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1 Master's Thesis / 修士論文 カーボンナノチューブ薄膜の熱伝導体応用 の検討 前田, 健太 三重大学, 博士前期課程電気電子工学専攻量子エレクトロニクス研究室

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3 目次 第 1 章序論 カーボンナノチューブ (CNT) CNT を用いた熱伝導材料 熱伝導材料 従来の熱伝導材料 CNT 熱伝導材料 本研究の目的... 7 第 2 章理論 CVD 法による CNT の成長メカニズム CVD 法 CVD 法の原理 CVD 法による CNT 成長メカニズム CNT の熱伝導 熱的性質 熱伝導率 SWCNT の熱伝導 MWCNT の熱伝導 熱伝導特性評価方法 サーモリフレクタンス法 ω 法 定常法 第 3 章方法 実験概要 MWCNT 成長方法 基板の準備 真空蒸着法による触媒金属薄膜形成 熱 CVD 法による MWCNT 成長 SWCNT 成長方法 基板の準備 ディップコート法による触媒金属薄膜形成 熱 CVD 法による SWCNT 成長 走査型電子顕微鏡 (SEM) による評価 透過型電子顕微鏡 (TEM) による評価 ラマン分光法

4 3-6-1 ラマン分光法の基本原理 CNT のラマン分光 ラマン分光装置による CNT の品質評価 熱伝導特性評価 CNT 薄膜の熱伝導特性評価の原理 CNT 薄膜の熱伝導特性評価のための装置の構成 CNT 薄膜の熱伝導特性評価手順 第 4 章結果と考察 成長した CNT 薄膜の評価 MWCNT の SEM 観察による評価 SWCNT の SEM 観察による評価 CNT の TEM 観察による評価 CNT 薄膜の熱伝導特性評価 熱伝導の CNT 薄膜による影響 CNT 薄膜構造による熱伝導特性の比較 MWCNT 薄膜の熱伝導における CNT 膜厚依存性 CNT 薄膜の熱伝導特性改善 MWCNT 薄膜上に堆積した金属薄膜による熱伝導への影響 CNT 薄膜のバッファ層による熱伝導への影響 CNT 薄膜の金属触媒膜厚による熱伝導への影響 考察 CNT 構造が熱伝導へ与える影響 MWCNT 膜厚依存性 CNT 薄膜上に堆積した金属薄膜の影響 金属触媒の影響 まとめ 第 5 章総括 参考文献 謝辞

5 第 1 章序論 1-1 カーボンナノチューブ (CNT) カーボンナノチューブ (Carbon Nanotube ; CNT) は, グラフェンシートを継ぎ目無く丸めた筒状の構造をしており, ナノサイズの直径をもつ物質である 1991 年に発見されて以来ナノテクノロジーの材料として脚光を浴び, 様々な分野への応用に向けた研究が行われている CNT の直径はおおよそ数 nm から数十 nm の範囲で, 長さは数 µm から数 cm に及び, 非常に高いアスペクト比 ( 縦横比 ) の形状を持つ また, その筒状構造を構成するグラフェンシートが同軸円筒状に何重にも重なった多層 CNT(Multi-walled Carbon Nanotube ; MWCNT) と,1 層のみからなる単層 CNT(Single-walled Carbon Nanotube ; SWCNT) の 2 つに分類される [1-3] CNT はグラフェンが基本構造であることから, 物理的 化学的に安定している さらに機械的強度に関しては, 引っ張り強度は鋼鉄の 10 倍以上と強靭でありながら, 曲げの力については極めて柔軟であるという特徴を持つ 他にも, 銅の 1000 倍以上の高電流密度耐性や優れた電子放出特性, 熱伝導率が非常に高いといった特徴も合わせ持っている このような優れた機械的性質, 電気的性質などの特徴から, 電子放出源, 電界放出ディスプレイ, ナノスケール配線材料, 高強度複合材料など多くの応用が提案されている [4] 3

6 1-2 CNT を用いた熱伝導材料 熱伝導材料熱伝導材料とは, 電子機器等で発生する熱を効率的に外へ伝導し放散させるための材料である CPU といった電子機器では性能の向上と共に, 消費電量が増加し, それに伴い発熱量も増加している 電子機器からの発熱は性能の低下を引き起こすだけでなく, 機器の破損を引き起こすこともあり, 効率的な放熱対策が重要となっている 通常は発熱体にヒートシンクと呼ばれる金属でできた放熱用のフィンを取り付けている しかしヒートシンクと発熱体の接触界面は, 固体であるが故にミクロンオーダーの凹凸が存在しており, 両者は完全に密着しておらず, 界面には微少な空間が存在する これが発熱体からヒートシンクへの熱伝導を制約する要因となる ( 図 1-2-1) 界面における熱伝導性を向上させるためには, より平滑な表面とすれば良いが, 技術的な制約により, 完全な平坦面を得ることは難しい そのため, 界面にシリコングリスといった熱伝導材料を充填することで密着性を高め, 放熱性能の向上を実現している 図 熱伝導材料 4

7 1-2-2 従来の熱伝導材料熱伝導材料として現在最も用いられているものは放熱グリスである 一般的な放熱グリスは, 熱伝導率の高い粒子を混ぜ込んだシリコングリスである ベースとなるシリコングリスは安定性が高く腐食されにくく, 高温化でもあまり粘度が変化しない シリコングリスに混ぜ込む粒子としては主に銅, 銀, アルミ, 酸化亜鉛といった金属が用いられる 一般的なシリコングリスの熱伝導率は 0.5 W/m-K 程度であり, 金属を混ぜ込んだグリスでは 10 W/m-K 程度である また金属粒子の代わりにダイヤモンドの粒子を混ぜ込んだナノダイヤモンドグリス (Ainex 製, JP-DX1) では 16 W/m-K である 放熱グリスの他には放熱シートも用いられることが多い 一般的なものはゴムシートの他に, シリコーン, アクリルといった材料をベースとしたシートである 放熱シートは放熱グリスに比べ, 高い熱伝導率をもつものが多い また最近では, さらに熱伝導率を高めたグラファイトシートというものもある その名のとおり炭素でできた放熱シートで, 面方向への熱伝導率は 1500 W/m-K と非常に高い 放熱シートの特徴としては, 扱いやすい点が挙げられる 放熱グリスは塗布量や圧着力を制御しなければ性能を発揮することができず, また再使用は難しい 対して放熱シートは界面に挟むだけであり, 再使用も可能である しかし, 放熱シートは熱伝導率が高いが厚みがあるため, 圧着することで限りなく薄くすることが可能な放熱グリスに, 放熱性能では敵わない ただし放熱グリス自体の熱伝導率は低いため, 熱伝導率の高い放熱グリス, またはそれに代わるような高性能熱伝導体の開発が進められている 5

8 1-2-3 CNT 熱伝導材料従来の熱伝導体に代わる高性能熱伝導材料として, 近年 CNT が注目されている CNT を熱伝導材料として用いる利点としては, 熱伝導率が非常に高いということの他に, 柔軟性が優れているという点がある 熱伝導材料の用途としては,2 つの固体表面の間でより多くの熱を伝達させるために, 固体表面の微小な凹凸に密着する必要がある 熱伝導率が高い材料とはいえ金属といった硬い材料では密着性に欠けてしまい, さらに微小な隙間を作ってしまうことも考えられる 従って, 高性能熱伝導材料として用いることができる材料の条件としては, 従来の熱伝導材料よりも高い熱伝導率を持ち, 固体表面の微細な凹凸を埋めることができるような形態を有しかつ柔軟性が高いことが挙げられる CNT は以上の条件を満たす材料であることから,CNT の高性能熱伝導材料としての応用が期待されている CNT を熱伝導体応用に供するためには, 多数の CNT が膜状に成型した CNT 薄膜を作製する必要がある CNT の熱伝導についてはいくつかの報告例があり, 表 に示す 単一の CNT では 3000 W/m-K を超える値も報告されているのに対して,CNT 薄膜では 1 桁から 2 桁の低い値の報告例が多い CNT を熱伝導体に応用するうえで, この CNT 薄膜の低い熱伝導率が問題となっている 表 CNT の熱伝導率測定の報告例 著者 サンプル 熱伝導率 (W/m-K) 測定方法 Yu et al. [5] 単一の SWCNT 3000 < 架橋法 Shi et al. [6] SWCNT の束 150 架橋法 Panzer et al. [7] SWCNT 薄膜 8 サーモリフレクタンス 法 Hone et al. [8] SWCNT 薄膜 ~217 自己発熱法 Kim et al. [9] SWCNT 薄膜 63.5 ± 9.7 ラマン分光法 Kim et al. [10] 単一の MWCNT 3000 < 架橋法 Choi et al. [11] 単一の MWCNT 300 ± 20 3ω 法 Jakubinek et al. [12] MWCNT 薄膜 0.5~1.2 定常法 Kim et al. [9] MWCNT 薄膜 18.2 ± 7.9 ラマン分光法 Aliev et al. [13] MWCNT 薄膜 50 ± 5 3ω 法 Hu et al. [14] MWCNT 薄膜 74~83 3ω 法 6

9 1-3 本研究の目的前述のように, これまでに報告されている CNT の熱伝導特性は, 結果が極めて大きくばらついている 熱伝導材料としての応用の実現を行うためには, 安定して高い熱伝導率を示す CNT 薄膜の合成が必要不可欠である CNT は横軸方向に対して長軸方向に高い熱伝導特性を示すと報告されていることから,CNT を用いた高性能熱伝導材料として, 基板上に垂直配向成長した CNT が効果的であると考えられる 本研究では, 垂直配向 CNT の合成から, 熱伝導特性の評価を行い,CNT の熱伝導材料への応用可能性の検討を目的とする 測定試料としては,MWCNT,SWCNT, および強磁性金属内包 の垂直配向 CNT 膜を用いた は, 本研究室で合成に成功している, MWCNT の内部に鉄ナノワイヤーが充填された CNT である 内部が空洞である一般的な CNT と比較して熱流路の断面積が増えるため, 良好な熱伝導特性を示すことが期待される これらの垂直配向 CNT 薄膜は, 熱 CVD 法により基板上に成長させた CNT 膜の熱伝導特性は, セラミックヒーターと金属棒を用いた定常熱流法により評価した この方法は, 発熱体からの熱流が CNT 膜を介して放熱体へ流れる際に発生する温度差を測定することで熱伝導特性を評価するものである この方法では,CNT 薄膜の熱伝導率を得ることはできないが, 実際の熱伝導材料の使用用途に近い状況下で,CNT 膜の熱伝導特性を定性的に測定することができ,CNT 薄膜の熱伝導材料としての実用可能性の検討を行うことが可能である 本研究で用いる CNT 薄膜試料は, あらかじめラマン分光法により分析を行い CNT の結晶性評価を行った これを熱伝導特性と比較することにより CNT の結晶性の熱伝導特性への影響を検討した 7

