The Regionality of Economic TitleGlobalization:Focusing on the Develop Dynam Migration in the Philippines( Abstr Author(s) LAMBINO, John XXV Paragas C

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熊 本 大 学 学 術 リポジトリ Kumamoto University Repositor Title プロスタシンを 中 心 としたNa 再 吸 収 血 圧 調 節 の 分 子 基 盤 の 解 明 Author(s) 脇 田, 直 樹 Citation Issue date



Transcription:

The Regionality of Economic TitleGlobalization:Focusing on the Develop Dynam Migration in the Philippines( Abstr Author(s) LAMBINO, John XXV Paragas Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date 2012-03-26 URL http://hdl.handle.net/2433/157509 Right Type Thesis or Dissertation Textversion none Kyoto University

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 経済学 ) 氏名 LAMBINO, John XXV Paragas The Regionality of Economic Development under Globalization: Focusing on the Dynamism of Unevenness and Migration in the 論文題目 Philippines ( グローバリーゼーションの下における経済発展の地域性 -フィ リピンにおける地域的不均等と移民のダイナミズムを中心に-) ( 論文内容の要旨 ) 本論文は グローバリーゼーションが進む資本主義の下における移民メカニズムを明らかにしたいという問題意識のもとに 1970 年代以降のフィリピンを対象にして 同国からの海外移民創出過程とそのメカニズムを政治経済学の視点から考察することを課題としている その際 著者は 1 経済のグローバル化 2 一国内の地域的不均等発展 3 移民の 3 つの問題の相互連関を明らかにするという独自の視角を設定する そのうえで 本論文は 7 章から構成されている 第 1 章は 本論文全体の序章であり 1 経済のグローバル化 2 地域的不均等 3 移民に関わるフィリピン内外の理論的 実証的研究の到達点を 新古典派から政治経済学に至るまで批判的に検討して 社会構造分析と個人の選択決定との相互関係を重視した自らの理論枠組みを設定する 第 2 章と第 3 章は フィリピンにおけるグローバル化について考察している まず 第 2 章で 1970 年代から 90 年代にかけてのフィリピン政府主導による経済のグローバル化政策について論じている 著者は このグローバル化政策は二段階に区分されるとし 第一段階では 1 観光産業の振興政策 2 労働力輸出の促進政策 3 海外直接投資の誘致政策および輸出指向型工業化政策がとられ 1980 年代以降の第二段階では 1 貿易自由化政策 2 民営化政策 3 投資自由化政策 4 サービス セクター自由化政策へと政策の柱が変化していったとする 同時に 政治的な正当化過程に注目し 開発独裁政権の下で市場主義的なグローバル化政策が推進されたと指摘している 続く第 3 章では 1990 年代以降の国際貿易 投資協定政策について論じられている フィリピンでは 国際貿易 投資協定は条約 (treaties) または行政協定 (executive agreements) として立法化されているが 90 年代以降 国会の議決を要しない行政協定である国際貿易 投資協定 (FTA EPA など ) が 構造調整プログラムの下でトップダウン的に締結されていったことが明らかにされる 著者は これらの政策が 開発独裁体制崩壊後の民主主義体制の下で遂行されたこと 米国で教育を受けたテクノクラートによる支配の連続性に注目し このような政策によって民主主義体制が侵害されつつあるとする 第 4 章では グローバリーゼーション下のフィリピンにおける地域的不均等発展について 統計データに基づいて実証的に論じている この章では 雇用構造の変化を分析し メトロ マニラのサービス経済化と中部ルソン地方 カラバルソン地方と中部ビサヤス地方の工業地域化を析出している 他方で フィリピンのトップ企業の多くが本社をメトロ マニラに集中させていること - 1 -

なかでも BPO( ビジネス プロセス オフショアリング ) や金融資本の本社機能がメトロ マニラに集中することにより 資本主義的な商品に加え 文化生産 もメトロ マニラから地方へ流通し その支配圏を広げているとする 第 5 章と第 6 章は 移民を扱った章である 第 5 章では 消費と人々の空間移動 とりわけ移民との関係性を分析している 本章では 移民の動機のひとつとして消費ニーズに注目し 消費拡大のなかで 消費財と消費アイデアの空間的な移動が国内そして国際的になされるとともに 消費の地域的不均等によって 国内における労働力移動 さらに国内中間周辺地域や周辺地域から海外に向かう移民が創出されるとする 第 6 章は フィリピン国内から日本への移民について 独自のアンケート調査結果も活用しながら 実証的に分析している 本章では とくに在日フィリピン人の職業が変化していることに注目し その変化の社会経済的な背景を分析している すなわち 1980 年代には在日フィリピン人のほとんどはエンタテイナーであったが 2000 年代に入ると製造業従事者が多数を占めるようになったとする その背景として 日本政府の入国管理政策の厳格化や自動車産業 医療 福祉産業分野における人手不足問題があることを指摘し, また, 在日フィリピン人が 製造業については自動車産業集積地である関東と中部地方に 家政婦とベビーシッターは東京都に集中するというように日本の地域的不均等発展と結びついて分化していることも指摘している 第 7 章では 本論文全体のまとめと課題を グローバル化 地域的不均等発展 移民の 3 つのサブテーマに即して概括している - 2 -

