目次 1 章緒論 1-1. 緒言 1-4[page] 1-2. コハク酸発酵法に関するこれまでの知見 コハク酸生産能を向上させる為の代謝工学的アプローチに関するこれまでの知見 従来のコハク酸発酵法の課題と解決に向けた施策 酸性嫌気条件下におけ

Size: px
Start display at page:

Download "目次 1 章緒論 1-1. 緒言 1-4[page] 1-2. コハク酸発酵法に関するこれまでの知見 コハク酸生産能を向上させる為の代謝工学的アプローチに関するこれまでの知見 従来のコハク酸発酵法の課題と解決に向けた施策 酸性嫌気条件下におけ"

Transcription

1 耐酸性通性嫌気性細菌の代謝工学的アプローチによるコハク酸生産能改良に向けた研究 Study of metabolic engineering approach to improve succinate productivity in aciduric facultative anaerobe 田島義教 Yoshinori TAJIMA

2 目次 1 章緒論 1-1. 緒言 1-4[page] 1-2. コハク酸発酵法に関するこれまでの知見 コハク酸生産能を向上させる為の代謝工学的アプローチに関するこれまでの知見 従来のコハク酸発酵法の課題と解決に向けた施策 酸性嫌気条件下におけるコハク酸発酵法 Enterobacter aerogenes に関するこれまでの知見 研究の意義と目的 章耐酸性通性嫌気性細菌 E. aerogenes のコハク酸生産菌としての能力評価 2-1. 緒言 実験材料と方法 菌株 培地と培養条件 発酵槽を用いた酸性好気条件下と酸性嫌気条件下での培養試験 E. coli と E. aerogenes の乾燥菌体重量 (Dried Cell Weight; DCW) 算出式 グルコース濃度 OD 有機酸 アルコールの定量 結果 E. aerogenes の酸性 (ph5.0) 好気条件下における培養特性 E. aerogenes の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における培養特性 E. aerogenes AJ 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における代謝産物の同定 考察 E. aerogenes AJ 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における比グルコース消費速度 29

3 E. aerogenes の細胞形態がグルコース消費速度に及ぼす影響 E. aerogenes AJ 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における代謝反応 結言 32 3 章 E. aerogenes の主要な NADH 酸化経路の遮断と異種炭酸固定反応の導入によるコハク酸生産能の改良 3-1. 緒言 実験材料と方法 菌株とプラスミド 培地と培養条件 E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出法 マイクロチューブを用いたコハク酸発酵 本章で使用したプライマー E. aerogenes の形質転換法 λ-red recombination system による adhe 遺伝子破壊株の構築 λ-red recombination system による buda 遺伝子破壊株の構築 A. succinogenes PCK 発現用プラスミド pstv28-pck の構築 C. glutamicum PYC 発現用プラスミド pstv28-pyc の構築 可溶性画分タンパク質の抽出方法 SDS-PAGE による PYC と PCK の発現解析 各種酵素活性 (LDH ACDH AR) の測定 E. aerogenes の DCW 算出式 グルコース濃度 OD 有機酸 アルコールの定量 結果

4 エタノール 及び 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断がグルコース資化能に及ぼす影響 buda 及び adhe 株における LDH AR ACDH 活性測定 エタノール 及び 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の発現解析 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の導入によるコハク酸生産能の改良 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の導入とエタノール生成経路の遮断の組み合わせによるコハク酸生産能の改良 考察 エタノールと 2,3 ブタンジオール生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 adhe 株における AR の総活性値 異種炭酸固定経路の導入によるコハク酸生産能の改良 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の導入とエタノール生成経路の遮断の組み合わせによるコハク酸生産能の改良 adhe/pyc 株と adhe/pck 株のコハク酸収率の差異 結言 66 4 章 E. aerogenes のピルビン酸由来副生経路の遮断と PYC と PCK の共発現によるコハク酸生産能の改良 4-1. 緒言 実験材料と方法 菌株とプラスミド 培地と培養条件 70

5 マイクロチューブを用いたコハク酸発酵 発酵槽を用いた ph 制御下でのコハク酸発酵 E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出法 本章で使用したプライマー E. aerogenes の形質転換法 λ-red recombination system による遺伝子破壊株の構築 薬剤耐性遺伝子除去用プラスミド prsf-p ara -IX の構築 pRSF-P ara -IX を用いた薬剤耐性遺伝子の除去 A. succinogenes PCK と C. glutamicum PYC 共発現プラスミド用 pstv28-pck+pyc の構築 E. aerogenes の DCW 算出式 グルコース濃度 OD 有機酸 アルコールの定量 結果 乳酸生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 酢酸生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 ,3-ブタンジオール生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 PCK と PYC の共発現によるコハク酸生産能の改良 培養 ph がコハク酸生産能に及ぼす影響 考察 ピルビン酸由来副生経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 PYC と PCK の共発現によるコハク酸生産能の改良 培養 ph の低下がコハク酸生産能に及ぼす影響 結言 94

6 5 章 E. aerogenes のコハク酸生成経路における ATP 獲得量の向上によるコハク酸生産能の改良 5-1. 緒言 実験材料と方法 菌株とプラスミド 培地と培養条件 マイクロチューブを用いたコハク酸発酵 発酵槽を用いた ph 制御下でのコハク酸発酵 E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出法 本章で使用したプライマー E. aerogenes の形質転換法 λ-red recombination system による遺伝子破壊株の構築 pRSF-P ara -IX を用いた薬剤耐性遺伝子の除去 A. succinogene PCK の染色体固定 frdABCD オペロンのプロモーター置換株の構築 SDS-PAGE 解析 ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株の M9 グルコース培地での生育速度 E. aerogenes の DCW 算出式 グルコース濃度 OD 有機酸の各種定量 結果 コハク酸生成経路における ATP 収支を向上させる為の代謝工学的アプローチ ピルビン酸オキシダーゼの不活化によるコハク酸生産能の改良 A. succinogenes PCK 発現カセットの染色体固定と SDS-PAGE による発現解析 A. succinogenes PCK の発現量がコハク酸生産能に及ぼす影響 フマル酸レダクターゼの発現強化によるコハク酸生産能の改良 112

7 ピルビン酸ギ酸リアーゼの不活化によるコハク酸生産能の改良 グルコース PTS の遮断がグルコース資化能に及ぼす影響 グルコース PTS の遮断によるコハク酸生産能の改良 ES08 ptsg 株における弱酸性 (ph5.7) 嫌気条件下のコハク酸発酵 考察 理論 ATP 収支の向上によるコハク酸生産能の改良 E. aerogenes の嫌気条件下でのグルコース取り込み機構 ES08 ptsg 株を用いた弱酸性 (ph5.7) 嫌気条件下のコハク酸発酵 コハク酸発酵の展望 結言 章結論 参考文献 謝辞 134

8 1 章緒論 1-1 緒言現在 日本におけるプラスチックの生産量は 年間 1,400 万トンに至る これらプラスチックの殆どは石油を原料に製造され 使用後に埋め立て廃棄される製品循環を辿る このように 日本を初めとする先進国の殆どが石油資源の消費に基づく経済活動 石油消費社会 を営んでいる 一方 プラスチックを取り巻く環境は 石油価格の上昇や製造時の環境汚染に対する懸念 更には プラスチックを消費した後に廃棄する埋立て処理場の残余容量の急減が指摘されており 社会的な問題となっている この問題に対する有望な解決策の一つとして バイオマスから完全生分解性プラスチックを生産する方法が考えられる [1,2] 糖やスターチを含む植物バイオマスは 光合成の働きにより再生利用が可能である また 得られた完全生分解プラスチックは 土壌中で微生物の働きにより 二酸化炭素と水に完全分解され 再び植物に利用される このように 資源を循環利用することが持続可能な社会の実現に肝要である 現在 最も実用化が進んでいる完全生分解プラスチックとして ポリ乳酸 (Polylactic acid; PLA) とポリブチレンサクシネート (Polybutylene succinate; PBS) が挙げられる ( 表 1-1) PLAは 引張強度に優れるものの 伸び率は低い熱可塑性高分子である [1,2] その為 硬材として自動車部品 繊維 ボトルなどに利用されている 近年では PLAの融点が170 程度で扱い易い理由から 3Dプリンターの樹脂などに用途が拡大されている これに対して PBSは伸び率が高く 包装用資材やコンポストバッグなど PLAとは異なる用途で利用される [1,2] 2010 年 バンクーバーで開催された冬期オリンピックでは 選手村の食堂で使用するスプーンやフォークに三菱化学社製のPBS (GS Pla ) が採用され 廃棄物処理量の低減化に成功した このように物性が異なるPLAとPBSは 異なる用途展開が期待され 2010 年代には 生分解性プラスチックのプラスチック製品市場に占める割合は 約 10% にまで増加すると予測されている 1

9 表 1-1 PLA と PBS における構造式 原料 原料製法 物性及び用途 石油化学合成法発酵法 このようにPLAとPBSは 代表的な完全生分解性プラスチックである一方 両者の原料製法は異なる 現在 PLAの原料であるL- 乳酸は 再生可能な植物バイオマスからも発酵法で製造が可能である 2002 年から Nature Works LLC( 米 ) は PLA(Ingeo TM ) の商業生産を開始し 年間 14 万トンのPLAを製造販売している このように 植物バイオマスを原料に製造されたPLAは 完全生分解性プラスチックの先駆者として 資源循環型の製品サイクルを実現したと言える それに対して PBSの原料であるコハク酸は 石油資源から化学合成法でのみ製造される コハク酸は ナフサに含まれるn-ブタンやベンゼン等を原料として 気層酸化により得られた無水マレイン酸から化学合成される 現在 年間 20~30 万トンの無水マレイン酸がコハク酸に変換され PBS や基幹化学物質 (γ-ブチロラクトン テトラハイドロフラン 1,4-ブタンジオール ) の原料として利用されている [3,4] 2014 年 コハク酸から合成される製品群の世界市場は年間約 1 兆 5000 億円にのぼり PBSの普及に牽引される形で その市場規模は益々拡大すると見込まれる [5] このようにコハク酸は PBS を含む化学基幹物質として その用途は多岐に渡り 市場規模も極めて大きいと言える [5] コハク酸を発酵法で製造する技術開発は 完全生分解性プラスチックの普及に大きく貢献するだけでなく 基幹化学物質の一つをバイオマスから製造する点で脱石化社会にむけた重要な取り組みの一つと言える このような背景から アメリカのエネルギー省 (Department of Energy; DOE) は 2004 年にコハク酸を再生可能な植物バイオマスから製造すべき 12 基幹化学物質の一つに認定した [4] 2000 年以降 Myriant BioAmber/ 三井化学 BASF/Corbion-Purac, DSM/Roquette などの化学メーカーが主体となり コハク酸発酵の研究開発が精力的に行われているが 依然として本格的な商業生産は行われていない [5] このような社会的な要請に対して 本研究では従来のコハク酸発酵法よりも経済的で且つ低環 2

10 境負荷型な発酵法として 新たに酸性嫌気条件下におけるコハク酸発酵法を提案するに至った この発酵を実現するには 従来のコハク酸生産菌開発の延長線上ではなく 新たに耐酸性通性嫌気性細菌をプラットフォーム菌に選定し 代謝工学的アプローチにより 該細菌のコハク酸生産能を改良させることが必要である 本章では 本研究に着手するに至った社会的な背景と動機を整理する 次に コハク酸発酵法に関する基礎的な知見を纏めると共に これまで検討されてきたコハク酸生産菌を整理することで 現行のコハク酸発酵法の課題を抽出する また この課題について化学的な論拠に基づいた解決法を模索し 新たなアプローチとして酸性嫌気条件下におけるコハク酸発酵法に関して その具現性を評価した 次に この発酵法を行う上で プラットフォーム菌に求める形質について整理をおこうと共に これまでに実施されたコハク酸生産能を向上する為の代謝工学的アプローチを纏めた 最後に Enterobacter aerogenes の知見を整理する過程で コハク酸生産のプラットフォーム菌としての可能性を検討した 以上を纏めたうえで 本研究の課題を整理すると共に 本研究の目的と意義を明らかにした 3

11 1-2. コハク酸発酵法に関するこれまでの知見コハク酸は TCAサイクルの中間代謝物であり 好気と嫌気の両環境下で発酵生産が可能である 通常 腸内細菌の殆どは 好気条件下でコハク酸を細胞外に排出しない 一方 コハク酸からフマル酸への反応を触媒するコハク酸デヒドロゲナーゼ (Succinate dehydrogenase;sdh) を欠失した菌株では グルコースを資化時に コハク酸を主要な生成物として培地中に蓄積する ( 図 1-1) [7,8] この時 つまり コハク酸生成経路として酸化的にTCAサイクルを利用すると 二酸化炭素を生成する反応を経由する為 グルコースからの重量収率は68% となる それに対して 嫌気条件下では 多くの菌種がコハク酸を細胞外に排出する 実際 E. coliの野生株では グルコースを消費し 重量収率で10% 程度のコハク酸を培地中に蓄積した [9] 嫌気条件下でコハク酸が生成される機構は 酵素反応的に説明が可能である オキサロ酢酸からスクシニルCoAまでの全ての反応が可逆反応であるのに対して スクシニルCoAからα-ケトグルタル酸の反応が不可逆である ( 図 1-1) その為 細胞内のスクシニルCoAとコハク酸濃度が上昇し 排出担体を有するコハク酸のみが選択的に細胞外へ排出される [10,11] この時 つまり 還元的にTCAサイクルを利用すると 二酸化炭素の固定反応を経由する為 グルコースからの重量収率も112% となり 好気条件と比較して1.65 倍高い値となる 重量収率の観点から両培養条件を比較すると 嫌気条件下の方がコハク酸発酵に好ましい環境と言える 実際 コハク酸生産菌の殆どが嫌気条件下でコハク酸を生産するように開発が進められている [12-14] 1990 年以降 様々な細菌種を用いて コハク酸生産菌の開発が行われてきた 表 1-2に これまでに報告された代表的なコハク酸生産菌の属種と発酵成績を纏めた 表 1-2に示すように コハク酸生産菌は 2つのグループに大別でき 一つは Actinobacillus succinogenes, Anaerobiospirillum succiniciproducens, Mannheimia succiniciproducensなどの元来コハク酸を生産するルーメン細菌群とescherichia coliやcorynebacterium glutamicumなどの従来アミノ酸発酵などの生産菌として利用されてきた腸内細菌群である [12-16] 前者は 牛などの反芻動物のルーメンからコハク酸を生産する細菌として単離されてきた ルーメン内では 牧草サイレージ 4

12 が糖化された後に これら細菌群の働きによりコハク酸などの有機酸に変換される 代表的なルーメン細菌である Actinobacillus succinogenesでは グルコース重量の50% 以上をコハク酸に変換できる [12,17] コハク酸発酵開発の初期では これらルーメン細菌を利用した 効率的なコハク酸発酵プロセスの検討が多数報告された [18,19] 一方 遺伝子組換え技術が確立されていないルーメン細菌群では 更にコハク酸生産能を改善する取り組みは困難であり 次第に研究目的が遺伝子組換え技術の確立に移行した [20-22] 一方 遺伝子組換え技術が既に確立されているE. coliやc. glutamicumでは コハク酸生産能を向上させる遺伝形質が次々に報告され ルーメン細菌群を上回る発酵成績が報告されている [15,16] 特に E. coli KJ134 株は 酢酸 エタノール 乳酸 ギ酸の生成経路に関わる10 個の遺伝子を破壊した多重欠損株で グルコースからコハク酸を71.6 g/l 蓄積した この時の重量収率は 100% であり 理論収率 (112%) に漸近した値である [16] このように 代謝工学的アプローチを用いて コハク酸生産能を改良することは可能である その為 新たなプラットフォーム菌を選定する際に 該細菌の遺伝子組換え技術の成熟度は 重要な選択基準の一つに成り得る 5

13 図 1-1 好気と嫌気条件下におけるコハク酸生成経路の比較左図 好気条件下では 二酸化炭素の生成を伴いながらコハク酸が生成される 右図 嫌気条件下では 二酸化炭素を固定しながらコハク酸が生成される SDH; コハク酸デヒドロゲナーゼ 表 1-2 各種コハク酸生産菌の培養条件 ( 炭素源 通気条件 培養 ph) と発酵成績 ( 蓄積 収率 ) の比較 菌株名炭素源通気条件 培養 ph 蓄積 (g/l) 収率 % 引用文献 Actinobacillus succinogene グルコース嫌気 [12] Anaerobiospirillum succiniciproducens グルコース嫌気 [13] Manheimia succiniciproducens グルコース嫌気 [14] Corynebacterium glutamicum グルコース嫌気 [15] Escherichia coli グルコース嫌気 [16] 6

14 1-3. コハク酸生産能を向上させる為の代謝工学的アプローチに関するこれまでの知見 E. coliやc. glutamicumでは コハク酸生産能が向上した遺伝子改変株が多数報告されている [15,16] これらの報告を整理すると 嫌気条件下でコハク酸生産能を向上させる代謝工学的アプローチは 2つの基本的戦略に基づいている それは 1コハク酸生成経路と競合するNADH 酸化経路の遮断と2コハク酸生成経路の律速反応である炭酸固定経路の強化である まず 1について詳細な説明を行う 一般的に 好気条件下では 呼吸鎖の働きによりNADHが再酸化され 生命活動に必要なATP が生産される ( 図 1-2) 一方 酸素が存在しない嫌気条件下では 乳酸デヒドロゲナーゼ (Lactate dehydrogenase: LDH) やエタノールデヒドロゲナーゼ (Alcohol dehydrogenase: ADH) 及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(Malate dehydrogenase: MDH) が呼吸鎖の役割を果たし NADHの再酸化を行う ( 図 1-2) つまり 嫌気条件下では 乳酸やエタノール 更にはコハク酸を生産する過程でNADHの酸化を行い 細胞内の酸化還元バランスの維持を行っている ( 図 1-2) コハク酸生産能を向上させるには NADHをコハク酸生成経路にあるMDHで いかに効率良く再酸化が出来るかが重要である その為には 競合するNADH 酸化経路を遮断する必要がある 例えば E. coliでは 消費したグルコース重量の約 50% が乳酸に変換される [9] コハク酸を主要な生成物にする為には LDHの反応経路を遮断する方法が定石と言える 次に 2コハク酸生成経路の律速反応である炭酸固定経路の強化について説明する E. coliでは LDHの反応経路を遮断したのみでは コハク酸が主要な生成物として蓄積されない なぜなら 炭酸固定反応であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ ( Phosphoenolpyruvate carboxylase: PPC) がコハク酸生成時の律速反応となり オキサロ酢酸の供給量を制御している為である ( 図 1-3) この代謝制御は PPCがリンゴ酸などのC4カルボン酸によりアロステリックなフィードバック阻害を受ける事に起因している [23,24] この課題を解決する方法として これまでに外来生物種からC4カルボン酸の阻害が解除された PPCを導入する試みが報告されている 例えば Sorghum vulgare 由来のフィードバック阻害解除型 PPCをE. coliに発現させた結果 グルコースからのコハク酸蓄積が3 倍増加した [51] また PPCとは 7

15 異なる炭酸固定経路を利用する方法も提案されている Corynebacterium glutamicum や Lactococcus lactisなどの細菌種では ピルビン酸カルボキシラーゼ (Pyruvate carboxylase: PYC) がピルビン酸からオキサロ酢酸の反応を触媒する ( 図 1-3) Sánchez 等は E. coli のADHとLDHを不活化した株にLactococcus lactis 由来 PYCを導入する方法で 18.7 (g/l) のグルコースから15.6 (g/l) のコハク酸を生産する菌株の構築に成功した [46] これは 重量収率で83.4% のコハク酸を生産した事を意味し 1と2の戦略を組み合わせた良例である このように 1の戦略を実行するには その細菌の嫌気条件下における主要なNADH 酸化経路を同定し その反応を触媒する酵素を特定する必要がある また 2の戦略を実行するには 既存の炭酸固定反応を触媒する酵素の性質を見極める必要がある ゲノム配列情報が開示された細菌を用いることで これらの反応を推定することが可能となり 確度の高い代謝工学的アプローチが実行できる 8

16 図 1-2 好気と嫌気条件下における酸化還元バランス左図 好気条件下では 呼吸鎖により NADH が酸化される 右図 嫌気条件下では 乳酸 エタノール コハク酸生成経路で NADH が酸化される NDH; NADH デヒドロゲナーゼ CYA/CYD; シトクロムデヒドロゲナーゼ PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ LDH; 乳酸デヒドロゲナーゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ 図 1-3 E. coli とコハク酸生産菌における炭酸固定反応左図 E. coli では PPC を介して 炭酸固定反応が行われる PPC は リンゴ酸などの生成物によるアロステリックなフィードバック阻害をうける 右図 コハク酸生産菌では フィードバック阻害が解除された異種由来の PPC* や PYC を炭酸固定反応として用いる PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ 9

17 1-4. 従来のコハク酸発酵法の課題と解決に向けた施策様々な細菌種から 高力価なコハク酸生産菌が報告される一方で これらの菌株の培養方法には共通の特徴がある 表 1-2が示すように 全ての菌種が中性嫌気条件下で コハク酸発酵を行っている コハク酸発酵では コハク酸が酸性物質である為 培養 phを維持する目的でアルカリ ( 中和剤 ) を培地に添加する必要がある アルカリの添加は 培地の浸透圧を上げ コハク酸生産能を 低下させる その為 多くの研究では1 価のアルカリよりも2 価のアルカリであるMg(OH) 2 やCa(OH) 2 が用いられる 取り分け 安価な中和剤としてCa(OH) 2 が多用される [25,26] 図 1-4に示したコハク酸の解離曲線が示すように 中性付近では殆ど全てのコハク酸が 2つのプロトンが解離した2 価のアニオン (Suc 2- ) として存在する為 1 molのコハク酸を中和するには 理論上 1 molのca(oh) 2 が必要となる このように 中性条件下でのコハク酸発酵では 多量のアルカリが消費される計算になる 一方 コハク酸とアルカリが共存する発酵ブロスからコハク酸を単離する工程では 硫酸などの強酸を添加し 培地 phを2 付近まで下げ 溶解度の低いフリー体 (Suc 0 ; 電荷的に中性 ) のコハク酸結晶を取り上げる方法が知られている [27,28] 仮に Ca(OH) 2 を中和剤として選択した場合 培地中のカルシウムイオンは 硫酸と難溶性の硫酸カルシウム ( 石膏 ) を形成する 硫酸カルシウムは 水に対する飽和溶解度が約 3 g/lと極めて低く phを下げていく過程で殆どのカルシウムイオンが石膏という形で結晶として取り上げられる その後 コハク酸イオンを含む発酵ブロスを最終的に ph2.0 付近まで下げる方法でフリー体のコハク酸結晶のみを取り上げることが可能である この一連のプロセスでは 最終的に コハク酸と石膏が生産される ( 図 1-5) 発酵工程で得られる石膏は 着色などの問題から産業価値が低く その殆どが産業廃棄物として処理されることが想定される 仮に ph7.0でコハク酸発酵を行うと コハク酸重量の1.15 倍の石膏を廃棄する計算になる この一例が示すように 中性付近のコハク酸発酵製造プロセスでは多量のアルカリと酸を使用し 結果として 著量の副生塩を製造するプロセスが想定される 10

18 図 1-4 各 ph におけるコハク酸のイオン化状態コハク酸の pka を pka と pka として解離曲線を作成した グレイの領域は これまでに報告されている細菌を用いたコハク酸発酵の ph 領域 (ph6.4~7.0) を意味する 図 1-5 コハク酸発酵製造法の概要発酵法では 培養 ph を維持する目的でアルカリを添加し コハク酸を単離する工程では酸を使用する その結果 多量の副生塩が生産される 11

19 1-5. 酸性嫌気条件下におけるコハク酸発酵法コハク酸の解離曲線が示すように 使用する副原料 ( アルカリと酸 ) と生産される副生塩の重量は 培養 phに依存的と言える 仮に 培養 phを7.0から5.0まで下げると コハク酸の殆どが1 価の酸として存在する ( 図 1-4) この時 培養 phを5.0に維持する為に必要なアルカリ量は ph7.0の場合と比較して半分となる 投入したアルカリ量が半減化出来れば 副生塩もまた原理的に半減の重量となる その為 酸性条件下でのコハク酸発酵は 副原料の削減による製造コストの減尐のみならず 副生塩の生成を抑制した無駄の尐ない環境低負荷型の生産プロセスと言える 一方 これまでに報告されたコハク酸生産菌の殆どが ph6.0 以下の環境ではコハク酸生産能が顕著に低下 もしくは消失することが知られている [25,26] その為 酸性嫌気条件下でのコハク酸発酵を実現するには 同環境化で効率的にコハク酸を生産できる菌株の開発が肝要であり 新たな挑戦と言える ルーメン細菌群の例のように 酸性嫌気条件下でコハク酸を生産する菌種を使用する選択肢もあるが そのような菌種の報告例はこれまでにない そこで 遺伝子組換え技術が可能な菌種の中から 耐酸性が高い菌種を選択し 代謝工学的アプローチでコハク酸生産能を向上させる戦略が現実的である 実際 耐酸性能が高い乳酸桿菌 Lactobacillus plantarumからコハク酸生産菌を開発する取り組みも報告されているが コハク酸生産能は低く 更なる改善が必要である [29] 12

20 1-6. Enterobacter aerogenes に関するこれまでの知見乳酸菌以外にも 耐酸性が高い細菌として Pantoea spp. Klebsiella spp. Enterobacter spp. 等が知られている 中でも Enterobacter aerogenes は γ-プロテオバクテリアに属する通性嫌気性細菌で 生育可能な ph 領域が E. coli よりも幅広く ph4.0 の酸性環境下でも生育が可能である また 酸性嫌気条件下でグリセロールやグルコースなどの炭素源を資化し 2,3-ブタンジオール エタノール 水素などを生産する形質を有する [30-33] その為 バイオ燃料の生産菌として これまで幅広く研究が進められてきた 一方 嫌気的な環境下で多様な代謝産物を生産するにもかかわらず その代謝反応を触媒する酵素 制御機構などの知見は乏しい 実際 E. aerogenes を用いたバイオ燃料生産菌の開発では 変異株 ( 非遺伝子組換え体 ) の解析が主流であり 代謝工学的なアプローチは 殆ど実施されていない 2012 年に E. aerogenes の全ゲノム配列が開示されると 遺伝子欠損技術やオミックス解析など 遺伝学的な解析手法が徐々に報告されるようになったが 依然として E. coli コハク酸生産菌のような高度な遺伝子組換え体の報告例はない [34] 13

21 1-7. 研究の意義と目的 PBS の原料であるコハク酸を 植物バイオマスを用いて発酵法で生産する技術開発は 脱石化社会の取り組みの一つであり 資源循環型社会の実現に繋がる社会的な要請と言える 一方 現状の細菌から構築されたコハク酸生産菌の殆どが 中性条件下でしかコハク酸生産能を示さない その為 現状のコハク酸発酵は 中性付近で行うプロセスが想定され 多量の副原料を使用し 副生塩を廃棄する課題が顕在する この課題に対して 本章ではコハク酸発酵における培養 ph を下げる方法 つまり酸性嫌気条件下でコハク酸発酵を行うことで 副原料の使用量と副生塩の生成量を削減できることを示した 一方 これまでに報告されたコハク酸生産菌の殆どが ph6.0 以下の環境ではコハク酸生産能が顕著に低下 もしくは消失することが知られており 現状のコハク酸生産菌の改良では 酸性 (ph<6.0) 嫌気条件下でのコハク酸発酵は困難と言える そこで 本研究では酸性 (ph<6.0) 嫌気条件下でのコハク酸発酵を実現する為に 新たに耐酸性通性嫌気性細菌である E. aerogenes をプラットフォーム菌に選定し そのコハク酸生産能を向上させる為の代謝工学的アプローチを明らかにすることを目的とした 以下に本研究の構成ならびに目的を纏めた ( 図 1-6) 1 章 緒論 では コハク酸発酵におけるこれまでの知見 及び課題を明らかにし 本研究の目的と意義を示した 2 章 耐酸性通性嫌気性細菌 E. aerogenesのコハク酸生産菌としての能力評価 では 酸性嫌気条件下でコハク酸発酵を行う為のプラットフォーム菌としてE. aerogenesを候補とし その耐酸性を評価することを目的とした E. aerogenesの酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における比グルコース消費速度を指標とし 既存の代表的なコハク酸生産菌であるE. coliと比較する方法で 耐酸性能を評価した また E. aerogenesの同環境下における主要なnadh 酸化経路を特定する目的で 培養液中の代謝産物の定量分析を行った 3 章 E. aerogenesの主要なnadh 酸化経路の遮断と異種由来炭酸固定反応の導入によるコハク 14

22 酸生産能の改良 では NADH 酸化経路の遮断によるNADH 供給量の増加 もしくは炭酸固定反応の導入によるオキサロ酢酸供給量の増加がE. aerogenesのコハク酸生産能の向上に与える影響を明らかにすることを目的とした 2 章で特定した主要なNADH 酸化経路であるエタノールと2,3-ブタンジオール生成経路の遮断 更にはC. glutamicum 由来 PYCと A. succinogenes 由来 PCKの導入を行い コハク酸生産能の改良を目指した 4 章 E. aerogenesのピルビン酸由来副生経路の遮断と PYCとPCKの共発現によるコハク酸生産能の改良 では ピルビン酸から副生する生成物の代謝経路の遮断と PYCとPCKの共発現がコハク酸生産能の向上に与える影響を明らかにすることを目的とした 3 章で得られた菌株に対して 更に乳酸 酢酸 2,3- ブタンジオール生成経路の遮断と C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCKの共発現を実施し コハク酸生産能に与える影響を評価した また 本章で得られた菌株の酸性環境下におけるコハク酸生産能を評価する目的で phを酸性側に制御した条件でコハク酸培養試験を実施した 5 章 E. aerogenesのコハク酸生成経路におけるatp 獲得量の向上によるコハク酸生産量の改良 では コハク酸生成経路で得られるATP 量を向上させる方法で コハク酸生産能の改善を目指した 4 章で得られた菌株に対して A. succinogene 由来 PCKの導入とグルコースPTSの遮断を行い コハク酸生産能に及ぼす影響を評価した また 改変された菌株の酸性 (ph5.7) 嫌気条件下におけるコハク酸発酵試験を行い 得られた発酵成績を既報と比較する方法で 技術的進捗を示した 6 章 結論 では 各章で得られた結果を纏め 本研究を総括し 社会的意義や展望を示した 15

