情報通信用空調ソリューションとは 近年, サーバや情報通信装置などの ICT 装置は, 社会に広く普及し, インフラとして重要性を増しています. ICT 装置は, 運用時に常時大量の発熱を伴い, 年間を通じて空調機による冷房が必要になるため, 空調機の消費電力量の低減が強く求められています. また, 空調機が停止すると,ICT 装置周辺の温度が上昇し, 最悪の場合, ICT 装置の停止に至りサービスへの影響が出る可能性があるため, 空調機に は高い信頼性も要求されます. NTTファシリティーズでは,30 年以上前から消費電力量の低減と信頼性を両立する情報通信用の空調技術を開発し,NTTグループをはじめとする情報通信事業者の消費電力量低減に貢献してきました. 開発した空調技術を基に製品化した空調ソリューションは, 情報通信用空調機 と空調機からの冷気で効率良くICT 装置を冷却するための 気流制御技術 に分けられます. 私たちはこれまで, 情報通信用空調 24 時間 365 日つながり続ける通信インフラのためにデータセンタ省エネルギー空調機集エネルギー効率化に向けた技術開発の現状 情報通信用空調ソリューションの省エネルギー技術 特うだがわようすけせきぐちけいすけ宇田川陽介 / 関口圭輔よしいありこはたゆうじ吉井存 / 木幡悠士つきもとひできなかたたつや月元秀樹 / 中田達也 NTTファシリティーズ機として, 床置型のFMACS, ラック型のFTASCL-RS/C( 図 ₁(a)), 天吊型のFTASCL-CM/Cを開発してきました.FMACSは, 現在 5 代目の FMACS-Ⅴが導入されており, 標準タイプのほかに, 省スペースタイプの slimシリーズ, 間接外気冷房タイプの hybridシリーズ ( 図 1(b)) があります. 一方, 気流制御技術として代表的なものとしては, アイルキャッピング ( 図 1(c)) が挙げられます. アイルキャッピングは, 二重床からICT 装置に冷気を供給している通路 ( コールドアイル ) NTT 技術ジャーナル 2014.1 19
エネルギー効率化に向けた技術開発の現状 24 時間 365 日つながり続ける通信インフラのために を壁や屋根で区画する技術で,ICT 装置への給気 ( 低温 ) と排気 ( 高温 ) を物理的に分離することで, 効率的な冷却を実現できます. 開発した空調技術は学会からも高く評価され, その高い省エネルギー性から,2012 年度には,ICT 装置用間接外気冷房併用床置型空調機 FMACS-Ⅴ hybridが日本機械学会賞 ( 技術 ) *1, ICT 装置用ラック型空調機 FTASCL- RS/Cが日本冷凍空調学会賞 技術 * 賞 2 を受賞しました. FMACS-Ⅴ hybrid 概要 FMACS-Ⅴ hybridは, 従来の圧縮機を備えた空調機 ( 図 2(a)) に冷媒ポンプのみを追加設置する, シンプルなシステム構成で外気冷房が行える空調機です. 外気温度が低い冬期から中 間期は冷媒ポンプを使用するポンプサイクル ( 図 2(b)), 外気温度が高い夏期から中間期は圧縮機を使用する圧縮サイクル ( 図 2(c)) と, 外気温度に応じてサイクルを自動的に切り替えながら運転を行います. 冷媒ポンプは圧縮機に比べ 8 分の 1 程度の消費電力で運転できるため, 年間での大幅な省エネルギー化を実現します. データセンタにおいては, 年間を通じて冷房を行っており, 年間消費電力量削減に向けては, 中間期から冬期の低温外気を有効に利用することが, 非常に重要です. 低温外気の利用方式としては, 直接外気を室内へ導入する 直接外気冷房 と, 熱交換器等を通じて間接的に外気冷熱を利用する 間接外気冷房 に分けられます. 