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1 大学院教育改革支援プログラム - 創造力と国際競争力を育む情報科学教育コア - プロジェクト型研究事業報告書 2008 年度版 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科

2 Creative and International Competitiveness Project 2008 March 31, 2009

3 巻頭言 大学院教育改革支援プログラム 取組実施代表者横矢直和 情報科学研究科は 情報処理学 情報システム学 情報生命科学の 3 専攻で取り組む教育プログラム 創造力と国際競争力を育む情報科学教育コア が 平成 19 年度の文部科学省 大学院教育改革支援プログラム において 理工農系分野の優れた教育プログラムの一つとして採択されました 本支援プログラムは 平成 17 年度に開始された競争的資金による教育支援プログラム 魅力ある大学院教育 イニシアティブの後継プログラムで 優れた組織的 体系的な教育取組に対して重点的な支援を行うことにより 大学院教育の実質化を推進することを目的としています 情報科学研究科の教育プログラムは 従来からの基本的な教育方針を堅持しつつ 魅力ある大学院教育 イニシアティブ プログラムの事後評価において極めて高い評価を得た教育取組のさらなる充実 発展を図るものです 具体的には 以下の 3 つの柱と 6 つの方策から成っています 1. コアカリキュラムの充実 1 授業アーカイブを利用した多様な形態のカリキュラム学習 2. アドバンストプロジェクト 2 学生の自主性に基づくプロジェクト型教育 3 国際化教育 4 長期派遣型連携教育 5 アカデミックボランティア教育 3. しなやかな教育基盤 6 授業 FDから研究指導 FDへ 本プログラムは 情報科学の基礎研究を推進する能力をもつ研究者と最先端技術開発のための応用力をもつ技術者を養成するという本研究科の教育方針のもと 国際競争力をもった人材を組織的に養成する情報科学分野での卓越した大学院教育の拠点となることを目指しています 本プログラムの柱であるアドバンストプロジェクトにおいて学生の自主性 主体性に重点を置く 学生の自主性に基づくプロジェクト型教育 の中核事業の 1 つとして位置づけているのが提案公募型プロジェクト CICP(Creative and International Competitiveness Project) です CICP プロジェクトは 自主性 主体性の涵養とともに 研究計画立案 遂行能力の開発とグループ研究を通したコミュニケーション能力の向上を目指しています 本冊子は 平成 20 年度における学生諸君のプロジェクト活動の概要をまとめたものです このプロジェクト活動を通した学生諸君の大いなる飛躍を期待して 巻頭の言葉といたします i

4 平成 20 年度プロジェクト型研究事業概要 1. 大学院教育改革支援プログラム - 創造力と国際競争力を育む情報科学教育コア- におけるプロジェクト型研究の位置づけ文部科学省 大学院教育改革支援プログラム に採択された 本研究科の教育プログラム 創造力と国際競争力を育む情報科学教育コア の一環として行う教育事業の1つとして プロジェクト型研究 を設けました 研究成果を出すこと自体ではなく 学生の研究プロジェクト企画 推進力やコミュニケーション力を育むことを第 1の目的としています 日々の研究とは別に 学生が自ら挑戦したいテーマを募集し その中から 独創性や将来性のある提案を20 件程度選抜し 1 件あたり 150 万円を上限として経費を支給しています 大胆なテーマに挑戦し 様々な失敗を将来の糧とできる またとないチャンスとして 大いに活用されることを期待しています 2. 年間スケジュール概略 20 年度は大学院教育改革支援プログラムの 2 年目にあたり 実施期間は6 月 ~3 月の10ヶ月でした 4/28 WEB 掲示および学内メーリングリストによりプロジェクト公募を開始 5/9 応募説明会を開催 5/19 電子メイルによる応募の締め切り 5/28 選抜会議 5/30 選抜結果公表と同時にプロジェクト開始 6/4 交付決定金額および予算執行に関する説明会を開催 6/9 交付申請書提出締め切り 9/19~20 淡路夢舞台国際会議場にて模擬国際会議 3/12 スプリングセミナー合同懇親会にてポスター予告 3/13 スプリングセミナーにてポスターセッション 来場者による人気投票 3/14 オープンキャンパスにてポスターセッション 来場者による人気投票 3/17 各プロジェクト報告書提出締め切り 3. 応募状況 付録 1 の公募に対し 応募締め切り時点で 46 件の応募がありました 大部分の応募が締め切り 5 分前 以降に集中しており 提出直前まで計画を練り上げていたと推測しています 4. 選抜方法 7 名の審査委員が以下の項目に基づいて各々独立に46 件を書類審査しました A. 計画性に関する項目 A1: 公募条件を満たしているか 様式の大幅な逸脱がないか (1~5) A2: 予算目標と執行時期は適切か (1~5) B. 独創性に関する項目 B1: チャレンジングな目標か (1~5) ii

5 B2: メンバの選定に特色があるか 1 5 C. 実現性に関する項目 C1: 裏付ける実績があるか 1 5 C2: 期間内に達成可能な計画か 1 5 D. おもしろさに関する項目 D1: スプリングセミナー等デモに馴染むか 1 5 D2: おもしろさや楽しさがあるか 1 5 まず 8項目の単純合計による順位付けを行いました 40 点満点に対し 得点分布は19 4点から33 7点までほぼ一様となりました また D.おもしろさ のみによる順位付けも行いました 同様に 10 点満 点に対し 得点分布は3 9点から9 1点までほぼ一様となりました 選抜会議では 単純合計が上位で あったプロジェクトに おもしろさが特に優れていると判定した若干数のプロジェクトを加えて 最終的に2 1件を採択しました なお 本事業報告書に収録している各プロジェクトの報告書は応募先着順となって います 選抜時には一切考慮しませんでしたが プロジェクトリーダーの内訳は 博士後期課程が5名 1 年 1 名 2年 4名 博士前期課程が16名 1年 8名 2年 8名 となっており 結果的に 様々な学年の学生 がリーダーに選抜されました また メンバも加えた参加人数は のべ73名に達し 多くの学生がプロジェ クト型研究に参加することとなりました 同様に 選抜したプロジェクト研究の分野は広範囲に及び バイ オ5件 医療1件 映像3件 ロボティクス2件 制御2件 計測2件 ネットワーク2件 インタフェース1件 言語処理1件 セキュリティ2件となりました 経費に関しては 上位2プロジェクトには申請額の満額 次の11プロジェクトには80 残り8プロジェ クトには70 を交付決定金額とし 応募時点で優秀であったプロジェクトに対して傾斜配分を行いました 交付金額の平均は 115万となっています 5 実施状況 選抜結果と同時に交付決定金額を通知し プロジェクトリーダーに対して 改めて交付申請書 付録 2 の提出を求めました これは 減額に対する対応や 制度上支出不可能な予算執行計画の見直しを求め るだけでなく 他プロジェクトの採否結果を元に プロジェクトリーダーがメンバを再構成して ベストメンバ で望めるようにするための措置です また 減額されたことを理由にプロジェクトを辞退できることを伝えま したが 辞退者はありませんでした 各プロジェクトリーダーの下 学生が自主的に行った学外活動の範 囲は以下の通りです 海外のべ 21 名 アメリカ合衆国 5 日間 2 名 7 日間 1 名 8 日間 2 名 11 日間 1 名 フ ィンランド 7 日間 1 名 12 日間 1 名 フランス 8 日間 2 名 インドネシア 8 日間 1 名 9 日間 1 名 14 日間 1 名 カナダ 7 日間 1 名 9 日間 1 名 ハワイ 6 日間 2 名 イギ リス 6 日間 1 名 8 日間 1 名 ニュージーランド 6 日間 2 名 国内のべ 88 名 東京 京都 千葉 山形 沖縄 大阪 神奈川 滋賀 兵庫 静岡 宮城 奈 良 各プロジェクトの詳細な活動計画 実施内容 および 自己評価については 目次に続く本編をご覧く ださい iii

6 6 模擬国際会議 9月19日および20日には 英語によるコミュニケーション能力を向上させるために 淡路夢舞台国際会 議場において模擬国際会議を開催しました 表紙写真 プログラムについては付録3をご覧ください 参 加した若手教員および学生に有益だった点を尋ねたところ 以下のような反応がありました 国際会議の雰囲気を経験することができた 英語に触れる良い機会になり 英語へのモチベー ションが高まった なかなか国際会議に参加できない M1 も雰囲気をつかむことができた 多くの学生が最低この ぐらいできれば国際会議で発表できそうとわかった 今まで英語発表の経験はなかったが 今回の経験でスライドの準備や 発表練習にどれくらい の時間が必要か 感覚がつかめるようになったのでよかったと思う 準備不足のため 今回の 私の発表は失敗に終わったが 今後 国際会議等で発表を行う際には 今回の失敗を生かして 準備期間を多くとりたいと思う リーダの口頭発表のみならず メンバも質疑で参加することで英語を使う機会が少ない人でも 英語を積極的に使う意識を持つことができた点が有益だと感じた 各発表の直後にコメントをもらえたこと および セル先生のチュートリアルが有益であった 各発表者に対して発表直後にアドバイスを頂ける点が良かったと思う 国際会議に採択されることがなければ 修士学生は英語で発表する機会はない このプログラ ムにおいて英語で発表することは非常に有意義なことであると思う 模擬国際会議ということで進行から発表まで全て英語で行われたので 自分の英語の力量を知 るという点において良かったと思う また 今回の発表では研究分野の違う方の色々な発表を 聞くことができ さらに質問もすることができたので その分野の人がどのように考えている のかということを知ることができて非常に有意義だったと思う 英語でプレゼンテーションを聞く機会を得られたこと 英語で異分野(同じ情報系のくくりで はあっても)に対して質問をする機会を得られたこと 模擬ではあるが 国際会議と想定され た場に参加できたこと セル先生による事前説明 review があったこと 資料配布が当日各々81部印刷してくるシ ステムだったこと ぎりぎりまで改善できた 参加学生に質問をある程度強制したおかげで 議論の練習もできる形になったのがよかったと 思う 教官からの質問では学生が萎縮してしまうと思うので 大学ではなく別の施設で開催し たことで緊張感のあるよい雰囲気だったと思う 本当に海外に行って 2 泊 3 日くらいで行いたい 海外の大学の先生などに講演を行っていただ きたい 海外の大学の学生相手にプレゼンを行いたい 有益であったのは 二名のネイティブスピーカーから 英語およびプレゼンテーションそのも のについてアドバイス コメントをいただくことができた事 また 今後似た形式で開催され る国際会議参加する際のリハーサルとなり 英語での発表に強い自信を持つ事ができた 発表 をビデオ撮影していたのも 自らの発表を振り返る上で大変参考になると思う プレゼン終了後すぐに具体的なコメントがあったため 発表者にとっても分かり易かったと思 iv

7 う 我々からみても 今後学生に注意すべき点が明確になり有益だった 採択された CICP の内容と現在の進捗状況がわかり プロジェクトを進める上で刺激を受けら れた 夜のフリーディスカッションで他のプロジェクトの方と交流を深められた 実際に英語でプレゼンテーション資料を作成し それを校正することや実際に発表することに よりプレゼンテーションスキルの勉強になったこと メンバはリーダと違い CICP 関係の集合に出席する機会がないので実際に採択されたプロジェ クトの詳細を知ることができたこと その場で質問を考えることで 英会話の瞬発力を学ぶことができたこと ネイティブからの意見を 英語でのプレゼンテーション に重点を置いて聞くことができた 今後の国際会議に参加する際のプレゼンテーション作りで 多いに役立つと思われる 来年の CICP でも是非 開催すべき 普段付き合うことのなかった人と交流できたのが良かった チュートリアルはとても勉強になった 多くの学生に聞かせたいと思った また 他の研究室 の学生と話をする機会はあまりないので 教員と学生 また学生同士の交流ができて フリー ディスカッションは良かった 英語で話す 場を作ること自体が 国際競争力を養う上で有益であると感じた 発表のコメントをセル先生やルイスさんからもらうことによって 英語プレゼンテーションの 際の注意すべき点が具体的に分かった 正直なところ模擬国際会議までしなくとも英語の発表練習は十分にできると思っていたが 参 加してみて非常に効果的なかつ貴重な経験のできる場であることを認識した 是非 来年度以 降も NAIST の独特な教育方針として継続していただきたいと思う 普段あまり行わない 英語でのプレゼンテーションの作成や公聴を行えた 英語で質問を行う ために 普段より 質問 に対して深く考察するいい機会になった 発表の後に 即コメントを貰えたことが有益であった 国際会議の雰囲気が掴め どのように見えていたか評価されること 他のプロジェクトの詳細 メンバーとの交流が図れたこと 自分の英語力がいかに乏しいか 実感させられたことが有益 だった 7 一般公開による評価 3月13日および14日には 最終報告会として スプリングセミナー 他大学の学部生 およびオープンキ ャンパス 一般の方 の参加者約130名を対象とした ポスターセッションを開催しました 付録 4 各プロ ジェクトとも 趣向を凝らした成果発表を行い 参加者による人気投票の結果をもとに 最優秀プロジェクト と優秀プロジェクトを各1件選定しました なお 投票結果は末尾の付録5に掲載しています 8 学生による自己評価 プロジェクトの計画 管理や研究費の申請 執行などの経験 模擬国際会議における英語での 発表や議論が大いに有益であった旨の自己評価が数多く見られました また 目標を期限内に達成 v

8 するためのスケジュール管理などプロジェクト推進の難しさを実感した評価も多く見られました スプリングセミナーやオープンキャンパスにおける発表では 学外の学生にいかに興味を持ってもらう かに苦慮し デモンストレーションの重要性に気付いたとの分析や 単なるシステム開発だけではなく 多くの人や部署と連携してプロジェクトを遂行したことが非常に有益であったとの分析から 多くのリーダ ーが大学院における通常の研究活動では得られない貴重な経験を積むことができたのでないかと考えて います 9 本事業の自己評価 20年度のプロジェクト型研究は19年度に比べて実施期間が長く 学生が腰を据えてプロジェクトに取 り組むことができました また 昨年度の課題であった教育プログラムとして 初めて模擬国際会議を開催 することができ 学生は 単に研究室内で英語発表の練習をするだけでは得られない貴重な経験を積む ことができたのではないかと考えています 10 本事業の今後の課題 20年度については 年度始めにプロジェクト募集を行ったため 2年生を中心に19年度からの継続申 請が多数見受けられました 一方で 修士1年生には多くの授業を受けつつの申請となり また 博士1年 生には進学直後の慌しい時期の申請となったため 多忙を理由に申請数が少ない傾向が見られました 21年度については 募集アナウンスは早期に行うものの 応募締め切りを遅らせ 修士および博士1年生 により多く募集させる工夫をしたいと考えています 21年度も引き続き 模擬国際会議の運営 参加など より多様かつ実践的な場を提供することにより 国際的に活躍できるプロジェクトリーダーの育成を図りた いと考えています (教務部会 CICP2008 推進委員会) vi

9 目次 巻頭言 i 平成 20 年度プロジェクト型研究事業概要 ii 永松明 : 屋内環境における立体映像を用いたプロジェクション AR 型情報提示システム 1 今畑年雄 : 眼球運動計測に基づくリアルな顔 CGアニメーション 11 小島一允 :Ubiquitous x Sports ~ 無線センサーネットワークを利用したリアルタイムなスポーツ情報流通基盤の構築 ~ 21 祖父江厚志 : 耳を持ったロボットハンド NAIST-HANDⅡ Type M の開発 31 野末愛子 : みえたらログイン 視覚型秘密分散共有を利用した相互認証システム 41 林浩平 : ソーシャルネットワークサービスにおける友人推薦システムの開発 ~ 機械が結ぶ人の縁 ~ 51 南貴博 : 振ってつながるかんたんセキュリティ TS3K(Tunable Security by Shaking and Sharing Key) 61 Oulad Nassar Badr:SPICE Project: Development of Super high-speed Photonic Interface for Computer Equipment with WDM Technology 71 木村学 : 書誌情報マップ 78 伏田享平 : ユーザのグルーピングを利用した展示会運営支援システムの開発 88 堀磨伊也 : 全方位動画像と可動椅子を用いた高臨場感テレプレゼンスシステムの構築 98 Retno Supriyanti:Field Study of Cataract Diagnosis in Indonesia Towards Integration of ICT and Health Care for Developing Countrie s 108 井之上直也 : 拝啓添削者様 ~ブログパーツで繋がる相互添削ネットワーク~ 117 大林千尋 : 生駒の歩き方 からだ測定から考える健康歩行支援プロジェクト 127 小橋優司 :3D チョコレート造形装置 NAIST Chocolatier( ナイストショコラティエ ) の開発 137 中村政義 : 仮想世界における人工生命の進化と生態系自己組織化のシミュレータ anlife の開発 146 vii

10 芳賀真由美 :YUMA - 人の自然な振る舞いを大切にするインタフェースデバイスの開発 畑田和良 : さらりとかわす トムとジェリー 166 平田雅也 :NAIST-IT グリーン化プロジェクト ECONAS 176 福井善朗 : 祇園祭 山鉾の安全性検証 ~ 伝統と工学の融合 ~ 185 西田孝三 : ヒトとヒト腸内細菌群集間の化学物質を介した相互作用の理解に必須なメタゲノム情報可視化ツールの開発 195 付録 1. 公募内容および応募様式付録 2. 交付申請書様式付録 3 模擬国際会議プログラム付録 4. ポスターセッション案内パネル付録 5. ポスターセッション投票パネルと投票結果 viii

11 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 屋内環境における立体映像を用いたプロジェクション AR 型情報提示システム 2. プロジェクトリーダ 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 視覚情報メディア講座 M 永松明 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 視覚情報メディア講座 D 堀磨伊也 視覚情報メディア講座 M 伊吹拓也 視覚情報メディア講座 M 粂秀行 視覚情報メディア講座 M 鈴木可奈 4. チューター 所属講座職名氏名 視覚情報メディア講座助教神原誠之 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 シルバースクリーン 月 ハンドヘルドプロジェクタ : LED プロジェクタ (LVP-PK20) 1 消耗品費 80 6 月 円偏光フィルタ / 左右の視点画像提示用 月 LVP-PK20 用バッテリー :BT-PK20R 月 情報提示用インタフェース一式 月 デモ環境構築用素材 3 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 国立天文台 ( 東京 ) 立体ドーム映像試写 / 日帰り /4 人 月 ACM SIGGRAPH2008(Los Angeles) 調査 /5 泊 7 日 /1 人 合計

12 6. プロジェクトの背景と目的近年, ユーザの位置 姿勢に応じて現実空間に案内情報を重畳表示するウェアラブル拡張現実感 (AR) に関する研究が盛んに行われている. その応用例の一つとして AR 観光案内システムが挙げられる. われわれは従来, ハンドヘルドプロジェクタを用いて博物館等の屋内環境で利用できる案内システムを提案してきた. このシステムでは, ハンドヘルドプロジェクタを用いて, 経路のナビゲーション情報や展示物の補足説明情報などを壁や床に投影し, 観光の補助を行っている. これを実現するためには, 高精度にプロジェクタの位置 姿勢を推定する必要があり, われわれは天井に貼り付けられた不可視マーカをハンドヘルドプロジェクタに設置された赤外線カメラで認識することでこれを可能とした. しかし, これまではハンドヘルドプロジェクタ 1 台で行っていたため, 提示される案内情報は平面的なものに限定される問題があった. そこで本プロジェクトでは,3 次元空間中の自由な位置に立体的な案内情報を提示する AR 案内システムの構築を目指す. 提案プロジェクトでは, 従来手法と同様に天井に貼り付けられた不可視マーカをハンドヘルドプロジェクタに設置された赤外線カメラで認識することでプロジェクタの位置 姿勢を推定するが, 複数のプロジェクタを用いることによって立体的な案内情報提示を実現する.2 台のプロジェクタに偏光フィルタを取り付け, それぞれのプロジェクタから視差のある映像を投影する. ユーザは偏光眼鏡を装着することにより, 左右それぞれに視差のある映像を見ることができ, 立体視が可能である

13 7. 目的到達までの研究計画前述の目的を達成するために以下の項目についてプロジェクトを推進する. (1) 環境中に固定設置した 2 台のプロジェクタによる立体視の実現第 1 ステップでは, 立体視を行うための 2 台のプロジェクタが環境中に固定されている条件の下で案内情報の提示を試みる. ここでは,2 台のプロジェクタの相対的な位置 姿勢を求めるために 2 台のプロジェクタのキャリブレーションを行う必要がある. 推定されたプロジェクタの位置 姿勢情報と提示する対象の 3 次元位置を考慮して, 提示する映像の生成を行う. 実験では, 生成する画像の視差の考察および立体視可能な範囲の検証を行う. (2) 相対位置が固定された 2 台のハンドヘルドプロジェクタによる立体視の実現第 2 ステップでは, 相対位置を固定した 2 台のプロジェクタを手に保持した状態で立体視を実現する. プロジェクタの絶対位置はユーザの移動に伴い, 変化するものとする. このとき, それぞれの相対位置は (1) の手法で算出されているものとするが, 絶対位置 姿勢は天井に貼り付けられた不可視マーカをプロジェクタに装着した赤外線カメラで計測することで推定する.2 台のハンドヘルドプロジェクタの相対位置は固定されているため, プロジェクタと投影面までの距離に応じて映像が重複する領域が変化する. そのため, その距離に応じて, 提示する左右の映像の視差を変化させて提示する必要がある. (3) 環境中に設置したプロジェクタとハンドヘルドプロジェクタによる立体視の実現第 3 ステップでは, これまで相対位置を固定していた 2 台のプロジェクタの動作を独立させる. 一方は天井等の環境に設置し, もう一方は手に所持し移動しながら, 立体視を実現する. それぞれのプロジェクタの相対位置 姿勢が変化するため, それぞれのプロジェクタの位置 姿勢推定の誤差が大きくなり立体視が困難になると考えられる. この問題を解決するために本プロジェクトでは, ハンドヘルドプロジェクタに前向きカメラを設置し, プロジェクタにより投影された映像から, ハンドヘルドプロジェクタの位置 姿勢推定の精度向上を行うことで立体視を試みる. 図 1の (a) では案内情報の表現は壁や床などの平面に限定されていたが, 図 1(b) のように案内情報を 3 次元空間上に表現することが可能となり, より直感的に提示することができる. ハンドヘルドプロジェクタ 案内情報 設置型プロジェクタ案内情報偏光眼鏡 展示物 展示物 (a) 従来システムの案内情報提示 図 1. 提示する案内情報の比較 (b) 本プロジェクトの案内情報提示 - 3 -

14 8 決算の要約 金額(千円) 設備備品費 消耗品費 支出予定月 月 シルバースクリーン LED プロジェクタ 住友 3M 月 LED プロジェクタ TEXNAI 185 2月 旅費 調査目的も可 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 63 2月 情報提示用インタフェース一式 97 2月 デモ環境構築用素材 97 2月 映像所得用補助品一式 月 ACM SIGGRAPH2008 調査 26 8 月 第 13 回日本バーチャルリアリティ学会大会 発表 9 2月 日本科学未来館 調査 8 2月 第 36 回サイバースペースと仮想都市研究会 発表 合計 1173 9 プロジェクトの状況および自己評価の要約 本プロジェクトでは 2 台のモバイルプロジェクタを用いた偏光方式による立体提示可能 AR 情報提示システ ムの構築をした 複数人での利用を想定した場合に機器を装着するユーザ以外の視点から見た案内情報の 3 次元位置の誤差を定式化することで提案システムの推奨される利用環境を考察した 本プロジェクトでは関 連研究を踏まえ 研究の目的とそぐわないと判断したため目標達成の研究計画のステップ(3)は行わなかった が 展示物への立体的な情報提示する模擬環境を構築し 2 台の相対関係が固定されたモバイルプロジェク タを用いて 3 次元的な位置に案内情報を提示することが可能となった これにより プロジェクションにおいて 案内情報の提示表現を 2 次元から 3 次元に拡張できることが確認できた また スプリングセミナー オープンキャンパスにおいて来場者からは 今後提案システムを博物館で利用 可能になれば ぜひ利用してみたいとの意見を頂いた しかし 本プロジェクトにおける研究の背景等の予備 知識のない一般の来客者が多かったため 一部の来場者の方には研究の本質を理解してもらえず非常に苦 労した 直感的に理解しやすい言葉を選んでかつ 一言二言で伝える工夫が必要であると感じた また 展 示するスペースが限られるため コンテンツの作成段階から 限られた範囲において効果的に利用できる内容 を考察する必要があった 全体を通しての来場者からの評価が振るわなかったのはコンテンツの作り込みの 甘さが主な原因であり 今後の課題としたい -4-

15 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 屋内環境における立体映像を用いたプロジェクション AR 型情報提示システム プロジェクトリーダ 永松 明 1 概要 背景と狙い 案内情報 案内情報 ユーザが装着して使用可能なウェアラブルコンピ ハンドヘルド プロジェクタ ュータと 計算機が生成した情報を現実環境に重ね 合わせて表示可能な拡張現実感(AR)[1]を組み合わ せたウェアラブル拡張現実感を利用すれば 任意の 展示物 場所でユーザの位置や姿勢に応じて注釈情報を直 (a)投影面上の提示情報 感的に提示することができる その応用として 道案 内や観光案内のための位置依存情報をユーザに提 (b)3次元空間中の提示情報 図 1:従来手法と提案手法の提示情報の比較 示するウェアラブル AR 案内システムが提案されてい る[2,3] 置された固定型の立体提示可能なプロジェクタシス 我々はプロジェクタを用いて仮想物体を現実世界 テム[7]では 広範囲における利用は難しい に直接投影することで仮想世界と現実世界の融合 そこで本研究では 3 次元空間中に立体的な情 を図るプロジェクション AR による案内システム[4]を 報を提示可能なモバイルプロジェクション型 AR 案内 提案してきた プロジェクション AR システムではユー システムを提案する これらのシステムでは正確な位 ザが存在する現実空間中のオブジェクトに対して情 置に案内情報を提示するために ユーザの視点位 報を投影するため 同時に複数のユーザが同じ情 置 姿勢に基づいた投影像を生成する必要がある 報を見ることが可能である また 不可視マーカと赤 そのため本研究では ハンドヘルドプロジェクタを頭 外線カメラを用いた位置 姿勢推定システム[5]を利 部に装着することでユーザの視点位置 姿勢の算出 用して 広範囲の屋内環境において高精度にプロ を単純化する 提案システムでは 従来手法と同様 ジェクタの位置 姿勢を推定している このシステム に天井に貼り付けられた不可視マーカをハンドヘル では ハンドヘルドプロジェクタを用いて 展示物の ドプロジェクタに設置された赤外線カメラで認識する 説明情報や移動経路のナビゲーション情報などの ことでプロジェクタの位置 姿勢を推定し 2 台のプロ 案内情報を壁や床に投影し観光の補助が実現され ジェクタを用いて立体的な案内情報を提示する 各 ている プロジェクタには個別の偏光フィルタが取り付けられ しかし従来手法では 図 1(a)のように案内情報の ユーザは偏光眼鏡を装着し それぞれのプロジェク 提示位置が投影面上に限定されるため 3 次元空間 タから投影された左目用 右目用の映像を見ること 中の点を指し示すことはできない 案内情報をユー で立体視を実現する ザにより直感的に提示するには 図 1(b)のように提 以降 2 章ではプロジェクトの進捗として提案シス 示位置を壁面や床面等の投影面上から 3 次元空間 テムの概要について述べると共に 有効性を確認す 中に拡張する必要がある るための実験について詳述する 3 章ではプロジェク AR システムにおいて 3 次元的な情報を提示する トの成果 4 章では今後の展開 最後に 5 章では自 にはヘッドマウントディスプレイの利用が考えられる 己評価について述べる [6] しかしユーザは両目にディスプレイを装着しな 2 提案システムの概要 ければならず 周辺視野が遮られ環境内を歩き回る 観光案内での利用は困難である また環境内に設 提案システムは博物館のように展示物が様々な場 5

16 所に置かれた広域な屋内環境を対象とし, ユーザが展示物を見て回る環境を想定する. ユーザはプロジェクタを装着し, 壁や床などにプロジェクタから投影される展示物の説明情報や移動経路のナビゲーション情報などの案内情報を閲覧する. 立体映像の提示は偏光方式により 2 台のプロジェクタから左目用, 右目用の映像を投影することで実現する. 2.1 提案システムの機器構成図 2 に提案システムの機器構成を示す. 提案システムでは, ハンドヘルドプロジェクタを頭部に固定し, プロジェクタの姿勢とユーザの視点の姿勢および 2 台のプロジェクタの相対関係を固定することで立体映像の提示に必要な左右の視点位置 姿勢の算出を単純化する. またプロジェクタの位置 姿勢を計測するために, プロジェクタの上に赤外線 LED 付き赤外線カメラを取り付け, 環境中の天井には図 3 のように景観を損ねない再帰性反射材からなる不可視マーカを設置する. 赤外線カメラで不可視マーカを撮影 認識してプロジェクタの位置 姿勢を推定する. ユーザは偏光フィルタを取り付けた 2 台のプロジェクタを頭部に固定し, さらに投影像を生成するための計算機, 偏光メガネを装着する. また, プロジェクタを用いた偏光方式による立体映像の提示には, 投影面に映し出された光の偏光を保つためにシルバースクリーンが必要である. そこで, 展示物の背面にシルバースクリーンを設置する. 2.2 提案システムの処理の流れ提案システムでは, 既知の情報として投影面 ( 使用環境 ) の 3 次元形状, 提示する案内情報の 3 次元形状や画像, 提示位置 姿勢, およびユーザの左右の視点と 2 台のプロジェクタの相対位置関係の情報を利用する. プロジェクタの位置とユーザの視点位置は異なっているため, ユーザの視点からみた映像を生成しプロジェクタから投影する. 以下に各ステップに関して詳述する. 赤外線 LED 付き偏光メガネ フィルタ赤外線カメラ ( 自作 ) 解像度 : LED プロジェクタ重量 :50g LVP-PK20 計算機 ( 三菱電機 ) ThinkPad X60 解像度 : (Lenovo) 重量 :0.85kg( バッテリー含 ) CPU:Core2Duo 2GHz 外形寸法 :( 幅 )123 メモリ :2GB ( 高さ )48.2 ( 奥行き )97mm 重量 :1.4kg 図 2: 提案システムの機器構成 (a) 通常撮影時 (b) フラッシュ撮影時図 3: 天井に設置される不可視マーカ [5] プロジェクタの位置 姿勢計測環境中の天井に設置された不可視マーカをプロジェクタの上部に取り付けた赤外線 LED 付き赤外線カメラで撮影 認識してプロジェクタの位置 姿勢計測を計測する ( それぞれ誤差 9mm,0.35 程度 )[5].2 台のプロジェクタの相対関係は固定であるため, それぞれの位置 姿勢を計算する. ユーザの左右視点位置 姿勢の推定プロジェクタの位置 姿勢結果から, ユーザの左右の視点と 2 台のプロジェクタの位置 姿勢との相対関係によりユーザの左右の視点位置 姿勢をそれぞれ計算する. 案内情報の投影変換図 4 に提示映像の幾何変換処理の概要を示す. 図中の案内情報は 3 次元位置に設定してある. 投影面の 3 次元形状が既知であることからユーザの視点, 案内情報, 投影面の位置関係の情報より, ユーザの左右それぞれの視点から見た案内情報が, 投影面に対してそれぞれどのように投影されるか計算する. ここで, 投影面は平面であると仮定する. 6

17 案内情報の 3 次元位置の誤差 d[m] 投影像の生成最後に 2 台のプロジェクタの位置 姿勢から, 投影変換した案内情報をそれぞれ透視変換して左目用, 右目用の投影像を生成し, 各プロジェクタから出力する. 2.3 提案システムの利用環境提案システムでは, 正しい位置に提示された案内情報を見ることが可能なのは, 厳密には機器を装着するユーザの視点のみである. 複数人で行動する場合, 機器を装着しないその他のユーザは提示される案内情報の 3 次元位置は正確な位置とは異なる. そのため, 機器を装着するユーザの視点から離れた地点から提示された案内情報を見た場合にその案内情報の 3 次元位置の誤差求めることで提案システムの想定する利用環境を述べる. 図 4 に提示する案内情報位置の高さを一定とした場合におけるユーザの視点位置, 投影面, 展示物, ユーザの位置関係を示す. 案内情報の提示位置を O 地点, 機器を装着するユーザの位置を A 地点, 機器を装着しないその他のユーザの位置を B 地点, 投影面と提示位置の距離を tm, 案内情報の 3 次元位置の誤差を dm,o 地点に対する y 軸と A,B 地点の角度をそれぞれα,β とする. ここでは, ユーザは O 地点を中心とした半径 1m の円周上から案内情報を見るものとし, それぞれのユーザの眼間距離は 6.5cm とする. 図 6 に投影面と提示位置の距離 t が 0.2m のときのα=0,15,30 の場合において,O 地点に対する A,B の成す角度 (β-α) と案内情報の 3 次元位置の誤差 d の関係を示す. これより,αが 15,30 のときと比べて, 投影面に対して正面から投影を行った場合であるαが 0 のときに誤差 d が小さくなることがわかる. ここで許容誤差を 0.05m とした場合は A, B の成す角度は約 15, 0.1m とした場合は約 35 となる. 図 7 にαが 0,βが 30 のときの投影面と提示位置の距離 t と案内情報の 3 次元位置の誤差 d の関係を示す. 許容誤差を 0.1m とした場合は t を 図 4: 提示情報の幾何変換処理の概要 t d O O: 案内情報の提示位置 A: プロジェクタを装着するユーザの位置 B: その他のユーザの位置 t : 投影面と提示位置の距離 d : 案内情報の 3 次元位置の誤差 A 図 5: 利用環境の概略図 α =0[ ] α =15[ ] α =30[ ] 投影面 B 右目の視点位置左目の視点位置 O 地点に対する A,B の成す角度 β -α [ ] 図 6: O 地点に対する A,B の成す角度と 3 次元位置の誤差の関係約 0.25m,0.2m とした場合は約 0.6m となる. また案内情報の提示位置が投影面に近いほど誤差 d が小さくなることがわかる. これらより, 利用環境において機器を装着するユーザは投影面と正対に近い場 7

18 案内情報の 3 次元位置の誤差 d[m] シルバースクリーン 0.1m 0.15m 案内情報 1 0.2m 案内情報 2 展示物案内情報 m Q P 図 8 実験環境と案内情報の提示位置 投影面と提示位置の距離 t[m] 図 7: 投影面の位置と 3 次元位置の誤差の関係 所から投影するほど誤差は小さくなり, 機器を装着 するユーザとその他のユーザの視点位置が近いほ どより正確な位置に提示できる. (a)p 地点での右目から見た様子 (b)p 地点での左目から見た様子 2.4 立体映像の提示実験実験環境は本学内の廊下 ( 天井高約 2.8m) で, 天井には壁紙に印刷された不可視マーカを設置する. ユーザは, 図 2 に示すように赤外線 LED 付き赤外線カメラ ( 自作 ), 偏光フィルタが取り付けられた 2 台のプロジェクタ ( 三菱電機製 LVP-PK20) をそれぞれ頭部に取り付け, さらに計算機 (Lenovo 製 ThinkPad X60 CPU:Core2Duo 2GHz メモリ :2GB), 偏光メガネを装着する. 図 8 に実験環境と案内情報の提示位置を示す. 博物館を想定し, 台の上に展示物を設置する. さらに展示物の背面にシルバースクリーンを展示物から距離 0.2m の場所に設置し, 展示物からの距離 1m の P,Q 地点からそれぞれ映像を投影する. また, 展示物に対する P と Q の成す角度は 30 とし, 案内情報 1,2,3 はそれぞれシルバースクリーンから 0.1m, 0.15m,0.2m の場所に提示する. 図 9,10 に P,Q 地点から立体映像の提示を行った際の, 各 P,Q 地点からの案内情報の提示の様子を示す. 図 9(a),(b), 図 10(a),(b) に示すように, 機器 (c)q 地点での右目から見た様子 (d)q 地点での左目から見た様子図 9: P 地点からの立体映像の提示の様子を装着しているユーザに対して 3 次元空間中の点を指し示す情報を提示可能であることが確認できた. また, 図 9(c),(d), 図 10(c),(d) に示すように, その他のユーザも立体的な情報提示が可能であることが確認できた. 本実験により, プロジェクション AR でありながら 3 次元空間中に情報を提示することができ, 機器を装着するユーザには 3 次元空間中の点を指し示して案内情報を提示可能になった. 8

19 可能になれば ぜひ利用してみたいとの意見を頂い た しかし 本プロジェクトにおける研究の背景等の 予備知識のない一般の来客者が多かったため 研 究の本質を理解してもらうのに非常に苦労した 直 感的に理解しやすい言葉を選んでかつ 一言二言 で伝える工夫が必要であると感じた また 展示する スペースが限られるため コンテンツの作成段階から 限られた範囲を効果的に利用できる内容を考察す (a)q 地点での右目から見た様子(b)Q 地点での左目から見た様子 る必要があった 全体を通しての来場者からの評価 が振るわなかったのはコンテンツの作り込みの甘さ が主な原因であり 今後の課題としたい 3.3 SIGGRAPH2008 日本科学未来館の調査報告 SIGGRAPH 年 8 月 11 日から 15 日まで ロサンゼルスに おいて開催された SIGGRAPH2008 に参加した (c)p 地点での右目から見た様子(d)P 地点での左目から見た様子 SIGGRAPH は ACM のコンピュータグラフィクスを中 図 10: Q 地点からの立体映像の提示の様子 心とした技術の世界最大規模の国際会議であり通 3 成果 常の国際会議における研究発表のようなオーラル発 3.1 模擬国際会議での中間発表報告 表やポスター発表だけではなく 大々的なデモンス 2008 年 9 月 19,20 日に兵庫県淡路島にて中間発 トレーション発表や企業の展示などからなっている 表報告を行った 中間発表報告は模擬国際会議と デモンストレーションではプロジェクタを用いた展示 し発表内容や質疑応答が英語で行われ 戸惑いな が多く見られ 数あるディスプレイの中でもプロジェク がらの発表になったがいい刺激を受けた 英語の指 タは注目される機器であると感じた また 初日から 導は発表における発音 イントネーションや資料の作 二日間に渡り偏光方式による立体映像ビデオカメラ り方に至るまで幅広く学ぶことができ 今後の国際会 システムを用いたロックバンドのライブ中継が行われ 議での発表の予行練習となるいい機会になった 迫力ある立体映像をリアルタイムで見ることができ 立体映像が身近なものになりつつあると感じた また 3.2 スプリングセミナー オープンキャンパスでの発 初めて国際会議に参加し世界中の研究者の発表を 表報告 見ていい刺激を受けた 今後の学術発表の参考に 2009 年 3 月 12,13,14 日の学内で行われたスプリ したい ングセミナー オープンキャンパスにおいて 模擬環 日本科学未来館 境を構築し 本プロジェクトのデモンストレーションを 来場者に対してのデモンストレーション内 行った 立体映像は図 9,10 で述べた映像に加え 容や立体映像提示技術についての調査の為に 魚の化石 月面図のポスターを案内する映像を提示 東京にある日本科学未来館に最新の 3D 技術 した またプロジェクタを手で持つ形を取ることで よ を用いたドームシアターについての調査を行 り操作しやすいシステムにすることを心がけた 来場 った この施設では全周を覆う広いスクリーン 者からは 今後このようなシステムを博物館で利用 を生かした迫力の大画面映像や日本初の全天 9

20 周 超高精細 3D 映像を使用したプラネタリウ リングセミナー オープンキャンパスにおいて 実機 ムの上映を行っている この施設では全周スク を用いた発表を行うことで多くの人にシステムを体験 リーンを使用しているため 各来場者の視点位 してもらい意見 評価を頂けたことは 今後の研究を 置をどのように決定するかが重要であるが 各 進めていく上で貴重なものとなった また 模擬国際 来場者の座席位置を考慮して投影する映像を 会議において英語での発表指導を受けることができ 分割し それぞれの座席位置に適した立体映像 大変参考になった さらにプロジェクトのリーダとして の生成を行っているように感じた また 最新 メンバとの仕事の分担方法 予算の申請 使用方法 の波長分割方式であるインフィテック方式を使用し を学ぶ機会を持てたことはとてもよい経験になった ていたが完全に色が再現できておらず 赤青が多 少目立って見えた しかし コンテンツの内容として 参考文献 暗室を効果的に利用したプラネタリウムはプロジェク [1] R. Azuma: A Survey of Augmented Reality, Presence, タを用いた立体映像提示は適していると感じた Vol. 6, No. 4, pp , [2] 狩塚俊和 佐藤宏介: プロジェクタ投影型ウェアラブ 4 今後の展開 ル複合現実感システム 情報処理学会研究報告 本プロジェクトでは 2 台のモバイルプロジェクタを CVIM pp 用いた偏光方式による立体提示可能 AR 情報提示 [3] R. Tenmoku, M. Kanbara and N. Yokoya: Nara システムの構築をした 複数人での利用を想定した Palace Site Navigator: Device-indepent Human Navigation 場合に機器を装着するユーザ以外の視点から見た Using a Networked Shared Database, Proc. 10th Int. 案内情報の 3 次元位置の誤差を定式化することで Conf. on Virtual Systems and Multimedia, pp , 提案システムの推奨される利用環境を考察した 実 験では展示物への立体的な情報提示する環境を想 [4] 永松明 中里祐介 神原誠之 横矢直和: 屋内環境 定し 3 次元的な位置に案内情報を提示した これ におけるハンドヘルドプロジェクション型AR ナビゲーショ により プロジェクションにおいて案内情報の提示表 ンシステム, 日本バーチャルリアリティ学会サイバースペ 現を 2 次元から 3 次元に拡張できることが確認でき ースと仮想都市研究会研究報告, Vol. 13, No. 1, pp た 20, 今後の課題として 3 次元の環境地図や入力装置 [5] Y. Nakazato, M. Kanbara, and N. Yokoya : を用いたインタフェースの開発が挙げられる また相 Localization System for Large Indoor Environments Using 対関係が固定された 2 台のハンドヘルドプロジェクタ Invisible Markers, Proc. ACM Symp. On Virtual Reality を手に所持した状態で ユーザの視点位置を考慮し Software and Technology, pp , た立体映像を提示し使いやすくすることが求められ [6] S. Uchiyama K. Takemoto K. Satoh H. Yamamoto る and H. Tamura: MR Platform: A Basic Body on Which Mixed Reality Applications Are Built, Proc. 1st Int. Symp. 5 自己評価 on Mixed and Augmented Reality, pp , 今回のプロジェクトでは関連研究を踏まえ 研究 [7] N. Hashimoto, S. Jeong, Y. Takeyama, M. Sato: の目的とそぐわないと判断したため目標達成の研究 Immersive Multi-Projector Display on Hybrid Screens 計画のステップ(3)は行わなかったが プロジェクトの with Human-Scale Haptic and Locomotion Interfaces, 目標であった可搬式のプロジェクタを用いた立体映 Proc. Int Conf. on Cyberworlds, pp , 像提示可能なシステムを構築することができた スプ 10

21 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 眼球運動計測に基づくリアルな顔 CG アニメーション 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 像情報処理学講座 M 今畑年雄 3. 分担者 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 像情報処理学講座 M 原田甫 4. チューター 所属講座職名氏名 像情報処理学講座助教池田聖 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 ML846 PowerLab4/26 データ収録システム有限会社 ADINSTRUMENTSJAPAN / 眼球運動のデータ収集に使用 ( 医療機器の為高額 ) 月 PTK15 EOG( 眼電図 ) キット 2 つ有限会社 ADINSTRUMENTSJAPAN / 眼球運動の測定に使用 値引き 30 6 月 MLX100 購入時セットアッフ サホ ートサーヒ ス有限会社 ADINSTRUMENTSJAPAN 消費税 消耗品費旅費 ( 調査目的も可 ) 合計

22 6. プロジェクトの背景と目的本プロジェクトの目的は, 様々な眼球運動を計測し, そのデータに基づいて各種の眼球運動モデルを作成することで, 容易にリアルな顔 CG アニメーションを生成することである. 種々の眼球運動 ( サッカード, 眼振など ) を生体電位記録システムによって計測し, それらを解析することで定式化し, 各々の眼球運動モデルを得る. 表情筋 眼筋構造を導入した顔 CG モデルの眼球に得られた眼球運動モデルを与えることで, 計測結果に基づいた, リアルな顔 CG アニメーションの生成が可能となると考える. プロジェクトの背景として以下の2 点が挙げられる. 1 眼球運動には数多くの種類があり, その挙動の特性は様々である 2 現在制作されている顔 CG アニメーションにおける眼球運動は手作業によって与えられているものが大多数である上記の事柄より, 計測に基づいた眼球運動モデルを用いることによって, よりリアルな顔 C Gアニメーションを容易に生成することが可能であると考える. 以下に各々の詳細を述べる. 1 眼球運動の種類とその特性眼球運動とは物体を正確に見るために網膜の中心で対象をとらえたり, 興味を引く物体に対してすばやく注視したりする眼球の運動のことである. 眼球運動は下記に記すように 5 つに分類される. 衝動性眼球運動 : 随意的に物を見ようとして注視点を変えるときにみられる急速な眼球運動で, 一般に saccade と呼ばれる. 滑動性 ( 追跡性 ) 眼球運動 : ゆっくりと移動する視覚対象を目で追従しているときに起こっている眼球運動. 前庭性眼球運動 : 頭部を回転する際に回転と逆方向へスムーズに動く眼球運動. 視運動性眼球運動 : 視界が回転する際に回転と逆方向へスムーズに動く眼球運動. 輻輳性眼球運動 :1 つの物体を両眼で注視するとき, 物体が近づくと両眼の内転 ( 輻輳 ) が, 遠のくと両眼の外転 ( 開散 ) が起こり, 像がぼけずに両眼視を可能にする眼球運動. 2 顔 CG アニメーションにおける眼球運動現在, 顔 CG のアニメーションは, テレビや映画, ゲームといったエンタテインメント業界を中心に広く利用されている. 顔表情の CG アニメーション生成の自動化, 簡単化を目的とした研究は数多くなされており, 徐々に制作現場の負担は軽減されつつある. しかしながら, 眼球運動に関してはこういった研究は珍しく, 現在もクリエイターの手作業で付与されている場合が大多数である. そのため, リアリティはクリエイターの技術や感性に依存するところが大きい. 12

23 7. 目的到達までの研究計画 Jun. Jul. Aug. Sep. Oct. Nov. Dec. Jan. Feb. Mar. 眼球運動の計測 予備計測 本計測 眼球運動のモデル化 調査 モデル化 顔 CG モデルの作成 モデルの作成と筋構造の導入 眼球運動の計測 : 予備計測, 本計測まず眼球運動の種類を調査し, それらの特徴をまとめる. 眼電位計による眼球運動の計測方法を習得し, 予備計測により実際に眼電位が計測できるかどうかを検証する. 眼球運動のモデル化のために各種の眼球運動中における眼電位を計測する. 眼球運動のモデル化 : 調査, モデル化現在多く研究がなされている歩行運動などの身体動作のモデルを調査し, これらのモデルにおけるモデル化の手法を参考にして眼球運動のモデル化を図る. 実際に計測された眼電位をモデル化に適応する方法は現在検討中である. 顔 CG モデルの作成 : モデルの作成と筋構造の導入学位論文では眼球運動と, 眼球周辺の皮膚形状変化の連動をつかさどる眼筋構造を顔モデルに導入することで, リアルな顔表情アニメーションを生成するというものである. 本プロジェクトではこの顔モデルに, 眼球運動より得られたデータを基に作成した眼球運動モデルを適用する. 学術論文では眼球運動の計測は想定していないが, 本プロジェクトの結果により, 顔モデルのリアリティの評価が可能である. よって学位論文と本プロジェクトには相乗効果があると考える. 13

24 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 PowerLab4/ 月 EOG ポッド 2 台 消耗品費 月 眼球運動計測機器消耗品一式 { 皿電極 NE-155A(12 本組 ), アダプターパック (2mm ピン-SAF5 パック ) 2 セット, 皮膚調整用ゲル, サージカルテープ 2 個, 購入時セットアップサポートサービス } 月 上記の備品 消耗品購入時消費税 月 電極用導体ペースト Ten20 CONDUCTIVE (3-pack) 66 2 月 眼球運動計測実験の被験者謝金 (8 人 ) 旅費 ( 調査目的も可 ) 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約本プロジェクトの目的は, 様々な眼球運動を計測し, そのデータに基づいて各種の眼球運動モデルを作成することで, 容易にリアルな顔 CG アニメーションを生成することである. 種々の眼球運動 ( サッカード, スムースパーシュートなど ) を生体電位記録システムによって計測し, その眼球運動のデータを取得できた. また, 表情筋 眼筋構造を導入した顔 CG モデルの眼球に, 得られた眼球運動のデータを与えることで, 計測結果に基づいた, リアルな顔 CG アニメーションを生成可能となった. スプリングセミナーやオープンキャンパスでは, 本プロジェクトで生成されたリアルな顔 CG アニメーションを大型のディスプレイで表示させ, デモンストレーション用にマウスによるインタラクティブな操作等を可能とした. その結果, スプリングセミナー参加者やオープンキャンパス来場者からは, 非常にリアルであるという意見を多数いただき, リアルな顔 CG アニメーションを生成する目的は達成されたといえる. 今後の課題は, 眼球運動のモデル化である. 今回は時間が足りなかったためできなかったが, 眼球運動をモデル化して今回のシステムに組み込めば, より簡易にリアルな顔 CG アニメーションの生成が可能になると考える. 14

25 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告プロジェクト名眼球運動計測に基づくリアルな顔 CG アニメーションプロジェクトリーダー今畑年雄メンバー原田甫 1. 概要 2. プロジェクトの進捗コンピュータグラフィックス (CG) による人体のリアル本プロジェクトでは目的達成のために大きく分けな表現は, 映画, テレビ, ゲーム等のエンタテイメントて 3 つの課題がある.1 顔 CG モデルの作成,2 眼業界はもとより, インタラクティブコンテンツ, ヒューマ球運動の計測,3 眼球運動のモデル化の 3 つのンインタラクション, 医療など多くの分野から望まれて課題のうち,1と2を達成できたので, その詳細をいる. 特に顔の表情に関しては CG の発展当初から, 以下に示す. 重要課題のひとつとして位置づけられ, 多くの研究 2.1 顔 CG モデルの作成がなされてきた [1]. 一方, 人間はコミュニケーション本プロジェクトでは従来の顔表情アニメーションで時において, 言語情報の他に, ノンバーバル情報を広く用いられている表情筋とは別に, 解剖学的に明用いることはよく知られており, とりわけ複雑なコミュらかにされている眼筋構造のモデル化を提案する. ニケーション時においては, ノンバーバル情報が相眼瞼の変形には従来研究で広く用いられている対的に重要な役割を果たすと推測できる. 代表的な Waters の線形筋モデルを拡張した眼筋モデルを使ノンバーバル情報として顔表情と視線方向がしばし用し, 眼球の回転と眼筋の伸縮を関連付け, 視線方ば挙げられる. 顔表情と視線方向には, 解剖学的見向に依存した表情変化を生成する. 眼筋モデルの地から関連性があることが示されている [2] が, 物理伸縮率を決定する筋肉パラメータの設定には計測的なモデル化がされておらず,CG による顔表情ので得られた眼瞼部特徴点の変位データを用いること研究においても, 両者の関連を反映するものは類がで, リアルな変形を実現する. ない. 実際の CG アニメーション制作において, 様々 顔 CG モデル作成に関する先行研究な顔表情アニメーションに関する研究結果が手法と顔表情アニメーションのための筋肉モデルに関すして用いられているが,CG キャラクタの視線方向とる研究は数多くなされてきており, その代表的なもの顔表情の同期は, 制作者の手作業によるところが大として Waters のモデルが挙げられる [3].Waters は, きく, その自動化によって作業時間の短縮が見込ま筋肉の収縮や弛緩によって引き起こされる皮膚表面れる. の移動を模擬することによって,3 次元ポリゴンモデ一方, 眼球運動には数多くの種類があり, その挙ルで示された皮膚表面のポリゴン頂点の移動方向動の特性は様々である. や, 移動量を算出する筋肉モデルを提案した. 筋肉本プロジェクトでは, 様々な眼球運動を計測し, そモデルは, 一端が骨に付着し, もう一端が皮膚に付のデータに基づいて各種の眼球運動モデルを作成着している線形の筋肉をモデル化した線形筋モデし, 顔 CG モデルに与えることで, 容易にリアルな顔ルと, 皮膚との接点を持たない環状の筋肉をモデル CG アニメーションを生成することを目的とする. 化した括約筋モデルがある. これらは現在において種々の眼球運動を生体電位記録システムによっも多くの顔表情生成の研究に応用されており, 汎用て計測し, それらを解析することで定式化し, 各々の性が高いことが認められる. しかしながら,Waters 眼球運動モデルを得る. 表情筋 眼筋構造を導入しの筋肉モデルは皮膚表面近くに存在する表情筋のた顔 CG モデルの眼球に, 得られた眼球運動モデみに焦点を当てており, 眼球運動や瞼の変形をつルを与えることで, 計測結果に基づいた, リアルな顔かさどる眼筋に対する言及はない.Waters の研究 CG アニメーションの生成を可能とする. を基礎とした数多くの顔表情関連研究においても同 15

26 様に, 眼筋に着目し, 眼球運動と皮膚構造変形の関連をモデル化したものは見られない. そうした中, 視線方向と顔表情の両者に注目した数少ない研究に Lee ら [4] の研究がある.Lee らは 2 者間の対面コミュニケーション時の顔表情と視線方向の計測を行うことで, 計測結果に基づいた眼球運動モデルを作成し, 顔表情のモーションとの合成によって顔アニメーションの生成を行った. モデルは高速な眼球運動であるサッカードの特性に焦点を当て, 心理学および認知科学の先行研究によって示された眼球運動に関する知見と一致するものであった. しかし,Lee らの研究は主に計測結果に根ざした実際の眼球運動モデルを構築することを主な目的としており, 顔表情のモーション計測はモデルの精度をあげるという補足的意味合いが強く, また顔表情と視線方向の同時計測は行われておらず, 厳密に両者の関係を示していない. また, これらとは異なるアプローチとして, 視線方向と眼瞼部形状変化の連動による効果の検証がなされている.Steptoe ら [5] は, 眼球回転に伴って眼球周辺の皮膚の形状を変化させるアバタを作成し, 被験者による評価を行った. 眼球運動と皮膚の形状変化に関連を与えることで, 被験者はより正確にアバタの視線方向を識別できることを確認し, アバタのリアリティにおけるその有用性を示した. しかしながら, アバタは既存の 3 次元 CG, モーションの作成ソフトを用いて制作されており, 眼球運動と皮膚形状の変化をモデル化したものではない 眼筋構造図 1 に眼筋構造 [2] の概略図を示す. 提案モデルで取り扱う眼筋は, 上直筋と上眼瞼挙筋, 下直筋, 下瞼板筋である. 上直筋と下直筋は, 両端が頭蓋と眼球の上部, 下部に付着し, 収縮と弛緩によって眼球の上下方向への回転を発生させる. 上眼瞼挙筋は, 頭蓋と上瞼板に付着しており, 上瞼の上下動の起因となる. 下瞼板筋は下直筋から派生して下瞼板に付着し, 下瞼を上下させる. また, これらの眼筋は動眼神経による支配を受け, 動眼神経上枝により上 直筋と上眼瞼挙筋, 動眼神経下枝によって下直筋と下瞼板筋の各組の伸縮が連動するように神経信号を受け取る. 上直筋, 下直筋は眼球回転を発生させ, 上眼瞼挙筋と下瞼板筋は上下瞼の変位を引き起こすため, これらの眼筋は眼球運動と眼瞼部の形状変化の連動をつかさどる. 図 2 に連動の概略を示す. 図 1 眼筋構造図 2 眼筋による眼球運動と眼瞼部の連動の仕組み図 3 眼球運動からの眼瞼部変位の推定 眼筋構造のモデル化前節, 図 2 で示した通り, 眼球運動と眼瞼部の連動は動眼神経による, 神経信号によって引き起こされる. よって入力を眼球の回転角としたとき, 図 3 に示す経緯で眼瞼部の変位量が推定される. しかしながら, 動眼神経の神経信号と眼筋筋力を正確に計測することは困難である. そこで本プロジェクトでは図 4 に示す通り, 眼球の回転角と眼瞼部変位の関連を筋肉パラメータに置き 16

27 換えることで眼筋構造をモデル化する. 筋肉パラメータの設定には眼球回転角と眼瞼部変位量の簡易的な計測結果を用いる. 筋肉パラメータに関しては で詳細を示す. 図 4: モデル化の概要 顔モデル使用する顔モデルは, 眼球モデルと皮膚モデルを個々に作成し, 独立している ( 図 5). 眼球モデルの回転運動に応じて皮膚モデルは変形する. 皮膚モデルの変形は, ポリゴンの頂点の変位によって表現する. 図 6 線形筋モデル (1) 上式におけるaは円周方向への影響強度を示すパラメータであり, (2) 図 5 顔モデル 筋肉モデル眼瞼部の変形には,Watersの筋肉モデルを眼筋構造に即した形で拡張した眼筋モデルを作成し, これを用いる. (a) 線形筋モデル Waters の線形筋モデルは多くの関連研究 [5] で使用されている顔表情アニメーションに適した簡易モデルで, 筋力によって顔モデルの各頂点の変位が関数によって与えられる図 6にその概念図を示す. 線形筋モデルは指定された影響範囲 ( 扇形 V1-PrPs 内 ) を持ち, 筋肉の両端点 (V1,V2) は固定される. 影響範囲内の任意の頂点 Pは与えられた関数により, V1 方向に移動する. 各頂点の変位 dは以下の式で与えられる. で表される.a2はV1V2とV1Pのなす角である. また,r は放射方向への影響強度を示すパラメータで, (3) で示される. つまり線形筋モデルによる頂点の変位は, 角 a2が小さいほど大きく, また頂点 Pが弧 PmPn に近いほど大きくなる. また, 領域 (Pm Pn Pr Ps) において, 変位の減衰が開始, 終了する. 線形筋モデルを決定するのに必要なパラメータは, 端点 V1,V2, の座標, 影響範囲 a1の角度,rを定める Rs,Rfですべて定数である. 頂点 Pが定まれば各パラメータa2,rが決定し, 未知であるのは筋肉パラメータ kのみである. つまり筋肉パラメータkの推定ができれば線形筋モデルによる各頂点の変位が確定する. 本研究において, 筋肉パラメータは眼球回転角と眼瞼部変位量を関連付けるパラメータであり, 眼球運 17

28 動に応じて変化し, 眼瞼部の変位を決定する. (b) 筋肉パラメータの決定筋肉パラメータは顔表面上の特徴点の変位を利用することで算出できる. 線形筋モデルにおける円周方向, 放射方向の影響強度を表すパラメータがそれぞれat,rtである特徴点 Ptの変位 dtを用いると, この際の筋肉パラメータktは式 1の変形から, (4) で算出できる. 筋肉パラメータが求められれば, 同一の線形筋モデルの影響範囲にあるすべての頂点の変位は一意に決定する. (c) 眼筋モデル本研究では前述の線形筋モデルを拡張した眼筋モデルを作成, 使用する. 線形筋モデルは表情筋での使用を前提としているため, 眼筋による変形を扱う本研究には適さない.2.1.2の図 1 で示したとおり, 眼瞼部には瞼板があり, これを筋肉が引くことで変形が起こる. よって, 影響範囲内にあるすべての頂点を一点方向に引く線形筋モデルを, 瞼板によって瞼部形状がある程度保持されるように拡張する. 図 7に眼筋モデルの概念図を示す. 図 7 眼筋モデル眼筋モデルは二重の楕円体構造の影響範囲を持ち, 任意の頂点の変位は以下の式で与えられる. (5) 上式におけるaは変位量を示すパラメータで, (6) で示される. つまり内側の楕円体内の頂点は一定の変位量を, 外側の楕円体内の頂点は外側の楕円体に近くなるにつれて変位が減衰する.vは頂点の変位方向を表すパラメータで, (7) で示される. 内側の楕円体内の頂点は一定の方向に変位し, 外側の楕円体内の頂点は外側の楕円体に近くなるにつれて変位方向が内側へ変化する. また,kは筋肉パラメータであり, その扱いは前述の線形筋モデルと同様である 眼球運動と眼瞼部の連動眼球運動と眼瞼部形状は, 眼球の回転角と前節で述べた筋肉パラメータの関連付けによって連動させる. 筋肉パラメータによって筋肉モデルの性質が決定, すなわち眼瞼部の変位が決まる. 筋肉パラメータの算出には眼球回転角と眼瞼部における特徴点変位量の計測によって得られた値を用いる 顔 CGモデルの作成結果顔モデルの上眼瞼部に眼筋モデル, 線形筋モデルを導入し, 眼球運動と同期させた顔モデル, 筋肉モデルを導入していない顔モデルを比較して示す ( 図 8). 視線方向は上方 15 である. 筋肉モデル導入の 2 つの顔モデル, 未導入の顔モデルの比較によって, 虹彩と上下眼瞼の位置関係から, 筋肉モデルの導入が顔表情の自然な表現に有効であることが確認された. 筋肉モデル未導入の顔モデルは不自然な印象である. また, 筋肉モデルを導入した 2 つの顔モデルの比較から, 線形筋モデルは一点方向に引く力によって頂点を変位させるという性質から, 眼瞼部のラインが変形していること 18

29 がわかる. 一方で提案した眼筋モデルを導入した顔 モデルは眼瞼部のラインが維持され, 自然な変形が なされている. 図 9 眼電位計 図 8 結果 ( 視線方向 : 上方 15 ) 2.2 眼球運動の計測 眼球運動について眼球運動とは物体を正確に見るために網膜の中心で対象をとらえたり, 興味を引く物体に対してすばやく注視したりする眼球の運動のことである. 代表的な眼球運動のうち, 実際に本プロジェクトで実装した 3 つの眼球運動を以下に示す. 1 衝動性眼球運動 (saccade): 注視点を変えるときなどに急速に発生する眼球運動 2 滑動性眼球運動 (smooth pursuit): ゆっくりと移動する対象を眼で追従するときに発生する眼球運動 3 視運動性眼振 (optokinetic nystagmus): 眼前で動く対象を追従し反復して発生する眼球運動 計測装置眼球運動は, 眼電位計 (EOG) を用いて計測する. 眼電位による計測は, 角膜側にプラス, 網膜側にマイナスの静止電位が存在していることを利用し, 眼球運動を行なわせることによってそれを記録する方法である. 図 9に本プロジェクトで購入した眼電位計 (PowerLab4/26) を示す. 図 10のように顔に電極を貼り, 計測した電位の変化から眼球運動を求める. 図 10 実験風景 計測方法図 10 で示すように 被験者に電極を貼り, 被験者に頭部を動かさずに移動する対象物を眼で追ってもらい その際の眼球運動を計測した ( 図 11). 図 11 計測方法 ( 赤い球 : 対象物 ) 計測機器の計測方法を習得するために行った予備実験と, 本実験を含め計 8 名の被験者の眼球運動を計測した. 計測した電位の変化から, キャリブレーションを行い, 眼球運動を求めた. 垂直方向 0[V] 水平方向 0[V] 図 12 眼球運動と波形の例 19

