわらず 小 さな 青 い 炎 がひかっている それはなにかの 反 射 などではない 純 粋 な 光 である その 炎 こそ ダンコの 燃 え る 心 臓 の 火 花 であり, 挿 話 の 発 端 となる (91) ラルラにおいて 月 が 影 を 映 し 出 すのに 必 要 だったように,ダンコにおいて 雨 雲 は 光 をあらわにするのに 不 可 欠 だったのだ しかもこの 自 然 風 景 のなかでは,まず 闇 が 到 来 しそのあと 光 29

35 山 路 明 日 太 が 現 れる,という 流 れになっているが,それは 挿 話 内 のプロット 展 開 をも 暗 示 しているかのようだ 以 上 みてきたように,ラルラとダンコの 挿 話 を 導 入 するために 影 と 光 は 重 要 な 役 割 をはたす なるほどここでもいくつもの 色 彩 表 現 がみられる ( まっ 赤 な 月 蒼 白 い 月 光 青 い 炎 ) だがここでは 色 そのものよりも 影 や 光 の 特 質 のほうが 意 味 をもつ 語 り 手 がそれらに 魅 入 られたのも, 色 によるというより もむしろ, 影 ないし 光 の 不 可 解 な 現 象 にたいする 関 心 からであった 歌 声 が 現 実 的 な 挿 話 の 導 入 役 をはたしたのとは 異 なり,ここでは 異 常 な 現 象 が 幻 想 的 な 伝 説 の 導 入 役 をはたしている 挿 話 の 内 部 では 影 (ないし 闇 ) と 光 の 対 照 構 造 がいっそう 深 まることになる 4. 挿 話 のなかの 影 と 光 ラルラおよびダンコがそれぞれ 影 ないし 炎 となった 原 因 はイゼルギリによる 挿 話 の 内 部 で 明 かされる ここではラルラとダンコの 人 物 像 と 物 語 構 造 に 影 と 光 のイメージがどのように 表 れているかみていきたい ラルラの 人 物 形 象 には 影 のイメージが 潜 ませられている ラルラの 傲 慢 な 性 格 は 父 鷲 から 継 承 されているが, 21 外 見 的 特 徴 のおおくは 母 から 受 け 継 がれた ようだ というのも, 美 しく 強 そうなラルラの 外 見 は ちょうど 二 十 年 前 のか の 女 とおなじだ と 表 現 されているからだ (78) その 母 親 自 身 の 外 見 は 夜 のように, 黒 髪 で 繊 細 だ とのみ 述 べられていた (78) 唯 一 指 摘 された 母 親 にたいするこの 比 喩 は 夜 の 闇 を 連 想 させる 影 のなかの 影 としての 生 を 宿 命 づけられたラルラの 外 貌 は 母 から 受 け 継 がれたといえる 一 方,ダンコの 挿 話 では 闇 と 光 のイメージが 人 物 造 形 ばかりでなく 物 語 の テーマ 全 体 にかかわっている 前 半 では 闇 が 光 を 圧 倒 し, 結 末 では 逆 に 光 が 闇 をしりぞける この 描 写 の 対 比 に 注 目 したい ある 一 族 が 敵 に 攻 めこまれ, 深 い 森 を 奥 へとおいやられる 人 びとは 暗 黒 の 闇 に 恐 怖 をかんじ 陰 鬱 になるばかりか, 死 者 もたくさんでる そんなときダン 30

36 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん コが, 森 を 敢 行 するよう 人 びとを 鼓 舞 する かれらはいったんダンコを 先 頭 に 前 進 するが, 森 の 果 てはみえない その 場 面 では 擬 人 法 により 闇 の 恐 ろしさが 強 調 される 22 闇 の 暗 さについては この 森 が 生 まれて 以 来 この 世 で 経 験 した 夜 がすべて,いまここへ 一 度 に 集 まってきたかのようだ とまでいわれる (94) そこでは 光 ですら 恐 怖 の 闇 を 映 すにすぎない 雷 光 に 照 らし 出 された 木 々は 闇 の 牢 獄 から 逃 げまどう 人 びとのまわりで, 長 い 手 をのばし, 密 な 網 目 状 にからめあわせ,むりやり 人 びとをひきとめようとしている ようにみえ る(94) 闇 そのものが 悪 意 をもった 生 きものとして 描 かれ, 雷 光 は 人 びとの 恐 怖 を 倍 加 するかのように, 木 々を 影 絵 として 恐 ろしい 闇 を 映 し 出 すのだ 対 照 的 に 挿 話 終 盤 では,ダンコの 燃 える 心 臓 が 強 烈 な 光 で 闇 を 圧 倒 する 闇 はその 光 に 追 われてとび 散 ってしまい, 震 えながら 森 の 奥 ふかく 逃 げ ていった (95) この 表 現 では,ほんらい 視 覚 的 対 象 にすぎない 闇 が 震 えな がら 逃 げる と 擬 人 化 され,またそれと 闘 う 光 も 単 なる 視 覚 的 現 象 にとどまっ ていない ついに 人 びとが 森 を 抜 けた 場 面 でも 闇 の 世 界 と 光 の 世 界 は 対 比 され る 雷 はあそこ, 後 方 の 森 のうえにあったが,ここには 太 陽 がかがやき, 曠 野 が 息 づき, 草 がひかっていた と (96) 闇 にせよ 光 にせよ 人 びとを 圧 倒 する 存 在 として 描 かれている この 挿 話 にお いて 闇 と 光 は 相 対 立 する 存 在 であり, 悪 と 善, 不 幸 と 幸 福 といった 意 味 あいを 象 徴 している その 点 でいえば,ときに 指 摘 されるキリスト 教 やギリシア 神 話 の 神 々との 対 照 性 をダンコの 挿 話 のうちにみとめることもできよう 23 光 と 闇 との 対 立, 主 人 公 の 使 命 感 と 奇 蹟 の 絶 大 さを 考 慮 するならば, 海 に 道 をひらく モーセの 奇 蹟 が 思 い 浮 かぶ ( 出 エジプト 記 14:21-31) 24 だがモーセが 神 の 指 示 に 従 順 であるのにたいし,ダンコの 行 為 には 意 志 の 力 がつよく 反 映 され ている かれが 一 族 をかれらの 約 束 の 地 へと 導 いたのは, 自 覚 的 な 行 動 に よる また, 光 による 闇 の 克 服 というテーマはイエスを 想 起 させる 25 周 知 の とおりイエスはしばしば 闇 に 対 抗 する 光 として 表 象 される ( マタイ 福 音 書 4:16, ヨハネ 福 音 書 8 :12など 参 照 ) その 点, 光 を 掲 げて 民 を 率 いるダン コの 姿 には,なるほどキリストのイメージも 反 映 されていよう ただし,キリ 31

