スウェーデンスウェーデン 1. 2004 年非鉄金属一般概況 1992 年に制定されたスウェーデンの鉱業及び鉱物法により 自由化された同国の鉱業は 1990 年代後半から探鉱活動が盛んになった 特に酸化鉄銅金型 (IOCG) 鉱床の探査として Anglo American 社 BHP Billton 社 Rio Tinto 社 Phelps Dodge 社といった大手鉱山会 は撤退傾向となっているものの 中小鉱山 探鉱会社の活動は引き続き活発である Boliden 社は 同社の上流特化という戦略の下 2003 年 1 月に Outokumpu 社と戦略的資産取引を行い鉱山 製錬所資産を大幅に増加させていたが この資産増加による生産規模増加と市況により業績を大幅に伸ばしている 2. 2004 年鉱業政策の主な動き ヨ社や中小鉱山 探鉱会社の活動が活発化した結 1992 年に制定されたスウェーデンの鉱業及 世界の鉱業の趨勢 2005 73 果 Anglo American 社により Kiruma 鉱山近傍 び鉱物法により 1993 年に自由化された同国の の Rakkurijarvi で酸化鉄銅金鉱床が発見され 鉱業は 通常の法人所得税 (28%) 以外の追加 た その後 Anglo American 社はオプション の課税やロイヤルティがなく 外国投資家にと 契約を締結して探鉱活動から撤退 2004 年 6 って魅力的な投資環境にある 経済的に開発可 月には Rio Tinto 社が South Atlantic 能な鉱床と環境面での制約がなければ 誰でも Ventures 社 ( 加 現 Lundin Mining 社 ) に 探鉱及び採掘の権利を得られる 2004 年には Zinkgruvan 鉱山を売却する等 大手鉱山会社 特段の変更はない 3. 主要鉱産物の生産 輸入 消費 輸出動向 主要鉱産物の生産および消費動向 単位 鉱山生産量 地金生産量 地金消費量 2003 年 2004 年 2003 年 2004 年 2003 年 2004 年 銅 千 t 83.1 82.3 214.2 235.6 185.4 188.7 鉛 千 t 50.4 54.3 76.2 80.0 12.4 22.4 亜鉛 千 t 185.7 196.9 - - 22.0 29.4 金 t 4.3 5.2 - - - - 銀 t 306.8 329.9 - - - - 資料 :World Metal Statistics Year Book 2005 4. 鉱山会社活動状況 鉛年産 8 万 t を有する New Boliden 社となった (1) 主要生産会社の動向 逆に Outokumpu 社へ銅加工品 技術部門を売却 1 Boliden 社 した この取引で Outokumpu 社は New Boliden Boliden 社 ( スウェーデン ) は 同社の上流 社の 49% のシェアを有する株主となったが そ 特化という戦略の下 2003 年 1 月に Outokumpu の後 Outokumpu 社は同社の株式を売却 2005 社 ( フィンランド ) と戦略的資産取引を行い 年 3 月まででシェアを 16.1% まで下げている アイルランドの Tara 亜鉛鉱山 フィンランド の Harjavalta/Pori 銅製錬所 Kokkola 亜鉛製 Boliden 社がスウェーデンで経営する鉱山の 錬所 ノルウェーの Odda 亜鉛製錬所を取得 2004 年の地区別生産量は以下のとおりである 製錬能力で亜鉛年産 41 万 t 銅年産 40 万 t
ヨスウェーデン74 世界の鉱業の趨勢 2005 鉱山生産量 ( ) 内は対前年比 Boliden 地区銅 17,287t(-27%) 亜鉛 80,481t(+5%) 鉛 3,720t(+40%) 金 3,026kg(+13%) 銀 77,091kg(+8%) Garpenberg 地区銅 550t(+4%) 亜鉛 54,914t(+24%) 鉛 19,148t(+20%) 金 217kg(+0.5%) 銀 105,533kg(-14%) Aitik 地区 銅 64,498t(+10%) 金 1,985kg(+44%) 銀 44,946kg(-19%) 2004 年の同社の総売上高は 17,928 百万クローネ ( 前年比 1.9 倍 ) 操業利益は 1,666 百万クローネ ( 前年は 19 百万クローネの損失 ) 税引前利益は 1,200 百万クローネ ( 前年は 251 百万クローネの損失 ) 純利益は 1,055 百万クローネ ( 前年比 81 倍 ) と大幅に業績を伸ばした 主要因は Outokumpu 社からの戦略的資産買取による生産増と 金属価格が銅で 60% 鉛で 74% 亜鉛で 26% 上昇したことによる うち鉱山部門の売上高は 4,568 百万クローネ (37% 増 ) 操業利益は 