23 図 1-6 学位論文の構成と実施事項の一覧 16

24 2 章耐酸性通性嫌気性細菌 E. aerogenes のコハク酸生産菌としての能力評価 2-1. 緒言これまでに報告されているコハク酸生産菌の殆どが 中性環境下でのみコハク酸を生産する ( 表 1-2) なぜなら これら細菌群の生育可能な ph 領域は 中性付近に限定されており 酸性環境下では生育出来ない形質であることに起因している その為 酸性嫌気条件下でのコハク酸発酵を実現するには 同環境下で効率的にグルコースを資化できる菌種を選択し 新たなコハク酸生産菌を作出する方法が考えられる 同環境下でコハク酸発酵を行う為のプラットフォーム菌の選定基準を二つ挙げる 一つは コハク酸生産能を向上させる為の遺伝子改変技術が適用できる菌種 もう一つは 高い耐酸性能を保持した菌種である 本検討では 両基準を満たす菌種として E. aerogenes を候補とした 以下に二つの選択基準に対する論拠を説明する 最初に 該細菌の遺伝子改変技術に関しては 2012 年に Shin 等によって E. aerogenes KCTC2190 株の全ゲノム配列が決定され 代謝経路の全体像が推定出来るようになった [34] また 遺伝子改変技術に関しても 同年 Jung 等によって λ-red recombination system を利用した遺伝子破壊株の構築法が確立された [35] また 遺伝子の発現強化に関しては E. coli で汎用的に使用されている発現プラスミド (pmw 系 pstv 系 puc 系 ) をシャトルベクターとして利用できる このように E. coli で確立された遺伝子改変技術とツールの一部が E. aerogenes にも適用でき コハク酸生産能を改善する為の一連の遺伝子改変技術の基盤は 整備されている 次に E. aerogenes の耐酸性について議論する 耐酸性が高い という表現には 注意を払う必要がある 耐酸性が高いという言葉は 低 ph での生存能力 (survivability) が高い意味と 生育下限 ph が低い意味 (growth ability) の両方で用いられるが 両者が示す表現型は異なる 例えば E. coli は ph2.0 の環境下で 30 分間暴露しても生存率は高く 生存能力の観点から E. coli は高い耐酸性を有すると定義できる [36] 一方 ph4.5 の環境下では グルコースの資化が殆ど行われ 17

25 ず 菌体増殖は出来ない このように 生育下限 ph の観点からは 耐酸性が高い菌種とは言い難い コハク酸発酵などの物質生産においては 糖が資化される速度が重要であり この点を考慮すると 我々が求める形質は後者に近いが 同義では無い 本検討で求められる耐酸性は 酸性嫌気条件下で早い基質消費速度を有する (assimilality) と定義する とりわけ 発酵原料として工業的に用いられるグルコースの消費速度が 同環境下で高いことが重要である E. aerogenes の耐酸性を示す知見として E. aerogenes IV-2 株は ph5.0 かつ嫌気条件下でグルコースを資化し 2,3-ブタンジオールを生産することが知られている [31] このように定性的に 本菌種の耐酸性能が高いことを示す結果は既に報告されている 一方で これまでに E. aerogenes の同環境下での比グルコース消費速度を数値化し 他の菌種と比較した事例はない 本章では 基準株を含む 2 種類の E. aerogenes AJ 株と ATCC13048 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下の比グルコース消費速度 (g/g[dcw]/h; 乾燥重量あたり1グラムの菌体が 1 時間に消費するグルコース重量グラム ) を E. coli MG1655 株 ( 基準株 ) と比較定量する方法で その耐酸性を評価する事を目的とした これらの結果を基に E. aerogenes が酸性嫌気条件下でコハク酸発酵を実施する為に適したプラットフォーム菌であるかの判断を行う また 培養終了後の培養液中の代謝産物を定量分析する方法で E. aerognese の同環境下における代謝反応の解明を目指した ゲノム配列の情報から E. aerognese には乳酸 エタノール 2,3- ブタンジオールの生成経路が存在することが明らかである これらの生成経路には NADH の酸化反応が含まれており 嫌気条件下での酸化還元バランスの均衡化に重要な役割を果たしている 効率的にコハク酸を生産させる為には コハク酸生成経路で NADH の酸化を行う必要があり 乳酸 エタノール 2,3-ブタンジオールの生成経路は NADH を酸化するという観点で コハク酸生成経路と競合する関係にある 本章では E. aerogenes の主要な代謝産物を同定する方法で コハク酸生産能を向上させる為に 優先的に遮断すべき NADH 酸化経路の特定を目指した 18

26 2-2. 実験材料と方法 菌株 本章で使用した菌株を表 2-1 に記載した 培地と培養条件 E. coli と E. aerogenes の培養は 汎用的に Luria-Bertani (LB) 培地を用いた 必要に応じて寒天 20 g/l 抗生物質( 抗生物質濃度 Km;50 mg/l Cm;40 mg/l) を添加して使用した 特に本文中に記載が無い場合は 37 で培養を実施した 嫌気培養時には角型ジャー標準型 ( 三菱ガス化学社製 ) に AnaeroPack-A04( 三菱ガス化学社製 ) を 1 個使用した 培地組成を表 2-2 に示す 発酵槽を用いた酸性好気条件下と酸性嫌気条件下における培養試験 容量 1L の発酵槽を用いて 酸性好気条件下と酸性嫌気条件下の培養を実施した 酸性好気 条件下の培養手順を補足資料 1 酸性嫌気条件下の培養手順を補足資料 2 に記載した E. coli と E. aerogenes の乾燥菌体重量 (Dried Cell Weight; DCW) 算出式 E. coliとe. aerogenesの乾燥菌体重量 (DCW) は以下の手順に従って算出した OD 600 値は Spectrophotometer U-2001( 日立社製 ) を用いてA600の吸光度を測定した値から ブランク値を引いたものを使用した 微量天秤にて1.5 ml 容量のマイクロチューブの風袋重量を予め測定し OD 600 値が1, 5, 10, 20, 50, 100の菌体溶液 1 mlをマイクロチューブに分注した その後 4 15,000 rpm(21,600 g) で1 分間遠心した 上清を捨て 0.1 N 塩酸を1 ml 分注し 3 回洗浄を行った 上清を捨てた菌体ペレットを 真空乾燥機にて一晩 60 で乾燥した 微量天秤にて乾燥重量を測定 再度 乾燥機にて一晩乾燥させ 乾燥重量に変化が無い事を確認した 得られた乾燥重量から風袋重量を差し引いた値をDCW 値とした 本方法により得られたOD 600 値とDCWの換算 式を以下に示す E. coli;g[dcw]/l=0.287 OD 600 E. aerogenes;g[dcw]/l=0.291 OD

27 グルコース濃度 OD 有機酸 アルコールの定量 グルコース濃度は AS-310 Biotec Analyser ( サクラ精機社製 ) を用いて酵素法 ( 酵素電極 ) にて 定量分析した OD 600 値は U-2001 spectrometer ( 日立社製 ) を用いて分析した 有機酸は HPLC(High Performance Liquid Chromatography) により定量分析を行った 有機酸分析の詳細な条件を以下に示す [9] 分析機器;ELITE LaChorum ( 島津社製 ) < 分離条件 >カラム ; Shim-pack SCR-102H 二本直列接続 ガードカラム SCR-102H 移動相; 5 mm p-トルエンスルホン酸 流量 ; 0.8 ml/min 温度 ; 50 < 検出条件 > 緩衝液 ; 5 mm p-トルエンスルホン酸および 100 μm EDTA を含む 20 mm Bis-Tris 水溶液 流量 ; 0.8 ml/min 検出器; CDD-10AD polarity + response SLOW temperature 53 ( カラム温度 +3 ) scale1 2 4 μs /cm エタノール, 2,3- ブタンジオール, アセトインの分析は GC(Gas Chromatography) により定量 した 分析機器 ;GC4000 (GL-Science 社製 ) 検出方法 ;flame ionization detector 分離カラム ; A TC-BOND Q capillary (GL-Science 社製 ). 20

28 表 2-1 本章で使用した菌株一覧 菌株 注釈 薬剤耐性 引用 入手先 Strains E. coli strain MG1655 基準株 ATCC 1 E. aerogenes strains ATCC13048 基準株 ATCC 1 AJ 野生株 ( FERM BP-10955) AIST 2 [33] 1) American Type Culture Collection 2) 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター 表 2-2 本章で使用した培地一覧 LB 培地 最終濃度 Bacto-tryptone 10 g/l Bacto-yeast extract 5 g/l NaCl 5 g/l 分間オートクレイブで殺菌後 使用した SOC 培地 最終濃度 Bacto-tryptone 20 g/l グルコース 10 g/l Bacto-yeast extract 5 g/l NaCl 5 g/l 分間オートクレイブで殺菌 放冷後 終濃度が 10 g/l になるように別殺菌したグルコースを添加した MS 培地 最終濃度 グルコース 40 g/l MgSO 4 7H 2 O 1 g/l Bacto-yeast extract 2 g/l (NH 4 ) 2 SO 4 1 g/l KH 2 PO 4 1 g/l MnSO 4 5H 2 O 10 mg/l FeSO 4 7H 2 O 10 mg/l ビオチン 1 mg/l ステリカップ (SCGPU05ER) を使用し濾過滅菌を行った後 使用した 21

29 酸性好気条件下における培養試験の操作手順 1. グリセロールストックから菌体を LB プレートに均一に塗布し 37 好気条件下で 16 時間前培養を行った 2. LB プレート上の菌体をかき取り 10 ml の MS 培地に懸濁した 3. OD 600 を測定後 OD 600 が 40 になるように MS 培地で希釈した 4. OD の培養液 10 ml を 290 mlの MS 培地に稙菌した この時 植菌後の MS 培地の OD 600 は 約 1.3 となり DCW 換算で約 0.4 g[dcw]/l となるように調整した 5. 稙菌後の MS 培地 300 ml を全量 1 L 発酵槽に移液し BMZ-P 培養装置 (ABLE Biott 社製 ) にて培養を行った 培養管理方法として 培地 ph は 5.0 になるにようにアンモニアガスにて制御し 培地温度は 34 で制御を行った また 300 ml/min の空気を 0.22μm フィルターを通して通気し 培地の溶存酸素濃度が 5% 以上になるよう撹拌制御を行った ( 各種設定値 ; 培養 ph 5.0 ± 0.05 温度 34.0 ± 0.2 撹拌 700 rpm) 6. 約 2 時間ごとに 2 ml の培養液をサンプリングし OD 600 と培地中のグルコース濃度を測定した 補足資料 1 酸性好気条件下における培養試験の操作手順 22

30 酸性嫌気条件下における培養試験の操作手順 1. グリセロールストックから菌体を LB プレートに均一に塗布し 37 好気条件下で 16 時間前培養を行った 2. 菌体が生育した LB プレートを AnaeroPack-A04 を用いて 37 にて 16 時間 嫌気条件下に馴致させた 3.LB プレート上の菌体をかき取り 10 ml の MS 培地に懸濁した 4. OD 600 を測定後 OD 600 が 10 になるように MS 培地で希釈した 5. OD の培養液を 290 ml の MS 培地に稙菌した この時 培地の OD 600 は 約 0.3 となり DCW 換算で約 0.1 g[dcw]/l となるように調整した 6. 稙菌後の MS 培地 300 ml を全量 1 L 発酵槽に移液し BMZ-P 培養装置にて培養を行った 培養管理方法として 培地 ph は 5.0 になるにようにアンモニアガスにて制御し 培地温度は 34 で制御した 培養中は 嫌気条件にする為 300 ml/min の高純度窒素ガスを 0.22μmフィルターを通して通気した ( 各種設定値 ; 培養 ph 5.0 ± 0.05 温度 34.0 ± 0.2 撹拌 700 rpm) 7. 約 2 時間ごとに 2 ml の培養液をサンプリングし OD 600 と培地中のグルコース濃度を測定した補足資料 2 酸性嫌気条件下における培養試験の操作手順 23

31 2-3. 結果 E. aerogenes の酸性 (ph5.0) 好気条件下における培養特性代表的な発酵原料の一つであるグルコースを用いて E. aerogenes と E. coli の酸性 (ph5.0) 好気条件下における比グルコース消費速度 ( 乾燥重量 1 グラムの菌体あたり 1 時間に消費するグルコース重量グラム ; g/g[dcw]/h) を測定した 本検討では腸内細菌群の培養に汎用的に用いられる MS 培地を使用し 1 L 発酵槽にて培養試験を行った 培養条件は 温度 34 培養 ph は 5.0 制御にて実施した E. aerogenes からは AJ 株 ( 野生株 ) と ATCC13048 株 ( 基準株 ) を選択し E. coli からは MG1655 株 ( 基準株 ) を選択した LB 培地で一晩前培養した菌体を 0.4 g[dcw]/l になるように 300 ml MS 培地に稙菌し 培養を行った 継時的に培養液をサンプリングし 菌体量と培地のグルコース濃度を測定した 結果を図 2-3 に纏めた 図 2-3 A に示すように E. aerogenes の方が E. coli よりも速い生育速度が観察された 実際 培養 8 時間目の E. aerogenes ATCC13048 株と AJ 株の菌体量は それぞれ 8.10 と 8.07 (g[dcw]/l) に対して E. coli MG1655 株は E. aerogenes の約 1/3 に相当する 2.87(g[DCW]/L) であった また 図 2-3 B に示すように E. aerogenes ATCC13048 株と AJ 株は約 8 時間の培養で 初期濃度にあたるグルコース約 40 g/l を完全に消費したのに対して E. coli MG1655 株は 12 時間の培養で消費したグルコース量は 僅か 12.0 g/l であった これらの値から 酸性 (ph5.0) 好気条件下の比グルコース消費速度 (g/g[dcw]/h) を算出すると 降順に E. aerogenes AJ 株 E. aerogenes ATCC13048 株 E. coli MG1655 となり それぞれ g/g[dcw]/h の値を示した 以上の結果より 酸性 ( ph5.0) 好気条件下では E. aerogenes AJ 株と ATCC13048 株が E. coli MG1655 株よりも早い速度で増殖をし 2 倍以上高い比グルコース消費速度を示した 24

32 E. aerogenes の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における培養特性酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における比グルコース消費速度を算出する目的で 1 L 容量の発酵槽を用いて培養試験を実施した 嫌気条件の環境にする為 培養を通して 高純度窒素ガス (< 99%) を通気した LB 培地で 16 時間培養した菌体を Anaeropack A-04 を用いて 嫌気条件下で 16 時間馴致させた後 菌体を 0.1 g[dcw]/l になるように 300 ml MS 培地に稙菌した 継時的に サンプリングを行い 菌体量 (g[dcw]/l) と培地のグルコース濃度を測定した 結果を図 2-4 に纏めた 図 2-4 A に示すように E. coli MG1655 株は 菌体量が 0.5 g[dcw]/l 以上増加しなかったのに対して E. aerogenes AJ 株と ATCC13048 株では 培養終了まで菌体量の増加が観察された 最終的に 23 時間の培養で E. coli MG1655 株 E. aerogenes ATCC13048 株 E. aerogenes AJ 株の菌体量は それぞれ g[dcw]/l となり E. aerogenes AJ 株が最も高い菌体量を示した また 図 2-4 B に示すように グルコース消費量も E. aerogenes AJ 株が最も高い値を示した 実際 23 時間の培養で E. coli MG1655 株と E. aerogenes ATCC13048 株が それぞれ 7.6 g/l と 28.8 g/l のグルコースを消費したのに対して E. aerogenes AJ 株は 37.8 g/l のグルコースを消費した これらの測定値から酸性 (ph5.0) 嫌気条件下の比グルコース消費速度 (g/g[dcw]/h) を計算すると 降順に E. aerogenes AJ 株 E. aerogenes ATCC13048 株 E. coli MG1655 となり それぞれ g/g[dcw]/h の値を示した 以上の結果より 酸性 (ph5.0) 嫌気培養条件下では E. aerogenes AJ 株が 最も高い比グルコース消費速度を示した 以上の結果から E. aerogenes AJ 株をコハク酸生産菌の新たなプラットフォーム菌に選定した 25

33 図 2-3 酸性 (ph5.0) 好気条件下における菌体量と培地グルコース濃度の継時的変化左図 A; 菌体量 (g/[dcw]/l) 右図 B; 培地中のグルコース濃度 (g/l) ;E. coli MG1655 ;E. aerogenes ATCC13048 ; E. aerogenes AJ 図 2-4 酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における菌体量と培地グルコース濃度の継時的変化左図 A; 菌体量 (g[dcw]/l) 右図 B; 培地中のグルコース濃度 (g/l) ; E. coli MG1655 ;E. aerogenes ATCC13048 ;E. aerogenes AJ

34 E. aerogenes AJ 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における代謝産物の同定 E. aerogenes は 嫌気条件下で水素 エタノール 2,3-ブタンジオールを生成物として培地中に蓄積する [30-33] 本章では これらの代謝産物の定量測定を行い 酸性(pH5.0) 嫌気条件下における E. aerogenes AJ 株の主要な NADH 酸化経路の特定を目指した 酸性 (ph5.0) 嫌気条件下で培養後の培養液を遠心し フィルター濾過により除菌した上清液を用いて各種代謝産物の分析を行った 有機酸の定量は HPLC アルコールの定量は GC により解析した 代謝産物の定量解析の結果を表 2-3 に纏めた 酸性 (ph5.0) 嫌気条件下では E. coli MG1655 株は 乳酸を主要な生成物として培地中に蓄積した 培地中の乳酸濃度は 3.5 g/l となり 消費されたグルコース重量の 46.0% が乳酸に変換された 以上の結果から E. coli MG1655 株では乳酸生成経路が主要な NADH 酸化経路として機能していることが示された 一方 E. aerogenes AJ 株は エタノールと 2,3-ブタンジオールが主要な生成物となり それぞれ 10.7 g/l と 9.8 g/l の濃度が検出された エタノールと 2,3-ブタンジオールの両生成物は 消費したグルコース重量あたり それぞれ 28.3% と 25.9% の収率で変換された結果を示した また AJ 株では ATCC13048 株と比較すると 乳酸と酢酸の生成量が低い特徴が観察された ATCC13048 株が それぞれ 6.7 g/l と 3.9 g/l の乳酸と酢酸を生産するのに対して AJ 株では 約半分に相当する 3.5 g/l と 1.9 g/l であった 以上の結果から E. aerogenes AJ 株では エタノールと 2,3-ブタンジオール生成経路が 主要な NADH 酸化経路として機能していることが分かった また E. aerogenes AJ 株の培養液には 1.4 g/l のコハク酸が検出されており 同株が酸性 (ph5.0) 嫌気条件下でコハク酸生産能を有する結果を得た 27

35 表 2-3 各菌株の各培養条件におけるグルコース消費量と生成物濃度 菌株名 培養条件 グルコース 消費量 g/l 最終生成物 g/l ピルビン酸リンゴ酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 1 2,3-BuOH 2 アセトイン E. coli MG 好気 6 嫌気 12.0 ± ± ND 5 ND ND ND 0.9 ± 0.1 ND ND ND 7.6 ± ± 0.1 < ± ± ± ± ± 0.1 ND ND E. aerogenes ATCC13048 E. aerogenes AJ 好気 43.4 ± 2.1 ND ND 0.1 ± 0.1 ND ND 0.2 ± 0.1 ND 0.2 ± ± 0.1 嫌気 28.8 ± ± 0.1 < ± ± ± ± ± ± 0.5 < 0.1 好気 43.4 ± 1.4 ND ND 0.2 ± 0.1 ND ND ND ND 0.8 ± ± 0.2 嫌気 37.8 ± ± 0.1 < ± ± ± ± ± ± ± 0.1 1) EtOH はエタノールを意味する 2) 2,3-BuOH は 2,3- ブタンジオールを意味する 3) E. coli MG1655 株は 12 時間 E. aerogenes ATCC13048 株と E. aerogenes AJ 株は 8 時間培養後の培養液を分析した 4) 各値は n=3 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 5) ND は未検出を意味する 6) 23 時間培養後の培養液を分析した 28

36 2-4 考察 E. aerogenes AJ 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における比グルコース消費速度 Lu 等は E. coli AFP111 株を用いて ph がコハク酸生産能に及ぼす影響を検討した [29] 表 2-4 に示すように E. coli AFP111 株は グルコースから収率 60% 以上でコハク酸を生産する能力を有する この検討の中で E. coli AFP111 株は ph 6.4 で最も高い比グルコース消費速度が観察され その値は 0.28 g/gdcw/h であった この結果と本検討で得られた E. coli MG1655 株の値 (ph g/gdcw/h) を比較すると コハク酸生産能の向上により比グルコース消費速度は顕著に低下したと推定できる また E. coli AFP111 株は ph の低下に依存して 比グルコース消費速度も低下した E. coli AFP111 株の ph5.8 における比グルコース消費速度は 0.11 g/g[dcw]/h となり ph6.0 から僅か ph を 0.2 下げただけで 比グルコース消費速度は 40% 以上低下した この傾向を加味すると E. coli AFP111 株のコハク酸生産能が維持できる限界 ph は 5.8 付近であると推察される 一方 E. aerogenes AJ 株は ph 5.0 の環境下で E. coli MG1655 株よりも 1.9 倍高い比グルコース消費速度が観察された 恐らく E. coli と同じように E. aerogenes においてもコハク酸生産能の向上に比例して グルコース消費速度が低下すると推定されるが どれくらい低下するかは AJ 株から実際にコハク酸生産菌を作出し 確かめる以外の手段はない いずれにしても E. aereogens は これまでにコハク酸生産菌として開発された細菌の中では 酸性嫌気条件下で高い比グルコース消費速度を有していることが示された 表 2-4 E. aerogenes AJ 株 E. coli MG1655 株 E. coli AFP111 株のコハク酸収率と比グルコース消費速度 29

37 E. aerogenes の細胞形態がグルコース消費速度に及ぼす影響本章では 酸性条件下で E. aerogenes の比グルコース消費速度が E. coli MG1655 株よりも優位に高い結果を明らかにした この形質は 嫌気条件下のみならず 好気条件下でも観察されており AJ 株が酸性条件下で普遍的に高い比グルコース消費速度を有する結果を示した 両菌種の比グルコース消費速度の相違を細胞形態の観点から考察する E. coli の細胞形態が短軸 μm 長軸 μm 体積 μm に対して E. aerogenes は短軸 μm 長軸 μm 体積 μm と一回り小さい容積である 菌体サイズが小さくなると 体積あたりの表面積値は大きくなり 体積あたりに取り込める基質量は多くなる このように物理的に E. aerogenes の方が基質との接触面積の観点から 有利な形質であると言える 一方 グルコースの資化速度は 複雑な代謝システムの総和として現れる表現型であり 細胞形態だけでは全ての説明は困難である 今後 更なる解析により 該細菌の糖の取り込みシステムの解明を期待する E. aerogenes AJ 株の酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における代謝反応これまでに E. aerogenes は嫌気条件下でグルコースから エタノール 2,3-ブタンジオール 水素などを生産することが知られている [27,29,31] 本検討では AJ 株と ATCC13048 株の代謝産物を定量解析した結果 両菌株間でエタノールと 2,3-ブタンジオールを主要な生成物として生産した ( 表 2-3) 一方で AJ 株では ATCC13048 株と比較して 乳酸 酢酸などの有機酸生産量が低い値を示した これは E. aerogenes の株間における 代謝の多様性を示している E. aerogenes において 乳酸生成は D-lactate dehydrogenase(ldh) によって触媒される LDH をコードする ldha 遺伝子の配列を両菌株間で比較したところ D85E と M238I(ATCC13048 株 / アミノ酸番号 /AJ 株 ) のアミノ酸変異が見つかった これらのアミノ酸変異が 両菌株間における LDH の総活性値に差異を生じさせ その結果 乳酸の生産量に差異が生じたと思われる このように 両菌株間での代謝産物の違いは 変異点の集積に起因すると思われる E. aerogenes 特有の代謝産物は 従来とは異なる代謝アプローチの必要性を示している 本章 30

38 で示したように E. coli は乳酸を主要な生成物として生産し 乳酸生成経路が唯一の NADH 酸化経路として機能している ( 表 2-3) その為 E. coli のコハク酸生産能を改良する手段として乳酸経路の遮断が定石として広く行われいる [16,29,44] また E. coli 以外の C. glutamicum においても乳酸生成経路が主要なNADH 酸化経路として機能していることが知られている [15] その為 両菌種の代謝工学的アプローチは類似しており 得られたコハク酸生産菌の遺伝子型も酷似している 一方 本章の結果から E. aerogenes ではエタノールと 2,3-ブタンジオールを主要な NADH 酸化経路として利用しており E. coli や C. glutamicum とは大きく異なった代謝が行われていることを明らかにした その為 コハク酸生産能を向上させる為に遮断する代謝経路も 従来の経路とは異なることが予測される 更に NADH 酸化経路が 水素 エタノール 乳酸 更には 2,3 ブタンジオールと多岐に渡る為 NADH を効率的にコハク酸生成経路に供給する為には これらの経路をすべて遮断する必要がある 31

39 2-5. 結言 本章では 酸性嫌気条件下のコハク酸発酵を行う菌種に求められる形質として 同環境下における高い比グルコース消費速度を挙げた E. aerogenesの比グルコース消費速度をe. coliと比較する為に 酸性 (ph5.0) 嫌気条件下における培養試験を実施した 酸性 (ph5.0) 嫌気条件下でE. aerogenesは E. coli MG1655よりも良好な生育と高いグルコース消費量が観察された これらの測定値を基に 両菌種の比グルコース消費速度を算出した結果 E. aerogenes AJ 株の比グルコース消費速度は 1.41 g/g[dcw]/hとなり E. coli MG1655 株の0.76 g/g[dcw]/hに対して 1.9 倍高い値が観察された この結果から E. aerogenes AJ 株からコハク酸生産株を構築できれば E. coliよりもコハク酸生産速度が高い菌株が構築できると判断し E. aerogenes AJ 株をコハク酸生産菌の新たなプラットフォーム菌に選定した また 代謝産物の分析結果からE. aerogenes AJ 株は エタノールと2,3-ブタンジオールを主要な生成物として培地中に蓄積し 消費したグルコース重量の28.3% と25.9% を それぞれエタノールと2,3-ブタンジオールに変換した これらの結果から E. aerogenes AJ 株では エタノールと2,3-ブタンジオールを主要な NADH 酸化経路として利用していることを明らかにした 一方 AJ 株はコハク酸を培地中に蓄積したが その収率は3.7% と低い値が観察された AJ 株のコハク酸生産能をあげる為には エタノールと2,3-ブタンジオール生成経路を遮断する方法が有効だと考えられる 32

40 3 章 E. aerogenes の主要な NADH 酸化経路の遮断と異種炭酸固定反応の導入によるコハク酸生産能の改良 3-1. 緒言 1990 年代以降 嫌気条件下でコハク酸生産能を向上させる為の代謝工学的アプローチは E. coliやc. glutamicumなどで多数報告されてきた [38-44] これらのアプローチは 大きく2つの概念より構成されている それは コハク酸生成経路と競合するNADH 酸化経路の遮断 [38-40] と コハク酸生成経路の律速反応である炭酸固定経路の強化 [41-44] である E. aerogenes AJ 株は 酸性嫌気条件下でエタノールと2,3-ブタンジオールを主要な生成物として蓄積した 本章では 解糖系で得られるNADHを効率的にコハク酸生成経路で再酸化させる為に E. aerogenes AJ 株のエタノール及び2,3-ブタンジオール生成経路の遮断を試みる ( 図 3-1) 2012 年 E. aerogenes KCTC2190 株のゲノム配列 (GenBank Accession No. CP ) が公開され エタノールや2,3-ブタンジオール 更にはコハク酸生成経路を構成する一連の反応と それらの反応を触媒する酵素が同定された [34] エタノール生成経路は アセチル-CoAからアセトアルデヒドの反応を触媒するアセチルCoAデヒドロゲナーゼ (ACDH) とアセトアルデヒドからエタノールの反応を触媒するアルコールデヒドロゲナーゼ (ADH) より構成される ( 図 3-2) E. coliでは adhe 遺伝子にコードされたADHEが ACDHとADHの両活性を有した二機能性の役割を担っている [46,47] E. aerogenesの染色体上にもadhe 遺伝子の配列を見つけることが出来る E. aerogenes ADHEは アミノ酸配列でE. coli ADHEと97% の同一性を示しており E. coliと同じ二機能性の酵素として機能していると推定される 本章ではadhE 遺伝子 (locus tag; EAE_16895) を破壊する方法で エタノール生成経路を遮断することを目的とした 2,3-ブタンジオール生成経路は アセチル-CoA から -アセトラクテイトの反応を触媒する -アセトラクテイトシンターゼ ( -ALS) -アセトラクテイトからアセトインの反応を触媒するア -アセトラクテイトデカルボキシラーゼ ( -ALDC) 更にはアセトインから 2,3-ブタンジオールの反応を触媒するアセトインレダクターゼ (AR) より構成される ( 図 3-2) E. aerogenes AJ 株は 嫌気条件下で 33

