あらゆる音源を再生可能! 高音質の要求に応える ハイレゾ対応オーディオ SoC
はじめに 音楽を楽しむシーンは 時代を経て技術の進化とともに多様化が進んでいる 最近の約 20 年を振り返ってみると 音楽メディアは フラッシュメモリの開発により CD に代わって USB メモリや SD カードなどのメモリ媒体への保存が可能になり その大容量化が進んでいる また CPU の高集積化 携帯電話の高機能化が進み さらにインターネットの高速化により大容量のデータ転送ができる環境が整ったことで スマートフォンから Bluetooth R により簡単に音楽を楽しめる機会が提供されている 技術の進化とともに見られた音楽メディアの変化は 楽曲のフォーマットや 再生するオーディオ機器の種類にも大きな影響を与えた 楽曲フォーマットで言えば 従来は CD の Linear PCM からデータ圧縮が行われた MP3 や WMA AAC フォーマットが主に扱われていたが 現在の大容量化 高速データ転送の通信環境においては より高密度のオーディオフォーマットである FLAC や DSD などが採用されるようになった 一方 オーディオ機器においては CD がメインであったラジカセやシステムコンポから より軽く 小型化したシステムで音楽を楽しめるようになり さらに Bluetooth R 対応スピーカーに至っては ほぼスピーカー単体の大きさまで小型軽量化を実現した このような音楽を楽しむシーンの変化により オーディオ機器を開発するセットメーカーやデバイスメーカーに対して 従来の CD 対応機器のみならず Bluetooth R 対応スピーカーなど幅広いラインナップの機器開発が要求されることになり 品質維持はもちろんであるが 開発負荷を抑えつつ コスト要求を満たすデバイスの開発が市場から待たれることになった さらに 半導体技術が進化したことで 音源は CD クオリティに固執する必要がなくなった CD の音質を超えるオーディオフォーマット ( ハイレゾ ) の普及を受けて 今後ますます高音質の要求に応えるハイレゾ音源が増加すると考えられる 今回 ロームはこのような多様化 複雑化するオーディオ機器への要求 高音質への要求に対して ハイレゾ対応オーディオ SoC を中心としたオーディオソリューションを開発したので それを紹介する ハイレゾ対応オーディオ SoC 開発の背景セットメーカーにとっては オーディオ機器の製品コンセプト設計や音楽を楽しめる音づくりにこそ 市場に提案すべき重要な使命の一つである しかし近年の音楽を楽しむ環境の多様化 複雑化により セットメーカーには高音質を達成するにあたって多くの課題が発生している まず一つ目は 前述したようにさまざまな音楽メディア 楽曲フォーマットへの対応性である エンドユーザーの音楽を楽しむ環境が多様化しており それに応じてセットメーカーは音楽メディアや楽曲フォーマットの対応を意識して開発する必要がある 次に CD や USB メモリ SD カードといったそれぞれの音楽メディアの再生安定性の課題がある 傷ついた CD や市場に大量に出回る USB メモリは 世界市場で見ると規格を満たさないものも存在する オーディオ機器の信頼性にも関わるこの再生安定性の問題は重要な要素となる その次に挙げられるのが オーディオ機器が複雑化することにより ハードウェア開発工数以上に ソフトウェアの開発工数が増大しているという課題がある 複雑なハードウェアをコントロールするソフトウェア開発は ハードウェアを熟知した上で設計される必要があるため セットメーカーにとっては重い開発負荷となっている 1
最後に オーディオ機器の小型化への対応が挙げられる オーディオシステムの従来の最小基本デバイス構成は CD-DSP LSI USB 内蔵システムマイコン LSI SDRAM であり 少なくとも 3 つの LSI を実装する必要があった しかし それでは多様化するさまざまなオーディオ機器への実装に対し 実装面積の問題 デバイス間の配線の輻射ノイズの発生など セットメーカーには多くの課題があった このような背景のもと ロームは次のような特長を持つハイレゾ対応オーディオ SoC を中心とした オーディオソリューションを開発した ハイレゾ対応オーディオ SoC を中心としたオーディオソリューションの特長 ロームが開発したハイレゾ対応オーディオ SoC BM94803AEKU から成るオーディオソリューションには 4 つ の特長がある (1) ユーザーが求める あらゆる音源に対応可能従来のメディアである CD USB メモリ SD カードから 新しいメディアである Android スマートフォン iphone Bluetooth PC まで対応している また楽曲フォーマットも従来の Linear PCM や MP3 WMA AAC はもちろん ハイレゾオーディオである FLAC や DSD に対応し 幅広い形式を網羅している これにより セットメーカーは 音楽メディア 楽曲フォーマットを意識せずにセットを開発することが可能になり また エンドユーザーに対しては 世代を超えたさまざまなオーディオシーンで あらゆる音源の持つ情報を忠実に再現することを可能にしている ( 図 1) 図 1 ハイレゾ対応オーディオ SoC 対応メディアリスト (2) ユーザーが大切にしてきたメディアをなめらかに再生可能ロームは CD 専用 IC の開発で 20 年以上培ったノウハウを持ち ハイレゾ対応オーディオ SoC にも適用している これにより 長年の使用で表面に傷がついてしまった CD でも 音飛び無くなめらかな再生を可能にしている 一方 USB メモリ SD カードについても USB ホストオーディオデコーダ LSI 開発のノウハウをハイレゾ対応オーディオ SoC に適用した これにより 新興国などで数多く存在している USB 規格を満たしていない接続認識が難しい USB メモリも読み込みを可能にしている ロームのハイレゾ対応オーディオ SoC ソリューションは このように圧倒的な再生安定性を可能にし オーディオ機器に寄せられるセットメーカー エンドユーザーの期待に応えている また セットメーカーに対しては 再生安定性の品質を意識すること 2
