第 10 回児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会 平成 29 年 1 月 16 日 参考資料 2 児童虐待対応における司法関与の在り方について ( これまでの議論の整理 ) 1. はじめに 平成 28 年 3 月 10 日に取りまとめられた 新たな子ども家

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シンポジウム 親権法改正を考える

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

に養育されるよう また 児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合は 児童ができる限り 良好な家庭的環境 において養育されるよう 必要な措置を講ずることとする ( 同法第 3 条の2) なお 家庭 とは 実父母や親族等を養育者とする環境を 家庭における養育環境と同様の養育環境 と

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

高齢者虐待防止対応マニュアル別冊 6 関係機関との連携 (1) 各機関の役割 市町村や地域包括支援センター等の関係機関は それぞれ対応可能な範囲があります 範囲を超えた対応は行うことができません また 事例によって関係機関の対応を依頼する場合があります 市町村が中心となるコアメンバー会議によって 大

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を

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(2)-2 退所時 ( 契約入所の場合 ) 保護者と児童福祉施設等の契約に基づき入所している子どもについては 児童福祉法に基づく障害児施設給付費の支給を行う都道府県が把握していることから 当該都道府県が施設の所在する市町村及び保護者の住所地の市町村へ退所した旨を通知することにより 二重支給を防止し

答 申 第 1 審議会の結論名古屋市長 ( 以下 実施機関 という ) が 本件異議申立ての対象となる保有個人情報を一部開示とした決定は 妥当である 第 2 異議申立てに至る経過 1 平成 23 年 12 月 21 日 異議申立人は 名古屋市個人情報保護条例 ( 平成 17 年名古屋市条例第 26

特 養子縁組制度 利用 進 在 方 い. ( ) 日 新 子 家庭福祉 あ 方 専門委員会報告 提言 い 特 養子縁組制度 利用 進 必要 措置 連 制度 見直 機 調整 可及的 や 検討 開始 あ さ ( ) 日 立 児童福祉法等 一部 改 法 28 法 第 63 附則第

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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

承認が効力を失った後 当該産前の休業又は出産に係る子が次に掲げる場合に該当することとなったこと ア死亡した場合イ養子縁組等により職員と別居することとなった場合第 3 条第 7 号を同条第 8 号とし 同条第 6 号中 第 2 条の2 第 3 号 を 第 2 条の3 第 3 号 に改め 同号を同条第

2 センターは 前項の届出を受理したときは 当該利用者の設定を解除するものとする ( 設定票等の再発行 ) 第 7 条利用者は センターが交付した Web-EDI 機能利用情報の書類の再交付を申請するときは 様式 WE-04 号 Web-EDI 機能利用証等再交付申込書 に必要事項を記載して センタ

メ 札幌市オンブズマン条例 平成 12 年 12 月 12 日条例第 53 号 改正 札幌市オンブズマン条例 平成 15 年 10 月 7 日条例第 33 号 平成 20 年 11 月 7 日条例第 36 号 目次第 1 章総則 ( 第 1 条 第 4 条 ) 第 2 章責務 ( 第 5 条 第 7

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など 国の行政機関の法令遵守の確保につながるものである また 内部の職員等からの通報を積極的に活用したリスク管理等を通じて 国の行政機関が適切に行政事務を遂行していくことは 公務に対する国民の信頼の確保並びに国民生活の安定及び社会経済の健全な発展にも資するものである 本ガイドラインは 以上の意義を踏

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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第 10 回児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会 平成 29 年 1 月 16 日 参考資料 2 児童虐待対応における司法関与の在り方について ( これまでの議論の整理 ) 1. はじめに 平成 28 年 3 月 10 日に取りまとめられた 新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告 ( 提言 ) において 要保護児童の保護措置等の手続における裁判所の関与のあり方については 様々な意見が出されたが 児童相談所による保護者指導の緊急性 必要性が特に高い場合 ( 児童が現に虐待を受けている場合等 ) において その実効性を確保するため 裁判所又は裁判官が保護者に対する指導に直接関与する制度の導入等の 司法関与を一層強化する制度の導入について 関係部署と調整を行った上 早期に検討を開始する必要がある また 一時保護等や28 条審判における裁判所の関与のあり方についても 児童相談所の機能強化の状況等を踏まえた検討を行うべきである とされた 平成 28 年 5 月 27 日に成立した 児童福祉法等の一部を改正する法律 ( 平成 28 年法律第 63 号 ) 附則第 2 条第 2 項では この法律の施行後速やかに 児童福祉法第六条の三第八項に規定する要保護児童 ( 中略 ) を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与の在り方について 児童虐待の実態を勘案しつつ検討を加え その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする とされた また ニッポン一億総活躍プラン ( 平成 28 年 6 月 2 日閣議決定 ) にお いても 児童保護手続における裁判所の関与の在り方について検討し 必 要な措置を講ずる とされた これらを踏まえ 上記各事項について調査 検討を行うため 平成 28 年 7 月から 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の 在り方に関する検討会 を開催し 議論を進めてきた 児童虐待対応における司法関与の在り方については その基本的な考え方とともに 主に以下の5 項目を個別の論点事項として検討してきた 一時保護 裁判所命令 1