1,395 百万クローネ (627% 増 ) であった 金属生産量 ( 精鉱中金属量 ) は銅 86,692t(2% 減 ) 亜鉛 374,950t (10% 増 ) 鉛 54,458t(13% 増 ) 金 5,691kg (22% 増 ) 銀 238,569kg(8% 減 ) であった 現地通貨の対ドル為替レートが弱くなったものの 金属価格の上昇と生産増 TC/RC の低下が増収増益に寄与した 亜鉛及び鉛の生産増は Tara 鉱山の高品位による生産増 Boliden 地区や Garpenberg 地区の生産増が寄与 銅の生産減は Boliden 地区の Storliden 鉱山の生産減によるものである 製錬部門の売上高は 16,600 百万クローネ (26% 増 ) 操業利益は 751 百万クローネ (24% 増 ) であった 金属生産量は銅 359,987t(6% 増 ) 亜鉛 425,426t(4% 増 ) 鉛 27,962t (16% 増 ) 金 19,899kg(12% 増 ) 銀 474,727kg (3% 減 ) であった 亜鉛の生産増は Odda 製錬所がプラント更新の影響を受けたものの Boliden Kokkola 製錬所では記録的生産をし Zinkgruvan 亜鉛鉱山の埋蔵量及び資源量 たことによる 銅でも Harjavalta Bergsoe 製錬所が好調で Ronnskar 製錬所も銅カソードの記録的生産となった 金属価格の上昇と生産増で製精錬費は低下したものの増収増益となった 同社の銅製錬部門の課題は 自山鉱比率が 25% と低いことであり 2004 年初めに Neves Corvo 鉱山 ( ポルトガル ) と精鉱 20 万 t の長期供給契約を締結したが さらに 50 万 t を必要とする Norilsk 社 ( 露 ) 等旧ソ連諸国の企業と銅精鉱確保のため協議中と言われている 2 Lundin Mining 社 Lundin Mining 社 ( 加 ) は スウェーデンを中心に操業する中堅鉱山会社で South Atlantic Ventures 社が 2004 年 6 月に Rio Tinto 社 ( 英 ) からスウェーデン最大の亜鉛鉱山である Zinkgruvan 亜鉛鉱山を購入した後 名称を変更した会社である 2004 年の売上高は 5,192.7 万 C ドル 純利益は 619.8 万 C ドル ( 前年の 24 倍 ) と鉱山買収により業績を伸ばしている Zinkgruvan 亜鉛鉱山は 1857 年から生産している古い鉱山で 現時点の鉱量と資源量は合計でマインライフ 19 年分に相当する ( 下表参照 ) 未開発の銅鉱床 (350 万 t 3.1%) もあり 鉱山周辺には探鉱余地があるという 購入金額は 105.3 百万 US ドルであり 更に金属価格参加条項に基づき Rio Tinto 社に 2 年間にわたり 5 百万 US ドル支払う可能性がある 項目 量 ( 千 t) 亜鉛品位 (%) 鉛品位 (%) 銀品位 (g/t) 埋蔵量 (Reserve) 9,502 9.8 4.8 97 資源量 (Resource) 10,436 9.7 3.9 94
スウェーデンZinkgruvan 亜鉛鉱山の生産量 年 2003 2004 粗鉱処理量 773,688t 732,812t 粗鉱品位 亜鉛 9.2% 鉛 4.8% 銀 103g/t 精鉱中金属量 亜鉛 64,495t 鉛 31,760t 銀 1,840,887oz 亜鉛 9.1% 鉛 4.9% 銀 99g/t 亜鉛 61,547t 鉛 31,448t 銀 2,038,291oz Lundin Mining 社は また North Atlantic の交換でシェアを増やし 現在 95% 以上のシェ Natural Resources 社 ( スウェーデン ) のシェ アを有する親会社となっている North アを 37.1% 有していたが 2005 年 1 月 Atlantic Natural Resources 社は 2002 年 4 Boliden 社から更に 36.9% シェアを 123 百万ク 月に生産を開始した Storliden 鉱山の操業会社 ローネで獲得することに合意 その後自社株と である Storliden 鉱山の埋蔵量及び資源量 項目 量 ( 千 t) 亜鉛品位銅品位金品位銀品位 (%) (%) (g/t) (g/t) 埋蔵量 (Reserve) 844 10.0 3.6 0.3 24.9 資源量 (Resource) 360 3.0 2.2 0.4 31.4 Storliden 鉱山の生産量 年 2003 2004 粗鉱処理量 333,363t 286,749t 粗鉱品位 亜鉛 11.0% 亜鉛 8.41% 銅 4.1% 銅 3.07% 精鉱中金属量 亜鉛 33,158t 亜鉛 22,348t 銅 12,435t 