報告にも示されている. 本研究では,S1P がもつ細胞遊走作用に着目し, ヒト T 細胞のモデルである Jurkat 細胞を用いて血小板由来 S1P の関与を明らかにすることを目的とした. 動脈硬化などの病態を想定し, 血小板と T リンパ球の細胞間クロストークにおける血小板由来 S1P の関与につ

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1 学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 伊井野潤子 論文審査担当者 主査窪田哲朗副査戸塚実, 小山高敏 論文題目 Platelet-derived sphingosine 1-phosphate induces migration of Jurkat T cells ( 血小板由来スフィンゴシン 1-リン酸は Jurkat T cell の遊走を促進する ) ( 論文内容の要旨 ) < 結言 > リゾリン脂質はさまざまな生理学的作用および病態生理学的作用に関与する脂質メディエーターである. 生体内にはスフィンゴシン 1-リン酸 (S1P), リゾホスファチジン酸 (LPA), リゾホスファチジルセリン (LPS), リゾホスファチジルイノシトール (LPI), リゾホスファチジルエタノールアミン (LPE) などさまざまなリゾリン脂質が存在しているが, 特に S1P および LPA についてはこの 10 年で研究が進み, 個体レベルで重要な役割を持つことがわかってきた. すなわち, 生体膜に派生し 種々の刺激に応じて産生 放出されるリゾリン脂質は強力な生理活性作用を有し, リンパ球や血管内皮細胞をはじめ様々な細胞種の受容体を介して, 細胞増殖, 細胞運動, 細胞分化など多彩な作用を及ぼすことがわかっている. なかでも S1P はリンパ球, 特に T リンパ球において遊走を促進することが明らかになっており, 最近では S1P シグナル伝達経路が多発性硬化症の治療のターゲットとなった. スフィンゴシンアナログ Fingolimod (FTY720) が, 多発性硬化症の治療薬として日本でも 2011 年に認可されている.FTY720 はスフィンゴシンキナーゼ 2 によって FTY720 リン酸となり S1P1 受容体を downregulation することで末梢血の循環リンパ球数を減少させる. このように S1P は治療薬としても応用され, 受容体特異的作動薬, および代謝関連酵素の阻害剤の新しい臨床応用が期待されている. 循環血中の S1P の由来は, おもに赤血球, 血小板, 血管内皮細胞であると考えられているが, 赤血球は定常状態での血漿 S1P 濃度を規定するのに対し, 血小板は活性化に伴って S1P を細胞外に放出すると考えられている. 血小板は S1P を生成するスフィンゴシンキナーゼ活性が高い一方 S1P を分解する S1P リアーゼ ( 開裂酵素 ) 活性を欠き,S1P を豊富に含有することが示されており ( リン脂質で補正後 ), このことは動脈硬化のような活性化血小板が大きく関与する病態に S1P が非常に重要な役割を果たす可能性を示唆している. 動脈硬化は慢性的な炎症と血栓の疾患であり, 血小板はアテローム形成に重要な役割を担っているが, 最近ではこの過程に T 細胞の関与も示された. 動脈硬化病変には早期から T 細胞が存在し病変の進展に伴って数が増加すること, 病変の T 細胞のほとんどは CD4 陽性 T 細胞であり, そのサブセットにも特徴があることなどがあげられる. さらにその重要性は, 動物モデルにおいて CD4 陽性 T 細胞の移行が病変を悪化させること, また apoe 欠損マウスで CD4 陽性 T 細胞の欠如により, 動脈硬化病変が小さくなることという - 1 -