直接外気冷房は, 日本国内では年間を通じて外気のみでの運用が難しいため, 熱源機器 を備えたほかの空調設備を併設することが一般的であり, 空調設備の二重投資に伴う構築費用の増加が問題となります. また, 外気を大量に直接室内に導入するため, 室内の空気の質が悪化し,ICT 装置に影響を与えることも懸念されます. そこで私たちは, 直接外気冷房の問題を回避するため, 間接外気冷房方式を採用し, ポンプにより冷媒を循環させるポンプサイクルを併設した空調機を開発しました. 本空調機は, 配管流路を切り替えるだけで, 外気冷房運転が可能であり, 外気取り入れのための *1 日本機械学会賞 ( 技術 ): 一般社団法人日本機械学会が日本の機械工学 工業の発展を奨励することを目的として, 優秀な新規技術に授与する賞. *2 日本冷凍空調学会賞 技術賞 : 公益社団法人日本冷凍空調学会が冷凍 空調技術とそれに関連する学術技術の発展と普及に貢献し, 特に優れた技術に対して授与する賞. 20 NTT 技術ジャーナル 2014.1
存建物への導入も比較的容易です. 室内空気室への影響も従来の空調機と同程度になります. これまでは, 冷媒の循環をポンプで行うと壊れやすいという問題があり, 製品化できませんでした. 本空調機では, 冷媒ポンプの機構や制御を新規開発することで, 上記の問題を解決しました. 開発した技術により, 安全な運転が可能となり, 製品化に成功しました. フィールド評価空調機の開発においては, 試験室での検証のほかに, 北海道にあるNTT 東日本の実際のデータセンタに本空調機を設置し, 検証を行いました. NTT 東日本のデータセンタでは, 環境負荷低減に配慮するため, 消費電力量低減を実現する技術を積極的に採用しています. 後述しますが, 本空調機は年間を通じて外気温度が低い地域ほど省エネルギー効果が高くなる特長が あります. そこで, 北海道の冷涼な気候を活用し, 消費電力量を低減する本空調機の導入に向けた運用評価を行いました. 空調機の設置状況を図 3に示します. 室内ユニットはサーバ室に隣接する設備機械室に, 室外ユニット, およびポンプユニットは屋上フロアの屋外スペースに設置しました. 計測期間中の室内温度と外気温度を図 4に示します. 室内温度は平均 23 で, 年間を通して20 25 の範囲であり,ICT 装置の運用として適正な温度範囲で維持できていました. また省エネルギー性能としては, 一般電算機用空調機と比較し, 約 46% の消費電力量の低減となりました. ただし, 計測を行った期間の空調負荷は約 40% と低かったため, 今後発熱量が増加し, 空調負荷率が高まれば, さらに消費電力量の低減効果は大きくなると考えられます., 既集建物外壁部への開口も不要であり なお,NTT 東日本のデータセンタ では, 評価後も本空調機の運用を継続 しています. また, 空調機増設時にも, 本空調機を積極的に導入することで, 消費電力量の低減を図っています. 導入効果 FMACS-Ⅴ hybridの外気温度に対 する空調機効率の関係を図 5に示し ます. 図 5 より, ポンプサイクルで運 転することにより, 圧縮サイクルに比 べ, 飛躍的に効率が向上していること が分かります. つまり, ポンプサイク ルの運転時間が長いほど年間での消費 電力は低減し, 外気温度が年間を通じ て低い地域ほど省エネルギー効果が高 くなります. 一般電算機用空調機と FMACS-Ⅴ hybridの年間消費電力量 の比較を図 6に示します. 図 6 から も分かるとおり, 札幌では最大 54% の 消費電力低減, 東京では, 約 42% の低 減になり, 空調設備の消費電力低減に 大きく貢献できると考えています.
