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1 東日本大震災 巨大津波の実像 東北地方太平洋沖地震 - 海底地形 堆積物に残された痕跡及び津波を巨大化させた沿岸沈水地形 - 原口強 ( 大阪市立大学 ) 1 東日本大震災の地震, 津波のメカニズム, 津波被害の実態 2 堆積物に残された痕跡 3 海底地形に残された痕跡 4 津波を巨大化させた沿岸沈水地形 国土地理院 平成 23 年 3 月 11 日 14 時 46 分 東京大学井手哲氏より東京大学プレスリース 気象庁 東北地方太平洋沖地震の強震動 宮城県築館 ( 震度 7) 極めて強い揺れ ( 最大 3000 ガル弱 ) 重力加速度の 3 倍 - 宮城県築館 K-NET 観測点 ( 独 ) 防災科学技術研究所 HP より 6 1

2 水平移動 : 最大 530cm 沈降 : 最大 120cm 速度波形と応答スペクトル木造家屋の被害に直結する周期 1~2 秒前後の応答が 100cm/s 程度以下と小さく 兵庫県南部地震の鷹取や葺合地点 (200~300cm/s) の半分以下であった ( 東大地震研 HP より, 古村による ) 気仙沼湾沿岸 満潮時に岸壁に海水があふれる 地盤の沈降 1) 震源より海溝よりにすべりの中心 2) 断層面は最大約 60m すべった 3) 震源付近で 10m 以上隆起 余効変動 プレートの西進速度 8cm/ 年の 年分が滑った 国土地理院 ( 国土地理院 2

3 りきな2013/7/19 余効変動 余効変動 数年から数十年かけて隆起する? ( 鷺谷 2012) 津波 古村ほか東大地震研 03/11 03/12 03/13 末か契和歌に語り継がれた津波! のた 松山身に袖をしぼりつつ波越さじとは末の松山 気象庁 清少納言の父 清原元輔が詠み 百人一首にも採られた和歌宝国寺の丘にある末の松山の歌枕の場所で津波は止まり 869 年の貞観地震時には多賀城南門前まで津波が着たとの記述がある 3

4 貞観地震は大災害時代のはじまり? 古文書に記されていた大津波 古文書に書かれていた大津波! 869 年貞観地震津波 18 年後関東で大地震 貞観津波 887 年南海地震津波 気仙沼市の要請で気仙沼湾の緊急調査 M9 の可能性はあったが,, 防災計画には反映されてなかった! 4

5 探査船舶 海上自衛隊の支援で実施 朝日新聞 東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループから引用 言葉を失う被害波源位置は? 地形の違い? 防護施設の功罪? 津波の正体? すべての津波浸水域のマッピング 2 カ月間, 約 8000km の現地調査 浸水深痕跡高遡上高 5

6 防災担当者への無償配布被災地行脚 (11 月 19 日 12 月 6 日 ) 田老 堤防の功罪 ( 過信が生んだ悲劇 ) 堤防により津波高は 1/3 に低減堤防を越流して市街地は全滅した 14m 9-12m 11-12m 7-9m 破堤 13-15m 20m 28m 6

7 津波防災宣言都市だったが 津波が明治 昭和 そして今回 中心市街地を壊滅させた! 蛸の浜から峠を越えた津波 5-8m 20m 20m 5-8m 20m 3-6m 宮古湾 12-15m 3-6m 7-13m 20-29m 鍬ヶ崎地区 : 蛸の浜から峠を越えた津波と宮古湾からの津波が合流 ( 水会い ) 12-15m 6-9m 浄土ヶ浜 大槌町吉里吉里 大槌町浪板海岸 大槌町 ( 役場職員 35 人が津波で犠牲!) 16-18m 17-19m 加藤町長は地震の後, 役場庁舎の外にテントを張って防災会議をしていた. そこへ津波が押し寄せた. 東梅副町長は津波に気づいて 5 階の屋上まで走って逃げ 加藤町長が 2 階まで上がった姿を見た. しかし町長は津波にのみこまれ,3 月 20 日国道 45 号バイパス付近で遺体で発見された. 大槌町職員の 35 人が犠牲, 町の機能が麻痺した. ( 東日本大震災の教訓 村井俊治著より ) 7

8 大槌町市街地 釜石市鵜住居地区 9-10m 11-13m 15-19m 教育で子どもたちが身につけた対応力が 想定外 を乗り越えさせた 釜石東中学校 5-6m 釜石の悲劇 となった可能性もなぜ海岸沿いの低地に学校があったのか? なぜ 裏山への避難路がなかったのか? 鵜住居小学校 6-10m 8-11m 7-9m 30m 避難所 破壊した湾口防波堤 最大水深 63m 北 990m 南 670m 30 年 工費 1200 億以上 約 1km さらに避難 9-11m 28m ( 中央防災会議, 国交省提出資料 ) 釜石市街地 5-6m 8-11m 8