37 山 路 明 日 太 ストがすべてを 超 越 した 清 逸 さのなかにあったのにたいし,ダンコはあくまで 人 間 的 な 活 力 と 人 びとへの 愛 を 本 源 としている 人 びとを 救 済 する 使 命 感 と 炎 からの 連 想 でいえばむしろ,プロメテウスにちかいかもしれない 26 だがプロ メテウスの 性 格 的 特 徴 は 狡 猾 な 理 性 にあり, 神 話 でもゼウスをだます 側 面 が 強 調 される これらの 神 話 的 存 在 とくらべると,ダンコはまさしく 情 熱 のひとに ほかならない そのことはダンコがみずからの 心 臓 をひき 抜 く 場 面 にまざまざ とあらわされている かれのばあい, 奇 蹟 にいたるまでの 感 情 の 動 きがきわめ て 人 間 的 であり,その 行 為 は 突 発 的 で 生 なましい この 点 についてラルラの 心 臓 との 対 照 のなかでみてみたい 5. 胸 のなかの 闇 と 光 ラルラとダンコはともに 誇 り 高 く, 民 衆 から 孤 立 している この 点 だけを 重 視 すると,ダンコは 民 衆 への 愛 からではなくかれらを 導 く 能 力 が 疑 われたため, 矜 恃 の 問 題 として 心 臓 を 取 りだしたなどという 結 論 に 達 してしまう 27 だが, ダンコはラルラときわめて 対 照 的 に 描 かれている 両 者 はそれぞれ 影 と 光 のイ メージを 担 っており, 性 格 的 にも 正 反 対 である ラルラは 独 善 的 でけっして 民 を 顧 みず, 自 分 本 位 な 行 動 をくり 返 す ラルラの 形 象 にニーチェの 超 人 思 想 へ の 批 判 がよみとられるのももっともだといえる 28 他 方,ダンコは 誇 り 高 い 存 在 ながら, 民 のことを 第 一 に 考 え, 人 びとを 率 先 してかれらを 救 い 出 そうとす る そんな 利 己 と 利 他 の 精 神 のちがいから, 両 者 において 心 臓 が 象 徴 的 なかた ちで 対 比 されている 29 ラルラはある 娘 を 踏 み 殺 したかどで 解 放 して,すき 勝 手 にさせる という 罰 をうける 30 ラルラという 名 は つまはじきにされ, 捨 てられたもの とい う 意 味 で,そのとき 村 人 たちからつけられたものだ (80) かれは 数 十 年 間, 略 奪, 乱 暴 など 放 蕩 のかぎりをつくす だがあるとき 死 を 望 んで 村 にもどって くる 村 人 が 殺 してくれないのでラルラは 両 手 でみずからの 胸 をかき 抱 きな がら,しきりになにかをその 胸 に 探 し 求 めた すえ, 最 後 には 小 刀 を 振 りあげ 32

38 ゴーリキー イゼルギリ 婆 さん て われとわが 胸 を 刺 す ところが その 小 刀 はまるで 石 にでもぶつかった ように, 折 れて しまう (81) ラルラのこの 行 為 は,ダンコのクライマックスでの 行 動 と 対 照 的 である 意 気 地 なく 非 難 ばかりする 人 びとにたいしダンコの 心 には 怒 りが 生 じ,そのあと 哀 れみへと 変 化 する そして かれの 心 臓 にはこの 人 びとを 救 い 出 し,もっと 安 全 な 道 に 連 れ 出 してやろうという 願 望 が 炎 となって 燃 えあがってきた する とかれの 双 の 眼 には 力 強 い 炎 の 光 がかがやきはじめた (95) 警 戒 心 から 襲 い かかろうとする 人 びとをまえに かれの 心 ( 臓 ) はいよいよ 激 しく 燃 えさかっ た そんなみんなの 考 えがかれの 心 ( 臓 )に 深 い 憂 いをなげつけたのだ かれらのために 何 ができるかと 自 問 したダンコは, いきなり 両 手 でわれとわ が 胸 をかきやぶり,そのなかからみずからの 心 臓 をつかみとると, 頭 上 たかく 掲 げた のであった (95) ラルラにおいて 両 手 で 胸 をかき 抱 きながら,し きりに 探 し 求 め けっきょく 探 し 当 てられなかった なにか が 心 臓 だと 仮 定 するとすれば, 両 者 のあいだに 完 全 な 対 照 関 係 がみとめられる ラルラがみずからの 胸 に 小 刀 を 突 き 刺 そうとしても 折 れてしまうのにたいし, ダンコの 心 臓 は 素 手 でつかみ 出 される ラルラにあっては 心 臓 という 言 葉 がいっさい 言 及 されず,かれが 探 し 求 める 対 象 も 胸 にあるなにか でしかな かった それに 対 しダンコのクライマックスにおいては,かれの 緊 張 感 と 鼓 動 を 修 辞 的 に 伝 えるためででもあるかのように,たてつづけに 心 臓 という 言 葉 が 言 及 される そしてそんな 心 臓 の 鼓 動 感 からも 当 然 のことながら,ラルラ とはちがい 両 手 で 胸 をかき 抱 いて 探 し 求 める 必 要 などない 在 処 を 知 る 両 の 手 は いきなり 直 接 胸 をかきやぶり 心 臓 をつかみとるのだ 小 刀 とい う 道 具 から 必 然 的 に 帰 結 されるはずの 突 き 刺 す 行 為 が 完 遂 されなかったの とはことなり, 素 手 という 手 段 では 常 識 的 に 不 可 能 な 胸 をかきやぶる 行 為 がはたされ, 心 臓 が 掲 げられる いずれも 常 識 ではかんがえられない 奇 蹟 にほ かならない だが,その 結 果 は 真 逆 である 自 傷 的 な 行 為 が 両 者 において 奇 蹟 的 な 結 果 へといたるが,それは 一 方 では 未 遂 を 指 し, 一 方 では 完 遂 を 意 味 する その 点 に 道 徳 的 な 意 味 づけをもとめるとすれば, 利 己 的 な 行 動 への 非 難 と 利 他 33

39 山 路 明 日 太 的 な 行 動 にたいする 賞 賛 だといえるかもしれない みずからの 心 臓 を 抜 きだ す という 表 現 自 体 は,ゴーリキー 作 品 に 何 度 もでてきた 31 マカールはロイ コの 剛 胆 さを 表 すため( マカール チュドラー ), 32 マイヤはみずからの 心 のうちを 示 すため( 小 さな 妖 精 と 若 い 牧 人 ), 33 それぞれ 比 喩 としてこの 表 現 を 口 にした それがダンコにおいて 実 現 されたのは, 他 者 のためという 動 機 づけが 必 要 であったとおもわれる ゴーリキー 作 品 で 太 陽 はつねに 賛 嘆 される が, 34 太 陽 と 同 程 度,あるいは 太 陽 以 上 にあかるい (95) 光 をはなつ 心 臓 は, 太 陽 とおなじく みずからのエネルギーを 無 限 に 寄 与 する 35 惜 しみない 利 他 愛 によってかがやくのだ ダンコにおいてかような 行 為 が 完 遂 されたのは, 激 情 の 爆 発 ぶりにその 原 因 があろう もともと 言 葉 の 修 辞 的 比 喩 にみえた 心 のなかで 願 望 が 炎 となって 燃 えあがる という 表 現 が 現 実 の 重 みをもっていて, 光 をはなつ 36 しかもダ ンコはその 輝 きを 人 びとのために 利 用 しようと, 燃 える 心 臓 をみずからの 胸 の なかから 自 分 の 手 でつかみだす 怒 り 哀 れみ 愛 と 変 転 するなかで 激 しさを 増 していく 鼓 動 と 体 温 が 心 臓 に 火 をともし,おなじ 熱 情 が 人 びとのため になりたいという 感 情 と 相 まってみずからの 胸 をかきやぶらせた その 激 しさ とは, 聖 書 そのほかの 神 話 世 界 の 形 象 に 属 するものというよりも, 人 間 的 な 心 から 生 じるものであろう その 行 為 の 叙 述 は 読 者 に 痛 みを 伴 わせるような 生 な ましさをもつ そのことは 行 為 者 が 神 話 的 存 在 にみえてもなお 人 間 にほかなら ないという, 叙 述 者 イゼルギリの 認 識 に 起 因 する かの 女 は,みずからの 半 生 を 物 語 ったあと, 男 のあるべき 理 想 像 をかたろうとダンコの 挿 話 をはじめた その 挿 話 には 奇 蹟 そのものよりもむしろ, 勇 者 たるものたとえ 他 者 から 非 難 さ れようともその 他 者 のためにいかなる 行 為 をなしうるか,という 点 に 眼 目 があ る そうした 老 婆 の 心 情 がダンコの 心 境 の 推 移 について 詳 細 に 語 らしめ,いか にしてかれが 心 臓 をぬきとるという 突 発 的 な 行 動 に 至 ったかということを 物 語 らせたのではないか ダンコの 心 臓 とラルラのそれとの 最 大 のちがいは,その 比 喩 にうまく 言 い 表 されている ダンコのそれが 光 であり 炎 であるのにたいし,ラルラの 34