2 報告にも示されている. 本研究では,S1P がもつ細胞遊走作用に着目し, ヒト T 細胞のモデルである Jurkat 細胞を用いて血小板由来 S1P の関与を明らかにすることを目的とした. 動脈硬化などの病態を想定し, 血小板と T リンパ球の細胞間クロストークにおける血小板由来 S1P の関与について, 他のリゾリン脂質と比較しながら検討を行った. < 対象と方法 > Jurkat 細胞株 :10% ウシ胎児血清,1% 抗生剤加 RPMI 1640 を用いて培養した. 血小板刺激上清の作成 : 同意が得られた健常成人よりクエン酸採血し, 血小板を分離した. 血小板を洗浄後 個 /ml に調整しコラーゲン 20 μg/ml で 15 分間刺激後,10000 rpm 1 分遠心して上清を得た. S1P および関連脂質の測定 :S1P を抽出後, オルトフタルアルデヒド (OPA) プレカラム誘導体化 HPLC 法により S1P 濃度を測定した. リン脂質,LPA,LPC 濃度は Hitachi 7600 を用いて酵素法により測定した. 受容体発現の確認 :RNA を抽出し,RT-PCR 法にて S1P および LPA 受容体を確認した. また,flow cytometry 法にて S1P1 受容体の発現を確認した. modified Boyden s chamber 法 :8 μm ポアサイズの Transwell cell culture chamber を用いて, 遊走作用を評価した. 上層には /ml の Jurkat 細胞 100 μl, 下層に agonist (S1P,LPA, LPI,LPS, 血小板刺激上清, 血清 ) 600 μl を加えた.4 時間後, 下層の Jurkat 細胞を回収し flow cytometry で細胞数をカウントした. < 結果 > 血小板刺激上清中の S1P および関連脂質の濃度 : コラーゲンによる血小板刺激上清中の S1P 濃度は 0.36 ± 0.11 μm であった. 代謝関連脂質であるリン脂質,LPA,LPC 濃度は, それぞれ ±1.96 μm,0.45 ± 0.21 μm,4.0± 1.41 μm であった. Jurkat 細胞上の S1P 受容体および LPA 受容体の発現 :mrna レベルで S1P1 から S1P4, LPA1 から LPA4 の発現が認められ, S1P5 はほとんど検出されなかった. タンパクレベルで S1P1 の発現も確認した. S1P および活性化血小板による Jurkat 細胞の遊走作用と阻害実験 : 1) S1P および関連脂質による細胞遊走 S1P 濃度 10 nm から 100 nm で最も遊走が認められた.100 nm による遊走は百日咳毒素で阻害され, また VPC23019 により 20 μm で約 25%,50 μm で約 75% と濃度依存的に阻害された.S1P 以外の関連脂質 (LPA LPI LPS)100 nm では遊走は認められなかった. 2) コラーゲン刺激血小板上清による細胞遊走血小板刺激上清の 10 倍希釈濃度で最も遊走が認められ, この遊走は上清を煮沸しても観察された. さらにこの遊走は百日咳毒素で阻害され,VPC23019 により 50% 程度阻害された. 血清による Jurkat 細胞の遊走作用と阻害実験 : 血清 10 倍希釈濃度, 血清 100 倍希釈濃度,S1P 100 nm の順で遊走が認められ, 血清 100 倍希釈濃度,S1P 100 nm による遊走は VPC23019 により有意 - 2 -

3 に抑制された. 血清 10 倍希釈濃度では遊走は阻害されなかった. < 考案 > 今回は S1P の種々の作用の中でも特に細胞遊走機能に着目し, 活性化血小板上清中の S1P が T リンパ球 (Jurkat cell) に及ぼす作用を確認した. 血小板刺激上清中には, 細胞遊走作用が報告されている脂質メディエーター S1P,LPA が存在していた. 既報では,108 個の未刺激血小板中に S1P が 141±4 pmol 含有するとされており, 今回の結果から血小板中に蓄えられた S1P の約 51% が細胞外に放出されるといえる. これはコラーゲンが強力な血小板アゴニストであることを考えると妥当なものである. さらに過去の報告から血清 S1P 濃度と血漿 S1P 濃度の差が活性化血小板によるものであると考えると, 今回の結果 ( 血小板刺激上清中の S1P 濃度 ) はそれと一致している. 動脈硬化など血管内局所で炎症が起こる病的な状態では, 血小板が炎症部位に集積して活性化することが予想されるが, 病態形成に関与するリンパ球および種々の細胞 ( 血管内皮細胞 マクロファージ 血管平滑筋細胞 ) は, このような遊走を引き起こす S1P 濃度にさらされることが想定される. S1P,LPA は主に細胞表面の受容体を介して作用するが,Jurkat 細胞上には mrna レベルで受容体が発現していた.S1P1 はタンパクレベルでの発現も認めた. しかし Jurkat 細胞は LPA ではなく S1P で細胞遊走を認めた (100 nm). この遊走は,Gi を阻害する百日咳毒素, S1P1 および S1P3 の antagonist である VPC23019 で抑制され,S1P が主に S1P1,Gi を介した経路で細胞遊走を引き起こすという過去の報告と合致した. 一方, 血小板刺激上清でも遊走が起こり, この遊走は上清を煮沸しても観察されたことからタンパク質ではなく脂質の関与が示唆された. さらに血小板刺激上清中の S1P 濃度を換算すると,S1P による遊走濃度と一致し, 百日咳毒素, VPC23019 で抑制された. これまで Jurkat 細胞上には mrna レベルで S1P1 から S1P4, ヒト T リンパ球では主に S1P1 と S1P4 の発現が報告されている. 今回の実験からは他の受容体の関与も完全に否定できないが, VPC23019 による実験から S1P1 および S1P3 の関与が考えられ, おそらくヒト T リンパ球においては S1P1 が大きな割合で血小板刺激上清による遊走に関与していると考えられる. 以上の結果, 血小板由来 ( および血清由来の ) S1P が主に S1P1 を介して Jurkat 細胞 (T リンパ球 ) の遊走を引き起こす可能性が示された. 血清における遊走も VPC23019 により抑制されたが, 含有する S1P 相当量に対する遊走と阻害の程度を考察すると,S1P 以外にも多くのタンパク質や脂質が関与する可能性を示唆しており今後の検討課題である. 今回の結果は,T リンパ球の遊走を引き起こす血小板由来 S1P が, 動脈硬化のような局所的に血小板が集積する病態において, 促進的に関与することを示唆している. Jurkat 細胞が最も遊走を引き起こした S1P 濃度とコラーゲンによる血小板刺激上清中の S1P 濃度が一致したことは, それをさらに裏付けるものである. また動脈硬化以外でも, 血小板とリンパ球の細胞連関については種々の報告があり, これらの病態形成にも S1P が関与している可能性は十分に考えられさらなる検討が必要である. これまで S1P による T リンパ球の遊走作用は, 多発性硬化症の治療薬である免疫抑制剤 FTY720 の出現により注目されてきた. しかし, 循環中におけるリンパ球の重要な調節系というだけでなく, 局所での S1P 濃度の増加による T リンパ球の遊走が病態形成に関与する可能性は新しい知見 - 3 -

