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第 4 節原産地名称 原産地名称の保護に関する規定はロシア連邦民法第 1516~1537 条である (1) 原産地名称の保護対象ロシア連邦民法第 1516(1) 条は知的財産権の対象として保護される原産地名称を次のように定義している 近代的 歴史的 公式 非公式にかかわらず 国 都市 地方 又はその他の地理的場所を正式名であれ 略称であれ その地理的場所に対して 自然条件かつ 又は 人間的要因の特徴によって専ら又は主として決められる特別の品質の品物に関して その使用の結果として由来する表示 及び知られている表示 をいう ロシア連邦民法の最新の修正 (2010 年 10 月 4 日付連邦法第 259-FZ 号による ) の結果 上記の条文は特定の地域を原産地とする商品を示す表示さらにはかかる名前の地域がない場合であっても商品に関してかかる表示を行ったことにより知られるようになった地域であって上記条文の第 1 項に適合するものには適用されることとなった 法律は原産地名称と ロシア連邦内で特定の種類の商品を示す通例の地域であって製造地域と関連性がない地域名を表すか又はそれを含む表示を区別している ( ロシア連邦民法第 1516(2) 条 ) このような表示の例として スイス チーズ カマンベール チリ ソルトペッパー など 徐々にある種の製品の名称として定着してきたものであっって原産地の特定機能を失っているものがある (2) 原産地名称の法的保護が行われるようになった理由 ロシアでの原産地名称保護は ロシアでの名称登録により又はロシア連邦が加盟国である国際条約によって開始され ( ロシア連邦民法第 1518 条 ) 当該地理的場所の自然条件かつ 又は 人間的要因の特徴により専ら又は主として決められる特別の品質の品物の製造が可能である間は無期限で有効である ( ロシア連邦民法第 1521 条 ) 原産地名称は 1 以上の法人又は自然人によって登録され 原産地名称の登録を受けた者は それを使用する権利を得る 原産地名称の使用権は 当該地域内において同じ基本的特徴を持つ商品を生産しているいかなる法人又は自然人にも与えられる 登録された原産地名称の使用権を得るために 使用者は 当該地理的場所に所在している必要は必ずしもなく 同一の地理的場所の同一の特徴を有する商品を生産していることのみで足りる 127
(3) 原産地名称の登録と原産地名称使用権証明書の発行原産地名称の登録及びすでにロシアで登録済の原産地名称の使用権の獲得には Rospatent への出願が必要である ( ロシア民法第 1552 条 ) 法律は下記の 2 つの申立を規定している 原産地名称の登録及び使用権を得るための申立 登録済の原産地名称の使用権を得るための申立 申立には以下の内容を含んでいなければならない 原産地名称の登録及び使用権の許可出願 又はすでに登録済の原産地名称の使用許可 出願 出願する標章 登録を求める商品の名称 原産地の名称 ( 地域の境界 ) 商品の特徴に関する説明 外国の原産地名称に関する申立の場合は 原産国での原産地名称に対する申立人の権利を証明する文書を添付しなければならない 例えば 管轄当局が発行した原産地名称使用権証明書又はその謄本などである また 申立には所定額の料金を納付済であることの証明書も添付しなければならない 2011 年現在の申立審査料は約 33USD である 原産地名称の登録が承認されかかる原産地名称の独占使用権証明書が発行される場合はさらに 400USD を納付する 申立の審査は Rospatent が行う 原産地名称登録に関する情報は 原産地名称自体 商品の表示 特徴の記述 原産地名称の使用権証明書所有者に関する事項とともにロシア登録簿に記載される かかる登録の修正も登録簿に記載される ( ロシア連邦民法第 1529 及び 1532 条 ) (4) ロシアで保護される原産地名称の例 2011 年現在 ロシア連邦原産地名称登録簿には約 120 件が記載されおり そのほとんどがロシア人によるミネラルウォーターに関するものである 一部は外国人が所有している 例えば «BUDEJOVICKE PIVO» «CESKOBUDEJOVICKE PIVO» «BUDEJOVICKE PIVO BUDVAR» «BUDĚJOVICKÉ PIVO, BUDWEIS BEER» ( 登録番号 18 19 20 92)( チェコ共和国のビール ) «KARLOVARSKA, HORKA-KARLSBADER BITTER» ( 登録番 128
