分布の型によらない検定

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1 14 分 布 の 型 によらない 検 定 1 偏 りのある 分 布 の 平 均 値 と 中 央 値 生 後 8 週 目 の 新 生 児 10 人 と 40 週 目 の 新 生 児 10 人 を 抽 出 し, 血 清 中 の 免 疫 グロブリン A を 測 定 したところ, 次 のような 数 値 を 得 ました. <fig.1> それぞれの 数 値 を 数 直 線 上 にプロットすると, 下 図 のように 正 規 分 布 のような 左 右 対 称 型 の 分 布 ではなく, 偏 りがあります. < 実 習 1> 生 後 8 週 目 と 生 後 40 週 目 のそれぞれについて 平 均 値 と 中 央 値 を 求 め, 下 図 の 数 直 線 に 記 し て 下 さい. R では, 平 均 値 が mean(x), 中 央 値 が median(x)でした. O x O x 左 右 に 偏 りがある 分 布 の 場 合, 平 均 値 と 中 央 値 の 値 がずれてきます.したがって, 母 集 団 の 代 表 値 として 平 均 値 を 考 えるよりも, 中 央 値 を 考 えた 方 がよさそうです

2 2 ウィルコクソン 検 定 2 つの 母 集 団 の 分 布 に 偏 りがあるものの,それぞれの 分 布 の 型 が 等 しいということがわかっ ているとき, 中 央 値 に 差 があるかどうかを 検 定 する 場 合 には,ウィルコクソン 検 定 と 呼 ばれる 検 定 方 法 を 利 用 します. 前 頁 の<fig.1> <fig.1>の 例 について,それぞれの 母 集 団 の 分 布 に 偏 りがあるものの, 分 布 の 型 は 等 し いということがわかっているとき, 生 後 8 週 目 の 新 生 児 10 人 と 40 週 目 の 新 生 児 10 人 の 血 清 中 の 免 疫 グロブリン A の 量 の 中 央 値 に 差 があるかどうかを 検 定 してみましょう. 帰 無 仮 説 H 0 : 中 央 値 に 差 がない. 対 立 仮 説 H 1 : 中 央 値 に 差 がある. とします. 今 回 は,Excel を 利 用 します. 理 由 は, R の wilcox.test というコマンドによりウィルコ クソン 検 定 で 用 いる 統 計 量 W を 求 める 方 法 が 教 科 書 と 異 なっているからです. (1) 順 位 ( 昇 順 )の 計 算 右 の<fig.2> <fig.2>の 表 のように,<fig.1> <fig.1>のデータを1 列 に 並 べ ます.ただし,どのグループのデータであったのかがわかる ように,Group の 列 に 0, 1で 区 別 しておきます.1が 生 後 8 週 目 の 新 生 児 10 人 のデータ,0 が 生 後 40 週 目 の 新 生 児 10 人 のデータです. そして,<fig.3> <fig.3>のように, 両 方 のグループ 全 体 の 順 位 を 求 めます. <fig.2> <fig.3> - 2 -

3 (2)ウィルコクソン 検 定 の 検 定 統 計 量 W の 計 算 <fig.4>.4>のように,group Rank の 計 算 をし,その 列 の 総 和 を 求 めます. 値 は69 となり,こ の 値 が 検 定 統 計 量 W の 値 です. もし,このW の 値 が 小 さい 場 合 は,Group1 がGroup0 よりも 比 較 的 小 さい 順 位 であり, 大 きければ Group1 が Group0 よりも 比 較 的 大 きい 順 位 であることがわかります.W が 大 きか ったり 小 さかったりした 場 合 は, 帰 無 仮 説 H0 を 棄 却 することになりますが,どの 程 度 大 きか ったり 小 さかったりすればよいのかは, 以 下 の 性 質 を 利 用 します. <fig.4> <ウィルコクソン 検 定 の 統 計 量 W の 性 質 > Group1 の 標 本 数 をn,Group0 の 標 本 数 をm とするとき, 1 mn( n + m + 1) a = n( m + n 1), b = 2 12 とする.このとき, W a 2 u = N( 0, 1 ) b - 3 -

