感染症法に基づく届け出について 2013 年 6 月 3 日医局勉強会 桑名 司
感染症法に基づく医師の届け出 目的 届出をすることで 感染症の発生や 流行を探知することが可能 蔓延を防ぐための対策 医療従事 者 国民への情報提供に役立つ と 厚生労働省の HP に記載あり
感染症法に基づく医師の届け出 目的 医療従事者である我々にも感染しうる アウトブレイクする可能性もある 常にアンテナを張る必要がある
届け出感染症 1~4 類 ただちに 5 類全数把握疾患 7 日以内 ( 麻疹 風疹はできるだけ早く )
1 類感染症 : ただちに届出 1 2 3 4 5 6 7 エボラ出血熱クリミア コンゴ出血熱痘そう南米出血熱ペストマールブルグ病ラッサ熱 日本での報告は 1999~2012 年までなし
2 類感染症 : ただちに届出 1 2 3 急性灰白髄炎 結核 ジフテリア 4 重症急性呼吸器症候群 ( 病原体がコロナウイルス属 SARSコロナウイルスであるものに限る ) 5 鳥インフルエンザ ( 病原体がインフルエンザウイルスA 属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH 五 N 一であるものに限る 第五項第七号において 鳥インフルエンザ(H 五 N 一 ) という ) 結核は年間約 20000 30000 人程度他は 0 2 人
3 類感染症 : ただちに届出 1 コレラ 10-90 2 細菌性赤痢 200-500 3 腸管出血性大腸菌感染症 3000-4000 4 腸チフス 20-90 5 パラチフス 20-90
4 類感染症 : ただちに届出 (1)E 型肝炎 (2) ウエストナイル熱 (3)A 型肝炎 (4) エキノコックス症 (5) 黄熱 (6) オウム病 (7) オムスク出血熱 (8) 回帰熱 (9) キャサヌル森林病 (10)Q 熱 (11) 狂犬病 (12) コクシジオイデス症 (13) サル痘 (14) 腎症候性出血熱 (15) 西部ウマ脳炎 (16) ダニ媒介脳炎 (17) 炭疽 (18) チクングニア熱 (19) つつが虫病 (20) デング熱 (21) 東部ウマ脳炎 (22) 鳥インフルエンザ ( 鳥インフルエンザ (H5N1) を除く ) (23) ニパウイルス感染症 (24) 日本紅斑熱 (25) 日本脳炎 (26) ハンタウイルス肺症候群 (27)B ウイルス病 (28) 鼻疽 (29) ブルセラ症 (30) ベネズエラウマ脳炎 (31) ヘンドラウイルス感染症 (32) 発しんチフス (33) ボツリヌス症 (34) マラリア (35) 野兎病 (36) ライム病 (37) リッサウイルス感染症 (38) リフトバレー熱 (39) 類鼻疽 (40) レジオネラ症 (41) レプトスピラ症 (42) ロッキー山紅斑熱 (43) 重症熱性血小板減少症候群 ( 病原体がフレボウイルス属 SF TS ウイルスであるものに限る ) ( 平成 25 年 3 月 4 日より追加 ) 黄色は 年間 100 例以上のもの ( それぞれ 1000 例には満たない )
5 類感染症の一部 :7 日以内 ( 麻しん 風しんはできるだけ早く ) (1) アメーバ赤痢 (2) ウイルス性肝炎 (E 型肝炎及び A 型肝炎を除く ) (3) 急性脳炎 ( ウエストナイル脳炎 西部ウマ脳炎 ダニ媒介脳炎 東部ウマ脳炎 日本脳炎 ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く ) (4) クリプトスポリジウム症 (5) クロイツフェルト ヤコブ病 (6) 劇症型溶血性レンサ球菌感染症 (7) 後天性免疫不全症候群 (8) ジアルジア症 (10) 先天性風しん症候群 (11) 梅毒 (12) 破傷風 (13) バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 (14) バンコマイシン耐性腸球菌感染症 (15) 風しん (16) 麻しん 侵襲性インフルエンザ菌感染症 ( 平成 25 年 4 月より追加 ) 侵襲性髄膜炎菌感染症 ( 平成 25 年 4 月より追加 ) 侵襲性肺炎球菌感染症 ( 平成 25 年 4 月より追加 ) 黄色は 年間 100 例以上のもの ( それぞれ 1000 例には満たない )
覚えるの大変
トレンド & リストアップ ここ最近のトレンド ( 世間的に話題になっているものやアップデートされたもの ) を抽出 他に 発生頻度が高く その中でも救命救急センターで頻度が高いと思われるもの をリストアップ ~ 出血熱や海外の名前がついたものなど 届け出感染所の多くは 鑑別に挙げる時に 特に重要なのが 病歴 ( 海外渡航歴が中でも重要!)
トレンド ここ最近のトレンドとして 2013 年 4 月 1 日から侵襲性インフルエンザ菌感染症 侵襲性髄膜炎菌感染症 侵襲性肺炎球菌感染症が五類全数把握対象疾患 (7 日以内 ) 2013 年 3 月 4 日から重症熱性血小板減少症候群が四類全数把握対象疾患 ( ただちに ) 救命救急センターにも発生しそう!!