41 アセトインと 2,3-ブタンジオールを生成する為 両代謝産物の生成を抑制するには -ALDC の不活化が有効である -ALDC は buda 遺伝子にコードされており 本検討では buda 遺伝子 (locus tag; EAE_17500) を破壊させる方法で アセトインと 2,3-ブタンジオール生成の抑制を目指す 一方で NADH 酸化経路の遮断だけでは コハク酸生産能を向上できない結果が報告されている E. coliでは 主要なNADH 酸化経路である乳酸生成経路の遮断を実施しても コハク酸が主要な生成物として蓄積されない なぜなら 炭酸固定反応を触媒するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ (Phosphoenolpyruvate carboxylase; PPC) がコハク酸生成時の律速反応となり オキサロ酢酸の供給を制御している為である ( 図 3-3) この代謝制御は PPCがリンゴ酸などのC4カルボン酸によりアロステリックなフィードバック阻害を受ける事に起因する [23,24] ゲノム配列情報から E. aerogenesでは E. coliと同様にppcが唯一の炭酸固定経路として機能していることが推察される [34] その為 エタノール及び2,3-ブタンジオール生成経路を遮断してもコハク酸生産能が向上しない可能性が危惧される この課題を解決する方法として これまでに外来生物種から 異なる炭酸固定経路を利用する方法が提案されている Corynebacterium glutamicumやlactococcus lactis などの菌種では ピルビン酸カルボキシラーゼ (Pyruvate carboxylase; PYC) がピルビン酸からオキサロ酢酸の反応を触媒する ( 図 3-3)[42,44] また PYCは リンゴ酸などのC4カルボン酸で活性が阻害されない特性を有している 一方で 元来コハク酸を生産しながら生育しているルーメン細菌では PPCやPYCの反応よりも エネルギー的に優位な炭酸固定反応が行われている [40,41] PPCやPYCが 炭酸水素イオンを基質として固定化するのに対して ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (Phosphoenolpyruvate carboxykinase; PCK) は 溶存 CO 2 ガスを固定化する この炭酸固定反応では ギブスの自由エネルギー準位が高い溶存 CO 2 ガスを固定化する為 反応生成物としてATP が生成される ( 図 3-3) 本章では NADH 経路の遮断と並行して C. glutamicum 由来 PYCとA. succinogenes 由来 PCKの導入によるコハク酸生産能の改良を目的とした 34

42 図 3-1 E. aerogenes における嫌気条件下での酸化還元バランスに関わる反応嫌気条件下では 解糖系で得られた NADH を 2,3- ブタンジオール エタノール生成経路で消費し 酸化還元バランスを維持する コハク酸生産能を向上させるには これらの経路ではなく コハク酸生産経路で NADH を酸化させる必要がある 赤矢印 コハク酸生成経路 PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ AR; アセトインレダクターゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ 図 3-2 ゲノム配列情報から推定される E. aerogenes のエタノール 2,3- ブタンジオールとコハク酸生成経路大文字は酵素名を意味し カッコ内の斜字は遺伝子名を意味する 矢印はピルビン酸から派生する副生の生成経路 太矢印はコハク酸生成経路 X 印は反応経路の遮断を表す -ALS; - アセト乳酸シンターゼ -ALDC; - アセト乳酸デカルボキシラーゼ AR; アセトインレダクターゼ ACDH; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ LDH; D- 乳酸デヒドロゲナーゼ PPC; PEP カルボキシラーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ FRD; フマル酸レダクターゼ 35

43 図 3-3 細菌種で異なる炭酸固定反応左図 E. coli や E. aerogenes では PPC が炭酸固定反応を触媒する この反応は リンゴ酸などの C4 カルボン酸に対して アロステリックなフィードバック阻害を受ける 中央図 コハク酸生産菌では S. vulgare 由来のフィードバック阻害解除型の PPC* C. glutamicum や L. lactis 由来 PYC などが利用されている 右図 ルーメン細菌 A. succinogenes では PCK が炭酸固定反応を触媒する PCK の反応では 溶存 CO 2 ガスを直接固定し ATP を生成する PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ 36

44 3-2. 実験材料と方法 菌株とプラスミド本章で使用した菌株とプラスミドを表 3-1 に記載する 各菌株に pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck を導入した株を それぞれ菌株名 /empty 菌株名/PYC 菌株名/PCK と記載した 例えば adhe 株に pstv28 を導入した株は adhe/empty と記載した 培地と培養条件 AJ 株の培養は 汎用的に Luria-Bertani (LB) 培地を用いた 必要に応じて寒天 20 g/l 抗生物質 ( 抗生物質濃度 Km;50 mg/l Cm;40 mg/l) を添加して使用した 特に本文中に記載が無い場合は 37 で培養を実施した 嫌気培養時には角型ジャー標準型 ( 三菱ガス化学社製 ) に AnaeroPack-A04( 三菱ガス化学社製 ) を 1 個使用した 本実験で使用した LB 培地 SOC 培地 MS 培地の組成を表 2-2 に示した E. aeroegnes からのゲノム DNA 抽出法 E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出は Bacterial Genomic DNA Purification Kit (Edge Biosystems 社製 ) を用いて 添付のプロトコールに従って実施した 以下 操作手順に従って記載する LB 培地 4 ml に植菌後 31.5 で一晩培養を行った 培養液 1.5 ml を 15,000 rpm で 1 分間遠心を行った その後 上清液を捨て Spheroplast Buffer 400 μl に再懸濁し 37 で 10 分間インキュベーションする事で 細胞をスフェロプラス化した 次に 100 μl の Lysis Buffer 1 を添加し ゆっくりと反転する方法で混合した その後 100 μl の Lysis Buffer 2 を添加し 同様に反転混合を行った後 65 で 5 分間インキュベーションを実施した 放冷後 100 μl の ADVAMAX Beads を添加し 再び反転にて混合した その後 100 μl の Extraction Buffer を添加し ボルテックスで激しく 10 秒間混合した その後 15,000 rpm( 冷却遠心 4 ) で 5 分間遠心を行った 上清画分を 1.5 ml 容量の別のマイクロチューブに移液し 等量のイソプロパノールを添加した後 反 37

45 転にて良く混合した 再び 15,000 rpm( 冷却遠心 4 ) で 5 分間遠心を行い ゲノム DNA を沈殿させた 沈降したゲノム DNA を吸わないように 静かに上清を捨て 70% エタノール 400 μl を添加し リンス洗浄を行い 塩類を除去した その後 再び上清を捨て エバポレーターにてゲノム DNA を乾燥した 最後に 50 μl の滅菌水を添加し 70 ( ヒートブロック ) にて溶解させた物をゲノム DNA 溶液として各種実験に用いた マイクロチューブを用いたコハク酸発酵 全量 1.5 ml 容量のマイクロチューブを用いたコハク酸発酵の手順を補足資料 3 に示した 本章で使用したプライマー 本章で使用したプライマー配列を表 3-2 に記載した E. aerogenes の形質転換法形質転換はエレクトロポレーション ( 電気穿孔 ) 法にて実施した 以下 操作手順に従って記載する LB 培地 4 ml に植菌後 31.5 で一晩培養を行った 一晩培養した前培養液 100 μl を新たな LB 培地 4 ml に植菌し 31.5 で約 3 時間培養を行った OD 値 (A610nm) が 0.3~0.5 付近になった培養液を 1.5 ml 容量のマイクロチューブに移液し 4 15,000 rpm 1 分間の条件で遠心した 上清を捨てた後 菌体を氷冷した 10% グリセロール溶液で 3 回洗浄を行った後 最終液量が約 80 μl になるように菌体溶液を調製し コンピテントセルとして用いた コンピテントセルを 1 mm キュベット (BIORAD 社製 ) に移液し プラスミド DNA( 約 200 ng) を混合し 1 分間 4 ( 氷上 ) でインキュベーションした Gene Paluser(BIORAD 社製 ) を用いて エレクトロポレーション ( 電場強度 18 kv/cm コンデンサー容量 25 μf 抵抗値 200 Ω) を実施した 形質転換後のキュベットに 1 ml の SOC 培地 (LB でも代替可能 ) を加え 31.5 で 2 時間 振盪培養を行い 回復培養を実施した その後 4 15,000 rpm 1 分間の条件で遠心を行い 上清を捨て 菌体のみを回収した 回収菌体は 適量の LB 培地に懸濁後 各種薬剤プレートに塗布し 38

46 た λ-red recombination system による adhe 遺伝子破壊株の構築 adhe 遺伝子破壊用カセットは pmw-attl λ -Km R -attr λ (50 ng) を鋳型として adhe-attl と adhe-attr のプライマーを用いて PCR により調製を行った pmw-attl λ -Km R -attr λ は pmw118 ( ニッポン ジーン社製 ) に対して λ ファージのアタッチメントサイトである attl λ 及び attr λ 配列とカナマイシン耐性遺伝子である kan 遺伝子 (kanamycine phosphotransferase gene) を挿入したプラスミドである [43] 前記 PCR により kan 遺伝子の両末端に λ ファージ由来の attl λ 及び attr λ 配列が付与され 更にその両外側に adhe 遺伝子の相同領域 ( 上流 60 bp 下流 59 bp) の配列を付加した遺伝子断片を取得した PCR は TaKaRa La Taq をポリメラーゼに用いて 94 ;15 秒 58 ;30 秒 72 ;120 秒のサイクル条件を 40 回実施した 得られた PCR 産物は Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega 社製 ) を用いて 添付のプロトコールに従って 精製を実施した 次に AJ 株に対して prsfredter を形質転換で導入し AJ110637/pRSFRedTER 株を取得した 同株を 40 mg/l クロラムフェニコールを含む LB 培地で一晩培養を行い この前培養液を 500 μl を 新たに 40 mg/l クロラムフェニコールと 0.4 mm イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノサイド (IPTG) を含む LB 培地 50 ml に稙菌し 4 時間 31 で振盪培養を行った その後 OD 600 値が 0.3~0.6 まで生育した菌体を集菌し 10% グリセロール ( 氷冷 ) で 3 回洗菌した後 最終的に 0.5 ml の 10% グリセロール溶液に再懸濁した菌体液をコンピテントセルとして用いた 前記で調製した PCR 産物 約 500 ng を GENE PULSER II(BioRad 社製 ) を用いて エレクトロポレーション ( 電場強度 20 kv/cm コンデンサー容量 25 μf 抵抗値 200 Ω) を実施した 菌体懸濁液に SOC 培地を 1 ml を加え 31 で 2 時間振盪培養を行い 回復培養を実施した その後 遠心にて培養上清を除去し 菌体溶液 100 μl を 50 mg/l のカナマイシンを含む LB 培地に塗布した 形成されたコロニーを同培地で純化し シングルコロニーを形成させた後 adhe-cf と 39

47 adhe-cr のプライマーをもちいて コロニー PCR により adhe 遺伝子が kan 遺伝子と置換していることを確認した 次に 前記のようにして得られた adhe/prsfredter 株から prsfredter を脱落させる為 これらの株を 10% スクロース 及び 1 mm IPTG を含む LB 培地に塗布し 37 で一晩培養した 出現したコロニーの中から クロラムフェニコール耐性を欠失した株を adhe 株として選択し 以後の実験に用いた λ-red recombination system による buda 遺伝子破壊株の構築 と同じ操作で buda 株を取得した buda 遺伝子破壊用カセットは buda-attl と buda-attr プライマーを用い buda-cf と buda-cr のプライマーをもちいて buda 遺伝子が kan 遺伝子と置換していることを確認した A. succinogenes PCK 発現用プラスミド pstv28-pck の構築 E. coli 由来スレオニンオペロンのプロモーター領域を含む遺伝子断片を以下の手順に従って取得した E. coli K-12 株のゲノム DNA の全塩基配列 (GenBank Accession No. U00096) は既に決定 公開されている データベース上の遺伝子配列を基にスレオニンオペロン (thrlabc;locus tag b0001) のプロモーター領域を予測し プライマーを設計した 5' 側プライマーとして SalI サイトを 5' 側に保持した thrl-sali-cf と 3' 側プライマーとして thrlpckasuc-cr を使用した E. coli MG1655 (ATCC47076) 株のゲノム DNA を鋳型とし thrl-sali-cf と thrlpckasuc-cr の両プライマーを用いて PCR を行い スレオニンオペロンのプロモーター遺伝子断片を取得した PCR は PrimeSTAR をポリメラーゼに用いて 94 ;10 秒 54 ;20 秒 72 ;60 秒のサイクル条件を 40 回実施した 次に A. succinogenes 由来ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ遺伝子断片を以下の手順に従って取得した A. succinogenes130z(atcc55618) 株のゲノム DNA の全塩基配列 (GenBank Accession No. CP000746) も既に決定 公開されており PCK をコードする pck 遺伝子 (pck;locus tag Asuc_0221) の塩基配列を基にプライマーを設計し PCR 増幅を行った 5' 側プライ 40

48 マーとして pckasuc-cf 3' 側プライマーとして SalI サイトを 5' 側に保持した pckasuc-sali-cr を用いて A. succinogenes 130Z 株のゲノム DNA を鋳型として PCR を行い pck 遺伝子断片を得た PCR は PrimeSTAR をポリメラーゼに用いて 94 ;10 秒 54 ;20 秒 72 ;120 秒のサイクル条件を 40 回実施した 上記で得られたスレオニンオペロンのプロモーター領域と pck 遺伝子の各断片を鋳型にし SalI サイトを保持した thrl-sali-cf と pckasuc-sali-cr のプライマーを用いて Overlapping-PCR を行い スレオニンオペロンのプロモーターの下流に pck 遺伝子が結合された遺伝子断片を得た PCR は PrimeSTAR をポリメラーゼに用いて 94 ;10 秒 54 ;20 秒 72 ;150 秒のサイクル条件を 40 回実施した 上記 Overlapping-PCR で得られた遺伝子断片を制限酵素 SalI にて処理 精製した産物を 制限酵素 SalI で予め消化したプラスミドベクター pstv28( タカラバイオ社製 ) に結合して PCK 発現用プラスミド pstv28-pck を構築した pstv28-pck のプラスミドマップを図 3-5 に示した C. glutamicum PYC 発現用プラスミド pstv28-pyc の構築 pstv28-pyc は以下の手順に従って構築した 前項と同様に E. coli MG1655 株のゲノム情報を基にスレオニンオペロン (thrlabc) のプロモーター領域の PCR 増幅を行った 具体的には 5' 側プライマーとして SacI サイトを保持したプライマー thrl-saci-cf 3' 側プライマー thrlpyccglu-cr を用いて E. coli MG1655 株のゲノム DNA を鋳型として PCR を行い スレオニンオペロンのプロモーター遺伝子断片を得た PCR は PrimeSTAR をポリメラーゼに用いて 94 ;10 秒 54 ;20 秒 72 ;60 秒のサイクル条件を 40 回実施した また C. gulutamicum 2256 株由来の pyc に関しても同様に 5' プライマーとして pyccglu-cf SacI サイトを保持した 3' 側プライマーとして pyccglu-saci-cr を用いて C. glutamicum 2256 株のゲノムを鋳型として PCR を行い pyc 遺伝子断片を得た PCR は PrimeSTAR をポリメラーゼに用いて 94 ;10 秒 54 ;20 秒 72 ;240 秒のサイクル条件を 40 回実施した 41

49 上記で得られた スレオニンオペロンのプロモーター遺伝子断片と pyc 遺伝子断片を鋳型に SacI サイトを保持したプライマー thrl-saci-cf と pyccglu-saci-cr を用い Overlapping-PCR を行い SacI サイトを両末端に有する遺伝子断片を得た その後 Overlapping-PCR で得られた遺伝子断片を制限酵素 SacI にて処理し 精製した産物を 予め制限酵素 SacI で消化した pstv28 に結合して PYC 発現用プラスミド pstv28-pyc を構築した pstv28-pyc のプラスミドマップを図 3-6 に示した 可溶性画分タンパク質の抽出方法好気と嫌気で培養した菌体から可溶性画分タンパク質を抽出した 好気条件の菌体サンプルは LB 培地で 10 時間 37 で培養した菌体を用いた 嫌気条件の菌体サンプルは LB 培地で 10 時間 好気で培養した後 アネロパックで 16 時間 嫌気条件下で馴致させた菌体を用いた 各菌体サンプルは 4 15,000 rpm で 1 分間遠心を行い 集菌した その後 Washing buffer (0.1 M MOPS ph mm MgSO mm EDTA) で 3 回洗浄後 Sample buffer 300 μl(0.1 M MOPS ph mm MgSO mm EDTA 0.2 mm dithiothreitol) に懸濁した 細胞懸濁液を超音波破砕機 (COSMO BIO Bioruptor) で破砕 (ON;30 秒 OFF;30 秒 30 サイクル ) し 遠心分離 (10,000 rpm 3 分間 ) にて未破砕細胞を除去した その後 超遠心分離 (50,000 rpm 60 分間 ) にて膜画分と可溶性画分を分離した 得られた可溶性画分を 可溶性画分タンパク質として以後の実験に使用した SDS-PAGE による PYC と PCK の発現解析 で得られた可溶性画分を用いて SDS-PAGE を行った 可溶性画分中のタンパク質濃度をPierce 660 nm Protein Assay Kit で定量した その後 10 μgの可溶性画分タンパク質を用いて SDS-PAGE 泳動用のサンプルを調製した 表 3-3 に泳動用サンプルの調製法を記載した 泳動用サンプルをヒートブロックで 分間の変性処理を実施し NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gel 42

50 MES buffer (Invitrogen 社製 ) を用いて定電圧 200V で 35 分間 電気泳動を実施した その後 CBB(Coomassie Brilliant Blue) 染色を行い 脱色後 ゲルの写真を撮影した 各種酵素活性 (LDH ACDH AR) の測定 可溶性画分タンパク質を用いて LDH ACDH AR の活性を測定した 活性測定は 30 の NADH の酸化反応 (ε340=6.3 mm 1 cm 1 ) を SpectraMax M2 micro-plate reader(molecular Devices 社製 ) で測定した 表 3-3 に反応液の組成を記載する E. aerogenes の DCW 算出式 E. aerogenes の DCW 算出式は で求めた計算式を使用した E. aerogenes g[dcw]/l=0.291 OD グルコース濃度 OD 有機酸 アルコールの定量 各物質の定量方法は に記載した方法に従って実施した 43

51 表 3-1 本章で使用した菌株とプラスミドの一覧 菌株とプラスミド注釈薬剤耐性引用 入手先 Strains AJ 野生株 ( FERM BP-10955) AIST 1 [33] adhe AJ adhe Km 本検討 buda AJ buda Km 本検討 AJ110637/empty AJ110637/pSTV28 Cm 本検討 AJ110637/PYC AJ110637/pSTV28-pyc Cm 本検討 AJ110637/PCK AJ110637/pSTV28-pck Cm 本検討 adhe/empty AJ adhe/pstv28 Km, Cm 本検討 adhe/pyc AJ adhe/pstv28-pyc Km, Cm 本検討 adhe/pck AJ adhe/pstv28-pck Km, Cm 本検討 Plasmids prsfredter 広宿主域 λred タンパク質発現プラスミド Cm [43] pmw-attl λ -Km R -attr λ 遺伝子破壊用カセット Km [43] pstv28 発現用プラスミド Cm TAKARA BIO pstv28-pyc C. glutamicum PYC 発現用プラスミド Cm 本検討 pstv28-pck A. succinogenes PCK 発現用プラスミド Cm 本検討 1) 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター 44

52 表 3-2 本章で使用したプライマーとその塩基配列 プライマー名 プライマー配列 (5'-3') adhe buda 遺伝子破壊に用いたプライマー adhe-attl adhe-attr buda-attl buda-attr adhe-cf adhe-cr buda-cf buda-cr 5'-CAAGTTGATAAGATCTTCCGTGCCGCCGCTCTGGCCGCTGCAGATGCTCGA ATCCCTCTCTGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3 5'-ACGTGAGCCAGGAAATCAGCTTCCTGAACGCCGGCTTCGCGAATAGATTTC GGAATACCCGCTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3 5'-AACCTTTATTTAACCTTTCTTATATTTGTTGAACGAGGAAGTGGCTCATGTG AAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3' 5'-GCGCCCACTGGCGCTGCGGATACTGTTTGTCCATGTGAACCTCCTAACTTC G CTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3' 5'-TGAATATGCCAGTTTCACTCAAGAA3-' 5'-GAAGGCGTCTTCAGACAGCTTATCA-3' 5'-TTTCTATATTGGAACTGTGAGCTGAATCG-3' 5'-GCTTCCAGTTGGCTGACGACCAGATC-3' pstv28-pck の構築に用いたプライマー thrl-sali-cf thrlpckasuc-cr pckasuc-cf pckasuc-sali-cr 5'-TGGTCGACTGGTTACAACAACGCC-3' 5'-ACGTCATTCCTCCTTGTCGCCTATATTGGTTAAAG-3' 5'-TAGGTCACTAAATACTTTAACCAATATAGGCGACAAGGAGGAATGACGTAT GACTGACTTAAACAAACTCG-3' 5'-ACGCGTCGACCTCAGCCTTATTTTTCAG-3' pstv28-pyc の構築に用いたプライマー thrl-saci-cf thrlpyccglu-cr pyccglu-cf pyccglu-saci-cr 5'-TGGAGCTCTGGTTACAACAACGCC-3' 5'-GTCGACACACGTCATTCCTCCTTGTCGCCTATATTGGTTAAAG-3' 5'-AAGGAGGAATGACGTGTGTCGACTCACACATCTTCAACGCTTCC-3' 5'-TTGAGCTCTTTTTACAGAAAGGTTTAGG-3' 45

53 表 3-3 SDS-PAGE 泳動用サンプルの組成 可溶性画分タンパク質 NuPAGE LDS Sample buffer ( 4) NuPAGE Reducing Agenet ( 10) Deionized Water * μl (10μg) 2.5 μl 1.0 μl 全量で 10 μl になうように調製 表 3-4 各種酵素活性測定に用いた反応液の組成 LDH 活性測定用反応液 0.1 M imidazole-hcl (ph 6.7) 1.0 ml 10 mm NADH 0.8 ml 0.5 mm sodium pyruvate 1.5 ml 可溶性画分サンプル 0.2 ml ACDH 活性測定用反応液 0.1 M imidazole-hcl (ph 6.7) 1.0 ml 10 mm NADH 0.8 ml 0.5 mm acetyl-coa 1.5 ml 可溶性画分サンプル 0.2 ml AR 活性測定用反応液 0.1 M imidazole-hcl (ph 6.7) 1.0 ml 10 mm NADH 0.8 ml 10 mm acetoin 1.5 ml 可溶性画分サンプル 0.2 ml 46

54 図 3-5 A. succinogenes PCK 発現プラスミド pstv-pck のプラスミドマップ cat; chloramphenicol acetyltransferase pck; phosphoenolpyruvate caroboxykinase Ori; pacyc184 由来 図 3-6 C. glutamicum PYC 発現プラスミド pstv-pyc のプラスミドマップ cat; chloramphenicol acetyltransferase pyc; pyruvate carboxylase Ori; pacyc184 由来 47

55 1. グリセロールストックから菌体を LB プレートに均一に塗布し 37 にて 10 時間培養した 2. 該プレートを AnaeroPack-A04 で嫌気条件下 37 に供し 16 時間培養を行った ( 図 A) 3. 嫌気条件に馴致させた菌体をエーゼでかきとり 氷冷した 0.8% の食塩水 1 ml を含む 1.5 ml 容量のマイクロチューブに懸濁した ( 図 B) 4. 遠心後 上清を捨て 0.8% の食塩水 1mL で洗浄を行った ml 容量のマイクロチューブに MS2 培地を撹拌しながら 1.4 ml を分注し 1.2 g[dcw]/l になる様に菌体量を調製した ( 図 C) 6. マイクロチューブ用のキャップにて密栓した ( 図 D) 7. マイクロチューブ用攪拌機 ( エッペンドルフ社製エッペンミキサー Thermomixer Comfort) を用いて 34 1,400 rpm で培養を行った ( 図 E) 補足資料 3 マイクロチューブを用いたコハク酸培養の手順 48

56 3-3. 結果 エタノール 及び 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断がグルコース資化能に及ぼす影響 buda と adhe 遺伝子の破壊は Datsenko と Wanner によって開発された λ-red recombinant system と呼ばれる λ ファージ由来の組み換えシステムによって実施した [48] 近年 このシステムを用いて Pantoea ananatis や E. aerogenes からも遺伝子破壊株が取得されている [35,45] 本章では Katashkina 等によって構築された λ-red タンパク質発現プラスミド prsfredter を用いて buda と adhe 遺伝子がそれぞれ破壊された buda 株と adhe 株を取得した これらの遺伝子破壊株から ゲノム DNA を抽出し buda と adhe 遺伝子が kan 遺伝子に置換されている事を確認し 以後の検討に使用した 主要な NADH 酸化経路を遮断された菌株では 嫌気条件下でグルコースを資化した際 細胞内の NADH 濃度が向上する この様な酸化還元バランスの不均衡は グルコースの資化速度を鈍化させ 生育遅延を引き起こす その為 得られた欠損株の嫌気条件下のグルコース資化能を観察する方法で 破壊した遺伝子が主要な NADH 酸化経路に関与しているかを簡易的に判別できる buda と adhe 株の嫌気条件下での生育を グルコース最尐培地 (M9 グルコース培地 ) で比較した AJ110637( 野生株 ) buda adhe 株を M9 グルコースプレートに播種後 好気と嫌気条件下のそれぞれで コロニーサイズを比較した 結果を図 3-7 に示す 好気条件下で 2 日間培養した AJ buda adhe 株は 同じコロニーサイズを示した 一方 嫌気条件下で 6 日間培養した adhe 株は AJ と buda 株と比較して コロニーサイズの矮小化が観察された 以上の結果より エタノール生成経路が E. aerogenes の主要な NADH 酸化経路として機能していると推察した 49

57 図 3-7 AJ adhe buda 株の好気と嫌気条件下におけるコロニーサイズの比較好気条件でのコロニーは M9 グルコースプレートで 37 で 2 日間培養後の様子を表す 嫌気条件でのコロニーは M9 グルコースプレートで 37 で 6 日間嫌気培養した様子を表す 50

58 buda 及び adhe 株における LDH AR ACDH 活性測定細胞内の酸化還元状態は NADH 酸化に関わる様々な酵素反応の働きよって支えられている これは ひとつの NADH 酸化反応が消失しても 残存する反応で NADH を酸化することで恒常性を維持するバックアップシステムと言える 2 章の結果から E. aerogenes AJ 株は エタノール 2,3-ブタンジオール 乳酸などの複数の NADH 酸化経路を保持することで 酸化還元バランスに関わる堅牢性を獲得している事が明らかとなった 一方 adhe 株では 嫌気条件下でグルコース資化能が低下した表現型が観察された このゲノム情報から得られる酸化還元バランスの堅牢性と adhe 株の表現型に見られる脆弱性の矛盾を解明する目的で 主要な NADH 酸化反応に関わる酵素群について 各種酵素活性値を測定した E. aerogenes の主要な代謝産物であるエタノール 2,3-ブタンジオール 乳酸の生成経路の中から NADH を補酵素とする酸化還元酵素として アセチル-CoA デヒドロゲナーゼ (ACDH) アセトインレダクターゼ(AR) D- 乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH) を選択し NADH の減尐に伴う 340nm での吸光度の減尐を測定した ( 図 3-8 ) AJ buda adhe 株を好気と嫌気条件下で培養した菌体サンプルを用いて ACDH AR LDH の細胞内総活性値を求めた 活性測定の結果を図 3-9 に纏めた 好気条件における LDH の総活性値は 全ての株で約 35 mu/mg-protein となった ( 図 3-9 A) また AJ と buda 株の嫌気条件下における LDH の総活性値は 好気条件の約 0.7 倍の 25 mu/mg-protein まで低下した これに対して adhe 株の嫌気条件下における LDH の総活性値は 好気条件の 1.4 倍にあたる 50 mu/mg-protein まで向上した AR の総活性値は 嫌気条件下の方が高い値が観察された ( 図 3-9 B) 好気条件下における AJ と buda 株の AR 総活性値が 70 mu/mg-protein に対して 嫌気条件下では約 4 倍の 300 mu/mg-protein まで向上した 一方 adhe 株の AR 総活性値は これらの値と比較して著しく低く 培養条件に関わらず 20 mu/mg-protein となり 一定であった ACDH の総活性値も AR と同様に嫌気条件下で値が増加した ( 図 3-9 C) 好気条件下の AJ と buda 株の ACDH 総活性値が 10 mu/mg-protein に対して 嫌気条件下では 25 51

59 mu/mg-protein まで向上した 一方 adhe 株の ACDH 総活性値は培養条件に関わらず 5 mu/mg-protein 以下であった この結果は adhe 遺伝子がコードする ADHE が ACDH 活性の主要な役割を担っていることを示した 以上の結果から adhe 株では AR と ACDH の総活性値が低下していることが確認でき 酸化還元バランスの堅牢性を消失した原因だと推定される 図 3-8 エタノール 2,3- ブタンジオール, 乳酸生成経路の反応とそれを触媒する酵素群エタノール生成経路は ACDH と ADH 2,3- ブタンジオール生成経路は AR 乳酸生成経路は LDH が酸化還元酵素として機能する -ALS; - アセト乳酸シンターゼ -ALDC; - アセト乳酸デカルボキシラーゼ AR; アセトインレダクターゼ ACDH; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ LDH; D- 乳酸デヒドロゲナーゼ 52

60 図 3-9 好気と嫌気条件下における AJ buda adhe 株の LDH AR ACDH 総活性値 A;LDH の総活性値 B;AR の総活性値 C;ACDH の総活性値 各値は n=3 の平均値を意味し エラーバーは標準偏差値を意味する AR; アセトインレダクターゼ ACDH; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ LDH; D- 乳酸デヒドロゲナーゼ 53