30 計測した眼球運動とその波形の例を図 12 に示す. この例では上を向いたときの眼球運動と波形を表している. 図中の垂直方向の波形のみが変化していることがわかる. 3. 成果顔モデルに眼球運動データを入れた実装結果を以下に示す. 図 13 実装結果 4. 今後の展開今後の課題は, 眼球運動のモデル化である. 眼球運動をモデル化して今回のシステムに組み込めば, より簡易にリアルな顔 CG アニメーションの生成が可能になると考える. また, 眼球運動の追加や, 顔モデルの品質向上, 瞬きなどの対応なども考えられる. 5. 自己評価時間の関係上, 眼球運動のモデル化ができなかったことが悔やまれる. しかし, 本プロジェクトで生成されたリアルな顔 CG アニメーションを見ていただいたスプリングセミナー参加者やオープンキャンパス来場者からは, 非常にリアルであるという意見を多数いただき, リアルな顔 CG アニメーションを生成するという目的は達成されたと考える. 1 年間という長い期間のプロジェクトを学生だけで遂行し, 模擬国際会議で英語でのプレゼンなど体験でき, このプロジェクトで得たものは非常に大きかった. 図 14 実装結果 ( マウス操作 ) デモンストレーション用にマウスによるインタラクティブな操作を可能とした. マウスをクリックするとその箇所に視線が向き, ドラックすると視線が追従するまた, キーボードを押すと以下の各眼球運動が表現される. 1 衝動性眼球運動 ( 縦 ),2 衝動性眼球運動 ( 横 ),3 衝動性眼球運動 ( 斜め ),4 滑動性眼球運動 ( 縦 ),5 滑動性眼球運動 ( 横 ),6 滑動性眼球運動 ( 斜め ),7 視運動性眼振 ( 縦 ),8 視運動性眼振 ( 横 ),9 全眼球運動 (1~9) 参考文献 [1] 竹原卓真, 野村理朗編 : 顔 研究の最前線, 北大路書房, (2004). [2] W. Kahle, W. Platzer, and H.Leonhardt, 越智淳三訳 : 解剖学アトラス, 文光堂, (1992). [3] K. Waters: A muscle model for animating three dimensional facial expression, ACM SIGGRAPH Computer Graphics, pp.17-24, (1987). [4] S. P. Lee, J. B. Badler, and N. I. Badler: Eyes Alive,ACM SIGGRAPH, pp , (2002). [5] 安善女主, 小沢慎治 : 顔画像からの筋肉パラメータの推定とそれに基づく他人の表情生成, 電子情報通信論文誌学会, pp , (2005). 20

31 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 Ubiquitous x Sports ~ 無線センサネットワークを利用したリアルタイムなスポーツ情報流通基盤の構築 ~ 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス インターネット工学講座 M 小島一允 kazumasa-k@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス インターネット工学講座 D 妙中雄三 yuzo-t@is.naist.jp インターネット工学講座 M 松山拓矢 takuya-m@is.naist.jp インターネット工学講座 M 房聖恵 sonhe-b@is.naist.jp 4. チューター 所属講座職名氏名 インターネット工学講座助教樫原茂 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 /6 ノート PC Apple MacBook Pro 1 台 消耗品費 /6 ノート PC HP 2133 Mini-Note PC 4 台 /6 体温センサ NTT AT SN-TC10 11 個 /6 心拍センサ NTT AT SN-NP12 11 個 /6 無線 LAN 基地局 ASUS WL-330gE 3 台 /6 ポータブル電源 DIATEC FPS440U 3 台 /6 三脚 SLIK スリック三脚 450G 7 5 台 /6 ノート PC スタンド EEA-VLT 台 /6 USB ハブ ELECOM U2H-Z7SBK 3 台 /6 USB カメラ Logicool QCAM-200R 6 台 旅費 ( 調査目的も可 ) 合計

32 6. プロジェクトの背景と目的私たちは今回のプロジェクトにおいて, スポーツ環境におけるユビキタス情報流通基盤の構築に挑戦する. これによって, スポーツ選手から観戦者にまで従来にない視点からのスポーツとの関わりや, より高度なトレーニングのための支援を可能にすることを目標とする. 現在のスポーツにおいても様々な情報支援が行われている. スポーツという状況では, 選手の移動や試合状況の推移に伴ってさまざまな情報が発生する. 現在でも, それらの情報のさまざまな利用が行われている. こうした情報利用には,(1) エンターテイメント用途としての観客への状況提示,(2) 従来スコアブックなどが担ってきたスポーツ内容の分析や反省のための状況記録,(3) 従来は取り扱えなかった情報を可視化して判断材料にするための選手への状況提示などが考えられる. スポーツにおける情報化の支援を考えると, スポーツという状況下で発生する情報の適切な取得から, 情報収集, そしてエラー訂正やリアルタイム性補償などの各種情報処理や, ときには選手側に情報を送信する通信路といった, 情報の流通基盤が必要になる. このような日常における情報処理支援技術として, 近年発達がめざましいのがユビキタス分野である. ユビキタス分野では, 各種センサの開発や利用, 無線通信を利用した伝送路の構築, センサ間ネットワークの構築技術, 収集情報の分析や再利用のアプリケーションなどの技術が研究開発されている. そこで, こうしたユビキタス技術を活用したスポーツ状況を把握し得る情報システムの構築に取り組む. スポーツ状況の観測基盤を利用することで, 一元的かつリアルタイムに選手全員の状態を把握することが可能となる. これにより, 監督, コーチなどの外部の観測者が外部からは観測が難しい選手の状態をリアルタイムに把握することが可能になるため, その時々の選手の状態に基づいて, 試合時には適切な戦略 戦術の策定を行うことが可能となり, トレーニング時には, 適切な運動負荷の決定を支援するために利用することもできる. さらに, 選手の体温, 発汗量, 心拍数などを計測することで, 熱中症などの発症を予防し, また, 心室細動などの急性症状への迅速な対処も可能となるなど, 選手の安全確保にも役立つ. エンターテイメントへの利用も考えられ, 例えば, スポーツ観戦者が選手の活動量, 疲労度などを把握しながら観戦を楽しむことができるようになる. 22

33 7. 目的到達までの研究計画 目的とする観測基盤を実現するためには, 無線センサネットワークによるセンサデータ収集基盤 と, 収集したデータの解析 可視化基盤が必要とされる. センサデータの収集基盤 本研究では無線センサネットワークによる複数の移動ノードからのリアルタイムなセンサデータの収集基盤の構築を最低限の目標とする. 本研究ではスポーツ時の選手の活動状態を把握するために加速度を用いる. 加速度をリアルタイムに把握するためには, 高頻度な通信が必要となる. また, 人間の歩行, 走行動作は加速度に関して周期性があることが知られており, 収集した加速度のデータを解析することで, 選手の活動状態を把握することができる. このように, 移動ノードからの高頻度なデータ収集という要件と, 選手の活動状態の把握可能性という点において, 加速度データの収集, 解析は私たちが目的とするシステムの要求項目を満たすものである. センサデータの解析 可視化基盤 センサデータを解析することにより高度な情報を得ることができる. そして, 解析結果を可視化することによって観測者に対して得られた情報を分かりやすく提示することができる. 本研究においてこの基盤は補助的な位置づけであり, 時間の制約上, 構築が不可能と判断すれば行わないものとする. 研究計画 プロジェクトはまずはじめにプロトタイプとなるシステムを構築し実験を行う. 次に, その結果から明らかになった問題点を考慮した上で, 本システムを構築し実験を行う.9 月中旬にある中間報告までにはプロトタイプの仕様に基づく実験を終了させ, その結果と今後の方針を発表する予定である. プロトタイプの仕様確定と実装(6 月 ~) 実験(8 月 ~) 中間報告の準備(9 月前半 ~) 中間報告(9 月 19 日,20 日 ) 本システムの仕様確定と実装(9 月後半 ~) 実験(12 月 ~) 報告書の作成, ポスターセッションの準備 (2 月後半 ~) ポスターセッション(3 月 ) 報告書提出(3 月 17 日 ) 23

34 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 /6 ノート PC Apple MacBook Air 1 台 /11 ノート PC Apple MacBook 1 台 消耗品費 /9 ノート PC Asus EeePC 901X 4 台 /7 無線 LAN 基地局 ASUS WL-330gE 3 台 /7 ポータブル電源 DIATEC FPS440U 3 台 /7 USB ハブ ELECOM U2H-Z7SBK 3 台 /9 GPS LEADTEX LR 9553D 2 台 /9 GPS i-blue 757 PRO 2 台 /10 Processing 解説書籍 2 冊 /11 ボール用ネット PUGG 4 1 個 /12 加速度センサ WAA 台 旅費 ( 調査目的も可 ) 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約本プロジェクトでは, 無線センサネットワークを利用したリアルタイムなスポーツ情報流通基盤の実現を目的として, 収集データの再利用性が高く, 柔軟性と規模拡張性を有したセンサデータの収集基盤の構築を行った. また, これからのスポーツの観測の方向性を示すことを目的として, スポーツで使用する道具にセンサを内蔵し, 新しいスポーツの観測方法の可能性を探った. センサデータの収集基盤に関しては, モジュールの独立性, データの蓄積性, そして, 通信のリアルタイム性の観点から設計と実装を行った. 実装では,TCP/IP,XML, リレーショナルデータベースなどを組み合わせたシステムを開発した. センサによるスポーツ観測に関しては, サッカーボールに加速度センサを内蔵し, データ計測と分析を行った. 構築した仕組みを用いて, デモンストレーション用のアプリケーションとして, 人間の運動や, ボールの運動状態に応じて映像や効果音が楽しめる体験型のアプリケーションを構築し, スプリングセミナーとオープンキャンパスにおいて披露した. 構築したアプリケーションは多くの来場者の方に概ね好評であった. 本プロジェクトでは, プロジェクト開始当初の目的と成果物の明確性が低く, 取り組む対象の明確化に時間を費やしてしまい, 充実した成果を残すことができなかった. しかし, 今後拡張が可能なセンサデータの収集基盤の基礎的な部分は構築できたと考えており, 今後はシステムの拡張を図っていきたいと思う. 24

35 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 Ubiquitous x Sports 無線センサネットワークを利用したリアルタイムなスポーツ情報流通基盤の構築 プロジェクトリーダ 小島一允 1 概要 背景と狙い パーのブーツにセンサを内蔵して飛行軌跡を計測し 近年 センサの小型化と軽量化が進展し 様々な たりされている[2] このように 今後は 選手や環 ものにセンサを組込んで観測することができるように 境だけでなく スポーツで用いられる道具にまでセン なってきた また 通信機能を有したセンサから無線 サが内蔵されて利用されていくものと思われる 通信によってセンサデータを収集する技術である無 今後 センサデータを用いる様々なアプリケーシ 線センサネットワークが実用化され 対象の状態をリ ョンが開発されることが予想される アプリケーション アルタイムに観測できるようになってきた あらゆるも の開発者の視点から見れば センサデータの収集 のに情報通信手段が組込まれ 利用される環境を 部分を意識することなく 開発を行えることが効率や 一般的にユビキタス環境と呼ぶが 無線センサネット コストの面から望ましい しかし 既存のセンサデー ワークはこうしたユビキタス環境を実現するためのひ タを用いるアプリケーションにおいては 対応するデ とつの手段である バイス プロトコル データの形式 そして システム スポーツでは 選手の移動や試合状況の推移に のアーキテクチャなどが特定の目的に特化しており 伴ってさまざまな情報が発生する このようなスポー また ローカルな環境での利用しか想定していない ツという対象に無線センサネットワークを適用するこ など 収集データの再利用性や システムの柔軟性 とによって 試合時やトレーニング時の選手全員や や規模拡張性が低く 結果として個々のアプリケー 環境などの状態を一元的かつリアルタイムに把握す ションの開発効率が低くなり 開発コストも増加すると ることが可能となる これにより 監督 コーチなどの いった問題がある これらの問題を背景として 現在 外部の観測者が外部からは観測が難しい選手の状 では収集データの再利用性を高め システムに柔軟 態をリアルタイムに把握することが可能になる その 性と規模拡張性を与えることが可能なセンサデータ ため その時々の選手の状態に基づいて 試合時 の収集基盤が求められている には適切な戦略 戦術の策定を行うことが可能となる そこで 我々はリアルタイムなスポーツ情報流通 また トレーニング時には 適切な運動負荷の決定 基盤を実現するためのひとつとして 収集データに を支援するために利用することもできる さらに 選 再利用性を高め システムに柔軟性と規模拡張性を 手の体温 発汗量 心拍数などを計測することで 与えることが可能なセンサデータの収集基盤の設計 熱中症などの発症を予防し また 心室細動などの と実装を試みた また これからのスポーツにおける 急性症状への迅速な対処も可能となるなど 選手の センサの使用法の方向性を簡易的に示すことを目 安全確保にも役立つ エンターテイメントへの利用も 的として スポーツで使用する道具にセンサを内蔵 考えられ 例えば スポーツ観戦者が選手の活動量 し 新しいスポーツの観測方法の可能性を探った 疲労度などを把握しながら観戦を楽しむことができる ようになる 2 プロジェクトの進捗 現在では アメリカンフットボールのヘルメットに内 本プロジェクトの目的は センサデータの収集基盤 蔵されたセンサを用いてタックル時の衝撃力を計測 を構築することと センサによるスポーツ観測の可能 して頭部の障害予想に役立てたり[1] スキージャン 性を簡易的に示すことの 2 つである 以下では そ 25

36 れぞれの目的に関してプロジェクトの報告をする. 2.1 センサデータの収集基盤の構築本節ではセンサデータの収集基盤の設計と実装に関して説明する 設計アプリケーション開発者がセンサデータの収集部分を意識せずに開発を行えるためには, データ収集部とデータ利用部がモジュールとして独立している必要がある. また, センサデータを利用するアプリケーションの実現に当たって, データの蓄積性とともに, 通信のリアルタイム性をシステムが備えていれば, あらゆる用途に対応することができる. 以上の要件を満たすことで, センサデータを用いるアプリケーションにおいて, 収集データに再利用性を高め, システムに柔軟性と規模拡張性を与えることが可能となり, アプリケーションの開発効率を高め, 開発コストを低減させることができると考える. そこで, 以下ではモジュールの独立性, データの蓄積性, 通信のリアルタイム性のそれぞれに関して詳細に説明する. (1) モジュールの独立性一般的に無線センサネットワークでは PAN (Personal Area Network) と呼ばれる比較的狭い範囲の通信が想定されており, 現在, 用途に応じて Bluetooth や ZigBee など複数の通信プロトコルが利用されている. ちなみに, 通信プロトコルとは通信の手順と, 通信データのフォーマットに関する規定のことである. アプリケーションが独自のプロトコルに直接的に対応づけられている場合, システムの柔軟性が失われる. そこで, データ収集部において, 独自プロトコルを標準的な単一のプロトコルに変換して, データ利用部に送信することで. データ利用部のシステムとしての汎用性を高めることができる. システムは複数のデータ収集端末からデータの入力を受け, 複数のユーザや, 複数のデータ利用端末によって利用されることが想定される. このような 他対他の関係において, データ収集端末とデータ利用端末が直接通信を行うと, 設定や管理上の困難が予想される. そこで, データ収集端末とデータ利用端末の間に別の端末 ( これをサーバとする ) を介在させることで, システムの規模拡張性を高めることができる. (2) データの蓄積性データの特徴や傾向を分析するためには, 過去のデータが蓄積されている必要がある. センサデータは特徴や傾向を分析することが有用なデータであるから, データの蓄積性が要求される. また, 蓄積されたデータのフォーマットが特定の用途に対応づけられて最適化されているとデータの再利用性が失われる. そこで, 蓄積されたデータのフォーマットは汎用的なものであることが要求される. (3) 通信のリアルタイム性アプリケーションでは, 計測されたセンサデータを即座に利用するケースが考えられる. その用途に対応するためには, 通信のリアルタイム性が要求される. そして, 基盤を複数のユーザで共有することを想定すると, ユーザごとに送信するデータをリアルタイムに決定する必要がある. また, データの種別ごとのようなより細かいレベルでのデータのフィルタリングも有用である. サーバが受け取ったデータをアプリケーションが即座に利用するための方法としては, 予め必要なデータをアプリケーションがサーバに要求し, サーバが送信の停止要求を受けるまで, 要求データがサーバに到着する度にアプリケーションに即座に送信し続ける方法が, 管理コストを低減させ, アプリケーションの要求に柔軟に対応できる方法であると考える. これを実現するサービスをリアルタイム送信サービスとする. スポーツにおいて, 運動状態を把握するためには高頻度な計測が要求される. 高頻度に計測されたデータをアプリケーションが即座に受け取る方法の 26

37 ひとつとして サーバに高頻度に必要なデータの要 6LoWPAN プロトコルで通信を行う SunSPOT と 求を出す方法が考えられる しかし 要求の度に必 Bluetooth プロトコルで通信を行う WAA-004 である 要なデータが変化することは考えにくく この方法で モジュールの独立性のための標準的な通信手順 はサーバ アプリケーション ネットワークともに無駄 としては TCP/IP を用いた データフォーマットとして な負荷の増加を招く 一方 サーバ側にデータの送 は XML を用いた TCP/IP XML ともに現在では標 信相手と必要なデータを予め登録しておく方法も考 準的な規格である XML では複数箇所にセンサを えられるが この方法では送信先の増加に比例して 装着して使用することを想定して グループ ID 個 管理コストが増大する 人 ID データの種別 データの取得時間 データ 図 1 にリアルタイム送信サービスのフローチャート センサの装着部位を定義した 図 3 に加速度データ を示した 登録のフェーズにおいて アプリケーショ の XML の例を示す ンはサーバに必要なデータを予め要求しておく ア データの蓄積性のために リレーショナルデータ プリケーションにおいてデータが必要になった時に ベースを利用した データベースのアプリケーション サーバに送信開始要求を出し 送信のフェーズが は SQLite を用いた 通信のリアルタイム性のための 開始する データが必要なくなった もしくは一時的 リアルタイム送信サービスは 現段階ではデータの に受け取りたくない時にアプリケーションは停止要求 種別のみでフィルタリングを行っている を出す 登録解除したい場合には 登録解除要求を サーバに送信すれば登録が解除される 以上の仕 組みによって サーバには動的にデータの送信相 手と必要なデータの種類が登録され データ受信時 に必要なデータがアプリケーションに対して送信さ れる 図 2 実装システムの全体像 図 1 リアルタイム送信サービスのフローチャート 実装 実装システムの全体像を図 2 に示す データ収集 端末とサーバ上のプログラムは Java を用いて実装し た データ収集端末において受信可能なセンサは 27

38 <?xml version='1.0'?> <ubiquitoussensor> <!-- グループ ID --> <groupid>iplab</groupid> <!-- 個人 ID --> <personalid>kojima</personalid> 図 4 サッカーボールへのセンサの内蔵方法 <!-- センサのデータ --> <!-- センサが内蔵されたサッカーボールを用いて ゴロ 一度に複数のデータを送信する場合 フライ バウンドというボールの単独の運動時と キッ data タグが複数連続 クされた時の計測を行った ちなみに キックでは選 --> 手の蹴り足に加速度センサを装着して 同時に計測 図 3 加速度データの XML の例 <data type='accel'> を行った 図 5 から図 8 に計測された加速度データ <!-- 観測時刻(UNIXTIME) --> 2.2 センサによるスポーツの観測 を例示する <time> </time> 従来 スポーツにおける観測は外部からカメラを 用いて行うことが一般的であった しかし 1 節でも <!-- 加速度 3 軸 --> 説明したように 近年ではスポーツで用いる道具も <x>0</x> 含めて観測対象にセンサを装着し 観測するように <y>0</y> なってきた そこで これからのスポーツにおけるセ <z>0</z> ンサの使用法の方向性を簡易的に示すことを目的と して スポーツで使用する道具にセンサを内蔵し <!-- 装着部位 --> 新しいスポーツの観測方法の可能性を探った <part>head</part> 本プロジェクトではサッカーボールに図 4 に示し 図 5 ゴロ時の加速度の例 </data> たように加速度センサを内蔵することを試みた サッ </ubiquitoussensor> カーボールは運動状態を知ることが有用な道具の ひとつであり また 大きさ的にセンサを内蔵するの に適していたことがサッカーボールを選んだ理由で ある トレーニングを例にとると トレーニングにおいては 行為とその結果を把握することが技能向上にとって 有用である サッカーにおいてはキックした時に ど の程度の大きさの力が ボールのどこに加わり その 結果 どのような回転と速さで どのような軌跡でボ 図 6 フライ時の加速度の例 ールが運動したのかを知ることが有用である しかし 詳細なボールの状態を外部からの観測によって捉 えることには限界がある 28

39 図 7 バウンド (2 回 ) 時の加速度の例 図 8 キック時の加速度の例 3. 成果 2008 年 11 月に行われたオープンキャンパスでは, 構築したセンサデータの収集基盤を用いて, センサによる体験型アプリケーションを構築し, 展示を行った. 同展示はユーザが自由に動かす加速度センサから得られた運動情報を, 映像と効果音に変換して提示するアプリケーションである. 同システムの構築にあたっては, センサデータの収集基盤とアプリケーションの開発を同時に進めたが, モジュールを分離していたため, 作業の分担が容易であり, 開発を効率的に行うことができた. 同システムでは 5 台の加速度センサから入力を受け,2 台のデータ利用端末にデータを送信する. センサには SunSPOT を用いた. また, データ収集端末には EeePC を, アプリケーションが稼動する端末には MacBook Air と MacBook Pro を用いた. アプリケーションの実装には Java と Processing を用いた. このアプリケーションは小中学生に好評であり, 一心不乱に加速度センサを振る姿が印象的だった. 加速度を示した図から明らかなように, ボールにおける加速度データは, 外力を受けた時に加速度のピークが得られる単純な波形をしており, 波形の特徴を見るだけでも, ボールの運動状態を推定することが可能である. また, キック時には蹴り足の加速度ピークと, ボールの加速度ピークがほぼ同時に観測されていることが分かる. ちなみに, 本プロジェクトのリーダである小島は図 8 に示した特徴を応用して, サッカーにおけるキック検出の課題に修士研究として取り組んだ [3]. 本プロジェクトで行った範囲では, ボールが外部から力を受けたタイミングと, その大きさ, そして, それらの情報からゴロ, フライ, バウンド程度の運動状態を推定することしかできないが, センサの内蔵方法を改良したり, 使用するセンサを増加させることにより, より詳細な運動状態を知ることが可能になり, トレーニングの高度化や, 試合の情報化に役立つものと考えられる. 図 年 11 月のオープンキャンパスの様子 2009 年 3 月に行われたスプリングセミナーとオープンキャンパスでは, センサデータの収集基盤とセンサによるスポーツ観測を組み合わせたデモ用のアプリケーションとして, サッカーボールの運動状態に応じて効果音が発生する仕組みを構築し, 展示を行った. このアプリケーションはサッカーボールに内蔵した加速度センサから得られたデータを用いてサッカーボールの運動状態を推定し, あらかじめそれぞれ 29

40 の運動状態に割り当てた効果音を鳴らすというものである. 加速度センサには WAA-004 を用いた. データ収集端末には MacBook Air を, アプリケーションが稼動する端末には MacBook を用いた. 多くの来場者の方に楽しんでもらえただけでなく, プロジェクトの目的を説明するための入り口として分かりやすい仕組みであったためか, その目的にも興味を持ってもらうことができた. 4. 今後の展開今回のプロジェクトでは加速度センサと GPS の 2 種類のセンサのみを用いてシステムの実装を行った. 今後は心拍センサや体温センサ ( 当初は購入する予定であったが, 在庫切れということで入手することができなかった ) など, センサデータの収集基盤がサポートするセンサの種別を追加して, システムの拡張を行いたい. また, これと並行して,XML の定義もより汎用的なものへと改良を図りたいと考えている. また, 現段階でのリアルタイム送信サービスはセンサデータの種別でしかフィルタリングしていない. 今後は複数のユーザが同時に基盤を利用できるように, グループ ID のレベルでのフィルタリングや, より細かなレベルでのフィルタリングに対応できるようにシステムの更新を図りたい. GPS のための基盤も整えたので, マラソンや自転車レースを想定し, 加速度と GPS 情報のリアルタイム表示も試みたい. 選手の位置や, 選手の状態をリアルタイムに観測きればそれだけで有益であり, 低コストに観測アプリケーションを構築することができる. サッカーボールに内蔵したセンサによる観測においては, 先に述べたように現段階ではボールが外部から力を受けたタイミングと, その大きさ, そして, それらの情報からゴロ, フライ, バウンド程度の推定しかできない. 今後は, センサの内蔵方法を改良し, 内蔵するセンサを増やして, より詳細な運動状態の観測を試みたい. 今回のプロジェクトでは, プロジェクトの目的と成果物の明確性が低いまま開始してしまった. そのため, そもそも何に取り組むのかということを考えることに多くの時間を費やしてしまい, スポーツが対象だからこそ必要になる要件にあまり踏込むことができなかった. また, 当初予定していたセンサデータの解析 可視化基盤まで構築することができなかった. 早期に目的を明確にした上でプロジェクトを遂行できれば, 質, 量ともにより充実した成果を残すことができたと考える. したがって, プロジェクトの開始に当たり目的を明確にすることが今後の課題のひとつである. しかし, 今回のプロジェクトを通じて今後拡張が可能なセンサデータの収集基盤の基礎的な部分は構築できたと考える. 今後は, 前節で説明した課題に取り組んでシステムの拡張を図り, また, 何らかの研究上の問題発見につながるよう努力していきたいと考える. 参考文献 [1] Willi D. Jones. Helmets sense the hard knocks. IEEE Spectrum, [2] Arja Liinamaa. Science meets the ski-jump. Motion - Sports in Finland 2/2006, [3] 小島一允. 無線センサネットワークを用いたサッカーにおけるキック検出手法の提案. 奈良先端科学技術大学院大学修士論文, 自己評価 30

41 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 耳を持ったロボットハンド NAIST-HANDⅡ Type M の開発 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス ロボティクス講座 M 祖父江厚志 atsushi-s@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス ロボティクス講座 D 丁明 min-d@is.naist.jp ロボティクス講座 D 池田篤俊 atsutoshi-i@is.naist.jp ロボティクス講座 M 小野泰寛 yasuhiro-o@is.naist.jp 4. チューター 所属講座職名氏名 ロボティクス講座助教栗田雄一 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 制御 PC 消耗品費 月センサ及び周辺回路部品 月ハンド加工費 ( 指 5 本分 15 万 ) 月ベース制作費 旅費 ( 調査目的も可 ) 月国際学会 (Robio) 旅費 1 名 月国内学会 (SI2008) 旅費 2 名 合計 1,500 31

42 6. プロジェクトの背景と目的近年, 介護や福祉などの分野でロボットの活躍が期待されており, 従来以上に器用で多目的に使用できるロボットハンドが求められている. 器用な物体操作が可能である点からこれまでに多くの多指ロボットハンドの研究 開発が行われてきた. 当研究室においても多指ハンド NAIST-HAND (Fig.1) を開発し, 初期滑りを検出して把持力を制御する研究や接触状態を用いた物体操作認識の研究などを行ってきた.NAIST-HANDはこれまでにNHKや日経産業新聞など数多くのメディアに取り上げられ, 様々なデモを行ってきた. 多指ハンドとしては十分な性能を有しているが, 人の手に比べて2 倍以上のサイズであるためロボットハンドとして大きいという印象があった. これらを踏まえて本プロジェクトでは人間の手と同等のサイズで, かつ指先に音を聞くためのマイクロフォンを搭載した NAIST-HANDⅡ Type M の開発を行う. 指先にマイクロフォンを付けることにより, 力センサでは計測できないコネクタのはめ込み音などが計測でき, はめ込みなどのタスクが成功したかどうかを判別することができる. ハンドにマイクロフォンを搭載し音を計測するアイデアはこれまで提案されておらず, まったく新しい試みである. また,NAIST-HANDⅡの開発によって Fig.1 NAIST-HAND NAIST 発のメカニカルなロボット研究成果をアピールしていきたい. 7. 目的到達までの研究計画 Fig.2に示すようにロボットハンドに搭載するマイクロフォンはスイッチを押したりコネクタをはめたりした時の環境音 ( 物体の発生する音 ) を計測し, マニピュレーションに利用する. マイクロフォンは指先に設置することによってノイズ ( 作業以外の音 ) が軽減することが期待できる. 指先で計測された音はフィルタ処理によってノイズを除去し,DPマッチングなどを用いて成功時の音と比較してタスクの成否を判断する. この時, 明らかに位置や力のデータが違っていた場合は別の干渉による音であると考えられるため作業をやり直す. 作業時の音が十分に取れない場合はセンサの設置位置を変更したり数を増やしたりする. Fig.2 マイクロフォンハンドイメージ図 実際は超小型マイクを指先に搭載する 32

43 Fig.3 試作機概観 Fig.4 試作機 3DCAD 図 Fig.5 MP 関節部分 NAIST-HANDⅡ Type M を開発するにあたって, ハンドのメカ部分の試作を行った (Fig.3 及びFig.4).NAIST-HANDⅡでは小型化のためにモータを腕部に配置し, 各関節はワイヤの引っ張りによって駆動する方法を取っており, 試作機によってワイヤで指を動かすところまでは確認できている. しかし, 試作機ではワイヤを関節部のプーリに巻きつけて摩擦のみでトルクを伝達していたため, 大きなトルクをかけると滑ってしまうという問題がある. これはワイヤと関節部の結合にネジなどを用いて固定してしまう対策が考えられるが, 指が小さいために構造を工夫する必要がある. また, 試作機では関節を曲げた時にワイヤが引っ掛かってしまう問題もある. 特に指の根本部分 (MP 間接部分 ) はワイヤが集中しているためにワイヤに引っ張り方向以外の負荷がかかりやすい (Fig.5). そこでMP 間接の機構を工夫して, ワイヤの取り回しを見直して改良する必要がある. いずれにしても試作機をベースにして改良を進めることで目的が達成できる. 現時点では人間の手の大きさでありながら, 従来のロボットハンドと同等の性能を確保するように設計を行っている. しかし, 上記のような機構的問題が解決できない場合は目標性能を落としたり, 一部サイズを大きくしたりするなどの変更が必要となる. 最終的にははめ込みの音を確認しながらレゴブロックを組み立てたり,PCにLANケーブルやUSB ケーブルを挿したり, プチプチをつぶすなどのデモを行う. ~スケジュール~ 33

44 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 なし 消耗品費 月 指試作一式 月 BOSE ヘッドフォン 9 10 月 ポテンショメータ 月 指部品 月 ハンド指一式 月 掌部品一式 月 コップ 月 センサ一式 月 歪みゲージ 月 BOSE ヘッドフォン 月 回転軸 旅費 ( 調査目的も可 ) なし 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約指先に音センサを搭載した人間サイズのロボットハンドを開発した. 前作の NAIST-HANDⅡ から改良を行い, 問題点を克服した. プーリを多用することで, ワイヤを滑らかに誘導できるようにした. また, ワイヤの確実な固定と指の小型化のために専用の関節駆動機構を考案した. 音情報の作業利用として, コップ内の水量の推定実験を行った. 推定方法は, ロボットハンドをコップにあて, その際に発生する音の特徴により推定を行う. まず, 試作したマイクロフォングリッパにより予備実験を行い, 水量推定に関しての理論をまとめた. そして, 開発した NAIST-HANDⅡTypeM を用いて水量推定実験を行い, コップ内の水量を推定することができた. ロボットハンドに関しては, 確実に動作を行える指機構を開発することができたものの, 動力伝達機構の不具合など, さらなる改善が必要な部分もあり, ロボットハンドシステムとしては不完全なものとなってしまったことが残念である. また, 音を聞くことにより水量推定が誤差数 ml でできた. しかし, この報告書で示した以外のコップやコップ以外の容器でも試したが, 同じような結果が得られるものとそうでないものがあり, 音のとり方や当て方等を検討する余地がある. オープンキャンパスでは, 水量推定のデモを行った. 来場者の方々に, 推定の精度に感心していただいたが, エンターテイメントとしての内容の薄さから, あまりインパクトを与えることができなくて残念だった. 34

45 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告プロジェクト名耳を持ったロボットハンド NAIST-HANDⅡ Type M の開発プロジェクトリーダ祖父江厚志 1. 概要 ( 背景と狙い ) じく音を聞くことにより身が締まっているな科学技術の急速な発展と共に, あらゆる分野どの重さや状態を推定することができ, 次の作に普及しつつあるロボット. ロボットの登場で, 業を行うための情報を取得している. このよう人間の生活はより便利なものになると期待さに作業中に発生する音は作業状態や結果に関れている. それらのロボットの中で, 今後の活する情報を含んでおり, 作業状態管理や達成状躍が期待されているヒューマノイドロボット況の把握に重要であると考えられる. また音情や複雑な組み立て作業を行うセル生産ロボッ報は非接触で注視しなくても得られる情報源トなどには, 人間と同様の作業を行うことのでである. しかし, マニピュレーションやハンドきるロボットハンドが必要とされ, 開発が行わを用いた作業におけるタスク達成や物体を把れている [1]. 持する等の情報源として, 前述のように力や視ロボットハンドが人間と同様の作業を行う覚, 触覚などの情報を用いた研究が多い.PC ためには, 机や工具など, 人間が日常で使用しの組立等の挿し込み動作や組み立てることがている道具などを扱うことのできる能力が必可能でも作業状態の把握が困難で, しっかりと要である. そのために, ロボットハンドは人間挿し込むことができたか, 組み立てることがでの手と同程度の機能と自由度を持つ多指構造きたかの判断は困難であると考えられる. が最適である. ロボットハンドのサイズが人間そこで本プロジェクトでは人間サイズのロの手よりも大きくなってしまうと, 物体把持やボットハンドの指先に音センサ ( マイクロフォ操りはできるものの, 人間環境への適応性や細ン ) をつけ, 作業で発せられる音情報を用いてかな物体操作が困難になる. そこで, ロボット物性の推定を行い, 作業が可能か検証する. ハンドのサイズは, 人間と手と同程度のサイズにする必要がある. 2. プロジェクトの進捗また, 現在グリッパやロボットハンドに関し 2.1.NAIST-HANDⅡTypeM て様々な形で研究が行われており, 様々な作業 概要を行うため, 力情報を用いて動く物体を適切な図 1に開発したロボットハンドと人間の手力で把持したり [2], 視覚情報を用いて物体のの大きさの比較を示す. ロボットハンドが人間位置や姿勢を把握して把持を行ったりするもの手と同様のサイズで実現できていることがのがある [3]. また触覚情報を用いて, 物体の確認できる. ロボットハンドのサイズは, 全長触覚表面を作り把持に利用したりするものが 200[mm], 全幅 78[mm] である. ある [4]. 我々人間も, 力や視覚, 触覚情報などにより, 駆動方式手を使い様々な作業を行っているが, 作業を行人間の手と同程度のサイズのロボットハンドう際, それらの情報だけでなく 作業中の音 を実現するためには, 指や掌の小型化が重要とを用いる場合がある. 例えばPC 組立でメモリなる. アクチュエータをハンド内部に搭載するを挿すときに カチッ と音が発生すると挿しと, 小型化が困難である. そこで, アクチュエ込まれたか確認できる. また, スイカなどをはータをハンド外部に搭載し, ワイヤにより指関 35

46 節の駆動を行う方式を採用した 指構造図 2に指構造を示す. ロボットハンドの各指は4 関節を有している. 図 3に示すように, 第 1リンクと第 2リンクは, 内部のリンクロッドにより, 機械的に連動する機構となっており, 独立な自由度は3である. このような構造とすることで, 人間の生理学的な指動作を模すことができ, 自由度の削減を行うことができた 関節駆動機構指関節を駆動させるためには, ワイヤを誘導するためのプーリ, ワイヤと指フレームを固定するための器具が必要である. ロボットハンドの指を人間サイズにするためには, それらの機構の小型化が必要である. そこで, プーリとワイヤ固定器具を単純に小型化するだけでなく, 両機構を一体構造とした機構を考案し, 小型化を行った. 図 4に関節駆動用プーリを示す. ワイヤをプーリの溝にはめ込み, ネジで蓋を締め付け, その摩擦力で固定を行う. このプーリを指フレームに接続することで, 各関節の駆動を行う. このような構造とすることで, ワイヤ誘導とワイヤ固定の能力を有したプーリを構成することができ, 指の小型化を行うことができた. 図 2. 指構造 図 3. 指先連動機構 図 1. ロボットハンドと人間の手の比較 図 4. 関節駆動用プーリの概要 36

47 2.2. 音情報の作業利用 概要音情報の作業利用として本プロジェクトではコップ内の水量の推定を行う. ロボットハンドやマニピュレータでコップを把持するとき, 水など液体が入っている場合, 入っている液体の量に応じて把持力を決める必要がある. しかし従来の力センサや滑りセンサによる方法では, 未知重量の物体に対して最適な把持力を決めるためには把持した状態で少しずつ把持力を変化させて滑りを検出するしかなく, 推定中に物体を滑り落とす危険がある. 視覚センサの場合, 中身が見えない状態では水量推定は難しい. そこでコップをはじき, 音を聞くことで水量推定を行いコップの把持に役立てる 実験方法本プロジェクトでは, ガラスコップ2 種類, 陶器 2 種類, 金属 1 種類に対して実験を行った. 使用したコップは図 5に示す. ガラスコップの 1つは円筒のコップ ( 以下 glass1) と少しくびれたコップ ( 以下 glass2) である. 特徴として glass1はただの円筒コップであるが,glass2は底近くがくびれており, くびれた部分まで水が入るようになっている. 陶器は大きさの違うものを使用し ( 小さい方を以下 ceramic1, 大きい方を以下 ceramic2), 金属はステンレス製 ( 以下 stainless) のものである. 実験を行う際, 図 6 のようなマイクロフォングリッパを利用して 図 6. マイクロフォングリッパ実験を行う. このグリッパは作業音を計測するため指先に音センサを取り付けたグリッパである. 実験の様子を図 7に示す. マイクロフォングリッパを使用してコップの飲み口部分にグリッパの指先を軽く当たる程度まで近づけ, 当て終えたら, グリッパを遠ざけるように動かし, コップをグリッパの指先ではじくように計測を行う. 各々のコップに0[ml] から20[ml] 刻みで満杯近くまで水を増やし, 刻みごとに各 10 回ずつ計測を行い, 得られたデータを基に音の特徴を考察する 実験結果実験を行った結果, どのコップも水量が増すにつれて音は低くなっていった. その変化の特徴を考察するために得られたデータに対しフーリエ変換を行ったところそれぞれのコップはある周波数にピークを持っていた. またこの 図 5. 実験で使用したコップ 図 7. 実験の様子 37

48 frequency ratio frequency ratio frequency[hz] ピークは水量が増すにつれて低い周波数にず れていくことが分かった. この特徴は実験を行 ったコップ全てに見ることができ, このピーク の下がりが水量増加につれて音が低くなると 考えられる. 次に, 実験で私用した全てのコッ プのピークの変化について図 8 に示す. 縦軸が 音データのピークの周波数, 横軸が水量で, 各々 10 回のピーク値の平均と標準偏差をプロ ットしてある. 各コップの同一水量の周波数の 標準偏差の最大は 18.38[Hz] と誤差は少ないこ とが分かった. またそれぞれ 0[ml] 時の周波数 が違うが, 水を増やすにつれ, 徐々に周波数が 減少しているのが確認された. 減り方は均一で はなく途中まではなだらかに減少しているが, ある水量になると減り方が大きくなっており, 周波数の減少に非線形性が確認できた water volume[ml] glass1 glass2 ceramic1 ceramic2 stainless る. まず (1) 式をそのまま今回実験を行った それぞれのコップに適用した. 各コップの最大 容量はそれぞれ,glass1,2 は 270[ml],250[ml], ceramic1,2 は 240[ml],320[ml],stainless は 280[ml] である. 比較した結果を図 9 に示す. Oku らの研究でガラスのワイングラスでの音 と水量の関係が, 実験を行った全てのコップに 似たような傾向が見られていたが, 本研究で使 用したコップでは, 完全には一致しなかった. そこで (1) 式を (2) 式のように拡張し, 最小 二乗法によりそれぞれのコップの未知数 b, c をそれぞれ求めることにする. また, パラメー タ推定にあたり少数のデータから推定できれ ば手間を省くことができるので, 各々コップの 最大容量の半分と最大値の水量の 2 点, 実験を 行った半分の回数点, 全部の点の 3 つ場合につ いて比較を行う R 1 c f br v (2) glass1 glass2 ceramic1 ceramic2 stainless estimate 図 8. 周波数ピークの変化これらの関係とおなじような結果が得られている研究としてOkuらの研究がある [4]. ワイングラスについて実験を行っており, 使用したグラスに関して, 形状に関わらず water volume ratio 図 9. 測定値と推定式 measured 2 points 6 points 12 points R f R f 現在の周波数空状態の周波数 Rv R v (1) という (1) 式で表すことができると述べてい 現在の水量満杯の水量 water volume ratio 図 10. 最小二乗法によるパラメータ推定 (glass1) 38

49 estimated water volume 結果例としてglass1の結果を図 10に示す. 結果から2 点で係数 b, cを求めた場合, 全データ点で求める場合と誤差がほとんど変わらない, または一番誤差が少なく最大で5.5[ml] であることを確認された. しかし, それぞれ20[ml] のところで, 誤差が非常に大きくなっている場合がある. これは周波数の微量な誤差が, 水量の誤差に大きな影響を与え, またその与えた影響 と真値が小さいことにより, 他と同じ値の誤差でも大きな誤差になってしまうためである. よって今回使用したコップについて, 空, 半分, 満杯時の周波数, 満杯時の水量が分かれば, 精度よく推定が可能であることが確認できる. 2.3.NAIST-HANDⅡTypeM による水量推定 実験概要以下のようなシステム構築を行い, NAIST-HANDⅡTypeMを用いて水量推定実験を行った. まず, 図 11に示すように, NAIST-HANDⅡTypeMの親指を用い, コップの飲み口部分に軽く当て, 音データを取得させる. 取得データに対しフーリエ変換を行う. 得られたフーリエ変換データからピークを見つけ出し, そのときの周波数を見つける. 探索範囲は (2) 式よりRf 値が1 b 値より小さくならないため, 空状態の周波数に1 b で乗算した値から空状態の周波数の値 ±100[Hz] までとする. 最後に見つけた周波数を基に水量を推定する. なお,Rf > 1となった場合,Rf = 1 として扱う. このシステムを使い,glass1について水量推定実験を行った. 推定式は, 各々コップの最大容量の半分と最大値の水量の2 点から得られる式を用いる 実験結果実験結果例としてglass1を図 12に示す. 縦軸が推定した水量, 横軸が真値の水量であり, 図 11 実験の様子 各点 10 回の平均と標準偏差をプロットしてい る. 真値との誤差の平均は最大で約 9.3[ml] であ った.60[ml] 以下のとき, 各々のコップで最大 の誤差が生じたがこれは微量の周波数誤差が 大きく影響したことが挙げられるが, 音情報に より十分に水量を推定できると言える 図 11.NAIST-HANDⅡTypeM による水量推定 3. 成果 (glass1) 本プロジェクトを通じて以下の成果が得ら れた. 人間サイズのロボットハンドを開発した. ロボットハンドの指の小型化のために, 専用 の関節駆動用プーリを開発した. 水の入ったコップの飲み口部分のはじいた音 を聞くことにより, 中身の水の量が精度よく推 定できることがわかり, グリッパやロボットハ ンドで把持時における有益な情報が得られる ことが分かった. true water volume true value measured 39

50 4. 今後の展開開発したロボットハンドは, 人間の手と同様のサイズであるが, 自由度に関しては, 人間よりも少ない. 現在 5 本の指は, 共通の機構を用いているため, 親指は掌に固定するという形をとっている. 人間の親指は, 掌側から手の側面側へあおり動作を行うことができる. この動きをロボットハンドに取り入れることで, さらに人間に近い動きを実現することが可能になると考えられる. また, 水量推定のみならず, コネクタを把持しながら挿入するなどの, ロボットハンド全体を使った実験を行っていきたいと考えている. 今後はセンサヒュージョンにより, 一連の作業ができるシステムを考えていきたい. 5. 自己評価ロボットハンドに関しては, 指機構の試作や構造解析による強度計算を行うことで, 確実に動作を行える指機構を開発することができた. しかし, 掌内部のワイヤの取り回し, 動力伝達機構の不具合など, 機構的にさらなる改善が必要な部分もある. また, 制御プログラムの製作も遅れており, ロボットハンドシステムとしては不完全なものとなってしまったことが残念である. また, 音を聞くことにより水量推定が誤差数 ml でできた. しかし, この報告書で示した以外のコップやコップ以外の容器でも試したが, 同じような結果が得られるものとそうでないものがあり, 音のとり方や当て方等を検討する余地がある. オープンキャンパスでは, 水量推定のデモを行った. 来場者の方々に, 推定の精度に感心していただいたが, エンターテイメントとしての内容の薄さから, あまりインパクトを与えることができなくて残念だった. 参考文献 [1]Tetsuya Mouri, Haruhisa Kawasaki, Keisuke Yoshikawa, Jun Takai and Satoshi Ito. Anthropomorphic Robot Hand:Gifu Hand II. Proccedings of International Conference on Control Automation and Systems, pp , [2] Nobuaki Nakazawa, Il-hwan Kim,,Ryojun Ikeura. Force Control of a Robot Gripper Based on Human Grasping Schemes. Control Engineering Practice, vol.9, No.7, pp , [3] Josef Pauli, Arne Schmidt, Gerald Sommer. Vision-based Integrated System for Object Inspection and Handling. Robotics and Autonomous Systems, vol.37, No.4, pp , [4] Peer A. Schmidt, Eric Mael, Rolf P. Wurtz. A Sensor for Dynamic Tactile Information with Applications in Human-robot Interaction and Object Exploration. Robotics and Autonomous Systems, vol.54, No.12, pp , [5] Keiichi Oku, Atsushi Yarai, Takuji Nakanishi. A New Tuning Method for Glass Harp Based on a Vibration Analysis that Uses a Finite Element Method. Journal of the Acoustical Society of Japan(E), Vol.21, No.2, pp ,

51 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案書 1. プロジェクト名 みえたらログイン 視覚型秘密分散共有を利用した相互認証システム 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 情報基礎学講座 M 野末愛子 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 情報基礎学講座 M 坂本一仁 大阪大学情報科学研究科 D3 橋本健二 4. チューター 所属講座職名氏名 アドレス 情報基礎学講座准教授楫勇一 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 パソコン ( 機種未定 ) 2 台 7 月 プリンタ キャノン LBP 台 月 学会参加費 ISITA,SCIS 学生参加 二名分 40 7 月ソフトウェア AdobeAvrobat 他 一式 消耗品費 5 7 月印刷用フィルム コクヨ VF-1 1 箱 25 7 月デジタルカメラ 三洋 DMX-CG9 1 台 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 ニュージーランド 学会発表 6 日間 ( 二名 ) (ISITA08,Auchland,NewZealand) 月 ( 開催地未定 ) 学会発表,4 日間 (2 名 ) (SCIS09, 開催場所は夏ごろに決定 ) 月 パソコン ( 機種未定 ) 2 台 合計 1,200 41

52 6. プロジェクトの背景と目的オンラインバンクの利用等, 日常生活に密着した重要な活動をネットワーク上で行う機会が増加し, フィッシング詐欺等の不正行為も, 従来にも増して深刻な問題となりつつある. 各種サービスを安全に実現するには, サービス提供者がユーザを正確に識別し, 同時にユーザがサービス提供者のサイトを間違いなく認識する, いわゆる相互認証の実現が不可欠である. これまで多くの相互認証方式が検討されているが, ワンタイムパスワード生成器や専用アプリケーションの利用をユーザに義務付ける等, 利便性に問題がある. 本プロジェクトでは, 視覚型秘密分散共有 (VSS) 技術を用いた相互認証方式を提案し, その試作を行う.VSS は秘密分散共有の一種であり, 透明フィルム等に印刷された 二枚の画像 ( シェア ) を重ねあわせると, シェア単体では認識できなかった画像が浮かび上がる技術である ( 右図 ). 提案方式では, シェアの一枚をユーザに事前配布し, もう一枚のシェアをユーザパソコンの画面等に表示する. 他人に成り + = VSS の実現例 すまそうとする不正者は画面に表示される画像から情報を読み取ることができず, また, フィッシングサイトは, ユーザにとって意味のあるシェアを提示できない. したがって, 正当なユーザおよび正当なサービス提供者の間でのみ意味のある画像情報が共有されることとなり, この共有情報を用いて相互認証を実現する. 本プロジェクトの成果は, 誰でも安全 安価にネットワーク上のサービスを享受できる社会の実現に, 大きく貢献するものである. 7. 目的到達までの研究計画 本プロジェクト遂行の過程は, 大きく3つのフェーズから構成される. 最初のフェーズは,VSS 関連技術の調査および相互認証に必要となるプロトコル, インタ フェイスの設計である. 相互認証の安全性を高めるためには, ユーザとサービス提供者との 間で共有される情報の量を増やすことが有効であると考えられる. 上例のような単純な白黒 画像の VSS では, 共有される情報量を増やすことは難しいため, たとえば画像のカラー化 等について検討する. 重ねるとカラー画像が浮かび上がる仕組みを実現するだけであれば問 題は比較的単純であるが, 最終的に得られる画像に関する情報が, 各シェアからは一切漏洩しない という情報理論的な安全性を兼ね備えた方式となると, 色の混色効果により定義される束構造上で, 代数的な符号化方式を検討する必要が生じると予想される. また, 相互認証を行う過程において, どのような情報 ( チャレンジ情報 ) をユーザに提示し, ユーザはそれに対してどのような反応 行動 ( レ R C K G M B Y スポンス ) を取るべきかかといった, プロトコル, インタフェイス面の設計も必要になる. 本プロジェクトの第 1 フェーズでは, これ W 色の束構造 ら問題の解決の糸口となる既存技術の調査を行う. プロジェクトの第 2 フェーズでは, 相互認証においてコアとなる部分について試作作業を 行う. 具体的には, ユーザ情報管理サブシステム, チャレンジレスポンス認証サブシステム, VSS シェア構成サブシステム等からなるシステムを構成し, ユーザ サービス提供者間のオ 42

53 フライン相互認証 ( ネットワークを介さない認証 ) を実現するシステムの作成を行う. 実現システムは, 基本的に Web ベースの技術により実現し, 一般的な Web ブラウザがあれば, 他に特別なソフトウェアやハードウェアがなくても利用可能なものとする.VSS を実現する基本的な技術については, 既にプロジェクトリーダの属する講座にノウハウの蓄積があるため, 本フェーズでは主として, 軽量で柔軟性の高いユーザインタフェイスの実現が技術的な中心課題になると予想される. プロジェクトの最終フェーズでは, 第 2 フェーズで試作したシステムに対してネットワーク機能を付加し, オンラインバンク等でも利用可能な, ネットワークを介した相互認証システムを実現する. 通信路としてインターネットの利用を想定した場合, 通信情報の盗聴や改ざん, 他人になりすましてのサーバアクセス,( フィッシング行為により ) ユーザが偽装サイトに誘導される等の問題が生じる可能性がある.SSL 等の既存技術と提案方式とを組み合わせ, 全体として安全性が確保されるよう十分な配慮を行いつつ, システムの設計 試作を行う. プロジェクトリーダの属する講座では, 過去にも Java ベースのセキュアネットワークアプリケーション開発の実績があり, 同資産を活用しつつ実装作業を進める予定である. 各フェーズにおける作業について, 最低限行うべき事項については, 既に講座で所有する技術の組合わせによってその多くを解決することが可能であり, その意味で, 研究全体の進捗に致命的な問題が生じる可能性はきわめて低い. 既存技術の組み合わせに対して, どれだけ独創的で斬新な機能拡張 改善ができるかが, 本プロジェクトの成果を大きく左右することになるため, プロジェクトメンバの得意分野を生かし, 各フェーズの作業を進めていく. 第 1 フェーズの関連技術調査を有効に進めるため, 当該分野における研究経験の長い大阪大学 博士後期課程 橋本を交えて, 網羅的なサーベイを行う. 第 2 フェーズのシステム開発においては, プログラミング実装の経験が比較的豊富な坂本が中心となって作業を行う. また, 第 3 フェーズでは, これまでネットワークセキュリティに関する研究にも携わってきた野末が統括を行うことを計画している. Bob = Aa + 画面表示用シェアを生成 送付 Aa 隠された情報を取得, 返送して認証を受けるシステムの全体概念図 43

54 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 0.0 なし 消耗品費 年 6 月開発用計算機 (Lenovo ThinkCentre A61 Tower 9120A37) 年 6 月周辺機器一式 ( ディスプレイ, デジタルカメラ他 ) 年 2 月書籍一式 年 3 月周辺機器一式 ( キーボード,IC レコーダ他 ) 年 3 月データ保存用メディア一式 ( 外付け HDD,microSD) 年 3 月ソフト一式 (NOD3 アンチウイルス他 ) 旅費 ( 調査目的も可 ) CSS2008( 沖縄 調査 4 日 2 名 ) ISITA2008 (Auckland Newzealand 調査 6 日 2 名 ) SCIS2009( 滋賀 発表 4 日 2 名 ) 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約情報リテラシの低いユーザをフィッシング詐欺から守ることを目的とし, 視覚型秘密分散共有技法 (Visual Secret Sharing Scheme,VSS) を利用した相互認証方式を提案 実装した. 本プロジェクトでは,VSS の利用に適した相互認証プロトコルを設計し, 同プロトコルに基づいて動作するシステムの試作を行った. 提案プロトコルは, 簡便な操作だけで必要最小限のセキュリティ機能を実現するものとなっており, ユーザは, 特別なソフトウェアの導入, 複雑な計算や操作等を行う必要がない.VSS の機能により, 実質的な復号処理は人間の目によって実現されるため, 認証に必要となる重要な情報を計算機に入力する必要がなく, 計算機がスパイウェア等に汚染されている場合でも安全性を確保することができる. 導入や利用が容易であり, 安全性が十分に保障されない環境でも必要最小限のセキュリティ機能を有することから, 提案手法は, 緊急性が要求されるフィッシング対策において, 即効性のある選択肢の一つになりうるものと考えられる. プロジェクトの進行に関しては, カラー VSS を用いた段階までシステム構築と安全性の検証を行う予定であったが, システム構築がスムーズに進まず, 白黒画像段階までの実装になってしまった点が残念であった. スプリングセミナーで行ったデモでは,VSS の 重ねあわせる という復号操作のユニークさが好評であった一方で, ディスプレイとフィルムを重ね合わせる操作部分において, 改善の必要性を感じた. 44

55 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 みえたらログイン 視覚型秘密分散共有を利用した相互認証システム プロジェクトリーダ 野末 愛子 プロジェクトメンバ 坂本 一仁 橋本 健二 1 概要 背景と狙い その具体的な実現法についても研究が進められて 1.1 フィッシング詐欺とその対策法 いる たとえば[4] など 多くの場合 安全な相互認 情報通信機器やサービスの低価格化が進み 簡 証を実現するためには ユーザ側にて暗号計算等 便で使いやすいシステムが普及したこともあり 専門 を実行する必要がある 通常 これら計算は ユー 的な技術知識を持たない利用者が各種のネットワー ザが操作するパソコン等の端末によって実行される クサービスを利用する機会が増えつつある それに こととなるが その実現にあたっては ユーザの使用 伴って 情報リテラシの低いユーザを狙った犯罪行 するパソコンに対する特別なソフトウェアやプラグイ 為も多発しており 特にフィッシング詐欺が深刻な社 ンの導入 あるいは既存のソフトウェアの機能を拡張 会問題となっている フィッシング詐欺とは WWW する必要等が生じる 一度導入作業を行えば その や E メイルによってユーザを不正サイトに誘導し パ 後の安全性は高いレベルで保証されることが期待さ スワードやクレジットカード番号等の個人情報を盗み れるが これらソフトウェアの導入や設定は 万人に 取ることを目的とした オンライン詐欺の一種である とって容易なものでない点に注意が必要である フィ 典型的な手口では 攻撃者は始めに 正規のウェブ ッシング詐欺の犠牲になる可能性が高いのは 情報 サイトを装った偽装ウェブサイトを準備しておき ユ リテラシの低いユーザが中心になると予想されるた ーザに対して電子メイルを送信する メイル文面で め 導入にあたっての技術的 心理的な障壁が高い は緊急事態等を訴え ユーザが偽装ウェブサイトに ことは 無視できない問題である さらに プラグイン アクセスするよう誘導する 騙されたユーザが偽装サ 等をダウンロードさせる方式では 攻撃者がプラグイ イトにてログイン情報等を入力すると 攻撃者はそれ ン自体を偽造し トロイの木馬的なプログラムをユー ら情報を入手することとなる ザに配布する危険性等も排除できない さらにもう一 近年 フィッシング詐欺では 偽装サイトへのアク 点 情報リテラシの低いユーザの計算機は 安全管 セスの一部を正規サイトにリダイレクトし より巧妙な 理が十分になされていない可能性がある点にも注意 偽装を図る高度な手口 ある種の中間一致攻撃 な が必要である 従来提案されている方式の多くでは どが登場しており フィッシング詐欺対策を ユーザ ユーザの計算機が コンピュータウィルスやスパイウ の経験や警戒だけに頼ることには限界があると考え ェア等によって汚染されていないことを前提としてい られる とくに 冒頭でも述べたとおり 近年は専門 るが 現実の世界では その前提条件が成り立たな 知識を持たないユーザ数が急速に拡大しており ユ いケースが多数発生していることが予想される 上 ーザ教育による不正根絶は 従来にも増して困難と 述した問題は 情報リテラシの低いユーザのみに発 なりつつある 情報リテラシの低いユーザをフィッシ 生するものでなく たとえば外出先の 管理体制が ング詐欺から守る技術的な仕組みを確立することは 十分でない計算機等を利用する場合にも起こりうる 重要な社会的課題であると考えられる 問題である フィッシング詐欺を防ぐためには ユーザがサー バ サービス提供者 を正しく識別し サーバがユー 1.2 本プロジェクトの狙いと位置づけ ザを正しく識別する いわゆる相互認証を実現する 本プロジェクトでは 情報リテラシの低いユーザをフ ことが重要となる 情報セキュリティの分野では これ ィッシング詐欺から守ることを目的とした 視覚型秘 までに様々な相互認証の仕組みが提案されており 密 分 散 共 有 技 法 (Visual Secret Sharing Scheme, 45

56 VSS)[2] を利用する相互認証方式を提案 試作す シェア A る VSS は 秘密分散共有と同様の機能を視覚的 シェア B 秘密画像 X に実現する技術である VSS の利用により たとえ ば 透明フィルム等に印刷された 2 枚のモザイク上 画像を重ね合わせると 隠された画像が浮き出るよう な仕組みを実現することができる(図 1) VSS が個 人認証に利用できることは比較的早い時期から多く 図 1 の研究者の知るところであるが たとえば [3] 等 著 シェア A 者らの知る限り VSS を利用した認証システムの実 B + + 用化研究は進められていない 実際 VSS が提供 + : することのできる暗号機能は限定されており 安全 VSS とは 重ねる シェア A B : : : 人間の目には 黒画素にみえる 性の観点からは VSS を利用するメリットはきわめて 小さいと考えられる その一方 特別なハードウェア 図 2 やソフトウェアを必要とせず 隠された情報をユーザ 重ねる : : 白画素にみえる VSS の仕組み VSS(視覚型秘密分散共有) が直接得ることのできる VSS の特性は 情報通信 VSS は 秘密分散共有技法 [1] と同種の機能を 技術の進んだ今日でもきわめてユニークなものであ 人間の視覚のみによって実現する方式である 本プ り 他に類をみないものである 本プロジェクトでは ロジェクトでは VSS を要素機能として利用するが そ VSS の機能を利用することで 情報リテラシの低い の具体的な実現法等については 本プロジェクトの ユーザをフィッシング詐欺から守るための最低限の 範疇外である ここでは 提案する機能要件を整理 機能を備えた相互認証方式を目指す 提案法は し 必要となる機能を有する VSS の一実現例を紹介 汎用性や安全性の観点からは類似手法に及ばない するにとどめる 本プロジェクトで利用する VSS は 点もあるが その導入にあたっての技術的 コスト的 いわゆる(t; n)閾値型 VSS において t = n = 2 となる ハードルがきわめて小さいという特徴を持つ 緊急 タイプのものである この方式では 一枚の秘密画 性が要求されるフィッシング対策において 即効性 像を二枚のシェアとして分散共有する いずれのシ のある選択肢の一つになりうるものと考えられる ェアからも それ一枚から元の秘密画像に関する情 報を得ることは情報理論的に困難であるが シェア 2 プロジェクトの進捗 を透明フィルム等に印刷して正確に二枚を重ね合わ 本プロジェクトは 2 つのフェーズで段階的に目的 せると 人間の視覚には 元の秘密画像が認識され 達成を試みた 第1フェーズでは VSS の機能を利 る仕組みとなっている これを実現する最も単純な 用した 情報リテラシの低いユーザでも利用可能な 方式は 元の画像の一個の画素を シェア上の複数 フィッシング対策相互認証プロトコルを提案する 第 画素によって表現する方式である たとえば [2]では 2フェーズでは 提案プロトコルを VSS や Web サー 元画像の一個の画素をシェア上の 2 2 の 4 個の画 バを用いて実装し 実際のオンラインバンキングを 素によって表現する手法が紹介されている この方 想定したシステムを試作することで 提案手法が実 式では 4 個のうち 2 個は黒 残り 2 個は白 無色透 際に使用可能であり 情報リテラシの低いユーザに 明 となるよう画素値が定められる たとえば図 1 の も容易に使用可能であることを示す まず始めに 左側の例のように 2 枚のシェアにおいて黒い画素 本プロジェクトで使用する VSS について説明する を相補的に配置すると その 2 枚のシェアを重ね合 わせた結果は 4 個の黒い画素となる 一方 同図右 46

