11総法不審第120号

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が成立するが 本件処分日は平成 29 年 3 月 3 日であるから 平成 24 年 3 月 3 日以降 審査請求人に支給した保護費について返還を求めることは可能であ る 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件処分に係る生活保護

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処分済み

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がある 7 平成 28 年 3 月 28 日 処分庁は 同日付で審査請求人に対し 借入金収入 円の未申告により生じた保護費過払い分について 法第 78 条第 1 項の規定により費用徴収を行う決定を行い 同年 7 月 7 日 費用徴収決定通知書を審査請求人に手交した 8 審査請求人は 平成 28 年

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ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

平成 30 年 9 月 25 日 諮問 平成 30 年 11 月 13 日審議 ( 第 27 回第 4 部会 ) 平成 30 年 12 月 11 日審議 ( 第 28 回第 4 部会 ) 第 6 審査会の判断の理由審査会は 請求人の主張 審理員意見書等を具体的に検討した結果 以下のように判断する 1

処分済み

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返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

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処分済み

保険業務に係る情報提供料は 請求人の事業に基づいた収入であるとは いえない 第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 30

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第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

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処分済み

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1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

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7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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Microsoft Word 答申件数表

<4D F736F F D2095BD90AC E D738CC2816A939A905C91E D862E646F63>

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

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遺者であったが 事情があって遺贈の放棄をした 民法 986 条の規定によれば 受遺者は 遺言者の死亡後 いつでも 遺贈の放棄をすることができ 遺贈の放棄は 遺言者死亡のときに遡ってその効力を生じるとされているから 前所有者から請求人に対する本件各不動産の所有権移転の事実は無かったものであり 請求人は

ウ 特定個人 a に訂正してほしいとは, 私は書いてない これも日本年金機構の単純ミスなのか? それとも他に理由があるのか? 事実に基づいて, 説明を求める 私の公共職業安定所における氏名は, カタカナの 特定個人 b のスペースなしで管理されている 私の資格画面も氏名欄はカタカナである 国民年金保

債務のうち所定の範囲内のものを当該事業主に代わって政府が弁済する旨規定する (2) 賃確法 7 条における上記 政令で定める事由 ( 立替払の事由 ) として 賃金の支払の確保等に関する法律施行令 ( 昭和 51 年政令第 169 号 以下 賃確令 という )2 条 1 項 4 号及び賃金の支払の確

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない ( 被爆者援護法 11 条 1 項 ) ⑶ 都道府県知事は ⑵ 記載の厚生労働大臣の認定を受け かつ 当該認定に係る負傷又は疾病の状態にあるとの要件に該当することについて都道府県知事の認定を受けた者に対し 医療特別手当を支

もあり 安全で問題のない生活を送るためには家庭の中で請求人一人の力だけでは難しく 周りの大人の支援を必要としている状況である 現在も上記のような状況から 仕事ができずにいる また 本件処分は本件診断書に基づいて行われているが その後本件児童の状態が変わっているので 平成 30 年 3 月 26 日付

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達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

平成14年7月3日

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厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 国 ) 第 号 第 1 結論昭和 50 年 4 月 30 日から昭和 51 年 4 月 1 日までの請求期間 昭和 51 年 4 月 1 日から昭和 53 年 4 月 1 日までの請求期間 昭

件数表(神奈川)

(組合)事務連絡案(国内在住者扶養認定QA)

厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 厚 ) 第 号 請求者のA 社 B 支店における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 44 年 4 月 21 日から同年 5 月 1 日に訂正し 昭和 44 年 4 月の標準報酬月額を2

(協会)300829事務連絡(国内在住者扶養認定QA)

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茨城厚生年金事案 2029 第 1 委員会の結論総務大臣から平成 24 年 10 月 10 日付けで行われた申立人の年金記録に係る苦情のあっせんについては 同日後に新たな事実が判明したことから 当該あっせんによらず 申立人のA 社における資格喪失日に係る記録を昭和 41 年 9 月 5 日に訂正し