61 エタノール 及び ブタンジオール生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良主要な NADH 酸化経路の遮断がコハク酸生産量に及ぼす影響を確認する目的で buda と adhe 株のコハク酸生産能を評価した マイクロチューブを用いたコハク酸発酵の結果を表 3-4 に纏めた AJ 株は 16 時間の嫌気培養で 19.9 g/l のグルコースを消費し 菌体量は 0.6 g[dcw]/l 増加した それに対して buda 株は 10.5 g/l のグルコースを消費し 菌体量は 0.5 g[dcw]/l 増加した buda 株のグルコース消費量と菌体量の増加値は AJ 株で得られた値の それぞれ 52.7% と 79.7% であった また buda 株は 3.9 g/l のエタノールと 1.9 g/l のギ酸を主要な生成物として生産し アセトインと 2,3-ブタンジオールの蓄積は観察されなかった buda 株のエタノールとギ酸の収率は それぞれ 37.1% と 18.1% となり AJ 株の値 ( エタノール収率 ;24.6% ギ酸収率;6.5%) よりも高い結果が得られた また AJ 株がコハク酸を 1.2 g/l 蓄積したのに対して buda 株では 0.8 g/l となり コハク酸蓄積の減尐が観察された これらの結果から buda 遺伝子の破壊により アセトインと 2,3-ブタンジオールの両生成を遮断出来たことが示された 一方 本遺伝子の破壊は グルコース消費量とコハク酸蓄積の低下を引き起こした adhe 株では グルコースの資化が殆ど観察されなかった 培養を通して adhe 株の菌体量は増加せず グルコースの消費量は僅か 2.0 g/l であった この値は AJ 株のグルコース消費量の約 10% 程度であった また adhe 株では 0.2 g/l の乳酸と 0.4 g/l の酢酸を蓄積し エタノールと 2,3-ブタンジオールの蓄積は観察されなかった コハク酸も他の有機酸と同様に 0.1 g/l 未満の蓄積しか観察されず コハク酸収率は 2.0% であった これらの結果から adhe 遺伝子の破壊により グルコースの消費量も顕著に低下し コハク酸の蓄積も減尐することが示された 本結果から 主要な NADH 酸化経路であるエタノール 及び 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断は コハク酸蓄積の低下を引き起こすことが明らかとなった これは NADH の供給量がコハク酸生成の律速因子ではない事を意味する 54

62 表 3-4 AJ buda adhe 株のグルコース消費量 生成物濃度 コハク酸収率 菌株名 1 菌体量 g[dcw]/l グルコース 消費量 g/l 生成物濃度 g/l ピルビン酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 2,3-BuOH アセトイン コハク酸 収率 % 2 (g/g) AJ ± ± 0.8 < ± ± ± ± ± ± ± buda 1.6 ± ± 0.4 < ± ± ± ± ± 0.1 ND 5 ND 7.6 adhe 1.2 ± ± 0.3 <0.1 ND < ± ± 0.1 <0.1 ND ND 2.0 1) 培養開始時の菌体量は 1.2 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 %= コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) 各菌株は 1.5ml マイクロチューブ評価系にて 16 時間培養を実施した 4) 各値は n=4 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 5) ND は未検出を意味する 55

63 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の発現解析本章の結果から AJ 株では NADH の供給がコハク酸生産の律速では無いことが明らかとなった そこで 異種炭酸固定反応として C. glutamicu 由来ピルビン酸カルボキシラーゼ (PYC) と A. succinogenes 由来ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PCK) の導入を行った ( 図 3-10) まず 新たに構築した C. glutamicu PYC と A. succinogenes PCK の発現プラスミドを用いた発現解析を行った pstv28-pyc と pstv28-pck を それぞれ adhe 株に導入後 PYC と PCK の発現量を SDS-PAGE にて解析した CBB 染色後の SDS-PAGE のゲル写真を図 3-11 に示す adhe /PYC 株の好気と嫌気で培養したサンプルからは PYC の推定分子量 (123 kda) 付近に バンドが検出された ( 図 3-11 レーン番号 3 4) また adhe/pck 株の好気と嫌気で培養したサンプルからは PCK の推定分子量 (59 kda) 付近にバンドが検出された ( 図 3-11 レーン番号 5 6) これら PYC と PCK のバンド強度は 好気条件と嫌気条件で同等であった 以上の結果から E. aerogenes で PYC と PCK の発現に成功した 56

64 図 3-10 異種炭酸固定経路の導入太矢印はコハク酸生成経路を意味する 赤破線矢印は 異種の炭酸固定経路を意味する PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ -ALS; - アセト乳酸シンターゼ -ALDC; - アセト乳酸デカルボキシラーゼ AR; アセトインレダクターゼ ACDH; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ LDH; D- 乳酸デヒドロゲナーゼ 図 3-11 PYC と PCK の SDS-PAGE 解析 M; Protein standard (Mark12 unstained standard, Invitrogen 社製 ) 1; adhe/empty 株を好気で培養したサンプル 2; adhe/empty 株を嫌気で培養したサンプル 3; adhe/pyc 株を好気で培養したサンプル 4; adhe/pyc 株を嫌気で培養したサンプル 5; adhe/pck 株を好気で培養したサンプル 6; adhe/pck 株を嫌気で培養したサンプル 各レーンあたり 10 μg の可溶性画分タンパク質を泳動した 矢印は それぞれ PYC と PCK と推定されるバンドを指示している PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ 57

65 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の導入によるコハク酸生産能の改良 C. glutamicu PYC と A. succinogenes PCK の導入がコハク酸生産能に及ぼす影響を検討した AJ 株に対して pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck をそれぞれ導入し AJ110637/empty AJ110637/PYC AJ110637/PCK 株を取得した これらの菌株に対して マイクロチューブを用いてコハク酸発酵を実施した 48 時間培養後の結果を表 3-5 に纏めた AJ110637/PYC と AJ110637/PCK 株では AJ110637/empty 株と比較して コハク酸蓄積の顕著な増加が観察された AJ110637/PYC 株は 3.7 g/l のコハク酸 3.4 g/l の 2,3-ブタンジオール 3.2 g/l のエタノールを主要な生成物として蓄積した この時のコハク酸収率は 22.1% となった 最終的に AJ110637/PYC 株のコハク酸蓄積と収率は AJ110637/empty 株の値に対して それぞれ 4.6 倍と 5.3 倍高い値を示した AJ110637/PCK 株でも AJ110637/PYC 株と同様にコハク酸蓄積の増加が観察された AJ110637/PCK 株は 3.9 g/l のエタノール 3.5 g/l のコハク酸 3.2 g/l の 2,3-ブタンジオールを主要な生成物として蓄積した この時のコハク酸収率は 30.2% となり AJ110637/PYC 株の値よりも高い値が観察された 最終的に AJ110637/PCK 株のコハク酸蓄積と収率は AJ110637/empty 株の値に対して それぞれ 4.4 倍と 7.2 倍高い値を示した 一方で AJ110637/PCK 株のグルコース消費量は 11.6 g/l となり AJ110637/empty 株の 18.7 g/l と比較すると低い値を示した 以上の結果から PYC と PCK のどちらの炭酸固定反応を導入しても AJ 株のコハク酸生産能は向上した AJ 株では 炭酸固定反応がコハク酸生成の律速反応であることが明らかとなった 58

66 表 3-5 AJ110637/empty AJ110637/PYC AJ110637/PCK 株のグルコース消費量 生成物濃度 コハク酸収率 菌株名 1 菌体量 g[dcw]/l グルコース 消費量 g/l 最終生成物 g/l ピルビン酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 2,3-BuOH アセトイン コハク酸収 率 % 2 (g/g) AJ110637/empty 3,4 1.7 ± ± 1.2 < ± ± ± ± ± ± ± AJ110637/PYC 1.6 ± ± 1.0 < ± ± ± ± ± ± ± AJ110637/PCK 1.5 ± ± 0.6 < ± ± ± ± ± ± ± ) 培養開始時の菌体量は 1.2 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 %= コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) 各菌株は 1.5 ml マイクロチューブ評価系にて 48 時間培養を実施した 4) AJ110637/empty は AJ 株に pstv28 が導入された菌株を意味し AJ110637/PYC は AJ 株に pstv28-pyc が導入された菌株を意味し AJ110637/PCK は AJ 株に pstv28-pck が導入された菌株を意味する 5) 各値は n=4 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 6) ND は未検出を意味する 59

67 C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の導入とエタノール生成経路の遮断の組み合わせによるコハク酸生産能の改良 PYC と PCK の炭酸固定反応を導入した株に対して NADH の供給量をあげる方法で 更なるコハク酸生産能の改良を目指した adhe 株に対して pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck をそれぞれ導入し adhe/empty adhe/pyc adhe/pck 株を取得した これらの菌株に対して マイクロチューブを用いてコハク酸発酵を実施した 48 時間培養後の結果を表 3-6 に纏めた adhe/pyc 株では adhe/empty 株と比較して菌体量とグルコース消費量の顕著な増加が観察された adhe/pyc 株の菌体量は 0.5 g[dcw]/l 増加し 15.4 g/l のグルコースを消費した 特に グルコース消費量は adhe/empty 株の値 (2.4 g/l) に対して 6.4 倍増加した また adhe/pyc 株は 7.0 g/l の乳酸 5.4 g/l のコハク酸 2.9 g/l の酢酸を主要な生成物として蓄積した 最終的に コハク酸の収率は 35.0% となり adhe/empty 株 (2.8%) の 12.5 倍となった また adhe/pyc 株のコハク酸蓄積と収率は AJ110637/PYC 株よりも高い結果が示された adhe/pck 株でも adhe/pyc 株と同様に菌体量とグルコース消費量の増加が観察された adhe/pck 株の菌体量は 0.4 g[dcw]/l 増加し 8.6 g/l のグルコースを消費した また adhe/pck 株は 5.2 g/l のコハク酸 2.2 g/l の酢酸 1.6 g/l の乳酸を主要な生成物として蓄積した 最終的に コハク酸の収率は 60.5% となり adhe/empty 株の 21.6 倍となった また adhe/pck 株のコハク酸蓄積と収率においても AJ110637/PCK 株よりも高い結果が示された 以上の結果から エタノール生成経路の遮断と炭酸固定反応の導入を組み合わせる方法で 炭酸固定反応のみを導入した時よりも 効果的にコハク酸生産能が向上することが明らかになった 60

68 表 3-6 adhe/empty adhe/pyc adhe/pck 株のグルコース消費量 生成物濃度 コハク酸収率 菌株名 1 菌体量 g[dcw]/l グルコース 消費量 g/l 最終生成物 g/l ピルビン酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 2,3-BuOH アセトイン コハク酸収 率 % 2 (g/g) AJ110637/empty ± ± 1.2 < ± ± ± ± ± ± ± AJ110637/PYC ± ± 1.0 < ± ± ± ± ± ± ± AJ110637/PCK ± ± 0.6 < ± ± ± ± ± ± ± adhe/empty 3,4 1.2 ± ± 0.4 <0.1 <0.1 <0.1 < ± 0.1 ND 6 ND ND 2.8 adhe/pyc 1.7 ± ± 1.2 < ± ± ± ± 0.3 ND 0.3 ± 0.1 ND 35.0 adhe/pck 1.6 ± ± 0.7 < ± ± ± ± 0.4 ND 0.2 ± 0.1 ND ) 培養開始時の菌体量は 1.2 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 %= コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) 各菌株の培養結果は表 3-5 より引用した 4) 各菌株は 1.5 ml マイクロチューブ評価系にて 48 時間培養を実施した 5) 各値は n=4 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 6) ND は未検出を意味する 61

69 3-4. 考察 エタノールと 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良本章では 主要な NADH 酸化経路と同定したエタノールと 2,3-ブタンジオール経路の遮断によるコハク酸生産能の向上を試みた 一方 エタノールと 2,3-ブタンジオール生成経路をそれぞれ遮断した adhe 株と buda 株では グルコースの消費量が減尐し コハク酸生産量も減尐した この効果は buda 株よりも adhe 株の方が 顕著に観察された この差異が生じた理由は 各反応における NADH 消費量に依存すると思われる エタノール生成経路では 1 分子のピルビン酸から 1 分子の NADH を酸化し エタノールが生成されるのに対して 2,3-ブタンジオール生成経路では 2 分子のピルビン酸から 1 分子の NADH を酸化して 2,3-ブタンジオールが生成される ( 図 3-10) これは ピルビン酸 1 分子あたりの NADH 酸化量で比較した時 エタノール生成経路の方が 2, 3-ブタンジオール生成経路の 2 倍量の NADH を酸化出来ることを意味する また 2,3-ブタンジオール生成経路のみでは 1 分子のグルコースから解糖系を介して得られる 2 分子の NADH を完全に酸化出来ないことを示唆する その為 エタノール生成経路を遮断した方が 余剰の NADH が細胞内に生産され 細胞内の酸化還元バランスが大きく崩れ グルコースの消費量とコハク酸蓄積の低下を招いたと思われる 両反応経路における NADH 消費量の効率のみならず adhe 株では AR の総活性値も減尐しており 更に細胞内の NADH レベルの増加に拍車がかかったと思われる 本章では buda 株と adhe 株で細胞内の NADH レベルをあげることに成功したが コハク酸生成の向上には繋がらないことが明らかとなった adhe 株における AR の総活性値 adhe 株では 嫌気条件下ではグルコース資化能が低下した表現型が観察された これは エタノール生成経路に関与する ACDH の総活性値のみならず 2,3-ブタンジオール生成経路における AR の総活性値も低下したことに起因する ( 図 3-9) 実際 マイクロチューブを用いた評価結果 62

70 からも adhe 株では エタノールと 2,3-ブタンジオールの生成は観察されなかった ( 表 3-4) Carballo 等や Larsen 等の精製酵素を用いた検討では AR は 酸性環境下 (ph<6.0) や低酢酸濃度 (25 mm 以下 ) 存在下で比活性が増加した [54,55] このように AR は酢酸などの代謝産物によっても 比活性が変化する特性を有する また 本検討結果から AJ 株の AR の総活性値は嫌気条件下の方が 3 倍以上高い結果が得られた 1.5 ml 容量のマイクロチューブを用いた本評価系では グルコースの消費に伴い系内の酸素が消費され 次第に嫌気条件に環境が変化していく adhe 株では グルコースの消費量が他の株と比較して尐ない為 系内の酸素濃度が AR を発現誘導するのに充分なレベルまで下がりきらなかったと推察した また adhe 株ではグルコースの消費に伴う 酢酸の生成量も他の株と比較して尐なく ( 表 3-4) 多面的な要因で AR の総活性値が他の株と比較して低い結果になったと考える 異種炭酸固定経路の導入によるコハク酸生産能の改良エタノールと 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断は コハク酸蓄積の減尐を引き起こした 一方 異種炭酸固定経路の導入により コハク酸蓄積は顕著に増加した ( 表 3-6) 実際 異種炭酸固定反応である C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK をそれぞれ導入した AJ110637/PYC と AJ110637/PCK 株では AJ110637/empty 株と比較してコハク酸蓄積が 4 倍以上増加した この結果から 炭酸固定反応が E. aerogenes のコハク酸生産の律速反応であることが明らかになった 同様の結果が E. coli でも得られており E. coli と E. aerogenes では PPC が唯一の炭酸固定反応を触媒している点で共通している [37] E. coli の PPC は リンゴ酸などの C4 カルボン酸でアロステリックに活性が阻害される為 コハク酸生産時の炭酸固定反応には不適当である ( 図 3-3) 本章の結果から E. aerogenes の PPC も同様なフィードバック阻害機構が働いていると推察される C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の導入とエタノール生成経路の遮 63

71 断の組み合わせによるコハク酸生産能の改良炭酸固定反応を導入した株では NADH の供給がコハク酸生産の律速になるかを確認する目的で adhe/pyc 株と adhe/pck 株を構築し そのコハク酸生産能を評価した adhe 株の培養結果より エタノール生成経路の遮断の方が 2,3-ブタンジオール生成経路より効率的に NADH を供給出来る事がわかった adhe/pyc 株と adhe/pck 株では AJ110637/PYC 株と AJ110637/PCK 株と比較して約 1.5 倍 コハク酸蓄積が増加した これは 炭酸固定経路を強化した株では NADH の供給が律速になっていることを示す結果であった エタノール生成経路の遮断では 細胞内の NADH が酸化できない為 細胞内の酸化還元バランスが崩れるのに対して 炭酸固定経路を導入した場合は コハク酸生成経路で NADH の酸化還元バランスを取ることが可能となり より多くの NADH を MDH の反応で酸化出来たと考えられる ( 図 3-2) その結果 炭酸固定反応の導入とエタノール生成経路の遮断を組み合わせる方法で 更なるコハク酸生産能の向上が観察されたと考える adhe/pyc 株と adhe/pck 株のコハク酸収率の差異 adhe/pyc 株と adhe/pck 株のコハク酸収率を比較すると 両菌株の値には大きな差異が生じた ( 表 3-6) PYC は ピルビン酸を基質とする為 ピルビン酸から派生する副生経路と競合する関係にある ( 図 3-12) 実際 adhe/pyc 株では 著量の乳酸 酢酸が生産されており これらの副生が収率を下げる原因となっている adhe/pyc 株では これらピルビン酸由来副生経路を遮断していく方法で 更なるコハク酸収率の向上が見込める 一方 adhe/pck 株では コハク酸収率が 60% に至った この値は 理論収率 (112%) の約半分にあたる PCK の反応は PYC と異なり ホスホエノールピルビン酸を基質とする為 ピルビン酸由来の副生経路とは競合しない その為 効率よくホスホエノールピルビン酸をオキサロ酢酸に供給出来たと考えられる ( 図 3-12) 一方 PYC と PCK ではグルコースの消費量が大きくことなる E. aerogenes は グルコース-PTS を介してグルコースを取り込むことが知られている グルコース-PTS は 一連のリン酸転移反応を経由して 64

72 最終的にグルコースがリン酸化され グルコース-6-リン酸の形で細胞内に取り込まれる このリン酸転移反応の出発は EI タンパク質 (enzyme I; EI) を介したホスホエノールピルビン酸の脱リン酸化反応である つまり PCK は グルコースを取り込む為の基質でもあるホスホエノールピルビン酸を EI タンパク質と取り合う関係になる その為 adhe/pck 株では adhe/pyc 株と比較して グルコース消費量が低い結果になったと考える 図 3-12 E. aerogenes コハク酸生産菌のグルコース -PTS とコハク酸生成経路大文字は酵素名を意味し カッコ内の斜字は遺伝子名を意味する 矢印はピルビン酸から派生する副生の生成経路 太矢印はコハク酸生成経路を意味する 破線は 異種由来炭酸固定経路を意味する PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ EI; EI タンパク質 HPr; ヒスチジン含有ホスホキャリアタンパク質 IIBC Glc ; グルコースパーミアーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ 65

73 3-5. 結言本章では NADH 酸化経路の遮断による NADH 供給量の増加 もしくは炭酸固定反応の導入によるオキサロ酢酸供給量の増加が E. aerogenes のコハク酸生産能に与える影響を明らかにすることを目的とした AJ 株から主要な NADH 酸化経路である エタノールと 2,3-ブタンジオール生成経路がそれぞれ遮断された adhe 株と buda 株を構築した これらのコハク酸生産能を AJ 株と比較した結果 adhe 株と buda 株のコハク酸蓄積は AJ 株よりも減尐した 一方 炭酸固定反応として C. glutaicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK を AJ 株にそれぞれ導入した場合 両株でコハク酸蓄積の増加が観察された AJ110637/PYC 株と AJ110637/PCK 株のコハク酸蓄積は AJ 株の蓄積量に対して それぞれ 4.6 と 4.4 倍増加した 以上の結果より E. aerogenes では 炭酸固定反応によるオキサロ酢酸の供給がコハク酸生産能の律速要因であったことを明らかにした また 炭酸固定反応を導入した株に対して NADH の供給量をあげる目的で adhe/pyc 株と adhe/pck 株を構築し そのコハク酸生産能を評価した その結果 adhe/pyc 株と adhe/pck 株のコハク酸蓄積は AJ110637/PYC 株と AJ110637/PCK 株に対して 各々 1.5 倍高い値が認められた 以上の結果から 炭酸固定反応を導入した株に対して NADH の供給量をあげる方法で 更にコハク酸生産能を向上出来ることを明らかにした 本章の結果は E. aerogenes がコハク酸を主要な生成物として生産した初めての報告である 66

74 4 章 E. aerogenes のピルビン酸由来副生経路の遮断と PYC と PCK の共発現によるコハク酸生産能の改良 4-1. 緒言 E. aerogense AJ 株では炭酸固定反応が コハク酸生産能を向上させる為の律速反応であることを明らかにした また PYC や PCK を導入した株では エタノール生成経路を遮断することで更なるコハク酸生産能の向上が観察された 実際 adhe/pyc と adhe/pck 株ではコハク酸を主要な生産物として培地中に蓄積し コハク酸収率は それぞれ 35.0% と 60.5% まで向上した ( 表 3-6) 一方 E. coli KJ122 株は グルコースからコハク酸を 100% 近い収率で生産する事が知られている [16] このように既に報告されているコハク酸生産菌と比較すると adhe/pyc 株と adhe/pck 株のコハク酸生産能は 依然として低く 更なる改善が必要である 本章では adhe/pyc 株と adhe/pck 株のコハク酸生産能の向上を目的とし ピルビン酸から副生する生成物の代謝経路の遮断と PYC と PCK の共発現の検討を実施した 図 3-12 に示すように 検出された全ての副生物は ピルビン酸を出発物質として生成される 実際 adhe/pyc 株と adhe/pck 株は ピルビン酸から派生する乳酸や酢酸を主要な副成物として 培地中に蓄積した ( 表 3-6) コハク酸生産能を向上させる代謝工学的アプローチの一つとして これら副生物の生成経路を遮断し コハク酸生成経路への代謝流量を上げる方法が有効であると考える 実際 Sanchez 等は Lactococcus lactis の PYC を導入した E. coli に対して 乳酸とエタノール生成経路の遮断を行うアプローチでコハク酸生産能の改良に成功した [44] これは ピルビン酸から派生する複数の副生経路を遮断する方法で ピルビン酸を効率的に PYC の反応でオキサロ酢酸に変換させ コハク酸生成経路への代謝流量を増加させた良例である 本章では adhe/pyc 株と adhe/pck 株の主要なピルビン酸由来副生物である 乳酸 酢酸 2,3-ブタンジオールの生成経路の遮断を行い 更なるコハク酸生産能の改良を目的とした また 別のアプローチとして コハク酸生成経路の律速反応である炭酸固定反応を複数構築する方法が知られている Lin 等は Sorghum vulgare 由来 PPC と L. lactis 由来の PYC を E. coli に 67

75 導入し コハク酸生産能の向上に成功した [49] PPC はホスホエノールピルビン酸を基質とし PYC はピルビン酸を基質とする為 基質を取り合うことなく 2 つの異なる経路からコハク酸生成経路の代謝流量を増加することが可能である ( 図 4-1) 実際 PPC と PYC を同時に強化した菌株では 単独で PPC と PYC を強化した菌株よりも 高いコハク酸生産量が確認された [49] 本章では Lin 等のアプローチに改良を加え C. glutamicum 由来 PYC と A. succinogenes 由来 PCK の共発現を行う方法で コハク酸生産能の改良を目指す PCK は PPC と同様にホスホエノールピルビン酸を基質とする為 Lin 等の PPC を エネルギー的に優位な PCK の反応に置き換える事が 理論上可能である ( 図 4-1) また 本章では上記 2 つの戦略に加え 弱酸性嫌気条件下でのコハク酸生産能を正確に評価する目的で 新たに発酵槽を用いて ph を一定に制御した環境下での培養試験を実施した 68

76 図 4-1 複数の炭酸固定反応を導入したコハク酸生産菌左図 ;Lin 等は E. coli に Sorghum vulgare 由来のフィードバック阻害解除型の PPC* と L. lactis 由来 PYC を導入した 右図 ; 本章では E. aerogenes に A. succinogenes 由来の PCK と C. glutamicum 由来 PYC の導入を試みる PPC; ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ 69

77 4-2 実験材料と方法 菌株とプラスミド本章で使用した菌株とプラスミドを表 4-1 に纏めた 各菌株に pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck pstv28-pck+pyc を導入した株を それぞれ菌株名 /empty 菌株名/PYC 菌株名 /PCK 菌株名/PCK+PYC と記載した 例えば adhe 株に pstv28 を導入した株は adhe/empty と記載した 培地と培養条件 AJ 株の培養は 汎用的に Luria-Bertani (LB) 培地を用いた 必要に応じて寒天 20 g/l 抗生物質 ( 抗生物質濃度 Km;50 mg/l Cm;40 mg/l) を添加して使用した 特に本文中に記載が無い場合は 37 で培養を実施した 嫌気培養時には角型ジャー標準型 ( 三菱ガス化学社製 ) に AnaeroPack-A04( 三菱ガス化学社製 ) を 1 個使用した 本実験で使用した LB 培地 SOC 培地 MS 培地の組成を表 2-2 に示した マイクロチューブを用いたコハク酸発酵 1.5 ml 容量のマイクロチューブを用いたコハク酸発酵は 補足資料 3 に記載した手順で実施し た 発酵槽を用いた ph 制御下でのコハク酸発酵 100 ml 容量の発酵槽を用いて ph 制御下でのコハク酸発酵を実施した 培養の操作手順を補 足資料 4 に記載した E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出法 70

78 AJ 株からのゲノム DNA 抽出は 前項 に記載した手順で実施した 本章で使用したプライマー 本章で使用したプライマーと塩基配列を表 4-2 に纏めた E. aerogenes の形質転換法 形質転換は 前項 に記載した手順で実施した λ-red recombination system による遺伝子破壊株の構築前項 と同じ操作で ldha 株を取得した ldha 遺伝子破壊用カセットは ldha-attl と ldha-attr プライマーを用いて構築した また 得られた形質転換体の ldha 遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子と置換していることを確認する為に ldha-cfと ldha-cr のプライマーを使用して コロニー PCR を実施した 同様に表 4-2 に記載したプライマーを用いて pta 遺伝子と buda 遺伝子の破壊を実施した 薬剤耐性遺伝子除去用プラスミド prsf-p ara -IX の構築薬剤耐性遺伝子をゲノム DNA から除去する為のプラスミド prsf-p ara -IX を新たに構築した pmw-intxis-ts を鋳型として プライマー intxis-f と intxis-r の組合せで PCR を行い int-xis 遺伝子領域を含む遺伝子断片を取得した PCR は Prime STAR ポリメラーゼを用いて 秒 秒 秒 の条件を 30 サイクル実施した その後 得られた PCR 産物を 制限酵素 PvuI と NotI にて消化処理を行い 予め PvuI と NotI にて制限酵素処理をした prsfredter に連結させた 新たに得られたプラスミドを prsf-int-xis と命名した その後 pkd46 を鋳型とし プライマー PKD466199F と PKD461243R の組合せで PCR を行い arac の orf 領域と各プロモーター領域 P arac P arabad を含む遺伝子断片 (arac-p arac -P arab ) を調製した PCR は Prime STAR ポリメラーゼを用いて 秒 秒 秒 の条件を 30 サイクル実施した 71

79 これを PvuI BsaI にて消化し 予め PvuI BsaI にて制限酵素処理をした prsf-int-xis に挿入した prsf-int-xis に存在する int-xis の P lac 領域が arac-p arac -P arab に置換した新規プラスミドを構築し prsf-p ara -IX と命名した prsf-p ara -IX のプラスミドマップを図 4-4 に示した prsf-p ara -IX を用いた薬剤耐性遺伝子の除去染色体にattL λ -kan-attr λ が導入された株に prsf-p ara -IXを導入し クロラムフェニコール 40 μg/ mlを含有するlb 培地に塗布し 30 で一晩培養を行った 得られた形質転換体を クロラムフェニコール 40 μg/ml 及び1% アラビノースを含有するLB 培地で純化し シングルコロニーを取得した 得られたシングルコロニーを再度 同培地で純化し シングルコロニーを取得した その後 カナマイシン 50 μg/mlを含有するlb 培地で カナマイシン感受性の確認を行い カナマイシン添加条件下で生育できないクローンを取得した これらのクローンは 遺伝子欠損の確認に用いたプライマーを用いて コロニー PCRを行い 染色体上のカナマイシン耐性遺伝子が欠落していることを確認し マーカーレス株として以後の実験に用いた 次に マーカーレス株から prsf-p ara -IXを脱落させた prsf-p ara -IXを保持したマーカーレス株を 10% スクロース 及び1 mm IPTGを含有したLB 培地に塗布した その後 得られたクローンを再び同培地で純化し シングルコロニーを取得した 得られたコロニーをクロラムフェニコール 4 0 μg/mlを含有するlb 培地に塗布し 生育しない事を確認する方法で prsf-p ara -IXの脱落を確認した A. succinogene PCK と C. glutamicum PYC 共発現プラスミド pstv28-pck+pyc の構築 pyc 遺伝子断片を pstv28-pck にクローニングする為に 以下の操作を実施した まず pstv28-pyc を制限酵素 SacI にて処理し pyc 遺伝子を含む領域を切り出した 得られた遺伝子断片を Wizard SV Gel and PCR Clean-UP System( プロメガ社製 ) を用いて精製し 同じく SacI で消化した pstv28-pck に結合して A. succinogenes PCK と C. glutamicum PYC 共発現用プラスミド 72

80 pstv28-pck+pyc を構築した pstv28-pck+pyc のプラスミドマップを図 4-4 に示した E. aerogenes の DCW 算出式 E. aerogenes の DCW 算出式は で求めた計算式を使用した E. aerogenes g[dcw]/l=0.291 OD グルコース濃度 OD 有機酸 アルコールの定量 各物質の定量方法は に記載した方法に従って実施した 73

81 表 4-1 本章で使用した菌株とプラスミドの一覧 菌株とプラスミド 注釈 薬剤耐性 引用 入手先 Strains adhe AJ adhe Km 表 3-1 ES02 AJ adhe ldha Km 本検討 ES03 AJ adhe ldha pta Km 本検討 ES04 AJ adhe ldha pta buda Km 本検討 adhe/empty AJ adhe/pstv28 Km, Cm 表 3-1 adhe/pyc AJ adhe/pstv28-pyc Km, Cm 表 3-1 adhe/pck AJ adhe/pstv28-pck Km, Cm 表 3-1 ES02/empty AJ adhe ldha/pstv28 Km, Cm 本検討 ES02/PYC AJ adhe ldha/pstv28-pyc Km, Cm 本検討 ES02/PCK AJ adhe ldha/pstv28-pck Km, Cm 本検討 ES02/PCK+PYC AJ adhe ldha /pstv28-pck+pyc Km, Cm 本検討 ES03/empty AJ adhe ldha pta/pstv28 Km, Cm 本検討 ES03/PYC AJ adhe ldha pta/pstv28-pyc Km, Cm 本検討 ES03/PCK AJ adhe ldha pta/pstv28-pck Km, Cm 本検討 ES03/PCK+PYC AJ adhe ldha pta /pstv28-pck+pyc Km, Cm 本検討 ES04/empty AJ adhe ldha pta buda/pstv28 Km, Cm 本検討 ES04/PYC AJ adhe ldha pta buda/pstv28-pyc Km, Cm 本検討 ES04/PCK AJ adhe ldha pta buda/pstv28-pck Km, Cm 本検討 ES04/PCK+PYC AJ adhe ldha pta buda /pstv28-pck+pyc Km, Cm 本検討 Plasmids prsfredter 広宿主域 λ-red タンパク質発現プラスミド Cm 表 3-1 pmw-intxis-ts 温度感受性 Int Xis 発現用プラスミド Amp [43] prsf-p ara -IX 広宿主域 Int Xis 発現用プラスミド Cm 本検討 pmw-attl λ -Km R -attr λ 遺伝子破壊用カッセト Km 表 3-1 pstv28 発現用プラスミド Cm TAKARA BIO pstv28-pyc C. glutamicum PYC 発現用プラスミド Cm 表 3-1 pstv28-pck A. succinogenes PCK 発現用プラスミド Cm 表 3-1 pstv28-pck+pyc A. succinogenes PCK と C. glutamicum PYC 共発現用プ ラスミド Cm 本検討 74