( 続紙 2 ) ( 論文審査の結果の要旨 ) 周知のように フィリピンは世界でも有数の 移民大国 である 本論文は これらの移民がどのようなメカニズムで創出され 何故 例えば米国 日本等に大量に移動するのか という問題に焦点をあてた力作である 著者は この大きなテーマを明らかにするために 1 グローバル化 2 地域的不均等発展 3 移民という 3 つの側面からアプローチし それらの相互関係を実証的に構築しようとした 具体的には 以下の点が高く評価される 第一に これらの 3 つの側面に関するきわめて多数の先行研究を的確に整理したうえで さらに フィリピン国内における当該問題についての諸論考をも批判的に検討し 独自の理論フレームを提起した点が, 高く評価できる 具体的には以下の二点である (1) 移民メカニズムの分析において 代表的な理論のひとつであるプッシュ プル理論では社会経済構造の分析や国による政策過程分析が欠如していること 他方 政治経済学アプローチでの従属論や労働力移動論では 移動を行う個人の決定能力についての分析が希薄であることを批判しつつ 政治経済学的アプローチをベースに社会経済構造と個人の意思決定能力の両者を結合した理論を提示していること (2) 生産過程論や投資論の視角から労働力移動を分析していた従来の理論フレームとは異なり 消費過程に注目した移民メカニズム論を提起していること 第二に 著者は 地域経済学の基本概念である地域的不均等発展論を 従来の一国内に閉じられた概念としてではなく 日本とフィリピンのそれぞれの内部の不均等発展と労働力の国際移動を結合させるものとして捉え 独自の実証分析の基盤としている点も 新しい試みとして, 高く評価される 第三に 本論文は フィリピンにおけるグローバル化政策やフィリピン国内の地域的不均等発展の実態 在日フィリピン人の存在状況について 多くの新たな知見を生み出した 例えば この論文によって フィリピンにおけるグローバル化政策の立法過程や正当化過程が 政治経済学の視点から初めて明らかになった また 従来 在日フィリピン人のほとんどが興業労働者であるという通説が支配的であったが 本論文を通して現在では労働市場が大きく変質し 東京都内の家政婦 ベビーシッター市場と 関東 中部地方での自動車労働市場へと分化を遂げている実態を明らかにした点は優れた学術的貢献であるといえる 第四に このような独創的な理論フレームに基づきながら フィリピン及び日本の既存統計データの収集 分析だけでなく もともと資料が希薄な当該問題領域の実証性を高めるために 在日フィリピン人を対象にした独自のアンケートやインタビュー調査を 両国で実施し それを分析することによって結論を見出そうとする真摯な研究姿勢も大いに評価できる ただし 本論文にもいくつかの課題が残されている 第一に 本論文で示された移民メカニズムをめぐる理論フレームが どこまで一般化できるのか 例えば他の東アジア諸国との比較の視点や 近現代東アジア史に関する豊富な研究成果も取り入れながら さらに詳細に分析することが求められる 第二に それは同時に フィリピン資本主義や労働力移動 さらに首都への人口移動や人口動態の特殊性を 農村の社会構造や家族 世帯構造など 歴史的な視点も入れてより深くとらえることを必要とすることをも意味する 第三に フィリピン国内における地域的不均等と移民との関係 ある - 3 -

いは消費と移民との関係について より精緻なデータによる実証がなされれば 説得性を増したと考えられる 本論文では フィリピン国内の移民労働者送出地域の社会経済構造と個人の移民の意思決定についてのデータが手薄であり 独自アンケート結果の再活用や現地でのフィールド調査も行うことが求められる 第四に メトロ マニラに集中した地域経済構造の政治経済的意味を考察するためには フィリピンにおける地方自治制度や教育制度の検討も必要となろう とはいえ 以上に挙げた諸課題は 将来に向けた研究の発展方向を示唆したものであって 本論文が現時点において達成した学術的価値をいささかも損なうものではない よって 本論文は 博士 ( 経済学 ) の学位論文として価値あるものと認める なお 平成 24 年 2 月 22 日 論文内容とそれに関連した試問を行った結果 合格と認めた - 4 -