(1990) (1990) (1991) 88

(1990) (1990) (1991) 88 87 Alina Vitukhnovskaya 1973 3 27 7 11 10 12 1980 Literatunye novosti Smena 1993 1994 1 LSD 10 20 LSD 21 1995 10 1997 10 1998 4 1999 1996 80 1993 1994 1996 1996 1997 1999 10 (1990) (1990) (1991) 88 89

More information

Ольшанская юдофил Синельников Синельников

Ольшанская юдофил Синельников Синельников Agora: Journal of International Center for Regional Studies, No.13, 2016 Митина Митина Славина Ольшанская юдофил Синельников Синельников Педиконе П.и Лаврин А. Педиконе П.и Лаврин А. Педиконе П.иЛавринА.

More information

.

. . + ALM = = ТВЭЛ 1 http://president.kremlin.ru/about/bio.html 2 Собрание законодательства Российской Федерации 3 N. От первого лица: Разговоры с Владимиром Путиным,ВАГРИУС, М., 2000. с.86 4 Собрание

More information

Философия общего дела Н Ф

Философия общего дела Н Ф Н П С А Г В В А С Н Н А В С Е Н Философия общего дела Н Ф 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 Ф М Л Н Вопрос о братстве или родстве о причинах небратского неродственного т е немирного

More information

…“…V…A’l”m−¯‡Æ†c™ƒž−¥‰{“è

…“…V…A’l”m−¯‡Æ†c™ƒž−¥‰{“è Временный брак между русскими офицерами и японскими «женами» в Инаса 1 1. 1. 1. 2. 1. 3. 60 60 2 2. 1. Madame de Chrysantème à la Boulangèà la Capoule 2. 2. анати атакосисуки дазо амакчь аната копому

More information

228

228 ТОКИЙСКИЙ ИНСТИТУТ РУССКОГО ЯЗЫКА ロシア語短期講座 2018 年 10 月 ~2019 年 3 月 228 期 20,000 学校法人日ソ学園東京ロシア語学院 156-0052 1-11-2 03-3425-4011FAX03-3425-4048 1 57 2 89 3 1014 1.500 2. хотеть, жить 1.1000 2.4 который 1.2000

More information

Общество любомудрия Поэт и друг

Общество любомудрия Поэт и друг Философская поэзия Поэзия мысли Общество любомудрия Поэт и друг Анаксагор. Беседа Платона Письмо к графине NN рассуждать философствовать Я скучен для людей, мне скучно между ними! Но -- видит бог -- я

More information

229期短期講座(APR2019) 

229期短期講座(APR2019)  229 期 ТОКИЙСКИЙ ИНСТИТУТ РУССКОГО ЯЗЫКА ロシア語短期講座 2019420199 20,000 学校法人日ソ学園東京ロシア語学院 156-0052 1-11-2 03-3425-4011FAX03-3425-4048 1 57 2 89 3 1013 級3級2級1級 1.500 文法会話力聴取力読解力和文露訳 42. хотеть, жить 1.1000 2.4

More information

2019夏期集中講座 講座案内(PDF版)

2019夏期集中講座 講座案内(PDF版) 2019 年 8 83 816 15 3 / 835 / 9301245 15 3 / 81012 / 9301245 15 16,800 CD1,620 4 15 3 日間でロシア語のアルファベットの読みと発音を習得する講座です これからロシア語を始めようとしている方 ロシア語を始めてはみたもののアルファベットの読みに苦戦している方 何となく読めるけど発音に自信がない方 大歓迎です! 発音とイントネーション

More information

[ ] Гаспаров М.Л., Очерк истории русского стиха.изд.-во«фортуна Лимитед».М., Квятковский А., Поэтический словарь.изд.-во «советская энциклопедия

[ ] Гаспаров М.Л., Очерк истории русского стиха.изд.-во«фортуна Лимитед».М., Квятковский А., Поэтический словарь.изд.-во «советская энциклопедия Е.В. Хворостьянова. Трехдольник Тредиаковского//Индоевропейское языкознание и классическая филология.материалы чтений, памяти профессора Иосифа Моисеевича Тронского.16-18 июня 2003г.СПб.: Наука. 2003.

More information

杉浦論文.indd

杉浦論文.indd M. B.G. Rosenthal, ed., The Occult in Russian and Soviet Culture (London, 1997); M. Bohachevsky-Chomiak, B.G. Rosenthal, eds., A Revolution of the Spirit: Crisis of Value in Russian, 1890-1918 (Newton

More information

2007 12 4 2007 12 4 46 1920 10 21 1921 3 10 отдел Высшего судебного контроля судебное решение, вступивщее в законную силу 2002 2002 47 2002 2002 надзорная жалоба 376 2002 2002 381 1 централизованная децентрализованная

More information

МАС Малый академический словарь БАС Большой академический словарь Г нормативные словари Императорская Российская Академия

МАС Малый академический словарь БАС Большой академический словарь Г нормативные словари Императорская Российская Академия история лексикографии Л. П. Крысин М. А. Бобунова МАС Малый академический словарь БАС Большой академический словарь Г нормативные словари Императорская Российская Академия ТОЛКОВЫЙ СЛОВАРЬ РУССКОГО ЯЗЫКА

More information

Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) Title 移動展派の創作における個の問題 : クラムスコイとレーピンの作品を中心に Sub Title О личности в творчестве передвижников O lichnosti v tvorchestve peredvizhnikov Author 上野, 理恵 (Ueno, Rie) Publisher

More information

М. Ю. Мцыри романтическая поэма В. Г. У. Р. А. С. Кавказский пленник Е. А. Эда Герой нашего времени

М. Ю. Мцыри романтическая поэма В. Г. У. Р. А. С. Кавказский пленник Е. А. Эда Герой нашего времени М. Ю. Мцыри романтическая поэма В. Г. У. Р. А. С. Кавказский пленник Е. А. Эда Герой нашего времени хранительные стены тюрьма сумрачные стены глухие стены А. Е. 0 0 0 0 Где люди вольны, как орлы тот чудный

More information

No ロースキーの直観主義とベルクソン哲学 北見 諭 はじめに Лосский Н.О. Обоснование интуитивизма // Лосский Н.О. Избранное. М., С. 13. Лосский. Обоснов

