一一 ~ 一 ~ 氏 名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位論文題目 198 生 越 久 靖 お ごし ひさ のぷ 工 学 博 士 諭 工 博 第 号 昭和 年 月 日 学位規則第 条第 項該当 P (β- ジカルボニルの構造と合成に関する研究 ) 論文調査委員 ( 主査

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田耕氏 ) 永 学位の種類 薬 なが 186 ),7学博たいち士 学位記番号論 \ 薬 - 一博.A. 第 1 2 号 学位授与の日付昭和,39 年 9 月 2 9 日 学位授与 oj 要件 学位論文題目 学位規則第 5 粂第 2 項該当 チオヒドロキザム酸の金属キレートに関する研究 ( 主査 )





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熊 本 大 学 学 術 リポジトリ Kumamoto University Repositor Title プロスタシンを 中 心 としたNa 再 吸 収 血 圧 調 節 の 分 子 基 盤 の 解 明 Author(s) 脇 田, 直 樹 Citation Issue date

















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Title STUDIES ON RUBBER CHEMICALS Abstract_ 要旨 ) AND FIL Author(s) Kotani, Teizo Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL






Transcription:

Title Studies on structure and synthesis Abstract_ 要旨 ) Author(s) Ogoshi, Hisanobu Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date 1969-11-24 URL https://doi.org/10.14989/doctor.r15 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

一一 ~ 一 ~ 氏 名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位論文題目 198 生 越 久 靖 お ごし ひさ のぷ 工 学 博 士 諭 工 博 第 号 昭和 年 月 日 学位規則第 条第 項該当 P (β- ジカルボニルの構造と合成に関する研究 ) 論文調査委員 ( 主査 ) 教授吉田善一教授小田良平教授古川淳二 /I ノ 論文内容の要旨 本論文は β- ジケトン, β- ケトエステルといった - ジカルボニル化合物につき, 赤外吸収法, 紫外 吸収法ならびに核磁気共鳴吸収法による研究と基準振動の理論解析ならびに電子状態の量子化学的研究を 併用することにより, その分子構造を究明すると共に β- ジカルボニルの合成ならびに新しい反応について研究したもので, 章からなっている 第 1 茸は本研究の端緒となった, 直線型水素結合を有する酸性炭酸イオン二量体の振動スペクトルを赤外領域から遠赤外領域まで測定し, さらに, ラマンスペクトルを測定し, 得られたスペクトルを の力の場を用いて理論的に解析したものである その結果, 測定されたスペクトルの理論的帰属 を明確にすると共に, 各結合の力の定数を明らかにしている また, 直線型水素結合 - 系のカ の定数 (0 - H 伸縮振動, 0 - H 0 変角振動, 0 - - H 伸縮振動 ) と 0-0 問距離の問に直線関係が成立することを見出している 第 2 童はアセチルアセトンのエノル体における屈曲型分子内水素結合を研究するため, アセチルアセト ン, ヘキサフルオルアセチルアセトンおよびその重水素化物等の赤外吸収スペクトルを から まで測定し, 基準振動の理論解析を行なっものである その結果, 屈曲型水素結合系は直線型水 素結合系とは異った分子内ポテンシャルを有することを明らかにしている さらに, アセチルアセトンの両メチル基をトリフルオロメチル基におきかえた場合のキレート環を形成する各結合の力の定数の変化か ら, 置換基の分子内水素結合に及ぼす効果を考察している また, 種の - ジケトンのエノルプロトン の化学シフトと正確に帰属したカニボニル伸縮振動の問に直線関係が成立することを見出している 第 章はアセチルアセトンの中央の炭素原子に種々の置換基を導入し, これら置換基がエノル体の分子 内水素結合系ならびに共役 T 電子系にどのような効果を示すかを対応する金属キレートと対比して研究し たものである その結果, 電子吸引性共鳴効果の大きな置換基ほど上記両系に対する効果が大きく, その 程度は対応する金属キレ - トよりも大きいことを見出している - 6 3 2 -

