小嶋紀行:希少種ササバギンランの生育環境特性:横須賀市久里浜におけるマテバシイ植林の事例

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Transcription:

(35): 1 6, Feb. 2014 Noriyuki Kojima: Habitat Characteristics of Rare Plant Cephalanthera longibracteata Blume (Orchidaceae): A Case Study of Japanese Stone Oak (Lithocarpus edulis (Makino) Nakai) Plantation in Kurihama, Yokosuka, Central Japan はじめに Cephalanthera longibracteata Blume, 2001;, 1971, 2001 II VU, 2011 II, 2009 Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume, 1994, 2006; 2001, 2007, 2008;, 2009, 2009 2006;, 2006;, 2001, 2009, 2010 2009, 2012, 2006;, 2006 Russulaceae Sebacinaceae, 2009 mixotrophy, 2012 Cephalanthera damasonium (Mill.) Druce 50% Julou et al., 2005 ph, 2003 調査地概要 2012 5 2012 9 35 13 21.982 N 139 42 07.174 E 1

1 1 2011 調査方法 10 m 15 m 150 m 2, 2009, 2008 2.5 m PENTAX K-r SIGMA 4.5 mm F2.8 1 m CanopOn2 Takenaka, 2009 %, 1983;, 2003, 2009 A0, 1989, 2004 A0 Hydrosense CD620 CS620 Campbell Scientific, Inc. A0 R version 2.13.2 R Development Core Team, 2011 結 ササバギンランの分布と環境条件との関係 1 m 3 m 1 2 A0 10% 8% 2-a 7% 10 mm 20 mm 10 mm 20 mm 2-b 20 mm 果 1. 2m T1 T2 S 2

1 2-b A0 2 cm 5 cm A0 6 cm 2-c 16% 30% 16% 32% 2-d 3-d e f A0 r=0.96 P<0.01 r=0.87 P<0.05 3-g h i 3-j k l 考察 ササバギンランの生育状態と環境条件との関係 1 15 20 cm 2 Pearson r=0.82 P<0.05 Pearson 3 3-a b c r=0.89 P<0.05 2. A0 ササバギンランの生育環境と非生育環境の比較 2009, 2010 1 m, 1994;, 2007, 2009;, 2001, 2006, 2006 8% 8% 12%;, 2007 2-a 20 mol/m 2 /s, 2008 10 mm 20 mm 2-b 9.39 2.21 mm, 2009 2008 A0 5 cm 2-c 6 cm 7 cm 2012 2006, 2007 A0, 1992 2004 A0 2 6 3 3

3. A0 P<0.05 P<0.01 4

極めて微細な種子のキンラン属の種群にとって A0 層 A0 層の厚さは 草丈および花数に対して有意な正の 相関を示した 図 3-g, i 本調査地では A0 層が最も の薄い立地は好適な環境であると考えられる 本種の生育地点における土壌含水率の値 16% から 30% 図 2-d は ギンラン生育地の値 17.14±4.06% 能勢ほか, 2009 と同等か やや高い値であった 薄い立地の多くは歩道周辺に存在し 図 1 図 2-c こ の立地の多くは土壌硬度が 22 mm 以上であった 図 2-b このように 土壌硬度が 21.9 mm を超える立 以上のように 本種は近縁種と同様に落葉層が薄い立 地では 林床が裸地化することが知られている 根本, 育する個体が多く 近縁種と比べて土壌硬度がやや高い 菌との共生において有利になるものの 本調査地では踏 1999 従って A0 層の薄い立地は本種の定着や菌根 地を選好していると考えられる また 歩道の周辺に生 圧によって堅密化した土壌の影響が卓越し 結果として 立地に生育する傾向がみられた A0 層の薄い立地で草丈や花数が減少したと考えられる 環境条件がササバギンランの生育に及ぼす影響 これまでに ギンランは地上部の形質と土壌含水率と 野上 2006 は 本種の草丈 花数および葉数が そ の間に正の相関があると指摘されているが 能勢ほか れぞれ 24.6 cm から 30.5 cm 5 個から 7 個 6 枚から 2009 本研究では同様の傾向は認められなかった 図 3-j, k l これは 本調査地のササバギンランは土壌 含水率が比較的高い立地に生育しており 図 2-d 土 7 枚であると報告しているが これは本研究の結果とほぼ 本種の一般的な草丈は 30 cm か 同等であった 表 1 ら 50 cm 前後 北村ほか, 1964; 前川, 1971 と記さ 壌水分に恵まれていたためだと考えられる た 本種の未開花率は 30% から 65% 程度であることが ギンランは 暗い林床であっても良好に生育できると考 と同等の値であった さらに 本種は草丈と花数との間 上部の形質に負の効果を及ぼしていたと考えられる れているが 本調査地はこれよりも小型な個体が多かっ 以上のように 菌根菌と共生する混合栄養性のササバ 知られており 寺井, 2010 本調査地の開花率 66.7% えられる 一方で 踏圧で堅密化した土壌が 本種の地 に正の相関がみられたが 表 1 キンランでも同様の 傾向が報告されている 寺井, 2008 このように 本 調査地では小型な個体が多いが 開花率と分布様式は先 行研究と良く一致していた また 地上部の形質間の関 係についても近縁種と同様の傾向を示しており 本調査 地において本種は概ね良好に生育しているといえる 次に環境条件と本種の生育状態との関係を検討した結 果 開空率と本種の地上部の形質との間に有意な関係性 はなかった 図 3-a b c ギンランについても 光 条件と地上部の形質との間に有意な関係性がみられず 能勢ほか, 2009 本研究と同様の結果が得られている これらのキンラン属の種群は混合栄養性の種であるため Julou et al., 2005; 坂本ほか, 2012 光条件に応じ た光合成生産物だけでなく 菌根菌から供給される養分 が加わることで 弱光条件下での生育を可能にしている と考えられる 土壌硬度と草丈との間に負の相関がみられたが 図 3-d 本調査地では歩道周辺に生育する個体が多かった ため 踏圧によって堅密化した土壌が地上部の生長に悪 影響を及ぼしていたと考えられる 表 1. 調査区内で観察されたササバギンランの地上部の形質 個体番号 草丈 (cm) 葉数 花数 1 35 10 15 2 30 6 5 3 21 7 2 4 18 8 0 5 28 7 3 6 10 4 0 7.0 ± 2.0 4.2 ± 5.6 平均±標準偏差 23.7 ± 9.1 備考 付図 1. マテバシイ植林内に生育するササバギンラン 表 1 の 個体番号 1 茎頂部が枯死 5

