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1 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 論 説 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 共通の視座の構築をめざして 宮澤 俊昭 Ⅰ 問題の所在 Ⅱ 議論の現状 (1) 民法学における議論 ( ア ) 並列的基本法論 ( イ ) 重複的基本法論 ( ウ ) 憲法基底的重層論 ( エ ) 複眼的基本法論 (2) 憲法学における議論 ( ア ) 新無効力説 ( イ ) 基本権保護義務説 ( ウ ) 私法の一般条項の合憲限定 ( 拡張 ) 解釈説 ( エ ) 個人の尊厳と憲法的公序説 Ⅲ 議論の整理のための視角 (1) 現在の議論の問題点と課題 (2) 議論の整理の視角 (3) 問題関心の非対称 (4) 本稿における議論の整理の主たる視角 どこからくるのか 153

2 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) Ⅳ 民法と憲法の関係の議論の整理 五つの類型 (1) 前国家的な秩序を基礎として民法の内容が形成されるとする構成 ( ア ) 国家と社会の構成原理を並列させる構成 ( イ ) 国家と社会の構成原理を重複させる構成 ( ウ ) 国家が憲法による制約と私法秩序による制約を受けるとする構成 (2) 憲法を基礎として民法の内容が形成されるとする構成 ( ア ) 基本権保護義務論を基礎とする構成 ( イ ) 憲法を頂点とする国法秩序を基礎とする構成 Ⅴ 具体的検討 (1) 民法 2 条の意義 ( ア ) 問題の所在 ( イ ) 五つの類型からの分析 (2) 私人間の法律関係における条約の位置付け ( ア ) 問題の所在 ( イ ) 五つの類型からの分析 Ⅵ 今後の課題 Ⅰ 問題の所在 民法と憲法の関係については かつては 我妻説 1) のような例外を除き 公法私法二元論のもとで 民法と憲法を並列して考えるのが一般的であった これに対して 現在では 民法学 憲法学のいずれにおいても 単純な公法私法二元論とは異なる枠組みのもとで 両者の関係を論じる見解が有力に主張さ 1) 我妻栄 新訂民法総則 2 頁以下 ( 岩波書店 1965 年 ) 同 民主主義の私法原理 民法研究 Ⅰ 1 頁 ( 有斐閣 1966 年 初出 1949 年 ) 同 新憲法と基本的人権 民法研究 Ⅷ 89 頁 ( 有斐閣 1970 年 初出 1948 年 ) 等 154

3 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 れている 2) しかし この問題については 民法 憲法その他多くの法領域に関わる問題であるにもかかわらず それぞれの法領域を超えた議論の整理がなされているとはいえない状況にある そのため 議論の状況についての共通の視座が形成されていないといわざるをえない 以上のような問題意識のもと 本稿においては 民法と憲法の関係について 法学における共通認識を形成することを目的として 現在示されている見解を幾つかの類型に整理したうえで分析を加える 以下 Ⅱにおいて 民法と憲法の関係について主張されている見解を概観したうえで Ⅲにおいて 整理 分析の視角を提示し Ⅳにおいて 現在の議論をいくつかの類型に分けて整理を行う この整理を元にして Ⅴにおいて それぞれの類型のもとで示される具体的な帰結について 民法 2 条の意義 および私人間の関係における条約の位置づけを題材として検討を加える なお 本稿においては 現在の議論を整理し それぞれの見解から導かれる ( であろう ) 帰結を示すことを主たる目的とする そのため いずれの見解を取るべきかについて 積極的に論じるものではない 3) Ⅱ 議論の現状 (1) 民法学における議論民法学における議論は 直接に民法と憲法の関係そのものを問う見解を中心 2) 学説の整理について 山本敬三 憲法 民法関係論の展開とその意義 民法学の視角から (1)(2) 法セミ 646 号 17 頁 同 647 号 44 頁 (2008 年 ) 宮澤俊昭 国家による権利実現の基礎理論 なぜ国家は民法を制定するのか 12 頁以下 ( 勁草書房 2008 頁 ) 参照 3) 後掲 Ⅱ(1)( エ ) に示す通り 筆者自身も一つの見解を示しているため 筆致に影響を及ぼしている可能性を否定できないが 本稿においては ( 少なくとも筆者の主観では ) 学問的誠実さを持って客観的に分析 整理を遂行する 155

4 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) として展開されている 4) ( ア ) 並列的基本法論 ( 星野英一説 ) 星野英一は 国家と市民社会の分離が今日でも妥当していることを前提として 民法と憲法の関係を論じる 5) すなわち 民法は 市民社会の法( 私人間の法 ) として現代社会の基本的な在り方を規定している法であるのに対し 憲法は 国の基本的な在り方 及び国と私人の間の関係を規定している法である とする そして 憲法 民法その他すべての法律を超える自由 平等 さらには博愛と連帯といった全法律の指導原理があり その指導原理が国家との関係における構成原理 (constitution) として現れたのが憲法であり 社会との関係における構成原理として私人間の関係を規律する法として現れたのが民法であるとする この見解のもとでは 民法と憲法は いずれも同じ実質的価値を認めるものであり それぞれの領域において その実質的価値を実現しているものと理解される ( イ ) 重複的基本法論 ( 大村敦志説 ) 大村敦志は 民法が社会の構成原理となるとする一方で 憲法が 国家の構成原理となるだけでなく社会の構成原理ともなる という見解を示す 6) 4) 学説の整理については 前掲注 2 に示す文献を参照 5) 以下 星野英一の見解の概要について 山本 前掲注 2) ( 上 ) 20 頁以下 宮澤 前掲注 2) 12 頁以下参照 詳細につき 星野英一 民法と憲法 同 民法のもう一つの学び方 20 頁 ( 有斐閣 2002 年 初出 1994 年 ) 同 民法のすすめ ( 岩波書店 1998 年 ) 参照 6) 以下 大村敦志の見解の概要について 山本 前掲注 2) ( 上 ) 21 頁以下 宮澤 前掲注 2) 14 頁以下参照 詳細につき 大村敦志 民法総論 128 頁 ( 岩波書店 2001 年 ) 同 大きな公共性から小さな公共性へ 同 新しい日本の民法学へ 438 頁 ( 東京大学出版会 2009 年 初出 2004 年 ) 同 民法 条 < 私 >が生きるルール 35 頁以下 頁 ( みすず書房 2007 年 ) 156

5 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 このような見解をとる前提として 私権 について 次のような理解が示される すなわち 私権には 財産権や身分権といった私法上の権利に加えて 表現の自由 思想信条の自由など 憲法で自由権と呼ばれている 市民的自由 も含まれるという理解である このような私権の理解のもとで 民法 憲法の双方に属する 市民的自由 を媒介として憲法の領分と民法の領分が重なり合うとする そして このような重なり合いを認めたうえで 憲法も民法もそれぞれにそれぞれの役割を果たすと考えるべきとする 以上のような理解のもと まず 民法について 民法というスタイルの社会構成原理を持つことそのものの意義が強調される すなわち 民法 を持つという 思想 私人間の関係を 権利義務を中核として構成される法規範によって規律するということそのものの正統性を主張することにほかならない を意識的に選択することが主張される 他方 憲法については 国家の構成原理であるとともに 社会の構成原理としての役割をはたすとされる この理由として 国家が個人の自由を侵害してはならないとすれば 様々な社会集団も個人の自由を侵害してはならないはずであることが示される このように社会の構成原理として併存することになる憲法に対して 民法は 1 憲法規範を社会に内在させるためのメカニズムの提供 2 事実や社会通念を参照する形での憲法規範の実質化のための知的資源の提供という形で 役割を果たすものとされる また 積極的な社会の在り方を構想するために 憲法は 大きな公共性 の実現を目指す営みであるところの国家レベルでの 政治 の仕組みを設定するのに対して 民法は 小さな公共性 として 日々の個別の問題の解決を通じて 少しずつ あるべき社会を構成していく具体性を持つところに本分があるともされる 7) 7) 大村 前掲注 6) 民法 条 99 頁は 憲法の規定の有無にかかわらず より良いと思われるルールや考え方を民法は探し出さなければならないとする 157

6 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) ( ウ ) 憲法基底的重層論 ( 山本敬三説 ) 山本敬三は 並立的基本権論 重複的基本権論に対して 民法も国家法である以上 法体系上の階層構造のもとでの上下関係があることを無視することはできない という批判を示す 8) すなわち 民法は国家法としての性格を持つ以上 国家の基本法としての憲法による拘束を受けるので 国家と社会の単純な二分論に基づいて民法と憲法を振り分けることはできない そのため 国家と社会を構成する法 (constitution) を考えるのであれば 憲法が 国家 社会のいずれの体制も規定しているとみるべきであるとされる このような国家 社会の基本法としての憲法は 国家の基本組織を規定し その活動を規制する法とされる そして 日本国憲法は そうした国家の活動に関する根本原理として個人に基本権を認め 国家の運営を国民の民主的決定に委ねるという基本決定をしている ここから 国家には 三つの責務が課されることになる 第一は 国家自身による侵害からの基本権 ( 憲法上の権利 ) の保護である ( 介入禁止 ) 国家は 侵害を正当化するのに足りるだけの十分な理由がない限り 個人の基本権を侵害してはならない 第二は 他の市民による侵害からの保護である 国家は 個人の基本権を他人による侵害から保護しなければならない ( 国家の基本権保護義務 ) この国 8) 以下 山本敬三の見解についての概要として 山本 前掲注 2) ( 上 ) 19 頁以下 宮澤 前掲注 2)29 頁以下参照 詳細につき 山本敬三 現代社会におけるリベラリズムと私的自治 (1)(2 完) 論叢 133 巻 4 号 1 頁 同 5 号 1 頁 (1993 年 ) 憲法と民法の関係 法教 171 号 44 頁 (1994 年 ) 同 基本法としての民法 ジュリ 1126 号 261 頁 (1998 年 ) 谷口知平 = 石田喜久夫編 新版注釈民法 (1) 総則 (1) 改訂版 225 頁 山本敬三執筆 ( 有斐閣 2003 年 ) 山本敬三 憲法による私法制度の保障とその意義 ジュリ 1244 号 138 頁 (2003 年 ) 同 基本権の保護と私法の役割 公法 65 号 100 頁 (2003 年 ) 同 憲法システムにおける私法の役割 法時 76 巻 2 号 59 頁 (2004 年 ) 同 契約関係における基本権の侵害と民事救済の可能性 田中成明編 現代法の諸相 3 頁 ( 有斐閣 2004 年 ) 同 民法と他領域 (1) 憲法 内田貴 = 大村敦志編 民法の争点 8 頁 ( 有斐閣 2007 年 ) 等参照 158

