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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表 学位規則第 8 条に基づき 論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する 氏名財津亘 ( ざいつわたる ) 学位の種類博士 ( 文学 ) 授与番号乙第 498 号 授与年月日 2011 年 3 月 4 日 学位授与の要件本学学位規程第 18 条第 2 項学位規則第 4 条第 2 項 学位論文の題名犯罪者プロファイリングにおけるベイズ確率論の展開 審査委員 ( 主査 ) 星野祐司 ( 立命館大学文学部教授 ) 足立浩平 ( 大阪大学人間科学研究科教授 ) 東山篤規 ( 立命館大学文学部教授 ) 佐藤達哉 ( 立命館大学文学部教授 ) < 論文の内容の要旨 > 本論文では, 犯罪捜査の支援を目的とする犯罪者プロファイリングの方法論が実証的に検討された とりわけ, 犯行特徴から犯人の性別や年齢層などを推定する犯人像推定と犯行の時間的予測に焦点を当てている 16 件の調査研究を通して, 犯行に関する推定や予測を行うために, ベイズ確率論を基礎としたベイジアンネットワーク (BNs: Bayesian Networks) を応用する方法 ( ベイズ方式 ) が提案された 犯罪者プロファイリングにおける BNs モデルの構築とその有効性について検討することが論文の目的であった 論文は 8 部から構成されている 序論である第 I 部では犯罪プロファイリングの概要が述べられ, 第 II 部では単変量の分析および多変量解析による犯人像推定の結果が報告される 第 III 部ではベイズ統計と BNs に関する概観, およびベイズ方式と従来の統計的手法との比較が述べられる 第 IV 部では連続強姦事件と連続放火事件に BNs を適用した調査研究が報告され, 第 V 部では連続強姦事件と連続放火事件に関する犯罪諸特徴と時間情報との関連が, 第 VI 部では連続強姦における犯行の時間情報を予測する BNs モデルの構築が, それぞれ検討されている 第 VII 部ではベイズ方式の実用性と今後の課題が述べられ, 第 VIII 部で総括が行われる 序章では, 低下していた犯罪検挙率が平成 20 年になりようやく 30% まで回復したが依然厳しい情勢であることから, 犯罪にかかわる政策と, 犯罪者プロファイリングを含む科学捜査の重要性が指摘される 続いて, 第 I 部第 1 章では, 捜査心理学の定義と取り扱う領域, 目撃者の記憶, 犯罪者プロファイリングなどが述べられ, 科学捜査に心理学が果た 1/5

す役割と意義が検討されている 第 2 章では, 犯罪情報分析の概念が紹介され, その枠組みを用いて犯罪者プロファイリング研究とその実践を位置づけている また, アメリカ, カナダ, イギリスにおける犯罪情報分析の進展と日本の現状が比較されている 第 3 章では, 犯罪プロファイリングで用いられる用語と, 犯罪プロファイリングの内容と歴史に関する説明が詳しくなされた 犯罪者プロファイリングでは, 収集された事件関連情報から事件間の関係が分析され, 地理的特徴や犯人像が推定され, 犯行が予測される 事件間の関係分析には,DNA 情報のような法科学的証拠や目撃証言, あるいは行動科学的視点からの犯行スタイルの分析が含まれる 犯人のプロフィール作成については, 犯行動機, 人格類型, 精神疾患などの潜在的情報を臨床的知見から推測する立場と, 職業, 犯罪歴, 婚姻状況, 年齢, 性別などのような顕在的情報を統計学的に推定する立場とに分けている 犯人像の推定とともに, 次の犯行を予測することは捜査上重要であるので, 犯行が行われる場所と時間の予測に関する先行研究が検討されている 第 4 章では, 論文の目的が述べられる 犯人像推定における方法論の実務的および統計学的な問題点を提示し, それらを解消する新たな統計的手法として,BNs を用いた犯人像推定と犯行時間予測について, 捜査上の実務も視野に入れて検討することが本論文の目的であった 第 II 部では, 著者が行った犯人像推定研究が述べられる 第 5 章では, 爆破予告事件が取り上げられている クロス集計を用いて, 