11総法不審第120号

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平成 30 年 9 月 25 日 諮問 平成 30 年 11 月 13 日審議 ( 第 27 回第 4 部会 ) 平成 30 年 12 月 11 日審議 ( 第 28 回第 4 部会 ) 第 6 審査会の判断の理由審査会は 請求人の主張 審理員意見書等を具体的に検討した結果 以下のように判断する 1

処分済み

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が成立するが 本件処分日は平成 29 年 3 月 3 日であるから 平成 24 年 3 月 3 日以降 審査請求人に支給した保護費について返還を求めることは可能であ る 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件処分に係る生活保護

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

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がある 7 平成 28 年 3 月 28 日 処分庁は 同日付で審査請求人に対し 借入金収入 円の未申告により生じた保護費過払い分について 法第 78 条第 1 項の規定により費用徴収を行う決定を行い 同年 7 月 7 日 費用徴収決定通知書を審査請求人に手交した 8 審査請求人は 平成 28 年

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処分済み

保険業務に係る情報提供料は 請求人の事業に基づいた収入であるとは いえない 第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 30

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

処分済み

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処分済み

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達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

債務のうち所定の範囲内のものを当該事業主に代わって政府が弁済する旨規定する (2) 賃確法 7 条における上記 政令で定める事由 ( 立替払の事由 ) として 賃金の支払の確保等に関する法律施行令 ( 昭和 51 年政令第 169 号 以下 賃確令 という )2 条 1 項 4 号及び賃金の支払の確

もあり 安全で問題のない生活を送るためには家庭の中で請求人一人の力だけでは難しく 周りの大人の支援を必要としている状況である 現在も上記のような状況から 仕事ができずにいる また 本件処分は本件診断書に基づいて行われているが その後本件児童の状態が変わっているので 平成 30 年 3 月 26 日付

世帯に付き10,000 円以内とする 2 助成金の交付の対象となる空気調和機器の稼働期間 ( 以下 交付対象期間 という ) は 7 月から10 月までとする 3 助成金の交付の申請をした者 ( 以下 申請者 という ) が 交付対象期間の一部について第 6 条に規定する資格に適合しない場合は 助成

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

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1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

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7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

Microsoft Word 答申件数表

の両方を提出する必要がある 問 3 還付額は 領収証に記載されている金額を還付するのか それともレセプト情報から自己負担分を計算するのか 領収証により保険診療に係る一部負担金の額を確認して還付する 問 4 領収証の紛失 または医療機関等の全壊等により 対象の被保険者が負担した一部負担金の額の確認が取

遺者であったが 事情があって遺贈の放棄をした 民法 986 条の規定によれば 受遺者は 遺言者の死亡後 いつでも 遺贈の放棄をすることができ 遺贈の放棄は 遺言者死亡のときに遡ってその効力を生じるとされているから 前所有者から請求人に対する本件各不動産の所有権移転の事実は無かったものであり 請求人は

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地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第7次地方分権一括法)の概要

5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的

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病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない ( 被爆者援護法 11 条 1 項 ) ⑶ 都道府県知事は ⑵ 記載の厚生労働大臣の認定を受け かつ 当該認定に係る負傷又は疾病の状態にあるとの要件に該当することについて都道府県知事の認定を受けた者に対し 医療特別手当を支

労災年金のスライド

年管管発第 1026 第 2 号平成 24 年 10 月 26 日 地方厚生 ( 支 ) 局年金調整 ( 年金管理 ) 課長殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 通知 ) に基づく保護を受けている外国人の国民年金保険料免除の申請の

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

して 当審査会に対し諮問をした 以上の事案の経緯は 諮問書 審査請求書及び懲戒処分書から認められる 2 関係する法令等の定め (1) 司法書士に対する懲戒及びその手続についてア法 47 条は 司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局

平成  年(オ)第  号

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

件数表(神奈川)

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ウ 特定個人 a に訂正してほしいとは, 私は書いてない これも日本年金機構の単純ミスなのか? それとも他に理由があるのか? 事実に基づいて, 説明を求める 私の公共職業安定所における氏名は, カタカナの 特定個人 b のスペースなしで管理されている 私の資格画面も氏名欄はカタカナである 国民年金保

