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1 臨床リウマチ,28: 135~142, 当科におけるリウマチ性多発筋痛症の臨床的特徴と治療の検討 Key words: PMR, Bird s criteria, clinical features, prednizolone 兵庫医科大学内科学リウマチ 膠原病科 松井 聖 西岡亜紀 關口昌弘 東 直人 北野将康 佐野 統 兵庫医科大学内科学リウマチ 膠原病科 兵庫医療大学薬学部医療薬学科岩崎剛 兵庫医科大学内科学リウマチ 膠原病科 岡部医院野上みか 兵庫医科大学内科学リウマチ 膠原病科 橋本膠原病センター橋本尚明 要 旨 目的 : リウマチ性多発筋痛症 (PMR) は, 高齢者に発症する原因不明のリウマチ性疾患である.Bird らの診断基準により診断され半年以上診断の変わらなかった患者 79 名を対象に臨床的特徴と治療について検討した. 対象と方法 :23 年 1 月から21 年 2 月まで Bird らの診断基準により診断され半年以上診断の変わらなかった患者 79 名を対象とし, 後向きに検討した. 検討項目は,Bird の診断項目合致率, 検査データは CRP, ESR, IgG, CH5, MMP-3と各種自己抗体を検討した. また, ステロイド剤の初期治療量およびステロイド剤の初期治療量と診断項目合致数との相関, ステロイド剤の初期治療量と検査値の相関を検討した. 結果 : プレドニゾロンの使用量は14.3±5.7mg/day で, 検査値や診断項目数の相関はなかったが, 抑うつ傾向や体重減少と男性の方で使用量が多い傾向にあった. 結論 : ステロイド剤の初期使用量は検査データよりも臨床的兆候に起因して用いられる傾向が強かった. Clinical outcomes of 79 patients with polymyalgia rheumatica. Kiyoshi Matsui 1), Mika Nogami 1,3), Naoaki Hashimoto 1,4), Aki Nishioka 1), Masahiro Sekiguchi 1), Naoto Azuma 1), Masayasu Kitano 1), Tsuyoshi Iwasaki 1,2), Hajime Sano 1). 1) Division of Rheumatology, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, 2) Department of Pharmacy, School of Pharmacy, Hyogo University of Health Sciences, 3) Okabe Clinic for General Medicine, 4) Hashimoto Clinic for Rheumatic diseases. DOI: /cra ( 受付, 受理 )

2 136 Clin Rheumatol,28: 135~142,216 はじめにリウマチ性多発筋痛症 (PMR) は, 高齢に発症する原因不明のリウマチ性疾患である.1888 年にBruce 1) により senile rheumatic gout として報告され,1957 年に Barber 2) によって初めて Polymyalgia Reumatica と命名され, Bagratuni 3) により非びらん性関節炎として報告された. その後,1979 年に,Bird らによって初めて診断基準が提唱された 4). 体幹近位部の上下肢の筋痛やこわばりを主訴として, 発熱, 関節痛, 食欲低下, 体重減少などが見られ, 炎症反応の上昇は見られるが自己抗体は陰性であり, 特異的な検査所見に乏しいのが特徴である. また, 一般的に治療は少量の副腎皮質ステロイド剤が奏効する. しかし, 奏効しない場合は, 悪性腫瘍の合併や巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎の合併を考える必要がある. そこで, 今回, 当科で PMR と診断し,6 ヶ月以上診断が変わらなかった症例について, 臨床像の特徴と治療との相関について検討した. 