爆破予告の連絡方法 ( 電子ツール, 電話など ) と犯人の年齢層の関係, および, 爆破対象物と犯行動機の関係などを見出している 第 6 章では, 毒物を用いた殺人事件の犯人像推定を多変量解析の手法を用いて行い, 犯行テーマ ( 道具的 表出的 ) により犯人像が異なることを見出している 次に, 電話を使った爆破予告事件を取り上げ,3 つの犯行テーマを見出し, それぞれの爆破予告犯像と犯行の特徴を明らかにしている さらに, 連続放火犯と連続強姦犯の分類を試み, どちらの場合も社会的自立性と犯罪深度の 2 次元が抽出された これらの 2 次元に基づいて, 放火犯と強姦犯を 4 つに類型化し, 各類型における犯人と犯行の特徴を明らかにしている 第 5 章と第 6 章で用いられた統計的手法では, 類似した犯罪間に一定の犯人像と犯行特徴の傾向が存在することを知ることができるのだが, 実際の事件を類型に当てはめる段階では直感的に判断するしかないなどの限界が存在する点が指摘される 第 III 部の第 7 章では, ベイズの定理に基づく統計学および確率論の概要と歴史的背景について述べ, 第 8 章ではベイズ確率論を応用した BNs に関する説明が述べられる BNs は事象間の依存関係を確率の連鎖として表すモデルであり, データ処理技術として近年注目されている BNs では因果関係をグラフィカルに表現できるため, 直感的にモデルが理解されやすい利点を持つ また, 構築されたモデルを用いて, 原因から結果を推定するだけでなく, 結果 ( 事件の痕跡など ) から原因 ( 犯行者の属性など ) を確率的に推定することが可能である 第 9 章と第 10 章では,BNs を用いた犯罪者プロファイリングに関する先行研究の紹介とベイズ方式の利点について述べられている BNs では, 犯罪データに潜んでいる確率的依存関係に基づいてモデルが構築されるので, 類似の犯罪を集める必要性 2/5

や, 変数を研究者があらかじめ選択する必要性がない また, 犯人像や犯行特徴を推定するために有効な変数を探索する計算手法が存在するという利点がある 第 11 章では, 従来の方法とベイズ方式が比較されている 従来方式ならば, これまでに分析された類似の犯行で犯人が窃盗歴を有する確率が 34% であったというように過去の集約が示されるのに対し, ベイズ方式ならば, 今回の事件で得られたデータから犯人が有職者である確率が 74% であろうというような推定が可能である 第 IV 部の第 12 章では屋内強姦事件を取り上げ,BNs を用いて, 犯人像の 1 つである就業状態を推定するモデルを構築している 9,859 件の犯行データから, 犯行特徴と関連する行動と犯行時に使用した移動手段, および被害者と強姦犯の特性などの 52 変数がモデルに投入された その結果, 移動手段と被害者特性が就業状態と関連することが明らかになった 作成したモデルを用いて, 新たな 50 件の強姦事件を未解決事件とみなし, モデルによる就業状態の推定を行ったところ, 犯人の年齢層情報がある場合 ( たとえば, 犯人の特徴を被害者が覚えている場合 ) には 88% の適中率を示した 第 13 章では, 連続放火事件に関する BNs モデルを構築して, 犯行者の窃盗歴および就業状態の推定を行っている 第 12 章と第 13 章では実務への応用可能性についても検討している 第 V 部の第 14 章と第 15 章では, それぞれ連続強姦事件と連続放火事件を取り上げ, 犯罪者特性と犯行の時間情報について検討し, 犯罪深度と犯行間隔に関連性があることが見出された また, 第 16 章では連続強姦事件において, 犯行間隔は犯罪者の犯罪歴, 配偶者の有無, 就業状態, 最終学歴などと関連することが示される 第 VI 部では,BNs を用いて, 連続強姦事件における犯行予測モデルの構築が試みられた 第 17 章では, 強姦犯特徴, 犯行特徴, 犯行時間情報, 犯行結果などに関する変数を用いてモデルが構築された 第 18 章では, 多変量解析を用いて分析された犯行深度を変数に含めて犯行予測モデルを構築している 構築されたモデルは, 犯行間隔が 42 日未満かそれ以上かを 80% の適中率で推定することが示された 第 VII 部の第 19 章では, 第 IV 部から第 VI 部で述べられた BNs