10 第 2 章理論 2-1 CVD 法による CNT の成長メカニズム CVD 法ここでは CNT の成長方法の 1 つである, 化学気相成長 (Chemical Vapor Deposition;CVD) 法について記述する CVD 法とは, 気相や基板表面における化学反応により物質の堆積を行う成膜方法のことである [15,16] 大気圧から中真空の状態において, 成膜したい元素を含む原料ガスを送り込み, 化学反応に必要なエネルギーを与えて反応を促進, 薄膜を基板表面に堆積させる CVD 法による CNT 成長においては, 原料ガスとして炭素を構成元素として含むガスを用いる このとき, 原料ガスの化学反応を促進させる触媒が必要とされることから, 触媒化学気相成長 (Catalytic CVD;CCVD) 法とも呼ばれる CVD 法において原料ガスを分解する際に与えるエネルギーとして, 熱, プラズマ, 光などがある CNT の成長の際には主に熱エネルギーを用いた熱 CVD 法が用いられることが多い 原料ガスとしてアセチレン, メタン, エタノールなどが用いられ, これらはガスの種類にもよるがおおよそ 600 C~900 C の温度で分解される リアクタ内に金属触媒を堆積させた基板を設置し, 所定の温度まで加熱すると金属が微粒子化される ここに原料ガスを導入すると, 金属微粒子を核として CNT が成長する 熱 CVD 法では触媒の種類, 原料ガスの種類, 反応温度, リアクタ内の圧力といった条件の選択によって,CNT の層数, 直径, 長さといった成長形態を制御することができる CVD 法による CNT 成長の特徴としては, 装置が単純なため大面積化が容易, 大量合成が可能, 金属触媒の堆積によって選択成長が可能, などがあげられる また最大の利点は, 基板上に直接成長することができるという点である 8

11 2-1-2 CVD 法の原理薄膜作成方法の 1 つである CVD 法は, 供給される原料ガスの蒸気圧と, 原料ガスの分解により生成された物質の蒸気圧との違いを利用している [17] 原料として供給されるガスは高い蒸気圧をもっており, 原料ガスのまま基板上に到達しても薄膜として堆積することはない しかし, この原料ガスが分解されて生成された物質の蒸気圧が低ければ, これが基板上に堆積して薄膜が形成されることになる CVD 法は原料ガスを分解するために供給するエネルギー形態の違いによって分類される 最も基本的なものが熱エネルギーであり, これは熱 CVD 法とよばれる 原料ガスを分解し金属薄膜を堆積する温度は 500~700 C, 炭化物薄膜を堆積する温度は 700~1000 C とかなり高温であるため, 耐熱性のない材料は基板として用いることは不可である 熱 CVD 法は装置構成の違いから, 反応室全体を均一に加熱するホットウォール法と, 基板のみを加熱するコールドウォール法に分類される 熱エネルギー以外ではプラズマによるエネルギーを利用する方法もあり, プラズマ CVD 法とよばれる プラズマ CVD 法は比較的低い基板温度で薄膜形成が可能という特徴をもつ しかし, プラズマ CVD では放電を発生させるための電源や必要, リアクタに電極やアンテナを設置する必要があるなど, 装置が複雑になりまたコストがかかってしまう, 気相中の反応により粒子が形成され薄膜中に異物として取り込まれてしまう, といった問題点がある さらに CNT 成長においては, イオン衝撃による CNT のダメージの発生などの問題もある CVD 法における膜形成過程は, 以下に列挙する 5 つの素過程の一連として捉えることができる (1) 反応ガスの基板表面への輸送 (2) 基板表面への吸着 表面拡散 (3) 表面反応 核形成 (4) 反応性生物の脱離 (5) 脱離反応生成物の外方拡散上記の反応素過程のうちで, 最も遅い過程が CVD プロセスを律速する 表面反応温度が十分に高く,(1) が律速過程ならば, 輸送律速または反応律速という 原料供給が速やかかつ十分に行われている場合には,(3) が律速となり表面反応律速とよぶ (2) および (3) において基板表面は, 原料ガス分子の吸着サイトを与え, そこでの触媒作用により反応速度を気相中に比べて格段に高める役割をしている したがって, 基板表面の吸着サイト密度は, 膜堆積速度や堆積形態に大きく影響する また, 均一, 均質な膜を成膜するためには (1) や (5) の拡散過程で, 気相反応による粒子発生がないように, 形成条件を制御する必要がある 9

12 図 CVD プロセスにおける薄膜形成過程 CVD 法による CNT 成長メカニズム CVD 法は薄膜形成法であるが,CNT の成長方法としても用いられる CVD 法 による通常の薄膜形成プロセスでは, 原料ガス分子が基板に吸着されることに より薄膜を形成するのに対し,CVD による CNT 成長では, 原料ガスの分解から CNT の成長までの一連の過程において, 基板上に予め形成した触媒が重要な役 割を果たす点が特徴的である CVD 法を用いた CNT の成長メカニズムは多くのモデルが議論されている 現在までに存在する成長モデルの多くは Baker らにより提案されたモデルを基 にしている (1) 高温化で基板表面の触媒金属が微粒子化 (2) 触媒金属表面で原料となる炭化水素が分解され炭素原子が生成 (3) 炭素原子が金属ナノ粒子中に溶解し, 過飽和になる (4) 触媒金属微粒子表面に炭素が析出し CNT が成長 これらの CNT 成長の流れを図 に示す (4) の CNT の成長機構としては, 先端成長と根元成長とよばれる 2 種類の成長機構が存在する 先端成長では, 触媒微粒子が CNT 先端に保持されており, これを成長点として CNT が成長す る 対して根元成長では, 触媒微粒子は CNT の根元となる基板表面に保持され, そこを成長サイトとして CNT は成長する どちらの成長機構によって CNT が 成長するかは, 触媒微粒子と下地となる基板表面の結合力によって左右される 触媒微粒子と下地との結合が強ければ, 触媒微粒子は基板表面上に固定され, 根 元成長により CNT が成長する 反対に, 結合力が弱ければ触媒微粒子は下地か ら持ち上げられ先端成長となる [3] 10

13 図 Baker らの提案した成長モデル 図 CNT 成長機構の違い 11

14 2-2 CNT の熱伝導 熱的性質一般的な固体材料の熱的性質においては, 自由電子とフォノン ( 量子化された格子振動 ) の寄与によって熱伝導が行われる しかしグラフェンあるいはグラファイトでは, 熱伝導への自由電子の寄与は小さく, フォノンによるものが支配的である [3,18] 従って, グラフェンを基本構造とする SWCNT においても, 熱伝導はフォノンによる寄与が支配的であるが,SWCNT の電子状態により異なる CNT はカイラリティによって金属と半導体に分類され, 半導体 SWCNT の場合, 室温での電子は運動しないため, 熱伝導への寄与はフォノンのみである 金属 SWCNT の場合, フェルミ準位近傍での電子の状態密度が低いため電子の寄与は小さく, フォノンによる熱伝導が支配的である 2 次元グラフェンの振動モードには, (1) 縦 (LA) モード (2) 面内横 (in-plane TA) モード (3) 面外横 (out-of-plane TA) モードの 3 つのフォノン音響モードが存在する 2 次元グラフェンでは, 面内振動モードと面外振動モードは互いに独立であるが, 円筒構造をもつ SWCNT ではこれらは互いに結合するため, 独特の振動モードをもつ (1) チューブ軸に平行な原子運動に対応する縦音響 (LA) モード (2) チューブ軸に垂直な変位に対応する二重縮退の横音響 (TA) モード (3) チューブ軸の回りのねじれに対応するツイスト (TW) モード LA モードは 2 次元グラフェンの LA モードに等しいが,SWCNT の TA モードはグラフェンの面内 TA モードと面外 TA モードの組み合わせである TW モードは面内 TA モードと同じである SWCNT のこれらのフォノン振動モードは大きなフォノン速度を持っている カイラルベクトル (10,10) の SWCNT の場合, vla=20 km/s,vta=9 km/s,vtw=15 km/s である 12

15 2-2-2 熱伝導率 [3] ダイヤモンドやグラファイトといった炭素ベースの材料は, 室温付近では非 常に高い熱伝導率を示す グラファイトの熱伝導はフォノンによる寄与が支配 的なため, 試料中の結晶粒のサイズによって熱伝導率の大きさが決定される 従 って,CNT では結晶性の高さによっては, 長さ方向の熱伝導率がグラファイト の面内熱伝導率を超える可能性があると考えられる まず, グラファイトにおけ るフォノンと電子の熱伝導への寄与について考える フォノンによる熱伝導率 λ は, 単位堆積あたりの熱容量 C, フォノンの速度 v およびフォノンの平均自由行程 k に比例する 13 λ Cvk (1) k は結晶の欠陥や結晶粒界などの不完全性によるフォノン散乱とフォノンどう しの衝突により制限される これらの事象はたがいに独立なので,k の合成は以 下で表される k 1 = k St 1 + k um 1 (2) ここで,kSt は格子欠陥や不純物など静的な結晶の乱れによる散乱の平均自由行 程,kum は反転過程と呼ばれるフォノンどうしの衝突による散乱の平均自由行程 である 一方, 電子による熱伝導率 λe は, ウィーデマン フランツの法則により電気 伝導率 σ と以下の式で関連している λ e σt L 0 (3) ここで,L0 はローレンツ数と呼ばれる定数で,L0= V/K 2 である 従 って, 試料の λe/(σt) の値を測定し,L0 と比較すればフォノンと電子の熱伝導率 λ(t) への寄与の割合を得ることができる グラファイトでは,T 20 K において はフォノンが熱伝導の主要な部分を占めるが,CNT においては T=0 までのすべ ての温度でフォノンが支配的である [3] フォノンによる熱伝導において重要な物理量の 1 つはフォノン平均自由行程 である SWCNT は円筒構造を有するためフォノン散乱が抑制され, フォノン平 均自由行程は低温では数百 µm, 室温でも数 µm に及ぶ長い距離を示す [18] SWCNT の典型的な長さは数 µm 程度であるため, 低温ではフォノン平均自由行 程が SWCNT 長さを超え,SWCNT 中でフォノンが互いに散乱されることのない バリスティックなフォノン熱伝導を示す 一方室温では SWCNT 長さとフォノ ン平均自由行程が同程度となるため, 準バリスティックなフォノン熱伝導を示 す バリスティック フォノン熱伝導では,SWCNT の熱伝導率は長さに比例す るのに対し, 準バリスティック フォノン熱伝導では, フォノン散乱の影響によ り, 熱伝導率は SWCNT 長さに対して非線形に増大する [19] これはナノ材料一 般に見られる現象であるが,SWCNT のフォノン平均自由行程が特に長いため,