患者と方法 23 年 1 月から21 年 2 月までに Bird らの診断基準で PMR と診断し,6 ヶ月以上診断が変わらなかった 79 症例について後向きに検討した. 尚, 初発時から3 年間の観察期間とした. 検討項目は, 年齢, 性別,Bird らの診断基準項目合致率, 悪性腫瘍や巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎の合併率, 初診時の検査項目 (CRP, ESR, IgG, CH5, MMP-3) の平均, 副腎皮質ステロイド剤平均初期投与量 ( プレドニゾロン換算 ), ステロイド剤離脱率, 抗リウマチ剤の併用率と種類, 自己抗体 (RF, 抗 CCP 抗体, 抗核抗体, 抗 SS-A 抗体, 抗 SS-B 抗体, 抗 ds DNA 抗体, 抗 Sm 抗体, 抗 RNP 抗体, 抗 Jo-1 抗体, MPO-ANCA, PR3-ANCA) の陽性率である. また, ステロイド剤の初期治療量と診断基準項目合致数との相関, 各診断項目の有無とステロイド剤投与初期量の平均, ステロイド剤の初期治療量と検査データ (CRP, ESR, IgG, CH5, MMP-3) との相関について検討した. 統計学的処理は, 相関については Pearson s correlation coefficient を用いて解析した. また 2 群間の比較には Mann-Whitney U test を用いた. 結 1. 患者背景女性が54 例 (68%), 男性が25 例 (32%) であった. 平均年齢は73.1±1.1 歳であった. 2.Bird らの診断基準合致率両肩痛 こわばりが最も高く91% であった. 次に赤沈亢進の81%,65 歳以上の8% であった. また, 両上腕圧痛は76%, それ以下は一致率が低く急性発症が28%, 朝のこわばりが27%, 抑うつ症状 体重減少が13% と低かった. 診断基準平均合致項目数は 3.9 であった ( 表 1). 果 表 1 患者背景と Bird の診断項目の合致割合 項目 数値 性別 (F/M) 54 例 (68%)/ 25 例 (32%) 年齢 (m ± SD) 73.1±1.1 歳 両肩痛, こわばり 91% 赤沈亢進 81% 65 歳以上 8% 両上腕圧痛 76% 急性発症 28% 朝のこわばり 27% 抑うつ症状, 体重減少 13% 診断基準平均合致項目数 3.9 患者背景として性別, 年齢を,Bird の診断項目の 7 項目は陽性率 (%) を示した. 3. 合併症巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎の合併症は79 例中 1 例 (1.3%) に見られた. また,79 例中 5 例 (6.3%) に悪性腫瘍の合併が見られた.PMR 診断前が3 例で胃癌, 大腸癌, 腎癌であった. また,PMR 診断後は2 例で2 例とも乳癌であった ( 表 2). 4. 検査項目炎症反応である CRP は,5.13±3.86mg/dl,

3 例陽性症臨床リウマチ,28: 135~142, ESR は89.7±35.5 mm/hr といずれも高値を示していた. また,IgG については1576.9± 485.3mg/dl と平均は正常範囲内であったが一部で高値を示す症例があった.CH5は62.2± 16.3U/ml と慢性炎症で上昇しているものと考えられた.MMP-3は, 女性で25.5±219.4ng/ml, 男性で35.2±256.9ng/ml と男女ともに上昇していた ( 表 3). 5. 自己抗体各自己抗体について, 測定がなされていた症例 についての陽性率を検討した. リウマトイド因子は,69 症例中 12 例と17% と陽性であったが, 抗 CCP 抗体の陽性率は43 例中 1 例と低かった. また, 抗核抗体は72 例中 11 例が陽性で陽性率は15% であった. その他は, 抗 SS-A 抗体が4 例中 2 例で陽性であったが, 抗 ds-dna 抗体, 抗 Sm 抗体, 抗 Jo-1 抗体はそれぞれ41 例,19 例,16 例で検索したが, 陽性例はいずれも1 例のみであった. 抗 SS-B 抗体, 抗 RNP 抗体,MPO-ANCA,PR3- ANCA はそれぞれ38 例,22 例,39 例,14 例で検索したが皆無であった.