無く 音づくりに集中して製品開発が可能となり それにより エンドユーザーにはセットメーカーから自分にあっ た製品コンセプト 魅力ある音色を奏でる製品を手にとることができるようになる (3) あらゆるオーディオ機器開発を強力にサポートするソフトウェアも完備ロームでは ハードウェアシステムだけでなく ハイレゾ対応オーディオ SoC の性能を最大限に引き出す専用ソフトウェアはもちろん アプリケーションソフトウェアも提供している たとえば PC に蓄積されたオーディオファイルに対し PC に USB 接続することで音楽再生を可能にする USB-DAC では クラスドライバだけでなく 対向機器である PC 用の USB ドライバファイル 及び PC 上で動作する再生アプリケーションソフトウェアまで用意し セットメーカーのソフトウェア開発負荷軽減に大きく貢献している ( 図 2) 図 2 アプリケーションソフトウェアのサポート (4)CD-DSP SDRAM 搭載による小型化を実現ロームは CD システムの統合 及びグループ会社であるラピスセミコンダクタの SDRAM をスタック構造により内蔵することで オーディオ機器の小型化 省資源化に貢献 さらに SDRAM からの配線を短いチップ間ワイヤーで接続することで輻射ノイズを抑えることに成功し よりセットメーカーの使い勝手を考慮した設計を行った ( 図 3) 図 3 ロームの小型化への貢献 3
ロームのオーディオリファレンスデザイン提案ロームはこのハイレゾ対応オーディオ SoC 及びその専用ソフトであるソフトウェア開発キット( 以下 SDK) を中心として その他のロームで保有するオーディオデバイスと周辺アプリケーションを実装したオーディオリファレンスデザインも開発 提供している ( 図 4) リファレンスデザインのハードウェアは ハイレゾ対応オーディオ SoC をはじめ オーディオ出力段であるオーディオ DAC D 級パワーアンプ ヘッドフォン出力 CD メカニズムとそれを動作させるモータードライバ 各種電源 IC を用意し これらをローム製品で対応することでセットメーカーからの問い合わせをワンストップで対応できるよう構成した また ソフトウェアは上記 SDK だけでなく SDK の使用例を示すため ユーザーインターフェース制御ソフトウェアを含めたアプリケーションソフトウェアを開発し ソースコードで提供している これにより セットメーカーは オーディオ SoC の複雑なシステム構成を開発すること無く ユーザーインターフェースを設計することだけでオーディオ機器を開発できるようにしている リファレンスデザインで提供されるドキュメント類としては リファレンスデザイン取扱マニュアル アプリケーションソフトウェア設計書 オーディオ SoC SDK API 仕様書を用意している そのため リファレンスデザインで用意されたハードウェアとソフトウェアを使用すれば セットメーカーは実機確認をすぐに行うことができ オーディオ機器の迅速な開発が可能となる 図 4 ロームのオーディオリファレンスデザイン 今後の展開ロームでは オーディオ機器市場において さらなる 良い音 を感じることができる高音質オーディオデバイスの開発を進めている 拡大するハイレゾオーディオに向けては 現在の市場で高品位とされるサンプリング周波数 192kHz ビット幅 24bit のハイレゾ音源から より高品位のサンプリング周波数 384kHz ビット幅 32bit のハイレゾ音源に 4
対応し 入手可能な最高品位のハイレゾ音源再生を可能にする また ハイレゾオーディオに対する取り組みだけではなく 既存の圧縮音源の音質についても着目 従来の CD 音源や圧縮音源では 可聴帯域外の 20kHz 以上の高域成分が不自然にカットされているが ロームはこの失われた高域成分を自然な音質で復元させるアップスケーリング機能について現在開発を進めている アップスケーリング機能を実現することで CD 音源 圧縮音源でもハイレゾ音質で音楽を楽しむことが可能となる ロームが注力しているオーディオ SoC は 近年普及が進むハイレゾ音源のポテンシャルを存分に引き出す高音質にこだわった LSI である これまで培ってきたノウハウを活かして高音質を追求し セットメーカーの特長ある音づくりに貢献していきたい (2017 年 10 月 19 日電波新聞第 2 部電波ハイテクノロジー掲載 ) 5
本資料に記載されている内容はロームの製品 ( 以下 ローム製品 といいます ) のご紹介を目的としています ローム製品のご使用にあたりましては 別途最新の仕様書およびデータシートを必ずご確認ください 本資料に記載されております情報は 何ら保証なく提供されるものです 万が一 当該情報の誤りまたは使用に起因する損害がお客様または第三者に生じた場合においても ロームは一切の責任を負うものではありません 本資料に記載されておりますローム製品に関する代表的動作および応用回路例は 一例を示したものであり これらに関する第三者の知的財産権およびその他の権利について権利侵害がないことを保証するものではありません 上記技術情報の使用に起因して紛争が発生した場合 ロームはその責任を負うものではありません ロームは ロームまたは他社の知的財産権その他のあらゆる権利について明示的にも黙示的にも その実施または利用を許諾するものではありません 本資料に記載されております製品および技術のうち 外国為替及び外国貿易法 その他の輸出規制に該当する製品または技術を輸出する場合 または国外に提供する場合には 同法に基づく許可が必要です 本資料の記載内容は 2017 年 10 月現在のものであり 予告なく変更することがあります