16 室温で数 µm に及ぶ広い範囲での長さ依存性が予測されている 比平衡分子動力学法によって計算した,CNT 長さに対する熱伝導率を図 に示す チューブ長 L の小さい領域では, 熱伝導率は L に比例して増加していることから, この領域はバリスティックなフォノン熱伝導であることがわかる L の増加に伴いフォノンの拡散性が増すため,L の大きな領域では, 熱伝導率の L に対する勾配が減少し非線形に増加する SWCNT の熱伝導率における直径依存性については, バリスティック フォノン熱伝導領域では, チューブ直径依存性は小さい 一方, 散乱によるフォノン拡散が起こる準バリスティック フォノン熱伝導領域では, 熱伝導率は SWCNT の直径に依存する 直径が増加するほどフォノン平均自由行程は短くなり,SWCNT の熱伝導率は減少する [5] 図 比平衡分子動力学法によって計算された異なる直径の SWCNT の 熱伝導率の長さ依存性 [19] 14

17 2-2-3 SWCNT の熱伝導 [3] 図 に Hone らによって測定された塊状の SWCNT の熱伝導率の温度依存性を示す [20] この測定試料は高磁場中で方向が揃えられた SWCNT で, 熱伝導の測定はチューブに平行な方向で行われた 配向した方向では, 熱伝導率は室温で 200 W/m-K を超える値を示す この値は金属と同程度ではあるものの, ダイヤモンド (2000 W/m-K) の値に比べて 1 桁小さい しかしながら, チューブ間, あるいは束の間の多数の接合部を経て熱伝導が起こるということを考慮すると, 単一の SWCNT あるいは束のもつ真の熱伝導率は極めて高い (1750~5800 W/m- K) と推定される 40 K 以下では温度に対して線形の熱伝導率を示す これは,SWCNT が 1 次元性を持ち, 熱伝導を担うフォノン振動モードが線形の分散関係を持つことに起因する しかし高温域では, フォノンサブバンドの寄与が影響するため, 熱伝導率は線形よりも大きい値をもつ サブバンド端のエネルギーは SWCNT の直径に反比例するので, 細い直径であるほど線形領域が高温側まで伸びると予想される 実際に Hone らの測定では, 異なる直径の SWCNT の低温での熱伝導率について調査し, 傾きが一定となる温度領域が, 直径 1.2 nm では約 40 K まで, 1.4 nm では約 35 K までであることを示した 図 方向をそろえた塊状の SWCNT の熱伝導率 [20] 15

18 2-2-4 MWCNT の熱伝導 [3] 図 に Kim らにより測定された MWCNT の熱伝導率の温度依存性を示す [10] 実線は孤立した単一の MWCNT( 直径 14 nm), 破線は MWCNT の束 ( 直径 200 nm) の熱伝導率測定結果である 架橋された単一の MWCNT の熱伝導率は, 室温下で 3000 W/m-K 以上の高い値を示す 対して MWCNT の束では, 熱伝導率が大幅に低下する MWCNT 束の熱伝導率は, 束が太いほど小さな値を示す 束のような塊状の CNT では, チューブ間の接合部を経て熱伝達が起こるが, この接合部の熱抵抗が非常に大きいということを示している このようなチューブ間の接合部をもたない, 単一の MWCNT では, 理論で予測された値 (3000 ~6000 W/m-K) に近い熱伝導率を示す [21] 単一の MWCNT に対して測定された熱伝導率の温度依存性は, 固体材料の熱伝導率と類似した温度変化を示している すなわち, 低温領域ではフォノンの平均自由行程 k は格子欠陥との衝突による平均自由行程 kst で支配されるので, 熱伝導率は比熱の温度変化に従う 一方, 高温領域では k はフォノンどうしの衝突による平均自由行程 kum で支配されるので, 温度の上昇とともに熱伝導率は減少する 従って熱伝導率は,k St k um となる温度で極大値をもつ MWCNT の場合は, その極大となる温度は T=320 K であると観測されている また, 温度に依存しない kst は 500 nm 程度と見積もられている 図 MWCNT の熱伝導率 [10] 16

19 2-3 熱伝導特性評価方法 CNT の熱伝導特性評価方法について, ここでは代表的な例として, サーモリ フレクタンス法,3ω 法, 定常状態法についての概要を示す サーモリフレクタンス法サーモリフレクタンス法とは, レーザで測定試料を加熱し, 表面から裏面への熱拡散を測定する方法である [22] 一定温度に保たれた薄膜の測定試料の表面パルスレーザで瞬間的に過熱すると, 表面の熱は試料の裏面に 1 次元的に拡散してゆく この熱拡散の過程を温度変化と比較することで, 試料の厚さ方向の熱拡散率を得ることができる 測定装置としては, 試料加熱用のパルスレーザ発生装置と, 温度測定装置が必要となるが, 薄膜の表面から裏面への熱拡散時間は非常に短いため, 熱電対や赤外線センサなどを用いた一般的なの温度測定方法では正確に測定することができない そこで, 金属の反射率が温度の変化に伴ってごく僅かに変化するサーモリフレクタンスと呼ばれる現象を利用する 薄膜試料表面に温度測定用のパルスレーザを照射し, 反射後のレーザ光強度を測定することで, 温度の大きさを得ることができる サーモリフレクタンス法を用いるためには, 試料が断熱的に一定の温度に保たれており, 周囲と熱交換がないことが必要である また試料は均一性が高く緻密であり, 照射レーザに対して不透明でなくてはならない この方法での測定では熱拡散率に試料の厚さが大きく影響するため,CNT の測定の際には,CNT 薄膜の厚さを均一に揃えることが重要となる 図 サーモリフレクタンス法による熱伝導測定原理 17

20 ω 法 3ω 法とは, 金属の抵抗が温度に対して変動する現象を利用した熱伝導率測定方法である [23,24] 測定試料の表面上に金属等の細線を堆積させ, これを線熱源として利用する 角周波数 ω の交流定電流を金属細線に流すと,2ω の角周波数で線熱源は発熱する 測定試料が過熱され, 線熱源を中心として測定試料の熱伝導率に応じた温度場が形成される 金属の電気抵抗は温度変化に依存することから, 線熱源の電気抵抗値は測定試料の表面温度の影響を受ける そのため抵抗値の変化を測定することで, 熱伝導率を得ることが可能となる 2ω の角周波数で変動する抵抗と, 印加される交流定電流の角周波数 ω がかけあわさった角周波数 3ω 成分を, 線熱源両端の電圧から抽出し, 熱伝導率を計算する 厚さのある膜状試料の測定では厚さ方向に対して熱伝導を測定することができるが, 薄膜状の試料の測定においては, 水平方向の熱伝導を無視できると仮定し, 薄膜を熱抵抗とみなして測定を行う 測定装置としては, 周囲の熱の影響を受けないための真空チャンバと, 交流定電流源,3ω 成分を抽出するためのロックインアンプが必要である 線熱源の形成にはリソグラフィー技術や, マスクを用いて金属を堆積するといった方法が用いられる 測定試料が導電体である場合は, 線熱源との間に絶縁薄膜を挿入する必要がある 3ω 法を用いた CNT 薄膜の熱伝導率測定においては, 線熱源の形成方法が重要となる CNT がランダムに分散された網目状の薄膜や, 基板上に垂直配向成長した CNT の薄膜などは, 試料表面の凹凸が激しいため, 均一な太さ, 厚さの線熱源を形成することが難しいとされる 図 ω 法による熱伝導測定原理 18

21 2-3-3 定常法ある物質中に温度勾配を生じさせたとき, 単位時間に単位面積を流れる熱流束密度 q は, 温度勾配 gradt に比例する q = λgradt (4) これはフーリエの法則 [18] と呼ばれ, 比例係数 λ は物質の熱伝導率という このとき熱流束密度 q はベクトル量である 一方, 物質中のエネルギー密度をρとしたとき,ρと熱流束密度 q の間には連続の方程式, ρ t + divq = 0 (5) が成立する 一方, エネルギー密度の変化率 ρと物質の単位体積あたりの熱容量 CV の間には, ρ = C T t V t (6) 以上の (2-1),(2-2),(2-3) 式より, 以下の熱伝導方程式が導出される C V T t = λdiv gradt = λ ( 2 T x T T y 2 z 2) (7) 簡単のため, 熱流束は x 軸方向を向いているとする 十分長い時間が経過し, 物 質中の温度勾配がゼロとなった定常状態では, 熱流束密度はゼロとなる この定 常状態における熱伝導方程式 (2-4) は, 以下のようになる 2 T x 2 = 0 (8) この式から, 定常状態での物質内での温度勾配は, 位置 x によらず一定とな る この原理を利用した熱伝導率の測定方法が定常法である [25] 定常法に は定常熱流法と温度傾斜法の 2 つの測定方法が存在する まず定常熱流法について説明する 周囲の熱の影響を受けないような状況下 で, 測定試料の一方から熱エネルギーを与え, 一方を低温に保ち温度差を生じさ せると, 試料内部には温度勾配が発生する この温度勾配を, 位置を関数として 測定することで試料の熱伝導率を求めることができる 電気ヒーターといった 熱を発生させる装置と, 温度測定器だけで測定することができる容易な方法で ある また, 直接熱伝導率を求めることができるといった利点もある しかし, 温度測定を正確に行うことができないため小さな試料には不向きで, 定常状態 になるまで待つ必要があるため測定に時間がかかるといった欠点がある 温度測定が難しい小さな試料や薄膜試料等においては, 温度測定が可能な標 準試料で測定試料を挟み込む方法で熱伝導率を測定する この測定方法を温度 傾斜法という 標準試料は金属等, 熱伝導率の高い材料からできていて, 予め熱 伝導率がわかっている必要がある 標準試料の温度勾配を測定すれば, 間に挟ん だ測定試料の温度勾配を求めることが可能で, 熱伝導率を得ることができる し

22 かしこの方法での測定値には, 測定試料と標準試料の界面の接触熱抵抗も含ま れてしまうため, 厳密に試料の熱伝導率を測定することはできないという欠点 がある 図 定常法による熱伝導測定原理 (a) 定常熱流法,(b) 温度傾斜法 20