82 表 4-2 本章で使用したプライマーと塩基配列一覧 プライマー名 プライマー配列 (5'-3') buda ldha pta 遺伝子破壊に用いたプライマー buda-attl buda-attr ldha-attl ldha-attr pta-attl pta-attr buda-cf buda-cr ldha-cf ldha-cr pta-cf pta-cr 5'-AACCTTTATTTAACCTTTCTTATATTTGTTGAACGAGGAAGTGGCTCATGTGAAGC CTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3' 5'-GCGCCCACTGGCGCTGCGGATACTGTTTGTCCATGTGAACCTCCTAACTTCG CTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3' 5'-ATGTTAACGACGCATACGGCTTTGAACTGGAATTTTTCGACTTCCTGCTGACCGAA AAGATGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3' 5'-GGCAGGCGGAGAGCCGGCGGAACACGTCATCCTGGATGACATCATTCGATTTATC TTCAACGCTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3' 5'-CTGGCGGTGCTGTTTTGTATCCCGCCTAAAACTGGCGGTAACGAAAGAGGATATA TCGTGTGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3' 5'-GCGTTAGAGCCATAAAAAAGGCAGCCATTTGGCTGCCTTTCTTGTCTCAGCGGGA GATTACGCTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3' 5'-TTTCTATATTGGAACTGTGAGCTGAATCG-3' 5'-GCTTCCAGTTGGCTGACGACCAGATC-3' 5'-TTTCTTAAGACTGCGATATGCTCTAG-3' 5'-TTCATTCGTACTCCAAAACATTTGTC-3' 5'-TCGTGAACTGTCCCTGGG-3' 5'-GTCAGCGAGGTATGCTGG-3' prsf-p ara -IX の構築に用いたプライマー intxis-f intxis-r PKD466199F PKD461243R 5'-CATGGCGGCCGCTTATTTGATTTCAATTTTGTCCCAC-3' 5'-GATCCCGATCGAAGGAGGTTATAAAAAATGGAATTGAATTCGTGTAATTGC-3' 5'-GCGCGGTCTCACTCTTCCTTTTTCAATA-3' 5'-GGCCCGATCGTTTTTATAACCTCCTTAG-3' 75

83 図 4-3 薬剤耐性遺伝子除去用プラスミド prsf-p ara -IX のプラスミドマップ RSF1010; 広宿主域 Ori cat; chloramphenicol acetyltransferase sacb; levansucrase arac; arabinose transcriptional regulator ParaB;araB 遺伝子のプロモーター領域 xis; excisionase int; integrase. 図 4-4 A. succinogenes PCK と C. glutamicum PYC 共発現プラスミド pstv-pck+pyc のプラスミドマップ cat; chloramphenicol acetyltransferase pck; phosphoenolpyruvate caroboxykinase pyc; pyruvate carboxylase Ori; pacyc184 由来 76

84 1. グリセローストックから菌体を LB プレートに均一に塗布し 37 にて 16 時間前培養を行った 2. LB プレートを AnaeroPack-A04 を用いて 37 にて 16 時間 嫌気条件下に馴致させた 3.2 枚分の LB プレート上の菌体をかき取り 5mL の MS 培地に懸濁した 4. OD 600 を測定後 OD 600 が 45 になるように MS 培地で希釈した <AnaeroPack-A04> 5. OD の培養液 5ml を 55mL の MS 培地に稙菌した この時 培地の OD 600 は 約 4 となり DCW 換算で約 1.2 g[dcw]/l となるように調整した ml の培養液を全量 100 ml 発酵槽に移液し 改良型 BCC 培養装置 (ABLE Biott 社製 ) にて培 養を行った 培養中 培地 ph は設定値になるにように 2N NaOH にて制御し 培地温度は 34 で制御 した 培養中は 嫌気条件にする為 40 ml/min の二酸化炭素ガスを 0.22μm フィルターを通して通 気した 各種設定値培養 ph; 7.0, 5.7, 5.5 温度 ; 34 ±0.2 撹拌 ;700 rpm ( 一定撹拌 ) 通気量 ;40 ml/min 二酸化炭素ガス <100 ml 容量発酵槽の模式図と写真 > 6. 適時 2 ml の培養液をサンプリングし OD 600 と培地中のグルコースと有機酸の濃度を測定した 補足資料 4 ph 制御下におけるコハク酸発酵試験の操作手順 77

85 4-3. 結果 乳酸生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良本章では ピルビン酸から副生される代謝産物の生成経路を遮断する方法で コハク酸生産能の改良を目指した 表 に示すように adhe/pyc と adhe/pck 株は それぞれ 7.0 g/l と 1.6 g/l の乳酸を蓄積し 乳酸収率は 45.5% と 18.6% に達した 両株において 乳酸は主要な副生物であり 乳酸生成経路の遮断を試みた 図 4-5 に示すように 乳酸はピルビン酸から NADH の酸化反応を伴い生成される E. coli では この反応は D-ラクテイトデヒドロゲナーゼ (D-lactate dehydrogenase; LDH) により触媒されることが知られている [50,51] また E. aerogenes においても LDH をコードする ldha 遺伝子 (locus tag; EAE_20575) を破壊することで 乳酸生成を抑制できることが既に知られている [35] 本検討では adhe/pyc と adhe/pck 株の ldha 遺伝子を破壊し 乳酸生成量を抑制する方法で コハク酸生産能の向上を目指した adhe 株から 新たに ldha 遺伝子を破壊した二重欠損株を取得し ES02 株と命名した ( 表 4-1) その後 ES02 株に pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck をそれぞれ導入し ES02/empty ES02/PYC ES02/PCK 株を得た これらの株を マイクロチューブを用いてコハク酸生産能を評価した 結果を表 4-3 に纏めた ES02/empty 株では ldha 遺伝子の破壊により 乳酸の生成が消失した 一方 主要な副生として 1.8 g/l の酢酸が蓄積し 酢酸収率は 52.9% に達した これは adhe/empty 株の酢酸蓄積と収率の 2 倍以上高い値であった 炭酸固定反応を導入した ES02/PYC 株と ES02/PCK 株においても adhe/pyc 株と adhe/pck 株と比較して 酢酸の蓄積量が約 2 倍増加した ES02/PYC 株と ES02/PCK 株では 酢酸を 3.3 g/l 蓄積し 酢酸収率は それぞれ 35.5% と 45.8% であった また ES02/PYC ES02/PCK 株はコハク酸をそれぞれ 4.8 g/l と 4.6 g/l 蓄積し コハク酸収率は 51.6% と 63.9% であった PYC を導入した ES02/PYC 株と adhe/pyc 株を比較すると ldha 遺伝子破壊に 78

86 よりコハク酸収率が 21.1% 増加するものの PCK を導入した ES02/PCK 株と adhe/pck 株のコハク酸収率は おおよそ同じ値を示した このように ldha 遺伝子の破壊により 乳酸生産を抑制出来たが 酢酸の蓄積は増加した また 同経路の遮断は コハク酸蓄積を減尐させることが明らかとなった 79

87 酢酸生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 ES02/PYC 株と ES02/PCK 株は 酢酸を主要な副生物として蓄積した 次に ES02/PYC 株と ES02/PCK 株の酢酸生成量を低減する目的で 酢酸生成経路の遮断を行った E. coli において 嫌気条件下の主要な酢酸生成経路は ホスホアセチルトランスフェラーゼ ( Phosphate acetyltransferase;pta) とアセテイトキナーゼ (Acetatekinase;ACK) の反応により構成される [52] この一連の反応は ピルビン酸から供給されたアセチル CoA を PTA の触媒反応を介してアセチル燐酸に変換され その後 ACK によってアセチル燐酸からの燐酸転移反応を介して ATP と酢酸が生じる ( 図 4-3) E. coli では PTA をコードする pta 遺伝子を破壊する方法で 酢酸蓄積が低減することが知られている [16,52,53] そこで ES02/PYC 株と ES02/PCK 株の pta 遺伝子 (locus tag; EAE_24475) を破壊し 酢酸生成量を抑制する方法で コハク酸生産能の向上を目指した ES02 株から 新たに pta 遺伝子を破壊した三重欠損株を取得し ES03 株と命名した ( 表 4-1) その後 ES03 株に対して pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck をそれぞれ導入し ES03/empty ES03/PYC ES03/PCK 株を得た これらの株を マイクロチューブを用いてコハク酸生産能を評価した 結果を表 4-3 に纏めた ES03/empty 株では ES02/empty 株と比較して 酢酸の生産量が約 1/3 まで減尐した ES03/empty 株は 0.5 g/l の酢酸を蓄積し 酢酸収率は 13.5% であった 一方 ES03/empty 株では ES02/empty 株の約 7 倍に相当する 1.4 g/l の 2,3-ブタンジオールの蓄積が観察された 炭酸固定反応を導入した ES03/PYC 株と ES03/PCK 株においても 2,3-ブタンジオールの蓄積量の増加が観察された ES03/PYC 株と ES03/PCK 株では 2,3-ブタンジオールを それぞれ 3.1 g/l と 3.7 g/l 蓄積し 2,3-ブタンジオール収率は 34.8% と 50.0% であった また ES03/PYC と ES03/PCK 株のコハク酸蓄積は それぞれ 3.8 g/l と 4.2 g/l となり コハク酸収率は 42.7% と 56.8% であった PYC を導入した ES03/PYC 株と ES02/PYC 株を比較すると pta 遺伝子破壊によりコハク酸蓄積は1.0 g/l 減尐し コハク酸収率は8.9% 減尐した また PCKを導入した ES03/PCK 株と ES02/PCK 80

88 株を比較すると pta 遺伝子破壊によりコハク酸蓄積は 0.4 g/l 減尐し コハク酸収率は 7.1% 減尐した このように pta 遺伝子の破壊により 酢酸蓄積量は減尐した 一方 2,3-ブタンジオール蓄積量は増加した 最終的に pta 遺伝子の破壊により コハク酸蓄積と収率は共に減尐することが明らかになった 81

89 ,3-ブタンジオール生成経路の遮断によるコハク酸生産能の改良 ES03/PYC 株と ES03/PCK 株は 2,3-ブタンジオールを主要な副生物として蓄積した その為 ES03/PYC 株と ES03/PCK 株の 2,3-ブタンジオールの生成量を抑制すべく 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断を目指した 3 章の結果から buda 遺伝子の破壊により アセトインと 2,3-ブタンジオールの両生成を抑制出来ることが確認された そこで 本章では ES03/PYC 株と ES03/PCK 株の buda 遺伝子を破壊し 2,3-ブタンジオールの生成量を抑制する方法で コハク酸生産能の向上を目指した ES03 株から 新たに buda 遺伝子を破壊した四重欠損株を取得し ES04 株と命名した ( 表 4-1) その後 ES04 株に対して pstv28 pstv28-pyc pstv28-pck をそれぞれ導入し ES04/empty ES04/PYC ES04/PCK 株を得た これらの株を マイクロチューブを用いてコハク酸生産能を評価した 結果を表 4-3 に纏めた ES04/empty 株では 2,3-ブタンジオールの蓄積量が 0.1 g/l 未満まで減尐した 一方 ES04/empty 株では ES03/empty 株と比較して ピルビン酸と酢酸の蓄積が約 1.5 倍増加した また 炭酸固定反応を導入した ES04/PYC 株と ES04/PCK 株は それぞれ 3.6 g/l と 3.5 g/l のコハク酸を蓄積し コハク酸収率は 58.1% と 60.3% であった PYC を導入した ES04/PYC 株と ES03/PYC 株を比較すると buda 遺伝子破壊によりコハク酸蓄積は 0.2 g/l 減尐するものの コハク酸収率は 15.4% 増加した また PCK を導入した ES04/PCK 株と ES03/PCK 株を比較すると buda 遺伝子破壊によりコハク酸蓄積は 0.7 g/l 減尐するものの コハク酸収率は 3.5% 増加した このように 2,3- ブタンジオール生成経路の遮断により コハク酸蓄積は減尐し コハク酸収率は増加することを明らかにした 本章では ピルビン酸由来の副生物の生産を抑制する目的で adhe/pyc 株と adhe/pck 株に対して 乳酸 酢酸 2,3-ブタンジオール生成経路の遮断を順次実施したが コハク酸生産能の向上は認められなかった 82

90 図 4-5 ゲノム配列情報から推定される E. aerogenes の乳酸 水素 2,3-ブタンジオール エタノール 酢酸 コハク酸生成経路各反応に 酵素の略名とそれをコードする遺伝子名を記載した 太字はコハク酸生成経路を意味し 破線太字は外来遺伝子の導入により新たに構築した炭酸固定経路を意味する -ALS; -アセト乳酸シンターゼ -ALDC; -アセト乳酸デカルボキシラーゼ AR; アセトインレダクターゼ ACDH; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ PTA; ホスホアセチルリン酸トランスフェラーゼ ACK; アセテイトキナーゼ PPS; ホスホエノールピルビン酸シンテターゼ PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ Fum; フマラーゼ FRD; フマル酸レダクターゼ LDH; D- 乳酸デヒドロゲナーゼ PFL; ピルビン酸ギ酸リアーゼ FHL; ギ酸水素リアーゼ 83

91 表 4-3 各菌株のグルコース消費量 生成物濃度 コハク酸収率 菌株名 1 菌体量 g[dcw]/l グルコース 消費量 g/l 生成物濃度 g/l ピルビン酸リンゴ酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 2,3-BuOH アセトイン コハク酸収 率 % 2 (g/g) adhe/empty ± ± 0.4 <0.1 ND <0.1 <0.1 < ± 0.1 ND 6 ND ND 2.8 adhe/pyc ± ± 1.2 <0.1 ND 0.3 ± ± ± ± 0.3 ND 0.3 ± 0.1 ND 35.0 adhe/pck ± ± 0.7 <0.1 ND 0.5 ± ± ± ± 0.4 ND 0.2 ± 0.1 ND 60.5 ES02/empty ± ± ± 0.1 ND ± ± 0.1 ND 1.8 ± 0.1 ND 0.2 ± 0.1 ND 5.9 ES02/PYC 1.6 ± ± 0.2 ND ND 0.2 ± ± 0.1 ND 3.3 ± 0.1 ND 0.2 ± 0.1 ND 51.6 ES02/PCK 1.5 ± ± 0.4 <0.1 <0.1 < ± 0.3 < ± 0.1 ND 0.2 ± 0.1 ND 63.9 ES03/empty 1.3 ± ± ± 0.1 ND 0.3 ± ± 0.1 ND 0.5 ± 0.2 < ± 0.2 ND 9.1 ES03/PYC 1.5 ± ± 0.5 ND ND < ± 0.2 < ± 0.1 < ± 0.2 ND 42.7 ES03/PCK 1.5 ± ± ± 0.1 ND 0.2 ± ± 0.2 ND 0.5 ± 0.2 < ± 0.2 ND 56.8 ES04/empty 1.4 ± ± ± 0.1 ND 0.4 ± ± 0.2 ND 0.8 ± 0.1 <0.1 <0.1 ND 15.1 ES04/PYC 1.6 ± ± ± ± ± ± 0.3 < ± 0.1 <0.1 <0.1 ND 58.1 ES04/PCK 1.5 ± ± ± ± ± ± 0.3 ND 0.5 ± 0.1 <0.1 <0.1 ND ) 培養開始時の菌体量は 1.2 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 %= コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) 4) 5) 各菌株の培養結果は 表 3-6 より引用した 各菌株は 1.5ml マイクロチューブ評価系にて 48 時間培養を実施した 各値は n=4 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 6) ND 84

92 PCK と PYC の共発現によるコハク酸生産能の改良本章では ピルビン酸由来副生物の代謝経路の遮断は コハク酸蓄積の低下を引き起こす事を明らかにした そこで PYC と PCK の共発現によるコハク酸生産能の改良を目指した PYC と PCK は それぞれピルビン酸とホスホエノールピルビン酸を基質にしており 共発現をすることで両基質からオキサロ酢酸を供給できる ( 図 4-5) そこで 新たに PYC と PCK 共発現プラスミド pstv-pck+pyc を構築した ES02 ES03 ES04 株に PYC と PCK の共発現プラスミド pstv-pck+pyc を導入し ES02/PCK+PYC ES03/PCK+PYC ES04/PCK+PYC 株を取得した その後 これらの株のコハク酸生産能を マイクロチューブを用いた発酵試験にて評価した 結果を表 4-4 に纏めた ES02/PCK+PYC ES03/PCK+PYC ES04/PCK+PYC 株の全ての株で PYC と PCK の単独強化時よりも高いコハク酸蓄積と収率が観察された ( 表 4-3 表 4-4) コハク酸の蓄積量も 副生経路の遮断数に比例して増加し ES02/PCK+PYC ES03/PCK+PYC ES04/PCK+PYC 株のコハク酸蓄積量は それぞれ 5.7 g/l 5.9 g/l 8.1 g/l を示した 最も高いコハク酸収率は ES04/PCK+PYC 株で観察されており 71.0% を示した ES04/PCK+PYC 株では 乳酸 エタノール 2,3-ブタンジオールの蓄積は観察されず 0.6 g/l の酢酸 0.5 g/l のリンゴ酸 0.3 g/l のピルビン酸を副生した 以上の結果より PYC と PCK の共発現は PYC と PCK の各々の単独強化よりも効果的にコハク酸蓄積を増加させる事を明らかにした 85

93 表 4-4 PCK と PYC 共発現株のグルコース消費量 生成物濃度 コハク酸収率 菌株名 1 菌体量 g[dcw]/l グルコース 消費量 g/l 生成物濃度 g/l ピルビン酸リンゴ酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 2,3-BuOH アセトイン コハク酸収 率 % 2 (g/g) ES02/PCK+PYC 3,4 1.5 ± ± 0.4 < ± 0.1 < ± 0.3 ND ± 0.1 ND 0.2 ± 0.1 ND 67.0 ± 4.3 ES03/PCK+PYC 1.5 ± ± ± ± ± ± 0.2 ND 0.7 ± 0.2 < ± 0.2 ND 60.8 ± 4.8 ES04/PCK+PYC 1.6 ± ± ± ± 0.1 < ± 0.4 < ± 0.1 <0.1 <0.1 ND 71.0 ± 2.8 1) 培養開始時の菌体量は 1.2 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 %= コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) 各菌株は 1.5ml マイクロチューブ評価系にて 48 時間培養を実施した 4 ES02/PCK+PYC は ES02 株に pstv28-pck+pyc が導入された菌株を意味する 5) 各値は n=4 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 6) ND は未検出を意味する 86

94 培養 ph がコハク酸生産能に及ぼす影響最もコハク酸蓄積が高かった ES04/PCK+PYC 株を用いて 各 ph 制御下でのコハク酸生産能を比較した 100 ml 容量の発酵槽を用いて ph を に一定制御し 48 時間のコハク酸発酵試験を実施した 結果を表 4-5 と図 4-6 に纏めた 全ての ph 制御条件下でコハク酸蓄積は確認できたものの ph の低下に伴いコハク酸蓄積も減尐する傾向が観察された 実際 ph7.0 制御の条件では 22.6 g/l のコハク酸を蓄積したのに対して ph5.7 制御では ph7.0 の約半分に相当する 11.2 g/l の蓄積が観察された また ph5.5 制御では 更に ph5.7 の半分に相当する 5.1 g/l までコハク酸蓄積が減尐した 中性条件下と比較して 弱酸性条件下では僅か ph 0.2 の低下で顕著なコハク酸蓄積の低下が観察された これに対して コハク酸の収率は弱酸性条件下 (ph5,7 ph5.5) の方が 中性条件 (ph7.0) よりも高い値が得られた ph5.5 と ph5.7 制御の両条件で コハク酸収率が約 70% に対して ph7.0 制御の条件では 55.8% まで低下した この理由として ph7.0 制御条件では 5.1 g/l のピルビン酸と 5.4 g/l のリンゴ酸蓄積が観察された 本結果は ph5.5 の環境化で細菌がコハク酸を生産した初めての報告である 一方 E. aerogenes から構築したコハク酸生産菌も E. coli のコハク酸生産菌と同様に ph の低下に伴いコハク酸生産能が低下することが示された 87

95 図 4-6 ES04/PCK+PYC 株の各 ph 培養条件における グルコース コハク酸 ピルビン酸 リンゴ酸濃度 (g/l) の経時変化 A;pH7.0 制御における培養結果 B;pH5.7 制御における培養結果 C;pH5.5 制御における培養結果 ; グルコース濃度 ; コハク酸濃度 ; ピルビン酸濃度 リンゴ酸濃度を表す 各値は n=3 の平均値を意味する 88

96 表 4-5 ES04/PCK+PYC 株の各 ph 制御培養条件におけるグルコース消費量 生成物濃度 コハク酸収率 コハク酸生産性 培養制御 1 菌体量 グルコース 生成物濃度 g/l コハク酸収 コハク酸生産 ph g[dcw]/l 消費量 g/l ピルビン酸リンゴ酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 EtOH 2,3-BuOH アセトイン 率 % 2 (g/g) 性 3 (g/l/h) ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.1 <0.1 ND ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± 0.1 <0.1 <0.1 ND 72.7 ± ± ± ± ± ± 0.1 < ± ± ± 0.1 <0.1 <0.1 ND 71.0 ± ± ) 培養開始時の菌体量は 1.2 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 %= コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) コハク酸生産性 (g/l/h) は 以下の算式で求めた コハク酸生産性 (g/l/h)= コハク酸蓄積 (g/l)/ 培養時間 4) 各 ph 培養制御下で 48 時間培養を実施した 5) 各値は n=3 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 6) ND は未検出を意味する 89

97 4-4. 考察 ピルビン酸由来副生経路の遮断によるコハク酸生産能の改良本章で構築したコハク酸生産株の培養結果を図 4-7 に纏めた 本章では 最初の育種戦略として PYC と PCK をそれぞれ単独で導入した株に対して 乳酸 酢酸 2,3 ブタンジオール生成経路の遮断を実施した その結果 ES04/PYC 株のコハク酸蓄積は 親株である adhe/pyc 株と比較して 1.8 g/l 減尐した また ES04/PCK 株においても同様に adhe/pck 株と比較して 1.7 g/l 減尐した ( 図 4-7 B) このように PYC と PCK をそれぞれ単独で導入した株に対して ピルビン酸から由来する副生経路の遮断を行っても コハク酸生産能が改善されないことが示された おそらく これらの株では ピルビン酸から由来する副生経路の遮断により 細胞内の NADH 濃度が上昇し その結果 酸化還元バランスの不均衡を招いたと推察される 実際 NADH の酸化経路である乳酸 2,3-ブタンジオール生成経路を遮断した際に グルコース消費量の減尐が観察された ( 図 4-7 A) 一方 コハク酸収率に関しては PYC と PCK 導入株では 異なる傾向が観察された ( 図 4-7 C) PYC 強化株では ピルビン酸由来副生経路の遮断数に比例して コハク酸収率は増加した 実際 adhe/pyc 株のコハク酸収率が 35.0% に対して ES04/PYC 株では 58.1% まで増加した PYC はピルビン酸を基質とする為 競合経路の遮断により PYC の代謝流量の比率が増加したと考えられる 一方 PCK 導入株では 副生経路の遮断数に関係なく コハク酸収率は約 60% で一定であった PCK は PEP を基質とする為 ピルビン酸から派生する副生経路の存在は 代謝流量の比率に影響を与えなかったと思われる PYC と PCK の共発現によるコハク酸生産能の改良 PYC と PCK を共発現した株では それぞれを単独で導入させた株よりも 高いコハク酸蓄積と収 率が観察された ( 図 4-7 A) これは PYC 導入株と PCK 導入株では 依然として炭酸固定経路が 90

98 コハク酸生産の律速反応であったことを示している 実際 ES04/PYC と ES04/PCK 株のコハク酸蓄積が約 3.5 g/l だったのに対して ES04/PCK+PYC 株では 2.3 倍高い 8.1 g/l の蓄積が観察された この結果は PYC と PCK の 2 つの炭酸固定経路を導入した方が それぞれ単独で導入した時よりも 効率的にオキサロ酢酸を供給出来たことを示す PCK の単独導入株では コハク酸収率は高いものの PCK がグルコース PTS と競合する為 グルコース消費量の低下を引き起こした また PYC の単独導入株では グルコースの消費量は高いものの PYC と競合する副生経路により収率が PCK と比べて低い結果が得られた このような一長一短な効果に対して PCK と PYC を共発現することにより グルコース PTS で生じたピルビン酸を PYC で再びコハク酸生成経路に戻すことが可能となり グルコース消費量とコハク酸蓄積が増加したと思われる 本検討は A. succinogenes PCK と C. glutamicum PYC の共発現を実施し コハク酸生産能を向上させた初めての報告である 培養 ph の低下がコハク酸生産能に及ぼす影響表 4-5 の結果から 細菌で初めて酸性 (ph5.5) 嫌気条件下でコハク酸生産を認めた 一方で E. aerogenes も E. coli と同様に ph の低下に比例して コハク酸蓄積の減尐が観察された [25] 反対に コハク酸収率は 中性条件 (ph7.0) より酸性条件下 (ph ) の方が高い値を示した ( 表 4-5) 中性条件では 特異的にリンゴ酸とピルビン酸の副生が観察され これらの副生がコハク酸収率を低下させた原因である 中性条件下 (ph7.0) では コハク酸生産速度 (g/l/h) が酸性条件 (ph5.7) の 2 倍以上高い為 リンゴ酸以降の反応が新たな律速反応となり 代謝のオーバーフローを引き起こしたと考える 特に フマル酸レダクターゼ (FRD) は嫌気条件下で発現が誘導される為 誘導条件が不充分な場合 リンゴ酸を副生する可能性がある FRD をコードする frdabcd オペロンのプロモーター領域を構成的プロモーター (tac プロモーター等 ) に置換し 常に高い発現を維持する方法で リンゴ酸副生の低減が可能だと考える 2 章の結果から E. aerogenes は酸性 (ph5.0) 嫌気条件下でも 菌体生育が観察され 37.8 g/l 91

99 のグルコースが消費された ( 表 2-3) 一方 本検討では それよりも高い ph5.5 の環境であっても 菌体生育は観察されず グルコースの消費量 (11.4 g/l) は 1/3 以下まで減尐した この結果は コハク酸生産菌にすることで 酸性環境下でのグルコース資化能が低下した事を示す E. aerogenes AJ 株は エタノールや 2,3-ブタンジオールを主要な生成物として蓄積し これらの生成経路では ATP が消費されない 一方 コハク酸生成経路では 炭酸固定反応時に ATP を消費する為 前述の経路等と比較するとエネルギー収支的に不利な代謝経路と言える つまり コハク酸を主要な生成物にすることで 得られるエネルギー量が低下した為 菌体生育とグルコース消費量が低下したと考える 92

100 図 4-7 各種菌株のグルコース消費量 コハク酸蓄積 コハク酸収率 1.5 ml のマイクロチューブを用いた コハク酸発酵試験の結果を纏めた A; グルコース消費量 (g/l) B; コハク酸蓄積 (g/l) C; コハク酸収率 % 各値は 表 と表 を使用した empty; ベクターコントロール PYC;PYC 導入株 PCK;PCK 導入株 PYC+PCK;PYC と PCK の共発現株 93

101 4-5. 結言 本章では ピルビン酸から副生する生成物の代謝経路の遮断と PYCとPCKの共発現により コハク酸生産能の改善を目指した エタノール生成経路の遮断に加えて 乳酸 酢酸 更に2,3-ブタンジオール生成経路の遮断を実施したが コハク酸生産能の向上は認められなかった 一方 PYCとPCKを共発現した菌株においては PYCやPCKを各々単独発現した時よりも 高いコハク酸生産能を示すことを明らかにした また 本章で得られたES04/PCK+PYC 株は ph5.5の環境下でコハク酸を5.1 g/l 蓄積し コハク酸収率は70.8% となった 本結果は 細菌が酸性 (ph5.5) 嫌気条件下でコハク酸を生産した初めての報告である 94