( 図 1). 表 2 PMR の合併症 巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎と悪性腫瘍 の割合 表 3 PMR の検査データ (CRP,ESR, CH5, IgG, MMP-3) 項目 数値 巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎 1/79 例 (1.3%) 悪性腫瘍 5/79 例 (6.3%) PMR 診断前 3 例腎癌 :1 年 1ヶ月前 胃癌 :1 年 3ヶ月前 大腸癌 : 同時期 PMR 診断後 2 例乳癌 :1 年 3ヶ月後 乳癌 : 1ヶ月後 巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎の合併は 1.3%, 悪性腫瘍の合併は 6.3% であった. その中で,PMR 診断前に悪性腫瘍があったものが 3.8%,PMR 診断後に悪性腫瘍がみつかったものが 2.5% であった. 項目 数値 CRP 5.13±3.86mg/dl ESR 89.7±35.5mm/hr IgG ±485.3mg/dl CH5 62.2±16.3U/ml MMP-3 Male 35.2±256.9ng/ml [ ] MMP-3 Female 25.5±219.4ng/ml [ ] PMR 診断時の血液検査所見の平均は,CRP 5.13± 3.86mg/dl,ESR 89.7±35.5mm/hr,IgG ± 485.3mg/dl CH ± 16.3U/ml, MMP-3 男性は 35.2 ± 256.9ng/ml, 女性は 25.5±219.4ng/ml であった. 8 17% 7 6 数 % 15% 5% 2.4% 5.2% 6.3% 陰性 図 1 PMR における自己抗体の割合後向き研究であるので, 全例に測定できていないため各自己抗体毎の測定した数を で示す. また, 陽性所見を で示している. 数字は, 各自己抗体の陽性率 (%) を示す.

4 診断基準合致項目138 Clin Rheumatol,28: 135~142, 治療ステロイド剤の初期平均投与量は14.3± 5.7mg/day であった. また, ステロイド剤減量中に再燃のため, ステロイド剤を増量した症例は 79 例中 27 例 (34.1%) であった. 更に, ステロイド剤が離脱できた症例は79 例中 13 例 (16.4%) その内, 再発が見られた症例は5 例 (6.3%), 再発しなかった症例は8 例 (1.1%) であった. また, 他剤を併用した症例が79 例中 1 例 (12.6%) で, 抗リウマチ薬が併用されていた症例は9 例 (11.4%) であった. その内訳は,5 例はサラゾスルファピリジンで,4 例がメトトレキサートであった. どちらの薬剤併用症例でも各 1 例ずつは寛解のため薬剤中止ができた. その他の薬剤としては, アザチオプリンが1 例併用されていた.( 表 4). 表 4 PMR の治療状況 (PSL 初期投与量, 減量再燃, 離脱割合, 合併薬剤 ) 項目ステロイド剤平均初期投与量ステロイド剤減量中に再燃のため増量した例 数値 PSL 14.3±5.7mg/day (5-3mg/day) 27/79 例 (34.2%) ステロイド剤離脱例 13/79 例 (16.4%) 再発あり 5 例 (6.3%) 再発なし 8 例 (1.1%) 他剤併用例 1/79 例 (12.6%) SASP 5 例 (1 例は寛解で薬剤中止 ) MTX 4 例 (1 例は寛解で薬剤中止 ) AZP 1 例 ステロイド初期投与量はプレドニゾロン換算で 14.3±5.7mg/day であった. また, ステロイド剤減量中に再燃のため増量した例は 34.2% に見られた. ステロイド離脱例は全体の 16.4%, その中で再発した症例は 6.3% であった. また, 他剤の併用は 12.6 % に見られた. 内訳はサラゾスルファピリジン (SASP) が 5 例, メトトレキサート (MTX) が 4 例, アザチオプリン (AZP) が 1 例であった r = 数 図 2 Bird の診断基準項目合致数と初期ステロイド剤投与量の相関診断基準項目合致数と初期プレドニゾロン投与量との相関は認めなった.