「配偶者からの暴力を受けた被扶養者の取扱い等について」の一部改正について

く, 未支給年金受給権者の個人情報の開示を求めているとして, 法 12 条 自己を本人とする開示を請求することができる に当たらないため, 開示することはできないことを伝え, 取り下げの意思を確認した しかしながら, 異議申立人は, 不開示である旨の正式な回答がほしいとして, 開示請求を続けたもので

ジュリスト No 頁 ) しかし 民事執行法の中に 上記の思想を盛り込まないままで それは 153 条でまかなっていただこう というのは 無理がある 例えば10 万円の給与のうち2 万 5000 円を差し押さえられた債務者が153 条の申立をし 他に収入はないこと ( 複数給与の不存在

(Microsoft Word -

( 例 2) 特定被災区域にある住家と区域外にある住家を行き来して生活しており 特定被災区域の家が被災したが 住民票は区域外にある場合 公共料金の支払等により生活実態が確認されれば対象として差し支えない ( 例 3) 学生で特定被災区域外に居住している ( 区域外に住民票 ) が 特例により 特定被

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

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政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

270826答申について

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論 請求者の A 社における厚生年金保険被保険者資格の取得年月日を昭和 63 年 2 月 26 日から同 年 2 月 16 日に訂正することが必要である 生年月日 :

厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 厚 ) 第 号 請求者のA 社 B 支店における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 44 年 4 月 21 日から同年 5 月 1 日に訂正し 昭和 44 年 4 月の標準報酬月額を2

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Microsoft Word - 療養補償給付又は療養給付.doc

Microsoft Word - T2-11-1_紙上Live_生計維持_13分_

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厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 国 ) 第 号 第 1 結論昭和 50 年 4 月 30 日から昭和 51 年 4 月 1 日までの請求期間 昭和 51 年 4 月 1 日から昭和 53 年 4 月 1 日までの請求期間 昭

Microsoft Word - 児扶法改正(Q&A)

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

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平成14年7月3日

⑵ 外来年間合算の支給額計算の基礎となる合算対象額は 基準日において 同一保険者の同一世帯に属しているか否かにより判断されます ( 例 ) 下記の事例の場合 基準日において 甲と乙が同一世帯であれば 3 と 4 は合算できるが 甲と乙が別世帯であれば 3 と 4 は合算できない 基準日保険者である

指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準 ( 平成 12 年厚生省告示第 20 号 ) 介護保険法第 46 条第 2 項及び第 58 条第 2 項の規定に基づき 指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準を次のように定め 平成 12 年 4 月 1 日から適用する 一指定居宅介護支

沖縄厚生年金事案 440 第 1 委員会の結論申立人の申立期間のうち 申立期間 2に係る標準報酬月額は 事業主が社会保険事務所 ( 当時 ) に届け出た標準報酬月額であったと認められることから 当該期間の標準報酬月額を 28 万円に訂正することが必要である また 申立期間 3について 申立人は当該期

伊丹市市民福祉金条例の一部を改正する条例(平成12年  伊丹市条例第  号)

ったと判断します なお 一時的に認定基準月額以上の収入がある月があっても 認定基準年額を超えるまでの間は認定できます また 勤務した月の給与が翌月以降に支払われる場合でも 原則 勤務月の収入として取扱います 継続して認定できる事例 認定基準月額未満であるので 継続して認定できます 認定基準月額以上の

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高島市職員措置請求に係る監査の結果について 第 1 請求の受付 1 請求書の提出平成 29 年 9 月 28 日 2 請求人 3 請求の要旨 ( 高島市職員措置請求書 の原文のまま記載) 1 請求の要旨高島市長による平成 29 年度の固定資産税の賦課において 別紙の固定資産について 家屋の未評価によ

●生活保護法等の一部を改正する法律案

件数表(神奈川)