102 5 章 E. aerogenes のコハク酸生成経路における ATP 獲得量の向上によるコハク酸生 産能の改良 5-1. 緒言 ES04/PCK+PYC 株は ph の低下に伴いコハク酸蓄積が減尐した 特に 酸性領域側では この傾向が顕著に観察されており ph を 5.7 から 5.5 へ僅か 0.2 下げただけで コハク酸蓄積は半減化した ( 表 4-5) 一方 ph5.7 と ph5.5 のコハク酸収率は どちらも約 70% で同等であり 副生物に関しても有意差は認められなかった これらの結果から ph5.7 と ph5.5 では同様な代謝が行われているが 全体の代謝速度は低下していることを示している 代謝速度は 細胞内のエネルギー量の影響を受けることが知られている とりわけ 酸性嫌気条件下では ph の僅かな低下によりエネルギーを取り巻く環境は大きく変化する [36,56] 図 5-1 が示すように酸素が存在しない嫌気条件下では ATP 生産は酸化的リン酸化反応では無く 基質レベルのリン酸化反応に依存する その為 得られる ATP 量も好気条件と比較して尐ない 特に コハク酸生成経路では ピルビン酸やホスホエノールピルビン酸に対して 炭酸を結合する為に ATP が利用される その為 コハク酸生成経路は 炭酸固定反応を伴わない乳酸やエタノール生成経路と比較して ATP 消費量が多い経路と言える 例えば 炭酸固定反応として PYC を利用し 1 mol のグルコースから 2 mol のコハク酸を生成すると 余剰 ATP は生産されない計算になる [59] さらに 細胞内で変換されたコハク酸を排出する為に ATP 駆動型トランスポーターを利用すると ATP の収支はマイナスに転ずる 当然 ATP 不足になれば PYC などの炭酸固定反応は進行せず 炭素源がピルビン酸由来の副生経路へと流出し コハク酸生産量の低下を引き起こす つまり ATP の供給量がコハク酸生産能の律速要因に成り得ることを示している コハク酸代謝経路に潜在する ATP 不足のリスクに加えて 培地の酸性化は ATP 使用量を増加させる 酸性条件下では 細胞外へのプロトン排出や タンパク質のメンテナンス等 耐酸性機構を駆動する為に ATP が利用される [36,56] その結果 細胞内 ph の維持に必要な ATP 量は 中性 95

103 条件よりも酸性条件の方が多いと推定される [56] 原理的に 培養 ph を下げることで 高いコハク酸生産能を有する菌株ほど ATP 不足の影響を受けやすいと言える その為 酸性嫌気条件下におけるコハク酸生産能を向上させるには ATP 獲得量を向上させる代謝工学的アプローチが有効な手段であると考えた 本章では ES04/PCK+PYC 株のコハク酸生産能の改良を目的に コハク酸生成経路で得られる ATP 量の向上に着目した代謝工学的アプローチを実施した また 本アプローチによって得られた菌株の酸性 (ph5.7) 嫌気条件下におけるコハク酸培養試験を実施し 効果の検証を行った 図 5-1 好気条件と酸性嫌気条件におけるエネルギー獲得方法の違い左図 好気条件では TCA サイクルで得られた NADH を プロトン ATPase を利用して ATP を獲得できる ( 酸化的リン酸化反応 ) 右図 嫌気条件では 基質レベルのリン酸化反応でのみ ATP を獲得する 特に コハク酸発酵では PYC などの炭酸固定反応で ATP を消費する為 余剰 ATP は生産されない 一方 酸性環境下では 細胞内の ph を維持する為の ATP 消費量が増加する 96

104 5-2. 実験材料と方法 菌株とプラスミド 本章で使用した菌株とプラスミドを表 5-1 に記載する 培地と培養条件 AJ 株の培養は 汎用的に Luria-Bertani (LB) 培地を用いた 必要に応じて寒天 20 g/l 抗生物質 ( 抗生物質濃度 Km;50 mg/l Cm;40 mg/l) を添加して使用した 特に本文中に記載が無い場合は 37 で培養を実施した 嫌気培養時には角型ジャー標準型 ( 三菱ガス化学社製 ) に AnaeroPack-A04( 三菱ガス化学社製 ) を 1 個使用した 本実験で使用した LB 培地 SOC 培地 MS 培地の組成を表 2-2 に示した マイクロチューブを用いたコハク酸発酵 1.5 ml 容量のマイクロチューブを用いたコハク酸発酵は 補足資料 3 に記載した手順で実施した 発酵槽を用いた ph 制御下でのコハク酸発酵 100 ml 発酵槽を用いたコハク酸発酵は 補足資料 4 に記載した手順で実施した 変更点を以下に記載する MS 培地のグルコース濃度を 100 g/l に変更した プレートからの稙菌量を 7.0 g/[dcw]l になるように調製した 中和剤を 4 N の Ca(OH) 2 に変更した 培養 ph は ph5.7 に制御し 60 時間の培養を実施した E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出法 E. aerogenes からのゲノム DNA 抽出は 前項 に記載した手順で実施した 本章で使用したプライマー 97

105 本章で使用したプライマーと塩基配列を表 5-2 に記載する E. aerogenes の形質転換法 形質転換は 前項 に記載した手順で実施した λ-red recombination system による遺伝子破壊株の構築前項 に記載した操作で poxb pflb ptsg ptsi 株を取得した 例えば poxb 遺伝子破壊用カセットは poxb-attl と poxb-attr プライマーを使用した その後 poxb-cf と poxb-cr のプライマーをもちいて poxb 遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子と置換していることを確認した 同様に表 5-2 記載のプライマーを用いて pflb ptsg ptsi 株を取得した prsf-p ara -IX を用いた薬剤耐性遺伝子の除去 前項 の手順に従って prsf-p ara -IX を用いて染色体に固定されたカナマイシン耐性遺伝子を 除去した A. succinogenes 由来 pck 遺伝子の染色体発現株 (ES06) の構築 A. succinogenes 由来 pck 遺伝子の染色体発現株は 補足資料 5 に記載した手順で構築した frdabcd オペロンのプロモーター置換株の構築 attl λ -kan-attr λ -P tac を鋳型とし プライマー frdabcd-tacf と frdabcd-tacr の組合せで PCR を行い 両端に frdabcd オペロンのプロモーター領域と同じ配列を有する attl λ -kan-attr λ -Ptac を調製した この遺伝子断片を λ-red recombination system にて ES06/pRSFredTER 株に形質転換し プロモーター領域が attl λ -kan-attr λ -P tac に置換された ES07 株を構築した SDS-PAGE 解析 98

106 ES06 株と ES05/PCK 株の PCK 発現量を SDS-PAGE 解析により確認した SDS-PAGE 解析は に記載した方法に従って実施した ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株の M9 グルコース培地での生育速度 M9 グルコース培地を用いて ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株の OD 660 を測定した M9 グルコース培地に各菌株を稙菌後 Bio-Photorecorder TVS062CA(ADVANTEC 社製 ) を用いて 37 で培養を実施した E. aerogenes の DCW 算出式 AJ 株の DCW 算出式は で求めた計算式を使用した E. aerogenes g[dcw]/l=0.291 OD グルコース濃度 OD 600 有機酸の各種定量 CaCO 3 を含む培養液は 0.1N HCl で希釈し グルコース濃度 OD 600 有機酸濃度を測定した グ ルコース濃度 OD 600 有機酸の各種定量方法は を 99

107 表 5-1 本章で使用した菌株とプラスミドの一覧 菌株とプラスミド 注釈 薬剤耐性 引用 入手先 Strains ES04 AJ adhe ldha pta buda Km 表 4-2 ES04/PCK AJ adhe ldha pta buda / pstv28-pck Km, Cm 表 4-2 ES04/PCK+PYC AJ adhe ldha pta buda / pstv28-pck+pyc Km, Cm 表 4-2 ES05 AJ adhe ldha pta buda poxb Km 本検討 ES05/PCK AJ adhe ldha pta buda poxb / pstv28-pck Km, Cm 本検討 ES06 AJ adhe ldha pta buda poxb::p tac -pck (A. succinogenes) Km 本検討 ES07 AJ adhe ldha pta buda poxb::p tac -pck (A. succinogenes) P tac -frdabcd Km 本検討 ES08 AJ adhe ldha pta buda poxb::p tac -pck (A. succinogenes) P tac -frdabcd pflb Km 本検討 ES08 ptsg AJ adhe ldha pta buda poxb::p tac -pck (A. succinogenes) P tac -frdabcd pflb ptsg Km 本検討 ES08 ptsi AJ adhe ldha pta buda poxb::p tac -pck (A. succinogenes) P tac -frdabcd pflb ptsi Km 本検討 Plasmids prsfredter 広宿主域 λ-red タンパク質発現プラスミド Cm 表 4-2 prsf-p ara -IX 広宿主域 Int Xis 発現用プラスミド Cm 表 4-2 pstv28-pck A. succinogenes PCK 発現用プラスミド Cm 表 4-2 pstv28-pck+pyc A. succinogenes PCK と C. glutamicum PYC 共発現用プラ スミド Cm 表

108 表 5-2 本章で使用したプライマーと塩基配列一覧 プライマー名 プライマー配列 (5'-3') poxb pflb ptsg ptsi 遺伝子破壊に用いたプライマー poxb-attl poxb-attr pflb-attl pflb-attr ptsg-attl ptsg-attr ptsi-attl ptsi-attr poxb-cf poxb-cr pflb-cf pflb-cr ptsg-cf ptsg-cr ptsi-cf ptsi-cr frdabcd-cf frdabcd-cr 5 -ACGTAACCTGTAGTTTCATCTAAGCTTGATAGCGTTATCACAAAAAGGAGATGG AAAACCTGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3 5 -TATCACTGCGAAGATCTATCACGGCATATCCTTGTTCTGATTCAGGGTGATAGC ATTGTTTACTCAGCCTTATTTTTCAGATTTTATTCGG-3 5 -CATTAATGGTTGTCTCAGGCAGTAAATAAAAAATCCACTTAAGAAGGTAGGTGT TACATGTGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3 5 -AAAAAGGCCCCACTGATGTGGGGCCTTTATTGTACGCTTTTTCAGTCAGACAG GGAATTACGCTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3 5 -ATGTTTAAGAATGCATTTGCTAACCTGCAGAAGGTCGGTAAATCGCTGATGCTG CCAGTATGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3 5 -TTAGCTATTGCGGATGTACTCATCCATCTCGGTTTTCAGGTTATCGGACTTGGTG CCGAACGCTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGAG-3 5 -TGAACTCGAGTAAGTTCACGGGTTCTTTTTAATATCAGTCACAAGTAAGGTAGG GTTATGTGAAGCCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGC-3 5 -ATCGAACAAACCCATGATCTTCTCCTAAGCAGTAATTTGGGCCGCGCATCTCGT GGATTACGCTCAAGTTAGTATAAAAAAGCTGAACGA-3 5 -GTCGATTAGCTTATGTAGACCG-3 5 -TGGAGTTCATTGACGGTTGGG-3 5 -GGCTTTGAACACAGCATCGC-3 5 -CTGTTTTGACAGGTACCC-3 5 -TGAATGAAACGTGATAGCCG-3 5 -TCAACTATAGACTTAGCTGC-3 5 -CAAGAAGTTACCATTACCGC-3 5 -TTGCCAGTAGGTTTGATGGC-3 5 -GCGGCGATATTACATCCTGA-3 5 -TCTAAGTGTAGATAGCGGCA-3 A.succinogenes PCK 発現カセットに用いたプライマー pck-tacr tac-pckf 5 -CGAGTTTGTTTAAGTCAGTCATGGCAGTCTCCTTGTGTGAAATTGTTATCCG-3 5 -CGGATAACAATTTCACACAAGGAGACTGCCATGACTGACTTAAACAAACTCG-3 101

109 poxb-pckr 5 -TATCACTGCGAAGATCTATCACGGCATATCCTTGTTCTGATTCAGGGTGATAGC ATTGTTATCTCAGCCTTATTTTTCAGATTTTATTCGG-3 frdabcd オペロンのプロモーター置換に用いたプライマー frdabcd-tacf frdabcd-tacr 5 -AAATAAAATTGATAAATTAGCGCACGGATTGATAAAAAAATCGAACGCGTTGAAG CCTGCTTTTTTATACTAAGTTGGCA-3 5 -CCTGCTCCGCCTGCGCCAATGACGACAAGATCGGCTTGAAAAGTTTGCACGGCA GTCTCCTTGTGTGAAATTGTTATCCG-3 102

110 1. attl λ -kan-attr λ -Ptac を含む DNA 断片を鋳型に プライマー ΔpoxB-attL と pck-tacr の配列を用いて PCR(TaKaRa Prime star 秒 秒 秒 30 サイクル ) を実施し pck 遺伝子の orf 領域を含む遺伝子断片 A を取得した ( 上図 A) 2. A. succinogenes ATCC55618 株のゲノム DNA を鋳型に プライマー tac-pckf と poxb-pckr の配列を用いて PCR(TaKaRa Prime star 秒 秒 秒 30 サイクル ) を実施し attl λ -kan-attr λ -Ptac を含む遺伝子断片 B を取得した ( 上図 A) 3. 遺伝子断片 A と B を鋳型にして プライマー ΔpoxB-attL ΔpoxB-pckR の配列を用いて Overlapping PCR(TaKaRa Prime star 秒 秒 秒 35 サイクル ) を行い 両端に poxb の組換え配列を有した attl λ -kan-attr λ -P tac -pcka を得た ( 上図 B) 4. λ-red recombination system を用いて ES04/pRSFredTER 株に attl λ -kan-attr λ -P tac -pck の PCR 産物 500 ng をエレクトロポレーションにて導入した 5.50 mg/l カナマイシンを含む LB 培地で選択培養を行い 形質転換体を取得した 6. 得られた PCK 染色体発現株 (ES06 株 ) は プライマー poxb-cf と poxb-cr を用いてコロニー PCR (TaKaRa Speed star 秒 秒 秒 40 サイクル ) を行い poxb 遺伝子が attl λ -kan-attr λ -P tac -pck に置換している事を確認した ( 上図 C) 補足資料 5. A. succinogenes 由来 pck 遺伝子の染色体発現株 (ES06 株 ) の構築手順 103

111 5-1. 結果 コハク酸生成経路における ATP 獲得量を向上させる為の代謝工学的アプローチ ATP 獲得量が向上したコハク酸生成経路の設計を目的に グルコースの取り込みシステムと炭酸固定反応を改変した際に得られる ATP 獲得量を計算した 通常 E. coli などの腸内細菌群では ホスホトランスフェラーゼシステム (Phosphotransferase system; PTS) を介して 細胞内にグルコースが取り込まれる ( 図 5-3)[57] この反応は 多段階のリン酸リレー反応により構成され PEP のリン酸基が enzyme I (EI) にリン酸化され HPr を経由した後 IIBC glc を介してリン酸化されたグルコースが細胞内に取り込まれる [57,58] その結果 PTS で 1 mol のグルコースを細胞内に取り込むと 理論的に1 mol のピルビン酸が PEP の脱リン酸化反応により生じる E. coli や C. glutamicum のコハク酸生産菌では PTS で生じたピルビン酸をオキサロ酢酸に変換する目的で PYC が利用される [15,42,44] PYC の反応では 炭酸水素イオンを基質として ATP のエネルギーを利用して炭酸固定を行い オキサロ酢酸が生じる 図 5-4 の経路 A が示すように PYC が唯一の炭酸固定経路として機能する場合 1 mol のグルコースから 2 mol のコハク酸が生産される際 余剰 ATP は生産されない結果になる その為 コハク酸 1 mol 当たりに理論的に得られる ATP 量 ( 理論 ATP 収支 ) は 0 となる 4 章で構築した ES04/PCK+PYC 株についても 理論 ATP 収支を求めた E. aerogenes においても 他の腸内細菌と同様に PTS がグルコースの主要な取り込み担体として機能している 一方 炭酸固定経路は PEP を基質とする A. succinogenes 由来 PCK と ピルビン酸を基質とする C. glutamicum 由来 PYC の 2 つが共存する ( 図 5-4 経路 B) この時 1 mol の PEP が PCK の反応により 1 mol の ATP 生成を伴いながら オキサロ酢酸に変換される また PTS により生じた 1 mol のピルビン酸が PYC を介して 1 mol の ATP 消費を伴いオキサロ酢酸に変換される 最終的に 理論 ATP 収支は 0.5 となり コハク酸生成時に余剰 ATP が得られる 理論 ATP 収支が最大になるのは グルコースを non-pts で取り込み PCK が唯一の炭酸 104

112 固定経路になる条件である E. coli などでは PTS とは別に non-pts 経路でもグルコースの取り込みが可能である Non-PTS 経路は sugar-proton symporter を介してプロトンとグルコースを同時に細胞内に取り込む [59,60] E. coli では sugar-proton symporter として GalP がヘキソースの取り込み担体として機能する事が知られている [57] GalP を介して取り込まれたグルコースは グルコキナーゼ (Glucokinase;GLK) により ATP のリン酸基を利用してリン酸化されグルコース 6 リン酸となり 解糖系で代謝される ( 図 5-3) この反応では 1 mol のグルコースから 2 mol の PEP が得られる ( 図 5-4 経路 C) その後 2 mol の PEP は PCK の反応を介して 2 mol の ATP 生成を伴い 2 mol のオキサロ酢酸に変換され 最終的に 2 mol のコハク酸が生成される この一連の反応における理論 ATP 収支は 1.0 となり 経路 B の値に対して 2 倍の値になる 本計算結果により 理論 ATP 収支を最大にするには グルコース PTS の不活化と PCK の導入が必要であることを明らかにした また 本代謝工学的アプローチにより ES04/PCK+PYC 株の ATP 獲得量を 2 倍向上出来ることを明らかにした 105

113 図 5-3 本章で構築するコハク酸生産菌の代謝マップ E. aerogenes のゲノム配列情報をもとに代謝マップを作成した 各反応に 酵素の略名とそれをコードする遺伝子名を記載した 太字はコハク酸生成経路を意味し 破線太字は外来遺伝子の導入により新たに構築する炭酸固定経路を意味する X 印は遮断する代謝反応を示す -ALS; - アセト乳酸シンターゼ -ALDC; - アセト乳酸デカルボキシラーゼ AR; アセトインレダクターゼ ACDH; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ ADH; アルコールデヒドロゲナーゼ PTA; ホスホアセチルリン酸トランスフェラーゼ ACK; アセテイトキナーゼ PPS; ホスホエノールピルビン酸シンテターゼ PCK; ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ PYC; ピルビン酸カルボキシラーゼ MDH; リンゴ酸デヒドロゲナーゼ Fum; フマラーゼ FRD; フマル酸レダクターゼ LDH; D- 乳酸デヒドロゲナーゼ PFL; ピルビン酸ギ酸リアーゼ FHL; ギ酸水素リアーゼ EI; EI タンパク質 HPr; ヒスチジン含有ホスホキャリアタンパク質 IIBC Glc ; グルコースパーミアーゼ GalP; ガラクトース / プロトンシンポーター GLK; グルコキナーゼ 106

114 図 5-4 各代謝経路における理論 ATP 収支グルコース取り込み経路と炭酸固定反応を各種組み合わせた時の理論 ATP 収支を算出した 理論 ATP 収支は コハク酸 1 mol 当たりに得られる ATP 量を表す 107

115 ピルビン酸オキシダーゼの不活化によるコハク酸生産能の改良図 5-4 で示したように 理論 ATP 収支を改善させるには PCK の導入とグルコース PTS の不活化が必要である 初めに PCK の染色体発現株を構築する目的で A. succinogenes PCK 発現カセットの染色体導入を行った 本章では PCK 発現カセットの導入先として 副生生成経路の反応を触媒する酵素をコードする遺伝子を選択し その遺伝子の破壊を伴いながら PCK 発現カセットの染色体導入を目指した ( 図 5-2) この方法により PCK の染色体発現と同時に 副生物の蓄積を低減させることが可能である ES04 株は 1.4 g/lの酢酸を主要な副生物として生産した ( 表 5-3) この時 ES04 株の酢酸収率は 17.3% に達した 図 5-3 に示すように 酢酸はアセチル-CoA を介した反応とは別に ピルビン酸の酸化反応によっても生成される この反応は ピルビン酸オキシダーゼ (Pyruvate oxidase; POX) により触媒され ユビキノンの還元反応を伴う E. aerogenes においても POX をコードする poxb 遺伝子の存在が確認できる 本章では A. succinogenes 由来 PCK の発現カセットを導入する遺伝子座として poxb 遺伝子 (locus tag; EAE_09245) を選択し 更なる酢酸生成量の低減を目指した まず poxb 遺伝子の破壊がコハク酸生産量に及ぼす影響を確認する為 ES04 株から poxb 遺伝子が破壊された ES05 株を取得した その後 pstv28-pck を導入し ES05/PCK 株を取得した この株を マイクロチューブを用いたコハク酸発酵にて コハク酸生産能を ES04/PCK 株と比較した 結果を表 5-3 に纏めた ES04/PCK 株と ES05/PCK 株は それぞれ 6.4 g/l と 6.8 g/l のコハク酸を蓄積し コハク酸収率は 61.5% と 61.8% であった コハク酸蓄積と収率が同等である一方 酢酸蓄積には僅かな差異が確認された ES04/PCK 株は 0.8 g/l の酢酸を蓄積し 酢酸収率が 7.7% であったのに対して ES05/PCK 株では 0.6 g/l の酢酸を蓄積し 酢酸収率は 5.4% であった 以上の結果より poxb 遺伝子の破壊により 僅かに酢酸蓄積は減尐するものの コハク酸生産能には殆ど影響を与えないことを明らかにした これらの結果から poxb 遺伝子に対して PCK 発現カセットの導入を進めることにした 108

116 表 5-3 各菌株の 菌体量 グルコース消費量 生成物濃度とコハク酸収率 菌株名 1 菌体量 g[dcw]/l グルコース 消費量 g/l 生成物濃度 g/l コハク酸収率 % 2 ピルビン酸リンゴ酸ギ酸コハク酸乳酸酢酸 (g/g) ES04 3,4 5.2 ± ± ± 0.1 < ± ± 0.1 < ± ES04/PCK 5.7 ± ± ± ± ± ± 0.1 < ± ES ± ± ± 0.2 < ± ± 0.1 < ± ES05/PCK 5.7 ± ± ± ± ± ± 0.1 < ± ES ± ± ± ± ± ± 0.4 < ± ES ± ± ± ± ± ± 0.3 < ± ES ± ± ± ± ± ± 0.3 < ± ES08 ptsg 5.4 ± ± ± ± ± ± 0.2 < ± ES08 ptsi 5.3 ± ± ± ± 0.1 < ± 0.3 ND ± ) 培養開始時の菌体量は約 5.0 g[dcw]/l に調製した 2) コハク酸収率 % は 以下の算式で求めた コハク酸収率 = コハク酸蓄積 (g/l)/ グルコース消費量 (g/l)x100 3) 各菌株は 1.5 ml マイクロチューブ評価系にて 48 時間培養を実施した 4) adhe/empty は adhe 株に pstv28 が導入された菌株を意味し adhe/pyc は adhe 株に pstv28-pyc が導入された菌株を意味し adhe/pck は adhe 株に pstv28-pck が導入された菌株を意味する 5) 各値は n=4 の平均値を意味し ± 以後の値は標準偏差値を意味する 6) ND は未検出を意味する 109

117 A. succinogenes PCK 発現カセットの染色体固定と SDS-PAGE による PCK の発現解析 A. succinogenes 由来 PCK 発現カセットを構築し λ-red recombination system を用いて ES04 株の poxb 遺伝子座に導入した 新たに得られた形質転換体を ES06 株と命名した ES06 株における PCK の発現量を確認する目的で SDS-PAGE 解析を実施した CBB 染色後のゲルの写真を図 5-5 に示す PCK の推定分子量付近 (59 kda) にバンドを確認できた このバンドは プラスミドで PCK の発現を強化した ES05/PCK 株にも確認でき PCK 由来のバンドであると結論づけた 染色体に導入した PCK を発現する目的で使用した E. coli 由来 tac プロモーターが E. aerogenes で 高い転写活性を有している事を明らかにした 更に ES06 株の PCK の発現量は ES05/PCK 株と比較して 低い結果が得られた 図 5-5 SDS-PAGE 解析を用いた ES06 株と ES05/PCK 株の PCK 発現量 M; Protein standard (Novex Sharp Pre-Stained Protein standard, Invitrogen) 1; ES05 株の培養液から調製したサンプル 2; ES05/PCK 株の培養液から調製したサンプル 3; ES06 株の培養液から調製したサンプル 矢印は PCK と推定されるバンドを指示す 110

118 A. succinogenes PCK の発現量がコハク酸生産能に及ぼす影響 PCKの発現量の違いが コハク酸生産能に及ぼす影響を確認する目的で ES06 株のコハク酸生産能を ES05/PCK 株と比較した マイクロチューブを用いたコハク酸発酵の結果を表 5-3 に纏めた ES05/PCK 株と ES06 株は それぞれ 6.8 g/l と 7.6 g/l のコハク酸を蓄積し ES06 株のコハク酸蓄積量は ES05/PCK 株の 1.1 倍高い値が得られた 一方 コハク酸収率には有意差は観察されず どちらも約 60% であった 両菌株間でのコハク酸蓄積量の違いは 細胞内の PEP 濃度の違いに起因すると推定される PCK の反応では PEP を基質として利用する為 グルコース-PTS との反応と競合関係にある ( 図 5-3) PCK の菌体内における総活性値が高いと 細胞内の PEP 濃度が低下し グルコースの取り込み速度が阻害される可能性が考えられる 実際 PCK の発現量が ES06 株よりも多い ES05/PCK 株では 消費したグルコース量も ES06 株よりも減尐した 以上の結果から ES06 株の方が ES05/PCK 株よりもコハク酸生産に適した PCKの発現量だと言える また ES05/PCK 株と ES06 株では 新たな副生として 約 0.5 g/lのリンゴ酸蓄積が認められた 両株ではリンゴ酸以降の代謝反応が律速となっている可能性が示唆された 111

119 フマル酸レダクターゼの発現強化によるコハク酸生産能の改良表 5-3 の結果から ES06 株は 0.5 g/l のリンゴ酸を主要な副生物として蓄積し リンゴ酸収率は 4.2% に達した 図 5-3 に示すように リンゴ酸からコハク酸までの反応は フマラーゼ (fumarase; FUM) とフマル酸レダクターゼ (fumarate reductase; FRD) によって反応が触媒される とりわけ FRD の反応は メナキノンの酸化反応と連動し細胞内の酸化還元状態の維持機構として働く [59,61] その為 この反応は嫌気条件下における呼吸反応という意味から フマル酸呼吸と呼ばれる FRD をコードする frdabcd 遺伝子群は オペロンを形成しており 細胞内酸素濃度の低下に応じて 発現量が増加することが知られている [62] ES06 株では FRD の総活性値が不足しており リンゴ酸が副生したと考えた そこで リンゴ酸副生量の低減に基づくコハク酸生産能の向上を目指し FRD の発現強化を行った PCK の染色体発現に用いた tac プロモーターを frdabcd 遺伝子群 (locus tag; EAE09240, EAE_09235, EAE_09230, EAE_09225) のプロモーター領域と置換した ES07 株を新たに構築した 得られた ES07 株のコハク酸生産能を ES06 株と比較した マイクロチューブを用いたコハク酸発酵の結果を表 5-3 に示す ES06 株と ES07 株は それぞれ 7.6 g/l と 9.1 g/l のコハク酸を蓄積した ES07 株のコハク酸蓄積は ES06 株の 1.2 倍高い値を示した 一方 両者のコハク酸収率は 63.3% と 64.1% となり おおよそ同じ値を示した また FRD の発現強化により リンゴ酸の蓄積量は減尐した ES06 株は 0.5 g/l のリンゴ酸を蓄積し リンゴ酸収率が 4.2% であったのに対して ES07 株では 0.2 g/l のリンゴ酸を蓄積し リンゴ酸収率は 1.4% であった ES06 株と比較すると ES07 株では リンゴ酸蓄積と収率が約 1/3 まで減尐した 以上の結果より frdabcd 遺伝子群の発現強化により リンゴ酸副生は低減し コハク酸蓄積が向上することを明らかにした 112

120 ピルビン酸ギ酸リアーゼの不活化によるコハク酸生産能の改良表 5-3 が示すように ES07 株は 0.4 g/l のギ酸を主要な副生物として生産し ギ酸収率は 2.8% に達した 図 5-3 に示すように ギ酸はピルビン酸からピルビン酸ギ酸リアーゼ (pyruvate formate lyase; PFL) の触媒反応により生成される 生成されたギ酸は ギ酸水素リアーゼ (formate hydrogen lyase; FHL) により最終的に二酸化炭素と水素に分解される E. aerogenes はグルコースなどの炭素源から 効率的に水素を生産することが報告されている [31,32] このギ酸を介した二酸化炭素の生成反応は カーボンロスに繋がり コハク酸生産量の低下を引き起こす 実際 E. coli では pflb 遺伝子を破壊することでコハク酸収率が向上する結果が報告されている [63] 本検討では ES07 株のギ酸生成量を抑制する目的で pflb 遺伝子 (locus tag; EAE_15120) の破壊を実施した ES07 株から pflb 遺伝子が破壊された ES08 株を取得した その後 マイクロチューブを用いてコハク酸生産能を ES07 株と比較した 結果を表 5-3 に纏めた ES08 株と ES07 株は それぞれ 9.1 g/l と 9.2 g/l のコハク酸を蓄積し コハク酸収率は 64.1% と 63.4% であった コハク酸蓄積と収率が同等である一方 ES08 株と ES07 株のギ酸蓄積には差異が認められた ES07 株は 0.4 g/lのギ酸を生産し ギ酸収率が 2.8% であったのに対して ES08 株では 0.2 g/l のギ酸を蓄積し ギ酸収率は 1.4% であった pflb 遺伝子の破壊により ギ酸生産量は半減化するものの コハク酸生産能には殆ど影響がない事を明らかにした 113

121 グルコース PTS の遮断がグルコース資化能に及ぼす影響図 5-4 に示した経路 C を構築する為 PCK の発現カセットが染色体に導入された ES08 株に対して グルコース PTS の遮断を実施した E. coli の non-pts は galactose/proton symporter(galp) と glucokinase(glk) より構成される [59,60] E. aerogenes のゲノム配列上にも GalP をコードする galp 遺伝子 (locus tag; EAE_02235) と GLK をコードする glk 遺伝子 (locus tag; EAE_00265) の両遺伝子がコードされている E. aerogenes の GalP と GLK は E. coli の GalP と GLK とアミノ酸レベルで高い同一性を有し それぞれ 94% と 91% 一致した その為 E. aerogenes においても E. coli と同様に non-pts を介したグルコースの取り込みが可能であると推察した グルコース PTS を遮断する目的で IIBC glc をコードする ptsg 遺伝子と enzyme I をコードする ptsi 遺伝子の破壊を行った ES08 株から ptsg 遺伝子と ptsi 遺伝子がそれぞれ破壊された ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株を取得した まず 好気条件下でのグルコース資化能を比較する目的で グルコース最尐培地 (M9 グルコース培地 ) における生育速度を ES08 株と比較した 結果を図 5-6 に示す 培養 20 時間目の ES08 株 ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株の到達 OD 660 は それぞれ と 0.5 であった 以上の結果から 好気条件下では PTS が主要なグルコース取り込み機構として機能していることを明らかにした 一方 IIBC glc の欠失だけでは グルコースの消費速度が大きく低下せず IIBC frc などの別の輸送担体がグルコースの取り込みを相補している可能性が示唆された 114

