ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究

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2019 年1月3日熊本県熊本地方の地震の評価(平成31年2月12日公表)




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地震の概要 検知時刻 : 1 月 3 日 18 時分 10 発生時刻 : 1 月 3 日 18 時 10 分 マグニチュード: 5.1( 暫定値 ; 速報値 5.0から更新 ) 場所および深さ: 熊本県熊本地方 深さ10km( 暫定値 ) 発震機構 : 南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型 ( 速報

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この資料は速報値であり 後日の調査で変更されることがあります 時間帯 最大震度別回数 震度 1 以上を観測した回数 弱 5 強 6 弱 6 強 7 回数 累計 4/14 21 時 -24 時 /15 00 時 -24 時 30

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目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

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詳細な説明 2016 年 4 月 16 日に発生した熊本地震 ( マグニチュード (M) 7.3)( 図 1) は 熊本県 大分県を中心に甚大な被害をもたらしました 九州地方は 北東 - 南西方向に縦走する 別府 - 島原地溝帯 と呼ばれる顕著な地殻の裂け目によって特徴づけられます 別府 - 島原地

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火山ガスの状況( 図 8-5 図 9-4) 1 日 6 日 8 日 14 日 20 日 22 日に実施した現地調査では 火山ガス ( 二酸化硫黄 ) の1 日あたりの放出量は700~1,800 トン (10 月 :500~1,70 トン ) と増減しながら 概ねやや多い状態で経過しました 地殻変動の

火山ガスの状況( 図 8-5 図 9-4) 12 日 18 日 25 日 27 日に実施した現地調査では 火山ガス ( 二酸化硫黄 ) の1 日あたりの放出量は 900~1,600 トン (11 月 :700~1,800 トン ) と 増減を繰り返しながら概ねやや多い状態で経過しました 地殻変動の状

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火山ガスの状況 ( 図 8-5 図 9-4) 10 月 2 日 9 日 17 日 18 日 23 日に実施した現地調査では 火山ガス ( 二酸化硫黄 ) の 1 日あ たりの放出量は 500~1,700 トン (9 月 :90~1,400 トン ) と 概ねやや多い状態で経過しました 地殻変動の状況

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日本海溝海底地震津波観測網の整備と緊急津波速報 ( 仮称 ) システムの現状と将来像 < 日本海溝海底地震津波観測網の整備 > 地震情報 津波情報 その他 ( 研究活動に必要な情報等 ) 海底観測網の整備及び活用の現状 陸域と比べ海域の観測点 ( 地震計 ) は少ない ( 陸上 : 1378 点海域

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2018年11月の地震活動の評価(平成30年12月11日)

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報道発表 平成 30 年 9 月 6 日 05 時 10 分地震火山部 平成 30 年 9 月 6 日 03 時 08 分頃の胆振地方中東部の地震について 地震の概要検知時刻 : 9 月 6 日 03 時 08 分 ( 最初に地震を検知した時刻 ) 発生時刻 : 9 月 6 日 03 時 07 分

火山活動解説資料 ( 令和元年 5 月 ) 栗駒山の火山活動解説資料 ( 令和元年 5 月 ) 仙台管区気象台地域火山監視 警報センター 火山活動に特段の変化はなく 静穏に経過しており 噴火の兆候は認められません 30 日の噴火警戒レベル運用開始に伴い 噴火予報 ( 噴火警戒レベル 1 活火山である

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火山活動解説資料平成 31 年 4 月 19 日 19 時 40 分発表 阿蘇山の火山活動解説資料 福岡管区気象台地域火山監視 警報センター < 噴火警戒レベル2( 火口周辺規制 ) が継続 > 中岳第一火口では 16 日にごく小規模な噴火が発生しました その後 本日 (19 日 )08 時 24

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資料 4 第 1 回被害想定部会 深部地盤モデル作成結果 平成 27 年 3 月 24 日 1

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三次元速度構造と減衰構造 (3.1.1 参照 ) トモグラフィー解析から得られた P 波速度偏差構造 ( 上段 ) と Qp 減衰構造 ( 下段 ) 高速度領域と低速度領域をそれぞれ青破線と赤破線で囲む 下段の青枠は 上段の速度構造の表示範囲を示す 深さ 10km で 新潟平野の低速度域と調和的な高減衰 ( 低 Q) 領域が存在する一方で 中越地震余震域の周辺では 高速度領域と低減衰 ( 高 Q) 領域との対応がよい 2011 年長野県 新潟県県境付近の地震の震源断層モデル (3.1.1 参照 ) 2011 年長野県 新潟県県境付近の地震の震源域を通る速度深度断面図 ( 左 ) と震源断層モ デル模式図 ( 右 ) 本震と最大余震は隣り合う別のブロック内で発生し 震源域直下には 高 Vp/Vs の領域があり流体の存在が示唆される i