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

Ⅰ 改正について 児童扶養手当法の改正 Q&A ( 公的年金等と合わせて受給する場合 ) Q1 今回の改正の内容を教えてください A: 今回の改正により 公的年金等 * を受給していても その額が児童扶養手当の額 より低い場合には 差額分の手当が受給できるようになります 児童扶養手当 は 離婚などに

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求期間 1について 当該期間のうち請求者のA 社における平成 21 年 9 月 1 日から平成 22 年 12 月 1 日までの期間の標準報酬月額を訂正することが

収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く ) は, 保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村の長は, 第 63 条の保護の実施機関の定める額の全部又は一部をその者から徴収することができる, 2 項では, 前項の規定による徴収金は, この法律に別段の定めがある場合を除き, 国

茨城厚生年金事案 2029 第 1 委員会の結論総務大臣から平成 24 年 10 月 10 日付けで行われた申立人の年金記録に係る苦情のあっせんについては 同日後に新たな事実が判明したことから 当該あっせんによらず 申立人のA 社における資格喪失日に係る記録を昭和 41 年 9 月 5 日に訂正し

無い (3) 特定市が振興協会会長 Aと市教育委員会とで一体に推進した当該文化事業は事業の実施前と実施後のまちの変化における事業の効果について国への報告義務があり, 公正に適法に事業を行う責務の存在は当該文化事業の目標の1は中心市街地の賑わいの促進にあって中心市街地活性化ソフト事業であって公開されて

Transcription:

答 申 審査請求人 ( 以下 請求人 という ) が提起した生活保護法 ( 以下 法 という ) 6 3 条の規定に基づく返還金額決定処分に係る審査請 求について 審査庁から諮問があったので 次のとおり答申する 第 1 審査会の結論 本件審査請求は 棄却すべきである 第 2 審査請求の趣旨本件審査請求の趣旨は 福祉事務所長 ( 以下 処分庁 という ) が 請求人に対し 平成 2 9 年 3 月 1 3 日付けで行った法 6 3 条の規定に基づく返還金額決定処分 ( 以下 本件処分 という ) の取消しを求めるものである 第 3 請求人の主張の要旨請求人は おおむね以下の理由により 本件処分は違法又は不当であると主張する ⑴ 本件処分は 請求人に対する保護が停止ないし廃止されていた期間 ( 平成 26 年 11 月 13 日から平成 2 8 年 7 月 6 日まで ) について その間の請求人の支出 ( 都営住宅の家賃及び本件各詐欺被告事件に係る弁護士費用 ) を考慮することなく その期間に得るべきであった年金を単純に資力として計上した点において 法 63 条の解釈を誤ったものであり 取り消されるべきである ⑵ 上記 ⑴の停止 廃止期間において 請求人に年金を上回る債務が生じたのだから 同期間に得るべきであった年金収入は この期間において支出されるべき費用に充てられるべきものであり 平成 28 年 7 月 7 日の保護再開の時点やその後においても活用す - 1 -

べき資力があったとはいえない ⑶ 上記 ⑵ のとおり 上記 ⑴の停止 廃止期間に相当する平成 2 6 年 11 月から平成 28 年 6 月までの年金収入 ( 1, 3 3 8, 0 5 0 円 ) は 法 6 3 条の規定による資力として認定し得ないものであるにもかかわらず 処分庁は これを含めて資力と認定した点において違法があるから その限度 ( 1, 3 3 8, 0 5 0 円 ) において 本件処分は取り消されるべきである 第 4 審理員意見書の結論 本件審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 29 年 11 月 8 日 諮問 平成 29 年 12 月 19 日審議 ( 第 16 回第 4 部会 ) 平成 30 年 1 月 29 日審議 ( 第 17 回第 4 部会 ) 平成 30 年 2 月 23 日審議 ( 第 18 回第 4 部会 ) 第 6 審査会の判断の理由審査会は 請求人の主張 審理員意見書等を具体的に検討した結果 以下のように判断する 1 法令等の定め ⑴ 保護の補足性及び保護の基準について法 4 条 1 項によれば 保護は 生活に困窮する者が その利用し得る資産 能力その他あらゆるものを その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるとされている また 法 8 条 1 項によれば 保護は 厚生労働大臣の定める基 - 2 -