4 といえる. 今後, 受容体や代謝関連酵素を標的とした研究により, 血小板とリンパ球が連関するような疾患に対する新しい治療, 創薬の開発が期待される. < 結論 > 今回の知見により, 血小板由来 S1P が S1P 受容体 S1P1 を介して T cell の遊走を引き起こすことが示唆された. 動脈硬化のような血小板と T リンパ球の細胞間クロストークが起こる病態形成に,S1P は重要な分子として介在する可能性がある

5 論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4826 号伊井野潤子 論文審査担当者 主査窪田哲朗 副査戸塚実, 小山高敏 ( 論文審査の要旨 ) 学位審査論文 Platelet-derived sphingosine 1-phosphate induces migration of Jurkat T cells. (Lipids in Health and Disease 2014 年第 13 巻に掲載 ) について審査した 生体内にはスフィンゴシン 1-リン酸 (S1P), リゾホスファチジン酸などのリゾリン脂質が存在し, リンパ球や血管内皮細胞をはじめ様々な細胞種の受容体を介して, 細胞の増殖, 運動, 分化などの多彩な作用を及ぼすことがわかってきた 循環血中の S1P は, おもに赤血球, 血小板, 血管内皮細胞に由来するが, 赤血球は定常状態での血漿 S1P 濃度を規定するのに対し, 血小板は活性化に伴って S1P を細胞外に局所的に放出すると考えられている 動脈硬化は慢性的な炎症と血栓による病態であり, 血小板はアテローム形成に重要な役割を担っているが, 最近ではこの病態形成に CD4 陽性 T 細胞も関与することが示唆されている そこで本研究は, ヒト T 細胞株 Jurkat 細胞を用いて, その遊走における血小板由来 S1P の効果を明らかにすることを目的として行われた まず,Jurkat 細胞には S1P の受容体 S1P1 が発現していることが,mRNA レベルおよび蛋白レベルで確認できた Boyden chamber 法によって Jurkat 細胞の遊走を評価したところ,10 nm から 100 nm の S1P の添加によって遊走亢進が認められ, それは S1P1 に会合する Gi 蛋白を阻害する百日咳毒素, および S1P1 アンタゴニスト VPC23019 により阻害された 血小板をコラーゲンで刺激した上清によっても Jurkat 細胞の遊走が認められた 活性化血小板上清による遊走効果は, 上清を煮沸しても観察されたことから, 蛋白質ではなく脂質によるものと考えられ, さらに百日咳毒素および VPC23019 により阻害される傾向を認めたことから,S1P による効果である可能性が強く示唆された 以上の結果は, 動脈硬化の病態形成に血小板と T 細胞のクロストークが関わっていることを裏付けた点で独創的であり, しかも, 将来のさらなる病態解明と治療法の開発に結びつく重要な情報を提供している点で価値が高いと考えられた ( 1 )

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al. 氏名 ( 本籍 ) 田辺敦 ( 神奈川県 ) 学位の種類博士 ( 学術 ) 学位記番号学位授与年月日学位授与の要件学位論文題名 甲第 64 号平成 28 年 3 月 15 日学位規則第 3 条第 2 項該当 RNA ヘリカーゼ YTHDC2 の転写制御機構と癌転移における YTHDC2 の 役割についての解析 論文審査委員 ( 主査 ) 佐原弘益 ( 副査 ) 村上賢 滝沢達也 代田欣二 論文内容の要旨

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