7 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 家の義務の根拠として 基本権を 国家からの自由 に限定する立場を突き詰めれば 国家は不要となるはずであり 国家に存在意義を認めるのであれば 少なくとも個人の基本権を他人による侵害から保護することを国家の最低限の任務と認める必要がある という根拠が示される 第三は 国家の基本権支援義務である 国家は 個人の基本権がよりいっそう実現できるように様々な給付を提供したり 各種の制度を整備したりすべきである 以上の三つの国家の責務を基礎として 民法には 次の三つの役割が課されるとされる 第一の役割は 憲法のもとで概括的な方向が示されるにとどまっている基本権の内容を 市民相互間で問題となる状況に即して具体化し その内容を特定することである 憲法 29 条に基づく財産権 憲法 13 条の幸福追求権 ( 人格権 ) を具体化することが示される 第二の役割は 基本権を他人による侵害から保護するための制度 ( 不法行為法 物権的請求権 合意の瑕疵に関する制度 不当利得制度等 ) の整備である 第三の役割は 個人の基本権をより良く実現できるよう支援するための制度 ( 代理制度 家族制度 ) の整備である このように 基本権の保護 支援を民法の目的とするこの見解においても 民法には憲法のみに尽くされない独自性があるとされる すなわち 基本権の内容の具体的な形成 及び基本権の保護や支援の方法には様々な可能性があるため 基本権の保障体制をどのような枠組みで構成し その内容をどのような方針で形成するかについて 多くの基本決定をする必要がある この基本決定を 私法の領域において行う法が民法である とされる ( エ ) 複眼的基本法論 ( 宮澤俊昭説 ) 宮澤俊昭は 民法と憲法の関係を論じる際に 1 憲法に対する民法の独自性 自律性と 2 法体系における階層構造上 民法が憲法の下位規範となることを 159

8 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 整合的に説明することが必要となるとする 9) そのうえで 既存の見解について次の指摘を示す すなわち 並立的基本法論 重複的基本法論は 1を肯定できるが それと2を整合的に説明する理論を提示していない 他方 憲法基底的重層論は 1に関して 憲法を基礎とすることと民法の独自性 自律性との間の整合的説明が不十分であり 2に関して 憲法学においても憲法理論としての正当性に議論のある国家の基本権保護義務論を基礎として基本法である民法を基礎付ける点に問題がある このような認識のもとで 1と2を整合的に説明するため 民法と憲法の関係を次のように整理する 近代立憲主義国家は 先行して存在する社会のために存在している 社会においては 私人間の関係において実力としての強制力を持って実現されるべきとされる規範の集合 ( 私法秩序 ) が自律的 自生的に形成されている しかし 立憲主義国家においては 私法秩序を現実に実現するために必要となる実力としての強制力が 国家によって独占されている そのため 私法秩序に含まれている規範の実現は 先行する社会のために設立され かつ実力としての強制力を独占する国家の義務となる 立法権 司法権 行政権に権力を分立させた国家では 司法権の属する国家機関による強制力の直接行使の基準を 立法権に属する国家機関によって法律として定める必要がある すなわち 私法秩序に含まれる規範の内容を 裁判規範としての国家法として制定する必要がある この意味で 国家は私法秩序に拘束される また この私法秩序による拘束は 司法権の属する裁判所にも及ぶ そのため 制定法化されていない私法秩序に含まれる規範の存在を理由とした法形成 および法制定時と裁判時の私法秩序の変化を理由とした法形成も 裁判所に一定程度認められる なお いずれの場合についても 裁判所は 憲法で定められた制限の枠内においてのみ活動し 9) 以下 宮澤俊昭の見解について 宮澤 前掲注 2) を参照 160

9 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 うるという意味での憲法による拘束も ( 私法秩序による拘束とは異なる性質を持つ拘束として ) 受けることになる 他方 社会における諸問題の解消のために社会への介入が一定程度是認されるようになった現代立憲主義国家のもとでは 自律的に形成された私法秩序の修正を行うことが認められる すなわち 私法秩序の含まれる規範 ( 社会において自律的 自生的に形成された規範 ) とは異なる内容を持つ裁判規範を制定することが可能となる ただし 私法秩序による国家の拘束が失われるわけではないので 国家は あくまでも 立法を通じて 私法秩序の修正という形で裁判規範の内容を定めなければならない そのため 1 前提となる私法秩序に含まれる規範を確定すること 2 私法秩序の核心を根本から否定する修正はできないこと 3 介入による修正の目的を明示し その目的に必要な限りの修正であることを示すこと 4 私法秩序に含まれる規範の果たしている機能を失わせないようにすること が求められる (2) 憲法学における議論以上 (1) で概観した民法学における議論に対応する憲法学の議論として挙げられるのが 憲法上の権利規定が私人間において効力を持つのか 持つとするならばどのように適用されるのか という問題についての議論 ( いわゆる私人間効力論 ) である かつては 無効力説 直接効力説 間接効力説の 3 説の対立のなかで 間接効力説が通説的見解であるとされてきた 10) すなわち 基本権 ( 憲法上の権利 ) の保障は憲法に特別の定めのない限り対公権力にのみ妥当するとする無効力説は 国家類似の 社会的権力 による人権侵害に対応できない また 基本権の保障は私人相互間にも妥当するとする直接効力説は 基本権が権利というよりも道徳的義務または法的義務に転化し 結局 私 を 10) 芦部信喜 ( 高橋和之補訂 ) 憲法第 6 版 110 頁以下 ( 岩波書店 2015 年 ) 佐藤幸治 日本国憲法論 164 頁 ( 成文堂 2011 年 ) 等 161

10 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 否定した全体主義に通じかねない そこで 基本権の保障は 直接には対公権力に妥当するが その制度の主旨に背馳するような行為は私法の一般条項等を通じて排除されるとする間接効力説が通説的見解と位置づけられてきた しかし 人権規定の適用について だれが ( 適用権限の問題 ) どこで( 当事者の主観的範囲の問題 ) 何を( 人権規定がどのような実体内容を有するのかという実体法理の問題 ) いかにして( 救済方法の問題 ) という四つの視角からの分析によって 直接適用説と間接適用説の対立にズレがあることを指摘した棟居快行の見解 11) が示されてから 従来の間接効力説の問題点が意識され 私人間効力論の理論構成をめぐる議論が活発になされるようになった 12) 現在 有力に主張されている見解は 次のようなものである ( ア ) 新無効力説 ( 高橋和之説 ) 高橋和之は フランス革命期に確立された次のような人権理論を 自らの見解の出発点とする 13) すなわち すべての個人が誰に対しても主張しうる自然権を有し この自然権を守ることが国家の目的となる この目的の実現のために 憲法が制定されることを通じて 国家が組織され 自然権が憲法上の権利として掲げられ その保護 尊重が命じられる そのため 憲法上の権利 11) 棟居快行 私人間適用 人権論の新構成 1 頁 ( 信山社 1992 年 初出 年 ) 12) 議論の整理として 君塚正臣 私人間における権利の保障 大石眞 = 石川健治編 憲法の争点 66 頁 ( 有斐閣 2008 年 ) 宍戸常寿 私人間効力論の現在と未来 長谷部恭男編 講座人権論の再定位 3 人権の射程 27 頁 ( 法律文化社 2010 年 ) 等参照 13) 以下 高橋和之の見解についての概要として 山本 前掲注 2) ( 上 ) 20 頁以下 宮澤 前掲注 2)17 頁以下参照 詳細につき 高橋和之 憲法上の人権 の効力は私人間に及ばない 人権の第三者効力論における 無効力説 の再評価 ジュリ 1245 号 137 頁 (2003 年 ) 同 人権の私人間効力論 高見勝利他編 日本国憲法解釈の再検討 1 頁 ( 有斐閣 2004 年 ) 同 私人間効力論再訪 ジュリ 1372 号 148 頁 (2009 年 ) 同 私人間効力論とは何の問題で 何が問題か 法時 82 巻 5 号 59 頁 (2010 年 ) 等参照 162

11 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 の名宛人は国家となる 他方 私人間における自然権の衝突の調整 ( 自然権の保護 ) は 民法と刑法を中心とする法律の制定を通じて行われる 以上のようなフランスモデルの論理構造は立憲主義的な憲法観 人権観から肯定的に捉えられる しかし 多元的な現代社会においては自然権思想を維持することはできない そのため 実定法上の人権 と区別された 実定法に論理上先行する 理念としての人権 ( 自然権 ) という概念を提示する これは 実定法に論理上先行するという意味では旧来の自然権と同じであるが 自然権に対応する人権を客観的な存在と捉えない点で異なるとされる そして この 理念としての人権 の根底には 個々人の自律的生を意味する 個人の尊厳 という道徳哲学的価値が位置づけられるとされる これは 個人の尊厳 が 前憲法的価値原理として全社会関係を基礎付ける根本的な価値原理であることを理由とする このような 理念としての人権 は すべての個人が有し かつ誰に対しても主張しうる この 理念としての人権 を尊重 保護することが 国家の目的となる 実定法秩序の最初に来る憲法は この 理念としての人権 を 憲法上の権利 として明確化することにより 国家にその保障義務を課し さらにその義務の遂行に際して国家が従うべき法的プロセスを規定している この法的プロセスの中心に立法 ( 法律の制定 ) があり 理念としての人権 は 法律による権利 義務の明確化を通じて実現される 民法は 刑法ともに 社会における 理念としての人権 保障のための法律の中心となる この見解のもとでは 個人の尊厳に裏打ちされた 理念としての人権 が 国家を名宛人として憲法に 私人間の関係を規律するために民法に それぞれの固有の法理論 方法論に基づいて実定化されると捉える そして このようにそれぞれに実定化された人権は 憲法においては対国家的権利として 民法においては私人間において認められる権利として それぞれ固有の役割を果たすことになる 憲法に実定化された人権は対国家的権利として実定化されたものであり 私人間への適用は認められない 163