4 標 準 正 規 分 布 を 用 いた 検 定 ですから, 検 定 方 法 は, 有 意 水 準 5% u < 1. 96, < u で 帰 無 仮 説 を 棄 却 有 意 水 準 1% u < 2. 58, < u で 帰 無 仮 説 を 棄 却 となります. (3)ウィルコクソン 検 定 の 実 行 <fig.1>の 例 の 場 合, m = n = 10 ですから, R を 用 いて 計 算 すると, a, b, u の 値 は 次 のようになります, W=69 n=10 m=10 a=n*(n+m+1)/2 b=sqrt(n*m*(m+n+1)/12) u=(w-a)/b a b u > a [1] 105 > b [1] > u [1] 以 上 より, u = 2. 7 となり, 有 意 水 準 1% で 帰 無 仮 説 が 棄 却 されます.すなわち, 生 後 8 週 目 の 新 生 児 10 人 と 40 週 目 の 新 生 児 10 人 の 血 清 中 の 免 疫 グロブリン A の 量 の 中 央 値 に 差 があるという 結 果 になりました. (4) 逆 のグループのW 値 を 用 いた 場 合 <fig.5>のようにw 値 を 計 算 します. 次 のプログラムにより 結 果 を 表 示 させると, 次 頁 のよ うになります. W=141 n=10 m=10 a=n*(n+m+1)/2 b=sqrt(n*m*(m+n+1)/12) u=(w-a)/b - 4 -

5 a b u > a [1] 105 > b [1] > u [1] u = 2. 7 となり, 有 意 水 準 1% で 帰 無 仮 説 が 棄 却 されます. < 実 習 2> <fig.5> 生 後 8 週 目 の 新 生 児 10 人 と16 週 目 の 新 生 児 12 人 を 抽 出 し, 血 清 中 の 免 疫 グロブリン A を 測 定 したところ, 次 のような 数 値 を 得 た. 生 後 8 週 目 生 後 16 週 目 (mg/dl) 帰 無 仮 説 H 0 : 生 後 8 週 目 の 中 央 値 と 生 後 16 週 目 の 中 央 値 は 等 しい. を, 有 意 水 準 5%で 検 定 せよ

6 同 順 位 がある 場 合 には,その<fig.6> <fig.6>のように, 順 位 の 平 均 値 をとります. <fig.6> 例 えば,5 位 が 2 つありますが, = 5. 5 を 修 正 順 位 とします. 上 の 例 には 出 てきませ 2 んが, 同 順 位 が3つ 以 上 あっても 同 様 に 修 正 します.この 問 題 で 用 いる 検 定 統 計 量 W の 値 は です

7 3 ラページ 検 定 2 つの 母 集 団 の 分 布 が 等 しいということがわかっている 場 合 には, 中 央 値 の 差 の 検 定 として ウィルコクソン 検 定 を 行 いました.しかし,2 つの 母 集 団 の 分 布 の 型 が 等 しいかどうかがわか っていないときには, 中 央 値 が 等 しいかどうかの 検 定 ができません.2 つの 母 集 団 の 分 布 の 型 が 等 しいかどうかがわかっていないときに 中 央 値 が 等 しいかどうかを 検 定 する 方 法 として,ラ ページ 検 定 があります. <LAP (ロイシンアミノペプチターゼ)の 数 値 > 血 液 検 査 でLAP (ロイシンアミノペプチターゼ)の 数 値 は 胆 汁 の 流 出 障 害 を 知 るのに 役 立 つ. 健 康 な 男 性 の 検 査 値 と 女 性 の 検 査 値 の 間 に, 何 らかの 差 があるかどうかを 知 りたい. これまでの 経 験 から, 男 性 の 中 央 値 と 女 性 の 中 央 値 とは 等 し いということに 疑 いを 持 っており,それぞれの 母 集 団 の 分 布 の 型 が 等 しいかどうかもわかっていない.そこで, 健 康 な 男 性 20 名 と 女 性 20 名 を 抽 出 し, 血 液 検 査 をしたところ, 右 の 表 の 数 値 を 得 た. 帰 無 仮 説 H 0 : 母 集 団 の 分 布 は 等 しい. を, 有 意 水 準 5% で 検 定 せよ. (1)ウィルコクソン 検 定 の 検 定 統 計 量 W の 計 算 ラページ 検 定 であっても, 最 初 はウィルコクソン 検 定 を 行 う 際 の 検 定 統 計 量 W の 値 を 求 めます. 次 頁 に,その 計 算 方 法 と 結 果 を 掲 載 してあります. 実 際 にExcel にデータを 入 力 し, 実 行 してみて 下 さい. <fig.7>で 男 性 をGroup1 Group1, 女 性 をGroup0 として, 次 頁 の<fig.8> <fig.8>の 表 を 作 成 します. <fig.8>では, 昇 順 で 順 位 を 求 め, 同 順 位 は 修 正 をし,ウィルコクソン 検 定 の 検 定 統 計 量 W を 計 算 します. 計 算 結 果 は, W = となっています. <fig.7> - 7 -