57 側の例のように 2 枚のシェアにおいて黒い画素を 準備フェーズ 同じ位置に配置すると シェアを重ね合わせた結果 Alice 秘密鍵シェアkBを生成 は 2 個の黒画素と 2 個の白 透明 画素となる 画 Bob kb オフライン 認証フェーズ 認証要求 nonce n1 を生成 素サイズを十分小さくすると 人間の視覚には 左の n1 n1 を確認 四画素が黒の 2 2 画素が黒い一個の画素に 復号 E(kB, n1) 口座情報等参照 c 右の 二画素が黒 二画素が白の 2 2 画素が白 nonce n2 を生成 い一個の画素に認識されることとなる ここで着目す n2 確認, c を実行 E(kB, c n2) n2 操作コマンド送信 復号,コマンド確認 図 3 提案プロトコル べき点は 片方のシェアの画素パターンを見ただけ では 最終的に得られる元画像の画素が白になるか 黒になるか 識別できない点である すなわち シェ 鍵 kb を発行する この際 秘密鍵 kb は オフライン ア A の任意の画素パターンに対し シェア B は 最 等で安全に発行されるものとし kb の内容は Alice 終結果を白にする画素パターン 最終結果を黒に と Bob のみが知るところであると仮定する また 以 する画素パターンのいずれも取りうる可能性がある 下の通信プロトコルは SSL 等 ユーザが特別な操 すなわち 一枚のシェアに関する情報を得ただけで 作を意識せずに利用可能な暗号通信路において実 は 元画像に関する情報について何も得られない仕 行される 組み 情報理論的に安全な仕組み となっている こ 認証およびコマンド実行フェーズ の特徴は逆に 二枚のうち一枚のシェアが固定され 1 Bob は IDB を Alice に送信し 認証要求を行う たとしても もう一枚のシェアの画素パターンの構成 2 Alice はノンス 乱数 n1 を生成し kb を用いて暗 次第で 任意の元画像が表現できる仕組みを提供 号化した後に Bob に送信する している すなわち 任意のシェア A 任意の元画像 3 Bob は kb を用いて E(kB, n1)を復号し 取り出し I に対し 重ね合わせた結果が I と認識されるような た n1 を Alice に送信する Alice は n1 と n1 が等しい シェア B を構成することができる ことが確認できた場合 Bob を認証する 2.1. 相互認証プロトコル 4 Bob はコマンド c を Alice に送信する 相互認証プロトコルの提案 5 Alice は新たにノンス n2 を生成し c と共に kb を 以下では ユーザである Bob が サービス提供者 用いて暗号化し Bob に送信する サーバ である Alice に対し何らかのコマンドを発 Bob は kb を用いて受信データを復号する その結果 行するようなサービス形態を考える たとえばオンラ を c' n2' とする インバンキング等では 他口座への振込指示等がコ 6 Bob は c と c' が等しいことが確認できた場合 マンド内容に相当する このようなサービス形態では n2' を Alice に送信する Alice は n2 と n2'が等しいこ 偽造 改変されたコマンドがサーバによって受理され とが確認できた場合 c を実行する ることの防止が 最大の要件になる 図 3 に示す提 案プロトコルでは いわゆるチャレンジレスポンス認 本プロジェクトでは 上記プロトコルに対して(2, 2) 証の技術を応用することで 偽造 改変コマンドがサ しきい値型 VSS を暗号化手法として用いることで相 ーバに受理される事態を防止する 互認証を実現する すなわち Bob に発行される秘 密鍵は (2, 2)しきい値型 VSS を用いてランダムに作 準備 成したシェア これを 秘密鍵シェア と呼ぶ が果た サービス提供者である Alice は ユーザである Bob すことになる 暗号化対象であるオリジナル画像は に対して 各ユーザ唯一の識別子である IDB と秘密 可読文字で表現したものをビットマップデータとして 47

58 表現し 利用する これに対する暗号文は Bob に 準備フェーズ 事前に発行されている秘密鍵シェア kb とオリジナ Alice 秘密鍵シェアkBを生成 Eve kb オフライン 認証フェーズ ル画像に基づいて (2, 2)しきい値型 VSS を用いて nonce n1 を生成 新たに作成するシェア これを 暗号シェア と呼ぶ Bob 認証要求 復号 E(kB, n1) n1 を確認 n1 口座情報等参照 となる そして 復号操作は上記で発行された二枚 nonce n2 を生成 のシェアを重ね合わせ オリジナル画像を再生する 作業に該当することになる ce c E(kB, ce n2) kbを持たないため Eve は E(kB, ce n2)を 復号することができない 提案プロトコルの安全性について 操作コマンド送信 復号,コマンド確認 c ce であることに 気付く 図 4 中間一致攻撃に対する耐性 Bob の秘密鍵 kb を知らない攻撃者 Carol が Bob になりすましてコマンドを Alice に受理させること 操作情報を監視 記録するスパイウェアに汚染され は困難である Alice にコマンドを受理させるには n1 ている場合を考える この時 Alice が持つ一部の および n2 を入手する必要があるが 正当な kb を知 情報が漏洩する可能性がある一方で 本提案手法 らない Carol が 暗号化データである E(kB, n1) は VSS を用いることで復号処理を人間の視覚によっ E(kB, c n2)から n1 n2 を得ることはできない 一方 て実現することから ユーザが計算機に n2 の情報を Carol がフィッシングを目的として偽装サーバを設置 入力する前段階での攻撃察知が可能である これに し Alice になりすましたとしても Carol は Bob の秘 より ユーザ Bob にとって最も危惧すべき サービ 密鍵 kb を知らないため kb を用いて復号操作を行っ ス提供者 Alice が改ざん 偽造コマンドを受理する た場合に意味のあるデータを取り出せるような暗号 事態を回避することが可能である 本提案手法は データを生成することは困難である 以上より提案プ キーロガーのようなユーザの入力を監視 記録する ロトコルは 単純なりすまし攻撃に対して耐性を持つ ようなウィルスやスパイウェアに対しても 一定の安 ことがわかる 全性を確保することができる 次に 偽装サイトへのアクセスの一部を正当なサ 本提案手法では暗号を実現する手法として (2, 2) イトにリダイレクトし Bob の指示したコマンド c から ce しきい値型 VSS 用いる この場合 攻撃者によって へ コマンドの改変を図るような いわゆる中間一致 は 積極的にコマンド内容を改変するのではなく 攻撃を意図する攻撃者 Eve が存在する場合につ passive な攻撃 すなわち 盗聴内容からユーザの いて考える(図 4) kb を知らない Eve が E(kB, 秘密鍵シェアに関する情報を入手しようと試みる可 ce n2) を復号し n2 を取り出すことは困難である 能性がある 単純な盗聴攻撃に対しては SSL 等の Eve が これを Bob に復号させるようとする場合は 機能によって情報の漏洩を防止することができるが Bob が Alice に対して指示した c と復号の結果取 上述したような 一部アクセスを中継 リダイレクトす り出された ce が異なるため Bob は偽造コマンド るような攻撃者は サーバからユーザに提示される の実行を未然に防止することができる もし Eve が 情報等を参照することが可能になる場合がある そ 暗号データ中の ce の部分を任意に この場合 c の場合であっても 前節で述べたビットマップデータ に 置き換えることができれば Bob に n2 の入力を 上の操作 図 5 等により 攻撃が成功するリスクを低 促すようデータを偽造することも可能となるが kb を 減させることが可能になると考えられる 知らない Eve にこれは困難である 以上より フィッシ 提案手法は 偽造 改変コマンドの実行を防ぐと ング行為により ユーザの意図しないコマンド操作が いう最低限のフィッシング防止機能は実現している 実行されることがないことがわかる が 上記議論からもわかるとおり データの秘匿性を 次に Bob の計算機がキーロガー等 ユーザの 完全には実現していない たとえば口座残高やコマ 48

59 ンド内容等が不正者に露見する可能性もあるが こ れは VSS というきわめて機能の制限された技術で もって暗号機能を実現していることに伴う弊害といえ 図 5 ビットマップ画像に対する変形 る その意味で 提案法はセキュリティ的に万全な解 決法になっていない面もあり 既存のフィッシング対 策技術の完全な置き換えにはなり得ないといえる 提案法は 特別なソフトウェアやハードウェア 複雑 な操作等を一切必要としない代わりに フィッシング を防止する最低限の機能のみを提供するプロトコル と理解すべきであろう 2.2. 提案プロトコルの実装 図 6 ディスプレイ上で復号を行う様子 これまでの議論でも述べているとおり 提案手法 は情報リテラシの低いユーザの使用を前提とする方 が 計算機の画面サイズや解像度はユーザによって 式となっており 実装にあたっても その点に十分注 異なるため そのままでは ユーザが所有する鍵シ 意する必要がある 具体的には ユーザの所有する ェアの大きさと 画面に表示される暗号シェアの大き 計算機に対する特別なハードウェアの追加や ソフ さとが一致しなくなる この問題を解決するため 画 トウェア プラグインの導入を必要としないことを第一 面に表示された暗号シェアのサイズを調整する機能 の要件とする また 利用に当たって ユーザに煩 を Java アプレットにより実装し ユーザに提供す 雑な操作の実行を要求しないこと 計算機の設定情 る 報等をユーザが確認 参照 たとえば 現在使用して 図 6 に 試作したシステムにおける第 3 ステップ いるIPアドレスの確認や 証明書の信頼パスの確 の実行の様子を示す ランダムに生成される認証用 認 しなくても良いこと等を条件として考える 標準的 パスワードは 12AB の 4 文字であり 1 月 5 日 12 に市販されている家庭用パソコンを使用し 標準的 時 34 分に相当するタイムスタンプと一緒に暗号化さ な Web ブラウザの最低限の機能のみを利用してい れ ユーザ画面に表示される 本図に示すとおり ユ るのみであるため 実装次第では これを省略するこ ーザが鍵シェアを画面に重ね合わせることにより 暗 とは可能であると考えられる ユーザとサーバの通信 号シェアを復号してパスワードを得ることができる は SSL によって保護されるものとする システムに 復号可能な暗号シェアを生成できるのは正規のサ て使用する VSS の方式は 第 2 節にて例示した ーバのみであり 偽装サーバ等が タイムスタンプ部 元画像の一画素を 2 2 画素に分散共有する 白 分も含めて 意味のある暗号シェアを生成することは 黒画像のみに対応した (2,2) しきい値型 VSS とす できない ユーザは 暗号シェアが正しく表示される る 画像サイズや解像度を上げると 一枚の画像で ことでもって 正規サーバに接続していることを確認 表現できる情報量を増やすことができるが 鍵シェア することができる ここで注意すべきは 暗号を復号 をパソコン画面上で重ね合わせる際 微妙な位置調 しているのはユーザ本人であり ユーザの計算機で 整が必要になってしまう 本プロジェクトでは実験等 ない点である 情報リテラシの低いユーザが使用す を重ねた結果 画素の画像を平文画像と る計算機は安全管理が十分になされておらず コン し 鍵シェア 画素 を約 5cm 15cm の ピュータウィルス等への防御が十分でないケースも 大きさに印刷することとした サーバからユーザに送 考えられる フィッシングメイルに そのフィッシング られるシェアはブラウザ画面に表示されることになる 行為を手助けするコンピュータウィルス等が添付され 49

60 ていた場合, ユーザは, 攻撃者の制御下にある計算機端末を使用して偽装サイトにアクセスすることになる. このような状況下では, ユーザの計算機に復号操作やメッセージの正当性検査を行わせることは無意味であり, 不正行為の防止には役立たない. 提案手法では, ユーザ本人が, 暗号鍵シェアというオフライン情報を用いて暗号を制御する仕組みが実現されており, コンピュータウィルス等への耐性も, ある程度確保されている. 3. 成果本プロジェクトでは, 視覚型秘密分散共有を利用した相互認証方式を提案した. 提案手法は, ユーザに求められる技術的要求を最小限に抑えた上で, 必要十分な安全性を確保できる方式となっている. また, 提案手法の試作を行い, とくにその操作性について, 十分許容できるものにできることを確認した 節でも議論したが, 提案手法では, 情報秘匿の機能は完全には実現されない. その意味で, 提案手法は他のフィッシング対策技術の完全な置き換えではなく, 他の対策を取ることが技術的に困難なユーザに向けた代替手段であると理解するのが適切であるといえる. しかし, フィッシング詐欺等の被害に遭いやすいのは, まさに, そのような情報リテラシの低いユーザが中心であり, この層のユーザをターゲットとした対策法を講じることは, 現代社会において必要不可欠であると考えられる. 提案方式の導入にあたっては, 専用ソフトウェアやプラグインの導入作業等の特別な操作は必要ないため, コンピュータスキルの低いユーザであっても, 迅速に提案手法に移行することが可能となっている. フィッシング詐欺に対する即効性のある対策が求められている現在, この特性は特筆に価するといえるであろう. 学外発表, 及びスプリングセミナー参加報告 (1)SCSI2009 に参加 [5] し, セキュリティ要件や攻撃耐性に関して, 貴重なコメントを頂いた. (2) スプリングセミナーにてデモを行った.VSS の 重ねあわせる という復号操作のユニークさが好評 であった一方で, ディスプレイとフィルムを重ね合わせる操作部分において, 改善の必要性を感じた. 4. 今後の展開 VSS にはカラーやグレースケールのオリジナル画像を表現する拡張方式も提案されている. これを本提案方式に適用することで, 安全性の向上を図ることができると考えられるが, 本方式では VSS シェアの重ねあわせをディスプレイ上で行うため, 色の表現段階においての工夫が必要であると考えられる. 今後の課題としては, これらを実装を通して検討し, 安全性の向上を行うことがあげられる. 5. 自己評価当初, カラー VSS を用いた段階までシステム構築と安全性の検証を行う予定であったが, システム構築がスムーズに進まず, 白黒画像段階までの実装になってしまった点が残念であった. 本プロジェクトを通し, 予算を扱う難しさやプランニングの重要さを実感することが出来, 大変良い経験を得ることができた. 参考文献 [1] A. Shamir, How to Share a Secret, Communications of the ACM,Vol. 22,No. 11,pp , [2] M. Naor et al,visual Cryptography,Proceedings of EUROCRYPT 94,pp.1-12,1995. [3] 加藤他, 視覚復号型秘密分散法の拡張構成方式, 電子情報通信学会論文誌 A,J79-A,8,pp , [4] 鈴木他, フィッシング防止のための HTTP パスワード相互認証プロトコル,2008 年暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集,3C2-5,2008. [5] 野末他, 視覚型秘密分散共有を利用したフィッシング対策認証方式,2009 年暗号と情報セキュリティシンポジウム予稿集,4D1-3,

61 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1 プロジェクト名 ソーシャルネットワークサービスにおける友人推薦システムの開発 機械が結ぶ人の縁 2 プロジェクトリーダー 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 生命システム M2 林 浩平 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 生命システム M2 朝比奈 亜貴代 生命システム M2 日栄 悠 3 分担者 4 チューター 所属講座 職名 氏名 生命システム 准教授 作村 諭一 5 必要経費 金額(千円) 設備備品費 消耗品費 支出予定月 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 6月 サーバ Dell PowerEdge 1 個 システム稼動用 6 月 7 月 書籍 プログラムの教科書やSNS の情報収集 ネ ットワーク解析等に関わる専門書 応用を見越した 確率モデル 機械学習等に関わる書籍 旅費 調査目的も可 26 6月 サーバ用キーボード マウス 230 7月 ICML, UAI, COLT, MLG 同時開催 / ヘル シンキ 研究調査 7泊9日 1人 460 合計 12 月 NIPS カナダ 研究調査 6 泊 8 日 2人

62 6. プロジェクトの背景と目的 背景 mixi などに代表される WEB 上のコミュニティシステム いわゆるソーシャルネットワー図 1:SNS による友人ネットワーククサービス (SNS) が近年流行している なかでも SNS の一種である Twitter はその独自な文化から既存の SNS よりも気軽にコミュニティ形成が行えるため近年人気があり その利用者数は 2007 年 4 月の時点で約 94,000 人 (Java et al., 図 1:SNS による友人ネットワーク WEBKDD, 2007) と かなり大規模な社会ネットワークに発展している このようなサービスの興隆を受け 物理的制約を越えた友人関係を築ける可能性がこれまでに比べて大きく広がり ( 図 1) 周りにほとんどいないような同好の士を見つけることができるようになった 問題点 このように多数の利用者を擁する twitter だが 利用者の増加に伴い逆に同好の士の 発見が難しくなっているという問題点がある ネットワークが巨大すぎるため 自分と同じ趣向 を持つ利用者を人力で見つけるには時間コストが多くかかってしまうためだ 目的 以上のような問題点を避けて手軽に同好の士を見つけるため 本プロジェクトは SNS の一種である twitter 上にてユーザにあった同好の士を自動的に推薦する WEB システムを構築し 一般公開することを目的とする ( 図 2) 具体的には SNS 上における既存の人間関係のトポロジーをネットワーク解析図 2: 本システムによる友達の推薦し それをもとに友人候補のランキングを行い その中から今まで知らなかった同好の士を推薦する 目指す将来像 本システムは SNS に限らず 様々な社会ネットワークに対して応用可能である たとえば メールの送受信関係をネットワークと見立てれば メールのやり取りの構造や回数を解析することで友人の推薦を行うことができる また SNS からその人にあった異性を探し出す いわゆる出会い系ビジネスとしての展開も可能である 52

63 7. 目的到達までの研究計画 1. ネットワーク解析手法の選定 発案 6 月 ~8 月 twitter は 94,000 人ものユーザからなる巨大ネットワークなため 解析手法によっては実時間での運用が困難であることが予想される 既存のランキング手法としては PageRank HITS などが知られているが ネットワーク解析手法をサーベイし 特に購入予定のサーバで運用できるよう計算効率の良い手法を選定する また手法の調査と情報交換を兼ねて NIPS 等の国際 国内学会へ出席する 2. システムの設計 6 月 ~9 月 ( ア ) データ収集 :twitter ネットワークのクローリングを行うシステムの設計を行う ( イ ) インターフェース : 本システムは twitter 上の1ユーザとして稼動させる すなわち利用者は twitter 上で本システムになんらかのコメント ( 友達紹介して下さい など) を送ることにより本システムを利用する このようなユーザインターフェースを実現するため ユーザの負担とならないような通信プロトコルの策定を行う ( ウ ) 解析アルゴリズム :1. で選定した解析手法をもとに実際の計算アルゴリズムを導出する 計算コスト上の問題があれば適切な近似を入れて計算コストを下げる 3. システムのプロトタイプ公開 9 月模擬国際会議でデモを行うため システムのβ 版を学内限定で公開し 実際に使ってもらう 申請者は学位論文の研究にて 150 人からなるネットワーク解析を行った実績があるため 最悪でも 150 人程度の規模ならばシステムを稼動させることは保障できる 4. システムの一般公開 10 月 ~3 月 3. でのプロトタイプを改良し 全世界に向けて公開する これに伴い 10 万人規模のネッ トワークに対応するためこの期間を通じてシステムの安定化に向けた改良を続ける 53

64 8 決算の要約 金額(千円) 設備備品費 支出予定月 /01 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 Mac Pro セット MA970JA MB112JA MB110LLA 1個 消耗品費 / /01 旅費 調査目的も可 合計 ASUS EeePC S101 1 個 Keyboard MB110LLA 1個 /02 Apple Cinema Display M9177J/A 1 個 /03 書籍 /08 林 ヘルシンキ 研究調査 7日間 /01 日栄 カナダ 研究調査(NIPS) 7日間 965,611 9 プロジェクトの状況および自己評価の要約 本プロジェクトは7 研究計画における3 システムのプロトタイプ公開 までを執り行った 具体的には約 250 人に限定した環境下でシステムをテスト運用している段階である また 本プ ロジェクトの副産物として Twitter ネットワークにおけるユーザのクラスタリングや 各ユーザ 間における関係性の時間変化の可視化が行えた この結果は 本システムが友達推薦以外にも役 立つ可能性を示唆している 詳しくは結果報告書を参照されたい しかしながら 当初の最終目的であったシステムの一般公開は残念ながらプロジェクトの締め 切りに間に合わなかった この目標が達成できなかったのはさまざまな要因があるが 原因の第 一はスケジュールの遅れである 当初の研究計画ではシステムのプロトタイプ公開は 9 月に行わ れる予定であったが 実際にプロトタイプが完成したのは 2 月に入ってからであった このよう な結果を招いてしまったのはメンバーがプロジェクト運営に不慣れであったためである 今後の 教訓として プロジェクトのモチベーションを共有し メンバーの連絡は密に取り 打ち合わせ を定期的に行うことが大切であると学んだ スプリングセミナーは残念ながらメンバー全員が学会出張であったため ポスターのみの出展 となった そのため観客の意見を直接得ることのできる貴重な機会を失ってしまった 今後はこ のようなバッティングが起こらないよう気をつけたい 54

65 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 ソーシャルネットワークサービスにおける友人推薦システムの開発 機械が結ぶ人の縁 プロジェクトリーダー 林 1. 概要 背景と狙い 1.1 浩平 具体的には SNS 上における既存の人間関係 背景 のネットワークを解析し それをもとに友人候 mixi などに代表される WEB 上のコミュニテ 補のランキングを行い その中から今まで知ら ィシステム いわゆるソーシャルネットワーク なかった同好の士を推薦する サービス SNS が近年流行している なかで も SNS の一種である Twitter はその独自な文 化から既存の SNS よりも気軽にコミュニティ 形成が行えるため近年人気があり その利用者 数は 2007 年 4 月の時点で約 94,000 人 [1] と かなり大規模な社会ネットワークに発展して いる このようなサービスの興隆を受け 物理 図2 本システムによる友達の推薦 的制約を越えた友人関係を築ける可能性がこ れまでに比べて大きく広がり 図1 周りに 1.2 マイクロブロギングと Twitter ほとんどいないような同好の士を見つけるこ マイクロブロギングとは 日常的なトピックに とができるようになった ついての意見や挨拶など比較的短文のメッセ ージを複数のユーザ間で共有するサービスで ある マイクロブロギングは既存の SNS に比 べてユーザ間のメッセージ交換が活発である ことやメッセージの更新頻度が高いことに特 徴がある そのため 他の SNS よりもユーザ 間の親密さを推定しやすいと思われるため 本 プロジェクトの目的である 友達推薦の題材と 図1 SNS による友人ネットワーク して最適である このように多数の利用者を擁する Twitter 本プロジェクトがサービス展開の対象とする だが 利用者の増加に伴い逆に同好の士の発見 Twitter は最も有名なマイクロブロギングの が難しくなっているという問題がある それは 1 つである Twitter ではメッセージを つぶ ネットワークが巨大すぎるため 自分と同じ趣 やき と呼び 通常 つぶやき は Twitter の 向を持つ利用者を人力で見つけるには時間コ 全ユーザに向けて発言されるが メッセージの ストが多くかかってしまうためだ をつけることで特定の このような問題点を避けて手軽に同好の士 ユーザに向けて つぶや くことができる ま を見つけるため 本プロジェクトは SNS の た ユーザは他のユーザを フォロー するこ 一種である Twitter 上にてユーザにあった同 とができ そうすることで該当ユーザの つぶ 好の士を自動的に推薦する WEB システムを構 やき を購読できる フォロー はいわば友 築し 一般公開することを目的とする 図2 達関係を表すラベルとして捉えることができ 55

66 る 図3 図 4 行列因子化法に基づく確率モデル [3] Twitter のネットワーク構造を推定するた め 各ユーザの つぶやき を観測として用い る すなわち ある単位時間内における各ユー ザの つぶやき 回数を重みつきリンクとみな す 例えば 時刻 t においてユーザ A がユー ザ B に向けて 1 回 つぶや いたとすると A-B 間には重み'1'のリンクが その他のユー ザ間には重み'0'のリンクが存在するとする し 図3 Twitter のスクリーンショット かしながら フォロー 関係にないユーザに 2. プロジェクトの進捗 対するリンクは そのユーザにとって未知であ 2.1 ネットワーク構造の解析手法 ると考えられるため 欠測値として扱う 図5 本プロジェクトの目的である友達推薦はデー このようにして時系列で得られた つぶやき タマイニングの文脈で広く研究が行われてい ネットワークの隣接行列を観測として確率モ る協調フィルタリングの問題として捉えるこ デルのパラメータを推定する すなわち 観測 とができる [2] 協調フィルタリングを行うた できた重みつきリンクから欠測部分のリンク め様々な手法が提案されているが 本プロジェ を予測することにより未知のユーザとの関係 クトではより正確な推薦を行うため プロジェ 性を推定できる クトリーダーの林が提案した確率モデル [3] を用いる これは関係データ解析手法の1つで ある行列因子化法に基づき ネットワークの時 系列変化を捉えるモデルである 図4 これ を Twitter のネットワーク解析に応用するこ とにより 常に各ユーザの最新の状態を推定す ることが可能となる さらに ユーザの関係性 を推定する際 そのクラスタ構造も自然に推定 図5 つぶやき による隣接行列 されるため ネットワークの可視化といった 2.2 システムの設計 友達推薦以外の用途にも用いることができる 以上に述べた解析手法より推薦を WEB 上で行 詳細については文献 [3] を参照されたい うため 以下のシステムを設計した A) Twitter ネットワークのデータ収集 56

67 各ユーザの つぶやき を毎日収集するた め Twitter ネットワークのクローリング を行うシステム メッセージを取得するた めの API が公開されているため Twitter 運営者から API の使用許可を得 一日に 約 250 人分の つぶやき を収集するプ ログラムを 2008 年 12 月に完成させた B) ユーザインターフェース 本システムは Twitter 上の1ユーザとし て稼動させた これにより 利用者にとっ て親しみやすい形で本システムを使用す ることが可能となる 利用者は Twitter 上で本 システムにな んらかの コメント 友達紹介して下さい など を送るこ とにより本システムを利用することがで きる (2009 年 1 月完成) C) 解析アルゴリズム 2.1 で述べた解析手法をオープンソース の統計解析システム R [4] を用いて実装 した (2009 年 2 月完成) R は内部で LAPACK など高速な線形代数ライブラリ を用いているため 本手法のように大規模 な行列演算を必要とするプログラミング に向く これにより 約 250 人からなる つぶやき ネットワークの解析を標準的 なデスクトップマシンで約1日の計算時 間で処理することが可能となった 以上のシステムをまとめたプログラムチャー トを図6に示す 2.3 プロトタイプの公開 以上で設計したシステムを組み合わせ データ が取得できた約 250 人を対象とした友達推薦 図6 プログラムチャート システムを 2009 年 2 月に完成させた 現在 3. 利用者を研究室内に限定したクローズドテス 3.1 ボット型リアルタイム推薦システム トを実施中である ユーザの つぶやき の時系列変化を仮定した 成果 確率モデルにより Twitter ネットワーク上で の人間関係の時間変化を考慮した推薦が行え 57

68 る 新しい推薦システムを実装した 1 日ごと にネットワークからデータを取得するため 常 に最新のユーザの動向に基づく推薦が可能と なっている 図7 図8 Twitter ユーザのクラスタリング結果 図7 友達推薦システムの概念 3.2 Twitter ユーザのクラスタリング 本手法による解析の際 友達推薦の指標となる 各ユーザの関係性とともにユーザ間のクラス タ構造も推定できる 推薦システムではただ推 薦するばかりでなく システムの信頼性を高め る意味でその推薦理由を明示することが近年 求められているが 本システムの場合 友達推 薦の際にこのクラスタ構造を可視化できるた め 推薦理由の明示が可能となる 図8は 実際の Twitter ネットワークを解析 して得られたクラスタリング図である まず図 の中部 2 は各ユーザを 4 次元で捉えたと きの特徴を表している マゼンダが正の値を シアンが負の値を示す この特徴のパターンが 近いほどユーザの関係が近いと考えられる 図 の上部分 1 は各ユーザの特徴の二乗距離を 表した系統樹である この尺度にしたがいユー ザを階層型クラスタリングした たとえば 赤 で囲まれたユーザは青で囲まれたクラスタに 属すると考えられる 図9 可視化した Twitter ネットワーク 58

69 3.3 Twitter ネットワークの時間変動の可視化 Twitter 全体のユーザ約 10 万人を対象と 過去のネットワーク構造の変化をアニメーシ すると その計算は到底一日で終えること ョンで表示することができる これにより 各 ができない この問題を解決する 1 つの ユーザの交友関係が俯瞰でき 友達推薦以外の 方法としては 確率モデルの近似が挙げら 用途に用いることもできる 図9は実際の れる 例えばサンプリング法によりモデル Twitter ネットワークを可視化した例である を近似することで 計算自体を現実的な時 これは各時刻におけるユーザ間の つぶやき 間で行えるようにできる可能性がある た の関係を表している グラフ中の円が各ユーザ だし この場合パラメータの推定精度は低 に対応し 円の半径は次数の対数に比例してあ 下する る またユーザ間のエッジは つぶやき 関係 を表しており 線の太さは つぶやき 回数の 5. 対数に比例する また線の色は その つぶや 自己評価 本プロジェクトは当初の研究計画における き が属する最も強いクラスタを表している 3 システムのプロトタイプ公開 までを執り 行った 具体的には Twitter ネットワークを約 4. 今後の展開 250 人に限定した環境下でシステムをテスト 4.1 システムの一般公開 運用している段階である また 本プロジェク 現在 友達推薦システムはクローズドテスト段 トの副産物として Twitter ネットワークにお 階であり 本プロジェクトの最終目的である一 けるユーザのクラスタリングや 各ユーザ間に 般公開はまだ行えていない 全 Twitter ユーザ おける関係性の時間変化の可視化が行えた こ を対象としたシステムの一般公開は以下の点 の結果は 本システムが友達推薦以外にも役立 より実質的に実現困難となっている つ可能性を示唆している A) API 制限 しかしながら 当初の最終目的であったシス Twitter API は一日あたりの使用回数が テムの一般公開は残念ながらプロジェクトの 100 と決まっており この回数だと約 250 締め切りに間に合わなかった この目標が達成 人規模のデータ収集しか行えない 今年一 できなかったのはさまざまな要因があるが 原 月 我々はこの制限をゆるめてもらうよう 因の第一はスケジュールの遅れである 当初の Twitter 運営者に連絡を試みたが 未だ返 研究計画ではシステムのプロトタイプ公開は 事は返ってきてない 今後 本システムが 昨年 9 月に行われる予定であったが 実際にプ 一般公開できるためには API 制限の緩 ロトタイプが完成したのは今年 2 月に入って 和が必要であるため Twitter 運営者に対 からであった このような結果を招いてしまっ して強く働きかけていきたい たのはメンバーがプロジェクト運営に不慣れ B) 推定アルゴリズムの計算コスト であったためである 今後の教訓として プロ 本プロジェクトではその解析手法として ジェクトのモチベーションを共有し メンバー 2.1 で述べた確率モデルを用いたが この の連絡は密に取り 打ち合わせを定期的に行う 手法は計算コストが非常に高く 大規模な ことが大切であると学んだ ネットワークへの適用が難しい 現在の スプリングセミナーは残念ながらメンバー 250 人規模のネットワークであればその 全員が学会出張であったため ポスターのみの 解析は一日で行うことができるが 出展となった そのため観客の意見を直接得る 59

70 ことのできる貴重な機会を失ってしまった 今 後はこのようなバッティングが起こらないよ う気をつけたい メンバーの林 日栄については ICML NIPS な ど一流国際会議をプロジェクトの予算にて聴講し た 会議では最新の手法や動向が学べ 結果とし て本プロジェクトに関する知識のみならず 自身 の研究意欲の向上にもつながったといえる 参考文献 [1] Bernardo A. Huberman, Daniel M. Romero, and Fang Wu. Social networks that matter: Twitter under the microscope. Dec [2] Lise Getoor and Christopher P. Diehl. Link mining: a survey. SIGKDD Explor. Newsl., Vol. 7, No. 2, pp , Dec [3] 林浩平, 平山淳一郎, 石井信. 指数族行列因子化の状態空間モデルへの拡張と 時系列関係データ解析への応用. 信 学技 報, 第 108 巻 of NC , pp , 東京, 3 月 年 3 月 11 日(水) 3 月 13 日(金) 玉川大 学 (NC, MBE). [4] R Development Core Team. R: A Language and Environment for Statistical Computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. 60

71 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 振ってつながるかんたんセキュリティ TS 3 K (Tunable Security by Shaking and Sharing Key) 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 情報基礎学講座 M 南貴博 takahiro-m@is.naist.jp 3. 分担者所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 情報基礎学講座 M 坂本一仁 takahito-s@is.naist.jp 大阪大学大学院情報科学研 D3 前田久美子 k-maeda@ist.osaka-u.ac.jp 究科モハ イルコンヒ ューティンク 講座 4. チューター 所属講座 職名 氏名 情報基礎学講座 助教 中村嘉隆 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月測定用 PC 2 台 (Lenovo ThinkPad X300) 消耗品費 月研究用書籍 月データ解析用ソフトウェア 月小型無線加速度センサ 2 個 旅費 ( 調査目的も可 ) 月研究調査旅費本学 東京 1 泊 2 日 3 回 月国際会議調査 合計 1,400 61

72 6. プロジェクトの背景と目的電話番号の交換やゲームの通信対戦など, モバイル端末同士が一時的に構成した無線ネットワーク上で情報交換する機会が増えている. この一時的な無線通信は, 何時でも何処でも使用できるモバイル端末の特徴をより活かす機能であり, 今後様々なサービスでの利用が期待されている. しかし, 無線ネットワークは第三者によって傍受をされる可能性が高いため, 安全な通信には暗号技術等を用いた防衛手段が必要となる. またモバイル端末という点を考慮し, 計算コストの低い手法が望ましいとされている. 信頼できる相手と安全な無線通信を行うための一般的な方法は, ホストが生成したパスワード ( 暗号鍵 ) をクライアントがホストから聞き入力する方法や, ホスト側が接続してくるクライアントを毎回承認するといった方法などである. また通信範囲の狭い赤外線通信を用いるなどして, 傍受されるリスクを減らす方法も存在する. しかしどの方法も煩わしい操作を必要とするため, 一時的な通信では合理的な方法とはいえない. モバイル無線通信の更なる普及のためにも, 単純で快適な暗号通信チャンネルの確保操作が求められる. そこで我々が注目しているのは, 握手する や 並んで歩く といった両者が一緒に行う動作である. 両者が近くで似た動き, もしくは同じ動きをすることは, 密接な関係にあることを示す一つの目安となる. そして, こういった単純な動作からセキュリティの強化が可能であれば, 多くの人達に簡単かつ快適で安全な通信を提供することができる. 本研究では, 握手する や 並んで歩く といった動作を加速度センサによって計測し, そのデータから暗号鍵の生成を行うシステムの実装をする. 類似したセンサデータから鍵を生成するので同一鍵を生成できる確率が極めて高いと予想される. また様々なサービスにこの技術を応用するためにも, 動作の仕方 ( 接触状態での動作 や 動作の真似 など) やアプリケーションから要求される暗号強度によって鍵生成時の 感度 を変化させなければならない. そこで, 既存の分析手法の改良にも取り組む. ( 実装システムのイメージ図 ) 加速度 センサ センシング データ 鍵生成モジュール 暗号鍵 振動 鍵強度 設定 I/F アプリ ケーション 平文 暗号化 / 復号 モジュール 暗号文 キーワード : 軽量セキュリティ, 鍵生成, 鍵共有, 加速度センサ 7. 目的到達までの研究計画 62

73 本研究では加速度データから同一鍵を生成する手法に BSHL 法 [1] を採用する.BSHL 法 は,2 台のセンサを接触状態で同時に振ったとき,Bluetooth PIN code 相当 (13 ビット ) の 同一鍵を 80% 以上の確率で生成できる. しかし, センサが非接触状態では真似をしても同一 鍵の生成が困難であるため, この手法では応用の幅が狭い. そこで我々は,BSHL 法に 鍵 生成の容易さ と セキュリティ強度 のトレードオフ点を調整できるようにするため, 同 一鍵生成の感度を自在に変化できるよう改良を施していく. 我々は以下のような計画で本研究を行う. 1. 下図の応用例の状況を踏まえた加速度データ ( 握手, 真似, 歩行 ( 並び歩き, 二人三脚 )) の収集を行う. この際, 信頼関係のデータと非信頼関係のデータ両方の収集を行う で得られたデータから BSHL 法で鍵生成を行い, その性能を観測する. また, それぞ れの状況に最適な感度を探るために サンプル周波数, 主成分分析後の次元数, ク ラスタ数 ( 鍵を表すためのシンボル数 ), クラスタリング手法 などに変化を与える. 3. 提案手法に対し, 信頼対間の同一鍵生成確率 非信頼対間の誤生成確率 鍵ランダム 性 ( エントロピー ) 計算時間 の定量的評価を行う. 4. 最後に, 提案手法を用いた鍵生成モジュールによる鍵共有体験のシステムを実装する. 鍵生成の感度を変化させた際に期待される機能が実現できない場合は, 性能を向上させる ために, 簡単な誤り訂正符号を用いて予め定めた符号語のみを鍵として生成する等の改善を 試みる. ( 鍵生成条件と応用例 ) 鍵生成の容易さ 並んで歩く程度の動作で鍵生成 ( 提案手法 ) 歩きながら音楽の共有 相手の振り方を真似て鍵生成 ( 提案手法 ) 携帯ゲームの通信対戦 体の一部を接触させて鍵生成 ( 提案手法 ) 握手で名刺交換 (Fig 1) セキュリティ強度 接触状態での振動で鍵生成 (BSHL 法 ) 携帯のアドレス交換 (Fig 2) Fig 1 Fig 2 [1] Bichler, Stromberg, Huemer and Low, Key generation based on acceleration data of shaking processes, UbiComp 2007, LNCS 4717, pp ,

74 8 決算の要約 金額(千円) 支出予定月 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 設備備品費 平成 20 年 7 月 ノート PC (Lenovo ThinkPad X61s) 消耗品費 平成 20 年 7 月 小型無線加速度センサ 2 個 平成 20 年 9 月 Bluetooth トランシーバ 平成 20 年 11 月 書籍 平成 21 年 3 月 Microsoft Office 2007 Professional 平成 21 年 3 月 Windows Vista Ultimate 平成 21 年 3 月 加速度データ計測ソフト AccelLoggerCE 旅費 調査目的も可 平成 21 年 3 月 HP ipaq 台 平成 21 年 3 月 PC パーツ 各種 平成 20 年 10 月 IPSJ CSS2008(沖縄) 研究調査 4 日間 平成 20 年 11 月 IEEE Globecom2008(ニューオーリンズ) 研究調査 8 日間 合計 9 プロジェクトの状況および自己評価の要約 本プロジェクトは 加速度センサを用いて握手 真似 乗車 歩行から得られる加速度データ を基に鍵を生成する手法の提案をした 握手 乗車は周波数領域で加速度を解析し 鍵生成に成 功し 歩行は加速度の分散値を基に時間領域で解析を行い鍵生成に成功した 鍵生成を行う前に 従来法にはなかった類似度判定を行うことで鍵の誤生成回避にも成功した しかし 真似だけは 特徴を抽出することが難しく鍵生成には至れなかった また 本手法はモバイル端末上で応用す ることを考慮した鍵生成法であることから PDA 上で鍵生成法の実装し評価をしたかったが 鍵生成法の開発に時間が掛かりすぎてしまったため PDA 上での実装 評価をすることができ なかった スプリングセミナーやオープンキャンパスでは 堅いイメージを持たれがちなセキュリティと いう分野でありながらも 様々な方から 面白い という感想を頂き満足のいく結果となった しかし上記の通り 鍵生成法に時間が掛かりすぎたためにデモ用の GUI アプリケーションを作 り込むことができなかった為に見学者に誤解を与えることがあった PDA を用いたデモ等 直 感的に分かりやすいものを作ることができたなら もっと多く方に理解して頂けたかもしれな い 今後の課題としては PDA 上での実装 評価だけでなく 他のセンサ(ジャイロ 音圧等)と組 み合わせることで より正確な類似度測定をおこない それに応じた鍵生成法の検討することが考えら れる 64

75 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 振ってつながるかんたんセキュリティ TS3K (Tunable Security by Shaking and Sharing Key) プロジェクトリーダ 南 貴博 メンバ 坂本一仁 前田 久美子 1 概要 背景と狙い 変換を省きつつ false positive を低く抑える 提案 モバイル機器の性能向上により 同一人の複数 する鍵生成手法全体の流れを図 1 に示す 以下に 端末間や複数ユーザの端末間でアドホック通信が その概要を説明する 行うことが可能となってきている このようなアドホック (1) 加速度の時系列データを区間分割し各区間の 通信において 商業的価値の高いコンテンツや プ 分散値を取ることにより 動作の種類をある程度推 ライバシ保護の必要なライフログ等の送受信が 今 測できることが予備実験により確認できた そこで 後益々増大していくと予想される 現状のモバイル 加速度の時系列データ対に対し 区間ごとにそれら 機器では暗号鍵として固定もしくはキー入力による の分散の差分の絶対値を取り閾値と比較する 図 1 PIN コードの利用が一般的となっているが 鍵の設 の 1 つ目の条件判定 節) 閾値より大きけれ 定は一般ユーザには煩わしい そこで通信の安全 ば鍵生成は行わず 小さければ (2) に進む 性を損なわずに利便性を向上させるような手法とし (2) コヒーレンスは 周波数領域上の類似尺度であ て 加速度センサ等の計測情報を一種の端末固有 り 0 以上 1 以下の実数値を取り 各周波数の振 情報として利用することにより 安全に通信し合える 幅と位相の双方が類似しているほど 1 に近づく 端末同士であることの確認や 鍵事前配布のオーバ 加速度の時系列データを区間分割し各区間を周波 ヘッドの減少を目的とした試みがいくつかなされて 数変換する 次にそれらのコヒーレンス値を求めて いる[1][2][3][4] 平均値を取り 閾値と比較し 図 1 の 2 つ目の条件 しかし これらの手法を用いて鍵生成を行うために 判定 節 閾値より大きければ量子化 FFT は ユーザがセンサを 2 つ合わせて強く振る必要が を用いて比較的長い鍵を生成し 節 そうで あり 鍵生成の精度を上げることができる反面 端末 なければ分散値を用いて比較的短い鍵を生成する 台数が増加した場合や複数のユーザの端末を想定 節 した場合などでは利便性の面で問題がある そこで 本プロジェクトでは高い利便性を達成するために 握手をする 真似をする 並んで歩く 自動車に同 乗する といった日常的な動作から鍵生成を実現す るための 加速度センサに基づく新しい鍵生成法を 提案する 2 プロジェクトの進捗 2.1 提案手法 鍵生成において安全性の観点から重要なのは 類 図 1: 鍵生成の流れ 似 し な い 動 作 対 に 対 す る 共 通 鍵 の 生 成 false 2.2 類似度を利用した動作の分離 positive をできる限り避けることである そこで提案 分散値による分離 手法では 加速度の分散値とコヒーレンスという 2 加速度データは 動作によってその揺らぎが異な 種類の類似度を用いて データ対の分類を鍵生成 る 人間の歩行や走行などの揺らぎの大きい動作の に先立って行うことにより 無駄な周波数領域への 場合は 各行動によって加速度の分散値に違いが 65

76 現れる. そこで 2 つのセンサの加速度分散値を比 較し, その差分が小さい場合には類似した動作を, 差分が大きい場合は異なる動作をしているとみなし て, 異なる動作をしている場合を分離する コヒーレンスによる分離 分散値の差分では分離できないような似た動作 対に対し, コヒーレンスを用いて類似度の判定を行う [1][4]. まず, 各センサの取得した波形データを n 分割し, その k 番目のデータをそれぞれで表す. 次に a k (t), b k (t) に対して, hann 窓関数 h(t)={1-cos(2 t/ )/2} を用いた短時間フーリエ変換 (STFT) を行って, それぞれ各区間 k でのフーリエ 係数 x k (f)=fft(a k (t) h(t)),y k (f)=fft(a k (t) h(t)) を 得る. この x,y のクロスパワースペクトル P xy (f) は以 下のように表すことができる ( y k ( f ) は y k (f) の共役複 素数 ). 1 Pxy ( f ) n n 1 k 0 x ( f ) y k k ( f ) コヒーレンスは以下のように算出される. Cxy ( f ) P xx P ( f ) xy ( f ) P yy ( f ) しかし, 上記のように波形データ全体に対してコヒー レンス値を算出することは, 遅延の増大や追従性の 低下を意味する. そこで, データを区間分割し各区 間でのコヒーレンスを算出する. 本手法では, 図 2 のように, 二重窓を用いた区間コヒーレンスを計算す る. ここで,W out は区間コヒーレンスを算出する区間 を表し,W in は上述のコヒーレンス計算における n 分 割した区間 k のサイズを表す. また, 外側の窓, 内側 の窓の双方共に一定量のオーバーラップを設ける. 図 2: 区間コヒーレンスの計算 このようにして算出された各周波数帯のコヒーレンス 値について, 図 3 のように, 観測する周波数帯の最 大値 ( カットオフ周波数と呼ぶ ) までの平均を計算する. C xy 1 f c max c fmax C この C xy を x,y 間の類似度とする. 2.3 鍵生成 0 f c max を設定し, xy 図 3: 類似度の計算 ( f ) dt パワースペクトルからの鍵生成 f c max ここでは [4] で提案されている, 以下の量子化 FFT に基づいた方法を改良した鍵生成法を述べる. (1) 加速度の時系列データをサイズ W fft の小区間 ( 矩形窓 ) に分割する. ただし窓は一定の度合でオ ーバーラップさせる. (2) 窓内の波形に対して FFT を行い, 得られたパ ワースペクトルのうち周波数 q f max までを量子化する. 低周波が大きく, 以降は小さい値に密集するパワー スペクトル値の特徴を保存するため, 窓内の最大値 を基準とし, 量子バンド幅 ( 境界線幅 ) を指数的に増 加させる. 量子バンド数 ( 量子化後の値の種類 )b は経験的に b = 5 程度がよいとされており, 提案法 でも予備実験の結果,b = 5 を採用した. (3) 周波数毎の量子値を f q max まで連結して特徴ベク トルとし, 一方向ハッシュ化して交換する.c c 通り の特徴ベクトルの組み合わせのうち,1 つでも一致 するものがあればそれを鍵小片とする. (4) 鍵小片が得られた窓数の総窓数に対する割合 ( 一致率と呼ぶ ) が閾値以上であれば, 得られた鍵小 片を全て連結したものを共通鍵とする. そうでなけれ ば鍵生成は行わない. センサを重ねて振った場合を 鍵生成すべき状況, それ以外を鍵生成すべきでな い状況と仮定した場合, 上記の手法は優れた性能 を発揮する [3]. しかし, 日常的な動作の場合, 動作 66

77 量が微小なため性能が劣化してしまう. そこで提案法では量子化について以下の改良を行った. 加速度データの低周波には重力加速度等の不要成分が含まれる. そこで Haar wavelet 変換により直流成分と高周波成分を除去し, 窓関数 (hann 窓 ) を作用させてから FFT を行う. もはや低周波帯のスペクトルがほとんどないので, 量子化値が偏るのを防ぐために, 量子化幅は指数的にではなく等間隔に増大させる 分散値からの鍵生成分散値は同じ動作が続けば単調な値を示し, 歩行 停止や, 歩行 走行など動作が変化した場合は, 図 7 のように分散値も激しい変化を示す. 提案法はこの特徴に注目し, 走行中や歩行中のように同じ動作が連続して分散値の変化が単調になっている部分からは同じ量子値を生成する. また激しく変化した部分からは, その変化に見合った値を生成値は, 3.1 節の手法で求めたものを使用する.(1) 分散値の分割 : 分散値の時系列データをサイズ W qnt の小区間 ( 窓 ) に分割し一定の度合でオーバーラップさせる. また, 量子化に必要な境界線のベースラインを決定するために,W qnt より過去の分散値をサイズ W pre だけ抜き出す.(2) 境界線の設定 : W pre の平均値を基準に, 図 4 のように等間隔の境界線を引き,b 個の量子バンドを設ける. そして W qnt の平均値が含まれている境界に割り振られた値で量子化する. また量子バンド幅に変化を持たせて, 候補を複数生成する.(3) 特徴ベクトルの生成 : 求めた 2 センサの量子値を 1 桁ごとに比較した場合,W qnt での平均値に大きな差があったとしても, 候補値のどれか 1 つが偶然一致してしまうことがある (false positive). このようにして求めた量子値を順に L 個連結させた後に比較することで false positive の割合を低く抑えた. ただし連結するときは, 同一の境界幅で求めた量子値同士を連結させる ( よって連結後も候補数は c 個である ). この連結した L 個の量子値を特徴ベクトルとする.(4) 特徴ベクトルの比較 : 節の (3),(4) と同様に, 一致した特徴ベ クトルを連結して共通鍵とする. 図 4: 分散値量子化 2.4 実験環境本実験では, 動作の加速度計測に表 1 の 3 軸加速度センサ (Wireless-T 社製 WAA-001) を使用した. 加速度センサのサンプリング率は 50Hz に設定して各実験の計測を行った. センサは各被験者の胸と腰の 2 ヶ所に装着し, データ収集用のノート PC を 1 台持たせ, センサのデータを Bluetooth を用いて PC に送信する. 表 1: 加速度センサの仕様 2.5 実験動作とシナリオ (a) 歩行実験 : 3 人の被験者が 30 分程度, 同じルートを移動したときの加速度を計測した. 街中を移動している状況を再現するため, 計測中は歩行だけではなく, 走行や停止といった動作も行った. また被験者には以下のような役割を与えた. 先導 : ルートを好きなペースで移動する. 並行 : 先導役に並び歩調を合わせて移動する. 自由 : 誰の歩調も意識せず先導役の周辺 (20~ 30 メートル ) を自由に動き回る. このときに計測した加速度データを図 5 に示す. (b) 乗車実験 : 3 人の被験者が 2 台の自動車に分乗し,10 分程度のルートを移動したときの加速度を測定した. 被験者 3 人には以下のような役割を与えた. 先導 : ルートを先導する車に乗る. 同乗 : 先導役と同じ車に乗る. 67

78 追走 : 先導役が乗る車を追走する車に乗る. このときに計測した加速度データを図 6 に示す. 図 7: 分散値と差分 : 歩行 図 5: 加速度 : 歩行 図 8: 分散値と差分 : 乗車 図 6: 加速度 : 乗車 2.6 評価結果 分離について 実験では胸と腰の加速度データに特に大きな差は 見られなかった. そこで本稿では, 主に腰のセンサ から得られた加速度データを用いて提案法の検証 を行う. また各実験データは完全に時間同期されて いると仮定する. 分散値の差分による分離を行うた めに, 分散値を求める窓サイズを W var =150, 窓のオ ーバーラップを 50% に固定し, 分散値の差分の平 均を求めた. 各動作の分散値とその差分の例を図 7 および図 8 に示す. このときの差分の平均値は表 2 のような結果となった. また, コヒーレンスによる分離を行うために内窓と外 窓のサイズを W in =64,W out =512, 窓のオーバーラッ プを 50% に設定し, 比較する周波数帯の上限値 c f max を変化させてコヒーレンスの値を求めた. 各動 作のコヒーレンス平均値は表 3 のような結果となっ た. また, 歩行実験の先導と並行のコヒーレンス値の 時系列変化を図 9, 乗車実験の先導と同乗の場合 の時系列変化を図 10 に示す. 図 9: コヒーレンス : 歩行 図 10: コヒーレンス : 乗車 表 2: 分散値の差分平均値 68

79 表 3: コヒーレンスの平均値 表 6: 分散値量子化のパラメータ 表 4: パワースペクトル量子化のパラメータ 表 7: 分散値からの鍵生成 表 5: パワースペクトルからの鍵生成 鍵生成についてパワースペクトルを用いる手法の各パラメータを表 4 のように設定し, パワースペクトルからの鍵生成を行った. 分離によってこの鍵生成法が適用される主な動作は乗車であることを考慮し, 乗車における先導役と同乗役および先導役と追走役の 2 種類の組み合わせから鍵生成を行った. その結果生成された鍵の一致率と 1 分あたりに生成される平均鍵長は表 5 のようになった.1 桁あたりの量子値は 5 種類だが, 以降鍵長は 2 進数に換算して記述する. また, 分散値を用いる手法の各パラメータを表 6 のように設定し, 鍵生成を行った. 分離によってこの鍵生成法が適用される主な動作は歩行であることを考慮し, 歩行における先導役と並行役および先導役と自由役の 2 種類の組み合わせから鍵生成を行った. その結果生成された鍵の一致率と 1 分あたりに生成される平均鍵長は表 7 のようになった. 3. 成果 3.1 各手法の考察 分散による分離に関する考察 : 表 2 から, 歩行, 乗車いずれの場合も類似の動作とそれ以外をよく分離できていることが分かる. 追走の場合, 鍵共有を拒否するかどうかは状況や応用に依存する. 拒否としたい場合は閾値を低く設定すればよい. また, 静止している箇所の分散値差分が大きくなってしまっている. これは分散の対数値で差分を求めているため, 分散値の低い個所は小さな揺らぎも大きな差として判断してしまうのが原因である. コヒーレンスによる分離に関する考察 : 表 3 の通り, 歩行実験ではいずれの対もコヒーレンス値は小さく, 乗車実験では同乗と追走をよく分離している. また一人の被験者が装着した胸と腰のセンサ間のコヒーレンス値も平均 0.3 程度の低い値となることから, 一見よく似ているデータ対でも, 位相の違いによって確実に分離できることが分かった. パワースペクトルからの鍵生成に関する考察 : 表 5 の通り, 一致率は低いが比較的長い鍵を生成することに成功した. パラメータを表 6 の通りに設定したとき, 1 つの特徴ベクトルは約 28bit 相当であり, そのうち一致, 不一致に関わらず全乗車データから生成され 69

80 た特徴ベクトルは 種類 約 15bit となった 応じた鍵生成法を検討する また本手法がモバイル また 10 分の乗車データ 先導と同乗 から生成さ 端末上で実装できるか 複数端末間でリアルタイム れた全特徴ベクトルは 5395 種類 約 12bit で その に鍵生成できるかについても検証していきたい うち一致した特徴ベクトルは 85 個 約 6bit となった 5 自己評価 従って表 5 の Wftt=64 のとき 417 6/28=89.35bit 最も困難だと思われた歩行動作からの鍵生成法を となり 1 分間で約 90bit 相当の鍵を生成できるこ 確立することができた 手法にはまだ多くの問題が とになる 残っているが 今後の研究に繋げることができた ま 分散値からの鍵生成に関する考察 分散値から たスプリングセミナーやオープンキャンパスでは 内 の鍵生成は表 7 の通り 歩行の動作からは一致率の 部外部の様々な方から 面白い という感想を頂いた 非常に高い鍵を生成することに成功した 実験デー 堅いイメージになりがちなセキュリティという分野にお タでは Wqnt=5 が鍵長 一致率共に良い結果となっ いて 面白いという評価を頂けたことが今回のプロジ た しかし Wqnt を小さくとりすぎると 動作のずれか ェクトにおける最大の成果だと思っている ら受ける影響が大きくなることに注意が必要である 反省すべき点は 鍵生成法の開発に時間をかけて パラメータを表 6 及び Wqnt=5 r=0.5 に設定したと しまったために PDA 上の実装や GUI のデモ作成に き 1 つの特徴ベクトルは約 7bit 相当である このと あまり時間を掛けることができなかった点である 研 き全歩行データから生成される特徴ベクトルは 72 種 究背景を踏まえ PDA 上での実装も予定していたが 類 6bit であった また 30 分の歩行データ 先導 解析の際に重要となる各端末の時刻同期を完全に と並行)から生成された全特徴ベクトルは 26 種類 4 行うことができず断念してしまった またデモ用のG 5bit で そのうち一致して鍵の要素となった特徴 UIもなんとか公開できるものは作成できたが 洗練 ベクトルは 16 個 4bit となった よって動作変化に されたものを作ることはできなかった 富む箇所からは 1 分程度で 29 4/7 = 16 bit と 謝辞 PIN コード相当 13bit の鍵生成が可能である チューターを引き受け ご指導して下さった中村 3.2 特許出願 嘉隆助教 多くのご助言を賜りました関 浩之教授 日本電気株式会社と共同で特許出願 出願番 日本電気株式会社 仁野 裕一様 野田 潤様 そし 号 特願 するに至った てプロジェクトに取り組む私達に協力してくださった 4 今後の展開 全ての方に心よりお礼を申し上げます 参考文献 今回のプロジェクトでは加速度のみに注目し 加 速度センサを用いて研究を行ってきた 加速度から [1] J. Lester, B. Hannaford, and G. Borriello. Are You With Me? 類似動作をするユーザらの特徴を抽出し 鍵生成に - Using accelerometers to determine if two devices are carried by 成功する一方で 加速度から得られる情報にも限界 the same person. Pervasive2004, LNCS 3001,pp.33-50, があることが判明した 特に歩行動作から鍵生法で [2] Y. Huynh and B. Schiele. Analyzing features for activity は 加速度だけでは並んで歩いているのか追跡され recognition. soc-eusai 05, pp , ているのかを判別することが出来なかった また提案 [3] D. Bichler, G. Stromberg, M. Huemer, and M. Low. Key 段階では 相手の動作を真似ることで鍵生成する手 generation 法についても検討していたが 真似と真似でないも processes.ubicomp2007, LNCS 4717, pp , のの線引きが難しく 達成することが出来なかった [4] R. Mayrhofer and H. Gellersen. Shake well before use: そこで今後は他のセンサ ジャイロ 音圧等 を組み Authentication based on accelerometer data. Pervasive2007, LNCS 合わせてより正確な類似度測定をおこない それに 4480, pp , based on acceleration data of shaking

81 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 SPICE Project: Development of Super high-speed Photonic Interface for Computer Equipment with WDM Technology 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス Systems Science Lab M Oulad Nassar Badr 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス Systems Science Lab M Harumasa Kinoshita Systems Science Lab M Izumi Koyanagi 4. チューター 所属講座職名氏名 アドレス Systems Science Lab Assistant Professor Takuji Tachibana 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 300 July 2008 Optical coupler unit CWDM-CP July 2008 OS Red Hat Enterprise Linux July 2008 Server HP ML310G4 1 消耗品費 80 July 2008 LAN card HP NC360T PCI Dual Port 2 90 July 2008 Optical fiber PC2-S-SC/SC-10M July 2008 Equipment for optical fiber experiment Sept July 2008 Books about optical networking Media converter FIB1-1000ES 4 旅費 ( 調査目的も可 ) 50 Oct IEICE PN conference Tokyo 2 合計 1,200 71

82 6. プロジェクトの背景と目的 Currently, wavelength division multiplexing (WDM) technology has been utilized in backbone networks worldwide. By using WDM technology, multiple wavelengths can be multiplexed into one fiber and ultra-fast data transmission (>1 Tbps) can be realized without additional optical fibers. Recently, it is expected that WDM passive optical network (WDM-pon) is used for access networks instead of B-PON, which is used in B フレッツ (NTT 西日本 ) etc By using WDM-pon, each user will be able to freely use one wavelength (>1 Gbps) at any time. Nevertheless, in the future, users will require faster data transmission by using more wavelengths to utilize next-generation IP TV comfortably as long as the cost is out of consideration. In this project, we develop a super high-speed data-transmission device which can provide WDM technology easily for users (see Fig. 1). This device can be attached in and removed from the computer at will. In this device, the number of wavelengths used for data transmission can change dynamically depending on the data size. By using SPICE device, users can use ultra-high speed optical access networks. We will build the experimental system with streaming video, and perform the demonstration of SPICE device. VOICE device Add-in # of used wavelengths changes dynamically Optical fiber WDM Fig. 1: SPICE DEVICE WDM networks All-optical WDM-based data transmission can be provided between end users 7. 目的到達までの研究計画 In this project, each member will contribute to the SPICE project on the following schedule to complete this project successfully. 1. Investigation of how to utilize optical devices [June 08 July 08] We obtain knowledge about the utilization of optical devices from manuals. It is essential to have a good understanding of the optical characteristics in order to handle efficiently the optical devices. 2. Build-up of the WDM network [Aug. 08 Sep. 08] We will construct a small-scale WDM network with the devices we will purchase. 3. Development of the SPICE device [Oct. 08 Jan. 09] We will develop a SPICE device by which a computer can use multiple wavelengths. Because the cost of each optical device is very high, the number of available wavelengths will be limited (at most four wavelengths). 4. Implementation of Load Balancing Function in SPICE device [Nov. 08 Feb. 09] We will implement a load balancing function which can change the number of used wavelengths dynamically, depending on the file size in the SPICE device. If this function is difficult, we will implement it in the computer as an alternative solution. 5. Development of Streaming Software, Experiment, and Refinement [Feb. 09 Mar. 09] We will construct the experimental system with streaming video, and perform the demonstration of the SPICE device. Then, we will refine our device if necessary. 72

83 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 300 July 2008 Optical coupler unit CWDM-CP July 2008 OS Red Hat Enterprise Linux July 2008 Server HP ML310G4 1 消耗品費 80 July 2008 LAN card HP NC360T PCI Dual Port 2 90 July 2008 Optical fiber PC2-S-SC/SC-10M July 2008 Equipment for optical fiber experiment Sept July 2008 Books about optical networking Media converter FIB1-1000ES 4 旅費 ( 調査目的も可 ) 合計 1, プロジェクトの状況および自己評価の要約 In this project, we develop a super high-speed data-transmission device which can provide WDM technology easily for users that we call SPICE device. In this project, we followed steps one and two as described in section seven. In other words we performed some documentation and investigation about the characteristics, functionalities and usage of the optical devices that we purchased. After getting a strong background in step one, we constructed a small-scale WDM network. Here we connected the purchased devices and also using two terminals as end users. Then, we are working on two experimental systems in order to demonstrate the efficiency and usability of our SPICE device. These two experimental systems will be explained in the following sections. 73

84 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 SPICE Project: Development of Super high-speed Photonic Interface for Computer Equipment with WDM Technology プロジェクトリーダ Badr Oulad Nassar 1 Background supports well bandwidth-hungry applications such as High-Definition TV (HDTV), division Voice-over-IP etc There are many types of multiplexing (WDM) technology has been PON such as A-PON, B-PON, E-PON, G-PON, utilized in backbone networks worldwide. By GE-PON etc B-PON architecture is shown in using WDM technology (see Fig. 1), multiple Fig. 2. Currently, wavelength wavelengths can be multiplexed into one fiber and ultra-fast data transmission (>1 Tbps) can be realized without additional optical fibers. Fig. 2: B-PON architecture Fig. 1: Wavelength Division Multiplexing Recently, it is expected that WDM passive optical network (WDM-PON) will be Recently, optical fiber is being used by used for access networks instead of B-PON, the Internet Service Providers known as which is used in B フレッツ (NTT 西日本) Fiber-To-The Home (FTTH) as well as Passive etc Optical Networks (PON). By using WDM-PON, each user will A passive optical network (PON) is a point-to-multipoint, fiber to the be able to freely use one wavelength (>1 Gbps) premises at any time. Nevertheless, in the future, users network architecture in which unpowered optical will require faster data transmission by using splitters are used to enable a single optical fiber more wavelengths to utilize next-generation IP to serve multiple premises. A PON consists of an TV comfortably as long as the cost is out of Optical Line Terminal (OLT) at the service consideration. The architecture of WDM-PON is provider's central office and a number of Optical described in Fig. 3. Network Units (ONUs) near end users. A PON configuration reduces the amount of fiber and central office equipment required compared with point to point architectures. It provides and 74

85 3.SPICE Device Fig. 3: WDM-PON architecture 2.Objective As explained in the previous section, WDM technology is already being used worldwide for the backbone networks. Backbone networks are the core networks of a country. For example, the network connecting the major cities of Japan such as Tokyo, Yokohama, Osaka, Kyoto etc.. So in these types of networks WDM technology is being used. Also, ISP such as NTT will soon introduce the WDM technology in access networks as WDM-PON. Therefore, because of the high efficiency of WDM technology, the explosive growth of new internet users and also the high demand in bandwidth, in this project we propose to provide WDM technology directly to the user (see Fig. 4) by building a device that we call SPICE. In this project, we develop a super high-speed data-transmission device which can provide WDM technology easily for users (see Fig. 5). This device can be attached in and removed from the computer at will. As shown in Fig. 5, this device consists of an optical coupler and a controller. With the coupler, data which is transmitted from the computer (user) is transmitted with multiple wavelengths in an optical fiber. The number of used wavelengths is controlled flexibly by the controller. Therefore, the user can use multiple wavelengths according to the amount of transmitting/receiving data. As a result, by using SPICE device, users can use ultra-high speed optical access networks effectively. For example, when the user sees a Web site by using SPICE device, the user uses only one wavelength. On the other hand, if the user downloads the large-size movie from a server, the user can use the adequate number of wavelengths by using the device. SPICE device Add-in Controller Optical coupler # of used wavelengths changes dynamically Optical fiber WDM WDM networks Fig. 5: SPICE device. The actual WDM network and the SPICE device prototype are shown in figures 6 and 7. Fig. 4: The Objective 75