12 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) ( イ ) 基本権保護義務説 ( 小山剛 松本和彦説 ) 小山剛 松本和彦等によって提示されているのが国家の基本権保護義務論を基礎とした見解である 14) この見解においては 国家 侵害者 被侵害者の三者からなる三面関係を想定し 加害私人と被害私人がそれぞれ対国家の関係をもつとする そして このそれぞれの対国家の関係において 国家の基本権保護義務と基本権侵害禁止義務を設定することにより それぞれの法的関係は憲法の効力のもとに置かれる 基本権侵害禁止義務とは 侵害者の基本権を侵害することを禁止する義務を言う 他方 基本権保護義務とは 侵害者による侵害から被侵害者の基本権法益を保護する義務をいう 15) このような基本権保護義務論では 私人間効力論について 次のように論じられることとなる まず 被害私人が国家に対して基本権法益の保護請求を行う 被害私人からの保護請求に対し 国家は 基本権保護義務に基づいて 被 14) 以下 国家の基本権保護義務論を基礎とした見解の概要として 松本和彦 基本権の私人間効力 基本権保護義務論の視点から ジュリ 1424 号 56 頁 (2011 年 ) 参照 詳細については 小山剛 基本権保護の法理 ( 成文堂 1988 年 ) 同 基本権の私人間効力 再論 法研 78 巻 5 号 39 頁 (2005 年 ) 同 私人間効力 を論ずることの意義 法研 82 巻 1 号 197 頁 (2009 年 ) 同 憲法上の権利か 自然権 か 法時 82 巻 5 号 56 頁 (2010 年 ) 松本和彦 基本権の私人間効力と日本国憲法 阪法 53 巻 3 4 号 269 頁 (2003 年 ) 同 基本的人権の保障と憲法の役割 長谷部恭男他編 岩波講座憲法 2 人権論の新展開 35 頁 ( 岩波書店 2007 年 ) 等参照 15) なお 憲法学において基本権保護義務論を主張する論者は 基本権と基本権法益を区別する すなわち 基本権保護義務に基づいて国家によって保護されるのは 基本権そのものではなく 基本権によって保障されているところの法益である この基本権法益は 客観的基本権法益と主観的基本権法益に区別される 客観的基本権法益とは それ自体が保護される物理的 理念的実体であり 人の生命 身体 人間の尊厳 信書の秘密 住居と言った客観的な法益を指す これに対して 主観的基本権法益とは 一定の事物領域における基本権の担い手の自己決定であるとされる ( 以上につき松本 前掲注 14) 基本権保護義務論の視点から 60 頁以下参照 ) 164

13 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 害私人の基本権法益に最低限度の保護を与えなければならない 他方 被害私人の基本権法益の保護は そのまま国家による加害私人の基本権制限となる 国家は 基本権侵害禁止義務も負うため この場面では 国家は 基本権保護義務と基本権侵害禁止義務の二つの義務を同時に履行することが求められる この状態は 過少保護の禁止と過剰介入の禁止という二つの禁止が国家に課されると表現される このように この見解によれば 被害私人 = 加害私人 = 国家という三面関係のもとで基本権保護義務 基本権侵害禁止義務を構想することにより 基本権の対国家性という前提 すなわち基本権の名宛人は私人ではなく国家であるという前提を堅持したまま 基本権の私人間における効力を論じうるとされる ( ウ ) 私法の一般条項の合憲限定 ( 拡張 ) 解釈説 ( 君塚正臣説 ) 君塚正臣は 私人間効力の問題とは 私人間の紛争における裁判所による憲法の下位法令である私法の一般条項の合憲限定 ( もしくは拡張 ) 解釈のことであり 通常の憲法解釈の延長にあるものとする 16) この見解では 前提として 憲法は 国家の内部および国家と国民の間を規律するものであるというべきであり 国家と無関係に 私人間に憲法上の権利関係があると考えることは基本的に誤りであるとする さらに 従来 私人間効力の問題として扱われてきた問題は 裁判所という国家権力に対して 憲法解釈によって侵害者の自由を制限するように求める場面の問題であるとする 以上から 次のような帰結が示される すなわち そもそも民法典や商法典などの私法は国家法なのであり 国家法としての私法が憲法の拘束から免れることはないと言わざるを得ず そうであるならば国家が関与する限り 私法関 16) 以下 君塚正臣の見解についての概要として 山本 前掲注 2) ( 上 ) 19 頁 宮澤 前掲注 2)27 頁以下参照 詳細につき 君塚正臣 憲法の私人間効力論 258 頁以下 ( 悠々社 2008 年 ) 参照 165

14 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 係においてもそこに憲法は妥当し 憲法的公序が認められることは確かである そのため 民法等の法律上の条規が 裁判所によって違憲無効と判断されることはもちろん考えうることになる このとき違憲無効とされるのは 当事者そのものや当事者の行為ではなく 当該法令である 当該法令が個別具体的な規定である場合には 法令違憲 適用違憲 一部違憲などの違憲判断がありうる しかし 民法 90 条 1 条 709 条のような私法の一般規定である場合 理論的には法令違憲ということもあり得るが 一般条項の包括性 一般性がそのような結論を導くことを事実上阻止している そのため 一般条項に関しては 法令違憲とされることはあり得ず 合憲限定 ( 拡張 ) 解釈のみが問題となりうる 私人間効力論の問題とは 私法の一般条項のこのような特殊性に帰着する問題であり 通常の憲法解釈と離れて論じるべきものではない 17) ( エ ) 個人の尊厳と憲法的公序説 ( 宍戸常寿説 ) 宍戸常寿は 憲法 13 条を価値原理規定として捉えたうえで 同条が私人間にも妥当 (Geltung) し さらに 憲法的公序として位置付けられる憲法上の規定も私人間でも妥当するとの見解を示す 18) 現在の憲法学においては 憲法解釈論の様々な場面で 人権を 規範により方向付けが確定された 権利 としてではなく 方向性の決定されていない 価値 として理解することが自明視されている そして 個人の尊厳が日本国憲法のコミットする最大の価値であり 憲法 13 条は 自然権を実定化した規定 17) なお 君塚 前掲注 16)269 頁では 憲法に先立つ自然法などの規範的事象を憲法 民法共通のメタレベルで考えることも 憲法制定権力の憲法制定に始まる日本国憲法の解釈として適切でない とされており 憲法が 憲法制定権力によって制定されることが前提とされている 18) 以下 宍戸常寿の見解について 宍戸 前掲注 12)39 頁以下 同 憲法解釈論の応用と展開 第 2 版 94 頁以下 ( 日本評論社 2014 年 ) 参照 166

15 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 であると説かれる 表現の自由 職業選択の自由等の個々の人権は個人の尊厳を何らかの意味で 具体化 したものと説明され また 憲法の明文に挙げられていない新しい人権も 憲法 13 条の解釈上の具体化によって 独立の憲法上の権利として導出される このような人権の価値的理解に基づいて 人権がなぜ私人間で効力を有するのか という問いに対して 個人の尊厳を保障する憲法 13 条は私人間においても妥当し 私法上の法源として認める というモデルが提示される 個人がお互いを尊重する責務を負うことは 一般に承認されるはずである しかし 個人がお互いを個人として尊重する ということが私人間で何を禁止し何を要求するのかという問題については 憲法 13 条の段階ではいまだ抽象的な要請にとどまるため 憲法 13 条の規範内容を私人間で 具体化 することが必要となる この具体化は 第一次的には民法を含む立法によってなされる しかし それが不十分である場合には 憲法 13 条に適合的な私法規定 ( 一般規定に限られない ) の解釈や 憲法 13 条からの直接の導出によってなされる このように考えると 価値原理規定としての憲法 13 条が私人間で妥当する限り 従来の間接効力説のように個々の人権規定について私人間効力を検討する必要はない たとえば 私人間における思想 良心の自由については 憲法 19 条の保障する対国家的権利が水平関係で効力を有するかどうかが問題となっているのではなく あくまで個人の尊厳の具体化としての思想 良心の自由が問題となる それに対する違法な侵害があったとみるべきかどうかは 他の私法上の原理法益との調整をも踏まえたうえで判断されるべきとされる 以上のような個人の尊厳に基づく憲法 13 条の私人間への妥当性に加えて 民主主義社会の基本的前提が侵害される場合に 個別の憲法上の権利規定が 憲法的公序 として私人間に妥当するものとされる たとえば 憲法学においては 表現の自由の民主主義的機能を重視して 優越的地位 を承認している この理解は 国家と社会を区別して人権を第一次的に防御権と理解することと容易に整合させることができない すなわち この前提 ( 自由主義的憲法観 ) を貫 167

16 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) くならば 自然権的自由 ( 国家からの自由 ) は その民主主義的機能の有無をインディファレントなものとして捨象したうえで すべて同列に扱われなければならないはずである そのため 表現の自由を他の人権と区別して扱う背後には 表現の自由が単なる国家からの自由を超えたものであり その民主主義的機能を保障することが憲法の課題である という前提が存在しているはずである このように表現の自由については その自由主義的機能だけでなく 民主主義的機能をも含んだ形で憲法の論理を構成すべきである 以上のような各論的検討を踏まえて 私人間効力論への解答を示すためには 憲法観の選択が重要であり そこでは 国家と社会の二分論を克服した 公共体の基本秩序 としての憲法観が 私人間効力を基礎付けるモデルを提供しているとされる ここでいう 公共体 とは 次のような理解に基づく概念である 19) 伝統的理解においては 現存する統一体としての国家と 現存する多様体としての社会を切り離して対置してきた しかし 現代では 社会的 生活は 国家 による組織的 計画的で責任になる形成がなければ不可能である 逆に 民主的 国家 は 社会的 協働作用において初めて成立する そのため 両者を切り離して理解することはできない そこで この両者を包含するものとして 公共体 という概念を用い 国家 という概念は 政治的統一形成を経て構築される諸権力の行為及び活動というより狭い意味で用いられるべきとされる なお 政治的統一形成とは 人間生活の現実において存在する多様の利害 思考 行動様式を 首尾よく統一的な行為や作用に結びつけていく過程とされる 普遍的一致に基づく調和的な状態を作り出すことを意味するのではなく ( 絶え間ない ) 紛争の存在を前提とし 状況の変化に適応した新たな形態を生み出し続けることを意味する そして 憲法は 公共体の基本秩序 として このような意味での 公共体 19) 以下 公共体 の理解について コンラート ヘッセ ( 初宿正典 赤坂幸一訳 ) ドイツ憲法の基本的特質 14 頁以下 ( 成文堂 2006 年 ) 参照 168