準により測定した要保護者の需要を基とし そのうち その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとするとされている ⑵ 届出の義務について法 61 条によれば 被保護者は 収入 支出その他生計の状況について変動があつたときは すみやかに 保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならないとされている ⑶ 収入額の認定についてア地方自治法 2 4 5 条の 9 第 1 項及び 3 項の規定に基づく処理基準である 生活保護法による保護の実施要領について ( 昭和 38 年 4 月 1 日付厚生省発社第 123 号厚生事務次官通知 ) の第 8 3 ⑵ ア ( ア ) によれば 恩給 年金 失業保険金その他の公の給付 ( 略 ) については その実際の受給額を認定すること とされており 同 ( イ ) によれば ( ア ) の収入を得るために必要な経費として 交通費 所得税 郵便料等を要する場合又は受給資格の証明のために必要とした費用がある場合は その実際必要額を認定すること とされている イ同じく地方自治法 2 4 5 条の 9 第 1 項及び 3 項の規定に基づく処理基準である 生活保護法による保護の実施要領について ( 昭和 38 年 4 月 1 日付社発第 246 号厚生省社会局長通知 以下 局長通知 という ) の第 8 1 ⑷ アによれば 恩給法 厚生年金保険法 船員保険法 各種共済組合法 国民年金法 児童扶養手当等による給付で 6か月以内の期間ごとに支給される年金又は手当については 実際の受給額を原則として受給月から次回の受給月の前月までの各月に分割して収入認定すること とされている ⑷ 費用返還義務についてア法 6 3 条によれば 被保護者が 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず 保護を受けたときは 保護に要する費 - 3 -

用を支弁した都道府県又は市町村に対して すみやかに その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならないとされている イ法 6 3 条の規定は 被保護者に対して最低限度の生活を保障するという保護の補足性の原則に反して生活保護費が支給された場合に 支給した生活保護費の返還を求め もって生活保護制度の趣旨を全うすることとしている ( 東京高等裁判所平成 25 年 ( 行コ ) 第 2 7 号事件 平成 2 5 年 4 月 2 2 日判決 裁判所ウェブサイト裁判情報掲載 ) とされている ウ 生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて ( 平成 24 年 7 月 23 日付社援保発 0723 第 1 号厚生労働省社会 援護局保護課長通知 以下 取扱通知 という ) の1 ⑴によれば 法 63 条に基づく費用返還の取扱いについては 原則 全額を返還対象とすること ただし 全額を返還対象とすることによって当該被保護世帯の自立が著しく阻害されると認められる場合は 家屋補修 生業等の一時的な経費であって 保護 ( 変更 ) の申請があれば保護費の支給が認められると保護の実施機関が判断する範囲のものに充てられた額 ( 保護基準額以内の額に限る ) 等については 返還額から控除して差し支えないとされている また 同 ⑵ によれば 年金を遡及して受給した場合の返還金から自立更生費等を控除することについては 定期的に支給される年金の受給額の全額が収入認定されることとの公平性を考慮すると 厳格に対応することが求められるとされ 遡及して受給した年金収入については 次のように取扱うこととされている ( ア ) 保護の実施機関は 被保護世帯が年金の裁定請求を行うに当たり遡及して年金を受給した場合は 以下の取扱いを説明しておくこと 1 資力の発生時点によっては法 63 条に基づく費用返還の - 4 -