19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

く, 未支給年金受給権者の個人情報の開示を求めているとして, 法 12 条 自己を本人とする開示を請求することができる に当たらないため, 開示することはできないことを伝え, 取り下げの意思を確認した しかしながら, 異議申立人は, 不開示である旨の正式な回答がほしいとして, 開示請求を続けたもので

して 当審査会に対し諮問をした 以上の事案の経緯は 諮問書 審査請求書及び懲戒処分書から認められる 2 関係する法令等の定め (1) 司法書士に対する懲戒及びその手続についてア法 47 条は 司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

-2 -



答申件数表(1月15日答申分)

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

年管管発第 1026 第 2 号平成 24 年 10 月 26 日 地方厚生 ( 支 ) 局年金調整 ( 年金管理 ) 課長殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 通知 ) に基づく保護を受けている外国人の国民年金保険料免除の申請の

異議申立てしていますが, 協会 ( 原文ママ ) として黙認しています 本件に関しても, 諮問庁は国のトップなのだから, もっともっと労働問題に積極的に取り組み, 労基法厳守で, 場合により, 行政処分すべきである 警察なら, スピード違反すれば即行政処分されますが, 労基法では, 基本強い行政処分

5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

松本市補助金交付規則 昭和 37 年 7 月 27 日規則第 16 号改正昭和 45 年 9 月 12 日規則第 31 号昭和 53 年 12 月 8 日規則第 25 号昭和 63 年 4 月 1 日規則第 18 号 ( 目的 ) 第 1 条この規則は 法令又は条例等に特別の定めのあるもののほか 補

(3) 父又は母が規則で定める程度の障害の状態にある児童 (4) 父又は母の生死が明らかでない児童 (5) その他前各号に準ずる状態にある児童で規則で定めるもの 3 この条例において 養育者 とは 次に掲げる児童と同居して これを監護し かつ その生計を維持する者であって その児童の父母及び児童福祉

- 2 - り 又は知り得る状態であったと認められる場合には この限りでない 2~7 略 (保険料を控除した事実に係る判断)第一条の二前条第一項に規定する機関は 厚生年金保険制度及び国民年金制度により生活の安定が図られる国民の立場に立って同項に規定する事実がある者が不利益を被ることがないようにする観

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求期間 1について 当該期間のうち請求者のA 社における平成 21 年 9 月 1 日から平成 22 年 12 月 1 日までの期間の標準報酬月額を訂正することが

査請求人 ) が 平成 5 年分所得税確定申告書 ( 以下 本件請求保有個人情報 1 という ) の開示を求めるものである 処分庁は, 本件開示請求に対し, 本件請求保有個人情報 1は文書保存期間 (7 年 ) が満了し, 既に廃棄しているとして, 平成 27 年 12 月 2 2 日付け特定記号第

(2)-2 退所時 ( 契約入所の場合 ) 保護者と児童福祉施設等の契約に基づき入所している子どもについては 児童福祉法に基づく障害児施設給付費の支給を行う都道府県が把握していることから 当該都道府県が施設の所在する市町村及び保護者の住所地の市町村へ退所した旨を通知することにより 二重支給を防止し

1 審査請求人の主張 審査請求人は おおむね次のとおり主張し 本件処分が違法不当であ るとして 本件処分の取消しを求めている ⑴ 審査請求人が平成 28 年〇〇月に申し立てた婚姻費用の調停で 参加人から仕送りすべき額は毎月〇〇万円と決まったが 同月 銀行の通帳及びキャッシュカードの使用停止手続がなさ

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社 ( 現在は B 社に合併 ) における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 55 年 10 月 21 日から同年 11 月 21 日に訂正し

<4D F736F F D A6D92E894C581458E7B8D7393FA A956C8FBC8E738FE18A518ED293FC89408E9E E A B E E968BC68EC08E7B97768D6A2E646F63>

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く ) は, 保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村の長は, 第 63 条の保護の実施機関の定める額の全部又は一部をその者から徴収することができる, 2 項では, 前項の規定による徴収金は, この法律に別段の定めがある場合を除き, 国