86 4.Experimental Systems and Future Work Fig. 6: Small scale WDM Network Fig. 7: SPICE Device Prototype From figures 6 and 7, we can see the SPICE has two main components: We are currently building two experimental systems with streaming video (see Figures 8 and 9). In the first system, the computer downloads three types of files from a server alternately by using SPICE device through one optical fiber with multiple wavelengths (see Fig.8). We want to visualize how the number of used wavelengths changes dynamically on a monitor. In the second system, the computer downloads streaming video without sound from a server and the corresponding sound from the other server, respectively, by using the proposed method. Note that in the conventional WDM-PON, two data can not be download parallel from different servers with different wavelengths due to the number of used wavelengths is limited to one. We play the video without sound and the corresponding sound in the computer, and we show that the talkie movie can be displayed (see Fig. 9). - Media converter: This component converts the electrical signal coming from the PC through the LAN cable (RJ45) to the optical signal (optical fiber). At this stage there is WDM in the optical fiber. Fig. 8: Experimental System 1 - Multiplexer / Demultiplexer: This component implements the WDM technology and has 4 ports input and one output port where the optical signals of the incoming ports are multiplexed into one single optical fiber at the output port. Fig. 9: Experimental System 2 76

87 5.Future work As a future work it would be interesting to develop a software interface to visualize in real time the monitoring of data flowing in the SPICE device and how the number of wavelengths changes dynamically. Also, for the implementation of the load balancing function, there can be two possible designs for the controller: - We can develop a software and run it in the user terminal, - We can embed the software into a chip such as FPGA and include it in the SPICE device. 6.Self-Evaluation Overall, we a learned a lot from this project. The research theme of our master s thesis is about performance enhancement of WDM networks, and hence it is closely related to the research area of this project. However, our research is mainly done with computer simulation and we never handle optical devices. Therefore, this project was a good chance to promote a better understanding of optical networks. 77

88 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 書誌情報マップ 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 自然言語処理学講座 D 木村学 3. 分担者 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 4. チューター 所属講座職名氏名 自然言語処理学講座助教新保仁 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 Dell Precision WS T 月 MacBook Air 消耗品費 150 類似検索 機械学習等関連書籍 150 ソフトウェア MATLAB 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 ECML/PKDD 月国内 NL 研 合計

89 6. プロジェクトの背景と目的近年, 引用解析の研究が盛んに行われている. 引用解析の準備として, 論文中の参考文献に記載されている, 著者名, 表題, 雑誌名などの一連の文字列である書誌情報 が他の論文に書かれている書誌情報と 同一の実体 であるか確認する必要がある. この確認作業は,(1) 書誌情報の表記のゆれを吸収した同定を, (2) データベース中に含まれる大量の書誌情報の間で行う. 論書誌情報文群の参考文献にリストアップされている書誌情報の数をNと同一か比較すると, 図のようにO(N 2 ) の計算量が必要である. 解析の都度, この作業を行うことは大量の資源および時間を消費する. 一方, 類似検索技術は,(1) を解決する, クエリに類似したオブジェクトの列挙を,(2) の事態に至らないように, 高速化の観点から研究されている. そこで, 本プロジェクトでは, 類似検索技術を応用し, 興味がある書誌情報の入力を受けてそれを引用する文献を効率的に列挙するシステムを構築したい. 提案するシステムは, 引用解析の分野で需要があるにも関わらず, フリーソフトウェアは存在しない. システムを構築することで, 引用解析の分野の発展に寄与したい. また, システムの内部では類似検索技術の探求を行い, 権威のある国際学会での発表を目指す. 書誌情報は, 単純に文字列を指すものとする 7. 目的到達までの研究計画 [ システムの概要 ] システムの類似検索モジュールについて, システムの概要を説明する. システムは, 検索空間と引用元テーブルで構成され, 二つの機能 ( 検索 ) と ( 引用元テーブルへの追加 ) を有する. 検索空間は, 複数の書誌情報が, それに含まれる単語を各次元にとるベクトルに変換されるか, さらに低次元に圧縮されている. ただし, 検索空間には, 同一実体を指す複数の書誌情報を置く. 引用元テーブルは, 同一実体である書誌情報群に, それらを引用する文献をまとめたもの ( 引用元リスト ) を対応付けて登録している.( 検索 ) は, 検索空間で, クエリとして入力された書誌情報に最も近い書誌情報を同定し, 引用元テーブルからそれに対応する引用元リストを返す.( 引用元テーブルへの追加 ) は,( 検索 ) で書誌情報に対応する引用元リストを同定し, そのリストにクエリの引用元である文献が無ければ登録する. 文献 9 クエリ IN OUT 文献 3 文献 7 ( 追加 ) 文献 9 書誌情報 ( 検索 ) による同定 検索空間 ( ベクトル空間 ) 文献 1 文献 3 文献 4 文献 7 引用元テーブル 79

90 前述のシステムの構築するため, 段階的に, 以下の計画を実行する. [ 段階 1: 距離関数の検討 ] 距離関数として, 二種類の距離関数,A) ユークリッド距離,B) 引用のマッチングのために提案されたカーネルに基づく距離関数, を検討する. 具体的には, 多数の書誌情報を含むデータベースとクエリの集合を用意し, データベース中で各クエリに最も近い書誌情報 ( 最近傍 ) がクエリと同一の実体であるか,A), B) それぞれで調査する. 調査したものの中にクエリと異なる実体が最近傍であるものが無ければ, 調査に使用した距離関数を提案システムで稼動させる. ただし, そのような距離関数が見つからない場合, 調査の中で誤りの少なかった距離関数を提案システムに採用し, 幾つかの候補を列挙するシステムにする. [ 段階 2: 高速化手法の確立 ] アイデンティティは, クエリとの間の距離の下限値が検索中に最近傍と仮定しているアイデンティティとの距離よりも大きければ, 実距離を計算しなくても枝狩りできる. 右図のように, 検索の前段階で, 全てのアイデンティティとの距離を計算した, ピボットと呼ばれるオブジェクトが用意され, 検索時ピボットに対してクエリとの距離を計算すると, 全てのクエリ-アイデンティティ間の距離の下界を計算できる. 重要なことは, ピボットの位置により, 枝狩りを許す数が決まることである. 研究業績 1) では, ピボットをユークリッド距離全体から探索する手法を新たに提案し, 既存手法よりも高速化を実現している. 本プロジェクトのタスクでもそれを実現するか調査し, より効率的な手法の構築を目指す. [ 段階 3: 実システムの構築 ] 段階 1での同定方法において, 最も高速である類似検索手法 ( 段階 2 の調査結果 ) を, 実システムとして実装する 段階 1~3が順調であれば, 以下の計画を実行する. [ 段階 4: データのオンライン処理への対応 ] 段階 1~3での処理は, バッチ処理により, データへのインデキシングを構築することを想定している. しかしながら, 引用関係を調べたいデータが少数現れたとき, システムに既に構築されたインデキシングを利用し, 新たに加わるデータも含んだ, データ全体へのインデキシングを構築したほうが, バッチ処理よりも, その構築時間をより短くなる可能性が高い. 前者の処理方式であるオンライン処理を探求し, バッチ処理よりも高速になるか検討する. より高速であれば, 提案システムに実装する. [ 段階 5: 実システムとしての成熟 ] 検索時, データへのインデキシング構築時, 双方で処理を 並列化可能であるか検討する. 可能であれば, 提案システムに実装する. 80

91 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 macbook air(apple Mini DisplayPort DVI, Apple Mini DisplayPort VGA アダプタ, Ethernet アダプタ含む ) Z0GB 1 消耗品費 23 2 月 office 2008 for mac アカデミック 月 creative suite 4 design standard 月 ScanSnap S1500M mac FI-S1500M 月 リニアPCMレコーダー PCM-D 月 レーザーポインター for PC サシ-81N 月 Time capsule 1TB MB765J/A 月 Avenue-d Book Sleeve Air 月 ワイヤレスノートブックプレゼンターマウス DR 月 ザコンシダラブルエンバラスメント CE-03A 月 BD 再生対応ポータブル DVD ドライブ BDVRP-UH ~3 月 本 (Boost C++ Libraries プログラミン グ,Boost C++ をチューンアップする最先端 ライブラリ, プログラミングのための線形代 数, パターン認識と機械学習下, 科学論文の英 語用法百科, カーネル多変量解析,The Elements of Statistical Learning,Nearest Neighbor Methods in Learning and Vision) それぞれ 1 冊 27 2 月 macbook air 保障 1 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 フィンランド (ICML,UAI,MLG2008) 類似検索および機械学習手法の調査 11 日 合計 1, プロジェクトの状況および自己評価の要約 7 項 段階 2 でピボット学習法をカーネルに対応させることに力を注ぎたため, プロジェクトを完遂することができなかった. しかしながら, カーネル化したピボット学習法を構築できたことは, 大きな成果である. スプリングセミナーでは,2 時間で 7,8 人位の学生からポスターの説明を求められ,1 人を除く全ての学生を納得させ, プロジェクトに興味を持たせることができた. 自己評価はプロジェクトを完遂できなかったため総合的に低く評価する. 81

92 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 書誌情報マップ プロジェクトリーダ 木村 1 概要 背景と狙い 学 いない 書誌情報は 以下のように論文の最後に引用情 本プロジェクトで提案する書誌情報マップは個人に 報として掲載されている 特化した引用情報管理システムであり 前述の欠点 を全て克服する 2 書誌情報マップ 本プロジェクトで対案する書誌情報マップは ユ ーザ自身が集積した論文群から引用ネットワークを 自動的に作成し リンク解析技術を適用することで 重要な論文 類似した論文を発見することを可能と する 図1 引用情報 書誌情報マップのシステムの概要図を図 2 に示す 図より 段階1として 論文の末尾に書かれている 論文間で引用関係を解析することで有益な情報 参考文献 部分に書かれているそれぞれの書誌情 を得られることが知られている 引用関係を解析する 報を 論文名と関連付けたうえで取り出す 段階2で ことにより 論文間の重要度および関連度を計測す は 引用情報を論文に対応付け 引用ネットワーク ることが可能となる さらに 研究者に様々な研究領 を作成する すなわち Citation Matching を行う 第 域での情報を体系化する手段を提供する 一段階で取り出された書誌情報をマッチングさせ同 近年 論文をネットワークからオンラインでダウンロ 一の論文を引用しているか調べる 詳細は後で述べ ードすることが当たり前になってきており 個人が大 る 段階3では 引用ネットワークを元にリンク解析を 量の電子化された論文をハードディスクに集積して 行い 重要な論文 関連する論文を調べる いることは珍しいことではない 個人が蓄積する膨大 な論文群に引用解析を適用し知識を取り出すことは 極めて有益であると考える 世の中には 書誌情報オンラインのサイトが存在 する たとえば DBLP[DBLP] Citesee[Citseer] Google Scholar[Google Scholar] ACM[ACM] PubMed[PubMed]等である これらは 引用関係の 解析を個人に特化した形で行うことはできない さら に それぞれのサイトには次に示す欠点が存在す る 最も新しい論文を常にキャッチアップしてい ない 論文間の重要度や関連度を計測できない ユーザが興味のある分野で最適化されて 図2 書誌情報マップの処理の流れ 82

93 3. 引用マッチング (Citation Matching) 引用マッチングは, 書誌情報が同一のものであるか判定する処理であるが, その処理はトリビアルなものではない. その例を示すため, 同一の論文を引用している二つの書誌情報を図 3に示す.? 図 3: 同一の書誌情報図 3から分かるように, 以下の不一致がある. Many different citation styles Word orders Agrawal, Rakesh vs. Rakesh Agrawal Abbreviated names R. Agrawal つまり, 書誌情報の文字列が正確にマッチングするか判定するだけでは, 同一の論文を引用しているかどうか判定できない. 多くの距離尺度が提案されている [Oyama 05, Pasula 03,Bilenko 03,Sawaragi 02,Tejada 02]. これらは正確な尺度であるが, 高コストである. 図 4: 引用ネットワークをつくるための引用マッチングの回数 引用マッチングをするには, 図 4のように, 全てのデータ ( 書誌情報 ) との距離を計算する必要がある. しかし, 図 4のように時間を消費する距離計算を全てのデータに対して行いたくない. 距離計算を実行する回数を減らす手段として, 距離の下界を用いる. 距離の下界を用いることで何故距離計算の実行回数を減らすことができるのか説明する. ただし, 距離の下界の計算コストは, 距離の計算コストよりも圧倒的に低いと考える. 距離をd, 距離の下界をとおく l. lはdの下界なので,l d が成り立つ. さらに, 枝狩りの条件となる閾値を θ とおく.θ dなら, そのマッチングは似ていないと判定することができる. もし,lが θ よりも低いなら,θ l dとなり, 枝狩りすることが可能となる. つまり, 距離計算コストの高いdを計算せずとも, 距離計算コストの低いを計算すれば l, そのマッチングは似ていないと判定することができる. では, どうやって距離の下界を求めるのだろうか? 全てのデータオブジェクトからの距離が事前に計算されているオブジェクトを導入する. このオブジェクトをピボットオブジェクトと呼ぶ. 全てのデータオブジェクトから少数のピボットオブジェクトへの距離を事前に計算しておけば, 新しいデータに対して, 新しいデータから全てのデータオブジェクトへの距離の下界を得ることが可能となる. 図 5から図 7を使用し, 新しいデータから全てのデータオブジェクトへの下界を得る様子を示す. 図 5は, 全てのデータオブジェクトとピボットオブジェクトとを図示したものである. 図 6は, データベースの一つのオブジェクトに注目し, 新しいデータから距離 d とその下界 l を得る様子を示した. 図 7は, 新しいデータから全てのデータオブジェクトへの下界を得る様子を示している. 新しいデータからピボットオブジェクトへの距離を計算しさえすれば, 新しいデータから全てのデータオブジェクトへの下界を得ることができる. 図 7から分かるように, ピボットオブジェクトの位置が下界に影響を与える. 下界が大きければ, より多くのデータオブジェクトを似ていないと枝狩りできるので, ピボットオブジェクトの位置はより重要である. 83

94 図6から図7では 直感的な理解を高めるため ピ によって定まった距離空間とおく d は非負性 対称 ボットオブジェクトを一つとしたが 実際は 複数のピ 性 三角不等式の性質を満たす 距離空間(X,d)上 ボットオブジェクトを用いる に N 個のオブジェクト集合 すなわち データベー スがあるとし それを U = u1,,un;un X とする K 個のピボット P= p1,,pk;pk X があるとする 新し いデータ 書誌情報 を q とおく q と u 間の距離 d(q,u)の下限値は D q,u P max d q, pk d u, pk 1 k K で得られる 図5 ピボットを利用し新しいオブジェクトからデータ ベースの全てのオブジェクトへの距離の下界を 5 提案するピボット学習方法 得る様子1 提案するピボット学習法は オブジェクト空間 X に 属す任意のピボットに関する目的関数を K-Means Clustering alogorithm でセントロイドを計算するように 各々のピボットを独立に更新し 目的関数を逐次的 に最適化する これは 前節で述べた インクリメンタ ルによる最適化方法の問題点を克服する ピボット を独立に計算できるので ピボットを並列に最適化 することが可能である 新たなるデータの追加に対し ても 一度学習したピボットを次の学習の初期点とし て使用し 零から最適化することなくより短時間でピ 図6 ピボットを利用し新しいオブジェクトからデータ ボットを最適化できる ベースの全てのオブジェクトへの距離の下界を 次節では 変数空間を X としたピボットに関する目 得る様子2 的関数を設計し それを独立更新可能なものに変 形する 本ピボット学習法は 全ての距離空間で適 用可能である 次々節では ユークリッド空間での実 現例を説明する 5 1 目的関数 データセット U が用意されたときに 入力される新 しいデータ q 閾値θに対しての枝狩り数を最大化 図7 ピボットを利用し新しいオブジェクトからデータ するピボット集合を抽出したい これに留意して 枝 ベースの全てのオブジェクトへの距離の下界を 狩り条件 D(q,u) (P ) > θを満たす u の数の見積もりを 得る様子3 目的関数とする クエリとレンジに関する二つの確率 分布 s(q)と s(r)を仮定し 以下の形で目的関数を定 以上のことを数式により定義する (X,d)をオブジ 義する ェクトの空間 X および X 上に定義された距離関数 d 84

95 C P { u; D q, u P q X, R, u U} s q s r dqdr (1) しかしながら,s(q) と s(r) は未知であるので, 直接 C(P ) を最大化することはできない.(1) を計算可能なものに変更する. まず, 分布 s(r) に関係なく枝狩り数を最大化するために,D (q,u) (P ) を最大化するものに変更する. ここで,D (q,u) (P ) d(q, u) であり, D (q,u) (P ) の下限としての精度向上と見なすこともできる. 次に,s(q) を経験分布に置き換え,leave-one-out の要領で各オブジェクト u をクエリ q とみなし,U 上の全てのペア B={(u 1,u 2 ),(u 1,u 3 ),,(u N-1,u N )} について計算するものにする. 以上の修正により以下の関数 F B (P) を定義できる. F B N 1 P D u, u P i j ここで, S ( P) k とおくと, F B i 1 j i 1 N 1 N N max d k K i j i u, p d u, p (2) ( i, j); k arg max d u, p d i 1 k K k u, p,( u, u ) U (3) j K N P max d ui, pk d u j, pk 1 k K k 1 ( i, j) Sk ( P ) (4) を得る.(2) は, 各 (i, j) で最適な k での和を求めている. 一方 (3) のように, 各 (i, j) に対し最適な k を定義しておけば,(4) の計算で (2) を求めることができる. つまり等価な表現である.(4) の右辺で k に関する K 足し合わせ F k 1 k の内側の項を N k P max d ui, pk d u j, pk B 1 k K ( i, j) Sk ( P ) i i j k j k (5) とおく.(5) の右辺は,{(p k,u i );i=1,n} の線形和の形 で書くことができる. 線形和の係数を {n k (i);i=1,n} と おく.n k (i) は (p k,u i ) とそれ以外の項の大小関係で計 算できる.(p k,u i ) が他の項以上に大きいときの数を n k + (i), 他の項以下に小さいときの数を n k - (i), すなわ ち, n n k k i ( i, j) Sk ( P ); d pk, ui d pk, u j i ( i, j) S ( P ); d p, u d p, u とおくと,n k (i) は n k k i n i n i と計算できる. したがって,(5) は F N k k P nk i d ui, pk (6) B と変形できる. i 1 K k (6) による F P F P B k 1 B k k i k の計算は, 相殺される加減算を抑える効果もある. 実際, 単純 な加算回数に着目すれば,(6) を直接求めるのに, N(N-1)/2 ペアのオブジェクトペア群に対して d(p k, u i ) - d(p k, u j ) の和が必要である. 一方,(6) による FB P の計算では,NK 回の必要な項のみの和で 計算できる. ピボットに基づいたアプローチは, N>>K を仮定しているので大幅な効果となる. このよ うな相殺項の除去は, 大規模データを扱うのに重要 と考える. 4. ユークリッド空間での実現例 L 次元ベクトル空間を想定し, オブジェクトおよび ピボットをそれぞれ {x i :i=1,,n},{p k :k=1,,k} とす る. 距離関数は, d L x, y x t y t 1 で定義する通常のユークリッド距離を用いる. t 2 j 85

96 4.1. 計算手順提案するアルゴリズムの手順を以下に整理する. step 1. U からランダムに K 個オブジェクトを選ぶことにより,{p k :k=1,,k} を初期化する. step 2. 以下のステップを T 回繰り返す. step 2-1. それぞれの p k について, 分割式 (3) で S k (P K ) を求め,n k (i) を計算して目的関数 (6) を定める. step 2-2. 各ピボット p k (k=1,,k) を,p k p k +Δp k により更新する.Δp k はステップ幅であり, 連立方程式 HΔp k + F (k) B (p k )=0 を解くことで求める. すなわち, ニュートン法 [Luenberger 73] による更新である. ここで, F (k) B (p k ) および H は, F (k) B (p k ) に対する勾配 ベクトルおよびヘス行列であり, 以下となる. F H k B N i 1 P n d u N i 1 d i, i, p k i k I nk i p k ui u p L k pk ui pk ui 2 d u, p i k T (7) (8) I L は,L 次元単位行列を表す. このアルゴリズムはユークリッド空間に特化したものであるが, 各ピボットの更新式を定義できさえすれば, 他の距離空間にも適用可能である 既存手法との比較実験 16 次元の単位立方体内に一様に分布し50,000 オブジェクトにより構成されるデータにより実験をする.Bustos ら2) と同様に, データから0.01% のオブジェクトを同定するレンジクエリで評価した. すなわち, それぞれのデータにおいて, {u : d(q; u) r} N となるrによるレンジクエリである. 評価尺度は, 総類似検索コストの平均値である. つまり, leave-one-out cross-validation のように, データ中の各オブジェクトをクエリとみなし, それぞれの検索での総類似検索コストを平均した値で評価した. ピボットの数は10, 50, 100, 150,,400,450 と変化させた. 比較手法として, 既存手法 [Brin 95, Bustos 03, Mic o 94] を用いる. 実験結果を図 8に示す. 図 8はグラフが下に位置するほどよい手法である. したがって, 提案手法が一番優れていると分かる. 図 8: ランダムデータによる比較実験 5. カーネルを用いた距離空間に対する実現例ピボット学習法のカーネルを用いた距離空間に対する実現例 ( 以後, カーネルピボット学習法と呼ぶ ) は, 本プロジェクトの大きな成果である. しかし, 論文投稿を控えているため, 説明は省略する. 6. 今後の展開今後の展開を述べる. まずは,7 項の 段階 1, 段階 3, 段階 4 を進めていく. また, 構築したカーネルピボット学習法を引用マッチングのタスクに限らず, 画像やバイオ, 自然言語の処理の分野で扱われる, 文字列やグラフ, 木といったデータに適用し, 他の類似検索手法との比較実験を行うことを予定している. 最終的には, カーネルピボット学習法を国際会議へ投稿できるようにしていきたい. 7. 自己評価 7.1. 実際のプロジェクトの進行状況に対する自己評価 7 項 目的到達までの研究計画 を提案後,7 項 段階 2 を7 項 段階 1 の前に実行し, 類似尺度としてカーネルを使用する場合のピボットの学習方法を構築することにした. 変更した理由は,7 項 段階 1 で実験をする, 小山カーネル等, 有効と考えられる類似尺度の多くがカーネルであり, カーネルの有効性を効率的に調査するためにも, カーネルに対する 86

97 ピボットの学習方法を構築するべきと考えたからである. この, カーネルに対するピボット学習法の完成にはこぎ着けることが出来た. しかしながら, アルゴリズムの構築に長期間費やしてしまったため, それ以上計画を進めることができなかった. カーネルに対するピボットの学習方法を新たに構築したことは評価できるものの, 計画を予定通り進められなかったため, 総合的に自己評価は低いものになる. スプリングセミナーでの成果報告では, 数式の多いポスターによる発表をしたこともあり, 他の発表ほどの盛況は無かった. それでも, 絶え間なく質問を受け, 一人を除く全ての人を納得させ, プロジェクトの面白さを伝えることができた. 発表を聴いてくれた人々は, 数式を多用したポスターにも関わらずあえて話を聴きに来たため, 一般の人よりも難しい話に興味がある人だと思うが, そういった人々を納得させることができたことは, 評価して良いと思う. 反省点としては, ピボット学習の方法をカーネル化することにこだわり過ぎた点が上げられる ( システムの内部の基礎技術にこだわり過ぎた ). そのため, ユーザインタフェースの部分 ( システムの外側 ) をつくることができず, スプリングセミナーでのデモで地味な印象を与えてしまい, 多くの人を惹きつけることができなかった. 今後ものづくりを行う際は, この経験を生かし, 外見にも重みを置くように計画をたて, 実行していきたい. 参考文献 [DBLP] [Citeseer] [Google Scholar] [ACM] [PubMed] [Oyama and Manning 05] 小山聡, クリストファー D. マニング, `` 異なる例からの素性の組合せを用いたペアワイズ分類器の学習,'' 人工知能学会論文誌, Vol.20, No.2, pp , February [Pasula 03] Pasula, H. M., Marthi, B., Milch, B., Russell, S., Shpitser, I.: Identity Uncertainty and Citation Matching, Advances in Neural Information Processing Systems 15 (NIPS 2003), Cambridge, MA: MIT Press. [Bilenko 03] Bilenko, M., Cohen, W. W., Fienberg, S., Mooney, R. J., Ravikumar, P.: Adaptive Name-Matching in Inofrmation Integration, IEEE Intelligent Systems, Vol. 18, No. 5, pp (2003) [Sawaragi 02] Sawaragi, S. Bhamidipaty, A.: Interactive Deduplication using Active Learning, in Proceedings of the Eighth ACM SIGKDD International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD-2002), pp (2002) [Tejada 02] Tejada, S., Knoblock, C. A., Minton, S.: Learning Domain-Independent String Transformation Weights for High Accuracy Object Identification, in Proceedings of the Eighth ACM SIGKDD International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD-2002), pp (2002) [Luenberger 73] Luenberger, D. G.: Introduction to Linear and Nonlinear Programming.,Addison-Wesley (1973) [Brin 95] Brin, S.: Near Neighbor Search in Large Metric Spaces., VLDB (Dayal, U.,Gray, P. M.D. and Nishio, S., eds.), Morgan Kaufmann, pp (1995). [Bustos 03] Bustos, B., Navarro, G. and Ch avez, E.: Pivot selection techniques for proximity searching in metric spaces., Pattern Recognition Letters, Vol.24, No.14, pp (2003) [Mic o 94] Mic o, L., Oncina, J. and Vidal, E.: A new version of the nearest-neighbour approximating and eliminating search algorithm (AESA) with linear preprocessing time and memory requirements., Pattern Recognition Letters, Vol.15, No.1, pp (1994). 87

98 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 ユーザのグルーピングを利用した展示会運営支援システムの開発 2. プロジェクトリーダー 3. 分担者 4. チューター 所属講座職名氏名 ソフトウェア設計学助教川口真司 5. 必要経費 所属講座学年学生番号氏名 アドレス ソフトウェア設計学 D 伏田享平 所属講座学年学生番号氏名 アドレス ソフトウェア設計学 M 石田響子 ソフトウェア設計学 M 高田純 ソフトウェア設計学 M 奥村哲也 ソフトウェア設計学 M 片山真一 ソフトウェア設計学 M 水野恵祐 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 年 6 月開発用ワークステーション Apple imac 1 台 年 6 月システム操作用タッチパネル式モニタ 三菱 RDT191TU 1 台 消耗品費 年 6 月 情報提示用液晶モニタ一式 HYUNDAI W240D 2 台 年 6 月見学ガイドロボ作成用機材 レゴマインドストーム NXT 4 台 年 6 月レゴマインドストーム NXT 開発用ソフトウェア ( 教育用 NXT ソフトウェア 1.1) 2 本 年 6 月レゴマインドストーム NXT 開発用ソフトウェア (ROBOLAB2.9) 2 本 年 6 月レゴマインドストーム NXT 関連書籍 3 冊 年 6 月個人識別用タグ開発機材 Sun SPOT 1 台 年 6 月システム操作用インタフェース Apple ipod touch 2 台 年 6 月 システム操作用インタフェース Chumby 2 台 旅費 ( 調査目的も可 ) 年 3 月 インタラクション 2009 参加 ( 東京 2 日間 ) 3 人 合計 1,200 88

99 6. プロジェクトの背景と目的企業や大学などが主催する展示会には様々なメリットがある一方で, いくつかの問題があると考えられる. 以下は, 出展者および来場者の視点から, 問題点を整理したものである : 来場者の視点からの問題点 : 展示会では非常に多くの企業や団体が出展しており, ブースの数もそれに比例して多くなる. また, 出展者から来場者に対して, 展示内容の十分な情報が掲載されていない場合が多い. そのため, 来場者はどのブースを回るべきか判断か付きにくい. さらには, 一部のブースが一定時間に殺到することもある. 出展者の視点からの問題点 : ブースに訪れた来場者に対して, 展示内容についてのアンケート収集を行い, 場合によってはさらに詳しい情報提供を行いたい場合がある. しかし, 各出展者が個々にアンケートやプロフィールの収集を行うのは非常に煩雑である. 参加者 ( 来場者 出展者双方 ) の視点からの問題点 : 個々の参加者の興味のあるトピックスを把握することは困難である. そのため, 参加者同士で有益な情報交流が行える可能性があるにも関わらず, そのきっかけがない. このような背景のもとで, 本プロジェクトでは, 展示会運営支援システムの開発を目指す. このシステムの第一の目的は, 展示会参加者のコミュニティ創成支援である. このシステムを用いることで, 似たようなトピックスに興味を持つ参加者のグルーピングを行い, 新たなコミュニティの創成を支援する. また, 第二の目的として, アンケートやプロフィールの入力, 出展者による来場者に関する事後分析といった, 展示会運営時に発生する煩雑な作業の削減を挙げる. このシステムを用いることで, 参加者は展示会本来の目的である, 情報交流に専念することが可能となる. 7. 目的到達までの研究計画先に示した目的を達成するために, 展示会運営支援システムを提案する. 前提として, 展示会主催者が, あらかじめ展示会参加者のプロフィール ( 氏名や性別, 出展内容 ) などを取得しているとする. また, 来場者のプロフィールが記録されたタグを配布することとする. 本システムでは, 各ブースにおいてタグの情報を読み取ることで, どのような参加者が訪れているかを把握する. システムの開発にあたって, 以下に示す 3 つのメインタスクと 2 つの技術検討タスクを実施する. メインタスクは, 提案システムの主要機能を実装するタスクで, プロジェクト実施期間内での完成を目指すものである. 技術検討タスクは, プロジェクト実施期間や技術検証, 予算などの関係上, 完遂することは困難が予想されるが, 今後の発展が望める挑戦的なタスクである. 1. メインタスク 1.1 見学経路の提示 : 来場者のプロフィールやブースの出展内容, 当日のブースの混雑度から, 来場者の見学ルートを算出, 提示する機能を実装する. これにより, 来場者はスムーズに, かつ自分の興味のあるブースを可能な限り巡回することが可能になると考えられる. 1.2 ユーザグルーピング : 展示会参加者で, 興味のある分野が近いものを自動的にグル 89

100 ーピングする機能を実装する. これにより, 参加者間のコミュニケーションの創発や, 展示会でグループツアーを実施する際のグループ分けが容易になる. 1.3 出展者による来場者の分析環境 : 出展者が各自のブースを訪れた来場者の統計情報 ( 来場者数, 平均来場時間, 来場者の興味など ) を取得できる環境の構築を目指す. これにより, 出展者は出展内容の検討など, 事後分析が可能となる. 2. 技術検討タスク 2.1 アクティブタグによる運用 : ブースへの入退場管理にアクティブタグを用いると, タグ自らが電波を受発信するので, ユーザはタグを所持しているだけでよく, 特別な操作を必要としない. これにより, 来場者に対するユーザビリティの向上が見込まれる. ただし, アクティブタグは FeliCa に比べて高価であり, 予算の関係上導入することが難しい. そこで, 本研究科のユビキタスサービス研究システムの位置情報計測装置 ( アクティブタグによる開発キット一式が含まれている )[ 注 1] を利用することで, 技術検討を行う. 2.2 見学ガイドロボの作成 : 展示会ではしばしば会場の規模が大きく, 推薦されたブースへ来場者が到達するのが難しい場合がある. そこで, システムで推薦したブースまで, 来場者を誘導する自走式ガイドロボの作成を目指す. ガイドロボの作成にあたっては, 購入 組み立てが安価であり, 容易にプログラミングする環境が整っているレゴ社のマインドストーム NXT を利用する. 我々は CICP2007 において, 展示会におけるブース推薦システム ReBoN を提案 開発している.ReBoN は, 来場者のプロフィールとブースの出展内容 ( テーマ ) を取得する機能を有する. また, これらの情報を用いて来場者にブースの推薦を行う機能も有する.ReBoN は 2008 年 2 月に本学で実施されたオープンキャンパスにおいて運用実験を行い, 講座推薦システムとして稼働した. また,2008 年 5 月に本学で行われるオープンキャンパスでも, 同様のサービスを提供する予定である. 本プロジェクトでは,ReBoN 開発で得られたノウハウおよびシステムを利用 拡張することで開発を行う. メインタスクに関しては,9 月に開催される模擬国際会議までに実装を完了し, 発表を行う予定である [ 注 2]. 技術検討タスクに関しては, メインタスクの実装と並行して実装を行い, 提案システムの実証実験にて運用可能性を検討したい. 提案システムの実証実験の場としては,2008 年 11 月に開催予定の NAIST のオープンキャンパスを考えている. ここでは, 従来 ReBoN で行ってきた講座推薦の他に, お薦めの講座ツアーを実施することを検討している. このツアーでは, 興味のある研究分野が似通っている来場者を自動的に集め, 見学ガイドロボの誘導に従って, 来場者にお薦めの研究室を回ってもらうというものである. またこのツアーをきっかけとして, 似た興味を持つ参加者間で新たなコミュニティの誘発を目指す. また, 実証実験の結果をまとめて, コンピュータインタラクション分野で国内最大規模の会議である, インタラクション 2009 での発表を目指す. 注 1 注 2 模擬国際会議は, 伏田 ( リーダ ) が ProMAC2008( での発表で不在のため, 高田 ( メンバ ) が発表する予定. 90

101 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 年 6 月開発用ワークステーション Apple imac 1 台 年 6 月 システム操作用タッチパネル式モニタ 三菱 RDT191TU 1 台 消耗品費 年 6 月情報提示用液晶モニタ一式 HYUNDAI W240D 2 台 年 6 月レゴマインドストーム NXT 関連書籍 3 冊 年 6 月見学ガイドロボ作成用機材 レゴマインドス トーム NXT および開発用ソフト 4 台 年 10 月システム操作用インタフェース Chumby 3 台 年 10 月 システム操作用インタフェース Apple ipod touch 2 台 年 3 月スプリングセミナーデモ用備品一式 ( 来場者操 作用キーボード マウスなど ) 旅費 ( 調査目的も可 ) 年 3 月インタラクション 2009 参加 ( 東京 2 日間 ) 合計 1, 人 9. プロジェクトの状況および自己評価の要約本プロジェクトでは, 展示会の運営を支援するシステムの開発を行った. 当初予定していたタスクのうち, メインタスクに関しては, ほぼ予定通りの機能を実装することが出来た. しかし, ユーザーグルーピングによる効果の検証や, グルーピング機能を利用したツアーなど, ブース推薦以外の運用については十分に実施することができなかった. 技術検討タスクに関して, アクティブタグが実際に提案システムで利用可能なことを確認した. ただし, 適用実験は予算の関係上実施することができなかった. また, 見学ガイドロボの作成に関しては, 調達した機材の関係もあり, 誘導を行うのに十分な機能を実装することができなかった. 開発したシステムは,2009 年 3 月に行われたスプリングセミナーおよびサイエンスフェスティバルにて運用し, 学外の方を含む多くの方に利用していただいた. これにより, 展示会の運営を包括的に支援する という我々のプロジェクトの方向性に間違いがないことを確認した. また, 来場者に対し, 効果的な推薦を行えたことを, 実際に意見を頂戴することで確認した. 一方で, 時間の関係上十分な機能を実装することができず, 当初予定していたグルーピング機能によって編成したグループによるツアーや, 見学ガイドロボによる誘導などのデモは実施できなかった. プロジェクト全体を通して, 学会発表や修士論文の執筆 発表準備, 就職活動など, メンバが本プロジェクトに関わる時間を十分に捻出できなかった結果, 当初の予定よりも幾分スケールダウンした形で開発が終了した. しかしながら, 他メンバ, 他部署と連携して作業を行うということは, 特に M1 のメンバにとっては初めての経験となり, その点において大いに収穫があったものと考える. 91

102 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告プロジェクト名 : ユーザグルーピングを利用した展示会運営支援システムの開発プロジェクトリーダー : 伏田享平プロジェクトメンバ : 石田響子, 高田純, 奥村哲也, 片山真一, 水野恵祐 1. 概要 ( 背景と狙い ) 展示会は, 実際に開発した製品や商品を,( 潜在的な ) ユーザの前でプレゼンテーションすることができる貴重な機会であり, 年間を通して多く開催されている. たとえば, 日本貿易振興機構 (JETRO) が提供する見本市 展示会データベースには, 世界各国の見本市の開催情報が登録されており,2007 年に日本で開催された展示会の登録数は 400 を超える. また, 大学や研究所などの教育 研究機関においても, 入学希望者に対するプレゼンスの向上や一般への研究成果公開を目的として, オープンキャンパスやオープンハウスが実施される機会は多い. このように, 展示会やオープンキャンパス / オープンハウス ( 以下では, まとめて単に展示会と呼ぶ ) では, 製品を出展する者 ( 以下, 出展者と呼ぶ ) に様々なメリットがある. たとえば, 出展者はユーザの前で実際に製品の実演を行うことができ, ユーザと直接会話をし, 製品のアピールを行うことができる. また, 展示会に訪れる者 ( 以下, 来場者と呼ぶ ) は, 製品の実物を手に触れ見ることができ, 出展者から詳細な情報を入手することができる. 一方で, 展示会には多くの問題があると考えられる. 大規模な展示会では来場者数が数千から数万人に及び, 出展者も数千もの莫大な数となる. 来場者によって, あらかじめ目的の製品や出展者を下調べしている場合を除き, 膨大な出展数の中から自分の興味に沿ったブースを見つけ出すことは非常に困難である. また, このように出展数が多い場合, 下調べできる対象や内容は限定的にならざるを得ない. 出展者にとっても, 限られた時間の間に来場者に関して有効な情報を取得す ることは難しい. このように, 展示会そのものは出展者と来場者を結びつけ, 有益なインタラクションを生み出すのに非常に貴重な機会であるにも関わらず, 実際にはそれを阻害する要因が偏在していると考えられる. このような背景のもとで, 我々は展示会運営システムを提案する. 提案システムの第一の目的は, 展示会の来場者と出展者 ( 以下, 来場者と出展者をあわせて参加者と呼ぶ ) のコミュニティ創成支援である. 提案システムを用いることで, 似たような興味を持つ参加者のグルーピングを行い, 新たなコミュニティ インタラクションの創成を支援する. また, 第二の目的は, アンケートやプロフィールの入力, 出展者による来場者に関する事後分析といった, 展示会運営時に発生する煩雑な作業のコスト削減である. このシステムを用いることで, 参加者は本来の目的である, インタラクションに専念することが可能となる. 2. プロジェクトの進捗 2.1 展示会開催形態の分析と問題点の把握システムの実装を行うにあたり, 実際に展示会がどのように開催されているかを分析し, 運営に当たっての問題点を把握した 展示会開催形態展示会は, 対象とするドメインや会場規模, 予算などの関係から様々な開催形態が考えられる. 本研究では, 展示会に関わるアクタとして, 運営を行う運営者, ブースを出展する出展者, 来場しブースを見学する来場者の3 者がいると考える. 我々の想定している展示会の運営は, 時系列で分けると 展示会準備期間 と 展示会当日 から成り, それぞれの運営手順は以下の通りである. 92

103 展示会準備期間 : 1. 運営者は, 展示会の目的, 対象者, スケジュールを決定する. 2. 運営者は, 出展者を募り, ブースの配置を決定する. 3. 出展者は, ブース出展の申し込みを行う. 4. 運営者は, 来場者の募集を行う. 5. 来場者は, 事前参加登録を行う. 展示会当日 : 1. 運営者は, 来場者の入場受付を行う. 事前登録を行っていない来場者に対しては, 当日参加登録処理をあわせて行う. 2. 運営者は来場者に対しアンケートを実施し, 来場動向を把握する. 3. 出展者は, ブースを訪れた来場者に対して出展製品に関して説明を行う 問題点我々は, 展示会の運営の中でも, 特に出展者と来場者とのインタラクション支援に着目する. すなわち,2.1.1 で示した展示会運営手順のうち, 展示会当日の手順に着目する. 以下に, 展示会当日の手順に関して, 各アクタの視点から整理した問題点を列挙する. 来場者の視点からの問題点 P1. 来場者が目当てのブースを見つけにくい展示会では, 非常に多くの企業や団体が出展しており, ブースの数も多くなる. また, 類似の内容について複数の出展者が存在する場合が多い. しかし, 各ブースの出展内容は, パンフレットやポスターの紙面の都合上, 十分な情報が掲載されていない場合が多く, 来場者はどのブースを見回るべきか判断がつきにくい. P2. 一部のブースが混雑する場合があるブースによっては, 非常に多くの来場者が一定時間に殺到するケースがある. この場合, 一部のブースが混雑し, 待ち時間が発 生し, 結果として見たいブースをすべて廻ることができないケースが発生する. 出展者の視点からの問題点 P3. 来場者のプロフィール収集が煩雑である出展者は, 展示内容についてのアンケート収集を行い, 場合によっては来場者にさらに詳しい情報を提供したい場合がある. この際来場者は, ブース毎に自己の連絡先などを出展者に伝える必要がある. このようなプロフィール入力作業は煩雑であり, 全ての来場者に課すことが非常に困難である. 運営者の視点からの問題点 P4. 統計データの収集が煩雑である展示会運営者にとって, 展示会への出展者数や来場者数などは今後展示会を継続的に運営していくにあたって有用かつ重要な情報である. また, このようなデータの信頼性を確保した上で公開していくことは, 多くの出展者 来場者を確保する上で重要な要素の一つであると考えられる. 実際に, 海外ではこのようなデータに関して認証を行う機関が存在する. しかし, 現状ではこのような出展者や来場者に関する統計データを, 運営者が体系的に収集する仕組みは整備されていない参加者の視点からの問題点 P5. 参加者のインタラクションのきっけがない参加者同士が, 互いにどのようなトピックスに興味があるかが共有されておらず, 参加者同士で有益な情報交流が行える可能性があるにも関わらず, そのきっかけがない. 2.2 機能要件 であげた問題に対して, 我々は類似の属性をもつユーザをグルーピングする手法 ( ユーザグルーピング ) を利用することで問題解決を図る. 93

104 インタラクションやコミュニティの創成のためには, できるだけ興味の近い参加者をグルーピングすることが有用であると考える. グルーピングを行う際には, ブースや来場者の属性情報, ブースの来訪情報を用いる. これらの情報から, 興味が似通った来場者が訪れたブースを取得することで, 来場者に対して有用なブースの推薦ができる. また, 副次的な効果として, グルーピングに必要な情報を入手 管理することで, 参加者の属性情報を総合的に入手することができる. 以下にシステムが備える機能要件を列挙する. 参加者情報の管理 識別 : システムは, 出展者 来場者の属性情報を一元管理する. 管理する情報は, 出展ブースの出展内容や概要, 来場者のプロフィールなど, 後述する見学経路の提示やユーザグルーピングに必要な情報である. これに加えて, 来場者の属性情報を管理するために, 来場者を識別する機器 ( 識別子 ) を備える. 識別子は, 来場者が展示会会場内にて携帯することを想定する. 来場者の識別子情報を会場内で読み取ることで, 展示ブースの混雑度などの情報を収集することができる. ユーザグルーピング : 参加者の属性情報をもとに, 興味のある分野が近い参加者を自動的にグルーピングする機能を実装する. グルーピング結果に基づき, 次に訪れるブースの推薦など, 潜在的なインタラクションの創成を支援する. 見学経路の提示 : 来場者が自分の興味のあるブースを効率よく巡回するためにシステムによる見学ルートの算出 提示を行う. 算出には, 来場者のプロフィールやブースの出展内容, 当日の混雑度を用いる. これにより来場者は自分の興味のあるブースを効率よく巡回することが可能になる. 来場状況の分析 : 各自のブースを訪れた来場者の統計情報 ( ブースごとの来場者数, 平均来場時間, 来場者の興味など ) を, 出展者が取得 事後分析するための環境を構築する. 2.3 システムの実装 2.2 に挙げた機能用件を満たすシステムの実装を行った. 図 1に提案システムのアーキテクチャを示す. 以下に各構成要素の役割を示す. 事前情報入力部 : 来場者がプロフィール ( 氏名や性別, 連絡先, 興味のあるテーマなど ) の入力を行う. また, 出展者が出展ブースに関わる情報を入力する. この情報に従い, 提案システムは来場者が廻るべきコースの推薦を行う. 来場者はWeb アプリケーションを用いて情報を入力し, それらの情報はサーバのデータベースに蓄積される. 来場者識別情報読み取り部 : 来場者の行動を把握し, 案内を行うために, それぞれのブースや経路上に設置する. 来場者が所持している IC タグを読み取ることで, 来場者の行動を把握する. 見学ルート算出部 : 入力された来場者プロフィール, および事前に入力されたブースごとのキーワードや当日の混雑度から, 来場者の見学ルートを算出する. 見学ルートの算出にあたって, 事前登録で入力された ブースのキーワード情報 来場者の興味のあるブース情報 来場者の興味のあるキーワード情報 来場者の訪問履歴 を入力として, 来場者のグルーピングを行う. 情報提示部 : 各ブースの混雑度や展示内容, グルーピングの結果を表示する. また, 最新の混雑情報や既に来場者が訪れたブースを反映した, 新たな見学ルートの提示もここで行う. 今回は,ICタグとして FeliCa およびアクティブタグを利用した. システムは, 大別するとユーザからの入力の格納およびユーザからのリクエストを処理するサーバソフトウェアと, ユーザの入力の受付および結果表示を行うクライアントソフトウェアの2 つのソフトウェアに大別される. サーバソフトウェアとしては,Apache HTTP Server 上で動作するWeb アプリケーションを Django(Python で実装されたWebアプリケーションフレームワーク ) を用いて開発した. クライ 94

105 アントソフトウェアは,Sony が提供する FeliCa SDK を利用して,Windows 上で動作するアプリケーションを C# で開発した. なお, クライアントソフトウェアは,FeliCa の読み取り装置が接続された PC 上で動作する. また, 見学ルート算出部の出力である見学ルート情報から, 来場者を誘導する見学ガイドロボの設計を, レゴマインドストームを用いて検討した. 3. 成果 本節では, プロジェクトメンバが参加した, 模擬国際会議, および国内会議インタラクション 2009 の参加報告を行う. また, スプリングセミナーおよびサイエンスフェスティバルで行った, 提案システムのデモについて報告する. 3.1 模擬国際会議参加報告 2008 年 9 月 19,20 日に淡路島で模擬国際会議 CICP2008 が開催された. この会議では CICP2008 の全プロジェクトの関係者が集まり, お互いの研究内容を発表した. また, 発表, 質疑応答は全て英語で行われ, あらかじめ配布されたチェックシートにより発表の採点も行われた. 我々のプロジェクトからは, 高田, 片山, 水野の 3 名が参加し, 高田が代表して, 提案システムのコンセプトと今後の予定について発表を行った. 質疑では, 来場者はプロフィールをいつシステムに登録するのか ルートの表示で一番実装が難しいと思うのはどういう点か といった質問を受けた. また, アドバイザの先生方からは, 発音やスライドの校正に関して, 今後の参考となる貴重なご意見を頂戴した. 今回の模擬国際会議に参加したことで, 他プロジェクトの発表を聞けただけでなく, 懇親会では他プロジェクトの人と交流をもち, お互いの研究について意見を交わすことができたことは, 非常に有意義であったと思う. また, 英語での発表, 質疑応答は非常に貴重な体験となった. このような機会を通して, 今後国際会議での発表 議論を行っていくというモチベーションを高めることができた. 3.2 インタラクション 2009 参加報告 2009 年 3 月 5 日 ( 木 ),6 日 ( 金 ) の 2 日間にわたり, 東京学術総合センター / 一橋記念講堂でイン 図 1: 提案システムのアーキテクチャ 95

106 タラクション 2009 が開催され, 伏田, 石田, 水野が聴講参加した. インタラクションは, 情報処理学会のヒューマンコンピュータインタラクション研究会 (HCI), グループウェアとネットワークサービス研究会 (GN), およびユビキタスコンピューティングシステム研究会 (UBI) の 3 研究会が主催し, 年 1 回開催されるシンポジウムである. 本シンポジウムは, 人と人, 人と機械との間のインタラクションに関する研究成果を対象とし, 登壇発表の他, デモ形式で行われる多数のインタラクティブ発表, 萌芽的な研究の発表の場であるポスター発表により構成されている. 我々のプロジェクトにとって特に興味深いと感じたのは, ポスター発表の アシアト地図 : 地図への行動履歴視覚化システムの提案と試作 である. この発表では, 近年, ユーザが個人のライフログに位置情報を用いるようになっていることを背景に, ライフログを地図上でアニメーションとして視覚化し, 従来とは異なる発見を提供することを目的としている. ここで行われている行動履歴の視覚化というアイデアは, 我々のプロジェクトにも取り入れることができる. 展示会の事後分析において, 来場者の行動履歴は重要なデータである. それを時系列に発生したイベントと並べて閲覧できれば, 何らかの事象や傾向を発見し, 出展者の展示物や運営体制などの改善につながるかもしれない. また, 来場者が自身の行動履歴を閲覧できれば, 出展者とのインタラクション創成の機会が増えることも期待できる. 本シンポジウムは国内で有数の大規模な査読付デモ発表の場であり, 様々な分野の研究者および実務者が一堂に会し, 最新の技術や情報を交換し議論する場を提供している. 我々も参加した 2 日間で多くの議論に参加し, 有益な知見を得ることができた. 3.3 スプリングセミナー / サイエンスフェスティバルでのデモ実施 2008 年 3 月に行われたスプリングセミナーのポスターセッションと, 情報科学研究科で行われたサイエンスフェスティバルにおいて, 提案システムの運用を行った. なお, アクティブタグに関しては, 利用した機材の関係上, 十分にデモを行うことが出来ないと判断し, 出展を行わなかった. また, 見学ガイドロボに関しても, デモを行うのに十分な性能およびスペースを確保できなかったため, 出展を行わなかった. ポスターセッションでは, 興味のあるテーマを選択してもらい, それをもとに研究室の推薦を行った. 推薦エンジンに用いるデータとしては, これまでに採取した来場者の行動履歴や来場者の希望テーマを用いている. 今回のデモでは, 我々の出展ブースでのみ提案システムを利用している. 複数箇所を回る実際の運用については, 翌日に行われるサイエンスフェスティバルで確認してもらうよう参加者に依頼した. 最終的には 15 名程度の方にデモを体験していただき, どのブースに行くかを決めていないときに役に立ちそう 明日のサイエンスフェスティバルにも参加する予定なので, 是非実際に使ってみたい などの好意的なご意見をいただいた. サイエンスフェスティバルにおいては, 各講座に協力を依頼し, 前日にクライアントソフトウェアおよび FeliCa リーダ / ライタを配布し, 端末の設置を行った. 最終的に 21 講座に端末を設置した. 当日の運用手順は以下の通りである. 1. 受付の処理サイエンスフェスティバル当日, 情報科学研究科正面口の脇にブースを構え, 来場者を受付まで誘導した.FeliCa カードおよびシステムの簡単な使い方を説明し, 講座 キーワードの登録を行ってもらった. 2. システムの利用来場者が各講座を見学し, 退場する際に端末に 96

107 カードを接触することで, 訪問履歴を管理するようにした. 登録したキーワードおよび訪れた講座の履歴から, 次に訪問を勧める講座を 3 件表示するようにした. サイエンスフェスティバルでは,165 名の方にシステムを利用していただいた. 来場者の方からは, どの講座を回ろうか考えていなかったので, アイデアをもらえるのはうれしい 推薦してもらったおかげで多くのブースに行くことができた などの好意的な意見をいただいた. 一方, 事前に必要なキーワードと講座の登録が, 本学の入学希望者を対象とした内容であったため, 一般の方々からは 登録の内容が難しい というご指摘をいただいた. これら 2 つのイベントで得られたご指摘に対しては, 今後, さらなる検討が必要であると考えられる. 4. 今後の展開 アクティブタグによる運用に関しては, 実験により, 我々のシステムにアクティブタグを利用することが可能であることを確認した. 今後はアクティブタグを利用した, システムの運用も視野に入れていきたい. 見学ガイドロボの作成に関しては, 十分に実装を行うことができなかった. これらの点については, 今後も引き続き検討を行う必要がある. また, 推薦の正しさについての検証を今後も行っていく必要がある. さらに, インタラクション創成の観点から, 実際にグルーピングされたユーザ間で, 有益なインタラクションが発生したか, どのようなコミュニティが形成されたか, といったことも確認する必要があると考えている. 5. 自己評価 システムの実装に関して, メインタスクとしてあげていた3つの機能に関してはほぼ目的を達成することが出来た. しかし, ユーザグルーピング機能を活かした展示会参加者間のインタラク ションの創成などの効果は, 運用の問題から確認することができなかった. サブタスクに関して, 開発時間を確保することが難しく, また調達した機材の関係もあり, 十分な機能を実装することができなかった. スプリングセミナーやサイエンスフェスティバルでは, 多くの方から貴重なご意見を頂戴した. これらの場での運用を通して, 我々の提案するシステムの方向性に間違いはないことを確信した. 一方で, 一部の情報入力 ( プロフィールの事前登録など ) が煩雑なものとなっており, 結果として, 本プロジェクトの目的の一つである, インタラクションを阻害しているという面が確認された. この点に関しては, 今後十分に検討を行う必要があると考える. プロジェクト全体としては, その進行は非常に困難を極めた. これは学会発表や修士論文の執筆 発表準備, 就職活動など, メンバが本プロジェクトに関わる時間を十分に捻出できなかった結果である. しかしながら, 他メンバ, 他部署と連携して作業を行うということは, 特に M1 のメンバにとっては初めての経験となり, その点において大いに収穫があったものと考える. 謝辞奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科ソフトウェア設計学講座飯田元教授, 川口真司助教, 名倉正剛特任助教には, 折に触れ貴重なご意見を頂戴した. 特に, 川口助教には, チューターとして全面的な御支援を頂いた. 同足立敏美女史には, プロジェクト運営に際し, 絶大なる御支援をいただいた 年 3 月に本学で行われたサイエンスフェスティバルの際には, 同情報コミュニケーション講座寺田直美助教を始め, 数多くの講座の方, ならびにオープンキャンパス来場者の皆様に, 提案システムの実証実験に御協力いただいた. ここに厚く御礼申し上げます. 97

108 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 全方位動画像と可動椅子を用いた高臨場感テレプレゼンスシステムの構築 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 視覚情報メディア D 堀磨伊也 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 視覚情報メディア D 武富貴史 視覚情報メディア M 高橋英之 4. チューター 所属講座職名氏名 視覚情報メディア助教神原誠之 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月可動椅子 VR Motion Chair/ 慣性力体感用 消耗品費 月全方位画像撮影用の補助品一式 月操作用インタフェース一式 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 実験用撮影旅費 /3 名 月 SIGGRAPH2008(Los Angeles) /6 泊 8 日 / 調査 月 IEEE VR2009(Lafayette, Louisiana) /6 泊 8 日 / 発表 合計

109 6. プロジェクトの背景と目的遠隔地の情景を提示し, ユーザにその場にいるかのような感覚を与える拡張現実感技術はテレプレゼンスと呼ばれ, 高臨場感なシステムの構築が要求されている. テレプレゼンスにおいて, ドライブシミュレータや遊園地のバーチャルアトラクションなど, 可動椅子などの力覚デバイスを用いることにより臨場感を高めるシステムが存在する. 現実環境と同様の感覚を可動椅子によって与えるためには一般的に多くの可動軸が必要である. 従来, 自由度が低い可動椅子を用いた場合には, 一定時間継続して働く慣性力などを実現することは困難であった.CICP2007 でわれわれが提案した 立体映像を用いた高臨場感バーチャルジェットコースターシステムの開発 では,2 軸の可動軸を持つ振動椅子を用いて, ユーザに重力の一部を慣性力として擬似的に体験させるシステムの構築を試みた. しかし, 再現できたのは横方向の慣性力 ( 遠心力 ) のみで他の方向の慣性力は再現できなかった. また慣性力の大きさは画像処理により検出したジェットコースターのレールの曲率から手動のパラメータを用いて決定していたため, 動画像から自動的に慣性力を再現することは困難であった. そこで本プロジェクトでは, 対象を一般的な環境に拡張するために, 提示する動画像から特徴点をトラッキングすることにより推測されるカメラ位置 姿勢情報を用いて, 前後左右すべての方向にかかる慣性力の大きさを自動的に推定する. これにより, 移動しながら撮影した動画像を入力するだけで, 可動椅子を用いてユーザに撮影時と同様の慣性力を体感させるシステムを自動的に構築する. 99

110 7. 目的到達までの研究計画前述の研究目的を達成するために以下の項目について研究を推進する. (a) 全方位動画像の撮影およびカメラ位置 姿勢の推定 (6 月 ) ジェットコースターや走行車両などのユーザが体感する慣性力が大きい環境を想定して, 自由経路を移動しながら入力となる動画像撮影を行う. 入力となる動画像は, 全方位型マルチカメラシステムを用いて撮影することにより, ユーザに提示する際に自由に視線変更が可能である. 図 1 にマルチカメラシステムで撮影された画像例を示す. 可動椅子に与える振動と傾きを計算するために, 撮影された画像から特徴点をトラッキングし, カメラの位置 姿勢情報を推定する. 特徴点のトラッキングは既存の手法を用いる. (b) ユーザが体感する慣性力の推定および可動椅子に与える傾きの算出 (7-9 月 ) 図 2 に用いる可動椅子の例を示す. 可動椅子は, 従来われわれが CICP2007 で用いた椅子 [3] よりも可動範囲の広い椅子を用いることにより臨場感を高める. 推定されたカメラ位置 姿勢情報から移動時に体感する慣性力の方向と大きさの推定を行う. このとき, 慣性力が働く方向に可動椅子を傾けるため, ユーザは現実環境とは異なる方向に傾くことになるが, 没入型ディスプレイにユーザの傾きに応じた映像を提示することにより, ユーザの重力の一部を慣性力として擬似的にユーザに体感させる. ユーザが体感する慣性力の例を図 3 に示す. 実験ではヘッドマウントディスプレイのような没入型ディスプレイに映像を提示することにより, ユーザに現実環境の傾きを知覚させないようにし, 慣性力を擬似的に体感させ, 実際に移動しているかのような感覚を与える. (c) 可動椅子のユーザに提示する映像の生成 (10 月 ) 本手法は, 入力画像に全方位画像を用いることによりユーザは自由な視線方向の見回しが可能である. しかし, 従来手法では視線を変更させても可動椅子の傾きは変わらず, 進行方向の慣性力しか再現されなかった. 本プロジェクトではユーザが視線を変更した場合にその提示動画に応じた傾きと振動を再現することにより, ユーザに視線画像に応じた慣性力を体感させる. (d) 各種実データを用いた被験者実験による有効性の検証 評価 (11-2 月 ) 実験では移動時の加速度を計測し, 再現される慣性力と比較評価実験を行う. また複数のユーザに対して主観評価実験を行い, 本システムの有効性を示す. Real roller coaster Motion chair User s view Inertia force User s view Inertia force Gravity (a) 実世界 (b) 仮想環境 図 1. 全方位画像の一例図 2. 可動椅子の例図 3. ユーザが体感する慣性力 100

111 8 決算の要約 金額(千円) 支出予定月 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 設備備品費 消耗品費 旅費 調査目的も可 月 没入型映像提示用装置一式 214 6月 全方位映像取得用機材一式 37 2月 風力発生装置一式 42 6月 操作用インタフェース一式 490 8月 国際会議 SIGGRAPH2008/LosAngeles 調 査 220 9月 国際会議 ISMAR2008/Cambridge student volunteer 8 合計 9月 日本バーチャルリアリティ学会 発表参加費 1111 9 プロジェクトの状況および自己評価の要約 本プロジェクトでは臨場感の高いテレプレゼンスシステムの構築のために慣性力効果 映像効果 体感風 力効果の 3 つの効果を付加した 慣性力効果では自由度の低い可動椅子を傾けることによってユーザの重 力から擬似的な慣性力の再現を行った 実環境の慣性力の大きさおよび方向は移動時に撮影された全方位 動画像のみから画像中の特徴点を追跡することによりカメラパスを求め 算出された加速度から自動的に推 定した 推定された慣性力とユーザの重力の合力をテレプレゼンスでは可動椅子を傾けることでユーザの重 力で代用した 映像効果では 角度センサを装着したヘッドマウントディスプレイを用いることで 没入感を高 め ユーザの頭部の動きに対応して自由に視線映像の変更を行った 体感風力効果では 送風機の電源を 映像と同期して自動的に on/off を切り替えることにより ユーザに風を当て臨場感の向上を行った スプリングセミナーでは試作テレプレゼンスシステムを構築しデモを行った 可動椅子が横方 向に動かない問題が生じたが一連のシステムとして動作したので高評価につながったものと考えられる ただし デモではシーケンスが短いために十分な慣性力が得られなかった 画角が狭いので没入感が足りな いといった意見も得られたので今後の課題としたい 最後に 予算の一部として調査で参加させていただいた国際会議では 最先端の仮想現実感技術に関す る研究を聴講することができ 非常に得るものが大きかった またプロジェクトの成果の一部として技術的に新 規性を持たせ国内外で学術発表を行うことができたため 一定の成果を出すことができたと自負する 101

112 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 全方位動画像と可動椅子を用いた高臨場感テレプレゼンスシステムの構築 堀 磨伊也 1 概要 背景と狙い 遠隔地の情景を提示し ユーザにその場にいるか のような感覚を与える拡張現実感技術はテレプレゼ ンスと呼ばれ 高臨場感なシステムの構築が要求さ れている テレプレゼンスにおいて ドライブシミュレ ータや遊園地のバーチャルアトラクションなど 可動 椅子などの力覚デバイスを用いることにより臨場感を 高めるシステムが存在する 現実環境と同様の感覚 図 1 本プロジェクトで用いる可動椅子 を可動椅子によって与えるためには一般的に多くの 可動軸が必要である 従来 自由度が低い可動椅 て頂くことにより本システムの有効性を示す 子を用いた場合には 一定時間継続して働く慣性 以下 2 節ではプロジェクトの進捗について詳述し 力などを実現することは困難であった 3 節ではプロジェクトの成果 4 節では今後の展開 CICP2007 でわれわれが提案した 立体映像を用 最後に 5 節では自己評価について述べる いた高臨場感バーチャルジェットコースターシステム の開発 では 図 1 に示す 2 軸の可動軸を持つ振動 2 プロジェクトの進捗 椅子を用いて ユーザに重力の一部を慣性力として 本プロジェクトでは臨場感の高いテレプレゼンスシ 擬似的に体験させるシステムの構築を試みた しか ステムの実現のために慣性力効果 映像効果 体 し 再現できたのは横方向の慣性力 遠心力 のみ 感風力効果の 3 つの効果を付加した 以下に それ で他の方向の慣性力は再現できなかった また慣性 ぞれの手法を詳述する 力の大きさは画像処理により検出したジェットコース ターのレールの曲率から手動のパラメータを用いて 2.1 慣性力効果の再現 決定していたため 動画像から自動的に慣性力を再 本プロジェクトでは テレプレゼンスにおいて慣性 現することは困難であった 力をユーザの重力から擬似的に生成することで臨場 そこで本プロジェクトでは 対象を一般的な環境 感の向上を図る 図 2 に慣性力の生成手法の概念 に拡張するために 提示する動画像から特徴点をト 図を示す 現実環境では 加速度が発生する運動 ラッキングすることにより推測されるカメラ位置 姿勢 による慣性力とユーザ自身の重力がユーザに働く 情報を用いて 前後左右すべての方向にかかる慣 テレプレゼンス環境では 図 2 (b) に示すように こ 性力の大きさを自動的に推定する これにより 移動 れらの力をユーザの重力のみから擬似的に生成す しながら撮影した動画像を入力するだけで 可動椅 る 慣性力の方向および大きさは加速度に依存して 子を用いてユーザに撮影時と同様の慣性力を体感 変化するが テレプレゼンス環境においてユーザの させるシステムを自動的に構築する デモンストレー 重力の大きさおよび働く方向は変化しないため 本 ションではプロトタイプのジェットコースターシステム 手法では可動椅子を傾けることにより ユーザに擬 の構築を行い スプリングセミナー参加者に体験し 似的な慣性力および擬似的な重力を体感させる 102