No ロースキーの直観主義とベルクソン哲学 北見 諭 はじめに Лосский Н.О. Обоснование интуитивизма // Лосский Н.О. Избранное. М., С. 13. Лосский. Обоснов No. 56 2009 ロースキーの直観主義とベルクソン哲学 北見 諭 はじめに 20 1 2 3 1 Лосский Н.О. Обоснование интуитивизма // Лосский Н.О. Избранное. М., 1991. С. 13. Лосский. Обоснование интуитивизма. С. 117. 2 Нэтеркотт Ф. Философская

More information

本組/野部(2段)

本組/野部(2段) Economic Bulletin of Senshu University Vol.46, No.3, 95-107, 2012 1 сельскохозяйственные организации хозяйства населения крестьянские фермерские хозяйства сельскохозяйственные предприятия АККОР 95 Российский

More information

Slaviana2017p

Slaviana2017p 19 20 [ резюме ] «Женский вопрос» и литература в России второй половины 19-го начала 20-го века. НАЗАРЕНКО Екатерина В первой части статьи говорится о зарождении и развитии женского вопроса в России. Начиная

More information

立経 溝端p ( ).indd

立経 溝端p ( ).indd Мау Кудрин Гурвич Акиндинова Кузьминов Ясин Маргарита Лютова Ведомости Форум февраля Экономика и жизнь сентября Владислав Иноземцев РБКсентября РБК ОрловаЕршов Загашвили Загашвили Мантуров Никитин Осьмаков

More information

2 (коммуникативно нерасчлененное предложение) Книг было три. 3 книг (коммуникативно расчлененное предложение) Этих книг мы купили две. 2?Учебных предм

2 (коммуникативно нерасчлененное предложение) Книг было три. 3 книг (коммуникативно расчлененное предложение) Этих книг мы купили две. 2?Учебных предм Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.38 20031 Коммуникативно расчлененные предложения с числительными в русском языке Yukiyoshi Inoue В настоящей статье рассматривается вопрос

More information

& ~16 2

& ~16 2 10 10 100 17 20 10 17 10 16:00~17:30 18:00~ 10 9:30~9:45 9:45~12:15 12:15~13:25 13:30~16:20 13:30~16:20 16:30~17:30 17:30~18:00 19:00~ 10 9:30~11:45 1 & 100 15~16 2 3 2004 10 9:30 9:309:45 1401 10 1401

More information

2013 2 1 1 27 13.01.28 2 8 13.01.28 3 2 5 7 9 13.01.28 4 2 8 10 13.01.28 5 4 1 11 13.01.28 6 3 4 13.01.28 7 1 13.01.29 13.01.30 8 2 13.01.29 13.01.30 1 9 28 13.01.29 10 29 13.01.29 11 72 73 13.01.29 12

More information

ДОБРО ПОЖАЛОВАТЬ Кабели, которые находятся в каталоге исключительно от нашего стандартного ассортимента, мы в состоянии удовлетворить все ваши конкрет

ДОБРО ПОЖАЛОВАТЬ Кабели, которые находятся в каталоге исключительно от нашего стандартного ассортимента, мы в состоянии удовлетворить все ваши конкрет ДОБРО ПОЖАЛОВАТЬ Кабели, которые находятся в каталоге исключительно от нашего стандартного ассортимента, мы в состоянии удовлетворить все ваши конкретные требования для кабели не включены в этом каталоге.

More information

Веселовский

Веселовский Веселовский «Георгиево мучение» Тихонравов «Чудо Георгия о змии» Рыстенко Дмитриев, Лихачев Mиладинови Богданова и др. Веселовский Волочебная песня Земцовский духовные стихи Кирпичников Бессонов Марков

More information

Slaviana2017p

Slaviana2017p [ резюме ] О восприятии А. П. Чехова в детском журнале «Красная птица» КОНДО Масао В этой статье предпринимается попытка проанализировать особенности переводов произведений А. П. Чехова, публиковавшихся

More information

) ) ) ) Сильный ветер сильный и дождь. Если один день шел дождь и появился ветер то будет ещё 2-3 дня дождь. Куда ветер туда и дождь. Если стояло долг

) ) ) ) Сильный ветер сильный и дождь. Если один день шел дождь и появился ветер то будет ещё 2-3 дня дождь. Куда ветер туда и дождь. Если стояло долг ( 1 ) The Russian proverbs of weather forecast Mitsuko Otani А.Ермолов Народное погодоведение Москва 1905 ) ) ) ) Сильный ветер сильный и дождь. Если один день шел дождь и появился ветер то будет ещё 2-3

More information

( ) ( ) ( ) ( ( ~ ) ( ) ( )) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ⑴ 2

( ) ( ) ( ) ( ( ~ ) ( ) ( )) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ⑴ 2 ( ) ( ) (Максим Горький : Алексей Масимович Пешков ) 1 ( ) ( ) ( ) ( ( ~ ) ( ) ( )) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ⑴ 2 . ( ) ( ) ( ) ( ) [ マ マ ] ( ) ママ ( ) Союз писателей СССР 3 ( ) ( ) Всероссийский союз писателей

More information

087-104_−~flö

087-104_−~flö 51 2008 87 103 Он пришел Он сейчас здесь 51 2008 этот 2 я-сейчас-здесь целостность предел 3 51 2008 целостность Сталин понял, что боязнь коммунистической заразы будет сильнее голоса рассудка. И он не ошибся.

More information

1-2 カーの時間 АСЦУ «Тогда еще верили в пространство и мало думал о времени.» В. В. Хлебников, Соб

1-2 カーの時間 АСЦУ «Тогда еще верили в пространство и мало думал о времени.» В. В. Хлебников, Соб フレーブニコフの カー とハルムスの ラーパ における時間概念の共通性 本田登 はじめに 1930 1991 11 1 第 1 章フレーブニコフの時間概念と作品 カー の構造 1-1 カー概説 9 2 1 Анна Герасимова / Александр Никитаев, Лапа, Театр, 1991, 11. 2 29 1-2 カーの時間 2222 2222 АСЦУ 3 7 1905

More information

Microsoft Word - 20120316horiuchi.docx

Microsoft Word - 20120316horiuchi.docx 1 2007 11 2013 2 2012 9 APEC 2009 12 2025 3 2013 2007 2009-2018 4 2009 9 1990 1 1. 1.1 2013 5 2013 2007 11 1996 2002 2007 2 7 8 75 1996 6 APEC 2012 APEC 26 2008 2012 APEC APEC 2 APEC ESPO LNG Sollers APEC

More information

プロットとキャラクターの 類 型 3 5 Борисов С.Б. (сост.) Рукописный девичий рассказ. М.: ОГИ, Вацуро В

プロットとキャラクターの 類 型 3 5 Борисов С.Б. (сост.) Рукописный девичий рассказ. М.: ОГИ, Вацуро В ソ 連 の 学 校 における 少 女 の 物 語 文 化 越 野 剛 10 1998 1 2 90 1995 1 3 2003 4 рукописный девичий рассказ 80 1 Белоусов А.Ф. (сост.) Русский школьный фольклор: От «вызываний» Пиковой Дамы до семейных рассказов. М.,

More information

untitled

untitled 30 3 II30 I 5 A1930 1931 33 B1929 1930 1934 1935 C1928 1934 D1924 1927 E1915 16 1925 30 C A A CBA C 7 Нам остается, наконец, сделать последний, заключительный шаг в анализе внутренних планов речевого мышления.