122 図 5-6 ES08 株 ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株の M9 グルコース培地における生育各シンボルは以下を示す ; ES08 株の生育曲線 ; ES08 ptsg 株の生育曲線 ; ES08 ptsi 株の生育曲線 各プロットは n=3 の平均値を表す 115

123 グルコース PTS の遮断によるコハク酸生産能の改良 ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株のコハク酸生産能を マイクロチューブを用いて ES08 株と比較した 結果を表 5-3 に纏めた ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株のグルコース消費量は ES08 株よりも 低い値を示した とりわけ ES08 ptsi 株のグルコース消費量は ES08 株の半分以下 6.2 g/l に留まった また ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株では グルコースの消費量の減尐に伴いコハク酸蓄積量も減尐した ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株は それぞれ 8.8 g/l と 5.4 g/l のコハク酸を蓄積した これらの値は ES08 株 (9.2 g/l) のコハク酸蓄積の それぞれ 95.6% と 58.7% に相当する PTS の遮断により コハク酸蓄積が減尐する一方で コハク酸収率は増加した ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株のコハク酸収率は それぞれ 76.5% と 87.1% となり ES08 株の 63.4% より高い値を示した 以上の結果から PTS の不活化によりコハク酸蓄積は減尐するものの コハク酸収率は増加することが明らかになった 116

124 ES08 ptsg 株における弱酸性 (ph5.7) 嫌気条件下のコハク酸発酵これまでの結果から ES08 ptsg 株と ES08 ptsi 株は ES08 株と比較してグルコースの消費量が顕著に減尐した とりわけ ES08 ptsi 株は 好気条件下で殆どグルコースを資化出来ず 嫌気条件下においても コハク酸蓄積が ES08 株と比較して半減化した ( 表 5-3) このような顕著なグルコース資化能の低下は コハク酸生産速度の低下を引き起こす 本検討においても 100 ml 発酵槽で使用する菌体量 (7.0 g[dcw]/l) を ES08 ptsi 株から取得できなかった その為 ES08 ptsi 株を除く ES08 株と ES08 ptsg 株について発酵槽での培養試験を実施した ph を 5.7 に制御したコハク酸培養試験の結果を図 5-7 表 5-4 に示す 培養 14 時間目 ES08 株が 28.4 g/l のグルコースを消費したのに対して ES08 ptsg 株では ES08 株の約 0.7 倍にあたる 18.8 g/l であった その後 ES08 株のグルコース消費速度は経時的に低下していく一方で ES08 ptsg 株は培養を通して グルコース消費速度はほぼ一定であった 培養終了時 (60 時間 ) には ES08 ptsg 株と ES08 株は それぞれ 63.8 g/l と 62.9 g/l のグルコースを消費した 両菌株のコハク酸蓄積量の経時変化も グルコース消費量と同じ傾向を示した 培養 14 時間目では ES08 株が 18.2 g/l のコハク酸を蓄積したのに対して ES08 ptsg 株では ES08 株の約 0.9 倍にあたる 16.5 g/l であった 一方 培養終了時には両者のコハク酸蓄積の関係は逆転し ES08 株が 37.8 g/l のコハク酸を蓄積したのに対して ES08 ptsg 株では ES08 株の約 1.5 倍にあたる 55.4 g/l であった 最終的に ES08 株と ES08 ptsg 株のコハク酸収率は それぞれ 60.1% と 86.8% であった 以上の結果から ATP 収支を向上させた ES08 ptsg 株の方が ES08 株よりも高いコハク酸蓄積と収率が示すことが明らかになった 117

125 図 5-7 ES08 株と ES08 ptsg 株の消費グルコース量 コハク酸蓄積 菌体量の経時的変化 ;ES08 株のコハク酸蓄積 ;ES08 ptsg 株のコハク酸蓄積 ;ES08 株のグルコース消費量 ;ES08 ptsg 株のグルコース消費量 ;ES08 株の菌体量 ; ;ES08 ptsg 株の菌体量を表す 118

DNA/RNA調製法 実験ガイド

DNA/RNA調製法 実験ガイド DNA/RNA 調製法実験ガイド PCR の鋳型となる DNA を調製するにはいくつかの方法があり 検体の種類や実験目的に応じて適切な方法を選択します この文書では これらの方法について実際の操作方法を具体的に解説します また RNA 調製の際の注意事項や RNA 調製用のキット等をご紹介します - 目次 - 1 実験に必要なもの 2 コロニーからの DNA 調製 3 増菌培養液からの DNA 調製

More information

BKL Kit (Blunting Kination Ligation Kit)

BKL Kit (Blunting Kination Ligation Kit) 製品コード 6126/6127 BKL Kit (Blunting Kination Ligation Kit) 説明書 PCR 産物を平滑末端ベクターにクローニングする場合 使用するポリメラーゼ酵素の種類により 3' 末端に余分に付加された塩基を除去し さらに 5' 末端をリン酸化する必要があります 本製品は これらの一連の反応を簡便に短時間に行うためのキットです PCR 産物の末端平滑化とリン酸化を同時に行うことにより

More information

■リアルタイムPCR実践編

■リアルタイムPCR実践編 リアルタイム PCR 実践編 - SYBR Green I によるリアルタイム RT-PCR - 1. プライマー設計 (1)Perfect Real Time サポートシステムを利用し 設計済みのものを購入する ヒト マウス ラットの RefSeq 配列の大部分については Perfect Real Time サポートシステムが利用できます 目的の遺伝子を検索して購入してください (2) カスタム設計サービスを利用する

More information

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション 応用微生物学 ( 第 2 回 ) アルコール 微生物による物質生産のための Driving Force 1. ガス状分子の放出 2. 不可逆的反応あるいはポリマー化反応の存在 3.Futile cycle による ATP の消費あるいは ATP シンターゼの破壊 (ATP 生成が関与している場合 ) 4. 外部 sink への電子授受 5. 相分離による生産物除去 Appl. Environ. Microbiol.,

More information

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション 酵素 : タンパク質の触媒 タンパク質 Protein 酵素 Enzyme 触媒 Catalyst 触媒 Cataylst: 特定の化学反応の反応速度を速める物質 自身は反応の前後で変化しない 酵素 Enzyme: タンパク質の触媒 触媒作用を持つタンパク質 第 3 回 : タンパク質はアミノ酸からなるポリペプチドである 第 4 回 : タンパク質は様々な立体構造を持つ 第 5 回 : タンパク質の立体構造と酵素活性の関係

More information

ISOSPIN Plasmid

ISOSPIN Plasmid プラスミド DNA 抽出キット ISOSPIN Plasmid マニュアル ( 第 5 版 ) Code No. 318-07991 NIPPON GENE CO., LTD. I 製品説明 ISOSPIN Plasmid( アイソスピンプラスミド ) は スピンカラムを用いて簡単に大腸菌から高純度なプラスミド DNA を抽出できるキットです 本キットは カオトロピックイオン存在下で DNA がシリカへ吸着する原理を応用しており

More information

Microsoft Word - FMB_Text(PCR) _ver3.doc

Microsoft Word - FMB_Text(PCR) _ver3.doc 2.PCR 法による DNA の増幅 現代の分子生物学において その進歩に最も貢献した実験法の1つが PCR(Polymerase chain reaction) 法である PCR 法は極めて微量の DNA サンプルから特定の DNA 断片を短時間に大量に増幅することができる方法であり 多大な時間と労力を要した遺伝子クローニングを過去のものとしてしまった また その操作の簡便さから 現在では基礎研究のみならず臨床遺伝子診断から食品衛生検査

More information

手順 ) 1) プライマーの設計 発注変異導入部位がプライマーのほぼ中央になるようにする 可能であれば 制限酵素サイトができるようにすると確認が容易になる プライマーは 25-45mer で TM 値が 78 以上になるようにする Tm= (%GC)-675/N-%mismatch

手順 ) 1) プライマーの設計 発注変異導入部位がプライマーのほぼ中央になるようにする 可能であれば 制限酵素サイトができるようにすると確認が容易になる プライマーは 25-45mer で TM 値が 78 以上になるようにする Tm= (%GC)-675/N-%mismatch Mutagenesis 目的 ) 既存の遺伝子に PCR を利用して変異を導入する 1 点変異導入方法 ) Quik Change Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene) のプロトコールを流用 http://www.stratagene.com/products/showproduct.aspx?pid=131 Kit 中では DNA polymerase

More information

No. 1 Ⅰ. 緒言現在我国は超高齢社会を迎え それに伴い 高齢者の健康増進に関しては歯科医療も今後より重要な役割を担うことになる その中でも 部分欠損歯列の修復に伴う口腔内のメンテナンスがより一層必要となってきている しかし 高齢期は身体機能全般の変調を伴うことが多いため 口腔内環境の悪化を招く

No. 1 Ⅰ. 緒言現在我国は超高齢社会を迎え それに伴い 高齢者の健康増進に関しては歯科医療も今後より重要な役割を担うことになる その中でも 部分欠損歯列の修復に伴う口腔内のメンテナンスがより一層必要となってきている しかし 高齢期は身体機能全般の変調を伴うことが多いため 口腔内環境の悪化を招く 学位論文内容の要約 甲第 692 号論文提出者金野弘靖 論文題目 口腔レンサ球菌における環状ヌクレオチドの働きについて No. 1 Ⅰ. 緒言現在我国は超高齢社会を迎え それに伴い 高齢者の健康増進に関しては歯科医療も今後より重要な役割を担うことになる その中でも 部分欠損歯列の修復に伴う口腔内のメンテナンスがより一層必要となってきている しかし 高齢期は身体機能全般の変調を伴うことが多いため 口腔内環境の悪化を招くことに成り易い

More information

PrimeSTAR® Mutagenesis Basal Kit

PrimeSTAR® Mutagenesis Basal Kit PrimeSTAR Mutagenesis Basal Kit 説明書 v201107da 目次 I. キットの内容...3 II. 保存...3 III. 本システムの原理...3 IV. プライマー設計について...5 V. 操作...8 VI. 実験例...10 VII. トラブルシューティング...13 VIII. 関連製品...13 IX. 注意...13 2 PrimeSTAR Mutagenesis

More information

プロトコール集 ( 研究用試薬 ) < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫

プロトコール集 ( 研究用試薬 ) < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫 < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理後 マイクロウェーブまたはオートクレーブ処理 )p7 抗原ペプチドによる抗体吸収試験 p8 ウエスタン ブロッティング

More information

平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号

平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号 平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I から 1 科目選択ただし 内部受験生はを必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号 問題 1. ( 配点率 33/100) 生体エネルギーと熱力学に関する以下の問に答えなさい (1) 細胞内の反応における ATP 加水分解時の実際の自由エネルギー変化

More information

Gen とるくん™(酵母用)High Recovery

Gen とるくん™(酵母用)High Recovery 研究用 Gen とるくん ( 酵母用 ) High Recovery 説明書 v201510da Gen とるくん ( 酵母用 )High Recovery は 細胞壁分解酵素による酵母菌体処理と塩析による DNA 精製の組み合わせにより 効率良く酵母ゲノム DNA を抽出 精製するためのキットです 本キットを用いた酵母ゲノム DNA 調製操作は 遠心による酵母菌体の回収 GenTLE Yeast

More information

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA

DNA 抽出条件かき取った花粉 1~3 粒程度を 3 μl の抽出液 (10 mm Tris/HCl [ph8.0] 10 mm EDTA 0.01% SDS 0.2 mg/ml Proteinase K) に懸濁し 37 C 60 min そして 95 C 10 min の処理を行うことで DNA 組換えイネ花粉の飛散試験 交雑試験 1. 飛散試験 目的 隔離圃場内の試験区で栽培している組換えイネ S-C 系統 及び AS-D 系統の開花時における花粉の飛散状況を確認するため 方法 (1) H23 年度は 7 月末からの低温の影響を受け例年の開花時期よりも遅れ 試験に用いた組換えイネの開花が最初に確認されたのは S-C 系統 及び AS-D 系統ともに 8 月 13 日であった そこで予め準備しておいた花粉トラップ

More information

ChIP Reagents マニュアル

ChIP Reagents マニュアル ChIP Reagents ~ クロマチン免疫沈降 (ChIP) 法用ストック溶液セット ~ マニュアル ( 第 1 版 ) Code No. 318-07131 NIPPON GENE CO., LTD. 目次 Ⅰ 製品説明 1 Ⅱ セット内容 1 Ⅲ 保存 2 Ⅳ 使用上の注意 2 Ⅴ 使用例 2 < 本品以外に必要な試薬 機器など> 2 1) 磁気ビーズと一次抗体の反応 3 2)-1 細胞の調製

More information

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Typing Set

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Typing Set 研究用 TaKaRa PCR Human Papillomavirus Typing Set 説明書 v201703da 本製品は さまざまなタイプの Human Papillomavirus(HPV) において塩基配列の相同性の高い領域に設定したプライマーを consensus primer として用いることにより HPV の E6 と E7 を含む領域 (228 ~ 268 bp) を共通に PCR

More information

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Detection Set

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Detection Set 研究用 TaKaRa PCR Human Papillomavirus Detection Set 説明書 v201703da 本製品は子宮頸癌において最も高頻度に検出される Human Papillomavirus(HPV)16 18 および 33 型をそれぞれ特異的に増幅し 検出するセットです HPV16 18 および 33 型の E6 を含む領域 (140 bp ただし HPV33 型は 141

More information

無細胞タンパク質合成試薬キット Transdirect insect cell

無細胞タンパク質合成試薬キット Transdirect insect cell 発現プラスミドの構築 1. インサート DNA の調製開始コドンは出来るだけ 5'UTR に近い位置に挿入して下さい 経験的に ptd1 の EcoRV/KpnI サイトへのライゲーション効率が最も高いことを確認しています 本プロトコルに従うと インサートサイズにも依りますが 90% 以上のコロニーがインサートの挿入されたクローンとして得られます 可能な限り EcoRV/KpnI サイトへ挿入されるお奨めします

More information

組織からのゲノム DNA 抽出キット Tissue Genomic DNA Extraction Mini Kit 目次基本データ 3 キットの内容 3 重要事項 4 操作 4 サンプル別プロトコール 7 トラブルシューティング 9 * 本製品は研究用です *

組織からのゲノム DNA 抽出キット Tissue Genomic DNA Extraction Mini Kit 目次基本データ 3 キットの内容 3 重要事項 4 操作 4 サンプル別プロトコール 7 トラブルシューティング 9 * 本製品は研究用です * 組織からのゲノム DNA 抽出キット Tissue Genomic DNA Extraction Mini Kit 目次基本データ 3 キットの内容 3 重要事項 4 操作 4 サンプル別プロトコール 7 トラブルシューティング 9 * 本製品は研究用です * 2 本キットは動物の組織からトータル DNA を迅速に効率よく抽出するようにデザインされています また 細菌 固定組織 酵母用のプロトコールも用意しています

More information

Microsoft Word - タンパク質溶液内酵素消化 Thermo

Microsoft Word - タンパク質溶液内酵素消化 Thermo タンパク質の溶液内酵素溶液内酵素消化 ( 質量分析用サンプル調製 ) 質量分析計によるタンパク質解析においては 一般的にタンパク質を還元 アルキル化した後にトリプシン等で酵素消化して得られた消化ペプチドサンプルが用いられます 本資料ではこのサンプル調製について 専用キットを用いて行う方法 各種試薬や酵素を用いて行う方法 また関連情報として タンパク質の定量法についてご紹介しています 内容 1 培養細胞の酵素消化

More information

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt 組換え酵素を用いた配列部位 特異的逐次遺伝子導入方法 Accumulative gene integration system using recombinase 工学研究院化学工学部門河邉佳典 2009 年 2 月 27 日 < 研究背景 > 1 染色体上での遺伝子増幅の有用性 動物細胞での場合 新鮮培地 空気 + 炭酸ガス 使用済み培地 医薬品タンパク質を生産する遺伝子を導入 目的遺伝子の多重化

More information

[PDF] GST融合タンパク質バッチ精製プロトコール

[PDF] GST融合タンパク質バッチ精製プロトコール Glutathione Sepharose 4B, 4FF を用いた GST 融合タンパク質のバッチ精製プロトコール 1 予め準備する試薬と装置 Glutathione Sepharose 担体製品名 包装単位 コード番号 Glutathione Sepharose 4B 10 ml 17-0756-01 Glutathione Sepharose 4B 3 10 ml 72-0239-03 Glutathione

More information

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

第6回 糖新生とグリコーゲン分解 第 6 回糖新生とグリコーゲン分解 日紫喜光良 基礎生化学講義 2014.06.3 1 主な項目 I. 糖新生と解糖系とで異なる酵素 II. 糖新生とグリコーゲン分解の調節 III. アミノ酸代謝と糖新生の関係 IV. 乳酸 脂質代謝と糖新生の関係 2 糖新生とは グルコースを新たに作るプロセス グルコースが栄養源として必要な臓器にグルコースを供給するため 脳 赤血球 腎髄質 レンズ 角膜 精巣 運動時の筋肉

More information

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

第6回 糖新生とグリコーゲン分解 第 6 回糖新生とグリコーゲン分解 日紫喜光良 基礎生化学講義 2018.5.15 1 主な項目 I. 糖新生と解糖系とで異なる酵素 II. 糖新生とグリコーゲン分解の調節 III. アミノ酸代謝と糖新生の関係 IV. 乳酸 脂質代謝と糖新生の関係 2 糖新生とは グルコースを新たに作るプロセス グルコースが栄養源として必要な臓器にグルコースを供給するため 脳 赤血球 腎髄質 レンズ 角膜 精巣 運動時の筋肉

More information

スライド 1

スライド 1 解糖系 (2) 平成 24 年 5 月 7 日生化学 2 ( 病態生化学分野 ) 教授 山縣和也 本日の学習の目標 解糖系の制御機構を理解する 2,3-BPG について理解する 癌と解糖系について理解する エネルギー代謝経路 グリコーゲン グリコーゲン代謝 タンパク質 アミノ酸代謝 トリアシルグリセロール グルコース グルコース 6 リン酸 アミノ酸 脂肪酸 脂質代謝 解糖系 糖新生 β 酸化 乳酸

More information

平成27年度 前期日程 化学 解答例

平成27年度 前期日程 化学 解答例 受験番号 平成 27 年度前期日程 化学 ( その 1) 解答用紙 工学部 応用化学科 志願者は第 1 問 ~ 第 4 問を解答せよ 農学部 生物資源科学科, 森林科学科 志願者は第 1 問と第 2 問を解答せよ 第 1 問 [ 二酸化炭素が発生する反応の化学反応式 ] 点 NaHCO 3 + HCl NaCl + H 2 O + CO 2 CO 2 の物質量を x mol とすると, 気体の状態方程式より,

More information

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム 平成 30 年度医科学専攻共通科目 共通基礎科目実習 ( 旧コア実習 ) 概要 1 ). 大学院生が所属する教育研究分野における実習により単位認定可能な実習項目 ( コア実習項目 ) 1. 組換え DNA 技術実習 2. 生体物質の調製と解析実習 3. 薬理学実習 4. ウイルス学実習 5. 免疫学実習 6. 顕微鏡試料作成法実習 7. ゲノム医学実習 8. 共焦点レーザー顕微鏡実習 2 ). 実習を担当する教育研究分野においてのみ単位認定可能な実習項目

More information

DNA Blunting Kit

DNA Blunting Kit 研究用 DNA Blunting Kit 説明書 v201508da DNA Blunting Kit は T4 DNA Polymerase の 5' 3' polymerase 活性と 3' 5' exonuclease 活性を利用して DNA の末端を平滑化することにより 突出末端の DNA でも簡単に平滑末端のベクターにライゲーションできるシステムです DNA が 5' 突出末端の場合は 5'

More information

培養細胞からの Total RNA 抽出の手順 接着細胞のプロトコル 1. プレート ( またはウエル ) より培地を除き PBSでの洗浄を行う 2. トリプシン処理を行い 全量を1.5ml 遠心チューブに移す スクレイパーを使って 細胞を掻き集める方法も有用です 3. 低速遠心 ( 例 300 g

培養細胞からの Total RNA 抽出の手順 接着細胞のプロトコル 1. プレート ( またはウエル ) より培地を除き PBSでの洗浄を行う 2. トリプシン処理を行い 全量を1.5ml 遠心チューブに移す スクレイパーを使って 細胞を掻き集める方法も有用です 3. 低速遠心 ( 例 300 g Maxwell RSC simplyrna Cells / Tissue Kit ( カタログ番号 AS1340/AS1390) 簡易マニュアル 注意 : キットを受け取りましたら 1-Thioglycerolを取り出し キット箱は室温で保存してください 取り出した1-Thioglycerolは2~10 で保存してください ご用意いただくもの 細胞 組織の両方の場合で共通 ボルテックスミキサー ピペットマン

More information

新技術説明会 様式例

新技術説明会 様式例 1 大腸菌を用いたバイオマスからの有 用物質生産と大規模な代謝経路解析 独立行政法人産業技術総合研究所生物プロセス研究部門 バイオマスリファイナリー研究センター主任研究員中島信孝 背景 微生物による物質生産は バイオマス ( 再生可能な生物由来の資源 ) を原料として 温和な条件下で行われる そのため 従来の化学的に物質を合成する方法に対して 低環境負荷 省エネルギーである 世界で最も研究が進んでいる微生物である

More information

ISOSPIN Blood & Plasma DNA

ISOSPIN Blood & Plasma DNA 血液 血清 血しょうからの DNA 抽出キット ISOSPIN Blood & Plasma DNA マニュアル ( 第 2 版 ) Code No. 312-08131 NIPPON GENE CO., LTD. I 製品説明 ISOSPIN Blood & Plasma DNA( アイソスピンブラッド & プラズマ DNA) は 血液 血清 血しょうから DNAを抽出するためのキットです 本キットは

More information

Bacterial 16S rDNA PCR Kit

Bacterial 16S rDNA PCR Kit 研究用 Bacterial 16S rdna PCR Kit 説明書 v201802da 微生物の同定は 形態的特徴 生理 生化学的性状 化学分類学的性状などを利用して行われますが これらの方法では同定までに時間を要します また 同定が困難な場合や正しい結果が得られない場合もあります 近年 微生物同定にも分子生物学を利用した方法が採用されるようになり 微生物の持つ DNA を対象として解析を行う方法が活用されています

More information

スライド 1

スライド 1 ミトコンドリア電子伝達系 酸化的リン酸化 (2) 平成 24 年 5 月 21 日第 2 生化学 ( 病態生化学分野 ) 教授 山縣和也 本日の学習の目標 電子伝達系を阻害する薬物を理解する ミトコンドリアに NADH を輸送するシャトルについて理解する ATP の産生量について理解する 脱共役タンパク質について理解する 複合体 I III IV を電子が移動するとプロトンが内膜の内側 ( マトリックス側

More information

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因 HbA1c 測定系について ~ 原理と特徴 ~ 一般社団法人日本臨床検査薬協会 技術運営委員会副委員長 安部正義 本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因 HPLC 法 HPLC 法原理 高速液体クロマトグラフィー 混合物の分析法の一つ 固体または液体の固定相 ( 吸着剤 ) 中で 液体または気体の移動相 ( 展開剤 ) に試料を加えて移動させ

More information

New Color Chemosensors for Monosaccharides Based on Azo Dyes

New Color Chemosensors for Monosaccharides Based on Azo Dyes New olor hemoenor for Monocchride ed on zo Dye 著者 : Nicol Diere nd Joeph R. Lkowicz 雑誌 : rg.lett. 1, 3 (4), 3891-3893 紹介者 : 堀田隼 1 年 1 月 7 日 ボロン酸の性質 1 ci-ジオールと環状エステルを形成する 環状エステルを形成すると ボロン酸の酸性度が高まる btrct

More information

京都府中小企業技術センター技報 37(2009) 新規有用微生物の探索に関する研究 浅田 *1 聡 *2 上野義栄 [ 要旨 ] 産業的に有用な微生物を得ることを目的に 発酵食品である漬物と酢から微生物の分離を行った 漬物から分離した菌については 乳酸菌 酵母 その他のグループに分類ができた また

京都府中小企業技術センター技報 37(2009) 新規有用微生物の探索に関する研究 浅田 *1 聡 *2 上野義栄 [ 要旨 ] 産業的に有用な微生物を得ることを目的に 発酵食品である漬物と酢から微生物の分離を行った 漬物から分離した菌については 乳酸菌 酵母 その他のグループに分類ができた また 新規有用微生物の探索に関する研究 浅田 *1 聡 *2 上野義栄 [ 要旨 ] 産業的に有用な微生物を得ることを目的に 発酵食品である漬物と酢から微生物の分離を行った 漬物から分離した菌については 乳酸菌 酵母 その他のグループに分類ができた また 酵母については 酢酸 クエン酸 コハク酸等の有機酸を生成する菌株が確認できた 酢から分離した菌については 酢酸菌とバチルス菌に分類ができた また 酢酸菌

More information

Word Pro - matome_7_酸と塩基.lwp

Word Pro - matome_7_酸と塩基.lwp 酸と 酸と 酸 acid 亜硫酸 pka =.6 pka =.9 酸 acid ( : 酸, すっぱいもの a : 酸の, すっぱい ) 酸性 p( ) 以下 酸っぱい味 ( 酸味 ) を持つ リトマス ( ) BTB( ) 金属と反応して ( ) を発生 ( 例 )Z l Zl リン酸 P pka =.5 pka =. pka =.8 P P P P P P P 酸性のもと 水素イオン 塩化水素

More information

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 (1734) 1-3. 細胞膜について正しい記述はどれか 1 糖脂質分子が規則正しく配列している 2 イオンに対して選択的な透過性をもつ 3 タンパク質分子の二重層膜からなる 4

More information

Microsoft Word - Gateway technology_J1.doc

Microsoft Word - Gateway technology_J1.doc テクノロジー Gateway の基本原理 テクノロジーは λ ファージが大腸菌染色体へ侵入する際に関与する部位特異的組換えシステムを基礎としています (Ptashne, 1992) テクノロジーでは λ ファージの組換えシステムのコンポーネントを改変することで 組み換え反応の特異性および効率を高めています (Bushman et al, 1985) このセクションでは テクノロジーの基礎となっている

More information

研究報告58巻通し.indd

研究報告58巻通し.indd 25 高性能陰イオン分析カラム TSKgel SuperIC-Anion HR の特性とその応用 バイオサイエンス事業部開発部セパレーショングループ 佐藤真治多田芳光酒匂幸中谷茂 1. はじめにイオンクロマトグラフィー (IC) は 環境分析等の各種公定法に採用されている溶液試料中のイオン成分分析法であり 当社においてもハイスループット分析を特長とする高速イオンクロマトグラフィーシステム IC 2010

More information

(Microsoft Word - \230a\225\266IChO46-Preparatory_Q36_\211\374\202Q_.doc)

(Microsoft Word - \230a\225\266IChO46-Preparatory_Q36_\211\374\202Q_.doc) 問題 36. 鉄 (Ⅲ) イオンとサリチルサリチル酸の錯形成 (20140304 修正 : ピンク色の部分 ) 1. 序論この簡単な実験では 水溶液中での鉄 (Ⅲ) イオンとサリチル酸の錯形成を検討する その錯体の実験式が求められ その安定度定数を見積もることができる 鉄 (Ⅲ) イオンとサリチル酸 H 2 Sal からなる安定な錯体はいくつか知られている それらの構造と組成はpHにより異なる 酸性溶液では紫色の錯体が生成する

More information

大学院委員会について

大学院委員会について 博士学位請求論文 審査報告書 審査委員 ( 主査 ) 農学部専任准教授村上周一朗 ( 副査 ) 農学部専任教授中島春紫 ( 副査 ) 農学部専任准教授前田理久 2014 年 1 月 17 日 1 論文提出者氏名高橋結 2 論文題名 ( 邦文題 ) ハイイロジェントルキツネザルの糞由来 Aspergillus niger E-1 株の有する xylanase に関する研究 ( 欧文訳 )Study on

More information

「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続」の一部改正について

「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続」の一部改正について ( 別添 ) 最終的に宿主に導入された DNA が 当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物の DNA のみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準に係る留意事項 最終的に宿主に導入されたDNAが 当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準

More information

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション 2013 年 11 月 20 日 ( 水 ) バイオ情報解析演習 ウェブツールを活用した生物情報解析 (4) 遺伝子のクローニング設計 有用物質生産菌を合理的に作ろう! 設計 試作 ベンチテスト 完成 プラスミド 効率的な代謝経路を設計する 文献調査代謝パスウェイの探索代謝シミュレーション 実際に微生物に組み込む データベースから有用遺伝子を探索する遺伝子組換え技術 培養をして問題点を突き止める 培養代謝物量

More information

Multiplex PCR Assay Kit

Multiplex PCR Assay Kit 研究用 Multiplex PCR Assay Kit 説明書 v201510da マルチプレックス PCR は 一つの PCR 反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで 複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法です マルチプレックス PCR を行うことで 試薬や機材の節約による経済性 同時検出による迅速性でのメリットに加え 貴重なサンプルの有効利用も可能です しかし マルチプレックス PCR

More information

Microsoft Word - 酸塩基

Microsoft Word - 酸塩基 化学基礎実験 : 酸 塩基と (1) 酸と塩基 の基本を学び の実験を通してこれらの事柄に関する認識を深めます さらに 緩衝液の性質に ついて学び 緩衝液の 変化に対する緩衝力を実験で確かめます 化学基礎実験 : 酸 塩基と 酸と塩基 水の解離 HCl H Cl - 塩酸 塩素イオン 酸 強酸 ヒドロニウムイオン H 3 O H O H OH - OH ー [H ] = [OH - ]= 1-7 M

More information

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹 豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 2.1.1 名称豚丹毒菌多摩 96 株 ( 血清型 2 型 ) 又はこれと同等と認められた株 2.1.2 性状感受性豚に接種すると

More information

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析 論文題目 腸管分化に関わる microrna の探索とその発現制御解析 氏名日野公洋 1. 序論 microrna(mirna) とは細胞内在性の 21 塩基程度の機能性 RNA のことであり 部分的相補的な塩基認識を介して標的 RNA の翻訳抑制や不安定化を引き起こすことが知られている mirna は細胞分化や増殖 ガン化やアポトーシスなどに関与していることが報告されており これら以外にも様々な細胞諸現象に関与していると考えられている

More information

Human Cell-Free Protein Expression System

Human Cell-Free Protein Expression System 研究用 Human Cell-Free Protein Expression System 説明書 v201807da Human Cell-Free Protein Expression System は ヒト細胞株由来の細胞抽出液を利用した無細胞タンパク質合成システムです 本システムの Cell Lysate には in vitro でのタンパク質合成反応に必要な各種因子 ( リボソーム 翻訳開始

More information

cDNA cloning by PCR

cDNA cloning by PCR cdna cloning/subcloning by PCR 1. 概要 2014. 4 ver.1 by A. Goto & K. Takeda 一般的に 細胞または組織由来の RNA から作製した cdna(cdna pool) から 特定の cdna をベクターに組み込む操作を cdna cloning と呼ぶ その際 制限酵素認識配列を付与したオリゴ DNA primer を用いた PCR

More information

SPP System Set,SPP System I,SPP System II,SPP System III,SPP System IV

SPP System Set,SPP System I,SPP System II,SPP System III,SPP System IV 研究用 SPP System Set ( 製品コード 3366) SPP System I ( 製品コード 3367) SPP System II ( 製品コード 3368) SPP System III ( 製品コード 3369) SPP System IV ( 製品コード 3370) 説明書 v201612da 目次 I. 製品説明...3 II. 内容...4 III. 保存...4 IV.

