Transformation-Induced Plasticity a TitleMartensitic Transformation of Ultra Austenite in Fe-Ni-C Alloy( Abstrac Author(s) Chen, Shuai Citation Kyoto

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Transcription:

Transformation-Induced Plasticity a TitleMartensitic Transformation of Ultra Austenite in Fe-Ni-C Alloy( Abstrac Author(s) Chen, Shuai Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date 2015-03-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k18 Right 許諾条件により本文は2020/03/01に公開 ; 許諾条件により要約は2016/03/01に公開 Type Thesis or Dissertation Textversion ETD Kyoto University

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名陳帥 Transformation-Induced Plasticity and Deformation-Induced Martensitic Transformation of Ultrafine-Grained Metastable Austenite in Fe-Ni-C Alloy 論文題目 ( 超微細粒組織を有するFe-Ni-C 準安定オーステナイト合金の変態誘起塑性とマルテンサイト変態に関する研究 ) ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 完全再結晶組織を有する超微細粒準安定オーステナイト鋼 (Fe-Ni-C 合金 ) の創製を第一に試み 得られた超微細粒合金の組織形成過程を明らかにした上で その機械的性質を系統的に明らかにすることを目的として実施された実験研究の成果をまとめたものであり 5 章からなっている 第 1 章は序論であり 本研究の背景と目的を示している 我々の社会で用いられている金属材料の多くは 多数の結晶粒からなる多結晶体である 多結晶金属材料の結晶粒径を微細にすれば 材料の強度や靱性が向上することが古くから知られている 一方 従来の加工と再結晶あるいは相変態による結晶粒微細化で達成できる最小の平均結晶粒径は どの金属材料においてもほぼ 10μm 程度であり 現状の金属材料は結晶粒微細化効果を十分に生かしているとは言い難い それに対して近年 バルク金属材料の平均結晶粒径を1μm 以下にまで細かくする結晶粒超微細化が可能になりつつある 得られた超微細粒材料が 高い強度と 従来粒径材では決して観察されない特異な力学特性を示すことから 基礎研究および応用研究の双方において 金属 合金の結晶粒超微細化は近年盛んに研究されている 従来不可能であった超微細粒材料を実現可能としたブレークスルーの一つは 巨大ひずみ加工 (Severe Plastic Deformation) プロセスの開発と それによる結晶粒超微細化の発見である 巨大ひずみ加工とは 金属材料に対数相当ひずみにして4 5 以上の極めて大きな塑性ひずみを与えるものであり その結果 平均粒径数十 nm 数百 nm の超微細結晶粒組織がほとんど全ての金属において得られる しかし巨大ひずみ加工により得られる超微細粒金属材料は従来粒径材の3 4 倍にも達する高強度を示す一方 塑性不安定現象の早期発現のために引張延性に乏しいという欠点を持つ 巨大ひずみ加工されたままの状態における超微細粒組織が変形組織としての特徴を有することも 乏しい延性の理由の一つである これに対し 室温で FCC 結晶構造を有する準安定オーステナイト鋼でしばしば現れる変態誘起塑性 (Transformation Induced Plasticity: TRIP) 現象を利用すれば 超微細粒材料において高強度と大きな延性を両立できる可能性がある 本研究は 準安定オーステナイト鋼 (Fe-Ni-C 合金 ) の結晶粒径を1μm 以下にまで超微細化する方策をまず見出した上で TRIP 現象を利用することによって 超微細粒準安定オーステナイトにおいて高強度と大きな延性を両立しようとするものである 第 1 章では 研究の目的を明確にするともに マルテンサイト変態の熱力学および変形誘起マルテンサイト変態と TRIP 現象の基礎を俯瞰して 超微細粒合金に TRIP 現象を適用することの可能性を論じている 第 2 章では Fe-24Ni-0.3C 合金に対して室温で HPT 法による巨大ひずみ加工を最大剪断ひずみ 350 まで施し それに伴う強度と組織の変化を明らかにしている HPT 加工された試料に対して種々の温度 時間での熱処理を行い 完全再結晶組織を有する超微細粒準安定オーステナイト鋼 ( 最小平