More information

untitled

untitled 30 2006 9 2006 56 7 1. 2006 56 56 10 21 22 10 20 3 41 3 9 21 9 30 10 20 18:3020:30 SF SF 16 10 21 18:30 2 5 5000-1- 10 20 10 21 10 22 9:20-9:35 1 A B C D A B C D 9:40-10:10 [1] [15] [28] 9:40-10:10 [8]

More information

Slaviana2017p

Slaviana2017p [ резюме ] Московский концептуализм в сфере влияния В. А. Фаворского: Взгляды Кабакова, Булатова, Васильева. ИКУМА Генъити В этой статье я попробовал анализировать, каким образом на концептуалистов повлияла

More information

Японский язык 9 класс I блок. Аудирование кол-во баллов номер задания правильный ответ 1 1 X 1 2 V 1 3 X 1 4 C 1 5 C 1 6 B 1 7 C 1 8 D 1 9 X 1 10 V 10

Японский язык 9 класс I блок. Аудирование кол-во баллов номер задания правильный ответ 1 1 X 1 2 V 1 3 X 1 4 C 1 5 C 1 6 B 1 7 C 1 8 D 1 9 X 1 10 V 10 Японский язык 9 класс I блок. Аудирование 1 1 X 1 2 V 1 3 X 1 4 C 1 5 C 1 6 B 1 7 C 1 8 D 1 9 X 1 10 V 10 11 Нет единого правильного ответа. Текст составляет участник Возможно приблизительно следующее

More information

The South Kuril Islands Dispute and Political Ideology in Modern Russia: Focusing the second term of the Putin administration ( - ). OSAKI, Iwao Japanese scholarship has insufficiently discussed the Russian

More information

…“…V…A’l‡Ì‡Ý‡½†c™ƒž−¥‰{“è2/21

…“…V…A’l‡Ì‡Ý‡½†c™ƒž−¥‰{“è2/21 Взгляд русских на «браки» между русскими офицерами и японскими «женами» 1 1. 1. 1. 2. 20 1887 M-me Chrysanthème Madame Chrysantème M-me Chrysantème 1. 3. par devant monsieur le marie état civil 2. 2.

More information

確定_中澤先生

確定_中澤先生 B EU (2012.3) 1. 2. 3. 4. 5. 1. 2. 3. 4. 2. 3. 4. 1 2012 59 1957 1 332 1995 3 1 4 1997 2009 10 3 4 5 2 2010 1000 2 3 4 149 4 3 1 2 9 2 4 1 3 2011 2011 58 4 10:00 11:30 11:30 10 3 13:30 15:30 15:30 15:45

More information

Андреевна Федосова ) 5) 6) 1895 Ельпидифор Васильевич Барсов Андрей Ефимович Елена Петровна )

Андреевна Федосова ) 5) 6) 1895 Ельпидифор Васильевич Барсов Андрей Ефимович Елена Петровна ) И.А. Metaphorical Images of Birds in the Funeral Lamentations of I.A.Fedosova Masahiro Nakahori Слово о полку Игореве 1) 2) 3) Ирина Андреевна Федосова 1831-1899 4) 5) 6) 1895 Ельпидифор Васильевич Барсов

More information

.e..Note

.e..Note Рижский М.И. История переводов библии в России. Новосибирск: Наука, Сибирское отд-ние, 1978. С. 57-59. А.Н. А.С. Jeffrey Brooks Jeffrey Brooks, When Russia Learned to Read (Princeton: Princeton U.P., 1985),

More information

Vol. Данная работа посвящена Михаилу Александровичу Чехову, русскому актеру, режиссеру и педагогу, внесшему огромный вклад в мировое театральное искус

Vol. Данная работа посвящена Михаилу Александровичу Чехову, русскому актеру, режиссеру и педагогу, внесшему огромный вклад в мировое театральное искус Title Author(s) ミハイル チェーホフが目指した演劇 : 第二モスクワ芸術座とダーティントン ホール芸術センターでの活動の比較から 西田, 容子 Citation 大阪大学言語文化学. 26 P.31-P.42 Issue Date 2017-03-31 Text Version publisher URL https://doi.org/10.18910/62199 DOI 10.18910/62199

More information

......

...... сервитут Герасименко Г. А. Борьба крестьян против столыпинской аграрной политики. 1985Зырянов П. Н. Крестьянская община Европейской России 1907-1914 гг. М., 1992 Judith Pallot, Land Reform in Russia, 1906-1917:

More information

06[ ]宮川(責).indd

06[ ]宮川(責).indd 1. 1920 1894 1958 1 «Распад атома» 1938 2 105 3 2. Голубь голубой 4 сиять синий 5 васильковый лазурный лазорь лазурь лазорёвый бирюзовый аметистовый сапфировый blue голубой синий 6 11 7 1900 1898 8 9 10

More information

Sawada

Sawada A. I. A. S. Y. M. C. A. P. P. S. M. I. L. A. D. E. A. Мамонов А. И. Пушкин в Японии. М.: Наука, Главная редакция восточной литературы, 1984. 326 с. P. P. V. D. G. I. A. S. K. M. Русское национальное общество

More information

体制移行期のカザフスタン農業

体制移行期のカザフスタン農業 СНГ статистический ежегодник М.стр.СНГ статистический ежегодник М.стр СНГ статистический ежегодникстр. СНГ статистический ежегодник стр. Народное хозяйство СССРМ. стр. Народное хозяйство СССРМ. стр условная

More information

上野俊彦.indd

上野俊彦.indd ロシアにおける連邦制改革 プーチンからメドヴェージェフへ 上野俊彦 はじめに 1 1 2 3 1. 前史 1-1. 1993 年 12 月 12 日の憲法採択に関する国民投票 Путин, Владимир Владимирович Ельцин, Борис Николаевич 1993 12 12 2 89 21 13.88% 45.73% 47.53% 47.65% 20.52% 27.53%

More information

.R N...ren

.R N...ren 1 Новейшая русская поэзия, 1921,, 1971, 76 2,, 1988 235 315,, 20, 2003 69 98 3 Борис Эйхенбаум: Теория формального метода, О литературе: работы разных лет Советский писатель, 1987, с. 375 408., 1984, 215

More information

typeface (полуустав) (скоропись) (гражданский шрифт)

typeface (полуустав) (скоропись) (гражданский шрифт) 0 1 1 3 3 1984 [ 1984:32] [ 1984:61-62] [ 1984][ 1984] [ 1997] «Style of writing» [ :19] [ :32] [ :82] Cercle linguistique de Waseda (ed.) Travaux du Cercle linguistique de Waseda. Vol. 9., 2005. 39-58.

More information

V. K Мелодия Чешков М. Талант. НЛО, с Емильянова И. «Вадиму было 19 лет». НЛО, с Чешк

V. K Мелодия Чешков М. Талант. НЛО, с Емильянова И. «Вадиму было 19 лет». НЛО, с Чешк 1994 Поэт в катастрофе 1 2 1999 3 3 4 5 Вадим Маркович Козовой 1937 1 Вадим Козовой. Поэт в катастрофе. М.-Париж, Гнозис, Institut d Etudes Slaves, 1994. 2 1985 4 119 3 Словарь поэтов русского зарубежья.