5 臨床リウマチ,28: 135~142, 表 5 PMR の背景と Bird の診断基準項目の有無とステロイド初期投与量の有意差 治療開始時ステロイド量 (PSL m±sd mg/day) p 性別 (F/M) 13.1±4.9 / 17.±6.3.4 両肩の疼痛および / またはこわばり (+/-) 14.1±5.4 / 16.5± 週間以内の急性発症 (+/-) 15.1±4.4 / 14.± 赤沈 4mm 以上 (+/-) 13.8±4.9 / 16.5± 時間以上持続する朝のこわばり (+/-) 14.9±5.6 / 14.1± 年齢 65 歳以上 (+/-) 13.8±5.6 / 16.2± 抑うつ症状および / または体重減少 (+/-) 18.5±5.3 / 13.7±5.5.6 両側上腕の圧痛 (+/-) 14.±5.8 / 15.1± ステロイド初期投与量は男性と Bird の診断基準項目の7 項目中 1 項目 抑うつ症状および / または体 重減少 で有意差が認められた. 7. ステロイド剤の投与量と診断項目数または各診断項目の有無とステロイド剤の初期投与量との相関の検討ステロイド剤の量と Bird らの診断項目一致項目数の相関について検討した.R=-.48と明らかな相関は認めなかった ( 図 2) そこで, 性別と診断項目の有無によってステロイド剤の量の違いがあるかどうかを検討した. その結果, 性別で男性の方が17.±6.3mg/day と女性の平均 13.1±4.9mg/day より p=.4と有意に高かった. しかし, 体重当たりに換算すると男性は.287±.13 mg/kg, 女性は.259±.126 mg/kg で男性の方が多い傾向は見られたが有意差は認めなかった (p=.2889). また, 診断項目で, 抑うつ症状および / または体重減少がある場合は, 18.5±5.3mg/day とない場合の13.7±5.5mg/day に比べ p=.6で有意に高かった. その他の診断項目には有意な差はみられなかった ( 表 5). 8. 各種血液検査結果とステロイド剤の量との相関の検討ステロイド量と CRP は r=.217, ESR は r=.127と相関はなかった. また,MMP-3は男性が r=.435, 女性は r=.25と共に相関はなかった. また,IgG は r=-.111,ch5は r=-.34と相関はなかった. いずれも, ステロイド量と検査結果の相関は見られなかった ( 図 3). 考察 PMR は一般的に女性に多く, 男女比は1:1.5 2.と言われている. 我々の結果でも同様の比率 4) であった. また,Bird の診断基準の65 歳以上の 1 項目にあるように平均年齢が73.1±1.1 歳で 65 歳を超えていた. また, 診断項目の合致率でも 65 歳以上が8% であった.212 年 EULAR/ACR から出された新分類基準 5) では先ず, 前提条件の 1つに5 歳以上があり, この前提条件であれば合致率が容易に上がるものと推測された.Bird らの診断基準の項目の合致率は, 両肩疼痛またはこわばりが最も高く91%, 次いで赤沈の亢進 (81%),65 歳以上 (8%), 両上腕圧痛 (76%) の順に高かった.EULAR/ACR の新分類基準の前提条件の3 項目に両肩疼痛, 炎症反応,5 歳以上が含まれており,Bird の診断基準の合致率の上位の3 項目と一致している. また, 両上腕圧痛も 76% と高く, 両肩から上腕にかけての症状が特徴的と言える. 診断基準の項目で予想に反し低かったのは急性発症 (28%) と朝のこわばり (27%) であった ( 表 1). 後向きの研究であり, 診療録の記載に頼っている部分があることは否定できない. しかしながら, 杉山ら 6) や稲田 7) の記載によると朝のこわばりがそれぞれ56%,42% と低く, 欧米人と比べ日本人では低いと考えられる. また, 診断合致項目数は, 平均 3.9であり,Bird の診断

6 14 Clin Rheumatol,28: 135~142,216 a. CRP: ESR: b (mg/dl) c. IgG :r =.157 :r =.217 (mm/hr) (ng/ml) (mg/dl) (U/ml) 4 1 MMP-3(Male: Female: ) 1 :r = :r = d CH5 3 2 r = r = Analyzed by Pearson s correlation coefficient 図 3 PMR 患者の検査値と初期ステロイド剤投与量の相関 a.crp( ) または ESR( ) とのプレドニゾロン (PSL) の相関 b.mmp-3(male:, Female: ) とのプレドニゾロン (PSL) の相関 MMP-3は男性 (<6ng/ml) と女性 (<12ng/ml) では正常値が違うためそれぞれについて検討した. c.igg とのプレドニゾロン (PSL) の相関 d.ch5とのプレドニゾロン (PSL) の相関いずれの検査値 (CRP, ESR, IgG, CH5, MMP-3) もプレドニゾロン (PSL) 初期投与量との相関関係は認めなかった. 基準 4) の3 項目以上を超えている. 合併症は巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎が1.3% と少なく, 欧米の報告では PMR の15% と報告されており, また, 巨細胞性動脈炎の患者は欧米人では5% に PMR が見られる 8). しかしながら, 小林らの日本人の報告では3% と少なかった 9). 日本人は,PMR に巨細胞性 ( 側頭 ) 動脈炎の合併は少ないものと考えられる. また,PMR は腫瘍随伴症候群としての症状が出現する場合がある. 