9 釜石港と大型貨物船 ( 長さ 100m) 中心市街地が全滅した 陸前高田市街地 15-17m 13-15m 13-15m 10-13m 壊滅的な被害を受けた陸前高田市街地 市民会館 市役所 写真提供 : 東海新報社 陸前高田市役所付近 (3/27) 陸前高田市役所付近 本多文人氏撮影 県立高田病院 市立博物館市立図書館埋文整理室 市民会館 海と貝のミュージアム 岩手日報社 平成の三陸大津波 より 9

10 ハザードマップに避難所に指定されていた場所で津波に流された事例 読売新聞によると 40~50% という高率で指定避難所が津波に襲われた ワーストスリーは 陸前高田市の 68 か所中 35 か所 南三陸市の 78 か所中 31 か所 女川町の 25 か所中 12 か所が津波に流された ( 東日本大震災の教訓 村井俊治著より ) 5-6m 気仙沼湾と気仙沼大島 保存活動するも取り壊し 9-10m 17m 16-18m 11.5m 14.5m 17m 気仙沼市街地 10

11 11

12 南三陸町志津川湾 18m 15m 17m 13m 12m 13m 13m 15m 南三陸町 ( 町職員 20 人が津波による犠牲 ) 佐藤町長が町議会で閉会の挨拶をしているときに激しい揺れが起きた 町長や職員たちは役場の隣にある 3 階建の防災センターに移動した 地震から 10 分後に海の水が引き 海底の岩肌が見えた やがて津波が押し寄せ 防災センターの建物を濁流が襲った 佐藤町長以下職員 30 人が屋上にいた 津波は 3 階の屋上まで達した 10 人が丈夫な手すりにつかまった 残る人はフェンスと共に消えた 残った 10 人は 高さ 5m の 2 本のアンテナに登り無理やりぶら下がった その下を波が 7 回も押し寄せた ( 東日本大震災の教訓 村井俊治著より ) 大川小学校 : 全校児童 108 人のうち 74 人が死亡 行方不明 石巻市大川小学校 石巻市旧北上川流域 7.5m 3 月 11 日の大地震発生直後 同校教諭は児童に校庭への避難を指示し 誘導点呼を行った その後 迎えに来た保護者に児童を引き渡している途中 津波の危険があると判断 地域住民と教頭らが相談の上 高台となっている新北上大橋傍らの三角地帯に避難することを決めた 津波は三角地帯への移動中に児童や教職員を襲った 学校のすぐ裏に山があるが 地震による倒木の危険があったため 避難場所に適さないと判断された ( 時事ドットコム ) 12

13 雄勝地区 女川町 大型バスが公民館の上に乗る 15-16m 15-16m 21m 東側から峠を越えて津波は万石浦に達す 漂流船舶による橋梁 水門破壊が発生津波は水路に沿って内陸まで達する 石巻市 東松島市 5-8m 5-8m 牡鹿半島 菅原資料 石巻市震災直後 (AP 通信 ) 13

14 石巻 松島市 東松島市 東松島市 6-8m 2-3m 3m 2-3m 6-8m 野蒜 6-8m 6-8m 6-9m 松島市 平野に押し寄せる津波 塩竃市 2-3m 多賀城市 七ヶ浜町 2-3m 8-12m 5-6m 多賀城市 仙台市 5-6m 名取市 7-9m 岩沼市 7-9m 亘理町 7-9m 阿武隈川 14

15 新地町 8-14m 亘理町 阿武隈川 8-12m 宮城県 山本町 6-8m 福島県 相馬市 m 15-16m 7-12m 福島県 新地町 8-14m 南相馬市 相馬市 相馬市 福島県 福島県 南相馬市 南相馬市 広野町 半径 20km ライン いわき市 15

16 広野町 広野町 いわき市 3-5m 7-9m 北茨城市 4-6m 6-10m いわき市 北茨城市 4-6m 北茨城市 岡倉天心 六角堂も流出 高萩市 4-6m 3-5m 4-6m 日立市 日立市 東海村 3-6m ひたちなか市 3.5-5m 東海村 4-7m 3.5-5m 16

17 大洗町 3-5m m 3-5m m m 3-4m 5-8m 飯岡漁港 3.5-5m 2m 3.5-5m 1-1.5m 1.5m 17

18 0.5-1m 10m 20m 0.5-1m m 東京大学地震研究所第 836 回談話会 堆積物に残された過去 6000 年間の三陸海岸大槌地域の津波と地殻変動の履歴 原口強 ( 大阪市大大学院理学研究科 ) 島崎邦彦 ( 東京大学地震研究所 ) 地殻変動 沈降し続ける? 三陸海岸 潮汐観測 ( 毎時潮高 ) データより 18