17 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 の内部における紛争の処理手続を規律し 政治的統一形成と 国家的活動のための組織及び手続を整序する このような憲法の規律は 婚姻 家族 財産権の形成や活動を含む非国家的な生活秩序の基盤にも及ぶ そして 憲法は 公共体の法的秩序全体を統一する一つの要素となる そのため 憲法は 実定憲法が私法を含む他の法領域から切り離すことを認めず また それらの法領域自体がバラバラに併存することも認めない 以上のような憲法観を採用するならば 私人間において 民主主義社会の基本的前提が侵害される場合には 個人の尊厳の妥当の是非とは独立した問題として 憲法的公序 が問題となる そして この憲法的公序に基づいて 憲法上の権利規定が私人間に妥当する場面が認められることとなる Ⅲ 議論の整理のための視角 (1) 現在の議論の問題点と課題現在 民法学における民法と憲法の関係の議論と 憲法学における私人間効力論は 相互に参照される場面がありながらも 両者がそれぞれ別個に議論されている そして この両者の関係は 必ずしも明確ではない 例えば 民法学における並列的基本法論 ( 星野説 ) と 憲法学における新無効力説 ( 高橋説 ) は 議論構造が類似しているが 自然法論にコミットするか否かという点で異なることが指摘されている 20) このほか 民法学においても 憲法学においても それを基礎とした見解が示されている基本権保護義務論の理解については 基本権 ( 法益 ) を主観的に捉えるか客観的に捉えるかという問題 あるいは立法と司法のそれぞれに課される基本権保護義務の性質の理解について 見解の相違がみられる 21) 20) 山本 前掲注 2) ( 上 ) 20 頁以下のほか 高橋和之 現代人権論の基本構造 ジュリ 1288 号 118 頁注 10(2005 年 ) も参照 21) 松本 前掲注 14) 基本権保護義務論の視点から 60 頁以下 同 62 頁以下参照 169

18 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) このように 民法学と憲法学との間で対応すると考えられている見解の内部においても異同のあることが示されている しかし これらの異同が議論の全体に対してどのような意味を持つのか さらには それぞれの見解内部の異同が他の見解との関わりでどのような意味を持つのか ということは明らかにされていない また 民法と憲法の関係については 憲法 29 条 1 項の解釈も重要な問題となる 22) しかし そもそも 民法学における議論においても 憲法学における私人間効力論においても この問題との関わりが明確に示されているとは言えない 以上に加え 民法学 憲法学のそれぞれが 他方における問題関心 問題意識を十分に理解できていないこと 23) にも鑑みれば 民法学と憲法学の議論を単純に接合させ 参照しあうのみでは 議論をさらに混乱させるばかりといわざるを得ない 議論の混乱を防ぎ 発展的 建設的な議論を進展させるために まず 民法学 憲法学に共通する考察の視角を設定したうえで 民法と憲法の関係にかかわる議論を整理し 相互の関係を明らかにすることからはじめるべきである (2) 議論の整理の視角以下での議論の整理 分析においては 前述 (1) で示したような意味での 22) 民法学からの近時の議論として 小山剛 = 山野目章夫 憲法学と民法学の対話 法時 81 巻 5 号 15 頁以下 (2009 年 ) 山野目章夫 財産権の規矩としての民事基本法制 企業と法創造 9 巻 3 号 159 頁 (2013 年 ) 水津太郎 憲法上の財産権保障と民法 所有権を対象として 法時 87 巻 1 号 97 頁 (2015 年 ) 水津太郎 = 宍戸常寿 = 曽我部真裕 = 山本龍彦 憲法上の財産権保障と民法 ( 前篇 )( 後篇 ) 法時 87 巻 2 号 99 頁 同 3 号 97 頁 (2015 年 ) など参照 23) 例えば 松本和彦他 座談会 私人間効力 ジュリ 1424 号 85 頁 大沢秀介発言 (2011 年 ) では 民法学における基本権保護義務論を論じることのメリットが問われている しかし その後の議論は この疑問に対する明確な認識を持って展開されているとは言えない ( 前掲松本他 85 頁以下参照 ) 170

19 共通の視角として 次の二つの視角を設定する 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 (a) 実定法としての条文 規範の内容は 何を根拠として定められ 解釈されるのか (b) 実定法としての条文 規範の内容は どのような法関係にどのように妥当するのか (a) は 条文 規範の内容が どこからくるのか という問題であり (b) は条文 規範の内容が どこへ行けるのか という問題である さらに 民法と憲法の関係についてみると (b) の視角は次のように分節化される ( フローチャート参照 ) 考察の視角 ( フローチャート ) (a) どこからくるのか (b) どこへ行けるのか ( ア ) 民法規範の内容が憲法規範の内容を形成するか ( 図 1) ( イ ) 憲法規範が私法関係に適用されるか すなわち (b) の視角については さらに ( ア ) 民法の条文 規範の内容が 憲法上の権利の内容を形成するのか という問題 ( 図 1 参照 ) と ( イ ) 憲法の 条文 規範の内容が 私法上の権利の成立や有効性を判断する際に適用される 1 国家機関が私法関係について判断する際に憲法規範の制約を受けるか ( 図 2) 2 私人間の権利義務関係の内容形成に憲法規範が適用されるか ( 図 3) 171

20 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) のか という問題に分けて考えることができる ( ア ) の具体例としては 憲法 29 条の解釈の問題が挙げられる ( 図 1) 私法 ( 民法 ) 規範 憲法規範 私法秩序 ( 憲法上の権利等 ) 内容形成? に基づく制限 私人 立法 行政 司法による国家作用 国家 他方 ( イ ) については さらに1 国家機関たる裁判所が判決等の司法作用を 行うに当たって 憲法規範に基づく制約をどのように受けるのか という問題 ( 図 2 参照 ) と 2 私人間の権利義務関係の内容を形成する際に 憲法上の権 利等の憲法規範が適用されるのか 適用されるとすればどのように適用される のか という問題 ( 図 3 参照 ) を区別できる 1の問題は 憲法上の権利の防御権としての性質に基づく制約であり 通常 の憲法解釈論に属するものと理解される ( 図 2 参照 ) これに対して2の問題は 私人が 憲法上の権利に基づいて 裁判所に対して国家作用を行うことを要求できるか 裁判所はそのような私人の請求に応答する義務を負うのか という問題である 24) すなわち 憲法上の権利に 防御権としての性質を超えた内実を付与するか否か という問題として設定される ( 図 3 参照 ) 24) この1の問題と2の問題の区別については 小山 前掲注 14) 論ずることの意義 197 頁以下 高橋 前掲注 13) 再訪 153 頁等を参照 172

21 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 ( 図 2) 私人 ( 図 3) 私人 私人 私人 憲法規範 ( 憲法上の権利等 ) に 基づく制限 権 利 義務 判決等の司法作用 国家 関 係 権 利 私法 ( 民法 ) 規 義 範に基づく内 務 容形成 関 係 憲法規範 ( 憲法上の権利等 ) 間接適用? 直接適用? 無適用? (3) 問題関心の非対称 ( 図 4) 以上 (2) で示したような視角から民法学 憲法学の議論を分析すると まず 次のような問題関心のズレを指摘することができる すなわち 民法学において民法と憲法の関係を論じる際には 主として 実 定法としての条文 規範の内容は 何を根拠として定められ 解釈されるのか ( どこからくるのか ) という (a) の視角から考察がなされている 例えば 山 本敬三が 民法と憲法の関係について 体系論 ( 体系構成の論理構造 ) と原理 173

22 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 論 ( その基礎におかれている原理 ) に着目をして議論を分析している 25) のは この問題関心が背景にあるためと考えられる これに対して (b) の問題に対する関心は大きなものとは言えず 積極的に論じられている状況にはない 26) 他方 憲法学においては民法と憲法の関係を論じる際の関心は 主として国家機関たる裁判所が判決等の司法作用を行うに当たって 憲法規範に基づく制約をどのように受けるのか という純粋な憲法解釈論と位置づけうる問題 ((b)( イ ) 1の問題 ) に加えて 伝統的な憲法理解のもとでは憲法の規律の対象外とされる私人対私人の法関係に憲法上の規定が適用されるのか という問題 ((b)( イ ) 2の問題 ) に向けられている 憲法上の権利がどこからくるのかという (a) の問題については 人権と憲法上の権利 という形で純粋な憲法理論の問題として論じられており 27) また (b)( ア ) の問題については 民法の内容 解釈の根拠についての関心は低く 民法と憲法の関係との関係についても意識はされながらも 一般的には憲法理論が単独で問題となるものとして議論がなされている 25) 山本 前掲注 2) ( 下 ) 44 頁以下参照 26) 前掲注 22 に示した憲法上の財産権をめぐる民法学からの議論は いずれも憲法学における議論の文脈に置かれてのものであり 民法学から内発的に議論されている訳ではない なお 例外として 基本権保護義務論に基づく見解 ( 山本敬三説 ) においては 憲法上の規定を根拠とした私法上の権利義務関係の形成が議論の俎上に載せられるが あくまでも主たる問題関心は (a) であり そこで示した見解の具体化のために必要となるために (b) の検討に進む という論理構造である 27) 石川健治 人権論の視座転換 あるいは 身分 の構造転換 ジュリ 1222 号 2 頁 (2002 年 ) 同 基本的人権 の主観性と客観性 主観憲法と客観憲法の間 同 人権論の新展開 49 頁 松本 前掲注 14) 憲法の役割 23 頁 小山剛 人権と制度 同 人権論の新展開 49 頁 宍戸常寿 憲法上の権利 の解釈枠組み 安西文雄他 憲法学の現代的論点 第 2 版 231 頁 ( 有斐閣 2009 年 ) 駒村圭吾 人権は何でないか 人権の境界確定と領土保全 井上達夫編 講座人権論の再定位 5 人権論の再構築 3 頁 ( 法律文化社 2010 年 ) など参照 174