面会通信制限 接近禁止命令 親権停止制度の活用 28 条措置に係る裁判所の承認 司法関与の在り方の検討に当たっては 一時保護の期間や児童相談所にお ける司法関与に対する見解 保護者への指導の状況等を調査するため 児童 相談所への実態調査 ( 以下 実態調査 という ) を行った 2. 基本的な考え方 今般の児童福祉法の改正の以下のような趣旨を踏まえて 児童虐待対応の今後の在り方を検討する必要がある 1) 子どもは 児童の権利に関する条約の精神にのっとり 適切な養育を受け 健やかな成長 発達や自立等を保障される権利を有することを位置付けたこと 2) 家庭は 子どもの成長 発達にとって最も自然な環境であり まずは 子どもが家庭において心身ともに健やかに養育されるよう 保護者を支援するといった 家庭養育の原則が明記されたこと 全国の児童相談所における児童虐待の相談対応件数は 一貫して増加しており 平成 27 年度 ( 速報値 ) では はじめて 10 万件を突破した 児童虐待の相談対応件数の増加とともに 親権をめぐり保護者と児童相談所との間で軋轢が生じる場合も増えてきている こうした背景を踏まえ 手続の適正性を一層確保し 在宅での養育環境を改善し できる限り子どもが家庭において養育されるよう 児童相談所や家庭裁判所の体制整備と併せて 児童虐待対応における司法関与の在り方を見直す なお 本検討会における議論の中では 司法を関与させる必要性 有効性が必ずしも明らかになっておらず 現時点で司法関与を強化するべきという点について 意見の一致が見られないとして 見直しについて疑問を呈する意見もあった 2

3. 議論の整理 (1) 一時保護について 1 課題 近年は虐待を理由とする一時保護の増加に伴い 親権者等の意に反するケースも多くなっており 一時保護は 親権者等の意に反しても行政の判断により実施することができるが 児童相談所の実務では 一時保護を行うべきか判断に迷う事案も存在する 一時保護は 強制的に親子を分離するものであり 親権への強い制限を伴 うことから 児童福祉法第 28 条の措置との均衡も考慮し 司法の関与の強化 を検討するべきであるとの指摘がある 一時保護については 行政訴訟の提起が可能ではあるが 親権への強い制限を伴うこと 親権者等の意に反する一時保護が増加していること 一時保護が解除されると訴えの利益が消滅することから 事後の行政訴訟による救済だけでは十分ではないとの指摘がある 現行では 一時保護の期間は原則として2か月を超えてはならないとされているところ 実態調査によれば 2か月を超える一時保護は 3612 件 ( 年換算 うち 親権者等の意に反するケースは468 件 ) となっており 本来暫定的な措置であるはずの一時保護が長期化している場合もある 司法の関与を強化するためには 児童相談所や家庭裁判所の体制整備が前 提となる 実態調査によれば 体制整備が 必要である と回答した児童相 談所が 89% に上っている 一時保護に対する司法関与の強化についての各児童相談所の見解については 実態調査によれば 必要である が35% 必要でない が36% その他 が28% となっている なお その他 を選択した場合の具体的な意見の記述を見ると その賛否は様々となっている また その対象範囲については 親権者等の同意のない場合に限って対象とすべき が87%(182/209 児童相談所 ) となっている 3