モデルの構築研究を踏まえて, ベイズ方式による犯人像推定と犯行予測には捜査上の実用性があると述べられる また, 第 20 章ではベイズ方式による実践を進めていくうえでの予測率の向上, 適切なアルゴリズムの選択, 効果的な運用などの諸問題が検討されている 第 VIII 部は総合考察であり, 第 21 章では筆者が行った研究を概括し, 第 22 章では BNs モデルの有効性を指摘し, さらに BNs モデルに基づいた犯罪者プロファイリングを警察組織の中でどのように発展させるかについて検討されている 犯罪者プロファイリングは, 警察がまとめる犯罪記録に依存し,BNs モデルの有効性も実際の事件によって検証されるべきなので, 犯罪者プロファイリングを組織的に進めていく必要性がある 最後の第 23 章では, 現在の社会的状況から, 犯罪者プロファイリングが犯罪捜査に大きな役割を果たす可能性が議論されている 3/5

< 論文審査の結果の要旨 > 科学捜査における犯罪者プロファイリングでは, 犯行に関する多数のデータを利用して, 犯行者の特性や次回の犯行をいかに正確に推定するかが問題になる 本論文では, 変数間の関係を見出す統計的手法, 多変量解析による集約された変数を仮定して事件のテーマや犯人像を分類する手法, さらに BNs を用いた確率モデルを構築する手法について, それぞれ, 実際の事件にあてはめることにより実証的な検討が加えられている そのような検証過程では, 著者による分析の確からしさとモデル構築の精密さが明らかになるのであるが, 同時に, 分析結果やモデルによる推定が捜査実務に役立つのかということを常に考慮する真摯な態度も示されている 日本の科学警察研究所では, 犯罪者プロファイリングを 1999 年に着手し,2001 年から正式に分析の依頼を受け付けるようになったと論文で述べられている 日本の科学捜査の現状からも, 近年注目されている BNs による確率モデルを犯罪者プロファイリングへ適用し, ベイズ方式の有効性を実証的に示すことは, 学問的意義のみならず社会的意義も大きいと考えられる なお, 論文には正確さ, あるいは丁寧さに欠けていたと思われる部分もあった 犯罪捜査の実務や理論で用いられる用語, あるいは犯行パターンの分析結果については, もう少し説明があって欲しいと思われた また, 多変量解析では軸の回転などの分析上の考慮が不十分であると見受けられる部分もあった 論文では, 従来から用いられている統計的方法の問題点が挙げられているのであるが, たとえば計算方法によって結果が異なる点は, ベイズ統計に基づく方法であっても同じように探索アルゴリズムによって結果は異なると考えられるので, より丁寧な議論が望まれた 論文の中では, さまざまな事件が分析の対象として取り上げられ, また, 犯罪者プロファイリングの過程では多様な統計的手法が用いられるため, 論文の構成において観点の整理が十分とはいえないという印象がいくらか残った このように, いくつかの課題や問題点が指摘されたが, 犯罪者プロファイリングで用いられる統計的手法の変遷とベイズ方式の妥当性を示そうとした論文の目的は十分に達成されていると考えられ, 学位授与に値する論文であることが認められた < 試験または学力確認の結果の要旨 > 本論文の公開審査は 2011 年 1 月 18 日午後 6 時 30 分から 8 時まで, 清心館 506 教室で行われた 財津氏は, 本学大学院文学研究科心理学専修博士課程前期課程を修了し, 富山県警本部刑事部科学捜査研究所に奉職後, 研究成果を論文としてまとめ, 学術雑誌に積極的に発表している 本審査委員会は, 財津氏のこれまでの研究活動と公開審査での質疑応答を通して, 博士学位に相当する能力を有することを確認した なお, 経歴および研究内容から専門領域に関する財津氏の学力を確認できるため, 本学学位規程第 25 条第 1 項により専門領域に関する学力試験を免除した また, 研究成果を公表した学術雑誌には海外で発行されている英文誌も含まれ, 財津氏の英語運用能力の高さが認められることから, 4/5

本学学位規程第 25 条第 1 項により外国語の学力試験を免除した 上記の点を総合的に判断して, 本論文は, 本学学位規程第 18 条第 2 項に基づいて 博士 ( 文学立命館大学 ) の学位を授与することが適当であると判断する 5/5