件数表(神奈川)

04 件数表280205(東京)

11総法不審第120号

の両方を提出する必要がある 問 3 還付額は 領収証に記載されている金額を還付するのか それともレセプト情報から自己負担分を計算するのか 領収証により保険診療に係る一部負担金の額を確認して還付する 問 4 領収証の紛失 または医療機関等の全壊等により 対象の被保険者が負担した一部負担金の額の確認が取

標準例6

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論 請求者の A 社における厚生年金保険被保険者資格の取得年月日を昭和 63 年 2 月 26 日から同 年 2 月 16 日に訂正することが必要である 生年月日 :

「配偶者からの暴力を受けた被扶養者の取扱い等について」の一部改正について

厚生局受付番号 : 中国四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 中国四国 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 事業所における平成 27 年 7 月 10 日の標準賞与額を6 万 5,000 円に訂正することが必要である 平成 27 年 7 月 10 日の

諮問庁 : 株式会社日本政策金融公庫諮問日 : 平成 28 年 2 月 8 日 ( 平成 28 年 ( 独個 ) 諮問第 3 号 ) 答申日 : 平成 28 年 4 月 27 日 ( 平成 28 年度 ( 独個 ) 答申第 1 号 ) 事件名 : 本人に関する融資審査の検討資料の不訂正決定に関する件

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

Transcription:

答 申 審査請求人 ( 以下 請求人 という ) が提起した生活保護法 ( 以 下 法 という )63 条の規定に基づく返還金額決定処分に係る審 査請求について 審査庁から諮問があったので 次のとおり答申する 第 1 審査会の結論 本件審査請求は 棄却すべきである 第 2 審査請求の趣旨本件審査請求の趣旨は 福祉事務所長 ( 以下 処分庁 という ) が請求人に対し 平成 2 9 年 1 月 2 3 日付けで行った法 63 条の規定に基づく返還金額決定処分 ( 以下 本件処分 という ) について その取消しを求めるというものである 第 3 請求人の主張の要旨請求人は おおむね以下の理由から 本件処分は違法又は不当であると主張しているものと解される 請求人は 元妻との離婚に際して ( 請求人に支給される ) 国民年金基金を元妻に譲渡しており 年金入金の預金口座の通帳及びキャッシュカードを差し入れていることから 請求人は国民年金基金を受給しておらず 法 6 3 条にいう資力を有していたとは言えない また 病弱の長女を世話している元妻の生活困窮状態からみて 仮に 元妻に返還請求をしても 支払いを期待できない 国民年金基金の用途は 元妻に対する実質的な財産分与であって 浪費されているわけでなく 間接的に 元妻の監護下にいる 1

請求人の長女 次女に対する養育費支払いを免れていることから 請求人の自立更生に資しているといえる 処分庁は かかる状況について 十分な調査をしていない 第 4 審理員意見書の結論 本件審査請求は理由がないから 行政不服審査法 45 条 2 項に より 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 2 9 年 9 月 1 日 諮問 平成 2 9 年 1 0 月 2 0 日審議 ( 第 1 4 回第 3 部会 ) 平成 2 9 年 1 1 月 2 8 日審議 ( 第 1 5 回第 3 部会 ) 第 6 審査会の判断の理由審査会は 請求人の主張 審理員意見書等を具体的に検討した結果 以下のように判断する 1 法令等の定め ⑴ 法 4 条 1 項は 保護は生活に困窮する者が その利用し得る資産 能力その他あらゆるものを その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるとし 法 8 条 1 項は 保護は厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし そのうち その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものと規定している そして 生活保護法による保護の実施要領について ( 昭和 3 6 年 4 月 1 日付厚生省発社第 1 2 3 号厚生事務次官通知 2