23 第 3 章方法 3-1 実験概要本研究では, 熱伝導特性評価の試料として,MWCNT 薄膜,SWCNT 薄膜および鉄ナノワイヤー内包 MWCNT(Fe@CNT) 薄膜試料を用意した MWCNT 薄膜,SWCNT 薄膜については, 本研究遂行のため筆者が熱 CVD 法により成長させたものである 一方 Fe@CNT については, 本研究室の別グループで既に合成された試料の提供を受けたものを用いた いずれの試料も,CNT の成長形態は走査型電子顕微鏡, 透過型電子顕微鏡を用いて観察し,CNT の結晶性の評価はラマン分光法を用いて行った CNT の熱伝導特性は定常法に基づく方法により測定した 以下にその詳細を述べる 3-2 MWCNT 成長方法 基板の準備本研究では,MWCNT 成長の際の基板として n 型 Si ウェハと, 酸化膜層 (SiO2, 300 nm) 付き p 型 SiO2/Si ウェハを,10 mm 10 mm に割断したものを使用した 厚さは 0.5 mm である この Si および SiO2/Si 基板をアセトン ( 純度 99.5%) 中に浸し,10 分間超音波洗浄を行ったのち, 再びアセトンを使用して 10 分間の超音波洗浄を行った その後, メタノール ( 純度 99.8%) 中で 5 分間の超音波洗浄を行った 超音波洗浄後, ホットプレート上で基板を加熱し, 乾燥させた 真空蒸着法による触媒金属薄膜形成 真空蒸着法とは, 薄膜形成法の一種で, 金属等に熱エネルギーを加えて気化さ せ, 薄膜を堆積する物理気相成長法である [17] 蒸着源の材料の蒸発, 基板への 分子および原子の輸送, 基板表面への付着, 基板表面上で膜形成の一連の過程を 経て薄膜形成が行われる 物理気相成長法には他にスパッタリング法もあるが, こちらは基板に入射する粒子のエネルギーが大きいのに対し, 真空蒸着法では 0.1~1.0eV と非常に小さいエネルギーをもつ そのため, 薄膜中への粒子打ち込 みによる欠陥の発生が少なく, 比較的結晶性の高い薄膜を成膜することが可能 となる 真空蒸着法には加熱方法によって, 抵抗加熱法や電子ビーム加熱法, 高周波加 熱法などに分類される その中でも, 比較的簡易な装置構成で薄膜形成が行える 21

24 抵抗加熱法を本研究で用いた 抵抗加熱法は, タングステン等の融点の高い金属でできたフィラメントに通電し, その時発生するジュール熱により目的の材料を蒸発させ成膜する手法であり, 融点が概ね 2000 C 以下の材料であればほぼ蒸着を行うことができる 真空蒸着装置は ULVAC 製の EBH-6 を用いた 図 にその構成図を示す 加熱用のフィラメントには直径 1.0 mm のタングステンワイヤー ( 純度 99.95%) を用いた 成膜条件は, 成膜時の圧力を 10-4 ~10-5 Pa とし, フィラメント- 基板間距離は 100 mm, 成膜時の基板温度は室温下 ( 基板加熱無し ) で行った 対象となる材料が蒸発する温度までの加熱は, フィラメントに流す電流値を制御して行った 金属薄膜の堆積量は真空チャンバ内に設置している水晶式膜厚計によって測定し, 成膜制御はフィラメントと基板間に設置されたシャッターにより行った 図 真空蒸着装置の概略図 22

25 3-2-3 熱 CVD 法による MWCNT 成長 MWCNT 成長において, 本研究で使用した熱 CVD 装置の概略図を図 に示す この装置はホットウォール型 CVD 装置であり,C2H2,Ar,H2 の 3 種類が導入可能なガス導入系, 石英管リアクタ (Φ40 L700), 電気炉, そしてロータリーポンプによる排気系で構成されている この熱 CVD 装置の主な仕様を表 に示す この装置を用いた MWCNT の成長方法を以下に示す まず触媒金属薄膜を堆積させた基板を石英ガラスボートに乗せ, 石英管リアクタ内へ試料交換ゲートより導入する 次に, ロータリーポンプを用いて石英管内を 10 Pa 以下の圧力まで排気し, その後,Ar を大気圧まで導入する この工程を 3 回繰り返し, リアクタ内の残留ガスを除去し, 管内を Ar 雰囲気に置換する 置換後,EXHAUST バルブを開け,Ar を 120 sccm の流量で導入する 続いて電気炉を用いて石英管内を昇温し, 熱電対で温度を測定する 管内が所望の CVD 温度に到達した時点で炭素源となる C2H2, および還元作用を目的として H2 を導入し,CVD を行う 所望の時間が経過した後,C2H2 と H2 の導入を止める その後,Ar を 250 sccm の流量で導入し管内の冷却を行い, 管内の温度が 100 C 以下になってから石英ボートを回収し, 作製した基板を取り出した 図 に MWCNT 成長のための CVD プロセスを示す 図 MWCNT 成長のための熱 CVD 装置の概略図 23

26 表 MWCNT 成長のための熱 CVD 装置の主な仕様 石英管 φ40 L700 管状電気炉 ISUZU 製,KPO-13K, 室温 ~1150 C,φ50 mm 温度調節器 SHIMADEN 製,SR91 熱電対 アルメル-クロメル ロータリーポンプ 日立製作所製, 最高到達真空度 3 Pa ピラニ真空計 ULVEC 製,GP-1S,0.4~2.7 kpa ブルドン真空計 KOFLOC 製,-0.1~0.25 MPa フローメーター KOFLOC 製 導入ガス純度 Ar( %),C2H2( %),H2( %) 石英ボート W20 L70 H11 図 MWCNT 成長の際の CVD プロセスタイムチャート 24

27 3-3 SWCNT 成長方法 基板の準備本研究では,SWCNT 成長の際の基板として,MWCNT で用いた基板と同様の SiO2/Si ウェハ (p 型,SiO2;300 nm,10 mm 10 mm 0.5 mm) を用いた 基板の洗浄方法は 節で説明した手順と同様に行った ディップコート法による触媒金属薄膜形成熱 CVD 法による SWCNT 成長の際の触媒金属形成方法として, ディップコート法 [26] を用いた ディップコート法は金属微粒子を分散した溶液中に基板を浸し, 基板表面に担持させる手法である 真空蒸着などのドライプロセスとは異なり加熱されないので熱凝集せず ナノ微粒子の状態を保つことが出来る また 触媒が基板表面に化学結合するため堅固な微粒子を形成でき, 装置自体が簡易といった利点がある 本研究で行ったディップコート法による触媒形成手順を以下に示す (1) 酢酸モリブデン (Ⅱ)89 mg と酢酸コバルト (Ⅱ) 四水和物 169mg をそれぞれ 40 g のエタノール ( 純度 99.5%) に混ぜ, 約 2 時間超音波分散を行う (2) SiO2 基板を 500 C で 5 分間, 大気中で焼結し, 基板表面をクリーニングする (3) (2) の基板を (1) で作成した酢酸モリブデン溶液中に 10 分間浸し,4 cm/min で引き上げる (4) 引き上げた基板を数分間室温下で乾かし,400 C で 5 分間, 大気中で加熱し酸化焼結させる (5) (4) の基板を (1) で作成した酢酸コバルト溶液中に 10 分間浸し,4 cm/min で引き上げる (6) 引き上げた基板を数分間室温下で乾かし,400 C で 5 分間, 大気中で加熱し酸化焼結させる (7) CVD チャンバ内で CVD 温度まで上昇させる際, チャンバ内を Ar/H2 雰囲気にし, 基板を還元させる 以上のプロセスにより 酢酸モリブデンと酢酸コバルトは CoMoO,MoO,Co に分解され, 基板表面上に堆積する (7) のプロセスで析出した Co 微粒子は CoMoO と相互作用が強いため, 表面の定位置に固定され凝集から守られる したがって, 基板表面上によく分散された Co の微粒子が形成することができ, SWCNT 成長の際の触媒微粒子となる 25

28 図 ディップコート法の触媒形成プロセス 図 触媒微粒子形成の様子 熱 CVD 法による SWCNT 成長 SWCNT 成長の際に用いた熱 CVD 装置の概略図を図 に示す この装置 はホットウォール型の CVD 装置であり, エタノール (C2H5OH),Ar,H2 の 3 種 類が導入可能なガス導入系, 石英管リアクタ (Φ40 L700), 電気炉, そしてロータ リーポンプによる排気系で構成されている この熱 CVD 装置の主な仕様を, 表 に示す この装置を用いた SWCNT の成長方法を以下に示す まず CNT 成長の炭素源 となるエタノールを気化させてリアクタ内に導入するために, エタノールの入 ったリザーバをリボンヒーターで巻き, 通電加熱する リボンヒーターに 80 V 程度印加すると, リザーバ温度は約 80 C に加熱される 次に, 触媒金属微粒子 を形成した基板を石英ガラスボートに乗せ, 石英管リアクタ内へ試料交換ゲー トより導入する ロータリーポンプを用いて石英管内を 10 Pa 以下の圧力まで排 気し, 真空排気を行ったまま Ar を 300 sccm の流量で 5 分間導入し, 不純物ガス を除去する その後,Ar を 290 sccm,h2 を 10 sccm の流量で導入し, ロータリ ーポンプのバルブでリアクタ内の圧力を Pa に保ちながら, 電気炉を用 いて石英管内を昇温し, 熱電対で温度を測定する 管内を所望の CVD 温度に昇 26

29 温後,Ar,H2 の導入を止め, ロータリーポンプを用いて 10 Pa 以下まで真空排気を行う その後, エタノールガスを 300 sccm の流量で導入し, ロータリーポンプバルブで管内を所望の圧力に保ち,CVD を行う 所望の時間が経過した後, アルコールガスの導入を止め, 管内の排気を行いエタノールガスを除去する 管内を 10 Pa 以下まで真空排気を行った後,Ar を 250 sccm で大気圧まで導入し管内の冷却を行う 管内の温度が 100 C 以下になってから石英ボートを回収し, CNT 成長した基板を取り出した 図 に SWCNT 成長の CVD プロセスを示す 図 SWCNT 成長のための熱 CVD 装置の概略図 27

30 表 SWCNT 成長のための熱 CVD 装置の主な仕様 石英管 φ40 L700 管状電気炉 ISUZU 製,KPO-13K,φ50 mm 温度調節器 SR91,SHIMADEN 製 スライダック 東京理工舎製,RSA-10 熱電対 アルメル-クロメル ロータリーポンプ ALCATEL 製,PASCAL 2010 ピラニ真空計 ULVAC 製,GP-1DA キャパシタンスマノメーター ULVAC 製,CCMT-100A フローメーター (Ar,C2H5OH) KOFLOC 製 フローメーター (H2) KOFLOC 製,8300MC 導入ガス純度 Ar( %),H2( %), C2H5OH(99.5%) 石英ボート W20 L70 H11 図 SWCNT 成長の際の CVD プロセスタイムチャート 28