重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) 4 類ただちに 臨床的特徴主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する 潜伏期間は 6~14 日 発熱 消化器症状 ( 嘔気 嘔吐 腹痛 下痢 下血 ) を主徴とし 時に 頭痛 筋肉痛 神経症状 リンパ節腫脹 出血症状などを伴う 血液所見では 血小板減少 (10 万 /mm3 未満 ) 白血球減少 (4000/mm3 未満 ) 血清酵素 (AST ALT LDH) の上昇が認められる 致死率は 10 ~30% 程度である 細菌感染症による ( ことが多い ) 敗血症性 DICに症状が似通っている 重症敗血症で 細菌感染が証明できないDIC かつ 草村や山に入ったなどの病歴がある患者は疑う必要があるだろう
侵襲性インフルエンザ菌感染症 侵襲性髄膜炎菌感染症 侵襲性肺炎球菌感染症 定義 Haemophilus influenzae による侵襲性感染症のうち 本菌が髄液又は血液から検出された感染症 Neisseria meningitidis による侵襲性感染症のうち 本菌が髄液又は血液から検出された感染症 Streptococcus pneumoniae による侵襲性感染症のうち 本菌が髄液又は血液から検出された感染症 血液培養 or 髄液培養 ( もしくは PCR 抗原検査 ) よりインフルエンザ桿菌 肺炎球菌 髄膜炎菌が検出された患者
トレンド 風疹 検査診断例 届出に必要な臨床症状の 1 つ以上を満たし かつ 届出に必要な病原体診断のいずれかを満たすもの 臨床診断例 届出に必要な臨床症状の 3 つすべてを満たすもの 1 全身性の小紅斑や紅色丘疹 2 発熱 3 リンパ節腫脹 なぜ風疹が大事か 先天性風疹症候群を予防するため!! 1979 年 ~1987 年生まれ ( 現在 25 歳 ~33 歳 ) の世代は風疹の予防接種を受けていない可能性が高い 古川力丸先生 ~ 中村和裕先生まで 谷間の世代 ( そして今後子供を産む ( だろう?) 世代 )
リストアップ 今までの東京都のデータから頻度が多く 中でも救命救急センターで患者が発生しうる疾患を独自にリストアップ
結核 2 類感染症ただちに 届け出感染症の中で 圧倒的に頻度が高い ( 年間約 20000 30000 人 ) 検査前確率も高い 難しいが 疑われる患者は N95 マスク & 陰圧個室対応 喀痰ガフキー 3 連痰 ( 連続 3 日の痰 ) 陰性で隔離解除 胃液は 誘発しても喀痰が採取できない場合に可 ( 感度が痰に比べて落ちるため ) 厳密には PCR 陽性は 排菌しているかは不明 ( 死菌も陽性になるため ) ガフキー陽性 結核 (MAC など非定型抗酸菌症があるため ) 非定型抗酸菌症は隔離解除してよい
腸管出血性大腸菌感染症 3 類ただちに HUS でセンターに来る可能性あり ( 特に小児 )
A 型肝炎 E 型肝炎 4 類ただちに 劇症肝炎としてセンターに来る可能性あり
レジオネラ オウム病 4 類ただちに 重症肺炎としてセンターに来る可能性あり
バンコマイシン耐性腸球菌感染症 5 類 7 日以内 通常無菌検体 ( 血液 腹水 胸水 髄駅 ) 分離 同定による腸球菌の検出かつ分離菌に対するバンコマイシンのMIC 値が16μg/ml 以上 通常無菌的でない検体 ( 喀痰 膿 尿 ) 分離 同定による腸球菌の検出かつ 分離菌に対するバンコマイシンのMIC 値が16μg/ml 以上 かつ分離菌が感染症の起因菌と判定された場合 ( つまり保菌は届け出の義務なし )
劇症型溶血性レンサ球菌感染症 5 類 7 日以内 定義 β 溶血を示すレンサ球菌を原因とし 突発的に発症して急激に進行する敗血症性ショック病態であること 以下の ( ア ) か ( イ ) を満たし かつ β 溶血を示す連鎖球菌が分離 同定 ( ア ) ショック症状 ( イ ) ( 以下の症状のうち 2 つ以上 ) 肝不全 腎不全 急性呼吸窮迫症候群 DIC 軟部組織炎 ( 壊死性筋膜炎を含む ) 全身性紅斑性発疹 痙攣 意識消失などの中枢神経症状 β 溶血を示す連鎖球菌とは 1 Streptococcus pyogenes (A 群溶血性レンサ球菌 : GAS と略称 ) 2 Streptococcus agalactiae (B 群溶血性レンサ球菌 : GBS と略称 ) 3 Streptococcus dysgalactiae subsp.equisimilis (C, G 群溶血性レンサ球菌 : SDSE と略称 )
後天性免疫不全症候群 (AIDS) 5 類 7 日以内 入院後のスクリーニング検査で HIV 陽性となる例がたまにあり スクリーニングで陽性の場合 抗体確認検査 ( 当院では Western Blot 法を行うことがほとんど ) を行う 陰性 問題ないとみなされる 陽性 指標疾患 ( 真菌症 原虫症など ) の発生がある場合にAIDSと診 断 センターでは 抗体確認検査が陽性であれば 血液内科に依頼が望ましいだろう
梅毒 5 類 7 日以内 入院後の検査で STS TPHA それぞれ陽性となる例がたまにあり 症状がない場合 無症状病原体保有者 しかし 届け出必要!
届け出方法 厚生労働省 HP 東京都感染症情報センター HP に届け出用紙あり 発生は週報として 国立感染症研究所の HP 内に報告されている 厚生労働省届け出の HP アドレス : http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html