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1 防災科学情報発信のあり方 海洋研究開発機構 地震津波 防災研究プロジェクト 金田義行 APL シンポジウム

2 1. 現象 / 実態 事象の原因 メカニズムを伝える 2. 今後の展開 予測ならびにその精度を伝える 3. まとめ

3 日本周辺の地震活動 ユーラシアプレート 太平洋プレート 日本海溝 千島海溝 南海トラフ巨大地震 日本海域地震 東北地方太平洋沖地震 首都圏直下地震 南西諸島 伊豆小笠原域 フィリピン海プレート 北米プレート 2012 年 5 月 9 日より 30 日間の震央分布図 Hi-net 自動処理震源マップ ( 防災科学技術研究所 ) より 3

4 巨大地震は周囲に歪をもたらす -869 年の貞観地震の場合 年越中越後地震 868 年播磨 山崎地震 M7 クラス 887 年仁和地震 M8.0~M8.5 南海トラフ巨大地震 867 年阿蘇山噴火 本震に続き一週間近く余震が続き 大きな 地殻変動や 場所により地下水の湧き出しが発生したとの記述もある ( 日本三大実録 の解釈より ) 仙台平野で確認した津波堆積物の分布. 赤丸は貞観津波による堆積物. ただし, 貞観地震が発生した時期の海岸線は, 現在の海岸線より 1km 程度内陸側に位置していたと考えられる. 津波堆積物のボーリング写真津波によって運搬された砂層が 泥炭層中に含まれている 資料 :( 独 ) 産業技術総合研究所 869 年貞観地震 M8.3~M8.6 阿蘇山 864 年富士山噴火 878 年相模 武蔵地震 M 年越中 越後地震 864 年富士山噴火 867 年阿蘇山噴火 868 年播磨 山崎地震 (M7 台 ) 869 年貞観地震 (M8.3~M8.6: 三陸地震 ) 878 年関東の地震 (M7.4: 相模 武蔵地震 ) 887 年南海トラフ地震 (M8.0~M8.5: 仁和地震 ) 4

5 震源域での海底で亀裂発見 - しんかい 6500 による潜航調査 - SIte1 2011/8/1 SIte1 SIte2 2011/8/10 SIte2 しんかい 6500 SIte3 震源 SIte3 2011/8/3 2006/6/8 1m JAMSTEC 東北対応緊急調査による 海底の大きな亀裂は 2006 年に同じ地点を観察した時には確認できなかったことから 3 月 11 日の地震か その後の余震による影響でできたと考えられます 5

6 海底で起こった現象 [ 地殻変動 ] 陸側斜面 変化があった斜面 海溝軸 海側斜面 海溝軸 牡鹿半島 海溝軸 Fujiwara et al. (2011) 6

7 液状化被害 ( 千葉県 ) 千葉茨城 とびだすマンホール 大阪咲洲庁舎も被害 約 300km も離れた場所でも被害 被害地域の多くは地下水が蓄えられた土地で海や河川 田んぼなどの埋立地が多い 液状化のメカニズム 地震前水水水水水水 地表 水水水 ふきだす砂 砂や土は互いに緩やかにくっつきあい その隙間に水がある 地震 地震後 水水水 くずれた道路 かたむく電柱 画像 : 千葉県我孫子市 / 下 2 枚潮来市 今までくっついてた土や砂がバラバラになる 隙間にあった水は地表に逃げていく 液状化とともに地盤沈下もひきおこす 7

8 広域複合災害 東日本大震災では倒壊物 漂流物による被害の拡大など 地震 津波の直接被害以外にも 多くの複合災害が発生 国土地理による 津波液状化 地盤沈降地震動 国土地理による津波浸水図 倒壊 岩手県山田町 漂流物津波火災 共同通信 読売新聞 巨大地震広域複合災害への備えは不可欠 8