113 (a) 現実環境 (b) テレプレゼンス 図 2. 提案手法の概念 ここでは, ユーザの傾きは現実環境のユーザの傾 きとは異なるが, 没入型ディスプレイを用いて実写映 像を提示することにより, ユーザは実験環境での現 実世界に対する傾きが認識できなくなる. これにより 自らの重力から生成された力を慣性力として擬似的 に体感する. なお, 現実環境においてユーザが体 感する慣性力の方向および大きさは, 加速度が発 生する運動時に撮影された動画像から推定する. 以 下に, 各処理の詳細を述べる. 慣性力は加速度が発生する運動時に加速度が働 く方向とは逆方向に働く見かけ上の力であり, 以下 の式で表現される. ここで F inertia F inertia ma (1) は慣性力のベクトル, m はユーザの質 量, a は移動車両の加速度のベクトルをそれぞれ表 す. 式 (1) に示されるように, 慣性力のベクトルは移動 時の加速度ベクトルから算出を行う. 本手法では, 加速度が発生する運動時に撮影された全方位動画 像を用いて移動時のカメラの外部パラメータを推定 することで, 撮影時の動画像の各フレームにおける加速度ベクトルを推定する. カメラ外部パラメータの推定手法として図 3 に示すような全方位型マルチカメラで撮影された動画像を利用する. この手法は structure from motion 法に基づき, 複数の投影中心を持つマルチカメラシステムに対応するように拡張した手法となっている. 自然特徴点は Harris オペレータにより追跡の容易な画像特徴を検出して特徴点の候補位置とし, ロバスト推定によって誤追跡を検出しながら自動的に追跡する. 正確なカメラ外部パラメータを推定するために自然特徴点の候補は, 特徴点の信頼度やテンプレート間の誤差などの複数の指標を用いて追加 削除を行い, 自動的に追跡される. 特徴点追跡の様子を図 4 に示す. 図 4 においてカメラ外部パラメータ推定に用いられた特徴点を 印で示す. ここでマルチカメラシステムの内部パラメータ ( 各カメラユニット間の位置 姿勢関係および各カメラユニットの内部パラメータ ) は校正済みで既知とする. 推定されたカメラ外部パラメータから算出されるカメラパスの例を図 5 に示す. 推定されたカメラ外部パラメータからカメラの移動時の加速度の算出を行う. まず各フレームにおける 3 次元位置の変化量から移動速度の推定を行う. このとき各カメラの 3 次元位置は, 推定誤差と撮影時のカメラの高周波振動による影響を含んでおり, 本プロジェクトで目的とする一定時間継続して働く慣性力の再現には不必要なため, これらの影響を取り除く必要がある. 本手法では, 移動速度を算出したいカメラ位置の前後数フレームにおいて推定された移動速度を平均化した値を各フレームにおけるカメラの移動速度とすることで, この問題を解決する. この移動速度の算出は, 推定誤差と撮影時のカメラの高周波振動による影響がない場合には, 速度が滑らかに変化するという仮定に基づいている. その後, 推定された各フレームにおける速度ベクトルを微分することにより加速度ベクトルの算出を行う. テレプレゼンスにおける可動椅子の傾きは, 現実 103

114 図 3. 全方位型マルチカメラシステム図 4. 特徴点追跡の様子図 5. カメラパスの推定結果例環境においてユーザが体感する慣性力と重力の大きさおよび方向から算出する. 本プロジェクトでは算出された慣性力およびユーザの重力の合力をテレプレゼンス環境におけるユーザの重力で代用する. 現実環境においてユーザが体感する慣性力と重力の合成ベクトルの方向とテレプレゼンス環境におけるユーザの重力方向を一致させることにより擬似的な慣性力をユーザに体感させる. 現実環境においてユーザが体感する合力およびテレプレゼンス環境で慣性力の実現に用いるユーザの重力は, 共にユーザの質量のパラメータが含まれるため, 実現される可動椅子の傾きにユーザの質量は依存しない. 2.2 映像効果の再現 テレプレゼンスにおいて, ユーザに重力を用いて擬似的な慣性力を体感させるために, 現実環境におけるユーザの傾きをユーザに認識させない必要がある. 本プロジェクトでは, ユーザに現実環境に対する傾きを認識させないために, 映像提示用の装置として図 6 に示す没入型のヘッドマウントディスプレイを用いる. ユーザに提示する映像は, ユーザの体と提示映像の環境の位置関係を現実環境と同様にするために, 提示映像をユーザの傾きに応じて変化させる必要がある. このときユーザには常に現実環境におけるユーザの視線画像と同様の映像を提示する必要があるが, これはヘッドマウントディスプレイにより実現可能である. 図 7 に示す全方位動画像の一部を透視投影変換することによりユーザ視点画像を生成し, 提示することが可能である. ユーザ視点画像の例を図 8 に示す. また本プロジェクトでは, ユーザの視線方向を図 6 に示す角度センサにより計測することで, テレプレゼンスにおいてユーザが周辺を見回した場合に視線方向に応じた映像を提示可能とするユーザとのインタラクション機能を追加することにより, さらに臨場感の高いテレプレゼンスシステムの構築を試みる. 2.3 体感風力効果の再現移動時に風力を体感させることにより臨場感の向上を行う. ブロワと呼ばれる送風機によりユーザに移動時の体感風力効果の再現を行う. 映像と同期して送風機の電源の on/off を自動的に切り替えることにより強弱を付加する. 3. 成果 3.1 テレプレゼンスシステムの構築提案手法の有効性を示すために実写動画を用いて実験を行った. 没入型のディスプレイとしてヘッドマウントディスプレイ (Daeyang, i-visor FX601) と2 軸の可動軸を持つ可動椅子 (Kawada Industries, JoyChair) を用いて試作テレプレゼンスシステムを構築した. この可動椅子はロールとピッチの2 軸を持ち 104

115 図 6. 角度センサ付ヘッドマウントディスプレイ 図 9. 推定されたカメラパス ( 直線減速 ) 14 [frame] 図 7. 全方位パノラマ画像 [degree] ロール軸 ピッチ軸 図 10. 実装した可動椅子の傾き ( 直線減速 ) 図 8. ユーザ視点画像それぞれの可動範囲は ±15 度である. 入力動画像は, 各カメラ の解像度を持つ映像を20~ 30fpsで取得した. 実験では, 慣性力再現のための入力動画像として, 移動車両とジェットコースターに搭乗しながら撮影された全方位動画像を用いた. まず水平な地面を走行する車両から撮影された全方位動画像を用いて減速 旋回運動時にユーザが体感する慣性力の再現結果を示す. ここでは, ユーザの対軸と重力ベクトルの方向がほぼ一致する状況を仮定している. 車両が減速して停止した場合において, 移動車両から撮影された全方位動画像を用いてカメラ外部パラメータの推定を行った結果例を図 9 に示す. ここで, 各四角錘はカメラの位置 姿勢を表し, 移動車両が停止位置に近づくにしたがってカメラ間の距離が短くなる様子が分かる. このとき提案手法により実装された可動椅子の傾きを図 10 に示す. ここでピッチ軸の傾きは進行方向の傾きを示し, 減速移動により可動椅子が前方方向に傾くことにより慣性力を与えていることがわかる. また直線に近い経路を減速移動しているために, 進行方向に対して垂直横方向の傾きを示すロール軸の傾きには大きな変化がなかった. テレプレゼンス環境において, 可動椅子の傾きに応じた映像をヘッドマウントディスプレイに提示することにより, ユーザが減速時の進行方向に対して慣性力を体感できることを確認した. 次に, 曲線経路に対して車両が旋回して移動した場合に, 移動車両から撮影された全方位動画像を用いて慣性力の再現を行った. 図 11 は推定されたカメラ外部パラメータを用いて描画したカメラパスである. 推定されたカメラパスが左方向に大きく湾曲していることが分かる. 提案手法により実装された可動椅子の傾きを図 12 に示す. 旋回時に回転中心に対して外向きに慣性力が働いているために, ロール軸に対して慣性力の大きさに比例して可動椅子が傾いていることが分かる. テレプレゼンスにおいて, モ 105

116 図 13 スプリングセミナーでのデモの様子 図 11 推定されたカメラパス 左旋回 問題が生じたが 風力効果が十分にあったため 来 [frame] 3 場者には好評だった ただ風力に関しても on/off の パターンしか表現できなかったため 今後は多段 階の切り替えを可能とすることで臨場感の向上を試 -2-3 みる必要がある また デモではシーケンスが短いた -4-5 めに十分な慣性力が得られなかった 画角が狭い -6-7 [degree] ロール軸 ので没入感が足りないといった意見も得られ 長い ピッチ軸 図 12 実装した可動椅子の傾き 左旋回 シーケンスを作成し 画角が広いヘッドマウントディ スプレイを用いる必要があると感じた ーションベースの傾きに応じた映像をヘッドマウント ディスプレイに提示することにより ユーザが旋回時 3.3 学会参加報告 に回転中心に対して外向きに慣性力を体感できるこ 国 際 会 議 SIGGRAPH2008 に 聴 講 参 加 堀, とを確認した 8/11-15 最後にジェットコースターに搭乗しながら撮影され SIGGRAPH は アメリカコンピュータ学会における た全方位動画像を用いて慣性力の再現を行った コンピュータグラフィックス (CG) を扱う SIG(分科会) 撮影された全方位動画像を用いて推定したカメラ外 であり また同分科会が主催する国際会議 展覧会 部パラメータから描画したカメラパスの例を図 5 に示 の一つである 口頭発表およびデモ展示が多数行 す 図 5 からジェットコースターが一時上昇して 左 われていたが 口頭発表では特に N. Snavely らの に旋回しながら下降していく様子が分かる この結 Finding Paths through the World's Photos に興味 果を用いて慣性力の再現を行った この再現デモを を惹かれた この研究は観光地などで撮影された沢 スプリングセミナーでの発表で行うことで有効性を示 山の写真からカメラ位置を推定し 観光客がたどっ した たパス推定 パノラマ作成などを行うものであった 本プロジェクトとはテレプレゼンスにおいて臨場感を 3.2 スプリングセミナー オープンキャンパスでの発表 向上させる目的で一致しており カメラ位置姿勢を (武富 高橋 3/13-14) 推定する原理に同様の手法が用いられているため プロジェクトの成果の一つとしてスプリングセミナ 映像の提示方法など非常に参考になった またデモ ー オーンキャンパスにてデモを行った デモではジ 展示では CG を用いたドライブシミュレータが多数行 ェットコースターの動画を用いてエンターテインメント われており 本プロジェクトで行っている研究に需要 性を向上させた デモの様子を図13に示す があることを再確認した 当日のデモでは可動椅子が横方向に稼動しない 106 国際会議 ISMAR2008 に Student Volunteer とし

117 て参加 (武富 9/15-18) テレプレゼンスシステムの情報収集のため IEEE 4 今後の展開 and ACM International Symposium on Mixed and 慣性力の再現を行う際にジェットコースターでは Augmented Reality 2008 (ISMAR 2008)に student 移動速度が高速なために特徴点のトラッキング精度 volunteer として参加した ISMAR 2008 で行われた が下がり 慣性力ベクトルの推定が可能であったシ 多くの発表の中でも 特徴点トラッキング技術に関す ーケンスが短いという問題があった 今後はこの問 る研究発表は 本プロジェクトで採用している 題を解決するために 動画の取得フレームレートを structure from motion 法と関連しており 非常に興 向上させるか 速度にロバストなトラッキング精度に 味深かった また student volunteer として参加した よりカメラパスを推定する必要がある ユーザが体感 ことで 他国の同年代の学生と議論することができ する風力に関しても現実環境と動揺の大きさに近づ 非常に有意義なものであった けることでさらに臨場感の向上が図れるものと考えら CICP 模擬国際会議に参加 堀 高橋, 9/19 れる CICP 模擬国際会議ではプロジェクトの中間報告とし また本プロジェクトでは 現実環境とは異なる傾き て英語で口頭発表を行った プレゼンテーションに を可動椅子によって与えるため バーチャルリアリテ おいてスライド作成と発表時の態度の重要さを再確 ィによる酔いが発生する問題が生じた 今後はこの 認できた メンバーも質疑で参加することで英語に ような酔いの影響を軽減する方法に関して考察する 対する意識の向上が見込めた 必要がある 本プロジェクトの成果として慣性力再現の部分で 5 自己評価 学術的に新規性を持たせ 以下に示す複数の学会 今回スプリングセミナーでの発表までに実装でき で発表を行った なかった点があったが スプリングセミナーでは一連 国際会議 KJMR2008 にて口頭発表 堀 6/21-22 のシステムとして動作したので高評価につながった タイトル Telepresence system with inertial force ものと考えられる 今回 連続した長いシーケンスで sensation using omnidirectional video and motion カメラパスが推定できなかったため発表までに実装 chair できなかった点があったのが残念であるが スプリン 国内会議 第 13 回 日本バーチャルリアリティ学会 グセミナー参加者から頂いた意見を参考にしてさら にて口頭発表 堀 9/24-26 タイトル モーション に臨場感が高いシステムの構築を目指したい チェアと没入型ディスプレイを用いたテレプレゼンス プロジェクトの予算に関しては SSD など動画再生 のための慣性力の再現 高速化に特化した装置 または風力体感用装置な 国 際 会 議 3DUI2009 に て ポ ス タ ー 発 表 堀 ど特殊な機能を付加した備品を多く購入できたため 3/14-15 タイトル MR Telepresence System with 予算の有用な使用ができたものと自負する Inertial Force Sensation Using Motion Platform and また 調査で参加させていただいた国際会議では Immersive Display 最先端の仮想現実感技術に関する研究を聴講する ことができ 非常に得るものが大きかった 最後にプ 以上 口頭発表 2 件 ポスター発表 1 件を行った ロジェクトの成果の一部として技術的に新規性を持 国際会議においても一定の評価をされたことから研 たせ学術発表ができたことが評価できると考えられ 究としても十分な新規性があることがわかった る 107

118 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 Field Study of Cataract Diagnosis in Indonesia Towards Integration of ICT and Health Care for Developing Countries 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス Advanced Intelligence D Retno Supriyanti 3. 分担者 所属講座学年学生番号氏名 アドレス none 4. チューター 所属講座職名氏名 Advanced Intelligence Assistant Professor Hitoshi Habe 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 June 08 Digital Camera Canon IXY-D820IS June 08 Wireless remote flash light June 08 Tripod SLIK 381 PRO 3250 June 08 SD memori SD-S2G(I.ODATA) June 08 PC notebook Dynabook TX TX/66FPK PATX66FLPPK 耗品費 August 08 Fees for data collections (We ask a person in Indonesia for 100 hours ) 旅費 ( 調査目的も可 ) July 08 First travel to Indonesia (1 person ) August 08 Second Travel to Indonesia (1 person) Nov. 08 Third travel to Indonesia (1 person) Jan 09 HEALTHINF 2009 Conference in Portugal 合計

119 6. プロジェクトの背景と目的 1. Background A cataract is a clouding in the lens that interferes with vision. This is a primary cause of blindness. Fig. 1 and Fig. 2 show the examples of cataract and normal image. To avoid blindness caused by cataract, we must detect it at an early stage. Today, eye doctors use slit-lamp to detect cataract as shown in Fig. 3. It is not a problem for developed country like Japan to do this, but it becomes a problem for developing countries like Indonesia because of both eye doctors and healthcare facilities are limited. Fig 1. Cataract eye Fig 2. Normal eye Fig 3. Slit Lamp Fig 4. Our system 2. Purpose We will develop an easy- to- use and low cost compact screening system for cataract to enable everyone to detect cataracts at an early stage without special equipment (Fig. 4). Toward this end, we have developed image processing based screening system shown in Fig.5 and we already tested this method by several images. The result shows a good performance to screen cataracts but the problem is that a lot of images was taken in Japan, while we will implement this system into developing countries that have different condition like the numbers and seriousness level of cataract patient, range of health facilities and how eye doctor handle this situation, so in order to improve our system we need to know the real problem and take images from the developing countries. Based on this problem, in this project we will emphasis on the input images. In this project, we will (1) collect actual images of cataract patients in Indonesia, we have target to collect at least 500 cataract and normal images taken in the same condition and (2) discuss with some eye doctors and staff in eye clinics in Indonesia what kinds of system will improve their healthcare condition. This field study is the dominating purpose of this project. In addition, we will also (3) have a meeting with researchers at ITB (Institut Teknologi Bandung) who have being developing a telemedicine system and make a plan for future collaboration. We hope this project would be a good opportunity to make a good relationship between NAIST and ITB, one of the leading institutes in Indonesia. Current research, 1 In this project, we will take images 1 Capture input image images data and and investigate the real condition algorithm based on 2 Localize pupil in developing countries condition in Japan 3 Detect frontside reflection 2 4 Search backside reflection Diagnose cataract 109

120 7. 目的到達までの研究計画 June 2008 Prepare equipment to take photographs in Indonesia. a. Special equipment to fix the chin of patient. b. Digital cameras Canon IXY 1000 and Nikon D80 to compare their image quality and conformity to our system. Flash light which has various kinds of light source s shape. We will investigate the effect of light source s shape. July November st travel to Indonesia (The first week of July) (1) Give a training for some staffs in eye clinic in Indonesia about how to take cataract images based on our recommendations, (2) Discuss with some eye doctors about the real problem of cataract patients in Indonesia and how to handle this problem, (3) Have a meeting with researchers at ITB about our future collaboration. We have already contacted them. 2 nd travel to Indonesia (Second week of August) and 3 nd travel to Indonesia (Second week of November) (1) Check and take the images result that were taken by clinic s staff in Indonesia, (2) Discuss with them about the difficulties during taking photographs and try to get some suggestions about the system requirement. August-November 2008 a. Develop an algorithm for cataract screening system based on the real problem in Indonesia and accommodates some suggestion from discussion result done in Indonesia. b. Implement the algorithm into images was taken in Indonesia. September 2008 Write paper for presentation training (Conference in AWAJI) January 2009 Attend International conference about Health Informatics HEALTHINF 2009 in Portugal (if paper accepted) September 2008 Improve algorithm based on the suggestion in AWAJI and February 2009 HEALTHINF conference. January March 2009 a. Make a poster for poster presentation b. Write the progress report 110

121 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 June 11 Canon IXY D820IS 3066 June 11 SD-S2G(I.O DATA) June 11 Epson Fine Player P June 12 PATX66FLPPK PC notebook June 12 SLIK 381PRO July 14 SB-R200 flash light Nov 19 Book Support Vector Machine 消耗品費 July Data Collection August Data Collection September Data Collection October Data Collection November Data Collection 旅費 ( 調査目的も可 ) July First travel to Indonesia September Second Travel to Indonesia November Third travel to Indonesia February Attending BSB Conference (Germany) 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約 We have completed step (1) (2) to collect actual images of cataract and normal patients in Indonesia appropriate with our target about 500 images data. We tested our system into images data was taken in Indonesia and the result shows that our method has a good performance. Also we have discussions with an eye doctor and some staffs of eye clinic in Indonesia about cataract cases and possibility for implementing our system to screen cataract in Indonesia. The discussion s result shows that this system will be useful for implementing in Indonesia, especially to handle problems about health facilities and limitation of eye doctors. It s hoped that this system will reduce their job for cataract screening in rural areas therefore they can focus on the cataract s surgery only. About implementing this project, we failed to have a formal meeting with some researcher from Institute Technology Bandung to discuss about collaboration research for developing a telemedicine system because the schedule didn t match each other, but we still have a correspondence with them by . Also we change our plan to attend HEALTHINF conference in Portugal because we prefer to send our paper into 2nd International Conference on Bioinformatics and Systems Biology (BSB 2009) hold in Germany. This conference is appropriate with our research. 111

122 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 Field Study of Cataract Diagnosis in Indonesia towards Integration of ICT and Health Care for Developing Countries Project Leader : Retno Supriyanti 1 概要 背景と狙い USA or the UK, for example. However, this is a The survey about vision was done in problem for some developing countries like Indonesia indicate a high number of blindness Indonesia, Nepal, and Vietnam. Based on (around 1.5% of the total population) [1]. The conditions in developing countries like main cause of blindness is cataract. It is an eye Indonesia which has a limited number of both disease in which there is a clouding in the lens eye doctors and health facilities, implementing that affects vision [1]. The World Health Report equipment with a compact screening system for published in 2001 estimated that there were 20 several eye diseases that are common there is million people who were bilaterally blind (i.e., useful. with eyesight of less than 3/60 in the better eye) There is much related research about whose blindness was caused by age-related diagnosing cataract. For example, Sugata[3] cataracts [2]. That number will have increased to examined normal and cataract lenses and 40 million by the year Increasing age is suggested the possibility of diagnosing by associated with an increasing prevalence of measuring the attenuation characteristic of the cataracts, but in most developing countries, lens. Garif[4] applied speckle technologies and cataracts often occur earlier in life. One of the measured retinal angular resolution by laser developing countries that have the highest retinometry at the stage of preoperative cataract number of people with cataracts is Indonesia. diagnosis. It appears all research above was There are about 6 million people in Indonesia devoted to eye specialists who usually used who suffer from cataracts, but Indonesia only special equipment requiring training and some has about 750 eye doctors for a population of knowledge about cataract. Those studies are more than 200 million people (one for every valuable if implemented in conditions where people). In addition, eye doctors are not there are enough eye doctors and health facilities evenly distributed. Many eye doctors are located are equally distributed; otherwise condition is in the capital city, yet many people have no quite difficult to implement all researches above. access to eye doctors because of geographic We proposed a cataract screening system conditions. dedicated to developing countries or rural areas Today eye doctors use a slit lamp or where eye doctors and health facilities are opthalmoscope to obtain clear information about limited[5]. The research developed a simple the inside of the lens for detecting eye diseases method for cataract detection using low-cost and like cataract, but both tools are expensive and easy-to-use equipment; also the system can be require special training. These facts may not be a used by anyone and anywhere. problem in developed countries like Japan, the The final goal of our research is developing 112

123 a simple and robust screening system for cataract with a compact digital camera because it has many advantages; it is small and easily carried out, it is easy to use by anyone, anywhere, and is inexpensive. Therefore we have to study about the real condition about cataract diagnosing in Indonesia. 2. プロジェクトの進捗 In order to handle problems for detecting cataract in the developing countries, through CICP project we have goals as follows: 1. Discuss with some eye doctors and staff in eye clinics in Indonesia what kinds of system will improve their healthcare condition. We did a discussion with an eye doctor and staff in an eye clinic and got some data as presented in Section Collect actual images of cataract patients in Indonesia, we have target to collect at least 500 cataract and normal images taken in the same condition. We asked a staff in an eye clinic and got images data appropriate with our goal. 3. Have a meeting with researchers at ITB (Institut Teknologi Bandung) who have being developing a telemedicine system and make a plan for future collaboration. We failed to make a formal meeting with researcher from ITB caused by our schedule didn t match each other. But we still make a correspondent by 成果 The result for each goal of CICP project summarized in the following paragraphs: 3.1 Discuss with some eye doctors and staff in eye clinics in Indonesia In order to get an actual information about cataract diagnosis in the developing countries, we made an investigation in an eye clinic located in Purwokerto, Central Java, Indonesia. Central Java district has area ,12 km consists from 35 cities with population people. Figure 1 and Figure 2 show the building of this clinic and the number of visitors in this eye clinic. Fig.1. Kamandaka eye clinic Number of patient Year Fig.2. Number of patients Cataract is an eye disease that can be cured by a surgery only. Figure.3 describes a relationship between number of cataract patient and capacity of surgery in this eye clinic. Number of patient cataract sufferer Year capacity of surgery Fig.3. Histogram of patient vs surgery 113

124 The increasing number of ratio between cataract patients and capacity of surgery will affect to the increasing number of cataract patient. A lot of cataract patients didn t get a surgery treatment caused by the limitation of health facilities and eye doctors, while the number of new cataract patients also increase. In other hand, eye doctors are not only doing a surgery for the cataract patients, but also they have to make a diagnosis for all eye disease s patient, therefore it will affect to their time schedule for doing surgery Collect actual images of cataract patients in Indonesia We developed a system for cataract diagnosis as shown in Figure 4. Fig.4. System flow chart Through CICP project, we tested our system into real patient in Kamandaka eye clinic. We ask a staff in this clinic to take 500 images to evaluate our system s performance. Figure 5 shows a condition during taking a photograph by a staff in this eye clinic. Fig.5. Taking a photograph by a staff We tested our system into 500 images was taken in Indonesia. Based on the diagnosis an eye doctor, there were 236 images of serious conditions and 264 images of non-serious conditions. Images were taken using a Canon IXY D820IS. To build the system, we used Matlab R2007B with image processing toolbox and SVM toolbox. In order to make a cross validation for our method, we did evaluation several times until all data were evaluated. Table.1. shows evaluation performance of our system. The result shows that our method has a good performance. It presented by the percentage value of TP and FP. Table.1. Performance Evaluation By Eye doctor Serious Non-serious By System Serious 220 (TP) 76 (FP) Non-serious 16 (FN) 188 (TN) Based on the Table.1 we compute the percentage value of True Positive Rate (TPR) and False Positive Rate (FPR) by following equation; TP TPR TP FN Therefore, the percentage value of TPR is; % TPR 100% % 114

125 This value means that our system has 93.22% success to diagnose serious conditions in the whole patient with serious condition. In other hand, the value of FPR computed by following equation: FP FPR FP TN Therefore, the percentage value of FPR is: % FPR 100% % This value means that our system has 28.79% to diagnose non-serious condition regarded as a serious condition. Regarding the conditions in the developing countries like in Indonesia which has limitation both of eye doctors and health facilities, implementing this method is sufficient. It has been proven by following data: Diagnosis by eye doctor Refer to the data in 2007 from the Figure 1, number of cataract patient is 4958 while capacity of surgery is only 236 therefore each surgery need 1 hour. This eye clinic have 1 eye doctor only and by assumption that allocation work for cataract is 3 hours each day therefore in a year is 720 hours. Based on this assumption, we can calculate time allocation for diagnosing as follow: Diagnosing time = = 484 hours It is means that 484 hours is spending for diagnosing cataract, therefore each diagnose need about 0.09 hours 6 minutes. Our system By implementing our system, we get an improving performance as describe in the following data; The number of cataract patients is 4958 and the performance of our system is 93.22%, therefore we can calculate our system s performance: Successful diagnosis : 93.22% Because our system still has an error during diagnosing process, therefore we can calculate remaining error as following Remaining diagnosis = = 336 The remaining diagnosis means that eye doctor have to check again and the calculation as following: Diagnosis time by eye doctor = hours Based on the value, we can calculate time allocation for surgery as following Surgery time = = 689 hours It is means that eye doctor can spend 689 hours for doing a surgery. The number shows a surgery s improvement is about 292% comparing if the diagnosing did without implementing our system. Summary of our system s performance is shown in Table 2. Table 2 Performance evaluation Time allocated for diagnosis Time for surgery allocated Diagnosis eye doctor by Our system 484 hours 31 hours 236 hours (236 surgeries) 689 hours (689 surgeries) 3.3 Have a meeting with researchers at ITB (Institut Teknologi Bandung) Some researchers from ITB is developing a telemedicine system which connecting 7600 units of Puskesmas (Primary Community Health Center) nation wide. Today, their research 115

126 focuses on the topic about Mother-Child /Antenatal telemedicine to reduce the number of mortality in Indonesia. But in the future, they will extent some applications in their telemedicine system like tele-consultation, simple tele-diagnostic, tele-coordination and tele-education. By considering the problems of cataract diagnosing in Indonesia, It will be useful if our system integrated in the telemedicine system which they are developing now. We already made a contact with them by and by phone, but we were fail to have a formal meeting caused by our schedule didn t match each other. 4. 今後の展開 Our system is promising for implementing into real condition as in the developing countries or rural area. Although there are some error classifications, but basically it's sufficient for implementing in the real condition. It has been proving by the fact that by implementing our system will improve about 292% of surgery s capacity. Further research will involve a possibility to have a collaboration research between our system and telemedicine system. 5. 自己評価 The results obtained thus far seem very promising. Although a part of the aims in this project didn t implement. We didn t have an opportunity to have a meeting with some researcher from Institut Teknologi Bandung (ITB) who developed a telemedicine system for some area in Indonesia. Considering the geographic condition and financial condition for the people who lived in Indonesia, therefore a collaboration research between our system and a telemedicine system is very important for implementing our system in the real condition. Furthermore, we are improving the performance of our system and having a contact by with some researcher in Indonesia to discuss about a collaboration research. It s hoped that we get another grant for implementing this collaboration research. References [1]. H.Shidarta, eye Disease, 1 st ed, Balai Penerbit FKUI, Jakarta, [2]. G.Brian and H.taylor, Cataract Blindness-Challenges for 21 st Century. In Bulletin of the World Health Organization Report, 2001 [3]. Y.Sugata.,K.Murakami., I.Masayu and Y.Yamamoto, An Application of Ultrasonic Tissue Characterization to the Diagnosis of Cataract, Acta Opthalmol, Vol 70, Suppl 204, page 35-39,1992. [4]. G.. Garif, V.Valerie,Y.Elena, and G. Alexander, Speckle Technologics and Measurement of Retinal Visual Actuity in Cataract Patient, Proceeding of SPIE, Vol. 4156, page , [5]R. Supriyanti, H.Habe, M.Kidode and S.Nagata, A Simple and Robust Method to Screen Cataracts using Specular Reflection Appearance, SPIE Medical Imaging International Conference, San Diego California,

127 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 拝啓添削者様 ~ ブログパーツで繋がる相互添削ネットワーク ~ 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 自然言語処理学講座 M 井之上直也 naoya-i@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 自然言語処理学講座 M 江口萌 megumi-e@is.naist.jp 自然言語処理学講座 M 有木隼人 hayato-a@is.naist.jp 4. チューター 所属講座職名氏名 自然言語処理学講座助教浅原正幸 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 開発 データ解析用ラップトップ 3 台 (Panasonic CF-T7 2,Fujitsu FMVNFA70W) 月 Dell PowerEdge SC1435 Opteron2.0GHz/ 4GB/500GB 1 台 消耗品費 通常の研究費でも購入可 40 6 月 HDD/Seagate Barracuda ES.2/1TB ( データ収集用 ) 1 個 能な物品に限る 50 6 月 周辺機器 ( マウス 3 個 ディスプレイ 1 台 ) 30 6 月 ラップトップ用メモリ /SO-DIMM/1GB 3 個 50 6 月 ソフトウェア /Web オーサリングツール 1 本 月 ソフトウェア /Adobe Photoshop CS3 1 本 40 6 月 書籍 ( 自然言語処理 / サイト制作 / サーバー管理 ) 旅費 ( 調査目的も可 ) 国内 海外いずれも可 月 武蔵大学で宣伝 ( 東京 ) 交通費 宿泊費 /1 泊 2 日 3 人 月 韓国 高麗大学で宣伝交通費 宿泊費 /2 泊 3 日 1 人 月 NLP 若手の会 /1 泊 2 日 3 人 合計 ( 上限 1,500 千円 )

128 6. プロジェクトの背景と目的急速な情報通信技術の発展により 外国を身近に感じられるようになった アニメーション 映画等の文化的国際交流を通じ外国語を学び始めた という人も多い 韓流ブーム 海外における OTAKU 文化がその一例である インターネット上では 外国語の練習や海外への情報発信の為 外国語でブログを書こうと考える人も多く 外国語学習に対する需要は高まっている ネット上には 相互添削型 SNS や多くの Language Exchange サイトが存在するが 情報発信媒体が限られる 見知らぬ外国人と連絡を取り続ける事が難しい等の問題がある そこで 次の 2 つを目的とするプロジェクトを提案し 現状の改善に取り組む (1) 外国語学習者 外国語による情報発信者を手助けする相互添削ネットワークを築く ブログパーツの貼り付けだけで参加可能な 母国語相互添削型サービスを構築する 現在 サービスの運営は日本語 英語 韓国語版を予定しているが 添削対象となる言語に制限は課さない (2) 誤用データを自動収集し 誤用コーパスとして自然言語処理に活用する 添削箇所の対応付けを取得可能な添削インターフェイスを作成し 収集したデータを他研究に活用する 活用方法についてはウェブサイトの運営と並行して議論を重ね 実用可能なものはサービスに取り入れる 現時点では 添削候補の自動提示システムを考えている 利用者は 既存の多種多様なブログサービスと組み合わせて手軽に添削ネットワークに参加でき 更に各種言語の誤用データを自動収集できるという革新的プロジェクトである 7. 目的到達までの研究計画 下図のように 作業を I~IV の 4 つに分割し プロジェクトを運営する ウェブサイト運営知識の獲得 誤用コーパス活用の議論 コーパス活用アプリ作成 ウェブサイト作成 運営評価 改善 運営評価 改善 試運営 ウェブサイト運営 サービスの宣伝 6 月 7 月 8 月 ~10 月 11 月 12 月 ~3 月 (I) (II) (III) (IV) 基礎知識学習と 運営 資源活用の 資源活用 サービス構築 為の準備 * ウェブサイト運営知識の獲得 :Web プログラミング言語 ウェブサイト運営に関する知識 * 試運営 :Closed Beta 方式 会員数十人規模 併せてサービスの評価 改善を行う 118

129 次に 本プロジェクトが提案するサービスの概要について述べる 本サービスは 利用者同士が自分の母国語で書かれた他人の記事を添削することにより成立する 相互添削型ネットワークである 会員登録は任意とし 添削品質の評価は利用者の判断に任せるものとする 会員登録を行うと 添削履歴表示 添削結果メール通知等の会員向けサービスを利用できるようになる 添削を受ける場合 まずは利用者が運営するブログサービス HP レンタルスペース等にブログパーツを貼り付ける ブログパーツの実態は HTML タグであり 多くのブログサービスで手軽に設置可能なものである 次に 添削を受けたい部分を特定のタグで括り 記事をアップロードする ブログパーツにより 自動的に本サービス上で記事が添削可能状態になり 誰かが添削をしてくれた場合にはブログパーツで通知が行われ 添削結果を表示できる 添削を行う場合には 自身または添削対象者のブログパーツをクリックする ジャンプ先では ブログ運営者の投稿一覧 ブログとよく似た話題の添削希望記事をキーワードにより自動抽出し 表示する 利用者自身がキーワードから添削希望記事を検索できる機能等も提供し 利用者が興味のある記事を添削できるよう努める 本サービスはブログパーツを一度貼り付けてしまえば 2 回目以降は大変手軽に利用できるというのが特徴である 更に 既存の添削サービスで提供される閉じられた SNS よりも 開かれた場で添削システムを有効利用することができる その他 本サイト内で記事の投稿と添削結果表示 記事添削の全てを可能にすることで ブログ未開設者や外国語学習のみを目的とした利用者等にもサービス提供の幅を広げることができる 最後に プロジェクトの運営において予想される問題への対処方法を示す (1) 利用者数不足に起因する誤用データ不足このプロジェクトの目的達成には利用者集めが不可欠である為 様々な工夫で幅広い集客を行う予定である まず 世界の学生の多くが課題を抱える 8 月の長期休暇までにサービスを構築する 次に宣伝の一環として メンバーの出身校へ直接赴き 留学生の多く所属する外国語サークル 語学の授業でプロジェクトの紹介をさせてもらう 更に リーダーが学部時代に留学していた韓国 高麗大学の教授と連絡を取り 本プロジェクトを現地の学生に直接紹介する機会を得る予定である (2) アクセス負荷の増大によるサーバーダウン本プロジェクトの運営にはサーバーに大きな負荷がかかることが予想される為 サイトからのデータ転送量を必要最小限に抑える工夫を凝らす 画像を必要最小限に留める事はもちろん サーバー側のプログラムは処理の高速化に努め 添削インターフェイスには AJAX を利用し軽量化を図る また 万が一に備え データは頻繁にバックアップする (3) 添削者の不足添削は利用者同士がボランティアで行う為 添削希望者が添削者を大幅に上回り サービスが成立しなくなる恐れがある そこで 添削者に対する評価ポイント制や 優良添削者に対するアドバンテージ ( 添削希望記事投稿時の優先表示等 ) を設け 添削者を動機付けする また このプロジェクト発案の基になっている Language Exchange の考え方 ( 添削をしてもらい お礼に母国語の添削をしてあげる ) を利用者に知ってもらう事も重要である 119

130 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 開発用ラップトップ 3 台 (Panasonic CF-T7DW6AJR) 月 Web サイト運営用サーバー 1 台 (HP ProLiant ML115) 消耗品費 31 6 月 開発用 デモ用ディスプレイ 1 台 (DELL E228-WFP) 22 6 月 ラップトップ用メモリ 3 個 (IO DATA SDX667-1G) 旅費 ( 調査目的も可 ) 93 9 月 NLP 若手の会 ( 熱海 )/1 泊 2 日 3 人 16 9 月 武蔵大学で宣伝 ( 東京 )/1 泊 2 日 1 人 35 1 月 自然言語処理研究会 ( 東京 )/1 泊 2 日 1 人 合計 1, プロジェクトの状況および自己評価の要約当初の計画では サイト公開を8 月前後としていたが 実際には4 月公開を予定しており計画よりも大幅に遅れてしまった しかし 現在サイトはほぼ完成されており 予定通りサイト上にはブログパーツを使った投稿機能やブラウザ上で簡単にできる添削機能などが実装された そのため 既存の添削サービスで提供される閉じられた SNS よりも 開かれた場で添削システムを有効利用することができ 外国語学習者の更なる利便性をもたらすものができたと考える また 外部発表は予定よりも多い3つの場で行う事ができた 多くの人々にこのプロジェクトに興味を持って頂き 意見を聞く事ができた 特に 武蔵大学韓国文化サークル チングでの宣伝では 聴講者の大部分が語学学習者であったため 実際の利用者の立場からの意見を多く聞くことができた スプリングセミナーにおいても 高校生から社会人の方まで多くの人々に興味を示してもらえた 総じて サイトが公開された時に是非利用したいという意見が多かった また サイトを狙ったスパム ( でたらめな添削 ) や 添削者のモチベーション維持への対応方法についての質問が多かった スパムに対しては 複数人からの添削情報をまとめて保持するのではなく個人ごとに添削情報を保持し 表示するようにする モチベーション維持に関しては 添削者へのポイント付与などを行うことや 添削者が投稿した記事を人目に付きやすい位置に表示するなどを対応として考えている 今後の課題として サイトの多国語化が挙げられる 現在は 日本語と英語にのみ対応しており 言語に依存しない外国語学習者の支援を目指す本プロジェクトにおいては不十分だと考える もう1 点の課題として 添削支援システムの更なる検討がある 現在は自動的な添削候補の提示を目指し 王らの手法 [1] の導入を検討している 120

131 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 拝啓 添削者様 ブログパーツで繋がる相互添削ネットワーク プロジェクトリーダ 井之上 直也 1 概要 背景と狙い 韓国語を添削 インターネットなどの通信手段や 空輸などの交 通手段の急速な発達により 我々は身近に外国を 感じられるようになった インターネットの Web ペー 日本人 日本語を添削 韓国人 ジや アニメーション 映画などの文化的国際交流 外国人との実際の交流を通じて外国語を学び始め 図1 日本人と韓国人による相互添削 た という人も多い 例えば 日本における韓流ブー ムや 海外における OTAKU 文化の流行はドラマや 1 外国語学習者 外国語による情報発信者を手助 アニメーションなどの文化的交流を通じて生まれたも けする相互添削ネットワークを築く のである このように 海外の文化に触れる機会が増 参加者同士が自身の母国語を相互に添削しあう えると 我々はその文化を更に詳しく知るために そ Web サービスを作成し 相互添削ネットワークを構築 の国の言語を学習したいという欲求が生まれる 母 する 具体的には 図 1 のように日本語を母国語と 国に居ながらにして外国語を勉強するにはいくつか する人が日本語学習者の添削を行い 韓国語を母 の方法が考えられるが 最近ではインターネットを有 国語とする人が韓国語学習者の添削を行うという 効活用した勉強方も増えている 例えば 特定の言 お互いに自分の母国語を添削しあうネットワークの 語を対象として文法などの解説を行っている Web ペ 構築を目指す 相互添削の性質上 各国からのユ ージや ネットラジオを利用した英会話講座などが ーザーの参加がサービスの運営に大変重要だと考 挙げられる インターネットは 高まる外国語学習の えられるため いくつかの点で参加者の増加を狙う 需要を満たす有効手段であるといえる まず 個人の管理する Web ページやブログから利用 このようなサービスの中には 互いの母国語を相 可能なプラグインを用意する ユーザーはプラグイン 互に添削しあう相互添削型 SNS や 掲示板を通じて を貼り付けるだけで本プロジェクトが構築する添削ネ 外国人のペンパルやチャット相手を探す Language ットワークに参加できる 次に サービス利用のため Exchange サイトが存在する これらのサービスは 母 の会員登録を任意とする 多くの一般的な Web サー 国に居ながら現地人と実践的な外国語会話をするこ ビスは 会員制にすることでそのサービスの品質が とができ 楽しみながら言語を学習できるという利点 向上していると思われるが 我々は添削結果を信用 を持つ しかしながら これらのサービスにはいくつ するか否かを利用者に委ね ネットワークへの参加 かの欠点がある まず第 1 に 文化や考え方が異な 者を集めることを優先する また サービスの運営を り 見知らぬ外国人と継続的に連絡を取り合うのは 日本語 英語で行い 国際的に多くの利用者を集め 難しい 第 2 に やり取りの中で文書添削の必要が プロジェクトの宣伝を学外に向けて積極的に行うこと 生じた場合 無償で効率的な添削を行える環境があ で多くの参加者を確保する まり存在しない そこで 我々はこの現状を打開する 2 誤用データを自動収集し 誤用コーパスとして ために 次の2つを目的とするプロジェクト 拝啓 添 自然言語処理に活用する 削者様 を提案した 添削前の文と添削後の文の対応付けを取得できる 添削インターフェイスを作成し 収集したデータを自 然言語処理に活用する 近年 自然言語処理の分 121

132 野では機械学習を利用した統計的解析手法が主流となっているが 学習事例を人手で作るコストがしばしば問題となり 学習データの多くは特定の言語やドメインに特化したものしか用意されないことが多い また 自然言語処理の技術を言語教育に応用する例もみられ 日本語を母語としない学習者による作文の添削データを基に学習したモデルを使って 未知の入力文を自動的に添削する手法についても研究されている 本プロジェクトで収集できる 多言語かつ膨大な添削データは 特にこれらの研究に貢献できると考えられる 2. プロジェクトの進捗当初の計画に照らし合わせると これまで達成できた計画として (I) 基礎知識学習とサービス構築 (III) 資源活用のための準備 がある サービスの運営まで至らなかった原因としては 外部での研究会発表や淡路島での中間報告で得られた意見を本サービスに取り入れるため 議論の時間を多く割いたこと 添削インターフェイスの構築に用いる JavaScript のブラウザ依存への対応に時間がかかったことが挙げられる これ以後 達成できたそれぞれの計画について進捗の概要を報告する 詳しい内容については 3 節を参照されたい 2.1 Web サービスの構築本プロジェクトの実現に必要な機能を持つ Web サービスを構築した 利用者からの添削文書の投稿 添削 検索 会員登録に関する機能を実現した また プラグインによる記事の投稿も実現した 同時に英語化を進めたが 本報告書執筆時点では英語化は完了していない 2.2 添削インターフェイスの作成 Web ページ上で 投稿文書を直接添削できるインターフェイスを作成した これにより 添削箇所をマウスで選択し コメントの書き込みや削除 置換などをすべて Web ページ上で行えるようになった 自然言語処理で重要な資源となる 誤用文とそれに対する添削データを大量に収集できる体制がほぼ整ったと いえる 2.3 資源活用の準備本報告書執筆時点では Web サービスの運営まで至らなかったが 人手により作成された既存の添削データを用いて 翻訳モデルを利用した自動添削システム実現のための予備実験を行った 手法の概要として 添削前の文を原言語 添削後の文を目的言語として翻訳モデルを構築しておき 添削時には投稿された文書に対して翻訳モデルを適用し 正しい文書への翻訳を行う すなわち添削を行うというものである 詳しくは後述するが この手法は自動添削に適さないことがわかった 2.4 外部発表このプロジェクトを外部に向けて宣伝するため 3 つの場で宣伝を行った それぞれの発表で得られた意見をまとめると 次のようになる 添削者は善意だけで本当に添削してくれるのか 添削者の利益として 添削をすればするほど自分の投稿記事が目立つようになる機能を導入したらどうか 学習言語で投稿された文書だけでは 本当に伝えたいことがわからないのでは 学習者の母国語で文書の補足説明を書き込めるようにしたらどうか 削除や置換の際 なぜ添削が必要だったのか同時に書き込めると 学習者にとって有益な情報となるのではないか 次に 各発表について簡単に述べる まず初めに 9 月に NLP 若手の会第 3 回にてポスター発表を行った この時点ではデモの準備ができていなかったが 本プロジェクトの内容に多くの人が興味を示してくれた この発表に続いて 武蔵大学韓国文化サークル チングでの発表を行った 発表には 20 人ほどの学生が集まり 議論が交わされた メンバーのほとんどが語学学習者であったため 実際の利用者の立場から見た意見を多く聞くことができた 最後に 北陸先端科学技術大学院大学で行われた自然言語処理合同研究会 2008 でポスター発表を行った この時は添削インターフェイスのデモを準備できたた 122

133 め インターフェイスに関してより具体的な意見を聞 普段自分が使っているブログに wrica が提供する くことができた どの発表でも貴重な意見を多く聞く ブログパーツを添付するだけでブログから簡単に添 ことができ プロジェクトにとって大変有益だったとい 削を依頼することができる 事前準備として以下の2 える ステップが必要となる 2 5 情報収集 1 会員登録 自動添削システム実現のための情報収集を主な目 2 会員に与えられる wrica のブログパーツを 的として 第 89 回情報学基礎研究会 第 183 回自然 自分のブログのフリースペースに貼り付ける 言語処理研究会合同研究発表会に出席した この なお 上記の作業は一度行うだけでよい 通常 研究会で報告された Web クエリを用いた翻訳精度 ブログから添削依頼をするには以下の5ステップを の改善手法[1]は 今回用いた自動添削システムの 行う 手法の問題点を解消できると考えられ 今後の課題 1 自分のブログから通常通り記事を作成する こ として取り組む予定である の時 wrica に添削依頼を行いたい部分のみを [wrica] [/wrica]タグで囲む 3 成果 2 通常通りブログに記事を投稿する まだ wrica へ 本プロジェクトでは 相互添削サイト wrica の構 の添削依頼は完了していない 築を行った wrica には 大きく分けて2つの機能が 3 wrica のブログパーツの update ボタンをクリッ 存在する 1 添削依頼 2 記事添削である その クする 中で添削依頼では 個人ブログを通じて依頼する方 4 wrica にログインし 表示された入力項目に記 法と wrica から直接依頼する方法の2通りが用意さ 入 選択を行う れている wrica を利用するために会員登録は必須 (ア) タイトル ではないが 個人ブログから自分の書いた文章の添 (イ) 記事の背景 削を依頼するためには会員登録する必要がある 会 (ウ) 言語選択 員登録した会員には マイページが与えられる (エ) 記事のジャンル まず wrica の基本機能である 添削依頼 記事 5 投稿ボタンを押下する 添削について その後 会員登録/マイページにつ いて詳しく述べる 3 1 添削依頼 [wrica]タグで囲む 利用者は wrica を通じて 自分が現在学習してい る外国語で書いた文章の添削を依頼する事ができ る そのためには wrica に文章を投稿する必要があ るが その方法として 個人ブログを使って投稿する 方法と wrica のページから直接投稿する方法の2通 りが用意されている 両方ともに最終的には wrica 内の掲示板に添削 図 2 ブログ記事の作成 [wrica]タグで囲む 依頼記事として投稿され wrica 利用者によって添削 してもらうことになる また wrica に投稿された文章 は 記事 として扱われる 3 1 1 個人ブログから文章を投稿 図 2 図 3 123

134 2 マイページの おすすめ記事 一覧から選 択する 会員の場合 ブログパーツ 2 記事一覧の各記事に表示される この記事を添 削 ボタンを押下 投稿された記事 3 記事を添削する 図 4 に添削例を示す 操作は以下の4つである ア 削除 イ 挿入 ウ 置換 エ コメント 文章の一部分に対してコメン 図 3 ブログに投稿された記事 ブログパーツの様子 トを付与できる 4 記事に対する感想を記入 3 1 2 wrica から文章を投稿 5 完了ボタンを押下 非会員の場合 個人ブログを持っていない場合 は 直接 wrica から添削依頼をする事ができる なお 非会員の場合 記事を投稿する際に登録した管理 キーを紛失してしまうと 後から投稿した記事を削 除 変更できない 添削依頼には以下の3ステップが必要となる 1 トップページ またはマイページトップ のメニュ ーにある 記事投稿 ボタンを押下する 2 入力画面に必要事項を記入 選択する ア タイトル 図 4 添削画面の様子 イ 記事の背景 ウ 本文 エ 名前 非会員の場合のみ オ 言語選択 しかし 会員登録をする事で 個人ブログから記事を カ 記事のジャンル 投稿できるようになる また 会員に与えられるマイ キ 管理キー 非会員の場合のみ ページを通じて過去に投稿/添削した記事や その 3 3 会員登録/マイページ wrica を利用するのに会員登録は必須ではない 3 投稿ボタンを押下する 人に適した おすすめ記事を表示する事が出来る 非会員の場合は 添削依頼は可能であるが その 3 2 記事 文章 添削 際 必ず管理キーを入力しないとならない これを忘 wrica ではサイト上で簡単に文章を添削すること れてしまうと 後からの変更/削除が不可能となって ができる 以下の 5 ステップで添削を行う しまう 1添削する記事を選択する マイページには会員本人が投稿した記事 添削 記事の選択には2通りの方法がある を依頼した 記事の一覧 添削した記事の一覧 お 1 トップページの記事/メニューの 記事添 すすめ記事の一覧 そして簡単なプロフィール 母 削 を押下後表示される一覧から 国語 学習言語など が表示される 図 5 にマイペー 124

135 ジ例を示す ( 入力 ) そして 町中に道路にニーオンがつき とてもきれいだ ( 出力 ) そして 町中に道路ににがつき とてもきれいだ (1) 図 5 マイページの様子 3.4 添削支援システム添削ネットワークから取得できる添削データの応用方法について検討するため 外国語学習者の作文に対して修正候補を自動提示する自動添削支援システムについて予備実験を行った 今回実験に用いた手法は 文書の添削を誤りのある文から正しい文への変換と考え 誤りのある文を原言語 添削後の正しい文を目的言語として構築した統計的機械翻訳モデルを用いて添削を行うというものである 今回は原言語と目的言語の対訳文から 単語間の対応を学習する翻訳モデルを用いた wrica の運営が進み 様々な言語の添削データが大量に収集できた場合を想定し 規則ベースのモデルではなく統計的学習モデルを用いることにした 翻訳モデルの構築には 統計的機械翻訳システムとして広く使われている Moses *1 を用いた モデルの構築と評価には 日本語を母語としない日本語学習者の作文と その添削結果からなる国立国語研究所のコーパスの一部 ( 約 13,000 文 ) を用いた システムの評価については 予備実験段階であるため定量的な評価を行わず 人手により出力結果を吟味することにした 実験の結果 出力のうち 9 割程度が誤った添削結果であった 例えば 例 (1) では 学習者が誤って用いた 町中に ( 正 : 町中の ) や ニーオン ( 正 : ネオン ) に対して システムは正しく添削できていない 添削を誤る原因としては モデル構築に用いた原言語側のデータに学習者の誤り文を用いているため 正しく分かち書き処理が行われなかったことが考えられる *2 また 初学者に多くみられる平仮名の多用も 分かち書き処理の精度低下を引き起こし 適切な学習事例を生成できなかったと考えられる これらは実際の運営においても直面する問題であるため 本手法は日本語などの分かち書き処理が必要な言語には適さないといえる また 分かち書き処理の必要ない英語や韓国語に対しては適切に動作する可能性があるが 実際の運営では多言語に対応した1 つのモデルを構築することが望ましいため 今回の実験で得られた知見を基に 他の手法について検討を重ねていく予定である 4. 今後の展開スプリングセミナーやオープンキャンパスで得られた意見を反映し wrica の公開を 4 月から始める予定である 公開時には 日本語 英語のインターフェイスで運営を行う予定だが ( 但し 添削対象となる言語は制限しない ) より広く利用者を集めるためサイトの多言語化を進めていく 同時に 得られたデータを定期的に整備し 自然言語処理技術を応用した語学学習支援システムについて順次検討していく 特に 今回予備実験を行った3.4 節の添削支援システムでは 自然言語処理研究会で報告された王らの手法 [1] を応用し 実験を行う予定である 具体的には まず学習者の作文に対して過去の添削例を適用し 仮の修正文を得る 次に 修正箇所の前後の文脈を含めて単語列を作成し Web 上の検索エンジンからヒット数を取得する 最終的には それぞ *1 *2 単語の対応を学習するため 日本語のような言語は分かち書き処理が前処理として必要となる 125

136 れの修正文のヒット数を添削の妥当性の尺度として 謝辞 用い 最適な添削結果を決定する 文内における離 このプロジェクトに関し チューターである浅原助教 れた共起関係を捉えることは難しいが 周辺文脈を には 多くの助言を頂きました 研究に必要なデー 見て添削を行うシステムが構築できると考えられる タは 国立国語研究所で作成されたものです この 場をもって感謝の意を表したいと思います 5 自己評価 当初の計画では サイト公開を8月前後として 参考文献 いたが 実際には4月公開を予定しており計画よ [1] 王 キョ嘉, 柳 クン, 村岡 洋一, 秋岡 さや りも大幅に遅れてしまった しかし 現在サイトは か. 検索エンジンを用いた日中翻訳支援システムの ほぼ完成されており 予定通りサイト上にはブログパ 提案. 情報処理学会研究報告, 情報学基礎自然言 ーツを使った投稿機能やブラウザ上で簡単にできる 語 処 理 合 同 研 究 会, 2009-FI-93, 2009-NL-189, 添削機能などが実装された そのため 既存の添削 pp.7-12 (2009). サービスで提供される閉じられた SNS よりも 開かれた場で添削システムを有効利用すること ができ 外国語学習者に更なる利便性をもたらす ものができたと考える また 外部発表を3つの場で行う事ができ 多 くの人々から興味を示してもらい 意見を聞く事 ができた その中で最も多かった意見が サイト が公開された時には是非利用したいというもので 本プロジェクトの手ごたえを感じた 反省点は サイト公開が大幅に遅れてしまった 事である サイトのブラウザ依存問題などの予期 せぬ問題が発生した事が原因であった これは 突発的な問題を想定したプロジェクト計画の作 成や 事前に起こりうる問題を予測し対応を練る 作業が不十分であったためと考える 以上のように 当初の計画よりも遅れてしまっ たという反省点はあるものの サイトは現在ほぼ 完成し 4月に公開を予定している サイトには 最初予定していた機能だけではなく 外部発表を 通じて得る事ができたインターフェイスなどに 関する意見が反映されており 従来の添削サイト よりも より簡単 快適に利用できるものが完成 したと考える また 今回の経験を通じて 複数 メンバーでプロジェクトを行う場合の 計画の方法 その重要性など多くことを学ぶことができた 126

137 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 生駒の歩き方 からだ計測から考える健康支援プロジェクト - 2. プロジェクトリーダ 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 論理生命学講座 M 大林千尋 chihiro-o@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 論理生命学講座 M 滝田智行 tomoyuki-t@is.naist.jp 4. チューター 所属講座職名氏名 論理生命学講座准教授柴田智広 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 なし 消耗品費 50 6 月 Dell 24 インチワイド TFT 液晶モニタ E248WFP 1 個 30 6 月 PC ソフトウェア (Matlab 学生版ライセンスなど ) 55 6 月 開発用 PC 保守製品 ( 拡張ボード, メモリ,HDD など ) 月 オフィスサプライ 収納用品など 月 関連書籍購入費 月 筋電測定装置などの保守製品 旅費 ( 調査目的も可 ) 60 6/2008 日本機械学会主催の講習会 ( 東京 ) 調査( 二人 ) 1 泊 2 日 500 9/2008 IROS (Nice, France) 調査( 二人 ) 4 泊 5 日 30 9/2008 ロボット学会学術講演会 ( 神戸 ) 調査( 一人 ) 2 泊 3 日 40 11/2008 MHS 2008 ( 名古屋 ) 調査 ( 一人 ) 3 泊 4 日 合計 ( 交付額は 6 月に通知 ) /2008 SI 部門講演会 (SI2008)( 岐阜 ) 調査 ( 一人 ) 2 泊 3 日 127

138 6. プロジェクトの背景と目的厚生労働省の 国民健康 栄養調査 平成 16 年調査 [1] によれば,40 歳以上になると男性の2 人に1 人がメタボリックシンドローム ( 内臓脂肪症候群 ) もしくはその予備群とされている. このため,2008 年度からメタボリックシンドロームの予防と改善を目的とする新しい健診制度が導入された. このメタボリックシンドロームを予防する方法として, 食生活の改善を行う食事療法, 定期的な運動を行う運動療法, 生活習慣の見直し, ストレス軽減を図る行動療法の3つがある. このうち, 運動療法については, 食後の歩行を行うことが推奨されている. 歩行が勧められる理由として, 定期的に適度な歩行を行っている人のほうが, 歩行を行わない人よりも統計的に糖尿病発症リスクが少ないことが挙げられる. しかしながら, 歩行によって実際に体のどの部位の筋が多く使われ, 内臓脂肪の消費に貢献するかといったデータは示されていない. 本プロジェクトでは, 歩行をベースとした科学的な健康支援を目標とする. そのために, 次の 2 つのサブゴールを設けて研究を進める. Ⅰ. 様々な場面における歩行時のモーションと筋電位の状態を測定し,SIMM を用いて各筋活動を推定し考察する. I の結果に基づき, Ⅱ. エネルギー消費量を呼吸センサ測定で測定し, どのような歩行パターンが, どの部位の筋活動を多く促し, エネルギーをよく消費をしているか診断するアプリケーションの開発を試みる. 本プロジェクトの見込まれる成果として, 次のものが挙げられる. 第 1には, 減らしたい部位だけをシェイプアップできる歩行パターンを生成することが期待できる. 第 2には, 軽度のパーキンソン病患者の測定を行い, 健常者の測定データを比較検討することで, 軽度のパーキンソン病患者の傾向を工学的に解釈し, 効果的なリハビリテーションが出来る可能性もある. 参考文献 : [1] 平成 16 年国民健康 栄養調査結果の概要 128

139 7. 目的到達までの研究計画プロジェクトを効率よく推進させるために, 所属研究室の研究設備とノウハウを最大限活用する. 全身運動の測定には, 筋電測定装置と赤外線モーションキャプチャ装置を用いて測定, データ化し, これらの情報を統合して全身の状態推定を行うソフトウェア SIMM を用いて解析を行う. 本プロジェクトでの実施プロセスを以下に示す. 1. 関連論文 ( 歩行, 筋活動 ) のサーベイ 2. 実験環境構築 i. 筋電測定, モーションキャプチャ装置及び SIMM を扱えるシステムの構築 3. 測定 データ解析 i. 平地での歩行測定実験 ii. 実験可能な平地での歩行バリエーション ( モデル歩き, がに股歩きなど ) の選択と測定実験 iii. 粘性体中 ( 例えば, 泥の中を想定した環境に足をつけた状態 ) での歩行測定実験 iv. 階段での歩行測定実験 v. 筋活動に注目したデータ解析 4. アプリケーション開発以上の4つの実験を実施する. そして, これらを図 1 のスケジュールで行う. 6 月 関連論文のサーベイ, 実験環境構築 7 月 測定 データ解析 8 月 9 月 アプリケーション開発 データ整理ポスターセッション準備 ポスターセッション 図 1: プロジェクトスケジュール 129

140 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 PC 本体一式 消耗品費 2 7 月 解剖学書籍 月 歩行分析, バイオメカニクス関連書籍 月 実験ラック用品一式 月 SSD TS32GSSD25-M 2 本 37 1 月 IEEE1394,10m ケーブル 2 本 旅費 ( 調査目的も可 ) 87 6 月 日本機械学会主催の講習会 ( 東京 ) 調査( 二人 ) 1 泊 2 日 月 IROS 2008 (Nice, France) 調査( 二人 ) 4 泊 5 日 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約 本プロジェクトでは, 人の生体情報と筋骨格モデルを用いてからだの部位ごとのエネルギー消費量を推定することを試みた. 歩行測定については, 歩行分析に関す る論文をサーベイし成人男性の普通歩行時における生体情報として歩行モーションと筋電位の測定を行い, 環境を整えた. 次にこの環境を用いて生態情報を収集するためトレッドミルでの歩行実験を行った. 実験から得られた生体データから SIMM を用いて人の筋活動の推定を行った. 最後に得られた筋活動からエネルギー消費量の推定を行った.VO2 の測定を行い比較検討することはできなかったが, エネルギー消費量の推定には VO2 測定値と比較検討を行っている論文をサーベイし江原らの ものを用いることにした. 最後に応用例の一つとして得られたエネルギー消費量を視覚的に提示するアプリケーションの開発を行った. 自己評価としては, それぞれのサブゴールのすべての項目を達成することは出来 なかったが, 再現性を高めた測定環境やエネルギー消費量推定環境を整え, 応用例を示すことが出来た. またオープンキャンパスでの展示では, リハビリテーション医療などでの実用化に期待しているという言葉を頂くことができ, 本プロジェクト の問題意識は悪くないとの実感を得た. 今後はエネルギー消費量のリアルタイム表示などアプリケーションの改良を行い, 実用化を目指し健康支援に役立てられるよう努めていきたい. 130