More information

シュリクンとその現代的機能 : アルハンゲリスク州ヴェルフニャヤトイマ地区調査から

シュリクンとその現代的機能 : アルハンゲリスク州ヴェルフニャヤトイマ地区調査から Title シュリクンとその現代的機能 : アルハンゲリスク州ヴェルフニャヤトイマ地区調査から Author(s) 塚崎, 今日子 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 49: 213-244 Issue Date 2002 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38983 Type bulletin (article) File Information

More information

А и стала змея да поналетывать, А и стала змея да понасхватывать По головушке да по скотиной, Стало мало скота в граде ставиться. А и стала змея да по

А и стала змея да поналетывать, А и стала змея да понасхватывать По головушке да по скотиной, Стало мало скота в граде ставиться. А и стала змея да по Ляцкий «О спасении Елисавии Арахлинской Царевны» Селиванов О СПАСЕНИИ ЕЛИСАВИИ АРАХЛИНСКОЙ ЦАРЕВНЫ На три города Господь прогневался, На три города да на три неверных: А и на первый город Арахлин-город,

More information

神戸外大論叢第 68 巻第 1 号 (2018) 65 オプチナ修道院における聖師父文献の出版事業 (1) パイーシイからキレエフスキーにいたる聖師父文献の翻訳史を中心にー 序章 Богослужение 19 Божественная литургия 19 1 Прот. Иоанн Мейендорф. Византийское наследие в Православной Церкви.

More information

7 I.R Ⅱ

7 I.R Ⅱ 50 4 241 16 29 2008. 9 明治期における 極東ロシアへの日本人移民にみる渡航過程 長崎県 旅券下附伺 の分析を中心に 1 2 3 1 2 Ⅰ 19 1866 2 1868 1 1868 1941 16 74 77 6 2 16 17 3 4 1866 か ふうかがい 5 6 3 2 16 7 I.R. 8 9 10 1906 39 11 1906 39 1906 39 1 2 Ⅱ

More information

сложили свои полномочия. ハバロフスク地方の 2000 人程の農村集落の議員のうち 102 名が期限前に辞任 した Причина обязанность ежегодно предоставлять справку о своих доходах, доходах супр

сложили свои полномочия. ハバロフスク地方の 2000 人程の農村集落の議員のうち 102 名が期限前に辞任 した Причина обязанность ежегодно предоставлять справку о своих доходах, доходах супр Декларация о доходах 収益申告書 В Хабаровском крае депутаты сельских поселений отказываются от своих мандатов. ハバロフスク地方で農村集落の議員らが自身の委託業務を拒否している Один из последних случаев 5 депутатов из посёлка Сита района имени

More information

09井上幸義.indd

09井上幸義.indd Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.50 (2015) 1 Взаимосвязь между Тамарой из поэмы «Демон» и одноименной героиней из баллады «Тамара» INOUE Yukiyoshi Поэтические произведения

More information

Слово.ру: балтийский акцент Молодежь Эстонии Postimees на русском языке День за днем МК Эстония Вести Здоровье для всех Деловые ведомости Столица» «Юж

Слово.ру: балтийский акцент Молодежь Эстонии Postimees на русском языке День за днем МК Эстония Вести Здоровье для всех Деловые ведомости Столица» «Юж Слово.ру: балтийский акцент Молодежь Эстонии Postimees на русском языке День за днем МК Эстония Вести Здоровье для всех Деловые ведомости Столица» «Южная столица» «Северное побережье» «Чудское побережье»

More information

А. Левкин. Двойники.. Москва, 2000: Содержание Ольга Хрусталева. Предисловие к Левкину/ Наступление осени в Коломне/ Достоевский как русская народная

А. Левкин. Двойники.. Москва, 2000: Содержание Ольга Хрусталева. Предисловие к Левкину/ Наступление осени в Коломне/ Достоевский как русская народная 1 (2000) (2002) Андрей Левкин 1954 1972 88 90 98 (Средства массовой информации в интернете)русский Журнал 2001 Старинная арифметика. Рига,

More information

Microsoft Word - ファイナルレポート_Jp_ doc

Microsoft Word - ファイナルレポート_Jp_ doc 1-1 () 26 () 1-2 2 Ф.И.О Должность 1 2 3 4 5 6 ЮСУБОВ Батур ШЕХИЕВ Сердар РУСЛАН Лазываев МЕЗИЛОВ Курбанмурад Амангулыевич ВАСОВ Оразмамед Начальник Азиатско-тихоокеанского управления Министерства иностранных

More information

日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後100年祭(1937年、東京)

日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後100年祭(1937年、東京) Title 日本における白系ロシア人史の断章 : プーシキン没後 100 年祭 (1937 年 東京 ) Author(s) 沢田, 和彦 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 47: 327-353 Issue Date 2000 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38945 Type bulletin (article) Note

More information

‹É›ê‘ã’æ’¶Ÿ_Ł¶

‹É›ê‘ã’æ’¶Ÿ_Ł¶ (родство) (большая семья) (семья) (семья) См.: Зеленин Д.К. (перевод Цивиной К.Д.). Восточнославянская этнография. М., 1991 (1927); Александров В.А., Власова И.В., Полищук Н.С. (отв. ред.) Русские. М.,

More information

(1887 ) ) ([22, p.343]) ( ) (1926) (1929,1994)

(1887 ) ) ([22, p.343]) ( ) (1926) (1929,1994) 1860 1913 1-3 14 3-4 15-1 3-5 17-2 4-6 18-3 4-7 20 5 20-1 6-1 20-2 6-2 24-3 7 29 10 32-1 10 37-2 11 50 *) 1860-1913 4 1 4 ( 16 ) 1920 1920 70 1994 1) 1885 *) [24-2] [24-2] 1 2 [24-2] 3 1) ([4, стр.490])

More information

,000 5, a) b) c) d) e) 9

,000 5, a) b) c) d) e) 9 1. 2. 3. 3 M. 2000 8 21 No.613 2 (2000 8 21 ) 1. 2. 8 2 50 1500 100 50 6 14 2 3. 100 500 1,000 5,000 2 5000 2 4. a) b) c) d) e) 9 f) g) h) i) j) k) l) 5. 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8 9) 10) 11) 12) 4 6 6. 10

More information

Our Position in the Market Interfax-100 Russian Banks by Assets

Our Position in the Market Interfax-100 Russian Banks by Assets 1 ? 2 ???? 3 !!!!! 4 ? / 5 Почему Россия? Экономическая стабильность Россия одна из наиболее быстрорастущих экономик в мире Богатейшие природные ресурсы Качественные и относительно дешевые трудовые ресурсы

More information

Kitami

Kitami Баран Х. Первая мировая война в стихах Вячеслава Иванова // Вячеслав Иванов. Материалы и исследования. М., 1996. С.171-185. Ben Hellman, Poets of Hope and Despair: The Russian Symbolists in War and Revolution

More information

- February significance

- February significance ЯПОНИЯ ежегодник ЯПОНИЯ ежегодник ЯПОНИЯ ежегодник - February significance - February A.S. - February D.V. S.I. D.V. G.K. Правда - February N.N. D.V. O.V. - February D.V. A.N. D.V. D.V. D.V. D.V. A.N.