9 次の巨大地震への備えでは阪神淡路大震災の教訓も活かすことが不可欠 9

10 東日本大震災の被害 阪神淡路大震災の被害 基本的な人的 建物被害 ( 消防庁調べ ) 東日本大震災 H 東北地方太平洋沖地震 阪神淡路大震災 H 兵庫県南部地震 人的被害 2 万 5,375 人 5 万 0,229 人 死者 1 万 6,140 人 6,434 人 行方不明者 3,123 人 3 人 負傷者 6,112 人 4 万 3,792 人 建物被害 37 万 2,613 棟 24 万 9,180 棟 全壊家屋数 12 万 8,582 棟 10 万 4,906 棟 半壊家屋数 24 万 4,031 棟 14 万 4,274 棟 今後想定される大震災に備え 防災 減災へ向けた活動 研究を進める必要がある 宮城県気仙沼 兵庫県東灘区 巨大地震が発生した場合はこれらの2つの大震災の被害要因 写真 : 神戸市教育委員会教育企画課資料 10

11 南海トラフで発生する巨大地震 日向灘地震震源域 南海地震震源域 東南海地震震源域 東海地震想定震源域 100 年から 150 年周期で繰り返し M8 クラスの地震が発生している 1707 年には 東海 東南海 南海地震が同時に発生したこともある 次の地震がどのような発生パターンとなるか 連動発生のタイミングを明らかにすることは 防災上の観点からも重要である 11

12 過去の誘発地震や誘発噴火の記録 49 日 1707 年宝永地震 1700 年代 1703 年元禄地震 1707 年宝永地震 1707 年富士山噴火 1948 年福井地震 M 年富士山噴火 1854 年伊賀上野地震 M7.3 過去にも巨大地震に誘発した地震や噴火活動があった事が伺える 1945 年三河地震 M 年安政江戸地震 1854 年安政地震 1703 年元禄地震 1943 年鳥取地震 M 年代 1923 年関東地震 1943 年鳥取地震 1944 年東南海地震 1945 年三河地震 1946 年南海地震 1948 年福井地震 1946 年南海地震 M8.0 1 年 4 年 1923 年関東地震 M 年東南海地震 M 年代 1854 年伊賀上野地震 1854 年安政地震 1855 年安政江戸地震 12

13 往復走時 南海トラフ沿いの地下構造 足摺沖から東海沖へスキャン既往研究成果の活用 陸側 フィリピン海プレート [ 海洋研究開発機構 ] 13

14 南海トラフ地震の新たな想定震源域 新たな想定震源域に対応する地震の規模 ( 暫定値 ) の推定 南海トラフの巨大地震モデル検討会第 7 回 ) 中間とりまとめ ( 案 ) 資料に加筆 2011 年 12 月 27 日開催 面積 地震モーメント M 0 (N m) モーメントマグニチュード Mw 南海トラフの巨大地震 ( 暫定値 ) 約 11 万 Km 2 ( 暫定値 ) ( 暫定値 ) 9.0 ( 暫定値 ) 2011 年東北地方太平洋沖地震 約 10 万 Km 2 ( 約 500km 約 200km) ( 気象庁 ) 9.0 ( 気象庁 ) 参考 2004 年スマトラ沖地震 約 18 万 Km 2 ( 約 1200km 約 150km) (Ammon et al., 2005) 9.0 ( 理科年表 ) 2010 年チリ中部地震 約 6 万 Km 2 ( 約 400km 約 140km) (Pulido et al., in press) ( 理科年表 )

15 南海トラフ巨地震大津波被害想定の見直し 地震規模 今回の想定 南海トラフ 2003 年の想定 東日本大震災 M9.1 M8.8 M9.0 震源域面積 14 万 k m2 6.1 万 k m2 10 万 k m2 死者 不明 32 万 3000 人 2 万 4700 人 1 万 8716 人 地震規模 スマトラ沖地震 関東大震災 M9.1 M7.9 阪神大震災 M k m2 675k m2 震源域面積 18 万 k m2 死者 不明 28 万 3100 人 10 万 5000 人 6,437 人 15

16 1. 現象 / 実態 事象の原因 メカニズムを伝える 2. 今後の展開 予測ならびにその精度を伝える 3. まとめ

17 DONET とは 海底に聴診器を準備 東南海地震が起こるとされるところ ( 紀伊半島沖熊野灘 ) に 20 カ所の観測点を構築した そこには 地震や 水圧 ( 津波 ) を知る機械がある 海中ロボットで地震計設置 17 この海底地形図はJTOPO30を利用して作成した 17