当科では悪性腫瘍の合併が6.3%, この中で PMR 診断後に見つかった悪性腫瘍が2.5% でいずれも乳癌であった ( 表 2). 最近の報告では PMR があるから悪性腫瘍がでやすい可能性は証明できておらず, コントロールとの差異はない 1).PMR の炎症反応は CRP(5.13 ±3.86mg/dl), 赤沈 (89.7±35.5mm/hr) とも既 存の報告 11) のCRP(5.9±4.26 mg/dl), 赤沈 (6 ±24mm/hr) と有意差はなかった.MMP-3の上昇においても福井らの報告 11) と差異はなかった. 自己抗体については RF が17% であったが,Bird らはリウマトイド因子陰性の感度は89%, 特異度が11% と報告している 4). 抗 CCP 抗体は陽性が1 例のみであった. その他の抗核抗体以外の自己抗体は低値であった. 治療ではステロイド剤の開始用量は,14.3± 5.7mg/day であった.Hazleman ら 12) の報告では PMR のみの患者は初期用量 2mg/day で開始して検討しており, また Bird らの診断基準では PSL 1mg/day で2 週間の反応を見て治療的診断をすることになっている.PSL の開始用量は平均用量であった. また, ステロイド離脱率は,

7 臨床リウマチ,28: 135~142, % と Hazleman ら 12) の報告では2 年間で24% であり, 当研究では3 年間観察しており, やや低いと思われる. また, 一部 (12.6%) に抗リウマチ薬や免疫抑制剤を併用していた ( 表 4). 併用によりステロイド剤の離脱またはステロイド減量ができる症例があった. 今回, 診断項目数とステロイド初期用量の相関, 検査値とステロイド用量の相関について検討したが, 明らかな相関はいずれも見られなかった ( 図 2,3). 表 5に示すように Bird の診断項目毎にステロイド初期用量を検討した結果, 男性と抑うつ症状または体重減少があるかまたは両方ある患者はステロイドの初期投与量が多くなっている. 男性は女性より平均体重が重いため, ステロイド剤の量が多くなっていたが, 体重当たりに換算すると傾向は見られたが明らかな有意差はなかった. プレドニゾロンの処方量は5mg 錠が多く使われており, 男性の方が1kg 当たり多い傾向が見られる結果となったものと推測している.Bird の診断基準で唯一有意差がついた項目である. 訴えや慢性消耗による体重減少から重症感を感じて初期投与量が多くなる傾向があると思われるが, 日本人が作成した後の診断基準からは抑うつ症状 体重減少は消えている 13). この項目は PMR の特異性が低いため, それ以降の診断基準から除かれていると思われる. このため,212 年に提唱された EULAR/ACR の新分類基準で関節エコー所見を入れた基準が日本人にはどうかを評価する必要がある. また, この基準に, 朝のこわばりが, スコア2 点と評価されているが, 上述したように日本では少ない傾向があり, このスコアでよいのかも合わせて検証する必要があり, 今後の日本人を対象とした前向き研究が望まれる. 謝辞本研究は兵庫医科大学教員助成 (213 年度 ) により行われた臨床研究であり, 深謝いたします. 文献 1)Bruce W: Senile rheumatic gout. Br Med J, 1: , )Barber HS: Myalgic syndrome with constitutional effect. Polymyalgia rheumatica. Ann Rheum Dis, 16:23-237, )Bagratuni L: Prognosis in the an arthritic rheumatoid syndrome. Br Med J, 23: , )Bird HA, Esselinckx W, Dison ASJ, et al: An evaluation of criteria for polymyalgia rheumatica. Ann Rheum Dis, 38: , )Dasgupta B, Cimmino MA, Maradit- Kremers H, et al: 212 provisional classification criteria for polymyalgia rheumatica: a European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology collaborative initiative. Ann Rheum Dis, 7: , ) 杉山英二 : リウマチ性多発筋痛症. 日本内科学会雑誌,99:84-89, 21. 7) 稲田進一 : リウマチ性多発筋痛症. 日本臨床, 63: , 25. 8) 松井聖, 佐野統 : リウマチ性多発筋痛症. 日本臨床,72:325-33, )Kobayashi S, Yano T, Matsumoto Y, et al: Clinical and epidemiologic analysis of Giant cell (temporal) arteritis from a nationwide survey in 1998 in Japan: The first government-supported nationwide survey. Arthritis and Rheum, 49: , 23. 1)Muller S, Hider SL, Belcher J, et al: Is cancer associated with polymyalgia rheumatica? A cohort study in the general practice research database. Ann Rheum Dis, 73: , )Fukui S, Nunokawa T, Kobayashi S, et al: MMP-3 can distinguish isolated PMR from PMR with GCA: A retrospective study regarding PMR and GCA in Japan. Mod Rheumatol, DOI:1.319 / , )Kyle V, Hazleman BL:The clinical and la-