More information

リアルタイムPCRの基礎知識

リアルタイムPCRの基礎知識 1. リアルタイム PCR の用途リアルタイム PCR 法は 遺伝子発現解析の他に SNPs タイピング 遺伝子組み換え食品の検査 ウイルスや病原菌の検出 導入遺伝子のコピー数の解析などさまざまな用途に応用されている 遺伝子発現解析のような定量解析は まさにリアルタイム PCR の得意とするところであるが プラス / マイナス判定だけの定性的な解析にもその威力を発揮する これは リアルタイム PCR

More information

酵素の性質を見るための最も簡単な実験です 1 酵素の基質特異性と反応特異性を調べるための実験 実験目的 様々な基質を用いて 未知の酵素の種類を調べる 酵素の基質特異性と反応特異性について理解を深める 実験準備 未知の酵素溶液 3 種類 酵素を緩衝液で約 10 倍に希釈してから使用すること 酵素溶液は

酵素の性質を見るための最も簡単な実験です 1 酵素の基質特異性と反応特異性を調べるための実験 実験目的 様々な基質を用いて 未知の酵素の種類を調べる 酵素の基質特異性と反応特異性について理解を深める 実験準備 未知の酵素溶液 3 種類 酵素を緩衝液で約 10 倍に希釈してから使用すること 酵素溶液は 酵素実験 Ⅰ パート 1 酵素の特徴を理解するための実験 高田教員担当 アシスタント SAI 風間 寺井 大西 杉原 正箱 三野 (TA) 実験上の注意事項 白衣を着用すること 待ち時間は休憩時間ではない 生化学の教科書および酵素利用学のテキスト( 受講者のみ ) を持参すること あらかじめ実験書を熟読し分からないところを調べておくこと 手順をよく読んで よく考えて実験を進めること 冒険心と探究心を持って取り組むこと

More information

CERT化学2013前期_問題

CERT化学2013前期_問題 [1] から [6] のうち 5 問を選んで解答用紙に解答せよ. いずれも 20 点の配点である.5 問を超えて解答した場合, 正答していれば成績評価に加算する. 有効数字を適切に処理せよ. 断りのない限り大気圧は 1013 hpa とする. 0 C = 273 K,1 cal = 4.184 J,1 atm = 1013 hpa = 760 mmhg, 重力加速度は 9.806 m s 2, 気体

More information

製品コード 3372 研究用 pcold GST DNA 説明書 v201909da

製品コード 3372 研究用 pcold GST DNA 説明書 v201909da 研究用 pcold GST DNA 説明書 v201909da タンパク質の構造や機能の解明はポストゲノムの重要な研究対象であり 効率の良いタンパク質生産システムはポストゲノム解析に必須の基盤技術です 組換えタンパク質の生産には大腸菌を宿主とする発現系が広く利用されています しかしながら 大腸菌発現系は扱いやすく低コストである反面 遺伝子によっては発現できない あるいは発現タンパク質が不溶化するという問題が起こることがあります

More information

遺伝子検査の基礎知識

遺伝子検査の基礎知識 遺伝子検査の準備と注意事項 PCR はわずか 1 分子の鋳型 DNA でも検出可能であるため 反応液調製時に鋳型となりうる核酸等が混入しないように細心の注意が必要です この文書では 正確な遺伝子検査を行うために必要な実験器具類やコンタミネーション防止のための注意事項について解説します - 目次 - 1 実験環境の整備 2 必要な実験器具と装置 1 実験環境の整備 コンタミネーションの原因 PCR は非常に高感度な検出法であるため

More information

平成 31 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学, 生物化学工学から 1 科目選択ただし, 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること. 解答には, 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい. 問題用紙ならびに余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい. 試験終了時に回収しま

平成 31 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学, 生物化学工学から 1 科目選択ただし, 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること. 解答には, 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい. 問題用紙ならびに余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい. 試験終了時に回収しま 平成 31 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学, から 1 科目選択ただし, 内部受験生はを必ず選択すること. 解答には, 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい. 問題用紙ならびに余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい. 試験終了時に回収します. 受験番号 基礎生物化学 問題 1. ( 配点率 33/100) 高等動物における免疫に関する以下の設問 (1) (4)

More information

遺伝子検査の基礎知識

遺伝子検査の基礎知識 リアルタイム PCR( インターカレーター法 ) 実験ガイドこの文書では インターカレーター法 (TB Green 検出 ) によるリアルタイム PCR について 蛍光検出の原理や実験操作の流れなどを解説します 実際の実験操作の詳細については 各製品の取扱説明書をご参照ください - 目次 - 1 蛍光検出の原理 2 実験に必要なもの 3 実験操作法 4 結果の解析 1 1 蛍光検出の原理 インターカレーターによる蛍光検出の原理

More information

「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続」の一部改正について

「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続」の一部改正について 食安基発 0627 第 3 号 平成 26 年 6 月 27 日 各検疫所長殿 医薬食品局食品安全部基準審査課長 ( 公印省略 ) 最終的に宿主に導入されたDNAが 当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみである場合又は組換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成である場合のいずれかに該当することが明らかであると判断する基準に係る留意事項について 食品 添加物等の規格基準 ( 昭和

More information

TaKaRa Bradford Protein Assay Kit

TaKaRa Bradford Protein Assay Kit 研究用 TaKaRa Bradford Protein Assay Kit 説明書 v201701da TaKaRa Bradford Protein Assay Kit は Coomassie Dye を用いる Bradford 法に基づいたキットであり 簡単な操作で迅速に 濃度範囲が 1 ~ 1,000 μg/ml のタンパク質溶液の定量を行うことができます 本キットの定量の原理は Coomassie

More information

微生物による バイオディーゼル廃グリセロール からの燃料生産

微生物による バイオディーゼル廃グリセロール からの燃料生産 ホワイトバイオによる廃グリセロール からのポリマー原料生産 プロセスの開発 筑波大学生命環境系 教授中島敏明 低炭素社会の確立のために バイオマス燃料 バイオディーゼル燃料 (BDF)= 軽油の代替燃料 植物油脂 ( トリグリセリド ) メタノール NaOH 脂肪酸メチルエステル (BDF) グリセロール 世界のBDF 生産 2,9 万トン (14) ( 日本植物油協会 HPより ) 原料油脂の1%

More information

Bacterial 16S rDNA PCR Kit

Bacterial 16S rDNA PCR Kit 研究用 Bacterial 16S rdna PCR Kit 説明書 v201307da 微生物の同定は 形態的特徴 生理 生化学的性状 化学分類学的性状などを利用して行われますが これらの方法では同定までに時間を要します また 同定が困難な場合や正しい結果が得られない場合もあります 近年 微生物同定にも分子生物学を利用した方法が採用されるようになり 微生物の持つ DNA を対象として解析を行う方法が活用されています

More information

TaKaRa BCA Protein Assay Kit

TaKaRa BCA Protein Assay Kit 研究用 TaKaRa BCA Protein Assay Kit 説明書 v201307da TaKaRa BCA Protein Assay Kit は 高感度にタンパク質溶液の比色定量を行う試薬であり 界面活性剤によって可溶化されたタンパク質溶液の定量も可能です BCA によるタンパク質定量の原理は 2 段階の反応に基づいています 第 1 段階では タンパク質溶液中のペプチド結合によって キットに含まれる二価銅イオン

More information

細胞の構造

細胞の構造 大阪電気通信大学 5/8/18 本日の講義の内容 酵素 教科書 第 4 章 触媒反応とエネルギーの利用 酵素の性質 酵素反応の調節 酵素の種類 触媒の種類 無機物からなる無機触媒と有機物からなる有機触媒がある 触媒反応とエネルギーの利用 1 無機触媒の例 過酸化水素水に二酸化マンガンを入れると過酸化水素水が分解して水と酸素になる 2 有機触媒の例 細胞内に含まれるカタラーゼという酵素を過酸化水素水に加えると

More information

酢酸エチルの合成

酢酸エチルの合成 化学実験レポート 酢酸エチルの合成 2008 年度前期 木曜 学部 学科 担当 : 先生 先生実験日 :200Y 年 M 月 DD 日天候 : 雨 室温 23 湿度 67% レポート提出 :200Y 年 M 月 DD 日共同実験者 : アルコールとカルボン酸を脱水縮合すると エステルが得られる エステルは分子を構成するアルキル基に依存した特有の芳香を持つ 本実験ではフィッシャー法によりエタノールと酢酸から酢酸エチルを合成した

More information

蛋白質科学会アーカイブ メチオニン要求株を使わないセレノメチオニン標識蛋白質のつくりかた

蛋白質科学会アーカイブ メチオニン要求株を使わないセレノメチオニン標識蛋白質のつくりかた メチオニン要求株を使わないセレノメチオニン標識蛋白質のつくりかた 産業技術総合研究所 中村努 石川一彦 ( 投稿日 2008/7/29 再投稿日 2008/8/21 受理日 2008/8/27 修正日 2013/11/29) キーワード : セレノメチオニン 生合成阻害 X 線結晶構造解析 概要 X 線結晶構造解析において初期位相を決定する際 セレン原子による異常散乱を利用することが広く行われている

More information

土壌含有量試験(簡易分析)

土壌含有量試験(簡易分析) 土壌中の重金属の 簡易 迅速分析法 標準作業手順書 * 技術名 : ストリッピング ボルタンメトリー法 ( 超音波による前処理 ) 使用可能な分析項目 : 砒素溶出量, 砒素含有量 実証試験者 : 北斗電工株式会社 株式会社フィールドテック * 本手順書は実証試験者が作成したものである なお 使用可能な技術及び分析項目等の記載部分を抜粋して掲載した 1. 適用範囲この標準作業手順書は 環告 18 号に対応する土壌溶出量試験

More information

MEGALABEL™

MEGALABEL™ 研究用 MEGALABEL 説明書 v201711 MEGALABEL は [γ- 32 P]ATP と T4 Polynucleotide Kinase を用いて DNA の 5' 末端を効率よく標識するためのキットです 本製品は T4 Polynucleotide Kinase を用いたリン酸化反応 交換反応それぞれに 独自の Buffer 系を採用し 末端形状によらず 10 6 cpm/pmol

More information

コメDNA 抽出キット(精米20 粒スケール)

コメDNA 抽出キット(精米20 粒スケール) 食品 環境分析用 コメ DNA 抽出キット ( 精米 20 粒スケール ) ( コメ判別用 PCR Kit 用 ) 説明書 v201703da 本キットは未加熱の精米 20 粒から DNA の調製を行う際に使用します 最終的に回収された DNA 溶液は 直接 PCR 反応に利用することができます 本キットを用いた DNA 調製には 劇物であるフェノールやクロロホルムは使用しません I. 内容 (50

More information

Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST

Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST ytotoxicity L ssay Kit-WST はじめに 本説明書は ytotoxicity L ssay Kit-WST を用いた抗体依存性細胞傷害測定用 (ntibody-dependent cellmediated cytotoxicity: ) です 本製品のキット内容や Working Solution の調製方法に関して 製品添付の取扱い説明書も合わせてご覧ください 正確な測定のために

More information

DNA Ligation Kit <Mighty Mix>

DNA Ligation Kit <Mighty Mix> 製品コード 623 研究用 DNA Ligation Kit < Mighty Mix > 説明書 v21512da DNA フラグメントのライゲーションは 遺伝子操作実験で頻繁に行う操作です DNA 間の結合には T4 DNA Ligase が用いられますが DNA の末端構造によって反応速度は著しく異なります そのため DNA の末端形状にあわせて加える酵素量や反応時間を調節する必要があります

More information

Multiplex PCR Assay Kit Ver. 2

Multiplex PCR Assay Kit Ver. 2 研究用 Multiplex PCR Assay Kit Ver. 2 説明書 v201510da マルチプレックス PCR は 一つの PCR 反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで 複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法です マルチプレックス PCR を行うことで 試薬や機材の節約による経済性 同時検出による迅速性でのメリットに加え 貴重なサンプルの有効利用も可能です 本キットは高速にプライミングする酵素とプライマーのアニーリングの特異性を極限まで高めた反応液組成とを組み合わせたマルチプレックス

More information

プロトコル 細胞 増殖 / 毒性酸化ストレス分子生物学細胞内蛍光プローブ細胞染色ミトコンドリア関連試薬細菌研究用試薬膜タンパク質可溶化剤ラベル化剤二価性試薬イオン電極 その他 機能性有機材料 酵素 (POD,ALP) を標識したい 利用製品 < 少量抗体 (10μg) 標識用 > Ab-10 Rap

プロトコル 細胞 増殖 / 毒性酸化ストレス分子生物学細胞内蛍光プローブ細胞染色ミトコンドリア関連試薬細菌研究用試薬膜タンパク質可溶化剤ラベル化剤二価性試薬イオン電極 その他 機能性有機材料 酵素 (POD,ALP) を標識したい 利用製品 < 少量抗体 (10μg) 標識用 > Ab-10 Rap 増殖 / 毒性酸化ストレス分子生物学内蛍光プローブ染色ミトコンドリア関連試薬細菌研究用試薬膜タンパク質可溶化剤ラベル化剤二価性試薬イオン電極 機能性有機材料 酵素 (PD,ALP) を標識したい 利用製品 < 少量抗体 (0μg) 標識用 > Ab-0 Rapid Peroxidase Labeling Kit < 抗体 タンパク質 (0-00μg) 標識用 > Peroxidase Labeling

More information

( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている

( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている ( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている. マンゴー炭疽病の防除には, 農薬が使用されているが, 耐性菌の出現が危ぶまれている 本研究では,

More information

目次第 1 章緒言 3 第 2 章 Cellvibrio sp. OA-2007 由来の酵素によるアルギン酸の分解 実験材料調製 実験材料 寒天分解菌の培養 粗酵素の調製 実験方法 分解反応実験 5

目次第 1 章緒言 3 第 2 章 Cellvibrio sp. OA-2007 由来の酵素によるアルギン酸の分解 実験材料調製 実験材料 寒天分解菌の培養 粗酵素の調製 実験方法 分解反応実験 5 2015 年度 卒業論文 アルギン酸分解酵素の予備精製 Prepurification of alginate lyase 高知工科大学 環境理工学群 1160207 小林史弥 指導教員有賀修准教授 2016 年 3 月 18 日 1 目次第 1 章緒言 3 第 2 章 Cellvibrio sp. OA-2007 由来の酵素によるアルギン酸の分解 4 2-1. 実験材料調製 4 2-1-1. 実験材料

More information

PanaceaGel ゲル内細胞の観察 解析方法 1. ゲル内細胞の免疫染色 蛍光観察の方法 以下の 1-1, 1-2 に関して ゲルをスパーテルなどで取り出す際は 4% パラホルムアルデヒドで固定してから行うとゲルを比較的簡単に ( 壊さずに ) 取り出すことが可能です セルカルチャーインサートを

PanaceaGel ゲル内細胞の観察 解析方法 1. ゲル内細胞の免疫染色 蛍光観察の方法 以下の 1-1, 1-2 に関して ゲルをスパーテルなどで取り出す際は 4% パラホルムアルデヒドで固定してから行うとゲルを比較的簡単に ( 壊さずに ) 取り出すことが可能です セルカルチャーインサートを 1. ゲル内細胞の免疫染色 蛍光観察の方法 以下の 1-1, 1-2 に関して ゲルをスパーテルなどで取り出す際は 4% パラホルムアルデヒドで固定してから行うとゲルを比較的簡単に ( 壊さずに ) 取り出すことが可能です セルカルチャーインサートを用いた培養ではインサート底面をメス等で切り取ることで またウェルプレートを用いた培養ではピペットの水流でゲル ( 固定後 ) を底面から浮かすことで 回収しやすくなります

More information

高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ

高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ 高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ溶質の20% 溶液 100gと30% 溶液 200gを混ぜると質量 % はいくらになるか ( 有効数字

More information

木村の有機化学小ネタ セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニア

木村の有機化学小ネタ   セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニア セルロース系再生繊維 再生繊維セルロースなど天然高分子物質を化学的処理により溶解後, 細孔から押し出し ( 紡糸 という), 再凝固させて繊維としたもの セルロース系の再生繊維には, ビスコースレーヨン, 銅アンモニアレーヨンがあり, タンパク質系では, カゼイン, 大豆タンパク質, 絹の糸くず, くず繭などからの再生繊維がある これに対し, セルロースなど天然の高分子物質の誘導体を紡糸して繊維としたものを半合成繊維と呼び,

More information

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定 Application Note IC-PC No.IC178 IC-PC 217 3 IC-PC ph IC-PC EPA 1-5.8 ng/m 3 11.8 ng/m 3 WHO.25 ng/m 3 11.25 ng/m 3 IC-PC.1 g/l. g/l 1 1 IC-PC EPA 1-5 WHO IC-PC M s ng/m 3 C = C 1/1 ng/m 3 ( M s M b ) x

More information

スライド 1

スライド 1 Detection of bound phenolic acids: prevention by ascorbic acid and ethylenediaminetetraacetic acid of degradation of phenolic acids during alkaline hydrolysis ( 結合フェノール酸の検出 : アルカリ加水分解中のアスコルビン酸と EDTA によるフェノール酸の劣化防止

More information

木村の理論化学小ネタ 緩衝液 緩衝液とは, 酸や塩基を加えても,pH が変化しにくい性質をもつ溶液のことである A. 共役酸と共役塩基 弱酸 HA の水溶液中での電離平衡と共役酸 共役塩基 弱酸 HA の電離平衡 HA + H 3 A にお

木村の理論化学小ネタ   緩衝液 緩衝液とは, 酸や塩基を加えても,pH が変化しにくい性質をもつ溶液のことである A. 共役酸と共役塩基 弱酸 HA の水溶液中での電離平衡と共役酸 共役塩基 弱酸 HA の電離平衡 HA + H 3 A にお 緩衝液 緩衝液とは, 酸や塩基を加えても,pH が変化しにくい性質をもつ溶液のことである A. 酸と塩基 弱酸 HA の水溶液中での電離平衡と酸 塩基 弱酸 HA の電離平衡 HA H 3 A において, O H O ( HA H A ) HA H O H 3O A の反応に注目すれば, HA が放出した H を H O が受け取るから,HA は酸,H O は塩基である HA H O H 3O A

More information

Site-directed mut agenesis system Mutan-K Enzyme Set

Site-directed mut agenesis system Mutan-K Enzyme Set 製品コード 6060 Site-directed mutagenesis system Mutan -K Enzyme Set 説明書 Mutan - K は Kunkel 法 1 )2 ) をシステム化し Site-directed mutagenesis 3 )4 ) を行なえるようにしたキットです このキットによって DNA の塩基置換 欠失 挿入などが行なえ 遺伝子やタンパク質の機能解析 構造改変などに威力を発揮します

More information

MightyAmp™ DNA Polymerase Ver.3

MightyAmp™ DNA Polymerase Ver.3 研究用 MightyAmp DNA Polymerase Ver.3 説明書 v201805da MightyAmp DNA Polymerase は 究極の反応性を追求して開発された PCR 酵素であり 通常の PCR 酵素では増幅が困難な PCR 阻害物質を多く含むクルードな生体粗抽出液を用いる場合にも その強力な増幅能により良好な反応性を示します MightyAmp DNA Polymerase

More information

,...~,.'~ 表 2.6.2.2-26 試験管内 PAE 菌株薬剤 MIC (µg/ml) PAE (h) 1 MIC 4 MIC STFX 0.025 0.92 2.35 S. aureus FDA 209-P LVFX 0.20 0.68 2.68 CPFX 0.20 1.05 1.59 SPFX 0.10 0.35 1.07 STFX 0.025 2.33 1.14 E. coli KL-16

More information

クルマエビホワイトスポット病の防除対策 Table 1. List of WSSV confirmed naturally and/or experimentally infected host species クルマエビホワイトスポット病の防除対策 Fig. 8. Disease control in shrimp hatchery. に 組換え大腸菌で発現した WSSV 構造タンパク質 第

More information

2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6

2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6 004 年度センター化学 ⅠB p 第 問問 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH である 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO, ヨウ素 I, ナフタレン c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6+ 4 = 0個 6+ 8= 4個 7+ 8= 5個 + 7= 8個 4 + 8= 0個 5 8= 6個 4 構造式からアプローチして電子式を書くと次のようになる

More information

EC No. 解糖系 エタノール発酵系酵素 基質 反応様式 反応 ph 生成物 反応温度 温度安定性 Alcohol dehydrogenase YK エナントアルデヒド ( アルデヒド ) 酸化還元反応 (NADPH) 1ヘプタノール ( アルコール ) ~85 85 で 1 時

EC No. 解糖系 エタノール発酵系酵素 基質 反応様式 反応 ph 生成物 反応温度 温度安定性 Alcohol dehydrogenase YK エナントアルデヒド ( アルデヒド ) 酸化還元反応 (NADPH) 1ヘプタノール ( アルコール ) ~85 85 で 1 時 解糖系 エタノール発酵系酵素 EC No. 基質 反応様式 反応 ph 温度安定性 生成物 反応温度 Glucokinase YK1 グルコース 7.5~11.0 2.7.1.2 リン酸転移反応 80 で1 時間保温しても活性低下は認められない * エタノールキット使用酵素 グルコース6リン酸 ~80 Glucose phosphate isomerase YK1 グルコース6リン酸 6.0~9.0

More information

2009年度業績発表会(南陽)

2009年度業績発表会(南陽) 高速イオンクロマトグラフィーによる ボイラ水中のイオン成分分析 のご紹介 東ソー株式会社 バイオサイエンス事業部 JASIS 217 新技術説明会 (217.9.8) rev.1 1. ボイラ水分析について ボイラ水の水質管理 ボイラ : 高圧蒸気の発生装置であり 工場, ビル, 病院など幅広い産業分野でユーティリティ源として利用されている 安全かつ効率的な運転には 日常の水質管理, ブロー管理が必須

More information

官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 H R R' H H R' R OH H R' R OR'' H R' R Br H R' R NH 2 H R' R SR' R" O R R' RO OR R R' アセタール RS S

官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 H R R' H H R' R OH H R' R OR'' H R' R Br H R' R NH 2 H R' R SR' R O R R' RO OR R R' アセタール RS S 官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 ' ' ' '' ' ' 2 ' ' " ' ' アセタール ' チオアセタール -'' ' イミン '' '' 2 C Cl C 二酸化炭素 2 2 尿素 脱水 加水分解 ' 薬品合成化学 小問題 1 1) Al 4 は次のような構造であり, ( ハイドライドイオン ) の求核剤攻撃で還元をおこなう

More information

1行目

1行目 北海道大学 大学院工学研究科 北海道大学 1991 年北海道大学工学部卒業 大学院工学研究科 1993 年同大学大学院工学研究科修士課程修了 生物機能高分子専攻 1993 年日本学術振興会特別研究員 DC1 准教授 1995 年北海道大学工学部助手 博士 ( 工学 ) 2002 年同大学大学院工学研究科助教授 田島健次 2007 年同大学大学院工学研究科准教授 写 真 棟方正信 現在に至る 姚閔 (

More information

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション 植物 DA の抽出と増幅 1 背景 植物種子から DA 抽出する際 有機溶媒や酵素を用いた処理 遠心分離装置を使った操作など 煩雑で時間のかかる工程が用いられてきた カ技ネ術カの 検体採取 簡易 DA 抽出キット version2( 抽出キット ) と高速増幅用 DA Polymerase ( 増幅キット ) を組合わせる事で 遺伝子検査時間を短縮可能! 抽出キット * 抽出 DA を 増幅キット

More information

土壌溶出量試験(簡易分析)

土壌溶出量試験(簡易分析) 土壌中の重金属等の 簡易 迅速分析法 標準作業手順書 * 技術名 : 吸光光度法による重金属等のオンサイト 簡易分析法 ( 超音波による前処理 ) 使用可能な分析項目 : 溶出量 : 六価クロム ふっ素 ほう素 含有量 : 六価クロム ふっ素 ほう素 実証試験者 : * 本手順書は実証試験者が作成したものである なお 使用可能な技術及び分析項目等の記載部分を抜粋して掲載した 1. 適用範囲この標準作業手順書は

More information

Mighty TA-cloning Kit/Mighty TA-cloning Kit for PrimeSTAR

Mighty TA-cloning Kit/Mighty TA-cloning Kit for PrimeSTAR 製品コード 6028 製品コード 6029 Mighty TA-cloning Kit ( 製品コード 6028) Mighty TA-cloning Kit for PrimeSTAR ( 製品コード 6029) 説明書 Taq DNA ポリメラーゼなどをベースとする PCR 酵素を用いて得られた増幅産物のほとんどは その 3 末端にデオキシリボアデノシン (da) が一塩基付加されています これらの

More information

Pyrobest ® DNA Polymerase

Pyrobest ® DNA Polymerase Pyrobest DNA Polymerase 説明書 v201102da 対活Pyrobest DNA Polymerase は Pyrococcus sp. 由来の 3' 5' exonuclease 活性 (proof reading 活性 ) を有する耐熱性 α 型 DNA ポリメラーゼです α 型 DNA ポリメラーゼは Pol I 型ポリメラーゼ (Taq DNA ポリメラーゼなど )

More information

長期/島本1

長期/島本1 公益財団法人京都大学教育研究振興財団 京都大学教育研究振興財団助成事業成果報告書 平成 28 年 4 月 25 日 会長辻井昭雄様 所属部局 研究科 ( 申請時 ) ips 細胞研究所特定研究員 ( 報告時 ) ETH Zurich Department of Biosystems Science and Engineering ポスドク研究員 氏名島本廉 助成の種類 平成 27 年度 若手研究者在外研究支援

More information

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル 60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 12 月 17 日 独立行政法人理化学研究所 免疫の要 NF-κB の活性化シグナルを増幅する機構を発見 - リン酸化酵素 IKK が正のフィーッドバックを担当 - 身体に病原菌などの異物 ( 抗原 ) が侵入すると 誰にでも備わっている免疫システムが働いて 異物を認識し 排除するために さまざまな反応を起こします その一つに 免疫細胞である B 細胞が

More information

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導 学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 奥橋佑基 論文審査担当者 主査三浦修副査水谷修紀 清水重臣 論文題目 NOTCH knockdown affects the proliferation and mtor signaling of leukemia cells ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 目的 : sirna を用いた NOTCH1 と NOTCH2 の遺伝子発現の抑制の 白血病細胞の細胞増殖と下流のシグナル伝達系に対する効果を解析した

More information

バクテリアはなぜ、またどれくらいの量の水素を発酵で発生するか

バクテリアはなぜ、またどれくらいの量の水素を発酵で発生するか バクテリアはなぜ水素を発酵で発生するのか またエネルギー生産利用における問題点はなにか 谷生重晴横浜国立大学教育人間科学部 tanisho@ynu.ac.jp The Reason for Bacterial Evolution of Hydrogen by Fermentation and the Problems to be Solved for Utilization on Energy Production

More information

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 1/8 52-0198-01-4PDF 目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/8 52-0198-01-4PDF 1. はじめに 医療関連感染の原因となる微生物の多くは

More information

フォルハルト法 NH SCN の標準液または KSCN の標準液を用い,Ag または Hg を直接沈殿滴定する方法 および Cl, Br, I, CN, 試料溶液に Fe SCN, S 2 を指示薬として加える 例 : Cl の逆滴定による定量 などを逆滴定する方法をいう Fe を加えた試料液に硝酸

フォルハルト法 NH SCN の標準液または KSCN の標準液を用い,Ag または Hg を直接沈殿滴定する方法 および Cl, Br, I, CN, 試料溶液に Fe SCN, S 2 を指示薬として加える 例 : Cl の逆滴定による定量 などを逆滴定する方法をいう Fe を加えた試料液に硝酸 沈殿滴定とモール法 沈殿滴定沈殿とは溶液に試薬を加えたり加熱や冷却をしたとき, 溶液から不溶性固体が分離する現象, またはその不溶性固体を沈殿という 不溶性固体は, 液底に沈んでいいても微粒子 ( コロイド ) として液中を浮遊していても沈殿と呼ばれる 沈殿滴定とは沈殿が生成あるいは消失する反応を利用した滴定のことをいう 沈殿が生成し始めた点, 沈殿の生成が完了した点, または沈殿が消失した点が滴定の終点となる

More information