23 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 (4) 本稿における議論の整理の主たる視角 どこからくるのか以上 (3) に見るようなズレがあるということは それぞれの視角からの整理 分析を行うにあたっては 論じられていない部分を補う必要がでる可能性があるということを意味する そのため 民法学 憲法学における議論の整理 分析が複雑となるのを避けることができない 共通の視座の構築をめざす本稿においては 可能な限り 単純でわかりやすい整理 分析を心がける必要がある そこで 以下 本稿においては まずは (a) の視角 ( どこからくるのか ) からに絞って整理分析を行うこととする これは (a) の視角が (b) の視角 ( どこへ行けるのか ) からの考察の基礎ともなることを理由とする 以下 Ⅳにおいて (a) の視角から 五つの類型を提示することで 議論の整理を試みる 28) Ⅳ 民法と憲法の関係の議論の整理 五つの類型 この問題に関連して現在示されている見解 ( 前述 Ⅱ 参照 ) を 実定法としての条文 規範の内容は 何を根拠として定められ 解釈されるのか という視角から整理すると 五つの構成に分類できる これらは 大きく 前国家的な秩序を基礎として民法が形成されるとする構成 ( 後述 (1)) と 憲法を基礎として民法が形成されるとする構成 ( 後述 (2)) に分けることができる (1) 前国家的な秩序を基礎として民法の内容が形成されるとする構成 ( ア ) 国家と社会の構成原理を並列させる構成第一は 国家と社会の構成原理を並列させる構成である ( 図 4 参照 ) 並列 28) なお (b) の視角については (b)( ア ) の問題 ( 具体的には憲法 29 条の解釈 ) と (b)( イ ) の問題 ( 具体的には憲法上の権利の私人間効力論 ) のそれぞれについて 別稿において 考察を行うことを予定している 175

24 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 的基本法論 ( 星野英一説 : 前掲 Ⅱ(1)( ア )) と新無効力説 ( 高橋和之説 : 前掲 Ⅱ(2)( ア )) がこの類型に属する ( 図 4) 国家社会 構成原理 構成原理 憲法民法 憲法理論に基づく内容形成 自由 平等 博愛 連帯 理念としての人権( 個人の尊厳 ) 民法理論 に基づく 内容形成 この構成は 国家と社会の二元論を前提とする さらに国家と社会のそれぞ れに構成原理が存在するものとされる そして 国家と社会のそれぞれに 同 一の前実定法的価値秩序を基礎とする構成原理が存在するものとされる すな わち 同一の前実定法的価値秩序に基づいて 国家の構成原理として憲法が 社会の構成原理として民法が それぞれ実定化される 国家に関する事項につ いては憲法理論に基づいて憲法として実定化され 社会に関する事項について は民法理論に基づいて民法として実定化される このそれぞれの実定化のプロ セスは 別のものとして捉えられる ただし 前実定法的価値秩序として何を想定するのか については相違がある 29) 29) 並立的基本法論では自由 平等 博愛 連帯が想定され ( 前掲 Ⅱ(1)( ア ) 参照 ) 無効力説では 個人の尊厳 が想定される ( 前掲 Ⅱ(2)( ア ) 参照 ) 176

25 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 ( イ ) 国家と社会の構成原理を重複させる構成第二は 国家と社会の構成原理を重複させる構成である ( 図 5 参照 ) 重複的基本法論 ( 大村敦志説 : 前掲 Ⅱ(1)( イ )) がこの類型に属する ( 図 5) 国家社会 構成原理 構成原理 憲法 憲法理論に基づく内容形成? ( 大きな公共性 ) ( 小さな公共性 ) 民法 参政権 ( 民主制原理 ) 市民的自由 財産権 身分権 私権 この構成も 国家と社会の二元論を前提とし また 国家の構成原理として 憲法が 社会の構成原理として民法がそれぞれ存在することを基礎とする し かし 憲法が国家だけでなく社会の構成原理としても 実定化されるものと理 解する点で ( ア ) にみた構成と異なる また 国家の構成原理と社会の構成原理は それぞれ異なる価値秩序 ( 権利秩序 ) に基づいてそれぞれの理論によっ て形成されるとする点 および その価値秩序は 市民的自由の分野について 重複していると理解する点でも異なっている この基礎となる価値秩序において重複している部分については 機能的視点 からの役割分担が示される また 社会の構成原理として民法を制定すること 民法理論に基づく内容形成 民法を持つという思想 177

26 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) それ自体を重視する ( 民法学における問題関心から示される見解であることもあり ) 国家の構成原理であり社会の構成原理でもある憲法がどのように内容形成されるのかについては明示的に論じられていない しかし 国家と社会の二元論を前提として 国家と社会のそれぞれに構成原理が存在していることを基礎としている以上 憲法の内容を形成するのは 憲法理論に委ねられてい ると理解することとなろう ( ウ ) 国家が憲法による制約と私法秩序による制約を受けるとする構成 第三は 憲法による制約と私法秩序による制約という異なる性質をもつ制約 が国家に課されるとする構成である ( 図 6 参照 ) 複眼的基本法論 ( 宮澤俊昭説 : 前掲 Ⅱ(1)( エ )) がこの類型に属する この構成では 国家と社会の二元論を前提とはしておらず 国家と社会の それぞれに構成原理が存在していることも議論の基礎としていない ただし 178 ( 図 6) 憲法 私法秩序の修正としての立法国家権力の創出と統制 民法 国家 私法秩序の裁判規範化としての立法 判例法形成 憲法理論に基づく 拘束実定化 私法秩序 ( 社会におい憲法を基礎付けるて自律的 自生的に形 ( 価値 ) 秩序成された規範の集合 )

27 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 国家と社会の二元論を否定もしておらず 国家と社会の二元論をとった場合にも この構成は妥当しうる すなわち この構成では 憲法によって設立され 憲法の拘束のもとに権力を行使する主体 ( 国家 政府 ) と その主体の意思形成を担いかつ自由な私人として活動する主体の集合 ( 社会 共同体 ) の関係を論じる ( 以下 簡略化のために 前者を 国家 後者を 社会 と記述する ) この構成は 国家が先行して存在する社会のために存在することを前提とする 社会においては 私人間において実力をもって強制されるべきとされる規範の集合 ( 私法秩序 ) が前国家的に存在している 他方 国家 ( 権力 ) は 憲法によって創出 統制される この権力の創出 統制は 憲法理論によって正当化される 30) 強制力を独占している国家は 私法秩序に含まれる規範を実現する義務を負う この義務を果たすために 国家は 私人間の紛争を解決するための基準として 自律的に形成される規範の集合たる私法秩序に基づいて民法を制定しなければならない ( 私法秩序に基づく民法の内容形成 ) また 一定の場合には 裁判所による法形成も私法秩序によって根拠付けうる このような私法秩序の解釈は 民法理論によって行われる ただし 憲法の拘束を免れ得ないため 国家機関による民法の制定 適用 解釈は 憲法によって認められる範囲に限定される さらに 社会において生ずる諸問題の解消のために 国家が社会に介入することが認められる場合には 行政法的規律を通じた介入のほか 直接 私法秩序に含まれる規範とは異なる裁判規範を立法化する場合もありうる この場合にも 当該裁判規範の立法およびその解釈は民法理論によって行われることと 30) 憲法における基本権体系に関しては 後述 (2)( ア ) に見る構成と同様に 人権と憲法上の権利をめぐる憲法学上の議論に基づくこととなる ただし この第三の構成を採れば 憲法 29 条 ( 財産権 ) の解釈に関して 民法理論が憲法理論に導入されること ( 民法の憲法化 ) が認められる 179

28 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) なる そして この場合にも立法府による民法等の私法に関わる法律の制定 司法権による適用 解釈は 憲法によって認められる範囲に限定される (2) 憲法を基礎として民法の内容が形成されるとする構成 ( ア ) 基本権保護義務論を基礎とする構成第四は 基本権保護義務論を基礎とする構成である ( 図 7 参照 ) 憲法基底的重層論 ( 山本敬三説 : 前掲 Ⅱ(1)( ウ )) 基本権保護義務説( 小山剛 松本和彦説 : 前掲 Ⅱ(2)( イ )) がこの類型に属する この構成でも 国家と社会の二元論を前提とはされておらず 国家と社会の ( 図 8) それぞれに構成原理が存在していることも議論の基礎とされていない ただし 国家と社会の二元論を否定もしておらず 国家と社会の二元論をとった場合に 180 ( 図 7) 民法 ( 全方位性のある ) 基本権法益 保護法益 憲法上の権利 ( 実定的 制度的権利 ) 国家権力の統制のための実定憲法への取り込み ( 前国家的 普遍的な権利としての ) 人権 基本権法益の保護のための立法化 基本権の内容形成

29 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 も この構成は妥当しうる 31) 基本権保護義務論は 私人間の紛争の場面においても 国家が基本権 ( 法益 ) を保護する義務を負うことを認める見解である これは 憲法において基本権体系が構築されていることを前提として それが民法の基礎となること ( 民法がどこからくるのか ) を示している しかし 民法の内容を形成する基礎となる憲法上の基本権体系がどのように内容形成され 正当化されているのか ( 憲法上の権利がどこからくるのか ) という問題を明らかにするものではない 本稿で設定した考察の視角 ( 前述 Ⅲ(4) 参照 ) からすれば この問題を補って全体の構成を考える必要がある この問題は 憲法学において 人権と憲法上の権利 として論じられている問題である 32) この問題についての議論は現在進行形であり 論者の間に 憲法上の権利 が何であるかについて安定したコンセンサスがあるわけではないとされている 33) 以下では 基本権保護義務論を主張する論者( 松本和彦 ) によって提示されている理論の概要を示す 34) 松本和彦は 憲法を 国家権力の創出と統制のための法規範と理解する そして 統治機構の規定も権利の規定も 国家権力の創出と統制のための法規範という点では同質と見る したがって 人が生まれながらに当然に持っている固有の権利であるところの人権を憲法に実体化するということは 単にそれらの権利を憲法によって確認するためではなく 国家権力の創出と統制のために 憲法上に権利規定を設ける必 31) 例えば 基本権保護義務論においても 基本権の対国家性が堅持されていることを強調している松本 前掲注 14) 基本権保護義務論の視点から 57 頁以下は 国家と社会の二元論を前提としても 基本権保護義務論が維持し得ることを述べているものとも理解し得る 32) 前掲注 27 に示した文献参照 33) 駒村 前掲注 27)7 頁 34) 人権と憲法上の権利の関係をめぐる松本和彦の見解については松本 前掲注 14) 憲法の役割 23 頁参照 181

