課題アプローチ技法 Ⅲ 73070310 後藤佑介テーマ 住宅用太陽光発電システムの利用効果 1. はじめに近年 地球温暖化問題に関心が集まっている その要因である二酸化炭素は私たちの生活を支える電力利用から排出される 二酸化炭素の排出を削減するためには再生可能エネルギー利用の技術が必要である その技術の一つである太陽光発電システム (PV システム ) はクリーンで無公害なエネルギーとして大きな期待が寄せられている また 光熱費の削減や災害時にも利用できるなどの利点がある 政府は太陽光発電世界一プランを計画し 2020 年には現在の太陽光発電の規模を 20 倍にする としている 私たちが PV システムを身近で見受けられるのは住宅に設置されたものではないだろうか そこで 住宅用 PV システムの利用効果を求め 住宅に PV システムを導入した時としない時の利用効果を比較する 2. 住宅用 PV システムとは 1) 太陽電池モジュールとモジュールを取り付ける架台から構成された太陽電池アレイ アレイで発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ部 変換された電力を住宅内の電源ラインに供給する分電盤などから構成される 太陽電池は多結晶シリコンとアモルファスシリコンの二種類に大別できる また 配電線は常時電力会社に接続されている並列連携型で余剰電力が生じた際は売電 不足のときには電力会社から供給できるようなシステムである 図 1 参照 また 二酸化炭素排出のフロー図を図 2 に示す 今回は 太陽電池セルは主流の多結晶シリコンを考える また PV システムの表面の汚れによる日射入射量の減少 周囲の障害物の影響及び地面からの反射日射量 太陽電池セルの長期使用による劣化 配電盤に回るまでの配線ロスなどは発電量に影響を与えると考えられるが ここでは無視して考える 図 1 システム配電系統図
図 2 フロー図 3. 文献調査結果 1)2)3) 文献により 太陽電池アレイの容量 ( 平均約 4.2kW) やアレイの設置位置の方角 ( 真南 ) 角度 ( 平均約 30 度 ) 太陽電池モジュールの設置個数( 平均約 30 個 ) 余剰電力の購入単価 (22 円 /kwh) などが異なるため 様々な場合が考えられる また 住宅用 PV システムを供給している太陽電池メーカーも異なる そこで 今回数値に関してはそれぞれの文献で使用されている値を平均し 使用することにした 括弧内の数値が平均した値である 以下 計算で用いる数値も平均した値やそれぞれの文献で使用されている値である 3.1 システムの製造 廃棄段階に係わる二酸化炭素 PV システムは製造 廃棄段階にCO 2 を排出する したがって 最終的なCO 2 に考慮する必要がある 1 製造段階 : 太陽電池モジュールの製造に係わるCO 2 が約 400k 配線ケーブル パワーコンディショナ アルミ枠などの製造に関わるCO 2 が約 400k 2 廃棄段階 : 廃棄時はトラックで運搬すると仮定し 軽油使用量を求める また PV システム全重量を求め 軽油使用量を乗じると 約 20k となる その結果 1と2の合計は約 820k( 製造 廃棄段階のCO 2 ) となり 耐用年数の 10 年で考えると 年間は約 82k である 3.2 ライフサイクルCO 2 排出原単位ライフサイクルCO 2 排出原単位が必要となる ライフサイクルCO 2 排出原単位とは PV システムの製造および使用材料製造時に起因して排出されたCO 2 を PV システムの単位生涯発電電力量で測った値である 導出式は以下のようになる
Σ = ( e in, e, i + Σ j in, j, i out L ) ただし e (-C/kWh): 系統電力の平均 CO 2 排出原単位 in e, i, (kwh/w): 機器 i の電力投入量 j (-C/MJ) : 化石燃料 j のCO 2 排出原単位 in j, i, (MJ/W): 機器 i の化石燃料 j の投入量 out (MJ/W/ 年 ): 年間発電電力量 L ( 年 ) :PV システムの耐用年数 (=10 年 ) この結果 ライフサイクルCO 2 排出原単位は 約 0.05(k-C/kWh) となった 系統電力の平均的なCO 2 排出原単位 0.36(k-C/kWh) に比べると十分低いレベルであり 住宅用 PV システムはCO 2 排出削減に有効な手段であることが分かる 3.3 発電量 PV システムの年間発電は以下の式で導出できる 真南 - 傾斜角 30 度 での一日当たりの日射量は約 2.94 (kwh/m2/ 日 ) とする システムの設置環境により発電量は変化するため 年間発電量は目安である p = H K P 365 ただし p : 年間発電量 (kwh/ 年 ) = 2.94 4.2 365= 約 4500(kWh/ 年 ) p H : 一日当たりの日射量 =2.94(kWh/m2/ 日 ) K : 設計係数 = 無視する P : システム容量 =4.2(kW) 365 : 年間の日数 3.4 電気代削減効果住宅で発電した分の余剰電力は電力会社が購入してくれる 余剰電力の購入単価を 22 円 /kwh( 東京電力 ) とすると ( 年間発電量 ) ( 余剰電力の購入単 ) =4500 22 =99,000 円 / 年よって 年平均の電気代削減コストは約 10 万円となる
1)2)3) 4. 二酸化炭素排出削減量に関するシナリオの設定ケース1( 文献 1~2) とケース2( 文献 1~3) に分けた場合の年間のCO 2 削減量を考える ケース1:PV システムを導入していない一般家庭のCO 2 ( 発電量 ) ( CO 2 排出原単位 ) =9919.75 0.36 =3571.11(k) ケース2: 火力発電や原子力発電と PV システムを導入した住宅のCO 2 ( 発電量 )-(PV システムでの電力量 ) =9919.75-4500 =5419.75(kWh) 5419.75 0.36 =1951.11(k) ( 製造時のCO 2 )+( 廃棄時のCO 2 ) =769.68+106.17 =875.851(k) ( 製造 廃棄時のCO 2 ) ( 耐用年数 ) =875.851 10 =87.585(k/ 年 ) ( CO 2 削減量 )=(PV システムでの発電量 ) ( CO 2 排出原単位 ) =4500 0.36 =1620.0(k) 図 3 ケース別住宅の年間 CO 2
5. まとめ 考察住宅用 PV システムを導入することにより 年間約 4500kWh の発電量を得ることができ さらに 年間約 10 万円の電気代を削減することができる また それぞれの文献の結果から PV システムを導入していない住宅と導入している住宅のケースに分けて年間の二酸化炭素を求めた PV システムの製造時や廃棄時に二酸化炭素は排出されるが PV システムを導入することで明らかに二酸化炭素を削減できることが分かった 今回は 実験を行う季節や時間帯を考慮しなかった 太陽が日没まで沈まない夏とそうでない冬とでは得られる電力量に大きな差が出ると考えられる 実際 様々な文献で日射量の多い夏場に多くの電力が得られることが示されている 太陽光発電は 年々需要が高まってはいるが 今後より一層の導入促進を行うことが必要になると考える 参考文献 1) わが家の太陽光発電システムを評価する-4.19kW システムの年間発電量 CO2 抑制量 システム効率 : 樫沢洋 (99)p32-35 2) 住宅用太陽光発電システムのライフサイクルアセスメント : 森崎格第 38 号 p241-244 3) 住宅用太陽光発電システムのライフサイクル分析と CO_2 排出削減効果の経済性 : 加藤和彦 1 巻 1 号 p390-396 4) NVIRONMNTAL VALUATION OF HOUSHOLD WAST MANAGMNT SYSTM IN SOUTHRN GRMANY