必要が生じること 2 当該費用返還額は原則として全額となること 3 真にやむを得ない理由により控除を認める場合があるが 事前に保護の実施機関に相談することが必要であり 事後の相談は 傷病や疾病などの健康上の理由や災害など本人の責めによらないやむを得ない事由がない限り認められないこと ( イ ) 原則として遡及受給した年金収入は全額返還対象となるとした趣旨を踏まえ 当該世帯から事前に相談のあった 真にやむを得ない理由により控除する費用については 保護の実施機関として慎重に必要性を検討すること ( ウ ) 資力の発生時点は 年金受給権発生日であり 裁定請求日又は年金受給日ではないことに留意すること また 年金受給権発生日が保護開始前となる場合 返還額決定の対象を開始時以降の支払月と対応する遡及分の年金額に限定するのではなく 既に支給した保護費の額の範囲内で受給額の全額を対象とすること そして 上記取扱通知は 法の解釈 運用の指針として合理性を有するものと認められる エ 生活保護問答集について ( 平成 2 1 年 3 月 3 1 日付厚生労働省社会 援護局保護課長事務連絡 ) によれば 保護の実施機関が 保護費の不足又は過払の発見後に再算定を行い 遡及的に正しい扶助額に変更する決定をすることは可能であるが 一般に 最低生活費の遡及変更は 3か月程度 ( 発見月からその前々月分まで ) とされている ( 問 13-2( 答 )2) このため 保護費の過払の期間が上記 ( 発見月からその前々月分まで ) を超えている場合は 上記の遡及変更による手段を採ることはできず 過払された保護費相当額を法 63 条の 資力 として認定する方法によるべきこととなる - 5 -

2 これを本件についてみると 以下のとおりである ⑴ 障害基礎年金の収入について請求人は 本件各詐欺事件判決後 処分庁が保護を再び開始 ( 平成 28 年 7 月 7 日 ) した後 障害基礎年金給付を受ける権利に係る請求を行い 厚生労働大臣から同年金の裁定を受けたことが認められる 本件年金支払通知書によれば 平成 2 8 年度の障害基礎年金の定期支払額 (2か月分) は130,016 円 ( ただし 2 月期は各支払期で切り捨てた端数を加算し 1 3 0, 0 2 0 円 ) であり 裁定請求の遅れにより遡及支給された過去分の支払額 ( 一時払 ) は 4,167,890 円 ( 以下 本件遡及支給額 という ) であることが認められる なお 本件年金支払通知書上 請求人の障害等級及び受給権発生日は明記されていないが 上記の定期支払額から平成 2 8 年度の年金額を算出すると 7 8 0, 1 0 0 円 ( 1 3 0, 0 1 6 円 5 期 +130,020 円 ) となり 同金額は国民年金法に定める障害の程度が障害等級 2 級に該当する者に支給する額に相当すること また 本件遡及支給額は 平成 2 3 年 8 月から平成 2 8 年 1 1 月までの障害等級 2 級に相当する年金の合計額と合致することが認められる これら本件年金支払通知書の内容からすると 請求人は 国民年金法施行令別表に定める2 級の程度の状態にあるものとして 平成 23 年 8 月 1 日に障害基礎年金の受給権 ( 支給 ) が発生したと考えるのが相当である そして 本件遡及支給額を局長通知の第 8 1 ⑷ アの収入認定の取扱いに基づき 平成 23 年 8 月から平成 2 8 年 1 1 月までの各月に振り分けた場合 同期間 ( 64か月分 ) の障害基礎年金の合計額は 4, 1 6 7, 8 7 6 円 ( 以下 本件遡及収入額 という ) であることが認められる - 6 -

⑵ 法 6 3 条の適用について上記 ⑴ のとおり 請求人の障害基礎年金の支給は 平成 2 3 年 8 月から始まっており 請求人は 同月から法 6 3 条の返還額決定の対象となる資力が発生したものと認められるところ 前記 1 ⑴ に述べた保護の補足性の原則に従えば これらの収入は 請求人の最低限度の生活の維持のために活用すべきであり 法に基づく保護は これらの収入を活用してもなお不足する分を補う限度で行われるべきこととなる そうとすると 保護変更処分により生活扶助費の額を遡及変更する限度は 実務上 3 か月程度と考えられているところであって (1 ⑷ エ) それ以上に遡る期間に関しては 当該収入を法 63 条の 資力 として認定し その期間中に支給した保護費については 資力に相当する額の限度で これを同条により返還するべき旨を決定することが 生活保護制度の趣旨を全うする手段として相応しい選択肢となる (1 ⑷ イに引用の裁判例参照 ) したがって 処分庁が 請求人の障害基礎年金の請求の遅れにより遡及支給された資力について 法 6 3 条の規定を適用して その額に相当する保護費の返還を請求人に対して求めることを決定したことについては 誤りはないというべきある ⑶ 返還金額の決定について上記 ⑴ で明らかになった本件遡及収入額を基礎として 返還金額を具体的に決定するに当たり処分庁は 請求人に対し 1 障害年金を当面の生活費に充てる等 自立更生のために使用するときには免除することも可能 であること 2 上記 1 の場合は 予め担当者までご相談いただいた上で 当所で協議 検討して決定させていただ くこと 3 自立更生免除については 事前に当所に相談のあったものに限 ることを記載した文書を 平成 28 年 11 月 14 日付け及び同年 12 月 7 日付けで通知したが - 7 -