引用文献, 2009.., 38: 45-94., 2001.., 2001, pp.485-525.,., 2009. 2009.. Online. Available from internet: http:// www.bdcchiba.jp/endangered/rdb-a/index-p.html (downloaded on 2012-08-06)., 2003.. 229pp,., 2006. ( )( 2 ) : Cephalanthera erecta Blume C. longibracteata Blume., 24(2): 1-4., 2007.,., 12(1): 35-43. Julou, T., B. Burghardt, G. Gebauer, D. Berveiller, C. Damesin & MA. Selosse, 2005. Mixotrophy in orchids: insights from a comparative study of green individuals and nonphotosynthetic individuals of Cephalanthera damasonium. New Phytologist, 166(2): 639-653., 1989.. 399 pp.,., 2008.., 34(1): 75-80., 2004.., 46(1): 29-34., 1964. ( ). 465 pp.,., 2012.., (33): 11-18., 1971.. 495 pp.,., 1994.. 910 pp.,., 1999.., 27: 339-345., 2006.., 33: 25-28., 2009.., 14: 185-191. R Development Core Team, 2011. R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Australia. Online. Available from internet: http:// www.r-project.org (downloaded on 2011-10-24)., 2009.., 16: 31. Online. Available from internet: http://repo.lib.yamagata-u.ac.jp/ handle/123456789/5010 (downloaded on 2012-06-02)., 2012.. 123. Online. Available from internet: https:// www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/123/0/123_0_k26/_ pdf (downloaded on 2012-09-23)., 2003. (Robinia pseudoacacia L.)., 85(4): 355-358. Takenaka, A., 2009. CanopOn2 (Ver 2.03c). Online. Available from internet: http://takenaka-akio.cool. ne.jp/etc/canopon2/ (downloaded on 2012-08-16)., 2007. 40., 70(5): 435-438., 2008. 10., 71(5): 585-588., 2009.. 56. Online. Available from internet: http://www.esj. ne.jp/meeting/abst/56/pb2-653.html (downloaded on 2012-10-03)., 2010.. 57. Online. Available from internet: http://www.esj. ne.jp/meeting/abst/57/p1-196.html (downloaded on 2012-10-03)., 2011. 2010 2011 4.. Online. Available from internet: http://www.kankyo. metro.tokyo.jp/nature/animals_ plants/rare_ creature/red_data_book/redlist2010/index.html (downloaded on 2012-08-06)., 2001.., 27(1): 33-47., 1992.., 42: 125-136., 1983.., 323: 9-13. Online. Available from internet: http://www.ffpri.affrc. go.jp/labs/kanko/323-1.pdf (downloaded on 2013-10-19)., 2009. (Cephalanthera falcata: )., 15: 95-108. 6