31 3-4 走査型電子顕微鏡 (SEM) による評価図 に SEM 装置の概略図を示す 電子銃から放出された電子ビームは, 電子レンズによって集束され試料に照射される この集束電子ビームを試料表面上で走査させ, 発生した二次電子の放出量を走査位置と同期させて検出記録し二次電子像を形成する 二次電子の放出量は, 表面の凹凸に依存するため, 二次電子像のコントラストは, 観察試料表面の凹凸を反映したものになる 電子の加速電圧や試料の状態によって条件は変わるが, 表面から 10 nm 程度の深さまで電子が入射し, その際に試料表面から放出される二次電子を SEM 内部の検出器で検出する 二次電子は, 試料表面の 10 nm 以内の領域から放出されるため, 試料の表面近傍の情報も含んでいる SEM 観察には, 電界放出型電子顕微鏡 S-4000( 日立製作所製 ) を用いた 観察時の加速電圧は 25kV である 試料台にカーボンテープを用いて測定試料を固定した この試料台を SEM 内に導入し, 観察を行った 図 SEM 装置の概略図 29

32 3-5 透過型電子顕微鏡 (TEM) による評価 TEM の基本原理は光学顕微鏡と同じである 光学顕微鏡における光と光学レンズの代わりに電子と磁場レンズを用いている TEM の特徴は, 薄膜試料に電子線を透過させ, その際に試料中で原子により散乱 回折された電子を透過電顕像として得ることにより, 主に物質の内部構造を観察できることである TEM の概略図を図 に示す 電子銃で発生させた電子線は集束レンズと集束しぼりを通る その後電子線が試料に当たり, 対物しぼり, 対物レンズ, 中間レンズ, 投影レンズを経て蛍光板に到達し, 電子顕微鏡像が映し出される 蛍光板の下にはカメラ室があり, 写真フィルムが置かれている シャッターを兼ねた蛍光板を上げ, フィルムに直接電子線を当てて投影する また, 対物しぼりを抜いて制限視野しぼりをしようすることで, 制限された領域から電子回折パターンを得ることができるため, 結晶構造の解析を行う上で非常に有効である 本研究では CNT の形状や直径などの構造の評価に加速電圧 80 kv の JEM- 1011M( 日本電子製 ) を使用した TEM は通常, 像の撮影に感光性の写真フィルムを用いるのに対し, この装置では像の撮影に CCD カメラを用いることが特徴である TEM 観察用の試料は以下のような手順で作製した まず CNT を成長させた基板をエタノールに浸し,10 分間超音波分散を行い, CNT を基板から剥離する これにより CNT がエタノール中に分散され, エタノールは黒い懸濁液となる この液をスポイトで吸い上げ, ホットプレート上で加熱しながら, 濾紙上にのせた電子顕微鏡用グリッド ( マイクログリッド普及品日新 EM 製 ) に適量滴下し, エタノールを完全に揮発させて観察用試料とした 図 TEM 装置の概略図 30

33 3-6 ラマン分光法 ラマン分光法の基本原理 物質に単一の振動数 (ν 0 ) の光を当てると, 反射, 屈折, 吸収などの現象に加え て散乱現象が起きる 散乱される光のうち, 入射光と同じ振動数の光をレイリー 散乱 (Rayleigh scattering) 光と呼び, 入射光と異なる振動数の光をラマン散乱 (Raman scattering) 光と呼ぶ [27] ラマン散乱光は, 入射光の振動数から正負に同 じ振動数だけシフトした位置に対になって現れる ラマン散乱光のうち ν 0 ν k の振動数をもつ成分をストークス (Stokes) ラマン散乱光,ν 0 + ν k の振動数をもつ 成分を反ストークス (anti-stokes) ラマン散乱光と呼んで区別する 入射光と散乱 光のエネルギー差, すなわち振動数差 (±ν k ) をラマンシフト (Raman shift) と呼ぶ ラマンスペクトルの測定では, 対象の物質に単色光を当て, 出てくる光の波長ま たは波数を計測し, 波数に対して光の強度をプロットする 横軸はラマンシフト で表し, 通常, 単位は cm -1 で表示する レイリー散乱を中央にして, 低波数側 にストークス散乱が, 高波数側に反ストークス散乱が観測される 反ストークス 散乱では, 場合によりシフト値を正で表したり, 負で表したりするが, シフトの 絶対値が意味を持っている シフト値は同じでも, ストークスラマン散乱のほう が, 半ストークスラマン散乱よりも強いため, 多くの場合ラマンスペクトルの測 定では, ストークスラマン散乱のみを測定して表示する 図 ラマン散乱光とレイリー散乱光 31

34 3-6-2 CNT のラマン分光 図 に SWCNT のラマンスペクトルを示す [28] CNT で観測されるスペ クトルで代表的なものには RBM(Radial Breathing Mode) と,D バンド,G バン ドと呼ばれるものがある RBM は,SWCNT が直径方向への伸縮するモードで あり, 低波数側 (100~300 cm -1 ) に現れる 測定したラマンスペクトルにこの RBM が観測されれば, 試料中に SWCNT が存在しているということがわか る ピーク位置 ωrbm (cm -1 ) は SWCNT の直径 dt (nm) に反比例するので, 直径を 評価することができる d t = 248 ω RBM (9) G バンドと呼ばれる 1590 cm -1 付近に現れるスペクトルは, 炭素系の物質に 共通の六員環の面内振動に起因するスペクトルである グラファイトの場合は 1580 cm -1 付近にスペクトルが現れるが,CNT の場合には G バンドが G+ と G- の 2 つに分裂する G+ は CNT の軸方向の縦波モード,G- は軸に垂直な横波モ ードに対応している G+ のピーク位置は CNT の直径によらず 1590 cm -1 付近に 現れるのに対して,G- のピーク位置は直径の 2 乗に反比例して変化する 1350 cm -1 付近にある D バンドは, 欠陥に起因するラマンスペクトルであ る ナノチューブやグラファイトに点欠陥や結晶の端などの欠陥がある場合, D バンドのスペクトルが強くなるため,G バンドとの強度比 (G/D 比 ) は CNT の欠陥量の目安となり, 品質を評価することができる 図 SWCNT のラマンスペクトル [19] 32

35 3-6-3 ラマン分光装置による CNT の品質評価一般的なラマン分光測定装置の概略図を図 に示す 基本的な装置の構成は, 試料に光を照射するための光源, 散乱光を分光する分光器および分光した散乱光を検出する検出器からなっている また, 顕微ラマン分光装置では, 顕微鏡を組み合わせることで 1μm 以下の微細な領域の情報を取り出すことができる 図 ラマン分光測定装置の概略図 ラマン散乱分光装置には,nanophoton 製 RAMAN-11Ii( 半導体レーザ, 波長 : 532 nm, 出力 :2.5 mw, スポット径 :1 μm) を使用した 測定する試料を励起レーザが試料に対して垂直に入射するように試料台に設置した 1 つの試料に対し 3 箇所を選び,1 箇所につき 3 点にスポットを当て測定した 測定から得られるラマンスペクトルの G バンド,D バンド及び 2D バンドのピーク面積の算出には,OriginLab 社製ソフトウェア Origin Pro8.5J を用いた 33

36 3-7 熱伝導特性評価 CNT 薄膜の熱伝導特性評価の原理本研究では,CNT 薄膜の熱伝導特性評価方法として, 定常法の一種である温度傾斜法を用いた 項で説明したように, 定常法は試料に加熱して温度差を生じさせ, 試料内部の温度勾配を測定する手法である CNT 薄膜は厚さが非常に薄く, 薄膜内の温度差を直接温度測定することが難しいため, 温度傾斜法により測定を行った 本研究で用いた CNT 薄膜の熱伝導特性評価装置は, フーリエの法則に基づいている 図 に熱伝導特性評価装置の概略図を示す 金属棒内での熱流束は, 前章 2 3 節で示したように, q = λgradt (10) で与えられ [18],q は熱流束,λ は熱伝導率 (SUS304;16.7 W/m-K),T は温度である 図 に示す金属棒内の 2 つの異なる位置での温度差 (T1-T2) から, 熱流束 q を求めることができる ここで, 金属棒から CNT 成長基板までの熱伝達経路の断面積は等しく,q が一様であると仮定すると, 熱伝導率の逆数 1/λ に比例する値である熱抵抗 R は ΔT = Rq (11) の関係をもつ ここで,ΔT は T1 と T3 の間の温度差であり, 熱抵抗 R は, 金属棒の熱抵抗 RSUS, 金属棒と CNT の間の接触熱抵抗 RSUS-CNT,CNT の熱抵抗 RCNT, CNT と成長基板の間の接触熱抵抗 RCNT-sub,CNT 成長基板の熱抵抗 Rsub を含んだ値をとる ( 図 3-7-1) 従って, 熱抵抗 R は R = R SUS + R SUS CNT + R CNT + R CNT sub + R sub (12) で表すことができる 一般的に, これら熱抵抗成分を独立して得ることは困難であり, 本研究で用いた測定装置でも不可能である また, 本研究で用いた測定装置では, 熱流路である CNT 薄膜上部の金属棒と下部の Si 基板で形状が異なり, 熱流路の断面積は一定という仮定が成立しない そのため,CNT の熱抵抗 RCNT の正確な値を得ることはできない しかし測定の条件を等しくすれば, 他の熱抵抗成分 (RSUS,RSUS-CNT,RCNT-sub,Rsub) は一定であるので,R は RCNT に比例した値をとる したがって CNT の熱伝導特性を定性的に評価することができる 図 温度差 ΔT, 熱流束 q, 熱抵抗 R の関係 34

37 3-7-2 CNT 薄膜の熱伝導特性評価のための装置の構成 CNT 薄膜の熱伝導特性測定に用いた装置の概略図を図 3-7-2, 主な仕様を表 に示す 熱源としてセラミックヒーターを使用し, 温度測定用の標準試料として金属円柱棒 (SUS304, 5 mm 5 mm) を用いた ヒーターと金属棒の上部平坦面を銀ペーストで固定し, 金属棒の温度測定にはスポットウェルダーで固定した熱電対を用いた 測定試料は冷却部となる金属台 (SUS304, 直径 70 mm, 厚さ 12 mm) に銀ペーストを用いて固定し,CNT 成長基板と金属台に熱電対をポリイミドテープで取り付けた 金属棒下部の平坦面を測定試料に乗せ, 押し付け圧力 413 g/cm 2 でポリイミドテープを用いて固定した ヒーターの加熱制御は, スライダックを用いて電圧を調整して行った 図 CNT 薄膜の熱伝導特性評価装置の概略図 表 CNT 薄膜の熱伝導特性評価装置の主な仕様 セラミックヒーター 坂口電熱製,MS-3 スライダック 東京理工舎製,RSA-5 熱電対 アルメル-クロメル データロガー GRAPHTEC 製,GL500, 銀ペースト 藤倉化成製,D-550 ポリイミドテープ アズワン製, 電圧計 サンワ製,CD800 電流計 ADEX 製,AX-6110A 35