30 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 要があったからと理解することになる すなわち 憲法上の権利は 国家権力を統制するために憲法上に実定化された権利である 以上のような人権と憲法上の権利の区別を前提としたうえで この第四の構成では 後者 ( 憲法上の権利 ) を基本権とよび 国家に この基本権ないし基本権法益 ( 基本権によって保護されている利益 ) を保護する義務があるとする 私人間の紛争においては まず 被害私人が国家に対して基本権 ( 法益 ) の保護請求を行う 被害私人からの保護請求に対し 国家は 基本権保護義務に基づいて 被害私人の基本権法益に最低限度の保護を与えなければならない 他方 被害私人の基本権 ( 法益 ) の保護は そのまま国家による加害私人の基本権制限となる 国家は 基本権侵害禁止義務も負う そのため この場面では 国家は 基本権保護義務と基本権侵害禁止義務の 2 つの義務を同時に履行することが求められる この状態は 過少保護の禁止と過剰介入の禁止という 2 つの禁止が国家に課されると表現される 民法の制定は 以上のような性質を持つ基本権の内容形成として行われる すなわち 基本権に基づいて ( 憲法を基準として ) 他者との法的関係を自律的に形成するための法的インフラの整備をする責務が 国家に課され その実行形態の一つとして 民法の制定が位置付けられる 35) この構成のもとで民法の独自性が認められるか すなわち憲法理論とは独立した法理論としての民法理論が 民法の制定 適用 解釈を法的に拘束するかという問題については 議論がある 36) 35) 山本 前掲注 8) 基本法 263 頁は この義務を国家の基本権支援義務と呼んでいる 36) 山本敬三は 穏健な憲法中心主義 を基礎として民法の独自性を認める ( 山本 前掲注 8) 憲法と民法 49 頁 山本 前掲注 8) 基本権の保護 109 頁 なお宮澤 前掲注 2) 49 頁は 穏健な憲法中心主義 では独自性を基礎付けられないとの疑問を呈する ) 他方 小山剛は 民法に特別の意義が承認されるべき理由として 現行の民法が 人格発展の保障という憲法上の要請に対して法的インフラを提供する そのような内容の民法であることに求められ るとする ( 小山剛 基本権の内容形成論からの応答 法時 81 巻 5 182

31 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 ( イ ) 憲法を頂点とする国法秩序を基礎とする構成 第五は 憲法を頂点とする国法秩序を基礎とする構成である ( 図 8 参照 ) 私法の一般条項の合憲限定 ( 拡張 ) 解釈説 ( 君塚正臣説 : 前掲 Ⅱ(2)( ウ )) 個人の尊厳と憲法的公序説 ( 宍戸常寿説 : 前掲 Ⅱ(2)( エ )) がこの類型に属 する ( 図 8) 憲法 国法秩序の最高法規として 公共体の基本秩序として 国会の立法裁量の下での立法化 民法 この構成では 国家と社会の二元論を否定するとともに 公法 私法二元論も否定する 37) その帰結として 国家と社会のそれぞれに構成原理が存在することを構成の基礎としないこととなる この構成においては 憲法が国法秩序の最高法規であることを根拠として または憲法が公共体の基本秩序であることを根拠として 私人間の関係に憲法上の規定が直接妥当する場合を認める 実定法としての憲法の条 号 13 頁 (2008 年 )) この見解は 憲法 29 条 ( 財産権 ) の解釈における現存保障 ( 宍戸 前掲注 18)156 頁以下参照 ) の枠を超えて 民法理論による立法裁量の統制を認めるものではないと理解するのが素直であろう 37) 宍戸 前掲注 12)37 頁 同 42 頁以下 183

32 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 文 規範の内容は 何を根拠として定められ 解釈されるのか という問題は 純粋な憲法理論の問題 ( 憲法制定権力 根本規範等 ) として論じられる 38) 民法の制定 解釈については 国会の立法裁量に基づく立法であることが強調されることとなる 39) さらに その立法においては 憲法理論以外の法理論による立法裁量の統制を受けることはないというのが理論的帰結となろう ただし 公共体の基本秩序性を根拠とする見解においては 民法理論を含めた憲法以外の法理論による立法裁量に対する統制も それらが公共体の基本秩序としての憲法理論に組み込みうる限りで 認められる余地が残るものと考えられる 40)41) Ⅴ 具体的検討 以上 Ⅳで整理した五つの類型から 具体的な問題についてどのような帰結が導かれるのか 以下 Ⅴにおいて 民法 2 条の意義と 私人間の関係における条約の位置付けのそれぞれの問題について 五つの類型から示されるそれぞれの 38) 君塚 前掲注 16)269 頁は 憲法制定権力によって憲法が制定されることを前提とした構成であることを示している なお 憲法制定権力という概念は不要であるとする長谷部恭男 われら日本国民は 国会における代表者を通じて行動し この憲法を確定する 同 憲法の境界 3 頁 ( 羽鳥書店 2009 年 初出 2007 年 ) も参照 39) 君塚 前掲注 16)269 頁参照 40) 憲法 29 条 ( 財産権 ) の解釈 とくにベースライン論の理解をめぐる問題につながる 第五の構成をとる論者による整理として 宍戸 前掲注 18)153 頁以下参照 41) なお この第五の構成は 基本権保護義務論を基礎とする第四の構成と異なり 基本権体系のみならず憲法全体が民法を基礎づけるという結論が導かれる ( 君塚 前掲注 16) 266 頁参照 また宍戸 前掲注 12)43 頁も 憲法の私人間効力 と問題を構成する方が適切であると述べる ) 184

33 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 帰結を検討する (1) 民法 2 条の意義 ( ア ) 問題の所在現在公刊されている民法の多くの教科書 体系書では 民法 2 条 (2004 年改正前民法 1 条ノ 2) は 主として親族法 相続法の解釈について意義を有する条文であるとの認識が示されるにとどまる あるいは 憲法 13 条 同 14 条 同 24 条などとの関わりを簡潔に示すにとどまるなど 消極的な位置付けが与えられるのみであり 踏み込んだ検討はなされてこなかった 42) しかし 現在の民法学においても 財産法にも家族法にも解消し得ない独立 43) の分野としての人格権の法が民法 2 条を基礎として構想されるとする見解や 民法と憲法との関係についての原則規範を示した規定であるという位置付けを与える見解 44) も示されている また 民法学の外に目を転ずれば 憲法学において 職場での男女差別を論点とする判決 45) を題材としながら 憲法 14 条 同 24 条の定める憲法的価値を明文で確認する民法 2 条に基づく解釈を行われていない点を批判的に検討したうえで 憲法の民法化 と 民法の憲法化 を論じる見解が示されている 46) また この問題につき 労働法学においては 憲法 14 条 1 項の男女平等原理が 42 谷口 = 石田編 前掲注 8)230 頁 山本執筆 など参照 43) 広中俊雄 新版民法綱要第 1 巻総論 頁 ( 創文社 2006 年 ) また 四宮和夫 = 能見善久 民法総則 第 8 版 11 頁 ( 弘文堂 2010 年 ) 藤岡康弘 民法講義 Ⅰ 141 頁 ( 信山社 2015 年 ) も参照 44) 前掲 Ⅱ(1)( ウ ) に示した山本敬三の見解を参照 45) 大阪地判平成 12 年 7 月 31 日判タ1080 号 126 頁 大阪地判平成 13 年 6 月 27 日労判 809 号 5 頁など 46) 樋口陽一 憲法 民法 90 条 社会意識 栗城古稀 日独憲法学の想像力上巻 137 頁 ( 信山社 2003 年 ) 185

34 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 民法 2 条の適用を介して民法 90 条の一部をなすという解釈が ( 少なくとも一時期は ) 確立していたとの見解も示されている 47) 以下では このような議論の状況にあり かつ 民法と憲法の関係と密接な関わりを持つ民法 2 条の意義について Ⅳに示した 5 つの類型から示される帰結を検討する なお 前国家的な秩序を基礎として民法の内容形成がなされるとする構成 ( 前掲 Ⅳ(1)( ア ) 同( イ ) 同( ウ )) のもとでは 憲法理論による根拠付けを必要としない私法の領域を観念することができるため 民法に私法の一般法としての位置付けが与えられる限り 民法 2 条の射程は 民法領域以外の私法上の規定にも及ぶ これに対して 憲法理論を基礎として民法の内容形成がなされるとする構成 ( 前掲 Ⅳ(2)( ア ) 同 ( イ )) のもとでは 民法の射程も 憲法理論のもとで別途検証される必要がある 特に憲法を頂点とする国法秩序を基礎とする構成のもとでは 公法と私法の区別が否定されるため 民法の 私法の一般法 であるとの位置付けも否定されることとなろう 以上の認識を前提に 以下の分析では 前国家的な秩序を基礎として民法の内容形成がなされるとする構成については 私法上の規定 の語を 憲法理論を基礎として民法の内容形成がなされるとする構成については 民法上の規定 の語を それぞれ用いる ( イ ) 五つの類型からの分析 (a) 国家と社会の構成原理を並列させる構成この構成をとった場合 民法 2 条は 日本の実定法システムの基本的価値 根本原理 ( 自然法 個人の尊厳 ) に適合するように私法の解釈をしなければな 47) 林弘子 住友電工地裁判決鑑定意見書 労旬 1529 号 30 頁 (2002 年 ) 和田肇 憲法 14 条 1 項 民法 1 条の 2 同 90 条 そして労働契約 中嶋還暦 労働関係法の現代的展開 1 頁 ( 信山社 2004 年 ) など 186