以下 次官通知 という なお この次官通知は 地方自治法 2 4 5 条の 9 第 1 項及び 3 項の規定による処理基準である ) によれば 保護における収入認定に当たっては 保護の実施機関は 公の給付については その実際の受給額を収入として認定することとされている ( 第 8 3 ⑵ ア ( ア )) ⑵ 法 61 条は 被保護者は 収入 支出その他生計の状況について変動があつたとき 又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは すみやかに 保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない と規定している ⑶ 法 6 3 条は 被保護者が 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず 保護を受けたときは 速やかに 保護を受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関が定める額を返還しなければならないと規定している また 生活保護問答集について ( 平成 2 1 年 3 月 3 1 日付厚生労働省社会 援護局保護課長事務連絡 ) によれば 法 6 3 条は 本来 資力はあるが これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある場合にとりあえず保護を行い 資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図ろうとするものであり 原則として 当該資力を限度として支給した保護金品の全額を返還額とすべきであるとされている ( 問 1 3-5 答 ⑴ ) そして 法 6 3 条の規定は 被保護者に対して最低限度の生活を保障するという保護の補足性の原則に反して保護費が支給された場合に 支給した保護費の返還を求め もって生活保護制度の趣旨を全うしようとするものであるところ ( 東京高等裁判所平成 2 5 年 4 月 2 2 日判決 裁判所ウェブサイト掲載判例 ) 同条の 急迫の場合等 には 調査不十分のため資力があるにもかかわらず 資力なしと誤認して保護を決定した場合 3

保護の実施機関が保護の程度の決定を誤って 不当に高額の決定をした場合等が含まれると解される ( 改訂増補生活保護法の解釈と運用 ( 復刻版 ) 小山進次郎著 6 4 9 頁 ) ⑷ ところで 法 63 条が 保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額の返還 をしなければならないとし 福祉事務所長による返還金額の算定 ( 裁量 ) を認めているところ 返還金額の決定に際しては 次官通知等に基づき 収入認定の対象としないもの ( 控除 ) 及び自立更生の観点から返還の対象としないもの ( 免除 ) 等が定められている すなわち 次官通知第 8 3 ⑶ のアないしチ ( 社会事業団体等から被保護者に臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって 社会通念上収入として認定することが適当でないもの及び自立更生を目的として恵与される金銭のうち 当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額など ) 及び 生活保護法による保護の実施要領について ( 昭和 3 6 年 4 月 1 日付社発第 2 4 6 号厚生省社会局長通知 以下 局長通知 という なお この局長通知は 地方自治法 2 4 5 条の 9 第 1 項及び 3 項の規定による処理基準である ) 第 8 2 ⑴ ないし ⑸( 貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のためにあてられるもので 事前に承認のある 就学資金 医療費 結婚資金 住宅資金など及び自立更生のための恵与金 災害等による補償金 保険金 見舞金など ) で定めるものについては 収入認定の対象としないとされている そして 生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて ( 平成 2 4 年 7 月 2 3 日付社援保発 0 7 2 3 第 1 号厚生労働省社会 援護局保護課長通知 ) によれば 法 63 条に基づく費用返還については 原則 全額を返還対象とすること ただし 全額を対象とすることによって当該被保護世帯の 4

自立が著しく阻害されると認められる場合は 次に定める範囲の額を返還額から控除しても差し支えない とし 当該世帯の自立更生のためのやむを得ない用途に当てられたものであって 地域住民との均衡を考慮し 社会通念上容認される程度として保護の実施機関が認めた額 とし ただし 贈与等により当該世帯以外のために充てられた額 等は除くとしている ( 1 ⑴ 4 ( イ )) ⑸ 国民年金法 2 4 条は ( 同法に基づく ) 給付を受ける権利は 譲り渡し 担保に供し 又は差し押さえることができない と規定している 2 本件処分について ⑴ 本件においては 以下の事実がそれぞれ認められる ア平成 2 6 年度課税調査により 請求人に対して 届出のなかった年金の受給が判明したこと イ請求人に年金受給の事実を確認したが 請求人は これを認めなかったこと ウそのため 年金に係る法 2 9 条に基づく調査を行ったところ 請求人については 平成 2 2 年 1 2 月から 国民年金基金により年金が各年 1 回 支給されていること エ再度 請求人に年金受給の事実を確認したところ 請求人は 当該年金は元妻との離婚の条件として元妻に全額譲渡していることから 請求人の収入ではないなどとして 当該各年金に係る収入申告書の提出を拒んでいること オ請求人に係る保護開始から平成 2 7 年 1 2 月までの年金受給額は 本件各年金回答により 合計で 2 9 0, 0 0 0 円 ( 以下 本件各年金 という ) になること カ東京都福祉保健局生活福祉部保護課及び弁護士の見解等に基づき 本件各年金は いずれも請求人の収入であると認め 5