号 38) ( チェコ共和国の果実酒 ) «MURFATLAR» ( 登録番号 99)( ルーマニア ワイン ) «ASTI» ( 登録番号 114)( イタリア ワイン ) «PROSCIUTTO DI PARMA» ( 登録番号 116)( イタリアの ハムと乾燥ハム ) などである (5) 原産地名称の保護期間と原産地名称使用権証明書の有効期間原産地名称の登録には定められた期間はないが 原産地名称使用権証明書の有効期間は Rospatent に申立書を提出した日から 10 年である 原産地名称使用権証明書は何度でも 10 年ずつ延長できる 証明書の外国人所有者が証明書の期限延長を受けるには原産国での原産地名称に対する申立日現在の権利を証明する文書を添付しなければならない ( ロシア連邦民法第 1531 条 ) 証明書の期間延長料金は約 500USD である (6) 原産地名称使用権に関連する権利原産地名称使用権の譲渡あるいは原産地名称使用ライセンス権の付与は禁止されている ( ロシア連邦民法第 1519 条 ) 原産地名称使用権証明書の所有者は 原産地名称が登録されている商品と同一の商品について商標を登録する場合には かかる原産地名称が含まれている商標を自己の名で登録することができる 原産地名称使用権を持たない者は登録されている原産地名称を含む商標又はこれに類似する表示を自己の名で登録することはできず ライセンスとしてかかる商標の使用権を取得することもできない 登録済原産地名称使用権証明書を持たない者は 実際の原産地を表示している場合であっても あるいは原産地名称を翻訳しあるいは ~と同種の ~タイプ 複製 などの語との組み合わせであってもかかる原産地名称を使用することはできない また 使用権証明書を所有していない者は原産地及び特別な製品の特徴について顧客の誤認を生じるような類似の商品についての類似表示を使用することもできない ( ロシア連邦民法第 1519(3) 条 ) (7) 原産地名称保護及び原産地名称使用権の終了関係者は原産地名称の登録及び登録原産地名称の使用権付与に異議申立を行うことができる 異議申立は Rospatent に対して行う ( ロシア連邦民法第 1535 条 ) かかる申立の根拠には下記があげられる 1 法的要求事項に違反した原産地名称の保護付与 この異議申立は登録及び証明書の有効期間内であればいつでも行うことができる 2 すでに登録済み商標が存在し そのため原産地名称を使用すると商品又はその製造者に 129
ついて消費者が誤認するおそれがある場合 この理由に基づく申立は原産地名称の登録に関する情報が公開されてから 5 年以内に行わなければならない 原産地名称登録は次の場合に失効する 1 地理的場所の代表的な条件が消滅し 当該特徴を有する商品の製造が不可能になった場合 2 原産地名称使用権証明書の外国人所有者が商品原産国でかかる表示に対する権利書を偽造した場合 ( ロシア連邦民法第 1536 条 ) 原産名名称登録権証明書は次の場合に失効する 1 証明書の所有者が製造した商品が当該原産地名称の代表的な特徴を失った場合 2 原産地名称登録が失効した場合 3 証明書の所有者が活動を停止した場合 4 Rospatent が証明書所有者から権利放棄の申立を受けた場合 (8) 登録された原産地名称に関する情報の公開登録された原産地名称 発行された原産地名称使用権証明書 原産地名称登録の変更に関する情報は 法的保護の失効あるいは原産地名称使用権証明書の失効を含め Rospatent 公報に掲載されるほか Rospatent のウェブサイトに掲載される (http://www1.fips.ru/wps/portal/registers/) ( ロシア語のみ ) 130
[ 特許庁委託 ] 模倣対策マニュアルロシア編 [ 著者 ] GORODISSKY & PARTNERS 法律事務所 編集長 :Vladimir Biriulin [ 発行 ] 日本貿易振興機構進出企業支援 知的財産部知的財産課 107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32 アーク森ビル 6 階 TEL:03-3582-5198 FAX:03-3585-7289 2012 年 3 月発行禁無断転載 本冊子は 日本貿易振興機構が 2011 年 12 月現在入手している情報に基づくものであり その後の法律改正等によって変わる場合があります また 掲載した情報 コメントは著者及び当機構の判断によるものですが 一般的な情報 解釈がこのとおりであることを保証するものでないことを予めお断りします