海域における自然地震観測 (3.1.2 参照 ) ( 左図 ) ダイバーによる潜航調査にて撮影された粟島ケーブル式海底地震観測システム ケーブル敷設状況 (2012 年 10 月撮影 ) ( 右図 ) 海岸線から 360m 付近 2012 年 10 月に実施されたダイバーによる地震ケーブル敷設状況の潜航調査作業状況 及び DGPS 受信機 (a)obcs と粟島観測点を用いて決定された震源の震央分布 ( 緑丸 ) それらと気象庁によって決定された同じ震源 ( 青丸 ) は線で結ばれている 矩形は (b)-(e) に示す断面図の範囲 (b) OBCS と粟島観測点を用いて決定された震源の断面図 (c)1964 年新潟地震の余震分布 ( 気象庁による ) 期間は 1964 年 6 月 16 日から 1964 年 9 月 30 日まで (d) 気象庁一元化震源導入以前の震源分布 ( 期間 :1960 年 1 月 -1997 年 9 月 ) (e) 気象庁一元化震源導入後の震源分布 ( 期間 :1997 年 10 月 -2012 年 8 月 ) 緑丸は OBCS で決定された震源 ii

東北地方日本海側における 3 次元電気比抵抗構造 (3.1.3 参照 ) 庄内平野 - 新庄 山形盆地周辺域の磁場変換関数を用いた三次元比抵抗構造 鳥海 (CHK) 測線比抵抗構造断面 酒田 (SKT) 測線比抵抗構造断面 新庄 (SNJ) 測線比抵抗構造断面 鶴岡 (TRK) 測線比抵抗構造断面 月山 (GSS) 測線比抵抗構造断面 iii

琵琶湖西岸域のひずみ集中メカニズム 桜島 姶良カルデラの地震発生メカニ ズム 及び阿蘇カルデラの変動源の模式図 (3.1.4 参照 ) 琵琶湖西岸活断層集中域において推定された活断層の深部構造とひずみ集中メカニズムの模式図 ( 左 ) 桜島 姶良カルデラ周辺 南岳昭和火口 北岳 桜島の噴出物 姶良カルデラ の地震発生のメカニズムの模式図 海底断層? 圧力源 低速度領域 ( カルデラ噴出物 ) 地形学的カルデラ 中速度領域 地震発生領域中速度領域 低速度領域 ( マグマを含む ) 地震発生領域 高速度領域 ( 基盤 ) 緩衝領域 圧力源 マグマ供給 阿蘇カルデラの地殻構造及び変動源の解釈図 ( 東西断面 ) iv

石狩低地帯の地震波速度構造 (3.1.5 参照 ) 石狩低地帯地域の深さ 5 10 15 20 25km における P 波地震波速度構造と震央分布 白 抜き三角は地震観測点を示す v

(a) 庄内平野東縁断層近傍の地震波群速度構造 (3.1.6 参照 ) (b) 4s 5s (c) 6s (d) 7s (e) 8s (f) 9s (g) 10s 地震波干渉法によって推定された群速度分布 地震波の周期は (a)4 秒 (b)5 秒 (c)6 秒 (d)7 秒 (e)8 秒 (f)9 秒 (g)10 秒 vi

御嶽山周辺の震源メカニズム解 (3.1.7 参照 ) 平成 20 年度 ~23 年度まで夏期に行ってきた御嶽山周辺における機動的地震観測で得られたデータを用いて御嶽山周辺で発生している地震のメカニズム解を求め これらを用いて CMT データインバージョン法及び地震メカニズムトモグラフィーにより推定された御嶽山周辺域の間隙流体圧分布 ( 左 ) とその推定誤差 ( 右 ) vii

九州における地震発生メカニズムの模式図 (3.1.8 参照 ) 九州における地震発生の模式図 上段が別府島原地溝帯 下段が断層帯と地震活動のない地域を模式的に示している 地震発生層の厚さ変化やモール円による応力 強度の関係図を示す 地溝帯では流体の供給があるために地震活動が活発で 地震のない地域では流体による強度低下が起こらず 地震発生に至らない可能性を表している viii