銅 8,245t Lundin Mining 社は また 2005 年 3 月初め を目指している に ARCON International Resources 社 ( アイ ルランド ) との合併の方針を発表した 両社の 3 Minmet 社 役員会が合意したもので Lundin Mining 社は Minmet 社 ( アイルランド ) が経営する 最低 80% の株主受け入れを条件として ARCON Bjorkdal 金鉱山は 2004 年に金 30,601oz を生 社の全発行株式と 63 百万 US ドル及び Lundin 産した これは前年の 29% 減である 粗鉱量は Mining 社の 560 万株を交換するオファー ( 総額 1,193,719t 粗鉱品位は 0.94g/t であった 122.7 百万 US ドル相当 ) を行うとしている こ の条件で ARCON 社の主要株主は受け入れ可能で (2) 探鉱開発状況 あることを表明しており 合併が実現すれば 2004 年 1 月 1 日現在で 45 社が探鉱鉱区をス 銅や銀の生産だけでなく 亜鉛では年産 15.2 ウェーデンに保持しており 合計面積は国土の 万 t 鉛では年産 4.6 万 t の欧州有数のベース 2% に相当する 最大面積保持は Anglo メタル生産企業となる見込みである Lundin American 社 ( 英 ) で 22 鉱区計 1,550 km2であり Mining 社は 2005 年 4 月 25 日で ARCON 社の Boliden 社 ( スウェーデン ) の 133 鉱区 1,270 株式 91% 超を獲得 5 月上旬までに全株式取得 km2がそれに次ぐ その他に Phelps Dodge 社
ヨスウェーデン76 世界の鉱業の趨勢 2005 ( 米 ) が 38 鉱区 508 km2 Rio Tinto Mining & Exploration 社 ( 英 ) が 6 鉱区 108 km2を有する 新規設定鉱区数は年に 200 鉱区に及ぶという 近年 白金族鉱床や酸化鉄銅金鉱床の賦存の可能性が注目され 探鉱が盛んになってきている 1 Lundin Mining 社 Lundin Mining 社 ( 加 ) は Kiruna 鉱山近傍の Norrbotten 地区で 98,791ha にわたる酸化鉄銅金鉱床を狙った Norrbotten 銅金プロジェクトを実施している 2004 年 3 月 Anglo American 社 ( 英 ) 及び Rio Tinto 社 ( 英 ) と 22,000ha にわたる両社の Norrbotten プロジェクトに関するオプション契約を締結 その中には Anglo American 社が酸化鉄銅金鉱床を発見した Rakkurijarvi 地区も含まれる オプション契約では Lundin Mining 社は 6 百万 US ドルを3 年間で支出した場合 50 万 US ドルと 2.25% の NSR を支払うことで権益 100% を取得できる 発見銅量が 300 万 t 以上となった場合 Anglo American 社と Rio Tinto 社は 60% を買い戻す権利がある Lundin Mining 社は 2004 年前半に Rakkurijarvi 地区に焦点を当てた 26 孔 3,920m のボーリング調査を実施し 銅品位 1.4% 金品位 0.3g/t を 40.5m 銅品位 1.6% 金品位 0.4g/t を 19.8m 捕捉 2004 年第 4 四半期に更なる 2 次掘削計画を開始している Rakkurijarvi 鉱床以外にもいくつかのターゲットを有しており Rakkurijarvi の西 8km に位置する Ailatis 地区では 2004 年 9-10 月に 23 孔 2,559m のボーリング調査を実施し 銅品位 0.27% を 26m 捕捉するなど 4 孔で銅鉱化を確認している Lundin Mining 社の子会社となった North Atlantic Natural Resources 社 ( スウェーデン ) が実施している Lappvattnet ニッケル プロジェクトはスウェーデンのニッケル ベルトと呼ばれる地域にあり Lappvattnet 鉱床 ( 資源量 110 万 t ニッケル品位 1.0%) の存在が知られている 2004 年のボーリング調査の結果 深さ 100m を超えた場所に鉱化帯が存在することや東側に更なる拡大が見られることが確認されている North Atlantic Natural Resources 社では この他に Norrbotten 地域の南部の 3 つの地区 で Copperstone プロジェクトを実施しており それぞれ数孔のボーリング調査を実施した 2 Equinox Resources 社 Equinox Resources 