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名陳帥均粒径 0.32μm) を得ることに成功している 熱処理時の組織形成過程を SEM/EBSD(Electron Back-Scattering Diffraction in Scanning Electron Microscopy ) 法や TEM ( Transmission Electron Microscopy) 観察により丹念に調べ HPT 加工時に生成し加工を受けた変形誘起マルテンサイトの逆変態と 巨大ひずみ加工を受けた残留オーステナイトの再結晶という二つの現象が重畳して超微細粒組織が形成されることを明らかにしている 第 3 章では 第 2 章で得られた種々の粒径 ( 平均粒径 0.32μm 35μm) を有する試料の室温引張試験を行い 結晶粒超微細化による高強度 ( 引張強さ 1GPa 以上 ) と TRIP 現象 ( 変形誘起マルテンサイト変態 ) の発現による高延性 ( 全伸び 100% 以上 ) が両立されること 試料の延性 ( 均一伸び ) は塑性不安定現象により規定されていることを確かめている オーステナイト自身の降伏強度は結晶粒微細化とともに増大するが 粒径 0.62μm 以下ではそれ以上の粒径領域における Hall-Petch 関係から予測されるよりも高い強度 (extra hardening) が生じることを見出している さらに 160 から -120 の範囲の種々の温度での引張試験を行い 強度と延性が試験温度と粒径によってどのように変化するかを系統的に明らかにしている 結晶粒微細化そのものによってオーステナイトの安定性が変化するため TRIP 現象による最大引張伸びを示す変形温度は各粒径材毎に異なり また引張伸びはある粒径で最大値を取ることを初めて見出している 結晶粒超微細化によって熱的なマルテンサイト変態点 (Ms 点 ) が低下し オーステナイトが熱力学的に安定になる一方で ピーク伸びを示す低温変形においては 超微細粒材の方が変形初期より変形誘起マルテンサイト変態を生じさせることを新たな知見として見出している そして 結晶粒超微細化によって最大引張伸びがむしろ低下するのは 変形に伴うマルテンサイト変態の進行が早すぎるためであることを明らかにしている これらの結果をもとに 変形誘起マルテンサイト変態と伸びの関係について 幅広い範囲で粒径依存性と変形温度依存性をまとめた定性的なモデルを提案している 第 4 章では 3 種類の平均粒径 (35μm 1.1μm 0.5μm) の Fe-24Ni-0.3C 合金が示す熱誘起および変形誘起マルテンサイトの組織および結晶学的特徴を精緻に明らかにしている オーステナイトの粒径が1μm 以下になると 熱誘起マルテンサイトの形態が典型的なレンズマルテンサイトから薄板状マルテンサイトに類似した形態に変化することを見出している 変形誘起マルテンサイトに関しても 結晶粒超微細化によってその形態がレンズ状から薄板状に変化すること そして形成されるマルテンサイトのバリアント選択則が 通常の粗大粒径材の場合とは大きく異なることを明らかにしている 第 5 章は結論であり 本論文で得られた成果を要約し 総括している

氏名陳帥 ( 論文審査の結果の要旨 ) 本論文は 室温で準安定オーステナイト組織を有する Fe-24wt%Ni-0.3wt%C 鋼を用いて 完全再結晶組織を有する超微細粒材の創製を試み 得られた超微細粒オーステナイト鋼の組織形成過程を調べた上で その機械的性質を系統的に調査した研究成果をまとめたものであり 得られた主な成果は次の通りである 1.Fe-24Ni-0.3C 合金に対して室温で High Pressure Torsion (HPT) 法による巨大ひずみ加工と熱処理を施すことにより 完全再結晶組織を有する単相超微細粒準安定オーステナイト鋼 ( 最小平均粒径 0.32μm) を得ることに初めて成功した これまで 転位等の格子欠陥密度の低い完全再結晶組織の単相超微細粒オーステナイトを得ることに成功した例はない また本研究では 完全再結晶超微細粒組織が HPT 加工時に生成し加工を受けた変形誘起マルテンサイトの逆変態と 巨大ひずみ加工を受けた残留オーステナイトの再結晶という二つの現象が重畳することによって形成されたことも明らかにしている 2. 上記により得られた種々の粒径 ( 平均粒径 0.32μm 35μm) を有する単相オーステナイト鋼 (Fe-24Ni-0.3C) に対して 160 から-120 の範囲の種々の温度での引張試験を行い 強度と延性の粒径および変形温度依存性を系統的に明らかにした 結晶粒微細化によってオーステナイトが安定化するため TRIP 現象による最大引張伸びを示す変形温度は各粒径材毎に異なり また引張伸びはある粒径で最大値を取ることを見出した さらに オーステナイトが安定化するにもかかわらず ピーク伸びを示す変形温度で比べた場合 超微細粒材料においては変形誘起マルテンサイト変態がより加速されて生じること そしてそれによって超微細粒オーステナイトにおいてはより小さな引張ひずみで塑性不安定が達成され 得られる最大伸びがむしろ低下してしまうことを初めて明らかにした これらの結果は 超微細粒材料において高強度と大延性を両立するために TRIP 現象の利用が有効であることを示すとともに 延性の観点からは最適粒径が存在することを示すものであり 超微細粒準安定オーステナイトの構造材料としての将来の実用化にとっても貴重な研究成果である 3. 種々の平均粒径を有する Fe-24Ni-0.3C 合金が示す熱誘起および変形誘起マルテンサイトの組織および結晶学的特徴を精緻に調査し 結晶粒超微細化によってマルテンサイトの形態がレンズ状から薄板状に変化すること そして形成されるマルテンサイトのバリアント選択則が 通常の粗大粒径材の場合とは大きく異なることを見出した これはマルテンサイト変態の本性を基礎的に明らかにする上で貴重な知見である 以上の成果は 準安定オーステナイト単相鋼において平均粒径 1μm 以下の完全再結晶超微細粒組織を得ることに初めて成功し 様々な平均粒径を有する試料の力学特性を幅広い変形温度範囲で系統的に調べることによって TRIP 現象の発現および強度 延性の粒径 温度依存性を統一的に解明したものであり 超微細粒金属材料( バルクナノメタル ) の創製と その力学特性に関して学術上 実際上寄与するところが少なくない よって 本論文は博士 ( 工学 ) の学位論文として価値あるものと認める また 平成 2 7 年 2 月 20 日 論文内容とそれに関連した事項について試問を行って 申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し 合格と認めた なお 本論文は 京都大学学位規程第 14 条第 2 項に該当するものと判断し 公表

氏名陳帥 に際しては ( 平成 32 年 2 月 29 日までの間 ) 当該論文の全文に代えてその内容を要 約したものとすることを認める