More information

(3) (4) (5) XX века. Slavica Helsingiensia С См. Иванов Вяч. Поэт и чернь //Собрание сочинений. Т. 1. Bruxelles, 1974

(3) (4) (5) XX века. Slavica Helsingiensia С См. Иванов Вяч. Поэт и чернь //Собрание сочинений. Т. 1. Bruxelles, 1974 (1) (2) 1 Баран Х. Первая мировая война в стихах Вячеслава Иванова // Вячеслав Иванов. Материалы и исследования. М., 1996. С.171-185. Ben Hellman, Poets of Hope and Despair: The Russian Symbolists in War

More information

カズクロム社について

カズクロム社について Каталог книжно журнальной и картографической продукции, предлагаемой для реализации Издательством ВСЕГЕИ (по состоянию на 12.11.03 г.) Наименование издания Цена, Руб. ( 1 Геологическая картография и геологосъемочные

More information

Как говорят программисты, система «не дружелюбна» к пользователю. プログラミストが言うには システムは利用者に対し 親切でない Карта загружается долго, переход от одного меню к дру

Как говорят программисты, система «не дружелюбна» к пользователю. プログラミストが言うには システムは利用者に対し 親切でない Карта загружается долго, переход от одного меню к дру Заявка на гектар 1 ヘクタールの申請 С 1 июня начала действовать программа по оформлению участков земли в рамках законопроекта о дальневосточном гектаре. 6 月 1 日から極東の1ヘクタールについての法案の枠内での土地区画手続きプログラムの施行が開始した Получить

More information

佐藤論文.indd

佐藤論文.indd бессюжетная проза бесфабульные произведения См. Тынянов Ю. Достоевский и Гоголь (К теории пародии). Пг.: Опояз, 1921; Эйхенбаум Б. Как сделана «Шинель» Гоголя (1919). O прозе М. Кузмина (1920) // Эйхенбаум

More information

untitled

untitled ДОМ-МУЗЕЙ СИБЕЛИУСА ИСТОРИЧЕСКИЙ МУЗЕЙ ГОРОДА ХЯМЕЕНЛИННА Хямеенлинна, примерно 1897 год, вид с церковной башни на восток. 2 ХЯМЕЕНЛИННА 60-80-х ГОДОВ XIX в. В детские годы Сибелиуса Хямеенлинна был довольно

More information

<4D6963726F736F667420576F7264202D2093E0955C8E86814594E08145899C957491E682528D5A824F8254824F8252825182512E646F63>

<4D6963726F736F667420576F7264202D2093E0955C8E86814594E08145899C957491E682528D5A824F8254824F8252825182512E646F63> 1904 1905 * M I 1930 35 1300 V I 800 10 15 80 10 15 1905 1917 12 1917 1906 * Historiography 9 V I 3 11 20 35 4 1 2000 16 1910 500 P N 1990 1 1908 1917 1904 1905 2 3 4 5 6 7 1 Россия и Япония на заре ХХ

More information

И нам нужно сделать все, чтобы в рамках этого решения сейчас отработать». そして我々はこの判断の中で今行うべき全てのことをする必要があります Решение МОК, без сомнения, расстроит к при

И нам нужно сделать все, чтобы в рамках этого решения сейчас отработать». そして我々はこの判断の中で今行うべき全てのことをする必要があります Решение МОК, без сомнения, расстроит к при Готовились к соревнованиям, но были готовы и к худшему. Спортсмены и тренеры делятся эмоциями от вердикта (06:02~) 競技に向け準備していながら 最悪の状態にも心の用意ができていた 選手たちとトレーナーは判決の感想を話している «В целом, решение МОК, на наш взгляд,

More information

Репортаж Павла Зарубина. パーベル ザルビンによるレポートです В астраханской школе имени Гейдара Алиева готовятся ко дню народного единства. アストラハンのヘイダル アリエフ記念学校では民族統一記

Репортаж Павла Зарубина. パーベル ザルビンによるレポートです В астраханской школе имени Гейдара Алиева готовятся ко дню народного единства. アストラハンのヘイダル アリエフ記念学校では民族統一記 Нужен ли закон о российской нации: Путин дал старт дискуссии ロシアの民族に関する法律は必要か : プーチンは議論をスタートさせた Представители каких народов должны получать гражданство в России в упрощённом порядке, как адаптировать мигрантов,

More information

- Суффиксы вежливости (учебник урок 7, правило 5, стр. 49; файл «Суффиксы вежливости СЭНСЭЙ, САМА, САН, КУН, ТЯН») Заполните пропуск соответствующим п

- Суффиксы вежливости (учебник урок 7, правило 5, стр. 49; файл «Суффиксы вежливости СЭНСЭЙ, САМА, САН, КУН, ТЯН») Заполните пропуск соответствующим п Банк заданий_ Японский язык 1 семестр 6 класс - Тест 1_Т-1, С-1, Тест 2_И-1,С-1 Вопросы для самоконтроля 6 класс. Лексика: 1) Новые слова из тетради. 2) Новые слова из учебника Е.В. Стругова, Н.С. Шефтелевич,

More information

結婚儀礼に現れる帝政末期ロシア農民の親族関係 : 記述資料分析の試み

結婚儀礼に現れる帝政末期ロシア農民の親族関係 : 記述資料分析の試み Title 結婚儀礼に現れる帝政末期ロシア農民の親族関係 : 記述資料分析の試み Author(s) 伊賀上, 菜穂 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 49: 179-212 Issue Date 2002 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38982 Type bulletin (article) File Information

More information

世界戦争とネオ・スラヴ主義 : 第一次大戦期におけるヴャチェスラフ・イワノフの思想

世界戦争とネオ・スラヴ主義 : 第一次大戦期におけるヴャチェスラフ・イワノフの思想 Title 世界戦争とネオ スラヴ主義 : 第一次大戦期におけるヴャチェスラフ イワノフの思想 Author(s) 北見, 諭 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 47: 117-155 Issue Date 2000 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38933 Type bulletin (article) File Information

More information

™ƒ‚º’æ’¶Ÿ_Ł¶

™ƒ‚º’æ’¶Ÿ_Ł¶ Julia Kristeva, trans. by Martha Noel Evans, On Yury Lotman, Publications of the Modern Language Association of America 109:3(1994), pp. 375-376. Лотман Ю. М. Культура и взрыв. М., 1992. С.255. Лотман

More information

シクロフスキイ再考の試み : 散文における《複製技術的要素》について

シクロフスキイ再考の試み : 散文における《複製技術的要素》について Title シクロフスキイ再考の試み : 散文における 複製技術的要素 について Author(s) 佐藤, 千登勢 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 52: 119-144 Issue Date 2005 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/39073 Type bulletin (article) File Information

More information

この道を作り ここは道路を塞ぎます И вот это благоустройство это конечно можно сделать.» そしてこの設備ももちろんできます Деревянные тротуары, освещение, зоны для кемпинга и 3 совреме

この道を作り ここは道路を塞ぎます И вот это благоустройство это конечно можно сделать.» そしてこの設備ももちろんできます Деревянные тротуары, освещение, зоны для кемпинга и 3 совреме Дикий туризм уходит в прошлое アウトドアは過去のもの Дагинские термальные источники в Ногликах благоустроят. ノグリキのダギンスキー温泉地が開発されている Преображение этой туристической зоны начнется уже этой осенью. この旅行スポットが変わり始めるのはもうこの秋だ

More information

untitled

untitled Малые и средние корпуса общего назначения ENSTO CUBO S. IP 66/67 ENSTO CUBO S представляет собой серию малых и средних корпусов общего назначения, изготовленных из термопластика. Поликарбонатные корпуса

More information

Microsoft Word - pre-print2005最終.doc

Microsoft Word - pre-print2005最終.doc Казакевич В. ПОСЛЕДНИЕ ЧТЕНИЯ НА ВИЛЛЕ JEANNETTE «Частьречи» еще Evseeva E.V. Клочков Ю. Предупреждение и устранение грамматических ошибок японских учащихся Накадзава А. О происхождении и эволюции эпистолярных

More information

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設 暴 力 団 員 による 不 当 な 行 為 の 防 止 等 に 関 する 法 律 の 一 部 を 改 正 する 法 律 暴 力 団 員 による 不 当 な 行 為 の 防 止 等 に 関 する 法 律 例 規 整 備 * 暴 力 団 員 による 不 当 な 行 為 の 防 止 等 に 関 する 法 律 の 一 部 を 改 正 する 法 律 例 規 整 備 公 布 年 月 日 番 号 平 成 24 年

More information

.r.c._..