8 <fig.7> <fig.8> (2)ラページ 検 定 の 検 定 統 計 量 H を 求 めるためのA の 値 の 計 算 次 頁 の<fig.9> <fig.9>のように,group1 Group1,Group0 Group0 の 両 者 の 標 本 全 てを 昇 順 に 並 べます.その 結 果 を 前 半 分 と 後 ろ 半 分 に 分 けます. 今 回 は 全 部 で 40 標 本 なので, 前 半 分 も 後 ろ 半 分 も 20 標 本 ず つになります. 前 半 については, 先 ほど 求 めた 昇 順 の 順 位 のままでよいのですが, 後 半 の 部 分 については 降 順 に 順 位 をつけかえます.そして, 前 半 と 後 半 のそれぞれについて,ウィルコクソン 検 定 のと きと 同 じように 同 順 位 の 修 正 を 行 います. <fig.9>は, 40 標 本 全 てのmU/ml の 数 値 が 昇 順 で 並 べられています. 次 にRank の 列 は, - 8 -

9 <fig.9> 前 半 に 昇 順 の 順 位 が, 後 半 に 降 順 の 順 位 がつけられています.Number の 列 は, 単 純 に 前 半 が 1 10 の 自 然 数 を 昇 順 に, 後 半 が10 1の 自 然 数 を 降 順 に 並 べてあります. 次 に, 同 順 位 についての 修 正 順 位 を, 前 半 10 人 と 後 半 10 人 に 対 して 別 々に 計 算 します. 前 半 の 修 正 順 位 ( 昇 順 )がW1 の 列, 後 半 の 修 正 順 位 ( 降 順 )がW2 の 列 に 記 されています. W 1 =(W1 の 列 の 値 ) (Group の 値 ) W =(W2 の 列 の 値 ) (Group の 値 ) 2 として, A = W + W 1 2 の 値 を 計 算 します.ラページ 検 定 では,ウィルコクソン 検 定 のときに 求 めた 検 定 統 計 量 W 以 - 9 -

10 外 にこのA の 値 を 求 めなければいけません. (3)ラページ 検 定 の 検 定 統 計 量 H の 値 の 計 算 ウィルコクソン 検 定 のときと 同 じように, 1 a = n( n + m + 1) 2 nm( n + m + 1) b = 12 W a u = b を 計 算 します. また, 1 a' = n( n + m + 2) 4 b' = v = nm( n + m 2)( n + m + 2) 48( n + m 1) A a' b' を 計 算 します. ラページ 検 定 のための 検 定 統 計 量 は, 2 2 H = u + v です.H は, 自 由 度 2 の χ 2 分 布 になります. R では, n=20 # Group1 のデータ 数 m=20 # Group0 のデータ 数 a=n*(n+m+1)/2 b=sqrt(n*m*(n+m+1)/12) W=508.5 # ウィルコクソン 検 定 の 統 計 量 A=218.5 ad=n*(n+m+2)/4 bd=sqrt(n*m*(n+m-2)*(n+m+2)/(48*(n+m 2)*(n+m+2)/(48*(n+m-1))) u=(w-a)/b v=(a-ad)/bd H=u^2+v^2 # ラページ 検 定 の 統 計 量 H

11 をR-エディタに 入 力 して 実 行 すれば, [1] となります. > qchisq(0.95,2) [1] ですから, < H であれば, 帰 無 仮 説 H0 は 棄 却 されます < より, 帰 無 仮 説 H0 は 棄 却 され, 中 央 値 に 差 があり,2 つの 母 集 団 の 分 布 は 異 なることがわか りました. 4 ウィルコクソン 検 定 とラページ 検 定 の 結 果 の 比 較 <fig.1>の 例 の 問 題 を,ラページ 検 定 によって 検 定 してみましょう. ウィルコクソン 検 定 による 検 定 統 計 量 W は, W = 69 でした.また,<fig.10> <fig.10>により, A = 51 となりました. <fig.10>

12 R により, n=10 # Group1 のデータ 数 m=10 # Group0 のデータ 数 a=n*(n+m+1)/2 b=sqrt(n*m*(n+m+1)/12) W=69 # ウィルコクソン 検 定 の 統 計 量 A=51 ad=n*(n+m+2)/4 bd=sqrt(n*m*(n+m-2)*(n+m+2)/(48*(n+m 2)*(n+m+2)/(48*(n+m-1))) u=(w-a)/b v=(a-ad)/bd H=u^2+v^2 # ラページ 検 定 の 統 計 量 H で 計 算 すると, 結 果 は, > H [1] となり, 自 由 度 2 の χ 2 検 定 で5% 点 が5. 99 より, < であるから, 帰 無 仮 説 H0 は 棄 却 されます