られること キ処分庁内部でケース診断会議を開催し 保護開始後に請求人が受給している本件各年金については 法 6 3 条に基づき返還決定を行うべきであるとしていること ク処分庁は 本件各年金については その全てが元妻に対する贈与であるとされていることから 保護費の返還請求額の算定に当たり 自立更生免除を認めることはできないとしていること ⑵ 以上のことから 処分庁は ケース診断会議における判断並びに本件各年金回答等に基づき 保護開始後から平成 2 7 年 1 2 月までに請求人が受給した本件各年金 ( 計 2 9 0, 0 0 0 円 ) については いずれも請求人の各当該月の収入であると認定した上で それぞれの金額がいずれも当該月に請求人に支給された保護費の額を超えていなかったこと そして 控除額及び返還免除額については それぞれ 0 円であるとし 本件各年金の額 ( 2 9 0, 0 0 0 円 ) について 法 6 3 条の規定に基づき返還を求めるべきとの結論を得たことから 本件処分を決定したものと認められる ⑶ そして 請求人に係る各当該月の保護費の額の計は 404, 798 円 ( 平成 2 5 年 1 2 月 : 9 8, 3 5 0 円 平成 2 6 年 1 2 月 :154, 2 4 8 円及び平成 2 7 年 1 2 月 : 1 5 2, 2 0 0 円 ) であり いずれの月においても 年金受給額が支給済保護費を超えていなかったことが認められる ⑷ そうすると 処分庁が 保護開始後から平成 27 年 12 月までに請求人が受給した本件各年金について いずれも請求人の収入である旨認定した上で 返還金額の決定において 請求人については 次官通知 局長通知等に基づく免除及び控除に当たるものはないと判断し 本件各年金 ( 計 2 9 0, 0 0 0 円 ) 6

に相当する支給済保護費について 返還を求めるとした本件処分は 上記 1 の法令等の規定に基づき 適正になされたものと認められる 3 請求人は 上記 ( 第 3 ) のとおり 本件処分の違法性又は不当性を主張しているものと解されるが 仮に 請求人の主張するような事情が存したとしても そのことをもって 本件処分が違法 不当な処分となるとは認められないことから 請求人の主張を本件処分の取消理由とすることはできない 4 ところで 審理員の調査によれば 処分庁は 平成 2 6 年 1 2 月に請求人に支給された保護費について 正しくは 1 5 4, 2 4 8 円とすべきところ これを誤って 1 6 9, 7 3 6 円として算定したことから 本件処分に係る起案及び処分通知書において 支給済保護費の額を 4 0 4, 7 9 8 円とすべきところ 4 2 0, 2 8 6 円と表示していることが認められる しかしながら 当該月の年金受給額 1 0 7, 4 0 0 円はいずれの額も超えていないことが認められるから そのことをもって 本件処分を取り消すほどの瑕疵があるものとまでは認められない 5 請求人の主張以外の違法性又は不当性についての検討その他 本件処分に違法又は不当な点は認められない 以上のとおり 審査会として 審理員が行った審理手続の適正性や法令解釈の妥当性を審議した結果 審理手続 法令解釈のいずれも適正に行われているものと判断する よって 第 1 審査会の結論 のとおり判断する ( 答申を行った委員の氏名 ) 外山秀行 渡井理佳子 羽根一成 7