141 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 生駒の歩き方 -からだ計測から考える健康支援プロジェクトプロジェクトリーダ 大林 千尋 メンバ 滝田 智行 1 概要 背景と狙い しエネルギー消費量を求め可視化する 近年 Wii Fit を利用した健康増進サービスや Ⅱ エネルギー消費量を呼吸センサ測定で測定し Web サイトを利用した健康支援サービスなど ユー 推定結果と比較し どのような歩行パターンが どの ザの生態情報を測定し 健康診断 健康支援サービ 部位の筋活動を促進し エネルギーをよく消費をし スが広がりつつある 厚生労働省の 国民健康 栄 ているかを診断するアプリケーションの開発を試み 養調査 2007 年調査[1]によれば 40 歳以上では男 る 性の2人に1人(男性全体の 56%)がメタボリックシンド ローム 内臓脂肪症候群 もしくはその予備群とされ ている(Fig.1) メタボリックシンドロームとは 高血圧 高血糖 動脈硬化のうち2つ以上が当てはまった状 態のことであり 健康的な人に比べて糖尿病や高血 圧症 高脂血症といった生活習慣病に対するリスク が高くなる このメタボリックシンドロームの予防療法は大きく 分けると3つある 食生活の改善を行う食事療法 定 期的な運動を行う運動療法 生活習慣を見直してス トレスの軽減を図る行動療法である このうち運動療 法については食後の散歩を行うことが推奨されてい る これは軽度の運動で体に負担をかけずに血糖 値を下げる効果を期待したものである しかしながら これまで歩行動作の改善にはインストラクタの経験 Fig.1 メタボリックシンドロームの状況 や医学的知見に基づいたものである 人それぞれの 2007 年度国民健康 栄養調査に基づいてグラフ化. 図の 身体的特徴や歩き方の特徴などに適合した歩行動 出典:糖尿病ネットワーク 作推薦システムや肥満傾向の患者に多く見られる余 分な脂肪が散歩によってどの部位がどのように燃焼 本研究で期待される成果としては ユーザに適し されるのか定量的に示したものはなく 視覚的にフィ た歩行場所や歩行パターンの推薦が実現できること ードバックされるシステムもまだない である また その場で筋のエネルギー消費量を視 そこで 本プロジェクトでは 歩行をベースとした科 覚化することにより ある動作を行う際の無駄な活動 学的な根拠に基づく健康支援を目標とする そのた を行っている筋を推定し その場所をユーザに教示 めに 次の 2 つのサブゴールを設けて研究を進め することも可能となる これらは メタボリックシンドロ る ームなどの予防医療 さらにはリハビリテーション ス Ⅰ 様々な場面における歩行時のモーションと筋電 ポーツ分野での応用が期待される 位の状態を測定し SIMM Software for Interactive Musculoskeletal Modeling を用いて各筋活動を推定 131

142 2 プロジェクトの進捗 研究で用いられている筋群とした 具体的には 両 本プロジェクトでは モーションと筋電位などからエ 下肢の大腿二頭筋 大腿直筋 ヒフク筋 ヒラメ筋 ネルギー消費量を推定する計算モデルを検討した 前脛骨筋とした (Fig.3) この計算モデルの妥当性を示すために被験者の呼 Surface EMG MAC 3D (Motion Capture ) 気から VO2 を測定しエネルギー消費量を推定する Shoot 3D motion with 8 IR-Cameras Measure muscle electrical activity on skin 装置の購入もしくはレンタルを考えたが 予算内で V の購入やレンタルの目処が立たなかったため VO2 V 測定装置を用いたエネルギー消費量の測定を断念 16ch Wireless recording system し エネルギー消費量の検討がなされているモデル EVaRT : Integrated Data Correction System Sampling Frequency: 200Hz の導入を検討した 本プロジェクトでは 日本での歩 行分析のパイオニアである江原ら[2]のエネルギー Fig.2 EVaRT システム概要 消費量の計算モデルを用いることにした 次に歩行 分析の論文をサーベイし 筋電位の測定位置の決 Table.1 ワイヤレス式筋電位測定装置 定やモーションの測定の予備実験を行い歩行測定 の実験環境について検討と熟練度の向上を行った この予備実験では健康な成人男性の歩行のモーシ サンプリング周波数 200[Hz] 分解能 16[bit] 測定レンジ ±2.5[V] ョンと筋電位の測定を行った 次に筋骨格シミュレー タ SIMM を用いて被験者の筋骨格モデルを作成し 歩行測定で得られたモーションと筋電位から歩行時 の筋活動の推定を行った 最後に得られた筋活動 データを用いてエネルギー消費量の推定を行った 最終的には 消費エネルギービューワの開発を行い ユーザに理解を促す可視化を行った 本節では 以 下でそれぞれの詳細について述べる 2 1 身体活動の測定実験 Fig.3 ディスポーザブル電極の装着位置 2 1 1 測定環境 歩行運動のモーションデータと下肢の筋電位の測 定には NAC イメージテクノロジー社の EVaRT システ ムを用いた(Fig.2) このシステムは光学式モーション キャプチャと最大 64ch のアナログデータの同時測定 が可能である 今回の実験では 8ch をワイヤレス式 筋電位測定装置 Table.1 からの入力として利用し た 筋電位の測定はディスポーザブル電極を用いて モータポイントの皮膚表面から行った モータポイン Fig.4 マーカの装着位置 トとは経皮的電気刺激に対して最も敏感な場所で一 モーションキャプチャでは 下肢の運動分析用に 定量の刺激で最も収縮する点のことを言う 測定対 設計された Helen Hays マーカセットに基づいて被験 象の筋は江原ら[2]や Neptune[3]らの歩行に関する 者に 34 個マーカを装着けて測定を行った(Fig.4) 132

143 発された からだ計測システム を用いた 被験者のストレッチ 電極貼付部位の決定 実験場所 ゲストハウスせんたんのフィットネスル ーム(Fig.6) 電極貼付部位の アルコール洗浄 電極貼付 NG 信号確認 OK マーカ貼付 MVC測定 歩行測定 Fig.6 トレッドミル歩行実験のセットアップ Fig.5 実験プロトコル 実験結果 2 1 2 実験 実験プロトコルを Fig.5 に示す この実験プロトコ ルにおいて最もスキルが必要な筋電位測定の電極 の装着位置については 測定対象とする筋の位置 や大きさに合わせて被験者のモータポイントを探し 添付位置の決定を行った 次にワイヤレス送信機と 電極間の配線もアーチファクト混入を防ぐように行っ Fig.7 得られたモーション (SIMM による再生) た ワイヤレス送信機と電極間は細長い線によって 接続されている この部分がたるむことでノイズを拾 せんたんのフィットネスルームをレンタルできる時 う原因となりアーチファクトが発生する そのため 配 間に制限があるため実験機材の運び込みをメンバ 線は歩行時に違和感がないように気をつけながら皮 以外の人員も含めて数人で行いセットアップを行っ 膚に這わせテーピングを行った 以上の作業が終了 た 実験準備では光学式モーションキャプチャが環 してからマーカを装着しモーション測定の準備を行 境光に弱いため遮光シートを窓に貼り付け実験条 った 次に対象としている筋が MVC(等尺性最大収 件を整えた この実験から歩行速度を一定にしたモ 縮)を発揮しているときの筋電位の測定を行い 最後 ーション(Fig.7)と筋電データがえられた 実験後の に目的とする歩行動作の測定を行った データ処理では測定に用いたからだ計測システムか この手順に従って基本的に一人で電極の装着や ら出力されたファイルから SIMM 用の入力ファイルへ 信号確認という作業をこなすために時間が大変かか の変換を 2 段階に分けて手作業で入力するため 大 る 特に電極の数を増やすほどこの問題が顕著に現 量のデータを処理する場合には効率が悪い そこで れる このような理由もあり 最終的に測定する筋の からだ計測システムから出力されるファイルを SIMM 数を左右合計で 10 とした 用にフォーマット変換する一連の操作を一括して行 うユーティリティプログラムの開発を行った 具体的 トレッドミルでの歩行実験 10 月 には ドラッグアンドドロップやファイル参照などで変 10 月 18 日から 19 日の二日間で被験者1名に対 換元ファイル複数もしくは単数指定し 必要に応じて してトレッドミルによる歩行実験を行った 計測には 出力先を設定し一連の処理を行う GUI を持つアプリ 本学の融合領域推進研究 からだプロジェクト で開 ケーションを開発した(Fig.8) 133

144 ータを持つものを利用した SIMM を利用するのは既存ソフトウェアを利用する ことで独自に人体を物理モデル化し動力学シミュレ ーションソフトを開発する時間や手間を削減できると 考えていたが 実際にはソフトウェアのバグや利用 上の性質に悩まされることが多く サポートとのやり 取りに時間を消費した 筋張力の推定では動力学シ ミュレーションを行う CPU が Core2 Duo E8500, メ Fig.8 ユーティリティプログラムのインターフェイス モリ 3.25GB, OS は Windows XP 環境下でもこの動 力学シミュレーションに要する計算時間が長い (Table.2:before)という問題もあり その時間短縮に ついても取り組んだ この成果はソフトウェアサポー トの協力を得て共同で改善することが出来た (Table.2:after) Table.2 シミュレーション時間の改善結果 Fig.9 SIMM のインターフェイス 2 2 エネルギー消費量の推定 エネルギー消費量を推定するプロセスは筋骨格 2 2 2 筋腱アクチュエータモデル シミュレータを用いた筋活動の推定と筋活動の推定 SIMM では Hill 型の筋のモデルを筋腱アクチュエ 結果を用いたエネルギー消費量の計算の 2 工程か ータモデルとして用いられている(Fig.10) このモデ らなる それぞれの詳細を次に示す ルの力学に関わる要素は 2 2 1 筋骨格シミュレータ 収縮要素 CE (Contractile Element) 人間の動作と筋作用の関係を議論するバイオメカ 並列弾性要素 PE (Parallel elastic Element) ニクス分野の研究では 生体を複雑な構造を多数の 腱の弾性要素 T (Tendon) 関節で結合された骨格構造と これらの骨格に関節 の 3 つよりなる 収縮要素は随意に収縮するアクチュ をまたぎ他方の骨格に結合された骨格筋を解剖学 エータ 直列弾性要素と並列弾性要素は受動的に 的にモデル化することから始まる 人の骨格を骨と 張力を発揮する非線形バネである また筋繊維を記 関節で結合したリンク機構として見なし 骨格筋をア 号 M 健を含めた筋全長を MT により表す このモデ クチュエータとして見なしてモデル化し運動学や動 ルは筋繊維の角度αを考慮してある 力学を用いた人間の動作分析が行われている この ようなツールの 1 つとして SIMM がある(Fig.9) 本プ ロジェクトでは筋活動によるエネルギー消費量を推 定するために筋張力や筋活動度などのパラメータを 得ることを目的に SIMM を用いた ヒトの筋骨格モデ ルは 83 自由度 156 関節 252 本の筋腱アクチュエ Fig.10 Hill 型の筋腱アクチュエータのモデル 134

145 2 2 3 筋のコーディネーションの最適化 EMG を与えて最適化を行い そのほかの体内部に 人間の場合は目標とする運動に対して多くの筋の 存在する筋には整理断面積による最適化によって 中から有効に働く筋を選び出すという不良設定問題 内部状態の推定を行った を解いている この問題を解くために各関節まわりの 力学系と筋のダイナミクスを次のように定式化する 2 2 4 エネルギー消費量推定 m 番目の筋の EMG 信号 u m (t ) と筋活動度 a m (t ) の エネルギー消費量の推定のためにこれまで簡易モ 関係は次の一次微分方程式で記述される a (u ua) (u a), a a m (t ), u u m (t ) Trise T fall デルから詳細なモデルまでいくつかの計算モデル が提案されている[2][4][5] 筋活動によって引き起こ 2 1 されるエネルギー収支は 筋の張力と伸縮速度によ ここで Trise, Tfall は時定数でそれぞれ 22[ms], 200[ms] る機械的なエネルギーとそのとき発熱として表れる である 次に筋張力は Hill 式の筋腱アクチュエータ 熱エネルギーの総和としてモデル化される この熱 の性質によって次の関係式が得られる エネルギーについては 収縮期間に ATP の消費に F m am (t ) f ( Fm0, l m, vm ) よる初期熱と収縮後に ATP の再合成に必要な回復 2 熱に大きく分けられる 本プロジェクトで使用してい 0 ここで Fm は最大筋張力 lm は筋の長さ vm 伸縮速 る SIMM では 筋張力推定に計算時間の大部分を 度である この筋張力はある関節jのトルクτj と筋張 取られるため 出来るだけ計算負荷の少ないモデル 力の関係式 を選択することにした したがって エネルギー推定 F m (t )rm (t ) j (t ) には最も高速な江原らのモデル式を用いた 3 m を拘束条件とする これら各筋の活動度を EMG 信 3 成果 号の定義により2つの場合で定義し それぞれ式(4) 本プロジェクトの成果物は以下の 3 つである の評価関数を最小化する この最適化問題を二次 計画法によって解く J (am (t )) 2 からだ測定システム-SIMM 間のデータ変換を一 括して行う GUI アプリケーション 4 歩行運動時のエネルギー消費量のオフライン 推定 m EMG が定義されていない場合は 筋の生理断面 一例として 1 歩分の歩行モーションを Fig11.の(a) 積に対応した疲労度を活動度として に左足と右足それぞれの筋のエネルギー消費量の Fm 5 PCSA とする ここで k は筋ごとに決まる定数 Fm はその 総和を Fig.11 の(b)に示す 図中の時間と動きの推 時刻における筋張力で PCSA は対象とする筋の生 次に左足が離床する 最後に左足が減速しながら 理断面積である 1.32[s]のときにまた両足が接地する ユーザの歩き am k 移は 0[s]のとき右足が地面から離れ左足が地面に 着地している 0.62[s]のときに両足が接地していて 筋の EMG が存在する場合で MVC が定義されて 方の特徴に合わせてエネルギー計算が行われるこ いれば EMG を MVC で正規化して活動度を求め式 とを見せるために 先に出る左足の移動距離より次 4 を最小化する MVC が定義されていない場合は に出る右足の移動距離が短い場合を選んだ 実際 閾値を設け EMG 信号が閾値より大きいかどうかで に Fig.11 (a)に示すエネルギー消費量は左足と右足 0 もしくは 1 と活動度を定義し式 4 を最小化する で対称的な波形を示さず 左足離床の時のエネル 本プロジェクトでは 体表面にある主要な筋には ギー消費量が少ないことから 歩き方に応じたエネ 135

146 ルギー消費量を推定していることがわかる エネルギー消費量ビューワ 上記データベースを利用した歩行モーションの 推薦システム 体の部位ごとにエネルギー消費量の計算し表示す 全身のリアルタイムエネルギー消費量推定 るビューワアプリケーションを開発した (Fig.12) エ 歩行に限らない運動のエネルギー消費量の推 ネルギーを消費している筋の部位が暖色で 消費し 定 ていない場合は寒色にするように工夫した しかしな 5 自己評価 がら 動作内容を一緒に提示しないため動作内容 結果として当初想定していた推薦システムの段階 がわかりにくい 今後は動作内容を表示するように に進むことが出来なかったが オフラインでエネルギ 改良を加える必要がある ー推定し教示するシステムを構成することが出来た [Nm/s] 140 また 本プロジェクトを通して これまでの専攻とは異 energy consumption 右足 左足 120 なるバイオニクス分野にも知見を広げることができた 100 今後もオフラインでエネルギー消費量を推定し表示 80 するプログラムを改良しリアルタイムに筋活動を推定 60 しエネルギー消費量を推定できるように改良を加え ていく time [s] 1.2 [謝辞] 本プロジェクトは大学院教育改革支援プログラムに (a) Time [s] 0.0 よって行われた チューターを引き受けてくださった柴田智広准教授, 実験や筋活動について多くの助言をいただいた為 井智也さん せんたんのフィットネスルームでの実験 に協力を頂いた知能情報処理学講座の木村優作 君 野崎康君 堂込一輝君および論理生命学講座 (b) の皆様 せんたんのフィットネスルームを利用されて Fig.11 歩行時のエネルギー消費推定の例 いる皆様へ ここで深く感謝の意を表明いたします (a) エネルギー消費量 (b) そのときの歩行動作 [参考文献] [1] 平成 19 年国民健康 栄養調査結果の概要 [2] 江原義弘 別府政敏 野村進 国見ゆみ子 歩行中の筋 活動による消費パワーの推定 日本バイオメカニズム学会誌, No.10, pp [3]R.R Neptune, Kotaro Sasaki, S.A Kautz, The effect of Fig.12 エネルギー消費量ビューワ walking speed on muscle function and mechanical 4 今後の展開 energetics, Gait & Postunre 28 (2008),pp 得られた知見を利用して今後は次の展開があげら [4] 長谷和徳 山崎信寿 汎用3次元筋骨格モデルの開発 れる 日本機械学会誌 61 巻 591 号,pp いろいろな歩行スタイルの測定と収集によるデ [5]H.Hatze, A Myocybernetic Control Model of Skeletal ータベース化 Muscle, Biological Cybernetics 25, pp (1977) 136

147 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案書 1. プロジェクト名 3D チョコレート造形装置 NAIST Chocolatier( ナイストショコラティエ ) の開発 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス ロボティクス講座 M 小橋優司 yuji-k@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス ロボティクス講座 D 池田篤俊 atsutoshi-i@is.naist.jp 奈良工業高等専門学校 専 2 里村卓哉 taku.satomura@gmail.com 4. チューター 所属講座職名氏名 アドレス ロボティクス講座助教竹村憲太郎 kenta-ta@is.naist.jp 5. 必要経費 ( 応募時点での見積書添付は不要 ) 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 モデル作成 PC 月 XY ステージ (PM80B-100XY) 月 コントローラ (CP-500) 月 ディスペンサ (MS-10DX) 消耗品費 通常の研究費でも購入可能な物品に限る旅費 ( 調査目的も可 ) 国内 海外いずれも可 50 8 月 チョコレート材料費 月 AD ボード 月 加熱 冷却装置部品 ( ペルチェ素子など ) 月 表示用ディスプレイ 月 食品開発展の調査旅費 ( 東京 ) 3 名 食品製造業の技術調査のため 合計 ( 上限 1,500 千円 )

148 6. プロジェクトの背景と目的近年, 開発期間短縮のために製品試作に光造形装置や 3D プリンタなどを導入するケースが増加している.3D 造形装置は CAD の設計データをそのまま利用して樹脂などで低コストに造形できる装置である. 従来のようにデザイナーに委託したり削り出しで試作したりするのに比べて, 開発時間や開発費を抑えることができる. 3D 造形装置はコストダウンに効果的であるがエンターテイメント分野や家庭で利用するには CAD による設計が必要であったり, 造形に時間がかかったりといった課題がある. そこで本プロジェクトでは 3D 造形装置のように好きな形のチョコレートを作ることができる 3D チョコレート造形装置 NAIST Chocolatier の開発を行う. シンプルな GUI 上で粘土をこねるように好きな形を作り, その形を NAIST Chocolatier で成形する. 簡単な操作で使えるシステムにすることで子供や老人でも気軽に使えるシステムを目指す. 産業技術を直接フィードバックすることによってモノ造りの楽しさや大変さを体験することができ, 出来上がったものが食べられるため学習とエンターテイメントを融合したシステムとなる. 7. 目的到達までの研究計画本システムの大きな技術的課題は以下の 2 点であると考える. 1. 専門知識がなくても簡単に自由形状が作成できるインタフェース 2. おいしいチョコを早く作るための造形方法チョコの 3D 形状は PC の画面上に OpenGL で描写された粘土モデルをヘラのような道具で変形させることで成形する. 直感的なインタフェースを構築するために入力デバイスには Wii リモコンなどの一般になじみのあるものを使用する. 簡単ですぐに使えるインタフェースにしたいため, 作成が困難であった場合は積木のように単純形状の組み合わせで 3D 形状を作るなどの方法に変更する. 得られた 3D 形状を 2-3mm 毎に階層分割し, 各階層の平面形状を形成するためのパスを生成する. チョコの塗出量とステージの移動速度はチョコの硬化速度から実験的に決定する. ステージはペルチェ素子を用いた冷却装置によって冷やしておき, 塗布されたチョコがすぐに固まるようにしておく.1 階層分の形状を塗布した後に上空からの冷気を吹き付けてチョコを確実に硬化させる. このステップを繰り返して 3D 形状を造形していく. Fig.1 システム構成図 138

149 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 PC (imac) 月 単軸ロボット (F10) 月 直行ロボット (CP-500) 消耗品費 月 加熱 冷却装置装置部品一式 月 描画用ソフトウェア (Shade, Illustrator) 99 2 月 PC (BT-Q8400A1P500) 50 2 月 表示用ディスプレイ (RDT223WM x 2) 旅費 ( 調査目的も可 ) 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約本プロジェクトの課題は 3D 形状入力インタフェースと造形装置の 2 つであった. それぞれの課題に担当者を決め, 作業を並行して行った. 3D 形状入力インタフェースは PC 内に OpenGL で描画された 3D のブロックを積み重ねてデザインする方法を選択し, 入力デバイスには PHANTOM を使いブロックを積み重ねる反力を提示するソフトウェアの開発を行った. また, 造形装置の試作を行い, チョコを硬化させる方法を検討した. チョコの硬化にはペルチェ素子による冷却が有効であることが確認できたが, 提案した手法では 3D 形状を作るのに非常に時間がかかりかつチョコを高く作ることが難しいことが確認された. そこで,3D の基礎として 2D の作成を行うこととした. ブロックの積み重ねではなく, ドット絵を元にチョコによる描画を行う. 一般的なお絵描きソフトで描かれたドット絵からチョコを塗布する位置を計算し, ロボットステージと塗布装置を制御する. ステージにはヒートシンク付きのペルチェ素子が取り付けられており, 塗布されたチョコを硬化させる. 本プロジェクトでは 3D チョコレート造形装置の開発を目指していたが, その基礎部分である 2D チョコレート造形でプロジェクト期間が終了してしまった. 当初の目標からは十分な成果とは言えないが, チョコレート造形装置というコンセプトを示すことができたことと基礎技術の開発によって 2D チョコレート造形装置を製作できたことは大きな成果であったと言える. 今後の課題としては 2D 3D の方法を検討することである. 139

150 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 3D チョコレート造形装置 NAIST Chocolatier ナイスト ショコラティエ の開発 プロジェクトリーダ 小橋 優司 1 概要 背景と狙い 設置側から考えると屋台では人件費 管理費 大型のショッピングセンターやボーリング場 遊 初期費用などのコストがかかるため 導入にコスト 園地などの娯楽施設には図 1 のようなポップコー と手間がかかってしまう 一方 図 1 のような自動 ン自動販売機が並んでいる このような自動販売 販売機であれば一般的な自動販売機と同じように 機は自分でお金を入れてボタンを押すことで製作 本体はレンタル 設置場所を提供するだけ で済 に参加している気分が味わえたり 製作工程が見 ませることができるため 導入にコストや手間がか えたり キャラクターの音声がテンションを上げたり からず負担が少なくなる また 屋台のように多様 など屋台などで購入するのに比べて ポップコ な商品展開は難しいが 大きく目立つ外観で集 ーン 製作過程の楽しさ を提供することが可 客効果も期待できる 能である そこで本プロジェクトでは 3D チョコレート造形装 置を開発し ユーザが自分の好きな形のチョコレ ートを簡単に作成できるシステムを提案する 図 2 に本プロジェクトのシステムコンセプト図を示す システムはユーザがチョコの形状をデザインする 入力インタフェース部と実際にチョコを塗布して硬 化させる造形装置部からなる ユーザは Wii リモ コンのような直観的で使い慣れた入力デバイスを 使ってチョコレートの形状をデザインする デザイ ンは子供や高齢者でも簡単にできるように 数種 類のブロックを積み上げて任意の形状を作ってい 図 1 ポップコーン自動販売機 く 複雑な形状を形成することはできないが 本シ (株式会社 ココロ) ステムでは簡単にすばやくチョコを作成できること 図 2 システムコンセプト図 140

151 4 章では 3D モデル作成のための 3D 形状入力シ ①レイヤー毎にチョコ形状を分割 ステムについて説明する 5 章では本プロジェクト の問題点と今後の展望を述べる 最後に 6 章で本 プロジェクトの自己評価を行う 2 2D 形状入力システム 1 章で説明したように NAIST-Chocolatier は 3D モデルをチョコの厚みでレイヤー化しレイヤー 毎に 2D 形状を積み重ねることによって 3D 形状を 形成する そのため まずは任意の 2D 形状を作 成できるシステムを構築する必要がある 本章で はチョコの 2D 形状をデザインするための 2D 形状 ②各レイヤーでチョコの塗布場所を計算 入力システムについて説明する 図 3 レイヤー化イメージ図 図 4 に入力システムのフローを示す ユーザは が重要であるため あえてデザインの自由度を制 市販のペイントソフト等を用いて任意のデザインを 限することでシステムへのとっつきにくさを軽減す STEP 1 2D 形状デザイン る狙いを持つ また デザインが不可能な幼児に も対応するために予め犬や花などの標準パーツ を用意しておき 標準パーツの組み合わせでもチ ョコをデザインできるようにする 入力されたデザイ ンは積層するチョコの厚みでレイヤー化する 図 3 にレイヤー化のイメージを示す レイヤー化はま ず チョコの厚み毎に平面を作成する 作成した 平面上で 3 次元形状の位置を計算し 各高さに おけるチョコの塗布位置を決定する 各レイヤー のチョコ塗布位置が決まったら それに合わせて ロボットの移動パスを計算する ロボットは移動パ スとチョコ塗布位置に従って PC により制御される STEP 2 塗布位置の決定 チョコの塗布量は塗布装置により制御される チョ コを最下層のレイヤーから積み上げることにより 3D 形状を形成していく 2 章では入力システムの基礎となる 2D の画像 入力システムについて説明する 3 章では 2 章の 入力システムを基にしたチョコ造形装置について 説明する 本システムではチョコの材料特性も重 要となるため チョコについても議論する オープ ンキャンパスでは 2 章と 3 章のシステムを合わせて STEP 3 塗布位置を造形装置に送信 2D のチョコ生成デモを行った このデモは 3D 形 状の各レイヤーを生成する工程と同じ内容である 141 図 4 2D 形状入力システムフロー

152 描画する STEP 1 描画されたデザインの黒いピ クセル部分を OpenCV を使って検出し チョコ塗 布位置を決定する STEP 2 塗布位置を造形装 置に送る STEP 3 塗布位置への移動命令と塗 布制御はシリアル通信を介してロボットに送られる プログラムは Microsoft Visual Studio 2008 を用い て開発を行った 3 チョコ造形装置 本章ではチョコ造形装置について説明を行う 図 6 保温部外観 2 章と同様の理由で まずは 2D 形状を造形する の保温温度 40[ ]で十分使用可能である チョコ ための装置の試作を行った 図 5 に装置の外観を 投入口には約 50[g]のチョコレートを溜めておくこ 示す チョコ造形装置は保温部 赤枠部分 冷 とが可能である 本システムでは一口サイズのチョ 却部 青枠部分 ロボットステージ部 緑枠部分 コレート 5 10[g]程度 の作成を考えているため の 3 つ部位で構成される 試作機の容量としては十分であると考える シリコ 3 1 保温部 ンロートは固定ねじによって直接電磁弁に接続さ 図 6 に保温部の外観図を示す 保温部はシリコ れる 電磁弁は CKD 製 AKB31 を用いた この電 ン製のチョコ投入口 電熱線ヒータ 電磁弁から 磁弁は多流体に対応した電磁弁であり 空気など 成る シリコン製の調理用ロートに電熱線を巻き付 の気体だけでなく水などの液体にも使用すること けて 保温機能付きのチョコ投入口とした シリコ ができる 電磁弁は一定の電圧を付加することに ンロートの耐熱温度は 200[ ]であるため チョコ よって弁の開閉をコントロールできる装置である 本システムでは電磁弁の開閉時間を PC からコン トロールすることによってチョコの塗布量を調節す る 電磁弁から出てくるチョコはノズルによって冷 却装置に塗布される ノズルの先端は直径 1[mm] の円形と直径 3[mm]の円形を試した結果 径が 3[mm]である方がチョコの塗布結果が良かったた め 3[mm]のノズルを使用した チョコ投入口からノ ズル先端までを電熱線ヒータで覆うことにより チョ コの温度を一定に保つ また 比較的温度の下が りやすいチョコ投入口に温度センサを取り付け リ レーを用いて温度制御を行う 3 2 冷却部 図 7 に冷却部の外観図を示す 冷却部はペル チェ素子とヒートシンクから成る ペルチェ素子は 電圧を負荷することにより熱交換を行う素子である 冷却部は厚さ 6[mm]の銅板をベースとしてその上 図 5 チョコ造形装置外観 部にペルチェ素子をシリコングリスによって固定す 142

153 5[V] 12[V] 図 8 冷却イメージ図 図 7 冷却部外観 る 本研究では乾燥させると硬化して接着剤とし ても機能するシリコングリスを用いた ペルチェ素 子は冷却能力を上げるために 2 段重ねとした ペ ルチェ素子の上部にチョコを塗布するための銅板 を上述のシリコングリスで固定する ベース銅板の 図 9 ロボットステージ部 下側は CPU クーラーによって放熱を行う CPU ク 3 3 ロボットステージ部 ーラーの放熱容量は 180[W]で ペルチェ素子の 理論発熱量が 140[W]であるので十分な冷却が可 図 9 にロボットステージ部の外観図を示す ロボ 能であると考える しかし Chocolatier の最終形 ットは YAMAHA 発動機製の直交ロボットを用いた 状として下部はアルミ板で覆う構造となり空気の ロボットステージは専用のコントローラによってロ 対流が制限されることが考えられる そこで CPU ーレベルの位置 速度制御が行われる ロボット クーラー部分にファンを追加し 冷却装置周辺の の繰り返し位置決め精度は 5[μm]であるので チ 空気を強制的に対流させる構造とした ョコ造形に十分な精度を持っている ペルチェ素子は電気的に抵抗として考えること ロボットコントローラは RS232 ポートを持っている ができる よって負荷する電圧によって流れる電 ため PC からシリアル通信で制御コマンドを送信 流量が変化し 冷却量 温度移動量 が変化する することで任意の位置に移動させることができる しかし 電流が流れることによってペルチェ素子 また コントローラのデジタル出力ポートに電磁弁 自体も発熱するため 電圧を上げると 2 次関数的 を接続し PC からコントローラを介して電磁弁の にペルチェ素子全体の発熱量が増加する そこ 制御を行う で 本システムでは図 8 に示すようにペルチェ素 4 2D チョコ作成実験 子を 2 段重ねにした上で上側と下側に負荷する 電圧を変えることで効率的にステージ上面を冷却 本章では 2 章と 3 章で述べたシステムを統合し する 上側に 5[V] 下側に 12[V]の電圧を付加 た NAIST-Chocolatier の 2D バージョンを製作し することで室温 20[ ] 解放状態でステージ上面 2D のチョコを作成する実験を行った が-8[ ]まで冷却可能であることを確認した また 本システムで入力できる 2D デザインは 10 最終システムでは室温 20[ ]で-4[ ]まで冷却で 10[pixel]の白黒ドット絵とした これはチョコの塗 き チョコの硬化に十分な冷却性能を得ることが 布が直径約 5[mm]であるため解像度の細かいデ できた ザインを再現できないためである 143

154 図 12 3D 形状入力画面 図 10 入力デザイン 図 13 PHANTOM チョコをデザインしてもらい その場でチョコを作 成してプレゼントした 来場者に完成したチョコを 配布するために ステージ上にアルミホイルを敷 図 11 チョコレート作成結果 図 に入力画像と完成したチョコレートを きその上にチョコを塗布した アルミホイルを敷い 示す 図より提案システムによってデザイン通りの てもペルチェ素子による冷却で十分にチョコは硬 チョコレートが作成できていることがわかる チョコ 化した しかし チョコのレイヤーを重ねた場合 下から は塗布直後からステージ接触面より硬化を初め の冷却だけでは不十分で上のレイヤーを冷却す 1 点あたり数十秒から数分で硬化した るのに時間がかかり 十分に硬化させることができ 実験では常温で液状であるチョコホイップクリー なかった ムの原液を用いてチョコを作成した 初めに通常 のチョコレートを用いて塗布実験を行ったが チョ 5 3D 形状入力システム コの粘度が高く塗布が困難であった そこで チョ コを強制的に押し出す装置を設計して追加したが 本章では NAIST-Chocolatier の最終形である 装置を稼働させ続けると電磁弁の内部が高温とな 3D 形状チョコレート作成のための形状入力システ り内部でチョコが硬化してしまう問題が発生した ムについて説明する このような問題を解決するために 生クリームを加 図 12 に 3D 形状入力システムの入力画面を えたり チョコの温度を変えたりといったトライを行 図 13 に入力デバイスである力覚フィードバックデ ったが チョコ作成が可能なチョコを発見すること バイスの PHANTOM を示す 本システムは中間発 ができなかった 表で紹介している 今回は入力システムの基礎として PHANTOM オープンキャンパスのデモでは来場者に PC で による 3D モデルの積み重ねのみを作成した 144

155 6 問題点と今後の展開 ーなどに相談しながら最適なものを検討したい 本プロジェクトでは 3D チョコレート造形装置を 1 章でも述べたように 好きな形のチョコレート 開発し ユーザが自分の好きな形のチョコレートを が手軽に作成できる機会があれば 商業施設な 簡単に作成できるシステムを目的として そのベ どでかなりの人気が出ると考えられる 今後は製 ースとなる 2D チョコレート造形装置の開発とオー 品化を視野に入れた 3D 造形への発展を考える プンキャンパスにおけるデモを行った 7 自己評価 本システムを 3D 化するために解決すべき問題 点は以下の通りである 本プロジェクトは 3D チョコレート造形装置という レイヤー毎のチョコ形状 非常に独創的なアイデアのプロジェクトであったと 3D 形状の冷却 考える 企画立案と 2D からトライしていくという着 3D 形状入力 実なプロジェクト遂行計画は自己でも高い評価を チョコ材質 与えることができる オープンキャンパスのデモで 2D 造形装置で単純にチョコを塗布して硬化さ は一般の来場者 特に子供や女性に非常に好評 せると上面が球状 丸みを帯びてしまう ことがわ であった これは ものづくりの楽しさを知ってもら かった 今回の造形装置でレイヤーを重ねて塗布 う という本プロジェクトもう一つの目的を十分に達 するとチョコが横に流れてしまい 上手く高さが出 成できたと自負している なかった そこで チョコを積み重ねるために上面 しかしながら 3D を目指しつつも 2D の造形装 を削って平らにするなどの対策が必要となる 置でプロジェクト期間が終了してしまったのは非 3 章でも述べたが ペルチェ素子による下から 常に不本意であった 6 章に述べた問題点を解決 の冷却のみではレイヤーを重ねていくと上のレイ できなかったため 3D に発展させることができなか ヤーの硬化に非常に時間がかかることがわかった った プロジェクトの進捗管理が非常に甘かったと この傾向はレイヤーが重なれば重なるほど強くな 言わざるを得ない ることが予想されるため 側面や上面など別方向 今回の経験を活かして 自分の研究や他のプ からの冷却が必要となる これは冷却された空気 ロジェクトに取り組んでいきたい などを形状を損ねない程度に吹き付ける方法など 謝辞 が考えられる 5 章で述べたように 3D 形状入力システムに関し チョコレートの試作や試食に参加し 的確なコメ てはすでにベースができている このベース部分 ントを下さった協力者の皆さんに感謝します と 2D 形状入力システムを組み合わせることによっ て 3D 形状入力システムが比較的簡単に構築可 能である 最後に一番大きな問題がチョコの材質である 2D 造形装置においてもチョコの材質選定に非常 に時間がかかっており 結局自分達では最適な 配合を発見できなかったため市販のものを用いる ことした チョコの材質は塗布のしやすさ 硬化時 間 味など最終製品の品質に関わる部分である ので 本物のパティシエや調理師 お菓子メーカ 145

156 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1 プロジェクト名 仮想世界における人工生命の進化と生態系自己組織化のシミュレータ anlife の開発 2 プロジェクトリーダー 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 論理生命学講座 M 中村政義 学年 学生番号 氏名 アドレス 3 分担者 所属講座 4 チューター 所属講座 職名 氏名 論理生命学講座 助教 竹之内高志 5 必要経費 金額(千円) 設備備品費 消耗品費 支出予定月 ノート PC 外付けハードディスク 20 6 書籍 30 6 Falcon 3D コントローラー 50 6 液晶モニタ 旅費 調査目的も可 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 計算機周辺機器 56 6 PC ソフトウェア 99 6 デスクトップ PC Artificial Life XI 研究調査 40 8 第 14 回創発システム シンポジウム参加 FAN2008 インテリジェント システム シン ポジウム 研究調査 合計 出身研究室での会議のための交通費 978 (交付額は 6 月に通知) 146

157 6. プロジェクトの背景と目的 背景 人工生命(Artificial Life) とは生命現象を人工的に創出するなどして, 生命プロセスや進化などの生命システムを研究する学際的な分野である. 現在, 人工生命に対する研究ブームは終わり, 研究規模は最盛期より縮小している. 目的 本プロジェクトは, 人工生命分野の魅力を多くの人に共有してもらい, この分野の活性化に貢献することを第 1の目的として, 人工生命のシミュレーションソフトウェア anlife (another life の造語 : もう一つの, あり得た生命 ) を製作する. このソフトウェアはコンピュータ上に仮想世界を構築し, その中に発生した仮想生物群の進化と, 進化による生態系の自然形成をシミュレーションする. 仮想生物は絶滅 繁栄の生存競争を繰り返すことで, 体構造を進化させ, 行動を最適化することにより, 高等生物へと進化する. 仮想世界であるがゆえに, 現実世界にはない独創的な進化を遂げさせ, 我々が想像しなかったような独特な構造の生物や, 昆虫の社会システムのような生態系を形成する生物群が生じるシステムを構築することを目指す. その上で, この進化プロセスをユーザが観察でき, 仮想世界や生物を操作できるようにして, 仮想生物群が進化していく過程をインタラクティブに体験できるソフトウェアにする. そしてユーザはこれを楽しむうちに, 生命について考えさせられ, 人工生命への興味が誘発されるようにする. このようにして人工生命分野に興味を持ってもらうためのきっかけを作り出し, 多くの人に興味を持ってもらうソフトウェアにすることで, 人工生命分野の研究の活性化への貢献を目指す. 一方で, このソフトウェアを用いて, 自律的に発達するシステムについて構成論的に追究していきたいという目的もある. 将来像 将来はソフトウェアを自由に改変できるようオープンソース化し, 同じ目標を持った人たちで開発することで, 完成度の向上を目指すことも考えている. 完成度が向上すれば, 多くの人に本ソフトを体験してもらえることや, 研究のプラットフォームとして活用されることが期待でき, 研究の発展に寄与できると考えている. 7. 目的到達までの研究計画 現在試作段階のシステム現在, 単体の仮想生物の進化は実装が稚拙ではあるが達成できている. そのシミュレーション画像を図 1,2 に示す. 図 1 は移動行動を進化により獲得した仮想生物の1 例である.4 本足の仮想生物だが, 動物のように歩くのではなく, でんぐり返しを繰り返すことで移動する行動を獲得した. このような独創的な仮想生物が現れることが, 本シミュレーションの面白さと考える. また, 図 2に仮想生物の進化方法の模式図を示す. 図 1. 試作段階の仮想生物の例 上 : 片足ジャンプで移動する仮想生物. 下 : でんぐ り返しして起き上がり, この繰り返しで移動する 147

158 研究計画 1. 環境 ( 仮想世界 ) の設計と仮想生物の進化アルゴリズムの実装 6 月 10 配合月多様性に富んだ生物群に進化するよう子に引き込む環境を設計する. 例えば, 孫 仮想生物が生き残るためにはエネルギーを必要とし, その補給所が数箇所しかない環境にする. こうすることで補給所を巡って仮想生物間に競争や協力関係が生じる可能性のあるように設計? 図 2. 生物群の進化の方法. 生存競争に勝ったものが子孫を残す する. また, 仮想生物が目的を達成するための行動の学習アルゴリズムを設計する. 申請時の段階で上記にあるように, すでに実装済みである. 2. Web 公開 8 月 ~ anlife の公式 HP を開設しソフトウェアを公開する. 意外性 独創性のある 面白い 仮想生物を多くの人に見てもらうために, ニコニコ動画などの動画投稿サイトにシミュレーション動画を簡単にアップロードできるシステムにし, anlife の認知度向上を目指す. また, 公式 HP にて仮想生物のデータ掲示板システムを設けることで, ユーザが面白いと思った仮想生物をアップロードして, 他のユーザと共有できるようにする. ユーザはアップロードされた仮想生物を自分の仮想世界にダウンロードして, 観察 進化させることができるようにする. このシステムを軸にユーザ同士のコミュニティーの形成も目指す. 3. 学会公聴, シンポジウム参加 8 月学習アルゴリズムについての知見を得る. また anlife に興味を持ってくれ, 共同で開発してくれる人と出会うことも目的として参加する. そのために Web でソフトウェアを公開している段階でこれに参加する. 4. ユーザ層を拡大するためにゲーム性を持たせる 10 月 ~2 月ユーザが仮想世界や生物に影響を与え操作することで, 進化にどのような影響を与えるかシミュレーションする枠組みをつくる. スプリングセミナーの展示モータで物体抵抗力をフィードバックできる 3D ントローラーで仮想生物を操れるようにし, シミュレーションに関心の薄い人にも興味を持ってもらえるようにする. また, 来場者に, その場で環境のパラメータを変化させてもらい, 進化プロセスの変化を提示できるよう目指す. 本年度のプロジェクトの到達目標 複数体の生物による共進化と, それに伴う生態系形成のシミュレーションの実現 ソフトウェアの配布と, 公式 HP を軸にユーザによるコミュニィーの形成可能であれば, 学術的に興味深い現象を見つけその原因を解明し, 学会発表する 148

159 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 Panasonic ノート PC CF-Y7DWJAJR 消耗品費 26 6 外付け HDD HDLGX500R 書籍 PC 一式 計算機用 PC 旅費 ( 調査目的も可 ) SAB 08 研究調査 Artificial Life 研究調査 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約本プロジェクトの項目別の達成度と自己評価を述べる. シミュレータの開発 : 仮想環境に生成された複数の人工生命 ( エージェント ) が食糧を求めて生存競争を繰り広げるシミュレータを作成した. ユーザはエージェントが食糧まで移動する動作を学習する過程を観察できると同時に, エージェントが移動動作に適した体構造に最適化されていく過程も観察できるものとなっている. 一方で技術的な問題により, エージェントの運動学習アルゴリズムの設計, 生態系を形成するようなふるまいはできていない. 広報活動 : anlife の公式ホームページでシミュレータを公開, またシミュレータの動画を動画共有サイトへ公開した. その結果, 動画共有サイトのニコニコ動画では, 累計約 12 万回視聴され,anlife の公式ホームページのアクセスは約 3 万ページビュー ( 約 5 千ユニークユーザ ) となった. さらに, ニコニコ動画内の全動画約 220 万本の中で はてなブックマーク総数のランキングがトップとなった. つまり はてなブロガーからニコニコ動画の中で最も注目された動画となったと考えられ 広報活動は成功したといえる. 対外発表 : 8 月に計測自動制御学会主催の創発システムシンポジウムにてポスター発表を行った. スプリングセミナー : 多くの見学者に興味を持ってもらうことができ, 人気投票では 2 位の結果を納めた. 総評 : 強化学習のアルゴリズムなどの技術的側面は未熟であるが, 広報活動がうまくいったことにより, 本プロジェクトの目標である 多くの人に人工生命分野興味を持ってもらう は十分に達成されたと考えられる.CICP プロジェクトとして,NAIST 内で閉じた活動にとどまらず, インターネットを通して多くの人に影響を与えることができたプロジェクトだったと自負する. 149

160 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 仮想世界における人工生命の進化と生態系自己組織化の 進化シミュレータ anlife の開発 プロジェクトリーダ 中村政義 1 概要 背景と狙い そこで 本プロジェクトでは上記の役割を担 人が直接的にアルゴリズムを作成せずに,有用な うシミュレータの開発 公開を行い 研究の発 アルゴリズムを生成するための方法として 進化 展への貢献を目指す 本シミュレータでは 剛 的計算や強化学習 自律分散制御よる機能の創 体物理計算を行う環境内の仮想ロボットに目 発などが研究されている これらの手法によって 標位置へ移動するタスクを与え 迅速に達成で 例えばロボットの運動学習であれば 人が具体的 きた個体同士が子孫を残し 体構造 動作が最 な動作を記述することなく 計算機の試行錯誤に 適化されることで ロボットに移動動作を獲得 よって動作を獲得させることができる また 人が させる ユーザはその動作を獲得するまでの過 設計するよりも何らかの意味で優れた動作を得ら 程を観察することができる 本プロジェクトでは れたり 人が思いつかないような意外性のある``面 このシミュレータを広く一般に公開することで 関 白い"動作を獲得する場合もある 連する研究分野の活性化に貢献することを狙いと このようにして得られたアルゴリズムを可視化し する 他分野の研究者や一般の人にわかりやすい形で 2 プロジェクトの進捗 提示すれば これらの手法に関して興味がもたれ 申請書に記述した計画と その達成度を述べる るきっかけとなる これはこの分野の研究の裾野 計画1 環境(仮想世界)の設計と仮想生物の進化 が拡大につながり ひいては研究の活性化につ アルゴリズムの実装したシミュレータの作成 ながる 達成した ただし アルゴリズムの改善が必要であ この役割を果たしたシミュレータとして 自律分 る 散制御による群れアルゴリズムで鳥の群れを再現 計画 2 シミュレータの Web 公開(8月 ) した Boids や 物理計算を行う環境に作成された 達成した 予定通り 8 月初旬に anlife の公式ホー 仮想生物が 泳ぐ 進む 飛び跳ねるなどのタス ムページを開設 図1 し シミュレータを公開した クを意外性のある動作で獲得した Evolved Virtual 現在も公開中である Creatures などが挙げられる これらのシミュレー ション ツールは 一般の人や他分野の研究者に 興味 関心を持ってもらうだけでなく CG アニメー ションへの応用など 他分野への応用も実現して いる 現在 計算機の性能向上に伴って より複雑 な現象をリアルタイムでシミュレートでき か つ 視覚的な表現力もより豊かになっているが 上記のような 面白い 現象を直感的に分かり やすく示すシミュレータは筆者が捜したとこ ろ見つからなかった 図1.anlife のホームページ 150

161 3 成果 計画3 国際会議公聴 シンポジウム参加 まずは以下に成果を羅列する 達成した 予定通り 8 月に人工生命分野の国際 シミュレータの開発 会議 Artificial Life を公聴した また 8 月に計測 広報活動としてホームページを開設 シミュレー 自動制御学会が主催した創発システムシンポ タを公開 また シミュレータ実行画面動画を動画 ジウムにて 仮想ロボットが移動動作を獲得す サイトで公開 る進化シミュレータ anlife の開発 として 対外発表として創発システムシンポジウムでポス ポスター発表を行った そのポスターを図2に ター発表 て示す スプリングセミナー 以下 これらを詳しく述べていく シミュレータの開発 仮想環境に生成された複数の人工生命 エージ ェント が食糧を求めて生存競争を繰り広げる シミュレータを作成した ユーザはエージェン トが食糧まで移動する動作を学習する過程を 観察できると同時に エージェントが移動動作 に適した体構造に最適化されていく過程も観 察できるものとなっている 一方で技術的な問 題により エージェントの運動学習アルゴリズ ムの設計 生態系を形成するような 面白い ふるまいの再現はまだ達成できていない 広報活動 anlife の公式ホームページでシミュレータを 公開 またシミュレータの動画を動画共有サイ トへ公開した その結果 動画共有サイトのニ コニコ動画では 本報告書執筆時点で公開1週 間となるが 約 12 万回視聴され anlife の公 式ホームページのアクセスは約 3 万ページビ 図2 発表ポスター ュー 約 5 千ユニークユーザ となった さら に ニコニコ動画に存在する約 220 万動画の 計画4 シミュレータにゲーム性を持たせる 中で はてなブックマーク数のランキングでは 達成できていない しかし これに代わる機能とし トップである つまり はてなブロガーからニ て ユーザが自由に環境パラメータを変更できる コニコ動画の中で最も注目された動画となっ GUI 機能をつけた たと考えられ 広報活動は成功したといえる 対外発表 151

162 8 月に計測自動制御学会主催の創発システム シンポジウムにてポスター発表を行った スプリングセミナー 一般の方からは興味を持ってもらうことがで き 人気投票では 2 位の結果を納めた 逆に研 究に携わっていると思われる方からは 学習ア ルゴリズムの精度が悪いことや 扱っている題 材が人工生命ということもあり あまり好評を 図5 エージェントの例 得られなかった 3 1 シミュレータ概要 成果物であるシミュレータについて述べる 図 3 4 にシミュレータの実行画面を示す 図6 エージェントの例 図3 4に示すような重力のある 3 次元空間の環境 を構築し 仮想的なロボットエージェントを数十体 床上に配置する エージェントは保有しているエ ネルギーを消費することで動け エネルギーが尽 きるとその個体は消滅する ただし エージェント 図3 シミュレータのスクリーンショット は床に複数個設置されている緑色の目標地点に 到達すればエネルギーを補充できる エージェン トが到達した目標地点は 床上のランダムな位置 に再設置される このため この目標地点へいか に早くエネルギーを使わず到達するかという競争 がエージェント間で生じる 多くの目標地点に到 達することで エネルギーを多く蓄えたエージェン トは 他のエージェントに交叉目的で近づき接触 することで 相手と自分の遺伝子が交叉した子孫 図4 シミュレータのスクリーンショット を残せる その際 自分のエネルギーを消費し また 低い確率で遺伝子配列に突然変異が生じ また シミュレータ内のエージェントの一例を図5 る シミュレーション環境の1例を図7にて示す 丸 6にて示す が仮想ロボット 星印が目標地点で ロボット A は 交叉するために B に向かっており B はエネルギ ーを得ようとしている また C が D に接触すること 152

163 で交叉し 新たな個体 C'が生じる これら一連の 3 2 アルゴリズム概要 流れは 遺伝的アルゴリズム(GA)をエージェント 移動動作を獲得するためのアルゴリズムの簡単な の行動によって実行している つまり システムが 説明を述べる アルゴリズムは2つに大別でき トップダウンで淘汰 選択をし 最適化を行うので 1 動作の学習 エージェントが任意の方向へ移 はなく エージェントの行動によってボトムアップ 動する動作を学習するアルゴリズム リアルタ に最適化される このシミュレータを実行すると よ イム り多くの目標地点へ迅速かつエネルギー効率良く 2 体構造の最適化 2体のエージェント同士が 到達できるエージェントが得られる なお ロボット 子供を作ることによる体構造の最適化を行う エージェントはモータ等の性能 耐久性において アルゴリズム 交叉時 制約のない理想的な動作が可能とする また エ 1 に関しては強化学習のベースに 本シミュレー ージェントは環境から目標地点と他エージェント タ用に合わせたアルゴリズムを用い 2 に関して の位置情報をすべて取得できるものとする この は単純に遺伝的アルゴリズムを用いた 情報と 自分のエネルギー貯蓄状態をもとに 交 これらのアルゴリズムによって 個々のエージェ 叉のためエージェントに向かうか エネルギー獲 ントが各々の目標地点までの移動動作を学習し 得のため目標地点に移動するかのどちらかを実 ていく その中で 他に比べて迅速に移動できる 行する 遺伝子配列は 各関節の目標角度時系 エージェントが自分の体構造を遺伝させた子供を 列 体のパーツのサイズ 行動決定 交叉する ま 残していく この繰り返しによって シミュレーショ たはエネルギーを獲得するか のパラメータで表 ン時間の経過とともに 移動動作を迅速に行える 現される エージェントの動作は 関節ごとに目標 エージェントが生じるシミュレータとなっている 移 関節角と現在の関節角度との差分に比例した角 動動作獲得のアルゴリズムの模式図を図に示す 速度になるよう力を加えることにより実現している 一方で ユーザは GA の進化過程をエージェント の振る舞いを通して観察することができる また 重力などの環境パラメータを変化させたうえで シ ミュレーションを実行できるようになっている 図8 移動動作獲得のアルゴリズム 4 今後の展開 今後のプロジェクトの展開と展望を述べる 4.1 英語圏への展開 図7 シミュレーション模式図 現在 英語の簡易版のホームページを公開して 153

164 いるが アクセスはない状態である 英語はインタ ミュレータとなっている 今後は 多様な振る舞い ーネットでの共通語であり 英語圏の人口は多い が生じるよう環境を設計する 特にユーザが 面白 従って 本プロジェクトの目標 多くの人に人工 い と感じる現象が生じるよう環境を設計していき 生命分野興味を持ってもらう を達成するため たい 例えば エージェント間でコミュニケーショ には今後 英語圏に向けた広報活動を行う必要 ンが図れる環境や エージェントをグループに分け があると考えられる 具体的には 英語の HP の充 グループごとに違うタスク 例えば他のエージェン 実 英語版の動画を英語圏に向けて公開したい トを食べてエネルギーを補充する など を割り当 て グループ間に相互作用が生じるようにする環境 4.2 シミュレータの開発 などを考えている 今後もシミュレータの開発を継続すると共に ユー ザからの多くの要望や意見を得ることができたた 5 自己評価 め これらを参考に開発を継続したい 具体的に 以下の点について自己評価を述べる は エージェントの体構造をユーザが自由に作成で 5.1 プロジェクトの企画 きるツール 企画段階での本プロジェクトの目標は次の2点あ 強化学習によってユーザが設計したエージェン った トの移動動作を学習させるシミュレータの開発 目標 1 人工生命のシミュレータを開発 公開する の2点である ユーザからの エージェントの体構 ことで 多くの人にこの分野に興味を持ってもらう 造を自由に作りたい という意見を反映したもので 研究の裾野を拡大し ひいては研究の活性化に 本プロジェクトの 強化学習などに興味を持っても つなげる らいたい という目標を達成することのできるツー 目標 2 自分自身の興味関心がある自律的に発 ルだと考えられる 現在のところ開発するためには 展するシステムである人工生命分野の現象につ 多くの時間が必要となるため 1人で開発するつも いて 構成論的に調べたい りはないが 興味をもってくれた人を巻き込んで 本プロジェクトはこの2点の目標を実現するため 開発をしていきたい の活動を企画した 具体的には人工生命に関連 するシミュレータを開発し 広く一般に公開すると 4.3 アルゴリズムの改良 いう活動である 現在 エージェントの運動学習には独自のアルゴ しかし 筆者が研究室で統計数学の基礎知識 リズムを用いているが 学習性能は悪い 従って を学んでいく中で 考えも整理され 人工生命に 今後は既存手法をしっかりサーベイし 筆者自身 対する漠興味は徐々に薄れていった 一方で が基礎知識を学習してから実装していきたい 強化学習などの手法に対する興味が強くなって また エージェント同士が子供を残すことで体 いった このことから 10 月頃にプロジェクトの目 構造も移動に適した構造に最適化されていくが 標を次のように変更した このアルゴリズムについても改良が必要である 新しい目標 1 強化学習や最適化手法などの魅力 を多くの人に興味を持ってもらうことで 研究の裾 4.4 多様な振る舞いを観察できる環境の設計 野を拡大し ひいては研究の活性化につなげる 現在の環境はぞれぞれのエージェントが食料を 目標を途中で変えることは プロジェクトの進め 得るために 単に食料のほうへ移動するだけのシ 方として問題であり 企画を十分に練れていなか 154

165 った点を反省している 評であった 動画共有サイトのニコニコ動画では 累計約 12 万回視聴され anlife の公式ホーム 5.2 プロジェクトの計画と実行 ページのアクセスは約 3 万ページビュー 約 5 本報告書の7 目的到達までの研究計画で述べ 千ユニークユーザ が閲覧した この結果から たとおりである 本プロジェクトの活動はこの計画 本プロジェクトの目標である 多くの人に人工 書に沿って遂行された 生命分野興味を持ってもらう という目標は達 多くの計画に関しては予定通り開発が進んだ 成されたと考えられる しかし 以下に述べる計画に関しては予定通りに また スプリングセミナーでも 一般の方か 進まなかった らの評判は良く 投票結果も 2 位の成績を収め 独創的な進化を遂げさせ生態系のような 面白 ることができた しかし強化学習の専門家と思 い ふるまいを再現すること われる方にから 本シミュレータの運動学習ア ゲーム性を持たせて だれにでも親しみやすい ルゴリズムに関しては好評を得ることはでき ようなシミュレータにすること なかった これは本プロジェクトで作成したシミュ これらの計画に関しては 単純に時間をかけれ レータは 視覚的なインパクトがあるため このよう ば開発できるという課題ではないため 計画通り な一般の方からは好評 専門家の方からは不評と に開発が進まなかった このような技術的困難を いう結果となったのだと考える 専門家の方からも 伴い 計画を予定通りに進めないリスクは 企画 認められてもらえるようなアルゴリズムの設計であ 段階で容易に予想できたはずである 実現に困 ったり 問題設定をしっかり考えるべきであった 難が伴うと予想される課題を 必ず実行したい計 画として計画書に書いたのは反省したい このよう 5.5 総評 な一筋縄ではいかない課題は 発展的な計画で 本プロジェクトの 多くの人に人工生命分野興 あり 可能であれば実現する という位置付けにし 味を持ってもらう という目標は広報活動がうま ておくべきであった くいったことで十分に達成できたと考えられる また 今後の発展について計画書ではオープ 一方で技術的側面は まだまだ未熟であり 今 ンソース化する可能性を記していた しかし 筆者 後改良していかなければならない には複数人でのソフトウェア開発のノウハウの蓄 本プロジェクト活動は CICP プロジェクト 積がないため これを実現することは難しかった として NAIST 内で閉じた活動にとどまらず さらに オープンソース化することのメリット デメリ インターネットを通して多くの人に影響を与 ットを考えたときに 必ずしもオープンソース化す えることができたプロジェクトだったと自負 ることが 本プロジェクトの目標達成に結び付くわ している けではないことをしっかり考慮しておくべきであっ た 結果として このオープンソース化はプロジェ クトを遂行するにあたって 不必要と判断し 今後 の展望計画からは排除した この点も反省した い 5.4 プロジェクトの活動結果 動画共有サイトでのシミュレータ動画の公開は好 155

166 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 YUMA- 人の自然な振る舞いを大切にするインタフェースデバイスの開発 - 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 神経計算学講座 M 芳賀真由美 mayumi-h@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 東京工業大学 B4 04_28169 金達志 kim.t.aa@m.titech.ac.jp 豊橋技術科学大学 M 並木理 o_namiki@maglab.eee.tut.ac.jp 4. チューター 所属講座職名氏名 論理生命学講座教授池田和司 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費消耗品費 通常の研究費でも購入可能な物品に限る なし 月 デジタルオシロスコープ DS-1100C 月 オシロ用インタフェースボード M 月 オシロ用コントロールソフト M 月 ロジックアナライザ DV 月 書籍 ( プログラミング 回路関係 ) 月 Windows ノート PC Dell 2 台 90 7 月 電子部品 30 7 月 工具 82 9 月 1 月 回路プリント基板 70mm 70mm10 枚 月 筐体 10 台分 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 東京 デザインフェスタ発表 参加費 交通費 2 名 月 カナダ NIPS 調査目的 交通費 宿泊費 参加費 5 日間 2 名 70 2 月 奈良 スプリングセミナー発表 交通費 宿泊費 1 泊 2 日 2 名 70 3 月 奈良 スプリングセミナー発表 交通費 宿泊費 1 泊 2 日 2 名 合計 ( 上限 1,500 千円 )

167 6 プロジェクトの背景と目的 近年のインターネットは 特徴的な進化を遂げており Web2.0 という言葉で象徴されている[1] Web2.0 を代表する技術の一つに RSS がある RSS の登場により 天気情報 ニュース ブログの記 事など 様々な種類の情報の更新が配信されるようになった これらの情報は XML ベースでメタ データが構造的に記述 してありマシンリーダブルな形で整理されているため 人の手を介さない情 報の連携や加工が容易であるという特徴を持つ その一方で パーソナルコンピュータのインタフェースは マウス キーボード ディスプレイが中心 であり 変化していない こうした現状の中で Tom Igoe により フィジカルコンピューティングが提唱 された[2] フィジカルコンピューティングは 人間の自然な身体表現を考慮することから出発し ど のようにして人間がコンピュータを通じてコミュニケーションするか を インタフェースデバイスの開 発を通じて考え直すアプローチである フィジカルコンピューティングは メディアアートや ユビキタ スコンピューティング に向けたインタフェースデバイスとも関連が深い フィジカルコンピューティングの考え方に基づいたインタフェースデバイスと RSS を組み合わせる ことにより 人の自然な動作の中で Web からシームレスに情報を受けとることができるインタフェース を実現できると考え プロジェクトリーダーの芳賀と分担者の金はこのようなデバイスの試作品として YUMA を開発した 図1 YUMA は振動センサにより足音を検知し それに同期して RSS で取得し た天気情報と対応した音声を再生するデバイスであり ICC マッシュアップ アート コンテストでマ ルコス ウェスキャンプ特別賞を受賞した[3] 現在の YUMA は天気情報を足音として表現することしかできないが RSS やセンサの変更 追加 を行えば 様々な Web 情報の表現の形を実現できるはずである そこで RSS やセンサの変更 追 加を行った YUMA を数パターン製作 発表し ユーザからの意見を聞くことで YUMA のインタフェ ースデバイスとしての可能性を探索し 新たなインタフェースデバイスを提案することを本プロジェク トの目的とする また 開発したデバイスの回路図 ソースコード等を オープンソースハードウェアと して Web で公開することも試みる 図1 YUMA 参考文献 [1] Tim O'Reilly "What Is Web2.0" [2] Tom Igoe "Physical Computing" [3] "ICC マッシュアップ アート コンテスト" [4]GainerBook Labo くるくる研究室. " GAINER" 九天社 157

168 7 目的到達までの研究計画 本プロジェクトのスケジュールは以下の通りである [5-6 月] 使用する RSS センサの選定 筐体設計 プロトタイプの開発 回路設計 製作 プログラム 開発 [7 月-8 月] プロトタイプの開発 回路設計 製作 プログラム開発 [9 月] 完成版の作成 回路基板 筐体の発注 組み立て 模擬国際会議への参加 [10 月] 文化庁メディア芸術祭へ投稿 [11 月] デザインフェスタへ出品 [12-1 月] Web サイトの開設 発表時の観覧者の反応を参考に作品の改良を行う シームレスなイ ンタフェースデバイスの最先端であるブレインマシンインタフェースについて調査するため 国際会 議 NIPS に参加 [2 月] スプリングセミナでデモンストレーション [3 月] スプリングセミナでデモンストレーション 報告書の提出 YUMA の試作品はすでに完成しており 本プロジェクトではハードウェアの改良 センサ RSS の 変更といった作業を行う そのため 開発は比較的容易だと考えられる 考えられる問題点は 奈良 東京 愛知と メンバそれぞれの住む地域がばらばらであるため 直接 会ってディスカッションを行う時間的 金銭的コストが多くなる点である この問題を解決するため グ ループウェアの活用 インスタントメッセンジャーを使用した会議などを行い 頻繁に連絡を取り合う 予定である 158

169 8 決算の要約 金額(千円) 支出予定月 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 設備備品費 D プロッタ MODELA MDX-20 一式 消耗品費 電子部品 計測器一式 ノート PC vostro 台 99 6 ノート PC ThinkPad X61 1 台 旅費 調査目的も可 合計 書籍一式 国内学会等 調査 国際会議 NIPS 調査 9日 国内 発表 1163 9 プロジェクトの状況および自己評価の要約 本プロジェクトでは 人の自然な動作の中で Web からシームレスに情報を受け取ることができるイ ンタフェースデバイスの試作品として開発した YUMA の回路を次のように改良した コンピュータとの通信の無線化 音声再生機能の内蔵 センサ アクチュエータ回路と通信回路のモジュール化 また Make:TokyoMeeting02 デザインフェスタ スプリングセミナにおいて 実機デモンストレー ションを含めた発表を行った 来場者の方から 実機やオープンソースハードウェア化に対して好 意的な意見をいただいた 当初の計画に含まれていたオープンソースハードウェアとして公開することや センサ RSS の変 更を行うことができなかった リーダとして スケジュール管理や メンバをまとめあげる能力が不足し ていたことを痛感した プロジェクトを確実に遂行できるメンバを選定することや 各メンバに割り振る ことのできる作業量を正しく見積もり的確に作業を割り振ることが重要だということを学んだ 提案す る研究の意義を繰り返し自分に問いかけ 考えをまとめていったことはいい経験になった 159