2 主な議論 [ 提案された対応案 ] 一時保護の手続の適正性を一層担保する観点から 一時保護に家庭裁判所による審査を導入する 緊急に児童の安全確保を図る必要がある場合があることから 行政の職権 により一時保護を行うこととする必要がある 家庭裁判所による審査の対象としては 現行の児童福祉法第 28 条の措置と 同様に 親権者等の意に反する場合とすることが考えられる 一時保護を開始する際に その必要性を審査するためには 家庭裁判所に よる一定期間内の速やかな審査や事前審査の導入を目指すことが求められる 児童相談所や家庭裁判所の体制整備と併せて段階的に司法審査を導入する こととし その第一段階として 現行の一時保護の期間 (2 か月 ) を考慮し 一時保護が一定期間を超える場合に司法審査を導入することが考えられる この場合 制度の実施後相当期間内に その実態や効果を検証し 必要な 見直しを行う [ 指摘された事項 ] 司法審査の目的等について必ずしも認識が一致しておらず 一時保護の要 件や裁判所における審理手続等についても明確になっていない 制度の在り方によっては 保護者の権利保障が優先され 子どもの安全確 保に支障が生じるおそれがある 緊急時の対応に支障が生じたり 児童相談所が必要な一時保護をためらう ことがないようにすべき 司法審査の対象を親権者等の意に反する場合とする際には 具体的な同意 の確認方法 手続について検討する必要がある 児童相談所や家庭裁判所の体制整備を計画的に行う必要がある 例えば 児童福祉司や弁護士等の人員体制の強化 児童相談所内の介入機能と支援機 4

能の分化 児童相談所の調査機能 権限の強化を行うことが考えられる 5

(2) 裁判所命令について 1 課題 児童虐待を行った保護者に対しては 行政による指導や勧告が行われるが 現行の児童福祉司指導では 児童相談所と保護者とが対立構造となるケースも多く 結果 保護者指導の実効性が上げられないケースがある 児童福祉司指導に保護者が従わない場合の措置としては 一時保護や施設入所等の措置のほか 親権停止等の申立てが考えられるが 必ずしもすべての親権を停止する必要がない場合もあり これらの手段のみでは 必ずしも指導の実効性が担保されないという指摘がある 改正児童福祉法において 家庭での養育が原則 ( 保護者は児童の育成に第一義的責任を負う 国及び地方公共団体は保護者を支援しなければならない ) と位置づけられたことから 虐待の再発防止や親子再統合に向けた保護者指導の重要性がより一層高まっており 在宅での養育環境を改善し できる限り子どもが家庭において養育されるよう 保護者指導の実効性を高めるための措置が必要である 2 主な議論 [ 提案された対応案 ] 保護者指導の実効性を高める観点からは まずは 福祉 医療 教育等の諸機関の連携を通じた適切な保護者支援の実施や 児童虐待防止法第 11 条第 4 項に基づき 指導 勧告に従わない場合には 一時保護等を行うなど 現行制度の活用の徹底を図るなどの取組を行う 指導が 親権行使の態様への介入に該当するような場合には 親権の在り方について後見的な役割を担う家庭裁判所が関与する仕組みを導入し 児童相談所長等の申立てにより 家庭裁判所が 児童虐待を行った保護者が従うべき事項を定めた養育環境の改善計画を作成し 保護者に対してそれに従うよう命じることが考えられる 児童福祉法第 28 条における家庭裁判所の審査の前段階として 家庭裁判所 が関与する仕組みとすることが考えられる 保護者が当該措置に従わなかった場合には その後 児童福祉法第 28 条措 6

置や親権停止 親権喪失等の家庭裁判所の審判において考慮され 段階的に 親権に対するより強い制限を伴う措置に移行することとなる 保護者指導の実効性を高めることが必要な場面としては 在宅ケース ( 児 童福祉司指導 ) のほか 一時保護 同意による入所 28 条審判 ( 施設入所 里親委託 ) の場合が考えられる [ 指摘された事項 ] 保護者指導の実効性を高める手段として 司法を関与させる必要性 有効 性 ( 立法事実 ) が明らかでない 司法に行政 ( 福祉機関 ) の役割を代替させる結果となり 司法の中立性 公正性を損なうことがないようにする必要がある 現行の親権停止を有効に活用するための方策を検討することが先決である 保護者に対する裁判所命令については 以下の指摘があった 司法が私人に対して行政の指導に従うよう義務付けることができるとする実体法上の根拠が不明であるほか 裁判所による家庭への過度の介入となる危険を防ぐ方法がなく 憲法上の制約がある 家庭への介入あるいは権利制限であるとして 司法審査を必要とするとすれば 児童相談所における児童福祉司指導と 学校や警察における保護者への指導との性格や位置付けの違いを整理する必要がある 親権行使の態様への介入に該当する場合について 現状では 親権の一部制限という考え方が法的に整理されていない 裁判所が生活実態等を踏まえて 虐待の事実や保護者指導の具体的内容の認定 判断を行い 保護者に命令することは 制度的な限界がある また 裁判所命令の申立てが却下された場合等に 逆に保護者指導が難しくなるおそれがある 7