19 TS02 TS10 TS10 TS10 TS10 19

20 TS10 大槌湾の成果 1 日本で初めて 現世内湾から津波堆積物が採取 2 過去 6000 年間の地層中から, 少なくとも 22 枚の津波堆積物を採取 3 コア上部過去 2000 年間の 16 枚はデルタの最前面に堆積した粗粒堆積物で,100~150 年の再来間隔をもち, 歴史津波との対比が可能 4 コア下部は堆積時水深が 23m 以上と深く波浪限界水深以下で顕著な津波堆積物のみが保存された部分で 間隔 500~800 年 津波の常襲地域 明治以降の津波浸水域 311 東北津波 大槌町防災マップより 20

21 試料採取地点 100m 津波砂層 KR-1 約 年 600 年 550 年 350 年 500 年 イベント年代推定 ( 吉里吉里ジオスライサーサンプル ) 吉里吉里湿地の津波砂層と泥炭の分解 未分解部の繰り返し 荒浜測線液状化範囲速報 原口強大阪市立大学大学院理学研究科 貞観津波 1 地震後に液状化 噴砂地点付近は表面に砂が残る 2 津波により噴砂がながされ 表面は平滑化 3 地震後の地殻変動に伴う沈降により水没し 表面には 洪水粘土 状の泥が覆う 4 津波砂と液状化による噴砂の区分が今後の課題 21

22 液状化後に津波により砂が侵食表面が平滑化されている 1 地震後に液状化 噴砂地点付近は表面に砂が残る 2 津波により噴砂がながされ 表面は平滑化 3 地震後の地殻変動に伴う沈降により水没し 表面には 洪水粘土 状の泥が覆う 4 津波砂と液状化による噴砂の区分が今後の課題 Google map ( 撮影 ) 荒浜測線付近の液状化範囲 22

23 1960 年チリ津波後海底地形 第 1 回目調査 (2008 年 ) 海底地形 湾奥で堆積地形 湾奥東側で堆積地形 地盤高 (m) 狭窄部で侵食地形 地盤高 (m) 狭窄部で侵食地形 約 50 年経過 現在の汀線 1960 年チリ津波後地形 ( 高橋ら ) 25m メッシュで表現 5 津波による地形変化の比較 16-18m 5-6m 9-10m 11.5m 14.5m 気仙沼湾と気仙沼大島 17m 2010 年チリ津波では地形変動量が小さく 従来の地形を維持 2011 年東北津波では 従来の地形に対し調和的に大きく変動 2010 年チリ津波 変動量 (m) 堆積 2011 年東北津波 No.1 No.2 No.3 地盤高 (m) (m) 地盤高 (m) 0 0 チリ地震前 No.2 No.1 No.3 最大約 7.0m 侵食チリ地震後 東日本大震災前東日本大震災後 -5-5 チリ地震前 -5 チリ地震後 東日本大震災前 東日本大震災後 チリ地震前 -15 チリ地震後 東日本大震災前最大で2.8m 堆積 東日本大震災後 (m) (m) (m) 2010 チリ津波 海底地形変化は殆どない西側に小さい侵食域が見られる 2011 東北津波 2011 東側を中心に幅広く堆積し 深く抉るような侵食が生じて東北津波 おり 最大で約 西側に小さい侵食域 東側 2.8mとなっている 7m に小さい堆積域が見られる 17m 侵食 6 連続した澪筋の発達 湾奥から南南東方向に蜂ヶ崎に達し, 東に向きを変えたのち, ほぼ直線的に南方向に向かい, 最後は南東方向へ連続 大川河口部での堆積 大川河口部では幅広い堆積域が分布 2011 年東北津波の海底地形変化特性 3.11 津波後 変動量 (m) 堆積 大川 まとまった堆積域 高橋ら (1991) 1960 年チリ津波来襲時の流況結果 侵食 7 23

24 西湾湾口部の調査 波長 20m 波長 12m 波高 1.8m 波高 1m GPS 波浪計位置図 宮城県北部沖 岩手県南部沖の GPS 波浪計よる津波波形の計測結果 気仙沼湾 周期は 約 20~30 分程度 波高約 6.0m 第 1 波最大 波高約 6.0m 第 1 波最大 周期約 20 分 周期約 30 分 24

25 解析 : 菅原大助 湾口 気仙沼東湾 ( 唐桑 ) 0m 100m 気仙沼湾 広田湾 気仙沼西湾 ( 気仙沼 ) 湾口 東西の湾では海底地形が大きく異なる 0m 小泉海岸沖 志津川湾 100m 10km 20km 気仙沼湾口の天然の防潮堤が津波の浸入を軽減! 気仙沼湾は 最終氷期に形成された古気仙沼川が沈水した場所 鹿折川 天然の防潮堤 ( 潜堤 ) 大川 海底地形が津波の動的挙動に大きく影響 大川 鹿折川 大震災を生き抜くために 人は地震や津波では決して死なない 火山や地震は自然現象だが そこに人が住んでいるがゆえに災害になる 地震は制御も正確な予知もできない しかしハザードやメカニズムを知ることで 被害は軽減できる 阪神淡路大震災は圧死が殆どを占める 東日本大震災では水死が 9 割を越える 正しく恐れること が重要 そのためには自然現象の正しい理解が重要 25

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