35 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 らないことを確認する規定と理解される 48) また 民法 2 条は 個人の尊厳 両性の本質的平等にとどまらない前実定法的価値秩序が私法の基礎となっていることを確認する意義を持つとも理解される 49) この構成のもとでは 個人の尊厳 両性の本質的平等に基づく民法解釈をするに当たって憲法上の規定を引く必要はない (b) 国家と社会の構成原理を重複させる構成この構成をとった場合 民法 2 条は ( 民法 1 条 1 項と相まって ) 形式的な自由 平等や限定的な権利の社会性 公共性を超えて より望ましい形での実質的な自由 平等 権利の社会性 公共性を発展的に求めて行くことを要請するための規定として理解される 50) すなわち 民法典は民法 2 条と民法 1 条 1 項を並存させることによって ( 公共に開かれた ) 個人 と ( 個人を念頭に置いた ) 公共 の相互依存関係を確認している という理解を前提として 民法 2 条と民法 1 条 1 項が 私法の基本原則を宣言した上で 時代に即した形で基本的価値の展開 調整を図っていく ( 欠缺を補充する ) ための双子の規定であると捉える 51) この構成においても 個人の尊厳 両性の本質的平等に基づく私法解釈をするに当たって憲法上の規定を引く必要はない (c) 国家が憲法による制約と私法秩序による制約を受けるとする構成この構成をとった場合 民法 2 条には二つの意義が認められる 52) 第一は 私法の制定 適用 解釈において 立法 裁判等の国家機関による作用を伴う際には憲法による制限も課されることを確認するための注意的規定としての意 48) 高橋 前掲注 13) 及ばない 146 頁 谷口 = 石田編 前掲注 8)235 頁 山本執筆 も参照 49) 谷口 = 石田編 前掲注 8)235 頁 山本執筆 50) 大村 前掲注 6)98 頁 51) 大村敦志 個人の尊厳と公共の福祉 新しい日本の民法学へ 456 頁 ( 東京大学出版会 2009 年 初出 2005 年 ) 52) 宮澤 前掲注 2)73 頁 ただし 立法趣旨との関係で前者の意義のみ記述している 187

36 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 義である ( 本条の立法趣旨はこちらと解される 53) ) 個人の尊厳 両性の本質的平等に基づく判断のうち 裁判所等の国家機関としての判断に対する憲法を根拠とする限界が問題となる場面では民法 2 条を引く必要はなく 他方で憲法上の規定を引く必要がある 第二が 個人の尊厳 両性の本質的平等が私法上の規定の解釈基準となることの根拠としての意義である ただし 少なくとも立法過程における議論からは この後者の意義は導かれない そのため 民法に加え 他の法領域や社会科学の知見等をも基礎として 個人の尊厳 両性の本質的平等を求めることが私法秩序のもとでの規範 ( 社会において自律的 自生的に形成される規範 ) であることを確認する必要がある それが確認された場合 民法 2 条は 個人の尊厳 両性の本質的平等に基づいて私法上の規定の解釈を行わなければならないことを示す規定としての意義も獲得する この第二の意義のもとで 個人の尊厳 両性の本質的平等に基づく私法上の規定の解釈を行う場合には 憲法上の規定を引く必要はなく 他方で民法 2 条を引く必要がある (d) 基本権保護義務論を基礎とする構成この構成をとった場合 民法 2 条は 憲法上の根本原理によって民法の内容が方向付けられることを示す規定として 民法と憲法の関係に関する原則規範を示したものと理解される 54) 具体的には 民法に規定がある場合には憲法適合的解釈を 規定がない場合には憲法適合的補充をすることを確認する規定として位置づけられる さらに 民法 2 条では個人の尊厳と両性の本質的平等のみが挙げられているが これは立法の経緯によるものであり 憲法適合的解釈 補充は 個人の尊厳と両性の本質的平等の限るものではないともされる この構成のもとでは すでに個人の尊厳 両性の本質的平等などの基本権の内容を実現するための ( 民法 2 条以外の ) 民法上の規定の適用が問題となっている場合には それを憲法適合的に解釈することで足りる 他方 そのような民 53) 谷口 = 石田編 前掲注 8)227 頁以下 山本執筆 54) 谷口 = 石田編 前掲注 8)235 頁以下 山本執筆 188

37 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 法上の規定のない場合 個人の尊厳 両性の本質的平等などの基本権に基づく解釈をするためには 民法 2 条とともに憲法上の規定を補充して引く必要がある (e) 憲法を頂点とする国法秩序を基礎とする構成この構成のもとでは 憲法上の規定が 私人間に直接妥当されることが認められる そのため 民法 2 条は 特に意義を持たない あるいは憲法上の規定が直接妥当することを確認する規定として位置付けられることとなろう そのため 民法以外の私人間に適用される法律上の規定についてはもちろん 民法上の規定についても 個人の尊厳と両性の本質的平等に基づく解釈を行う場合 憲法上の規定を直接引けば足り 民法 2 条を引く必要はないこととなる (2) 私人間の法律関係における条約の位置付け ( ア ) 問題の所在近年 条約が重要な意味を持ちうる私人間の紛争についての議論が活発になりつつある 例えば 女子差別撤廃条約との関わりで親族法 相続法や労働法分野における男女平等が 人種差別撤廃条約との関わりで公序良俗や不法行為法における契約拒絶や差別表現 憎悪表現が 障害者権利条約との関わりで成年後見法や労働法分野における障害を理由とする差別などが それぞれ議論されている 条約と国内法の関係についての現在の憲法学 国際法学における通説的見解は 次のような内容である 55) 日本国憲法のもとでは 条約の締結について国 55) 以下 条約の国内法における位置付けに関して 国際法学における議論の概要について 小寺彰他 講義国際法第 2 版 105 頁以下 岩沢雄司執筆 ( 有斐閣 2010 年 ) 酒井啓亘他 国際法 382 頁以下 濱本正太郎執筆 ( 有斐閣 2011 年 ) 薬師寺公夫他 法科大学院ケースブック国際人権法 30 頁以下 村上正直執筆 ( 日本評論社 2006 年 ) などを 憲法学における議論の概要について 佐藤 前掲注 10)85 頁以下 同 117 頁以下 長谷部恭男 憲法第 6 版 437 頁以下 ( 新世社 2015 年 ) 吉川和宏 条約の国内法的効力 大石眞 石川健治編 憲法の争点 334 頁 ( 有斐閣 2008 年 ) 須賀博志 人権条約の裁判規範性 前掲 憲法の争点 342 頁等を参照 189

38 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 会による民主的コントロールが可能であること ( 憲法 73 条 3 号 ) 条約の誠実な 遵守が求められていること ( 憲法 98 条 2 項 ) を根拠として 条約は批准 公布 されれば自動的に国内的効力を得るとの立場 ( 自動的受容 ) がとられる 国内 的効力をもつ条約は 原則として憲法に劣位し 法律に優位する 条約に国内 法秩序において法規範としての地位が認められる場合 国内法秩序において条 約が ( 立法などの ) 国内法上の措置を経ずして適用されるとき ( 直接適用 ) と 条約を解釈基準として参照し それに適合的に国内法規範を解釈することを通 じて実質的に条約の内容を実現するとき ( 間接適用 ) がある 私人間の関係に ついては 私人間に適用されていることが条約において意図されている場合を除 き 条約の直接適用はなされず 民法などの規定を通じて条約が間接的に適用 される 56) この間接適用に関しては 条約が単独で間接適用される場合と 一旦 憲法上の規定に間接適用されたのちに さらにその憲法上の規定を私人間効力 の枠組みで間接適用するという場合 57 に分けて考えられている なお 国家対 私人という憲法上の規定の適用場面において直接適用される場合については 条約による人権保障が憲法の想定しない領域に及ぶ場合 および条約による人 権保障が憲法による保障を上回ると解される場合に問題とされることとなる 以上のような 条約の国内法における位置づけと その私人間における適用 のあり方も また 民法と憲法の関係をめぐる議論と深く関わる 以下 Ⅳ に示 した 5 つの類型から示される私人間の関係における条約の位置付けを整理する 56) 前述の通り 国内的効力の認められる条件は 原則として憲法に劣位するが法律に優位するというかたちで日本法体系上に位置づけられる このことと ( 本文に示したように ) 私人間での条約の直接適用が否定されることをあわせて考えると 私法上の効力の定めのない条約の私法上の間接適用の問題は 私法上の効力の定めのない取締法規違反行為の私法上の効力論とも接合することが示される 57) この場合については 憲法上の権利の私人間効力論との関わりが問題となるが 以下の整理においては この点に触れない 憲法上の権利の私人間効力論については 別稿において検討を行う予定としている 190

39 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 ( イ ) 五つの類型からの分析 (a) 国家と社会の構成原理を並列させる構成この構成のもとでは 憲法理論のもとでの国家と私人の関係における条約の適用可能性と 私法理論のもとでの私人間における条約の適用可能性を分けて論じることになる 憲法理論のもとでの条約の適用可能性については 現在の憲法学 国際法学における議論がそのまま妥当する ただし この構成では 憲法上の規定について 私人間への適用を否定するため 条約が間接適用された憲法上の規定を 私人間に間接適用することは認められない 条約を私人間に適用する場合には その条約を単独で私法上の規定に間接適用する必要がある 以上のような具体的適用場面における帰結のうち とくに私人間における適用関係を正当化するために この構成では 条約に示されている規範と 前実定法的価値秩序との関わりも合わせて考察する必要がある すなわち 法体系上の位置付けや憲法上の規定との関わりを根拠とした正当化ではなく 条約に示されている規範が 前実定法的価値秩序に組み込まれる あるいは前実定法的価値秩序に影響を与えるということを明らかにすることで 私人間における前述のような帰結を正当化することになる 58) (b) 国家と社会の構成原理を重複させる構成この構成のもとでは 前述 (a) で検討した国家と社会の構成原理を並列させる構成と同様に 憲法理論のもとでの国家と私人の関係における条約の適用可能性と 私法理論のもとでの私人間における条約の適用可能性を分けて論じることになる 条約の具体的な適用場面において 前述 (1) において述べた通説的見解を否定する要素は見当たらない ただし この構成では 憲法にも社会の構成原理としての位置付けが認められるので 条約が間接適用された憲法上の規定を 私人間に直接適用する可能性も認められることとなる 58) なお 憲法に関する適用関係については 憲法理論のもとで 法体系上の位置付けや憲法上の規定との関わりによって正当化することは妨げられない 191