38 3-7-3 CNT 薄膜の熱伝導特性評価手順 項で述べた測定装置を用いて熱伝導特性を評価する手順について以下に記述する まず図 のように装置を構成し, 周囲からの熱の影響を除くためにケースで覆った 次に, データロガーで温度を記録しながらスライダックを用いてセラミックヒーターに 5 V 印加し, 熱流を発生させる 電圧を印加した 5 分後, スライダックを調整してセラミックヒーターに 7 V 印加する これを繰り返して 5 分毎に印加電圧を変え, 計 25 分間加熱し, 温度を記録する 図 3-7-3(a) に CNT 薄膜無しで SiO2 基板のみの, 時間に対する温度変動を示す T1,T2 は金属棒,T3 は SiO2 基板,T4 は金属台の温度である 測定中,T4 にはほとんど変化が無いことから, 金属台は室温に保たれており, 冷却部としての役割を果たしている 印加電圧変化後 2 分程度でほぼ温度変化はなくなり, 定常状態となっていることがわかる そのため, 定常状態であると考えられる電圧変化 3 分後から, 電圧変化直前の 5 分までの平均温度を, その電圧での測定温度とした この温度変動のグラフから熱伝導特性を評価するために, まず式 に T1 と T2 の温度,T1 と T2 の温度測定点間距離 (3 mm), 金属棒の熱伝導率 (SUS304;16.7 W/m- K) を代入して計算すると, 金属棒から SiO2 基板を介して金属台へと流れる熱流束 q が得られる 熱流束 q に対する T1 と T3 の温度差 ΔT をプロットしたグラフを図 3-7-3(b) に示す グラフの傾き, すなわち ΔT/q は熱伝導率の逆数 1/λ に比例する値である熱抵抗 R を反映した値を表す ここで,ΔT/q=R とできないのは, 前述したように熱流路である CNT 薄膜上部の金属棒と, 下部の基板の形状が異なり, 金属棒部と基板部で単位面積あたりの熱流束密度が異なるためである しかし,ΔT/q は熱抵抗 R に比例した値をとるため,ΔT/q の値を比較することで定性的に熱伝導を評価することができる 図 CNT 薄膜無しの SiO2 基板の熱測定結果,(a) 測定時間に対する温度変 動,(b) 熱流束 q に対する温度差 ΔT (=T1 -T3) 36

39 第 4 章結果と考察 4-1 成長した CNT 薄膜の評価 MWCNT の SEM 観察による評価 3 章で述べた方法により,Fe を 1 nm 堆積した SiO2 基板上に, 図 に示 す CVD 条件に従って MWCNT を成長させた CNT の熱伝導特性に対する MWCNT 膜厚依存性を測定するため,CVD 時間を変化させて成長を行った 図 (a),(b),(c),(d) はそれぞれ CVD 時間 1.5 min,2 min,5 min,10 min で SiO2 基板上に成長した MWCNT の SEM 断面像である 全ての MWCNT が 基板上に垂直配向している様子が確認できた CVD 時間の変化に対して MWCNT 膜厚をプロットしたグラフを図 に示す CVD 時間 5 分で僅かに 減少するが,CVD 時間に対してほぼ直線的に比例して MWCNT の成長量は増 加した CVD 時間 1.5 min 未満では MWCNT は成長しなかった また,Si 基板上でも同様に Fe を 1 nm 堆積し,CVD 時間を変化させて MWCNT 成長を行った 図 (a),(b),(c),(d) にそれぞれ CVD 時間 1 min, 2 min,5 min,10 min で Si 基板上に成長した MWCNT の SEM 断面像を示 し, 図 は MWCNT 膜厚の CVD 時間依存性を示す SiO2 基板と同様, 全 ての MWCNT で垂直配向成長が確認できた CVD 時間に対して, 直線的に比 例して MWCNT の成長量は増加した Si 基板上での MWCNT 成長では,SiO2 基板上に成長した MWCNT よりも厚く成長した CVD 時間 1 min 未満では MWCNT は成長しなかった 37

40 (a) (b) (c) (d) 図 SiO2 基板上に成長した MWCNT の SEM 像, (a)cvd 時間 1.5 min,(b)cvd 時間 2 min,(c)cvd 時間 5 min, (d)cvd 時間 10 min 図 SiO2 基板上に成長した MWCNT の CNT 膜厚の CVD 時間依存性 38

41 (a) (b) (c) (d) 図 Si 基板上に成長した MWCNT の SEM 像,(a)CVD 時間 1 min, (b)cvd 時間 2 min,(c)cvd 時間 5 min, (d)cvd 時間 10 min 図 Si 基板上に成長した MWCNT の CNT 膜厚の CVD 時間依存 39

42 4-1-2 SWCNT の SEM 観察による評価 3-3 節で述べた実験方法により,SWCNT を SiO2 基板上に成長させた CVD 中のチャンバ内圧力を Pa から Pa まで変化させて成長した SWCNT の断面 SEM 像を図 に示す 成長した SWCNT は SiO2 基板上に垂直配向成長している様子が確認できた 圧力変化に対して SWCNT 膜厚をプロットしたグラフを図 に示す 圧力の増加に伴い SWCNT 膜厚が増加しており, Pa で平均 12.9 µm の SWCNT が成長した (a) (b) (c) (d) 図 SiO2 基板上に成長した SWCNT の SEM 像, (a)cvd 圧力 Pa,(b)CVD 圧力 Pa, (c)cvd 圧力 Pa, (d)cvd 圧力 Pa 40

43 図 SiO2 基板上に成長した SWCNT の CNT 膜厚の CVD 圧力依存性 CNT の TEM 観察による評価成長した MWCNT と SWCNT の TEM 像を図 に示す MWCNT は数層の CNT から構成され,SWCNT は単層の CNT で構成されていることが観察できた MWCNT の直径は 8.0 ± 2.0 nm,swcnt の直径は 3.0 ± 1.0 nm であった 図 CNT の TEM 像,(a)MWCNT,(b)SWCNT 41

44 4-2 CNT 薄膜の熱伝導特性評価 熱伝導の CNT 薄膜による影響 SiO2 基板に成長した CNT 薄膜の熱伝導熱 CVD 時の金属触媒として Fe を 1 nm 堆積した SiO2 基板上に, 垂直配向成長した MWCNT 薄膜 ( 膜厚 32 µm) の熱伝導特性を, 前述で示した方法で測定したときの, 時間に対する温度変動を図 4-2-1(a) に示す T1,T2 は金属棒, T3 は SiO2 基板,T4 は金属台の温度である 測定したそれぞれの温度から求めた熱流束 q に対する温度差 ΔT (=T1 T3) をプロットしたものを図 4-2-1(b) に示す グラフの傾きΔT/q は,CNT 薄膜無しの SiO2 基板では 1.03[ 図 4-2-1(b) の w/o CNT ] に対し,32 µm の MWCNT が垂直配向成長した SiO2 基板では 0.35 に減少している ΔT/q の値は熱伝導率の逆数 1/λに比例する値である熱抵抗 R を反映した値を表すため, 小さな値であるほど熱伝導特性が良いということを示す 従って,MWCNT 薄膜を介することで熱伝導特性が向上するということを表す これは CNT 薄膜を金属棒と SiO2 基板の間に挿入したことにより, 接触界面の密着性の向上により接触熱抵抗が減少し, ヒーターからより多くの熱流が SiO2 基板へ伝わったためである 図 Fe を 1 nm 堆積した SiO2 基板上に垂直配向成長した膜厚 32 µm の MWCNT の熱伝導特性評価,(a) 時間に対する温度変動,(b) 熱流束 q に対する 温度差 ΔT (=T1 T3) の CNT 薄膜無しの SiO2 基板との比較 42

45 Si 基板に成長した CNT 薄膜の熱伝導熱 CVD 時の金属触媒として Fe を 1 nm 堆積した Si 基板表面上に, 垂直配向成長した MWCNT 薄膜 (CNT 膜厚 46 µm) の熱伝導特性を図 に示す 図 4-2-2(a) は時間に対する温度変動, 図 4-2-2(b) は熱流束 q に対する温度差 ΔT (=T1 T3) の CNT 薄膜無しの Si 基板との比較を示す ΔT/q の値は CNT 薄膜無しの Si 基板では 0.91[ 図 4-2-2(b) の w/o CNT ] に対し,MWCNT が成長した Si 基板では 0.59 であった SiO2 基板での測定結果と同様,CNT 薄膜無しの基板と比べて MWCNT が成長した基板のΔT/q の値は小さい MWCNT 成長基板の種類によらず,MWCNT 薄膜を介することで金属棒 - 基板間の熱伝導が促進されることがわかった 図 Fe を 1 nm 堆積した Si 基板上に垂直配向成長した膜厚 46 µm の MWCNT の熱伝導特性評価,(a) 時間に対する温度変動,(b) 熱流束 q に対する 温度差 ΔT (=T1 T3) の CNT 薄膜無しの Si 基板との比較 43

46 4-2-2 CNT 薄膜構造による熱伝導特性の比較 CNT 薄膜の構造が熱伝導に与える影響を調べるため,SiO2 基板上に成長した MWCNT( 膜厚 8~32 µm),swcnt( 膜厚 2~12 膜厚 9~12 µm) の熱伝導特性を測定した MWCNT と は熱 CVD の際の金属触媒として, それぞれ Fe を 1 nm,fe を 2 nm を堆積した SiO2 基板を用いて成長した 測定したΔT/q の値をまとめたものを図 に示す グラフにプロットした値は,MWCNT は 4 サンプル,SWCNT は 5 サンプル,Fe@CNT は 2 サンプルを測定した平均値である また比較試料として, 熱伝導率 6 W/m-K の放熱グリス (Bullet 製,SG05) を SiO2 基板上に薄く乗せ, 金属棒で挟みこんで測定した結果を示す 全ての CNT 薄膜において,CNT 薄膜無しの SiO2 基板と比較してΔT/q の値は小さく, すべての CNT 薄膜において, 熱伝導が促進されることが確認された また CNT 構造の違いによる熱伝導の違いに注目すると, Fe@CNT は僅かに小さな値を示すものの, その違いは顕著ではない これら CNT 薄膜のΔT/q 値は, 熱伝導率の公称値 6 W/m-K の放熱グリスの測定値と近い値を示すことから,CNT 薄膜の熱伝導率は, この放熱グリスの熱伝導率と同等の値であると考えられる 図 SiO2 基板上に成長した MWCNT( 膜厚 8~32 µm), SWCNT( 膜厚 2~12 µm),fe@cnt( 膜厚 9~12 µm) と CNT 薄膜なし (w/o CNT), 放熱グリス (6 W/m-K) の熱伝導特性の比較 44