8 142 Clin Rheumatol,28: 135~142,216 boratory course of polymyalgia rheumatica/giant cell arteritis after the first two months of treatment. Ann Rheum Dis, 52:847-85, )Nobunaga M, Yoshioka K, Yasuda M, et al: Clinical Studies of polymyalgia rheumatica a proposal diagnostic criteria. Jpn J Med, 28: , ABSTRACT Clinical outcomes of 79 patients with polymyalgia rheumatica Kiyoshi Matsui 1), Mika Nogami 1,3), Naoaki Hashimoto 1,4), Aki Nishioka 1), Masahiro Sekiguchi 1), Naoto Azuma 1), Masayasu Kitano 1), Tsuyoshi Iwasaki 1,2), Hajime Sano 1) 1) Division of Rheumatology, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine, 2) Department of Pharmacy, School of Pharmacy, Hyogo University of Health Sciences, 3) Okabe Clinic for General Medicine, 4) Hashimoto Clinic for Rheumatic diseases Objective: Bird s criteria for Polymyalgia rheumatica (PMR) were primarily published in 1979.The aim of this study was to investigate the clinical features in Japanese PMR patients treated at our hospital using Bird s criteria. Patients and Methods: Seventy-nine patients with PMR diagnosed according to Bird s criteria were studied. We examined the items of Bird s criteria, laboratory findings (CRP, ESR, CH5, MMP-3 and autoantibodies) and primary dosage of prednisolone (PSL). Results: The average number of items in Bird s criteria was 3.9 in the PMR patients. Only one patient and five patients complicated with Giant cell (temporal) arteritis and malignancy, respectively. The mean primary dosage of PSL was 14.3±5.7mg/day. In eight patients (1.1%), PSL therapy could be completely withdrawn. The primary dosage of PSL was not related with laboratory findings (CRP, ESR, CH5, MMP-3) or the number of items in Bird s criteria. The dosage of PSL was higher in PMR patients with depression and/or loss of weight and male than in PMR patients without these items (p<.1). Conclusion: The primary dosage of PSL in the treatment of PMR tended to be decided by physique and physical status compared to the results of laboratory findings. Additional studies of 212 EU- LAR/ACR new classification criteria for PMR with or without ultrasound findings in Japanese patients will be required.