40 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 以上のような具体的適用場面における帰結のうち とくに私人間における適用関係を正当化するために この構成では 条約に示されている規範と民法を根拠づける前実定法的に存在する財産権 身分権 市民的自由との関わりも考察する必要がある 条約に示されている規範が これらに内容的な影響を与えることにより 社会の構成原理たる民法の内容となることを明らかにすることを通じて 条約の私人間への適用が正当化されることとなる 59) (c) 国家が憲法による制約と私法秩序による制約を受けるとする構成 この構成のもとでは 憲法理論のもとでの国家と私人の関係における条約の適用可能性と 私法理論のもとでの私人間における条約の適用可能性を分けて論じることになる 憲法理論のもとでの条約の適用可能性については 現在の憲法学 国際法学における議論がそのまま妥当する 他方 条約を私人間に適用する場合について 条約を単独で私法上の規定に間接適用することに関する現在の議論はそのまま認められるが 条約が間接適用された憲法上の規定を私人間に間接適用することは それを根拠づける私法理論が新たに提示されなければ認められない すなわち 法体系上の位置づけや憲法理論のみを根拠としてそのような適用を認めることはできない 以上のような具体的適用場面における帰結のうち とくに私人間における適用関係を正当化するために この構成では 次の二つの経路のいずれかによる正当化が認められる 第一は 条約に含まれている規範が前国家的な秩序としての私法秩序に組み込まれているか あるいは影響を与えていることを明示することである 第二は 私法秩序の修正のために国家によって行われる行政法的規制と私法上の規定の関係 60) と同様の枠組みで 条約に私法上の位置付けを与えることである 59) なお 憲法に関する適用関係の正当化については 前述 (a) に示した見解と同様となる 60) 宮澤 前掲注 2)99 頁以下 ( 条約の私人間への間接適用の問題が 取締法規違反行為の私法上の効力論と関わることについて前掲注 56 も参照 ) 192

41 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 (d) 基本権保護義務論を基礎とする構成この見解のもとでは 憲法理論のもとでの条約の国家と私人の関係における適用可能性と 私法理論のもとでの私人間における条約の適用可能性を分けて論じる必要はない また 私人間の関係につき 私人間の効力についての定めのない条約を直接適用することが認められないとする通説的見解も否定されない 61) 他方 間接適用に関しては これを裁判所による法形成として捉えることとなる 62) すなわち この問題は 基本権( 法益 ) の保護もしくは支援を実現するために条約の承認 批准がなされた場合に 裁判所が その目的を実現するために 民法上の規定 ( 特に一般条項 ) について 私法上の効力についての規定を持たない条約に適合的な解釈を行うべきかどうか ( 裁判所が条約に私法上の効力を与えるべきかどうか ) という問題として捉えられる そして 裁判所は立法を尊重し その実現に努めるべき義務を負っているため 過剰介入の禁止に反しない限りで このような法形成 すなわち条約の間接適用を行うことが求められることとなる 以上のような具体的適用場面における帰結のうち とくに私人間における適用関係を正当化するために この構成では 私人間に適用される条約が 国家によって 基本権 ( 法益 ) の保護 支援を目的として承認 批准されたことを 61) この構成のもとでは 私法上の効力についての定めを持たない行政法上の規制 ( 取締法規 ) の存在を前提として その民法上の取り扱いが論じられている ( 山本敬三 公序良俗論の再構成 239 頁以下 ( 有斐閣 2000 年 )) そして この構成のもとでは 取締法規については 国家が特に法令を定めて取締りを行うものである以上 これは基本権保護義務 支援義務を履践したものと見ることができるとされている ( 前掲山本 250 頁 ) この論理からすれば 国家が私法上の効力が直接規定されていない条約を承認 批准したのであれば 私人間への直接適用を否定したうえで その民法上の取り扱いを論じることが肯定されよう 62) 以下 取締法規違反行為の私法上の効力論との関わりで民法 90 条の適用について論じている山本 前掲注 61)250 頁以下を参照 条約の私人間への間接適用の問題が 取締法規違反行為の私法上の効力論と関わることについて 前掲注 56 参照 193

42 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) 示す必要がある あくまでも 基本権 ( 法益 ) の保護 支援を目的とするかぎりで 国家にそれを実現する義務が課されるからである (e) 憲法を頂点とする国法秩序を基礎とする構成この見解のもとでは 憲法理論のもとでの条約の適用可能性と 私法理論のもとでの条約の適用可能性を分けて論じる必要はない むしろ 私法理論のもとでの条約の適用可能性を論じる必要がなく 憲法理論の下での条約の適用可能性のみを論じることで足りることになる そして 私法上の効力の定めのない条約であったとしても 法律である民法よりも法体系上上位に位置付けられるとする通説的見解に基づけば 憲法上の規定の直接適用が認められるのと同じ根拠で 私人間の関係にも直接適用されることが認められるとする すなわち 国法体系における上下関係を根拠とする立場にたてば 特に別の正当化をする必要なく 直接適用が認められる 他方 公共体の基本秩序性を根拠とする立場に立てば 当該条約が 公共体の基本秩序に組み込まれ かつそれが個人の尊厳または憲法的公序に含まれることを示すことにより 直接適用が認められる Ⅵ 今後の課題 本稿の結論は 民法と憲法の関係についての現在の議論は 前述 Ⅳのように類型化することができ それに基盤として 前述 Ⅴで分析したように 様々な具体的な立法 解釈の場面で 議論を整理することができる というものである さらに この民法と憲法の関係の議論の類型化を行った本稿の結論は より大きな視点で見た場合 法学における様々な議論の基盤として位置付けうるものであると考えている まず 私法学において 本稿における民法と憲法の関係の議論の整理は 私人間において いかなる根拠に基づいて権利 規範が正当化されるのか という問題を考察するための出発点に位置付けられる 具体的には 例えば集合的 194

43 民法と憲法の関係の法的構成の整理と分析 公共的利益に対する私法上の権利 63) 知的財産権 64) などといった ( 伝統的民 法学から見て ) 新たに形成されている私法上の権利の法的構成の正当化のため 63) 筆者自身の考察として 宮澤俊昭 集合的 公共的利益に対する私法上の権利の法的構成についての一考察 (1) (5 完) 近法 54 巻 3 号 326 頁 同 4 号 59 頁 同 56 巻 3 号 39 頁 同 57 巻 1 号 31 頁 同 2 号 51 頁 ( 年 ) 64) 例えば 田村善之 未保護の知的創作物という発想の陥穽について 著作権研究 39 号 6 頁以下 ( 有斐閣 2012 年 ) は 知的財産権の根拠としてインセンティブ論をとりながら 人が何かを創作したという命題 を あっても仕方がないではないかと消極的に正当化する 根拠として必要となるとする この主張について 前述 Ⅳ(1)( ウ ) で示した筆者 ( 宮澤 ) の主張する構成のもとでは 次のように理解することになる すなわち 自然権論が 前国家的に形成された私法秩序における著作権の正当性を論じているのに対し インセンティブ論は 私法秩序の修正としての国家の介入によって私法上の権利を形成する場面の正当性を論じていると位置付けられる 人はその創作的表現に対して権利を有する とする考え方の是非は前者の問題であり フリーライドを規制することによって一般公衆の利益を図るために著作権を消長させるべきか という問題は後者の問題として扱われる そして ( 本論文では詳細に触れることができなかったが ) この筆者の主張する構成では 前者 ( 私法秩序 ) に基づいて認められる規範を修正するというかたちでのみ 国家が介入できる ( 私法秩序に含まれる規範に反する形で権利を国家が私法上の権利を創出することはできない ) と捉えることになる ( 宮澤 前掲注 2)77 頁以下参照 ) ため 知的財産権の根拠について 仮にインセンティブ論をとったとしても 自然権論に基づく正当化を不要とすることはできない ( 宮澤 前掲注 2)77 頁以下参照 ) 以上のような説明は あくまでも民法と憲法の関係についての一つの構成をとった場合の帰結にすぎない 異なる構成をとれば 異なる説明が与えられることになろう しかし いずれの構成をとったとしても 直接 思想的 哲学的な考察に飛び込む前に 実定法体系のなかで 正当化理論相互の関係を論じることが可能となる わが国にとって必要なことは 複数の理論間で協調ないし共同しうる議論の枠組みを整えることであると考える より実りある正当化根拠論を展開するためにも 従来の 規範理論間の対立 選択 図式から議論のフェーズを移行させる必要があるように思われるのである ( 山根崇邦 著作権法領域における正当化根拠論の現代的意義 著作権研究 38 号 123 頁 ( 有斐閣 2011 年 )) と指摘されているなかで このような実定法体系にとどまった中での研究を可能とする意義が 民法と憲法の関係をめぐる議論に認められるのではないか という主張を本稿は含んでいる 195

44 横浜法学第 24 巻第 1 号 (2015 年 12 月 ) に どのような理論を構築していく必要があるのか という問題について あらたな考察の視角を提供しうる さらに 民法改正についての議論を行う ( 検証する ) 前提として そもそも既存の法制度において認められている私法上の権利がどのような基礎を持っているのか という点についても 以上のような民法と憲法の関係を前提として論じる必要があろう 他方 憲法学に目を向ければ 憲法 29 条 ( 財産権 ) の解釈や 憲法上の権利の私人間効力論のように 民法と憲法の関係が直結する議論が存在しているところ これらの問題についても 新たな視角からの考察を行う可能性が認められよう 65) また 民法学 憲法学を超えて 法学全体において 私人間の権利が関わる限りにおいて 民法と憲法の関係をどのように理解するのか という問題について考えることは避けて通ることができないはずである そして 複数の法学領域にまたがる議論が行われるとき さらには法学以外の学問領域の知見を取り入れながら議論を行う際に 法学として共通の視座に立って議論を行うことによって 異なる法領域間の認識のズレなどによる無用な摩擦の発生を回避できよう そのような法学としての共通の基礎の一つとしての役割を 民法と憲法の関係を巡る議論が担いうると考えている 本稿の副題とした 共通の視座 には このような意味も込めている それぞれの法学研究者が 法学 に対して思っている 当たり前 が異なる可能性があるのではないか そして その 当たり前 の相違について これを思想的 哲学的な理論の問題として扱う前に 実定法体系のもとで論じることが必要なのではないか という問題を提起することができていれば 本稿の目的が一定程度達成されたことになる * 本研究は JSPS 科研費 , 15KT0043 の助成 および 2013 年度稲盛財団研究助成を受けたものである 65) これらの論点については 本稿を前提とした考察を別稿にて行う予定としている 196

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