18 科学 技術の統合 18 18

19 第二期 (DONET2) 計画展開案 DONET2 展開案 平成 22 年度以降 文部科学省の補助金事業として 当初は 5 年 2 フェーズの計画 ( 第 Ⅱ 期 ) > 第 1 フェーズ :H22~H26 > 第 2 フェーズ :H27~H31 四国 紀伊半島 DONET1 平成 24 年度予算案において前倒し予算が計上され 平成 25 年度末の試験運用開始に向け整備を加速 DONET1 の運用 データ解析も合わせて実施 システム構想 (2フェーズ合計 カッコ内はDONET1) 基幹ケーブル長: 約 350km ( 約 250km) 分岐装置: 7 式 (5 式 ) ノード: 7 式 (5 式 ) 観測装置: 29 式 (20 式 )+2 式 DONET2 展開案 設置機器内容については ルート設計のための事前調査による変更もある 19

20 地動センサシステム 強震計 (TSA-100S) 広帯域地震計 (CMG-3T.RH) 観測対象長周期地震動微小地震大地震 : 広帯域な現象 : Hz; m/s 2 - (at 0.05Hz) : Hz; m/s 2 (at10hz) : Hz; m/s 2 (at 10Hz) 強震計 ジンバル機構 広帯域地震計 20

21 圧力センサシステム 水晶水圧計 微差圧計 ハイドロフォン 温度計 観測対象地殻津波長周期地震波微小地震大地震 : 広帯域な現象 : 1day sec; >1 Pa : sec; >1 Pa : Hz; > 1 Pa : Hz; > 1 Pa : Hz; > 3 MPa 水晶圧力計 微差圧計 センサー校正用精密温度計 ハイドロフォン 21

22 沖合津波波形と沿岸波高 沿岸の検潮所より早く沖合津波波形を検知 沿岸での津波波高 増幅率 DONETデータ 2011年 東北地震津波の例 熊野 約2.75倍 尾鷲 約3.5倍 Pressure [hpa] or Wave height [cm] 100 DONET/GPSブイ/検潮記録の津波比較 Owase 尾鷲 Kumano GPS Buoy 熊野 GPS Buoy 0 DONETC 浦神 DONETC9 串本 DONETデータの初動と Bandpass filtered between sec. Bandpass filtered between sec. 検潮所データの最大値と 串本 約2.5倍 浦神 約3.2倍 の比は6 10倍 尾鷲 GPS Buoy DONET C9 Uragami Kushimoto GPS Buoy GPS Buoy 津波予測の 精度向上に貢献 0 DONETC9 DONETC9-100 Bandpass filtered between sec Bandpass filtered between sec Time [min.] 津波増幅率は 津波の入射方向や震源距離 地域によって異なる 22

23 DONET のリアルタイム伝送構想例 海陽町まぜのおか陸上局 ( 徳島県海陽町 ) データ受信 配信 室戸ジオパーク陸上局 ( D O N E T 2 ) 古江陸上局 ( D O N E T 1 ) 衛星回線による冗長化 DONET データリアルタイム波形表示 尾鷲市防災センター Web による計算結果の配信 中部電力 局舎設計図 局舎建設地 専用線 (GIGA STREAM) win32 フォーマット 0.1 秒パケット広帯域地震計 3 ch (200 Hz) 強震計 High/Low Gain 6 ch (200 Hz) ハイドロフォン 1 ch (200 Hz) 微差圧計 1 ch (200 Hz) 水晶水圧計 1 ch (10 Hz) 精密温度計 1 ch (1 Hz) 広帯域地震計 3 ch (100 Hz) 強震計 3 ch (100 Hz) 水圧計 1 ch Earth LAN 震源メカニズム決定津波の波動伝播計算 防災科研 / 気象庁の陸上観測点データ ( 南海トラフ沿い約 200 観測点 ) 地震計 水圧計 緊急地震速報津波警報 23

24 地震波即時検知能力の向上 DONET 観測点 気象庁 防災科学技術研究所 秒 赤色が濃い位置ほど 陸上観測点より早く信号をキャッチすることを示す 24

25 津波即時検知能力の向上 0 分 6 分 0 分 6 分 6 分 0 分 6 分 12 分 DONET 観測点 検潮所 / 験潮所 分 12 分 12 分 12 分 分 赤色が濃い位置ほど 陸上観測点より早く信号をキャッチすることを示す 25