(3) 面会通信制限 接近禁止命令について 1 課題 現行では 面会通信制限 接近禁止命令については 行政の判断により行われているが 親権者等の行動の自由の制限を伴うことから 司法の関与を強化すべきであるとの指摘がある また 現行の面会通信制限の対象は 一時保護や同意入所 児童福祉法第 28 条の措置の場合であり 現行の接近禁止命令の対象は 児童福祉法第 28 条の措置の場合であるが 在宅の場合を含め その対象範囲を拡大すべきであるとの指摘がある 例えば 性的虐待を受けた高校生を一時保護している場合において 虐待を行った保護者との接触を防ぎ 通学を可能とするため 接近禁止命令が必要との指摘がある また 実態調査によれば 児童が児童虐待を行った又は疑いがある保護者と別居し 親族宅で暮らしている場合等にも面会通信制限 接近禁止命令が必要とする意見がある 2 主な議論 [ 提案された対応案 ] 面会通信制限 接近禁止命令については 親権者等の行動の自由の制限を伴うことから 手続の適正性を一層確保するため 司法関与を強化することが考えられる 対象範囲の拡大については 接近禁止命令について 一時保護や同意入所 の場合に拡大することが考えられる [ 指摘された事項 ] 現行の面会通信制限 接近禁止命令が十分に活用されているかどうかの検 証を行うとともに 新たな制度を設ける必要性を明確にすべきである 緊急の場合であっても 迅速に面会通信制限をすることができなくなり かえって児童の保護に反する結果となるおそれがある 現在の児童相談所等の体制を前提とすると これらの命令主体を裁判所と した場合 実務上の負荷が課題となり 柔軟な運用ができなくなるおそれが 8

ある 面会通信制限や接近禁止命令の妥当性の判断においては 親子分離措置の適否についても検討せざるを得ない場合があることに鑑みて 司法関与の在り方については 一時保護への司法関与の在り方と関連して検討する必要がある 面会通信制限 接近禁止命令の対象範囲を在宅の場合にまで拡大する場合 には 裁判所の関与が必要とも考えられる 9

(4) 親権停止制度の活用について 1 課題 児童福祉法第 28 条措置と親権停止等の使い分けについて 親権停止等をまず活用すべきという指摘がある一方で 謙抑性の原則からすると 児童福祉法第 28 条措置から検討せざるを得ないという指摘もある 2 主な議論 児童福祉法第 28 条措置や親権停止等について 両制度の趣旨や目的を勘案した上で 必要に応じて より適切に法的権限を使い分けられるよう 児童相談所運営指針等において 明確にする (5)28 条措置に係る裁判所の承認について 1 課題 児童福祉法第 28 条に基づく裁判所の承認は 措置の種別を特定してなされているが 裁判所の承認は措置の種別を特定せずになすことを検討するべきであるとの指摘がある この点については 既存の調査結果では 措置開始後 2 年以内に措置先を 変更した場合でも あらかじめ複数の措置先について裁判所の承認を得てい る場合が多数であるという結果となっている 2 主な議論 児童福祉法第 28 条に基づく裁判所の承認について 措置先を複数併記して承認を受けることが可能である旨について 全国の児童相談所等の関係機関に改めて周知することとする あわせて 措置種別が不適当であることを理由に却下の審判がなされた場 合に 児童相談所が一時保護を解除することがないよう周知する 10

4. 今後の対応 今回の 議論の整理 を踏まえ 厚生労働省においては 児童虐待対応における司法関与の在り方について 関係省庁等と協議を行い 必要な制度的検討を進めるべきである 今後とも 子どもの最善の利益に資するよう 児童虐待対応の在り方につ いて 引き続き 評価 検証を行うとともに 必要な見直しを行っていくべ きである 11