47 4-2-3 MWCNT 薄膜の熱伝導における CNT 膜厚依存性 SiO2 基板上に成長した CNT の熱伝導特性様々な膜厚の MWCNT の熱伝導特性を測定し,CNT 膜厚が熱伝導に与える影響を調べた 測定試料として, 触媒金属に Fe を 1 nm 堆積した SiO2 基板上に垂直配向成長した,CNT 膜厚 8~551 µm の MWCNT を用いた MWCNT の膜厚に対するΔT/q の値をプロットしたものを図 に示す 膜厚 8 µm の MWCNT ではΔT/q の値は 0.37 であるのに対し, 膜厚 551 µm の MWCNT では 0.83 に増加した CNT 膜厚が増加するにつれて,ΔT/q の値は比例して増加することがわかった 図 SiO2 基板上に垂直配向成長した MWCNT における ΔT/q の CNT 膜厚依存性 45

48 Si 基板上に成長した CNT の熱伝導特性 SiO2 基板上に垂直配向成長した MWCNT における熱伝導の CNT 膜厚依存性について前述したが,CNT を成長させる基板による影響を調べるため, 同様の測定を Si 基板上に成長した MWCNT でも行った 測定試料として, 触媒金属に Fe を 1 nm 堆積した Si 基板上に垂直配向成長した,CNT 膜厚 3~532 µm の MWCNT を用いた MWCNT の膜厚に対するΔT/q の値をプロットしたものを図 に示す 膜厚 3 µm の MWCNT ではΔT/q の値は 0.53 であるのに対し, 膜厚 551 µm の MWCNT では 1.04 に増加した CNT 膜厚が 50 µm 付近で 0.8 程度の高い値を示すサンプルがあるものが観られる 全体としては SiO2 基板上に成長した CNT 薄膜同様,CNT 膜厚が増加するにつれてΔT/q の値は増加する傾向が観られるが,SiO2 基板の場合のような, 両者の間に明瞭な比例関係は観られず,0 200 µm においてはΔT/q が CNT 膜厚によらずほぼ一定になっている様子が確認される 100 µm 以下の小さな膜厚において,ΔT/q 値のばらつきが大きい 同程度の膜厚で比較すると SiO2 基板上に成長した膜厚 8 µm の MWCNT ではΔT/q は 0.37 であるのに対し,Si 基板上に成長した膜厚 3 µm の MWCNT では 0.53 と高い値を示した この結果から,Si 基板上に成長した MWCNT が SiO2 基板上に成長したものと同程度の結晶性を有すると仮定するならば, CNT-SiO2 界面と比べて CNT-Si 界面の接触熱抵抗が大きいということが示唆される 図 Si 基板上に垂直配向成長した MWCNT における ΔT/q の CNT 膜厚依存性 46

49 4-3 CNT 薄膜の熱伝導特性改善 MWCNT 薄膜上に堆積した金属薄膜による熱伝導への影響 CNT 薄膜の熱伝導において,CNT- 金属棒間の接触熱抵抗改善のため,CNT 表面上に真空蒸着装置により金属薄膜を堆積し, 熱伝導特性を測定した ( 図 4-3-1) 測定には, 触媒金属として Fe を 1 nm 堆積した SiO2 上に垂直配向成長した MWCNT に,Fe,Al,Ni をそれぞれ 20 nm 堆積した試料を用いた Fe, Al,Ni を堆積した MWCNT の CNT 膜厚はそれぞれ,55±0 µm,25±7 µm, 59±14 µm である 図 に金属薄膜を堆積した MWCNT 先端の断面 SEM 像を示す それぞれ測定したΔT/q の平均値を図 に示す 比較試料として, 金属薄膜を堆積していない様々な膜厚の MWCNT の測定結果を示す 同程度の膜厚に対して比較すると,MWCNT に金属薄膜を堆積するとΔT/q の値は増加し, 熱伝導特性は悪化することがわかった 図 MWCNT 薄膜上への真空蒸着装置による金属箔膜形成の模式図 47

50 (a) Fe on MWCNT (b) Al on MWCNT (c) Ni on MWCNT 図 金属薄膜を堆積した MWCNT 先端の SEM 像, (a)fe を 20 nm 堆積した MWCNT(CNT 膜厚 55±0 µm), (b) Al を 20 nm 堆積した MWCNT(CNT 膜厚 25±7 µm), (c) Ni を 20 nm 堆積した MWCNT(CNT 膜厚 59±14 µm) 図 金属薄膜 (Fe,Al,Ni;20 nm) を堆積した MWCNT の ΔT/q の比較 48

51 4-3-2 CNT 薄膜のバッファ層による熱伝導への影響 CNT 薄膜の熱伝導における,CNT-CNT 成長基板表面の間の接触熱抵抗改善のために, 熱 CVD による MWCNT 成長時の, 触媒金属の影響について調べた ここでは,Ti をバッファ層として Fe と SiO2 基板の間に形成して MWCNT を成長し, 熱伝導特性を測定した SiO2 基板上に Ti を 5 nm 堆積した後,Fe を 1 nm 堆積し, 熱 CVD により MWCNT 成長を行った 成長した MWCNT の断面 SEM 像を図 に示す CNT 膜厚は 5.0±0.6 µm であった 2 サンプルの熱伝導特性を測定し, 算出したΔT/q の平均値を図 に示す 比較試料として, Fe を 1 nm 堆積した SiO2 基板に成長した様々な膜厚の MWCNT のΔT/q を示す 同程度の膜厚での値を比較すると, バッファ層ありとなしには大きな違いはなく, バッファ層を堆積したことによる熱伝導への影響はほとんどないことがわかる 図 Fe 1 nm / Ti 5 nm / SiO2 基板上に成長した MWCNT の SEM 像 図 SiO2 基板上に垂直配向成長した MWCNT の ΔT/q における 熱 CVD 時のバッファ層 (Ti) の影響 49

52 4-3-3 CNT 薄膜の金属触媒膜厚による熱伝導への影響 CNT-CNT 成長基板表面の間の接触熱抵抗改善のために, 熱 CVD による MWCNT 成長時の, 触媒金属膜厚の影響について調べた これまでに熱伝導を測定した MWCNT の熱 CVD 時の金属触媒は Fe 1 nm であったが, ここでは Fe 10 nm を触媒として成長した MWCNT の熱伝導特性を測定した 測定に用いた試料は,Fe を 10 nm 堆積した SiO2 基板上に垂直配向成長した CNT 膜厚 78~185 µm の MWCNT である 測定に用いた CNT 膜厚 108 µm の MWCNT の SEM 像を図 に示す 触媒膜厚 1 nm で成長した MWCNT と比べ, 異なる点は見られなかった 測定したΔT/q の値を図 に示す 比較試料として, 触媒膜厚 1 nm で成長した MWCNT の結果も同時に示す 触媒膜厚 10 nm で成長した MWCNT のΔT/q は, 同程度の膜厚の触媒膜厚 1 nm で成長した MWCNT と比べ, 低い値を示すことがわかった 触媒膜厚 1 nm で成長した膜厚 100 µm の MWCNT のΔT/q の値は 0.40 であるのに対し, 触媒膜厚 10 nm で成長した膜厚 78 µm の MWCNT は 0.21 と約 0.5 倍まで低下, すなわち熱抵抗はおよそ半分の値になった事が分かる この結果から, 熱 CVD 時の金属触媒膜厚を厚くすることによって,CNT-CNT 成長基板間の接触熱抵抗が減少するということが示唆される 図 金属触媒として Fe を 10 nm 堆積した SiO2 上に 垂直配向成長した MWCNT の SEM 像 50

53 図 MWCNT の熱伝導における熱 CVD 時の触媒膜厚依存 51

54 4-4 考察 CNT 構造が熱伝導へ与える影響ここでは,CNT の構造の違いが熱伝導に与える影響についての考察を述べる 図 の熱伝導特性を測定したが,CNT の構造の違いによる熱伝導への大きな違いは見られなかった 各 CNT の品質を評価するため, ラマン分光測定を行った それぞれの CNT のラマンスペクトルを図 に示す CNT の結晶性の高さを表す G ピークと D ピークの強度比である G/D 比は,MWCNT は 1.4,SWCNT は 22,Fe@CNT は 3.3 であった ( 表 4-1) Kim らは,CNT の結晶性が良いほど高い熱伝導率を示すことを見つけた [9] 本研究で用いた CNT の結晶性を比較すると,SWCNT のみ G/D 比は 2 桁を示しており, 個々の SWCNT は高い熱伝導率を有していると考えられる また, 個々の CNT の熱伝導率は,CNT の直径が細いほどフォノンの平均自由行程が増加し, 熱伝導率が高くなるとされる [5] そのため, 直径の細い SWCNT は個々の熱伝導率は高いと考えられる 以上のことから, SWCNT 薄膜の熱伝導特性は良い結果を示すことが予想されるが, 今回の実験測定には反映されていなかった このような結果となった要因として,2 つ考えられる 1 つは,CNT 薄膜の成長密度の違いである CVD の際の触媒形成方法として,MWCNT と Fe@CNT は真空蒸着法であるのに対し,SWCNT はディップコート法で行った ディップコート法での触媒形成では, 溶液中の金属微粒子の分散度合いのムラ, 基板引き上げ速度のばらつき等から, 基板表面上に形成された金属触媒微粒子にムラが生じやすい そのため, ディップコート法で触媒形成を行った基板上に成長した SWCNT にもばらつきが存在し, 比較的成長密度が低かった 従って, 個々の SWCNT は高い熱伝導率を有するが, 成長密度が低いため,CNT 薄膜としての熱伝導特性に高い熱伝導率が反映されなかったと考えられる ( 図 4-4-2) もう 1 つ考えられる要因としては,CNT と金属棒,SiO2 基板の間の接触熱抵抗が大きかったことが考えられる 今回用いた熱特性評価方法では, 測定値には CNT 自身の熱抵抗だけでなく, 金属棒 -CNT 間,CNT-SiO2 間の接触熱抵抗が含まれている CNT の熱伝導率は非常に高いため,CNT 自身の熱抵抗と比べて接触熱抵抗が非常に大きく, 結果として測定値には接触熱抵抗の影響が強く表れ, 個々の CNT の熱伝導率が反映されにくかったと考えられる Hu らは, CNT 先端とヒーター間に非常に大きな接触熱抵抗があり,CNT の熱伝導を妨げているとしている [14] CNT 薄膜を熱伝導材料として応用するためには, この大きな接触熱抵抗を減少させることが重要である 52

55 図 CNT 薄膜のラマンスペクトル 表 4-1 CNT 薄膜の G/D 比 MWCNT SWCNT G/D 比 図 CNT 薄膜の熱伝導における個々の CNT の熱伝導率と CNT 成長密度の関係 53