170 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 YUMA-人の自然な振る舞いを大切にするインタフェースデバイスの開発プロジェクトリーダ 芳賀真由美 1 概要 背景と狙い 現代社会において コンピュータは個人が情報を 得て 発信していく上で欠かせないものとなっている しかし パーソナルコンピュータのヒューマンインタフ ェースデバイス HID は マウス キーボード ディス プレイ スピーカ等が主流であり 普及し始めた当初 から大きな変化はない Ishii らは これらの HID が人間の住む物理世界に おけるインタフェースとかけ離れていることによる問 題点を示している[1] 例えば物理世界において 窓 から入ってくる光の量の変化により 気候の変化や 図 2 YUMA の外観 時間の経過を知ることができる 人間は無意識のう ちに空間中の光 音 影 空気の流れなどのバック YUMA は振動センサにより足音を検知し それに同 グラウンドの情報から多様な情報を受け取り 処理し 期して RSS で取得した天気情報に対応した音声を ている しかしながら 現在の典型的な HID は人間 再生する 例えば雨の日には水たまりの上を歩いて が注意を向けることを前提としており このようなバッ いるような足音が聞こえる 人の歩くという動作と イ クグラウンドの意識は活かされていない 人間が物 ンターネット上の RSS をカップリングさせることで 人 理世界を生きることで培ってきた感性とスキルを活か が日常的に行う自然な振る舞いから天気情報を受 す HID を考えることで より豊かな人間とコンピュー け取ることができる 本作品は 2008 年 3 月に メディ タのインタラクションが実現できる可能性がある アアートの展示を中心にアートとサイエンスに関係す プロジェクトリーダの芳賀とメンバの金は バックグ るイベントを行う文化施設である NTT インターコミュ ラウンドの意識を利用した HID の試作器として ニケーション センターが主催の ICC マッシュアッ YUMA を開発した YUMA の動作を説明した図を図 プ アート コンテスト[2]でマルコス ウェスキャンプ特 1 に外観を図 2 に示す 別賞を受賞した 本作品では振動センサと天気情報 の RSS を使用したが センサ アクチュエータや RSS の追加 変更を行うことでさまざまな動作と情報のカ ップリングを試してみたいと考えている HID の試作を行うことで 人々がいかにコンピュー タとコミュニケーションし得るか について考え直すこ とをフィジカルコンピューティング[3]といい アートや デザインの中で独立した分野となっている 新しいタ イプの HID を開発するにあたり アーティストやデザ 図1 動作説明 イナが自らの手で プロダクトのプロトタイプの開発を 行うことは非常に重要である 電子回路の詳しい知 160

171 識がなくてもプロトタイプの製作が行えるような フィ プラットフォームを構築することと これを用いてさま ジカルコンピューティングのためのプラットフォーム ざまな HID 開発し バックグラウンドの意識を利用し がいくつか開発されている[4][5](図3) た HID の可能性を模索することを目的とする 2 プロジェクトの進捗 (a)gainer 図 4 試作器の概略図 図 4 に試作器の概略図を示す 圧電センサから 得られた信号で人の動きを検出しその振動の強 さをコンピュータに送信する コンピュータはあ らかじめ天気予報の情報をインターネット上か ら取得しており 振動の強さに合わせて音量を調 整した音を再生する YUMA の側を通ると足並 (b)arduino みに合わせて音が再生される音が 足音のように 鳴りひびき 例えば屋内にいながら水たまりのう 図 3 フィジカルコンピューティングのための開発プ えを歩いているような感覚を得られる ラットフォーム a Gainer (b) Arduino この試作器を基に デバイスの自律性を高める ためにコンピュータとの通信の無線化と音声再 このようなプラットフォームを使用すれば 電子回路 生機能の内蔵を また拡張性を増加させるために の詳しい知識がないユーザでも 自分自身の手で コンピュータとの通信部とセンサーユニットを 個別のニーズに合わせた HID の開発 改良が行うこ 独立させ複数のユニットをつなげられるように とが可能である I2C バス接続へと変更を行った 図 5 に回路の YUMA は RSS 情報を人の自然な振る舞いとカップ ブロック図を示す リングして出力するデバイスである RSS は情報が XML ベースで整理されており 情報の抽出 加工が 容易であるという特徴を持つ 我々は RSS のこの特 徴に着目し 特に RSS 情報を表示するための HID を 簡単に製作できるようなフィジカルコンピューティン グのための開発プラットフォームを作ることができると 考えた 本研究は ハードウェアの知識の少ない人 でも簡単に RSS を利用した HID を開発できるような 161

172 ジャーなマイクロコントローラである PIC に比 べ 1 命令を 1 クロックサイクルで実行可能である こと レジスタが多く直交性に優れていること I/O の特定ビットだけの状態を変更できることな どで優位性がある またマイコン開発には不可欠 なライターも様々なものが作られており RS232 ポートを持たないノートパソコンなどでも USB インタフェース IC である FT232(図 7)などを利用 して書き込む事が出来る 図5 改良版回路のブロック図 カスタマイズが簡単になり YUMA と互換性 を持った回路を容易に設計できるよう 極力簡単 図7 USB インタフェース IC モジュール FT232 な回路になるよう心がけた また 使用する電子 素子も特別なものを用いず 個人利用者も容易に 無線通信に用いる Xbee(図 8)は 2.4GHz 帯域 入手できるものに限定した これらの事から主な を利用する ZigBee/IEEE に準拠した低 処理を行うマイコンに AVR(Mega88)を 無線通 消費電力ワイヤレスネットワークの構築を目的 信モジュールとして Zigbee 規格を用いる Xbee と とされたモジュールである シリアル to Zigbee した というシンプルな機能をもっており ワイヤレス ネットワークを容易に構築することが可能であ る 同じ無線モジュールである Bluetooth や Wi-fi などに比べ消費電力も大変小さく通信可能 距離 通信速度とも YUMA で用いるには十分で ある 以上の理由からこれを用いることとした 図6 AVR マイコン AVR マイコン(図 6)は Atmel 社が製造する 8bit RISC アーキテクチャで開発環境(C コンパイラ) 図8 Xbee モジュール も無料で提供されている比較的個人利用者にメ 改良された YUMA は 主に 3 つ又はそれ以上 ジャーなマイクロコントローラである 同じくメ の機能を持つ回路に分かれている 一つ目はコン 162

173 ピュータが取得した情報を YUMA へと無線通信するインタフェース回路, 二つ目はコンピュータとの通信を行う無線モジュールと I2C バスのホスト制御を行う YUMA 側のインタフェース回路, 3 つ目は振動検知や音の再生など YUMA の挙動を決めるセンサやアクチュエータを搭載する回 路である. センサーユニットはホスト IC への機器登録によってコンピュータからの情報が得られるようになる. このようにして製作したのが図 9, 図 10 の回路である. 図 8 PC 側インタフェース回路 図 9 YUMA 側インタフェース回路とセンサ アクチュエータ回路 163

174 またここでは振動によって音を再生し 合わせて LED の光によって通知を行う例を示したが 他 にもモータを使った物理的な移動 変動やバイブ レーションなどの通知方法の他に今までのデー タの流れとは逆にセンサから取得したデータを インターネット上に配信するといった方法が考 えられる またセンサによって取得するデータも 振動の他には 照度 気温 気圧などの配置場所 の環境に依るものや持ち運び時や特定の条件 場 所に反応する加速度 赤外線 圧力 力 センサ 図 12 デザインフェスタでの展示風景 などが考えられる ICC マッシュアップ アート コンテストで受賞したこ 3 成果 ともあり YUMA 知名度は高かった 多くの人に オ 本プロジェクトにおいて 以下のように試作器を改 ープンソースハードウェアとして公開していくことに 良した 好意的な反応を示していただいた コンピュータとの通信の無線化 3 月 日に行われたスプリングセミナのポスタ 音声再生機能の内蔵 ーセッションにおいてデモンストレーションを行った センサ アクチュエータ回路と通信回路のモジュ 改良前 改良後それぞれ回路の展示と実演を行っ ール化 た また 国内で3回の実機デモを行った 11 月 8 日 に多摩美術大学で行われた Make:TokyoMeeting02 4 今後の展開 に出展者として参加し YUMA の紹介とデモンストレ 今後 以下の作業を行う予定である ーションを行った また 11 月 9 日に 東京ビッグサ (1) オープンソースハードウェア化 イトで行われたデザインフェスタにおいて 同様の展 作成した回路をオープンソースハードウェアとし 示を行った Make:TokyoMeeting02 での展示風景を て Web などを用いて広く公開する また 個人 図 11 にデザインフェスタでの展示風景を図 12 に示 開発者が容易に開発に参加できるよう API ドキ す ュメントを充実させ 通信規格などの厳密化を行 う (2) 回路 プログラムの改良 マイコン及び 無線モジュールのスリープモード を利用するようにし消費電力の低減化を行う (3) センサ回路 RSS の変更 改良した YUMA では振動センサにメカニカル振 動スイッチを用いたが 結果として誤動作が増 えた 試作器と同様の圧電センサを用いた検出 図 11Make:TokyoMeeting02 の展示風景 手法をライブラリ化する また 同様にさまざまな センサ アクチュエータの利用を簡単に行うため 164

175 のライブラリを構築する. その後, センサ アクチュエータ,RSS を変更した YUMA を試作し, 新たなバックグラウンドの意識を用いた HID を提案する. 5. 自己評価 YUMA の改良型の回路を動作させることができたが, 当初の計画に含まれていたオープンソースハードウェアとして公開することや, センサ RSS の変更を行うことができなかった. プロジェクトを遂行するに当たり, たくさんの困難があった. リーダ以外のメンバが卒業年次生だったため研究とプロジェクトを両立させるのが大変であり, 作業が進まない期間も多かった. メンバが学外の学生であったことや, リーダが講座の都合で沖縄へ引っ越したことにより, 各メンバが開発した回路の詳しい動作を把握することや総合してテストを行うことが難しかった. また, 外装と一部の回路の設計 製作を担当する予定だったメンバが都合により脱退したため, スプリングセミナでは, 作成した回路に外装をつけることができなかったことが非常に残念であった. リーダとして, スケジュール管理や, メンバをまとめあげる能力が不足していたことを痛感した. プロジェクトを確実に遂行できるメンバを選定することや, 各メンバに割り振ることのできる作業量を正しく見積もり的確に作業を割り振ることが重要だということを学んだ. プロジェクトの立案を行うことはとても楽しかったし, 提案する研究の意義を繰り返し自分に問いかけ, 考えをまとめていったことはいい経験になった. また, 国内発表やセミナの聴講を通じて,YUMA の紹介や参加者同士の情報交換 人脈作りができたことは非常に良かった. 今回の経験を将来に役立てていきたいと思う. Towards Seamless Interfaces between People, Bits and Atoms, Proceedings of the 1997 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, pp , ACM Press [2] ICC マッシュアップ アート コンテスト, ndex_j.html [3]Tom Igoe, Dan O Sullivan, Physical Computing : Sensing and Controlling the Physical World with Computers, Course Technology Ptr [4]GainerBook Labo, くるくる研究室, +GAINER 九天社 [5] Arduino, [6] 土井滋貴, 試しながら学ぶ AVR 入門, CQ 出版株式会社 [7]Tom Igoe, 小林茂, 水原文 Making Things Talk, オーム社 [8]Tim O Reilly, What Is Web2.0 /2005/09/30/what-is-web-20.html 謝辞本プロジェクトでは, チュータを引き受けてくださった池田和司教授にたくさんのアドバイスをいただきました. 教務職員の足立敏美さんには, 予算の件で親身に対応していただきました. 生命システム学講座の寺村佳子さんには, 研究計画を執筆するにあたり, 多くのアドバイスと叱咤激励をいただきました. 深く感謝いたします. 参考文献 [1] Hiroshi Ishii, Brygg Ullmer, Tangible Bits: 165

176 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 さらりとかわす トムとジェリー 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 応用システム科学講座 M 畑田和良 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 応用システム科学講座 M 木田直希 応用システム科学講座 M 平出尚史 4. チューター 所属講座職名氏名 応用システム科学講座助教小木曽公尚 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 画像計測用計算機 (ThinkPad T61) 1 台 月 ラジコンカー制御用計算機 (ThinkPad T61)1 台 月 ディジタルコントローラ (USBA04) 1 台 消耗品費 93 6 月 i-sobot( タカラトミー ) 3 台 6 6 月 Q-STEER( タカラトミー ) 5 台 月 USB カメラ一式 (DFK-21AU04) 3 台 月 7 月 システムのフレーム ( トムとジェリーの家 ) 電子部品 (LED, 導線, 抵抗等 ) 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 IEEE MSC2008 (San Antonio, USA) 4 日間 合計

177 6. プロジェクトの背景と目的近年, 自動車に関連する制御システムの研究が盛んであり, 情報通信技術の恩恵を受けている. たとえば, 高精度 GPS( 全地球測位システム ) を活用した正確なナビゲーションシステム, 交通流を円滑にするための ITS( 高度道路交通システム ) などは有名である. また, 車内通信によるエンジン, ブレーキ, サスペンションなどの電子統合化制御により, 安全に操縦するための制御システムや運転支援システム ( レーンキーピング クルーズコントロール, プリクラッシュブレーキシステムなど ) が開発されてきた. しかしながら, ヒトと車との衝突を回避する技術に関しては, いまだ研究開発の余地がある. そこで, 本プロジェクトでは, ヒトと車, 車と車との衝突を回避するシステムを開発することを目的として, さらりとかわす トムとジェリー を提案する.( トムとジェリー のタイトル使用許可は, ワーナーエンターテイメントジャパン ( 株 ) からいただいており, 学術目的でのロゴ キャラクター等のイメージ使用許可については, 現在交渉中です.) 提案プロジェクトの概観イメージを図 1 に示す. その特徴は, 天井カメラによるビジュアルフィードバックにより, 車とヒトの位置を計測して車に適切な回避行動を指示することである. この技術の効果は, 昨年発表した学術論文により裏付けされている. さらに, トムとジェリーを見立てた, 改造したラジコンカーと人型ロボットの市販玩具を用いるので, 小 中学生など低年齢層にもアピール度は高い. また, トムを遠隔操縦できるようにして安全に遊べるシステムにする. 特に, 学外での展示や地域交流イベントなどに出展できるよう, 可搬性を考慮した組立式のものを構築する. 将来的には, 天井カメラによる位置検出をセンサーネットワークや GPS などで代用することで, より現実的な衝突回避システムへと発展させる. 図 1: 提案プロジェクトの概観イメージ 167

178 7. 目的到達までの研究計画本プロジェクトの目的を達成するための研究計画は, 以下の通りである. 1. ビジュアルフィードバックの仕組みの理解 2. ビジュアルフィードバックシステムの構築 3. 衝突回避制御の仕組みの理解 4. ラジコンカーおよび人型ロボットの動特性に関するデータ収集 5. 衝突回避制御法の実現 簡素化 6. 衝突回避システムの製作 7. ( 簡素化した ) 制御法の実装 ( ビジュアルフィードバックと衝突回避制御の融合 ) 8. 動作テスト データ収集 本プロジェクトで重要な技術は, ビジュアルフィードバックと衝突回避アルゴリズムである. ビジュアルフィードバックは,CICP2007 大道芸ロボット 染之介 染太郎 プロジェクト でも用いられており, 当講座には十分なノウハウがあるため, 大きな問題は起きないと予想される. 一方, 衝突回避アルゴリズムは, 理論上有効であることは確認されているが, まず, 実装可能性について検討する必要がある. ここで, そのまま実装することが困難である場合には, システムや制御法の簡素化を検討することで困難を回避し, システムの構築を目指す. なお, 本プロジェクトメンバーは, 電気電子工学 機械工学の出身者で構成されており, それぞれのバックボーンを生かすことでスムーズな計画の遂行が可能である. 最後に, 本プロジェクトの研究計画図を以下に示しておく. 図 2: 研究計画 168

179 9. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 8 月 計測, 制御用 PC(PrecisionT5400) 計測用カメラ 消耗品費 37 8 月 ラジコンカー, 人型ロボット一式 月 6 月 7 月 資料費 ( 書籍等 ) 電子部品一式収納用品一式 月 計測用カメラ用備品一式 78 9 月 システムのフレーム一式 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 11 月 1 月 2 月 IEEE MSC2008(San Antonio, USA) 4 日間,1 人第 51 回自動制御連合講演会 ( 山形 ) 3 日間,1 人 SICE セミナー ( 大阪 ) 2 日間,1 人先行研究調査 ( 大阪 ) 1 日,3 人 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約 1.2. では, 移動体の位置を正確に計測するために, 天井カメラからの画像に発生している歪みの補正を行った.3. はシステム製作の準備で十分に達成することが出来た.4. で得たデータによると, 本プロジェクトで使用予定であった人型ロボットの移動速度が想定以上に遅かったことから, 今回は車とヒトの衝突回避は断念し, ラジコンカーを使った車と車の衝突回避に専念する方針にした.5.6. では, ラジコンカーが機敏な動作が可能であることから, 質点とみなすという簡素化を行ない衝突回避システムの製作に着手した.7.8. では, 理論上可能であったことが実機では問題となることが多数発生したので, パラメータの微調整を繰り返しながらシステムを完成させた. スプリングセミナー及びオープンキャンパスのポスターセッションでは実機を使用してデモを行った. ラジコンカーを用いた衝突回避の実演は小 中学生のみでなく, 付き添いで来場していた女性や高年齢層にも好評で制御の仕組みや面白さを伝えることが出来たと感じた. また, 手作りのシステムであることから, ものづくりに興味のある参加者からは技術的要素の質問を多く受け, それに答えることで, 本学に関心を持ってもらうことが出来た. 今後の課題として, 実社会への応用を期待する声が多かったので, 今後は是非それを実現したいと考えている. 実社会での衝突回避の実現は車両の位置の計測, モデル化, 制御方式などの改良が必要である. 169

180 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 さらりとかわす トムとジェリー プロジェクトリーダ 畑田 和良 プロジェクトメンバ 木田 直希 平出 尚史 チュータ 小木曽 公尚 1 概要 背景と狙い 2 プロジェクトの進捗 近年 情報通信技術の恩恵を受けて自動車に関 本プロジェクトの進捗報告に当たって まず 研究 連する制御システムの研究が盛んである 例えば 計画を紹介する 高精度 GPS を活用した正確なナビゲーションシステ ム 交通流を円滑にするための ITS などは有名であ 1. ビジュアルフィードバックの仕組みの理解 る また 車内通信によるエンジン ブレーキ サス 2. ビジュアルフィードバックシステムの構築 ペンションなどの電子統合化制御により 安全に操 3. 衝突回避制御の仕組みの理解 縦するための制御システムや運転支援システムが開 4. ラジコンカーの動特性に関するデータ収集 発されてきた しかしながら ヒトと車との衝突を回避 5. 衝突回避制御法の実現 簡素化 する技術に関しては いまだ研究開発の余地がある 6. 衝突回避システムの製作 そこで 本プロジェクトでは ヒトと車 車と車との衝突 7. 制御法の実装 ビジュアルフィードバックと を回避するシステムを開発することを目的とする 衝突回避制御の融合 8. 本プロジェクトで開発するシステムの特徴は 天井 動作テスト データ収集 カメラによるビジュアルフィードバックにより 回避側 の車と追跡側の車の位置を計測し 回避側の車に 以上の研究計画に基づき動作テスト データ収集 適切な回避行動を指示することである さらに トムと まで行った 以下に各項目の詳細及び 調査のた ジェリーを見立てた 市販のラジコンカーを用いるの めに参加したセミナーや学会について報告する で 小 中学生などの低年齢層へのアピール度が 高く かつ安全に遊べるシステムであると考えられる 2.1 ビジュアルフィードバックの仕組みの理解 特に 学外での展示や地域交流イベントなどに出展 従来の制御は内界センサから得られる情報のフィ できるよう 可搬性を考慮した組み立式のものを構 ードバックによって構成されることが多かった しかし 築する 人間の運動は視覚情報をより重要視していることか ら 視覚センサを用いて得ることの出来る外界情報 をフィードバックに用いるビジュアルフィードバック制 御が注目されている ビジュアルフィードバック制御は内界センサを用い たフィードバック系に比べ センサノイズが少なく 異 なる物理量の計測に際して複数個のセンサが不要 なことなどの特徴を持つ 図1 提案プロジェクトの概観イメージ しかしながら 人間のように高速に反応するには高 価な画像処理系が必要となる そこで 本プロジェク 将来的には 天井カメラによる位置検出をセンサ トでは 視覚センサのカメラは市販の製品の中から ネットワークや GPS などで代用することで より現実 選定し 独自で画像処理系の開発を行うことにした 的な衝突回避システムへと発展させる 170

181 2.2 ビジュアルフィードバックシステムの構築 入力 回避側 追跡側車両に それぞれ赤と緑の高輝度 LED を取り付け 天井カメラを用いて 動画処理す ることにより 計測対象である車両の座標を計測し 車両の位置を計測する 演算 座標を計測するために 閾値を越える輝度値を持 つ画像中の pixel をカウントし それらの重心を求め 図 3 改造済み赤外線コントローラ た 動画処理には画像取込ライブラリ ZCL-2 株 2.3 衝突回避制御の仕組みの理解 テクノスコープ を用いた 本プロジェクトではバックワード可到達集合に基づ なお 動画処理の際には カメラのレンズ収差に いた衝突回避法を用いた このバックワード可到達 より 同心円状の画像の歪みが生じていた そこで 集合は追跡側及び回避側の移動体のそれぞれの カメラキャリブレーション及び歪み補正を行い その 速度 ヨーレートから相対角度毎に算出される バッ x,~ 上での座標を計測している 歪みモデルを( ~ y ) 真値を( x, クワード可到達集合の性質から 相対距離がその集 y ) k c を歪みパラメータとすると 歪み 合の中に入らなければ衝突が起こらないことがわか 補正アルゴリズムは っている したがって 集合の中に入る前に回避側 が旋回し 回避行動をとることで衝突回避が達成さ れる で与えられる 2.4 ラジコンカーの動特性に関するデータ収集 動特性の同定にあたって 回避側の位置 姿勢を と定義した状態方程式は 図 2 歪み補正 出力 本プロジェクトで使用するラジコンカー ここで x1 x2 は縦軸と横軸 x 3 は x1 軸と進行方 Q-STEER タカラトミー製 を PC で操作するため 向との角度であり v は速度 u は入力で 旋回す に 付属の赤外線コントローラを改造した 具体的な る速度 ヨーレート を表している 方法としては PC からのデータを外部機器に出力 前項にあるように 今回必要となる動特性は速度 する I/O モジュールや その出力によって動作する とヨーレートなので 一定時間直進し その後旋回す 電磁リレーを用いた回路を設計し 赤外線コントロー るように操作し その間に取得した車両の座標から ラを所望の仕様に改造した 動特性の同定を行った 具体的な手順としては ステップ 50msec 毎の速 171

182 度を算出し その速度を基に車両の座標の軌跡と一 2.7 制御法の実装 ビジュアルフィードバックと 致するようにヨーレートの同定を行った 衝突回避制御の融合 本プロジェクトでは 上記の衝突回避システムを 2.5 衝突回避制御法の実現 簡素化 先に述べたビジュアルフィードバックによる ラジコン 実際の車両は非線形モデルをもつが 本プロジ カーの位置計測によって実装している ェクトで使用する Q-STEER は軽量であり かつ 今回はビジュアルフィードバックに用いる視覚情報 操舵が俊敏であることから質点モデルと同様の動き として 色相情報を使用する そこで カメラ画像上 をするので 今回は移動体が線形モデルを持つもの でラジコンカーを認識しやすいように 回避側のラジ とした また 衝突の定義を両車両の中心部が50 コンカーに赤色の LED を 追跡側に緑色の LED を 以内に接近した場合とした 図 5 のように取り付けた LED は 一般的な LED の 以上の条件の下で同定により得たパラメータを使 なかで 区別しやすい色相情報を持っていることを 用してバックワード可到達集合を算出した バック 条件として選択した このようにビジュアルフィードバ ワード可到達集合は相対角度毎に算出され 図 4 ックによって各 LED の色相情報を認識し 2 台のラ は相対角度が の場合である ジコンカーそれぞれの位置情報を常に把握できるよ うにした 図 4 バックワード可到達集合 図 5 LED を付けた Q-STEER 2.6 衝突回避システムの製作 位置情報から得られる移動軌跡により ラジコンカ 本プロジェクトでは ラジコンカーを特定規則での ーの移動方向を角度で算出し この算出した角度か 動作を行う制御方法(以下 通常制御法と呼称する) ら 2 台の相対角度を求め 2 台の状況に応じたバッ と 衝突回避を行う制御方法を 条件に応じて切り クワード可到達集合を選択する そしてさらに相対 替えるという システムを構築している 座標を求め この座標により衝突するか否かを判断 バックワード可到達集合を用いて 常に衝突する する このようにして バックワード可到達集合を用 可能性があるか否かを判断し 条件を満たさないと いた衝突回避制御を実装した きは 通常制御法を使用し 条件を満たしたときに 2.8 動作テスト データ収集 通常制御法から衝突回避制御法に切り替え 条件 を満たさなくなるまで回避行動をとり 条件を満たさ 制御法実装後に行った相対角度 90 度のときの なくなれば 通常制御法に切り替える というアルゴ 1.50[sec]毎のテストデータを以下の図 6 図 7 に リズムによって衝突回避システムを製作した 示す 172

183 写真 1. 会議会場入り口 (1) 日時 : 平成 21 年 9 月 2 日 -5 日 図 6.0~ 1.50[sec] の軌跡図 7.0~ 3.00[sec] の軌跡図 6 においては衝突の危険性が無いので互いに直進している. しかし, その次のステップで追跡側が回避側のもつバックワード可到達集合の境界に接したので, 回避側が回避行動を開始し, 図 7 でも確認できる様に衝突の危険性がなくなるまで右方向に旋回している. 2.9 セミナー 学会報告 IEEE Multi-conference on System and Control (2) 会場 : Hilton Palacio del Rio in San Antonio (3) 主催 : IEEE (4) 参加者 : 畑田 (5) 内容 : 制御理論に基づくアプリケーションの研究 知的システムの研究 制御システム設計のコンピュータ支援に関する研究 (6) 所感 : 本プロジェクトの根幹となる技術は, ビジュアルフィードバックと衝突回避制御である. また, 提案システムの完成のためにはそれ以外に, 制御対象のモデル化やそのモデルを基にした制御法など様々な技術が必要となる. このことから, システム工学及び制御工学全般に関する最新の動向を調査するために,MSC 2008 に参加した. また, 今回は論文発表会に先立って実施された Workshop に参加した. ここでは, 欧米の産業界, 学術界における最先端のモデル化及び制御手法に関して数名の講演を聴講した. Workshop に参加したことは, 本プロジェクトを進めるに当たり必要となる技術の最新の動向の調査が出来たので非常に有意義であった. 論文発表会では, 様々なセッションにて並行して制御工学に関する現状が報告されていた. その中でも, 今回はモデル化及びモデルベース制御のセッションの他にも応用やロボティックスに関する発表を中心に聴講した. 173

184 また, 会議中の空き時間に世界各国から集まった研究者とコミュニケーションをとることが出来た. 内容は制御工学に関することや, 各国の文化についての意見交換を行った. 今回, 最新の動向を調査できたことは勿論ながら, このような交流を行ったことで, 英語によるコミュニケーション能力の向上という CICP の目標を達成できたことから, 本会議への参加は非常に有益であった 第 51 回自動制御連合講演会写真 2. 会議会場入り口 (1) 日時 : 平成 20 年 11 月 22 日 - 23 日 (2) 会場 : 山形大学工学部 ( 山形県米沢城南 ) (3) 主催 : 計測自動制御学会 ( 幹事学会 ) システム制御情報学会 日本機械学会 化学工学会 精密工学会 日本航空宇宙学会 (4) 参加者 : 平出 (5) 内容 : 交通事故削減を目的とした交通管制システムの開発 視覚を備えた移動ロボットの追従制御シミュレーション むだ時間を含む遠隔制御に関する研究 実機での PF 法を用いた車輪型自律移動ロボットのナビゲーション (6) 所感 : 本プロジェクトにおいて, 移動体の衝突回避を自動制御で行う. そこで, 自動制御分野に関する知識獲得, 現状把握が必要であると考え, 本講演会に参加した. 主に車輪型移動体, 移動ロボットについて, 他に信号処理などについて公聴を行った. ビジュアルフィードバックを用いた車両の衝突回避や他車両への追従, 様々な遠隔制御方法, 移動体自動制御の実機実験といった講演は, 本プロジェクトを進めるにあたって, 非常に参考になった. 例えば, 移動体の自動制御において, 特定の状況で同じ行動を繰り返してしまい, 目標地点へ到達できない場合に対する解決法の提案は, 移動体の行動アルゴリズムを完成させるために必要な, 考慮すべき点の参考になると考える. 本講演会では, 様々なテーマでの講演が行われた. それらの講演を公聴したことにより, 本プロジェクトに直接関係することはもちろん, 様々な視点での研究活動を知ることができた, そこから得た知識は本プロジェクトを進める上で, 大きな助けになると考える SICE セミナー実践的な制御系設計 自動車制御技術の現在と未来 写真 3. セミナー会場入り口 (1) 日時 : 平成 21 年 1 月 15 日 - 16 日 (2) 会場 : 千里ライフサイエンスセンターセミナー室 902( 大阪府豊中市新千里東町 1-4-2) (3) 主催 : 計測自動制御学会 (4) 参加者 : 木田 (5) 内容 : オンライン計算によるモデルベースト制御 自動車エンジンのモデリングと制御系設計手法 自動車のアクティブ制御系設計 (6) 所感 : 174

185 本プロジェクトでは 車両衝突回避制御を行う そ 基づいたシステムの開発を行った これは 今回使 こで 車両制御技術として有用と思われる 現代制 用した車両の操作が非常に機敏であることから問題 御理論からモデル予測制御までの最新の制御理論 はなかった しかし もう少し精巧な構造を持った車 についての研究調査の目的で本セミナーに参加し 両では厳密なモデルを基に制御を行う必要がある た 実社会で衝突回避を実現するために 今後は現実 初日は 制御理論の基礎やモデルベースト制御 的なモデルを立て それを基に今回の理論を適用 に基づく自動車制御に関連する応用事例などの講 することを考えている 演であった また 2 日目の講演テーマは 非線形 5 自己評価 適応制御法やハイブリッド制御法の自動車のアクテ ィブ制御への応用などであった 項目3にも著したように 衝突回避を実機で実現で 特にオンライン計算によるモデルベースト制御で きたことから本プロジェクトは大成功であるといえる は 車両の運動を制御する際 ある程度未来までの また ねらいの一つであった小 中学生へのアピー 応答をオンラインで予測および最適化して制御入力 ルに関しては オープンキャンパスで実機デモを行 を決定する手法であるモデル予測制御については った際に 本プロジェクトのブースが低年齢層で賑 基礎から分かりやすく講演されていた わっていたことから十分達成できたと考えられる ま 本プロジェクトで取り組んでいる車両衝突回避制 た デモ時は低年齢層だけでなく 付き添いで来て 御には 現時点では 目標起動追従は実装されて いた女性や高年齢層も興味を持っていたことから いないので 本セミナーで紹介されたモデル予測制 普段 工学にあまり触れることのない人々へのアピ 御を用いることで 目標軌道への追従の達成が期待 ールが十分に出来たと考えている できる しかし 一方でプロジェクト運営としては課題点もあ 本セミナーを通じて 本プロジェクトに関する制御 った 約一年のプロジェクト期間中 目前の項目を 技術のみならず 自動車制御の観点から制御工学 達成することに終始してしまいプロジェクト全体を見 の現状を知ることができ非常に有意義であった 渡すことが疎かになってしまった このことから シス テムの開発に予定以上の時間を費やすことになった 3 成果 点は反省すべき事である 本プロジェクトにおいて 衝突回避を実現するシス 最後に 本プロジェクトでの作業や調査によって得 テムを開発することができた 学会 セミナーでの調 た経験は メンバー自身の研究活動に良い影響を 査により 現在様々な機関で衝突回避が研究されて 与えたと考えられ 本プロジェクトによって十分な教 いることが分かったが いずれもシミュレーションに 育的効果を得たと考えられる 留まっているので 実機で実現できたことは非常に 大きな成果であるといえる 謝辞 また 本プロジェクトで得られた結果を現在 SIAM このような貴重な機会を与えてくださった CICP 推 Conference on Control and its Application に投 進委員会の皆様に深く感謝いたします また 本プ 稿中である もし 発表が決定すれば世界中から集 ロジェクトを進める上で 常に有益な助言をして下さ まる研究者により質の高い発表をするために 模擬 った小木曽公尚助教に深く感謝致します また プ 国際会議の経験を生かす予定である ロジェクトに取り組む私たちをいつも暖かく見守って くださった 応用システム科学講座の皆様に深く感 4 今後の展開 謝致します 本プロジェクトでは 質点モデルの衝突回避法に 175

186 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 NAIST-IT グリーン化プロジェクト ECONAS 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス システム制御 管理講座 M 平田雅也 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス システム制御 管理講座 M 栗原奈巳 システム制御 管理講座 M 近藤佑介 ソフトウェア工学講座 M 保田裕一朗 ソフトウェア工学講座 M 吉村巧朗 システム制御 管理講座 M 鏑木靖之 システム制御 管理講座 M 加門達也 システム制御 管理講座 M 松本健介 4. チューター 所属講座職名氏名 システム制御 管理講座准教授野田賢 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 43 7 月 風速風量計 WS-02 1 台 月 PC 用発電モニタ M-PF230 1 台 月 シースルー太陽電池モジュール 1 面 消耗品費 月 Adobe Creative Suite 3 Web Standard 50 8 月測定用記録メディア 旅費 ( 調査目的も可 ) 月東京 新エネルギー動向調査 2 泊 3 日 (4 名 ) 合計 1,

187 6. プロジェクトの背景と目的現在, 世界のエネルギー消費量の約 9 割を石炭や石油などの化石燃料が占めているため, 化石燃料の枯渇が問題となっている. 一方, 先進国の経済発展とともに地球環境問題が激化し,2005 年の京都議定書の発行など地球温暖化への対策がなされている中, 時代は省エネルギー化へ向けて, エネルギーの高効率利用化 分散化へと研究が進んでいる. このような背景のもと, 本プロジェクトでは, 太陽光や風力といった自然エネルギーを活用して NAIST の電力を賄う ECONAS(Eco-NAIST Supply system) を提案する. 具体的には, 薄膜太陽電池を窓 1 面に貼付した場合の月間発電電力量を測定することで, 太陽電池を棟全体の窓に設置した際の発電電力量を予測する. 太陽電池の場合, 発電電力量が太陽光に依存するため, その回避策として設置の際の初期コストの低い小型風力発電機 1 基を併用した複合発電にて実計測し, グリーン化を目指して NAIST の消費電力量を賄うのに必要な低コスト 高効率な電力供給方式を提案する. また,NAIST の CO2 発生量を瞬時消費電力からリアルタイムに表示するアプリケーションを作成し,NAIST の環境意識を一層高める. 7. 目的到達までの研究計画本プロジェクトは, 自然エネルギー発電計測と CO2 発生量掲示アプリケーション作成の 2 つに大別される. 具体的には, 以下の内容でプロジェクトを進める. 1. プロジェクト内容の展開 (6 月 ) 並行的に作業を進めるため, 分担 スケジュールの確認を行う. 2. 現状の消費電力量,CO2 発生量の把握 (6 月 ~7 月 ) NAIST の消費電力量データから負荷特性,CO2 排出量を把握する. 電気設備管理者と情報の開示がどこまで可能かなどの打合せを適宜行う. 3. 小型風力発電機, 太陽電池による発電電力量計測 (7 月 ~8 月 ) 窓 1 面サイズの薄膜太陽電池を使用した発電電力量を測定し, 棟全体の窓に太陽電池を設置した場合の発電電力量を推定する. また, 屋外に小型風力発電機を設置し,NAIST で風力発電が可能であるか,NAIST の風向 風速 発電電力量計測を行う. 4. 自然エネルギー発電の導入提案 (8 月 ~10 月 ) 小型風力発電と太陽電池で消費電力量を賄うために必要な発電機, 太陽電池の設置数を計測結果から推定し,CO2 発生量の削減効果や設備コスト, 発電効率から自然エネルギー発電導入を提案する. 5.CO2 発生量掲示アプリケーションの作成 (10 月 ~1 月 ) 消費電力量から換算した CO2 発生量から, 環境への影響を視覚できるように,CO2 発生量を吸収するのに必要な森林面積を出力するなどといった掲示アプリケーションを作成する. また, アンケートを行い,CO2 発生量閲覧前後で環境への認識変化を調査する. 6. 技術調査 学会参加 報告書作成 (8~9 月,2~3 月 ) 国際太陽電池展や国際水素 燃料電池展に参加し, 企業の新エネルギーの先端技術 導入の動向などについて知見を広める. 177

188 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 PC 用発電量モニター M-PF230 ( コントローラ / ソフト / 変換ケーブル ) 消耗品費 月 Adobe Creative Suite 3 Web Standard アカデミック版 月 Davis 気象観測装置 (Weather Wizard Ⅲ) 月 気象観測装置設置用部品 防塵用部品一式 月 太陽電池 MG134, 密閉型バッテリー SEB100, レギュレーター 2SB12V, インバータ 月 太陽電池 MG134 設置用工具 部品一式 月 デスクトップ PC(Prime Magnate JD) 一式 月 MATLAB & SIMULINK 2008b 月 Adobe Photoshop Elements 7 & Premiere Elements 7 日本語アカデミック版 月 書籍 4 冊 旅費 ( 調査目的も可 ) 月 東北大学, 化学工学会第 40 回秋季大会, 2 泊 1 名 3 泊 1 名 月 東京ビッグサイト, FC(PV) EXPO2009, 1 泊 3 名 月 横浜国立大学, 化学工学会第 74 年会, 1 泊 3 名 合計 1, プロジェクトの状況および自己評価の要約並行的に作業を進めるため, プロジェクトのホームページを立ち上げ情報の共有を図った. 太陽電池モジュールに対して 6 月から窓ガラスに代替可能なシースルー太陽電池の検討を行ったが, 納期や予算を考慮して汎用性の高い多結晶型太陽光発電モジュールに変更した. そのため, 夏季の発電データ測定に間に合わず, 太陽光発電の詳細な分析ができなかった. また, 小型風力発電機も導入予定であったが, 本研究科の屋上での風速も少なかったため, 風向風速計測に切り替えた. 本プロジェクトの 1 つのテーマであった自然エネルギーによる発電計測では, 特に太陽光発電計測した結果が冬季であったこと, 影になってしまったことで, データの正確性が保持できなかった. その結果, 太陽電池モジュールを屋上に敷き詰めた試算で終わってしまった. もう 1 つのテーマである CO2 発生量掲示アプリケーションは CO2 発生量をバイクの排出量と換算した結果が分かりにくいものとなった. しかし, 消費電力量 & CO2 排出量のページでは, 相対的に数値の比較ができることで NAIST 関係者に評価されるものとなった. 計画段階では, 本研究科棟のみの公開で行う予定だったが, 学校全体の情報が含まれていたため, 学生会館で公開することに変更し,NAIST 全体へ発信する環境アプリケーションとなった. スプリングセミナー, およびサイエンスフェスティバルでの成果報告では, 環境問題ということもあり, 一般の方の反響もよく, より細分化したリアルタイム性のある情報開示や, ガスや水道といったインフラや気象観測情報を統合した環境アプリケーション開発への期待の声が大きかった. 178

189 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 NAIST-IT グリーン化プロジェクト ECONAS プロジェクトリーダー 平田 雅也 1 概要 風速を6カ月間測定し 風力発電が可能な立地条 現在 世界のエネルギー消費量の約 9 割を石炭や 件であるか検討する 本プロジェクトでは これらの 石油などの化石燃料が占めているため 化石燃料 風力と太陽光の2点にしぼって グリーン化を目指し の枯渇が問題となっている さらに 化石燃料をとり た本研究科の消費電力量を賄う発電設備導入の提 まく問題として 先進国の経済発展とともに地球環境 案をする また NAIST の消費電力量 電気代 問題が激化し 一国だけでは解決が不可能となって CO2 排出量を一日の電力日報から表示するアプリケ いる 国内では 2005 年の京都議定書の発行を受 ーションを作成し 学生会館で公開する これにより けて以来 国家プロジェクトとして地球温暖化の対策 NAIST 関係者の環境意識を一層高める がなされている 例えば 2007 年に地球温暖化に関 する総理のイニシアティブ 美しい星 50(Cool Earth 2 プロジェクトの進捗 50) が発表され 世界全体の温室効果ガス排出量 本プロジェクトでは 大きく別けて図1のように 3 つの を現状に比して 2050 年までに半減するという長期目 枠組みで構成される 自然エネルギーの有効性の 標が提案された [1] また 最近では グリーンニュー 調査は 主にシステム制御 管理講座所属のメンバ ディール 政策として クリーンエネルギー経済によ ーが行い 消費電力量表示アプリケーションによる る雇用拡大など 地球環境問題が世界経済にまで 情報公開は 主にソフトウェア工学講座所属のメン 浸透するようになった 一方 本研究科では省エネ バーが行う体制をとった また 講座間の連携をスム ルギー機器の導入 更新など OA 機器の購入に関し ーズに行うため 定期的に全体会議を開催し プロ て環境に配慮しているが 研究物質創成科学研究 ジェクト専用のホームページで情報を共有し合いな 科のような太陽光発電などの自然エネルギーを活用 がら活動した した電力供給は行っていない このような背景のもと 本プロジェクトでは 太陽光 や風力といった自然エネルギーを活用して NAIST の 電 力 を 賄 う ECONAS(Eco-NAIST Supply system) を提案する 具体的には 面積 1[ ]の太 陽電池を屋上に設置し 4 カ月間の累積発電電力 量を測定することで 太陽電池を屋上に敷き詰めた 場合の年間発電電力量を予測する さらに 太陽電 図1 ECONAS の構成 池の場合 発電電力量が太陽光に依存するため その回避策として設置の際の初期コストの低い小型 2 1 風向風速計測 風力発電機を併用した複合発電を想定する 現在 本研究科 B 棟の屋上で小型風力発電が可能な立 本研究科玄関の地点での温度や風速 雨量といっ 地であるかどうか実際に風向風速計を図2に示す場 た気象観測は行われているが 本研究科屋上の地 所に設置し計測した 風向風速計には 気象庁をは 点では行われていない 小型風力発電機を設置す じめ地方公共団体や運輸 電力供給などの事業者 る場所として 安全性を考慮すると屋上に設置する が広く使用している風車型風向風速計(Davis 気象 ことが望まれる そこで 本研究科 B 棟屋上の風向 観測装置 Weather Wizard Ⅲ:図3)を採用した 179

190 ータを送信可能なので, パソコンと端末の両方で同期をとることにした. これにより, リアルタイムな監視ができる. なお, 観測データを記録するサンプリング時間は 10[min] とした. 図 2 情報研究科 B 棟屋上への設置箇所 図 3 風車型風向風速計 2.2 太陽光発電当初の計画では, 薄膜太陽電池を窓 1 面に貼付した場合の月間発電電力量を測定することとしていた. しかし, 窓ガラスに貼付する太陽電池が研究開発中であり, また太陽電池単体での購入は不可能であった. その代替案として, 面積 1[ m2 ], 変換効率 13.4% の高効率な多結晶シリコン太陽電池モジュール1 基 (PV-MG134EF: 三菱電機製 ) を屋上に据え付けることにした. なお, 太陽電池モジュールの設置場所は, 完全に固定し, 安全に運用させなければならないため, 図 2 のように空調機の予備スペースに仰角 0 で設置した. 実際に太陽電池のシステム構成図を図 5 に示す.hybrid controller は, 太陽電池モジュールの発電状態の監視を行っている. また,battery が満充電すると太陽電池モジュールの発電が自動停止してしまうので,regulator によって,battery 電圧が 11.7[V] 以上で電力を消費するようにした. 図 5 太陽光発電システム 図 4 風向風速システム構成図 図 4 に示すように風向風速システムを構成し, 観測 データを端末で記録する. また, パソコンにも観測デ 2.3 情報掲示アプリケーション中央監視盤室では, 電気設備の保守管理業務として, リアルタイムに NAIST 内の消費電力を監視している. そして,1 日の消費電力量は施設課に日報として送られ管理されている. 最初の計画では, 瞬時消費電力を用いたリアルタイムに更新するアプリ 180

191 ケーションの作成であった. しかし, 瞬時消費電力を使用するには, 電気設備管理者の業務に支障をきたすため, リアルタイム性を確保することができなくなった. そこで, 施設課が管理している消費電力量日報に用いてアプリケーションを作成することにした. この消費電力量日報は, 棟ごとに集計されている. 当初は, 本研究科の消費電力量のみを対象としたアプリケーションの作成を目指していた. しかし, 過去 3 年の消費電力量の推移をみると, 図 7 に示すように増加傾向にある. また, 夏季における電力ピークが高く, 契約電力を超過する恐れがある. このような背景もあり,NAIST 関係者全体の環境意識をさらに向上させることを目的とした,NAIST 全体に公開できるアプリケーションの作成を目指した. 施設課から提供される電力日報は, 一般公開まではできないため, 人に注目される可能性が最も高い学生会館 1F 食堂に設置することにした. 棟屋上の特徴として次のことが挙げられる. 風向は北西- 北 - 東にかけて一定 半年間の平均風速は 1.23[m/s] 風速階級出現頻度は 2[m/s] 以下に集中一般的な小型風力発電機 (AIRDOLPHIN Mark-Zero: ゼファー社 ) の場合, 発電を開始するのに必要な風速 ( カットイン ) が 2.5[m/s] となっている [2]. したがって, 本研究科棟屋上は風力発電に適さない立地であることがわかった. 図 8 1 日の観測データ (9 月 13 日 ) 図 9 1 週間の観測データ (9 月 13 日 ~9 月 18 日 ) 図 7 消費電力量の推移 3. 成果 3.1 風向風速計測 8 月に風向風速計を本研究科 B 棟屋上に設置した. 使用した風向風速計は無線通信ではなかったため, 屋上から研究室まで通信線を引き込んだ. 図 8 に 1 日の風速データを示す. この設置箇所の風力は 8 時 ~18 時の間のみ生じている. 図 9の1 週間の観測データを見ても同様であり 1 日中吹いているわけではない. 図 10~ 図 11 に半年間の観測結果を示す. 風配図, および風況曲線から本研究科 図 10 風配図 ( 平均風速 [m/s]) 181

192 図 11 風配図 ( 風向出現頻度 %) 図 12 風況曲線 3.2 太陽光発電太陽電池モジュールを屋上に設置する場合, その設置可能箇所は安全上の観点から一ヵ所であった. それは, 空調機の予備スペースである. 本プロジェクトでは, 太陽電池モジュールを仰角 0 で設置した. また,11 月に取り付けたため, 発生電力が 1 日当たり 100[Wh] と非常に少なかった. さらに, 室外機でパネル面に影ができていたことも要因の一つである. 4 カ月間で発生した電力量の結果を図 13 に示す. 図 13 日発電電力量の推移 4 カ月間の累積発電電力量は, わずか [kWh] である. これは, その 4 カ月間で本研究科が消費した電力量の 0.001% にあたる. また,CO 2 削減量は 8.05[kg-CO 2 ] であった. この結果から, 本研究科の消費電力量を自然エネルギーで全て賄うことはできない. しかしながら, 第 1 節で述べたように環境への取り組みが国家プロジェクトとして活発に行われている中,NAIST も次の契約電力更新の際に太陽光発電を採用した供給方式を検討する可能性が高い. そこで, 太陽電池モジュールを本研究科の屋上に敷き詰めた場合どれくらい発電できるのか,4 カ月間の計測データを使用して試算した. 以下にその結果を示す. なお, 測定できなかった 3 月 ~10 月の発電量は,4 カ月間のデータの中で最も高い日発電電力量を出した日のデータを採用して算出している. 実際には, 太陽電池モジュール設置の際に仰角を付けて設置するため, もっと発電量は向上する. しかし, 今回のプロジェクトでは仰角 0 で計測をしたので, 仰角なしの場合で考えることにする. 占有面積:921.97[ m2 ] 年間予測発電電力量:67,839[kWh] 年間経済効果:494,546 円 年間電力消費量に対する割合:0.96% 年間 CO 2 削減量 :29,917[kg-CO 2 ] ここで, 占有面積は室外機などの太陽電池モジュールを設置できない部分を除いて求めている. さらに, 太陽電池モジュールは, 本プロジェクトで使用したものを基にして試算する. 占有面積 [ m2 ] ということは,920 枚もの太陽電池モジュールを敷き詰めることになる. これは,120kW 級太陽光発電システムと同等の規模である. しかしながら, この場合の年間予想発電電力量は, 本研究科棟が 3 日間で消費する電力量とほぼ同等で, 消費電力量の約 1% しか賄えない. 経済効果に対しても, 発生電力を全て消費してしまうため, 家庭用太陽電池発電システムのように余剰電力の売電ができない. そのため, 年間経済効果はとても安く, 設備コストを回収するには単純に数百年もかかってしまう. 182

193 しかしながら,CO 2 排出量を削減するという観点からみると, 年間で 29,917[kg-CO 2 ] の CO 2 を削減できる. もし, この量を森林で吸収させようとするのならば, その森林面積は 83,767[ m2 ] にもなり, これは京セラドーム大阪のグランド面積 ( 約 123[ m2 ]) の約 6.3 個分に相当する. 今後, 欧米をはじめとして CO 2 排出規制が政策に本格的に盛り込まれる方向に進み, それに合わせて太陽光発電の導入も加速している.NAIST も CO 2 排出量の削減に取り組んでいくと思われる. そのような際に, 電力供給の見直しとして太陽光発電導入における CO 2 削減効果の目安を一つ出せたと思う. このデータを参考にしていただき, 太陽光発電の設備規模の選定に役立てていただきたい. る見難さやバイクの排出量換算というバイクに興味 がない人への理解のし難さなど検討の不十分さがう かがえた. 3.3 情報掲示アプリケーション図 14 に消費電力量表示アプリケーションの概要図を示す. 消費電力量の日報は施設課により Excel ファイルで管理されている. その電力日報からアプリケーションのデータフォーマットに変換するプログラムを VBA で作成し, アプリケーションデザインは Flash で作成した. 電力日報をアプリケーションに反映させる更新は, 手動で行うことにした. 消費電力量データは公に公開できない情報も含まれているためである. また, 学内専用 web アプリケーションにする案も出たが, 学生会館に設置することで,NAIST 関係者の誰もが見ることができる環境にしたかったため, あえて web アプリケーションとしての公開は実施しなかった. 図 15 に作成したアプリケーションのデザインを示す. 本アプリケーションのコンセプトは関心を引く見やすさと分かりやすさである. デザインをシンプルにし, あえて説明を書かないことで立ち止まって見てくれるのではないかと考えた. また, ページ数を少なくし 1 つのページに棟ごとのデータを全て表示することで, 閲覧者の関係している棟を相対的に比較できるようにした. しかし, アンケートの回答でも見受けられたが,1 週間推移グラフを 1 ページにしたことによ 図 14 アプリケーション概要図図 15 アプリケーションの外観 12 月から 3 カ月間公開し,NAIST 関係者の環境意識の変化を調査し, アプリケーションに対するフィードバックが欲しかったため, アンケートを NAIST 全体に発信した. アンケート回答者数は 180 名で,NAIST 関係者の 1 割強の方の協力を得ることができた. ア 183

194 ンケート結果の一部を図 16 に示す. 質問 2 からアンケート回答者数の約 7 割の方がアプリケーション見たと応えている. また, 質問 6 から環境について改めて認識した人が半数にのぼり, アプリケーションによる環境意識の変化が確認できた. のではないかと考えられる. 本プロジェクトでは, アプリケーションを公開したことによって得られた反響がとても大きかった. 今後の展開としては, リアルタイム性の確保や気象観測情報や太陽光発電情報を取り入れるなど NAIST 内のインフラや気象情報を可視化した統合環境アプリケーションの確立が挙げられる. 図 16 アンケート結果の抜粋 4. 今後の展開気象観測は, インターネット アーキテクチャ講座でも実施されている. ただし, 今回の風力発電の可能性を検証する箇所の気象観測は行われていなかった. そのため, 本プロジェクトでは, 実際に風車型風向風速計で気象観測を行った. 今後, 気象観測センサを NAIST 構内のあらゆる箇所に設置するという話もあり CO 2 センサも取り付ける方向であるとうかがった. この観測情報を用いることでアプリケーションの拡張性が期待できる. 太陽光発電においては, 2 月末に PV EXPO 2009 で動向調査を行い, 窓ガラスに埋め込まれたタイプや薄膜フィルムとして湾曲可能なタイプなど, 従来のシリコンタイプと違った多用途の展開が期待されている. 自然エネルギーを利用する場合は, 天候に左右されるため, 発電と二次電池との組み合わせた発電システムにおける導入計画を立てることも必要である. また, 物質創成科学研究科で実施されている太陽光発電データをアプリケーションに取り込むことで, もっと自然エネルギーが身近に感じられる 5. 自己評価本プロジェクトを通して, グループワークの大切さを学んだ. 私のプロジェクトは, 総勢 8 名であったが, 個人のスキルを足し合わせることによって, エコについて考え, 成果を公開することで NAIST 内の方にも考えていただけた. 提案した当初の実施計画とは, かけ離れた結果になってしまったが, 代替案をみんなで考え, 本プロジェクトを意味のある完成度に収めることができた. 提案書の発案から始まり, 物品の購入から装置の設置まで一貫して行った経験は, エンジニアとしてマネージメントするスキルにつながると思う. また, 模擬国際会議やサイエンスフェスティバルと多くの方と話すことで, 貴重なコメントもいただきとても有益だった. 謝辞チューターとして全面的なご支援をいただいたシステム制御 管理講座野田賢准教授, ならびに予算管理で懇切にご指導をいただいた足立敏美女史に深く感謝いたします. また, 屋上設置やアプリケーションの公開において, 絶大なるご支援をいただいた施設課の皆様, 食堂運営スタッフの皆様, ならびに環境意識調査アンケートにご協力いただいた NAIST 関係者の皆様に厚く御礼申し上げます. 参考文献 [1] 経済産業省, Cool Earth-エネルギー革新技術計画, 平成 20 年 [2] ゼファー, 184

195 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 祇園祭 山鉾の安全性検証 ~ 伝統と工学の融合 ~ 2. プロジェクトリーダー 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス システム制御 管理講座 M 福井善朗 yoshiro-f@is.naist.jp 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス システム制御 管理講座 M 岡本兼太郎 kentaro-o@is.naist.jp 音情報処理学講座 M 木佐木雄介 yusuke-k@is.naist.jp システム制御 管理講座 M 松尾健司 kenji-m@is.naist.jp 龍谷大学大学院経営学部 M1 B08M606 福井貫二 k_n_j_f@nike.eonet.ne.jp 経営学研究科修士課程 ( 経営学専攻 ) システム制御 管理講座 M 近藤佑介 yusuke-ko@is.naist.jp システム制御 管理講座 M 平田雅也 masaya-h@is.naist.jp システム制御 管理講座 M 加門達也 tatsuya-k@is.naist.jp システム制御 管理講座 M 田中友基 tomoki-t@is.naist.jp 4. チューター 所属講座 職名 氏名 システム制御 管理講座 助教 中村文一 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 月 スケール 月 CAD 用コンピュータ 消耗品費 34 7 月 布団レンタル費 ( 宿泊費の代価 ) 95 7 月 集計用コンピュータ 95 7 月 計測用コンピュータ ( 速度計測用 ) 月 白楽天山保存会への計測に関する謝金 旅費 ( 調査目的も可 ) 60 5~11 月 事前打ち合わせ 計測等交通費 ( 京都 ) 30 6 月 2008NEW 環境展 (N-EXPO 2008) 80 6 月 日本ロボット学界ロボット工学セミナー交通費 参加費 ( 調査 3 人分 ) 合計

196 6. プロジェクトの背景と目的毎年 7 月に京都市で開催される祇園祭は日本の 三大祭り と称される日本を代表する祭りである 祇園祭の山車である 山 や 鉾 は 祇園祭創成期に宗教的信仰の対象として生まれ その後発展し 現在では祇園祭の中心的存在として人気を集めている また 巡行 は 山 や 鉾 が市内を一周する儀式であり 1ヶ月に及ぶ祇園祭の中でも最も盛り上がる行事である しかし 山 や 鉾 は専ら経験や勘によって設計 製作されている そのため これまでに計量されたことがなく 力学的特性は不明なままであり 定量的に安全性を示されたことがない 鉾 の重さは 12[ トン ] と言われているが おおよそ地上から鉾頭までの高さが 25[m] 屋根までの高さが 7.4[m] ホイールベースとトレッドがそれぞれ 4.35[m] 2.35[m] であり 鉾の上部に囃し方が多数乗ること等を考えれば 重心の位置が高い可能性があり 大雨による地面の陥没等で 倒壊 転倒などの大事故をひきおこす可能性がある 山 は本来 継ぎ手が担ぐものであるが 現在は担ぎ手の都合により 小さな車輪を取り付けている この車輪は約 45 年前の設計であり 工学的設計はなされていない そのため 巡行中に車輪が破壊され 山 本体や装飾品に損傷を与える可能性がある あるいは 鉾 と同様に転倒 倒壊などの大事故を引き起こす可能性もある そこで 山 や 鉾 の各部品の形状 重さを計測 モデル化し 3D CAD 内に取り込み 組み立て 力学的特性を明らかにすることで 倒壊 転倒などの危険性を力学的見知から検討する これにより 専ら経験や勘によって行われてきた伝統行事に工学的視点を吹き込むことで 祭り全体の安全性の向上に貢献することを目的とする 186

197 7. 目的到達までの研究計画 鉾 の部品点数は 300 以上といわれ しかもすべても部品がそろうのは組み立ての直前である また 保管場所が複数にわたり 測定方法が確立されていないことから 全ての山鉾 山の部品の計測を行うことは不可能である そこで 本年度は構造が単純な 山 1 基について 構成する部品の寸法 重さを計測し 力学的特性を明らかにする プロジェクトリーダーである福井善朗が 山 のひとつである 白楽天山 の町内に住んでおり また 福井貫二が 白楽天山 の保存会である 財団法人白楽天山保存会の理事長であることから 白楽天山 の部品の計測を行い 次年度以降の足がかりとする 計測対象である山や鉾を管理している団体の許可の問題について述べる 32 ある山鉾の保存会は各々に独立しており 上部団体は存在しない そのため 白楽天山保存会の許可のみを得れば 任意の時期に 白楽天山 の部品を計測することが出来る これについては 本プロジェクト申請段階で 理事長の許可を得ているので 許可の問題についてはあらかじめクリアできている そして 正確に転倒 倒壊の危険性を議論するには 計測したそれぞれの部品に対して 誤差何 % で計測できているのか 斜め加重への対応はどうするのかなどの 計量方法が問題になる 計測対象は 最も重い部品の重さは約 100[kg] 最も大きい部品は長さ4[m] 程度の角材である そのため 電子はかりの使用等 ある程度手法については目処がついている モデル化については 右図 ( 白楽天山 の装飾をはずした状態のおおよその図面 ) のように 白楽天山 は基本的に角材と板材の組み合わせであるので 直方体の角材の組み合わせとしてモデリングする 最後に 計測した 白楽天山 の各部品について CAD へ入力し 重心 慣性モーメントを算出する また 巡行中の 白楽天山 の速度についても計測を行い 重量も含めたこれらの力学的パラメータに基づき 安全性を検討し 結果をまとめる 事業計画をまとめると 次のようになる 5 月 : プロジェクト開始 6 月 ~7 月 : スケールの選定 購入等 計測方法の考察 7 月 13 日 : 白楽天山 組立日 各部品の計測 7 月 18 日 : 白楽天山 解体日 消耗品( 荒縄や松の木等 ) の計測 8 月 : 計測結果の集計 9 月 : 模擬国際学会 各部品の計測結果を示す 10 月 : CAD への打ち込み作業 12 月 : 力学的理論的解析に基づき転倒安定性の考察 まとめ 187

198 8. 決算の要約 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 なしなし なし 消耗品費 月 重量計 校正費用 月 白楽天山保存会への計測に関する謝金 32 7 月 宿の代価として布団レンタル代 月 カメラ一式 31 7 月 メジャー ノギス 脚立等その他計測用具一式 月 白楽天山のミニチュア用部品一式 138 7~2 月 CPU 等 PC 関連部品一式 旅費 ( 調査目的も可 ) 55 8~2 月 白楽天山への計測実験 ( のべ 30 人分 ) 198 6~9 月 学会調査 重量計調査 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約祇園祭の山車である山鉾である白楽天山の計測実験を行った 具体的には 白楽天山の組み立てに立会い 装飾品を含む 構成部品すべての重量と主要寸法を計測した 計測は難航し お祭り終了後も何度か関係者にお願いし 倉庫を開けてもらい 計測しきれなかった部品の計測を行った そして 得られたデータを図面に起こし 3D-CAD である Solidworks2008( 教育版 ) に入力した これにより 重心高さ 慣性モーメント等の力学的パラメータを計算することができた 得られた力学的パラメータを用いて 白楽天山の安全性の検証を行った まず 白楽天山を直方体の剛体とみなした 定量的に評価しにくい部品 直方体と見なす部分から外れた部品は もっとも安全に有利な仮定を行った そして どの程度の風力によって転倒するか検討したところ 風速 24[m/s] 程度の横風によって転倒することが判明した 過年度の気象情報を参照すると 風速 24[m/s] 以上の風は4~5 年に一回は吹いており 白楽天山は横風に対して危険であるとの結論を得られた 白楽天山の組み立て手順は規定されておらず 毎年すこしずつ出来上がりに違いがある また 固定方法もロープで結ぶ等 極めて定量的に評価が難しい構造になっている そのため 応力解析等 倒壊性の危険を検証することはできなかった スプリングセミナーでは 研究者と思われる方々からの評価は高かったが 一般参加者からはあまり支持されなかった CAD 内で 胴掛 ( 絨毯 ) の写真をテクスチャとして貼るなど リアルな白楽天山を魅せることに努めたが それでは不十分であり 実際に転倒するアニメーションを用意するなど 見た目の面白さのさらなる工夫が必要だった プロジェクト全体を通し 学術的な取り組みだけでなく 現地の方々とのコミュニケーション 日射病対策や宿泊施設確保等の実験環境整備 重量計業者との使用するスケールの選定相談など 通常の研究では経験できないことを多く体験した また 結論として横風に対して危険であることも示せた このことから 非常に実りのあるプロジェクト活動であったと判断する 188