第 童は β- ジカルボニルの 位の炭素原子にアルキル ( またはアリール ) チオ基の求核的導入と, 得 られたアルキル ( またはアリ - ル ) チオ置換体の構造に関し研究したものである O その結果, 本研究で行 なった - クロル - β- ジカルボニルとメルカプタン類の反応による - アルキル ( またはアリールチ オ ) - β- ジカルボニルの合成は従来知られていたスルフェニルクロリドと β- ジカルボニルとの反応よ り容易で, かつ応用範囲の大きなことを見出している また, β- ジカルボニルの 位にイオウ原子が入 ることにより, 実質上 100% エノル化し, エノル構造, 分子内水素結合ともに異常に安定化されることを 核磁気共鳴吸収ならびに赤外吸収スペクトルから見出している そして, このような安定化が起るのは基 底状態で, イオウ原子の 軌道の関与する r 共役に帰因するものと結論している O 第 茸は - - ロー ペンタンジオンの金層 (Ⅱ) キレート ( 金属 : アルミニウム, コバルト, ク ロム ) に対する置換チオフェノ - ルの求核的反応を研究したものである その結果アリールチオ基が - 位に容易に導入されることを見出している この反応は β- ジカルボニルの金属錯体における求核置換の 最初の成功例である 反応に及ぼす置換チオフェノールの置換基の種塞, 中心金属の種類, 溶媒の種類, および - ロゲンめ種類の影響を検討し, 本反応の機構について考察している. 第 章は ジケトンの 1 位にシクロプロピル基を有するものを合成し, そのエノル体の核磁気共 鳴, 赤外および紫外スペクトルを測定し, それらを対応するイソプロピル基を有する - ジケトンの値 と比較, 検討したものである その結果, シクロプロピル基は共役相互作用により, 1 ジケトンの基 底状態を多少安定化させるが, 基底状態より励起 ( 一重項 ) 状態の方をより強く安定化させることを見出 し, 遷移双極子により基底状態より強く分極した励起一重項状態とシクロプロピル基の共役が大きいことを明らかにしているO - 方, 分子内水素結合したエノル体を銅 ) 錯体に変えた場合にはシクロプロピ ル基による共役相互作用は明白には認められない 非対称 β- ジケトンの場合には可能な両エノル構造に 対するシクロプロピル基の相互作用は相違する結果, シクロプロピル基との共役相互作用により安定化されるエノル構造が優位構造となることを明らかにしている 第 章は量子化学的計算によって, β- ジカルボニルの 7r 電子分布, 結合次数等を求め, これらの値を, 著者がこれまでに得た実験結果とを対比して検討したものである まず, 単純 による取扱いにより, 置換基を変化した場合のエノル酸素の電子密度と分子内水素結合強度との問に平行関係が成立するこ とを確かめ, 第 章に述べた置換基効果の解釈の妥当なことを示している さらに, 法 によって, β- ジカルボニル類の分光学的値を矛盾なく 解釈している 第 章では - メチルチオ - ペンタンジオンのエノル環の異常な安定性を究明するため, その 振動スペクトルを に近い質量を有する 1 を置換基としてもつ - クロルー.4 - ペンタジオンのエノ ル体のスペクトルと比較している そして, 両者の基準振動の理論解析をし, 力の定数を対比している そして, その結果, 後者と異なり前者のエノル類では 7T 電子の非局在化が大きく, 分子内水素結合も強い ことを明らかにしている また, この結果は核磁気共鳴スペクトルから得た結果と一致している -