.r.c._.. управление T.H. T. E.H. Mary McAuley, Bread and Justice: State and Society in Petrograd 1917-1922 (Oxford: Clarendon Press, 1991). Richard Sakwa, Soviet Communists in Power: A Study of Moscow during the

More information

リーダー達は両者の協力において最も切実で切迫した問題について話し合うた め顔を合わせた Сейчас идет встреча в расширенном составе - с участием министров и руководителей крупнейших российских ком

リーダー達は両者の協力において最も切実で切迫した問題について話し合うた め顔を合わせた Сейчас идет встреча в расширенном составе - с участием министров и руководителей крупнейших российских ком На Восточный экономический форум во Владивостоке приехало три тысячи участников из 35 стран ウラジオストクでの東方経済フォーラムに 35 か国から 3000 人の参加者が訪れた Главные политические новости сегодня приходят из Владивостока. 重要な政治的ニュースが今日ウラジオストクから届いた

More information

Август Закончились морские маневры Турецкий посол (Гусни-паша) уехал. Г. Извольский уехал за границу. Вечером на «Алмазе» прибудет г. Столыпин. (Утром прибыл) Извольский прибыл в Карлсбад В адмиралтейств-совете

More information

宮沢批判

宮沢批判 ロシアの工業生産指数 :1860-1913 年 はじめに (Suhara, 1999; 2000; 2001; Сухара, 2000,, 2000) 1860 1913 1860 1990 1885 1913 1860 1913 1860 1865 1870 5 1. コンドラチェフの生産指数 1920 (Конъюнктурный институт, 1926, стр.12-21) (Н.

More information

55

55 55 The culture concept to which I adhere denotes a historically transmitted pattern of meanings embodied in symbols, a system of inherited conceptions expressed in symbolic forms by means of which people

More information

大森雅子60

大森雅子60 No. 60 2013 ミハイル ブルガーコフの教権主義批判における二元論の超克 作家の創作活動とソヴィエト権力との関係を中心に 大森雅子 はじめに 20 1891 1940 1 2 V 349 349 3 1 Ellendea Proffer, Bulgakov: Life and Work (Ann Arbor: Ardis, 1984), p. 541. 2 E. E. Ericson, The

More information

09_後藤_p126-143(720-737).indd

09_後藤_p126-143(720-737).indd В. И. Ленин, Заметки публициста -О восхождении на высокие горы, о вреде уныния, о пользе торговли, об отношении к меньшевикам и т.п.-, Полн. собр. соч. т. стр. фундамент социалистической экономики, начинание

More information

スライド 1

スライド 1 МЕДИЦИНСКИ ПРИРУЧНИК Српски ( セルビア語 ) Када се обраћамо лекару: Не разумем јапанске медицинске термине. Стога, желим овај приручник да користим као помоћ, како бих лакше објаснио/-ла своје симптоме. Лични

More information

Bulletin of JASRLL No.40-2 Abstracts of Research Papers Accepted for Presentation at the 58 th Annual Assembly of the Japan Association for the Study

Bulletin of JASRLL No.40-2 Abstracts of Research Papers Accepted for Presentation at the 58 th Annual Assembly of the Japan Association for the Study Г. Шатохина. Описание косвенной фонетической межъязыковой интерференции на материале реализации японскими учащимися русских бифонемных консонансов Н. Рогозная.Механизмы функционирования теоретической модели

More information

ロトマン『物と空虚とのあいだで』読解 : 構造という閉域をめぐる言説の諸類型

ロトマン『物と空虚とのあいだで』読解 : 構造という閉域をめぐる言説の諸類型 Title ロトマン 物と空虚とのあいだで 読解 : 構造という閉域をめぐる言説の諸類型 Author(s) 中村, 唯史 Citation スラヴ研究, 49, 147-177 Issue Date 2002 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38981 Type bulletin (article) File Information 49-006.pdf Instructions

More information

下里俊行58.indd

下里俊行58.indd No. 58 2011 あるロシア正教神学生の自己形成史 ニコライ ナデージュヂンの出会いと読書 下里俊行 はじめに 1804 1855 1831 1 1794 1856 1836 1843 1856 2 1 2 3 1 Надеждин Н.И. Литературная критика. Эстетика / Под ред. Ю. Манна. М., 1972; Надеждин Н.И.

More information

1912 Северные записки Русская мысль Биржевые ведомости Чудакова М., Тоддес Е

1912 Северные записки Русская мысль Биржевые ведомости Чудакова М., Тоддес Е No. 59 2012 1910 20 年代のエイヘンバウム フォルマリズムとの接近と離反の過程 中村唯史 1. はじめに 1886 1959 1910 1920 1 1893 1984 1894 1943 1896 1982 1980 1905 1910 1946 1956 3 2 2009 3 20 1 Carol Any, Boris Eikhenbaum: Voices of a Russian

More information

Microsoft Word - ロシア語

Microsoft Word - ロシア語 1. 書き始め基本文例 はじめまして Очень приятно. 私は田中一郎です Я Танака Ичило. 私と友達になってくれる日本人以外の人を探しています Сейчас я ищу иностранного друга. 私はロシア語は全く分かりませんので 少し日本語が話せる人は大歓迎です Добро пожаловать который чуть-чуть говорить по-ипонски,

More information

Japan.indd

Japan.indd УДК 070(520)(075) ББК 65.497(5Япо) Ф44 ОГЛАВЛЕНИЕ Фесюн, А. Ф44 Язык японских СМИ [Текст] / Нац. исслед. ун-т «Высшая школа экономики». М.: Изд. дом Высшей школы экономики, 2013. 216 с. 1000 экз. ISBN

More information

実証主義の彼岸 : И.С. ツルゲーネフの中編『クララ・ミリッチ(死後)』における写真のテーマ

実証主義の彼岸 : И.С. ツルゲーネフの中編『クララ・ミリッチ(死後)』における写真のテーマ Title 実証主義の彼岸 : И.С. ツルゲーネフの中編 クララ ミリッチ ( 死後 ) における写真のテーマ Author(s) 久野, 康彦 Citation スラヴ研究 = Slavic Studies, 54: 1-32 Issue Date 2007 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/38695 Type bulletin (article) File

More information

....Acta

....Acta Benjamin Pinkus, The Jews of the Soviet Union. The History of a National Minority (Cambridge: Cambridge UP, 1988); Gennadi Kostyrchenko, Out of the Red Shadows. Anti-Semitism in Stalin s Russia (N.Y.:

More information

S2-OM.pdf

S2-OM.pdf Manual 685 S2 686 S2 Добро пожаловать и благодарим вас за приобретение акустики компании Bowers & Wilkins. Наш основатель, Джон Бауэрс, верил в то, что творческий подход в проектировании, новаторская конструкция

More information

S2-OM.pdf

S2-OM.pdf Manual 685 S2 686 S2 Добро пожаловать и благодарим вас за приобретение акустики компании Bowers & Wilkins. Наш основатель, Джон Бауэрс, верил в то, что творческий подход в проектировании, новаторская

More information