199 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 祇園祭 山鉾の安全性検証 伝統と工学の融合 プロジェクトリーダー 福井善朗 1 概要 背景と狙い み 組み立て 力学的特性を明らかにすること 毎年7月に京都市で開催される祇園祭は日本 で 倒壊 転倒などの危険性を力学的見知から の 三大祭り と称される日本を代表する祭り 検討する である 祇園祭の山車である 山 や 鉾 は これにより 専ら経験や勘によって行われて 祇園祭創成期に宗教的信仰の対象として生ま きた伝統行事に工学的視点を吹き込むことで れ その後発展し 現在では祇園祭の中心的存 祭り全体の安全性の向上に貢献することを目 在として人気を集めている また 巡行 は 的とする 山 や 鉾 が市内を一周する儀式であり 1ヶ月に及ぶ祇園祭の中でも最も盛り上がる 2 プロジェクトの進捗 行事である 2 1計測対象の決定 しかし 山 や 鉾 は専ら経験や勘によ 本プロジェクトでは 部品点数が少なく 構 って設計 製作されている そのため これま 造がシンプルな白楽天山の計測を実施する でに計量されたことがなく 力学的特性は不明 白楽天山の様子を図1に示す 白楽天山は他 なままであり 定量的に安全性を示されたこと の山より構造が簡素であり かつ プロジェク がない ト立ち上げ段階で許可を得ることが出来た 鉾 の おおよそ地上から鉾頭までの高さ が 25[m] 屋根までの高さが 7.4[m] 鉾の上 部に囃し方が多数乗ること等を考えれば重心 の位置が高い可能性がある それに加え ホイ ールベースとトレッドがそれぞれ 4.35[m] 2.35[m]であるため 大きさの割りに安定が良 いとは明らかに言えず 大雨による地面の陥没 等で 倒壊 転倒などの大事故をひきおこす可 能性がある 山 は本来 継ぎ手が担ぐものであるが 現在は担ぎ手の都合により 小さな車輪を取り 図1 白楽天山 付けている この車輪は約 45 年前の設計であ り 工学的設計はなされていない そのため 巡行中に車輪が破壊され 山 本体や装飾品 2 2重量計の選定 に損傷を与える可能性がある あるいは 鉾 まず 白楽天山の各部品を測定するための 測定 と同様に転倒 倒壊などの大事故を引き起こす 器具の選定を行った 選定においては 重量 形状 可能性もある の最大値が必要であるため 6月はじめに白楽天山 そこで 山 や 鉾 の各部品の形状 重 の倉庫を開き 最も大きな部品と最も重い部品のお さを計測 モデル化し 3D CAD 内に取り込 およその形状 重量を測定した 体重計とメジャーを 189

200 用いた測定の結果 最も大きい部品は 担ぎ手の持 することが出来たが 寸法に関しては 一部測定が ち手の角材の長さ約 4[m]であり 最も重い部品は車 できないものが存在した そのため お祭り終了後に 輪ユニットの約40[kg]であることが確認出来た ま も何度か倉庫をあけ 再測定を行った 特に 胴掛 た 他の部品は大半が 10[kg] 以下であった 絨毯 については 実際に使われるもの 倉庫に保 以上より 少なくとも 4[m]測定できるメジャーと ひょ 管するだけのものが混ざって保管されていることと う重 60[kg] 15[kg]の重量計である PF8-60N-S と 似た柄が多いことから どの胴掛が使われているか PF8-15N-S を選定 用意した の把握に失敗し 何度も計測しなおすこととなった 2 3計測手順の作成 2 6結果の集計 白楽天山は普段は部品レベルに分解され 倉庫 実 験 結 果 を 集 計 し 3D-CAD に 打 ち 込 ん だ に保管されている お祭りの7月13日6時より組み立 3D-CAD は 研 究 室 で 使 用 さ れ て い る てられ 当日の間に装飾品を一部飾り付け完成 14 Solidworks2008(教育版)を使用した 日から16日の間 一般客に路上展示される 装飾 部品点数とそれらの重量をまとめたものが表1で 品は 一部白楽天山に飾り付けられ 重要な装飾品 ある 装飾品が170[kg]あることがわかる これは 白 は屋内で展示される そして 17日朝6時より すべ 楽天山は図1のように 側面に胴掛と呼ばれる絨毯 ての装飾品を白楽天山にかざりつけ 9時 12時ま や 上部に乗る人形など 重量のある装飾品をいく で白楽天山は市内を練り歩き 山鉾巡行 終了次 つか積んでいるからと考えられる 第 即解体される 白楽天山の倉庫はせまく 路上 を使わなければすべての部品の計測を行うことは困 表1 重量の集計結果 難であることも考えると 計測実験は7月13日の組 重量[kg] み立て時と 7月17日の装飾品飾り付け 解体時に 躯体部品 立会い 行うしかない そのため 実験日時はそのよ うに決定した 重量計の校正は組み立てが始まる朝 数量 装飾品 合計 6時までに終わらなければならないので 朝4時から 校正作業を開始することにした また 図2に躯体部品のうち ベースとなる骨組部 次に 手順実験当日の分担表を作成した 組み 分を 図3に 躯体部品の組み立て図を 図4に装 立て法をビデオ撮影で記録する班 各部品の主要 飾品を含めたCAD内での組み立ての完成図を示 寸法をメジャーで測定する班 重量を測定する班に す 分け 分担して作業を行うことにした 2 4計測実験 7月13日 17日に計測実験を行った 当初 主 要寸法 重量が測れた部品から大工に渡し 組み立 てを行う予定であったが それでは作業に時間がか かりすぎて間に合わないため 重量計測を完了した ら 大工に渡し 寸法は組み立てられている状態で 計測するように 途中で切り替えた これによって 一部測定しきれない寸法ができてしまった 2 5測定しきれなかった部品の再測定 重量に関しては 7月13日 17日にすべて測定 190

201 図 2: 白楽天山の骨組と座標系 図 3: 白楽天山の躯体部品 2.7 横風に対する安全性の検証 白楽天山が横風に対して安全であるのかどうか検 討する ただし 定量的評価が行いにくい部品がい くつかある たとえば 図 1 に書かれている 松の木 や 人形の扱いである そこで 安全にもっとも有利 な仮定と安全にもっとも不利な仮定で横風に対する 安全性を検討したところ 両方の場合で危険である との結果が出た 本報告では 安全にもっとも有利 な仮定で検討した場合の結果を示す ( 安全に有利 なモデリングをしたにも関わらず 危険であるとの結 論が出たので 真の結論は明らかに危険である ) 路面と車輪の摩擦は無限大であると仮定し 図 5 のように 白楽天山を黒のラインで囲う直方体と見な す すなわち 松の木や人形 傘にかかる風力は無 視する どの程度の風速を持つ横風 ( 図でいえば 右下から左上方向への風 ) で転倒するか検討する 重心位置の推定が困難な部品 ( 松や人形等 ) に ついては 重心が部品の最も下にある部品とみなし てモデル化する その他の部品については 密度が 一様であるとみなして重心位置を計算した すると この仮定での重心位置は 図 2 のように 左奥の柱のエッジ ( 方角でいえば 北東 ) と地面の交 点を座標系の原点にとると (x,y,z)=(1028[mm],1915[mm],774[mm]) の位置にあ ることがわかった 松の木や人形の重心位置を 最 下部と仮定しているため 実際の重心位置はこれよ り高くなる このように 白楽天山を直方体としてモデル化する と 図 6 のようなモデル化ができる すなわち 横風 によってかかる力 F が以下の条件を満たすとき 反 時計まわりのモーメントが発生し 上向きの加速度が 生じ 白楽天山は横転する mgl Fh ただし g は重力加速度 h は重心高さ m は白楽天 山の質量を表す 図 4: 装飾品を含めた CAD 内での完成図 191

202 図 5: 白楽天山のモデル化図 6: 重心にかかる力の関係また 対象を直方体としてモデル化しているため 風力計数は 1 として 無視した 白楽天山にふきつける風の風速を V[m/s] 空気密度 ρ[kg/ m3 ] とすると 単位面積あたりの風圧 P[N/ m2 ] は次の式で計算できる 1 P V 2 乾燥空気の圧力が p[hpa] 温度 T[K] の時 密度 ρ [kg/ m3 ] は次式によって求められる p T ただし 絶対温度 T[K]= 気温 t[ ] また 風のあたる面積を S[ m2 ] とすると 風速 V[m/s] の風によって与えられる白楽天山の力は次のように あらわされる F SP 以上をまとめると 以下の条件をみたすとき 白楽天 山に上向きの加速度が生じ 転倒が始まることがわ かる V 2mglT hsp よって これらの式に 風のあたる側面積 S= [ m2 ] 重心位置 l=0.744[m],h=1.915[m] を代入す る 空気密度は 図 7 に示す 気象庁が公開してい る年ごとの 7 月 17 日のデータを使用した すなわち 乾燥空気の圧力 p=1009[hpa] 気温 T=20[ ] とした これにより 風速 24[m/s] の風を白楽天山にふきつ けると 転倒することがわかる 2.8 考察 少なくとも 風速 24[m/s] の横風によって 白楽天 山は転倒することがわかった この数字は 定量的 に評価が困難な部品を 安全に有利であると解釈し て得られた数字であるので 実際は風速 20[m/s] 程 度の横風でも転倒する可能性がある 図 8 に 気象 庁が公開している年ごとの 7 月 17 日の瞬間最大風 速 最大風速 平均風速を示す 最大風速は 10 分 間の平均風速の最大値 最大瞬間風速は瞬間風速 の最大値を表している 192

203 重い車輪にすることを検討するとの回答を得た 図 8: 年ごとの風速この表から 4~5 年に一度は白楽天山を横転させるだけの風速を持つ風が現われていることが分かる また 京都府南部では 平均風速 20[m/s] で暴風警報が発令されることから 少なくとも暴風警報が発令された場合は 巡行を中止した方が良いとわかる よって 下部の構造材を鉄に変えるなど 重心を下部へ移動する工夫が早急に必要であることが分かる ただし 祇園祭の山鉾は 文化庁によって 重要有形民俗文化財に指定されており 構造を勝手に変更することができない そのため 文化庁や 現地の方々への働きかけが重要である さらに 祇園祭には宗教という要素も絡んでいるため ある程度の危険があっても 巡行は決行される可能性がある その場合は 危険であると承知して順行を決行していることを意識した上で 観客をある程度遠ざけること 一部儀式の省略を提案する 3. 成果本プロジェクトの計測結果により 風速 24[m/s] 程度で白楽天山は転倒することが分かった また 本プロジェクトで得られたデータによって 定量的に車輪の設計ができるようになった これにより 財団法人白楽天山保存会より 白楽天山の車輪の作り直しにあたっては 本プロジェクトで得られたデータを使い 車幅を広くし 出来るだけ 4. 今後の展開まず 本研究での成果を日本機械学会 2009 年次大会で発表予定である (2009 年 3 月 15 日現在 申請中 ) そして 今後の展開として いくつかの方向性が考えられる 白楽天山の解析をさらに深めることと 他の山鉾の計測である 4.1 白楽天山のさらなる解析まず 実機による 風洞実験が挙げられる 重要文化財に強風を当て 転倒実験を行うことは困難であるため 10 分の 1 程度のミニチュアを作成し 実際に転倒する風速と 計算結果があっているか確認する 次に 風による転倒の危険性の検討以外に 応力解析による倒壊の危険性の検証が考えられる ただし 部品との部品の固定方法が年ごとに異なり曖昧なため その部分をどう評価するかについて考察する必要がある 4.2 他の山鉾の計測まず 山の中でも安全と思われる山と 最も危険と思われる山につてデータを比較することが考えられる これによって 転倒の危険性は 山固有のものなのか それとも 共通の構造フォーマットに問題があるのか明らかになることが期待される 次に 鉾の計測実験が考えられる 真木のしなりを考慮し どの程度までの移動速度を出してよいのか 風速はどの程度まで耐えられるかを示すことで 安全性の向上に貢献したい 5. 自己評価計測実験に協力してくれるメンバーを集めることに大変苦労した 計測実験は10 人程度の人員が必要だが プロジェクト立ち上げは入学して間もない5 月であるため 友人はまだ多くない また 同研究室のメンバーだけではどう考えても人員不足であるため 手分けして他研究室からも実験協力者勧誘に努め 193

204 た 計測実験を行う7月12日 7月13日 7月17日 は第一期のテスト期間であるため 参加を断る人も 多かった 計測実験を行う3日中1日だけでも参加し 参考文献 てもらうなどの無理をお願いして 人員の確保を行っ [1]京都新聞:祇園祭 山鉾巡行(河原町通)山鉾の重 た 人員確保の取り組みは計測直前の7月10日ま 量測定( ) で続けられ 計測実験ができるだけの人数を確保す [2]北村敬三郎:白楽天山,第一印刷株式会社(1976, ることができた 非売品) 白楽天山保存会の方々との打ち合わせや 日射 [3]福井秀一:改訂近世祇園祭山鉾巡行史,祇園祭 病対策 宿確保など 実験の本質ではない 実験環 山鉾連合会(1974) 境の整備にも苦労した 祇園祭のシーズン中は1年 [4]河原町書店編集部:京都祇園祭手帳,河原町書 前から予約が入っており 付近の宿泊施設を確保で 店(2007) きなかったため 朝食の準備 就寝施設の準備を白 [5]森川敏信,鮎川恭三,辻裕:新版 流れ学,朝倉書 楽天町町内にある福井の実家に用意せざるを得ず 店(1993) 慣れない手配に苦労した [6] 気 象 庁 過 去 の 気 象 デ ー タ 検 索, このような経験ができたのも 学生の研究プロジ ェクト企画 推進力やコミュニケーション力をはぐくむ.php(2009/03/16 アクセス) ことを第一の目的 とする CICP ならではであると感じ [7]戸田盛和:物理入門コース 1,岩波書店(1982) る 企画力 実行力の成長を強く感じている スプリングセミナーでは 研究者の方々の評価は 高かったが 一般参加者からはあまり評価を得られ なかった CAD内で 胴掛 絨毯 の写真をテクスチ ャとして貼るなど リアルな白楽天山を魅せることに 努めたが それでは不十分であり 実際に転倒する アニメーションを用意するなど 見た目の面白さのさ らなる工夫が必要だった 謝辞 事務職員の足立敏美さんには予算管理や執行法 の丁寧な説明をしていただき 大変お世話になりま した 計測実験では 本プロジェクトメンバー以外に も 知能情報学講座の堂込君 加茂君 論理生命 学講座の中村君 滝田君に手伝って頂きました テ スト中の忙しい時期にも関わらず 快く引き受けてい ただいた事に感謝します 白楽天町関係者の皆様 ならびに祇園祭山鉾連合会の皆様には 白楽天山 の計測を快く許可 日射病対策等のアドバイスをして 頂き またそれに留まらず 飲み物 氷まで提供して 頂きたました ここに厚く御礼申し上げます 194

205 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案要旨 1. プロジェクト名 ヒトとヒト腸内細菌群集間の化学物質を介した相互作用の理解に必須なメタゲノム情報可視化 ツールの開発 2. プロジェクトリーダー 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 比較ゲノム学講座 D 西田孝三 3. 分担者 所属講座 学年 学生番号 氏名 アドレス 生命情報工学講座 ( 東工大 ) D1 森宙史 mori.h.af@m.titech.ac.jp 比較ゲノム学講座 M 松田かおり kaori-m@is.naist.jp 4. チューター 所属講座職名氏名 比較ゲノム学講座准教授 Md Altaf-Ul-Amin 5. 必要経費 金額 ( 千円 ) 支出予定月 品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 設備備品費 サーバ PowerEdge R300 1 台 / 配列相同性検索計算用 消耗品費 旅費 ( 調査目的も可 ) Metagenomics 2008 カリフォルニアサン ディエゴ 調査 2-8 日 合計

206 6. プロジェクトの背景と目的ヒトの体には皮膚 口 胃 腸 膣など様々な部位にヒトの細胞の 10 倍以上の数の細菌が共生しており それらの細菌が免疫や消化吸収などにおいて非常に重要な役割を果たしている これより ヒトは自らの細胞と共生細菌とをあわせた超個体であると考えられ ヒトを理解するには共生細菌の役割の解明が必須であると言える このため 2003 年のヒトゲノム解読完了後 ポストヒトゲノムとして ヒトに共生する細菌群集について 各菌を単離せずに群集まるごとゲノム解読する ヒトメタゲノムプロジェクトが国際プロジェクトとして立ち上がり現在進行中である 様々な部位に存在する共生細菌の中でも 特に腸内細菌群集は ヒトが消化吸収できない物質を消化吸収可能な栄養素へと変換する役割を持っていると共に 複数の腸疾患にも深く関係しているため特に重要であり 他の部位に先駆けてアメリカおよび日本の研究グループによってメタゲノム解析が行われ メタゲノムデータが公開されている 異なるゲノムを持ち それゆえに生物学的な性質が異なる細菌が数千種類も混在した 極めて複雑かつ膨大な腸内細菌群集のメタゲノムデータを 宿主であるヒトの生命活動と結びつけて遺伝子レベルで詳細に理解するためには 細菌群集およびヒトの遺伝子間の相互作用を視覚化するツールが必須となる しかしながら このような視覚化ツールは 一通りの解析を終えてメタゲノムデータが公開された現在においても ほとんど開発されていない この原因として 各細菌のゲノム中の遺伝子間での相互作用に加えて 異なる細菌が持つ遺伝子間での相互作用 さらには細菌が持つ遺伝子とヒトが持つ遺伝子間での相互作用というように 各階層内での相互作用だけに留まらず複数の階層にまたがった相互作用が多数存在するために情報量が発散し 情報表現が難しいことが挙げられる そこで 我々は昨年度の CICP プロジェクトで開発に成功した 多階層にわたる相互作用が存在するデータの明快な視覚化に特化した 地理情報システムを利用したデータ可視化ツールをさらに改良し ヒト腸内細菌群集メタゲノム解析データへの適用を試みる 具体的には ヒト腸内での食物からヒトへの化学物質の代謝過程および 食物から細菌を介したヒトへの化学物質の代謝過程の視覚化を試みる これを通して 本プロジェクトでは ヒト腸内における腸内細菌群集を介した栄養分の消化吸収のプロセスの推定 ヒト腸内における各代謝反応過程でキーとなっている菌種の推定を可能とする ヒト腸内細菌群集メタゲノム解析データの視覚化に特化したツールの開発を目的とする 7. 目的到達までの研究計画 1. ヒト腸内メタゲノム解析データの取得 アメリカおよび日本のグループのヒト腸内メタゲノム解析データは NCBI の GenBank データベースから無料で公開されている ここからメタゲノムデータを取得する 196

207 2. マッピングに使用する代謝経路情報の取得 KEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes) より マッピングに使用するヒトおよび細菌の代謝経路データを専用の API を使用して取得する 3. 代謝経路情報を代謝機能群ごとに分割 KEGG で公開されている代謝経路データは 単一の生物内での代謝過程を表現するために 独自の基準で糖代謝や脂質代謝などの代謝機能群ごとに分割されている したがって KEGG の代謝機能群分類では ヒトと腸内細菌の二者間で協同して行われる代謝過程を的確に表現することは困難であるため 微生物学や医学などの研究分野で蓄積された知識を多数の論文から抽出し 独自の基準で代謝機能群および各代謝機能群内に含まれる代謝経路を定義 分類する この代謝機能群の定義 分類の方法は 研究者の興味の違いによって変わる曖昧なものであるため 本プロジェクトにおいて最も困難であると考えられる部分である ヒト腸内細菌を専門に研究している研究者とディスカッションを行い 科学的な妥当性が高い定義 分類を目指す 4. 地理情報システム上への代謝経路情報の展開地理情報システム上へ代謝経路情報を展開する情報フレームワークとして Google Earth を使用する Google Earth 上で各化学物質を点で表現し 化学物質間を その代謝反応を触媒する酵素を線で表現することによって連結する この表現手法を先に定義した代謝経路上の全ての代謝反応に適用することによって 代謝経路を点と線で表現する 腸内細菌からヒトへの化学物質の流れを的確に表現するために ヒトが持つ代謝経路と腸内細菌が持つ代謝経路を Google Earth 上で表示する高度を変えることによって異なる階層として表現する その際 ヒトには無く腸内細菌には存在する代謝経路の内で 代謝反応の産物がヒトが代謝可能な物質である場合には 両階層の間を線で連結する これによって ヒト腸内での化学物質を介した両生物の代謝経路の連結が明快に表現できる 5. メタゲノムデータからの遺伝子予測メタゲノムデータは単なる塩基配列データの集合であるため まずその中からマッピングに使用する 代謝に関わる酵素の遺伝子配列を抽出する必要がある これには 代謝に関わる酵素の遺伝子の網羅的な配列データベースである KEGG pathway データベースや SEED データベースを相手に メタゲノムデータを 配列相同性検索プログラムである BLAST を使用して配列相同性検索することによって遺伝子予測を行う これらのデータベースには その酵素遺伝子が由来した菌種の情報も含まれているため 遺伝子予測の過程でその遺伝子配列が由来した菌種の推定も同時に行う 6. Google Earth 上へのメタゲノムデータのマッピング BLAST 検索結果から 各酵素に付属している KEGG の ID 情報を元に Google Earth 中の対応する酵素に情報を付加する 由来した菌種ごとに色を変えた三次元の積み上げ棒グラフを使用して ヒト腸内における各酵素反応がどの菌種に依存しているかを表現する 月 3-7 日にアメリカ San Diego で開かれる Metagenomics 2008 でポスター発表 Abstract の登録締め切りが 8 月初旬なので それまでに本システムをある程度形にしておく必要がある この会議でメタゲノム研究者から意見を聞き システムの改良を行う 197

208 8. 決算の要約 設備備品費 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等 消耗品費 METAGENOMICS2008 ポスター印刷費 旅費 ( 調査目的も可 ) 細菌学 若手コロッセウム METAGENOMICS PSB2009 合計 プロジェクトの状況および自己評価の要約当初の予定では ヒト腸内におけるヒトと腸内細菌の二者間で共同して行われる代謝過程を明確に表現することを目的として KEGG の代謝機能群分類を再分類 定義し それらを Google Earth を用いて視覚化する計画であった しかしながら 医学および細菌学の専門家の方々とディスカッションを重ねた結果 現時点では再定義可能なほどヒト腸内における代謝過程は明らかになっておらず KEGG の代謝機能群分類をベースにして まずは腸内における細菌間の代謝を介した相互作用を視覚化した方が科学的にも整合性が取れたものが作れるという結論に至った このため GoogleEarth による視覚化システムから KEGG の代謝マップを最大限活用した視覚化システムへと構築するシステムを変更した この変更によってシステムを一から作り直す必要があり苦労したが その後の解析はスムーズに進み ヒト腸内メタゲノムデータを上記の切り口で視覚化したツールおよび解析結果を 11 月のアメリカ San Diego で開催された Metagenomics 2008 で発表することができた 今後の課題としては 本システムを医学 細菌学の研究者に広く認知してもらうためにクリッカブルマップの AJAX 化などを行いユーザインタフェースを改良するとともに 一刻も早く解析結果を論文にまとめて出版しデータベースとして公開したいと考えている [ スプリングセミナーの感想 ] 可視化結果からどのようなことがわかるのかという質問が多かった Phenotype と結びつけて結果を解釈することの重要さを再確認した 198

209 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 結果報告 プロジェクト名 ヒトとヒト腸内細菌群集間の化学物質を介した 相互作用の理解に必須なメタゲノム情報可視化ツールの開発 プロジェクトリーダ 西田 孝三 1 概要 背景と狙い めに情報量が発散し 情報表現が難しいことが挙 ヒトの体には皮膚 口 胃 腸 膣など様々な げられる 部位にヒトの細胞の 10 倍以上の数の細菌が共 そこで我々は 腸内細菌間の相互作用を 物質 生しており それらの細菌が免疫や消化吸収など の化学反応経路である代謝という視点に絞って において非常に重要な役割を果たしている これ 表現することによって 単純明快に表現するツー より ヒトは自らの細胞と共生細菌とをあわせた ルの開発を試みた 超個体であると考えられ ヒトを理解するには共 代謝は研究の歴史が古くシステムの解明が進 生細菌の役割の解明が必須であると言える この ん で お り そ れ ら の 情 報 は KEGG (Kyoto ため 2003 年のヒトゲノム解読完了後 ポスト Encyclopedia of Genes and Genomes)に代謝マ ヒトゲノムとして ヒトに共生する細菌群集につ ップという形で整理されている(4) 代謝マップ いて 各菌を単離せずに群集まるごとゲノム解読 は生物の代謝経路全体を様々な機能群に細分化 する ヒトメタゲノムプロジェクトが国際プロジ して 化学物質と化学反応を仲介する酵素のつな ェクトとして立ち上がり現在進行中である(1) がりとして表現してあり 酵素遺伝子はメタゲノ 様々な部位に存在する共生細菌の中でも 特に腸 ムデータ中にも多数存在するため 両者の連結は 内細菌群集は ヒトが消化吸収できない物質を消 比較的容易である これを通して 本プロジェク 化吸収可能な栄養素へと変換する役割を持って トでは いると共に 複数の腸疾患にも深く関係している ヒト腸内における腸内細菌群集を介した栄養分 ため特に重要であり 他の部位に先駆けてアメリ の消化吸収のプロセスの推定 カおよび日本の研究グループによってメタゲノ ヒト腸内における各代謝反応過程でキーとなっ ム解析が行われ メタゲノムデータが公開されて ている菌種の推定 いる(2, 3) を可能とする メタゲノムデータの視覚化に特化 異なるゲノムを持ち それゆえに生物学的な性 したツールの開発を目的とした 質が異なる細菌が数千種類も混在した 極めて複 2 プロジェクトの進捗 雑かつ膨大な腸内細菌群集のメタゲノムデータ を 宿主であるヒトの生命活動と結びつけて遺伝 ヒト腸内メタゲノム解析の目的の一つとして 子レベルで詳細に理解するためには 腸内細菌の ヒトと腸内細菌の間における 物質の代謝を介し 個体間および種間相互作用を視覚化するツール た相互作用を明らかにするというものがある 本 が必須となる しかしながら このような視覚化 プロジェクトもそれを最終目標に掲げていたが ツールは 一通りの解析を終えてメタゲノムデー 2008 年 8 月 3-5 日に湘南国際村センターで行わ タが公開された現在においても ほとんど開発さ れた細菌学コロッセウムなどにて(図 1) 医学お れていない よび細菌学の専門家の方々とディスカッション この原因として 各細菌のゲノム中の遺伝子間 を重ねた結果 ヒトと腸内細菌間の相互作用はも での相互作用に加えて 異なる細菌が持つ遺伝子 ちろんのこと 腸内細菌の個体間および種間にお 間での相互作用を同時に表現する必要があるた ける代謝を介した相互作用についてすらほとん 199

210 ど明らかになっていないのが現状であるため ま ずは腸内細菌間の代謝を介した相互作用に焦点 2.2. メタゲノムデータと KEGG 代謝マップとの を絞ったツールを開発することにした 連結 メタゲノムデータ自体は塩基配列の集合体で 図.1 細菌学コロッセウムにおける参加者の集合 あるため KEGG 代謝マップと連結するには 塩 写真 (最前列右から 2 番目が森) 基配列から遺伝子を予測し KEGG 代謝マップ中 に存在する酵素遺伝子との配列相同性を計算す る必要がある 今回は メタゲノムデータ中に存 在する同じ生物の同じ遺伝子由来だと考えられ る断片同士を PCAP というゲノムアセンブルソ フトウェアを使用することによって連結し(6) 2.1. メタゲノムデータおよび KEGG 代謝マップ より情報量の多いデータにした その後 遺伝子 の取得 予測ソフトウェアとしてメタゲノムデータから 公共のデータベースである NCBI GenBank か の遺伝子予測が得意な Metagene を使用した(5) ら アメリカ人 2 人(2)および日本人 13 人(3)の 予測された遺伝子数としてはサンプルごとに平 腸内メタゲノムデータを取得した[表.1] KEGG 均 3 万遺伝子ほどであったが 今回は KEGG の Pathway データベースから 存在する全ての代 代謝マップ上に存在する酵素遺伝子に対応する 謝マップを取得した 遺伝子のみが必要であったため NCBI GenBank から取得した 621 株のゲノム解読済み細菌の全 表.1 サンプル毎の遺伝子数について タンパク質コーディング遺伝子相手に 配列相同 予測遺伝 酵素遺伝 性検索プログラムである BLAST を使用して配 子数 子数 列相同性検索を行い(7) 既知の遺伝子との関連 ID 由来 AAQK 米国人 28 歳 女 付けを行った 関連付けられた各遺伝子について AAQL 米国人 37 歳 男 由来した細菌の属レベル以上の分類群情報を 分 HuFA 日本人 45 歳 男 類群情報のスタンダードである NCBI Taxonomy HuFD 日本人 35 歳 男 データベースから取得した(8) HuFM 日本人 4 ヶ月女 HuFR 日本人 24 歳 男 メタ遺伝子のアノテーションとデータベースの HuFS 日本人 30 歳 男 構築 HuFT 日本人 28 歳 男 株のゲノム解読済み細菌の全タンパク質遺伝 HuFU 日本人 7 ヶ月女 子それぞれに 重複すること無くつけられている 遺 HuFV 日本人 37 歳 男 伝子 ID 情報(NCBI-GI)と KEGG が独自に各生物 HuFW 日本人 36 歳 女 の各遺伝子に割り振っている遺伝子 ID 情報を照合 HuFX 日本人 3 歳 男 することによって KEGG の代謝アノテーション情報 HuFY 日本人 1.5 歳女 を付加したデータベースを構築した テーブル設計 InDA 日本人 6 ヶ月男 は下記のようになり データベースには SQLite3 を用 InEA 日本人 4 ヶ月女 いた [表.2] 200

211 報をパイチャートで表した画像をマップ(合成) 表.2 メタ遺伝子情報データベースのテーブル設 した 計 blast テーブル メタ遺伝子 ID NCBI-GI 2.6. マッピング結果と KEGG 情報のリンク 相同性 マッピング結果と KEGG の情報をリンクさせるため アラインメン ト長 ミスマッチ ギャップ KEGG Pathway の HTML を追加取得し この HTML クエリ開始位 クエリ終了 サブジェク に変更を加えることで KEGG 情報へのリンクを可能と 置 位置 ト開始位置 した Evalue blast スコア サブジェクト 終了位置 3 成果 具体的な成果としては国際学会発表と WEB アプリ NCBI-GI KEGG 遺伝子 ID テーブル NCBI-GI ケーションの基盤の構築がある KEGG 遺伝子 ID NCBI-GI 株 テーブル NCBI-GI 3.1. METAGENOMICS2008 における発表につ 株名 いて Taxonomy テーブル 株名 上記のツールおよび解析結果を 2008 年 11 生物分類(門)名 月 3-7 日にアメリカ San Diego のカリフォルニ KEGG 遺伝子 ID 酵素 テーブル ア大学サンディエゴ校で開催された KEGG 遺伝子 ID METAGENOMICS 2008 において "Functional 酵素番号 variation analysis of human gut metagenomic NCBI-GI と KEGG の ID の対応 KEGG の遺伝子 ID data"というタイトルでポスター形式の発表を行 と酵素番号の対応は KEGG API を用いることにより った(図 2, 3) 発表にはアメリカのローレンス 取得した バークレー国立研究所やスタンフォード大学 ヨ ーロッパの欧州分子生物学研究所(EMBL)など の 各国のヒト腸内メタゲノム解析プロジェクト 2.4. 酵素に対応するメタ遺伝子群の構成解析 2.3. で構築したデータベースに対し SQL クエリを に参加している研究者が訪れ 今後の解析の方向 用いて 酵素遺伝子に対応するメタ遺伝子群がどの 性やツールの改良点などについて非常に有用な ような生物分類 門 で構成されているかを各サンプ 議論が出来た また 国内においてメタゲノム解 ル毎に求めた 析を推進している実験系およびバイオインフォ マティクス研究者の方々と会期中行動を共にし 2.5. 酵素に対応するメタ遺伝子群の構成の KEGG 今後の研究活動などについて 様々なアドバイス Pathway へのマッピング を頂くことが出来た KEGG Pathway データベースには酵素と化合物 をノードとした分子間相互作用 反応ネットワーク 図.2 METAGENOMICS 2008 における参加者の に関するパスウェイ情報が蓄積されている この 集合写真 (写真中央部付近に西田と森) データベース中の代謝反応中の酵素全てに対し 2.4.で求めた酵素に対するメタ遺伝子の構成情 201

212 上記のような視覚化によって 各代謝マップ上 の各酵素をヒト腸内においてどのような細菌が 持っており したがってその反応において重要で あることが一目でわかるツールが完成した これ によって 腸内に数百種存在する細菌の中で 代 謝的に考えて必須な細菌のリストを推定するこ とが初めて可能となった また 今までほとんど 図.3 METAGENOMICS 2008 で発表したポスタ が未知であった 代謝物質を介した腸内細菌の相 ー (発表は西田と森の両者で共同して行った) 互作用を メタゲノムデータを使用して網羅的に 調べることが可能となった 例えば 胆汁酸は肝臓で合成され 十二指腸に 胆汁として分泌されて脂肪の消化吸収を促進す る 胆汁酸は その多くが腸管内で吸収されるが 一部は Clostridium などの一部の腸内細菌によ って二次胆汁酸に変換され 大腸ガンなどの原因 となることが知られている しかしながら どの 腸内細菌がこの代謝反応を司っているのかにつ いては 詳細にはわかっていなかった このツー ルを用いることによって 図 3 のようにこの代謝 経路に関連する遺伝子を持った腸内細菌の系統 群が 一目でわかるようになった これによって 今まで医学 細菌学の分野で蓄積されてきた 腸 内細菌についての知見とメタゲノム解析データ を代謝という観点で結びつけることが可能とな った このような例は他にも多数存在しており 現在これらをまとめて投稿論文にしている最中 である METAGENOMICS 2008 以外にも 1 月 WEB アプリケーションの基盤システムの構築 KEGG の情報を基に細菌群集間の相互作用を 日にハワイで行われた Pacific Symposium on 理解するための可視化 WEB アプリケーションの基盤 Biocomputing 2009 や 3 月 5-7 日に中央大学後 が完成した 現時点でメタゲノム情報をストアしたデ 楽園キャンパスで行われた第 3 回ゲノム微生物 ータベースがあり これに加えて門構成を機能と共 学会年界などの機会に 国内外のゲノム系および に一覧できるビューが完成している 今後はこれを 細菌学の研究者の方々にこのツールを紹介した 拡張することでユーザがデータをアップロードするこ ところ 非常に高い評価を得たと共に 自分が持 とで動的にデータベースへのストア ビューの更新 っているメタゲノムデータもマッピングしても がなされるシステムが実現可能となる らいたいなどの要望も受けた 現在 Web 経由 で閲覧可能なデータベースおよびインターフェ 3.3. 本ツールの応用例 ースを作成中である 202

213 者の方々と共同で整理すると共に 様々な環境のメ タゲノム解析データに本ツールを適用し それらの 結果をデータベース化して公開する予定である 最 終的には それらをまとめて論文として発表したいと 考えている 図.4 胆汁酸の代謝過程に関わる細菌の系統組成 5 自己評価 を本ツールで表現した図 (円グラフがヒト腸内 [西田] において その酵素を所持している細菌の系統組 任期中に論文として成果をまとめられなかった点は 成を表している この図から 胆汁酸の代謝には 残念であったが 概ね提案した企画の通りに研究は 青色で表されている Clostridium などを含む 進み生物学的な知見を生み出す基盤システムを構 Firmicutes 門が主導的な役割を果たしているこ 築することができたと思う このプロジェクトを通じて とがわかる ) 生物学的にも情報学的にも能力が向上したように思 う 私はバイオインフォマティクスを専攻しているがプ ロジェクト開始時にはゲノム解析分野の知識には乏 しかった そのような私が本プロジェクトを通じて国際 学会で発表の機会を頂くまでに成長できたことには 非常に満足している また情報学的にも得られた知 識が多かった データベースの設計 構築 SQL の 習得 文字列処理プログラミング WEB API を叩くプ ログラミング 画像処理プログラミング HTML 解析 ソフトウェアプロジェクト管理ツールの使用 未完で はあるがユーザーインターフェースを良くするための Javascript プログラミングなど挙げればきりがないほ どの技術を学ぶことができた 以上は分担者の森や 本プロジェクトを支えてくださった東京工業大学の黒 川教授との議論無くしては実現し得なかった 森と 黒川教授に心から感謝したい [森] 任期中に都合によって 本大学院から東京工業大 学へと転学することになり リーダーの西田には色々 と苦労をかけた しかしながら 転学後も本プロジェ 4 今後の展開 クトを続け 他のメンバーと Web 経由で連絡を取り合 目下の予定としては Javascript を用い 画面を遷 い 本ツールをここまでの物に出来たことに非常に 移させることなく門構成中のメタ遺伝子の情報を閲 満足している 本ツールをより良い物にするために 覧できるインタフェースを実現することがある その 細菌学コロッセウムにて医学 細菌学の研究者の 後は 本ツールを用いることによって得られたヒト腸 方々と夜遅くまでディスカッションし また 内細菌群集についての知見を医学 細菌学の研究 METAGENOMICS 2008 にて各国のヒト腸内メタゲノ 203

214 ムプロジェクトのメンバー達とメタゲノム解析の方向性などについてディスカッションできたことは 自分の今後の研究生活の上で非常に有益になると考えている 私自身はバイオインフォマティクスを専攻してはいるが まだまだ情報系のスキルは高くなく システム開発の面でリーダーの西田に大きな負担をかけることになってしまった また 本プロジェクトの計画段階から完成に至るまで 東京工業大学の黒川顕教授には手厚いご指導を頂いた 二人にはここで厚く感謝の意を述べさせて頂きたい 参考文献 (1) Turnbaugh P. J., et al., (2007) The Human Microbiome Project. Nature 449: (2) Gill S. R., et al., (2006) Metagenomic Analysis of the Human Distal Gut Microbiome. Science 312: (3) Kurokawa K., et al., (2007) Comparative Metagenomics Revealed Commonly Enriched Gene Sets in Human Gut Microbiomes. DNA Res. 14: (4) Kanehisa M. and Goto S. (2000) KEGG: Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes. Nucleic Acids Research 28(1): (5) Noguchi H., et al., (2006) MetaGene: prokaryotic gene finding from environmental genome shotgun sequeneces. Nucleic Acids Research 34(19): (6) Huang X., et al., (2003) PCAP: A Whole-Genome Assembly Program. Genome Research 13: (7) Altschul S. F., et al., (1990) Basic Local Alignment Search Tool. J. Mol. Biol. 215(3): (8) 204

215 付録 1 公募内容および応募様式 情報科学研究科学生各位 2008 年 4 月 28 日 情報科学研究科長 創造力と国際競争力を育む情報科学教育コア プロジェクト型研究提案 の公募について 公募の趣旨文部科学省 大学院教育改革支援プログラム に採択された 本研究科の教育プログラム 創造力と国際競争力を育む情報科学教育コア の一環として行う教育事業です 第 1の目的は 学生の研究プロジェクト企画 推進力やコミュニケーション力を育むことであり 研究成果を出すこと自体ではありません 大胆なテーマに挑戦し 様々な失敗を将来の糧とできる またとないチャンスです 皆さんが心の中で大切に暖めているアイディアをこの機会に是非実現して下さい 応募資格と公募内容プロジェクトリーダーが情報科学研究科博士前期 後期課程の学生であること 独創性や将来性のある提案を20 件程度選抜し 1 件あたり 150 万円程度を上限として経費を支給します 9 月に淡路夢舞台国際会議場にて英語プレゼンテーション能力向上のための模擬国際会議 2 月および3 月初旬のスプリングセミナーにてポスターセッション 3 月中旬に報告書提出があります ポスターセッションでは来場者 ( 教員含む ) による人気投票が行われます なお 9 月の模擬国際会議は 9 月末頃のM2/D2 中間発表会とは別 ( 両方に参加義務 ) なので M2/D2が応募する場合には 留意してください 応募方法 の様式に記入し PDF に変換後 添付 From に限ります 例)taro@is.naist.jp Subject は gp2008- 学生番号 例 )gp ( ハイフン含め全て半角 ) プロジェクトリーダーが nakashim@is.naist.jp 宛に送ること スケジュール ( 詳細は 4/28 5/9 5/19 5/30 9/19,20 2/ 初,3/ 初 3/13 ( 月 ) ( 金 ) ( 月 ) ( 金 ) ( 金, 土 ) ( 金 ) 公募開始 (WEB 掲示および学生メーリングリスト送信 ) 13:30-14:30 L1 にて応募説明会 17:00 応募締め切り結果通知および研究開始 ( 後日 交付金額と予算執行の説明会 ) 英語発表 ( 淡路島 ) スプリングセミナーにてポスターセッション ( 全員参加 ) 報告書提出締め切り 採択された場合の義務 予算の適正な執行と 購入物品の適正な管理に努めること 上記スケジュールに従うこと 発 注に際しては チュータを含む各プロジェクトが責任をもって業者選定および伝票等の準備を行 い しかる後に CICP 事務局に依頼すること 事務局の閉室時間 (17 時 ) を過ぎて用務を依頼し ないこと 以上が遵守されない場合 当該プロジェクトの支援を打ち切ることがあります 205

216 Q&A 1) 分担者に他大学の学生や休学中の学生を加えることができるか 他大学の学生は OK 休学中の学生は不可 2) レンタル料金 ( 電波暗室 ) や心理実験の被験者謝金などは計上できるか OK ( 必要経費のどこでもよいので その旨記載のこと ) 3) 多年度継続申請 形式上は単年度だがエンカレッジする 4) 特待生プロジェクトとの重複申請 重複理由による ( 特待生活動では制約があって支援を受けられない内容である等 ) 特待生との大きな差は DC もありということ 重複申請は可だが内容が同じだと不利 5) 申請予算を減額されるか その場合辞退できるか 減額はあり得る それで無理なら辞退を 途中でやめるのは不可 6) スプリングセミナーでの行事自体をプロジェクトにできるか できる 推奨する 7) 人気投票の賞品は何か お楽しみに ( 決まっていない ) 8) アカデミックなものがよいのか そうであってもなくてもよい 9) 論文研究と相違があるほうがよいのか 自主性を重んじるという観点からは相違があるほうがよい 9) 他大学の学生に旅費を出せるか プロジェクトに関わる場合は可能 10)2009 年 4 月以降の旅費は出せるか 不可 (3 月は可だが 3/31 に帰国している必要がある ) 11) 購入時の業者選定などを CICP 事務局に依頼できるか 不可 CICP 事務局は持ち込まれた伝票の会計処理のみ行う 業者選定から伝票 見積 納品 請求 入手まで各チュータが指導すること 206

217 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 研究提案書 1. プロジェクト名 2. プロジェクトリーダー ( 同一学生が複数プロジェクトのリーダーにはなれません ) 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 3. 分担者 ( 他大学の学生も可. 分担者無しも可 ) 所属講座学年学生番号氏名 アドレス 行数は適宜増減してよい 4. チューター ( 必須. 本研究科専任教員, 伝票入手完了までサポートする義務あり ) 所属講座職名氏名 アドレス 5. 必要経費 ( 応募時点での見積書添付は不要 ) 金額 ( 千円 ) 支出予定月品名 型名 数量 / 行先 目的 日数等設備備品費 支出は 12 月末まで 以降は支出不可の場合がある 全体の 70% を超える場合 本表空欄に理由を明記消耗品費 通常の研究費でも購入可能な物品に限る 旅費 ( 調査目的も可 ) 国内 海外いずれも可 交通費 + 宿泊費 ( 実費 ) のみ 日当 人件費 謝金は不可 行数は適宜増減してよい合計 ( 上限 1,500 千円 ) 207

218 6. プロジェクトの背景と目的 11 ポイントを使用 本プロジェクトの発案に至った 世の中の動向や 目指す将来像について具体的に記述すること 7. 目的到達までの研究計画 11 ポイントを使用 記入欄が不足する場合 1 ページまで追加できます カラーの図表も OK 目的に到達するために何が必要であり また どのような困難が予想されるかについて具体的に記述するこ と また 結果的に困難を克服できなかった場合の回避手段や代替案についても記述すること 208

219 8. 学位論文との関連 相違点 ( 複数メンバによる実施の場合はメンバごとに記述 ) 11 ポイントを使用 学位論文と重複してはならないという意味ではありません 9. 研究業績 ( 複数メンバによる実施の場合はメンバごとに記述 ) 11 ポイントを使用 公表されていなくても 一般に入手可能でなくても 自分の成果と呼べるものは何でも構いません 例 ) 論文 予稿 書籍 試作品 展示物 雑誌記事 新聞記事 映像資料など 10. チューターの推薦文 11 ポイントを使用 209

220 付録2 交付申請書様式 2008 年度大学院教育改革支援プログラム プロジェクト型研究提案 交付申請書 1 プロジェクト名 (申請書の内容をそのまま記入. 変更不可) 2 プロジェクトリーダー (変更不可) 模擬国際会議参加 所属講座 学年 学生番号 必須 氏名 アドレス 氏名 アドレス 男/女 日程が重複する他の国際会議に参加する場合に限り 分担者が代理可能 3 分担者 (変更可) 模擬国際会議参加 所属講座 学年 学生番号 男/女 男/女 男/女 男/女 参加上限4 男/女 行数は適宜増減してよい 複数プロジェクトに関わる学生はいずれか 1 つの交付申請にチェック 重複不可 その他の学生は4名まで参加必須 4 チューター 必須 本研究科専任教員 伝票に関する責任者 (事情により変更可) 模擬国際会議参加 所属講座 職名 氏名 アドレス 男/女 特段の理由がない限り参加 バス添乗員 セッションチェア 撮影等を担当してもらいます 5 必要経費 応募時点での見積書添付は不要 金額(千円) 支出予定月 品名 型名 数量 行先 目的 日数等 設備備品費 伝票は 12 月末まで 以降 は支出不可の場合がある 全体の 70%を超える場合 本表空欄に理由を明記 消耗品費 伝票は 2 月末まで 通常の研究費でも購入可 能な物品に限る 旅費 調査目的も可 伝票は 2 月末まで 交通費+宿泊費(実費)のみ 日当 人件費 謝金は不可 国内 海外いずれも可 宿泊費には上限があるので事前に確認のこと 行数は適宜増減してよい 合計 (交付額は 6 月に通知) 210

221 付録 3 模擬国際会議プログラム CICP2008: Workshop for Creative and International Competitiveness Project September 19-20, 2008 In Awaji Yumebutai International Conference Center Reception Hall B Graduate School of Information Sicence YNSPEC

222 Dear CICP Leaders and Tutors, It is with great pleasure that I welcome you to CICP2008: Workshop for Creative and International Competitiveness Project. This program will provide you with good opportunities to improve your presentation skills. Inside this manual you will find information about the program that will assist you in preparing for the conference. Please read this manual carefully and bring it with you. Again, I welcome you to the Workshop and look forward to a worthwhile and productive program with you. Sincerely yours, Naokazu Yokoya 212

223 TRAVEL APPLICATION Each participant does not need an individual application for travel. The travel is assumed to be done in the standard way (by chartered buses) and applications will be issued by Adachi-san. CICP leaders should inform Adachi-san about the travel information of each tutor if the tutor does not travel in the standard way. MEAL COUPON The leaders should collect meal expenses from the members and the tutor as listed below, and pay Adachi-san in advance of September th Lunch 19 th Dinner 20 th Lunch A.P. Kashihara ,000 A.P. Nakamura ,000 A.P. Tachibana ,000 Uranishi ,000 A.P. Inui ,000 A.P. Yamazawa ,000 A.P. Manabe ,000 Prof. Yokoya ,000 A.P. Shibata ,000 Manabu Kimura ,600 Jun Takata Katayama,Mizuno ,800 Maiya Hori Takahashi ,200 Retno Supriyanti ,600 Kozo Nishida (dota-can) ,200 A.P. Noda ,000 Aiko Nozue Sakamoto ,200 Kohei Hayashi Hiei,Asahina ,800 Takahiro Minami ,600 Badr Oulad Nassar Kinoshita,Koyanagi ,800 A.P. Takenouchi ,000 A.P. Shinbo ,000 A.P. Kaji ,000 Akira Nagamatsu Ibuki,Kume ,800 Kazuo Imahata Harada ,200 Kazumasa Kojima Taenaka,Matsuyama ,800 Atsushi Sobue Ding,Ono ,800 A.P. Sakumura ,000 Naoya Inoue Eguchi,Ariki ,800 Chihiro Obayashi Takita ,200 Yuji Kohashi ,600 Masayoshi Nakamura ,600 A.P. Md Altaf Ul Amin ,000 Mayumi Haga ,600 Kazuyoshi Hatada Kida,Hirade ,800 Masaya Hirata Kurihara,Kondou,Kaburagi, Kamon,Matsumoto ,600 Yoshiro Fukui Okamoto,Kisaki,Matsuo ,400 Prof. Ogasawara ,000 Prof. Umeda ,000 A.P. Nakajima ,000 Prof. Sell Albert Causo(TA) ,700 Josh Lewis(Kurdyla) ,100 Prof. Sugimoto ,000 Prof. Seki ,000 Prof. Ikeda ,000 Prof. Nakashima ,000 A.P. Kawaguchi ,000 A.P. Habe ,000 A.P. Takemura ,000 A.P. Kogiso ,500 Vegetarian:2,1, ,300 78, ,000 80, ,600 for free discussion 30,

224 PRESENTATION A desk service for presentation training is especially arranged for this program. for the detail information. Visit Each presentation should be prepared elaborately by using a PC and should keep to the standard schedule: 12 minutes for presentation, 3 minutes for questions from students, and 5 minutes for advice from the teaching staff. A shared PC is not available, so each student should bring their own PC. Put 81 copies of the handout (the hardcopy of the slides) on the desk near the entrance of Reception Hall-B (2 nd floor) as soon as you have arrived. The handout should be within 1 sheet (duplex printing can contain 2 pages). If you plan a demonstration during lunchtime or during a short break, contact the organizer in advance to prepare a booth. The materials for demonstration are your own responsibility. Too large or heavy materials that cannot be carried on the chartered bus are not acceptable. Each student who does not make a presentation should ask questions (in English) at least 2 times in this program. If nobody raises their hand, some students will be chosen by the session chair to ask questions. There are two types of questions. One is about the concepts and interpretation of the experimental data. This is important so that students from other fields understand the presentation. The other type of question should express your point of view and your interpretation of the presentation, and possible future problems, in order to exchange opinions with the presenter. This will also benefit the presenter. The next page includes a score sheet. Check all items before and after your presentation. Each student attending the conference (not only the presenters) should print out and bring 21 copies of the score sheet. You will score each presentation. This will help you to focus on, and remember, the criteria for a good presentation. After each presentation, the sheets will be collected by TA and handed to the presenter directly. 214

225 Presentations Score Sheet David A. Sell Nara Institute of Science and Technology Presenter s name: Scorer s name: Total score: / 25 Date Criteria Demeanor Occasionally looks at Hardly ever looks at audience, or Eye contact audience, or reads too much Gestures & facial expression Posture Voice & Pronunciation Enthusiasm Volume of voice Stress, intonation, rhythm Pronunciation segmentals Content Topic importance Preview slide Slides: clarity of and Slides: visual effect or impact Explanation slides Timing of Unnatural or nervous gesturing or facial expression Remains seated or slumps throughout Shows little interest in the topic Volume too low or too high throughout Monotone or excessive hesitation Heavy interfering intelligibility accent with Topic or its importance not made clear No preview or mapping of the content at the start Slides generally hard to read or figure out habitually looks at same part of the audience Volume appropriate Some defects in intonation, stress or rhythm Some accent, but meaning clear throughout A preview or mapping at the start, without visual impact Occasional problems in reading or grasping slides Frequent eye contact with people in different parts of audience Natural, relaxed gesturing and facial expression Stands up straight Shows strong interest in the topic Intonation, stress and rhythm close to native-speaker ability Near-native pronunciation speaker Topic and its importance made clear from the start A preview or mapping at the start, with visual impact Slides simple and clear Little visual impact Some visual impact Effective visual impact Frequently hard for audience to relate explanation and slide Presentation too short or too long Occasionally hard for audience to relate explanation and slide Throughout, easy for audience to relate explanation and slide Timing according to plan 215

226 DEPARTURE (7:30 in the morning! Don t be late!) CICP leaders should be aware of the activities of their members during the program. Before departure (both 19 th and 20 th ), the leaders should make roll calls and inform the leaders (some of tutors) of each bus listed below. The leaders (tutors) of each bus should deliver name cards and confirm that no passenger is left behind before departure. The name cards should be returned to the leaders (tutors) before the departure from Awaji. 19 th Bus#1 19 th Bus#2 20 th Bus#1 20 th Bus#2 A.P. Kashihara leader of Bus#1 (19th) 1 1 A.P. Nakamura 1 1 A.P. Tachibana leader of Bus#2 (19th) 1 1 Uranishi 1 1 A.P. Yamazawa 1 1 A.P. Manabe 1 1 A.P. Shibata 1 1 Manabu Kimura 1 1 Jun Takata Katayama,Mizuno 3 3 Maiya Hori Takahashi 2 2 Retno Supriyanti 1 1 Kozo Nishida 1 1 A.P. Noda 1 1 Aiko Nozue Sakamoto 2 2 Kohei Hayashi Hiei,Asahina 3 3 Takahiro Minami 1 1 Badr Oulad Nassar Kinoshita,Koyanagi 3 3 A.P. Takenouchi 1 1 A.P. Kaji 1 1 Akira Nagamatsu Ibuki,Kume 3 3 Kazuo Imahata Harada 2 2 Kazumasa Kojima Taenaka,Matsuyama 3 3 Atsushi Sobue Ding,Ono 3 3 A.P. Sakumura 1 1 Naoya Inoue Eguchi,Ariki 3 3 Chihiro Obayashi Takita 2 2 Yuji Kohashi 1 1 Masayoshi Nakamura 1 1 A.P. Md Altaf Ul 1 1 Mayumi Haga 1 1 Kazuyoshi Hatada Kida,Hirade 3 3 Masaya Hirata Kurihara,Kondou,Kaburagi, Kamon,Matsumoto 6 6 Yoshiro Fukui Okamoto,Kisaki,Matsuo 4 4 Prof. Sugimoto 1 Prof. Seki Yokoya 2 2 Albert Causo(TA) 1 1 A.P. Kawaguchi leader of Bus#1 (20th) 1 1 A.P. Habe 1 1 A.P. Takemura leader of Bus#2 (20th) 1 1 A.P. Kogiso

227 LAYOUT The layout of Reception Hall B is as follows. Take a reserved seat so that the chair can easily identify CICP members when nobody asks questions. Speaker Chair Staff 217

228 SCHEDULE (September 19) 7:30 Departure A.P. Kashihara A.P. Nakamura A.P. Tachibana Uranishi Leader of Bus#1 Leader of Bus#2 10:00 Arrival A.P. Inui Video staff A.P. Yamazawa A.P. Manabe 10:30-10:40 Opening Message Prof. Yokoya Dean 10:40-11:40 Tutorial I. Prof. Sell 11:40-12:40 Lunch (Lunch Box) 12:40-14:20 Session I. 20Min * 5 Chair:A.P. Shibata Member: Tutor: * Citation Map Manabu Kimura D2,Computational Linguistics Lab. A.P.Shinbo * A conduct supporter for exhibitions using user-based Jun Takata M2,Software Design Lab. Katayama, A.P.Kawaguchi grouping Mizuno * Telepresence System with High Realistic Sensation Maiya Hori D2,Vision and Media Computing Takahashi A.P.Yamazawa Using Omnidirectional Video and Motion Chair Lab. * Field Study of Cataract Diagnosis in Indonesia Retno Supriyanti D2,Advanced Intelligence Lab. A.P.Habe Towards Integration of ICT and Health Care for Developing Countries * Visualization of the chemical interactions of microbial community in human gut Kozo Nishida D1,Comparative Genomics A.P.Md Altaf Ul Amin 14:20-14:40 Short Break (Demos/Posters) 14:40-16:00 Session II. 20Min * 4 Chair:A.P. Noda Member: Tutor: * Mietara Login---Mutual Authentication Using A Visual Aiko Nozue M2,Lab.for Foundation of Sakamoto A.P.Kaji Secret Sharing Scheme Information Science * Friends recommendation system for social network Kohei Hayashi M2,Systems Biology Lab. Hiei,Asahina A.P.Sakumura service * Tunable Security by Shaking and Sharing Key Takahiro Minami M2,Lab.for Foundations of A.P.Nakamura Information Science * SPICE Project: Development of Super high-speed Photonic Interface for Computer Equipment with WDM Technology Badr Oulad Nassar M2,System Science Lab. Kinoshita, Koyanagi A.P.Tachibana 16:00-16:30 Review I. Prof. Sell 16:30 Checkin 17:00 Dinner (Meal Coupon + Extra charge) Shopping for Free Discussion 19:00 Free Room# A.P. Takenouchi A.P. Shinbo 218 Local arrangement

229 SCHEDULE (September 20) 7:00-8:30 Breakfast & Checkout 8:30-9:00 Tutorial II. Prof. Sell 9:00-10:20 Session III. 20Min * 4 Chair:A.P. Kaji Member: Tutor: * Projection Based AR System by Using Stereoscopic Information in Indoor Environment * Realistic Facial Animation Based on Eye Movement Tracking * Ubiquitous x Sports ~Construction of Real-time Sports Information Circulation System by Using Wireless Sensor Akira Nagamatsu 219 M2,Vision and Media Computing Lab. Ibuki,Kume A.P.Yamazawa Kazuo Imahata M2,Image Processing Lab. Harada Uranishi Kazumasa Kojima M2,Internet Engineering Lab. Taenaka, Matsuyama A.P.Kashihara * NAIST-HAND2 Type M - Ears installed A Robot Hand - Atsushi Sobue M2,Robotics Lab. Ding,Ono 10:20-10:40 Short Break (Demos/Posters) 10:40-12:00 Session IV. 20Min * 4 Chair:A.P. Sakumura Member: Tutor: * Dear Proofreader- Construction of the correction network with blog plugin - Naoya Inoue M1,Computational Linguistics Lab. Eguchi,Ariki * Health-care assist based on biophysical Chihiro Obayashi M1,Theoretical Life-Science Lab. Takita A.P.Shibata analysis of walking * Development of the 3D chocolate Yuji Kohashi M1,Robotics Lab. A.P.Takemura modeling system "NAIST Chocolatier" * anlife: An evolution simulator of virtual locomotive robots Masayoshi Nakamura M1,Theoretical Life-Science Lab. A.P.Takenouchi 12:00-13:00 Lunch (Lunch Box) 13:00-14:20 Session V. 20min * 4 Chair:A.P. Md Altaf Ul Amin Member: Tutor: * YUMA : A interface device for seamless interaction between people and digital information Mayumi Haga M1,Neural Computation Lab. Prof.Ikeda * Catch Me If You Can -Tom and Jerry- Kazuyoshi Hatada M1,Systems Science Lab. Kida,Hirade A.P.Kogiso * NAIST-IT Green Project "ECONAS" Masaya Hirata M1,Systems & Control Lab. Kurihara,Kondou, Kaburagi,Kamon, Matsumoto A.P.Noda * Safety verifying in GION festival -Uniting of tradition and engineering- 14:20-14:50 Review II. Prof. Sell 14:50-15:00 Closing Prof. Sugimoto Prof. Seki 15:30 Departure A.P. Kawaguchi A.P. Habe A.P. Takemura A.P. Kogiso 18:00 Arrival Yoshiro Fukui M1,Systems & Control Lab. Okamoto,Kisaki, Matsuo Leader of Bus#1 Leader of Bus#2

230 ROOM ASSIGNMENT Room assignments are as follows. The first person is the chief of each room and should manage the final checkout. Students Room#401 Retno Supriyanti Akiyo Asahina Room#402 Mayumi Haga Megumi Eguchi Nami Kurihara Room#404 Aiko Nozue Izumi Koyanagi Room#408 Akira Nagamatsu Takuya Ibuki Hideyuki Kume Room#409 Kazuo Imahata Hajime Harada Kenji Matsuo Room#410 Kazumasa Kojima Yuzo Taenaka Takuya Matsuyama Room#411 Atsushi Sobue Ding Ming Yasuhiro Ono Room#412 Kohei Hayashi Yu Hiei Tatsuya Kamon Room#419 Oulad Nassar Badr Harumasa Kinoshita Kensuke Matsumoto Room#420 Jun Takata Shinichi Katayama Keisuke Mizuno Room#421 Maiya Hori Hideyuki Takahashi Kozo Nishida Room#422 Naoya Inoue Hayato Ariki Yuji Kohashi Room#423 Chihiro Obayashi Yomoyuki Takita Masayoshi Nakamura Room#425 Kazuyoshi Hatada Naoki Kida Naofumi Hirade Room#426 Masaya Hirata Yusuke Kondou Yasuyuki Kaburagi Room#428 Yoshiro Fukui Kentaro Okamoto Yusuke Kisaki Room#429 Takahiro Minami Takahito Sakamoto Room#403 Manabu Kimura Albert Causo(TA) Staff Room#827 Naotake Ogasawara Room#821 Masaaki Umeda Room#824 David Sell Room#829 Josh Lewis(Kurdyla) Room#301 Shinji Kawaguchi Hitoshi Habe Kentaro Takemura Kiminao Kogiso Room#302 Shigeru Kashihara Yoshitaka Nakamura Takuji Tachibana Yuki Uranishi Room#303 Tomohiro Shibata Masaru Noda Yuichi Kaji Yuichi Sakumura Md Altaf Ul Amin Room#304 Kentaro Inui Kazumasa YamazawaYoshitsugu Manabe Masashi Shinbo Takashi Takenouchi Room#305 Kenji Sugimoto Hiroyuki Seki Kazushi Ikeda Yasuhiko Nakashima Naokazu Yokoya CHECK-IN, CHECK-OUT AND MEALS Check-in should be done individually after Review I (16:30) of the first day. A set of tickets for breakfast/dinner and a card key is provided for each person. Additional services or foods require extra payment. In Reception Hall B, a lunch box is provided for each person during the program. People who require a vegetarian lunch box should make this request to the program organizer in advance. Eating and drinking, except mineral water, are prohibited other than Reception Hall B. A dinner ticket is provided when you check-in. There will be a special menu provided in exchange for a dinner ticket at four restaurants in Yumebutai (Italian restaurant "Nano", Chinese restaurant "Haihua", Seafood restaurant "Ebisu-Tei", and Western restaurant "Grill Awaji 220

231 Yumekoubou"). Dinner is served from 17:00 (Nano opens at 17:15). The number of special dinner is limited in each restaurant, so if the special menu has already sold out, go to another restaurant or order another from another menu and pay the difference in price. "Haihua" is the only restaurant offering vegetarian menus. Free discussion time will be held in Room# after dinner on the first day. These are good opportunities to talk with faculty members and students from other labs, and to continue discussions. The staff will also supply some drinks and snacks at room#305. A breakfast ticket is provided when you check-in. floor of the hotel from 7:00. Breakfast is served at "Coccolare" on the 2 nd In the case of students, the chief of each room (as mentioned before) should checkout before Tutorial-II is opened (8:30) on the second day. Only extra charges such as phone calls should be paid out of your own pocket. All rooms will be locked after Tutorial-II starts. In the case of staff, each person should pay all fees in the same manner as standard travel. EMERGENCY CONTACTS Yasuhiko Nakashima (Program Organizer): Junko Tamego (Awaji Yumebutai International Conference Center): The Westin Awaji Island: Bus Dispatcher (Sankyo Unyu):

232 MAPS Awaji Yumebutai International Conference Center Reception Hall B 222

233 付録 4 ポスターセッション案内パネル 223

234 付録 5 ポスターセッション投票パネルと投票結果 224

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