26 期待される地殻変動観測データ 東南海地震発生後から南海地震発生に至るまで 紀伊半島西沖では 東南海 地震の余効すべり後の加速 が観測できると期待される 熊野灘では東南海地震の 余効すべりが観測される ① ① ① ② ② ② ③ ③ ③ ① ② ③ 南海地震 地殻変動の鉛直変位 地殻変動の鉛直変位 東南海地震 ③ ① ② 地殻変動の鉛直変位 南海地震 東南海地震 ② 南海地震 ③ ① 東南海地震 26

27 地震発生予測 : データ同化実験結果 想定東南海地震が発生した後に 南海地震発生する間隔が 5.1 日となる模擬データについて初期値とパラメタの異なる 24 のモデルで推定した結果 真の値が 5.1 日 3.5 日後位から誤差が急激に減少 同化したモデルに真のパラメタ値は含まない 同化期間 期待値と誤差 (±1σ) 27 堀高嶺 兵藤守 ( 海洋研究開発機構 )

28 再来する南海トラフの巨大地震の発生サイクルシミュレーション 堀高嶺 兵藤守 ( 海洋研究開発機構 )

29 南海トラフ巨大地震の津波シミュレーション 馬場俊孝 ( 海洋研究開発機構 ) 29 29

30 南海トラフ巨大地震広域詳細な津波計算 ( 高知県全域 5m 分解能 約 6.8 億格子 ) 馬場俊孝 ( 海洋研究開発機構 )

31 東海 東南海 南海地震連動 ( 時間差発生シナリオ 1) 南海地震 (10 分 ) 東南海地震 --(5 分 ) 東海地震 古村孝志 ( 東京大学 )

32 東海 東南海 南海地震連動の地震動 ( 同時発生シナリオ ) 大阪 東南海地震と南海地震が遅れて発生すると 揺れ時間が長くなる (A) 時間差発生 (B) 同時発生 古村孝志 ( 東京大学 )

33 都市丸ごと 地震動応答計算 33 堀宗朗 ( 東京大学地震研究所 )

34 人の流れ関東 地震津波の発生時間帯によって避難 被害が大きく異なる 関東全域 東京 23 区 柴崎亮介 ( 東京大学空間情報科学研究センター ) 34

35 大規模避難 シミュレー ション 高知市 高知市 堀宗朗 ( 東京大学地震研究所 ) さらに以下の被害要因が 液状化 地盤沈下 火災 / 津波火災 長期湛水 その他 馬場俊孝 ( 海洋研究開発機構 ) 35

36 1. 現象 / 実態 事象の原因 メカニズム 2. 今後の展開 予測ならびにその精度を伝える 3. まとめ

37 情報発信のあり方 複合災害予測シミュレータ リアルタイム観測データ 熊野 Kumano GPS Buoy DONETC9 各種シミュレーション結果から避難経路の検索 スマートフォン等で伝達 東北大学 今村教授 観測データを同化し 複合災害をリアルタイムで予測し 避難経路等を携帯端末等へ伝達 東京大学地震研究所 堀宗朗教授 37

38 災害に強い都市づくり 減災都市計画 複数の避難経路の確保 津波避難施設 長期避難対策 行政及び危機管理施設の融合 高知市種崎地区の津波避難施設 市街地での津波特性を把握して適切な避難経路 低地にある大型ショッピングモールなどの津波避難施設としての活用 減災連携地域づくり情報 救援 ( 物流 人 避難 ) 復旧復興 人的支援 災害後の物流ルートの検討 復興ボランティア 38

39 減災教育の徹底 地域人材の育成 防災 減災教育 学校の総合学習 ( 減災教育 ) として地球科学 防災科学カリキュラムへの取り込み 39

40 40 まとめ : 地震津波分野における情報発信 DONET DONET2による地震津波の早期検知 即時予測 リアルタイム情報発信 データ同化手法による地震発生の切迫度評価 シミュレーションの 見える化 によるわかり易い情報発信 ハザードマップのあり方と活用法 啓発 防災教育を通じた防災力向上への貢献

41 Dense Oceanfloor Network System for Earthquakes and Tsunamis 研究や地殻活動の現状を逐次公表し コメントや批判を研究進捗の糧に ご清聴ありがとうございました 41

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