エネルギー効率化に向けた技術開発の現状 24 時間 365 日つながり続ける通信インフラのために ラインアップ拡充 FMACS-Ⅴ hybridは, 中 大規模局 現在, 間接外気冷房を併用する 舎およびデータセンタを対象としたL 型 ( 定格冷房能力 45 kw 相当 ) を展開しています. 今後, さらに導入対象の拡大を図るため, 私たちは小規模局舎およびサーバルームへの導入を目的としたL 型よりも冷房能力が小さいM 型 ( 冷房能力 20 kw 相当 ) の開発を進めています.FMACS-Ⅴ hybrid(m) をラインアップに加えることで, 幅広いお客さまのニーズにこたえられ, さらなる消費電力量の低減に貢献できると考えています. FTASCL-RS/C ラック型空調機 FTASCL-RS/Cは, ICT 装置搭載ラックと同様な室内ユニット形状の空調装置であり,ICT 装置架列内への設置が可能です. 従来の気流方式では, 壁側に設置された空調機 ( アンビエント空調機 ) から, 二重床を介して大風量を遠方のICT 装置まで送る必要がありました ( 図 7(a)). しかし, ラック型空調機は, 高発熱の ICT 装置近傍に設置することができ, 背面から吸って前面に吹き出す気流方式 ( 図 7(b)) になります. そのため, 送風距離を短くすることができ, 送風動力を削減することができます. さらに, ラック型空調機では, 直接ホットアイル (ICT 装置から高温排気が排出される通路 ) からICT 装置の高温排熱 (30 40 ) を集熱できる空調機のため, 高い冷却効率で運転できます. 従来のアンビエント空調機のみを利用した空調方式は, 特に高い発熱密度の領域では, コールドアイルにおいて開口パネルからの冷気供給風量が不足し, 高温排気がホットアイルからコー 22 NTT 技術ジャーナル 2014.1
発生し,ICT 装置の吸込み温度を所定の温度に維持できなくなるという問題がありました. そのような状況下で, アンビエント空調機は,ICT 装置の吸込み温度を維持するために, 室内全体の空調設定温度を下げる, 風量を過剰にする, といった対応をとらざるを得ない場合が多く, 非効率な運用となっていました. こうした問題に対して, ラック型空調機を高発熱 ICT 機器近傍に設置することで解決できます. 冷気供給をラック型空調機が補助することで, アンビエント空調機の設定温度, 供給風量を適正化することができ, 効率的な運用が可能となります. また, ラック型空調機は冷気をコールドアイルに直接吹き出すため, コールドアイルを区画するアイルキャッピングとの親和性が非常に高いという特徴があります. ラック型空調機とアイ ルキャッピングにより構成されたラック型空調システムは, 一般電算機用空調機と二重床を併用した従来空調方式に比べ, 年間消費電力を58% 削減できます. 今後の展開 本稿では, 情報通信用空調ソリューションとして高い信頼性と高い省エネルギー性能が評価され, 学会賞を受賞したFMACS-Ⅴ hybridとftascl- RS/Cを紹介しました. 今後もさらにラインアップを拡充し, 情報通信分野の消費電力量の低減に貢献していきたいと考えています. FMACS-Ⅴ hybrid および FTASCL- RS/Cは, 日立アプライアンス株式会社の協力により開発しています. 特集ルドアイルに回り込む 熱溜まり が月元秀樹木幡悠士今後も情報通信分野の消費電力量を低減 NTT 技術ジャーナル 2014.1 23 ( 後列左から ) 関口圭輔 / 吉井存 / ( 前列左から ) 中田達也 / 宇田川陽介 / するため, 今まで培った空調技術を活かして, 市場動向 ニーズに合致した高信頼で高効率な空調ソリューションの開発を行っていきたいと考えています. 問い合わせ先 NTT ファシリティーズ研究開発本部環境 エネルギー部門 TEL ₀₃-₅₉₀₇-₆₅₂₆ FAX ₀₃-₅₉₆₁-₆₆₄₀ E-mail udagaw₂₅ ntt-f.co.jp