草津白根火山火口周辺の地震活動 (3.1.9 参照 ) 草津白根火山湯釜火口周辺における2008 年 1 月から2012 年 12 月末までの震源分布 ( 左 ) とその時系列 ( 右 ) 草津白根山山頂周辺に整備された活動火口観測システムを用いて 水位 水温 降水量等の連続観測を実施し これらと火山ガス 湖水 温泉水などの化学組成などの繰り返し観測及び地殻変動観測から ひずみ集中よる地殻活動とそれに連動する地殻内流体の変動を捉えることを目的としている 2009 年 7 月から2011 年 6 月にかけては湯釜火口湖 ( 図中の青色 ) の南方の地震活動が低調であった この時期は 水釜の北側外斜面の噴気活動が活発な時期で 噴気温度の上昇が開始した時期と一致する 2011 年 7 月まで噴気温度は沸点を超えていたが その後噴気活動は停止した また, 湯釜湖水中に含まれる塩化物イオンや硫酸イオンはマグマからの火山ガスが起源であるが, これらの濃度変化も2009 年 7 月以降に上昇し始め,2011 年 10 月には2009 年 7 月と同レベルまで下がった その直後から地震活動が再び活発化しており 火山性流体である火山ガスや熱水の動きと地震活動が対応していることは注目に値する 地震活動は湯釜北東の地温異常帯から水釜にかけての領域がもっとも活発で 定常的に地震活動が起こっているが これも東北地方太平洋沖地震の前後で顕著な変化は認められない また, その後に発生している東北地方太平洋沖地震の余震活動の影響もなく, 顕著な変化は認められない 湯釜火口湖の南方の地震活動が低調な時期だった 2011 年 5 月 27 日に傾斜変動を伴う火山性微動が発生し その直後から湯釜南部を中心に地震活動が活発化したが ごく短期間で収束し, 現在に至るまで同様の火山性微動の発生はない ix

飯山 - 小谷測線における地殻構造探査結果 (3.2.1 参照 ) ひずみ集中帯地殻構造探査 ( 飯山 - 小谷測線 ) 北部フォッサマグナは日本海拡大期にリフト帯として形成された その結果 中央部には深さ 5km まで堆積層 ( 低速度層 ) が分布し 内部は褶曲や逆断層が発達する 糸魚川 - 静岡構造線 ( 横川断層 ) による変位は少なく その東側に位置する小谷 - 中山断層の北東延長で大きな垂直変位を有している リフトの形成過程と関連して 信濃川断層帯の主部は東に傾斜する逆断層と推定され 全体としてウェッジ スラストを形成している x

マルチチャネル等による海域地殻構造調査 (3.2.2 参照 ) 本研究で用いた海洋研究開発機構深海調査研究船 かいれい のエアガンアレイによる発震光景 本研究で用いた海洋研究開発機構深海調査研究船 かいれい での海底地震計回収作業 xi

GPS 観測により得られた水平地殻変動 (3.3 参照 ) GPS で観測された 2011 年 10 月 2012 年 10 月の間の地殻変動分布 糸魚川市の 0245 に対 する変位量を示す 東北地方太平洋沖地震の余効変動が支配的である 地震時 ( 黒 ) と地震後 ( 赤 ) における地殻変動東西成分の空間分布の比較 地震時の地殻変動がほぼ一様なのに対し 地震後の変化は空間的に不均質に見える いずれも糸魚川の 0245 に対する変動量として表示している xii

長野盆地西縁断層帯における群列ボーリング調査 (3.4.1 参照 ) 飯山市付近の活断層分布と調査位置 背景は国土地理院発行 1/25,000 地形図 飯山 往 郷 替佐 夜間瀬 活断層線は杉戸 (2006) を一部改編 xiii

日本海東縁の活断層 (3.4.2 参照 ) 日本海東縁の活断層 黒の実線が活断層で 赤線が活背斜 地形データは 陸域については NASA が公開している Shuttle Radar Topography Mission(SRTM) (http://www2.jpl.nasa.gov/srtm/) を 海域については海洋データーセンターの 500m メッシュ水深データ jegg-500 の wgs84 版 ( http://www.jodc.go.jp/index_j.html) を用いて作成 xiv

新潟 山形 秋田県地域の浅部 深部統合地盤モデル (3.5.1 参照 ) 本プロジェクトにおいて作成した新潟 山形 秋田県地域の浅部 深部統合地盤モデル ( 工 学的基盤上面深度分布 ) xv

詳細法による 1828 年三条地震の強震動評価 (3.5.3 参照 ) 詳細法による 1828 年三条地震の強震動評価 南東傾斜震源断層モデル ( 上 : ケース 1A) と北西傾斜震源断層モデル ( 下 : ケース 1B) に対する広帯域地震動シミュレーションから 得られた地表震度分布と史料による歴史震度 ( 丸印 : 矢田 卜部, 2010) の比較 xvi

ひずみ集中帯歴史地震データベースの構築 (3.6.1 参照 ) ひずみ集中帯歴史地震データベースの画面 ( 史資料データベース ) 任意の地震史料データベースと震度データベースが選択できる xvii

ひずみ集中帯の過去 400 年間の震源域分布 (3.6.2 参照 ) 本プロジェクト等で系統的に解析された近世以降の東北日本の日本海側の被害地震の震源域分布図 海域に M7.8 程度 沿岸部に M7 程度のほぼ二列に並び 秋田市の沿岸部と沖合とが最近 400 年間では空白域となっている xviii