56 4-4-2 MWCNT 膜厚依存性様々な膜厚の MWCNT の熱伝導特性を測定した結果,CNT 膜厚の減少に比例して熱伝導特性は良好になるということがわかった ( 図 4-2-4, 図 4-2-5) これは, 熱伝導率は, ある物質中を流れる熱量を単位長さ辺りに発生した温度差で割った値, と定義されることからも予想される結果である 熱伝達経路である CNT の長さが短くなるほど, 流れる熱流が増加し, 熱伝導特性が向上したと考えられる しかし,CNT 膜厚の増加はマイクロメートル単位であり, 熱伝導率の低下割合は大きくないと考えられ,CNT の熱伝導率が非常に高ければ,CNT の長さに対する熱伝導の低下割合は小さくなる ラマン分光分析の結果から, 今回用いた MWCNT は結晶性が悪く, 個々の MWCNT の熱伝導率が悪いと考えられる そのため,CNT 膜厚の増加によって熱抵抗が増加し, 熱伝導特性が悪化したと考えられる MWCNT 薄膜の熱伝導特性における CNT 膜厚依存の結果において ( 図 ), 最も良い熱伝導特性を示すと考えられる MWCNT 膜厚をゼロとしたときの ΔT/q の値は, グラフの傾きから求めると 0.39 である 熱伝導率が 6 W/m-K の放熱グリスのΔT/q は 0.30 である 従って, 最適な膜厚の MWCNT 薄膜を用いたとしても, 熱伝導材料としての性能は放熱グリスに劣ると考えられる これは, CNT 薄膜の密着不良による接触熱抵抗の増加と考えられる CNT 薄膜中の個々の CNT の長さは不均一であるため, 熱源に接していない CNT が存在すると考えられる そのため,CNT 薄膜中には熱伝導に寄与しない CNT が存在し, 熱伝導の妨げとなると考えられる 従って,CNT 薄膜を熱伝導材料として応用するためには, 個々の CNT の長さを均一にして熱源との密着性を高め, 接触熱抵抗を減少させる必要がある 図 CNT 薄膜の熱伝達経路の模式図,(a) 不均一な CNT 長さによる 熱伝達経路の抑制,(b) 均一な CNT 長さによる熱源との高い密着性 54

57 4-4-3 CNT 薄膜上に堆積した金属薄膜の影響図 に示したように,MWCNT 表面上に金属薄膜 (Fe,Al,Ni;20 nm) を堆積し, 熱伝導特性を測定した結果, 金属薄膜を CNT 表面に堆積させたことによって熱伝導特性は減少することがわかった これは,MWCNT 表面上の金属薄膜の形成形態に起因すると考えられる 図 に示した, 金属薄膜を堆積した MWCNT 先端の断面 SEM 像から, 堆積した金属は薄膜状ではなく, 個々の CNT に絡みつくように堆積している様子が確認される CNT 薄膜は長さが不均一なため,CNT 先端付近では密度が薄く, 垂直配向性が悪いため, 金属微粒子が CNT 同士の隙間に入り込んだため, 薄膜状に堆積しなかった 金属が薄膜状に堆積されれば CNT 先端の凹凸が平滑化され, 熱伝導に寄与しなかった短い CNT にも熱流が流れることとなり, 熱伝導特性は改善されると考えられる しかし, 今回の場合のように, 個々の CNT に絡みつくように金属が堆積した場合, 熱伝達経路に金属棒 - 金属薄膜, 金属薄膜 -CNT が追加されることにより接触熱抵抗が増加してしまい, 熱伝導特性が悪化したと考えられる ( 図 4-4-4) 図 金属薄膜を堆積した CNT 先端の模式図,(a) 金属薄膜による CNT 薄膜表面の平滑化,(b) 個々の CNT に絡みつくように堆積した金属薄膜 55

58 4-4-4 金属触媒の影響熱 CVD による CNT 成長の際の金属触媒薄膜の膜厚の違いによる熱伝導の影響を調べたところ, 触媒膜厚を大きくすると熱抵抗が減少することが確認された これは金属触媒の基板上での微粒子形成の挙動が CNT- 基板間の接触熱抵抗に影響を及ぼしていることを示唆している, 金属触媒膜厚の違いによる触媒微粒子の形成状態の違いを観察するため,Fe を 1 nm,10 nm 堆積した SiO2 基板を熱 CVD 装置に導入し,Ar 雰囲気中で CVD 温度まで加熱して Fe 微粒子を形成した後, 室温まで冷却して取り出した それぞれの金属触媒微粒子の SEM 像を図 に示す Fe 1 nm で形成された金属微粒子と比べ,Fe 10 nm では微粒子同士が結合し, 大きな微粒子が形成されていることがわかる 熱 CVD による CNT の合成は, 金属微粒子を核として CNT 成長が行われる 大きな微粒子を核として CNT が成長した場合, 微粒子の表面積が大きく,SiO2 基板表面との接着力が高いため,CNT は基板表面に強く接着していると考えられる 従って, 金属触媒膜厚を増加したことによって,CNT-SiO2 間の接触熱抵抗が減少し, 熱伝導特性が改善されたと考えられる (a) Fe 1 nm (b) Fe 10 nm 図 SiO2 基板表面に形成された金属触媒微粒子 56

59 4-5 まとめ 本章で示した結果を以下にまとめる CNT 薄膜の熱伝導特性を測定するため, 熱 CVD 法により CNT 薄膜の合成を行った SiO2 基板上に MWCNT と SWCNT を,Si 基板上に MWCNT を垂直配向成長することができた 垂直配向成長した CNT 薄膜の熱伝導特性を測定し,CNT 薄膜無しの CNT 成長基板と比較した 結果として,CNT 薄膜を熱伝達経路に介することによって, 熱伝導特性が向上した CNT 薄膜の熱伝導特性における CNT の構造による違いを調べるため, の熱伝導特性を測定した これらの CNT 間で構造の違いによる熱伝導の差は見られなかった 比較試料として測定した熱伝導率 6 W/m-K の放熱グリスの測定値とほぼ近い値を示すことから, CNT 薄膜を介した界面の熱伝導率はこれと同程度であると推定される 様々な膜厚の MWCNT 薄膜の熱伝導特性を測定し,CNT 膜厚が熱伝導に与える影響を調べた CNT 膜厚が減少するに伴い, 熱伝導特性は向上した CNT 薄膜と熱源の間の接触熱抵抗を減少させるため,CNT 薄膜表面上に金属薄膜を堆積させて熱伝導特性を測定した Fe,Al,Ni を 20 nm 堆積したが, 接触熱抵抗の減少には繋がらなかった CNT 薄膜と CNT 成長基板の間の接触熱抵抗を減少させるため, 熱 CVD 時の触媒金属が熱伝導に与える影響を調べた バッファ層として Ti を触媒金属と SiO2 基板間に形成したが, 接触熱抵抗は減少しなかった しかし, 触媒金属の膜厚を 1 nm から 10 nm に増加すると,CNT 薄膜の基板との密着性が向上し, 接触熱抵抗の減少に繋がった 57

60 第 5 章総括 本研究では,CNT 薄膜の高性能熱伝導材料への応用可能性の検討を目的として,CNT 薄膜の熱伝導特性における CNT 構造依存性,CNT 膜厚依存性について調べ,CNT 薄膜を熱伝導材料として応用するうえで問題となる接触熱抵抗の改善を試みた結果を以下に示す 熱伝導の CNT 薄膜による影響垂直配向成長した CNT 薄膜を金属棒と基板間に挿入することによって, 金属棒と SiO2 基板および Si 基板の接触界面表面に CNT が密着することにより, 熱伝導が促進されることがわかった CNT 薄膜構造比較 MWCNT,SWCNT,Fe@CNT の 3 種類の構造の CNT 薄膜の熱伝導特性に, 大きな違いは確認されなかった CNT 薄膜の熱伝導特性は個々の CNT の熱伝導率と CNT 成長密度の関係によって左右される 熱伝導率 6 W/m-K の放熱グリスと比較し, 同様の熱伝導特性が得られたことから,CNT 薄膜の熱伝導率は 1 桁程度であることがわかった MWCNT 薄膜の熱伝導における CNT 膜厚依存性 MWCNT の結晶性が悪く, 個々の MWCNT の熱伝導率は悪いことに起因し て,MWCNT 薄膜の膜厚を増加すると熱伝導は低下することがわかった MWCNT 薄膜上に堆積した金属薄膜による熱伝導への影響 MWCNT 先端付近は, 不均一な CNT 長さのために密度が薄く, 金属を堆積させると個々の CNT に絡みつくように形成される そのため,MWCNT 表面上に金属薄膜を堆積することによって熱伝達経路に金属棒 - 金属薄膜, 金属薄膜 -CNT が追加され, 接触熱抵抗が増加したため熱伝導特性が悪化したと考えられる 58

61 CNT 薄膜のバッファ層による熱伝導への影響熱 CVD による CNT 生成では, 金属薄膜触媒上に CNT が成長する CNT と CNT 成長基板の間の接触熱抵抗改善のため, バッファ層として Ti を 5 nm 堆積して CNT 成長を行ったが, 熱伝導特性は改善されなかった CNT 薄膜の金属触媒膜厚による熱伝導への影響 CNT 成長の際の核となる金属触媒の膜厚を増加させることによって, 大きな触媒微粒子が形成され, 成長する CNT の基板との接着力が高められた その結果,CNT- 基板間の接触熱抵抗が減少し,CNT 薄膜の熱伝導特性が改善された 以上の結果より,CNT 薄膜を熱伝導材料として用いる場合,CNT 薄膜成長 時に基板上に形成する触媒層の膜厚を適切に制御することにより, 熱抵抗を減 少させることができることが確認された 59

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64 謝辞 本研究の遂行にあたり, 終始熱心なご指導と大変貴重なご助言を頂いた佐藤英樹准教授に深く感謝致します また, 本研究を遂行するにあたり, 真空蒸着装置を使用させて頂いた有機エレクトロニクス研究室の飯田和生教授, ラマン分光装置を使用させて頂いたオプトエレクトロニクス研究室の平松和政教授と三宅秀人准教授に深く感謝致します また, 分子素材工学専攻レーザー光化学研究室の小海文夫教授, 電気電子工学専攻オプトエレクトロニクス研究室の三宅秀人准教授には, 本論分を査読して頂いたことを感謝致します 平成 24 年度修了生の嶋中康太さん, 長田篤さん, 平成 25 年度修了生の大原一馬さん, 前坂孝哉さん, 横内教人さんには研究に関する知識や取り組み方など様々なご指導をして頂き, また公私にわたり非常にお世話になりました 深く感謝致します また, 共に 3 年間の研究生活を過ごした同期の久保中伸雄君に深く感謝致します また, 小松佑介君, 松浦佑介君, 佐藤貴之君ならびに B4 の方々には, 研究に関する多くの意見を頂き, また有意義な研究生活を送る上で公私にわたって多大なサポートを頂きました 心より感謝致します 62

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