Title Author(s) 利他としての無為 : 共約不可能な他者とのかかわりに関する原理的考察 岡部, 美香 Citation 未来共生学. 2 P.125-P.140 Issue Date 2015-03-20 Text Version publisher URL https://doi.org/10.18910/51805 DOI 10.18910/51805 rights
利他 を考える 124 未来共生学第 2 号 未来共生学 2(125-140) 125 論文 2 利他としての無為 NPO 共約不可能な他者とのかかわりに関する原理的考察 NPO NPO 参考文献岡部美香 大阪大学大学院人間科学研究科准教授 2014 2011 / 39(11): 38-55 要旨 目次 2014 本論は 平成 26 年度ヒューマン サイエンス プロジェ はじめに クト 利他主義の人間科学の創生に向けて の成果の一 1. ケアリング論の特徴 Atsumi, T. 環であり 今日の教育学において 利他 がいかに論じ 2. ケアリングに内在する悪 3. 共約不可能な他者への応答 2014 Relaying support in disaster-affected areas: the social implications of a pay-it-forward られているかを ケアリング論の展開を中心に概説するおわりに network. Disasters 38(S2): S144 S156. ものである 教育学にケアリング概念を導入した N. ノ ディングズの思想は 他者との対等な相互性というそれ Kato-Shimizu, M., Onishi, K., Kanazawa, T. & Hinobayashi, T. までの倫理的原理を批判し 非対等かつ非対称的な関係 2013 Preschool children s behavioral tendency toward social indirect reciprocity. PLOS ONE においても相互性が成立すると説くものであった だが 8(8): e70915. 他方 その思想は 直接的な応答が困難な共約不可能な [DOI]10.1371/journal.pone.0070915 他者へのケアを軽視する恐れ ( 関係における悪 ) を内 [URL]http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0070915 在させるものでもあった そこで 共約不可能な他者に Milgram, S. 対する倫理的な応答について H. ヨナスに即しつつ考察 1967 The small-world problem. Psychology Today 1: 60-67. するなかで 他者の存在を自由な開かれたままの状態に キーワード Nowak, M.A. & Roch, S. 保つ 利他としての無為 が 共約不可能な他者に対す 2007 Upstream reciprocity and the evolution of gratitude. Proceedings of the Royal Society B, る私たちに可能な応答の一つであることが明らかになっ ケアリング 274: 605 609. た 最後に 利他としての無為という倫理的原理を具現相互性化する技法の探求には災害の記憶が手がかりとなり得る応答責任 Nowak, M.A. & Sigmund, K. 関係における悪であろうことを 今後の展望として述べた 2005 Evolution of indirect reciprocity. Nature 437: 1291-1298. 共約不可能な他者 無為 Watts, D.J. & Strogatz, S.H. 1998 Collective dynamics of "Small-world" networks. Nature 393: 440-442.
利他 を考えるはじめに 126 岡部 利他としての無為 127 未来共生学第 2 号 1. ケアリング論の特徴 1980 L. caring C. 1 3 6 care 1980 6 justice N. Caring 1984 reciprocity1 6 H.Das Prinzip Verantwortung 1979
利他 を考える 128 岡部 利他としての無為 129 未来共生学第 2 号 M. R. 4 3 Mayeroff 1971: 467 1986 unequalasymmetry W X i) W X ii) X W X Noddings 1984: 69
利他 を考える W 130 岡部 利他としての無為 131 未来共生学第 2 号 X expressed needs inferred needs 2006 feeling Noddings 1984: 59-78 responsibility 2006: 18 reciprocity 2. ケアリングに内在する悪 2006: 18-19 4 1. D. reflective 2.3. practitioner 2001, 2007 4. 4 1 4 concentric circles
利他 を考える 132 岡部 利他としての無為 133 未来共生学第 2 号 2003: 162-174 Noddings 1984: 46 e.g. 2006 C. evil in relation Card 1990 3. 共約不可能な他者への応答 Noddings 1984: 86 H. Das Prinzip Verantwortung2011 7 50 3 11 1 2011 2 20 kollektives Tun Jonas 1979: 37
利他 を考える 134 岡部 利他としての無為 135 未来共生学第 2 号 Jonas 1997: 86 2011 Das Existieren, Dasein Jonas 1979: 22-25 Jonas 1979: 393 Jonas 1979: 198 Jonas 1979: 87-88 Noddings 1984: 152-153 2004: 96-97 Jonas 1979: 175 3 Verantwortung / responsibility
利他 を考える 136 岡部 利他としての無為 137 未来共生学第 2 号 Jonas 1979: 166 おわりに 2014: 35-69
利他 を考える 138 岡部 利他としての無為 139 未来共生学第 2 号 1987a 1987b 2001: 184-187 1992 1993 注 2001 2007 1 2 Philosophie Magazine 2006 2011 54 pp.15-26 1 3 2011 Jonas 1979: 178 2011 7 39(9): 82-85 2006 2011: 253 pp.90-102 参照文献 2004 14: 91-110 2014 2 2003 1996 2001 Card, Claudia 1986 1990 Caring and Evil. Hypatia 5(1): 101-108. Mayeroff, Milton 1971 On Caring. New York: Harper Row M. 1987 2011
利他 を考えるNoddings, Nel 1984 Caring: A Feminine Approach to Ethics & Moral Education. Berkeley, Los Angels, London: University of California Press ( N. 1997 ). Jonas, Hans 1979 Das Prinzip Verantwortung: Versuch einer Ethik für die technologische Zivilisation. Frankfurt am Main: Insel Verlag ( H. 2010 ). 1997 Das Prinzip Leben : Ansätze zu einer philosophischen Biologie. Frankfurt am Main: Suhrkamp H. 2008: 140 未来共生学第 2 号岡部 利他としての無為 141