論文審査の結果の要旨 β- ジカルボニルの内, β- ケトエンテルは有機合成上重要であり, β- ジケトンは金属に対するキレ- ト剤として重要性を増してきているものである ところが, β- ジカルボニルの分子構造については不明の点が多く, とくに, β- ジカルボニル ( ェノル体 ) における屈曲型分子内水素結合ならびに共役 r 電子系に対するキレート環上の置換基の影響は全く不明のまま残されてきた そこで著者は赤外, 核磁気共鳴ならびに紫外吸収スペクトル法による研究に加えて, 振動スペクトルの理論解析, 電子状態の量子化学的研究を適切に併用してこれらの問題を研究している 他方, β- ジケトンの金属錯体のキレート環上での求核置換についてはこれまで成 した例がなかった 著者はこの点についても研究した結果, 始めて求核置換に成功し, これを置換 - 応用している これらの研究の主要な成果を示すと次のようである β ジカルボニルの合成に β- ジケトン ) エノル体における屈曲型水素結合を直線型水素結合と対比して研究するため, 後者の例として酸性炭酸イオン二量体を選び, 水素結合の研究に最も適切な振動スペクトルの測定を赤外から遠赤外領域まで行ない, かつ の力の場を用いて基準振動の理論解析を行なうことにより測定スペクトルの理論的帰属を適確に行なうと共に, 各結合の力の定数を決定している その結果, 屈曲型水素結合は直線型水素結合とは異った分子内ポテンシャルを有することを明らかにしている また, 両カルボニル基に結合する置換基を変えた数種の β- ジケトンについて, キレ- ト環を形成する各結合のカの定数の変化から分子内水素結合に及ぼすこれら置換基の電子効果を考察している なお, この研究は分子内水素結合を直接遠赤外部に観測した最初のケースとして注目すべきものである β ジカルボニルの中央のメチレン基に各種の置換基を導入した置換 - β- ジカルボニルにつき, 赤外ならびに核磁気共鳴法により, 置換基がエノル体の分子内水素結合ならびに共役 TC 電子系にどのような効果を示すかを研究した結果, 置換基, 電子吸引性共鳴効果の大なものほど分子内水素結合を強め, かつキレート環の 7T 電子の非局在化を高めることを明らかにしている 注目すべきは, アルキル ( あるいはアリール ) チオ基の効果であって, これらの置換基は電子吸引性共鳴基と同様, エノル化を 進行させると共に, アセチル基と同程度に分子内水素結合を強め, キレート環の 7T 電子の非局在化を起させる 含イオウ置換基によるこのような効果は基底状態のイオウ原子の 軌道とキレ- ト環の打電子との問の C 共役により解釈しうることを示している また, 各種の置換 - β- ジカルボニルのエノルプロトンの化学シフトとカルボニル基の伸縮振動の問に傾斜正の直接関係が成立することを見出している - ハロ - ペンタンジオンの金属 (Ⅱ) 錯体 ( 金属 : に対する求核置換反応として, 置換チオフェノ- ルとの反応を試み - 位にアリ- ルチオ基が高収率で導入されることを見出しているO この反応は β- ジカルボニルの金属錯体のキレ- ト環上での求核置換の最初の成功例である 反応に及ぼす置換基の効果, - ロゲン, 金属ならびに溶媒の種類の影響を検討し, 本反応の機構を考察している また, 金属結体にしなくとも, 塩基の存在下, より強い条件でチオフェノール類を作用させても求核置 -

換が起ることを明らかにしている (5) β- ジケトンの両カルボニル基の一方あるいは両方に, シクロプロピル基を導入した非対称ならび に対称置換体の核磁気共鳴, 赤外および紫外吸収スペクトルによる研究結果, シクロプロピル基は β- ジケトン ( エノル体 ) の基底状態をその共役効果により多少安定化させるが, 励起 - 重項状態の方をより大きく安定化させることを見出し, 遷移双極子により強く分極した励起一重項状態とシクロプロピル基の共役の大きいことを明らかにしている また, 非対称 - β- ジケントンの場合には可能な両エノル構造に対するシクロプロピル基の相互作用が 相違する結果, シクロプロピル基との共役により安定化される構造の方が優位構造をとることを明らかにしている 単純 法により置換 - β- ジケトンの打電子密度を計算した結果, エノル酸素の打電子密度と分子内水素結合強度との問に平衡関係があること, また, r 法により計算された β- ジカルボニルのエノレートイオンの電荷密度, 結合次数とスペクトルデータの問によい一致が見られることを示している また, 含イオウ置換基によるエノル環の異常な安定化を究明するため, エノル環の力の定数を求め, これとイオウ原子に近い質量を有する塩素を置換基とした場合の力の定数の対比から, 含イオウ置換基によるエノル環の安定化の原因を明らかにしている これを要するに, 本論文は各種の β- ジカルボニルの分子構造に関する分光学的研究ならびに理論的研 究を行ない, 多くの注目すべき知見をうると共に, 置換 - β- ジカルボニルの合成に関しても興味ある新 知見を得たものであって, 学術上, 工業上寄与するところが少くない よって, 本論文は工学博士の学位論文として価値あるものと認める