社 ( 豪 ) は Norrbotten 地域で酸化鉄銅金 (IOCG) 鉱床探査を 1996 年に開始し 2000 年からは BHP Billton 社 ( 英豪 ) と共同で行っている 2003 年には Lapptrasken 第 3 鉱区で重力探査を完了したが 当該鉱区の優先度を下げる結果となり BHP Billton 社は JV から撤退した 一方 同社が保有する同じ Norrbotten 地域にある Luossajoki 探鉱鉱区では この地域は Kiruna 鉄鉱山の南に位置し IOCG 鉱床のポテンシャルが高いことから Phelps Dodge 社 ( 米 ) と JV を形成 Phelps Dodge 社が 5 年間で 1 百万 US ドル支出することで 51% のシェア 銀行融資可能な FS まで完成させると 70% シェアを獲得できるという契約で探鉱を進めている 3 Phelps Dodge 社 Phelps Dodge 社 ( 米 ) は 2004 年 2 月 Beowulf Gold 社 ( 英 ) と Jokkmokk 地域の共同探鉱に関する合意書に署名 Jokkmokk 探鉱許可は 82 km2であり Majves 1,2 Karvo 1 Tjaula 1 からなる Beowulf 社は 2003 年に地表踏査で鉱徴地を発見し 大手鉱山会社数社を現地に案内 Phelps Dodge 社が JV の相手方となった Phelps Dodge 社はバンカブル経済性評価にいたるまでの探鉱経費を支出することで最大 80% の権益を得ることができる Majves 鉱区でのボーリング調査は 2004 年 3 月に開始 その後のボーリング調査結果では 実施された MAJ001 孔で 全長 194.4m にわたり銅 0.27% 亜鉛 0.14% 金 0.35g/t 銀 3g/t の鉱化を確認 中でも 37.6m 間は銅 0.63% 亜鉛 0.21% 金 0.87g/t 銀 8g/t であった Phelps Dodge 社は更にボーリング調査を行う計画であるが 調査計画最適化に向け 溶脱可能金属イオン地化学探査を実施中 4 Tertiary Minerals 社 Tertiary Minerals 社 ( 英 ) は酸化鉄銅金鉱床を対象とした Ahmavuoma プロジェクトでボーリング調査を実施中である これまで黄鉄鉱を
スウェーデン主とし黄銅鉱を含む鉱染状から半塊状の鉱化を捕捉 2004 年の冬に実施したボーリング調査では 酸化鉄銅金鉱床を対象としたボーリング 5 孔のうち 2 孔で銅 コバルト 金の鉱化を捕捉 04AH003 孔ではコア長 5m にわたり銅 1.05% 金 0.3g/t 04AH001 孔ではコア長 18m にわたりコバルト 0.4% 銅 0.15% であった 春の雪解けにより地表のアクセスが悪くなったため ボーリング調査は中断され 2005 年冬に再開される予定 5 North American Gold 社 North American Gold 社は 2004 年 12 月 Anglo American 社が所有するスウェーデンの 2 つの探鉱権の 100% シェアを獲得するオプション契約に合意した これはスウェーデンの北部 Norbotten 地区の Pajala 近くで フィンランドの Rautuvaara 鉱山や Hannukainen 鉱山がある国境に近く 巨大な酸化鉄銅金型 (IOCG 型 ) 鉱床が期待できる地域で 合計面積は約 18,000ha となっている 同社は Anglo American 社が実施してきた探鉱等の既存のデータを評価することとしているが このオプションを実施するためには 今後 2 年間で最低 1 百万 US ドルの探鉱支出を負担 両社合意後 5 日以内に同社の株を 13.8 万株発行し譲渡 1 年以内にさらに 13.8 万株を譲渡する必要がある 同社が 100% シェアを獲得した後は 少なくとも銅で 3 百万 t の資源量が確認できた場合 5 年以内であれば Anglo American 社は 同社 の探鉱支出の 3 倍を支払うことで 70% シェアまヨで戻ることができる Anglo American 社が戻らない場合には Anglo American 社に 2.5% の NSR ロイヤルティを支払うこととなる スウェーデン地質調査所は North American Gold 社の Pajala プロジェクト地域内に 8 つの磁鉄鉱鉱床を発見しており 最大のものは Stora Sahavaara 鉱床で磁鉄鉱 100 百万 t( 鉄品位 44.5% 銅品位 0.30%) の資源量となっている この他 3 つの鉱床合計で 90 百万 t の銅を伴う磁鉄鉱があることもわかっている (2005.5.27/ ロンドン事務所嘉村潤 ) 世界の鉱業の趨勢 2005 77