請求人らからは 本件処分に至るまでの期間 自立更生費等の控除に係る相談は一切なかったことが認められる このため 処分庁は 1 収入を得るため必要な経費として認めるべきものを見出せなかったこと 2 資力 の額( 本件遡及収入額 4, 1 6 7, 8 7 6 円 ) は 同期間中の支給済保護費の額 ( 処分庁が保護を実施した平成 2 6 年 2 月から同年 11 月までの保護費 7, 0 5 9, 5 5 5 円及び平成 2 8 年 7 月から同年 1 2 月までの保護費 1, 9 8 2, 0 0 9 円の合計額 9, 0 4 1, 5 6 4 円 ただし 同合計額には 法 7 8 条に基づき別途費用徴収決定が行われた560,480 円を含んでいる ) を超えていないこと そして 3 真にやむを得ない理由により控除を認める事由が特段認められなかったことを確認し その上で本件処分を行ったことが認められる ⑷ 上記 ⑴ ないし ⑶ を前提とすると 返還金額を 4, 1 6 7, 8 7 6 円と算出した本件処分に至る過程には 取り消すべき違法 不当な点があるということはできないものである したがって 本件処分は 上記 1の法令等の定めに従い適切になされたものといえ 違法 不当はないということができる 3 請求人の主張 ( 第 3 ) について請求人は 第 3のとおり 主張する しかしながら 法 6 3 条の趣旨及び同条と法 4 条との関係に照らせば 法 63 条の 資力 とは 法 4 条 1 項にいう 利用し得る資産 と同義であるところ 当該 利用し得る資産 とは 現実に活用することが可能な資産はもとより その性質上直ちに処分することが事実上困難であったり その存否及び範囲が争われる等の理由により 直ちに現実に活用することが困難である資産も含まれるというべきであると解されている ( 最高裁判所第三小法廷昭和 46 年 6 月 29 日判決 民集 25 巻 4 号 650 頁参照 ) そして 請求人が支給を受けた障害基礎年金は 平成 28 年 7 月 - 8 -

以降に請求人が裁定請求を行い 平成 23 年 8 月 1 日を受給権発生日として支給処分を受けたものであるから 本件遡及支給額は 客観的に同日から発生し 請求人に帰属していた資産とみるべきであり 法 63 条の 資力 に該当するものと認めるのが相当である そして 請求人が主張する 請求人らの逮捕及び公訴提起中 保護が停止及び廃止されている間の都営住宅の家賃 並びに本件各詐欺被告事件に係る弁護士費用は 請求人世帯の自立更生のための真にやむを得ない理由によるものといえないものであるし その他 これら以外の点で 本件処分に関して 保護費の 全額を返還対象とすることによって当該被保護世帯の自立が著しく阻害されると認められる場合 に当たるとみるべき特段の事情は認められない そうすると 本件返還決定金額から 控除を認めなかった処分庁の判断を 違法 不当とすることはできない 4 請求人の主張以外の違法性又は不当性についての検討その他 本件処分に違法又は不当な点は認められない 以上のとおり 審査会として 審理員が行った審理手続の適正性や法令解釈の妥当性を審議した結果 審理手続 法令解釈のいずれも適正に行われているものと判断する よって 第 1 審査会の結論 のとおり判断する ( 答申を行った委員の氏名 ) 松井多美雄 宗宮英俊 大橋真由美 - 9 -